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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024136202
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】水系潤滑剤組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 23/26 20060101AFI20240927BHJP
   C08L 83/04 20060101ALI20240927BHJP
   C10M 173/02 20060101ALI20240927BHJP
   C10M 133/04 20060101ALI20240927BHJP
   C10M 155/02 20060101ALI20240927BHJP
   C10M 107/22 20060101ALI20240927BHJP
   C10N 20/02 20060101ALN20240927BHJP
   C10N 20/04 20060101ALN20240927BHJP
   C10N 30/00 20060101ALN20240927BHJP
   C10N 30/08 20060101ALN20240927BHJP
   C10N 40/36 20060101ALN20240927BHJP
【FI】
C08L23/26
C08L83/04
C10M173/02
C10M133/04
C10M155/02
C10M107/22
C10N20:02
C10N20:04
C10N30:00 A
C10N30:08
C10N40:36
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023047235
(22)【出願日】2023-03-23
(71)【出願人】
【識別番号】000005887
【氏名又は名称】三井化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001070
【氏名又は名称】弁理士法人エスエス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山本 周平
(72)【発明者】
【氏名】立松 涼
【テーマコード(参考)】
4H104
4J002
【Fターム(参考)】
4H104BE01C
4H104CB02A
4H104CJ02C
4H104LA04
4H104LA11
4H104PA48
4H104QA02
4J002BB212
4J002CH013
4J002CP031
4J002DE027
4J002EN106
4J002FD070
4J002FD090
4J002FD316
4J002GM00
4J002GT00
4J002HA06
(57)【要約】
【課題】含有成分である潤滑油成分が水中に良好に分散し、さらに金属への熱劣化物の固着が抑制され得る水系潤滑剤組成物を提供すること。
【解決手段】所定の要件を満たすエチレン・α-オレフィン共重合体(A)に由来する主鎖部、および所定の要件を満たす満たす不飽和モノマー(B)に由来するグラフト部を有するグラフト変性エチレン・α-オレフィン共重合体(X)と、アミン化合物(Y)と、アルキル変性シリコーンオイルおよびアルキルアラルキル変性シリコーンオイルからなる群より選ばれる少なとも一種のシリコーンオイル(Z)と、水とを含有する水系潤滑剤組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記要件(a-1)~(a-3)を満たすエチレン・α-オレフィン共重合体(A)に由来する主鎖部、および下記要件(b-1)を満たす不飽和モノマー(B)に由来するグラフト部を有するグラフト変性エチレン・α-オレフィン共重合体(X)と、
アミン化合物(Y)と、
アルキル変性シリコーンオイルおよびアルキルアラルキル変性シリコーンオイルからなる群より選ばれる少なとも一種のシリコーンオイル(Z)と、
水と
を含有する水系潤滑剤組成物:
(a-1)エチレン単位の含有率が30~70モル%である;
(a-2)ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により求められる重量平均分子量(Mw)が1,500~30,000である;
(a-3)示差走査熱量分析(DSC)で測定される融点(Tm)が観測されない;
(b-1)不飽和モノマー(B)が、水酸基を有するエチレン性不飽和モノマーからなる群より選ばれる少なとも一種の不飽和モノマーである。
【請求項2】
前記エチレン・α-オレフィン共重合体(A)が下記要件(a-4)および(a-5)を満たす、請求項1に記載の水系潤滑剤組成物:
(a-4)100℃における動粘度が10~5,000mm2/sである;
(a-5)ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により求められる分子量分布(Mw/Mn)が2.5以下である。
【請求項3】
前記不飽和モノマー(B)が不飽和アルコールである、請求項1に記載の水系潤滑剤組成物。
【請求項4】
前記グラフト変性エチレン・α-オレフィン共重合体(X)が下記要件(x-1)~(x-5)を満たす、請求項1に記載の水系潤滑剤組成物:
(x-1)グラフト部の割合が0.1質量%以上70質量%未満である(ただし、主鎖部とグラフト部との合計量を100質量%とする。);
(x-2)ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により求められる重量平均分子量(Mw)が1,500~30,000である;
(x-3)示差走査熱量分析(DSC)で測定される融点(Tm)が観測されない;
(x-4)100℃における動粘度が10~5,000mm2/sである;
(x-5)ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により求められる分子量分布(Mw/Mn)が2.5以下である。
【請求項5】
前記グラフト変性エチレン・α-オレフィン共重合体(X)の含有量が、前記水系潤滑剤組成物100質量%に対して0.1~10質量%である、請求項1に記載の水系潤滑剤組成物。
【請求項6】
前記アミン化合物(Y)が下記要件(y-1)および(y-2)を満たす、請求項1に記載の水系潤滑剤組成物:
(y-1)分子量が1,000以下である;
(y-2)分子内に水酸基を一つ以上有する。
【請求項7】
前記アミン化合物(Y)の含有量が、前記グラフト変性エチレン・α-オレフィン共重合体(X)100質量部に対して10~60質量部である、請求項1に記載の水系潤滑剤組成物。
【請求項8】
前記シリコーンオイル(Z)の含有量が、前記水系潤滑剤組成物100質量%に対して10~50質量%である、請求項1に記載の水系潤滑剤組成物。
【請求項9】
さらに界面活性剤を含有する、請求項1に記載の水系潤滑剤組成物。
【請求項10】
前記界面活性剤がノニオン系界面活性剤である、請求項9に記載の水系潤滑剤組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水系潤滑剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
アルミニウム、マグネシウム、亜鉛等の非鉄金属の鋳造においては、金型に浴湯(溶融した非鉄金属)を高速・高圧で注入して成形するダイカスト法が用いられている。ダイカスト法では、複雑な形状の製品を、精度よく、かつ効率よく生産できるという利点があるが、金型への焼き付きにより鋳肌が損なわれるという問題がある。そのため、焼き付きを防ぐために潤滑剤(離型剤)が用いられている。
【0003】
従来、ダイカスト用離形剤としては、鉱物油、植物油、その他の油脂、ワックス等を主成分とし、これらの主成分を水中に分散して得られた乳化混合物が多く用いられてきた。
例えば、特許文献1では、金型への離形剤の付着効率を改善するために、平均分子量がある値以上のポリエチレンを主体としたワックスを用いた乳化混合物が開示されている。
また、特許文献2では、熱によって生じた酸化劣化物の金型表面への付着を抑えるために、分解反応を起こし易い三級炭素を多く含むポリプロピレンを主体としたワックスを用いた乳化混合物が開示されている。
さらに、特許文献3では、優れた潤滑性及び加工性を有する、アルキルアラルキル変性シリコーンオイルを主体として用いた非鉄金属塑性加工用水系潤滑油組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭61-103642号公報
【特許文献2】特開平6-240286号公報
【特許文献3】特開2003-253290号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1では、熱によって生じた酸化劣化物が金属金型表面に堆積し、これが原因となって製品の外観が悪化したり、寸法精度が低下したりする問題があった。また、ポリエチレンワックスは固体状であるために、水中への分散性が劣るという欠点があった。
また、特許文献2では、離型剤の酸化劣化物の金属金型表面への付着を抑えることは可能であったが、やはりポリプロピレンの水中への分散性には改善の余地があった。
さらに、特許文献3では、黒鉛粉末等を使用しないことで、粉末による機械や金型への汚れを防ぐことは可能であるが、離型剤の熱劣化物の金属金型表面への付着の抑制については、改善の余地があった。
【0006】
本発明は、以上のような問題に鑑みてなされたものであり、本発明が解決しようとする課題は、含有成分である潤滑油成分が水中に良好に分散し、さらに金属への熱劣化物の固着が抑制され得る水系潤滑剤組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、例えば、以下の[1]~[10]に関する。
[1]
下記要件(a-1)~(a-3)を満たすエチレン・α-オレフィン共重合体(A)に由来する主鎖部、および下記要件(b-1)を満たす不飽和モノマー(B)に由来するグラフト部を有するグラフト変性エチレン・α-オレフィン共重合体(X)と、
アミン化合物(Y)と、
アルキル変性シリコーンオイルおよびアルキルアラルキル変性シリコーンオイルからなる群より選ばれる少なとも一種のシリコーンオイル(Z)と、
水と
を含有する水系潤滑剤組成物:
(a-1)エチレン単位の含有率が30~70モル%である;
(a-2)ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により求められる重量平均分子量(Mw)が1,500~30,000である;
(a-3)示差走査熱量分析(DSC)で測定される融点(Tm)が観測されない;
(b-1)不飽和モノマー(B)が、水酸基を有するエチレン性不飽和モノマーからなる群より選ばれる少なとも一種の不飽和モノマーである。
【0008】
[2]
前記エチレン・α-オレフィン共重合体(A)が下記要件(a-4)および(a-5)を満たす、[1]に記載の水系潤滑剤組成物:
(a-4)100℃における動粘度が10~5,000mm2/sである;
(a-5)ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により求められる分子量分布(Mw/Mn)が2.5以下である。
【0009】
[3]
前記不飽和モノマー(B)が不飽和アルコールである、[1]または[2]に記載の水系潤滑剤組成物。
【0010】
[4]
前記グラフト変性エチレン・α-オレフィン共重合体(X)が下記要件(x-1)~(x-5)を満たす、[1]~[3]のいずれかに記載の水系潤滑剤組成物:
(x-1)グラフト部の割合が0.1質量%以上70質量%未満である(ただし、主鎖部とグラフト部との合計量を100質量%とする。);
(x-2)ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により求められる重量平均分子量(Mw)が1,500~30,000である;
(x-3)示差走査熱量分析(DSC)で測定される融点(Tm)が観測されない;
(x-4)100℃における動粘度が10~5,000mm2/sである;
(x-5)ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により求められる分子量分布(Mw/Mn)が2.5以下である。
【0011】
[5]
前記グラフト変性エチレン・α-オレフィン共重合体(X)の含有量が、前記水系潤滑剤組成物100質量%に対して0.1~10質量%である、[1]~[4]のいずれかに記載の水系潤滑剤組成物。
【0012】
[6]
前記アミン化合物(Y)が下記要件(y-1)および(y-2)を満たす、[1]~[5]のいずれかに記載の水系潤滑剤組成物:
(y-1)分子量が1,000以下である;
(y-2)分子内に水酸基を一つ以上有する。
【0013】
[7]
前記アミン化合物(Y)の含有量が、前記グラフト変性エチレン・α-オレフィン共重合体(X)100質量部に対して10~60質量部である、[1]~[6]のいずれかに記載の水系潤滑剤組成物。
【0014】
[8]
前記シリコーンオイル(Z)の含有量が、前記水系潤滑剤組成物100質量%に対して10~50質量%である、[1]~[7]のいずれかに記載の水系潤滑剤組成物。
【0015】
[9]
さらに界面活性剤を含有する、[1]~[8]のいずれかに記載の水系潤滑剤組成物。
【0016】
[10]
前記界面活性剤がノニオン系界面活性剤である、[9]に記載の水系潤滑剤組成物。
【発明の効果】
【0017】
