(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024136188
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】ボイラ
(51)【国際特許分類】
F22D 5/00 20060101AFI20240927BHJP
F22D 5/26 20060101ALI20240927BHJP
G01F 23/24 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
F22D5/00 B
F22D5/26 Z
G01F23/24 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023047215
(22)【出願日】2023-03-23
(71)【出願人】
【識別番号】000175272
【氏名又は名称】三浦工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001139
【氏名又は名称】SK弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100130328
【弁理士】
【氏名又は名称】奥野 彰彦
(74)【代理人】
【識別番号】100130672
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】岡本 裕介
(72)【発明者】
【氏名】東瀬 平幹
(72)【発明者】
【氏名】吉武 淳
【テーマコード(参考)】
2F014
【Fターム(参考)】
2F014AA07
2F014AC03
(57)【要約】 (修正有)
【課題】バックアップに用いる水位検知手段の水無し判定不良を検知可能とするボイラを提供する。
【解決手段】水管4と給水ポンプ12と第1水位検知手段17と第2水位検知手段18と制御手段19を備えたボイラ1で、給水ポンプは水管に給水し、第1水位検知手段は水管の第1水位を検知、第2水位検知手段は水管の第1水位より低水位の第2水位を検知し、制御手段は第1又は第2制御モードで給水ポンプを制御し、第1制御モードで、制御手段は第1水位検知手段が第1水位を不検知又は第2水位検知手段が第2水位を不検知となった後に給水ポンプを駆動し、第1水位検知手段が第1水位を検知した後且つ第2水位検知手段が第2水位を検知した後に給水ポンプを停止し、第2制御モードで、制御手段は、第1水位検知手段が第1水位を検知しなくなっても給水ポンプの停止を継続し、第1時間経過後も第2水位検知手段が第2水位を検知している場合に異常と判定する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水管と、給水ポンプと、第1水位検知手段と、第2水位検知手段と、制御手段とを備えたボイラであって、
前記給水ポンプは、前記水管に給水するよう構成され、
前記第1水位検知手段は、前記水管の第1水位を検知するよう構成され、
前記第2水位検知手段は、前記水管の前記第1水位より低水位である第2水位を検知するよう構成され、
前記制御手段は、第1制御モード又は第2制御モードで前記給水ポンプの駆動を制御するよう構成されており、
前記第1制御モードにおいて、前記制御手段は、前記第1水位検知手段が前記第1水位を検知しなくなった後又は前記第2水位検知手段が前記第2水位を検知しなくなった後に前記給水ポンプを駆動し、前記第1水位検知手段が前記第1水位を検知した後且つ前記第2水位検知手段が前記第2水位を検知した後に前記給水ポンプの駆動を停止する制御を実行し、
前記第2制御モードにおいて、前記制御手段は、前記第1水位検知手段が前記第1水位を検知しなくなっても前記給水ポンプの停止を継続し、第1時間経過後も前記第2水位検知手段が前記第2水位を検知している場合に異常と判定する制御を実行する、ボイラ。
【請求項2】
請求項1に記載のボイラであって、
前記第1制御モードにおいて、前記制御手段は、前記第1水位検知手段が前記第1水位を検知しなくなってから第2時間経過後又は前記第2水位検知手段が前記第2水位を検知しなくなってから第3時間経過後に前記給水ポンプを駆動し、前記第1水位検知手段が前記第1水位を検知してから第4時間経過後且つ前記第2水位検知手段が前記第2水位を検知してから第5時間経過後に前記給水ポンプの駆動を停止させ、
