(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024013620
(43)【公開日】2024-02-01
(54)【発明の名称】電子写真感光体、プロセスカートリッジ及び画像形成装置
(51)【国際特許分類】
G03G 5/14 20060101AFI20240125BHJP
G03G 5/06 20060101ALI20240125BHJP
【FI】
G03G5/14 101F
G03G5/14 101
G03G5/06 314Z
G03G5/06 315Z
G03G5/06 319
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022115850
(22)【出願日】2022-07-20
(71)【出願人】
【識別番号】000005496
【氏名又は名称】富士フイルムビジネスイノベーション株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岩崎 真宏
(72)【発明者】
【氏名】小山田 祐基
【テーマコード(参考)】
2H068
【Fターム(参考)】
2H068AA44
2H068AA48
2H068BA14
2H068BA16
2H068FA11
2H068FA27
(57)【要約】
【課題】点状の画像欠陥を抑制する電子写真感光体を提供する。
【解決手段】導電性基体と、前記導電性基体の上に設けられ、結着樹脂及びn型有機顔料を含む下引層と、前記下引層の上に設けられる感光層と、を備え、前記下引層は高周波誘導結合プラズマ発光分光分析により検出されるFe元素の量が80ppm以下である、電子写真感光体。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性基体と、
前記導電性基体の上に設けられ、結着樹脂及びn型有機顔料を含む下引層と、
前記下引層の上に設けられる感光層と、
を備え、
前記下引層は高周波誘導結合プラズマ発光分光分析により検出されるFe元素の量が80ppm以下である、
電子写真感光体。
【請求項2】
前記n型有機顔料は、下記の一般式(1)、一般式(2)、一般式(3)、一般式(4)及び一般式(5)で表される化合物からなる群から選択される少なくとも1種のn型有機顔料を含む、請求項1に記載の電子写真感光体。
下記一般式(1)中、R
11、R
12、R
13、R
14、R
15、R
16、R
17及びR
18は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アラルキル基、アリール基、アリールオキシ基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アルコキシカルボニルアルキル基、アリールオキシカルボニルアルキル基又はハロゲン原子を表す。R
11とR
12、R
12とR
13及びR
13とR
14は、それぞれ独立に、互いに連結して環を形成してもよい。R
15とR
16、R
16とR
17及びR
17とR
18は、それぞれ独立に、互いに連結して環を形成してもよい。
下記一般式(2)中、R
21、R
22、R
23、R
24、R
25、R
26、R
27及びR
28は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アラルキル基、アリール基、アリールオキシ基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アルコキシカルボニルアルキル基、アリールオキシカルボニルアルキル基又はハロゲン原子を表す。R
21とR
22、R
22とR
23及びR
23とR
24は、それぞれ独立に、互いに連結して環を形成してもよい。R
25とR
26、R
26とR
27及びR
27とR
28は、それぞれ独立に、互いに連結して環を形成してもよい。
下記一般式(3)中、R
31、R
32、R
33、R
34、R
35及びR
36は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アラルキル基、アリール基、アルコキシカルボニル基又はハロゲン原子を表す。
下記一般式(4)中、R
41、R
42、R
43、R
44、R
45、R
46、R
47、R
48、R
49及びR
50は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アラルキル基、アリール基、アルコキシカルボニル基又はハロゲン原子を表す。
下記一般式(5)中、R
51及びR
52は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アラルキル基、アリール基、アルコキシカルボニル基又はハロゲン原子を表す。
【化1】
【請求項3】
前記n型有機顔料は、前記一般式(1)で表される化合物及び前記一般式(2)で表される化合物の少なくとも一方を含む、請求項2に記載の電子写真感光体。
【請求項4】
前記n型有機顔料の含有量は、下引層の全固形分に対して、50質量%以上である、請求項1に記載の電子写真感光体。
【請求項5】
前記n型有機顔料の含有量は、下引層の全固形分に対して、50質量%以上80質量%以下である、請求項4に記載の電子写真感光体。
【請求項6】
前記下引層の厚みが10μm以上である、請求項1に記載の電子写真感光体。
【請求項7】
請求項1~請求項6のいずれか1項に記載の電子写真感光体を備え、
画像形成装置に着脱するプロセスカートリッジ。
【請求項8】
請求項1~請求項6のいずれか1項に記載の電子写真感光体と、
前記電子写真感光体の表面を帯電する帯電手段と、
帯電した前記電子写真感光体の表面に静電潜像を形成する静電潜像形成手段と、
トナーを含む現像剤により、前記電子写真感光体の表面に形成された静電潜像を現像してトナー像を形成する現像手段と、
前記トナー像を記録媒体の表面に転写する転写手段と、
を備える画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真感光体、プロセスカートリッジ及び画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、導電性支持体層と、顔料を含む感光層と、前記導電性支持体層と前記感光層との間に配置される中間層と、を有しており、前記中間層が、カップリング剤を用いて被覆処理された金属酸化物粒子と、バインダー樹脂とを含んでおり、前記中間層の層厚が20μmよりも大きく50μm以下であり、前記バインダー樹脂が熱硬化性樹脂であること、を特徴とする電子写真感光体が開示されている。
【0003】
特許文献2には、支持体上に中間層および感光層をこの順に有する電子写真感光体において、該中間層が非加水分解性重合性官能基を有する電子輸送物質の重合物を含有することを特徴とする電子写真感光体が開示されている。
【0004】
特許文献3には、支持体上に中間層および感光層をこの順に有する電子写真感光体において、該中間層が下記式(1)で示される繰り返し構造単位を有する樹脂を含有し、該樹脂が有する総ての繰り返し構造単位に対して、下記式(1)で示される繰り返し構造単位の比率が80%以上100%未満であることを特徴とする電子写真感光体が開示されている。
【0005】
特許文献4には、導電性支持体と、該導電性支持体上の中間層と、該中間層上の感光層とを有する電子写真感光体において、該中間層が特定のイミド化合物を含むことを特徴とする電子写真感光体が開示されている。
【0006】
特許文献5には、導電性支持体上に中間層および感光層をこの順に設けてなる電子写真感光体であって、前記中間層が、ポリオレフィン樹脂および有機電子輸送物質を含有し、
前記ポリオレフィン樹脂が、特定のポリオレフィン樹脂であり、前記有機電子輸送物質が、イミド系化合物、ベンズイミダゾール系化合物、キノン系化合物、シクロペンタジエニリデン系化合物、アゾ系化合物およびそれらの誘導体からなる群より選択される化合物であることを特徴とする電子写真感光体が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003-091086号公報
【特許文献2】特開2003-330209号公報
【特許文献3】特開2003-345044号公報
【特許文献4】特許5147274号
【特許文献5】特開2011-095665号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従来、結着樹脂及びn型有機顔料を含む下引層を備える電子写真感光体を用いると、局所的に漏れ電流が生じ、これにより点状の画像欠陥が見られることがある。また、針状異物が感光体表面に突き刺さった際に、前記突き刺さり部分における漏れ電流の程度がより大きくなり易い。そこで本開示では、前記下引層における高周波誘導結合プラズマ発光分光分析により検出されるFe元素の量が80ppm超えである場合に比べて、点状の画像欠陥を抑制する電子写真感光体を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するための具体的手段には、下記の態様が含まれる。
【0010】
<1> 導電性基体と、
前記導電性基体の上に設けられ、結着樹脂及びn型有機顔料を含む下引層と、
前記下引層の上に設けられる感光層と、
を備え、
前記下引層は高周波誘導結合プラズマ発光分光分析により検出されるFe元素の量が80ppm以下である、
電子写真感光体。
<2> 前記n型有機顔料は、下記の一般式(1)、一般式(2)、一般式(3)、一般式(4)及び一般式(5)で表される化合物からなる群から選択される少なくとも1種のn型有機顔料を含む、前記<1>に記載の電子写真感光体。
下記一般式(1)中、R
11、R
12、R
13、R
14、R
15、R
16、R
17及びR
18は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アラルキル基、アリール基、アリールオキシ基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アルコキシカルボニルアルキル基、アリールオキシカルボニルアルキル基又はハロゲン原子を表す。R
11とR
12、R
12とR
13及びR
13とR
14は、それぞれ独立に、互いに連結して環を形成してもよい。R
15とR
16、R
16とR
17及びR
17とR
18は、それぞれ独立に、互いに連結して環を形成してもよい。
下記一般式(2)中、R
21、R
22、R
23、R
24、R
25、R
26、R
27及びR
28は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アラルキル基、アリール基、アリールオキシ基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アルコキシカルボニルアルキル基、アリールオキシカルボニルアルキル基又はハロゲン原子を表す。R
21とR
22、R
22とR
23及びR
23とR
24は、それぞれ独立に、互いに連結して環を形成してもよい。R
25とR
26、R
26とR
27及びR
27とR
28は、それぞれ独立に、互いに連結して環を形成してもよい。
下記一般式(3)中、R
31、R
32、R
33、R
34、R
35及びR
36は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アラルキル基、アリール基、アルコキシカルボニル基又はハロゲン原子を表す。
下記一般式(4)中、R
41、R
42、R
43、R
44、R
45、R
46、R
47、R
48、R
49及びR
50は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アラルキル基、アリール基、アルコキシカルボニル基又はハロゲン原子を表す。
下記一般式(5)中、R
51及びR
52は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アラルキル基、アリール基、アルコキシカルボニル基又はハロゲン原子を表す。
【化1】
<3> 前記n型有機顔料は、前記一般式(1)で表される化合物及び前記一般式(2)で表される化合物の少なくとも一方を含む、前記<2>に記載の電子写真感光体。
<4> 前記n型有機顔料の含有量は、下引層の全固形分に対して、50質量%以上である、前記<1>に記載の電子写真感光体。
<5> 前記n型有機顔料の含有量は、下引層の全固形分に対して、50質量%以上80質量%以下である、前記<4>に記載の電子写真感光体。
<6> 前記下引層の厚みが10μm以上である、前記<1>に記載の電子写真感光体。
<7> 前記<1>~<6>のいずれか1つに記載の電子写真感光体を備え、
画像形成装置に着脱するプロセスカートリッジ。
<8> 前記<1>~<6>のいずれか1つに記載の電子写真感光体と、
前記電子写真感光体の表面を帯電する帯電手段と、
帯電した前記電子写真感光体の表面に静電潜像を形成する静電潜像形成手段と、
トナーを含む現像剤により、前記電子写真感光体の表面に形成された静電潜像を現像してトナー像を形成する現像手段と、
前記トナー像を記録媒体の表面に転写する転写手段と、
を備える画像形成装置。
【発明の効果】
【0011】
<1>、又は<2>に係る発明によれば、前記下引層における高周波誘導結合プラズマ発光分光分析により検出されるFe元素の量が80ppm超えである場合に比べ、点状の画像欠陥が抑制された電子写真感光体が提供される。
<3>に係る発明によれば、前記n型有機顔料が、前記一般式(3)で表される化合物である場合に比べ、点状の画像欠陥が抑制された電子写真感光体が提供される。
<4>に係る発明によれば、前記n型有機顔料の含有量が、下引層の全固形分に対して、50質量%未満である場合に比べ、点状の画像欠陥が抑制された電子写真感光体が提供される。
<5>に係る発明によれば、前記n型有機顔料の含有量が、下引層の全固形分に対して、50質量%未満又は80質量%超えである場合に比べ、点状の画像欠陥が抑制された電子写真感光体が提供される。
<6>に係る発明によれば、前記下引層の厚みが10μm未満である場合に比べ、点状の画像欠陥が抑制された電子写真感光体が提供される。
<7>、又は<8>に係る発明によれば、電子写真感光体の前記下引層における高周波誘導結合プラズマ発光分光分析により検出されるFe元素の量が80ppm超えである場合に比べ、点状の画像欠陥が抑制された電子写真感光体を備えるプロセスカートリッジ又は画像形成装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本実施形態に係る電子写真感光体の層構成の一例を示す概略部分断面図である。
【
図2】本実施形態に係る画像形成装置の一例を示す概略構成図である。
【
図3】本実施形態に係る画像形成装置の別の一例を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本開示の実施形態について説明する。これらの説明及び実施例は実施形態を例示するものであり、実施形態の範囲を制限するものではない。
【0014】