本発明の水系潤滑剤組成物は、含有成分である潤滑油成分が水中に良好に分散する、すなわち、乳化性に優れる。さらに、本発明の水系潤滑剤組成物は、金属への熱劣化物の固着が抑えられるため、潤滑剤として用いた場合に、金属金型や機械周りへの潤滑剤由来の熱劣化物の除去作業の回数を抑えられることから、ダイカストのサイクルタイムの短縮、すなわち、作業効率の向上が期待できる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
[水系潤滑剤組成物]
本発明の水系潤滑剤組成物(以下「本組成物」ともいう。)は、所定の要件を満たすエチレン・α-オレフィン共重合体(A)に由来する主鎖部、および所定の要件を満たす不飽和モノマー(B)に由来するグラフト部を有するグラフト変性エチレン・α-オレフィン共重合体(X)と、アミン化合物(Y)と、アルキル変性シリコーンオイルおよびアルキルアラルキル変性シリコーンオイルからなる群より選ばれる少なとも一種のシリコーンオイル(Z)と、水とを含有する。
【0019】
≪グラフト変性エチレン・α-オレフィン共重合体(X)≫
本組成物に含まれる成分の一つであるグラフト変性エチレン・α-オレフィン共重合体(X)(以下「変性共重合体(X)」ともいう。)は、エチレン・α-オレフィン共重合体(A)に由来する主鎖部、および所定の要件を満たす不飽和モノマー(B)に由来するグラフト部を有するグラフト変性共重合体である。
【0020】
変性共重合体(X)は、下記要件(x-1)~(x-5)をいずれか1つ以上満たすことが好ましく、2つ以上同時に満たすことがより好ましく、3つ以上同時に満たすことがさらに好ましく、全て同時に満たすことが特に好ましい。
(x-1)グラフト部の割合が0.1質量%以上70質量%未満である(ただし、主鎖部とグラフト部との合計量を100質量%とする。)。
(x-2)ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により求められる重量平均分子量(Mw)が1,500~30,000である。
(x-3)示差走査熱量分析(DSC)で測定される融点(Tm)が観測されない。
(x-4)100℃における動粘度が10~5,000mm2/sである。
(x-5)ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により求められる分子量分布(Mw/Mn)が2.5以下である。
【0021】
<要件(x-1)>
変性共重合体(X)のグラフト部の割合が、好ましくは0.1質量%以上70質量%未満、より好ましくは0.5~50質量%、さらに好ましくは1.0~30質量%の範囲にある。ただし、前記主鎖部とグラフト部との合計量を100質量%とする。グラフト部の割合が前記範囲にある変性共重合体(X)を用いると、得られる水系潤滑剤組成物の熱劣化物の金属への固着が抑制される傾向にある。
本明細書中、変性共重合体のグラフト部の割合は、例えば、アセチル化法による水酸基価の測定により試料中の水酸基含量の定量を行い、その値から変性に使用された不飽和モノマー(B)の割合を算出することができる。
【0022】
<要件(x-2)>
変性共重合体(X)のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により求められる重量平均分子量(Mw)が、好ましくは1,500~30,000であり、より好ましくは1,500~13,500、さらに好ましくは1,500~11,000である。重量平均分子量が前記範囲にある変性共重合体(X)を用いると、得られる水系潤滑剤組成物の熱劣化物の金属への固着が抑制される傾向にある。
本明細書中、変性(共)重合体および未変性(共)重合体の重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)、分子量分布(Mw/Mn)は、具体的には、後述する実施例に記載の方法に従って測定できる。
【0023】
<要件(x-3)>
変性共重合体(X)の示差走査熱量分析(DSC)で測定される融点(Tm)が、好ましくは観測されない。このような変性共重合体(X)を用いると、得られる水系潤滑剤組成物の熱劣化物の金属への固着が抑制される傾向にある。ここで、融点(Tm)が観測されないとは、示差走査型熱量測定(DSC)で測定される融解熱量(ΔH)(単位:J/g)が実質的に計測されないことをいう。融解熱量(ΔH)が実質的に計測されないとは、示差走査熱量計(DSC)測定においてピークが観測されないか、あるいは観測された融解熱量が1J/g以下であることである。
本明細書中、変性(共)重合体および未変性(共)重合体の融点(Tm)および融解熱量(ΔH)は、示差走査熱量計(例えば、パーキンエルマー社製DSCPyris1またはDSC7)を用いて、-100℃まで冷却してから昇温速度10℃/minで150℃まで昇温したときにDSC曲線をJIS K 7121に従い算出できる。
【0024】
<要件(x-4)>
変性共重合体(X)のJIS K 2283に記載の方法に準拠して測定した、100℃における動粘度が、好ましくは10~5,000mm2/sであり、より好ましくは15~3,500mm2/s、さらに好ましく20~2,500mm2/sである。100℃における動粘度が前記範囲にある変性共重合体(X)を用いると、得られる水系潤滑剤組成物の熱劣化物の金属への固着が抑制される傾向にある。
【0025】
<要件(x-5)>
変性共重合体(X)のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により求められる分子量分布(Mw/Mn)が、好ましくは2.5以下、より好ましくは1.4~2.1、より好ましくは1.5~2.0である。分子量分布が前記範囲にある変性共重合体(X)を用いると、得られる水系潤滑剤組成物の熱劣化物の金属への固着が抑制される傾向にある。
【0026】
<エチレン・α-オレフィン共重合体(A)>
変性共重合体(X)の主鎖部を構成するエチレン・α-オレフィン共重合体(A)(以下「共重合体(A)」ともいう。)は、エチレンとα-オレフィンとの共重合体であり、エチレンと共重合するα-オレフィンとしては、炭素数が3~20のα-オレフィンが挙げられる。前記共重合体(A)は、1種類、または2種類以上用いてもよい。
【0027】
前記炭素数が3~20のα-オレフィンとしては、例えば、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、1-ヘプテン、1-オクテン、1-デセン、1-ドデセン、1-テトラデセン、1-ヘキサデセン、1-エイコセンが挙げられる。これらのうち、プロピレン、1-ブテン、1-ヘキセン、1-オクテンなどの炭素数3~8のα-オレフィンが好ましく、特にプロピレンが好ましい。
【0028】
エチレン・α-オレフィン共重合体(A)を構成するモノマーであるエチレンおよび炭素数が3~20のα-オレフィンは、バイオマス由来の原料から得られたモノマーのみであってもよく、化石燃料由来の原料から得られたモノマーのみであってもよく、バイオマス由来の原料との原料から得られたモノマーと化石燃料由来の原料から得られたモノマーの混合物であってもよい。
【0029】
共重合体(A)は、下記要件(a-1)~(a-3)を満たす。
(a-1)エチレン単位の含有率が30~70モル%である。
(a-2)ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により求められる重量平均分子量(Mw)が1,500~30,000である。
(a-3)示差走査熱量分析(DSC)で測定される融点(Tm)が観測されない。
【0030】
〈要件(a-1)〉
共重合体(A)のエチレン由来の構造単位の含有率(以下、単に「エチレン単位の含有率」ともいう。)は、30~70モル%、好ましくは30~65モル%、より好ましくは39~50モル%、より好ましくは41~48モル%である。ただし、エチレン由来の構造単位の含有率とα-オレフィン由来の構造単位の含有率の合計を100モル%とする。
本明細書中、(共)重合体中の各モノマー由来の構造単位の含有率は、例えば、13C-NMR法により測定し、得られるスペクトルから、G.J.Ray(Macromolecules,10,773(1977))、J.C.Randall(Macromolecules,15,353(1982))、K.Kimura(Polymer,25,4418(1984))らの報告に基づいて求めることができる。具体的には、後述する実施例に記載の方法に従って測定できる。
【0031】
〈要件(a-2)〉
共重合体(A)のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により求められる重量平均分子量(Mw)は、1,500~30,000であり、好ましくは1,500~13,500、より好ましくは1,500~11,000である。
【0032】
〈要件(a-3)〉
共重合体(A)の示差走査熱量分析(DSC)で測定される融点は、観測されない。
【0033】
共重合体(A)は、さらに、下記要件(a-4)および(a-5)のうちいずれかを満たすことが好ましく、下記要件(a-4)および(a-5)の両方を満たすことがより好ましい。
(a-4)100℃における動粘度が10~5,000mm2/sである。
(a-5)ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により求められる分子量分布(Mw/Mn)が2.5以下ある。
【0034】
〈要件(a-4)〉
共重合体(A)のJIS K 2283に記載の方法に準拠して測定した、100℃における動粘度が10~5,000mm2/sであり、好ましくは15~3,500mm2/s、より好ましくは20~2,500mm2/sである。
【0035】
〈要件(a-5)〉
共重合体(A)のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により求められる分子量分布(Mw/Mn)は、特に限定されるものではないが、好ましくは2.5以下、より好ましくは1.4~2.1、より好ましくは1.5~2.0である。
【0036】
〈エチレン・α-オレフィン共重合体(A)の製造方法〉
本発明に係るエチレン・α-オレフィン共重合体(A)の製造方法は特に限定されないが、特公平2-1163号公報、特公平2-7998号公報に記載されているようなバナジウム化合物と有機アルミニウム化合物とからなるバナジウム系触媒を用いる方法が挙げられる。また、高い重合活性で共重合体を製造する方法として特開昭61-221207号公報、特公平7-121969号公報、特許第2796376号公報に記載されているようなジルコノセンなどのメタロセン化合物と有機アルミニウムオキシ化合物(アルミノキサン)からなる触媒系を用いる方法等を用いてもよく、この方法は、得られる共重合体の塩素含量、およびα-オレフィンの2,1-挿入が低減できるため、より好ましい。
【0037】
バナジウム系触媒を用いる方法では、メタロセン系触媒を用いる方法に比較し、助触媒に塩素化合物をより多く使用するため、得られる共重合体(A)中に微量の塩素が残存する可能性が高い。一方、メタロセン系触媒を用いる方法では、実質的に塩素を残存させないため、塩素による樹脂組成物の劣化を防止できる点で好ましい。塩素含量は100ppm以下であることが好ましく、50ppm以下であることがより好ましく、20ppm以下であることがさらに好ましく、5ppm以下であることが特に好ましい。
塩素含量は種々の公知の方法で定量することができる。例えば、サーモフィッシャーサイエンティフィック社ICS-1600を用い、共重合体を、試料ボートに入れてAr/O2気流中、燃焼炉設定温度900℃にて燃焼分解し、このときの発生ガスを吸収液に吸収させ、イオンクロマトグラフ法にて定量する方法などがある。
【0038】
特に以下のような方法を用いることにより、分子量制御、分子量分布、非晶性などの点において良好な性能バランスを有する共重合体(A)が得られる。
【0039】
共重合体(A)は、下記一般式[I]で表される架橋メタロセン化合物(P)、ならびに、有機金属化合物(Q-1)、有機アルミニウムオキシ化合物(Q-2)および前記架橋メタロセン化合物(P)と反応してイオン対を形成する化合物(Q-3)からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物(Q)を含むオレフィン重合触媒の存在下で、エチレンと炭素数が3~20のα-オレフィンとを共重合することにより製造することができる。
【0040】
【化1】
【0041】
〔架橋メタロセン化合物(P)〕
架橋メタロセン化合物(P)は、上記式[I]で表される。式[I]中のY、M、R1~R14、Q、nおよびjを以下に説明する。
【0042】
(Y、M、R1~R14、Q、nおよびj)
Yは、第14族原子であり、例えば、炭素原子、ケイ素原子、ゲルマニウム原子およびスズ原子が挙げられ、好ましくは炭素原子またはケイ素原子であり、より好ましくは炭素原子である。
【0043】
Mは、チタン原子、ジルコニウム原子またはハフニウム原子であり、好ましくはジルコニウム原子である。
【0044】
1~R14は、水素原子、炭素数1~20の炭化水素基、ケイ素含有基、窒素含有基、酸素含有基、ハロゲン原子およびハロゲン含有基からなる群より選ばれる原子または置換基であり、それぞれ同一でも異なっていてもよい。また、R1からR14までの隣接した置換基は互いに結合して環を形成していてもよく、互いに結合していなくてもよい。
【0045】
ここで、炭素数1~20の炭化水素基としては、炭素数1~20のアルキル基、炭素数3~20の環状飽和炭化水素基、炭素数2~20の鎖状不飽和炭化水素基、炭素数3~20の環状不飽和炭化水素基、炭素数1~20のアルキレン基、炭素数6~20のアリーレン基等が例示される。
【0046】
