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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024136201
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】流体封入式防振装置
(51)【国際特許分類】
   F16F 13/10 20060101AFI20240927BHJP
【FI】
F16F13/10 J
F16F13/10 L
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023047233
(22)【出願日】2023-03-23
(71)【出願人】
【識別番号】000219602
【氏名又は名称】住友理工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001966
【氏名又は名称】弁理士法人笠井中根国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100103252
【弁理士】
【氏名又は名称】笠井 美孝
(74)【代理人】
【識別番号】100147717
【弁理士】
【氏名又は名称】中根 美枝
(72)【発明者】
【氏名】三好 佑奈
(72)【発明者】
【氏名】棚橋 亮仁
【テーマコード(参考)】
3J047
【Fターム(参考)】
3J047AA03
3J047CA04
3J047CB06
3J047DA01
3J047FA02
3J047GA01
(57)【要約】
【課題】仕切部材で仕切られた流体室間において意図しない短絡的なリークを防ぐことができる、新規な構造の流体封入式防振装置を提供する。
【解決手段】仕切部材36の両側に流体室70,72が形成されて、それら流体室70,72が流体通路74を通じて相互に連通された流体封入式防振装置10において、仕切部材36がベース金具38にプレート金具40が重ね合わされた構造を有しており、ベース金具38におけるプレート金具40との重ね合わせ面47に突出するかしめピン50が、プレート金具40を貫通するピン挿通孔64に挿通されて、ピン挿通孔64に挿通されたかしめピン50の先端部分が拡径されることでベース金具38とプレート金具40が固定されており、ベース金具38におけるかしめピン50の基端部の周囲には環状の凹溝54が形成されて、プレート金具40におけるピン挿通孔64の開口周縁部78が凹溝54上に位置している。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
仕切部材の両側に流体室が形成されて、それら流体室が流体通路を通じて相互に連通された流体封入式防振装置において、
前記仕切部材がベース金具にプレート金具が重ね合わされた構造を有しており、
該ベース金具における該プレート金具との重ね合わせ面に突出するかしめピンが、該プレート金具を貫通するピン挿通孔に挿通されて、該ピン挿通孔に挿通された該かしめピンの先端部分が拡径されることで該ベース金具と該プレート金具がかしめ固定されており、
該ベース金具における該かしめピンの基端部の周囲には、該かしめピンを囲むように延びる環状の凹溝が形成されて、
該プレート金具における該ピン挿通孔の開口周縁部が該凹溝上に位置している流体封入式防振装置。
【請求項2】
前記凹溝の溝底部から突出する前記かしめピンの基端部の外周面が、基端側へ向けて大径となる湾曲形状とされている請求項1に記載の流体封入式防振装置。
【請求項3】
前記凹溝における前記かしめピン側となる内周部分が、内周へ向けて該かしめピンの突出先端側へ傾斜するテーパ内面を備えており、該テーパ内面が前記プレート金具から離れている請求項1又は2に記載の流体封入式防振装置。
【請求項4】
拡径前の前記かしめピンの外径と前記ピン挿通孔の内径との寸法差が0.5mm以下とされている請求項1又は2に記載の流体封入式防振装置。
【請求項5】
前記プレート金具の前記ピン挿通孔は、前記ベース金具への重ね合わせ面側からの打抜きによって形成されている請求項1又は2に記載の流体封入式防振装置。
【請求項6】
前記仕切部材における前記ベース金具と前記プレート金具との重ね合わせ面間には、メンブランを収容する収容空所が形成されており、該収容空所の外周側に前記かしめピンと前記ピン挿通孔が配置されている請求項1又は2に記載の流体封入式防振装置。
【請求項7】
かしめピンを備えたベース金具と、該かしめピンが挿通されるピン挿通孔を備えたプレート金具とを、相互に重ね合わせて、
該ピン挿通孔に挿通した該かしめピンの突出先端部分を拡径するように塑性変形させることで、該ベース金具と該プレート金具とを重ね合わせた状態で固定するピンかしめ固定方法であって、
前記ベース金具における前記かしめピンの基端部の周囲には、前記プレート金具への重ね合わせ面に開口する環状の凹溝を形成し、