前記第1時間は前記第2時間よりも長い時間である、ボイラ。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載のボイラであって、
前記制御手段は、前記第2制御モードにおいて、前記第1時間経過後までに前記第2水位を検知しなくなった場合に、前記給水ポンプを駆動するとともに前記第1制御モードに移行する、ボイラ。
【請求項4】
請求項1又は請求項2に記載のボイラであって、
前記制御手段は、前記ボイラの初期起動時に前記第2制御モードで前記給水ポンプの駆動を制御する、ボイラ。
【請求項5】
請求項1又は請求項2に記載のボイラであって、
前記制御手段は、前記第1制御モードで前記給水ポンプの駆動を制御するとともに、予め定めた期間又は予め定めた運転回数ごとに前記第2制御モードに移行する、ボイラ。
【請求項6】
請求項1又は請求項2に記載のボイラであって、
前記第1水位検知手段及び前記第2水位検知手段はそれぞれ電極棒である、ボイラ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水位検知手段を備えたボイラに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、缶体内の水管に連結された水位制御計内に配置された複数の電極棒の検知信号に基づいて水位を検知し、水位制御を行うボイラがある。例えば、特許文献1には、低水位を検知する電極棒が水無しを検知することでポンプを駆動し、高水位を検知する電極棒が水有りを検知することでポンプの駆動を停止するボイラが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示されるボイラでは、2本の電極棒のうち1本でも不良があると制御ができなくなり、運転を継続することができない。
【0005】
この点、例えば、高水位を検知する電極棒が水無しを検知してから第1経過時間後にポンプを駆動し、同電極棒が水有りを検知してから第2経過時間後にポンプの駆動を停止することにより、基本的に高水位の電極棒1本のみで水位を制御し、低水位を検知する電極棒はバックアップとして用いることも考えられる。この場合、主に使用される高水位を検知する電極棒の短絡(つまり、水無しの判定不良)は、低水位を検知する電極棒のみが水無しを検知するという論理的な矛盾から検知可能である。しかしながら、この場合も、低水位を検知する電極棒の短絡を検知することができなかった。
【0006】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、バックアップに用いる低水位を検知する低水位検知手段の水無しの判定不良を検知することの可能なボイラを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、以下の発明が提供される。
[1]水管と、給水ポンプと、第1水位検知手段と、第2水位検知手段と、制御手段とを備えたボイラであって、前記給水ポンプは、前記水管に給水するよう構成され、前記第1水位検知手段は、前記水管の第1水位を検知するよう構成され、前記第2水位検知手段は、前記水管の前記第1水位より低水位である第2水位を検知するよう構成され、前記制御手段は、第1制御モード又は第2制御モードで前記給水ポンプの駆動を制御するよう構成されており、前記第1制御モードにおいて、前記制御手段は、前記第1水位検知手段が前記第1水位を検知しなくなった後又は前記第2水位検知手段が前記第2水位を検知しなくなった後に前記給水ポンプを駆動し、前記第1水位検知手段が前記第1水位を検知した後且つ前記第2水位検知手段が前記第2水位を検知した後に前記給水ポンプの駆動を停止する制御を実行し、前記第2制御モードにおいて、前記制御手段は、前記第1水位検知手段が前記第1水位を検知しなくなっても前記給水ポンプの停止を継続し、第1時間経過後も前記第2水位検知手段が前記第2水位を検知している場合に異常と判定する制御を実行する、ボイラ。
[2][1]に記載のボイラであって、前記第1制御モードにおいて、前記制御手段は、前記第1水位検知手段が前記第1水位を検知しなくなってから第2時間経過後又は前記第2水位検知手段が前記第2水位を検知しなくなってから第3時間経過後に前記給水ポンプを駆動し、前記第1水位検知手段が前記第1水位を検知してから第4時間経過後且つ前記第2水位検知手段が前記第2水位を検知してから第5時間経過後に前記給水ポンプの駆動を停止させ、前記第1時間は前記第2時間よりも長い時間である、ボイラ。
