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  • 特開-靴底及び該靴底を備えた靴 図1
  • 特開-靴底及び該靴底を備えた靴 図2
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  • 特開-靴底及び該靴底を備えた靴 図7
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024136173
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】靴底及び該靴底を備えた靴
(51)【国際特許分類】
   A43B 13/14 20060101AFI20240927BHJP
【FI】
A43B13/14 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023047188
(22)【出願日】2023-03-23
(71)【出願人】
【識別番号】512054322
【氏名又は名称】高山 雅晴
(74)【代理人】
【識別番号】100181630
【弁理士】
【氏名又は名称】原 晶子
(72)【発明者】
【氏名】高山 雅晴
【テーマコード(参考)】
4F050
【Fターム(参考)】
4F050AA02
4F050BA02
4F050BA07
4F050BA16
4F050BA17
4F050HA56
(57)【要約】
【課題】 軽量化及び省資源化を図ることができる靴底を提供する。
【解決手段】 本発明の靴底10は、踵部33にヒール13が一体又は別体で設けられ、土踏まず部32が地面に接しない本底11と、本底11の長さ方向に延び、本底11の上面11aに形成される複数の溝20とを備える。溝20は、踏み付け部31の後部から踵部33の前部に亘って連続的又は断続的に形成され、且つ、踏み付け部31の後部から踵部33の前部までの領域において本底11の幅方向に複数本形成される。
【選択図】 図2

【特許請求の範囲】
【請求項1】
踵部にヒールが一体又は別体で設けられ、土踏まず部が地面に接しない本底と、
前記本底の長さ方向に延び、前記本底の上面に形成される複数の溝と、を備え、
前記溝は、踏み付け部の後部から踵部の前部に亘って連続的又は断続的に形成され、且つ、踏み付け部の後部から踵部の前部までの領域において前記本底の幅方向に複数本形成される靴底。
【請求項2】
前記溝は、前記本底の幅方向に沿って切断した切断面において、前記溝を形成する面及び前記本底の上面のうち、地面に対して30°以上90°以下の傾斜角で傾斜する面をなす線が、地面に対して0°以上30°未満の傾斜角で傾斜する面をなす線に対して30%以上となるように形成される請求項1に記載の靴底。
【請求項3】
前記溝は、深さが3mm以上である請求項1又は2に記載の靴底。
【請求項4】
前記溝は、踏み付け部の後部から踵部の前部までの領域において前記本底の幅方向に3本以上形成される請求項1又は2に記載の靴底。
【請求項5】
甲革と、
前記甲革の下部に取り付けられる靴底と、を備え、
前記靴底は、踵部にヒールが一体又は別体で設けられ、土踏まず部が地面に接しない本底と、前記本底の長さ方向に延び、前記本底の上面に形成される複数の溝とを有し、
前記溝は、踏み付け部の後部から踵部の前部に亘って連続的又は断続的に形成され、且つ、踏み付け部の後部から踵部の前部までの領域において前記本底の幅方向に複数本形成される靴。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、靴底及び該靴底を備えた靴に関し、特に、踵部にヒールが設けられて、土踏まず部が地面に接しない靴底及び該靴底を備えた靴に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、ヒール付きの靴、すなわち、靴底の踵部にヒールが設けられて、靴底の土踏まず部が地面に接しない靴が知られている(例えば、特許文献1)。このような靴では、土踏まず部が地面に接しないため、靴を履くと、土踏まず部が撓んでしまう。この靴底の撓みを防止するために、このような靴では、通常、靴底に金属製のシャンクが埋め込まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009-082648号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しなしながら、シャンクが埋め込まれた靴は、シャンクの重量だけ重くなるといった問題があった。また、靴底に金属製のシャンクが埋め込まれると、靴をリサイクルする際に金属製のシャンクを取り除かなくてはならず、靴をリサイクルしづらいという問題もあった。
