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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024136168
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】ワークの加工方法および樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/301 20060101AFI20240927BHJP
   H01L 21/683 20060101ALI20240927BHJP
   C09J 7/38 20180101ALI20240927BHJP
   C09J 201/00 20060101ALI20240927BHJP
   C09J 5/00 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
H01L21/78 M
H01L21/68 N
C09J7/38
C09J201/00
C09J5/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023047178
(22)【出願日】2023-03-23
(71)【出願人】
【識別番号】000102980
【氏名又は名称】リンテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001494
【氏名又は名称】前田・鈴木国際特許弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】中西 勇人
【テーマコード(参考)】
4J004
4J040
5F063
5F131
【Fターム(参考)】
4J004AA10
4J004AB01
4J004AB06
4J004CA06
4J004CC03
4J004EA06
4J004FA04
4J040DF021
4J040EF282
4J040FA132
4J040FA292
4J040GA05
4J040JA09
4J040JB07
4J040JB09
4J040KA13
4J040LA06
4J040MA02
4J040NA20
4J040PA20
4J040PA42
5F063AA18
5F063BA20
5F063EE22
5F131BA52
5F131BA53
5F131EC35
5F131EC62
5F131EC72
(57)【要約】
【課題】表面の高低差による影響を抑制するために表面上に形成されたパターンを表面保護シートと共に良好に剥離できるワークの加工方法を提供すること。
【解決手段】高低差を有する表面と、表面に対向する裏面と、を備え、表面上に表面の高低差による影響を抑制するための凸状パターンが形成されたワークにおいて、表面に表面保護シートを貼付する工程と、表面に貼付された表面保護シートと、凸状パターンの少なくとも一部と、を表面から剥離する工程と、を有し、ポリイミド膜が形成されたワークに対する凸状パターンの50℃における粘着力が1000mN/25mm以下であるワークの加工方法である。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
高低差を有する表面と、前記表面に対向する裏面と、を備え、前記表面上に前記表面の高低差による影響を抑制するための凸状パターンが形成されたワークにおいて、前記表面に前記表面保護シートを貼付する工程と、
前記表面に貼付された表面保護シートと、前記凸状パターンの少なくとも一部と、を前記表面から剥離する工程と、を有し、
ポリイミド膜が形成されたワークに対する前記凸状パターンの50℃における粘着力が1000mN/25mm以下であるワークの加工方法。
【請求項2】
前記凸状パターンの引張破断伸度が4%以上である請求項1に記載のワークの加工方法。
【請求項3】
前記凸状パターンが樹脂組成物から構成される請求項1または2に記載のワークの加工方法。
【請求項4】
前記表面保護シートが貼付されたワークの裏面を研削する工程をさらに有する請求項1または2に記載のワークの加工方法。
【請求項5】
前記表面は、内周部と、前記内周部を取り囲む外周部と、を有し、前記外周部の高さが前記内周部の高さよりも低く、前記凸状パターンが前記外周部上に形成されている請求項1または2に記載のワークの加工方法。
【請求項6】
前記表面の少なくとも一部に機能膜が形成されている請求項1または2に記載のワークの加工方法。
【請求項7】
前記ワークが、前記表面に凸状電極が形成されたワークである請求項1または2に記載のワークの加工方法。
【請求項8】
前記凸状パターンが、前記ワークの外縁から離隔して形成されている請求項5に記載のワークの加工方法。
【請求項9】
前記表面保護シートが、基材と粘着剤層とを有する請求項1または2に記載のワークの加工方法。
【請求項10】
前記ワークの表面に表面保護シートを貼付する工程の前に、前記ワークの表面に溝を形成する工程を有し、
前記ワークの裏面を研削する工程において、溝を起点として、前記ワークを複数のワーク個片化物に個片化する請求項4に記載のワークの加工方法。
【請求項11】
前記ワークの裏面を研削する工程の前に、前記ワーク内部に改質領域を形成する工程を有し、
前記ワークの裏面を研削する工程において、改質領域を起点として、前記ワークを複数のワーク個片化物に個片化する請求項4に記載のワークの加工方法。
【請求項12】
ポリイミド膜が形成されたワークに対する粘着力が1000mN/25mm以下である樹脂組成物。
【請求項13】
引張破断伸度が4%以上である請求項12に記載の樹脂組成物。
【請求項14】
高低差を有する表面と、前記表面に対向する裏面と、を備えるワークにおいて、前記表面の高低差による影響を抑制するための凸状パターンを形成するために用いられる請求項12または13に記載の樹脂組成物。
【請求項15】
前記樹脂組成物がエネルギー線硬化性であり、前記粘着力がエネルギー線硬化後の粘着力である請求項12または13に記載の樹脂組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワークの加工方法および樹脂組成物に関する。特に、ワークの表面上に形成されている所定のパターンが、当該表面に貼付されている表面保護シートと共に当該表面から良好に剥離可能なワークの加工方法と、当該パターンの形成に好適な樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体チップ等の回路が形成されたチップを高密度に実装する方法として、チップと基板上の電極とを、チップの回路面上に形成されたバンプ電極を介して接合する方法が知られている。バンプ電極は、チップの厚さ方向に突出して形成されている凸状電極である。
【0003】
このようなチップは、回路が形成されたウエハ等のワークを個片化することによりワーク個片化物として得られる。このようなチップが搭載される電子機器の小型化および多機能化の急速な進展に伴い、チップにも小型化、低背化、高密度化が求められている。チップを小型化および低背化するには、ウエハの表面に回路を形成した後、ウエハの裏面を研削して、チップの厚さを薄くすることが一般的である。
【0004】
また、チップを高密度に実装する他の方法として、チップオンウエハ(CoW)を用いる方法が知られている。この方法では、ウエハ上に、ウエハよりもサイズが小さいチップをウエハの回路面に複数配置してチップオンウエハを得た後、当該チップオンウエハをダイシングして、積層チップを得る。
【0005】
チップオンウエハを用いる方法においても、積層チップを小型化および低背化するために、ワークとしてのウエハの裏面を研削して、ウエハ(ワーク)の厚さを薄くした後、チップをウエハ(ワーク)上に配置することが一般的である。
【0006】
ワークの裏面研削時には、ワーク表面の回路および配置されたチップを保護し、かつ、ワークを保持するために、ワーク表面にバックグラインドテープと呼ばれる表面保護シートが貼付される。
【0007】
特許文献1は、段差や突起を有する半導体ウエハに対し、半導体ウエハ表面への追従性が良好で、剥離時には半導体ウエハの破損や糊残りすることなく剥離可能な半導体ウエハ加工用粘着テープを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2017-171896号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
バンプ電極はワークの表面から突出して形成されている。また、チップオンウエハにおいても、ワークの表面に配置されたチップはウエハ(ワーク)の表面から突出している。したがって、ワークの表面において、バンプ電極が形成されている領域あるいはチップが配置されている領域と、それ以外の領域と、では高低差が生じている。
【0010】
このような高低差は、表面保護シートをワークの表面に貼付することにより、表面保護シートにおける高低差として反映される。すなわち、表面保護シートにおいて、バンプ電極が形成されている領域あるいはチップが配置されている領域に対応する部分の高さは、それ以外の部分の高さよりも高くなっている。通常、バンプ電極が形成されている領域あるいはチップが配置されている領域は、ワークの内周部であり、当該内周部を取り囲む外周部には、バンプ電極あるいはチップは存在しない。
【0011】
表面保護シートが貼付されたワークを裏面研削する場合、通常、ワークの表面保護シートが貼付された側の面(表面)を、チャックテーブル等の研削用のテーブルに載置して、吸着等により固定する。ワークをテーブルに載置する場合、ワークの外周部に対応する領域の表面保護シートの高さが、ワークの内周部に対応する領域の高さよりも低くなっているため、研削用のテーブルにワークが載置されると、ワークの外周部と研削用のテーブルとが十分に接しておらず、隙間等が生じてしまい、吸着エラーを引き起こすことがある。
【0012】
また、吸着可能であった場合、このような状態で吸着を行うと、ワークの外周部が表面保護シートと共に、研削用のテーブルに向かって落ち込んで固定される。その後、裏面研削が行われる。裏面研削終了後に、吸着を解除すると、ワークの外周部が開放され、研削用のテーブルから浮き上がる。裏面研削では、ワークの裏面がほぼ同じ高さに研削されるが、ワークの外周部が浮き上がると、吸着時に落ち込んだ分だけ、ワークの外周部の厚さは、ワークの内周部の厚さよりも厚くなる。ワークの外周部の厚さとワークの内周部の厚さとの違いは、ワークのTTV(Total Thickness Variation)に反映され、ワークのTTVが大きくなる傾向にある。ワークのTTVが大きくなると、ワークにクラックが生じやすくなる、ワークの個片化時に不具合が生じる等の問題があるため、ワークのTTVは小さいことが好ましい。
【0013】
特許文献1では、段差や突起としてバンプが考慮されており、さらに、ウエハの外周部と内周部の高低差の問題は考慮されていないため、特許文献1に記載の半導体ウエハ加工用粘着テープを貼付すると、ウエハの内周部と外周部の高低差が生じる。その結果、裏面研削時にクラックが生じやすいという問題、あるいは、クラックが生じなくても裏面研削後の半導体ウエハのTTVが大きくなるという問題があった。
【0014】
