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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024136176
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】タービン翼および蒸気タービン
(51)【国際特許分類】
   F01D 25/00 20060101AFI20240927BHJP
   F01D 9/02 20060101ALI20240927BHJP
   F01D 25/24 20060101ALI20240927BHJP
   F01D 25/28 20060101ALI20240927BHJP
   B08B 3/12 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
F01D25/00 R
F01D9/02 101
F01D25/24 Q
F01D25/00 Q
F01D25/28 Z
B08B3/12 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023047191
(22)【出願日】2023-03-23
(71)【出願人】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】後藤 俊郎
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 敏生
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 忠志
【テーマコード(参考)】
3B201
3G202
【Fターム(参考)】
3B201AA47
3B201AB53
3B201BC05
3G202GA07
3G202GB04
(57)【要約】
【課題】翼表面のスケールを除去する。
【解決手段】タービン翼は、翼部と、翼部に取り付けられて、翼部を振動させる発振器とを備える。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
翼部と、
前記翼部に取り付けられて、前記翼部を振動させる発振器とを、備える
タービン翼。
【請求項2】
前記翼部には中空部が形成され、
前記発振器が、前記中空部の内部に取り付けられている、
請求項1に記載のタービン翼。
【請求項3】
前記タービン翼は静翼であり、
前記翼部は、翼と、前記翼を支持する翼環とを備える、
請求項1に記載のタービン翼。
【請求項4】
前記発振器が、前記翼に対して外側に設けられた前記翼環に取り付けられている、
請求項3に記載のタービン翼。
【請求項5】
前記発振器が、前記翼に対して内側に設けられた前記翼環に取り付けられている、
請求項3に記載のタービン翼。
【請求項6】
前記発振器は、前記翼部を振動させる周波数を変更可能である、
請求項1から請求項5のいずれか1つに記載のタービン翼。
【請求項7】
請求項1から請求項5のいずれか1つに記載のタービン翼を有する、
蒸気タービン。
【請求項8】
タービン車室の壁面内に、前記タービン車室の壁面を振動させる発振器を備える、
請求項7に記載の蒸気タービン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、タービン翼、このタービン翼を備えた蒸気タービンに関する。
【背景技術】
【0002】
蒸気タービンは、内部車室に挿入されたロータと、ロータに多段にわたって配置された複数の動翼と、内部車室に多段にわたって配置された複数の静翼とを有し、多段の動翼と静翼とは、ロータの軸方向に交互に配設されている。蒸気タービンは、蒸気が内部車室に入り、多段の静翼と動翼が配置されている空間に供給されることで、この多段の動翼を介してロータを回転させ、このロータに連結された発電機を駆動する(たとえば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-004598号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、蒸気タービンの作動流体は蒸気であるため、蒸気に含まれる成分がスケールとして翼表面に付着して、タービンの性能が低下するおそれがある。例えば地熱発電等では、蒸気が多くのミネラル分を含むため、スケールの付着が特に問題となる。
【0005】
本開示は、上記に鑑みてなされたものであって、翼表面のスケールを除去できるタービン翼および蒸気タービンを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係るタービン翼は、翼部と、前記翼部に取り付けられて、前記翼部を振動させる発振器とを、備える。