[3][1]又は[2]に記載のボイラであって、前記制御手段は、前記第2制御モードにおいて、前記第1時間経過後までに前記第2水位を検知しなくなった場合に、前記給水ポンプを駆動するとともに前記第1制御モードに移行する、ボイラ。
[4][1]~[3]のいずれかに記載のボイラであって、前記制御手段は、前記ボイラの初期起動時に前記第2制御モードで前記給水ポンプの駆動を制御する、ボイラ。
[5][1]~[3]のいずれかに記載のボイラであって、前記制御手段は、前記第1制御モードで前記給水ポンプの駆動を制御するとともに、予め定めた期間又は予め定めた運転回数ごとに前記第2制御モードに移行する、ボイラ。
[6][1]~[5]のいずれかに記載のボイラであって、前記第1水位検知手段及び前記第2水位検知手段はそれぞれ電極棒である、ボイラ。
【0008】
本発明によれば、制御手段が上記第2制御モードを実行することで、論理的矛盾から検知可能な第1水位検知手段の水無し判定不良に加え、バックアップに用いる第2水位検知手段の水無し判定不良も検知することが可能となっている。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の一実施形態に係るボイラ1の概略構成を示す説明図である。
【
図2】
図1のボイラ1の制御手段19による第1制御モードM1における水位制御を示すフローチャートである。
【
図3】第1制御モードM1における高水位タイマ制御と低水位タイマ制御について説明するための表である。
【
図4】
図1のボイラ1の制御手段19による第2制御モードM2における水位制御を示すフローチャートである。
【
図5】
図1のボイラ1の制御手段19による初期起動時の動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について説明する。以下に示す実施形態中で示した各種特徴事項は、互いに組み合わせ可能である。また、各特徴について独立して発明が成立する。
【0011】
1.ボイラ1の構成
本発明の一実施形態に係るボイラ1は、
図1に示すように、略環状の上部ヘッダ2及び下部ヘッダ3を水管としての複数本の水管4で連結して構成した缶体5を備えた小型の簡易ボイラとされる。上部ヘッダ2の上部には、水管4を加熱するバーナ6が設置され、このバーナ6には、電磁弁7が設けられた燃料供給ライン8と、燃焼用空気を供給する送風機(図示せず)が接続される。また、上部ヘッダ2には蒸気弁9を備えた蒸気流出管10が接続され、水管4内で発生した蒸気は蒸気流出管10を介して各機器に供給される。一方、下部ヘッダ3には、逆止弁11及び給水ポンプ12が接続された給水ライン13と、排水弁14を備えた排水ライン15が接続される。
【0012】
また、本実施形態に係るボイラ1は、缶体5の外側に、上部ヘッダ2及び下部ヘッダ3と連通して、水位制御筒16を備えている。水位制御筒16は、導電性材料により形成された中空容器である。そして、水位制御筒16内には、第1水位としての高水位を検知する第1水位検知手段としての高水位電極棒(S棒)17及び第2水位としての低水位を検知する第2水位検知手段としての低水位電極棒(L棒)18の2本の電極棒が挿入される。
【0013】
高水位電極棒17及び低水位電極棒18は、それぞれ絶縁体(図示省略)により水位制御筒16の上端部に保持されており、水位制御筒16外において一端側に外部接続端子17a,18aが取り付けられ、水位制御筒16内において他端側は電極部17b,18bとされる。また、水位制御筒16と絶縁された外部接続端子17a,18aは所定の電源部(図示省略)の一方側に接続され、導電性の水位制御筒16は電源部の他方側に接続されるか、又はアースされる。
【0014】
したがって、高水位電極棒17は、電極部17bが水位制御筒16内の水と接触すると、外部接続端子17aと水位制御筒16との間が通電状態(ON状態とも呼ぶ)となり、高水位の水有りを検知する。また、高水位電極棒17は、電極部17bが水位制御筒16内の水と接触しなくなると、外部接続端子17aと水位制御筒16との間が非通電状態(OFF状態とも呼ぶ)となり、高水位の水無しを検知する。一方、低水位電極棒18は、電極部18bが水位制御筒16内の水と接触すると、外部接続端子18aと水位制御筒16との間が通電状態(ON状態)となり、これによって低水位の水有りを検知する。また、低水位電極棒18は、電極部18bが水位制御筒16内の水と接触しなくなると、外部接続端子18aと水位制御筒16との間が非通電状態(OFF状態)となり、これによって低水位の水無しを検知する。