このような問題に対して、上述した表面の高低差による影響を抑制するために、表面保護シートを貼付する前に、表面上に予め所定のパターンを形成することができる。ワークの表面において、高さが低い領域に、このようなパターンをワークの表面から突出するように形成した後に、表面保護シートを貼付すると、上述した表面保護シートに反映される高低差が抑制される。その結果、裏面研削を行っても、ワークの外周部の厚さとワークの内周部の厚さとの差、すなわち、TTVを小さくすることができる。
【0015】
一方、裏面研削後に、ワークを次工程に送るために、表面保護シートは剥離される。このとき、表面保護シートは、ワークの表面に糊残り等の残渣が生じないように剥離される。ワークの表面に残渣が生じると、洗浄等の余分な工程が必要となるからである。したがって、表面上に予め形成されたパターンも、表面保護シートと共にワークの表面に残渣が生じないように剥離される必要がある。すなわち、当該パターンは、表面保護シートの剥離時に、表面から表面保護シートと共に剥離される必要がある。また、ワークの表面には、回路面等を保護、絶縁等するために、所定の機能膜が形成されることがある。したがって、当該パターンには、このような機能膜からも良好に剥離されることが求められる。
【0016】
本発明は、このような実状に鑑みてなされ、表面の高低差による影響を抑制するために表面上に形成されたパターンを表面保護シートと共に良好に剥離できるワークの加工方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明の態様は、以下の通りである。
【0018】
[1]高低差を有する表面と、表面に対向する裏面と、を備え、表面上に表面の高低差による影響を抑制するための凸状パターンが形成されたワークにおいて、表面に表面保護シートを貼付する工程と、
表面に貼付された表面保護シートと、凸状パターンの少なくとも一部と、を表面から剥離する工程と、を有し、
ポリイミド膜が形成されたワークに対する凸状パターンの50℃における粘着力が1000mN/25mm以下であるワークの加工方法である。
【0019】
[2]凸状パターンの引張破断伸度が4%以上である[1]に記載のワークの加工方法である。
【0020】
[3]凸状パターンが樹脂組成物から構成される[1]または[2]に記載のワークの加工方法である。
【0021】
[4]表面保護シートが貼付されたワークの裏面を研削する工程をさらに有する[1]から[3]のいずれかに記載のワークの加工方法である。
【0022】
[5]表面は、内周部と、内周部を取り囲む外周部と、を有し、外周部の高さが内周部の高さよりも低く、凸状パターンが外周部上に形成されている[1]から[4]のいずれかに記載のワークの加工方法である。
【0023】
[6]表面の少なくとも一部に機能膜が形成されている[1]から[5]のいずれかに記載のワークの加工方法である。
【0024】
[7]ワークが、表面に凸状電極が形成されたワークである[1]から[6]のいずれかに記載のワークの加工方法である。
【0025】
[8]凸状パターンが、ワークの外縁から離隔して形成されている[5]から[7]のいずれかに記載のワークの加工方法である。
【0026】
[9]表面保護シートが、基材と粘着剤層とを有する[1]から[8]のいずれかに記載のワークの加工方法である。
【0027】
[10]ワークの表面に表面保護シートを貼付する工程の前に、ワークの表面に溝を形成する工程を有し、
ワークの裏面を研削する工程において、溝を起点として、ワークを複数のワーク個片化物に個片化する[4]から[9]のいずれかに記載のワークの加工方法である。
【0028】
[11]ワークの裏面を研削する工程の前に、ワーク内部に改質領域を形成する工程を有し、
ワークの裏面を研削する工程において、改質領域を起点として、ワークを複数のワーク個片化物に個片化する[4]から[9]のいずれかに記載のワークの加工方法である。
【0029】
[12]ポリイミド膜が形成されたワークに対する粘着力が1000mN/25mm以下である樹脂組成物である。
【0030】
[13]引張破断伸度が4%以上である[12]に記載の樹脂組成物である。
【0031】
[14]高低差を有する表面と、表面に対向する裏面と、を備えるワークにおいて、表面の高低差による影響を抑制するための凸状パターンを形成するために用いられる[12]または[13]に記載の樹脂組成物である。
【0032】
[15]樹脂組成物がエネルギー線硬化性であり、粘着力がエネルギー線硬化後の粘着力である[12]から[14]のいずれかに記載の樹脂組成物である。
【発明の効果】
【0033】
本発明によれば、表面の高低差による影響を抑制するために表面上に形成されたパターンを表面保護シートと共に良好に剥離できるワークの加工方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図1A図1Aは、表面に高低差を有するワークとしての、ワークの表面に凸状電極が形成されたワークの断面模式図である。
図1B図1Bは、表面に高低差を有するワークとしての、チップオンウエハの断面模式図である。
図1C図1Cは、表面に高低差を有するワークとしての、ハーフトリムウエハの断面模式図である。
図2図2(A)~(E)は、従来の方法によりワークを加工した場合に、ワークのTTVが大きくなることを説明するための断面模式図である。
図3A図3Aは、本実施形態に係るワークの加工方法において、凸状電極を有するワークの外周部に凸状パターンを形成した平面模式図である。
図3B図3Bは、図3Aにおいて、IIIA-IIIA線に沿った断面模式図である。
図3C図3Cは、ワーク上における凸状パターンの形成場所の他の例を示す断面模式図である。
図4図4(A)~(C)は、本実施形態に係る方法によりワークを加工した場合に、ワークのTTVが小さくなることを説明するための断面模式図である。
図5A図5Aは、本実施形態に係るワークの加工方法に好適に用いられる表面保護シートの断面模式図である。
図5B図5Bは、本実施形態に係るワークの加工方法に好適に用いられる表面保護シートの他の例を示す断面模式図である。
図5C図5Cは、本実施形態に係るワークの加工方法に好適に用いられる表面保護シートの他の例を示す断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、本発明を、具体的な実施形態に基づき、図面を用いて詳細に説明する。まず、本明細書で使用する主な用語を説明する。
【0036】
ワークとは、表面保護シートが貼付されて、その後、個片化される板状体を言う。ワークとしては、円形(ただし、オリエンテーションフラットを有する場合を含む)のウエハ、角形のパネルレベルパッケージおよびモールド樹脂封止を施したストリップ(短冊形基板)等が挙げられ、その中でも本発明の効果が得られ易い観点から、ウエハが好ましい。ウエハとしては、例えばシリコンウエハ、ガリウム砒素ウエハ、炭化ケイ素ウエハ、窒化ガリウムウエハ、インジウム燐ウエハなどの半導体ウエハや、ガラスウエハ、タンタル酸リチウムウエハ、ニオブ酸リチウムウエハなどの絶縁体ウエハであってもよく、また、ファンアウトパッケージ等の作製に用いる樹脂と半導体から成る再構成ウエハであってもよい。本発明の効果が得られ易い観点から、ウエハとしては、半導体ウエハまたは絶縁体ウエハが好ましく、半導体ウエハがより好ましい。
【0037】
ワークの個片化は、ワークを回路毎に分割し、ワーク個片化物を得ることを言う。例えば、ワークがウエハである場合には、ワーク個片化物はチップであり、ワークがパネルレベルパッケージまたはモールド樹脂封止を施したストリップ(短冊形基板)である場合には、ワーク個片化物は半導体パッケージである。
【0038】
ワークの「表面」は、回路等が形成されている、あるいは、回路等の形成が予定されている側の面を指し、ワークの「裏面」は、回路等が形成されていない、あるいは、回路等の形成が予定されていない側の面を指す。
【0039】
DBGとは、ワークの表面側に所定深さの溝を形成した後、ワークの裏面側から研削を行い、研削によりワークを個片化する方法を言う。ワークの表面側に形成される溝は、ブレードダイシング、レーザーダイシングやプラズマダイシングなどの方法により形成される。
【0040】
また、LDBGとは、DBGの変形例であり、レーザーでワーク内部に改質領域を設け、ワーク裏面研削時の応力等でワークの個片化を行う方法を言う。
【0041】
「ワーク個片化物群」とは、ワークの個片化後に、本発明に係る表面保護シート上に保持された、複数のワーク個片化物をいう。これらのワーク個片化物は、全体として、ワークの形状と同様の形状を構成する。また、「チップ群」とは、ワークとしてのウエハの個片化後に、本発明に係る表面保護シート上に保持された、複数のチップをいう。これらのチップは、全体として、ウエハの形状と同様の形状を構成する。
【0042】
「(メタ)アクリレート」は、「アクリレート」および「メタクリレート」の双方を示す語として用いており、他の類似用語についても同様である。
【0043】
「エネルギー線」は、紫外線、電子線等を指し、好ましくは紫外線である。
【0044】
「重量平均分子量」は、特に断りのない限り、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)法により測定されるポリスチレン換算値である。このような方法による測定は、たとえば、東ソー社製の高速GPC装置「HLC-8120GPC」に、高速カラム「TSK guard column HXL-H」、「TSK Gel GMHXL」、「TSK Gel G2000 HXL」(以上、全て東ソー社製)をこの順序で連結したものを用い、カラム温度:40℃、送液速度:1.0mL/分の条件で、検出器を示差屈折率計として行われる。
【0045】
剥離シートは、粘着剤層を剥離可能に支持するシートである。シートとは、厚みを限定するものではなく、フィルムを含む概念で用いる。
【0046】
粘着剤層用組成物等の組成物に関する説明における質量比は、有効成分(固形分)に基づいており、特段の説明が無い限り、溶媒は算入しない。
【0047】
(1.ワークの加工方法)
本実施形態に係る方法により加工されるワークは、ワークの表面において、高低差が生じているワークである。このようなワークとしては、ワークの表面に凸状電極(バンプ電極、ピラー電極等)が形成されたワーク、ワークの表面にチップが配置されたチップオンウエハ(CoW)、ワークのエッジ部の一部が除去されたハーフトリムウエハ等が例示される。
【0048】
凸状電極が形成されたワークは、図1Aに示すように、ワーク1の表面1aに形成された回路と基板等とを電気的に接続するための凸状電極2aが表面に形成されたワークである。凸状電極2aは、ワークの厚さ方向に突出して形成されている。したがって、凸状電極の先端と、凸状電極が形成されていないワーク上の領域とでは高低差Dが存在している。
【0049】
チップオンウエハは、エレクトロニクスデバイスの高性能化および高密度実装化を進めるために用いられる。図1Bに示すように、チップオンウエハは、ウエハ1のような板状体上に、ウエハ1よりもサイズが小さいチップ2bがウエハの内周部に複数配置されたウエハである。チップオンウエハは、その後、ウエハをダイシングして、複数の高密度の積層パッケージとなる。チップ2bは、ワークの表面1a上に積層されている。したがって、チップの上面と、チップが配置されていないウエハ上の領域とでは高低差Dが存在している。
【0050】