本開示において「~」を用いて示された数値範囲は、「~」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を示す。
【0015】
本開示中に段階的に記載されている数値範囲において、一つの数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本開示中に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
【0016】
本開示において各成分は該当する物質を複数種含んでいてもよい。本開示において組成物中の各成分の量について言及する場合、組成物中に各成分に該当する物質が複数種存在する場合には、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数種の物質の合計量を意味する。
【0017】
本開示において、電子写真感光体を単に感光体ともいう。
本開示において、一般式(1)で表される化合物をペリノン化合物(1)ともいい、一般式(2)で表される化合物をペリノン化合物(2)ともいう。
【0018】
<電子写真感光体>
本実施形態に係る電子写真感光体は、導電性基体と、前記導電性基体の上に設けられ、結着樹脂及びn型有機顔料を含む下引層と、前記下引層の上に設けられる感光層と、を備え、前記下引層は高周波誘導結合プラズマ発光分光分析により検出されるFe元素の量が80ppm未満である。
【0019】
本実施形態に係る感光体は、導電性基体と、導電性基体上に配置された下引層と、下引層上に配置された感光層とを備える。
図1は、本実施形態に係る感光体の層構成の一例を概略的に示している。
図1に示す感光体7Aは、導電性基体4上に、下引層1、電荷発生層2及び電荷輸送層3が、この順序で積層された構造を有する。電荷発生層2及び電荷輸送層3が感光層5を構成している。感光体7Aは、電荷輸送層3上に、さらに保護層が設けられた層構成であってもよい。
【0020】
本実施形態に係る感光体において、感光層は、
図1に示す感光体7Aのように電荷発生層2と電荷輸送層3とが分離した機能分離型の感光層であってもよいし、電荷発生層2と電荷輸送層3とに代えて、電荷発生能及び電荷輸送能を有する単層型の感光層であってもよい。
【0021】
本実施形態に係る電子写真感光体は、前記下引層における高周波誘導結合プラズマ発光分光分析により検出されるFe元素の量が80ppm未満である。
【0022】
近年、下引層の電気的特性を調整する材料の一つとして、n型有機顔料が用いられている。n型有機顔料を含む下引層は、従来の酸化チタン、酸化亜鉛、酸化錫などのn型金属酸化物粒子を用いた場合に比べて、抵抗が高く帯電時はアルミ基材と下引き層界面で電荷を保持するため、不純物の凝集などの影響により局所的に電荷保持性を失いやすい。特に、不純物としてFe元素が含まれると、このFe元素の存在により、局所的に漏れ電流が生じやすい。これにより、繰り返し画像を形成した際に点状の画像欠陥が生じやすくなる。また、例えば、トナーカートリッジ内に混入した針状の異物が、電子写真感光体の表面に突き刺さった場合に、不純物が存在すると電場集中しやすくなり、より点状の画像欠陥が多く発生しやすい。
【0023】
一方、本実施形態に係る電子写真感光体は、上記構成を有することにより、漏れ電流が抑制される。この作用機序は必ずしも明らかではないが、次のように推察される。
本実施形態に係る電子写真感光体は、下引層における高周波誘導結合プラズマ発光分光分析により検出されるFe元素の量が80ppm以下である。そのため、Fe元素の存在による局所的な漏れ電流が低減される。その結果、繰り返し画像を形成した際にも点状の画像欠陥が抑制される。また、例えば、トナーカートリッジ内に混入した針状の異物や、プラスチックギアの摩耗から発生した異物等が、電子写真感光体の表面に突き刺さった場合にも、漏れ電流耐性が保持され点状の画像欠陥の発生が抑制される
【0024】
以下、本実施形態に係る感光体の各層について詳細に説明する。
【0025】
[下引層]
下引層は、結着樹脂及びn型有機顔料を含む。
下引層は、結着樹脂及びn型有機顔料以外のその他の材料を含んでいてもよい。
【0026】
下引層は、高周波誘導結合プラズマ発光分光分析により検出されるFe元素の量が80ppm以下であり、60ppm以下であることが好ましく、50ppm以下であることがより好ましい。高周波誘導結合プラズマ発光分光分析により検出されるFe元素の量は、本開示の効果に影響しない許容量としては10ppm以下であることが好ましいが、検出限界以下であることがより好ましい。
上記Fe元素の量が上記範囲以下であると、局所的が漏れ電流がより抑制される。その結果、漏れ電流に起因する、点状の画像欠陥の発生頻度も低減され易くなる。
【0027】
高周波誘導結合プラズマ発光分光分析は電子写真感光体から下引層を剥離し、Agilent社製7800ICP-MSを用いて測定した。
【0028】
上記Fe元素の量を上記範囲以下とする手法は特に制限されないが、例えば、n型有機顔料に含まれる不純物を再結晶、昇華精製、アシッドペースティング、シリカゲル処理等により除去した再結晶物、昇華精製物、アシッドペースト処理物、シリカゲル処理物などが挙げられる。
【0029】
(結着樹脂)
下引層に用いる結着樹脂としては、例えば、アセタール樹脂(例えばポリビニルブチラール等)、ポリビニルアルコール樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、カゼイン樹脂、ポリアミド樹脂、セルロース樹脂、ゼラチン、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、メタクリル樹脂、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリビニルアセテート樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル-無水マレイン酸樹脂、シリコーン樹脂、シリコーン-アルキッド樹脂、尿素樹脂、フェノール樹脂、フェノール-ホルムアルデヒド樹脂、メラミン樹脂、アルキド樹脂、エポキシ樹脂等の公知の高分子化合物;ジルコニウムキレート化合物;チタニウムキレート化合物;アルミニウムキレート化合物;チタニウムアルコキシド化合物;有機チタニウム化合物;シランカップリング剤等の公知の材料が挙げられる。
下引層に用いる結着樹脂としては、例えば、電荷輸送性基を有する電荷輸送性樹脂、導電性樹脂(例えばポリアニリン等)等も挙げられる。
【0030】
これらの中でも、下引層に用いる結着樹脂としては、上層の塗布溶剤に不溶な樹脂が好適であり、特に、尿素樹脂、フェノール樹脂、フェノール-ホルムアルデヒド樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂;ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、メタクリル樹脂、アクリル樹脂、ポリビニルアルコール樹脂及びポリビニルアセタール樹脂からなる群から選択される少なくとも1種の樹脂と硬化剤との反応により得られる樹脂であることが好ましく、ウレタン樹脂と硬化剤との反応により得られる樹脂であることがより好ましい。
これら結着樹脂を2種以上組み合わせて使用する場合には、その混合割合は、必要に応じて設定される。
【0031】
以下、ウレタン樹脂と硬化剤との反応により得られる樹脂について、便宜上、「硬化型ウレタン樹脂」と称す。
【0032】
・ポリウレタン樹脂
ポリウレタン樹脂は、一般的に、多官能イソシアネートとポリオールとの重付加反応により合成される。
【0033】
多官能イソシアネートとしては、例えば、メチレンジイソシアネート、エチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート,1,4-シクロヘキサンジイソシアネート、2,4-トルエンジイソシアネート、2,6-トルエンジイソシアネート、1,3-キシリレンジイソシアネート、1,5-ナフタレンジイソシアネート,m-フェニレンジイソシアネート、p-フェニレンジイソシアネート、3,3'-ジメチル-4,4'-ジフェニルメタンジイソシアネート、3,3'-ジメチルビフェニレンジイソシアネート、4,4'-ビフェニレンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、メチレンビス(4-シクロヘキシルイソシアネート)等のジイソシアネート;前記ジイソシアネートが三量体化したイソシアヌレート;前記ジイソシアネートのイソシアネート基をブロック剤でブロックしたブロックイソシアネート;などが挙げられる。多官能イソシアネートは、1種を用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0034】
ポリオールとしては、例えば、エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオール、1,2-ペンタンジオール、1,4-ペンタンジオール、1,5-ペンタンジオール、2,4-ペンタンジオール、3,3-ジメチル-1,2-ブタンジオール、2-エチル-2-メチル-1,3-プロパンジオール、1,2-ヘキサンジオール、1,5-ヘキサンジオール、1,6-ヘキサンジオール、2,5-ヘキサンジオール、2-メチル-2,4-ペンタンジオール、2,2-ジエチル-1,3-プロパンジオール、2,4-ジメチル-2,4-ペンタンジオール、1,7-ヘプタンジオール、2-メチル-2-プロピル-1,3-プロパンジオール、2,5-ジメチル-2,5-ヘキサンジオール、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、1,2-オクタンジオール、1,8-オクタンジオール、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、ハイドロキノン、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリ(オキシテトラメチレン)グリコール、4,4'-ジヒドロキシージフェニル-2,2-プロパン、4,4'-ジヒドロキシフェニルスルホン等のジオールが挙げられる。
ポリオールとしては更に、例えば、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリカプロラクトンポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリビニルブチラール等が挙げられる。
ポリオールは、1種を用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0035】
下引層に含まれる結着樹脂は、結着樹脂の全量の80質量%以上100質量%以下がポリウレタン樹脂であることが好ましく、90質量%以上100質量%以下がポリウレタン樹脂であることがより好ましく、95質量%以上100質量%以下がポリウレタン樹脂であることが更に好ましい。
【0036】
下引層に含まれるn型有機顔料の総含有量と、下引層に含まれるポリウレタン樹脂の含有量との質量比は、n型有機顔料:ポリウレタン樹脂=40:60乃至80:20が好ましく、50:50乃至70:30がより好ましい。
【0037】
(n型有機顔料)
n型有機顔料としては、例えば、ペリノン系化合物;ナフタレンテトラカルボキシジイミド系化合物;ペリレンテトラカルボン酸ジイミド系化合物;p-ベンゾキノン、クロラニル、ブロマニル、アントラキノン等のキノン系化合物;テトラシアノキノジメタン系化合物;2,4,7-トリニトロフルオレノン等のフルオレノン化合物;ジナフトキノン化合物;ジフェノキノン化合物;キサントン系化合物;ベンゾフェノン系化合物;シアノビニル系化合物;エチレン系化合物等が挙げられる。n型有機顔料は1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0038】
n型有機顔料は、下記の一般式(1)、一般式(2)、一般式(3)、一般式(4)及び一般式(5)で表される化合物からなる群から選択される少なくとも1種のn型有機顔料を含むことが好ましい。
【0039】
【0040】
一般式(1)中、R11、R12、R13、R14、R15、R16、R17及びR18は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アラルキル基、アリール基、アリールオキシ基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アルコキシカルボニルアルキル基、アリールオキシカルボニルアルキル基又はハロゲン原子を表す。R11とR12、R12とR13及びR13とR14は、それぞれ独立に、互いに連結して環を形成してもよい。R15とR16、R16とR17及びR17とR18は、それぞれ独立に、互いに連結して環を形成してもよい。
一般式(2)中、R21、R22、R23、R24、R25、R26、R27及びR28は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アラルキル基、アリール基、アリールオキシ基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アルコキシカルボニルアルキル基、アリールオキシカルボニルアルキル基又はハロゲン原子を表す。R21とR22、R22とR23及びR23とR24は、それぞれ独立に、互いに連結して環を形成してもよい。R25とR26、R26とR27及びR27とR28は、それぞれ独立に、互いに連結して環を形成してもよい。
一般式(3)中、R31、R32、R33、R34、R35及びR36は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アラルキル基、アリール基、アルコキシカルボニル基又はハロゲン原子を表す。
一般式(4)中、R41、R42、R43、R44、R45、R46、R47、R48、R49及びR50は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アラルキル基、アリール基、アルコキシカルボニル基又はハロゲン原子を表す。
一般式(5)中、R51及びR52は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アラルキル基、アリール基、アルコキシカルボニル基又はハロゲン原子を表す。
【0041】
n型有機顔料が上記一般式(1)~(5)で表される化合物からなる群から選択される少なくとも1種のn型有機顔料であると、n型有機顔料が下引層内で分散性高く存在しやすくなることから、膜内で均一な電子輸送が可能となる上に、優れた電子輸送性を示す。
【0042】
上記の中でも、n型有機顔料は、
一般式(1)、一般式(2)、一般式(4)及び一般式(5)で表される化合物からなる群から選択される少なくとも1種のn型有機顔料を含むことが好ましく、
一般式(1)、一般式(2)及び一般式(4)で表される化合物からなる群から選択される少なくとも1種のn型有機顔料を含むことがより好ましく、
一般式(1)で表される化合物及び前記一般式(2)で表される化合物の少なくとも一方を含むことが更に好ましく、