【0005】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、軽量化及び省資源化を図ることができる靴底及び靴を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の靴底は、踵部にヒールが一体又は別体で設けられ、土踏まず部が地面に接しない本底と、本底の長さ方向に延び、本底の上面に形成される複数の溝とを備える。溝は、踏み付け部の後部から踵部の前部に亘って連続的又は断続的に形成され、且つ、踏み付け部の後部から踵部の前部までの領域において本底の幅方向に複数本形成される。
【0007】
好ましい実施形態の靴底では、溝は、本底の幅方向に沿って切断した切断面において、溝を形成する面及び本底の上面のうち、地面に対して30°以上90°以下の傾斜角で傾斜する面をなす線が、地面に対して0°以上30°未満の傾斜角で傾斜する面をなす線に対して30%以上となるように形成される。
【0008】
また、好ましい実施形態の靴底では、溝は、深さが3mm以上である。
【0009】
また、好ましい実施形態の靴底では、溝は、踏み付け部の後部から踵部の前部までの領域において本底の幅方向に3本以上形成される。
【0010】
本発明の靴は、甲革と、甲革の下部に取り付けられる靴底とを備える。靴底は、踵部にヒールが一体又は別体で設けられ、土踏まず部が地面に接しない本底と、本底の長さ方向に延び、本底の上面に形成される複数の溝とを有する。溝は、踏み付け部の後部から踵部の前部に亘って連続的又は断続的に形成され、且つ、踏み付け部の後部から踵部の前部までの領域において前記本底の幅方向に複数本形成される。
【発明の効果】
【0011】
本発明の靴底及び靴によれば、軽量化及び省資源化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の一実施形態に係る靴の斜視図である。
図2】本発明の一実施形態に係る靴底の分解斜視図である。
図3図2の靴底の本底の平面図である。
図4図3のIV-IV線断面図である。
図5】本発明に係る靴底の本底の変形例を示す平面図である。
図6】本発明に係る靴底の本底の変形例を示す平面図である。
図7】本発明に係る靴底の本底の変形例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について、添付図面を参照して説明する。本発明に係る靴底及び靴は、踵部にヒールが設けられて、土踏まず部が地面に接しないヒール付きの靴底及び靴である。一般にウェッジソールと呼ばれる、つま先から踵まで徐々に厚みが増していき、土踏まず部も地面に接する靴底及び靴は含まない。
【0014】
まず、図1を参照して、本実施形態に係る靴1について説明する。図1は、本実施形態に係る靴1の斜視図である。なお、図1では、左足の靴1を示し、右足の靴は左右対称となるため、図示を省略する。この点は、他の図面でも同様である。以下では、靴1を通常使用する状態で上下方向を定義する。また、靴1のつま先側を前側として前後方向を定義する。上下方向及び前後方向に直交する方向を左右方向とする。
【0015】
図1に示すように、靴1は、甲革2と、甲革2の下部に取り付けられる靴底10とを備える。甲革2は、上部に履き口3を有する。甲革2は、履き口3から足を挿入して靴1を履いたときに、着用者の足の甲を覆う。甲革2は、例えば、革製である。甲革2は、下端縁が内側に折り返され、接着剤などを利用した既知の任意の方法で、折り返された部分が靴底10の周縁に取り付けられる。
【0016】
次に、図2図4も参照して、本実施形態に係る靴底10について説明する。図2は、本実施形態に係る靴底10の分解斜視図である。図3は、本実施形態の靴底10の本底11の平面図である。図4は、図3のIV-IV線断面図である。
【0017】
図1及び図2に示すように、靴底10は、本底11と中敷き12とを備える。また、靴底10は、本底11の上面11aに複数の溝20を備える。
【0018】
本底11は、踏み付け部31と土踏まず部32と踵部33とからなる。踏み付け部31は、本底11の前側部分で、地面に接して地面を踏み付ける部分である。踵部33は、本底11の後側部分で、着用者が靴1を着用したときに着用者の踵が載る部分であり、ヒール付きの靴1においてはヒール13が設けられる部分でもある。踵部33は、ヒール13を介して地面に接する。土踏まず部32は、踏み付け部31と踵部33との間の部分である。
【0019】
