(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024136159
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】情報出力装置、学習済モデル生成装置、プログラム、学習済モデル、及び操作指示情報生成方法
(51)【国際特許分類】
E02F 3/47 20060101AFI20240927BHJP
E02F 3/43 20060101ALI20240927BHJP
E02F 9/20 20060101ALI20240927BHJP
E02F 9/26 20060101ALI20240927BHJP
B66C 23/52 20060101ALI20240927BHJP
B66C 13/22 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
E02F3/47 F
E02F3/43 B
E02F9/20 M
E02F9/26 B
B66C23/52
B66C13/22 R
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023047164
(22)【出願日】2023-03-23
(71)【出願人】
【識別番号】000166627
【氏名又は名称】五洋建設株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000219406
【氏名又は名称】東亜建設工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000222668
【氏名又は名称】東洋建設株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】593031735
【氏名又は名称】株式会社小島組
(71)【出願人】
【識別番号】390032229
【氏名又は名称】株式会社エス・ケー・ケー
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】琴浦 毅
(72)【発明者】
【氏名】熊谷 隆宏
【テーマコード(参考)】
2D003
2D015
3F204
3F205
【Fターム(参考)】
2D003AA06
2D003AB03
2D003AC01
2D003AC09
2D003BA03
2D003BB04
2D003BB08
2D003BB09
2D003BB10
2D003CA01
2D003CA10
2D003DA04
2D003DB04
2D003DB05
2D003DB07
2D003DB08
2D003DC02
2D003DC04
2D003DC06
2D003DC07
2D003FA01
2D003FA02
2D015DA05
2D015HA03
2D015HB04
2D015HB05
3F204AA04
3F204BA09
3F204CA03
3F204EA02
3F204EA15
3F205AA10
(57)【要約】
【課題】海上土木作業のための作業船上の重機への操作指示情報の生成において、当該重機の動作により作業船に与える動揺と、波、風などの外力により作業船に生ずる動揺との影響を考慮する。
【解決手段】情報出力装置(10)は、重機を載置した第2の作業船の仕様を表す情報及び海上土木作業を行っていない状態における当該第2の作業船の動揺特性と、当該第2の作業船上の重機の動作を表す時系列データとを用いた機械学習により生成された学習済モデルに、海上土木作業を行っていない状態の第1の作業船の動揺特性と当該第1の作業船の仕様を表す情報とを入力することにより、第1の作業船上の重機を操作するための操作指示情報を生成する生成部(113)を備える。
【選択図】
図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
海上土木作業を行う重機を載置した第1の作業船の動揺を計測する前記第1の作業船の所定の位置に取り付けられた計測装置が計測した、当該第1の作業船が前記海上土木作業を行っていない状態における当該第1の作業船の動揺を表す時系列データを取得する取得部と、
前記時系列データを解析し、前記第1の作業船の動揺特性を算出する算出部と、
(i)重機を載置した第2の作業船の仕様を表す情報及び海上土木作業を行っていない状態における当該第2の作業船に取り付けられた計測装置が計測した前記第2の作業船の動揺を表す時系列データに基づき分析した前記第2の作業船の作業していないときの動揺特性と、
(ii)前記第2の作業船上の重機が海上土木作業の動作を行っているときの当該重機の動作を表すオペレータの操作の時系列データと、
を用いて前記第2の作業船上の重機による海上土木作業中の前記第2の作業船に生ずる動揺における外力による動揺と前記オペレータの操作による前記重機がもたらす動揺とが合わさった合計動揺と、当該第2の作業船上の重機に対してなされた操作内容との相関関係を機械学習させることにより生成された学習済モデルと、
前記学習済モデルに前記算出部が算出した海上土木作業を行っていない状態の前記第1の作業船の動揺特性と前記第1の作業船の仕様を表す情報とを入力することにより、前記第1の作業船上の重機を操作するための操作指示情報を生成する生成部と、
を備えることを特徴とする情報出力装置。
【請求項2】
前記操作内容を表す情報は、前記第2の作業船に対してなされた操作指示情報と時刻との関係を定式化した関数に含まれるパラメータを含む、
請求項1に記載の情報出力装置。
【請求項3】
前記動揺特性は、作業船の動揺振幅、動揺周期、及び位相差、の少なくともひとつを含む、
請求項1又は2に記載の情報出力装置。
【請求項4】
前記学習済モデルは、作業船の仕様に関する情報及び、作業船の動揺特性を入力とし、作業船上の重機に対する操作指示情報と時刻との関係を表す関数に含まれるパラメータを出力とする学習済モデルであり、
前記生成部は、前記算出部が算出した動揺特性と前記第1の作業船の仕様に関する情報とを前記学習済モデルに入力して得られるパラメータを用いて、前記操作指示情報を生成する、
請求項1又は2に記載の情報出力装置。
【請求項5】
前記学習済モデルに、さらに前記第2の作業船の動揺を表す時系列データと、前記第2の作業船上の重機による動作とを入力データとし、
前記生成部は、熟練オペレータによる前記動揺の数値に応じた前記第2の作業船上の重機への操作指示情報を出力データとする教師データを用いて機械学習させることにより生成された学習済モデルを用いて前記操作指示情報を生成する
請求項4に記載の情報出力装置。
【請求項6】
前記学習済モデルによる新たな作業船上の重機に対し前記生成部が生成した操作指示情報と、
前記新たな作業船上の重機に対する熟練オペレータの操作指示情報と、
を比較し、
前記熟練オペレータによる前記新たな作業船上の重機への操作指示情報と、
前記生成部が前記新たな作業船上の重機に対し生成した操作指示情報との相違量が閾値以内となる情報だけを再学習用の教師データとして用いて前記学習済モデルに再学習を行った再学習モデルを用いて、前記生成部が前記操作指示情報を生成する、
請求項5に記載の情報出力装置。
【請求項7】
前記操作指示情報は、重機の動作である吊持されたバケット又は重錘の昇降、前記バケットの開閉、及び前記重錘又は前記バケットを吊持する重機であるクレーンの旋回に対する速度、タイミング、角度及びブームの起伏角度を制御する情報、の少なくともいずれかひとつを含む、
請求項4に記載の情報出力装置。
【請求項8】
オペレータに代えて、前記生成部が生成した操作指示情報を用いて前記第1の作業船上の重機に海上土木作業を行わせる作業制御部、
を更に備える請求項1に記載の情報出力装置。
【請求項9】
海上土木作業を行う重機を載置した作業船の動揺を計測する前記作業船の所定の位置に取り付けられた計測装置が計測した、当該作業船が前記海上土木作業を行っていない状態における当該作業船の動揺を表す時系列データを取得する取得部と、
前記時系列データを解析し、前記作業船の動揺特性を算出する算出部と、
(i)前記作業船の仕様を表す情報及び前記算出部が算出した動揺特性と、(ii)当該作業船上の重機に対してなされた操作内容を表す情報と、の相関関係を機械学習させた学習済モデルを生成する生成部と、
を備えることを特徴とする学習済モデル生成装置。
【請求項10】
請求項1に記載の情報出力装置としてコンピュータを機能させるためのプログラムであって、前記取得部、前記算出部及び前記生成部としてコンピュータを機能させるためのプログラム。
【請求項11】
請求項9に記載の学習済モデル生成装置としてコンピュータを機能させるためのプログラムであって、前記取得部、前記算出部及び前記生成部としてコンピュータを機能させるためのプログラム。
【請求項12】
(i)海上土木作業を行う重機を載置した作業船の動揺を計測する前記作業船の所定の位置に取り付けられた計測装置が計測した、当該作業船が前記海上土木作業を行っていない状態における当該作業船の動揺を表す時系列データを解析して得られる当該作業船の動揺特性と、(ii)当該作業船上の重機に対してなされた操作内容を表す情報と、の相関関係を機械学習させることにより生成された学習済モデル。
【請求項13】
海上土木作業を行う重機を載置した第1の作業船の動揺を計測する前記第1の作業船の所定の位置に取り付けられた計測装置が計測した、当該第1の作業船が前記海上土木作業を行っていない状態における当該第1の作業船の動揺を表す時系列データを取得する第1ステップと、
前記時系列データを解析し、前記第1の作業船の動揺特性を算出する第2ステップと、
(i)重機を載置した第2の作業船の仕様を表す情報及び海上土木作業を行っていない状態における当該第2の作業船に取り付けられた計測装置が計測した前記第2の作業船の動揺を表す時系列データに基づき分析した前記第2の作業船の作業していないときの動揺特性と、
(ii)前記第2の作業船上の重機が海上土木作業の動作を行っているときの当該重機の動作を表すオペレータの操作の時系列データと、
を用いて前記第2の作業船上の重機による海上土木作業中の前記第2の作業船に生ずる動揺における外力による動揺と前記オペレータの操作による前記重機がもたらす動揺とが合わさった合計動揺と、当該第2の作業船上の重機に対してなされた操作内容との相関関係を機械学習させることにより生成された学習済モデルに、
前記第2ステップにおいて算出された海上土木作業を行っていない状態の前記第1の作業船の動揺特性と前記第1の作業船の仕様を表す情報とを入力することにより、前記第1の作業船上の重機を操作するための操作指示情報を生成する第3ステップと、
を情報出力装置が実行する操作指示情報生成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業船上の重機により海上土木作業を行うための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、土木作業の効率化、省力化を図るために建設機械(以降、重機ともいう。)の自動・自律化が進んでおり、海上工事においても作業船上の重機による自動・自律化も求められているが、海上工事における作業船上の重機の自動化は陸上で用いる重機の自動化と比較して難易度が高い。その主要因は、対象とする重機が作業船上に固定されていることで作業船上の重機を操作する際に付随して受ける波や風などによる作業船の動揺がある。作業船上の重機は、作業を停止していたとしても作業船に生ずる動揺によりクレーン等のブーム先端にワイヤー経由で吊持される浚渫用バケットや重錘が動揺するため、クレーン等の重機を作業船上で稼働させる際には作業船の動揺を考慮した操作が必要である。