該プレート金具における前記ピン挿通孔の開口周縁部を該凹溝の開口上に位置させると共に、該ピン挿通孔よりも外周側では該ベース金具と該プレート金具とを密着状態で重ね合わせて、該かしめピンの基端部において該凹溝内へ膨らむ変形を許容しながら該かしめピンの突出先端部分をかしめ加工するピンかしめ固定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車のエンジンマウント等に用いられる流体封入式防振装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、自動車においてパワーユニットと車両ボデーを防振連結するエンジンマウント等に用いられる防振装置が知られており、防振装置の一種として、内部に封入された流体の流動作用に基づく防振効果を利用する流体封入式防振装置も提案されている。流体封入式防振装置は、例えば特開2008-175321号公報(特許文献1)に示されており、仕切部材によって隔てられた受圧液室と副液室とに液体が封入されていると共に、それら受圧液室と副液室とを相互に連通するオリフィス通路が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008-175321号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1の流体封入式防振装置において、仕切部材は、本体ブロックと蓋金具とが重ね合わされた構造とされている。本体ブロックと蓋金具は、蓋金具のピン孔に挿通された本体ブロックのかしめピンの先端部分が拡径されることでピン孔の開口周縁部に係止されるピンかしめ固定によって、相互に重ね合わされた状態で固定されている。
【0005】
ところが、従来構造の仕切部材は、本体ブロックがダイカスト等の型成形によって形成されており、一般に図7に示す仕切部材1のようにかしめピン3の基端部4が基端側へ向けて拡径する湾曲テーパ形状とされている。そのために、本体ブロック2に重ね合わされた蓋金具5が、拡径されたかしめピン3の基端部4に乗り上げて担がれてしまい、本体ブロック2と蓋金具5の間に隙間ができてしまうおそれがある。かかる隙間が僅かであったとしても、流体封入式防振装置では本体ブロックと蓋金具との間に形成される流体通路を通じて流動する流体圧が大きいことから、当該隙間を通じた液体の短絡的なリークが生じやすく、それに起因して防振性能の低下等が問題となり得た。
【0006】
このような問題に対処するために、従来では、ピン孔6を充分に大きく設定することも考えられるが、本体ブロック2のかしめピン3と蓋金具5のピン孔6の部材寸法誤差や組付誤差によってかしめピン3とピン孔6の相対位置がズレてしまうこともあり、上述の如き蓋金具5の担ぎ上げによる隙間の発生ひいては防振性能低下のリスクを完全に解消することが難しかった。なお、製造段階で本体ブロック2と蓋金具5について個々の組み合わせ状態を確認して、ピン孔6の開口周縁部に対する切削等の後加工を施すことによって蓋金具5の担ぎ上げによる隙間の発生を防止することも考えられるが、それには多大な労力と時間が必要となり現実的ではない。
【0007】
本発明の解決課題は、仕切部材で仕切られた流体室間において意図しない短絡的なリークを防ぐことができる、新規な構造の流体封入式防振装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
以下、本発明を把握するための好ましい態様について記載するが、以下に記載の各態様は、例示的に記載したものであって、適宜に互いに組み合わせて採用され得るだけでなく、各態様に記載の複数の構成要素についても、可能な限り独立して認識及び採用することができ、適宜に別の態様に記載の何れかの構成要素と組み合わせて採用することもできる。それによって、本発明では、以下に記載の態様に限定されることなく、種々の別態様が実現され得る。
【0009】
第一の態様は、仕切部材の両側に流体室が形成されて、それら流体室が流体通路を通じて相互に連通された流体封入式防振装置において、前記仕切部材がベース金具にプレート金具が重ね合わされた構造を有しており、該ベース金具における該プレート金具との重ね合わせ面に突出するかしめピンが、該プレート金具を貫通するピン挿通孔に挿通されて、該ピン挿通孔に挿通された該かしめピンの先端部分がそれぞれ拡径されることで該ベース金具と該プレート金具がかしめ固定されており、該ベース金具における該かしめピンの基端部の周囲には、該かしめピンの周囲を囲むように延びる環状の凹溝が形成されて、該プレート金具における該ピン挿通孔の開口周縁部が該凹溝上に位置しているものである。
【0010】
本態様に従う構造とされた流体封入式防振装置によれば、ベース金具におけるかしめピンの基端部の周囲に凹溝が形成されていることにより、例えば基端側へ向けて拡径するかしめピンの基端部にプレート金具におけるピン挿通孔の開口周縁部が干渉するのを回避することができて、ベース金具とプレート金具との重ね合わせ面間の隙間を防ぐことができる。また、プレート金具のピン挿通孔が例えば打抜きによって形成される等して、ピン挿通孔の開口周縁部にバリ等が形成されたとしても、ピン挿通孔の開口周縁部が凹溝の開口上に位置していることにより、ベース金具とプレート金具の重ね合わせ面間に当該バリ等に起因する隙間が形成されるのを防ぐことができる。このように、ベース金具とプレート金具との重ね合わせ面間の隙間を通じた流体室間での短絡的なリークが防止されて、目的とする防振性能を有効に得ることができる。
【0011】
第二の態様は、第一の態様に記載された流体封入式防振装置において、前記凹溝の溝底部から突出する前記かしめピンの基端部の外周面が、基端側へ向けて大径となる湾曲形状とされているものである。
【0012】