【0007】
本開示に係る蒸気タービンは、前記タービン翼を有する。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、翼表面のスケールを除去できるタービン翼および蒸気タービンを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、本開示の実施形態に係る蒸気タービンの一例の概略構成を示す図である。
図2図2は、本開示の実施形態に係る静翼ユニットの構成を示す図である。
図3図3は、図1の破線部Aの拡大図である。
図4図4は、図2のB-B’断面図である。
図5図5は、第2実施形態の概要図である。
図6図6は、本開示の第2実施形態の例1に係る静翼の断面図である。
図7図7は、本開示の第2実施形態の例2に係る静翼の断面図である。
図8図8は、本開示の第3実施形態に係る車室の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(第1実施形態)
図1を用いて、蒸気タービンの一例の構成について説明する。図1は、本開示の実施形態に係る蒸気タービンの概略構成を示す図である。
【0011】
(蒸気タービン)
図1に示す蒸気タービン10は、蒸気タービン10の軸方向の中心側から蒸気を供給し、軸方向の両端のそれぞれに向かって蒸気が流れ、軸方向の両端から外部に排出される。蒸気タービン10は、ロータ16と、ロータ16に連結された複数の動翼30と、動翼30の外周に配置された内部車室34と、内部車室34の内部に配置された複数の静翼32と、内部車室34の外側に配置された外部車室36と、内部車室34に蒸気を供給する蒸気入口部40と、を有する。蒸気タービン10は、ロータ16に連結された複数の動翼30と、内部車室34の内部に配置された複数の静翼32とがロータ16の軸方向に交互に配置されている。動翼30、静翼32は、それぞれロータ16の回転方向に周状に配置される。また、内部車室34は、外部車室36に固定される外側部材35aと、静翼32に連結される内側部材35bとに分離されているものもある。蒸気タービン10は、内部車室34と外部車室36との連結部及び内側部材35bと外側部材35aとの連結部のそれぞれに固定装置90が設けられている。
【0012】
蒸気タービン10は、蒸気入口部40から供給された蒸気が、内部車室34とロータ16との間で動翼30と静翼32とが交互に配置されている領域を通過する。蒸気タービン10は、通過する蒸気の力で動翼30が回転されることで、ロータ16が回転する。図1中の一点鎖線は、ロータ16の回転中心軸CLである。
【0013】
図2を用いて、本実施形態に係る静翼ユニットについて説明する。図2は、本実施形態に係る静翼ユニットの構成を示す図である。
【0014】
以下の説明においては、ロータ16の回転中心軸CLに沿った方向を、Y方向と記載する。また、Y方向に沿った方向であって蒸気の流れの上流側に向かう方向を-Y方向とし、Y方向に沿った方向であって蒸気の流れの下流側に向かう方向を+Y方向とする。さらに径方向とは、ロータ16の回転中心軸CLを軸方向とした場合の、回転中心軸CLに直交する方向を示すこととする。
【0015】
(静翼ユニット)
図2に示すように、翼部としての静翼ユニット42は、第1本体部50Aと、第1本体部50Aと同形状で、第1本体部50Aに対向するように配置された第2本体部50Bとを備える。第1本体部50Aと、第2本体部50Bとは半円環状の形状であり、これら半円の中心位置は、ロータ16の回転中心軸CLと重なる。
【0016】
第1本体部50Aは、翼としての静翼32と、静翼32に接続される翼環51とを有する。翼環51は、内側翼環52Aと外側翼環53Aとを有する。内側翼環52Aは、静翼32に対して径方向の内側に設けられており、静翼32の径方向内側の端部532に接続されている。外側翼環53Aは、静翼32に対して、径方向の外側に設けられており、静翼32の径方向外側の端部531に接続されている。同様に、第2本体部50Bは、翼としての静翼32と、静翼32に接続される翼環51とを有する。翼環51は、内側翼環52Bと外側翼環53Bとを有する。内側翼環52Bは、静翼32に対して、径方向の内側に設けられており、静翼32の径方向内側の端部532に接続されている。外側翼環53Bは、静翼32に対して、径方向の外側に設けられており、静翼32の径方向外側の端部531に接続されている。
【0017】
第1本体部50Aと、第2本体部50Bは、同一形状のため、第1本体部50Aを用いて、以降の説明を行うこととし、第1本体部50Aの名称も本体部50と称する。同様に外側翼環53Aは外側翼環53、内側翼環52Aは内側翼環52と以降は称する。