炭素数1~20のアルキル基としては、直鎖状飽和炭化水素基であるメチル基、エチル基、n-プロピル基、アリル(allyl)基、n-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基、n-ノニル基、n-デカニル基など、分岐状飽和炭化水素基であるイソプロピル基、イソブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基、t-アミル基、ネオペンチル基、3-メチルペンチル基、1,1-ジエチルプロピル基、1,1-ジメチルブチル基、1-メチル-1-プロピルブチル基、1,1-プロピルブチル基、1,1-ジメチル-2-メチルプロピル基、1-メチル-1-イソプロピル-2-メチルプロピル基、シクロプロピルメチル基などが例示される。アルキル基の炭素数は好ましくは1~6である。
【0047】
炭素数3~20の環状飽和炭化水素基としては、環状飽和炭化水素基であるシクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、ノルボルネニル基、1-アダマンチル基、2-アダマンチル基など、環状飽和炭化水素基の水素原子が炭素数1~17の炭化水素基で置き換えられた基である3-メチルシクロペンチル基、3-メチルシクロヘキシル基、4-メチルシクロヘキシル基、4-シクロヘキシルシクロヘキシル基、4-フェニルシクロヘキシル基などが例示される。環状飽和炭化水素基の炭素数は好ましくは5~11である。
【0048】
炭素数2~20の鎖状不飽和炭化水素基としては、アルケニル基であるエテニル基(ビニル基)、1-プロペニル基、2-プロペニル基(アリル基)、1-メチルエテニル基(イソプロペニル基)など、アルキニル基であるエチニル基、1-プロピニル基、2-プロピニル基(プロパルギル基)などが例示される。鎖状不飽和炭化水素基の炭素数は好ましくは2~4である。
【0049】
炭素数3~20の環状不飽和炭化水素基としては、環状不飽和炭化水素基であるシクロペンタジエニル基、ノルボルニル基、フェニル基、ナフチル基、インデニル基、アズレニル基、フェナントリル基、アントラセニル基など、環状不飽和炭化水素基の水素原子が炭素数1~15の炭化水素基で置き換えられた基である3-メチルフェニル基(m-トリル基)、4-メチルフェニル基(p-トリル基)、4-エチルフェニル基、4-t-ブチルフェニル基、4-シクロヘキシルフェニル基、ビフェニリル基、3,4-ジメチルフェニル基、3,5-ジメチルフェニル基、2,4,6-トリメチルフェニル基(メシチル基)など、直鎖状炭化水素基または分岐状飽和炭化水素基の水素原子が炭素数3~19の環状飽和炭化水素基または環状不飽和炭化水素基で置き換えられた基であるベンジル基、クミル基などが例示される。環状不飽和炭化水素基の炭素数は好ましくは6~10である。
【0050】
炭素数1~20のアルキレン基としては、メチレン基、エチレン基、ジメチルメチレン基(イソプロピリデン基)、エチルメチレン基、メチルエチレン基、n-プロピレン基などが例示される。アルキレン基の炭素数は好ましくは1~6である。
【0051】
炭素数6~20のアリーレン基としては、o-フェニレン基、m-フェニレン基、p-フェニレン基、4,4'-ビフェニリレン基などが例示される。アリ-レン基の炭素数は好ましくは6~12である。
【0052】
ケイ素含有基としては、炭素数1~20の炭化水素基において、炭素原子がケイ素原子で置き換えられた基であるトリメチルシリル基、トリエチルシリル基、t-ブチルジメチルシリル基、トリイソプロピルシリル基等のアルキルシリル基、ジメチルフェニルシリル基、メチルジフェニルシリル基、t-ブチルジフェニルシリル基等のアリールシリル基、ペンタメチルジシラニル基、トリメチルシリルメチル基などが例示される。アルキルシリル基の炭素数は1~10が好ましく、アリールシリル基の炭素数は6~18が好ましい。
【0053】
窒素含有基としては、アミノ基や、上述した炭素数1~20の炭化水素基またはケイ素含有基において、=CH-構造単位が窒素原子で置き換えられた基、-CH2-構造単位が炭素数1~20の炭化水素基が結合した窒素原子で置き換えられた基、または-CH3構造単位が炭素数1~20の炭化水素基が結合した窒素原子またはニトリル基で置き換えられた基であるジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、N-モルフォリニル基、ジメチルアミノメチル基、シアノ基、ピロリジニル基、ピペリジニル基、ピリジニル基など、N-モルフォリニル基およびニトロ基などが例示される。窒素含有基としては、ジメチルアミノ基、N-モルフォリニル基が好ましい。
【0054】
酸素含有基としては、水酸基や、上述した炭素数1~20の炭化水素基、ケイ素含有基または窒素含有基において、-CH2-構造単位が酸素原子またはカルボニル基で置き換えられた基、または-CH3構造単位が炭素数1~20の炭化水素基が結合した酸素原子で置き換えられた基であるメトキシ基、エトキシ基、t-ブトキシ基、フェノキシ基、トリメチルシロキシ基、メトキシエトキシ基、ヒドロキシメチル基、メトキシメチル基、エトキシメチル基、t-ブトキシメチル基、1-ヒドロキシエチル基、1-メトキシエチル基、1-エトキシエチル基、2-ヒドロキシエチル基、2-メトキシエチル基、2-エトキシエチル基、n-2-オキサブチレン基、n-2-オキサペンチレン基、n-3-オキサペンチレン基、アルデヒド基、アセチル基、プロピオニル基、ベンゾイル基、トリメチルシリルカルボニル基、カルバモイル基、メチルアミノカルボニル基、カルボキシ基、メトキシカルボニル基、カルボキシメチル基、エトカルボキシメチル基、カルバモイルメチル基、フラニル基、ピラニル基などが例示される。酸素含有基としては、メトキシ基が好ましい。
【0055】
ハロゲン原子としては、第17族元素であるフッ素、塩素、臭素、ヨウ素などが例示される。
【0056】
ハロゲン含有基としては、上述した炭素数1~20の炭化水素基、ケイ素含有基、窒素含有基または酸素含有基において、水素原子がハロゲン原子によって置換された基であるトリフルオロメチル基、トリブロモメチル基、ペンタフルオロエチル基、ペンタフルオロフェニル基などが例示される。
【0057】
Qは、ハロゲン原子、炭素数1~20の炭化水素基、アニオン配位子および孤立電子対で配位可能な中性配位子から、同一のまたは異なる組合せで選ばれる。
ハロゲン原子および炭素数1~20の炭化水素基の詳細は、上述のとおりである。Qがハロゲン原子である場合は、塩素原子が好ましい。Qが炭素数1~20の炭化水素基である場合は、該炭化水素基の炭素数は1~7であることが好ましい。
【0058】
アニオン配位子としては、メトキシ基、t-ブトキシ基、フェノキシ基などのアルコキシ、アセテート、ベンゾエートなどのカルボキシレート基、メシレート、トシレートなどのスルホネート基などを例示することができる。
【0059】
孤立電子対で配位可能な中性配位子としては、トリメチルホスフィン、トリエチルホスフィン、トリフェニルホスフィン、ジフェニルメチルホスフィンなどの有機リン化合物、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、ジオキサン、1,2-ジメトキシエタンなどのエーテル化合物などを例示することができる。
【0060】
jは1~4の整数であり、好ましくは2である。
nは1~4の整数であり、好ましくは1または2であり、さらに好ましくは1である。
13およびR14は水素原子、炭素数1~20の炭化水素基、アリール基、置換アリール基、ケイ素含有基、窒素含有基、酸素含有基、ハロゲン原子およびハロゲン含有基からなる群より選ばれる原子または置換基であり、それぞれ同一でも異なっていてもよい。また、R13およびR14は互いに結合して環を形成していてもよく、互いに結合していなくてもよい。
【0061】
炭素数1~20の炭化水素基、ケイ素含有基、窒素含有基、酸素含有基、ハロゲン原子およびハロゲン含有基の詳細については、上述の通りである。
アリール基としては、前述した炭素数3~20の環状不飽和炭化水素基の例と一部重複するが、芳香族化合物から誘導された置換基であるフェニル基、1-ナフチル基、2-ナフチル基、アントラセニル基、フェナントレニル基、テトラセニル基、クリセニル基、ピレニル基、インデニル基、アズレニル基、ピロリル基、ピリジル基、フラニル基、チオフェニル基などが例示される。アリール基としては、フェニル基または2-ナフチル基が好ましい。
【0062】
前記芳香族化合物としては、芳香族炭化水素および複素環式芳香族化合物であるベンゼン、ナフタレン、アントラセン、フェナントレン、テトラセン、クリセン、ピレン、インデン、アズレン、ピロール、ピリジン、フラン、チオフェンなどが例示される。
【0063】
置換アリール基としては、前述した炭素数3~20の環状不飽和炭化水素基の例と一部重複するが、前記アリール基が有する1以上の水素原子が炭素数1~20の炭化水素基、アリール基、ケイ素含有基、窒素含有基、酸素含有基、ハロゲン原子およびハロゲン含有基からなる群より選ばれる少なくとも1種の置換基により置換されてなる基が挙げられ、具体的には3-メチルフェニル基(m-トリル基)、4-メチルフェニル基(p-トリル基)、3-エチルフェニル基、4-エチルフェニル基、3,4-ジメチルフェニル基、3,5-ジメチルフェニル基、ビフェニリル基、4-(トリメチルシリル)フェニル基、4-アミノフェニル基、4-(ジメチルアミノ)フェニル基、4-(ジエチルアミノ)フェニル基、4-モルフォリニルフェニル基、4-メトキシフェニル基、4-エトキシフェニル基、4-フェノキシフェニル基、3,4-ジメトキシフェニル基、3,5-ジメトキシフェニル基、3-メチル-4-メトキシフェニル基、3,5-ジメチル-4-メトキシフェニル基、3-(トリフルオロメチル)フェニル基、4-(トリフルオロメチル)フェニル基、3-クロロフェニル基、4-クロロフェニル基、3-フルオロフェニル基、4-フルオロフェニル基、5-メチルナフチル基、2-(6-メチル)ピリジル基などが例示される。
【0064】
中でも、R13およびR14のいずれか一方または両方が独立してアリール基である架橋メタロセン化合物(P)が好ましく、両方が独立してアリール基である架橋メタロセン化合物(P)がより好ましい。
【0065】
特に、R13およびR14の両方が独立してアリール基である架橋メタロセン化合物(P)は、エチレンとα-オレフィンとの共重合に対する重合活性が高く、この架橋メタロセン化合物(P)を用いることで分子末端への水素導入により重合が選択的に停止するため、得られる共重合体(A)の不飽和結合が少なくなる。このため、より簡便な水素添加操作を行うだけで、または水素添加操作を行わなくても、飽和度が高く耐熱性に優れた共重合体(A)を得ることができ、コストの面でも優れる。また、該化合物(P)から得られる共重合体(A)は、ランダム共重合性が高いため、制御された分子量分布を有する。このため、共重合体(A)に、下記不飽和モノマー(B)をグラフト変性してなる共重合体(A)に由来する主鎖部と、不飽和モノマー(B)に由来するブラフト部とを有するグラフト変性共重合体(X)含む本組成物は、消泡性と耐ブリードアウト性が高い水準でバランス良く優れると考えられる。
【0066】
前記式[I]で表される架橋メタロセン化合物(P)において、nは1であることが好ましい。このような架橋メタロセン化合物(以下「架橋メタロセン化合物(P-1)」ともいう。)は、下記一般式[II]で表わされる。
【0067】
【化2】
【0068】
式[II]において、Y、M、R1~R14、Qおよびjの定義などは、上述の通りである。
【0069】
架橋メタロセン化合物(P-1)は、上記式[I]におけるnが2~4の整数である化合物に比べ、製造工程が簡素化され、製造コストが低減され、ひいてはこの架橋メタロセン化合物(P-1)を用いることで共重合体(A)の製造コストが低減されるという利点が得られる。
【0070】
上記一般式[I]で表される架橋メタロセン化合物(P)、上記一般式[II]で表される架橋メタロセン化合物(P-1)において、Mはジルコニウム原子であることがさらに好ましい。Mがジルコニウム原子である上記架橋メタロセン化合物を含むオレフィン重合触媒の存在下でエチレンと炭素数3~20のα-オレフィンから選ばれる1種以上のモノマーとを共重合する場合、Mがチタン原子またはハフニウム原子である場合に比べ重合活性が高く、共重合体(B)の製造コストが低減されるという利点が得られる。
【0071】
このような架橋メタロセン化合物(P)としては、
[ジメチルメチレン(η5-シクロペンタジエニル)(η5-フルオレニル)]ジルコニウムジクロリド、[ジメチルメチレン(η5-シクロペンタジエニル)(η5-2,7-ジ-t-ブチルフルオレニル)]ジルコニウムジクロリド、[ジメチルメチレン(η5-シクロペンタジエニル)(η5-3,6-ジ-t-ブチルフルオレニル)]ジルコニウムジクロリド、[ジメチルメチレン(η5-シクロペンタジエニル)(η5-オクタメチルオクタヒドロジベンゾフルオレニル)]ジルコニウムジクロリド、[ジメチルメチレン(η5-シクロペンタジエニル)(η5-テトラメチルオクタヒドロジベンゾフルオレニル)]ジルコニウムジクロリド、
[シクロヘキシリデン(η5-シクロペンタジエニル)(η5-フルオレニル)]ジルコニウムジクロリド、[シクロヘキシリデン(η5-シクロペンタジエニル)(η5-2,7-ジ-t-ブチルフルオレニル)]ジルコニウムジクロリド、[シクロヘキシリデン(η5-シクロペンタジエニル)(η5-3,6-ジ-t-ブチルフルオレニル)]ジルコニウムジクロリド、[シクロヘキシリデン(η5-シクロペンタジエニル)(η5-オクタメチルオクタヒドロジベンゾフルオレニル)]ジルコニウムジクロリド、[シクロヘキシリデン(η5-シクロペンタジエニル)(η5-テトラメチルオクタヒドロジベンゾフルオレニル)]ジルコニウムジクロリド、