本態様に従う構造とされた流体封入式防振装置によれば、かしめピンを軸方向に圧縮するかしめ加工に際して、かしめピンの変形態様の安定化等が図られる。また、例えば、かしめピンを備えたベース金具が型成形品とされる場合には、かしめピンの基端部が先細の湾曲形状とされていることにより、脱型性の向上等によりかしめピンの形成が容易になる。
【0013】
第三の態様は、第一又は第二の態様に記載された流体封入式防振装置において、前記凹溝における前記かしめピン側となる内周部分が、内周へ向けて該かしめピンの突出先端側へ傾斜するテーパ内面を備えており、該テーパ内面が前記プレート金具から離れているものである。
【0014】
本態様に従う構造とされた流体封入式防振装置によれば、凹溝の内面における内周部分がテーパ内面とされていることにより、かしめピンの外周面と凹溝の内面とを滑らかに連続させることができて、例えばかしめ固定時の入力に対して、応力の分散化が図られる。
【0015】
テーパ内面がプレート金具から離隔する位置に設けられていることにより、ベース金具とプレート金具とを重ね合わせても、プレート金具がテーパ内面に乗り上げるのを回避することができて、ベース金具とプレート金具との重ね合わせ面間に隙間が形成されることはない。
【0016】
第四の態様は、第一~第三の何れか1つの態様に記載された流体封入式防振装置において、拡径前の前記かしめピンの外径と前記ピン挿通孔の内径との寸法差が0.5mm以下とされているものである。
【0017】
本態様に従う構造とされた流体封入式防振装置によれば、拡径変形前のかしめピンの外径とピン挿通孔の内径との差が抑えられていることにより、かしめピンのピン挿通孔への挿通によって、ベース金具とプレート金具とがある程度位置決めされることから、かしめ固定の作業が容易になる。また、塑性変形後の拡径したかしめピンがピン挿通孔の内周面に押し当てられ易くなって、ピンかしめ固定後のベース金具とプレート金具の固定力を大きく得ることができる。
【0018】
第五の態様は、第一~第四の何れか1つの態様に記載された流体封入式防振装置において、前記プレート金具の前記ピン挿通孔は、前記ベース金具への重ね合わせ面側からの打抜きによって形成されているものである。
【0019】
本態様に従う構造とされた流体封入式防振装置によれば、ピン挿通孔の打抜きによってプレート金具に形成されるバリは、ベース金具への重ね合わせ面と反対側の面に突出することから、ベース金具とプレート金具の重ね合わせに影響し難い。
【0020】
プレート金具のベース金具への重ね合わせ面におけるピン挿通孔の開口周縁部には、打抜時のポンチの摺接によるダレRが形成されるが、当該ダレRは、バリに比してベース金具とプレート金具の重ね合わせに影響し難く、また、ベース金具に形成された凹溝の開口上に位置することから、ベース金具とプレート金具の重ね合わせ面間に隙間が形成されるのを防ぐことができる。
【0021】
第六の態様は、第一~第五の何れか1つの態様に記載された流体封入式防振装置において、前記仕切部材における前記ベース金具と前記プレート金具との重ね合わせ面間には、メンブランを収容する収容空所が形成されており、該収容空所の外周側に前記かしめピンと前記ピン挿通孔が配置されているものである。
【0022】
本態様に従う構造とされた流体封入式防振装置によれば、振動入力時にメンブランが収容空所の壁面に打ち当てられたとしても、収容空所の周囲がピンかしめ固定されていることにより、メンブランの打ち当たりに対する耐荷重性が確保されて、ベース金具とプレート金具が連結状態に安定して保持される。
【0023】
第七の態様は、かしめピンを備えたベース金具と、該かしめピンが挿通されるピン挿通孔を備えたプレート金具とを、相互に重ね合わせて、該ピン挿通孔に挿通した該かしめピンの突出先端部分を拡径するように塑性変形させることで、該ベース金具と該プレート金具とを重ね合わせた状態で固定するピンかしめ固定方法であって、前記ベース金具における前記かしめピンの基端部の周囲には、前記プレート金具への重ね合わせ面に開口する環状の凹溝を形成し、該プレート金具における前記ピン挿通孔の開口周縁部を該凹溝の開口上に位置させると共に、該ピン挿通孔よりも外周側では該ベース金具と該プレート金具とを密着状態で重ね合わせて、該かしめピンの基端部において該凹溝内へ膨らむ変形を許容しながら該かしめピンの突出先端部分をかしめ加工するものである。
【0024】
本態様に従うピンかしめ固定方法によれば、かしめピンの塑性変形時の逃げ場がベース金具とプレート金具との重ね合わせ面間に凹溝によって積極的に確保されることから、例えばかしめピンを塑性変形させる入力に際して、かしめピンの基端部の周囲においてベース金具がプレート金具側へ盛り上がる等してプレート金具へ過度に干渉することにより、ベース金具とプレート金具との重ね合わせ面間に隙間ができてしまうリスクなどを回避することができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、仕切部材で仕切られた流体室間において意図しない短絡的なリークを防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本発明の第一の実施形態としてのエンジンマウントを示す断面図
図2図1に示すエンジンマウントを構成するベース金具の平面図
図3図2に示すベース金具のかしめピンを拡大して示す断面図であって、図2中のIII-III断面に相当する図