【0003】
そのため、海上工事における作業船上の重機の稼働時には作業船の動揺を考慮した制御を行うことが提案されている。例えば特許文献1には、作業船の現時点から先の動揺を予測し、予測結果に基づき吊り荷を介して昇降させるウインチの回転速度を制御することにより、作業船が波浪により動揺しても、吊荷の動揺を抑制して作業効率を向上させることができる装置が記載されている。また、特許文献2には、風や波等による船体の揺れを加味した振れ止め制御を行うために、作業船の揺れを検出し、検出した揺れに基づきトロリに加える加速度パターンを補正し、補正後の加速度パターンに従ってトロリを自動運転することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2021-91529号公報
【特許文献2】特開平10-329787号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、作業船に生ずる動揺には、波や風などの外力に起因する動揺だけではなく、作業船上に設置した重機による作業、例えばクレーンの旋回等の作業に起因する動揺も含まれる。これらの両方が組み合わさった動揺を考慮して作業船上の重機を操作する必要があるが、そのような操作は困難であり、特に経験の浅い者が適切に操作することは困難である。また、特許文献1に記載の技術は、過去の動揺波形の計測データを用いて現時点から先の動揺波形を予測するが、重機を用いた海上工事の作業状況が異なると作業起因の動揺の態様は異なるため、異なる作業を行う場合の作業船に生ずる動揺を過去の計測データから適切に予測することはできない。また、特許文献2に記載の技術でも、作業起因の動揺については考慮されていないため、作業起因の動揺の影響を考慮した補正を行うことはできない。
【0006】
本発明の一態様は、上記問題点に鑑みたものである。本発明の一態様は、海上土木作業のための作業船上の重機への操作指示情報において、当該重機の動作により作業船に与える動揺と、波、風などの外力により作業船に生ずる動揺との影響を考慮した操作指示情報を生成できる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る情報出力装置は、海上土木作業を行う重機を載置した第1の作業船の動揺を計測する前記第1の作業船の所定の位置に取り付けられた計測装置が計測した、当該第1の作業船が前記海上土木作業を行っていない状態における当該第1の作業船の動揺を表す時系列データを取得する取得部と、前記時系列データを解析し、前記第1の作業船の動揺特性を算出する算出部と、(i)重機を載置した第2の作業船の仕様を表す情報及び海上土木作業を行っていない状態における当該第2の作業船に取り付けられた計測装置が計測した前記第2の作業船の動揺を表す時系列データに基づき分析した前記第2の作業船の作業していないときの動揺特性と、(ii)前記第2の作業船上の重機が海上土木作業の動作を行っているときの当該重機の動作を表すオペレータの操作の時系列データと、を用いて前記第2の作業船上の重機による海上土木作業中の前記第2の作業船に生ずる動揺における外力による動揺と前記オペレータの操作による前記重機がもたらす動揺とが合わさった合計動揺と、当該第2の作業船上の重機に対してなされた操作内容との相関関係を機械学習させることにより生成された学習済モデルと、前記学習済モデルに前記算出部が算出した海上土木作業を行っていない状態の前記第1の作業船の動揺特性と前記第1の作業船の仕様を表す情報とを入力することにより、前記第1の作業船上の重機を操作するための操作指示情報を生成する生成部と、を備える。
【0008】
上記の構成によれば、海上土木作業のための作業船上の重機への操作指示情報において、当該重機の動作により作業船に与える動揺と、波、風などの外力により作業船に生ずる動揺との影響を考慮した操作指示情報を生成することができる。
【0009】
上記情報出力装置において、前記操作内容を表す情報は、前記第2の作業船に対してなされた操作指示情報と時刻との関係を定式化した関数に含まれるパラメータを含んでもよい。
【0010】
上記の構成によれば、作業船の外力による動揺と関数に含まれるパラメータとの相関関係を機械学習させた学習済モデルを用いることにより特定される関数を用いて、作業船に生ずる動揺の影響を考慮した操作指示情報を生成できる。
【0011】
上記情報出力装置において、前記動揺特性は、作業船の動揺振幅、動揺周期、及び位相差、の少なくともひとつを含んでもよい。上記の構成によれば、重機の動作により作業船に与える動揺の影響と外力により作業船に生ずる動揺の影響とを考慮した操作指示情報を生成することができる。
【0012】
上記情報出力装置において、前記学習済モデルは、作業船の仕様に関する情報及び、作業船の動揺特性を入力とし、作業船上の重機に対する操作指示情報と時刻との関係を表す関数に含まれるパラメータを出力とする学習済モデルであり、前記生成部は、前記算出部が算出した動揺特性と前記第1の作業船の仕様に関する情報とを前記学習済モデルに入力して得られるパラメータを用いて、前記操作指示情報を生成してもよい。
【0013】
上記の構成によれば、学習済モデルから出力されるパラメータを用いて操作指示情報を生成することができる。
【0014】
上記情報出力装置において、前記学習済モデルに、さらに前記第2の作業船の動揺を表す時系列データと、前記第2の作業船上の重機による動作とを入力データとし、前記生成部は、熟練オペレータによる前記動揺の数値に応じた前記第2の作業船上の重機への操作指示情報を出力データとする教師データを用いて機械学習させることにより生成された学習済モデルを用いて前記操作指示情報を生成してもよい。
【0015】
上記の構成によれば、経験が長く、習熟度の高いオペレータである熟練オペレータによる作業船上の重機による実際の動作を示すデータを含む教師データを用いて機械学習させた学習済モデルにより操作指示情報を生成することにより、作業船上の重機が行う海上土木作業の内容に適した操作指示情報を生成することができる。
【0016】
上記情報出力装置において、前記学習済モデルによる新たな作業船上の重機に対し前記生成部が生成した操作指示情報と、前記新たな作業船上の重機に対する熟練オペレータの操作指示情報と、を比較し、前記熟練オペレータによる前記新たな作業船上の重機への操作指示情報と、前記生成部が前記新たな作業船上の重機に対し生成した操作指示情報との相違量が閾値以内となる情報だけを再学習用の教師データとして用いて前記学習済モデルに再学習を行った再学習モデルを用いて、前記生成部が前記操作指示情報を生成してもよい。
【0017】
上記の構成によれば、熟練オペレータの操作指示情報における操作ミスによる異常値を除いた操作指示情報を用いて学習済モデルを再学習させることにより、海上土木作業を行う重機を操作するためのより適した操作指示情報を生成することができる。特に、例えば作業船毎又は現場毎に各作業船に合わせた最適な学習済モデルに更新することができる。
【0018】
上記情報出力装置において、前記操作指示情報は、重機の動作である吊持されたバケット又は重錘の昇降、前記バケットの開閉、及び前記重錘又は前記バケットを吊持する重機であるクレーンの旋回に対する速度、タイミング、及び角度及びブームの起伏角度を制御する情報、の少なくともいずれかひとつを含んでもよい。
【0019】
上記の構成によれば、海上土木作業を行う重機のバケット、重錘、及び/又はクレーンを制御する操作指示情報を生成することができる。
【0020】
上記情報出力装置において、オペレータに代えて、前記生成部が生成した操作指示情報を用いて前記第1の作業船上の重機に海上土木作業を行わせる作業制御部、を更に備えてもよい。上記の構成によれば、作業船上の重機をオペレータが操作することなく、作業船上の重機に海上土木作業を行わせることができる。
【0021】
また、本発明に係る学習済モデル生成装置は、海上土木作業を行う重機を載置した作業船の動揺を計測する前記作業船の所定の位置に取り付けられた計測装置が計測した、当該作業船が前記海上土木作業を行っていない状態における当該作業船の動揺を表す時系列データを取得する取得部と、前記時系列データを解析し、前記作業船の動揺特性を算出する算出部と、(i)前記作業船の仕様を表す情報及び前記算出部が算出した動揺特性と、(ii)当該作業船上の重機に対してなされた操作内容を表す情報と、の相関関係を機械学習させた学習済モデルを生成する生成部と、を備える。
【0022】
上記の構成により生成される学習済モデルを用いることにより、海上土木作業のための作業船上の重機への操作指示情報において、当該重機の動作により作業船に与える動揺と、波、風などの外力により作業船に生ずる動揺との影響を考慮した操作指示情報を生成することができる。
【0023】
また、本発明に係るプログラムは、前記情報出力装置としてコンピュータを機能させるためのプログラムであって、前記取得部、前記算出部及び前記生成部としてコンピュータを機能させるためのプログラムである。
【0024】
上記の構成によれば、海上土木作業のための作業船上の重機への操作指示情報において、当該重機の動作により作業船に与える動揺と、波、風などの外力により作業船に生ずる動揺との影響を考慮した操作指示情報を生成することができる。
【0025】
また、本発明に係るプログラムは、上記学習済モデル生成装置としてコンピュータを機能させるためのプログラムであって、前記取得部、前記算出部及び前記生成部としてコンピュータを機能させるためのプログラムである。
【0026】
上記の構成により生成される学習済モデルを用いることにより、海上土木作業のための作業船上の重機への操作指示情報において、当該重機の動作により作業船に与える動揺と、波、風などの外力により作業船に生ずる動揺との影響を考慮した操作指示情報を生成することができる。
【0027】
また、本発明に係る学習済モデルは、(i)海上土木作業を行う重機を載置した作業船の動揺を計測する前記作業船の所定の位置に取り付けられた計測装置が計測した、当該作業船が前記海上土木作業を行っていない状態における当該作業船の動揺を表す時系列データを解析して得られる当該作業船の動揺特性と、(ii)当該作業船上の重機に対してなされた操作内容を表す情報と、の相関関係を機械学習させることにより生成された学習済モデルである。
【0028】
上記の構成に係る学習済モデルを用いることにより、海上土木作業のための作業船上の重機への操作指示情報において、当該重機の動作により作業船に与える動揺と、波、風などの外力により作業船に生ずる動揺との影響を考慮した操作指示情報を生成することができる。
【0029】