[ジフェニルメチレン(η5-シクロペンタジエニル)(η5-フルオレニル)]ジルコニウムジクロリド、[ジフェニルメチレン(η5-シクロペンタジエニル)(η5-2,7-ジ-t-ブチルフルオレニル)]ジルコニウムジクロリド、[ジフェニルメチレン(η5-2-メチル-4-t-ブチルシクロペンタジエニル)(η5-2,7-ジ-t-ブチルフルオレニル)]ジルコニウムジクロリド、[ジフェニルメチレン(η5-シクロペンタジエニル)(η5-3,6-ジ-t-ブチルフルオレニル)]ジルコニウムジクロリド、[ジフェニルメチレン(η5-シクロペンタジエニル)(η5-オクタメチルオクタヒドロジベンゾフルオレニル)]ジルコニウムジクロリド、[ジフェニルメチレン{η5-(2-メチル-4-i-プロピルシクロペンタジエニル)}(η5-オクタメチルオクタヒドロジベンゾフルオレニル)]ジルコニウムジクロリド、[ジフェニルメチレン(η5-シクロペンタジエニル)(η5-テトラメチルオクタヒドロジベンゾフルオレニル)]ジルコニウムジクロリド、
[メチルフェニルメチレン(η5-シクロペンタジエニル)(η5-フルオレニル)]ジルコニウムジクロリド、[メチルフェニルメチレン(η5-シクロペンタジエニル)(η5-2,7-ジ-t-ブチルフルオレニル)]ジルコニウムジクロリド、[メチルフェニルメチレン(η5-シクロペンタジエニル)(η5-3,6-ジ-t-ブチルフルオレニル)]ジルコニウムジクロリド、[メチルフェニルメチレン(η5-シクロペンタジエニル)(η5-オクタメチルオクタヒドロジベンゾフルオレニル)]ジルコニウムジクロリド、[メチルフェニルメチレン(η5-シクロペンタジエニル)(η5-テトラメチルオクタヒドロジベンゾフルオレニル)]ジルコニウムジクロリド、
[メチル(3-メチルフェニル)メチレン(η5-シクロペンタジエニル)(η5-フルオレニル)]ジルコニウムジクロリド、[メチル(3-メチルフェニル)メチレン(η5-シクロペンタジエニル)(η5-2,7-ジ-t-ブチルフルオレニル)]ジルコニウムジクロリド、[メチル(3-メチルフェニル)メチレン(η5-シクロペンタジエニル)(η5-3,6-ジ-t-ブチルフルオレニル)]ジルコニウムジクロリド、[メチル(3-メチルフェニル)メチレン(η5-シクロペンタジエニル)(η5-オクタメチルオクタヒドロジベンゾフルオレニル)]ジルコニウムジクロリド、[メチル(3-メチルフェニル)メチレン(η5-シクロペンタジエニル)(η5-テトラメチルオクタヒドロジベンゾフルオレニル)]ジルコニウムジクロリド、
[メチル(4-メチルフェニル)メチレン(η5-シクロペンタジエニル)(η5-フルオレニル)]ジルコニウムジクロリド、[メチル(4-メチルフェニル)メチレン(η5-シクロペンタジエニル)(η5-2,7-ジ-t-ブチルフルオレニル)]ジルコニウムジクロリド、[メチル(4-メチルフェニル)メチレン(η5-シクロペンタジエニル)(η5-3,6-ジ-t-ブチルフルオレニル)]ジルコニウムジクロリド、[メチル(4-メチルフェニル)メチレン(η5-シクロペンタジエニル)(η5-オクタメチルオクタヒドロジベンゾフルオレニル)]ジルコニウムジクロリド、[メチル(4-メチルフェニル)メチレン(η5-シクロペンタジエニル)(η5-テトラメチルオクタヒドロジベンゾフルオレニル)]ジルコニウムジクロリド、
[ジフェニルシリレン(η5-シクロペンタジエニル)(η5-フルオレニル)]ジルコニウムジクロリド、[ジフェニルシリレン(η5-シクロペンタジエニル)(η5-2,7-ジ-t-ブチルフルオレニル)]ジルコニウムジクロリド、[ジフェニルシリレン(η5-シクロペンタジエニル)(η5-3,6-ジ-t-ブチルフルオレニル)]ジルコニウムジクロリド、[ジフェニルシリレン(η5-シクロペンタジエニル)(η5-オクタメチルオクタヒドロジベンゾフルオレニル)]ジルコニウムジクロリド、[ジフェニルシリレン(η5-シクロペンタジエニル)(η5-テトラメチルオクタヒドロジベンゾフルオレニル)]ジルコニウムジクロリド、
[ビス(3-メチルフェニル)シリレン(η5-シクロペンタジエニル)(η5-フルオレニル)]ジルコニウムジクロリド、[ビス(3-メチルフェニル)シリレン(η5-シクロペンタジエニル)(η5-2,7-ジ-t-ブチルフルオレニル)]ジルコニウムジクロリド、[ビス(3-メチルフェニル)シリレン(η5-シクロペンタジエニル)(η5-3,6-ジ-t-ブチルフルオレニル)]ジルコニウムジクロリド、[ビス(3-メチルフェニル)シリレ(η5-シクロペンタジエニル)(η5-オクタメチルオクタヒドロジベンゾフルオレニル)]ジルコニウムジクロリド、[ビス(3-メチルフェニル)シリレン(η5-シクロペンタジエニル)(η5-テトラメチルオクタヒドロジベンゾフルオレニル)]ジルコニウムジクロリド、
[ジシクロヘキシルシリレン(η5-シクロペンタジエニル)(η5-フルオレニル)]ジルコニウムジクロリド、[ジシクロヘキシルシリレン(η5-シクロペンタジエニル)(η5-2,7-ジ-t-ブチルフルオレニル)]ジルコニウムジクロリド、[ジシクロヘキシルシリレン(η5-シクロペンタジエニル)(η5-3,6-ジ-t-ブチルフルオレニル)]ジルコニウムジクロリド、[ジシクロヘキシルシリレン(η5-シクロペンタジエニル)(η5-オクタメチルオクタヒドロジベンゾフルオレニル)]ジルコニウムジクロリド、[ジシクロヘキシルシリレン(η5-シクロペンタジエニル)(η5-テトラメチルオクタヒドロジベンゾフルオレニル)]ジルコニウムジクロリド、
[エチレン(η5-シクロペンタジエニル)(η5-フルオレニル)]ジルコニウムジクロリド、[エチレン(η5-シクロペンタジエニル)(η5-2,7-ジ-t-ブチルフルオレニル)]ジルコニウムジクロリド、[エチレン(η5-シクロペンタジエニル)(η5-3,6-ジ-t-ブチルフルオレニル)]ジルコニウムジクロリド、[エチレン(η5-シクロペンタジエニル)(η5-オクタメチルオクタヒドロジベンゾフルオレニル)]ジルコニウムジクロリド、[エチレン(η5-シクロペンタジエニル)(η5-テトラメチルオクタヒドロジベンゾフルオレニル)]ジルコニウムジクロリド、
エチレン[η5-(3-tert-ブチル-5-メチルシクロペンタジエニル)](η5-フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、エチレン[η5-(3-tert-ブチル-5-メチルシクロペンタジエニル)][η5-(3,6-ジ-tert-ブチルフルオレニル)]ジルコニウムジクロリド、エチレン[η5-(3-tert-ブチル-5-メチルシクロペンタジエニル)][η5-(2,7-ジ-tert-ブチルフルオレニル)]ジルコニウムジクロリド、エチレン[η5-(3-tert-ブチル-5-メチルシクロペンタジエニル)](オクタメチルオクタヒドロジベンズフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、エチレン[η5-(3-tert-ブチル-5-メチルシクロペンタジエニル)](ベンゾフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、エチレン[η5-(3-tert-ブチル-5-メチルシクロペンタジエニル)](ジベンゾフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、エチレン[η5-(3-tert-ブチル-5-メチルシクロペンタジエニル)](オクタヒドロジベンゾフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、エチレン[η5-(3-tert-ブチル-5-メチルシクロペンタジエニル)][η5-(2,7-ジフェニル-3,6-ジ-tert-ブチルフルオレニル)]ジルコニウムジクロリド、エチレン[η5-(3-tert-ブチル-5-メチルシクロペンタジエニル)][η5-(2,7-ジメチル-3,6-ジ-tert-ブチルフルオレニル)]ジルコニウムジクロリド、
エチレン[η5-(3-tert-ブチルシクロペンタジエニル)](η5-フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、エチレン[η5-(3-tert-ブチルシクロペンタジエニル)][η5-(3,6-ジ-tert-ブチルフルオレニル)]ジルコニウムジクロリド、エチレン[η5-(3-tert-ブチルシクロペンタジエニル)][η5-(2,7-ジ-tert-ブチルフルオレニル)]ジルコニウムジクロリド、エチレン[η5-(3-tert-ブチルシクロペンタジエニル)](オクタメチルオクタヒドロジベンズフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、エチレン[η5-(3-tert-ブチルシクロペンタジエニル)](ベンゾフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、エチレン[η5-(3-tert-ブチルシクロペンタジエニル)](ジベンゾフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、エチレン[η5-(3-tert-ブチルシクロペンタジエニル)](オクタヒドロジベンゾフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、エチレン[η5-(3-tert-ブチルシクロペンタジエニル)][η5-(2,7-ジフェニル-3,6-ジ-tert-ブチルフルオレニル)]ジルコニウムジクロリド、エチレン[η5-(3-tert-ブチルシクロペンタジエニル)][η5-(2,7-ジメチル-3,6-ジ-tert-ブチルフルオレニル)]ジルコニウムジクロリド、
エチレン[η5-(3-n-ブチルシクロペンタジエニル)](η5-フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、エチレン[η5-(3-n-ブチルシクロペンタジエニル)][η5-(,6-ジ-tert-ブチルフルオレニル)]ジルコニウムジクロリド、エチレン[η5-(3-n-ブチルシクロペンタジエニル)][η5-(2,7-ジ-tert-ブチルフルオレニル)]ジルコニウムジクロリド、エチレン[η5-(3-n-ブチルシクロペンタジエニル)](オクタメチルオクタヒドロジベンズフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、エチレン[η5-(3-n-ブチルシクロペンタジエニル)](ベンゾフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、エチレン[η5-(3-n-ブチルシクロペンタジエニル)](ジベンゾフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、エチレン[η5-(3-n-ブチルシクロペンタジエニル)](オクタヒドロジベンゾフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、エチレン[η5-(3-n-ブチルシクロペンタジエニル)][η5-(2,7-ジフェニル-3,6-ジ-tert-ブチルフルオレニル)]ジルコニウムジクロリド、エチレン[η5-(3-n-ブチルシクロペンタジエニル)][η5-(2,7-ジメチル-3,6-ジ-tert-ブチルフルオレニル)]ジルコニウムジクロリド、
ジフェニルメチレン[η5-(3-tert-ブチル-5-メチルシクロペンタジエニル)](η5-フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジフェニルメチレン[η5-(3-tert-ブチル-5-メチルシクロペンタジエニル)][η5-(3,6-ジ-tert-ブチルフルオレニル)]ジルコニウムジクロリド、ジフェニルメチレン[η5-(3-tert-ブチル-5-メチルシクロペンタジエニル)][η5-(2,7-ジ-tert-ブチルフルオレニル)]ジルコニウムジクロリド、ジフェニルメチレン[η5-(3-tert-ブチル-5-メチルシクロペンタジエニル)](オクタメチルオクタヒドロジベンズフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジフェニルメチレン[η5-(3-tert-ブチル-5-メチルシクロペンタジエニル)](ベンゾフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジフェニルメチレン[η5-(3-tert-ブチル-5-メチルシクロペンタジエニル)](ジベンゾフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジフェニルメチレン[η5-(3-tert-ブチル-5-メチルシクロペンタジエニル)](オクタヒドロジベンゾフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジフェニルメチレン[η5-(3-tert-ブチル-5-メチルシクロペンタジエニル)][η5-(2,7-ジフェニル-3,6-ジ-tert-ブチルフルオレニル)]ジルコニウムジクロリド、ジフェニルメチレン[η5-(3-tert-ブチル-5-メチルシクロペンタジエニル)][η5-(2,7-ジメチル-3,6-ジ-tert-ブチルフルオレニル)]ジルコニウムジクロリド、