図4図1に示すエンジンマウントを構成するプレート金具の平面図
図5図1のV部を拡大して示す断面図
図6A図2に示すベース金具と図4に示すプレート金具とのかしめ固定工程を説明する図であって、かしめ固定前の状態を示す断面図
図6B図2に示すベース金具と図4に示すプレート金具とのかしめ固定工程を説明する図であって、かしめ固定後の状態を示す断面図
図7】従来構造の仕切部材の要部を示す断面図
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0028】
図1には、本発明に従う構造とされた流体封入式防振装置の第一の実施形態として、自動車用のエンジンマウント10が示されている。エンジンマウント10は、第一の取付部材12と第二の取付部材14が本体ゴム弾性体16で連結された構造を有している。以下の説明において、上下方向とは、原則として、図1中の上下方向をいう。
【0029】
第一の取付部材12は、金属や合成樹脂等で形成された硬質の部材であって、全体として下方に向けて小径となる逆向きの略錘台形状とされており、上端部には外周へ突出するフランジ状の突出部が形成されている。第一の取付部材12の中心軸上には、上面に開口して、上下方向にストレートに延びるねじ穴20が形成されている。
【0030】
第二の取付部材14は、金属や合成樹脂等で形成された硬質の部材であって、全体として薄肉大径の略円筒形状とされている。第二の取付部材14は、上下方向の中間に軸直角方向に広がる環状の段差部22を備えており、段差部22よりも上側が下側よりも大径とされている。
【0031】
第一の取付部材12は、第二の取付部材14に対して、略同一中心軸上で上方に配置されており、それら第一の取付部材12と第二の取付部材14が本体ゴム弾性体16によって相互に連結されている。本体ゴム弾性体16は、ゴムや樹脂エラストマといったゴム状弾性を有する材料で形成されており、全体として略円錐台形状とされている。本体ゴム弾性体16は、上端部の中央部分に第一の取付部材12が加硫接着されていると共に、下端部の外周面に第二の取付部材14が加硫接着されている。
【0032】
本体ゴム弾性体16には、下面に開口する凹所24が形成されている。凹所24は、上底壁部が上方へ向けて小径となる略逆向きすり鉢形状とされており、周壁部が略一定の円形断面で上下方向にストレートに延びる円筒状とされている。本体ゴム弾性体16は、凹所24の開口よりも外周側から下方に向けて延び出すシールゴム層26を備えている。シールゴム層26は、薄肉大径とされており、第二の取付部材14の下部の内周面に固着されている。シールゴム層26は、凹所24の開口部の周壁よりも径方向で薄肉大径とされており、凹所24の開口周縁部には環状の段差面28が形成されている。
【0033】
第二の取付部材14には、可撓性膜30が取り付けられている。可撓性膜30は、薄肉のゴムや樹脂エラストマで形成されており、上下方向の変形を許容する可撓性を有している。可撓性膜30は、好適には、ある程度の伸縮性を備えている。可撓性膜30の外周には、環状の固定部材32が加硫接着されており、固定部材32が第二の取付部材14の下開口部に挿入されて、シールゴム層26を介して第二の取付部材14の内周面に固定されている。これにより、可撓性膜30が固定部材32によって第二の取付部材14に取り付けられており、第二の取付部材14の下開口部が可撓性膜30によって液密に覆蓋されている。なお、固定部材32が第二の取付部材14の内周へ差し入れられた状態で、第二の取付部材14に八方絞り等の縮径加工が施されることにより、固定部材32が第二の取付部材14に固定されている。また、第二の取付部材14は、固定部材32よりも下側へ突出した下端部が内周側へ屈曲しており、それによって固定部材32の下側への抜けが防止されている。
【0034】
第二の取付部材14に対する可撓性膜30の取付けによって、第二の取付部材14の内周側には、本体ゴム弾性体16と可撓性膜30との対向面間に、外部から液密に隔てられた流体封入領域34が形成されている。流体封入領域34には、例えば、水、エチレングリコール、アルキレングリコール、シリコーン油、それらの混合液等の液体が封入されている。流体封入領域34の封入流体は、低粘性流体であることが望ましい。
【0035】
流体封入領域34には、仕切部材36が配設されている。仕切部材36は、全体として略円板形状とされており、ベース金具38とプレート金具40とメンブラン42とを備えている。
【0036】
ベース金具38は、鉄やアルミニウム合金等の金属で形成されており、全体として厚肉の円板形状とされている。ベース金具38は、例えば、ダイカスト成形や鋳造等の型成形によって形成される。
【0037】
ベース金具38の径方向の中央部分には、上面に開口する収容凹部44が形成されている。収容凹部44は、図2に示すように上下方向視で略円形とされており、開口側となる上部が底側となる下部よりも大径とされた段付き凹状とされている。収容凹部44の底壁部には、上下方向に貫通する第一透孔46が形成されている。第一透孔46は、収容凹部44の下部よりも更に小径の円形孔とされている。ベース金具38における収容凹部44の開口よりも外周側には、上下直交方向に広がる略平坦な第一当接面47が、プレート金具40との重ね合わせ面として設けられている。
【0038】