また、本発明に係る操作指示情報生成方法は、海上土木作業を行う重機を載置した第1の作業船の動揺を計測する前記第1の作業船の所定の位置に取り付けられた計測装置が計測した、当該第1の作業船が前記海上土木作業を行っていない状態における当該第1の作業船の動揺を表す時系列データを取得する第1ステップと、前記時系列データを解析し、前記第1の作業船の動揺特性を算出する第2ステップと、(i)重機を載置した第2の作業船の仕様を表す情報及び海上土木作業を行っていない状態における当該第2の作業船に取り付けられた計測装置が計測した前記第2の作業船の動揺を表す時系列データに基づき分析した前記第2の作業船の作業していないときの動揺特性と、(ii)前記第2の作業船上の重機が海上土木作業の動作を行っているときの当該重機の動作を表すオペレータの操作の時系列データと、を用いて前記第2の作業船上の重機による海上土木作業中の前記第2の作業船に生ずる動揺における外力による動揺と前記オペレータの操作による前記重機がもたらす動揺とが合わさった合計動揺と、当該第2の作業船上の重機に対してなされた操作内容との相関関係を機械学習させることにより生成された学習済モデルに、前記第2ステップにおいて算出された海上土木作業を行っていない状態の前記第1の作業船の動揺特性と前記第1の作業船の仕様を表す情報とを入力することにより、前記第1の作業船上の重機を操作するための操作指示情報を生成する第3ステップと、を情報出力装置が実行する。
【0030】
上記の構成によれば、海上土木作業のための作業船上の重機への操作指示情報において、当該重機の動作により作業船に与える動揺と、波、風などの外力により作業船に生ずる動揺との影響を考慮した操作指示情報を生成することができる。
【0031】
本発明の各態様に係る情報出力装置は、コンピュータによって実現してもよく、この場合には、コンピュータを前記情報出力装置が備える各部(ソフトウェア要素)として動作させることにより前記情報出力装置をコンピュータにて実現させる情報出力装置の制御プログラム、およびそれを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体も、本発明の範疇に入る。
【0032】
また、本発明の各態様に係る学習済モデル生成装置は、コンピュータによって実現してもよく、この場合には、コンピュータを前記学習済モデル生成装置が備える各部(ソフトウェア要素)として動作させることにより前記学習済モデル生成装置をコンピュータにて実現させる学習済モデル生成装置の制御プログラム、およびそれを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体も、本発明の範疇に入る。
【発明の効果】
【0033】
本発明の一態様によれば、海上土木作業のための作業船上の重機への操作指示情報において、当該重機の動作により作業船に与える動揺と、波、風などの外力により作業船に生ずる動揺との影響を考慮した操作指示情報を生成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【
図1】実施形態1に係る浚渫作業を行う重機の一例を示す図である。
【
図2】実施形態1に係る捨石マウンドの重錘締固め作業を行う重機の一例を示す図である。
【
図3】作業船の動揺を分解した結果の一例を示す図である。
【
図4】作業船の動揺を分解した結果の一例を示す図である。
【
図5】オペレータの操作内容を表す時系列データの一例を示す図である。
【
図6】オペレータの操作内容を表す時系列データの一例を示す図である。
【
図7】オペレータの操作内容を近似した関数の具体例を示す図である。
【
図8】情報出力装置10が行う処理の概要を説明するための図である。
【
図9】実施形態1に係る情報出力装置の機能構成を示すブロック図である。
【
図10】実施形態1に係る浚渫作業の流れの一例を示す図である。
【
図11】実施形態1に係る捨石マウンドの重錘締固め作業の流れの一例を示す図である。
【
図12】浚渫作業におけるバケットの高さの時間的な変化の一例を示す図である。
【
図13】浚渫作業におけるクレーンの旋回角度の時間的な変化の一例を示す図である。
【
図14】浚渫作業におけるバケットの開口度の時間的な変化の一例を示す図である。
【
図15】浚渫作業におけるクレーンの起伏角度の時間的な変化の一例を示す図である。
【
図16】捨石マウンドの重錘締固め作業における重錘の高さの時間的な変化の一例を示す図である。
【
図17】実施形態1に係る操作指示情報生成方法の流れの一例を示すフロー図である。
【
図18】実施形態1に係る学習済モデル生成方法の流れの一例を示すフロー図である
【
図19】実施形態2に係る情報出力装置の機能構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
〔実施形態1〕
<1.本実施形態の概要>
(1-1.海上土木作業の概要)
本実施形態に係る情報出力装置は、海上土木作業を行う作業船上の重機を自律動作させるための操作指示情報を生成する。作業船上の重機は一例として、均し、捨て石、浚渫作業等の土木作業を行う重機である。操作指示情報は、土木作業において重錘、バケット、クラムシェル等の作業用器具を稼動させるための情報である。作業船は、一例として起重機船であり、例えば、台船の甲板上にクレーンを備えるとともに、クレーンのジブの先端より繰り出された一対の吊りワイヤーに吊り持ちされた以下の(1)~(3)の何れかの装置を具備する。
(1)重錘体を用いて水底マウンドの天端面及び法面を整形する装置
(2)バケットやクラムシェルを用いて水底の土砂を浚渫する装置
(3)バケットやクラムシェルを用いて船倉内の砕石を水底に投入する装置
【0036】
ここで、作業船上の重機の具体例について
図1及び
図2を用いて説明する。
図1は、浚渫作業を行う重機の一例を示す図である。
図1において、水面Sに停泊した起重機船W1は、グラブ浚渫を行う重機を備える作業船であり、起重機船W1上の重機であるクレーンC12は、浚渫用のバケットB11及びバケットB11を昇降させるウインチを備えるクレーンである。クレーンC12は、台船上に旋回可能に設置された旋回部と、旋回部に回動可能に支持されたジブとを備え、ジブの先端より繰り出された吊りワイヤーの先端部にバケットB11が吊り持ちされている。クレーンC12のオペレータは、バケットの高さ(図中のZ軸方向の位置)、クレーンの旋回角度、バケットの開口度、等を調整しながら浚渫作業を行う。
【0037】
図2は、捨石マウンドの重錘締固め作業を行う重機の一例を示す図である。
図2において、水面Sに停泊した起重機船W2上の重機は、重錘B21及び重錘B21を昇降させるクレーンC22を備える。クレーンC22は、台船上に旋回可能に設置された旋回部と、旋回部に回動可能に支持されたジブとを備え、ジブの先端より繰り出された吊りワイヤーの先端部に重錘B21が吊り持ちされている。捨石マウンドの重錘締固め作業においては、起重機船W2のジブ先端より繰り出された一対の吊りワイヤーに支持された重錘B21の下面を吊りワイヤーを繰り出して水底マウンドの上面に向けて降下させてマウンドの天端面を均している。クレーンC22のオペレータは、重錘B21の高さ(図中のZ軸方向における位置)、クレーンC22の旋回角度、等を調整しながら捨石マウンドの重錘締固め作業を行う。
【0038】
(1-2.作業船の動揺についての説明)
本実施形態に係る情報出力装置は、オペレータが重機を操作することなく、重機を自律動作させるための操作指示情報を生成する。このとき、情報出力装置は、作業船の動揺の影響を考慮した操作指示情報を作成する。ここで、作業船の動揺について図面を参照しつつ説明する。作業船の動揺は、波、風、潮流などの外力に起因する動揺と、バケットの旋回などの作業に起因する動揺に大別される。以下では、外力に起因する動揺を「外力起因の動揺」ともいう。また、作業に起因する動揺を「作業起因の動揺」ともいう。
【0039】
外力起因の動揺は船舶の動揺特性である固有周期付近にピークを持つ動揺となるのに対し、作業起因の動揺はバケット若しくは重錘の昇降、バケットの開閉、重錘又はバケットを吊持する重機であるクレーンの旋回速度、旋回のタイミング、旋回角度、ブームの起伏角度などに依存し、船舶の動揺特性固有周期とは異なる動揺周期が発生する。つまり、船舶の動揺データを取得し、周波数スペクトル解析を実施すれば作業起因の動揺と外力起因の動揺とは分離が可能である。
【0040】
図3及び
図4は、作業船の動揺をスペクトル解析により外力起因の動揺と作業起因の動揺とに分解した結果の一例を示す図である。作業船の動揺としては、左右揺れ、前後揺れ、上下揺れがあるが、
図3及び
図4の例では、左右揺れ又は前後揺れについて計測している。
図3及び
図4において、横軸は経過時間(秒)を示し、縦軸は動揺角度(°)を示す。
図3は、外力起因の動揺が大きい場合の動揺波形であり、
図4は外力起因の動揺が小さい場合の動揺波形である。
【0041】
図3において、波形w11は外力起因の動揺を表す波形であり、波形w12は作業起因の動揺を表す波形である。波形w13は分解前の動揺を表す波形、すなわち波形w11と波形w12との合成により得られる波形である。換言すると、波形w13は外力起因の動揺と作業起因の動揺とが合わさった動揺を表す波形である。
【0042】
また、
図4において、波形w21は外力起因の動揺を表す波形であり、波形w22は作業起因の動揺を表す波形である。波形w23は分解前の動揺を表す波形、すなわち波形w21と波形w22とを合成した波形である。換言すると、波形w23は外力起因の動揺と作業起因の動揺とが合わさった動揺を表す波形である。
【0043】
図3の例では、外力起因の動揺である波形w11が周期的に発生しているとともに、t=60~90において作業起因の動揺である波形w12が1回発生している。すなわち、波、風等の外力により周期的な同様が発生している期間において、作業船上の重機がクレーンの旋回等の作業を行ったことにより、作業起因の動揺が発生している。一方、
図4の例では、外力起因の動揺である波形w21がほとんど発生していないのに対し、作業起因の動揺である波形w22がt=60~90において1回発生している。すなわち、t=60~90の間で作業船上の重機がクレーンの旋回等の作業を行ったことにより、作業起因の動揺が発生している。
【0044】
図5は、作業船の動揺が
図4に示す波形である場合、すなわち外力起因の動揺が小さい状態におけるオペレータの操作内容を表す時系列データの一例を示す図である。
図5において、折れ線w24は、オペレータの操作内容の時系列データを表す。折れ線w24は、オペレータが右旋回操作を行った後、左旋回操作を行った場合の操作内容を表す。折れ線w24を近似した関数を、以下では「基準動作関数」ともいう。
【0045】
一方、
図6は、作業船の動揺が
図3に示す波形である場合、すなわち外力起因の動揺が大きい状態のオペレータの操作内容を表す時系列データの一例を示す図である。
図6において、折れ線w14は、オペレータの操作内容の時系列データを表す。
図6の例でも、
図5の例と同様に、オペレータが右旋回操作を行った後、左旋回操作を行っている。しかしながら、
図6の例では、時刻60~80において発生した外力の影響を加味し、オペレータは右旋回操作における旋回角度(図上方向)を
図5の例よりも小さくしている。
【0046】
図5及び
図6に示されるように、オペレータは作業船の動揺を考慮して重機の操作を行う。すなわち、オペレータは作業船に発生する外力起因の動揺と作業起因の動揺との両方を考慮した操作を行っている。上述の基準動作関数と