ジフェニルメチレン[η5-(3-tert-ブチルシクロペンタジエニル)](η5-フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジフェニルメチレン[η5-(3-tert-ブチルシクロペンタジエニル)][η5-(3,6-ジ-tert-ブチルフルオレニル)]ジルコニウムジクロリド、ジフェニルメチレン[η5-(3-tert-ブチルシクロペンタジエニル)][η5-(2,7-ジ-tert-ブチルフルオレニル)]ジルコニウムジクロリド、ジフェニルメチレン[η5-(3-tert-ブチルシクロペンタジエニル)](オクタメチルオクタヒドロジベンズフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジフェニルメチレン[η5-(3-tert-ブチルシクロペンタジエニル)](ベンゾフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジフェニルメチレン[η5-(3-tert-ブチルシクロペンタジエニル)](ジベンゾフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジフェニルメチレン[η5-(3-tert-ブチルシクロペンタジエニル)](オクタヒドロジベンゾフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジフェニルメチレン[η5-(3-tert-ブチルシクロペンタジエニル)][η5-(2,7-ジフェニル-3,6-ジ-tert-ブチルフルオレニル)]ジルコニウムジクロリド、ジフェニルメチレン[η5-(3-tert-ブチルシクロペンタジエニル)][η5-(2,7-ジメチル-3,6-ジ-tert-ブチルフルオレニル)]ジルコニウムジクロリド、
ジフェニルメチレン[η5-(3-n-ブチルシクロペンタジエニル)](η5-フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジフェニルメチレン[η5-(3-n-ブチルシクロペンタジエニル)][η5-(3,6-ジ-tert-ブチルフルオレニル)]ジルコニウムジクロリド、ジフェニルメチレン[η5-(3-n-ブチルシクロペンタジエニル)][η5-(2,7-ジ-tert-ブチルフルオレニル)]ジルコニウムジクロリド、ジフェニルメチレン[η5-(3-n-ブチルシクロペンタジエニル)](オクタメチルオクタヒドロジベンズフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジフェニルメチレン[η5-(3-n-ブチルシクロペンタジエニル)](ベンゾフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジフェニルメチレン[η5-(3-n-ブチルシクロペンタジエニル)](ジベンゾフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジフェニルメチレン[η5-(3-n-ブチルシクロペンタジエニル)](オクタヒドロジベンゾフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジフェニルメチレン[η5-(3-n-ブチルシクロペンタジエニル)][η5-(2,7-ジフェニル-3,6-ジ-tert-ブチルフルオレニル)]ジルコニウムジクロリド、ジフェニルメチレン[η5-(3-n-ブチルシクロペンタジエニル)][η5-(2,7-ジメチル-3,6-ジ-tert-ブチルフルオレニル)]ジルコニウムジクロリド、
ジ(p-トリル)メチレン[η5-(3-tert-ブチル-5-メチルシクロペンタジエニル)](η5-フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(p-トリル)メチレン[η5-(3-tert-ブチル-5-メチルシクロペンタジエニル)][η5-(3,6-ジ-tert-ブチルフルオレニル)]ジルコニウムジクロリド、ジ(p-トリル)メチレン[η5-(3-tert-ブチル-5-メチルシクロペンタジエニル)][η5-(2,7-ジ-tert-ブチルフルオレニル)]ジルコニウムジクロリド、ジ(p-トリル)メチレン[η5-(3-tert-ブチル-5-メチルシクロペンタジエニル)](オクタメチルオクタヒドロジベンズフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(p-トリル)メチレン[η5-(3-tert-ブチル-5-メチルシクロペンタジエニル)](ベンゾフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(p-トリル)メチレン[η5-(3-tert-ブチル-5-メチルシクロペンタジエニル)](ジベンゾフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(p-トリル)メチレン[η5-(3-tert-ブチル-5-メチルシクロペンタジエニル)](オクタヒドロジベンゾフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(p-トリル)メチレン[η5-(3-tert-ブチル-5-メチルシクロペンタジエニル)][η5-(2,7-ジフェニル-3,6-ジ-tert-ブチルフルオレニル)]ジルコニウムジクロリド、ジ(p-トリル)メチレン[η5-(3-tert-ブチル-5-メチルシクロペンタジエニル)][η5-(2,7-ジメチル-3,6-ジ-tert-ブチルフルオレニル)]ジルコニウムジクロリド、
ジ(p-トリル)メチレン[η5-(3-tert-ブチルシクロペンタジエニル)](η5-フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(p-トリル)メチレン[η5-(3-tert-ブチルシクロペンタジエニル)][η5-(3,6-ジ-tert-ブチルフルオレニル)]ジルコニウムジクロリド、ジ(p-トリル)メチレン[η5-(3-tert-ブチルシクロペンタジエニル)][η5-(2,7-ジ-tert-ブチルフルオレニル)]ジルコニウムジクロリド、ジ(p-トリル)メチレン[η5-(3-tert-ブチルシクロペンタジエニル)](オクタメチルオクタヒドロジベンズフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(p-トリル)メチレン[η5-(3-tert-ブチルシクロペンタジエニル)](ベンゾフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(p-トリル)メチレン[η5-(3-tert-ブチルシクロペンタジエニル)](ジベンゾフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(p-トリル)メチレン[η5-(3-tert-ブチルシクロペンタジエニル)](オクタヒドロジベンゾフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(p-トリル)メチレン[η5-(3-tert-ブチルシクロペンタジエニル)][η5-(2,7-ジフェニル-3,6-ジ-tert-ブチルフルオレニル)]ジルコニウムジクロリド、ジ(p-トリル)メチレン[η5-(3-tert-ブチルシクロペンタジエニル)][η5-(2,7-ジメチル-3,6-ジ-tert-ブチルフルオレニル)]ジルコニウムジクロリド、
ジ(p-トリル)メチレン[η5-(3-n-ブチルシクロペンタジエニル)](η5-フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(p-トリル)メチレン[η5-(3-n-ブチルシクロペンタジエニル)][η5-(3,6-ジ-tert-ブチルフルオレニル)]ジルコニウムジクロリド、ジ(p-トリル)メチレン[η5-(3-n-ブチルシクロペンタジエニル)][η5-(2,7-ジ-tert-ブチルフルオレニル)]ジルコニウムジクロリド、ジ(p-トリル)メチレン[η5-(3-n-ブチルシクロペンタジエニル)](オクタメチルオクタヒドロジベンズフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(p-トリル)メチレン[η5-(3-n-ブチルシクロペンタジエニル)](ベンゾフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(p-トリル)メチレン[η5-(3-n-ブチルシクロペンタジエニル)](ジベンゾフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(p-トリル)メチレン[η5-(3-n-ブチルシクロペンタジエニル)](オクタヒドロジベンゾフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(p-トリル)メチレン[η5-(3-n-ブチルシクロペンタジエニル)](2,7-ジフェニル-3,6-ジ-tert-ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(p-トリル)メチレン[η5-(3-n-ブチルシクロペンタジエニル)][η5-(2,7-ジメチル-3,6-ジ-tert-ブチルフルオレニル)]ジルコニウムジクロリドが挙げられる。
【0072】
架橋メタロセン化合物(P)としては、さらに、前記化合物のジルコニウム原子をハフニウム原子やチタン原子に置き換えた化合物、クロロ配位子をメチル基に置き換えた化合物などが例示される。なお、例示した架橋メタロセン化合物(P)の構成部分であるη5-テトラメチルオクタヒドロジベンゾフルオレニルは4,4,7,7-テトラメチル-(5a,5b,11a,12,12a-η5)-1,2,3,4,7,8,9,10-オクタヒドロジベンゾ[b,H]フルオレニル基、η5-オクタメチルオクタヒドロジベンゾフルオレニルは1,1,4,4,7,7,10,10-オクタメチル-(5a,5b,11a,12,12a-η5)-1,2,3,4,7,8,9,10-オクタヒドロジベンゾ[b,H]フルオレニル基をそれぞれ表わす。
前記架橋メタロセン化合物(P)は、1種単独で使用してもよく、2種以上を使用してもよい。
【0073】
〔化合物(Q)〕
本発明にかかる化合物(Q)は、有機金属化合物(Q-1)、有機アルミニウムオキシ化合物(Q-2)および前記架橋メタロセン化合物(P)と反応してイオン対を形成する化合物(Q-3)からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物である。
有機金属化合物(Q-1)として、具体的には下記のような周期律表第1、2族および第12、13族の有機金属化合物(Q-1a)、(Q-1b)、(Q-1c)が用いられる。
【0074】
(Q-1a)一般式 Ra mAl(ORbnpq で表される有機アルミニウム化合物。
(式中、RaおよびRbは、互いに同一でも異なっていてもよく、炭素数1~15、好ましくは1~4の炭化水素基を示し、Xはハロゲン原子を示し、mは0<m≦3、nは0≦n<3、pは0≦p<3、qは0≦q<3の数であり、かつm+n+p+q=3である。)
【0075】
このような化合物として、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリ-n-ブチルアルミニウム、トリ-n-ヘキシルアルミニウム、トリ-n-オクチルアルミニウムなどのトリ-n-アルキルアルミニウム、トリイソプロピルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリsec-ブチルアルミニウム、トリ-t-ブチルアルミニウム、トリ-2-メチルブチルアルミニウム、トリ-3-メチルヘキシルアルミニウム、トリ-2-エチルヘキシルアルミニウムなどのトリ分岐状アルキルアルミニウム、トリシクロヘキシルアルミニウム、トリシクロオクチルアルミニウムなどのトリシクロアルキルアルミニウム、トリフェニルアルミニウム、トリ(4-メチルフェニル)アルミニウムなどのトリアリールアルミニウム、ジイソプロピルアルミニウムハイドライド、ジイソブチルアルミニウムハイドライドなどのジアルキルアルミニウムハイドライド、一般式(i-C49xAly(C510z(式中、x、y、zは正の数であり、z≦2xである。)で表されるイソプレニルアルミニウムなどのアルケニルアルミニウム、イソブチルアルミニウムメトキシド、イソブチルアルミニウムエトキシドなどのアルキルアルミニウムアルコキシド、ジメチルアルミニウムメトキシド、ジエチルアルミニウムエトキシド、ジブチルアルミニウムブトキシドなどのジアルキルアルミニウムアルコキシド、エチルアルミニウムセスキエトキシド、ブチルアルミニウムセスキブトキシドなどのアルキルアルミニウムセスキアルコキシド、一般式Ra 2.5Al(ORb0.5などで表される平均組成を有する部分的にアルコキシ化されたアルキルアルミニウム、ジエチルアルミニウムフェノキシド、ジエチルアルミニウム(2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノキシド)などのアルキルアルミニウムアリーロキシド、ジメチルアルミニウムクロリド、ジエチルアルミニウムクロリド、ジブチルアルミニウムクロリド、ジエチルアルミニウムブロミド、ジイソブチルアルミニウムクロリドなどのジアルキルアルミニウムハライド、エチルアルミニウムセスキクロリド、ブチルアルミニウムセスキクロリド、エチルアルミニウムセスキブロミドなどのアルキルアルミニウムセスキハライド、エチルアルミニウムジクロリドなどのアルキルアルミニウムジハライドなどの部分的にハロゲン化されたアルキルアルミニウム、ジエチルアルミニウムヒドリド、ジブチルアルミニウムヒドリドなどのジアルキルアルミニウムヒドリド、エチルアルミニウムジヒドリド、プロピルアルミニウムジヒドリドなどのアルキルアルミニウムジヒドリドおよびその他の部分的に水素化されたアルキルアルミニウム、エチルアルミニウムエトキシクロリド、ブチルアルミニウムブトキシクロリド、エチルアルミニウムエトキシブロミドなどの部分的にアルコキシ化およびハロゲン化されたアルキルアルミニウムなどを例示することができる。また、上記一般式Ra mAl(ORbnpqで表される化合物に類似する化合物も使用することができ、例えば窒素原子を介して2以上のアルミニウム化合物が結合した有機アルミニウム化合物を挙げることができる。このような化合物として具体的には、(C252AlN(C25)Al(C252などを挙げることができる。