ハーフトリムウエハは、ウエハの破損を防止するために用いられる。具体的には、ウエハの裏面研削において、ウエハの破損を招くチッピング等がウエハのエッジ部に発生することを防止するために、ウエハのエッジ部の表面側の一部をトリミング加工により除去されたウエハが、ハーフトリムウエハである。したがって、図1Cに示すように、ウエハ1において除去された領域(エッジ部)と、除去されていない領域とでは高低差Dが存在している。
【0051】
図1Aから1Cに示すように、表面1aが有する高低差Dは、ワーク(ウエハ)1の内周部と外周部との高低差に相当し、内周部は外周部に取り囲まれている。したがって、本実施形態では、表面が有する高低差は、内周部と、内周部を取り囲む外周部と、から形成され、外周部の高さが内周部の高さよりも低いことが好ましい。
【0052】
なお、凸状電極が形成されたワークの場合、凸状電極は、所定の間隔で複数形成されている。したがって、内周部であっても、凸状電極と凸状電極との間には、凸状電極が形成されていない領域(外周部)とほぼ同じ高さの領域が存在する。しかしながら、この領域の高さは、内周部の高さではなく、凸状電極の先端までの高さが内周部の高さとなる。
【0053】
また、チップオンウエハの場合、通常、チップは所定の間隔で配置されている。したがって、内周部であっても、チップとチップとの間にはチップが配置されていない領域(通常は格子状の領域)が存在し、この領域の高さは外周部の高さとほぼ一致する。しかしながら、この領域の高さは、内周部の高さではなく、チップの高さが内周部の高さとなる。
【0054】
また、ハーフトリムウエハの場合、外周部はトリミング加工により除去された領域であり、内周部はトリミング加工により除去されていない領域である。通常、内周部は一様な高さであるので、その高さが内周部の高さとなる。
【0055】
本実施形態に係るワークの加工方法は、以下の工程1および2を少なくとも備えている。
工程1:高低差を有する表面と、表面に対向する裏面と、を備え、表面上に表面の高低差による影響を抑制するための凸状パターンが形成されたワークにおいて、表面に表面保護シートを貼付する工程
工程2:表面に貼付された表面保護シートと、凸状パターンの少なくとも一部と、を表面から剥離する工程
【0056】
また、一方の面(表面)に回路等が形成され、他方の面(裏面)に回路等が形成されていないワークに対して、表面保護シートを貼付する場合、たとえば、ワークを個片化して得られるワーク個片化物の薄型化を実現するために、ワークの裏面を研削することがある。ワークの裏面研削では、ワーク表面への研磨材、冷却水等の浸入による回路等の汚染、裏面研削時に印加される力による回路等の破損が生じる可能性があるため、ワーク表面を保護する表面保護シートの貼付が有用である。
【0057】
したがって、本実施形態に係るワークの加工方法は、上記の工程1および2に加えて、以下の工程3を備えることが好ましい。なお、本実施形態では、工程3は、工程1の後、かつ工程2の前に行われる。
工程3:表面保護シートが貼付されたワークの裏面を研削する工程
【0058】
以下では、上記の工程1から工程3を備えるワークの加工方法において、ワークが、凸状電極が形成されたウエハであり、ワーク個片化物がチップである場合について説明する。
【0059】
(1.1.工程1)
工程1では、ウエハの表面に表面保護シートを貼付する。図1Aに示すように、ウエハ1の表面1aには、凸状電極2aに起因する高低差Dが生じている。この表面1aに表面保護シートを貼付した場合、図2(A)に示すように、表面保護シート20は、表面1aおよび凸状電極2aの形状に倣うため、高低差Dが表面保護シート20に反映され、表面保護シート20に高低差が生じる。
【0060】
表面保護シートに高低差が生じた状態で、ウエハを裏面研削に供する場合、図2(B)に示すように、ウエハの表面側、すなわち、表面保護シート20がチャックテーブル100に接するように載置され、たとえば吸着によりウエハ1および表面保護シート20はチャックテーブル100に固定される。このとき、凸状電極2a上に存在する表面保護シート20はチャックテーブル100に載置された時に、チャックテーブル100に接しているが、凸状電極2aが形成されていない領域上、すなわち、ウエハ1の外周部上に存在する表面保護シート20はチャックテーブル100に載置された時に、上記の高低差に起因して、表面保護シート20がチャックテーブル100に十分に接していない、あるいは、チャックテーブル100と表面保護シート20との間に隙間Cが生じていることがある。
【0061】
このような状態で吸着が行われると、図2(C)に示すように、ウエハ1の外周部上に存在する表面保護シート20は吸着により変形して、チャックテーブル100に向かって落ち込んで固定される。ウエハ1の外周部は表面保護シート20と密着しているので、表面保護シート20の変形に伴い、ウエハ1の外周部も変形する。すなわち、ウエハ1の外周部が、ウエハ1の内周部(凸状電極2aが形成されている領域)よりも、チャックテーブル100に近い位置で固定される。
【0062】
ウエハ1および表面保護シート20をチャックテーブル100に固定した後、ウエハ1の裏面1bが研削される。研削後のウエハを図2(D)に示す。ウエハの裏面はほぼ同じ高さに研削されるため、図2(D)に示すように、ウエハ1の外周部はチャックテーブル100に近い位置で固定されていた分だけ、ウエハ1の外周部の厚さは、ウエハ1の内周部の厚さよりも厚くなっている。その結果、吸着を解除すると、図2(E)に示すように、表面保護シート10の変形が開放され、ウエハ1の内周部とウエハ1の外周部との高低差が顕在化する。したがって、この場合、ウエハ1の外周部の厚さがウエハ1の厚さの最大値となり、ウエハ1の内周部の厚さがウエハ1の厚さの最小値となる傾向にある。
【0063】
ウエハの厚さの最大値とウエハの厚さの最小値との差はTTV(Total Thickness Variation)と称され、上記の高低差に起因して、TTVが大きくなってしまう。TTVが大きくなると、ウエハにクラックが生じやすくなる、ウエハの個片化時に不具合が生じる等の問題がある。すなわち、表面保護シート貼付時に存在するウエハの表面上の高低差Dは、裏面研削後のウエハのTTVに影響を及ぼすことがある。
【0064】
そこで、高低差による影響を抑制するために、本実施形態では、図3Aおよび図3Bに示すように、表面保護シートを表面に貼付する前に、表面1a上に凸状パターン3を形成する(工程A)。すなわち、工程Aは工程1よりも前に行われる。
【0065】
(1.2.凸状パターン)
凸状パターン3は、ウエハ1の表面1aにおいて、ウエハ1の厚さ方向に突出して形成されるパターンである。凸状パターン3は、上述した高低差Dによる影響を抑制するために形成されるパターンである。本実施形態では、図3Aおよび3Bに示すように、凸状パターンは凸状電極2aが形成されていない領域上に形成される。すなわち、凸状パターンは、ウエハの内周部(凸状電極2aが形成されている領域)よりも高さが低い領域(外周部)に形成されている。
【0066】
このような凸状パターン3が、外周部上に形成されていることにより、ウエハ1の表面に、表面保護シート10を貼付した場合に、凸状電極2aが形成されている領域に対応する部分に加えて、凸状パターン3に対応する部分も高くなる。その結果、凸状電極2aが形成されている領域(ウエハの内周部)と形成されていない領域(ウエハの外周部)とにおける高低差が抑制される。したがって、表面保護シート貼付時に存在するウエハの表面上の高低差が抑制され、当該高低差に起因する問題も抑制される。
【0067】
本実施形態では、凸状パターンの高さは、表面の高低差による影響を抑制できる高さに設定すればよい。たとえば、ワークが、凸状電極が形成されたウエハである場合、凸状電極の高さに応じて、凸状パターンの高さを設定することが好ましい。具体的には、凸状パターンの高さをH1とし、凸状電極の高さをHbとした時に、H1は、Hb/8<H1<Hb/1.5である関係を満足することが好ましく、Hb/6<H1<Hb/1.3である関係を満足することがより好ましい。
【0068】
また、ワークがチップオンウエハまたはハーフトリムウエハである場合、ウエハ表面の内周部の高さと外周部の高さとの差に応じて、凸状パターンの高さを設定することが好ましい。具体的には、凸状パターンの高さをH1とし、内周部の高さと外周部の高さとの差をHdとした時に、H1は、Hd/1.2<H1<Hd/0.5である関係を満足することが好ましく、Hd/1.1<H1<Hd/0.6である関係を満足することがより好ましい。なお、Hdは5μm以上2000μm以下の範囲内であることが好ましく、30μm以上1000μm以下の範囲内であることがより好ましい。
【0069】
H1がワークの種類により異なる理由は、たとえば、以下のような理由が推測される。凸状電極とチップオンウエハを構成するチップとを比較すると、チップの方が凸状電極よりもウエハ上に占める凹凸の面積および体積ともに大きい。換言すれば、チップの方が凸状電極よりもウエハ上に密に配置されている。したがって、凸状電極とチップとが同じ高さの凹凸を形成していても、凸状電極よりチップの方が、貼付時の表面保護シートの浮き上がりが特にウエハの内周部で大きくなり、裏面研削時のクラックが起こりやすい。その結果、このようなクラックの生じやすさの違いに起因して、H1が上記の範囲に制御される。
【0070】
凸状パターンのパターン形状は様々である。たとえば、図3Aに示すように、凸状パターン3は、ウエハ1の外縁を含むリング状に形成されていてもよい。このような凸状パターンは、形成が容易でありながら、表面の高低差による影響を確実に抑制することができる。また、図3Aに示す凸状パターン3は連続したパターンであるが、断続的に形成されたパターンであってもよい。
【0071】
また、図3Cに示すように、凸状パターン3は、ウエハ1の外縁から径方向内側に離隔して形成されていてもよい。このような凸状パターンは、後述する表面保護シートを剥離する工程(工程2)において、ピックアップテープで凸状パターン全面を覆うことができるため、凸状パターンを表面保護シートと共に剥離しやすいという利点を有する。
【0072】
なお、凸状パターンを、外周部(たとえば、凸状電極が形成されている領域の外側、あるいは、チップが配置されている領域の外側)全体に形成することもできるが、形成に必要な材料の量が多くなること、凸状電極および回路、チップ等に凸状パターンの材料が付着すること等の観点から、凸状電極あるいはチップから離隔して形成されることが好ましい。換言すれば、外周部は、凸状パターンが形成されていない領域を含むことが好ましい。
【0073】
なお、ワークが、チップオンウエハである場合、内周部におけるチップとチップとの間の領域(たとえば、格子状の領域)に凸状パターンを形成することもできる。
【0074】
凸状パターンの形成手段は、凸状パターンを形成するための材料に応じて決定すればよい。たとえば、後述する硬化性樹脂組成物を用いて凸状パターンを形成する場合、硬化前の液状樹脂を塗布する手段を用いることができる。具体的には、ダイコーター、カーテンコーター、スプレーコーター、スリットコーター、ナイフコーター等の塗布装置;スクリーン印刷、インクジェット印刷等の印刷装置;ディスペンサー等の滴下装置が使用可能である。
【0075】
(1.3.工程3)
