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特開2024-136179半導体装置及び半導体装置の製造方法
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  • 特開-半導体装置及び半導体装置の製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024136179
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】半導体装置及び半導体装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/822 20060101AFI20240927BHJP
【FI】
H01L27/04 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023047204
(22)【出願日】2023-03-23
(71)【出願人】
【識別番号】390009667
【氏名又は名称】セイコーNPC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】倉光 良明
(72)【発明者】
【氏名】田中 正宗
(72)【発明者】
【氏名】菱沼 邦之
【テーマコード(参考)】
5F038
【Fターム(参考)】
5F038AC03
5F038EZ20
(57)【要約】
【課題】ゲート電極直下の拡散層における不純物濃度勾配の調整を不要にしつつ、C-V特性を直線性のよい状態にする。
【解決手段】半導体装置は、p型基板12(第1導電型半導体基板)と、p型基板12上に設けられた絶縁物層14と、p型基板12上に絶縁物層14を介して設けられたゲート電極16(導電体層)と、p型基板12のうち、ゲート電極16に対向する表面近傍を含む領域に設けられたnウェル18(第2導電型不純物領域)と、nウェル18のうち、ゲート電極16に対向する表面近傍を含む領域に設けられ、ゲート電極16の一部と対向するp-拡散層20(第1導電型の低濃度層)と、を有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1導電型半導体基板と、
前記第1導電型半導体基板上に設けられた絶縁物層と、
前記第1導電型半導体基板上に前記絶縁物層を介して設けられた導電体層と、
前記第1導電型半導体基板のうち、前記導電体層に対向する表面近傍を含む領域に設けられた第2導電型不純物領域と、
前記第2導電型不純物領域のうち、前記導電体層に対向する表面近傍を含む領域に設けられ、前記導電体層の一部と対向する第1導電型の低濃度層と、
を有する半導体装置。
【請求項2】
前記導電体層の前記第2導電型不純物領域に対向する面積をAとし、
前記第2導電型不純物領域のうち前記導電体層に対向する表面近傍の前記第1導電型の低濃度層が存在しない領域Sの面積をBとすると、
B/A=1/5~1/2である請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記領域Sが複数設けられている請求項2に記載の半導体装置。
【請求項4】
第1導電型半導体基板上に絶縁物層を設ける工程と、
前記第1導電型半導体基板上に前記絶縁物層を介して導電体層を設ける工程と、
前記第1導電型半導体基板のうち、前記導電体層に対向する表面近傍を含む領域に第2導電型不純物領域を設ける工程と、
前記第2導電型不純物領域のうち、前記導電体層に対向する表面近傍を含む領域に、前記導電体層の一部と対向する第1導電型の低濃度層を設ける工程と、
を有する半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置及び半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ゲート電極に印加される制御電圧(ゲート電圧)に対し容量が変化するMOS型キャパシタが開示されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4107362号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、MOS型キャパシタにおいて、容量とゲート電圧の関係(C-V特性)を直線性のよい状態とする場合、ゲート電極直下の拡散層において、不純物の濃度勾配を特別にコントロールする必要がある。具体的には、絶縁物層に近い領域(浅い領域)の濃度が高く、絶縁物層から遠い領域(深い領域)の濃度が低くなるように、不純物濃度が設定される。
【0005】
本発明は、ゲート電極直下の拡散層における不純物濃度勾配の調整を不要にしつつ、C-V特性を直線性のよい状態にすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の態様に係る半導体装置は、第1導電型半導体基板と、前記第1導電型半導体基板上に設けられた絶縁物層と、前記第1導電型半導体基板上に前記絶縁物層を介して設けられた導電体層と、前記第1導電型半導体基板のうち、前記導電体層に対向する表面近傍を含む領域に設けられた第2導電型不純物領域と、前記第2導電型不純物領域のうち、前記導電体層に対向する表面近傍を含む領域に設けられ、前記導電体層の一部と対向する第1導電型の低濃度層と、を有する。