ベース金具38の外周端部には、外周面に開口して周方向に延びる周溝48が形成されている。周溝48は、一周未満の長さで延びており、一方の端部が上面に開口していると共に、他方の端部が下面に開口している。
【0039】
ベース金具38には、第一当接面47に突出する複数のかしめピン50が設けられている。かしめピン50は、図2図3に示すように、略円柱形状とされており、突出先端部の外周面が先端側へ向けて小径となる挿入案内面52とされている。かしめピン50は、図2に示すように、複数が収容凹部44の周囲を囲むように配置されており、本実施形態では7本が周方向で相互に離れた位置に設けられている。なお、図2図3には、かしめ加工前のかしめピン50が示されている。
【0040】
ベース金具38におけるかしめピン50の基端部の周囲には、凹溝54が形成されている。凹溝54は、ベース金具38の第一当接面47に開口してかしめピン50の外周側を囲むように環状に延びている。凹溝54は、略半円形の溝断面形状とされており、最深部よりも内周側の溝内面が、内周に向けてかしめピン50の突出先端側(上側)へ傾斜する湾曲形状のテーパ内面56とされている。テーパ内面56は、凹溝54の溝内面を構成していると共に、かしめピン50の基端部の外周面を構成しており、かしめピン50の基端部が基端側へ向けて大径となる湾曲テーパ形状とされている。ダイカスト等の型成形によって形成されるベース金具38において、かしめピン50の基端部がテーパ内面56で外周面を構成された先細の湾曲形状とされていることにより、脱型性の向上等によるかしめピン50の形成の容易化が図られ得る。
【0041】
テーパ内面56の内周端は、かしめピン50における上下方向で直線的に延びる突出部分の円筒状外周面と滑らかに連続している。凹溝54の溝内面の内周端は、開口部から僅かに下方へストレートに延びた先でテーパ内面56に連続しており、テーパ内面56の内周端がベース金具38の第一当接面47よりも下方に位置している。凹溝54の溝幅寸法は、好適には0.5~3mmの範囲内、より好適には1~2mmの範囲内で設定される。
【0042】
プレート金具40は、鉄やアルミニウム合金等の金属で形成されており、図1図4に示すように、全体として薄肉の略円板形状とされている。プレート金具40は、例えば、金属素板のプレス加工によって形成されたプレス金具とされており、好適には鉄によって形成されている。
【0043】
プレート金具40は、径方向の中央部分が有底筒状の挿入部58とされている。挿入部58には、底壁部分を上下方向に貫通する第二透孔60が設けられている。第二透孔60は、第一透孔46と同様に円形孔とされている。なお、第二透孔60と第一透孔46は、円形孔に限定されず、例えば、後述するメンブラン42の抜けを防止するための桟によって区切られる等していてもよい。
【0044】
プレート金具40は、挿入部58の上端部から外周へ突出する円環板状のフランジ状部62を備えている。フランジ状部62は、後述するように、第二当接面63がベース金具38への重ね合わせ面とされている。
【0045】
プレート金具40のフランジ状部62には、上下方向に貫通する複数のピン挿通孔64が形成されている。ピン挿通孔64は、かしめピン50を挿通可能な大きさの円形孔とされている。ピン挿通孔64は、図4に示すように、複数が挿入部58の周囲を囲むように配置されており、本実施形態ではかしめピン50と対応する7つが周方向で相互に離れた位置に設けられている。ピン挿通孔64の形成方法は特に限定されず、例えばドリルによる切削加工等によって形成してもよいが、好適には打抜加工によって形成される。この場合に、ピン挿通孔64は、ベース金具38との重ね合わせ面である第二当接面63側からの打抜きによって形成されることが望ましく、それによって、打抜時のバリ(図示せず)が第二当接面63側へ突出するのを防ぐことができる。
【0046】
プレート金具40は、ベース金具38に対して、上方から重ね合わされて組み合わされている。即ち、プレート金具40のフランジ状部62の第二当接面63がベース金具38における収容凹部44よりも外周側の第一当接面47に密着状態で重ね合わされていると共に、プレート金具40の挿入部58がベース金具38の収容凹部44に差し入れられている。
【0047】
図1に示すように、ベース金具38の上方にプレート金具40が重ね合わされていることにより、ベース金具38の収容凹部44の上開口がプレート金具40によって覆われており、それらベース金具38とプレート金具40の重ね合わせ面間に収容凹部44を利用した収容空所68が形成されている。この収容空所68には、メンブラン42が収容配置されている。
【0048】
メンブラン42は、ゴムや樹脂エラストマ等のゴム状弾性体で形成されており、略円板形状とされている。メンブラン42は、内周部分が略一定の厚さ寸法で上下直交方向に広がっていると共に、外周部分の上下両面が外周へ向けて上下外側へ傾斜しており、外周へ向けて厚肉となっている。
【0049】
メンブラン42は、収容凹部44における小径とされた下部に差し入れられた状態で配されている。メンブラン42は、厚肉とされた外周部分がベース金具38とプレート金具40との間で上下方向に挟み込まれて支持されていると共に、薄肉とされた内周部分がベース金具38及びプレート金具40から上下方向で離隔して、収容空所68内での上下方向の変形及び変位を許容されている。
【0050】
