(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024136172
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】管更生方法及び該方法に用いる封止冶具
(51)【国際特許分類】
E03F 7/00 20060101AFI20240927BHJP
E02D 29/12 20060101ALI20240927BHJP
E03F 5/02 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
E03F7/00
E02D29/12 E
E03F5/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023047185
(22)【出願日】2023-03-23
(71)【出願人】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003340
【氏名又は名称】弁理士法人湧泉特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】菊池 隆太
(72)【発明者】
【氏名】久保 善央
【テーマコード(参考)】
2D063
2D147
【Fターム(参考)】
2D063DA26
2D063EA10
2D147BA27
(57)【要約】
【課題】更生対象管の更生施工において、裏込め空間と管口と連通口を簡易かつ確実に封止して、裏込め空間に注入した充填材の漏れを確実に防止する。
【解決手段】マンホール1等の更生対象管の内壁1bに更生管10をライニングし、管側部の管口5に連なる連通口13を形成する。冶具本体21及びパッカー30を含む封止冶具20を、更生管10の内部から連通口13を介して管口5に跨るように設置する。パッカー30を膨張させて、その膨らみ部36を連通口13のまわりの更生管10の内面12aに密着させるとともに、第2パッカー部34を管口5の内周面に密着させる。その後、内壁1bと更生管10との間の裏込め空間2に充填材4を注入する。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
管側部に他の管の管口が設けられた更生対象管の内壁に更生管をライニングし、前記内壁と前記更生管との間の裏込め空間に充填材を注入する管更生方法であって、
前記管口より小径の冶具本体及び前記冶具本体の外周に設けられた膨縮可能なパッカーを含む封止冶具を用意し、前記封止冶具を前記更生管の内部から前記更生管における前記管口との連通口を介して前記管口に跨るように設置し、
前記パッカーを膨張させて、前記パッカーにおける前記更生管内に配置された部分の膨らみ部を前記連通口のまわりの前記更生管の内面に密着させるとともに、前記パッカーにおける前記管口内に配置された部分を前記管口の内周面に密着させ、
その後、前記充填材の注入を行なうことを特徴とする管更生方法。
【請求項2】
前記膨張前の前記膨らみ部が、前記更生管における前記連通口の周縁部に当接又は近接するように前記設置を行なった後、前記パッカーを膨張させる請求項1に記載管更生方法。
【請求項3】
前記連通口の内径を前記管口の内径より大径に形成する請求項1に記載の管更生方法。
【請求項4】
請求項1に記載の管更生方法に用いられる管更生用封止冶具であって、
前記管口より小径の冶具本体と、
前記冶具本体の外周に設けられた膨縮可能なパッカーと、
を備え、前記パッカーが、前記連通口よりも前記更生管の内側へ突出して配置される第1パッカー部と、前記管口に挿し入れられる第2パッカー部とを含み、前記第1パッカー部が、前記第2パッカー部より径方向外側へ膨出する膨らみ部を有していることを特徴とする管更生用封止冶具。
【請求項5】
前記膨らみ部を含む前記第1パッカー部が前記パッカーの軸方向の第1端部に設けられ、前記パッカーの軸方向の中央部及び第2端部が前記第2パッカー部を構成している請求項4に記載の管更生用封止冶具。
【請求項6】
前記第1パッカー部における周方向の一部分が、前記周方向の残り部分よりも径方向外側へ部分環状に膨出されて前記膨らみ部を構成しており、前記膨らみ部の前記周方向の両端面が、前記残り部分の外周面から径方向外側へ張り出す一対の張出段差面を構成している請求項5に記載の管更生用封止冶具。
【請求項7】
前記膨らみ部が、前記第1パッカー部の全周にわたる閉環状である請求項5に記載の管更生用封止冶具。
【請求項8】
前記膨らみ部が、前記パッカーの軸方向の中央部に設けられている請求項4に記載の管更生用封止冶具。