【0076】
(Q-1b)一般式 M2AlRa 4 で表される周期律表第1族金属とアルミニウムとの錯アルキル化物。(式中、M2はLi、NaまたはKを示し、Raは炭素数1~15、好ましくは1~4の炭化水素基を示す。)
このような化合物として、LiAl(C254、LiAl(C7154などを例示することができる。
【0077】
(Q-1c)一般式 Rab3 で表される周期律表第2族または第12族金属のジアルキル化合物。(式中、RaおよびRbは、互いに同一でも異なっていてもよく、炭素数1~15、好ましくは1~4の炭化水素基を示し、M3はMg、ZnまたはCdである。)
【0078】
有機アルミニウムオキシ化合物(Q-2)としては、従来公知のアルミノキサンをそのまま使用することができる。具体的には、下記一般式[III]で表わされる化合物および下記一般式[IV]で表わされる化合物を挙げることができる。
【0079】
【化3】
【0080】
式[III]および[IV]中、Rは炭素数1~10の炭化水素基、nは2以上の整数を示す。
【0081】
特にRがメチル基であるメチルアルミノキサンであってnが3以上、好ましくは10以上のものが利用される。これらアルミノキサン類に若干の有機アルミニウム化合物が混入していても差し支えない。
【0082】
本発明においてエチレンと炭素数が3以上のα-オレフィンとの共重合を高温で行う場合には、特開平2-78687号公報に例示されているようなベンゼン不溶性の有機アルミニウムオキシ化合物も適用することができる。また、特開平2-167305号公報に記載されている有機アルミニウムオキシ化合物、特開平2-24701号公報、特開平3-103407号公報に記載されている二種類以上のアルキル基を有するアルミノキサンなども好適に利用できる。なお、本発明で用いられることのある「ベンゼン不溶性の有機アルミニウムオキシ化合物」とは、60℃のベンゼンに溶解するAl成分がAl原子換算で通常10%以下、好ましくは5%以下、特に好ましくは2%以下であり、ベンゼンに対して不溶性または難溶性である化合物である。
【0083】
また、有機アルミニウムオキシ化合物(Q-2)としては、下記一般式[V]で表されるような修飾メチルアルミノキサン等も挙げることができる。
【0084】
【化4】
【0085】
式[V]中、Rxは炭素数1~10の炭化水素基、mおよびnはそれぞれ独立に2以上の整数を示す。
【0086】
有機アルミニウムオキシ化合物(Q-2)の一例であるメチルアルミノキサンは、容易に入手可能であり、かつ高い重合活性を有するので、オレフィン重合における活性剤として一般的に使用されている。しかしながら、メチルアルミノキサンは、飽和炭化水素に溶解させ難いため、環境的に望ましくないトルエンまたはベンゼンのような芳香族炭化水素の溶液として使用されてきた。このため、近年、飽和炭化水素に溶解させたアルミノキサンとして、式[V]で表されるメチルアルミノキサンの可撓性体(flexible body)が開発され、使用されている。式[V]で表されるこの修飾メチルアルミノキサンは、例えば、米国特許第4960878号明細書、米国特許第5041584号明細書に示されるように、トリメチルアルミニウムおよびトリメチルアルミニウム以外のアルキルアルミニウムを用いて調製され、例えば、トリメチルアルミニウムおよびトリイソブチルアルミニウムを用いて調製される。Rxがイソブチル基であるアルミノキサンは、飽和炭化水素溶液の形でMMAO、TMAOの商品名で市販されている(Tosoh Finechem Corporation、Tosoh Research&Technology Review、Vol 47、55(2003)を参照)。
【0087】
さらに、有機アルミニウムオキシ化合物(Q-2)として、下記一般式[VI]で表されるボロンを含んだ有機アルミニウムオキシ化合物も挙げることができる。
【0088】
【化5】
【0089】
式[VI]中、Rcは炭素数1~10の炭化水素基を示す。Rdは、互いに同一でも異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子または炭素数1~10の炭化水素基を示す。
【0090】
架橋メタロセン化合物(P)と反応してイオン対を形成する化合物(Q-3)(以下、「イオン化イオン性化合物」または単に「イオン性化合物」と略称する場合がある。)としては、特表平1-501950号公報、特表平1-502036号公報、特開平3-179005号公報、特開平3-179006号公報、特開平3-207703号公報、特開平3-207704号公報、米国特許5321106号公報などに記載されたルイス酸、イオン性化合物、ボラン化合物およびカルボラン化合物などを挙げることができる。さらに、ヘテロポリ化合物およびイソポリ化合物も挙げることができる。
【0091】
本発明において好ましく使用されるイオン化イオン性化合物は、下記一般式[VII]で表されるホウ素化合物である。
【0092】
【化6】
【0093】
式[VII]中、Re+としては、H+、カルベニウムカチオン、オキソニウムカチオン、アンモニウムカチオン、ホスホニウムカチオン、シクロヘプチルトリエニルカチオン、遷移金属を有するフェロセニウムカチオンなどが挙げられる。Rf~Riは、互いに同一でも異なっていてもよく、炭素数1~20の炭化水素基、ケイ素含有基、窒素含有基、酸素含有基、ハロゲン原子およびハロゲン含有基から選ばれる置換基であり、好ましくは置換アリール基である。
【0094】
上記カルベニウムカチオンとして具体的には、トリフェニルカルベニウムカチオン、トリス(4-メチルフェニル)カルベニウムカチオン、トリス(3,5-ジメチルフェニル)カルベニウムカチオンなどの三置換カルベニウムカチオンなどが挙げられる。
【0095】
上記アンモニウムカチオンとして具体的には、トリメチルアンモニウムカチオン、トリエチルアンモニウムカチオン、トリ(n-プロピル)アンモニウムカチオン、トリイソプロピルアンモニウムカチオン、トリ(n-ブチル)アンモニウムカチオン、トリイソブチルアンモニウムカチオンなどのトリアルキル置換アンモニウムカチオン、N,N-ジメチルアニリニウムカチオン、N,N-ジエチルアニリニウムカチオン、N,N-2,4,6-ペンタメチルアニリニウムカチオンなどのN,N-ジアルキルアニリニウムカチオン、ジイソプロピルアンモニウムカチオン、ジシクロヘキシルアンモニウムカチオンなどのジアルキルアンモニウムカチオンなどが挙げられる。
【0096】
上記ホスホニウムカチオンとして具体的には、トリフェニルホスホニウムカチオン、トリス(4-メチルフェニル)ホスホニウムカチオン、トリス(3,5-ジメチルフェニル)ホスホニウムカチオンなどのトリアリールホスホニウムカチオンなどが挙げられる。
【0097】
e+としては、上記具体例のうち、カルベニウムカチオン、アンモニウムカチオンなどが好ましく、特にトリフェニルカルベニウムカチオン、N,N-ジメチルアニリニウムカチオン、N,N-ジエチルアニリニウムカチオンが好ましい。
【0098】
本発明において好ましく使用されるイオン化イオン性化合物のうち、カルベニウムカチオンを含む化合物として、トリフェニルカルベニウムテトラフェニルボレート、トリフェニルカルベニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリフェニルカルベニウムテトラキス{3,5-ジ-(トリフルオロメチル)フェニル}ボレート、トリス(4-メチルフェニル)カルベニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリス(3,5-ジメチルフェニル)カルベニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートなどを例示することができる。
【0099】
本発明において好ましく使用されるイオン化イオン性化合物のうち、トリアルキル置換アンモニウムカチオンを含む化合物として、トリエチルアンモニウムテトラフェニルボレート、トリプロピルアンモニウムテトラフェニルボレート、トリ(n-ブチル)アンモニウムテトラフェニルボレート、トリメチルアンモニウムテトラキス(4-メチルフェニル)ボレート、トリメチルアンモニウムテトラキス(2-メチルフェニル)ボレート、トリ(n-ブチル)アンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリエチルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリプロピルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリプロピルアンモニウムテトラキス(2,4-ジメチルフェニル)ボレート、トリ(n-ブチル)アンモニウムテトラキス(3,5-ジメチルフェニル)ボレート、トリ(n-ブチル)アンモニウムテトラキス{4-(トリフルオロメチル)フェニル}ボレート、トリ(n-ブチル)アンモニウムテトラキス{3,5-ジ(トリフルオロメチル)フェニル}ボレート、トリ(n-ブチル)アンモニウムテトラキス(2-メチルフェニル)ボレート、ジオクタデシルメチルアンモニウムテトラフェニルボレート、ジオクタデシルメチルアンモニウムテトラキス(4-メチルフェニル)ボレート、ジオクタデシルメチルアンモニウムテトラキス(4-メチルフェニル)ボレート、ジオクタデシルメチルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、ジオクタデシルメチルアンモニウムテトラキス(2,4-ジメチルフェニル)ボレート、ジオクタデシルメチルアンモニウムテトラキス(3,5-ジメチルフェニル)ボレート、ジオクタデシルメチルアンモニウムテトラキス{4-(トリフルオロメチル)フェニル}ボレート、ジオクタデシルメチルアンモニウムテトラキス{3,5-ジ(トリフルオロメチル)フェニル}ボレート、ジオクタデシルメチルアンモニウムなどを例示することができる。
【0100】
本発明において好ましく使用されるイオン化イオン性化合物のうち、N,N-ジアルキルアニリニウムカチオンを含む化合物として、N,N-ジメチルアニリニウムテトラフェニルボレート、N,N-ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、N,N-ジメチルアニリニウムテトラキス{3,5-ジ(トリフルオロメチル)フェニル}ボレート、N,N-ジエチルアニリニウムテトラフェニルボレート、N,N-ジエチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、N,N-ジエチルアニリニウムテトラキス{3,5-ジ(トリフルオロメチル)フェニル}ボレート、N,N-2,4,6-ペンタメチルアニリニウムテトラフェニルボレート、N,N-2,4,6-ペンタメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートなどを例示することができる。
【0101】
本発明において好ましく使用されるイオン化イオン性化合物のうち、ジアルキルアンモニウムカチオンを含む化合物として、ジ-n-プロピルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、ジシクロヘキシルアンモニウムテトラフェニルボレートなどを例示することができる。
【0102】
その他、特開2004-51676号公報によって例示されているイオン性化合物も制限無く使用が可能である。
上記のイオン性化合物(Q-3)は、1種単独で用いてもよく2種以上を混合して用いでもよい。
【0103】
前記触媒系の構成例としては、例えば、以下の[1]~[4]が挙げられる。
[1]架橋メタロセン化合物(P)および化合物(Q-2)を含む
[2]架橋メタロセン化合物(P)、化合物(Q-1)および化合物(Q-2)を含む
[3]架橋メタロセン化合物(P)、化合物(Q-1)および化合物(Q-3)を含む
[4]架橋メタロセン化合物(P)、化合物(Q-2)および化合物(Q-3)を含む
架橋メタロセン化合物(P)、化合物(Q-1)~(Q-3)は、任意の順序で反応系に導入すればよい。
【0104】
〔担体(R)〕
本発明では、オレフィン重合触媒の構成成分として、必要に応じて担体(R)を用いてもよい。
【0105】
本発明で用いてもよい担体(R)は、無機または有機の化合物であって、顆粒状ないしは微粒子状の固体である。このうち無機化合物としては、多孔質酸化物、無機塩化物、粘土、粘土鉱物またはイオン交換性層状化合物が好ましい。
【0106】
多孔質酸化物として、具体的にはSiO2、Al23、MgO、ZrO、TiO2、B23、CaO、ZnO、BaO、ThO2など、またはこれらを含む複合物または混合物、例えば天然または合成ゼオライト、SiO2-MgO、SiO2-Al23、SiO2-TiO2、SiO2-V25、SiO2-Cr23、SiO2-TiO2-MgOなどを使用することができる。これらのうち、SiO2および/またはAl23を主成分とするものが好ましい。このような多孔質酸化物は、種類および製法によりその性状は異なるが、本発明に好ましく用いられる担体は、粒径が0.5~300μm、好ましくは1.0~200μmであって、比表面積が50~1000m2/g、好ましくは100~700m2/gの範囲にあり、細孔容積が0.3~3.0cm3/gの範囲にある。このような担体は、必要に応じて100~1000℃、好ましくは150~700℃で焼成してから使用される。
【0107】