一般式(1)で表される化合物を含むことが特に好ましい。
【0043】
n型有機顔料として上記の化合物を含む下引き層は、樹脂に対する分散性が高く、高い帯電性と高い電位輸送性の両立が可能である。微量の鉄成分の影響は、感光体の初期の電気特性には影響は少ない場合が多いものの、繰り返しの画像を形成した場合に、点状の画質欠陥として顕著に表れやすい。この点においても、上記の化合物は、精製手段が多い等の観点から、前記Fe元素の量を80ppm以下に調整しやすく、優れた画質維持性を示す。
【0044】
〔一般式(1)及び一般式(2)で表される化合物〕
以下、一般式(1)及び一般式(2)で表される化合物について説明する。
【0045】
【0046】
一般式(1)中、R11、R12、R13、R14、R15、R16、R17及びR18(以下、単に「R11~R18」とも称す。)は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アラルキル基、アリール基、アリールオキシ基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アルコキシカルボニルアルキル基、アリールオキシカルボニルアルキル基又はハロゲン原子を表す。R11とR12、R12とR13及びR13とR14は、それぞれ独立に、互いに連結して環を形成してもよい。R15とR16、R16とR17及びR17とR18は、それぞれ独立に、互いに連結して環を形成してもよい。
【0047】
一般式(2)中、R21、R22、R23、R24、R25、R26、R27及びR28(以下、単に「R21~R28」とも称す。)は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アラルキル基、アリール基、アリールオキシ基、アルコキシカルボ
ニル基、アリールオキシカルボニル基、アルコキシカルボニルアルキル基、アリールオキシカルボニルアルキル基又はハロゲン原子を表す。R21とR22、R22とR23及びR23とR24は、それぞれ独立に、互いに連結して環を形成してもよい。R25とR26、R26とR27及びR27とR28は、それぞれ独立に、互いに連結して環を形成してもよい。
【0048】
一般式(1)中、R11~R18で表されるアルキル基としては、置換若しくは無置換のアルキル基が挙げられる。
【0049】
一般式(1)中、R11~R18で表される無置換のアルキル基としては、炭素数1以上20以下(好ましくは炭素数1以上10以下、より好ましくは炭素数1以上6以下)の直鎖状のアルキル基、炭素数3以上20以下(好ましくは炭素数3以上10以下)の分岐状のアルキル基、炭素数3以上20以下(好ましくは炭素数3以上10以下)の環状のアルキル基が挙げられる。
【0050】
炭素数1以上20以下の直鎖状のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、n-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基、n-ノニル基、n-デシル基、n-ウンデシル基、n-ドデシル基、トリデシル基、n-テトラデシル基、n-ペンタデシル基、n-ヘプタデシル基、n-オクタデシル基、n-ノナデシル基、n-イコシル基等が挙げられる。
【0051】
炭素数3以上20以下の分岐状のアルキル基としては、イソプロピル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert-ペンチル基、イソヘキシル基、sec-ヘキシル基、tert-ヘキシル基、イソヘプチル基、sec-ヘプチル基、tert-ヘプチル基、イソオクチル基、sec-オクチル基、tert-オクチル基、イソノニル基、sec-ノニル基、tert-ノニル基、イソデシル基、sec-デシル基、tert-デシル基、イソドデシル基、sec-ドデシル基、tert-ドデシル基、tert-テトラデシル基、tert-ペンタデシル基等が挙げられる。
【0052】
炭素数3以上20以下の環状のアルキル基としては、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロノニル基、シクロデシル基、これら単環のアルキル基が連結した多環(例えば、二環、三環、スピロ環)のアルキル基等が挙げられる。
【0053】
上記の中でも、無置換のアルキル基としては、メチル基、エチル基等の直鎖状のアルキル基が好ましい。
【0054】
アルキル基における置換基としては、アルコキシ基、ヒドロキシ基、カルボキシ基、ニトロ基及びハロゲン原子(フッ素原子、臭素原子、ヨウ素原子等)が挙げられる。
アルキル基中の水素原子を置換するアルコキシ基としては、一般式(1)中のR11~R18で表される無置換のアルコキシ基と同様の基が挙げられる。
【0055】
一般式(1)中、R11~R18で表されるアルコキシ基としては、置換若しくは無置換のアルコキシ基が挙げられる。
【0056】
一般式(1)中、R11~R18で表される無置換のアルコキシ基としては、炭素数1以上10以下(好ましくは1以上6以下、より好ましくは1以上4以下)の直鎖状、分岐状又は環状のアルコキシ基が挙げられる。
【0057】
直鎖状のアルコキシ基として具体的には、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、n-ブトキシ基、n-ペンチルオキシ基、n-ヘキシルオキシ基、n-ヘプチルオキシ基、n-オクチルオキシ基、n-ノニルオキシ基、n-デシルオキシ基等が挙げられる。
分岐状のアルコキシ基として具体的には、イソプロポキシ基、イソブトキシ基、sec-ブトキシ基、tert-ブトキシ基、イソペンチルオキシ基、ネオペンチルオキシ基、tert-ペンチルオキシ基、イソヘキシルオキシ基、sec-ヘキシルオキシ基、tert-ヘキシルオキシ基、イソヘプチルオキシ基、sec-ヘプチルオキシ基、tert-ヘプチルオキシ基、イソオクチルオキシ基、sec-オクチルオキシ基、tert-オクチルオキシ基、イソノニルオキシ基、sec-ノニルオキシ基、tert-ノニルオキシ基、イソデシルオキシ基、sec-デシルオキシ基、tert-デシルオキシ基等が挙げられる。
環状のアルコキシ基として具体的には、シクロプロポキシ基、シクロブトキシ基、シクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、シクロヘプチルオキシ基、シクロオクチルオキシ基、シクロノニルオキシ基、シクロデシルオキシ基等が挙げられる。
これらの中でも、無置換のアルコキシ基としては、直鎖状のアルコキシ基が好ましい。
【0058】
アルコキシ基における置換基としては、アリール基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、水酸基、カルボキシ基、ニトロ基及びハロゲン原子(フッ素原子、臭素原子、ヨウ素原子等)が挙げられる。
アルコキシ基中の水素原子を置換するアリール基としては、一般式(1)中、R11~R18で表される無置換のアリール基と同様の基が挙げられる。
アルコキシ基中の水素原子を置換するアルコキシカルボニル基としては、一般式(1)中、R11~R18で表される無置換のアルコキシカルボニル基と同様の基が挙げられる。
アルコキシ基中の水素原子を置換するアリールオキシカルボニル基としては、一般式(1)中、R11~R18で表される無置換のアリールオキシカルボニル基と同様の基が挙げられる。
【0059】
一般式(1)中、R11~R18で表されるアラルキル基としては、置換若しくは無置換のアラルキル基が挙げられる。
【0060】
一般式(1)中、R11~R18で表される無置換のアラルキル基としては、炭素数7以上30以下のアラルキル基であることが好ましく、炭素数7以上16以下のアラルキル基であることがより好ましく、炭素数7以上12以下のアラルキル基であることが更に好ましい。
【0061】
炭素数7以上30以下の無置換のアラルキル基としては、ベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基、4-フェニルブチル基、フェニルペンチル基、フェニルヘキシル基、フェニルヘプチル基、フェニルオクチル基、フェニルノニル基、ナフチルメチル基、ナフチルエチル基、アントラチルメチル基、フェニル-シクロペンチルメチル基等が挙げられる。
【0062】
アラルキル基における置換基としては、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基及びハロゲン原子(フッ素原子、臭素原子、ヨウ素原子等)が挙げられる。
アラルキル基中の水素原子を置換するアルコキシ基としては、一般式(1)中、R11~R18で表される無置換のアルコキシ基と同様の基が挙げられる。
アラルキル基中の水素原子を置換するアルコキシカルボニル基としては、一般式(1)中、R11~R18で表される無置換のアルコキシカルボニル基と同様の基が挙げられる。
アラルキル基中の水素原子を置換するアリールオキシカルボニル基としては、一般式(1)中、R11~R18で表される無置換のアリールオキシカルボニル基と同様の基が挙げられる。
【0063】
一般式(1)中、R11~R18で表されるアリール基としては、置換若しくは無置換のアリール基が挙げられる。
【0064】
一般式(1)中、R11~R18で表される無置換のアリール基としては、炭素数6以上30以下のアリール基が好ましく、6以上14以下のアリール基がより好ましく、6以上10以下のアリール基が更に好ましい。
【0065】
炭素数6以上30以下のアリール基としては、フェニル基、ビフェニル基、1-ナフチル基、2-ナフチル基、9-アンスリル基、9-フェナントリル基、1-ピレニル基、5-ナフタセニル基、1-インデニル基、2-アズレニル基、9-フルオレニル基、ビフェニレニル基、インダセニル基、フルオランテニル基、アセナフチレニル基、アセアントリレニル基、フェナレニル基、フルオレニル基、アントリル基、ビアントラセニル基、ターアントラセニル基、クオーターアントラセニル基、アントラキノリル基、フェナントリル基、トリフェニレニル基、ピレニル基、クリセニル基、ナフタセニル基、プレイアデニル基、ピセニル基、ペリレニル基、ペンタフェニル基、ペンタセニル基、テトラフェニレニル基、ヘキサフェニル基、ヘキサセニル基、ルビセニル基、コロネニル基等が挙げられる。上記の中でも、フェニル基が好ましい。
【0066】
アリール基における置換基としては、アルキル基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基及びハロゲン原子(フッ素原子、臭素原子、ヨウ素原子等)が挙げられる。
アリール基中の水素原子を置換するアルキル基としては、一般式(1)中、R11~R18で表される無置換のアルキル基と同様の基が挙げられる。
アリール基中の水素原子を置換するアルコキシ基としては、一般式(1)中、R11~R18で表される無置換のアルコキシ基と同様の基が挙げられる。
アリール基中の水素原子を置換するアルコキシカルボニル基としては、一般式(1)中、R11~R18で表される無置換のアルコキシカルボニル基と同様の基が挙げられる。
アリール基中の水素原子を置換するアリールオキシカルボニル基としては、一般式(1)中、R11~R18で表される無置換のアリールオキシカルボニル基と同様の基が挙げられる。
【0067】
一般式(1)中、R11~R18で表されるアリールオキシ基(-O-Ar、Arはアリール基を表す。)としては、置換若しくは無置換のアリールオキシ基が挙げられる。
【0068】
一般式(1)中、R11~R18で表される無置換のアリールオキシ基としては、炭素数6以上30以下のアリールオキシ基が好ましく、6以上14以下のアリールオキシ基がより好ましく、6以上10以下のアリールオキシ基が更に好ましい。
【0069】
炭素数6以上30以下のアリールオキシ基としては、フェニルオキシ基(フェノキシ基)、ビフェニルオキシ基、1-ナフチルオキシ基、2-ナフチルオキシ基、9-アンスリルオキシ基、9-フェナントリルオキシ基、1-ピレニルオキシ基、5-ナフタセニルオキシ基、1-インデニルオキシ基、2-アズレニルオキシ基、9-フルオレニルオキシ基、ビフェニレニルオキシ基、インダセニルオキシ基、フルオランテニルオキシ基、アセナフチレニルオキシ基、アセアントリレニルオキシ基、フェナレニルオキシ基、フルオレニルオキシ基、アントリルオキシ基、ビアントラセニルオキシ基、ターアントラセニルオキシ基、クオーターアントラセニルオキシ基、アントラキノリルオキシ基、フェナントリル
オキシ基、トリフェニレニルオキシ基、ピレニルオキシ基、クリセニルオキシ基、ナフタセニルオキシ基、プレイアデニルオキシ基、ピセニルオキシ基、ペリレニルオキシ基、ペンタフェニルオキシ基、ペンタセニルオキシ基、テトラフェニレニルオキシ基、ヘキサフェニルオキシ基、ヘキサセニルオキシ基、ルビセニルオキシ基、コロネニルオキシ基等が挙げられる。上記の中でも、フェニルオキシ基(フェノキシ基)が好ましい。
【0070】
アリールオキシ基における置換基としては、アルキル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基及びハロゲン原子(フッ素原子、臭素原子、ヨウ素原子等)が挙げられる。
アリールオキシ基中の水素原子を置換するアルキル基としては、一般式(1)中、R11~R18で表される無置換のアルキル基と同様の基が挙げられる。
アリールオキシ基中の水素原子を置換するアルコキシカルボニル基としては、一般式(1)中、R11~R18で表される無置換のアルコキシカルボニル基と同様の基が挙げられる。
アリールオキシ基中の水素原子を置換するアリールオキシカルボニル基としては、一般式(1)中、R11~R18で表される無置換のアリールオキシカルボニル基と同様の基が挙げられる。
【0071】
一般式(1)中、R11~R18で表されるアルコキシカルボニル基(-CO-OR、Rはアルキル基を表す。)としては、置換若しくは無置換のアルコキシカルボニル基が挙げられる。
【0072】
一般式(1)中、R11~R18で表される無置換のアルコキシカルボニル基におけるアルキル鎖の炭素数としては、1以上20以下であることが好ましく、1以上15以下であることがより好ましく、1以上10以下であることが更に好ましい。
【0073】
アルキル鎖の炭素数が1以上20以下のアルコキシカルボニル基としては、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、プロポキシカルボニル基、イソプロポキシカルボニル基、n-ブトキシカルボニル基、sec-ブトキシブチルカルボニル基、tert-ブトキシカルボニル基、ペンタオキシカルボニル基、ヘキサオキシカルボニル基、ヘプタオキシカルボニル基、オクタオキシカルボニル基、ノナオキシカルボニル基、デカオキシカルボニル基、ドデカオキシカルボニル基、トリデカオキシカルボニル基、テトラデカオキシカルボニル基、ペンタデカオキシカルボニル基、ヘキサデカオキシカルボニル基、ヘプタデカオキシカルボニル基、オクタデカオキシカルボニル基、ノナデカオキシカルボニル基、イコサオキシカルボニル基等が挙げられる。
【0074】