【0018】
(翼環)
翼環としての外側翼環53と内側翼環52とは、内部が中空の半円環状の部材である。複数の板材から構成されている。例えば、外側翼環53と内側翼環52とは、各面が1枚の板材であり、複数の板材の各辺を溶接することで製造される。
【0019】
外側翼環53には、静翼32の一方の端部531が接続される。内側翼環52には、静翼32の他方の端部532が接続される。これにより、半円環状の本体部50が形成される。
【0020】
(動翼)
図3は、図1の破線部Aの拡大図である。図1に示すように、ロータ16は複数の動翼30を有し、回転中心軸CLを中心に回転する。図3に示すように、複数の静翼ユニット42は、ロータ16を挟むように配置される。その結果、動翼30と静翼32とが交互に配置された空間を、ロータ16の作動流体である蒸気が+Y方向に向かって通過する。
【0021】
(静翼)
図4は、図2のB―B’断面図である。図4に示すように、本実施形態における静翼32は、腹側部材32Aと背側部材32Bとを有し、内部に空間である中空部14が形成されている。腹側部材32Aは、静翼32の-Y方向側の表面を構成する部材であり、背側部材32Bは、静翼32の+Y方向側の表面を構成する部材である。腹側部材32Aと背側部材32Bとは、周縁同士が互いに接続されており、接続した周縁分のうち、一部は内側翼環52と、外側翼環53とに接している。より詳しくは、外側翼環53と、内側翼環52と、腹側部材32Aと、背側部材32Bとに囲われた空間が、中空部14となっている。なお例えば、腹側部材32Aと背側部材32Bとは、周縁部が、前後方法から合わせ溶接して製造されてよい。
【0022】
静翼32には、中空部14を外部の空間と連通するスリットSLが形成されていてもよい。スリットSLは、腹側部材32Aに形成されることが好ましく、本実施形態の例では複数形成されている。スリットSLは、作動流体の蒸気が静翼32の表面に当たることで付着する水(蒸気、水滴)を、静翼32の内部空間に取り込み除去する機能を有している。
【0023】
中空部14と、内側翼環52内部の空間とは、溶接された腹側部材32Aと背側部材32Bの周縁部のうち、内側翼環52と接する部位を通してつながっている。静翼32の翼表面からスリットSLを通じて中空部14内部に取り込まれた水DRは、溶接された腹側部材32Aと背側部材32Bのうち、内側翼環52に接する周縁部を通して、内側翼環52内部の中空空間へ排出される。内側翼環52内部の空間に排出された水DRは、内側翼環52のドレイン口(不図示)から外部空間に排出される。
【0024】
中空部14と、外側翼環53の内部の空間とは、開口部H1を介して連通している。また、中空部14には、中空部14内を仕切る隔壁BH1が設けられている。隔壁BH1は、中空部14を、スリットSLに連通する空間と、スリットSLに連通せずに開口部H1に連通する空間とに仕切る(スリットSLに連通する空間と開口部H1に連通する空間との間に設けられる)。
【0025】
(発振器)
翼部としての静翼ユニット42には、静翼ユニット42を振動させる発振器20が取り付けられている。すなわち、静翼ユニット42と発振器20とで、タービン翼を構成しているといえる。
【0026】
発振器20は、電気信号を振動に変換する装置である。発振器20は、例えば電歪型の超音波振動子である。電歪型の超音波振動子には一般に圧電セラミックスと呼ばれるもの(例としてチタン酸ジルコン酸鉛(PZT)等)が使われており、これらに高い電圧をかけることで、セラミック結晶粒の向きが揃う。圧電セラミックスにプラスの電圧を加えると縦方向に伸び、マイナスの電圧を加えると縮む(その分横方向に膨らむ)という性質を利用し、交流信号を与えてこれらを交互に繰り返すことで「振動」を起こす装置である。
【0027】
発振器20は、翼部としての静翼ユニット42の任意の位置に取り付けられてもよいが、本実施形態では、静翼32に取り付けられる。静翼32に発振器20を取り付ける場合には、静翼ユニット42に設けられる静翼32のそれぞれに発振器20を取り付けることが好ましい。
【0028】
発振器20は、静翼32の外面に取り付けられてもよいが、本実施形態では、静翼32の中空部14に取り付けられる。具体的には、発振器20は、隔壁BH1によって仕切られた、開口部H1に連通する空間内に設けられる。これにより、スリットSLから浸入した水DRが隔壁BH1に遮られ、発振器20に付着することを抑制できる。本実施形態においては、発振器20に電力を供給する電線WRが、発振器20に接続されている。電線WRは、中空部14と外側翼環53の内部の空間とを連通する開口部H1から、外側翼環53の内部の空間に引き込まれている。そして、電線WRは、外側翼環53の内部の空間と内部車室34の外部の空間とを連通する開口部H2を介して、内部車室34の外部の空間に引き出されて、制御部20Sに接続される。