【請求項9】
前記パッカーが、前記冶具本体の外周面に被さる環状の内周側膜部と、前記内周側膜部を囲む環状の外周側膜部とを含み、これら内周側膜部及び外周側膜部における軸方向の同じ側の端部どうしが一体に連なり、前記内周側膜部及び前記外周側膜部どうしの間に閉じた環状の圧力供給室が形成されている請求項4~8の何れか1項に記載の管更生用封止冶具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、下水道のマンホール等の更生対象管を更生する工法及び該方法に用いる封止冶具に関し、特に、管側部に下水道本管等の管口が設けられた更生対象管の更生方法及び封止冶具に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば下水道等におけるマンホールの老朽化対策として、マンホールの内壁に沿って更生管をライニングし、マンホールの内壁と更生管との間の裏込め空間にモルタル等の充填材を注入する更生方法が知られている(特許文献1等参照)。
【0003】
通常、マンホールには下水道本管(他の管)と連なる管口が形成されている。マンホールの更生においては、充填材の注入に際して、管口周りの封止処理が必要である。特許文献1の更生方法においては、ライニングした更生管に管口と連通する連通口を形成した後、該連通口に鍔付き短管を嵌めることで、裏込め空間における管口と連通口との間の開口を閉塞するとともに、鍔付き短管の鍔を連通口のまわりの更生管の内面に接着している。
【0004】
C字状冶具を管口及び連通口に跨るように設置し、突っ張り棒でC字状冶具を径方向に押し拡げて連通口の内周縁及び管口の内周面に押し当て、その状態で裏込め空間に充填材を注入する方法も知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
マンホール等の更生工法では充填材の漏れ対策が重要である。特に、管口及び連通口の封止が難しい。確実に封止するためには、封止手段で隙間を埋めるだけでなく、充填材の注入圧に封止手段が耐える必要がある。施工性の観点からもシンプルで確実に封止できる技術が必要となる。
【0007】
特許文献1の鍔付き短管の場合は簡易に短時間で設置可能である。また、鍔が更生管と接着されることで、更生管と鍔付き短管との間を確実に封止できる。しかし、管口の端面に凹凸があると、該端面と鍔付き短管との間に隙間が出来、そこから充填材が漏れるとの課題があった。
【0008】
一方、C字状冶具の場合は突っ張り棒で管口の内周面に密着されることで、管口の内周面とC字状冶具との間を封止できる。しかし、更生管の削孔によって形成した連通口がいびつな形状であったり内周縁に凹凸があったりすると、連通口の内周縁とC字状冶具との間に隙間が出来て、そこから充填材が漏れやすい。特に、更生管の材料が硬くて複雑な異形断面形状である場合や、グラインダーなどの曲線に切断しづらい工具で削孔する場合、連通口を管口の大きさに合わせてきれいに削孔するのが容易でなく、C字状冶具では封止が困難である。
【0009】
さらに、鍔付き短管やC字状冶具による封止構造は、充填材の注入圧に強い方向と弱い方向がある。具体的には、鍔付き短管による封止構造は、鍔付き短管の軸方向には強いが周方向が弱い。逆にC字状冶具による封止構造は、周方向には強いが軸方向が弱い。このため、充填材を例えば裏込め空間に一回で充填できる程度の高圧で注入すると、弱い方向への漏れが起きやすい。
本発明は、かかる事情に鑑み、マンホール等の更生対象管の更生施工において、裏込め空間と管口と連通口を簡易かつ確実に封止でき、裏込め空間に注入した充填材の漏れを確実に防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を解決するため、本発明方法は、管側部に他の管の管口が設けられた更生対象管の内壁に更生管をライニングし、前記内壁と前記更生管との間の裏込め空間に充填材を注入する管更生方法であって、
前記管口より小径の冶具本体及び前記冶具本体の外周に設けられた膨縮可能なパッカーを含む封止冶具を用意し、前記封止冶具を前記更生管の内部から前記更生管における前記管口との連通口を介して前記管口に跨るように設置し、
前記パッカーを膨張させて、前記パッカーにおける前記更生管内に配置された部分の膨らみ部を前記連通口のまわりの前記更生管の内面に密着させるとともに、前記パッカーにおける前記管口内に配置された部分を前記管口の内周面に密着させ、
その後、前記充填材の注入を行なうことを特徴とする。
【0011】