かくの如き構造とされた仕切部材36は、流体封入領域34に配置されている。仕切部材36は、外周端部の上面が本体ゴム弾性体16の段差面28に当接状態で重ね合わされていると共に、外周端部の下面が可撓性膜30に固着された固定部材32に当接状態で重ね合わされており、第二の取付部材14に対して上下方向で位置決めされている。また、仕切部材36は、外周面がシールゴム層26に押し当てられて第二の取付部材14によって支持されている。これらにより、仕切部材36は、流体封入領域34内で上下直交方向に広がっている。
【0051】
流体封入領域34は、仕切部材36の上下両側に二分されている。そして、仕切部材36の上側には、壁部の一部が本体ゴム弾性体16で構成されて、振動入力時に内圧変動が惹起される、一方の流体室としての受圧室70が形成されている。また、仕切部材36の下側には、壁部の一部が可撓性膜30で構成されて、可撓性膜30の変形によって容積変化が許容される、他方の流体室としての平衡室72が形成されている。
【0052】
受圧室70と平衡室72は、流体通路としてのオリフィス通路74によって相互に連通されている。オリフィス通路74は、ベース金具38に設けられた周溝48の外周開口が、シールゴム層26を介した第二の取付部材14で液密に覆われることによって形成されており、一方の端部が受圧室70に連通されていると共に、他方の端部が平衡室72に連通されている。オリフィス通路74は、流動流体の共振周波数であるチューニング周波数が、通路断面積と通路長との比によって調節設定されており、例えば、自動車のエンジンシェイク等の低周波にチューニングされている。なお、本実施形態では、周方向に一周未満の長さで延びるオリフィス通路74を例示したが、例えば、螺旋状に延びる等して周方向に一周以上の長さで延びるオリフィス通路を採用することもできる。更に、オリフィス通路は、必ずしも周方向に延びていなくてもよく、例えば仕切部材36を上下方向に貫通するように形成され得る。
【0053】
メンブラン42の上面には、第二透孔60を通じて受圧室70の液圧が作用しており、メンブラン42の下面には、第一透孔46を通じて平衡室72の液圧が作用している。そして、振動入力時に受圧室70と平衡室72との間に相対的な圧力差が生じると、メンブラン42の内周部分が上下方向で変形乃至は変位することにより、受圧室70の液圧を平衡室72へ伝達する液圧吸収作用が発揮される。メンブラン42は、液圧の作用による変形の共振周波数がオリフィス通路74のチューニング周波数よりも高周波に設定されており、例えば、自動車のアイドリング振動や走行こもり音に相当する周波数にチューニングされている。
【0054】
ところで、ベース金具38とプレート金具40は、以下に説明するように、かしめピン50によってピンかしめ固定されている。即ち、先ず、ベース金具38とプレート金具40に対して上方から重ね合わせて、ベース金具38の第一当接面47とプレート金具40の第二当接面63とを相互に密着させる。また、ベース金具38とプレート金具40との重ね合わせに際して、かしめピン50をピン挿通孔64に挿通させる。
【0055】
ベース金具38におけるかしめピン50の基端部の周囲には、環状の凹溝54がベース金具38の第一当接面47に開口して形成されている。これにより、かしめピン50の基端部の外周面は、ベース金具38におけるプレート金具40との重ね合わせ面である第一当接面47よりも上側において、略一定の直径で上下方向に直線的に延びる筒状とされており、プレート金具40におけるピン挿通孔64の開口周縁部が、かしめピン50の基端部の外周面に対して図7のように重ね合わされることはない。それゆえ、かしめピン50がピン挿通孔64に挿通された状態において、ベース金具38とプレート金具40との密着状態での重ね合わせが実現される。
【0056】
変形前のかしめピン50は、図6Aに示すように、ピン挿通孔64よりも小径とされており、ピン挿通孔64の第二当接面63側の開口周縁部(78)は、かしめピン50の周囲に設けられた凹溝54の開口上に位置している。これにより、ピン挿通孔64の第二当接面63側の開口周縁部に打抜時の変形等による意図しない突起が形成されていても、ベース金具38とプレート金具40との密着状態での重ね合わせが当該突起によって阻害されることなく実現される。
【0057】
かしめピン50の外径とピン挿通孔64の内径との寸法差は、好適には0.5mm以下とされており、より好適には0.3mm以下とされている。このようにプレート金具40におけるピン挿通孔64の内周面がかしめピン50に近接していることにより、かしめピン50のピン挿通孔64への挿通によってベース金具38とプレート金具40が上下直交方向で相互に位置決めされることから、ベース金具38とプレート金具40をより精度よく位置決めして適切な相対位置に固定することができる。また、プレート金具40におけるピン挿通孔64の開口周縁部がかしめピン50に近接していても、かしめピン50の基端部の周囲に凹溝54が形成されていることにより、ピン挿通孔64の開口周縁部がかしめピン50の基端部に干渉するのを防ぐことができる。なお、図6Aに示すように、ピン挿通孔64の内径寸法R1は、環状とされた凹溝54の内周端の径寸法R2よりも大きくされており、凹溝54の外周端の径寸法R3よりも小さくされている。
【0058】