図6の折れ線w14との差分は、外力起因の動揺を考慮した熟練オペレータ(重機の操作の経験が長く、習熟度の高いオペレータ)の補正動作である。ここで、折れ線w24の操作指示情報が計測された土木作業とグラフw14の操作指示情報が計測された土木作業とは、必ずしも同じ場所である必要はなく、同様の作業であればよい。グラブ浚渫船ではほぼ同じような作業の繰り返しであるため、地点が違っても近い動作が計測される。
【0047】
本実施形態では、クレーンの旋回角の時間変化の関数近似を、一例として、
θ=a/[1+b*exp(t-t
0)]
と表現する。ここで、θは旋回角、tは経過時間、aは最大旋回角度、bは旋回速度に係るパラメータ、t
0は旋回作業の開始時間に係るパラメータ(動揺挙動との位相のずれ)である。
図7は、オペレータの操作内容を近似した関数の具体例を示す図である。
図7において、関数211は、外力起因の動揺が小さい場合における近似関数である。一方、関数212は、外力起因の動揺が大きい場合における近似関数である。
図7の関数211のパラメータは、一例として、a=120、b=0.8、t
0=50(s)である。関数211の場合は、迅速操作が可能である。一方、関数212のパラメータは、一例として、a=120、b=0.5、t
0=55(s)である。関数212の場合は、緩速操作が行われる。また、作業船に作用する波による動揺が大きい場合、波の周期を考慮して、旋回開始時間が調整される。
【0048】
作業船に生じる外力起因の動揺はその時々の状況により様々であり、また、作業起因の動揺は作業内容によって様々である。本実施形態に係る情報出力装置は、外力起因の動揺と作業起因の動揺との両方を考慮した操作指示情報を生成する。情報出力装置の構成及び動作について以下に説明する。
【0049】
<2.情報出力装置>
(2-1.情報出力装置の概要)
図8は、本実施形態に係る情報出力装置10が行う処理の概要を説明するための図である。情報出力装置10は、制御部11と記憶部12を備え、制御部11は推定フェーズ実行部110と学習フェーズ実行部150とを備える。推定フェーズ実行部110は、海上土木作業を行う重機を自律動作させるための操作指示情報を生成する。また、学習フェーズ実行部150は、上記操作指示情報の生成に用いる学習済モデルLM1を、過去に実際に行われた海上土木作業におけるオペレータの操作指示情報を含む訓練データを用いた機械学習により構築する。なお、訓練データは熟練オペレータの操作指示情報が望ましい。以下では、説明の便宜上、推定フェーズにおいて自律動作させる(すなわち制御の対象である)重機を搭載した1又は複数の作業船を「第1の作業船」という。また、訓練データに含まれる各種データの測定に用いられた同種の重機を搭載した1又は複数の作業船を「第2の作業船」という。第1の作業船と第2の作業船とは同じ作業船であってもよく、異なる作業船であってもよい。すなわち、訓練データに含まれる各種データの測定に用いられた同種の重機を搭載した作業船が、自律動作させる(制御の対象である)重機を搭載した作業船であってもよい。また、第1の作業船及び第2の作業船はそれぞれ、一隻の作業船であってもよく、複数の作業船を含んでいてもよい。すなわち、複数の作業船に搭載した重機のそれぞれについて測定された各種データを含む訓練データが学習済モデルLM1の学習に用いられてもよい。
【0050】
上述したように、作業船の動揺は作業起因の動揺と外力起因の動揺とに大別される。外力起因の動揺は、海上土木作業の作業環境(波、風、潮)により様々である。一方、作業起因の動揺は同じ作業であればほぼ同じ動揺であると考えられる。そのため、本実施形態では、海上土木作業を行う重機を備える作業船の動揺のうち外力起因の動揺に注視し、(a)外力起因の動揺と(b)オペレータの操作内容とを事前学習させた学習済モデルLM1を用いて、作業船上の重機を自律動作させるための操作指示情報を生成する。
【0051】
本実施形態に係る情報出力装置10は主に、
図8に記載のデータ収集処理T1、事前学習処理T2、パラメータ決定処理T3、及び操作指示情報の生成処理T4(図示略)を実行する。データ収集処理T1では、情報出力装置10は海上土木作業を行った第2の作業船上の重機に対しオペレータが行った操作内容を示す操作データと、そのときの動揺を示す動揺データとを収集する。事前学習処理T2では、情報出力装置10は外力起因の動揺とオペレータの操作内容を表す関数のパラメータとの相関関係を機械学習させて学習済モデルLM1を生成する。パラメータ決定処理T3では、情報出力装置10は制御対象である第1の作業船に生じる外力起因の動揺を学習済モデルLM1に入力することにより、操作指示情報の生成に用いる関数のパラメータを決定する。操作情報の生成処理T4では、情報出力装置10は、決定したパラメータにより定まる関数を用いて、第1の作業船上の重機を操作するための操作指示情報を生成する。
【0052】
(2-2.情報出力装置の構成)
図9は、本実施形態に係る情報出力装置10の機能構成を示すブロック図である。情報出力装置10は、本明細書に係る情報出力装置の一例及び学習済モデル生成装置の一例である。情報出力装置10は、制御部11、記憶部12、通信IF13、及び入出力IF14を備える。制御部11は、推定フェーズ実行部110、及び学習フェーズ実行部150を備える。推定フェーズ実行部110は、第1取得部111、第1算出部112、生成部113、及び出力部114を備える。また、学習フェーズ実行部150は、第2取得部151、訓練データ算出部153、第2算出部152、及びモデル生成部154を備える。
【0053】
(2-2-1.推定フェーズに係る構成)
推定フェーズ実行部110は、第1の作業船上の重機を自律動作させるための操作指示情報を生成する。第1取得部111は、第1の作業船上の重機が海上土木作業を行っていない状態において計測装置20が計測した第1の作業船の動揺を表す時系列データを取得する。ここで、第1の作業船上の重機が海上土木作業を行っていない状態とは、一例として重機が海上土木作業を開始する直前の状態や昼食時の休憩中の状態などである。
【0054】
計測装置20は、第1の作業船の所定の位置に取り付けられ、第1の作業船の動揺を計測する装置である。計測装置20が取り付けられる位置は、例えば第1の作業船の船体の船尾、船首、又は中央部であってもよい。計測装置20は一例として、少なくとも横揺れ(Roll)及び縦揺れ(Pitch)の2軸を計測できる傾斜計を有する。計測装置20は通信IF13に無線又は有線で接続されており、第1取得部111は、通信IF13を介して計測装置20から時系列データを取得する。ただし、第1取得部111は、入出力IF14に接続された計測装置から時系列データを取得してもよい。
【0055】
第1算出部112は、第1取得部111が取得した時系列データを解析し、第1の作業船の動揺特性を算出する。ここで、動揺特性は、一例として第1の作業船の動揺振幅、動揺周期、及び位相差の少なくともひとつを含む。
【0056】
生成部113は、学習済モデルLM1に、第1算出部112が算出した動揺特性と第1の作業船の仕様を表す情報とを学習済モデルLM1に入力して得られる情報に基づき、第1の作業船上の重機を操作するための操作指示情報を生成する。換言すると、生成部113は、第1算出部112が算出した海上土木作業を行っていない状態の第1の作業船の動揺特性と第1の作業船の仕様を表す情報とを学習済モデルLM1に入力することにより、第1の作業船上の重機を操作するための操作指示情報を生成する。生成部113が行う操作指示情報の生成処理、及び学習済モデルLM1については後述する。
【0057】
操作指示情報は一例として、重機の動作である吊持されたバケット又は重錘の昇降、バケットの開閉、重錘又はバケットを吊持する重機であるクレーンの旋回に対する速度、タイミング、角度、及びブームの起伏角度を制御する情報の少なくともいずれかひとつを含む。また、作業船の仕様を表す情報は例えば、作業船の大きさ、重さ、形状、船種等を表す情報である。
【0058】
出力部114は、生成部113が生成した操作指示情報を出力する。出力部114は、一例として、入出力IF14に接続された出力装置、例えばディスプレイ(図示せず)や携帯式端末等に操作指示情報を出力する。また、出力部114は、通信IF13に接続された他の装置に操作指示情報を出力してもよく、また、記憶部12の所定の記憶領域に操作指示情報を書き込むことにより出力してもよい。
【0059】
また、出力部114は、生成部113が生成した操作指示情報をクレーン及びバケットの動作を制御するクレーンの制御装置に出力することにより、クレーンの旋回並びにバケットの昇降及び開閉等を制御してもよい。換言すると、出力部114は一例として、オペレータに代えて、生成部113が生成した操作指示情報を用いて第1の作業船上の重機に海上土木作業を行わせる。出力部114は、本明細書に係る作業制御部の一例である。
【0060】
(2-2-2.学習フェーズに係る構成)
次いで、学習フェーズに係る学習フェーズ実行部150の構成について説明する。学習フェーズ実行部150は、過去に実際に行われた土木作業において収集されたデータから訓練データTDを生成するとともに、訓練データTDを用いた機械学習により学習済モデルLM1を生成する。
【0061】
第2取得部151は、第2の作業船が海上土木作業を行っていない状態における第2の作業船の所定の位置に取り付けられた計測装置(以下「第2の計測装置20-2」という)が過去に計測した第2の作業船の動揺を表す時系列データを取得する。ここで、第2の作業船が海上土木作業を行っていない状態とは、一例として第2の作業船上の重機が海上土木作業を開始する直前の状態や昼食時の休憩中の状態などである。
【0062】
また、第2取得部151は、第2の作業船の重機が過去に海上土木作業を実際に行った際のオペレータの操作内容を表す時系列データを取得する。過去に第2の計測装置20-2が計測した第2の作業船の動揺を表す時系列データと、オペレータの操作内容を表す時系列データとは、作業ログWLとして記憶部12に記録されている。第2取得部151は記憶部12から作業ログWLを読み出すことによりこれらの時系列データを取得する。なお、第2取得部151は、入出力IF14に接続された入力装置が入力したデータを取得してもよく、また、通信IF13を介して接続された他の装置が送信したデータを受信してもよい。入出力IF14には、コンピュータ読み取り可能な記録媒体である入力デバイス及び/又は出力デバイスが接続されてもよく、入出力デバイスとしては、例えばUSBやCD-ROM(Compact Disc ROM)などの光ディスクや磁気ディスク等が挙げられる。入力装置は、オペレータにより操作される装置であり、例えば、タッチパネル、キーボード、マウス、スキャナ、及び/又はマイクロフォンを含む。
【0063】
また、第2取得部151は、第2の作業船の仕様を表す情報を取得する。第2の作業船の仕様を表す情報は、作業ログWLとして記憶部12に記録されており、第2取得部151は記憶部12から第2の作業船の仕様を表す情報を取得する。なお、第2取得部151は、入出力IF14に接続された入力装置が入力した情報や入出力IF14に接続された入出力デバイスに記録された情報を取得してもよく、また、通信IF13を介して接続された他の装置が送信した情報を受信してもよい。
【0064】