アルコキシカルボニル基における置換基としては、アリール基、ヒドロキシ基及びハロゲン原子(フッ素原子、臭素原子、ヨウ素原子等)が挙げられる。
アルコキシカルボニル基中の水素原子を置換するアリール基としては、一般式(1)中、R11~R18で表される無置換のアリール基と同様の基が挙げられる。
【0075】
一般式(1)中、R11~R18で表されるアリールオキシカルボニル基(-CO-OAr、Arはアリール基を表す。)としては、置換若しくは無置換のアリールオキシカルボニル基が挙げられる。
【0076】
一般式(1)中、R11~R18で表される無置換のアリールオキシカルボニル基におけるアリール基の炭素数としては、6以上30以下であることが好ましく、6以上14以下であることがより好ましく、6以上10以下であることが更に好ましい。
【0077】
炭素数6以上30以下のアリール基を有するアリールオキシカルボニル基としては、フ
ェノキシカルボニル基、ビフェニルオキシカルボニル基、1-ナフチルオキシカルボニル基、2-ナフチルオキシカルボニル基、9-アンスリルオキシカルボニル基、9-フェナントリルオキシカルボニル基、1-ピレニルオキシカルボニル基、5-ナフタセニルオキシカルボニル基、1-インデニルオキシカルボニル基、2-アズレニルオキシカルボニル基、9-フルオレニルオキシカルボニル基、ビフェニレニルオキシカルボニル基、インダセニルオキシカルボニル基、フルオランテニルオキシカルボニル基、アセナフチレニルオキシカルボニル基、アセアントリレニルオキシカルボニル基、フェナレニルオキシカルボニル基、フルオレニルオキシカルボニル基、アントリルオキシカルボニル基、ビアントラセニルオキシカルボニル基、ターアントラセニルオキシカルボニル基、クオーターアントラセニルオキシカルボニル基、アントラキノリルオキシカルボニル基、フェナントリルオキシカルボニル基、トリフェニレニルオキシカルボニル基、ピレニルオキシカルボニル基、クリセニルオキシカルボニル基、ナフタセニルオキシカルボニル基、プレイアデニルオキシカルボニル基、ピセニルオキシカルボニル基、ペリレニルオキシカルボニル基、ペンタフェニルオキシカルボニル基、ペンタセニルオキシカルボニル基、テトラフェニレニルオキシカルボニル基、ヘキサフェニルオキシカルボニル基、ヘキサセニルオキシカルボニル基、ルビセニルオキシカルボニル基、コロネニルオキシカルボニル基等が挙げられる。上記の中でも、フェノキシカルボニル基が好ましい。
【0078】
アリールオキシカルボニル基における置換基としては、アルキル基、ヒドロキシ基及びハロゲン原子(フッ素原子、臭素原子、ヨウ素原子等)が挙げられる。
アリールオキシカルボニル基の水素原子を置換するアルキル基としては、一般式(1)中、R11~R18で表される無置換のアルキル基と同様の基が挙げられる。
【0079】
一般式(1)中、R11~R18で表されるアルコキシカルボニルアルキル基(-(C
nH2n)-CO-OR、Rはアルキル基を表し、nは1以上の整数を表す。)としては
、置換若しくは無置換のアルコキシカルボニルアルキル基が挙げられる。
【0080】
一般式(1)中、R11~R18で表される無置換のアルコキシカルボニルアルキル基におけるアルコキシカルボニル基(-CO-OR)としては、一般式(1)中、R11~R18で表されるアルコキシカルボニル基と同様の基が挙げられる。
【0081】
一般式(1)中、R11~R18で表される無置換のアルコキシカルボニルアルキル基におけるアルキレン鎖(-CnH2n-)としては、炭素数1以上20以下(好ましくは炭素数1以上10以下、より好ましくは炭素数1以上6以下)の直鎖状のアルキレン鎖、炭素数3以上20以下(好ましくは炭素数3以上10以下)の分岐状のアルキレン鎖、炭素数3以上20以下(好ましくは炭素数3以上10以下)の環状のアルキレン鎖が挙げられる。
【0082】
炭素数1以上20以下の直鎖状のアルキレン鎖としては、メチレン基、エチレン基、n-プロピレン基、n-ブチレン基、n-ペンチレン基、n-ヘキシレン基、n-ヘプチレン基、n-オクチレン基、n-ノニレン基、n-デシレン基、n-ウンデシレン基、n-ドデシレン基、トリデシレン基、n-テトラデシレン基、n-ペンタデシレン基、n-ヘプタデシレン基、n-オクタデシレン基、n-ノナデシレン基、n-イコシレン基等が挙げられる。
【0083】
炭素数3以上20以下の分岐状のアルキレン鎖としては、イソプロピレン基、イソブチレン基、sec-ブチレン基、tert-ブチレン基、イソペンチレン基、ネオペンチレン基、tert-ペンチレン基、イソヘキシレン基、sec-ヘキシレン基、tert-ヘキシレン基、イソヘプチレン基、sec-ヘプチレン基、tert-ヘプチレン基、イソオクチレン基、sec-オクチレン基、tert-オクチレン基、イソノニレン基、s
ec-ノニレン基、tert-ノニレン基、イソデシレン基、sec-デシレン基、tert-デシレン基、イソドデシレン基、sec-ドデシレン基、tert-ドデシレン基、tert-テトラデシレン基、tert-ペンタデシレン基等が挙げられる。
【0084】
炭素数3以上20以下の環状のアルキレン鎖としては、シクロプロピレン基、シクロブチレン基、シクロペンチレン基、シクロヘキシレン基、シクロヘプチレン基、シクロオクチレン基、シクロノニレン基、シクロデシレン基等が挙げられる。
【0085】
アルコキシカルボニルアルキル基における置換基としては、アリール基、ヒドロキシ基及びハロゲン原子(フッ素原子、臭素原子、ヨウ素原子等)が挙げられる。
アルコキシカルボニルアルキル基の水素原子を置換するアリール基としては、一般式(1)中、R11~R18で表される無置換のアリール基と同様の基が挙げられる。
【0086】
一般式(1)中、R11~R18で表されるアリールオキシカルボニルアルキル基(-(CnH2n) -CO-OAr、Arはアリール基を表し、nは1以上の整数を表す。)
としては、置換若しくは無置換のアリールオキシカルボニルアルキル基が挙げられる。
【0087】
一般式(1)中、R11~R18で表される無置換のアリールオキシカルボニルアルキル基におけるアリールオキシカルボニル基(-CO-OAr、Arはアリール基を表す。)としては、一般式(1)中、R11~R18で表されるアリールオキシカルボニル基と同様の基が挙げられる。
【0088】
一般式(1)中、R11~R18で表される無置換のアリールオキシカルボニルアルキル基におけるアルキレン鎖(-CnH2n-)としては、一般式(1)中、R11~R18で表されるアルコキシカルボニルアルキル基におけるアルキレン鎖と同様の基が挙げられる。
【0089】
アリールオキシカルボニルアルキル基における置換基としては、アルキル基、ヒドロキシ基及びハロゲン原子(フッ素原子、臭素原子、ヨウ素原子等)が挙げられる。
アリールオキシカルボニルアルキル基の水素原子を置換するアルキル基としては、一般式(1)中、R11~R18で表される無置換のアルキル基と同様の基が挙げられる。
【0090】
一般式(1)中、R11~R18で表されるハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられる。
【0091】
一般式(1)中、R11とR12、R12とR13、R13とR14、R15とR16、R16とR17又はR17とR18が、互いに連結して形成する環構造としては、ベンゼン環、炭素数10以上18以下の縮合環(ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環、クリセン環(ベンゾ[α]フェナントレン環)、テトラセン環、テトラフェン環(ベンゾ[α]アントラセン環)、トリフェニレン環等)などが挙げられる。上記の中でも、形成される環構造としては、ベンゼン環が好ましい。
【0092】
一般式(2)中、R21~R28で表されるアルキル基としては、一般式(1)中、R11~R18で表されるアルキル基と同様の基が挙げられる。
一般式(2)中、R21~R28で表されるアルコキシ基としては、一般式(1)中、R11~R18で表されるアルコキシ基と同様の基が挙げられる。
一般式(2)中、R21~R28で表されるアラルキル基としては、一般式(1)中、R11~R18で表されるアラルキル基と同様の基が挙げられる。
一般式(2)中、R21~R28で表されるアリール基としては、一般式(1)中、R11~R18で表されるアリール基と同様の基が挙げられる。
一般式(2)中、R21~R28で表されるアリールオキシ基としては、一般式(1)中、R11~R18で表されるアリールオキシ基と同様の基が挙げられる。
一般式(2)中、R21~R28で表されるアルコキシカルボニル基としては、一般式(1)中、R11~R18で表されるアルコキシカルボニル基と同様の基が挙げられる。
一般式(2)中、R21~R28で表されるアリールオキシカルボニル基としては、一般式(1)中、R11~R18で表されるアリールオキシカルボニル基と同様の基が挙げられる。
一般式(2)中、R21~R28で表されるアルコキシカルボニルアルキル基としては、一般式(1)中、R11~R18で表されるアルコキシカルボニルアルキル基と同様の基が挙げられる。
一般式(2)中、R21~R28で表されるアリールオキシカルボニルアルキル基としては、一般式(1)中、R11~R18で表されるアリールオキシカルボニルアルキル基と同様の基が挙げられる。
一般式(2)中、R21~R28で表されるハロゲン原子としては、一般式(1)中、R11~R18で表されるハロゲン原子と同様の原子が挙げられる。
【0093】
一般式(2)中、R21とR22、R22とR23、R23とR24、R25とR26、R26とR27又はR27とR28が、互いに連結して形成する環構造としては、ベンゼン環、炭素数10以上18以下の縮合環(ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環、クリセン環(ベンゾ[α]フェナントレン環)、テトラセン環、テトラフェン環(ベンゾ[α]アントラセン環)、トリフェニレン環等)などが挙げられる。上記の中でも、形成される環構造としては、ベンゼン環が好ましい。
【0094】
一般式(1)においてR11、R12、R13、R14、R15、R16、R17及びR18は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アルコキシカルボニルアルキル基又はアリールオキシカルボニルアルキル基であることが好ましい。
【0095】
一般式(2)においてR21、R22、R23、R24、R25、R26、R27及びR28は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アルコキシカルボニルアルキル基又はアリールオキシカルボニルアルキル基であることが好ましい。
【0096】
以下、一般式(1)又は一般式(2)で表される化合物の具体例をそれぞれ示すが、本実施形態はこれに限定されるわけではない。
【0097】
【0098】
【0099】
【0100】
【0101】
【0102】
【0103】
一般式(1)で表される化合物と、一般式(2)で表される化合物は、異性体の関係(つまり、シス体とトランス体の関係)にある。一般的な合成法としては2モルのオルトフェニレンジアミン化合物と1モルのナフタレンテトラカルボン酸化合物とを加熱し縮合させて合成するが、シス体とトランス体の混合物が得られ、混合比は通常シス体がトランス体に比べて多い。シス体とトランス体との分離は、例えば、水酸化カリウムのアルコール溶液で加熱洗浄することで可溶性のシス体と難溶性のトランス体とを分離することが可能である。
【0104】
〔一般式(3)で表される化合物〕
以下、一般式(3)で表される化合物について説明する。
【0105】
【0106】
一般式(3)中、R31、R32、R33、R34、R35及びR36(以下、単に「R31~R36」とも称す。)は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アラルキル基、アリール基、アルコキシカルボニル基又はハロゲン原子を表す。
【0107】
一般式(3)中、R31~R36で表されるアルキル基、アルコキシ基、アラルキル基、アリール基、アルコキシカルボニル基及びハロゲン原子としては、一般式(1)中のR11~R18で表されるアルキル基、アルコキシ基、アラルキル基、アリール基、アルコキシカルボニル基及びハロゲン原子と同様の基及び原子が挙げられる。
【0108】
一般式(3)中、R31~R36で表されるアルキル基、アルコキシ基、アラルキル基、アリール基及びアルコキシカルボニル基は、一般式(1)中のR11~R18で表されるアルキル基、アルコキシ基、アラルキル基、アリール基及びアルコキシカルボニル基で挙げる置換基と同様の置換基を有していてもよい。
【0109】
以下、一般式(3)で表される化合物の例示化合物を示すが、本実施形態はこれに限定されるわけではない。なお、以下の例示化合物番号は、例示化合物(3-番号)と以下表記する。具体的には、例えば、例示化合物5は、「例示化合物(3-5)」と以下表記する。
【0110】
【0111】
なお、上記例示化合物中の略記号等は、以下の意味を示す。
・Pr:n-プロピル基
・c-C6H11:シクロヘキシル基
・C6H5:フェニル基
・p-Cl-C6H4:パラクロロフェニル基
・CH2C6H5:ベンジル基
・CH2CH2C6H5:フェネチル基
【0112】
〔一般式(4)で表される化合物〕
以下、一般式(4)で表される化合物について説明する。
【0113】
【0114】
一般式(4)中、R41、R42、R43、R44、R45、R46、R47、R48、R49及びR50(以下、単に「R41~R50」とも称す。)は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アラルキル基、アリール基、アルコキシカルボニル基又はハロゲン原子を表す。
【0115】
一般式(4)中、R41~R50で表されるアルキル基、アルコキシ基、アラルキル基、アリール基、アルコキシカルボニル基及びハロゲン原子としては、一般式(1)中のR11~R18で表されるアルキル基、アルコキシ基、アラルキル基、アリール基、アルコキシカルボニル基及びハロゲン原子と同様の基及び原子が挙げられる。
【0116】
一般式(4)中、R41~R50で表されるアルキル基、アルコキシ基、アラルキル基、アリール基及びアルコキシカルボニル基は、一般式(1)中のR11~R18で表されるアルキル基、アルコキシ基、アラルキル基、アリール基及びアルコキシカルボニル基で挙げる置換基と同様の置換基を有していてもよい。
【0117】
以下、一般式(4)で表される化合物の例示化合物を示すが、本実施形態はこれに限定されるわけではない。なお、以下の例示化合物番号は、例示化合物(4-番号)と以下表記する。具体的には、例えば、例示化合物5は、「例示化合物(4-5)」と以下表記する。
【0118】
【0119】
なお、上記例示化合物中の略記号等は、以下の意味を示す。
・Bu:n-ブチル基
・c-C6H11:シクロヘキシル基
・p-CH3-C6H4:パラトリル基
・C6H5:フェニル基
・p-Cl-C6H4:パラクロロフェニル基
・o-Cl-C6H4:オルトクロロフェニル基
・CH2C6H5:ベンジル基
・3,5-(CH3)2-C6H3:3,5-ジメチルフェニル基