本底11は、踵部33にヒール13が一体又は別体で設けられ、土踏まず部32が地面に接しない構造を有する。本底11は、既知の土踏まず部が地面に接しないヒール付きの靴の本底と同様の形状を有する。ヒール13は、既知の土踏まず部が地面に接しないヒール付きの靴に設けられているヒールと同様の形状を有する。ヒール13は、本底11と一体に形成されてもよいし、本底11とは別体で形成され、釘や接着剤などで本底11の踵部33の下面11bに取り付けられてもよい。本底11及びヒール13は、例えばポリウレタンなどの樹脂により形成される。
【0020】
中敷き12は、甲革2と靴底10とで形成される空間4、すなわち、着用者が足を挿入する空間4の内部に嵌る外形を有する。このとき、中敷き12は、少なくとも本底11の上面11aに形成されている溝20を覆う。中敷き12は、例えば、ポリウレタン、エチレン酢酸ビニル、コルク、ラテックスなどの適度な厚みと柔軟性を有する素材で形成される。中敷き12は、接着剤などで固着される、又は、本底11に設けられた窪み(図示せず)に嵌め込まれることによって、本底11の上面11aに取り付けられる。
【0021】
溝20は、本底11の長さ方向(前後方向)に延び、本底11の上面11aに複数本形成される。溝20は、踏み付け部31の後部から踵部33の前部に亘って連続的又は断続的に形成され、且つ、踏み付け部31の後部から踵部33の前部までの領域において本底11の幅方向(左右方向)に複数本形成される。すなわち、複数の溝20のうちの一部の溝20は、靴底10が地面と直接的に又はヒール13を介して間接的に接する位置に形成される。
【0022】
図2図4に示すように、本実施形態では、溝20は、踏み付け部31の後部から踵部33の前部まで連続して延びる直線状を有する。溝20は、断面略U字状の凹状を有する。ここで、断面略U字状とは、溝20の底面が湾曲し、溝20の側面からなだらかに連続する形状のみならず、図4に示すように溝20の底面201が平面状を有し、溝20の両側面202と底面201とが角を有して接続される角型形状も含む。溝20の深さ、すなわち、本底11の上面11aから溝20の底面201までの上下方向の長さは、2mm以上、好ましくは3mm以上である。溝20の深さは、本底11の下面11bへ貫通しなければ、深い方が好ましい。溝20を深くするほど、本底11の強度を高めることができる。
【0023】
この溝20は、本底11の上面11aに、本底11の幅方向に7本形成される。すなわち、溝20は、踏み付け部31の後部から踵部33の前部までの領域において、本底11の幅方向に7本形成される。このようにして形成された複数の溝20は、本底11の幅方向(左右方向)に沿って切断した切断面(例えば、図4に示す断面)において、溝20を形成する面201,202及び本底11の上面11aのうち、地面Gに対して30°以上90°以下の傾斜角θで傾斜する面をなす線が、地面Gに対して0°以上30°未満の傾斜角θで傾斜する面をなす線に対して30%以上となるように形成されることが好ましい。本実施形態においては、溝20を形成する側面202が地面Gに対して傾斜角θが90°となり、溝20を形成する底面201及び本底11の上面11aが地面Gに対して傾斜角θが0°となっている。すなわち、本実施形態では、溝20は、本底11を左右方向に沿って切断した特定の断面(例えば、図4に示す断面)において、各溝20の両側面202の長さの合計が、本底11の上面11aの長さ(溝20以外の部分の合計)と各溝20の底面201の長さの合計とを足した長さに対して30%以上であることが好ましい。
【0024】
以上のように、本発明の靴底10及び該靴底10を備えた靴1では、本底11の上面11aに複数の溝20が形成されている。この構成を有することで、本底11の上面11aに凹凸が形成され、本底11の上面11aの表面積が大きくなる。つまり、本底11を左右方向に沿って切断した断面において、本底11の上面11aは、本底11の上面11aと溝20の側面202及び底面201とからなり、この本底11の上面11aの長さが長くなる。これにより、本底11の強度を高めることができる。
【0025】
一般に、土踏まず部が地面に接しないヒール付きの靴では、靴底を薄くし、ヒールが細く見える形状が好まれる。このように靴底を薄くする場合、必然的に本底も薄くなり、靴底の強度が弱くなる。そのため、靴底は、金属製のシャンクを埋め込んだ本底を備えるか、金属製のシャンクを備えた中底、及び/又は、圧縮された紙材などの硬い素材からなる中底を本底の上面に設けるかして、靴底の強度を高める必要がある。このような靴でも、着用者の快適性の観点から、当然に靴底には中敷きが設けられており、靴底を構成する部材が多くなり重くなる。
【0026】