訓練データ算出部153は、第2の作業船の仕様を示す情報及び第2算出部152が算出した第2の作業船の動揺特性と、訓練データ算出部153が決定したパラメータPtとのセットを1又は複数含む訓練データを生成する。パラメータPtは、オペレータの過去の操作内容を表す時系列データを近似した関数に含まれるパラメータである。パラメータPtを含む関数は、一例として、シグモイド関数、tanh関数、及び指数関数のうちの少なくとも一つを含む。ただし、パラメータPtを含む関数はこれらに限られず、他の関数であってもよい。パラメータPtは、学習済モデルLM1の訓練データTDに含められる。
【0065】
第2算出部152は、第2取得部151が取得した第2の作業船の動揺を表す時系列データを解析し、第2の作業船の動揺特性を算出する。動揺特性は、一例として、第2の作業船の動揺振幅、動揺周期、及び位相差の少なくともひとつを含む。第2算出部152が算出した第2の作業船の動揺特性は訓練データTDに含められる。
【0066】
モデル生成部154は、訓練データTDを用いた機械学習により学習済モデルLM1を生成する。ここで、訓練データTDは、第2の作業船の仕様を表す情報、第2算出部152が算出した動揺特性、及び訓練データ算出部153が決定したパラメータPtを含む。パラメータPtは、第2の作業船に対してなされた操作内容を表す情報の一例である。換言すると、モデル生成部154は、第2の作業船の仕様を表す情報及び第2算出部152が算出した動揺特性と、第2の作業船に対してなされた操作内容を表す情報と、の相関関係を機械学習させた学習済モデルLM1を生成する。
【0067】
(学習済モデル)
学習済モデルLM1は、(i)第2の作業船の仕様を表す情報及び海上土木作業を行っていない状態における第2の計測装置20-2が計測した第2の作業船の動揺を表す時系列データに基づき分析した第2の作業船の作業していないときの動揺特性と、(ii)第2の作業船上の重機が海上土木作業の動作を行っているときの当該重機の動作を表すオペレータの操作の時系列データと、を用いて第2の作業船上の重機による海上土木作業中の第2の作業船に生ずる動揺における外力による動揺とオペレータの操作による重機がもたらす動揺とが合わさった合計動揺と、当該第2の作業船上の重機に対してなされた操作内容との相関関係を機械学習させることにより生成された学習済モデルである。学習済モデルLM1の機械学習の方法としては、例えば、線形回帰、非線形回帰、決定木法、サポートベクターマシン、ニューラルネットワークのいずれかが用いられる。ニューラルネットワークとしては例えば、畳み込みニューラルネットワーク、又は再帰型ニューラルネットワークの手法が用いられてもよい。ただし、学習済モデルLM1の機械学習の手法は上述した例に限られず、他の手法が用いられてもよい。
【0068】
(入力データ)
推定フェーズにおける学習済モデルLM1の入力データは一例として、第1算出部112が算出する第1の作業船の動揺特性と、第1の作業船の仕様を表す情報とを含む。ただし、入力データはこれらに限られず、他のデータを含んでいてもよい。例えば、入力データは、海上土木作業の作業環境を表す他の情報を含んでいてもよい。より具体的には、入力データは例えば、作業環境における水深、潮位、地盤条件、掘削深度、捨石マウンド高、外力条件、バケット容量、及び重錘重量の少なくとも1つを示す情報を含んでいてもよい。外力条件は、波高、周期、波向、風速、風向、などである。また、入力データは一例として、第1の作業船上の重機が行う海上土木作業の種別を示す情報を含んでもよい。
【0069】
(出力データ)
推定フェーズにおける学習済モデルLM1の出力データは一例として、第1の作業船の操作内容を表す情報を含む。操作内容を表す情報は一例として、操作指示情報の生成に用いる関数を規定するパラメータPを含む。この場合、学習済モデルLM1は、第1の作業船の仕様に関する情報及び第1の作業船の動揺特性を入力とし、第1の作業船上の重機に対する操作指示情報と時刻との関係を表す関数に含まれるパラメータPを出力とする学習済モデルLM1であると言うことができる。ただし、出力データは上述した例に限られず、他のデータを含んでいてもよい。
【0070】
(パラメータ)
パラメータPは一例として、S字型又は逆S字型の関数を規定するパラメータである。ここで、S字型又は逆S字型の関数は、例えばシグモイド関数、tanh関数及び指数関数のうちの少なくとも一つを含む関数である。また、上記関数は、例えば多項式の関数、Sin関数、Cos関数等の重ね合わせにより表現される関数であってもよい。操作指示情報の生成に用いる関数は例えば、バケット又は重錘の高さ、バケットの開口度、及びクレーンの旋回角の少なくとも1つを示す情報と、時刻との関係を表す関数である。ただし、関数は上述した例に限られず、土木作業を行う作業用器具の稼動量の時間的な変化を表す他の関数であってもよい。パラメータPは、第2の作業船に対してなされた操作指示情報と時刻との関係を定式化した関数に含まれるパラメータである。パラメータPは、第2の作業船に対してなされた操作内容を表す情報の一例である。
【0071】
浚渫作業に用いられる関数のパラメータPは一例として、浚渫作業に含まれる各工程の開始時刻(各工程の開始タイミング)を示すパラメータ、バケットの移動速度に関するパラメータ等を含む。また、捨石マウンドの重錘締固め作業に用いられる関数のパラメータPは一例として、当該作業に含まれる各工程の開始時刻(各工程の開始タイミング)を示すパラメータ、重錘の移動速度に関するパラメータ等を含む。ただし、パラメータPに含まれるパラメータは上述した例に限られない。
【0072】
(訓練データ)
学習済モデルLM1の学習フェーズにおける訓練データTDは、(a)第2の作業船の仕様を表す情報、(b)第2の作業船上の重機が海上土木作業を行っていない状態において測定された第2の作業船の動揺特性、及び(c)第2の作業船に対してなされた操作内容を表す情報、のセットを1又は複数含む。ここで、(a)第2の作業船の仕様を表す情報、及び(b)第2の作業船の動揺特性は、作業ログWLに含まれる情報である。また、(b)第2の作業船の動揺特性は、第2の計測装置20-2が計測した第2の作業船の動揺を表す時系列データを用いて第2算出部152が算出する動揺特性である。
【0073】
また、(c)第2の作業船に対してなされた操作内容を表す情報は、一例として当該海上土木作業を行った第2の作業船上の重機に対してなされた操作内容と時刻との関係を表すS字型又は逆S字型の関数を規定するパラメータPtを含む。換言すると、パラメータPtは、過去に実際に土木作業が行われた際の重機に対する操作内容の時間的な変化を関数近似することにより得られるパラメータである。ただし、第2の作業船に対してなされた操作内容を表す情報は上述した例に限られず、他の情報であってもよい。操作内容を表す情報は例えば、操作指示情報の生成に用いる関数として予め用意された複数の関数のうちのいずれかを示す識別情報であってもよい。
【0074】
なお、訓練データTDは上述した例に限定されるものではなく、訓練データは他のデータを含んでいてもよい。訓練データは例えば、海上土木作業の作業環境を表す他の情報を含んでいてもよく、また、第2の作業船上の重機が行った海上土木作業の種別を示す情報を含んでもよい。
【0075】
また、訓練データは、一例として、第2の作業船上の重機が海上土木作業を施工しているときの当該重機への操作指示情報と当該重機の動作と、当該第2の作業船に取り付けられた第2の計測装置20-2が計測した第2の作業船の動揺を表す時系列データと、を含んでいてもよい。
【0076】
(2-3.記憶部・通信IF・入出力IF)
記憶部12は、情報出力装置10が実行する処理に必要な各種のデータを記憶する。記憶部12は特に、作業ログWL、パラメータP、訓練データTD、学習済モデルLM1を記憶する。
【0077】
作業ログWLは、過去の土木作業の履歴を示すデータであり、作業船上の重機について過去に行われた操作内容を表す時系列データを含む。パラメータPは、情報出力装置10が操作指示情報を生成する際に用いるS字型又は逆S字型の関数に含まれるパラメータである。パラメータPを含む関数は、シグモイド関数、tanh関数及び指数関数のうちの少なくとも一つを含む。訓練データTDは、学習済モデルLM1の機械学習に用いられる訓練データである。なお、学習済モデルLM1が記憶部12に記憶されているとは、学習済モデルLM1を規定するパラメータが記憶部12に記憶されていることをいう。また、学習済モデルLM1は、記憶部12以外の他の記憶装置(例えば外部サーバ、等)に記憶されていてもよい。
【0078】
通信IF13は、他のコンピュータと通信するためのインタフェースである。通信IF13には、ネットワークを介さずに他のコンピュータと通信を行うためのインタフェース、例えば、Bluetooth(登録商標)インタフェースが含まれ得る。また、通信IF13には、LAN(Local Area Network)を介して他のコンピュータと通信を行うためのインタフェース、例えば、Wi-Fi(登録商標)インタフェースが含まれ得る。入出力IF14には、入力デバイス及び/又は出力デバイスが接続される。入出力IF14としては、例えばUSBが挙げられる。
【0079】
<3.浚渫作業の流れ>
ここで、情報出力装置10が行う操作指示情報の生成処理を説明するのに先立って、作業船上の重機が行う土木作業の具体例及び操作指示情報の生成に用いる関数の具体例について説明する。ここでは、作業船上の重機が行う土木作業の具体例として、浚渫作業と、捨石マウンドの重錘締固め作業とを用いて説明する。浚渫作業では、オペレータの操作によりバケットの昇降、水平移動、開閉等が制御される。
【0080】
図10は、浚渫作業の流れの一例を示す図である。浚渫作業においては、重機のバケットを水面Sから水底に向け沈降させ、掘削し、旋回し、放土する、という一連の動作が繰り返される。
図10の例では、浚渫作業は、バケットの下降工程S1、掘削工程S2、バケットの上昇工程S3、バケットの旋回工程S4、土運船への放土工程S5及びバケットの旋回工程S6を含む。
【0081】
バケットの下降工程S1では、バケットを開口状態のまま海底に向けて沈降させる。掘削工程S2では、バケットの開口度を制御して海底面を掘削する。バケットの上昇工程S3では、バケットを閉口状態のまま水面S上に上昇させる。バケットの旋回工程S4では、バケットを閉口状態のまま旋回させる。土運船への放土工程S5では、バケットを下降させ、開口させて放土を行い、開口状態のままバケットを上昇させる。バケットの旋回工程S6では、バケットB11を開口状態のまま旋回させる。このように、グラブ浚渫作業では、バケットの下降(開口状態)、閉口、上昇(閉口状態)、旋回(閉口状態)、下降(閉口状態)、開口、上昇(開口状態)、旋回(開口状態)、が順に行われる。これらが繰り返し実行されることにより、浚渫作業が行われる。
【0082】
なお、バケットの昇降操作、旋回操作及び開閉操作は並行して行われてもよい。例えば、バケットの上昇工程S3とバケットの旋回工程S4とが並行して行われてもよく、また、例えば、バケットの旋回工程S6とバケットの下降工程S1とが並行して行われてもよい。
【0083】
<4.捨石マウンドの重錘締固め作業の流れ>
図11は、捨石マウンドの重錘締固め作業の流れの一例を示す図である。捨石マウンドの重錘締固め作業では、オペレータの操作により重錘の昇降、水平移動、落下(締固め)等が制御される。