【0029】
発振器20は、静翼32に溶接によって取り付けられる。取り付け方法は溶接に限定されず任意でよいが、発振器20が、発生させた振動を静翼32に効率よく伝えるため、発振器20と静翼32が直接接触する取り付け方法が望ましい。また、本実施形態では、発振器20が、中空部14における腹側部材32Aのうち、径方向の外側部分(外側翼環53近傍)に取り付けられている。発振器20の取り付け位置については、静翼32の上流側(腹側部材32A)かつ、径方向の外側の位置(外側翼環53近傍)が、蒸気の流速が高く、スケールが多く付着する部位という観点から望ましい。また、腹側部材32Aのうち、径方向の外側の位置(外側翼環53近傍)に発振器20を取り付けることで、制御部20Sまでの電線WRを短くすることができる。なお、外側翼環53近傍とは、例えば、静翼32の径方向における中央位置よりも径方向外側を指してよい。
【0030】
(制御部と振動周波数)
制御部20Sは、発振器20に電力を供給する装置である。制御部20Sは、発振器20に発振する電気信号の周波数を変化させることにより、発振器20に発生させる振動の周波数を制御する。翼表面に付着したスケールに加速度を与えて除去するために、発振器20に発生させる振動は、10kHZ以上の高周波数での振動が望ましい。なお、常に同じ周波数による振動だけでは、翼における振動モードの節部分でスケールに加速度を与えることが出来ず、節部分のスケールを除去することができなくなる場合も想定される。従って、制御部20Sは、発振器20に発振する電気信号の周波数を変更することが好ましい。制御部20Sによる電気信号の周波数変更は、タービンの可動時間に応じて変更してもよいし、複数の周波数を掛け合わせた電気信号を発振器20に発振してもよい。制御部20Sは、独立した装置でもよいし、不図示の蒸気タービン10の制御装置の一部でもよい。
【0031】
(効果)
ここで、蒸気タービンの静翼32(翼部)には、スケールが付着する場合がある。それに対して、本実施形態においては、静翼32に発振器20が取り付けられる。それにより、本実施形態によると、静翼32の表面に付着したスケールの除去が可能となる。さらに言えば、本実施形態においては、発振器20は発生させる振動の周波数を変更することができる。これにより、一定の周波数による振動では、翼における振動モードの節部分になり除去できないスケールを、発振器20に発生させる振動の周波数を変更させることで、除去することが可能となる。
【0032】
なお、第1実施形態においては、静翼32を翼部として、静翼32に発振器20を取り付けていた。ただしそれに限られず、動翼30を翼部として、動翼30に発振器20を取り付けてもよい。また、動翼30及び静翼32の両方に発振器20を取り付けてよい。すなわち、第1実施形態においては、翼部としての動翼30及び静翼32の少なくとも一方に、発振器20を取り付けるものであればよい。動翼30における発振器20取り付け位置は任意であってよいが、例えば第1実施形態での静翼32における取り付け位置と対応する位置であってよい。
【0033】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態について説明する。第1実施形態においては、静翼32の内部に発振器20を取り付けて、翼表面のスケールを除去していたが、第2実施形態においては、翼環51に発振器20を取り付けることで、翼表面のスケールを除去することができる。図5は、第2実施形態の概要図である。図5に示すように、第2実施形態においては、翼環51のうち、外側翼環53と内側翼環52との少なくとも一方に発振器20が取り付けられている。図5の例では、外側翼環53と内側翼環52との両方に発振器20が取り付けられているが、それに限られず、外側翼環53と内側翼環52とのいずれか一方に発振器20が取り付けられていてよい。また、図5の例では、外側翼環53及び内側翼環52にそれぞれ3つの発振器20が取り付けられているが、これは一例であり、外側翼環53と内側翼環52との少なくとも一方に、少なくとも1つの発振器20が取り付けられていてよい。また、第2実施形態は、第1実施形態にも適用可能である。すなわち、静翼32に発振器20が設けられ、かつ、外側翼環53と内側翼環52との少なくとも一方に発振器20が設けられてもよい。
【0034】