当該方法によれば、封止冶具を連通口から管口に挿し入れて設置した後、パッカーを膨張させればよく、接着作業や突っ張り作業が不要であり、裏込め空間と管口と連通口の封止工程を簡易かつ短時間で行なうことができる。
膨張されたパッカーの膨らみ部と、連通口のまわりの更生管の内面との当たりによって、パッカーを軸方向に押え付けるとともに更生管と封止冶具との間を封止できる。連通口の形状がいびつであったり連通口の内周縁が凸凹であったりしても、更生管と封止冶具との間を確実に封止(シール)できる。
また、膨張されたパッカーと管口の内周面との当たりによって、管口の内周面と封止冶具との間を確実に封止できる。
さらに、パッカーにおける連通口から管口に跨る部分が、裏込め空間における連通口と管口との間の開口を塞ぐ。
これによって、封止冶具の軸方向及び周方向に沿う充填材の注入圧に耐えることができ、充填材の漏れを確実に防止できる。充填材が高圧注入される場合でも、パッカーの膨張圧によって封止圧を高めて、充填材の注入圧と対抗することができる。したがって、充填材を裏込め空間に一回で充填できる。
【0012】
好ましくは、前記膨張前の前記膨らみ部が、前記更生管における前記連通口の周縁部に当接又は近接するように前記設置を行なった後、前記パッカーを膨張させる。前記更生管における前記連通口の周縁部は、連通口のまわりの更生管の内面及び連通口の内周縁を含む。
これによって、膨張された膨らみ部が、連通口のまわりの更生管の内面に確実に押し当たって密着されるようにでき、更生管とパッカーとの間を確実に封止することができる。
【0013】
好ましくは、前記連通口の内径を前記管口の内径より大径に形成する。連通口を管口の形状及び大きさと一致するよう精度良く形成する必要が無く、連通口の形成作業を容易に行なうことができる。
予め連通口が形成された更生管を更生対象管の内壁にライニングしてもよく、ライニング後に更生管を削孔して連通口を形成してもよい。
【0014】
また、本発明は、前記管更生方法に用いられる管更生用封止冶具であって、
前記管口より小径の冶具本体と、
前記冶具本体の外周に設けられた膨縮可能なパッカーと、
を備え、前記パッカーが、前記連通口よりも前記更生管の内側へ突出して配置される第1パッカー部と、前記管口に挿し入れられる第2パッカー部とを含み、前記第1パッカー部が、前記第2パッカー部より径方向外側へ膨出する膨らみ部を有していることを特徴とする。
当該封止冶具を、ライニング済の更生管の内部から連通口を介して管口に跨るように設置し、パッカーを膨張させる。膨張された第1パッカー部の膨らみ部が、連通口のまわりの更生管の内面と密着される。また、膨張された第2パッカー部が、管口の内周面と密着される。さらに、パッカーの第1パッカー部と第2パッカー部との間の部分によって、裏込め空間における連通口と管口との間の開口が塞がれる。これによって、裏込め空間と管口と連通口を簡易かつ確実に封止できる。充填材が高圧注入される場合でも、パッカーの膨張圧によって封止圧を高めて、充填材の注入圧と対抗することができる。
【0015】
好ましくは、前記膨らみ部を含む前記第1パッカー部が前記パッカーの軸方向の第1端部に設けられ、前記パッカーの軸方向の中央部及び第2端部が前記第2パッカー部を構成している。これによって、膨らみ部が、パッカーの軸方向の第1端部に偏って配置される。パッカーの軸方向の中央部及び第2端部が、連通口を通して管口に深く挿し入れられることで、パッカーを管口に安定的に固定できる。
【0016】
好ましくは、前記第1パッカー部における周方向の一部分が、前記周方向の残り部分よりも径方向外側へ部分環状に膨出されて前記膨らみ部を構成しており、前記膨らみ部の前記周方向の両端面が、前記残り部分の外周面から径方向外側へ張り出す一対の張出段差面を構成している。
当該封止冶具は、管口がマンホールの底部インバート等の閉塞端部の側方部に設けられている場合に好適である。この場合、更生管の連通口は部分環状に形成され、管口の一部が連通口と連なり、管口の残部は、閉塞端部に形成された溝の端部と連なっている。封止冶具を連通口及び前記溝から管口に跨るようにセットしてパッカーを膨張させると、部分環状の膨らみ部が、部分環状の連通口の周縁の更生管に押し当てられる。かつ、一対の張出段差面が、閉塞端部の溝を挟んで両側の面に押し当てられる。第1パッカー部の前記残り部分は、溝の端部に挿し入れられて該溝の端部の内周面に押し当てられる。これによって、パッカーと更生管との間、及びパッカーと閉塞端部との間を確実に封止できる。
【0017】
前記膨らみ部が、前記第1パッカー部の全周にわたる閉環状であってもよい。
当該封止冶具は、管口がインバート等の閉塞端部から離れて設けられ、連通口が環状である場合に好適である。