・3,5-Cl2-C6H3:3,5-ジクロロフェニル基
【0120】
〔一般式(5)で表される化合物〕
以下、一般式(5)で表される化合物について説明する。
【0121】
【0122】
一般式(5)中、R51及びR52は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アラルキル基、アリール基、アルコキシカルボニル基又はハロゲン原子を表す。
【0123】
一般式(5)中、R51~R52で表されるアルキル基、アルコキシ基、アラルキル基、アリール基、アルコキシカルボニル基及びハロゲン原子としては、一般式(1)中のR11~R18で表されるアルキル基、アルコキシ基、アラルキル基、アリール基、アルコキシカルボニル基及びハロゲン原子と同様の基及び原子が挙げられる。
【0124】
一般式(5)中、R51~R52で表されるアルキル基、アルコキシ基、アラルキル基、アリール基及びアルコキシカルボニル基は、一般式(1)中のR11~R18で表されるアルキル基、アルコキシ基、アラルキル基、アリール基及びアルコキシカルボニル基で挙げる置換基と同様の置換基を有していてもよい。
【0125】
一般式(5)中、R51~R52は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1以上12以下のアルキル基、炭素数1以上12以下のアルコキシ基、シクロアルキル基、アリール基、又はアラルキル基で表されていてもよい。
【0126】
以下、一般式(5)で表される化合物の例示化合物を示すが、本実施形態はこれに限定されるわけではない。なお、以下の例示化合物番号は、例示化合物(5-番号)と以下表記する。具体的には、例えば、例示化合物5は、「例示化合物(5-5)」と以下表記する。
【0127】
【0128】
なお、上記例示化合物中の略記号等は、以下の意味を示す。
・t-C4H9:t-ブチル基
・OCH3:メトキシ基
・t-C4H9O:t-ブトキシ基
・c-C6H11:シクロヘキシル基
・C6H5:フェニル基
・CH2C6H5:ベンジル基
・3,5-(CH3)2-C6H3:3,5-ジメチルフェニル基
・3,5-Cl2-C6H3:3,5-ジクロロフェニル基
・Br:臭素原子
・Cl:塩素原子
【0129】
n型有機顔料の全量に対する、上記一般式(1)~(5)で表される化合物からなる群のn型有機顔料の含有量(総和)は、90質量%以上であることが好ましく、95質量%以上であることがより好ましく、98質量%以上であることがさらに好ましい。
【0130】
n型有機顔料の含有量は、下引層の全固形分に対して、50質量%以上であることがこのましく、50質量%以上80質量%以下であることがより好ましく、55質量%以上70質量%以下であることがさらに好ましい。
【0131】
なお、n型有機顔料として2種以上を組み合わせて用いた場合、n型有機顔料の含有量とは、前記2種以上のn型有機顔料の総量を意味する。
【0132】
n型有機顔料の含有量が80質量%以下であると、膜質がもろくなり成膜性が低下し下引層の表面荒れが発生することが抑制され帯電維持性により優れる。他方、n型有機顔料の含有量が50質量%以上であると、電子輸送能に過不足が生じることが抑制される。
【0133】
n型有機顔料は、精製物であることが好ましい。
n型有機顔料が精製物であると、下引層における高周波誘導結合プラズマ発光分光分析により検出されるFe元素の量が80ppm以下により調整され易い。そのため、点状の画像欠陥がより低減され易い。
【0134】
上記精製物としては、例えば、アシッドペースト処理物(例えば、n型有機顔料を硫酸に一度溶解させた溶液を水、又はアルカリ性の溶媒中に滴下し顔料を析出させたのち洗浄した精製物);昇華精製物;ボールミル等で乾式又は湿式で粉砕処理したn型有機顔料を有機酸又は無機酸で酸処理した酸処理物;ジメチルスルホキシド、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、n-メチル-2-ピロリドン等の極性溶剤に加熱溶解後にシリカゲル処理したシリカゲル処理物;などが挙げられるがこれに限られるものではない。
上記の中でも、精製物としては、アシッドペースト処理精製物及び昇華精製物の少なくとも一方の精製物であることが好ましい。n型有機顔料が極性溶剤に溶ける場合は、シリカゲル処理物であることも好ましい。精製物が先述のものであると、n型有機顔料がより純度高く精製される。その結果、高周波誘導結合プラズマ発光分光分析により検出されるFe元素の量がより低減されると考えられる。
【0135】
n型有機顔料は、必要に応じて、アルミナやジルコニウムのビーズで粉砕して所望の粒子サイズに制御されていてもよい。
【0136】
-無機粒子-
組成物は、無機粒子を更に含んでいてもよい。
無機粒子としては、例えば、粉体抵抗(体積抵抗率)102Ωcm以上1011Ωcm以下の無機粒子が挙げられる。
これらの中でも、上記抵抗値を有する無機粒子としては、例えば、酸化錫粒子、酸化チ
タン粒子、酸化亜鉛粒子、酸化ジルコニウム粒子等の金属酸化物粒子がよく、特に、酸化亜鉛粒子が好ましい。
【0137】
無機粒子のBET法による比表面積は、例えば、10m2/g以上がよい。比表面積が10m2/g以上であると、帯電性の低下が抑制される傾向にある。
無機粒子の体積平均粒径は、例えば、50nm以上2000nm以下(好ましくは60nm以上1000nm以下)がよい。
【0138】
無機粒子の含有量は、例えば、下引層の全固形分に対して、0質量%以上80質量%以下であることが好ましく、より好ましくは0質量%以上70質量%以下である。
【0139】
無機粒子は、表面処理が施されていてもよい。無機粒子は、表面処理の異なるもの、又は、粒子径の異なるものを2種以上混合して用いてもよい。
【0140】
表面処理剤としては、例えば、シランカップリング剤、チタネート系カップリング剤、アルミニウム系カップリング剤、界面活性剤等が挙げられる。特に、シランカップリング剤が好ましく、アミノ基を有するシランカップリング剤がより好ましい。
【0141】
アミノ基を有するシランカップリング剤としては、例えば、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)-3-アミノプロピルトリエトキシシラン等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0142】
シランカップリング剤は、2種以上混合して使用してもよい。例えば、アミノ基を有するシランカップリング剤と他のシランカップリング剤とを併用してもよい。この他のシランカップリング剤としては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、3-メタクリルオキシプロピル-トリス(2-メトキシエトキシ)シラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-クロロプロピルトリメトキシシラン等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0143】
表面処理剤による表面処理方法は、公知の方法であればいかなる方法でもよく、乾式法又は湿式法のいずれでもよい。
【0144】
表面処理剤の処理量は、例えば、無機粒子に対して0.5質量%以上10質量%以下が好ましい。
【0145】
乾式法は、例えば、無機粒子をせん断力の大きなミキサ等で攪拌しながら、直接又は有機溶媒に溶解させた表面処理剤を滴下、乾燥空気や窒素ガスとともに噴霧させて、表面処理剤を無機粒子の表面に付着する方法である。表面処理剤の滴下又は噴霧するときは、溶剤の沸点以下の温度で行うことがよい。表面処理剤を滴下又は噴霧した後、更に100℃以上で焼き付けを行ってもよい。焼き付けは電子写真特性が得られる温度、時間であれば特に制限されない。
【0146】
湿式法は、例えば、攪拌、超音波、サンドミル、アトライター、ボールミル等により、無機粒子を溶剤中に分散しつつ、表面処理剤を添加し、攪拌又は分散した後、溶剤除去し
て、表面処理剤を無機粒子の表面に付着する方法である。溶剤除去方法は、例えば、ろ過又は蒸留により留去される。溶剤除去後には、更に100℃以上で焼き付けを行ってもよい。焼き付けは電子写真特性が得られる温度、時間であれば特に限定されない。湿式法においては、表面処理剤を添加する前に無機粒子の含有水分を除去してもよく、その例として溶剤中で攪拌加熱しながら除去する方法、溶剤と共沸させて除去する方法が挙げられる。
【0147】
-添加剤-
下引層には、電気特性向上、環境安定性向上、画質向上のために種々の添加剤を含んでいてもよい。
添加剤としては、多環縮合系、アゾ系等の電子輸送性顔料、ジルコニウムキレート化合物、チタニウムキレート化合物、アルミニウムキレート化合物、チタニウムアルコキシド化合物、有機チタニウム化合物、シランカップリング剤等の公知の材料が挙げられる。シランカップリング剤は前述のように無機粒子の表面処理に用いられるが、添加剤として更に下引層に添加してもよい。
【0148】
添加剤としてのシランカップリング剤としては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、3-メタクリルオキシプロピル-トリス(2-メトキシエトキシ)シラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-クロロプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。
【0149】
ジルコニウムキレート化合物としては、例えば、ジルコニウムブトキシド、ジルコニウムアセト酢酸エチル、ジルコニウムトリエタノールアミン、アセチルアセトネートジルコニウムブトキシド、アセト酢酸エチルジルコニウムブトキシド、ジルコニウムアセテート、ジルコニウムオキサレート、ジルコニウムラクテート、ジルコニウムホスホネート、オクタン酸ジルコニウム、ナフテン酸ジルコニウム、ラウリン酸ジルコニウム、ステアリン酸ジルコニウム、イソステアリン酸ジルコニウム、メタクリレートジルコニウムブトキシド、ステアレートジルコニウムブトキシド、イソステアレートジルコニウムブトキシド等が挙げられる。
【0150】
チタニウムキレート化合物としては、例えば、テトライソプロピルチタネート、テトラノルマルブチルチタネート、ブチルチタネートダイマー、テトラ(2-エチルヘキシル)チタネート、チタンアセチルアセトネート、ポリチタンアセチルアセトネート、チタンオクチレングリコレート、チタンラクテートアンモニウム塩、チタンラクテート、チタンラクテートエチルエステル、チタントリエタノールアミネート、ポリヒドロキシチタンステアレート等が挙げられる。
【0151】
アルミニウムキレート化合物としては、例えば、アルミニウムイソプロピレート、モノブトキシアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムブチレート、ジエチルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)等が挙げられる。
【0152】
これらの添加剤は、単独で、又は複数の化合物の混合物若しくは重縮合物として用いてもよい。
【0153】
-下引層のその他の性質-
下引層の体積抵抗率は、1×1010Ωcm以上1×1012Ωcm以下であることが好ましい。
【0154】
下引層は、ビッカース硬度が35以上であることがよい。
下引層の表面粗さ(十点平均粗さ)は、モアレ像抑制のために、使用される露光用レーザ波長λの1/(4n)(nは上層の屈折率)から1/2までに調整されていることがよい。
表面粗さ調整のために下引層中に樹脂粒子等を添加してもよい。樹脂粒子としてはシリコーン樹脂粒子、架橋型ポリメタクリル酸メチル樹脂粒子等が挙げられる。また、表面粗さ調整のために下引層の表面を研磨してもよい。研磨方法としては、バフ研磨、サンドブラスト処理、湿式ホーニング、研削処理等が挙げられる。
【0155】
-下引層の形成方法-
下引層の形成は、特に制限はなく、周知の形成方法が利用されるが、例えば、上記成分を溶剤に加えた下引層形成用塗布液の塗膜を形成し、当該塗膜を乾燥し、必要に応じて加熱することで行う。
【0156】
下引層形成用塗布液を調製するための溶剤としては、公知の有機溶剤、例えば、アルコール系溶剤、芳香族炭化水素溶剤、ハロゲン化炭化水素溶剤、ケトン系溶剤、ケトンアルコール系溶剤、エーテル系溶剤、エステル系溶剤等が挙げられる。
これらの溶剤として具体的には、例えば、メタノール、エタノール、n-プロパノール、iso-プロパノール、n-ブタノール、ベンジルアルコール、メチルセルソルブ、エチルセルソルブ、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n-ブチル、ジオキサン、テトラヒドロフラン、メチレンクロライド、クロロホルム、クロロベンゼン、トルエン等の通常の有機溶剤が挙げられる。
【0157】
下引層形成用塗布液を調製するときの無機粒子の分散方法としては、例えば、ロールミル、ボールミル、振動ボールミル、アトライター、サンドミル、コロイドミル、ペイントシェーカー等の公知の方法が挙げられる。
n型有機顔料(特に一般式(1)~一般式(5)で表される化合物)は、有機溶剤に溶解しにくいため、有機溶剤に分散させることが望ましい。その分散方法としては、例えば、ロールミル、ボールミル、振動ボールミル、アトライター、サンドミル、コロイドミル、ペイントシェーカー等の公知の方法が挙げられる。下引層に金属酸化物粒子を配合する場合、金属酸化物粒子も同様の分散方法で有機溶剤に分散させることが望ましい。
【0158】
下引層形成用塗布液を導電性基体上に塗布する方法としては、例えば、ブレード塗布法、ワイヤーバー塗布法、スプレー塗布法、浸漬塗布法、ビード塗布法、エアーナイフ塗布法、カーテン塗布法等の通常の方法が挙げられる。
【0159】
下引層の膜厚は、帯電維持性により優れる観点から、20μm以下が好ましく、15μm以下がより好ましく、10μm未満がさらに好ましい。
【0160】
下引層の膜厚は、10μm以上であってもよい。
一般に、下引層の厚みが10μm以上であると、バルク内の漏れ電流がより発生しやすく、下引き層中に残留する電荷も多くなるために、これに起因する点状の画像欠陥もより発生しやすくなる。また、暗減衰が大きくなりやすいことから、帯電維持性も低下する傾向にある。しかしながら、本実施形態に係る電子写真感光体では、下引層における前記Fe元素の量が80ppm以下である。そのため、膜厚10μmの下引層としたときにも、点状の画像欠陥が抑制される。また、帯電維持性にも優れる。
【0161】
[導電性基体]
導電性基体としては、例えば、金属(アルミニウム、銅、亜鉛、クロム、ニッケル、モリブデン、バナジウム、インジウム、金、白金等)又は合金(ステンレス鋼等)を含む金属板、金属ドラム、及び金属ベルト等が挙げられる。また、導電性基体としては、例えば、導電性化合物(例えば導電性ポリマー、酸化インジウム等)、金属(例えばアルミニウム、パラジウム、金等)又は合金を塗布、蒸着又はラミネートした紙、樹脂フィルム、ベルト等も挙げられる。ここで、「導電性」とは体積抵抗率が1013Ωcm未満であることをいう。