本実施形態では、プレート金具40におけるベース金具38との重ね合わせ面である第二当接面63側から上側へ向けた打抜加工によってピン挿通孔64が形成されており、ピン挿通孔64の下側の開口周縁部には、打抜加工時のポンチの摺接による面取り状の傾斜形状(R部78)が形成されている。打抜加工によるバリがプレート金具40の第二当接面63とは反対側となる上面側へ突出して形成されることから、比較的に小さな凹溝54によって、ベース金具38とプレート金具40の密着状態での重ね合わせを実現することができる。なお、本実施形態では、R部78を外れた部分においてピン挿通孔64の内径寸法が略一定とされていることから、ピン挿通孔64の内面がR部78の下端において最も外周側に位置しており、R部78の下端が凹溝54の外周端よりも内周側に位置している。
【0059】
凹溝54における内周側の溝内面を構成するテーパ内面56は、ベース金具38の第一当接面47から僅かに下方へ離れて位置しており、ベース金具38の第一当接面47に重ね合わされたプレート金具40の第二当接面63がテーパ内面56に接することなく離隔している。それゆえ、ベース金具38とプレート金具40の密着状態での重ね合わせは、プレート金具40のテーパ内面56への当接によって阻害されない。
【0060】
以上のように、ベース金具38におけるかしめピン50の基端部の周囲に凹溝54が形成されていることにより、ベース金具38の外周部分の第一当接面47と、プレート金具40のフランジ状部62の第二当接面63とが、密着状態で重ね合わされている。それゆえ、ベース金具38とプレート金具40の重ね合わせ面間を通じた液体の短絡的なリークが抑制されて、振動入力時の受圧室70と平衡室72との相対的な圧力差が効率的に生じることから、目的とする防振性能を有効に発揮させることができる。
【0061】
本実施形態では、かしめピン50におけるピン挿通孔64への挿通部分の外径寸法が、ピン挿通孔64の内径寸法よりも小さくされており、更に、かしめピン50のピン挿通孔64への挿入先端部の外周面が挿入先端側へ向けて小径となるテーパ形状の挿入案内面52とされている。これにより、かしめ加工前のかしめピン50は、ピン挿通孔64への挿入が容易となっている。
【0062】
次に、ピン挿通孔64に挿通されたかしめピン50に対して、プレス機のかしめヘッド80を先端側から接近させて、かしめピン50を先端側から基端側へ向けて上下方向に圧縮する。かしめピン50は、圧縮によって上下方向の長さが短くなるのに伴って外周へ膨出変形して大径化する。これにより、かしめピン50におけるピン挿通孔64内に位置する部分は、外周面がピン挿通孔64の内周面に当接する。また、かしめピン50におけるピン挿通孔64よりも上側に突出する突出先端部分は、ピン挿通孔64よりも大径の拡径部76とされることにより、ピン挿通孔64の開口周縁部においてプレート金具40の上面に当接状態で重ね合わされて、プレート金具40に対して軸方向で係止される。これにより、ベース金具38とプレート金具40は、かしめピン50によるピンかしめによって相互に固定されている。
【0063】
かしめピン50の基端部の外周面が、基端側へ向けて大径となるテーパ内面56で構成されていることから、かしめピン50を軸方向で圧縮する際に、かしめピン50の基端部分が折れ曲がる等の意図しない変形を生じ難く、かしめピンの変形態様の安定化等が図られる。また、テーパ内面56は、かしめピン50におけるベース金具38の第一当接面47から突出した部分の外周面に対して、滑らかに連続していることから、かしめ加工時の入力に対する応力の分散化が図られて、かしめピン50の歪な変形が防止される。
【0064】
かしめピン50は、基端部において凹溝54内へ膨らむ変形(逃げ)を許容された状態で、かしめヘッド80によって圧縮されて塑性変形する。その結果、図6Bに示すかしめ加工後の状態では、図6Aに示すかしめ加工前の状態に比して、かしめピン50の基端部が凹溝54へ膨らむように入り込んでおり、凹溝54の溝断面積が小さくなっている。それゆえ、かしめピン50のかしめ加工に際して、かしめピン50の基端部がプレート金具40を上方へ押し上げるように変形するのが防止されており、ベース金具38とプレート金具40との密着状態での重ね合わせが保持され易くなっている。
【0065】
拡径前のかしめピン50の外径とピン挿通孔64の内径との寸法差が0.5mm以下とされており、かしめピン50とピン挿通孔64の開口周縁部とが近接していることから、ベース金具38とプレート金具40のかしめ固定に必要とされるかしめピン50の拡径変形量が小さくされており、かしめ加工の容易化が図られている。なお、このようにかしめピン50とピン挿通孔64の開口周縁部とが近接していても、上述のように、ピン挿通孔64の開口周縁部が凹溝54の開口上に位置することから、かしめピン50の外周面にプレート金具40が干渉してベース金具38から離れてしまうことはない。
【0066】
本実施形態では、拡径部76の外径寸法R4(図5参照)が、ピン挿通孔64の内径寸法R1よりも大きく、且つ凹溝54の外径寸法R3よりも大きくされている。これにより、拡径部76とプレート金具40におけるピン挿通孔64の開口周縁部との重ね合わせ面積が大きく確保されており、ピンかしめによってベース金具38とプレート金具40とが大きな固定力で安定して固定されている。なお、拡径部76の外径寸法R4は、凹溝54の外径寸法R3以下とされていてもよい。
【0067】