【0015】
制御手段19は、高水位電極棒17及び低水位電極棒18の検知信号に基づいて給水ポンプ12の駆動を制御し、これにより水管4の水位を制御するよう構成される。本実施形態に係る制御手段19は、具体的には、後述する第1制御モードM1及び第2制御モードM2で給水ポンプ12の駆動を制御する。制御手段19は、例えば、CPU、メモリ(例えばフラッシュメモリ)、入力部及び出力部を備えた情報処理装置により構成することができる。そして、情報処理装置により構成された制御手段19の上述した各構成要素による処理は、メモリに記憶されたプログラムをCPUが読み出して実行することで行われる。情報処理装置としては、例えば、パーソナルコンピュータ、PLC(プログラマラブルロジックコントローラ)あるいはマイコンが用いられる。ただし、制御手段19の一部の機能を、任意の通信手段により接続されたクラウド上で実行されるよう構成しても良い。
【0016】
2.ボイラ1の動作
以下、本実施形態のボイラ1の動作について説明する。本実施形態のボイラ1において、制御手段19は、第1制御モードM1と第2制御モードM2とを切り替えて実行するよう構成される。以下、
図2、
図4及び
図5のフローチャート及び
図3の表を用いて、各モードにおける動作及びボイラ1の初期起動時の動作について詳細に説明する。なお、以下に示す第1時間T1~第5時間T5は、予め定めた時間とされる。
【0017】
2.1 第1制御モードM1
第1制御モードM1は、ボイラ1の通常の燃焼運転時に実行されるモードである。第1制御モードM1において、制御手段19は、基本的には水管4の水位を高水位の近傍で増減させる高水位タイマ制御を実行し、バックアップとして、水管4の水位を低水位の近傍で増減させる低水位タイマ制御を実行する。以下、
図2のフローチャートを用いて、制御手段19による第1制御モードM1の具体的な制御を説明する。なお、以下の説明において、第1制御モードM1が開始される際、すなわち
図2のフローチャートの開始時には、給水ポンプ12が駆動した状態、すなわち、異常がない限り水管4の水位は上昇中であるものとする。給水ポンプ12が停止している状態で第1制御モードM1が開始される場合には、ステップS3から処理を開始すれば良い。
【0018】
まず、第1制御モードM1が開始されると、ステップS1において、制御手段19は、高水位電極棒17が高水位を検知する(OFFからONの論理反転が生じる)まで待機し、高水位電極棒17が高水位を検知したタイミングで経過時間のカウントを開始する。そして、制御手段19は、高水位電極棒17が高水位を検知してから第4時間T4が経過したか否かを判定し、高水位電極棒17が高水位を検知してから第4時間T4が経過するまでは、ステップS1を繰り返す。そして、制御手段19は、高水位電極棒17が高水位を検知してから第4時間T4が経過したと判定すると、次のステップS2に進む。
【0019】
次に、ステップS2において、制御手段19は、低水位電極棒18が低水位を検知する(OFFからONの論理反転が生じる)まで待機し、低水位電極棒18が低水位を検知したタイミングで経過時間のカウントを開始する。そして、低水位電極棒18が低水位を検知してから第5時間T5が経過したか否かを判定する。ここで、低水位電極棒18が低水位を検知するのは、基本的に高水位電極棒17の短絡異常が生じ、低水位タイマ制御が実行される場合のみである。正常である場合、すなわち、高水位タイマ制御が実行される場合は、低水位電極棒18はすでに低水位を検知した状態(一度OFFからONの論理反転が生じた状態)となっているため、ステップS2において制御手段19は、すぐに第5時間T5が経過したと判定し、次のステップS3に進む。
【0020】
一方、正常でない場合(低水位タイマ制御が実行されている場合)には、ステップS2において初めて低水位電極棒18が低水位を検知される(OFFからONの論理判定が生じる)ため、制御手段19は、低水位電極棒18が低水位を検知してから第5時間T5が経過したか否かを判定する。そして、制御手段19は、低水位電極棒18が低水位を検知してから第5時間T5が経過しない間はステップS1とステップS2を繰り返し、低水位電極棒18が低水位を検知してから第5時間T5が経過したと判定すると、次のステップS3に進む。
【0021】
次に、ステップS3において、制御手段19は、給水ポンプ12を停止させる。これにより、水管4の水位は減少することになる。