上述したように、本実施形態では、工程1の後であって、工程2の前に工程3を行う。図4(A)に示すように、ウエハ1の表面1a上に凸状パターン3を形成した後、表面保護シート10が、ウエハの表面1a上および凸状パターン3上に貼付される。その後、ウエハ1の裏面1bを研削する。
【0076】
図4(B)に示すように、表面保護シート10が貼付されたウエハ1は、表面側がチャックテーブル100上に配置される。チャックテーブル100は、たとえば、ポーラスな保持面を有しており、ウエハ1が載置されている側とは反対側から吸引することにより、表面保護シート10がチャックテーブル100に吸着され固定される。
【0077】
このとき、ウエハ1には凸状パターン3が形成されているので、ウエハ1の内周部とウエハ1の外周部とで、表面保護シート10の高低差が抑制されている。したがって、吸引を行っても、ウエハ1の外周部はほとんど変形せずにチャックテーブル100に吸着される。
【0078】
ウエハ1がチャックテーブル100に固定された後、たとえば、研削ホイール等によりウエハ1の裏面1bを研削する。裏面研削後のウエハの厚さは、たとえば、25μm以上600μm以下程度である。
【0079】
研削後、吸引を解除すると、ウエハ1および表面保護シート10は、チャックテーブル100から開放される。本実施形態では、工程1において工程Aを採用しているので、図4(C)に示すように、ワーク1の厚さは、内周部から外周部に渡りほぼ均一になる。その結果、表面の高低差に起因する問題、すなわち、研削後のワーク1のTTVの問題は抑制されている。
【0080】
(1.4.工程2)
工程3の後、ウエハを次工程に送る場合には、ウエハの表面から表面保護シートを剥離する。このとき、表面上に表面保護シートの残渣が発生すると、ウエハを次工程に送るまえに、洗浄等の余分な工程が必要となってしまう。したがって、表面保護シートは、残渣等を生じることなく、表面から良好に剥離される必要がある。このことは、表面に形成されている凸状パターンについても表面保護シートと同様に当てはまる。すなわち、ウエハの表面から表面保護シートが剥離される際には、凸状パターンも表面から良好に剥離される必要がある。本実施形態では、残渣等の観点から、表面保護シートの剥離工程において、凸状パターンの全部が表面から剥離されることが好ましい。工程2において、凸状パターンの剥離性を良好にするために、本実施形態では、凸状パターンの物性を以下のように制御している。
【0081】
(1.5.凸状パターンの物性)
本実施形態では、ポリイミド膜が形成されたワークに対する凸状パターンの50℃における粘着力を1000mN/25mm以下としている。凸状パターンの粘着力が上記の範囲内であることにより、表面からの凸状パターンの良好な剥離が達成される。
【0082】
当該凸状パターンの粘着力は、1000mN/25mm以下であることが好ましく、800mN/25mm以下であることがより好ましく、500mN/25mm以下であることがさらに好ましい。一方、凸状パターンの形成時に凸状パターンが表面上に確実に固定される観点から、当該凸状パターンの粘着力の下限値は10mN/25mmである。
【0083】
ウエハは、上述したように、半導体、絶縁体等から構成されるが、ウエハの表面に形成されている回路等を保護、絶縁等するために、表面上に所定の機能膜が形成されることがある。機能膜が形成されている場合、凸状パターンは機能膜上に形成されることになる。機能膜としては、たとえば、ポリイミド膜、ポリベンゾオキサゾール膜等の有機膜が例示される。このような有機膜は、ウエハを構成する材料よりも、凸状パターンとの相性がよく、凸状パターンは有機膜に強固に固定されやすい傾向にある。特に、凸状パターンが樹脂組成物から構成されている場合には、その傾向は顕著である。
【0084】
そこで、本実施形態では、ウエハの表面から剥離しにくい条件における凸状パターンの粘着力を上記の範囲内とすることにより、ウエハの種類および構成にかかわらず、凸状パターンの良好な剥離性を確保している。換言すれば、ポリイミド膜が形成されていないウエハ、たとえば、シリコンウエハに対する粘着力が1000mN/25mm以下である凸状パターンであっても、ポリイミド膜が形成されたウエハに対する粘着力は、シリコンウエハに対する粘着力よりも大きくなるので、当該凸状パターンのポリイミド膜が形成されたウエハに対する粘着力が1000mN/25mm以下であるとは限らない。
【0085】
本実施形態では、凸状パターンの引張破断伸度が4%以上であることが好ましい。すなわち、凸状パターンの剥離時にある程度伸びることが好ましい。伸びない場合、剥離時に印加される力が十分緩和されず、集中した力により割れやすくなり、剥離を完了できない場合がある。このような問題は、低速での剥離時には生じにくいが、高速での剥離時に顕在化する傾向にある。したがって、凸状パターンの引張破断伸度が上記の範囲内であることにより、剥離時に割れにくくなり、剥離速度が高速であっても、良好な剥離を行うことができる。
【0086】
凸状パターンの引張破断伸度は、8%以上であることがより好ましく、15%以上であることがさらに好ましい。また、当該凸状パターンの引張破断伸度の上限値は特に制限されないが、たとえば、100%である。
【0087】
(1.6.凸状パターンの組成)
凸状パターンを構成する材料は、上述した物性を達成できる材料であればよい。本実施形態では、凸状パターンの形成が容易であるという観点から、凸状パターンを構成する材料は樹脂組成物であることが好ましい。樹脂組成物としては、ウエハ表面に対して密着する粘着性組成物であることが好ましい。粘着性組成物としては、たとえば、アクリル系粘着剤用組成物、シリコーン系粘着剤用組成物、ウレタン系粘着剤用組成物、エポキシ系粘着剤用組成物、フェノール系粘着剤用組成物、尿素系粘着剤用組成物、アルキド系粘着剤用組成物、酢酸ビニル系粘着剤用組成物、塩化ビニル系粘着剤用組成物、アミド系粘着剤用組成物、イミド系粘着剤用組成物、クロロプレンゴム、ニトリルゴム、スチレンブタジエンゴム等が例示される。
【0088】
また、樹脂組成物は硬化性であることが好ましい。樹脂組成物が硬化性である場合、凸状パターンの50℃における粘着力および引張破断伸度は硬化後の物性である。樹脂組成物が硬化性であることにより、硬化前には所定の形状とすることが容易であり、硬化後には、上述した粘着力の範囲を満足することが容易となる。硬化性樹脂組成物として、熱硬化性樹脂組成物、エネルギー線硬化性樹脂組成物等が例示される。
【0089】
本実施形態では、粘着力を上記の範囲内とすることが容易であるという観点から、エネルギー線硬化性樹脂組成物が好ましく、エネルギー線硬化性のアクリル系粘着剤用組成物であることがより好ましい。エネルギー線硬化性のアクリル系粘着剤用組成物は、以下に示す成分を含有していることが好ましい。
【0090】
(1.6.1.エネルギー線硬化性化合物)
エネルギー線硬化性化合物としては、分子内に不飽和基を有し、エネルギー線照射により重合硬化可能なモノマー又はオリゴマーが好ましい。
【0091】
このようなエネルギー線硬化性化合物としては、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトール(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、1,4-ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6-へキサンジオール(メタ)アクリレート等の多価(メタ)アクリレートモノマー、ウレタン(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート,ポリエーテル(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート等のオリゴマーが挙げられる。
【0092】
これらの中でも、硬化後の粘着力や引張破断伸度を適切な範囲に調整するために、ウレタン(メタ)アクリレートおよびジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートが好ましい。
【0093】
ウレタン(メタ)アクリレートは、オリゴマーであってもよいし、ポリマーであってもよいし、これらの混合物であってもよい。本実施形態では、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーが好ましい。
【0094】
ウレタン(メタ)アクリレートは、たとえば、ポリオール化合物と、多価イソシアネート化合物とを反応させて得られる末端イソシアネートウレタンプレポリマーに、ヒドロキシル基を有する(メタ)アクリレートを反応させて得ることができる。なお、ウレタン(メタ)アクリレートは、1種または2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0095】
アクリル系粘着剤用組成物中のウレタン(メタ)アクリレートの含有割合は、5質量%以上であることが好ましく、10質量%以上であることがより好ましく、15質量%以上であることがさらに好ましい。また、アクリル系粘着剤用組成物中のウレタン(メタ)アクリレートの含有割合は、80質量%以下であることが好ましく、60質量%以下であることがより好ましく、40質量%以下であることがさらに好ましい。
【0096】
アクリル系粘着剤用組成物中のジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートの含有割合は、3質量%以上であることが好ましく、5質量%以上であることがより好ましく、7質量%以上であることがさらに好ましい。また、アクリル系粘着剤用組成物中のジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートの含有割合は、50質量%以下であることが好ましく、40質量%以下であることがより好ましく、20質量%以下であることがさらに好ましい。
【0097】
(1.6.2.重合性単量体)
重合性単量体は、上記のウレタン(メタ)アクリレートおよびジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート以外の重合性化合物であって、エネルギー線の照射により他の成分と重合可能な化合物であることが好ましい。本実施形態では、重合性単量体は、反応性不飽和二重結合基を1つ有する化合物である。
【0098】
重合性単量体としては、たとえば、炭素数が1~30であるアルキル基を有する(メタ)アクリレート;水酸基、アミド基、アミノ基、エポキシ基等の官能基を有する(メタ)アクリレート;脂環式構造を有する(メタ)アクリレート;芳香族構造を有する(メタ)アクリレート;複素環式構造を有する(メタ)アクリレート;スチレン、ヒドロキシエチルビニルエーテル、ヒドロキシブチルビニルエーテル、N-ビニルホルムアミド、N-ビニルピロリドン、N-ビニルカプロラクタム等のビニル化合物が挙げられる。
【0099】
炭素数が1~30であるアルキル基を有する(メタ)アクリレートとしては、たとえば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、n-ペンチル(メタ)アクリレート、n-ヘキシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ウンデシル(メタ)アクレート、ドデシル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、テトラデシル(メタ)アクリレート、ヘキサデシル(メタ)アクリレート、オクタデシル(メタ)アクリレート、エイコシル(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0100】