【0007】
この半導体装置では、第2導電型不純物領域のうち導電体層に対向する表面近傍を含む領域に第1導電型の低濃度層が設けられており、該第1導電型の低濃度層は導電体層の一部と対向している。換言すれば、第2導電型不純物領域のうち導電体層に対向する表面近傍には、第1導電型の低濃度層が存在しない領域Sがある。これにより、導電体層に印加される制御電圧により第1導電型半導体基板のうち導電体層に対向する部分に生じる空乏層が、制御電圧の上昇に伴い広がり易い。これにより、C-V特性の直線性を高めることができる。
【0008】
第2の態様は、第1の態様に係る半導体装置において、前記導電体層の前記第2導電型不純物領域に対向する面積をAとし、前記第2導電型不純物領域のうち前記導電体層に対向する表面近傍の前記第1導電型の低濃度層が存在しない領域Sの面積をBとすると、B/A=1/5~1/2である。
【0009】
ここで、B/Aが1/5を下回ると、制御電圧が低いとき(例えば0V)の容量が大きくなり、C-V特性の直線性が低下する。B/Aが1/2を上回ると、制御電圧が低いとき(例えば0V)を印加していないときの容量が小さくなり過ぎ、制御電圧による容量の可変の幅が少なくなる。
【0010】
この半導体装置では、B/Aの範囲を適切に設定しているので、容量の可変の幅を確保しつつ、C-V特性の直線性を高めることができる。
【0011】
第3の態様は、第2の態様に係る半導体装置において、前記領域Sが複数設けられている。
【0012】
この半導体装置では、第2導電型不純物領域のうち導電体層に対向する表面近傍に第1導電型の低濃度層が存在しない領域Sが複数設けられており、領域Sが複数でも合計の面積が同じであれば効果は同じとなる。
【0013】
第4の態様に係る半導体装置の製造方法は、第1導電型半導体基板上に絶縁物層を設ける工程と、前記第1導電型半導体基板上に前記絶縁物層を介して導電体層を設ける工程と、前記第1導電型半導体基板のうち、前記導電体層に対向する表面近傍を含む領域に第2導電型不純物領域を設ける工程と、前記第2導電型不純物領域のうち、前記導電体層に対向する表面近傍を含む領域に、前記導電体層の一部と対向する第1導電型の低濃度層を設ける工程と、を有する。
【0014】
この半導体装置の製造方法では、C-V特性の直線性を高めることが可能な半導体装置を製造できる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、ゲート電極直下の拡散層における不純物濃度勾配の調整を不要にしつつ、C-V特性を直線性のよい状態にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本実施形態に係るMOS型キャパシタを模式的に示す断面図である。
図2】変形例1に係るMOS型キャパシタを示す断面図である。
図3】変形例2に係るMOS型キャパシタを示す平面図である。
図4】変形例3に係るMOS型キャパシタを示す平面図である。
図5】本実施形態に係るMOS型キャパシタにおいて、低い制御電圧を印加したときの空乏層の状態を模式的に示す断面図である。
図6】本実施形態に係るMOS型キャパシタにおいて、高い制御電圧を印加したときの空乏層の状態を模式的に示す断面図である。
図7】B/Aの違いによるC-V特性を示す線図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を実施するための形態を図面に基づき説明する。図1において、本実施形態に係る半導体装置の一例としてのMOS型キャパシタ10は、第1導電型半導体基板の一例としてのp型基板12と、絶縁物層14と、導電体層の一例としてのゲート電極16と、第2導電型不純物領域の一例としてのnウェル18と、第1導電型の低濃度層の一例としてのp-拡散層20と、を有している。
【0018】
p型基板12は、例えばシリコン(Si)基板である。
【0019】
絶縁物層14は、p型基板12上に設けられている。
【0020】
ゲート電極16は、p型基板12上に絶縁物層14を介して設けられている。ゲート電極16の両側で絶縁物層14の上には、サイドウォール22が設けられている。ゲート電極16は、導電性金属、例えば、金、銀、銅、アルミニウムなどによって形成されている。
【0021】
nウェル18は、p型基板12のうち、ゲート電極16に対向する表面近傍を含む領域に設けられている。図示の例では、nウェル18は、ゲート電極16に対向する領域から、ゲート電極16と対向しない領域まで設けられている。nウェル18は、p型基板12の表面に例えばリン(P)を不純物として添加して形成されている。
【0022】
p-拡散層20は、nウェル18のうち、ゲート電極16に対向する表面近傍を含む領域に設けられ、ゲート電極16の一部と対向している。換言すれば、nウェル18のうちゲート電極16に対向する表面近傍には、p-拡散層20が存在しない領域Sがある。図1では、領域Sは、ゲート電極16の右端に配置されている。p-拡散層20は、nウェル18の表面に例えばボロン(B)を不純物として添加して形成されている。p-拡散層20の不純物濃度は一定でよく、不純物濃度勾配を付けなくてよい。
【0023】