図11の例では、捨石マウンドの重錘締固め作業は、旋回工程S21、降下工程S22、上昇工程S23、締固め工程S24、及び引き上げ・移動工程S25を含む。
【0084】
旋回工程S21では、クレーンを旋回し、重錘を水平方向における目標位置及び水面からの所定の高さにセットする。降下工程S22では、重錘を降下させて着底させることにより、深度を確認する。上昇工程S23では、重錘を上昇させて目標の高さまで再度引き上げる。締固め工程S24では、重錘を所定の高さから落下させ天端面を打突きし、その衝撃エネルギーにより捨石マウンドの天端面を締め固めさせる。締固め工程S24と上昇工程S23を所定の回数実施したのち、引き上げ・移動工程S25では、次の締固め位置にセットするために重錘を引き上げ、クレーンを旋回させる。
【0085】
<5.具体的な関数表現>
次いで、浚渫作業と捨石マウンドの重錘締固め作業とのそれぞれについて操作内容を表す関数表現の具体例を説明する。操作指示情報は、一例として、以下のシグモイド関数で表される。
【数1】
ここで、aはゲインであり、tは時刻である。yはシグモイド関数により算出される操作指示情報であり、例えば、バケット若しくは重錘の高さ、重錘又はバケットを吊持する重機であるクレーンの旋回角度、又はバケットの開閉度である。
【0086】
(5-1.浚渫作業の場合)
浚渫作業は、上述したように、海底面掘削、バケット上昇、バケット旋回、土運船への放土、バケット旋回、バケット下降、海底面掘削、・・・のサイクルで行われる。このとき、(i)バケットの高さ、(ii)クレーンの旋回角度、(iii)バケットの開閉度、(iv)クレーンの起伏のそれぞれをシグモイド関数で表現する。
【0087】
(5-1-1.バケットの高さ)
図12は、浚渫作業におけるバケットの高さの時間的な変化の一例を示す図である。
図12の例で、横軸は経過時間(秒)を示し、縦軸はバケットの高さ(m)を示す。
図12の例では、バケットの高さについて、浚渫作業を(a)掘削工程S2、(b)バケットの上昇工程S3、(c)放土工程S5_1、(d)放土工程S5_2、(e)バケットの下降工程S1、の5つの工程に分割し、各動作についてシグモイド関数を決定する。なお、
図6の例では、放土工程S5(
図4参照)を、放土工程S5_1と放土工程S5_2とに分割している。(a)~(e)の各動作についてシグモイド関数の具体例を説明する。
【0088】
(a)掘削工程S2
まず、掘削工程S2におけるバケットの高さH(m)は、一例として以下の関数で表される。
【数2】
ここで、D
1aは、例えば、潮位表基準面(CDL)のような標高基準面からの最大掘削深度(m)であり、D
1bは、海底面着底深度(m)である。a
1は、掘削速度(m/s)に係るパラメータであり、t
1は、掘削工程S2の開始時刻(s)に係るパラメータである。これらの各パラメータは、一例として、D
1a=-10、D
1b=-8.5、a
1=0.3、t
1=15、である。これらの各パラメータは、一例として熟練したオペレータによる実際の操作内容を関数近似することにより得られる。
【0089】
(b)バケットの上昇工程S3
また、バケットの上昇工程S3におけるバケットの高さH(m)は、一例として以下の関数で表される。
【数3】
ここで、H
1は、掘削工程S2の終了時の標高基準面からのバケットの高さ(m)であり、D
2は、海底面からの上昇高さ(m)である。a
2は、上昇速度(m/s)に係るパラメータであり、t
2は、上昇工程S3の開始時刻(s)に係るパラメータである。上記各パラメータは、一例として、H
1=-10.0、D
2=17、a
2=0.5、t
2=40、である。これらの各パラメータは、一例として熟練したオペレータによる実際の操作内容を関数近似することにより得られる。
【0090】
(c)土運船への放土工程S5_1
また、土運船への放土工程S5_1におけるバケットの高さH(m)は、一例として、以下の関数で表される。
【数4】
ここで、H
2は、バケットの上昇工程S3の終了時の標高基準面からのバケット高さ(m)であり、D
3は、放土工程S5_1におけるバケットの高さの変化量(m)である。a
3は、放土工程S5_1の下降速度(m/s)に係るパラメータであり、t
3は、放土工程S5_1の開始時刻(s)に係るパラメータである。上記各パラメータは、一例として、H
2=7.0、D
3=2、a
3=2.0、t
3=71、である。これらの各パラメータは一例として、熟練したオペレータによる実際の操作内容を関数近似することにより得られる。
【0091】
(d)放土工程S5_2
また、放土工程S5_2におけるバケットの標高基準面からの高さH(m)は、一例として以下の関数で表される。
【数5】
ここで、H
3は、放土工程S5_1の終了時の標高基準面からのバケット高さ(m)であり、D
4は、放土工程S5_2のバケットの高さの変化量(m)である。a
4は、放土工程S5_1の上昇速度(m/s)に係るパラメータであり、t
4は、放土工程S5_2の開始時刻(s)に係るパラメータである。上記各パラメータは、一例として、H
3=5.0、D
4=3、a
4=2.0、t4=77、である。これらの各パラメータは一例として、熟練したオペレータによる実際の操作内容を関数近似することにより得られる。
【0092】
(e)バケットの下降工程S1
また、バケットの下降工程S1における標高基準面からのバケットの高さH(m)は、一例として以下の関数で表される。
【数6】
ここで、H
4は、放土工程S5_2の終了時の標高基準面からのバケット高さ(m)であり、D
5は、バケットの下降深さ(m)である。a
5は、バケットの下降速度(m/s)に係るパラメータであり、t
5は、下降工程S1の開始時刻(s)に係るパラメータである。上記各パラメータは、一例として、H
4=8.0、D
5=16.5、a
5=0.5、t
5=100、である。これらの各パラメータは一例として、熟練したオペレータによる実際の操作内容を関数近似することにより得られる。
【0093】
バケットの高さを表す関数の具体例について説明したが、バケットの高さを表す関数は上述した例に限られず、他の関数であってもよい。例えば、バケットの下降工程S1において、空気と水による抵抗値の違いを考慮し、気中部と水中部とでパラメータを異ならせて、別々の関数でバケットの高さを表現してもよい。また、バケットの上昇工程S3についても同様であり、気中部と水中部とでパラメータを異ならせて、別々の関数でバケットの高さを表現してもよい。
【0094】
(5-1-2.クレーンの旋回角度)
次いで、クレーンの旋回角度を表す関数の具体例を説明する。
図13は、浚渫作業におけるクレーンの旋回角度の時間的な変化の一例を示す図である。
図13の例で、横軸は経過時間(秒)を示し、縦軸は旋回角度(°)を示す。
図13の例では、クレーンの旋回角度について、(f)旋回工程S4(土運船への放土時)、(g)旋回工程S6(バケット下降時)、のそれぞれで関数を決定する。
【0095】
(f)旋回工程S4
まず、旋回工程S4におけるクレーンの旋回角θ(°)は、一例として以下の関数で表される。
【数7】
ここで、θは、旋回角(°)であり、tは経過時間(s)である。θ
0は初期角度(°)、K
1は、最大旋回角度(°)であり、b
1は、旋回速度(m/s)に係るパラメータである。t
b1は、旋回工程S4の開始時刻(s)に係るパラメータである。上記各パラメータは、一例として、θ
0=0、K
1=80、b
1=0.8、t
b1=68、である。これらの各パラメータは、熟練したオペレータによる実際の操作内容を関数近似することにより得られる。
【0096】
(g)旋回工程S6
また、旋回工程S6におけるクレーンの旋回角θ(°)は、一例として以下の関数で表される。
【数8】
ここで、K
1は、最大旋回角度(°)であり、K
2は、旋回工程S4終了時の残留角度(°)、すなわち次の浚渫作業を行う際の初期角度である。b
2は、旋回速度(m/s)に係るパラメータであり、t
b2は、旋回工程S6の開始時刻(s)に係るパラメータである。上記各パラメータは、一例として、K
1=80、K
2=10、b
2=0.8、t
b2=81.4、である。これらの各パラメータは、熟練したオペレータによる実際の操作内容を関数近似することにより得られる。
【0097】
(5-1-3.バケットの開口度)
次いで、バケットの開口度を表す関数の具体例を説明する。
図14は、浚渫作業におけるバケットの開口度の時間的な変化の一例を示す図である。
図14の例で、横軸は経過時間(秒)を示し、縦軸は開口度(%)を示す。浚渫用のバケットは、上述の
図10に示す掘削工程S2~バケットの上昇工程S3において閉口され(閉口工程S31)、その後、放土工程S5において開口することにより放土し(開口工程S32)、バケットの下降工程S1において更に開口(開口工程S33)し、掘削工程S2において再度閉口される(閉口工程S31)。
図14の例では、バケットの開口度について、(h)閉口工程S31(掘削工程S2~バケットの上昇工程S3)、(i)開口工程S32(放土工程S5)、(j)開口工程S33(バケットの下降工程S1)、のそれぞれについて関数を決定する。
【0098】
(h)閉口工程S31
まず、閉口工程S31におけるバケットの開口度R(%)は、一例として以下の関数で表される。
【数9】
ここで、Rは開口度(%)であり、tは経過時間(s)である。M
1は、最大開口度(%)であり、c
1は、閉口速度(m/s)に係るパラメータである。t
c1は、閉口工程S31の開始時刻(s)に係るパラメータである。上記各パラメータは、一例として、M
1=90、c
1=0.5、t
c1=10、である。これらの各パラメータは、熟練したオペレータによる実際の操作内容を関数近似することにより得られる。
【0099】
(i)開口工程S32
また、開口工程S32(土運船への放土工程S5)におけるバケットの開口度R(%)は、一例として以下の関数で表される。
【数10】
【0100】
ここで、R1は閉口工程S31の終了時の開口度(%)であり、M2は、土運船への放土時の最大開口度(%)である。c2は、開口速度(m/s)に係るパラメータであり、tc2は、開口工程S32の開始時刻(s)に係るパラメータである。上記各パラメータは、一例として、R1=0.0、M2=15、C2=3.0、tc2=72、である。これらの各パラメータは、熟練したオペレータによる実際の操作内容を関数近似することにより得られる。パラメータM2、c2、及びtc2は別々に設定されるパラメータであり、各パラメータをそれぞれ適切に設定できれば、開口度Rの時間的変化を適切に表現することができる。
【0101】
(j)開口工程S33
また、開口工程S33におけるバケットの開口度R(%)は、一例として以下の関数で表される。
【数11】
ここで、R
2は開口工程S32の終了時の開口度(%)であり、M
3は、開口工程S33における最大開口度(%)である。c
3は開口速度(m/s)に係るパラメータであり、t
c3は、開口工程S33の開始時刻(s)に係るパラメータである。上記各パラメータは、一例として、R
2=15、M
3=90、C
3=0.8、t
c3=92、である。これらの各パラメータは、熟練したオペレータによる実際の操作内容を関数近似することにより得られる。このとき、開口工程S33は、旋回工程S6と並行して行われてもよく、また開口工程S33の一部又は全部が、旋回工程S6の後に行われてもよい。