官能基を有する(メタ)アクリレートとしては、たとえば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等の水酸基含有(メタ)アクリレート;(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、N-ブチル(メタ)アクリルアミド、N-メチロール(メタ)アクリルアミド、N-メチロールプロパン(メタ)アクリルアミド、N-メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド等のアミド基含有化合物;第1級アミノ基含有(メタ)アクリレート、第2級アミノ基含有(メタ)アクリレート、第3級アミノ基含有(メタ)アクリレート等のアミノ基含有(メタ)アクリレート;グリシジル(メタ)アクリレート、メチルグリシジル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテル等のエポキシ基含有(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0101】
脂環式構造を有する(メタ)アクリレートとしては、たとえば、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシ(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、トリメチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、アダマンタン(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0102】
芳香族構造を有する(メタ)アクリレートとしては、たとえば、フェニルヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0103】
複素環式構造を有する(メタ)アクリレートとしては、たとえば、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、モルホリン(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0104】
本実施形態では、重合性単量体には、脂環式構造を有する(メタ)アクリレートが含まれることが好ましい。脂環式構造を有する(メタ)アクリレートとして、イソボルニル(メタ)アクリレートが好ましい。
【0105】
アクリル系粘着剤用組成物中の重合性単量体の含有割合は、10質量%以上であることが好ましく、30質量%以上であることがより好ましく、50質量%以上であることがさらに好ましい。また、アクリル系粘着剤用組成物中の重合性単量体の含有割合は、95質量%以下であることが好ましく、90質量%以下であることがより好ましく、80質量%以下であることがさらに好ましい。
【0106】
(1.6.3.光重合開始剤)
アクリル系粘着剤用組成物が、上記のウレタン(メタ)アクリレートおよびジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートと、重合性単量体と、を含む場合、アクリル系粘着剤用組成物は光重合開始剤を含むことが好ましい。光重合開始剤を含むことにより、重合が確実に進行し、上述した特性を有する凸状パターンを容易に得ることができる。
【0107】
光重合開始剤としては、たとえば、ベンゾイン化合物、アセトフェノン化合物、アシルフォスフィノキサイド化合物、チタノセン化合物、チオキサントン化合物、パーオキサイド化合物等の光重合開始剤、アミンやキノン等の光増感剤等が挙げられる。具体的には、たとえば、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-プロパン-1-オン、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オンが挙げられる。これらの光重合開始剤は、1種または2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0108】
光重合開始剤の配合量は、ウレタン(メタ)アクリレートおよびジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートと、重合性単量体との合計100質量部に対して、好ましくは0.1質量部以上10質量部以下であることが好ましく、0.3質量部以上5質量部以下であることがより好ましい。
【0109】
(1.6.4.表面張力調整剤)
アクリル系粘着剤用組成物は表面張力調整剤を含有することが好ましい。表面張力調整剤は、エネルギー線照射により、粘着剤用組成物の粘着力を低下させるとともに、エネルギー線硬化後の組成物に柔軟性をあたえることができる。
【0110】
表面張力調整剤としては、たとえば、シリコーン変性アクリレート等が例示される。本実施形態では、官能基数が1~12であるシリコーン変性アクリレートが好ましい。これらの表面張力調整剤は、1種または2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0111】
アクリル系粘着剤用組成物中の表面張力調整剤の含有割合は、0.5質量%以上であることが好ましく、1質量%以上であることがより好ましく、5質量%以上であることがさらに好ましい。また、アクリル系粘着剤用組成物中の表面張力調整剤の含有割合は、20質量%以下であることが好ましく、15質量%以下であることがより好ましく、10質量%以下であることがさらに好ましい。
【0112】
(1.7.表面保護シート)
表面に貼付される表面保護シートとしては、ウエハ表面の回路等を保護するように構成されていればよい。本実施形態では、図5Aに示すように、表面保護シート10は、基材11と粘着剤層12とを有することが好ましい。粘着剤層がウエハ表面に貼付されることにより、ウエハ表面が確実に保護される。なお、粘着剤層はウエハ表面の高低差に追従してもよいし、追従しなくてもよい。
【0113】
たとえば、ワークが、凸状電極が形成されたウエハである場合、粘着剤層が高低差に追従して、凸状電極を埋め込むことが好ましい。一方、ワークが、チップオンウエハである場合、粘着剤層が高低差に追従しなくてもよい。すなわち、粘着剤層がチップとチップとの間に入り込んでいなくてもよい。なお、凸状パターンは、表面保護シートに埋め込まれてもよいし、凸状パターンの一部が表面保護シートに埋め込まれず、凸状パターンの一部が外部に露出してもよい。
【0114】
また、図5Bに示すように、表面保護シート10において、基材11と粘着剤層12との間に中間層13が配置されていてもよい。中間層により、ウエハ表面における高低差を抑制することが容易となる。特に、ワークが、凸状電極が形成されたウエハである場合には、凸状電極を確実に埋め込むことが可能となる。
【0115】
以下では、図5Bに示す表面保護シート10について詳細に説明する。図5Bは、基材11上に中間層13および粘着剤層12がこの順に積層された構成を有する表面保護シート10を示す。
【0116】
表面保護シート10は、他の層を有していてもよい。たとえば、基材11と中間層13との間に他の層が形成されていてもよいし、中間層13と粘着剤層12との間に他の層が形成されていてもよい。
【0117】
以下では、図5Bに示す表面保護シート10の構成要素について詳細に説明する。
【0118】
(1.7.1.基材)
基材は、表面保護シートの剛性を担う部材である。基材としては、ワークを支持できる材料で構成されていれば制限されない。たとえば、バックグラインドテープの基材として使用されている各種の樹脂フィルムが例示される。このような樹脂フィルムを用いることにより、研削によりワークの厚みが薄くなっても破損することなくワークを保持できる。基材は、1つの樹脂フィルムからなる単層フィルムから構成されていてもよいし、複数の樹脂フィルムが積層された複層フィルムから構成されていてもよい。
【0119】
本実施形態では、基材の材質としては、たとえば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、全芳香族ポリエステル等のポリエステル、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリアセタール、変性ポリフェニレンオキシド、ポリフェニレンスルフィド、ポリスルホン、ポリエーテルケトン、二軸延伸ポリプロピレン等が挙げられる。これらの中でも、ポリエステルが好ましく、ポリエチレンテレフタレートがより好ましい。
【0120】
基材の厚さは、表面保護シートの剛性に影響するため、基材の材質に応じて設定すればよい。本実施形態では、基材の厚さは25μm以上200μm以下であることが好ましく、35μm以上150μm以下であることがより好ましく、40μm以上150μm以下であることがさらに好ましい。
【0121】
基材の少なくとも一方の主面には、主面上に形成される層との密着性を向上させるために、コロナ処理等の接着処理を施してもよい。また、基材の少なくとも一方の主面には、主面上に形成される層との密着性を向上させるために、易接着層が形成されていてもよい。
【0122】
(1.7.2.粘着剤層)
粘着剤層は、ウエハの表面に貼付され、表面から剥離されるまで、表面を保護し、ウエハを支持する。本実施形態では、粘着剤層は、ウエハの表面に密着して固定される。その結果、裏面研削時に、冷却水等が用いられても、ウエハ表面への冷却水の浸入を防ぎ、表面保護シートはウエハの表面を十分に保護することができる。さらに、ウエハが個片化されてもチップ同士の接触を抑制することができる。また、粘着剤層は1層(単層)から構成されていてもよいし、2層以上の複数層から構成されていてもよい。
【0123】
粘着剤層の厚みは、ウエハを十分支持できるような厚みであれば特に制限されない。本実施形態では、粘着剤層の厚みは1μm以上100μm以下であることが好ましく、5μm以上50μm以下であることがより好ましい。なお、粘着剤層の厚さは、粘着剤層全体の厚さを意味する。たとえば、複数層から構成される粘着剤層の厚さは、粘着剤層を構成するすべての層の合計の厚さを意味する。
【0124】
粘着剤層の組成は、ウエハの表面を保護できる程度の粘着性を有していれば限定されない。本実施形態では、粘着剤層は、たとえば、アクリル系粘着剤、ウレタン系粘着剤、ゴム系粘着剤、シリコーン系粘着剤等から構成されることが好ましい。
【0125】
また、粘着剤層は、エネルギー線硬化性粘着剤から形成されることが好ましい。表面保護シートの粘着剤層がエネルギー線硬化性粘着剤から形成されることにより、ウエハに貼付する際には高い粘着力でウエハに貼り付き、ウエハから剥離される際には、エネルギー線を照射することで粘着力を低下させることができる。そのため、ウエハの回路等を適切に保護しつつ、表面保護シートを剥離する際、ウエハ表面の回路を破壊したり、粘着剤がウエハ上に転着したりすることが防止される。
【0126】