【0018】
前記膨らみ部が、前記パッカーの軸方向の中央部に設けられていてもよい。
これによって、パッカーの前記中央部を挟んで両側の部分を互いに対称な形状にすることができる。当該封止冶具は、管口がインバート等の閉塞端部の側部に設けられているか閉塞端部から離れて設けられているかに拘わらず、汎用的に使用できる。
【0019】
好ましくは、前記パッカーが、前記冶具本体の外周面に被さる環状の内周側膜部と、前記内周側膜部を囲む環状の外周側膜部とを含み、これら内周側膜部及び外周側膜部における軸方向の同じ側の端部どうしが一体に連なり、前記内周側膜部及び前記外周側膜部どうしの間に閉じた環状の圧力供給室が形成されている。
これによって、パッカーが中空の輪環状となり、中空部が圧力供給室となる。圧力供給室に高圧流体を供給することで、パッカーを径方向外側へ膨張させることができる。パッカーと冶具本体との間は封止を必要としない。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、更生対象管の更生施工において、裏込め空間と管口と連通口を簡易かつ確実に封止でき、裏込め空間に注入した充填材の漏れを確実に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】
図1は、本発明の第1実施形態に係る更生対象管であるマンホールを更生済の段階で示す、
図2のI-I線に沿う正面断面図である。
【
図2】
図2は、
図1のII-II線に沿う、前記更生済のマンホールの側面断面図である。
【
図3】
図3(a)は、前記第1実施形態における封止冶具を収縮状態で示す正面図である。
図3(b)は、同図(a)のIIIb-IIIb線に沿う平面断面図である。
図3(c)は、同図(a)のIIIc-IIIc線に沿う側面断面図である。
【
図4】
図4は、前記マンホールの更生施工を、前記封止冶具の設置工程で示す正面断面図である。
【
図6】
図6は、前記マンホールの更生施工を、前記封止冶具の膨張工程で示す正面断面図である。
【
図7】
図7は、
図6のVII-VII線に沿う側面断面図である。
【
図9】
図9は、本発明の第2実施形態に係る封止冶具を収縮状態で示す正面図である。
図9(b)は、同図(a)のIXb-IXb線に沿う平面断面図である。
図9(c)は、同図(a)のIXc-IXc線に沿う側面断面図である。
【
図10】
図10は、前記第2実施形態において、更生対象管であるマンホールの更生施工を、封止冶具の設置工程で示す正面断面図である。
【
図12】
図12は、前記第2実施形態におけるマンホールの更生施工を、封止冶具の膨張工程で示す側面断面図である。
【
図13】
図13は、本発明の第3実施形態に係る封止冶具を収縮状態で示す正面図である。
図13(b)は、同図(a)のXIIIb-XIIIb線に沿う側面断面図である。
【
図14】
図14は、前記第3実施形態において、更生対象管であるマンホールの更生施工を、封止冶具の設置工程で示す側面断面図である。
【
図15】
図15は、前記第3実施形態におけるマンホールの更生施工を、封止冶具の膨張工程で示す側面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態を図面にしたがって説明する。
<第1実施形態(
図1~
図8)>
図1に示すように、本実施形態における更生対象管は、下水道の老朽化した鉄筋コンクリート製のマンホール1である。マンホール1の内壁1bに沿って更生管10がライニングされている。更生管10は、例えば合成樹脂製の異形断面の帯状部材11(プロファイル)を螺旋状に巻回してなる螺旋管であるが(
図8参照)、これに限らず、板材を管軸方向及び管周方向に並べたものでもよく、リング材を管軸方向に並べたものでもよい。更生管10の少なくとも内面12は、平滑面となっている。マンホール内壁1bと更生管10との間の環状の裏込め空間2には、モルタル等の充填材4(裏込め材)が注入されている。
【0023】
図2に示すように、マンホール1の底部の側方に下水道本管3(他の管)が連なっている。マンホール1の管側部に下水道本管3との管口5が設けられている。
図1及び
図2に示すように、管口5の中心高さは、マンホール1の底部のインバート6の上面とほぼ同じ高さに配置されている。インバート6には、管口5の下半部と連なる下半円状の断面の溝6bが形成されている。
【0024】
図1に示すように、更生管10の底部には連通口13が形成されている。連通口13は、管口5より大径の上半円状に形成されている。好ましくは、連通口13の内直径は、管口5の内直径より10mm~数十mm程度大きく、より好ましくは10mm~20mm程度大きい。