図2に示される変形例1のように、領域Sは、ゲート電極16の右端でも左端でもなく、その中間的な位置に配置されていてもよい。図3に示される変形例2のように、領域Sは、ゲート電極16の長さ方向におけるある領域に設けられていてもよい。領域Sは複数設けられていてもよい。図4に示される変形例3のように、領域Sは、ゲート電極16の長さ方向の一部と、幅方向の一部に設けられて、互いに交差していてもよい。また、領域Sとp-拡散層20とが交互に並んでいてもよい。
【0024】
ここで、ゲート電極16のnウェル18に対向する面積をAとし、領域Sの面積をBとしたとき、B/A=1/5~1/2としてもよい。B/Aが1/5を下回ると、制御電圧が低いとき(例えば0V)の容量が大きくなり、電圧-容量特性(C-V特性)の直線性が低下する。B/Aが1/2を上回ると、制御電圧が低いとき(例えば0V)の容量が小さくなり過ぎ、制御電圧による容量の可変の幅が少なくなる。なお、「1/5~1/2」のような数値範囲の表記は、下限値および上限値がその範囲に含まれることを意味する。
【0025】
nウェル18におけるゲート電極16の両側には、p+拡散層24,26が設けられていてもよい。p+拡散層24には、例えばソース電極(図示せず)を設けることができる。また、p+拡散層26には、例えばドレイン電極(図示せず)を設けることができる。
【0026】
(作用)
本実施形態は、上記のように構成されており、以下その作用について説明する。図5図6において、本実施形態に係るMOS型キャパシタ10では、nウェル18のうちゲート電極16に対向する表面近傍を含む領域にp-拡散層20が設けられており、該p-拡散層20はゲート電極16の一部と対向している。換言すれば、nウェル18のうちゲート電極16に対向する表面近傍には、p-拡散層20が存在しない領域Sがある。これにより、ゲート電極16に印加される制御電圧によりp型基板12のうちゲート電極16に対向する部分に生じる空乏層30が、制御電圧の上昇に伴い広がり易い。
【0027】
この空乏層30の変化について模式的に説明する。図5は、制御電圧が低い場合を示している。このとき空乏層30は、p-拡散層20の絶縁物層14側の表面と、領域Sにおけるnウェル18の表面から底部までの領域に生じる。図6に示されるように、空乏層30は、制御電圧の上昇に伴い拡大する。p-拡散層20の絶縁物層14側の表面の空乏層30は、図5のときより深くなり、nウェル18の空乏層30は横に広がる。これにより、MOS型キャパシタ10の容量が小さくなる。
【0028】
ゲート電極16のnウェル18に対向する面積Aと、領域Sの面積Bについて、B/A=1/5~1/2とすることで、容量の可変の幅を確保しつつ、C-V特性の直線性を高めることができる。このことを示すため、図7には、B/Aを1/10~6/10に変化させた場合のC-V特性が示されている。「2/10」は「1/5」に等しく、「5/10」は1/2に等しい。B/A=1/10では、容量が大きい分制御電圧の上昇による容量の低下が大きくなり、直線性が低くなる。また、B/A=6/10(3/5と等値)では、容量が小さいため、制御電圧の上昇による容量の可変の幅が小さくなる。
【0029】
このように、本実施形態によれば、ゲート電極16直下のp-拡散層20における不純物濃度勾配の調整を不要にしつつ、C-V特性を直線性のよい状態にすることができる。
【0030】
なお、領域Sが複数設けられている場合でも、合計の面積が同じであれば効果は同じとなる。
【0031】
[MOS型キャパシタの製造方法]
MOS型キャパシタの製造方法は、
p型基板12上に絶縁物層14を設ける工程と、
p型基板12上に絶縁物層14を介してゲート電極16を設ける工程と、
p型基板12のうち、ゲート電極16に対向する表面近傍を含む領域にnウェル18を設ける工程と、
nウェル18のうち、ゲート電極16に対向する表面近傍を含む領域に、ゲート電極16の一部と対向するp-拡散層20を設ける工程と、
を有する。
【0032】
なお、これらの工程は、nウェル18を設ける工程、p-拡散層20を設ける工程、絶縁物層14を設ける工程、そしてゲート電極16を設ける工程の順に行われる。
【0033】
このMOS型キャパシタの製造方法では、C-V特性の直線性を高めることが可能なMOS型キャパシタを製造できる。
【0034】
[他の実施形態]
以上、本発明の実施形態の一例について説明したが、本発明の実施形態は、上記に限定されるものでなく、上記以外にも、その主旨を逸脱しない範囲内において種々変形して実施可能であることは勿論である。
【0035】
第1導電型半導体基板をp型基板とし、第2導電型不純物領域をnウェル18とし、第1導電型の低濃度層をp-拡散層20としたが、逆に第1導電型半導体基板をn型基板とし、第2導電型不純物領域をpウェル18とし、第1導電型の低濃度層をn-拡散層20としてもよい。
【符号の説明】
【0036】
10 MOS型キャパシタ(半導体装置)
12 p型基板(第1導電型半導体基板)
14 絶縁物層
16 ゲート電極(導電体層)
18 nウェル(第2導電型不純物領域)
20 p-拡散層(第1導電型の低濃度層)
S 領域
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7