本実施形態では、エネルギー線硬化性粘着剤は、アクリル系粘着剤を含む粘着剤組成物から構成されることが好ましい。アクリル系粘着剤としては、アクリル系重合体を用いることが好ましい。エネルギー線硬化性のアクリル系粘着剤としては、エネルギー線硬化性を有するアクリル系重合体から構成されるアクリル系粘着剤であってもよいし、エネルギー線硬化性を有するアクリル系重合体および/またはエネルギー線硬化性を有さないアクリル系重合体と、エネルギー線硬化性基を有するオリゴマーのようなエネルギー線硬化性化合物と、を含むアクリル系粘着剤であってもよい。本実施形態では、エネルギー線硬化性を有するアクリル系重合体から構成されるアクリル系粘着剤が好ましい。
【0127】
エネルギー線硬化性を有するアクリル系重合体としては、公知のアクリル系重合体であればよいが、本実施形態では、官能基含有アクリル系重合体にエネルギー硬化性基が導入されたアクリル系重合体が好ましい。官能基含有アクリル系重合体は、1種類のアクリル系モノマーから形成された単独重合体であってもよいし、複数種類のアクリル系モノマーから形成された共重合体であってもよいし、1種類または複数種類のアクリル系モノマーとアクリル系モノマー以外のモノマーとから形成された共重合体であってもよい。
【0128】
本実施形態では、官能基含有アクリル系重合体は、アルキル(メタ)アクリレートと官能基含有モノマーとを共重合したアクリル系共重合体であることが好ましい。
【0129】
アルキル(メタ)アクリレートとしては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、n-ペンチル(メタ)アクリレート、n-ヘキシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0130】
官能基含有モノマーは、反応性官能基を含有するモノマーである。反応性官能基は、後述する架橋剤等の他の化合物と反応することが可能な官能基である。官能基含有モノマー中の官能基としては、たとえば、水酸基、カルボキシ基、エポキシ基が挙げられ、水酸基が好ましい。
【0131】
水酸基含有モノマーとしては、たとえば、(メタ)アクリル酸ヒドロキシメチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸3-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸3-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸4-ヒドロキシブチル等の(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキル;ビニルアルコール、アリルアルコール等の非(メタ)アクリル系不飽和アルコール((メタ)アクリロイル骨格を有しない不飽和アルコール)が挙げられる。
【0132】
エネルギー線硬化性基としては、(メタ)アクリロイル基、ビニル基等が挙げられ、(メタ)アクリロイル基が好ましい。エネルギー線硬化性基は、たとえば、後述するエネルギー線硬化性化合物等を、上記の官能基含有アクリル系重合体に付加することにより、アクリル系重合体に導入される。
【0133】
エネルギー線硬化性基を有するエネルギー線硬化性化合物としては、イソシアネート基、エポキシ基及びカルボキシ基から選ばれる1種または2種以上を有する化合物が好ましく、イソシアネート基を有する化合物がより好ましい。
【0134】
イソシアネート基を有する化合物としては、たとえば、2-メタクリロイルオキシエチルイソシアネート、メタ-イソプロペニル-α,α-ジメチルベンジルイソシアネート、メタクリロイルイソシアネート、アリルイソシアネート、1,1-(ビスアクリロイルオキシメチル)エチルイソシアネート;ジイソシアネート化合物又はポリイソシアネート化合物と、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートとの反応により得られるアクリロイルモノイソシアネート化合物;ジイソシアネート化合物又はポリイソシアネート化合物と、ポリオール化合物と、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートとの反応により得られるアクリロイルモノイソシアネート化合物等が挙げられる。イソシアネート基は官能基含有アクリル系重合体の水酸基に付加反応する。
【0135】
粘着剤組成物は、さらに架橋剤を含有することが好ましい。架橋剤は、たとえば、官能基と反応して、官能基含有アクリル系重合体に含まれる樹脂同士を架橋する。
【0136】
架橋剤としては、たとえば、トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、これらジイソシアネートのアダクト体等のイソシアネート系架橋剤(イソシアネート基を有する架橋剤);エチレングリコールグリシジルエーテル等のエポキシ系架橋剤(グリシジル基を有する架橋剤);ヘキサ[1-(2-メチル)-アジリジニル]トリフオスファトリアジン等のアジリジン系架橋剤(アジリジニル基を有する架橋剤);アルミニウムキレート等の金属キレート系架橋剤(金属キレート構造を有する架橋剤);イソシアヌレート系架橋剤(イソシアヌル酸骨格を有する架橋剤)等が挙げられる。
【0137】
粘着剤の凝集力を向上させて粘着剤層の粘着力を向上させる点、及び入手が容易である等の点から、架橋剤はイソシアネート系架橋剤であることが好ましい。
【0138】
粘着剤組成物は、さらに光重合開始剤を含有していてもよい。粘着剤組成物が光重合開始剤を含有することにより、紫外線等の比較的低エネルギーのエネルギー線を照射しても、十分に硬化反応が進行する。
【0139】
光重合開始剤としては、ベンゾイン化合物、アセトフェノン化合物、アシルフォスフィンオキサイド化合物、チタノセン化合物、チオキサントン化合物、パーオキサイド化合物等の光開始剤、アミンやキノン等の光増感剤などが挙げられる。具体的には、α-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンジルジフェニルサルファイド、ベンジルジメチルケタール、テトラメチルチウラムモノサルファイド、アゾビスイソブチロニトリル、ジベンジル、ジアセチル、β-クロールアンスラキノン、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイドなどが例示される。
【0140】
(1.7.3.中間層)
中間層は、基材と粘着剤層との間に配置される層である。本実施形態では、中間層は1層(単層)から構成されていてもよいし、2層以上の複数層から構成されていてもよい。
【0141】
中間層の厚みは、ウエハ表面における高低差を考慮して設定すればよい。本実施形態では、中間層の厚みは50μm以上600μm以下であることが好ましく、150μm以上500μm以下であることがより好ましい。なお、中間層の厚さは、中間層全体の厚さを意味する。たとえば、複数層から構成される中間層の厚さは、中間層を構成するすべての層の合計の厚さを意味する。
【0142】
本実施形態では、表面保護シートが中間層を有する場合、中間層は以下の物性を有していることが好ましい。
【0143】
(1.7.3.1.65℃におけるせん断貯蔵弾性率)
本実施形態では、65℃における中間層のせん断貯蔵弾性率(G’)は0.5MPa以下であることが好ましい。せん断貯蔵弾性率(G’)は、中間層の変形のしやすさ(硬さ)の指標の1つである。65℃における中間層のせん断貯蔵弾性率(G’)が上記の範囲内であることにより、裏面研削時のウエハ等の破損を抑制することができる。
【0144】
65℃における中間層のせん断貯蔵弾性率は0.4MPa以下であることがより好ましく、0.2MPa以下であることがさらに好ましい。また、65℃における中間層のせん断貯蔵弾性率は、表面保護シートの保管時における中間層成分のしみ出し抑制の観点から、0.005MPa以上であることが好ましい。
【0145】
65℃における中間層のせん断貯蔵弾性率は、公知の方法により測定すればよい。たとえば、中間層を所定の大きさの試料とし、動的粘弾性測定装置により、所定の温度範囲において、所定の周波数で試料にひずみを与えて、弾性率を測定し、測定された弾性率から、せん断貯蔵弾性率を算出することができる。
【0146】
(1.7.3.2.65℃における損失正接)
本実施形態では、65℃における中間層の損失正接(tanδ)は0.5より大きいことが好ましい。損失正接は、「損失弾性率/貯蔵弾性率」で定義され、動的粘弾性測定装置により対象物に与えた応力に対する応答によって測定される値である。65℃における中間層の損失正接が上記の範囲内であることにより、裏面研削時のウエハ等の破損を抑制することができる。
【0147】
65℃における中間層の損失正接は0.7以上であることがより好ましく、1.0以上であることがさらに好ましい。また、65℃における中間層の損失正接は2.0以下であることが好ましい。
【0148】
65℃における中間層の損失正接は、せん断貯蔵弾性率と同様に、公知の方法により測定すればよい。たとえば、中間層を所定の大きさの試料とし、動的粘弾性測定装置により、所定の温度範囲において、所定の周波数で試料にひずみを与えて、弾性率を測定し、測定された弾性率から、損失正接を算出することができる。
【0149】
(1.7.4.中間層用組成物)
中間層の組成は特に限定されないが、本実施形態では、中間層は樹脂を有する組成物(中間層用組成物)から構成されていることが好ましい。中間層用組成物は、以下に示す成分を含有していることが好ましい。
【0150】
(1.7.4.1.ウレタン(メタ)アクリレート)
ウレタン(メタ)アクリレートは、少なくとも(メタ)アクリロイル基およびウレタン結合を有する化合物であり、エネルギー線照射により重合する性質を有している。本実施形態では、ウレタン(メタ)アクリレートは、中間層に柔軟性を与えるための成分である。
【0151】
ウレタン(メタ)アクリレートは、単官能型であってもよいし、多官能型であってもよい。本実施形態では、多官能型ウレタン(メタ)アクリレートが好ましく、2官能型ウレタン(メタ)アクリレートが好ましい。
【0152】
ウレタン(メタ)アクリレートは、オリゴマーであってもよいし、ポリマーであってもよいし、これらの混合物であってもよい。本実施形態では、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーが好ましい。
【0153】
ウレタン(メタ)アクリレートは、たとえば、ポリオール化合物と、多価イソシアネート化合物とを反応させて得られる末端イソシアネートウレタンプレポリマーに、ヒドロキシル基を有する(メタ)アクリレートを反応させて得ることができる。なお、ウレタン(メタ)アクリレートは、1種または2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0154】
中間層用組成物中のウレタン(メタ)アクリレートの含有割合は、20質量%以上であることが好ましく、25質量%以上であることがより好ましく、30質量%以上であることがさらに好ましい。また、中間層用組成物中のウレタン(メタ)アクリレートの含有割合は、70質量%以下であることが好ましく、65質量%以下であることがより好ましく、50質量%以下であることがさらに好ましい。
【0155】
(1.7.4.2.重合性単量体)