図2に示すように、連通口13が管口5の上半部と連なっている。さらに、連通口13を介して、マンホール1の内部と管口5とが連なっている。
【0025】
図2に示すように、管口5と連通口13との間に、裏込め空間2の上半円状の開口2aが形成されている。裏込め空間2の充填材4が開口2aに臨んでいる。
図1に示すように、開口2aにおける充填材4eは、開口2aに沿う上半円状に形成されるとともに、連通口13と管口5との径差分だけマンホール1内に現れている。
【0026】
図3(a)に示すように、マンホール1の更生に用いる封止冶具20は、冶具本体21と、パッカー30を備えている。冶具本体21は円筒形状の単管によって構成されている。
図4に示すように、冶具本体21は、管口5に挿入出来るよう、その外径が管口5の内径より小径になっている。冶具本体21の外径は、管口5の内径及びパッカー30の厚みを考慮して設定されている。好ましくは、冶具本体21の外直径は、管口5の内直径より数十mm程度小さく、より好ましくは30mm程度小さい。冶具本体21の材質は、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン等の樹脂であるが、これに限らず、鋼鉄、鉄などの金属でもよい。
【0027】
図3に示すように、冶具本体21の外周にパッカー30が設けられている。パッカー30は、異形断面の輪環形状に形成されて、冶具本体21を囲んでいる。パッカー30の材質は、好ましくは、弾性的に膨張、収縮可能なゴムである。ゴムの内部に補強線材が埋め込まれていてもよい。ゴムの成形時に異形断面の輪環形状が付与されることで、パッカー30が作製されている。
【0028】
詳しくは、
図3(b)及び同図(c)に示すように、パッカー30は、環状の外周側膜部31と、環状の内周側膜部32を一体に含む。外周側膜部31が、内周側膜部32を囲んでいる。これら環状の外周側膜部31及び内周側膜部32の軸方向の手前側(
図3(c)において左側)の端部どうし及び奥側(
図3(c)において右側)の端部どうしが、それぞれ全周にわたって一体に連なっている。これら膜部31,32間のパッカー30内部に、閉じた環状の圧力供給室35が画成されている。圧力供給室35の内圧によって、パッカー30が主に径方向へ膨縮可能である。
図3(a)~同図(c)において、実線はパッカー30の収縮時を示し、二点鎖線はパッカー30の膨張時を示す(
図9及び
図13において同様)。
【0029】
内周側膜部32が、冶具本体21の外周面に被せられて固定されている。冶具本体21によって内周側膜部32が保形されている。なお、内周側膜部32ひいてはパッカー30が、冶具本体21に対して着脱可能であってもよい。
【0030】
膜部31,32の厚みは、好ましくは数mm程度、より好ましくは5mm程度であるが。これに限らない。膜部31,32の軸長ひいてはパッカー30の軸長は、冶具本体21の軸長と同程度である。
【0031】
図3(b)及び同図(c)に示すように、パッカー30の軸方向の手前側(
図3(c)において左側)の第1端部30aは、第1パッカー部33を構成している。パッカー30の軸方向中央部及び奥側(
図3(c)において右側)の第2端部30bは、第2パッカー部34を構成している。
図5に示すように、第1パッカー部33は、連通口13よりも更生管10の内側へ突出して配置される。第2パッカー部34は、連通口13及び開口2aを通して管口5に挿し入れられる。
【0032】
図3に示すように、第1パッカー部33は、第2パッカー部34より径方向外側へ膨出する膨らみ部36を有している。詳しくは、外周側膜部31の手前側(
図3(b)において下側、
図3(c)において左側)の部分の上半部33a(周方向の一部分)が、径方向外側へ膨出されることによって、膨らみ部36を構成している。
図3(a)に示すように、正面視で、膨らみ部36は、第1パッカー部33の上半部33aの周方向に沿う半円状(部分環状)になっている。
図3(c)に示すように、周方向と直交する膨らみ部36の断面は、部分円形状になっている。
図3(a)に示すように、膨らみ部36の周方向の両端は、第1パッカー部33の下半部33b(周方向の残り部分)の外周面より径方向に張り出すことで、張出段差面36dを構成している。
【0033】
図3(a)~同図(c)に示すように、パッカー30における膨らみ部36以外の部分すなわち第2パッカー部34の全域及び第1パッカー部33の下半部33bは、膨らみ部36の高さより小さい一定の厚みに形成されている。