【0022】
次に、ステップS4において、制御手段19は、高水位電極棒17が高水位を検知しなくなる(OFFとなる)まで待機し、高水位電極棒17が高水位を検知しなくなってから第2時間T2が経過したか否かを判定する。そして、制御手段19は、高水位電極棒17が高水位を検知しなくなってから第2時間T2が経過したと判定すると、ステップS6に進み、給水ポンプ12を駆動する。給水ポンプ12を駆動した後は、ステップS1に戻り、ボイラ1がユーザの操作等により停止となるまで制御を継続する。
【0023】
一方、ステップS4において高水位電極棒17が高水位を検知しなくなってから第2時間T2が経過していない場合は、次のステップS5において、低水位電極棒18が低水位を検知しなくなる(ONからOFFの論理判定が生じる)まで待機し、低水位電極棒18が低水位を検知しなくなってから第3時間T3が経過したか否かを判定する。ここで、上記第2時間T2は、給水ポンプ12が停止した状態でボイラ1の燃焼を継続させた場合に水管4の水位が高水位から低水位まで低下する時間よりも短い時間に設定される。したがって、高水位タイマ制御を実行し、ボイラ1に異常がない場合は、水管4の水位が低水位まで低下することはない。低水位電極棒18が低水位を検知しなくなるのは、基本的に高水位電極棒17の短絡異常(水無し検知不良)が生じ、低水位タイマ制御が実行される場合のみである。正常である場合は、高水位タイマ制御として、低水位電極棒18が低水位を検知しなくなるよりも前に、ステップS4における「高水位電極棒17が高水位を検知しなくなってから第2時間T2が経過する」条件により、ステップS6に進むことになる。一方、低水位タイマ制御が実行される場合は、制御手段19は、低水位電極棒18が低水位を検知しなくなってから第3時間T3が経過するまでステップS4とステップS5を繰り返し、低水位電極棒18が低水位を検知しなくなってから第3時間T3が経過したと判定すると、ステップS6に進み、給水ポンプ12を駆動する。給水ポンプ12を駆動した後は、ステップS1に戻り、ボイラ1がユーザの操作等により停止となるまで制御を継続する。
【0024】
なお、上記フローチャートにて説明した制御は、まとめると、
図3の表に示すように、通常時の高水位タイマ制御とバックアップとしての低水位タイマ制御とを組み合わせた制御となる。具体的には、高水位タイマ制御としては、制御手段19は、ステップS1において高水位電極棒17が高水位を検知してから第4時間T4が経過するとステップS3において給水ポンプ12を停止し、ステップS4において高水位電極棒17が高水位を検知しなくなってから第2時間T2が経過するとステップS6において給水ポンプ12を駆動する。一方、低水位タイマ制御としては、制御手段19は、ステップS2において低水位電極棒18が低水位を検知してから第5時間T5が経過するとステップS3において給水ポンプ12を停止し、ステップS5において低水位電極棒18が低水位を検知しなくなってから第3時間T3が経過するとステップS6において給水ポンプ12を駆動する。
【0025】
以上のような制御により、本実施形態に係るボイラ1は、高水位電極棒17の短絡異常(水無し判定不良)により高水位タイマ制御ができない場合であっても、低水位タイマ制御により燃焼運転を継続することが可能となっている。なお、
図3に示すように、給水ポンプ12の駆動条件がOR条件である一方、給水ポンプ12の停止条件がAND条件となっているのは、水管4が満水となることは許容する一方、水管4の空焚きを確実に防止するためである。
【0026】
2.2 第2制御モードM2
第2制御モードM2は、低水位電極棒18の短絡(水無し判定不良)を検知するために実行されるモードである。なお、本実施形態において、第2制御モードM2の開始時には、水管4の水位は高水位以上となっており、高水位電極棒17が高水位を検知した状態、且つ低水位電極棒18が低水位を検知した状態であるものとする。第2制御モードM2の開始時において水管4の水位が高水位を下回っている場合は、高水位電極棒17が高水位を検知するまで一度給水ポンプ12を駆動させる。以下、
図4のフローチャートを用いて、制御手段19による第2制御モードM2の具体的な制御を説明する。
【0027】
まず、第2制御モードM2が開始されると、ステップS11において、制御手段19は、高水位電極棒17が高水位を検知しなくなる(ONからOFFの論理反転が生じる)まで待機する。そして、高水位電極棒17が高水位を検知しなくなったタイミングで、経過時間のカウントを開始するとともに次のステップS12に進む。