重合性単量体は、上記のウレタン(メタ)アクリレート以外の重合性化合物であって、エネルギー線の照射により他の成分と重合可能な化合物であることが好ましい。本実施形態では、重合性単量体は、反応性不飽和二重結合基を1つ有する化合物である。
【0156】
重合性単量体としては、たとえば、炭素数が1~30であるアルキル基を有する(メタ)アクリレート;水酸基、アミド基、アミノ基、エポキシ基等の官能基を有する(メタ)アクリレート;脂環式構造を有する(メタ)アクリレート;芳香族構造を有する(メタ)アクリレート;複素環式構造を有する(メタ)アクリレート;スチレン、ヒドロキシエチルビニルエーテル、ヒドロキシブチルビニルエーテル、N-ビニルホルムアミド、N-ビニルピロリドン、N-ビニルカプロラクタム等のビニル化合物が挙げられる。
【0157】
炭素数が1~30であるアルキル基を有する(メタ)アクリレートとしては、たとえば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、n-ペンチル(メタ)アクリレート、n-ヘキシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ウンデシル(メタ)アクレート、ドデシル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、テトラデシル(メタ)アクリレート、ヘキサデシル(メタ)アクリレート、オクタデシル(メタ)アクリレート、エイコシル(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0158】
官能基を有する(メタ)アクリレートとしては、たとえば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等の水酸基含有(メタ)アクリレート;(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、N-ブチル(メタ)アクリルアミド、N-メチロール(メタ)アクリルアミド、N-メチロールプロパン(メタ)アクリルアミド、N-メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド等のアミド基含有化合物;第1級アミノ基含有(メタ)アクリレート、第2級アミノ基含有(メタ)アクリレート、第3級アミノ基含有(メタ)アクリレート等のアミノ基含有(メタ)アクリレート;グリシジル(メタ)アクリレート、メチルグリシジル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテル等のエポキシ基含有(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0159】
脂環式構造を有する(メタ)アクリレートとしては、たとえば、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシ(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、トリメチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、アダマンタン(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0160】
芳香族構造を有する(メタ)アクリレートとしては、たとえば、フェニルヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0161】
複素環式構造を有する(メタ)アクリレートとしては、たとえば、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、モルホリン(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0162】
本実施形態では、重合性単量体には、炭素数が1~30であるアルキル基を有する(メタ)アクリレートおよび脂環式構造を有する(メタ)アクリレートが含まれることが好ましい。炭素数が1~30であるアルキル基を有する(メタ)アクリレートの中でも、炭素数が4~14であるアルキル基を有する(メタ)アクリレートが好ましく、脂環式構造を有する(メタ)アクリレートとして、イソボルニル(メタ)アクリレート、トリメチルシクロヘキシル(メタ)アクリレートが好ましい。
【0163】
なお、中間層用組成物に架橋剤が含まれる場合、架橋剤と反応しうる官能基を有する(メタ)アクリレートは好ましくない。架橋反応により形成される架橋構造が、中間層のせん断貯蔵弾性率を高める可能性があるからである。たとえば、ポリイソシアネート系架橋剤と、水酸基を有する(メタ)アクリレートとを含む中間層用組成物は好ましくない。
【0164】
中間層用組成物中の重合性単量体の含有割合は、20質量%以上であることが好ましく、30質量%以上であることがより好ましい。また、中間層用組成物中の重合性単量体の含有割合は、80質量%以下であることが好ましく、70質量%以下であることがより好ましい。
【0165】
また、ウレタン(メタ)アクリレートと重合性単量体との合計100質量部におけるウレタン(メタ)アクリレートと重合性単量体との質量比(ウレタン(メタ)アクリレート/重合性単量体)は、20/80から80/20であることが好ましく、30/70から70/30であることがより好ましい。
【0166】
(1.7.4.3.光重合開始剤)
中間層用組成物が上記のウレタン(メタ)アクリレートおよび重合性単量体を含む場合、中間層用組成物は光重合開始剤を含むことが好ましい。光重合開始剤を含むことにより、重合が確実に進行し、上述した特性を有する中間層を容易に得ることができる。
【0167】
光重合開始剤としては、たとえば、ベンゾイン化合物、アセトフェノン化合物、アシルフォスフィノキサイド化合物、チタノセン化合物、チオキサントン化合物、パーオキサイド化合物等の光重合開始剤、アミンやキノン等の光増感剤等が挙げられる。具体的には、たとえば、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-プロパン-1-オン、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オンが挙げられる。これらの光重合開始剤は、1種または2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0168】
光重合開始剤の配合量は、ウレタン(メタ)アクリレートおよび重合性単量体の合計100質量部に対して、好ましくは0.05質量部以上15質量部以下であることが好ましく、0.5質量部以上10質量部以下であることがより好ましい。
【0169】
(1.7.4.4.連鎖移動剤)
中間層用組成物は連鎖移動剤を含有することが好ましい。連鎖移動剤は、連鎖移動反応を起こすことができ、中間層用組成物の硬化反応の進行を調整することができる。連鎖移動剤を含有することにより、硬化後においても、分子鎖の短い成分が比較的残存することが可能となるので、硬化後の重合体が比較的柔軟性を有する架橋構造を有する。その結果、中間層のせん断貯蔵弾性率を上記の範囲内とすることが容易となる。
【0170】
連鎖移動剤としては、たとえば、チオール基含有化合物が挙げられる。チオール基含有化合物としては、ノニルメルカプタン、1-ドデカンチオール、1,2-エタンジチオール、1,3-プロパンジチオール、トリアジンチオール、トリアジンジチオール、トリアジントリチオール、1,2,3-プロパントリチオール、テトラエチレングリコール-ビス(3-メルカプトプロピオネート)、トリメチロールプロパントリス(3-メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキスチオグルコレート、ジペンタエリスリトールヘキサキス(3-メルカプトプロピオネート)、トリス[(3-メルカプトプロピオニロキシ)-エチル]-イソシアヌレート、1,4-ビス(3-メルカプトブチリルオキシ)ブタン、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトブチレート)、1,3,5-トリス(3-メルカプトブチルオキシエチル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6-(1H,3H,5H)-トリオンが挙げられる。連鎖移動剤は、1種または2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0171】
連鎖移動剤の配合量は、ウレタン(メタ)アクリレートおよび重合性単量体の合計100質量部に対して、好ましくは0.1質量部以上10質量部以下であることが好ましく、0.3質量部以上5質量部以下であることがより好ましい。
【0172】
(1.7.5.表面保護シートの製造)
表面保護シートは、公知の方法により製造することができる。たとえば、まず、上述した粘着剤層用組成物(必要に応じて中間層用組成物)を調製する。次に、公知の塗工方法を用いて、剥離シート、基材等の表面に調製した組成物を塗工し、乾燥処理、硬化処理等を行うことにより、所定の構成を有する表面保護シートが得られる。
【0173】
(1.8.工程4Aおよび4B)
本実施形態に係るワークの加工方法は、DBGまたはLDBGにも適用可能である。この場合には、表面保護シートとして、図5Cに示す表面保護シート10を用いることが好ましい。図5Cに示す表面保護シート10は、基材11において、中間層12および粘着剤層13が形成されている主面とは反対側の主面11b上に緩衝層14が形成されている。
【0174】
緩衝層は、基材と比較して軟質の層であり、ウエハの裏面研削時の応力を緩和して、ウエハに割れ及び欠けが生じることを防止する。また、緩衝層を有することで、チャックテーブルに適切に保持されやすくなる。
【0175】
緩衝層の厚さは、1~200μmであることが好ましく、10~100μmであることがより好ましく、20~80μmであることがさらに好ましい。緩衝層の厚さを上記範囲とすることで、緩衝層が裏面研削時の応力を適切に緩和できるようになる。
【0176】
緩衝層は、エネルギー線重合性化合物を含む緩衝層用組成物から形成される層であってもよいし、ポリプロピレンフィルム、エチレン-酢酸ビニル共重合体フィルム、アイオノマー樹脂フィルム、エチレン・(メタ)アクリル酸共重合体フィルム、エチレン・(メタ)アクリル酸エステル共重合体フィルム、LDPEフィルム、LLDPEフィルム等のフィルムであってもよい。
【0177】
本実施形態に係るワークの加工方法をDBGまたはLDBGに適用する場合、上記の工程1~3に加えて、ウエハの表面に溝を形成する工程(工程4A:DBG)、または、当該ウエハ内部に改質領域を形成する工程(工程4B:LDBG)を有する。溝および改質領域は、上述した工程3において、ウエハが分割されてチップに個片化される際の分割線に沿うように形成される。
【0178】
ダイシング等によりウエハの表面に溝を形成する場合には、工程4Aの後に工程1(および工程A)を行う。すなわち、工程1において、後述する工程4Aで形成した溝を有するウエハの表面に、表面保護シートを貼付することになる。
【0179】
工程4Aで形成される溝は、ウエハの厚さより浅い深さの溝である。溝の形成は、従来公知のダイシング装置等を用いてダイシングにより行うことが可能である。また、ウエハは、上述した工程3において、裏面研削時に印加される応力により溝に沿って複数のチップに分割される。