一方、本発明では、本底11に溝20を設けることで本底11の強度が高められる。よって、靴底10に、金属製のシャンク、及び/又は、硬い素材からなる中底を設ける必要がない。これにより、靴底10を構成するシャンク及び中底といった部材を減らすことができ、靴底10の軽量化及び省資源化を図ることができる。また、靴底10は、本底11が十分な強度を有しているため、中敷き12は、靴底10の強度を高めることを考慮する必要がなく、着用者の足に快適な素材で構成することができる。これにより、本発明の靴底10は、軽量化及び省資源化に加えて、快適性を向上させることもできる。また、このような靴底10を備える靴1も、軽量化及び省資源化が図れ、快適性を向上させることができる。
【0027】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて、種々の変更が可能である。
【0028】
例えば、上記実施形態では、溝20は、踏み付け部31の後部から踵部33の前部まで延びる直前状に形成され、且つ、本底11の幅方向に7本形成されているが、必ずしもこの構成でなくてもよい。例えば、溝20は、図5図7に示すような形状とすることができる。図5図7は、本発明に係る靴底10の本底11の変形例を示す平面図である。
【0029】
一例として、溝20は、図5に示すように、平面視(図5視)において、湾曲した形状でもよい。この場合、溝20は、本底11の長さ方向(前後方向)に延びる直線に対し、30°以下の傾斜角度が好ましい。また、溝20は、平面視において、角を有するような屈曲形状でなければ、図示したような一方向にのみ湾曲する湾曲形状に限らず、左右に交互に湾曲する波型形状であってもよい。
【0030】
また、溝20は、図6に示すように、平面視(図6視)において、互いに交差する形状でもよい。この場合も、溝20は、本底11の長さ方向(前後方向)に延びる直線に対し、30°以下の傾斜角度が好ましい。また、複数の溝20は、直線状の溝20、湾曲した形状の溝20、交差した形状の溝20が混在してもよい。
【0031】
また、溝20は、図7に示すように、平面視(図7視)において、踏み付け部31の後部から踵部33の前部まで連続して延びず、踏み付け部31の後部から踵部33の前部に亘って断続的に形成されてもよい。このとき、溝20は、踏み付け部31の後部から踵部33の前部までの領域において、本底11の幅方向(左右方向)に複数本形成される。すなわち、本底11の長さ方向(前後方向)で溝20が途切れる部分でも、当該部分の本底11の幅方向には別の溝20が形成され、踏み付け部31の後部から踵部33の前部までの領域全てで、本底11の幅方向に複数本の溝20が形成される。この場合も、複数の溝20は、直線状の溝20、湾曲した形状の溝20、交差した形状の溝20が混在してもよい。また、複数の溝20の前後方向の長さは、均一である必要はなく、異なっていてもよい。すなわち、本底11の幅方向に並ぶ溝20は、本底11の長さ方向に同じ位置で溝20が途切れる必要はなく、異なっていてもよいし、本底11の長さ方向に並ぶ溝20の長さも、それぞれ異なっていてもよい。また、本底11の長さ方向に並ぶ溝20の数は、図示した4本に限らず、2本以上の任意の本数とすることができる。
【0032】
また、上記以外にも、溝20は、種々の変形が可能である。例えば、溝20は、一の溝20において、溝20の幅(左右方向長さ)を途中で変えることもできる。また、複数本形成される溝20の幅も、それぞれ異なっていてもよい。
【0033】
すなわち、溝20は、複数本備えるうちの少なくとも一部が、地面と接する踏み付け部31及び踵部33にかかり、踏み付け部31の後部、土踏まず部32及び踵部33の前部に亘って形成されていれば、任意の形状とすることができる。また、溝20の幅方向の本数は、踏み付け部31の後部から踵部33の前部までの領域において、本底11の幅方向に2本以上、好ましくは3本以上であれば任意の本数とすることができる。
【0034】
また、上記実施形態では、溝20は、断面略U字状としているが、必ずしもこの構成でなくてもよい。例えば、溝20は、断面略V字状としてもよい。溝20の断面形状は、本底11の上面11aの表面積(本底11の上面11aの面積と全ての溝20の両側面202及び底面201の面積とを合わせた面積)が増えれば、任意の断面形状とすることができる
【符号の説明】
【0035】
1 靴
2 甲革
10 靴底
11 本底
11a 本底の上面
13 ヒール
20 溝
31 踏み付け部
32 土踏まず部
33 踵部

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7