【0102】
(5-1-2.クレーンの起伏角度)
次いで、重錘又はバケットを吊持する重機であるクレーンの起伏角度を表す関数の具体例を説明する。
図15は、浚渫作業におけるクレーンの起伏角度の時間的な変化の一例を示す図である。
図15の例で、横軸は経過時間(秒)を示し、縦軸は起伏角度(°)を示す。
図15の例では、クレーンの起伏角度について、(k)伏せ工程S4’(土運船への放土時)、(l)起こし工程S6’(バケット下降時)、のそれぞれで関数を決定する。
【0103】
(k)伏せ工程S4’
まず、伏せ工程S4’におけるクレーンの起伏角θ’(°)は、一例として以下の関数で表される。
【数12】
ここで、θ’は、起伏角(°)であり、tは経過時間(s)である。θ
0’は初期角度(°)、K
1’は、最大起伏角度(°)であり、b
1’は、起伏速度(m/s)に係るパラメータである。t
b1’は、起伏工程S4’の開始時刻(s)に係るパラメータである。上記各パラメータは、一例として、θ
0’=30、K
1’=15、b
1’=0.8、t
b1’=28である。これらの各パラメータは、熟練したオペレータによる実際の操作内容を関数近似することにより得られる。
【0104】
(l)起こし工程S6’
また、起こし工程S6’におけるクレーンの起伏角θ’(°)は、一例として以下の関数で表される。
【数13】
ここで、K
1’は、最大起伏角度(°)であり、K
2’は、起伏工程S4’終了時の残留角度(°)、すなわち次の浚渫作業を行う際の初期角度である。b
2’は、起伏速度(m/s)に係るパラメータであり、t
b2’は、起伏工程S6’の開始時刻(s)に係るパラメータである。上記各パラメータは、一例として、K
1’=15、K
2’=15、b
2’=0.3、t
b2’=50.0、である。これらの各パラメータは、熟練したオペレータによる実際の操作内容を関数近似することにより得られる。
【0105】
(5-1-4.決定するパラメータ)
上記の関数表現において、D1a、D1b、~D5、t1~t5、a1~a5、K1~K2、K1’~K2’、tb1~tb2、tb1’~tb2’、b1~b2、b1’~b2’、M1~M3、tc1~tc3、c1~c3の各パラメータを設定すれば、関数によって定められた法則にしたがって作業船を自律動作させるための操作指示情報を生成することができる。各パラメータは、一例として重機の操作に熟練したオペレータの操作内容を表す時系列データを関数近似することにより得られる。
【0106】
(5-1-5.複数の動作を並行して行う場合)
上述したように、クレーンの起伏の操作、バケットの高さの操作、クレーンを旋回させる操作、及び/又はバケットを開閉する操作は、並行して行われる場合もある。例えば、
図12~
図14の例では、65~80秒の間において、土運船への放土のため、バケットの昇降動作と、クレーンの旋回動作と、バケットを開く動作と、が並行して行われる。各時間において、各動作は、グラフに示される操作値に一致するように(又は差分が小さくなるように)操作される。各動作の足し合わせの結果として、バケットを下げながらクレーン旋回といったように、並行して行われる複数の動作を関数で表現できる。なお、クレーンの起伏操作は主としてその日の作業開始時に発生するが、常に発生する操作ではないので、必要に応じて本関数を用いる。
【0107】
(5-2.捨石マウンドの重錘締固め作業の場合)
次いで、捨石マウンドの重錘締固め作業における操作内容を表す関数について説明する。捨石マウンドの重錘締固め作業における重錘の昇降の操作やクレーン旋回の操作は、上記の浚渫作業における操作と同様に関数で表現できる。また、重錘の開放、つまり制御落下も関数で表現することができる。
【0108】
(5-2-1.重錘の高さ)
図16は、捨石マウンドの重錘締固め作業における重錘の高さの時間的な変化の一例を示す図である。
図16の例で、横軸は経過時間(秒)を示し、縦軸は重錘の高さを示す。
図16の例では、重錘を制御落下させる締固め工程S24における重錘の高さH(m)をシグモイド関数で表現する。降下工程S22における重錘の高さH(m)は、一例として以下の関数で表される。
【数14】
ここで、Hは重錘の高さ(m)であり、D
1aは重錘の着底深度(m)、D
1bは重錘の開放位置(m)である。a
1は落下速度(m/s)に係るパラメータであり、t
1は落下開始時刻(s)に係るパラメータである。上記各パラメータは、一例として、D
1a=-10、D
1b=8.0、a
1=4.0、t
1=15、である。上記の関数表現において、D
1a、D
1b、t
1、a
1、の各パラメータを設定すれば、関数によって定められた法則にしたがってクレーンC22を自律動作させるための操作指示情報を生成することができる。各パラメータは、重機の操作に熟練したオペレータの操作内容を表す時系列データを関数近似することにより得られる。なお、
図16において説明の簡便上、捨石マウンド天端面上でのリバウンドによる重錘の高さ変位は明示していない。また、重錘の旋回、上昇に関しては先に記載しているバケットの各工程と重複するため割愛する。
【0109】
<6.操作指示情報生成方法の流れ>
図17は、情報出力装置10が実行する操作指示情報生成方法の流れの一例を示すフロー図である。ステップM11において情報出力装置10は、第1の作業船上の重機による土木作業を開始するかを判別する。情報出力装置10は例えば、オペレータにより作業を開始する旨の操作指示情報が入力された場合に作業を開始すると判別する。土木作業を開始する場合(ステップM11;YES)、情報出力装置10はステップM12の処理に進む。一方、土木作業を開始しない場合(ステップM11;NO)、情報出力装置10は作業を開始するまで待機する。
【0110】
ステップM12において、第1取得部111は、第1の作業船上の重機が海上土木作業を開始していない状態において計測装置20が計測した第1の作業船の動揺を表す時系列データを取得する。換言すると、第1取得部111は、第1の作業船が海上土木作業を行っていない状態における当該第1の作業船の動揺を表す時系列データを取得する。ステップM12は本明細書に係る第1ステップの一例である。
【0111】
ステップM13において、第1算出部112は、第1取得部111が取得した時系列データを解析し第1の作業船の動揺特性を算出する。ステップM13は本明細書に係る第2ステップの一例である。ステップM14において、生成部113は、第1算出部112が算出した第1の作業船の動揺特性と、第1の作業船の仕様を表す情報とを学習済モデルLM1に入力することにより得られるパラメータPを決定する。
【0112】
例えば浚渫作業の場合、生成部113は、
図12及び
図13に示した各工程について以下の(a)~(k)のパラメータを決定する。
(a)掘削工程S2におけるバケットの高さを表す関数のパラメータ
(b)上昇工程S3におけるバケットの高さを表す関数のパラメータ
(c)放土工程S5_1におけるバケットの高さを表す関数のパラメータ
(d)放土工程S5_2におけるバケットの高さを表す関数のパラメータ
(e)下降工程S1におけるバケットの高さを表す関数のパラメータ
(f)旋回工程S4におけるクレーンの旋回角度を表す関数のパラメータ
(g)旋回工程S6におけるクレーンの旋回角度を表す関数のパラメータ
(h)閉口工程S31におけるバケットの開口度を表す関数のパラメータ
(j)開口工程S32におけるバケットの開口度を表す関数のパラメータ
(k)開口工程S33におけるバケットの開口度を表す関数のパラメータ
【0113】
また、例えば捨石マウンドの重錘締固め作業の場合、生成部113は、重錘の高さを表す関数のパラメータを決定する。ただし、生成部113が決定するパラメータPは上述した例に限られず、生成部113は土木工事を行う作業用器具の稼動量を表す他の関数のパラメータを決定してもよい。
【0114】
ステップM15において、生成部113は、ステップM14において決定されたパラメータPにより定まる関数を用いて、作業船上の重機を自律動作させるための操作指示情報を生成する。換言すると、生成部113は、第1算出部112が算出した動揺特性と第1の作業船の仕様に関する情報とを学習済モデルLM1に入力して得られるパラメータを用いて、操作指示情報を生成する。
【0115】
このとき、生成部113は、土木作業における重機の複数の動作の各々に対応する関数を用いて、各動作のための操作指示情報を生成する。生成部113は例えば、ステップM13において、(i)バケットの高さH、(ii)クレーンの旋回角θ、(iii)バケットの開口度R、の3つの操作指示情報を、それぞれ異なる関数を用いて計算する。計算されたバケットの高さHに基づき、バケットの昇降が制御される。また、計算されたクレーンの旋回角θに基づき、クレーンの旋回を制御する。また、計算されたバケットの開口度Rに基づき、バケットの開閉を制御する。このように、生成部113が生成する操作指示情報には、バケットの高さH、クレーンの旋回角θ、バケットの開口度R、等が含まれる。また、生成部113が生成する操作指示情報には、学習済モデルLM1が出力したパラメータPにより指定される操作指示タイミングが含まれる。
【0116】
ステップM16において、出力部114はステップM13で生成された操作指示情報を出力する。ステップM16は本明細書に係る第3ステップの一例である。出力部114は一例として、ステップM13で生成された操作指示情報を、重機を制御する制御機器に出力することにより、作業船上の重機に海上土木作業を行わせる。このとき、バケットの昇降、クレーンの旋回、及びバケットの開閉は、順に制御されてもよく、また、並行して制御されてもよい。
【0117】
また、出力部114は、入出力IF14又は通信IF13に接続された出力装置に操作指示情報を出力してもよい。ここで、出力装置は例えば、ディスプレイ、プロジェクタ、印刷装置、携帯式端末、及び/又はスピーカを含む。一例として、出力部114は、(i)バケットの高さH、(ii)クレーンの旋回角θ、(iii)バケットの開口度R、の計算結果を並べて表示装置に表示してもよいし、スピーカから音声指示してもよい。この表示により、オペレータは各時刻で行うべき操作量を把握することができる。なお上述したように、バケットの昇降、クレーンの旋回、バケットの開閉は個別に操作されるものに限らず、並行して操作される場合がある。
【0118】
ステップM17において、情報出力装置10は、作業を終了するかを判別する。情報出力装置10は一例として、土木作業の対象である海底の状況が所定の条件を満たす場合に、作業を終了すると判別してもよい。また、当初に土木作業において例えば主たる工程である掘削工程S2を行う回数を設定しておくようにしてもよい。他の工程バケットの下降工程S1、バケットの上昇工程S3、バケットの旋回工程S4などの工程は設定された掘削工程S2の回数に紐づけられて必要な回数実施される。土木作業を終了する場合(ステップM15;YES)、情報出力装置10は処理を終了する。一方、土木作業を継続する場合(ステップM15;NO)、情報出力装置10はステップM12の処理に戻る。
【0119】
このように、1サイクル(ステップM12~M16)の土木作業が終了して、次の土木作業に移る際は、生成部113は、ステップM12において各関数のパラメータ(最大掘削深度,掘削速度,掘削開始時刻に係るパラメータ等)を再度決定する。