無機塩化物としては、MgCl2、MgBr2、MnCl2、MnBr2等が用いられる。無機塩化物は、そのまま用いてもよいし、ボールミル、振動ミルにより粉砕した後に用いてもよい。また、アルコールなどの溶媒に無機塩化物を溶解させた後、析出剤によって微粒子状に析出させたものを用いてもよい。
【0108】
粘土は、通常粘土鉱物を主成分として構成される。また、イオン交換性層状化合物は、イオン結合などによって、構成される面が互いに弱い結合力で平行に積み重なった結晶構造を有する化合物であり、含まれるイオンが交換可能なものである。大部分の粘土鉱物はイオン交換性層状化合物である。また、これらの粘土、粘土鉱物、イオン交換性層状化合物としては、天然産のものに限らず、人工合成物を使用することもできる。また、粘土、粘土鉱物またはイオン交換性層状化合物として、粘土、粘土鉱物、また、六方細密パッキング型、アンチモン型、CdCl2型、CdI2型などの層状の結晶構造を有するイオン結晶性化合物などを例示することができる。このような粘土、粘土鉱物としては、カオリン、ベントナイト、木節粘土、ガイロメ粘土、アロフェン、ヒシンゲル石、パイロフィライト、ウンモ群、モンモリロナイト群、バーミキュライト、リョクデイ石群、パリゴルスカイト、カオリナイト、ナクライト、ディッカイト、ハロイサイトなどが挙げられ、イオン交換性層状化合物としては、α-Zr(HAsO42・H2O、α-Zr(HPO42、α-Zr(KPO42・3H2O、α-Ti(HPO42、α-Ti(HAsO42・H2O、α-Sn(HPO42・H2O、γ-Zr(HPO42、γ-Ti(HPO42、γ-Ti(NH4PO42・H2Oなどの多価金属の結晶性酸性塩などが挙げられる。本発明で用いられる粘土、粘土鉱物には、化学処理を施すことも好ましい。化学処理としては、表面に付着している不純物を除去する表面処理、粘土の結晶構造に影響を与える処理など、何れも使用できる。化学処理として、具体的には、酸処理、アルカリ処理、塩類処理、有機物処理などが挙げられる。
【0109】
イオン交換性層状化合物は、イオン交換性を利用し、層間の交換性イオンを別の大きな嵩高いイオンと交換することにより、層間が拡大した状態の層状化合物であってもよい。このような嵩高いイオンは、層状構造を支える支柱的な役割を担っており、通常、ピラーと呼ばれる。また、このように層状化合物の層間に別の物質(ゲスト化合物)を導入することをインターカレーションという。ゲスト化合物としては、TiCl4、ZrCl4などの陽イオン性無機化合物、Ti(OR)4、Zr(OR)4、PO(OR)3、B(OR)3などの金属アルコキシド(Rは炭化水素基など)、[Al134(OH)247+、[Zr4(OH)142+、[Fe3O(OCOCH36+などの金属水酸化物イオンなどが挙げられる。これらの化合物は1種単独でまたは2種以上組み合わせて用いられる。また、これらの化合物をインターカレーションする際に、Si(OR)4、Al(OR)3、Ge(OR)4などの金属アルコキシド(Rは炭化水素基など)などを加水分解重縮合して得た重合物、SiO2などのコロイド状無機化合物などを共存させることもできる。また、ピラーとしては、上記金属水酸化物イオンを層間にインターカレーションした後に加熱脱水することにより生成する酸化物などが挙げられる。
【0110】
これらのうち、好ましいものは粘土または粘土鉱物であり、特に好ましいものはモンモリロナイト、バーミキュライト、ペクトライト、テニオライトおよび合成雲母である。
担体(R)としての有機化合物としては、粒径が0.5~300μmの範囲にある顆粒状ないしは微粒子状固体を挙げることができる。具体的には、エチレン、プロピレン、1-ブテン、4-メチル-1-ペンテンなどの炭素原子数が2~14のα-オレフィンを主成分として生成される(共)重合体またはビニルシクロヘキサン、スチレンを主成分として生成される(共)重合体、およびそれらの変成体を例示することができる。
【0111】
重合触媒の各成分の使用法、添加順序は任意に選ばれる。また、触媒中の各成分の少なくとも2つ以上は予め接触されていてもよい。
架橋メタロセン化合物(P)(以下「成分(P)」ともいう。)は、反応容積1リットル当り、通常10-9~10-1mol、好ましくは10-8~10-2molになるような量で用いられる。
【0112】
有機金属化合物(Q-1)(以下「成分(b-1)」ともいう。)は、成分(Q-1)と、成分(P)中の遷移金属原子(M)とのモル比[(Q-1)/M]が、通常0.01~50,000、好ましくは0.05~10,000となるような量で用いられる。
【0113】
有機アルミニウムオキシ化合物(Q-2)(以下「成分(Q-2)」ともいう。)は、成分(Q-2)中のアルミニウム原子と、成分(P)中の遷移金属原子(M)とのモル比[(Q-2)/M]が、通常10~5,000、好ましくは20~2,000となるような量で用いられる。
【0114】
イオン性化合物(Q-3)(以下「成分(Q-3)」ともいう。)は、成分(Q-3)と、成分(P)中の遷移金属原子(M)とのモル比[(Q-3)/M]が、通常1~10,000、好ましくは1~5,000となるような量で用いられる。
【0115】
重合温度は、通常-50~300℃であり、好ましくは30~250℃、より好ましくは100~250℃、さらに好ましくは130~200℃である。前記範囲の重合温度領域では温度が高くなるに従い、重合時の溶液粘度が低下し、重合熱の除熱も容易となる。重合圧力は、通常、常圧~10MPaゲージ圧(MPa-G)、好ましくは常圧~8MPa-Gである。
【0116】
重合反応は、回分式、半連続式、連続式のいずれの方法においても行うことができる。さらに、重合を反応条件の異なる二つ以上の重合器で連続的に行うことも可能である。
得られる共重合体の分子量は、重合系中の水素濃度や重合温度を変化させることによって調節することができる。さらに、使用する成分(Q)の量により調節することもできる
。水素を添加する場合、その量は生成する共重合体1kgあたり0.001~5,000NL程度が適当である。
【0117】
液相重合法において用いられる重合溶媒は、通常、不活性炭化水素溶媒であり、好ましくは常圧下における沸点が50~200℃の飽和炭化水素である。
重合溶媒としては、具体的には、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、ドデカン、灯油などの脂肪族炭化水素、シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロペンタンなどの脂環族炭化水素が挙げられ、特に好ましくは、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、シクロヘキサンが挙げられる。重合対象であるα-オレフィン自身を重合溶媒として用いることもできる。なお、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類やエチレンクロリド、クロルベンゼン、ジクロロメタンなどのハロゲン化炭化水素も重合溶媒として使用することができるが、環境への負荷軽減の視点および人体健康への影響の最少化の視点からは、これらの使用は好ましくない。
【0118】
共重合体(A)の100℃における動粘度は重合体の分子量に依存する。すなわち高分子量であれば高粘度となり、低分子量であれば低粘度となるため、上述の分子量調整により100℃における動粘度を調整する。また、減圧蒸留のような従来公知の方法により得られた重合体の低分子量成分を除去することで、得られる重合体の分子量分布(Mw/Mn)を調整することができる。さらに得られた重合体について、従来公知の方法により水素添加(以下水添ともいう。)を行ってもよい。水添により得られた重合体の二重結合が低減されれば、酸化安定性および耐熱性が向上する。
【0119】
得られた共重合体(A)は、1種単独で用いてもよく、また、異なる分子量のものや異なるモノマー組成のものを2種類以上組み合わせてもよい。
【0120】
<不飽和モノマー(B)>
本組成物に含まれる成分の一つである変性共重合体(X)のグラフト部を構成する不飽和モノマー(B)は、下記要件(b-1)を満たす。
【0121】
〈要件(b-1)〉
不飽和モノマー(B)は、水酸基を有するエチレン性不飽和モノマーからなる群より選ばれる少なとも一種の不飽和モノマーである。
前記水酸基を有するエチレン性不飽和モノマーは、分子内に水酸基とエチレン性不飽和結合を有する化合物であり、エステル部に水酸基を有する(メタ)アクリル酸エステル、不飽和アルコール、水酸基含有スチレン誘導体およびヒドロキシビニルエーテルなどが挙げられる。これらの中では、不飽和アルコールが好ましい。
【0122】
前記エステル部に水酸基を有する(メタ)アクリル酸エステルとしては、多価アルコールのモノ(メタ)アクリレート化合物等があげられ、具体的に2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、グリセリンモノ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート等を挙げられる。
【0123】
前記不飽和アルコールとしては、具体的に、アリルアルコール、2-アリルオキシエタノール、2-メチル-3-ブテン-1-オール、2-メチル-3-ブテン-2-オール、3-メチル-3-ブテン-1-オール、10-ウンデセン-1-オール、1-オクテン-3-オール、2-メタノールノルボルネン、2-ブテン-1,4-ジオール等を挙げられる。これらの中では、2-アリルオキシエタノール、2-メチル-3-ブテン-1-オール、2-メチル-3-ブテン-2-オールが好ましい。
【0124】
前記水酸基含有スチレン誘導体としては、ヒドロキシスチレン等があげられる。前記ヒドロキシビニルエーテルとしては、具体的に、ヒドロキシメチルビニルエーテル、ヒドロキシエチルビニルエーテル、ヒドロキシプロピルビニルエーテル、ヒドロキシブチルビニルエーテル、ヒドロキシメチルプロペニルエーテル、ヒドロキシエチルプロペニルエーテル、ヒドロキシプロピルプロペニルエーテル、ヒドロキシブチルプロペニルエーテル、ヒドロキシメチルブテニルエーテル、ヒドロキシエチルブテニルエーテル、ヒドロキシプロピルブテニルエーテル、ヒドロキシブチルブテニルエーテル等を挙げられる。
【0125】
その他にも、水酸基を有するエチレン性不飽和モノマー(b-2)としては、N-メチロールアクリルアミド、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルアセチルフォスフェート、グリセリンモノアリルエーテル、アリロキシエタノール等を使用することもできる。
不飽和モノマー(B)は、一種単独であるいは二種以上を組み合せて用いることができる。
不飽和モノマー(B)は、バイオマス由来の原料から得られたモノマーのみであってもよく、化石燃料由来の原料から得られたモノマーのみであってもよく、バイオマス由来の原料との原料から得られたモノマーと化石燃料由来の原料から得られたモノマーの混合物であってもよい。
【0126】
<変性共重合体(X)の製造方法>
変性共重合体(X)は、従来公知の種々の方法、例えば、次のような方法を用いて調製できる。
(1)前記共重合体(A)を押出機、バッチ式反応機などで混合させて、前記不飽和モノマー(B)を添加してグラフト共重合させる方法。
(2)前記共重合体(A)を溶媒に溶解させて、前記不飽和モノマー(B)を添加してグラフト共重合させる方法。
【0127】
前述したいずれの製造方法も、前記不飽和モノマー(B)を効率よくグラフト共重合させるために、ラジカル開始剤の存在下でグラフト反応を行うことが好ましい。
前記ラジカル開始剤として、例えば、有機ペルオキシド、アゾ化合物などが使用される。上記有機ペルオキシドとしては、ベンゾイルペルオキシド、ジクロルベンゾイルペルオキシド、ジクミルペルオキシドなどが挙げられ、上記アゾ化合物としては、アゾビスイソブチルニトリル、ジメチルアゾイソブチレートなどがある。
【0128】
このようなラジカル開始剤としては、具体的には、ジクミルペルオキシド、ジ-tert-ブチルペルオキシド、2,5-ジメチル-2,5-ジ(tert-ブチルペルオキシ)ヘキシン-3、2,5-ジメチル-2,5-ジ(tert-ブチルペルオキシ)ヘキサン、1,4-ビス(tert-ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼンなどのジアルキルペルオキシドが好ましく用いられる。
【0129】
これらのラジカル開始剤は、共重合体(A)100質量部に対して、通常0.001~1質量部、好ましくは0.003~0.5質量部、より好ましくは0.05~0.3質量部の量で用いられる。
【0130】
前記ラジカル開始剤を用いたグラフト反応、あるいは、ラジカル開始剤を使用しないで行うグラフト反応における反応温度は、通常60~350℃、好ましくは120~300℃の範囲に設定される。
【0131】
本組成物における変性共重合体(X)の含有量は、組成物100質量%に対して好ましくは0.1~10質量%、より好ましくは0.2~8質量%、より好ましくは0.5~5質量%である。変性共重合体(X)の含有量が前記範囲内であると、変性共重合体(X)による消泡の作用が十分に発揮される。
【0132】
≪アミン化合物(Y)≫
本組成物は、アミン化合物(Y)を含有する。前記アミン化合物(Y)は、下記要件(y-1)および(y-2)を満たすことが好ましい。
(y-1)分子量が1,000以下である。
(y-2)分子内に水酸基を一つ以上有する。
【0133】
〈要件(y-1)〉
アミン化合物(Y)の分子量は、好ましくは1,000以下、より好ましくは800以下、さらに好ましくは500以下である。アミン化合物(Y)の分子量が前記範囲であると、変性共重合体(X)の水への乳化性に優れる傾向にある。
【0134】