【0162】
導電性基体の表面は、電子写真感光体がレーザプリンタに使用される場合、レーザ光を照射する際に生じる干渉縞を抑制する目的で、中心線平均粗さRaで0.04μm以上0.5μm以下に粗面化されていることが好ましい。なお、非干渉光を光源に用いる場合、干渉縞防止の粗面化は、特に必要ないが、導電性基体の表面の凹凸による欠陥の発生を抑制するため、より長寿命化に適する。
【0163】
粗面化の方法としては、例えば、研磨剤を水に懸濁させて導電性基体に吹き付けることによって行う湿式ホーニング、回転する砥石に導電性基体を圧接し、連続的に研削加工を行うセンタレス研削、陽極酸化処理等が挙げられる。
【0164】
粗面化の方法としては、導電性基体の表面を粗面化することなく、導電性又は半導電性粉体を樹脂中に分散させて、導電性基体の表面上に層を形成し、その層中に分散させる粒子により粗面化する方法も挙げられる。
【0165】
陽極酸化による粗面化処理は、金属製(例えばアルミニウム製)の導電性基体を陽極とし電解質溶液中で陽極酸化することにより導電性基体の表面に酸化膜を形成するものである。電解質溶液としては、例えば、硫酸溶液、シュウ酸溶液等が挙げられる。しかし、陽極酸化により形成された多孔質陽極酸化膜は、そのままの状態では化学的に活性であり、汚染され易く、環境による抵抗変動も大きい。そこで、多孔質陽極酸化膜に対して、酸化膜の微細孔を加圧水蒸気又は沸騰水中(ニッケル等の金属塩を加えてもよい)で水和反応による体積膨張でふさぎ、より安定な水和酸化物に変える封孔処理を行うことが好ましい。
【0166】
陽極酸化膜の膜厚は、例えば、0.3μm以上15μm以下が好ましい。この膜厚が上記範囲内にあると、注入に対するバリア性が発揮される傾向があり、また繰り返し使用による残留電位の上昇が抑えられる傾向にある。
【0167】
導電性基体には、酸性処理液による処理又はベーマイト処理を施してもよい。
酸性処理液による処理は、例えば、以下のようにして実施される。先ず、リン酸、クロム酸及びフッ酸を含む酸性処理液を調製する。酸性処理液におけるリン酸、クロム酸及びフッ酸の配合割合は、例えば、リン酸が10質量%以上11質量%以下の範囲、クロム酸が3質量%以上5質量%以下の範囲、フッ酸が0.5質量%以上2質量%以下の範囲であって、これらの酸全体の濃度は13.5質量%以上18質量%以下の範囲がよい。処理温度は例えば42℃以上48℃以下が好ましい。被膜の膜厚は、0.3μm以上15μm以下が好ましい。
【0168】
ベーマイト処理は、例えば90℃以上100℃以下の純水中に5分から60分間浸漬すること、又は90℃以上120℃以下の加熱水蒸気に5分から60分間接触させて行う。被膜の膜厚は、0.1μm以上5μm以下が好ましい。これをさらにアジピン酸、硼酸、硼酸塩、燐酸塩、フタル酸塩、マレイン酸塩、安息香酸塩、酒石酸塩、クエン酸塩等の被膜溶解性の低い電解質溶液を用いて陽極酸化処理してもよい。
【0169】
(中間層)
図示は省略するが、下引層と感光層との間に中間層をさらに設けてもよい。
中間層は、例えば、樹脂を含む層である。中間層に用いる樹脂としては、例えば、アセタール樹脂(例えばポリビニルブチラール等)、ポリビニルアルコール樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、カゼイン樹脂、ポリアミド樹脂、セルロース樹脂、ゼラチン、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、メタクリル樹脂、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリビニルアセテート樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル-無水マレイン酸樹脂、シリコーン樹脂、シリコーン-アルキッド樹脂、フェノール-ホルムアルデヒド樹脂、メラミン樹脂等の高分子化合物が挙げられる。
中間層は、有機金属化合物を含む層であってもよい。中間層に用いる有機金属化合物としては、ジルコニウム、チタニウム、アルミニウム、マンガン、ケイ素等の金属原子を含有する有機金属化合物等が挙げられる。
これらの中間層に用いる化合物は、単独で又は複数の化合物の混合物若しくは重縮合物として用いてもよい。
【0170】
これらの中でも、中間層は、ジルコニウム原子又はケイ素原子を含有する有機金属化合物を含む層であることが好ましい。
【0171】
中間層の形成は、特に制限はなく、周知の形成方法が利用されるが、例えば、上記成分を溶剤に加えた中間層形成用塗布液の塗膜を形成し、当該塗膜を乾燥、必要に応じて加熱することで行う。
中間層を形成する塗布方法としては、浸漬塗布法、突き上げ塗布法、ワイヤーバー塗布法、スプレー塗布法、ブレード塗布法、ナイフ塗布法、カーテン塗布法等の通常の方法が用いられる。
【0172】
中間層の膜厚は、例えば、好ましくは0.1μm以上3μm以下の範囲に設定される。なお、中間層を下引層として使用してもよい。
【0173】
(電荷発生層)
電荷発生層は、例えば、電荷発生材料と結着樹脂とを含む層である。また、電荷発生層は、電荷発生材料の蒸着層であってもよい。電荷発生材料の蒸着層は、LED(Light Emitting Diode)、有機EL(Electro-Luminescence)イメージアレー等の非干渉性光源を用いる場合に好適である。
【0174】
電荷発生材料としては、ビスアゾ、トリスアゾ等のアゾ顔料;ジブロモアントアントロン等の縮環芳香族顔料;ペリレン顔料;ピロロピロール顔料;フタロシアニン顔料;酸化亜鉛;三方晶系セレン等が挙げられる。
【0175】
これらの中でも、近赤外域のレーザ露光に対応させるためには、電荷発生材料としては、金属フタロシアニン顔料、又は無金属フタロシアニン顔料を用いることが好ましい。具体的には、例えば、ヒドロキシガリウムフタロシアニン;クロロガリウムフタロシアニン;ジクロロスズフタロシアニン;チタニルフタロシアニンがより好ましい。
【0176】
一方、近紫外域のレーザ露光に対応させるためには、電荷発生材料としては、ジブロモアントアントロン等の縮環芳香族顔料;チオインジゴ系顔料;ポルフィラジン化合物;酸化亜鉛;三方晶系セレン;ビスアゾ顔料等が好ましい。
【0177】
450nm以上780nm以下に発光の中心波長があるLED,有機ELイメージアレー等の非干渉性光源を用いる場合にも、上記電荷発生材料を用いてもよいが、解像度の観点より、感光層を20μm以下の薄膜で用いるときには、感光層中の電界強度が高くなり、基体からの電荷注入による帯電低下、いわゆる黒点と呼ばれる画像欠陥を生じやすくなる。これは、三方晶系セレン、フタロシアニン顔料等のp-型半導体で暗電流を生じやすい電荷発生材料を用いたときに顕著となる。
【0178】
これに対し、電荷発生材料として、縮環芳香族顔料、ペリレン顔料、アゾ顔料等のn-型半導体を用いた場合、暗電流を生じ難く、薄膜にしても黒点と呼ばれる画像欠陥を抑制し得る。
なお、n-型の判定は、通常使用されるタイムオブフライト法を用い、流れる光電流の極性によって判定され、正孔よりも電子をキャリアとして流しやすいものをn-型とする。
【0179】
電荷発生層に用いる結着樹脂としては、広範な絶縁性樹脂から選択され、また、結着樹脂としては、ポリ-N-ビニルカルバゾール、ポリビニルアントラセン、ポリビニルピレン、ポリシラン等の有機光導電性ポリマーから選択してもよい。
結着樹脂としては、例えば、ポリビニルブチラール樹脂、ポリアリレート樹脂(ビスフェノール類と芳香族2価カルボン酸の重縮合体等)、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、フェノキシ樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、ポリアミド樹脂、アクリル樹脂、ポリアクリルアミド樹脂、ポリビニルピリジン樹脂、セルロース樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、カゼイン、ポリビニルアルコール樹脂、ポリビニルピロリドン樹脂等が挙げられる。ここで、「絶縁性」とは、体積抵抗率が1013Ωcm以上であることをいう。
これらの結着樹脂は1種を単独で又は2種以上を混合して用いられる。
【0180】
なお、電荷発生材料と結着樹脂の配合比は、質量比で10:1から1:10までの範囲内であることが好ましい。
【0181】
電荷発生層には、その他、周知の添加剤が含まれていてもよい。
【0182】
電荷発生層の形成は、特に制限はなく、周知の形成方法が利用されるが、例えば、上記成分を溶剤に加えた電荷発生層形成用塗布液の塗膜を形成し、当該塗膜を乾燥し、必要に応じて加熱することで行う。なお、電荷発生層の形成は、電荷発生材料の蒸着により行ってもよい。電荷発生層の蒸着による形成は、特に、電荷発生材料として縮環芳香族顔料、ペリレン顔料を利用する場合に好適である。
【0183】
電荷発生層形成用塗布液を調製するための溶剤としては、メタノール、エタノール、n-プロパノール、n-ブタノール、ベンジルアルコール、メチルセルソルブ、エチルセルソルブ、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、酢酸メチル、酢酸n-ブチル、ジオキサン、テトラヒドロフラン、メチレンクロライド、クロロホルム、クロロベンゼン、トルエン等が挙げられる。これら溶剤は、1種を単独で又は2種以上を混合して用いる。
【0184】
電荷発生層形成用塗布液中に粒子(例えば電荷発生材料)を分散させる方法としては、例えば、ボールミル、振動ボールミル、アトライター、サンドミル、横型サンドミル等のメディア分散機や、攪拌、超音波分散機、ロールミル、高圧ホモジナイザー等のメディアレス分散機が利用される。高圧ホモジナイザーとしては、例えば、高圧状態で分散液を液-液衝突や液-壁衝突させて分散する衝突方式や、高圧状態で微細な流路を貫通させて分散する貫通方式等が挙げられる。
なお、この分散の際、電荷発生層形成用塗布液中の電荷発生材料の平均粒径を0.5μm以下、好ましくは0.3μm以下、更に好ましくは0.15μm以下にすることが有効である。
【0185】
電荷発生層形成用塗布液を下引層上(又は中間層上)に塗布する方法としては、例えばブレード塗布法、ワイヤーバー塗布法、スプレー塗布法、浸漬塗布法、ビード塗布法、エアーナイフ塗布法、カーテン塗布法等の通常の方法が挙げられる。
【0186】
電荷発生層の膜厚は、例えば、好ましくは0.1μm以上5.0μm以下、より好ましくは0.2μm以上2.0μm以下の範囲内に設定される。
【0187】
(電荷輸送層)
電荷輸送層は、例えば、電荷輸送材料と結着樹脂とを含む層である。電荷輸送層は、高分子電荷輸送材料を含む層であってもよい。
【0188】
電荷輸送材料としては、p-ベンゾキノン、クロラニル、ブロマニル、アントラキノン等のキノン系化合物;テトラシアノキノジメタン系化合物;2,4,7-トリニトロフルオレノン等のフルオレノン化合物;キサントン系化合物;ベンゾフェノン系化合物;シアノビニル系化合物;エチレン系化合物等の電子輸送性化合物が挙げられる。電荷輸送材料としては、トリアリールアミン系化合物、ベンジジン系化合物、アリールアルカン系化合物、アリール置換エチレン系化合物、スチルベン系化合物、アントラセン系化合物、ヒドラゾン系化合物等の正孔輸送性化合物も挙げられる。これらの電荷輸送材料は1種を単独で又は2種以上で用いられるが、これらに限定されるものではない。
【0189】
電荷輸送材料としては、電荷移動度の観点から、下記構造式(a-1)で示されるトリアリールアミン誘導体、及び下記構造式(a-2)で示されるベンジジン誘導体が好ましい。
【0190】
【0191】
構造式(a-1)中、ArT1、ArT2、及びArT3は、各々独立に置換若しくは無置換のアリール基、-C6H4-C(RT4)=C(RT5)(RT6)、又は-C6H4-CH=CH-CH=C(RT7)(RT8)を示す。RT4、RT5、RT6、RT7、及びRT8は各々独立に水素原子、置換若しくは無置換のアルキル基、又は置換若しくは無置換のアリール基を示す。
上記各基の置換基としては、ハロゲン原子、炭素数1以上5以下のアルキル基、炭素数1以上5以下のアルコキシ基が挙げられる。また、上記各基の置換基としては、炭素数1以上3以下のアルキル基で置換された置換アミノ基も挙げられる。
【0192】
【0193】
構造式(a-2)中、RT91及びRT92は各々独立に水素原子、ハロゲン原子、炭素数1以上5以下のアルキル基、又は炭素数1以上5以下のアルコキシ基を示す。RT101、RT102、RT111及びRT112は各々独立に、ハロゲン原子、炭素数1以上5以下のアルキル基、炭素数1以上5以下のアルコキシ基、炭素数1以上2以下のアルキル基で置換されたアミノ基、置換若しくは無置換のアリール基、-C(RT12)=C(RT13)(RT14)、又は-CH=CH-CH=C(RT15)(RT16)を示し、RT12、RT13、RT14、RT15及びRT16は各々独立に水素原子、置換若しくは無置換のアルキル基、又は置換若しくは無置換のアリール基を表す。Tm1、Tm2、Tn1及びTn2は各々独立に0以上2以下の整数を示す。
上記各基の置換基としては、ハロゲン原子、炭素数1以上5以下のアルキル基、炭素数1以上5以下のアルコキシ基が挙げられる。また、上記各基の置換基としては、炭素数1以上3以下のアルキル基で置換された置換アミノ基も挙げられる。
【0194】
ここで、構造式(a-1)で示されるトリアリールアミン誘導体、及び前記構造式(a-2)で示されるベンジジン誘導体のうち、特に、「-C6H4-CH=CH-CH=C(RT7)(RT8)」を有するトリアリールアミン誘導体、及び「-CH=CH-CH=C(RT15)(RT16)」を有するベンジジン誘導体が、電荷移動度の観点で好ましい。
【0195】
高分子電荷輸送材料としては、ポリ-N-ビニルカルバゾール、ポリシラン等の電荷輸送性を有する公知のものが用いられる。特に、ポリエステル系の高分子電荷輸送材は特に好ましい。なお、高分子電荷輸送材料は、単独で使用してよいが、結着樹脂と併用してもよい。
【0196】
電荷輸送層に用いる結着樹脂は、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアリレート樹脂、メタクリル樹脂、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリビニルアセテート樹脂、スチレン-ブタジエン共重合体、塩化ビニリデン-アクリロニトリル共重合体、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル-酢酸ビニル-無水マレイン酸共重合体、シリコーン樹脂、シリコーンアルキッド樹脂、フェノール-ホルムアルデヒド樹脂、スチレン-アルキッド樹脂、ポリ-N-ビニルカルバゾール、ポリシラン等が挙げられる。これらの中でも、結着樹脂としては、ポリカーボネート樹脂又はポリアリレート樹脂が好適である。これらの結着樹脂は1種を単独で又は2種以上で用いる。
なお、電荷輸送材料と結着樹脂との配合比は、質量比で10:1から1:5までが好ましい。
【0197】
電荷輸送層には、その他、周知の添加剤が含まれていてもよい。