【0120】
<7.学習済モデル生成方法の流れ>
次いで、学習済モデルLM1を生成する方法について図面を参照しつつ説明する。
図17は、情報出力装置10が実行する学習済モデル生成方法の流れの一例を示すフロー図である。
【0121】
ステップM31において、第2取得部151は、過去に海上土木作業を行った重機を備える第2の作業船が海上土木作業を開始する直前に計測された第2の作業船の動揺を表す時系列データを取得する。第2取得部151は一例として、記憶部12に記憶された作業ログWLに含まれる時系列データを取得する。
【0122】
ステップM32において、第2算出部152は、ステップM31で取得された時系列データを用いて第2の作業船の動揺特性を算出する。第2算出部152が動揺特性を算出する手法は、上述の第1算出部112が動揺特性を算出する手法と同様である。
【0123】
ステップM33において、訓練データ算出部153は、第2の作業船の仕様を示す情報及び第2算出部152が算出した第2の作業船の動揺特性と、訓練データ算出部153が決定したパラメータPTとのセットを1又は複数含む訓練データを生成する。訓練データ算出部153におけるパラメータPTは、一般には、作業ログWLに含まれる時系列データを関数で近似する際の適切なパラメータであり、パラメータを広く変化させながらの試行錯誤的な検討によって決定されるものである。ただし、この手法に限定されるものではない。
【0124】
また、訓練データ算出部153が作業ログWLに含まれる時系列データからパラメータPtを決定してもよい。より具体的には、訓練データ算出部153は例えば、作業ログWLに含まれる上記時系列データを用いた線形回帰、決定木法、サポートベクターマシン、ニューラルネットワーク等の学習手法によりパラメータPtを決定してもよい。より具体的には、訓練データ算出部153は一例として、上記時系列データを用いて、説明変数(経過時間t)と目的変数(バケットの高さH、クレーンの旋回角θ、バケットの開口度R、又は重錘の高さH、等)との相関関係を機械学習させることにより、パラメータPtを決定してもよい。
【0125】
ステップM34において、モデル生成部154は、第2の作業船の仕様を示す情報及び第2算出部152が算出した第2の作業船の動揺特性と、訓練データ算出部153が決定したパラメータPtとの相関関係を機械学習させた学習済モデルLM1を生成する。モデル生成部154は、一例として、畳み込みニューラルネットワークの学習手法により学習済モデルLM1を生成する。ただし、学習済モデルLM1の学習手法は上述した例に限られず、他の学習手法が用いられてもよい。
【0126】
<8.情報出力装置の効果>
本実施形態において、学習済モデルLM1の機械学習に用いる動揺特性は、第2の作業船が海上土木作業を行っていないときに計測された第2の作業船の動揺、すなわち作業起因の動揺を含まない、外力起因の動揺の特性である。第1の作業船上の重機が海上土木作業を行う際には、第2の作業船において発生した作業起因の動揺とほぼ同じ動揺が第1の作業船においても同様に発生する。そのため、作業起因の動揺を含まない外力起因の動揺特性を用いて事前に機械学習させた学習済モデルLM1を用いることにより、外力起因の動揺特性を用いて熟練オペレータの操作内容を再現することができる。これにより、海上土木作業を行う際の外力起因の動揺の影響と、作業により発生する作業起因の動揺の影響との両方を考慮した操作指示情報を生成することができる。
【0127】
<9.変形例1>
学習済モデルLM1の構築に用いる訓練データは、上述した実施形態で説明した例に限られず、他のデータであってもよい。学習済モデルLM1は例えば、(i)重機を載置した第2の作業船の仕様を表す情報及び気海象の静穏時に海上土木作業を行っているときの当該第2の作業船の動揺特性と、(ii)上記第2の作業船上の重機が気海象の静穏時以外で海上土木作業の動作を行っているときの当該重機への操作指示情報と当該重機の動作と、当該動作時に当該第2の作業船に取り付けられた第2の計測装置20-2が計測した第2の作業船の動揺を表す時系列データと、を用いて上記第2の作業船上の重機による海上土木作業中の第2の作業船に生ずる動揺における外力による動揺と、当該第2の作業船上の重機に対してなされた操作内容との相関関係を機械学習させることにより生成された学習済モデルであってもよい。ここで、静穏時とは、船舶が安全に係留でき、作業に支障を与えない波高0.5m未満、風速0.3m/s以下の状態を意味する。
【0128】
<9.変形例2>
上述の実施形態において第2算出部152は、訓練データTDとして用いる動揺特性を、第2の作業船が海上土木作業を行っていない状態における第2の作業船の動揺を表す時系列データを解析することにより算出した。訓練データTDとして用いる動揺特性の算出方法は上述した例に限られず、第2算出部152は他の手法により訓練データTDとして用いる動揺特性を算出してもよい。第2算出部152は例えば、静穏時の作業における動揺データと、静穏時でない状態における作業時の動揺データとから、外力要因の動揺特性を算出してもよい。
【0129】
また、他の例として、第2算出部152は例えば、第2の作業船が海上土木作業を行っているときに計測された動揺を表す時系列データに対し周波数スペクトル解析を実施することにより、作業起因の動揺と外力起因の動揺とを分離し、分離により得られた外力起因の動揺から算出される動揺特性を訓練データTDとして用いてもよい。
【0130】
〔実施形態2〕
本発明の他の実施形態について以下に説明する。なお、説明の便宜上、上記実施形態にて説明した部、構成と同じ機能を有する部、構成については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。
【0131】
図18は、他の実施形態に係る情報出力装置10Bの機能構成を示すブロック図である。本実施形態に係る学習済モデルLM2は、さらに第2の作業船の動揺を表す時系列データと、第2の作業船上の重機による動作とを説明変数(入力データ)とし、生成部113Bは、熟練オペレータによる上記動揺の数値に応じた上記第2の作業船上の重機への操作指示情報を目的変数(出力データ)とする教師データ(訓練データ)を用いて機械学習させることにより生成された学習済モデルLM2を用いて上記操作指示情報を生成する。
【0132】
また、モデル生成部154Bは、第2の作業船の動揺を表す時系列データと、第2の作業船上の重機による動作とを説明変数とし、熟練オペレータによる上記動揺の数値に応じた上記第2の作業船上の重機への操作指示情報を目的変数とする訓練データを用いて学習済モデルLM2を生成する。
【0133】
また、本実施形態において、モデル生成部154Bは、学習済モデルLM2による新たな作業船上の重機に対し生成部113Bが生成した操作指示情報と、上記新たな作業船上の重機に対する熟練オペレータの操作指示情報と、を比較し、上記熟練オペレータによる上記新たな作業船上の重機への操作指示情報と、生成部113Bが上記新たな作業船上の重機に対し生成した操作指示情報との相違量が閾値以内となる情報だけを再学習用の教師データとして用いて、学習済モデルLM2に再学習を行ってもよい。この場合、生成部113Bは、モデル生成部154Bが再学習を行った再学習モデルを用いて上記操作指示情報を生成する。
【0134】
本実施形態によれば、作業船上の重機による実際の動作を示すデータから熟練オペレータにおける操作ミスによる異常値を除いた教師データを用いて機械学習させた学習済モデルLM2により操作指示情報を生成することにより、作業船上の重機が行う海上土木作業の内容に適した操作指示情報を生成することができる。特に、例えば作業船毎又は現場毎に各作業船に合わせた最適な学習済モデルLM2に更新することができる。
【0135】
また、本実施形態によれば、熟練オペレータの操作指示情報を用いて学習済モデルLM2を再学習させることにより、海上土木作業を行う重機を操作するためのより適した操作指示情報を生成することができる。
【0136】
〔付記事項1〕
上述の実施形態1~2に係る情報出力装置10及び10Bの機能は、単体の装置により実現されてもよく、また、複数の装置が協働するシステムにより実現されてもよい。例えば、推定フェーズ実行部110を実装する第1の装置と、学習フェーズ実行部150を実装する第2の装置とが別体の装置として構成され、第1の装置と第2の装置とが協働することにより上述の情報出力装置10Bが実現されてもよい。
【0137】
〔付記事項2〕
また、上述の実施形態において、訓練データに含める動揺特性は、第2の作業船が海上土木作業を行っていない状態(例えば、海上土木作業を開始する直前)において計測された第2の作業船の動揺を表すデータから算出された動揺特性を用いたが、訓練データに含める動揺特性の算出手法は、上述した実施形態で示したものに限られない。例えば、第2算出部152は、第2の作業船が海上土木作業を行っている状態において計測された第2の作業船の動揺を表すデータに対してスペクトル解析を行って作業起因の動揺と外力起因の動揺とに分離し、外力起因の動揺特性を訓練データとして用いてもよい。
【0138】
〔ソフトウェアによる実現例〕
情報出力装置10、10B(以下、「装置」と呼ぶ)の機能は、当該装置としてコンピュータを機能させるためのプログラムであって、当該装置の各制御ブロック(特に制御部11に含まれる各部)としてコンピュータを機能させるためのプログラムにより実現することができる。
【0139】
この場合、上記装置は、上記プログラムを実行するためのハードウェアとして、少なくとも1つの制御装置(例えばプロセッサ)と少なくとも1つの記憶装置(例えばメモリ)を有するコンピュータを備えている。この制御装置と記憶装置により上記プログラムを実行することにより、上記各実施形態で説明した各機能が実現される。
【0140】
上記プログラムは、一時的ではなく、コンピュータ読み取り可能な、1又は複数の記録媒体に記録されていてもよい。この記録媒体は、上記装置が備えていてもよいし、備えていなくてもよい。後者の場合、上記プログラムは、有線又は無線の任意の伝送媒体を介して上記装置に供給されてもよい。
【0141】
また、上記各制御ブロックの機能の一部又は全部は、論理回路により実現することも可能である。例えば、上記各制御ブロックとして機能する論理回路が形成された集積回路も本発明の範疇に含まれる。この他にも、例えば量子コンピュータにより上記各制御ブロックの機能を実現することも可能である。
【0142】
また、上記各実施形態で説明した各処理は、AI(Artificial Intelligence:人工知能)に実行させてもよい。この場合、AIは上記制御装置で動作するものであってもよいし、他の装置(例えばエッジコンピュータ又はクラウドサーバ等)で動作するものであってもよい。
【0143】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0144】
10、10B 情報出力装置
11 制御部
12 記憶部
110 推定フェーズ実行部
111 第1取得部
112 第1算出部
113、113B 生成部
114 出力部
150 学習フェーズ実行部
151 第2取得部
152 第2算出部
153 訓練データ算出部
154、154B モデル生成部