最初に、外側翼環53に発振器20が設けられる場合の例を説明する。図6は、本開示の第2実施形態に係る例1の静翼32の断面図である。なお静翼32と、内側翼環52と、発振器20と、制御部20Sの機能および構造については、第1実施形態と同じため説明を省略する。本実施形態の例1においては、発振器20は、外側翼環53の内部の空間に取り付けられ、電線WRが発振器20に接続されている。電線WRは、外側翼環53の内部の空間と、内部車室34の外部の空間とを連通する開口部H3を介して、内部車室34の外部の空間に引き出されて、制御部20Sに接続される。
【0035】
発振器20は、外側翼環53に溶接によって取り付けられる。取り付け方法は溶接に限定されず任意でよいが、発振器20が、発生させた振動を静翼32に効率よく伝えるため、発振器20と静翼32が直接接触する取り付け方法が望ましい。発振器20の位置については、外側翼環53の内部の空間において、スケールが多く付着する静翼32の上流側(腹側部材32A)に近接した部位が望ましい。
【0036】
(効果)
以上説明したように、本例においては、外側翼環53の内部に取り付けられた発振器20が、外側翼環53を振動させる結果、外側翼環53に接続されている静翼32も振動することになる。そのため、本実施形態によると、静翼32の表面に付着したスケールの除去が可能となる。さらに言えば、本実施形態においては、第1実施形態と比較して、発振器20の個数と電線WRの本数を少なく設定することができる。
【0037】
次に、内側翼環52に発振器20が設けられる場合の例を説明する。図7は、本開示の第2実施形態の例2に係る静翼32の断面図である。中空部14と、外側翼環53の内部の空間とは、開口部H4を介して連通し、中空部14と、内側翼環52内部の空間とは、溶接された腹側部材32Aと背側部材32Bのうち、内側翼環52に接する周縁部を通して連通している。また、内側翼環52の内部の空間には、この空間を仕切る隔壁BH2が設けられている。なお、静翼32と、発振器20と、制御部20Sの機能および構造については、第1実施形態と同じため説明を省略する。本実施形態の例2においては、発振器20が内側翼環52の内部に取り付けられている。具体的には、発振器20は、内側翼環52の内部の隔壁BH2によって仕切られた空間に取り付けられている。これにより、スリットSLから浸入し、その後内側翼環52内に侵入した水DRが隔壁BH2に遮られ、発振器20に付着することを抑制できる。
【0038】
発振器20に接続される電線WRは、溶接された腹側部材32Aと背側部材32Bのうち、内側翼環52に接する周縁部から中空部14に引き込まれている。そして、中空部14と、外側翼環53の内部の空間とを連通する開口部H4から外側翼環53の内部の空間に引き出されて、さらに、外側翼環53の内部の空間と内部車室34の外部の空間とを連通する開口部H5を介して、内部車室34の外部の空間に引き出されて、制御部20Sに接続される。
【0039】
発振器20は、内側翼環52に溶接によって取り付けられる。取り付け方法は溶接に限定されず任意でよいが、発振器20が、発生させた振動を静翼32に効率よく伝えるため、発振器20と静翼32が直接接触する取り付け方法が望ましい。発振器20の位置については、内側翼環52の内部の空間において、スケールが多く付着する静翼32の上流側(腹側部材32A)に近接した部位が望ましい。
【0040】
(効果)
以上説明したように、本例においては、内側翼環52の内部に取り付けられた発振器20が、内側翼環52を振動させる結果、内側翼環52に溶接されている静翼32も振動することになる。そのため、本実施形態によると、静翼32の表面に付着したスケールの除去が可能となる。さらに言えば、本実施形態においては、第1実施形態と比較して、発振器20の個数と電線WRの本数を少なく設定することができる。
【0041】
(第3実施形態)
次に、第3実施形態について説明する。第3実施形態においては、内部車室34に発振器20を取り付ける点で、第1実施形態及び第2実施形態とは異なる。ただし、第3実施形態は、第1実施形態及び第2実施形態に組み合わせ可能である。すなわち、内部車室34に発振器20が設けられ、かつ、静翼32と外側翼環53と内側翼環52との少なくとも1つに発振器20が設けられてもよい。
【0042】
図8は、本開示の第3実施形態に係る蒸気タービンにおける車室の断面図である。図8に示すように、第3実施形態に係る蒸気タービンの内部車室34には、外側翼環53と、発振器20とが取り付けられている。
【0043】
静翼32同様、蒸気に晒される内部車室34の壁面にもスケールが付着する。第3実施形態における蒸気タービンにおいては、内部車室34の内部(車室壁面近傍)に発振器20を取り付け、内部車室34の壁面を振動させる。これにより、内部車室34の壁面に付着したスケールを除去することができる。