【0034】
図3(a)及び同図(c)に示すように、パッカー30には、高圧流体供給口22が設けられている。供給口22は、膨らみ部36の前面部36aの周方向の中央部に配置されているが、これに限らず、パッカー30の膨らみ部36以外の部分に供給口22が配置されていてもよい。供給口22が、冶具本体21の内周面又は端面に配置されていてもよい。
【0035】
マンホール1は、次のようにして更生される。
マンホール1の内壁1bに更生管10をライニングする。マンホール内壁1bと更生管10との間には、裏込め空間2が形成される。
次に、ライニングした更生管10の底部の管口5を塞ぐ部分を切除して、更生管10に連通口13を形成する。切除のための工具としては、グラインダー等の汎用工具を用いることができる。好ましくは、連通口13を管口5より大径に形成する。連通口13の形成によって、裏込め空間2に上半円状の開口2aが形成される。
【0036】
次いで、用意した封止冶具20を更生管10内ひいてはマンホール1内に搬入する。この時点のパッカー30は、圧力供給室35に高圧流体が供給されておらず、径方向に収縮されている。
なお、予め地上にてパッカー30が膨張されるかの確認試験を行ない、合格した封止冶具20をマンホール1に搬入することが好ましい。搬入後にマンホール1内で確認試験を行ってもよい。確認試験後、パッカー30を収縮させる。
【0037】
図4及び
図5に示すように、確認試験及び搬入後の封止冶具20を、第2端部30bをマンホール1の径方向外側へ向けて、連通口13から管口5へ挿し込む。これによって、封止冶具20が、更生管10の内部から連通口13及び開口2aを介して管口5に跨るように設置される。第1パッカー部33は、更生管10の内部に配置される。膨らみ部36における第2パッカー部34側を向く背面部36bが、更生管10における連通口13の周縁部に当接又は近接される。連通口13の周縁部は、連通口13のまわりの更生管10の内面12a及び連通口13の内周縁13aを含む。連通口13の内周縁13aの凸凹が激しい場合は、内周縁13aにシーリング剤を塗布してもよい。
膨らみ部36の周方向の両端の一対の張出段差面36dは、インバート6の溝6bを挟んで両側の上面6aに載せられる。
第1パッカー部33の下半部は、溝6bに挿し入れられる。
【0038】
続いて、
図7に示すように、供給口22に圧力供給チューブ23を接続し、高圧流体Aを供給口22から圧力供給室35に供給する。高圧流体Aは、空気等の気体でもよく、水等の液体でもよい。
図6及び
図7に示すように、圧力供給室35への圧力供給によって、パッカー30が膨張される。パッカー30は、主に径方向外側へ拡径されるように膨張される。これによって、パッカー30が、連通口13の周縁部及び管口5の内周面等に密着される。
【0039】
詳しくは、
図8に拡大して示すように、膨張した膨らみ部36が、更生管10の連通口13の周縁部に倣うように変形される。これによって、膨らみ部36の背面部36bが、連通口13のまわりの更生管10の内面12aに強く張り付いて密着される。これによって、連通口13の内周縁13aが多少凸凹であっても、更生管10と封止冶具20との間を確実に封止できる。かつ、更生管10を封止冶具20の軸方向に押さえ付けることができる。
【0040】
また、
図6に示すように、膨らみ部36の張出段差面36dが、インバート6の上面6aに強く張り付いて密着される。かつ、第1パッカー部33の下半部33bが、溝6bの内周面に強く張り付いて密着される。これによって、インバート6と封止冶具20との間を確実に封止できる。
さらに、第2パッカー部34が、全周にわたって管口5の内周面と強く張り付いて密着される。これによって、管口5と封止冶具20との間を確実に封止できる。かつ、封止冶具20が、摩擦によって管口5に固定される。
さらには、パッカー30における連通口13から管口5に跨る部分37が、裏込め空間2における連通口13と管口5との間の開口2aを塞ぐ。
【0041】
封止冶具20を連通口13から管口5に挿し入れて設置した後、パッカー30を膨張させればよく、裏込め空間2と連通口13と管口5の封止作業を簡易かつ短時間で行なうことができる。
好ましくは、膨張させたパッカー30と連通口13の周縁部等との間の隙間の有無を目視で確認し、隙間が有る場合、その隙間をシーリング剤で埋めておく。
【0042】
その後、
図7の白抜き矢印にて示すように、裏込め空間2に充填材4を注入する。前述したようにパッカー30を膨張させて封止しておくことで、充填材4が、連通口13から更生管10内へ漏れたり、管口5から下水道本管2内へ漏れたりするのを防止できる。かつ、封止冶具20の軸方向及び周方向に沿う充填材4の注入圧に耐えることができる。