【0028】
次に、ステップS12において、制御手段19は、高水位電極棒17が高水位を検知しなくなってから第1時間T1が経過するまでに低水位電極棒18が低水位を検知しなくなるか否かを判定する。
【0029】
ここで、第1時間T1は、給水ポンプ12が停止した状態でボイラ1の燃焼を継続させた場合に水管4の水位が高水位から低水位まで低下する時間と同じまたはそれよりも長い時間とされる。つまり、第1時間T1は、高水位タイマ制御において高水位電極棒17が高水位を検知しなくなってから給水ポンプ12を駆動するまでの時間である第2時間T2より長い時間となる。したがって、第2制御モードM2においては、制御手段19は、高水位電極棒17が高水位を検知しなくなってから第2時間T2を経過しても給水ポンプ12の停止を継続し、水管4の水位を低水位まで低下させることになる。
【0030】
そして、制御手段19は、高水位電極棒17が高水位を検知しなくなってから第1時間T1が経過するまでに低水位電極棒18が低水位を検知しなくなった場合は、低水位電極棒18は正常に機能していると判断して第2制御モードM2を終了する。一方、制御手段19は、高水位電極棒17が高水位を検知しなくなってから第1時間T1が経過しても低水位電極棒18が低水位を検知している場合は、次のステップS13において低水位電極棒18に短絡等の異常があると判定する。なお、ステップS13において異常と判定された場合には、アラームやランプ等で異常をユーザに報知するようにすることが好ましい。
【0031】
なお、制御手段19は、上記説明した制御に加えて、高水位タイマ制御の異常を検知するロジックとして、高水位電極棒17が予め定めた時間継続して高水位を検知しない状態(OFF状態)となった場合に異常と判定するロジックを備えていても良い。
【0032】
また、制御手段19は、上記説明した制御に加えて、低水位タイマ制御の異常を検知するロジックとして、低水位電極棒18が予め定めた時間継続して低水位を検知しない状態(OFF状態)となった場合に異常と判定するロジックを備えていても良い。
【0033】
さらに、制御手段19は、上記説明した制御に加えて、高水位電極棒17の短絡(水無し判定不良)を検知するロジックとして、高水位電極棒17が高水位を検知した状態で低水位電極棒18が低水位を検知しなくなる論理矛盾が予め定めた時間継続した場合に異常と判定するロジックを備えていても良い。加えて、制御手段19は、高水位電極棒17及び低水位電極棒18の短絡や水位制御筒16の閉塞を検知するロジックとして、高水位電極棒17が高水位を検知し、且つ低水位電極棒18が低水位を検知した状態が予め定めた時間継続した場合に異常と判定するロジックを備えていても良い。
【0034】
2.3 ボイラ1の初期起動時の動作
次に、
図5を用いて、ボイラ1の初期起動時の動作について説明する。本実施形態において、制御手段19は、ステップSS1においてボイラ1を起動すると、まず、ステップSS2において上記第2制御モードM2を実行し、その後、ステップSS3において上記第1制御モードM1を実行するようになっている。ここで、第2制御モードM2において低水位電極棒18の異常と判定された場合には、ボイラ1を停止させ、第1制御モードM1の実行を中止するようにしてもよく、高水位電極棒17は機能していると判断して、ステップSS3の第1制御モードM1に移行して高水位タイマ制御を実行しても良い。
【0035】
なお、本実施形態において、「ボイラ1の初期起動」とは、ボイラ1の電源をオンにすることのほか、これに伴って順次行われる、給水ポンプ12を駆動して水管4内の水を満水(高水位以上)にすること、燃焼スイッチをオンにすること、送風機をオンにすること、着火源をオンにすること、燃料供給ライン8の電磁弁7を開くこと、火炎を検知すること、等を含むこととする。ステップSS2における第2制御モードM2の実行は、少なくとも水管4内の水が高水位以上となっていれば、初期起動の全工程を完了させる前であっても良い。
【0036】
3 作用効果
【0037】
(1)本実施形態に係るボイラ1において、制御手段19は、第1制御モードM1において、通常時の高水位タイマ制御とバックアップとしての低水位タイマ制御とを組み合わせた制御を実行するようになっている。これにより、高水位電極棒17に異常があった場合でも、即時にボイラ1の燃焼運転ができなくなることを避け、修理等により異常が解消されるまで、バックアップ運転を継続させることが可能となっている。