【0044】
内部車室34における発振器20の取り付け位置と、内部車室34に取り付けられる発振器20の数とは、任意であってよい。発振器20の個数や、配置間隔は、内部車室34におけるスケールの除去性能をみながら、任意で変更してよい。
【0045】
(効果)
以上説明したように、第3実施形態においては、内部車室34の内部(車室壁面近傍)に取り付けられた発振器20が、内部車室34の壁面を振動させる。そのため、本実施形態によると、内部車室34の壁面に付着したスケールの除去が可能となる。
【0046】
(効果)
以上説明したように、本開示の第1態様に係るタービン翼は、翼部と、翼部に取り付けられて、翼部を振動させる発振器20とを備える。本開示によると、翼部を発振器20で振動させることで、翼表面のスケールを除去できる。
【0047】
本開示の第2態様に係るタービン翼は、第1態様に係るタービン翼であって、翼部に中空部14が形成され、発振器20が、中空部14の内部に取り付けられている。本開示によると、翼部の中空部14に取り付けられた発振器20が、翼を振動させることで翼表面のスケールを除去できる。
【0048】
本開示の第3態様に係るタービン翼は、第1態様に係るタービン翼であって、タービン翼は静翼32であり、翼部は、翼(静翼32)と、翼を支持する翼環51を備える。本開示によると翼(静翼32)または、翼環51の内部に取り付けられた発振器20が、振動することで、静翼32の翼表面のスケールを除去できる。
【0049】
本開示の第4態様に係るタービン翼は、第3態様に係るタービン翼であって、発振器20が翼(静翼32)に対して外側に設けられた翼環(外側翼環53)に取り付けられている。本開示によると、外側翼環53に取り付けられた発振器20が、外側翼環53を振動させる結果、外側翼環53に溶接されている静翼32を振動させ、静翼32の翼表面のスケールを除去できる。また、第3態様と比較して、発振器20の個数と、発振器20につながる電線WRの本数を少なくすることができる。
【0050】
本開示の第5態様に係るタービン翼は、第3態様に係るタービン翼であって、発振器20が翼(静翼32)に対して内側に設けられた翼環(内側翼環52)に取り付けられている。本開示によると、内側翼環52に取り付けられた発振器20が、内側翼環52を振動させる結果、内側翼環52に溶接されている静翼32を振動させ、静翼32の翼表面のスケールを除去できる。また、第3態様と比較して、発振器20の個数と、発振器20につながる電線WRの本数を少なくすることができる。
【0051】
本開示の第6態様に係るタービン翼は、第1態様から第5態様のいずれか1つに係るタービン翼であって、発振器20が、翼部を振動させる周波数を変更可能である。本開示によると、一定の周波数による振動では、翼における振動モードの節部分となり除去できなかった翼表面のスケールを、発振器20が周波数を変更させることで、翼における振動モードの節部分の位置を変化させ、除去することができるようになる。
【0052】
本開示の第7態様に係る蒸気タービン10は、第1態様から第5実施形態のいずれか1つに係るタービン翼を有する。本開示によると、発振器20が翼部(静翼ユニット42)を振動させる。これにより、翼表面に付着したスケールを除去することができる。
【0053】
本開示の第8態様に係る蒸気タービン10は、第7態様に係る蒸気タービンであって、タービン車室(内部車室34)の壁面内に、タービン車室(内部車室34)の壁面を振動させる発振器20を備える。本開示によると、発振器20が翼表面と内部車室34の壁面を振動させる。これにより、翼表面と内部車室34の壁面に付着したスケールを除去することができる。
【0054】
以上、本開示の実施形態を説明したが、この実施形態の内容により実施形態が限定されるものではない。また、前述した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、いわゆる均等の範囲のものが含まれる。さらに、前述した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。さらに、前述した実施形態の要旨を逸脱しない範囲で構成要素の種々の省略、置換又は変更を行うことができる。
【符号の説明】
【0055】
10 蒸気タービン
14 中空部
16 ロータ
20 発振器
20S 制御部
30 動翼
32 静翼
34 内部車室
42 静翼ユニット
51 翼環
52 内側翼環
53 外側翼環
CL ロータ16の回転中心軸
WR 電線
DR 水
図1
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