【0198】
電荷輸送層の形成は、特に制限はなく、周知の形成方法が利用されるが、例えば、上記成分を溶剤に加えた電荷輸送層形成用塗布液の塗膜を形成し、当該塗膜を乾燥、必要に応じて加熱することで行う。
【0199】
電荷輸送層形成用塗布液を調製するための溶剤としては、ベンゼン、トルエン、キシレン、クロロベンゼン等の芳香族炭化水素類;アセトン、2-ブタノン等のケトン類;塩化メチレン、クロロホルム、塩化エチレン等のハロゲン化脂肪族炭化水素類;テトラヒドロフラン、エチルエーテル等の環状又は直鎖状のエーテル類等の通常の有機溶剤が挙げられる。これら溶剤は、単独で又は2種以上混合して用いる。
【0200】
電荷輸送層形成用塗布液を電荷発生層の上に塗布する際の塗布方法としては、ブレード塗布法、ワイヤーバー塗布法、スプレー塗布法、浸漬塗布法、ビード塗布法、エアーナイフ塗布法、カーテン塗布法等の通常の方法が挙げられる。
【0201】
電荷輸送層の膜厚は、例えば、好ましくは5μm以上50μm以下、より好ましくは10μm以上30μm以下の範囲内に設定される。
【0202】
(保護層)
保護層は、必要に応じて感光層上に設けられる。保護層は、例えば、帯電時の感光層の化学的変化を防止したり、感光層の機械的強度をさらに改善する目的で設けられる。
そのため、保護層は、硬化膜(架橋膜)で構成された層を適用することがよい。これら層としては、例えば、下記1)又は2)に示す層が挙げられる。
【0203】
1)反応性基及び電荷輸送性骨格を同一分子内に有する反応性基含有電荷輸送材料を含む組成物の硬化膜で構成された層(つまり当該反応性基含有電荷輸送材料の重合体又は架橋体を含む層)
2)非反応性の電荷輸送材料と、電荷輸送性骨格を有さず、反応性基を有する反応性基含有非電荷輸送材料と、を含む組成物の硬化膜で構成された層(つまり、非反応性の電荷輸送材料と、当該反応性基含有非電荷輸送材料の重合体又は架橋体と、を含む層)
【0204】
反応性基含有電荷輸送材料の反応性基としては、連鎖重合性基、エポキシ基、-OH、-OR[但し、Rはアルキル基を示す]、-NH2、-SH、-COOH、-SiRQ1
3-Qn(ORQ2)Qn[但し、RQ1は水素原子、アルキル基、又は置換若しくは無置換のアリール基を表し、RQ2は水素原子、アルキル基、トリアルキルシリル基を表す。Qnは1~3の整数を表す]等の周知の反応性基が挙げられる。
【0205】
連鎖重合性基としては、ラジカル重合しうる官能基であれば特に限定されるものではなく、例えば、少なくとも炭素二重結合を含有する基を有する官能基である。具体的には、ビニル基、ビニルエーテル基、ビニルチオエーテル基、スチリル基(ビニルフェニル基)、アクリロイル基、メタクリロイル基、及びそれらの誘導体から選択される少なくとも一つを含有する基等が挙げられる。なかでも、その反応性に優れることから、連鎖重合性基としては、ビニル基、スチリル基(ビニルフェニル基)、アクリロイル基、メタクリロイル基、及びそれらの誘導体から選択される少なくとも一つを含有する基であることが好ましい。
【0206】
反応性基含有電荷輸送材料の電荷輸送性骨格としては、電子写真感光体における公知の構造であれば特に限定されるものではなく、例えば、トリアリールアミン系化合物、ベンジジン系化合物、ヒドラゾン系化合物等の含窒素の正孔輸送性化合物に由来する骨格であって、窒素原子と共役している構造が挙げられる。これらの中でも、トリアリールアミン骨格が好ましい。
【0207】
これら反応性基及び電荷輸送性骨格を有する反応性基含有電荷輸送材料、非反応性の電荷輸送材料、反応性基含有非電荷輸送材料は、周知の材料から選択すればよい。
【0208】
保護層には、その他、周知の添加剤が含まれていてもよい。
【0209】
保護層の形成は、特に制限はなく、周知の形成方法が利用されるが、例えば、上記成分を溶剤に加えた保護層形成用塗布液の塗膜を形成し、当該塗膜を乾燥し、必要に応じて加熱等の硬化処理することで行う。
【0210】
保護層形成用塗布液を調製するための溶剤としては、トルエン、キシレン等の芳香族系溶剤;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶剤;テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル系溶剤;エチレングリコールモノメチルエーテル等のセロソルブ系溶剤;イソプロピルアルコール、ブタノール等のアルコール系溶剤等が挙げられる。これら溶剤は、単独で又は2種以上混合して用いる。
なお、保護層形成用塗布液は、無溶剤の塗布液であってもよい。
【0211】
保護層形成用塗布液を感光層(例えば電荷輸送層)上に塗布する方法としては、浸漬塗布法、突き上げ塗布法、ワイヤーバー塗布法、スプレー塗布法、ブレード塗布法、ナイフ塗布法、カーテン塗布法等の通常の方法が挙げられる。
【0212】
保護層の膜厚は、例えば、好ましくは1μm以上20μm以下、より好ましくは2μm以上10μm以下の範囲内に設定される。
【0213】
[単層型感光層]
単層型感光層(電荷発生/電荷輸送層)は、例えば、電荷発生材料と電荷輸送材料と、必要に応じて、結着樹脂、及びその他周知の添加剤と、を含む層である。なお、これら材料は、電荷発生層及び電荷輸送層で説明した材料と同様である。
そして、単層型感光層中、電荷発生材料の含有量は、全固形分に対して0.1質量%以上10質量%以下がよく、好ましくは0.8質量%以上5質量%以下である。また、単層型感光層中、電荷輸送材料の含有量は、全固形分に対して5質量%以上50質量%以下がよい。
単層型感光層の形成方法は、電荷発生層や電荷輸送層の形成方法と同様である。
単層型感光層の膜厚は、例えば、5μm以上50μm以下がよく、好ましくは10μm以上40μm以下である。
【0214】
[画像形成装置、プロセスカートリッジ]
本実施形態に係る画像形成装置は、電子写真感光体と、電子写真感光体の表面を帯電する帯電装置と、帯電した電子写真感光体の表面に静電潜像を形成する静電潜像形成装置と、トナーを含む現像剤により電子写真感光体の表面に形成された静電潜像を現像してトナー像を形成する現像装置と、トナー像を記録媒体の表面に転写する転写装置と、を備える。そして、電子写真感光体として、上記本実施形態に係る電子写真感光体が適用される。
【0215】
本実施形態に係る画像形成装置は、記録媒体の表面に転写されたトナー像を定着する定着装置を備える装置;電子写真感光体の表面に形成されたトナー像を直接記録媒体に転写する直接転写方式の装置;電子写真感光体の表面に形成されたトナー像を中間転写体の表面に一次転写し、中間転写体の表面に転写されたトナー像を記録媒体の表面に二次転写する中間転写方式の装置;トナー像の転写後、帯電前の電子写真感光体の表面をクリーニングするクリーニング装置を備えた装置;トナー像の転写後、帯電前に電子写真感光体の表面に除電光を照射して除電する除電装置を備える装置;電子写真感光体の温度を上昇させ、相対温度を低減させるための電子写真感光体加熱部材を備える装置等の周知の画像形成装置が適用される。
【0216】
中間転写方式の装置の場合、転写装置は、例えば、表面にトナー像が転写される中間転写体と、電子写真感光体の表面に形成されたトナー像を中間転写体の表面に一次転写する一次転写装置と、中間転写体の表面に転写されたトナー像を記録媒体の表面に二次転写する二次転写装置と、を有する構成が適用される。
【0217】
本実施形態に係る画像形成装置は、乾式現像方式の画像形成装置、湿式現像方式(液体現像剤を利用した現像方式)の画像形成装置のいずれであってもよい。
【0218】
なお、本実施形態に係る画像形成装置において、例えば、電子写真感光体を備える部分が、画像形成装置に対して着脱されるカートリッジ構造(プロセスカートリッジ)であってもよい。プロセスカートリッジとしては、例えば、本実施形態に係る電子写真感光体を備えるプロセスカートリッジが好適に用いられる。なお、プロセスカートリッジには、電子写真感光体以外に、例えば、帯電装置、静電潜像形成装置、現像装置、転写装置からなる群から選択される少なくとも一つを備えてもよい。
【0219】
以下、本実施形態に係る画像形成装置の一例を示すが、これに限定されるわけではない。なお、図に示す主要部を説明し、その他はその説明を省略する。
【0220】
図2は、本実施形態に係る画像形成装置の一例を示す概略構成図である。
本実施形態に係る画像形成装置100は、
図2に示すように、電子写真感光体7を備えるプロセスカートリッジ300と、露光装置9(静電潜像形成装置の一例)と、転写装置40(一次転写装置)と、中間転写体50とを備える。なお、画像形成装置100において、露光装置9はプロセスカートリッジ300の開口部から電子写真感光体7に露光し得る位置に配置されており、転写装置40は中間転写体50を介して電子写真感光体7に対向する位置に配置されており、中間転写体50はその一部が電子写真感光体7に接触して配置されている。図示しないが、中間転写体50に転写されたトナー像を記録媒体(例えば用紙)に転写する二次転写装置も有している。なお、中間転写体50、転写装置40(一次転写装置)、及び二次転写装置(不図示)が転写装置の一例に相当する。
【0221】
図2におけるプロセスカートリッジ300は、ハウジング内に、電子写真感光体7、帯電装置8(帯電装置の一例)、現像装置11(現像装置の一例)、及びクリーニング装置13(クリーニング装置の一例)を一体に支持している。クリーニング装置13は、クリーニングブレード(クリーニング部材の一例)131を有しており、クリーニングブレード131は、電子写真感光体7の表面に接触するように配置されている。なお、クリーニング部材は、クリーニングブレード131の態様ではなく、導電性又は絶縁性の繊維状部材であってもよく、これを単独で、又はクリーニングブレード131と併用してもよい。
【0222】
なお、
図2には、画像形成装置として、潤滑材14を電子写真感光体7の表面に供給する繊維状部材132(ロール状)、及び、クリーニングを補助する繊維状部材133(平ブラシ状)を備えた例を示してあるが、これらは必要に応じて配置される。
【0223】
以下、本実施形態に係る画像形成装置の各構成について説明する。
【0224】
-帯電装置-
帯電装置8としては、例えば、導電性又は半導電性の帯電ローラ、帯電ブラシ、帯電フィルム、帯電ゴムブレード、帯電チューブ等を用いた接触型帯電器が使用される。また、非接触方式のローラ帯電器、コロナ放電を利用したスコロトロン帯電器やコロトロン帯電器等のそれ自体公知の帯電器等も使用される。
【0225】
-露光装置-
露光装置9としては、例えば、電子写真感光体7表面に、半導体レーザ光、LED光、液晶シャッタ光等の光を、定められた像様に露光する光学系機器等が挙げられる。光源の波長は電子写真感光体の分光感度領域内とする。半導体レーザの波長としては、780nm付近に発振波長を有する近赤外が主流である。しかし、この波長に限定されず、600nm台の発振波長レーザや青色レーザとして400nm以上450nm以下に発振波長を有するレーザも利用してもよい。また、カラー画像形成のためにはマルチビームを出力し得るタイプの面発光型のレーザ光源も有効である。
【0226】
-現像装置-
現像装置11としては、例えば、現像剤を接触又は非接触させて現像する一般的な現像装置が挙げられる。現像装置11としては、上述の機能を有している限り特に制限はなく、目的に応じて選択される。例えば、一成分系現像剤又は二成分系現像剤をブラシ、ローラ等を用いて電子写真感光体7に付着させる機能を有する公知の現像器等が挙げられる。中でも現像剤を表面に保持した現像ローラを用いるものが好ましい。
【0227】
現像装置11に使用される現像剤は、トナー単独の一成分系現像剤であってもよいし、トナーとキャリアとを含む二成分系現像剤であってもよい。また、現像剤は、磁性であってもよいし、非磁性であってもよい。これら現像剤は、周知のものが適用される。
【0228】
-クリーニング装置-
クリーニング装置13は、クリーニングブレード131を備えるクリーニングブレード方式の装置が用いられる。
なお、クリーニングブレード方式以外にも、ファーブラシクリーニング方式、現像同時クリーニング方式を採用してもよい。
【0229】
-転写装置-
転写装置40としては、例えば、ベルト、ローラ、フィルム、ゴムブレード等を用いた接触型転写帯電器、コロナ放電を利用したスコロトロン転写帯電器やコロトロン転写帯電器等のそれ自体公知の転写帯電器が挙げられる。
【0230】
-中間転写体-
中間転写体50としては、半導電性を付与したポリイミド、ポリアミドイミド、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリエステル、ゴム等を含むベルト状のもの(中間転写ベルト)が使用される。また、中間転写体の形態としては、ベルト状以外にドラム状のものを用いてもよい。
【0231】
図3は、本実施形態に係る画像形成装置の他の一例を示す概略構成図である。
図3に示す画像形成装置120は、プロセスカートリッジ300を4つ搭載したタンデム方式の多色画像形成装置である。画像形成装置120では、中間転写体50上に4つのプロセスカートリッジ300がそれぞれ並列に配置されており、1色に付き1つの電子写真感光体が使用される構成となっている。なお、画像形成装置120は、タンデム方式であること以外は、画像形成装置100と同様の構成を有している。
【実施例0232】
以下に実施例を挙げて、本開示の電子写真感光体をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理手順等は、本開示の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本開示の電子写真感光体の範囲は、以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきではない。
【0233】
<電子写真感光体の作製>
[実施例1]
(下引層の形成)
ブロック化イソシアネート(スミジュールBL3175、住友バイエルンウレタン社製、固形分75質量%)20質量部と、ブチラール樹脂(エスレックBL-1、積水化学工業社製)7.5質量部とを、メチルエチルケトン150質量部に溶解した。この溶液に、表1に示す精製の状態のn型有機顔料:ペリノン化合物(1-1)とペリノン化合物(2-1)の混合物(質量比1:1)34質量部を混合し、直径1mmのガラスビーズを用いてサンドミルにて10時間の分散を行い、分散液を得た。この分散液に、カルボン酸ビスマス(K-KAT XK-640、キングインダストリー社製)0.005質量部と、シリコーン樹脂粒子(トスパール145、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社製)2質量部とを添加し、下引層形成用の塗布液を得た。この塗布液を円筒状アルミニウム基材上に浸漬塗布し、160℃下で60分間の乾燥硬化を行い、厚さ7μmの下引層を形成した。下引層の体積抵抗率を、強誘電体評価システム(IV&QV変換器モデル6252C型、東洋テクニカ製)を用いて測定した。
【0234】
(電荷発生層の形成)