【0180】
一方、ウエハに改質領域を形成する場合には、工程1(および工程A)を工程4Bの前に行ってもよいし、工程4Bの後に行ってもよい。本実施形態では、ウエハに改質領域を形成する場合には、工程1(および工程A)を工程4Bの前に行うことが好ましい。
【0181】
また、改質領域は、ウエハにおいて、脆質化された部分であり、研削工程における研削によって、ウエハが薄くなったり、裏面研削時に印加される応力が加わったりすることによりウエハの改質領域が破壊されてチップに個片化される起点となる領域である。
【0182】
改質領域は、ウエハの内部に焦点を合わせたレーザーの照射によりウエハの内部に形成される。レーザーの照射は、ウエハの表面側から行っても、裏面側から行ってもよい。なお、改質領域を形成する態様において、工程4Bを工程1の後に行いウエハ表面からレーザー照射を行う場合、表面保護シートを介してウエハにレーザーを照射することになる。
【0183】
DBGでは、工程3の裏面研削は、少なくとも溝の底部に至る位置までウエハを薄くするように行う。この裏面研削により、溝は、ウエハを貫通する切り込みとなり、ウエハは切り込みにより分割されて、個々のチップに個片化される。
【0184】
LDBGでは、研削によって研削面(ウエハ裏面)は、改質領域に至ってもよいが、厳密に改質領域まで至らなくてもよい。すなわち、改質領域を起点としてウエハが破壊されてチップに個片化されるように、改質領域に近接する位置まで研削すればよい。例えば、チップの実際の個片化は、後述するピックアップテープを貼付してからピックアップテープを延伸することで行ってもよい。
【0185】
また、裏面研削の終了後、チップのピックアップに先立ち、ドライポリッシュを行ってもよい。
【0186】
工程2は、上述したように行えばよいが、表面保護シートは個片化されたウエハから剥離されることになる。この場合であっても、凸状パターンの剥離性は良好である。
【0187】
工程2を経て得られる個片化されたチップ(ワーク個片化物)の形状は、方形でもよいし、矩形等の細長形状となっていてもよい。また、個片化されたチップの厚さは特に限定されないが、好ましくは5~100μm程度であるが、より好ましくは10~45μmである。LDBGによれば、個片化されたチップの厚さを50μm以下、より好ましくは10~45μmとすることが容易になる。また、個片化されたチップの大きさは、特に限定されないが、チップサイズが好ましくは600mm2未満、より好ましくは400mm2未満、さらに好ましくは120mm2未満である。
【0188】
以上、本発明の実施形態について説明してきたが、本発明は上記の実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の範囲内において種々の態様で改変しても良い。
【実施例0189】
以下、実施例を用いて、発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0190】
(実施例1)
(1)凸状パターン
凸状パターンを形成するための材料として、2官能ポリオール変性ウレタンアクリレート(分子量7300)25質量部、イソボルニルアクリレート75質量部、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(DPHA)10質量部、シリコーン変性アクリレート(ダイセル・オルネクス社製、EBECRYL 1360、官能基数:6)10質量部、光重合開始剤(IGM Resin社製、Omnirad1173)0.5質量部配合して、エネルギー線硬化性のアクリル系粘着剤用組成物を得た。
【0191】
(2)表面保護シート
表面保護シートとして、下記に示す表面保護シートを用いた。
【0192】
ウレタンアクリレート系オリゴマー(アルケマ株式会社製、CN9021 NS)48質量部と、イソボルニルアクリレート26質量部、トリメチルシクロヘキシルアクリレート16質量部、ラウリルアクリレート10質量部の合計100質量部に対して、光重合開始剤(IGM Resin社製、Omnirad1173)3.4質量部、連鎖移動剤(昭和電工株式会社製、カレンズMT PE1)1.0質量部、を配合して中間層用組成物を得た。
【0193】
得られた中間層用組成物をナイフ方式により、基材であるPETフィルム(東レ株式会社製、厚み75μm)の上に厚みが400μmになるように塗工して中間層用組成物層を形成した。塗工直後の中間層用組成物層の上にさらにPET系剥離フィルム(リンテック社製、SP-PET752150、厚み75μm)をラミネートした。その後、高圧水銀ランプを用いて、照度120mW/cm2、光量240mJ/cm2の条件で中間層用組成物層に対して紫外線照射を行い、さらにメタルハライドランプを用いて、照度330mW/cm2、光量1260mJ/cm2の条件で紫外線照射を行うことにより中間層用組成物層を硬化させ、基材であるPETフィルム上に厚さ400μmの中間層を形成した。
【0194】
次に、2-エチルヘキシルアクリレート(2EHA)80質量部と、2-ヒドロキシエチルアクリレート(HEA)20質量部とを共重合してなるアクリル系共重合体に、2-イソシアナートエチルメタクリレート(MOI)を、HEA由来の水酸基(100当量)に対して付加率が80当量となるように付加して得たエネルギー線硬化性アクリル系共重合体(重量平均分子量:800,000)100質量部に対して、架橋剤としてのトリメチロールプロパンアダクトトリレンジイソシアネート(東ソー製、コロネートL)を1.5質量部、光重合開始剤としての2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン(IGM Resin社製、Omnirad651)を2.2質量部添加し、さらにトルエンを加えて固形分濃度が30%となるように調整し、30分間撹拌を行って粘着剤組成物を調製した。
【0195】
次いで、調製した粘着剤組成物の溶液を、PET系剥離フィルム(リンテック社製、SP-PET382150、厚み38μm)に塗布し、乾燥させて厚さ10μmの粘着剤層を形成し、粘着シートを作製した。
【0196】
上記で得られた中間層上の剥離フィルムを除去し、中間層と粘着シートの粘着層とを貼り合せて、基材/中間層/粘着剤層の構成を有する表面保護シートを作製した。
【0197】
(凸状パターンの50℃における粘着力)
機能膜としてのポリイミド膜が形成されたワークとして、直径12インチのシリコンミラーウエハの一方の面上に、感光性ネガ型ポリイミド樹脂(HDマイクロシステムズ株式会社社製、HD4104)を塗布し、加熱乾燥して、完全硬化させた厚さ4μmのポリイミド膜を形成した。
【0198】
上記で得られたエネルギー線硬化性アクリル系粘着剤用組成物を、形成したポリイミド膜上に厚さが100μmになるように塗工してエネルギー線硬化性樹脂層を形成した。次に、形成したエネルギー線硬化性樹脂層上に厚さ50μmのPETフィルムを貼付した。これにより、エネルギー線硬化性樹脂層を酸素から遮断した。続いて、高圧水銀ランプを用いて、照度150mW/cm2、照射量300mJ/cm2の条件で紫外線照射を行うことによりエネルギー線硬化性樹脂層を硬化させ、硬化物を得た。得られた硬化物をウエハ上で25mm幅にカットして、粘着力測定用試料を得た。
【0199】
続いて、得られた粘着力測定用試料を、ウエハを50℃に加熱しながら、剥離角度180°、剥離速度120mm/分の条件でウエハ(ポリイミド膜)から剥離して粘着力を測定した。結果を表1に示す。
【0200】
(凸状パターンの引張破断伸度)
上記で得られたエネルギー線硬化性アクリル系粘着剤用組成物を、PET系剥離フィルムの上に厚みが100μmになるように塗工してエネルギー線硬化性樹脂層を形成した。次に、形成したエネルギー線硬化性樹脂層上にPETフィルムを貼付した。これにより、エネルギー線硬化性樹脂層を酸素から遮断した。続いて、高圧水銀ランプを用いて、照度150mW/cm2、照射量300mJ/cm2の条件で紫外線照射を行うことによりエネルギー線硬化性樹脂層を硬化させ、硬化物を得た。得られた硬化物をPET系剥離フィルムと共に、幅15mm、長さ100mmに裁断して、引張破断伸度測定用試料を得た。得られた引張破断伸度測定用試料について、JISK7161:2014およびJISK7127:1999に準拠して、23℃における引張破断伸度を測定した。具体的には、引張破断伸度測定用試料を、引張試験機(島津製作所製,製品名「オートグラフAG-IS500N」)にて、チャック間距離100mmに設定した後、200mm/minの速度で引張試験を行い、引張破断伸度(%)を測定した。結果を表1に示す。
【0201】
(凸状パターンの剥離性)
バンプ電極高さ200μm、ピッチ400μmのバンプ電極付きシリコンウエハ(厚さ760μm)を準備した。このバンプ電極付きシリコンウエハの表面には、厚さ4μmのポリイミド膜(機能膜)が形成されていた。このバンプ電極付きシリコンウエハのバンプ電極が形成されていない外周部に、ディスペンサー(武蔵エンジニアリング社製、shotmaster350DS)を用いて、上記で得られたエネルギー線硬化性アクリル系粘着剤用組成物を厚さ100μm、幅4mmとなり、ウエハの外縁との間に隙間が形成されないように塗布し乾燥させて、凸状パターンを形成した。
【0202】
凸状パターン形成後のバンプ電極付きシリコンウエハに対して、テープラミネーター(リンテック社製、RAD-3510F/12)を用いて、ラミネートテーブルの温度が65℃の条件で、表面保護シートを貼付した。表面保護シート貼付後のウエハを、表面保護シートがチャックテーブルに接するようにチャックテーブル上に載置し、吸引によりウエハをチャックテーブルに吸着固定した。次に、研削ホイールにより、ウエハの裏面を研削し、ウエハの厚さが150μmになった時点で研削を終了した。研削終了後、ウエハの表面に対して剥離装置(リンテック社製、RAD-3010F/12)を用いて紫外線照射(照度230mW/cm2、1200mJ/cm2)を実施し、剥離温度50℃、剥離速度2mm/分(低速)および剥離速度5mm/分(高速)にて、別々に剥離試験を実施し、表面保護シートおよび凸状パターンの剥離状態をそれぞれ評価した。結果を表1に示す。
○:ウエハ上に凸状パターンが残らない
×:ウエハ上に凸状パターンの少なくとも一部が残存する
【0203】
(実施例2、3および比較例1)
凸状パターンを構成するエネルギー線硬化性アクリル系粘着剤用組成物の組成を表1に示す組成とした以外は実施例1と同じ方法により、凸状パターンの物性および剥離性の評価を行った。結果を表1に示す。なお、実施例2では、シリコーン変性アクリレート(ダイセル・オルネクス社製、EBECRYL 1360、官能基数:6)の代わりに、シリコーン変性アクリレート(ダイセル・オルネクス社製、EBECRYL 350、官能基数:2)を用いた。
【0204】
【表1】
【0205】
表1より、凸状パターンが上述した物性を満足する場合には、凸状パターンの剥離性が良好であることが確認できた。
【符号の説明】
【0206】
1…ワーク(ウエハ)
2a…凸状電極、2b…チップ
3…凸状パターン
10…表面保護シート
11…基材
12…粘着剤層
13…中間層
14…緩衝層
図1A
図1B
図1C
図2
図3A
図3B
図3C
図4
図5A
図5B
図5C