【0038】
(2)本実施形態の第1制御モードM1では、基本的には水管4の水位を高水位の近傍で増減させる高水位タイマ制御が実行され、水管4の水位が低水位まで低下することはないため、低水位電極棒18の異常に気づくことができない。この点、本実施形態に係るボイラ1において、制御手段19は、ボイラ1の初期起動時に、まず第2制御モードM2を実行するようになっている。そして、第2制御モードM2において、制御手段19は、高水位電極棒17が高水位を検知しなくなってから第2時間T2を経過しても給水ポンプ12を停止したままとし、水管4の水位が低水位を下回るまであえて給水ポンプ12による給水の停止を継続する。このような制御により、積極的に低水位電極棒18の異常判定を行うことで、確実に低水位電極棒18の短絡(水無し判定不良)を検知することが可能となっている。
【0039】
(3)本実施形態の制御手段19は、ボイラ1の初期起動時に第2制御モードM2を実行するようになっている。これにより、ボイラ1の通常運転中(第1制御モードM1による運転中)には別途の制御を行う必要はなく、好適に低水位電極棒18の短絡(水無し判定不良)を検知することが可能となっている。
【0040】
4.変形例
なお、本発明は、以下の形態でも実施することができる。
【0041】
上記実施形態では、ボイラ1は小型の簡易ボイラとしていたが、水位制御を行うボイラである限り、ボイラの種類は特に限定されない。
【0042】
上記実施形態において、高水位電極棒17及び低水位電極棒18は缶体5の外側の水位制御筒16に設置されていた。しかしながら、高水位電極棒17及び低水位電極棒18を水管4内に設けることも可能である。また、上記実施形態において、高水位電極棒17及び低水位電極棒18は1つの水位制御筒16内に挿入されていたが、電極棒ごとに別途水位制御筒を用いても良い。
【0043】
上記実施形態のボイラ1は、第1水位検知手段としての高水位電極棒17と第2水位検知手段としての低水位電極棒18とを備えて構成されていた。しかしながら、第1水位検知手段として、水位を連続的に検知する水位センサ(圧力センサ)を用い、これを第2水位検知手段としての低水位電極棒18と併用することも可能である。
【0044】
上記実施形態において、ボイラ1の燃焼モードについては何ら言及していなかったが、ボイラ1は、燃焼量の異なる複数の燃焼モードを有するものであっても良い。また、燃焼モードに応じて、長さの異なる3本以上の電極棒を有する構成とすることも可能である。例えば、低燃焼モードとこれより燃焼量の多い高燃焼モードとを備えたボイラとする場合、高水位電極棒、中水位電極棒、低水位電極棒の3本の電極棒を備え、低燃焼モードでは高水位電極棒によるタイマ制御、高燃焼モードでは中水位電極棒によるタイマ制御を行い、低水位電極棒はバックアップとして用いることが考えられる。この場合であっても、高水位電極棒又は中水位電極棒を特許請求の範囲における第1水位検知手段とし、低水位電極棒を第2水位検知手段として、上記実施形態に準じた第2制御モードを実行することで、通常は用いない低水位電極棒の異常を検知することが可能である。
【0045】
上記実施形態において、第1水位検知手段及び第2水位検知手段はそれぞれ高水位電極棒17及び低水位電極棒18であったが、水位を検知する手段は電極棒に限定されない。例えば、第1水位検知手段及び第2水位検知手段として、フロートを用いることも可能である。
【0046】
上記実施形態において、制御手段19は、第2制御モードM2を初期起動時に実行するようにしていたが、初期起動時にはすぐに第1制御モードM1を実行し、予め定めた期間又は予め定めた運転回数ごとに第2制御モードM2に移行するようにすることも好適である。
【符号の説明】
【0047】
1 :ボイラ
2 :上部ヘッダ
3 :下部ヘッダ
4 :水管
5 :缶体
6 :バーナ
7 :電磁弁
8 :燃料供給ライン
9 :蒸気弁
10 :蒸気流出管
11 :逆止弁
12 :給水ポンプ
13 :給水ライン
14 :排水弁
15 :排水ライン
16 :水位制御筒
17 :高水位電極棒(第1水位検知手段)
17a :外部接続端子
17b :電極部
18 :低水位電極棒(第2水位検知手段)
18a :外部接続端子
18b :電極部
19 :制御手段
M1 :第1制御モード
M2 :第2制御モード