【0043】
更には、高圧流体Aの供給圧によって封止圧を高めることで、充填材4の高圧注入にも対応可能である。したがって、充填材4を裏込め空間2に一回で充填できる。
なお、充填材4の注入中ないしは注入後、パッカー30が変形する場合は、圧力供給室35に更に高圧流体Aを供給してパッカー30の内圧を高め、変形を抑制することが好ましい。
【0044】
注入した充填材4の硬化後、圧力供給室35から高圧流体Aを抜き、パッカー30を収縮させる。
その後、封止冶具20を更生管13内へ引き抜いて撤去する。
封止冶具20によれば、管口5の口径に合わせて、冶具本体21及びパッカー30の大きさ及び材質等を選定することで、小口径管にも中大口径管にも適用可能である。
【0045】
次に、本発明の他の実施形態を説明する。以下の実施形態において既述の形態と重複する構成に関しては、図面に同一符号を付して説明を省略する。
<第2実施形態(
図9~
図12)>
図9(a)~同図(c)に示すように、本発明の第2実施形態に係る封止冶具20Bにおいては、膨らみ部38が、第1パッカー部33の全周にわたる円環状(閉環状)になっている。
【0046】
図10及び
図11に示すように、第2実施形態の封止冶具20Bは、マンホール1と流入管7との接続部の封止に適用されている。流入管7とマンホール1との管口5は、インバート6より上方に離れて、マンホール1の管側部に配置されている。更生管10は、管口5よりも下へ延びている。連通口13Bは、管口5より少し大径の円形に形成されている。
なお、封止冶具20Bを流入管7に代えて流出管に適用してもよい。
【0047】
図10及び
図11に示すように、封止冶具20Bが、第2端部30bをマンホール1の径方向外側へ向けて、連通口13Bから管口5へ挿し込まれる。これによって、封止冶具20Bが、更生管10の内部から連通口13B及び開口2aを介して管口5に跨るように設置される。円環状の膨らみ部38が全周にわたって、更生管10における連通口13Bの周縁部に当接又は近接される。
【0048】
続いて、
図12に示すように、高圧流体Aが、供給口22から圧力供給室35に供給される。これによって、パッカー30が膨張される。膨張された円環状の膨らみ部38は、全周にわたって、更生管10における連通口13Bの周縁部に密着される。詳しくは、環状の膨らみ部38の背面部38bが、全周にわたって、円形の連通口13Bのまわりの更生管10の内面12aに強く張り付いて密着される。これによって、更生管10と封止冶具20Bとの間を確実に封止できる。
第2パッカー部34が、全周にわたって管口5の内周面に強く張り付いて密着されて封止される点は、第1実施形態(
図7)と同等である。
【0049】
<第3実施形態(
図13~
図15)>
図13(a)~同図(c)に示すように、本発明の第3実施形態に係る封止冶具20Cにおいては、冶具本体21と、その外周に設けられた環状のパッカー40を備えている。パッカー40は、外周側膜部41と、内周側膜部42を一体に含む。内周側膜部42が、冶具本体21の外周面に固定されて保形されている。
なお、内周側膜部42ひいてはパッカー40が、冶具本体21に対して着脱可能であってもよい。
【0050】
外周側膜部41が、内周側膜部42を囲んでいる。環状シート41,42の軸方向の手前側(
図13(c)において左側)の端部どうし及び奥側(
図13(c)において右側)の端部どうしが、それぞれ全周にわたって一体に連なっている。これによって、パッカー40の内部に、閉じた環状の圧力供給室45が画成されている。圧力供給室45の内圧によって、パッカー40が膨縮可能である。
【0051】
外周側膜部41は、軸方向の両端部から中央部へ向かうにしたがって径方向外側へ膨出されている。パッカー40の軸方向の中央部に膨らみ部46が形成されている。これによって、パッカー40は、軸方向の中央部を挟んで両側の部分が互いに対称な形状になっている。パッカー40における、軸方向の管口5とは反対側の第1端部40aから中央部の膨らみ部46までの部分が、第1パッカー部43を構成している。パッカー40の軸方向の管口5側の第2端部40bが、第2パッカー部44を構成している。
【0052】
図14に示すように、第3実施形態の封止冶具20Cは、例えば、マンホール1と流入管7との接続部の封止に適用される。
封止冶具20Cが、第2端部40bをマンホール1の径方向外側へ向けて、連通口13Bから管口5へ挿し込まれる。これによって、封止冶具20Cが、更生管10の内部から連通口13B及び開口2aを介して管口5に跨るように設置される。封止冶具20Cの挿し込み深さは、第1実施形態(