かしめピン50によるベース金具38とプレート金具40との連結構造(ピンかしめ部分)は、収容空所68の周囲に設けられていることから、メンブラン42が大きく変形してベース金具38及びプレート金具40に打ち当てられたとしても、十分な耐荷重性能が確保されており、ベース金具38とプレート金具40が位置決め固定された状態に保持される。
【0068】
以上、本発明の実施形態について詳述してきたが、本発明はその具体的な記載によって限定されない。例えば、かしめピン50及びピン挿通孔64の数は、特に限定されず、1つであってもよいし、複数であってもよい。尤も、ベース金具38とプレート金具40の安定した固定を実現するために、かしめピン50及びピン挿通孔64の数は、それぞれ複数であることが望ましく、より好適には各3つ以上とされる。また、かしめピン50は、ピン挿通孔64に対して挿通可能とされていればよく、配置や横断面形状、大きさ等が限定されるものではない。
【0069】
前記実施形態では、かしめピン50によるピンかしめ構造が、収容空所68の周囲を囲むように配置されていたが、例えば、収容空所68の中央にかしめピン50を設けて、仕切部材36の径方向中央にピンかしめ構造を設定することもできる。なお、このように仕切部材36の中央にかしめ構造を設けながらメンブラン42を採用する場合には、例えば、メンブラン42を環状として、メンブラン42の中心孔にベース金具38におけるかしめピン50の土台部分を挿通すればよい。
【0070】
プレート金具40におけるピン挿通孔64の打抜きは、第二当接面63側へのバリの突出を防ぐために、第二当接面63側から上側へ向けて打ち抜くことが望ましいが、例えば、上側から第二当接面63側へ向けて打ち抜いてもよい。この場合にも、例えば、ベース金具38に形成される凹溝54の大きさ等を適宜に設定して、バリを凹溝54に収容することにより、ベース金具38の第一当接面47とプレート金具40の第二当接面63との密着状態での重ね合わせを実現することができる。なお、打抜加工時のバリは、後処理をする必要はないが、例えば、切削によって除去してもよいし、突出高さが小さくなるように押し潰す等してもよい。
【0071】
前記実施形態では、かしめピン50を備えるベース金具38に対して、ピン挿通孔64を備えるプレート金具40が上方(一方の流体室である受圧室70側)から重ね合わされた構造を例示したが、例えば、ベース金具に対してプレート金具が下方(他方の流体室である平衡室72側)から重ね合わされてかしめ固定される構造も採用され得る。
【0072】
凹溝54の溝断面形状は、前記実施形態に示した略半円形に限定されるものではなく、例えば、半長円形、矩形や三角形等の多角形の他、内周壁面がテーパ内面56で外周壁面が筒状面とされた形状等の異形であってもよい。なお、テーパ内面56は、湾曲形状に限定されず、一定の傾斜角度で広がる傾斜平面とすることもできる。
【0073】
メンブラン42に代えて或いは加えて、上下方向の変位によって液圧吸収作用を発揮する可動板や、受圧室70の液圧低下時に短絡通路を形成してキャビテーションを防止するためのリリーフバルブ等を仕切部材36に設けることもできる。また、仕切部材においてメンブラン42等は必須ではなく、例えば、仕切部材36がベース金具とプレート金具で構成されて、防振効果を発揮する機構としてオリフィス通路74だけが設けられていてもよい。
【0074】
流体室は、前記実施形態に示した受圧室70と平衡室72に限定されず、例えば、仕切部材の両側に受圧室が設けられて、それら受圧室が振動入力時に相対的な圧力差が生じるように配置されていてもよい。
【0075】
本発明は、例えば、アクチュエータによる防振特性の切替えが可能とされた切替タイプの流体封入式防振装置や、能動的な加振力を流体室に作用させて振動を相殺的に低減する能動型の流体封入式防振装置等にも適用され得る。また、前記実施形態では、本発明の適用例として自動車用のエンジンマウントを例示したが、本発明はエンジンマウント以外の流体封入式防振装置にも適用可能である。また、第七の態様に係るピンかしめ固定方法は、流体封入式防振装置だけを適用対象とするものではなく、流体室のないソリッドタイプの防振装置にも適用可能であり、仕切部材のかしめ固定への適用にも限定されない。更に、第七の態様に係るピンかしめ固定方法は、防振装置以外に用いられる金具の固定にも好適に適用される。
【符号の説明】
【0076】
10 エンジンマウント(流体封入式防振装置 第一の実施形態)
12 第一の取付部材
14 第二の取付部材
16 本体ゴム弾性体
20 ねじ穴
22 段差部
24 凹所
26 シールゴム層
28 段差面
30 可撓性膜
32 固定部材
34 流体封入領域
36 仕切部材
38 ベース金具
40 プレート金具
42 メンブラン
44 収容凹部
46 第一透孔
47 第一当接面
48 周溝
50 かしめピン
52 挿入案内面
54 凹溝
56 テーパ内面
58 挿入部
60 第二透孔
62 フランジ状部
63 第二当接面
64 ピン挿通孔
68 収容空所
70 受圧室(流体室)
72 平衡室(流体室)
74 オリフィス通路(流体通路)
76 拡径部
78 R部(開口周縁部)
80 かしめヘッド
1 仕切部材(従来構造)
2 本体ブロック
3 かしめピン
4 基端部
5 蓋金具
6 ピン孔
図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図7