電荷発生材料として、Cukα特性X線を用いたX線回折スペクトルのブラッグ角度(2θ±0.2°)が少なくとも7.3゜、16.0゜、24.9゜、28.0゜の位置に回折ピークを有するヒドロキシガリウムフタロシアニンを用意した。ヒドロキシガリウムフタロシアニン15質量部、塩化ビニル・酢酸ビニル共重合体樹脂(VMCH、日本ユニカー社製)10質量部及びn-酢酸ブチル200質量部を混合した混合物を、直径1mmのガラスビーズを用いてサンドミルにて4時間分散した。得られた分散液にn-酢酸ブチル175質量部及びメチルエチルケトン180質量部を添加し、攪拌して電荷発生層形成用の塗布液を得た。この塗布液を下引層上に浸漬塗布し、150℃下で15分間乾燥して、厚さ0.2μmの電荷発生層を形成した。
【0235】
(電荷輸送層の形成)
電荷輸送剤(HT-1)38質量部と、電荷輸送剤(HT-2)10質量部と、ポリカーボネート(A)(粘度平均分子量4.6万)52質量部とをテトラヒドロフラン800質量部に加えて溶解し、4フッ化エチレン樹脂(ルブロンL5、ダイキン工業製、平均粒子径300nm)7質量部を加え、ホモジナイザー(ウルトラタラックス、IKA社製)を用いて5500rpmで2時間分散して電荷輸送層形成用の塗布液を得た。この塗布液を電荷発生層上に浸漬塗布し、140℃下で40分間乾燥して、厚さ27μmの電荷輸送層を形成した。以上の処理により、実施例1の感光体を得た。
【0236】
【0237】
【0238】
[比較例c1]
n型有機顔料であるペリノン化合物(1-1)とペリノン化合物(2-1)の混合物(質量比1:1)を、特開2020-046640号公報における実施例1に記載の未精製のペリノン化合物とした以外は、実施例1と同様の手法として電子写真感光体を得た。
【0239】
[比較例c2]
下引層の膜厚を表1に示す仕様とした以外は、比較例c1と同様の手法として電子写真感光体を得た。
【0240】
[実施例2]
下引層の形成において結着樹脂をポリウレタンからポリアミドに変更し、下引層の形成手順を下記に変更した以外は実施例1と同様にして感光体を作製した。
【0241】
(下引層の形成)
ポリアミド樹脂CM8000(東レ製)22.5質量部をメタノール120質量部とイソプロパノール60質量部に溶解した。この溶液にペリノン化合物(1-1)とペリノン化合物(2-1)の混合物(質量比1:1)34質量部を混合し、直径1mmのガラスビーズを用いてサンドミルにて10時間の分散を行い、分散液を得た。この塗布液を円筒状アルミニウム基材上に浸漬塗布し、110℃下で40分間の乾燥硬化を行い、厚さ7μmの下引層を形成した。
【0242】
[実施例3]
下引層の形成において結着樹脂をポリウレタンからポリカーボネートに変更し、下引層の形成手順と電荷輸送層の形成手順を下記に変更した以外は実施例1と同様にして感光体を作製した。
【0243】
(下引層の形成)
ポリカーボネート樹脂パンライトTS-2040(帝人製)22.5質量部をテトラヒドロフラン160質量部に溶解した。この溶液にペリノン化合物(1-1)とペリノン化合物(2-1)の混合物(質量比1:1)34質量部を混合し、直径1mmのガラスビーズを用いてサンドミルにて10時間の分散を行い、分散液を得た。この分散液に、シリコーン樹脂粒子(トスパール145、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社製)2質量部を添加し、下引層形成用の塗布液を得た。この塗布液を円筒状アルミニウム基材上に浸漬塗布し、135℃下で50分間の乾燥硬化を行い、厚さ4μmの下引層を形成した。
【0244】
(電荷輸送層の形成)
浸漬塗布をスプレー塗布に変更した以外は、実施例1における電荷輸送層の形成手順と同様にして電荷輸送層を形成した。
【0245】
[実施例4~9]
下引層の形成においてn型有機顔料の種類を表1に記載のとおりに変更した以外は実施例1と同様にして感光体を作製した。
【0246】
[実施例10]
下引層の形成においてn型有機顔料の種類を、下記に示す化合物6-1(表中、「6-1」と称す。)に変更した以外は実施例1と同様にして感光体を作製した。
【0247】
【0248】
表1中、n型有機顔料の項目「精製の状態」に、各n型有機顔料の精製の状態を示す。なお、各精製方法は、以下のとおりである。
【0249】
[精製方法1:アシッドペースト処理物]
n型有機顔料20g(クラリアント製)を濃硫酸200mlに溶解した溶液を、蒸留水1.5Lに20℃以下を保ちながら1時間かけて滴下した。得られた懸濁液を高速遠心機(コクサン製H-2000B)で遠心分離した。上澄みの酸性水をデカンテーションで除去した。残ったn型有機顔料の残渣に蒸留水1.0Lを加えよく攪拌し懸濁させたのち、再び遠心機でn型有機顔料を遠心分離し、水洗浄を行った。この水洗浄を20回繰り返し、上澄みの電気電導度が10μS/cm以下になるまで実施した。洗浄済みのn型有機顔料を二日間凍結乾燥後、遊星ミル機(フリッチュ製クラシックライン)を用いて0.3mm径ジルコニアビーズで500rpm、1hr粉砕処理を実施し、精製されたn型有機顔料を得た。
【0250】
[精製方法2:昇華精製物]
n型有機顔料5gを昇華精製用ガラス管内で、アルゴンガスをキャリアガスに用いて、350℃で二日間昇華させた。残渣と初期昇華成分を除去し、精製ペリノン化合物4.1gを得た。得られたn型有機顔料は精製方法1と同様に遊星ミル機で粉砕処理を行い、精製されたn型有機顔料を得た。
【0251】
[精製方法3:シリカゲル処理物]
n型有機顔料1gをジメチルスルホキシド(DMSO)200mlに150℃で加熱溶解した。溶け残った不溶分を濾別後、n型有機顔料のDMSO溶液を80℃でシリカゲル(富士シリシア化学製PSQ100B)5gを通してシリカゲル吸着処理を行った。得られたDMSO溶液を蒸留水100mlに加えて結晶を析出させたのち、ろ過・真空乾燥させた。乾燥後のn型有機顔料は精製方法1と同様に遊星ミル機で粉砕処理を行い、精製されたn型有機顔料を得た。
【0252】
各例の電子写真感光体について、先述の測定方法により、下引層における高周波誘導結合プラズマ発光分光分析により検出されるFe元素の量を測定した。結果を表1の項目「Fe元素の量」に示す。
表中、例えば、n型有機顔料を複数含む場合、項目[n型有機顔料の量[部]]に記載される量は、前記複数のn型有機顔料の総和量である。
【0253】
<電子写真感光体の性能評価>
各実施例又は比較例の感光体を、改造した富士フイルムビジネスイノベーション社製の画像形成装置DocuCentreC5570に搭載し、下記の評価を行った。
【0254】
[点状の画像欠陥の評価]
感光体において電流が漏れると点状の画像欠陥が発生する現象を利用して、点状の画像欠陥の評価を行った。この際、帯電電位を、通常-700V程度であるところ、点状の画像欠陥がより発生しやすい電位-830Vに設定した。濃度20%の画像をA4紙で2万枚連続出力し、10時間後に温度28℃、相対湿度80%の環境下で濃度20%の画像をA4紙で10枚出力した。全10枚における点状の画像欠陥の有無を目視で観察し、画像欠陥の程度を下記のA~Dに分類した。結果を表1に示す。
【0255】
A:点状の画像欠陥がない。
B:点状の画像欠陥が5個未満。
C:点状の画像欠陥が5個以上10個未満。
D:点状の画像欠陥が10個以上。
【0256】
[帯電維持性]
感光体の表面から1mm離れた位置に、表面電位計(トレック社製、トレック334)の表面電位プローブを設置した。
感光体の表面を-800Vに帯電させたのち、0.1秒後の電位低下量(つまり暗減衰量)を測定し、電位低下量を下記のA~Dに分類した。
【0257】
A:電位低下量が15V未満。
B:電位低下量が15V以上18V未満。
C:電位低下量が18V以上20V未満。
D:電位低下量が20V以上。
【0258】
[異物の突き刺さり評価]
カーボンファイバーが感光層及び下引層を貫通してアルミニウム基材に達すると、電流が流れて点状の画像欠陥が発生する現象を利用して、異物の突き刺さり抑制の評価を行った。この際、帯電電位を、通常-700V程度であるところ、異物の突き刺さりに起因する点状の画像欠陥がより発生しやすい電位-830Vに設定した。現像剤にカーボンファイバー(平均径7μm、平均長30μm)を濃度0.2質量%になる量混ぜ、濃度20%の画像をA4紙で2万枚連続出力した。次いで、濃度20%の画像をA4紙で10枚出力した。10枚目の画像における点状の画像欠陥の有無を目視で観察し、画像欠陥の程度を下記のA~Dに分類した。結果を表1に示す。
【0259】
A:点状の画像欠陥がない。
B:点状の画像欠陥が5個未満。
C:点状の画像欠陥が5個以上10個未満。
D:点状の画像欠陥が10個以上。
【0260】
【0261】
表1に示すように、実施例の電子写真感光体は、比較例の電子写真感光体に比べて、漏れ電流に起因する点状の画像欠陥が低減されることがわかった。また、点状の画像欠陥がより発生しやすい条件である針状の異物が電子写真感光体の表面に突き刺さった場合にも、実施例の電子写真感光体では、点状の画像欠陥の発生が低減されたままであった。また、実施例の電子写真感光体は、比較例の電子写真感光体に比べて、帯電維持性にも優れることがわかった。
【0262】
(((1))) 導電性基体と、
前記導電性基体の上に設けられ、結着樹脂及びn型有機顔料を含む下引層と、
前記下引層の上に設けられる感光層と、
を備え、
前記下引層は高周波誘導結合プラズマ発光分光分析により検出されるFe元素の量が80ppm以下である、
電子写真感光体。
(((2))) 前記n型有機顔料は、下記の一般式(1)、一般式(2)、一般式(3)、一般式(4)及び一般式(5)で表される化合物からなる群から選択される少なくとも1種のn型有機顔料を含む、前記(((1)))に記載の電子写真感光体。
下記一般式(1)中、R
11、R
12、R
13、R
14、R
15、R
16、R
17及びR
18は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アラルキル基、アリール基、アリールオキシ基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アルコキシカルボニルアルキル基、アリールオキシカルボニルアルキル基又はハロゲン原子を表す。R
11とR
12、R
12とR
13及びR
13とR
14は、それぞれ独立に、互いに連結して環を形成してもよい。R
15とR
16、R
16とR
17及びR
17とR
18は、それぞれ独立に、互いに連結して環を形成してもよい。
下記一般式(2)中、R
21、R
22、R
23、R
24、R
25、R
26、R
27及びR
28は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アラルキル基、アリール基、アリールオキシ基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アルコキシカルボニルアルキル基、アリールオキシカルボニルアルキル基又はハロゲン原子を表す。R
21とR
22、R
22とR
23及びR
23とR
24は、それぞれ独立に、互いに連結して環を形成してもよい。R
25とR
26、R
26とR
27及びR
27とR
28は、それぞれ独立に、互いに連結して環を形成してもよい。
下記一般式(3)中、R
31、R
32、R
33、R
34、R
35及びR
36は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アラルキル基、アリール基、アルコキシカルボニル基又はハロゲン原子を表す。
下記一般式(4)中、R
41、R
42、R
43、R
44、R
45、R
46、R
47、R
48、R
49及びR
50は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アラルキル基、アリール基、アルコキシカルボニル基又はハロゲン原子を表す。
下記一般式(5)中、R
51及びR
52は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アラルキル基、アリール基、アルコキシカルボニル基又はハロゲン原子を表す。
【化21】
(((3))) 前記n型有機顔料は、前記一般式(1)で表される化合物及び前記一般式(2)で表される化合物の少なくとも一方を含む、前記(((2)))に記載の電子写真感光体。
(((4))) 前記n型有機顔料の含有量は、下引層の全固形分に対して、50質量%以上である、前記(((1)))~(((3)))のいずれか1つに記載の電子写真感光体。
(((5))) 前記n型有機顔料の含有量は、下引層の全固形分に対して、50質量%以上80質量%以下である、前記(((4)))に記載の電子写真感光体。
(((6))) 前記下引層の厚みが10μm以上である、前記(((1)))~(((5)))のいずれか1つに記載の電子写真感光体。
(((7))) 前記(((1)))~(((6)))のいずれか1つに記載の電子写真感光体を備え、
画像形成装置に着脱するプロセスカートリッジ。
(((8))) 前記(((1)))~(((6)))のいずれか1つに記載の電子写真感光体と、
前記電子写真感光体の表面を帯電する帯電手段と、
帯電した前記電子写真感光体の表面に静電潜像を形成する静電潜像形成手段と、
トナーを含む現像剤により、前記電子写真感光体の表面に形成された静電潜像を現像してトナー像を形成する現像手段と、
前記トナー像を記録媒体の表面に転写する転写手段と、
を備える画像形成装置。
【0263】
(((1)))、又は(((2)))に係る発明によれば、前記下引層における高周波誘導結合プラズマ発光分光分析により検出されるFe元素の量が80ppm超えである場合に比べ、点状の画像欠陥が抑制された電子写真感光体が提供される。
(((3)))に係る発明によれば、前記n型有機顔料が、前記一般式(3)で表される化合物である場合に比べ、点状の画像欠陥が抑制された電子写真感光体が提供される。
(((4)))に係る発明によれば、前記n型有機顔料の含有量が、下引層の全固形分に対して、50質量%未満である場合に比べ、点状の画像欠陥が抑制された電子写真感光体が提供される。
(((5)))に係る発明によれば、前記n型有機顔料の含有量が、下引層の全固形分に対して、50質量%未満又は80質量%超えである場合に比べ、点状の画像欠陥が抑制された電子写真感光体が提供される。
(((6)))に係る発明によれば、前記下引層の厚みが10μm未満である場合に比べ、点状の画像欠陥が抑制された電子写真感光体が提供される。
(((7)))、又は(((8)))に係る発明によれば、電子写真感光体の前記下引層における高周波誘導結合プラズマ発光分光分析により検出されるFe元素の量が80ppm超えである場合に比べ、点状の画像欠陥が抑制された電子写真感光体を備えるプロセスカートリッジ又は画像形成装置が提供される。
1 下引層、2 電荷発生層、3 電荷輸送層、4 導電性基体、5 感光層、7A 電子写真感光体、7 電子写真感光体、8 帯電装置、9 露光装置、11 現像装置、13 クリーニング装置、14 潤滑剤、40 転写装置、50 中間転写体、100 画像形成装置、120 画像形成装置、131 クリーニングブレード、132 繊維状部材(ロール状)、133 繊維状部材(平ブラシ状)、300 プロセスカートリッジ