図5)及び第2実施形態(
図11)より浅く、封止冶具20Cの第1端部40a及び中央部が、連通口13Bよりも更生管10内へ突出されるように配置される。パッカー40の中央部の膨らみ部46が、更生管10における連通口13Bの周縁部に当接又は近接される。
【0053】
続いて、
図15に示すように、高圧流体Aが、供給口22から圧力供給室45に供給されることによって、パッカー40が膨張される。
膨張された膨らみ部46は連通口13Bの周縁部に密着される。詳しくは、環状の膨らみ部46が、全周にわたって、円形の連通口13Bのまわりの更生管10の内面12aに強く張り付いて密着される。これによって、更生管10と封止冶具20Cとの間を確実に封止できる。更に、第2パッカー部44が、全周にわたって管口5の内周面に強く張り付いて密着されて封止される。これによって、管口5と封止冶具20Cとの間を確実に封止できる。
【0054】
なお、封止冶具20Cにおける膨らみ部46と更生管10の内面12aとの密着幅は、第1実施形態(
図8)及び第2実施形態(
図12)における密着幅と比べて狭いから、連通口13Bの内周縁13aの凹凸をなるべく小さく、又は凹凸が無いようにしておくことが好ましい。
【0055】
本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の改変をなすことができる。
例えば、ライニング前の更生管に連通口が形成されていてもよい。予め連通口13が形成された更生管10をマンホール内壁1bにライニングしてもよい。
【0056】
冶具本体21の形状は、円筒形状に限らず、管口5の断面形状等によっては多角形の筒状であってもよい。マンホール1の入り口の内径が管口5の内径より小さく、冶具本体21が一体物の単管であると入り口からマンホール1内に搬入できない場合は、冶具本体21を数個の分割体で構成し、これら分割体を分離した状態で個別に入り口からマンホール1内に搬入した後、マンホール1内で組み立ててもよい。
パッカー30,40が、冶具本体71に対して着脱可能であってもよい。
パッカーが、冶具本体21の周方向に複数のパッカー部材に分割されていてもよい。
【0057】
下水道本管3を止水して更生施工可能であれば、冶具本体21は、中空の筒形状に限らず、円柱形状等の中実形状であってもよい。
冶具本体21における第1端部30a,40a側の端部に、径方向外側へ突出するフランジが設けられていてもよい。
【0058】
第3実施形態(
図13)の封止冶具20Cは、マンホール1と流出管との接続部の封止にも適用できる。封止冶具20Cは、マンホール1の底部に連なる下水道本管3(
図1参照)との接続部の封止にも適用できる。下水道本管3との接続部の封止に適用する場合、インバート6の溝6bの上端縁と連通口13の下端との間に段差が出来ないよう、連通口13の内径を溝6bの内径ひいては管口の内径と同径にすることが好ましい。
【0059】
本発明の更生対象管は、マンホール1に限らず、下水道本管でもよく、その他の管渠であってもよい。例えば、下水道本管(更生対象管)に更生管をライニングする更生施工において、前記更生管に取付管(他の管)の取付管口(管口)との連通口を削孔後、前記取付管口及び連通口を封止する際に、本発明の封止冶具を用いた更生方法を適用してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明は、例えば、下水道の老朽化したマンホールの更生技術に適用可能である。
【符号の説明】
【0061】
1 マンホール(更生対象管)
1b 内壁
2 裏込め空間
3 下水道本管(他の管)
4 充填材
5 管口
6 インバート
6b 溝
7 流入管(他の管)
10 更生管
11 帯状部材(更生管材料)
12 内面
12a 連通口のまわりの更生管内面
13 連通口
13B 連通口
13a 内周縁
20 封止冶具
20B,20C 封止冶具
21 冶具本体
A 高圧流体
30 パッカー
30a 第1端部
30b 第2端部
31 外周側膜部
32 内周側膜部
33 第1パッカー部
33a 上半部(周方向の一部分)
33b 第1パッカー部33の下半部(周方向の残り部分)
34 第2パッカー部
35 圧力供給室
36 膨らみ部
36d 張出段差面
38 膨らみ部
38b 背面部
40 パッカー
40a 第1端部
40b 第2端部
41 外周側膜部
42 内周側膜部
43 第1パッカー部
44 第2パッカー部
45 圧力供給室
46 膨らみ部