〈要件(y-2)〉
アミン化合物(Y)は、分子内に水酸基を一つ以上有する。変性共重合体(X)の水への乳化性等の観点から、分子内の水酸基の数によりアミン化合物(Y)の含有量を適宜変更することができる。
また、アミン化合物(Y)の分子内に存在する水酸基のうち少なくとも一つは、第一級炭素に結合していることが特に好ましい。
【0135】
前記アミン化合物(Y)としては、2-アミノメチル-1-プロパノール、2-(2-アミノエトキシ)エタノール、2-アミノエタノール、1-アミノ-2-プロパノール等の第一級アミン化合物;ジエタノールアミン、2-メチルアミノエタノール等の第二級アミン化合物;トリエタノールアミン、2-(ジメチル)アミノエタノール等の第三級アミン化合物が挙げられ、変性共重合体(X)の水への乳化性等の観点から、第一級アミン化合物が好ましく、2-アミノメチル-1-プロパノール、2-(2-アミノエトキシ)エタノールがより好ましい。
【0136】
アミン化合物(Y)は、一種単独であるいは二種以上を組み合せて用いることができる。
アミン化合物(Y)の含有量は、分子内の水酸基の数により適宜変更することができるが、変性共重合体(X)100質量部に対して好ましくは10~60質量部、より好ましくは10~50質量部、さらに好ましくは15~50質量部である。
【0137】
≪シリコーンオイル(Z)≫
本組成物は、潤滑油成分として、アルキル変性シリコーンオイルおよびアルキルアラルキル変性シリコーンオイルからなる群より選ばれる少なとも一種のシリコーンオイル(Z)を含有する。前記シリコーンオイル(Z)は、下記要件(z-1)を満たすことが好ましい。
(z-1)25℃における粘度が20mm2/s以上である。
【0138】
〈要件(z-1)〉
シリコーンオイル(Z)の25℃における粘度は、好ましくは20mm2/s以上、より好ましくは50mm2/s以上、さらに好ましくは200mm2/s以上である。シリコーンオイル(Z)の粘度が前記範囲であると、本組成物を潤滑剤(離型剤)として使用した際に、金型からの離型性に優れる。
【0139】
前記シリコーンオイル(Z)としては、アルキル変性シリコーンオイル、アルキルアラルキル変性シリコーンオイル等が挙げられ、アルキルアラルキル変性シリコーンオイルが好ましい。
【0140】
前記シリコーンオイル(Z)は、本組成物の調製時にエマルジョンの形態で配合されてもよい。該エマルジョンは、本発明の効果を損なわない範囲において、特に限定はされないが、不揮発分濃度が10~70質量%程度であることが好ましい。該不揮発分濃度とは、シリコーンオイル(Z)および必要に応じて添加される乳化剤等の添加剤を含んだ、分散溶媒以外の不揮発成分の濃度を意味する。
【0141】
シリコーンオイル(Z)は、一種単独でまたは二種以上を組み合せて用いることができる。
シリコーンオイル(Z)の含有量は、本組成物100質量%に対して好ましくは10~50質量%、より好ましくは12~45質量%、さらに好ましくは15~40質量%である。
【0142】
≪界面活性剤≫
本組成物は、さらに界面活性剤を含有してもよい。界面活性剤は、変性共重合体(X)やシリコーンオイル(Z)の水への乳化を促進させる。
前記界面活性剤としては、例えば、アルキルナフタレンスルホン酸塩、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、ホルムアルデヒド縮合物のナトリウム塩、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム、メラニン樹脂スルホン酸ナトリウム、特殊ポリアクリル酸塩、オレイン酸カリウム、オレフィン・マレイン酸コポリマー、カルボキシメチルセルロースナトリウム塩、ステアリン酸カリウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸トリエタノールアミン等のアニオン系界面活性剤;脂肪酸モノグリセライド、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸部分エステル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸部分エステル、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸部分エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸部分エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸アミン、ポリオキシエチレン(硬化)ヒマシ油、ポリオキシエチレングリコール脂肪酸エステル、ヒドロキシエチルセルロース、ポリビニルアルコール、及びメチルセルロース等のノニオン系界面活性剤;アルキルアンモニウムクロライド、トリメチルアルキルアンモニウムブロマイド、及びアルキルピリジニウムクロライド、カゼイン等の両性界面活性剤;水溶性多価金属塩類等が挙げられ、ノニオン系界面活性剤が好ましい。
【0143】
前記界面活性剤は、一種単独でまたは二種以上を組み合せて用いることができる。
本組成物が界面活性剤を含有する場合、前記界面活性剤の含有量は、変性共重合体(X)100質量部に対して好ましくは10~50質量部、より好ましくは15~45質量部、さらに好ましくは20~40質量部である。
【0144】
≪水≫
本組成物には水が含まれ、その含有量は、組成物100質量%に対して、好ましくは10~70質量%、より好ましくは20~70質量%、さらに好ましくは30~65質量%である。前記潤滑油成分を乳化、分散または可溶化させる分散媒としては、主に水を用いるが、系全体の乳化、分散または可溶化において、乳化破壊等の悪影響を与えることがなく、潤滑剤(離型剤)として使用する際の金属金型に対して、腐食、反応、劣化等の品質低下を生じさせないものであれば、水溶性溶剤を添加して用いてもよい。
【0145】
前記水溶性溶剤としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール等のグリコール系溶剤;メチルカルビトール、エチルカルビトール等のカルビトール系溶剤;2-ピロリドン、N-メチルピロリドン等のピロリドン系溶剤等が挙げられる。これらは1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。また、水溶性溶剤の添加量は、水100質量部に対して、好ましくは1~70質量部、より好ましくは5~65質量部である。
【0146】
<その他の成分>
本組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、変性共重合体(X)、アミン化合物(Y)、シリコーンオイル(Z)、界面活性剤、および水以外の、その他の成分を必要に応じて含有することができる。
その他の成分としては、例えば、変性共重合体(X)以外の樹脂成分、アミン化合物(Y)以外の塩基性化合物、シリコーンオイル(Z)以外の潤滑油成分、乳化剤、防食剤、酸化防止剤、防腐剤、防錆剤、金属不活性剤、耐摩耗添加剤、消泡剤、流動点降下剤、清浄分散剤、硬水軟化剤、キレート剤、pH調整剤、染料、顔料、消泡剤、香料が挙げられる。
前記その他の成分は、一種単独でまたは二種以上を組み合せて用いることができる。
【0147】
≪水系潤滑剤組成物の製造方法≫
本組成物は、例えば、以下の方法により製造することができる:(1)変性共重合体(X)、アミン化合物(Y)、シリコーンオイル(Z)、界面活性剤を含む水分散体組成物と、シリコーンオイル(Z)の水溶液とを混合させる方法;(2)変性共重合体(X)、アミン化合物(Y)、シリコーンオイル(Z)、界面活性剤を含む油滴成分を水中に乳化させる方法。以下、前記方法を詳細に説明する。
【0148】
・方法(1)
まず、変性共重合体(X)、アミン化合物(Y)、界面活性剤、水、および必要に応じてその他成分を、適宜撹拌して混合することによって、水分散体組成物を調製する。撹拌・混合の際、必要に応じて、前記成分や混合液を40~70℃に加温してもよい。前記成分の添加順序は、前記成分を均一に溶解または分散させられれば特に制限はないが、例えば、変性共重合体(X)と界面活性剤の混合物に対して、アミン化合物(Y)、水の順で攪拌しながら添加し、混合することで均一な水分散体組成物を得られる傾向にある。また、前記成分を均一に溶解または分散させるために、有機溶媒に配合し撹拌・混合してもよい。前記有機溶媒は、前記成分を均一に溶解または分散させることができれば、水系であっても非水系であっても、特に制限はないが、後に留去可能である低沸点の有機溶媒が好ましい。
【0149】
次に、シリコーンオイル(Z)と水とを、適宜撹拌または振とうして混合することによって、潤滑油成分含有水溶液を調製する。前記成分の添加順序は、前記成分を均一に溶解または分散させられれば特に制限はないが、例えば、シリコーンオイル(Z)含有エマルジョンと水とを攪拌・混合することで、常温で容易に水溶液を得られる傾向にある。該水溶液のシリコーンオイル(Z)濃度は、前記成分を均一に溶解または分散させられれば特に制限はなく、シリコーンオイル(Z)の粘度等の物性や、シリコーンオイル(Z)含有エマルジョンを用いる場合はその不揮発分濃度などを考慮して、適宜調整すればよい。
【0150】
前記水分散体組成物と潤滑油成分含有水溶液とを、適宜撹拌または振とうして混合することによって、潤滑油成分を水中に乳化させることにより本組成物が得られる。
混合に利用する手段は、公知のいかなる撹拌機または振とう機を用いてもよい。
【0151】
・方法(2)
まず、変性共重合体(X)、アミン化合物(Y)、シリコーンオイル(Z)、界面活性剤、および必要に応じてその他成分を、適宜撹拌して混合することによって、油滴成分を調製する。撹拌・混合の際、必要に応じて、前記成分や混合液を40~70℃に加温してもよい。前記成分の添加順序は、前記成分を均一に溶解または分散させられれば特に制限はない。前記成分を均一に溶解または分散させるために、有機溶媒に配合し撹拌・混合してもよい。前記有機溶媒は、前記成分を均一に溶解または分散させることができれば、水系であっても非水系であっても、特に制限はないが、後に留去可能である低沸点の有機溶媒が好ましい。前記成分のうち、水溶性の成分(例えば、アミン化合物(Y)や界面活性剤)は、後述する乳化の際に添加してもよい。
【0152】
次に、得られた油滴成分を、水中に乳化させることにより本組成物が得られる。乳化させる方法としては、強撹拌下において油滴成分中に水と、必要に応じて水溶性の成分(例えば、アミン化合物(Y)や界面活性剤)を添加し、転相乳化させる方法などが挙げられる。
必要に応じて添加されるその他成分は、乳化前の油滴成分に添加してもよいし、乳化後の水系分散体に添加してもよい。
また、本組成物において、撹拌・混合時に任意で配合した前記有機溶媒が不要である場合には、乳化後の水系分散体から有機溶媒を留去してもよい。
転相に利用する手段は、公知のいかなるものでもよいが、好適には、ニーダー、バンバリーミキサー、多軸スクリュー押出機を例示することができる。
【0153】
本組成物は、その固形分が通常1~50質量%、好ましくは3~40質量%になるように調製されることが望ましい。
【0154】
本組成物は、ダイカスト用離型剤(潤滑剤)に好適に使用することができる。本組成物は、ダイカスト用離形剤として用いた場合の、金属金型や機械周りへの潤滑剤由来の熱劣化物の除去作業の回数を抑えられることから、ダイカストのサイクルタイムの短縮、すなわち、作業効率の向上が期待できる。
【実施例0155】
以下、実施例に基づいて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例
に限定されるものではない。
実施例および比較例において、各物性は、以下の方法により測定あるいは評価した。
【0156】
〔重量平均分子量(Mw)および分子量分布(Mw/Mn)〕
下記の高速GPC測定装置により決定した。
測定装置:東ソー社製HLC8320GPC
移動相:THF(富士フイルム和光純薬(株)製、安定剤不含有、液体クロマトグラフィー用グレード)
カラム:東ソー社製TSKgel Super MultiporeHZ-M 2本
を直列連結した。
サンプル濃度:5mg/mL
移動相流速:0.35mL/分
測定温度:40℃
検量線用標準サンプル:東ソー社製PStQuick MP-M
【0157】
〔100℃動粘度〕
JIS K 2283に基づき、キャノン社製全自動粘度計CAV-4を用いて測定を行った。
【0158】
〔エチレン含有率〕
日本電子(株)製ECP500型核磁気共鳴装置を用い、溶媒としてオルトジクロロベンゼン/重ベンゼン(80/20容量%)混合溶媒,試料濃度として55mg/0.6mL、測定温度として120℃、観測核として13C(125MHz)、シーケンスとしてシングルパルスプロトンデカップリング、パルス幅として4.7μ秒(45°パルス)、繰り返し時間として5.5秒、積算回数としては1万回以上、ケミカルシフトの基準値として27.50ppmを用いて測定した。エチレン含量は、13C-NMRスペクトルから、「高分子分析ハンドブック」(朝倉書店 発行 P163~170)、G.J.Ray(Macromolecules,10,773(1977))、J.C.Randall(Macro-molecules,15,353(1982))、K.Kimura(Polymer,25,4418(1984))らの報告に基づいて求めた。
【0159】
〔融点〕
セイコーインスツルメント社製X-DSC-7000を用いて測定した。簡易密閉できるアルミサンプルパンに約8mgのサンプルを入れてDSCセルに配置し、DSCセルを窒素雰囲気下にて室温から、150℃まで10℃/分で昇温し、次いで、150℃で5分間保持した後、10℃/分で降温し、DSCセルを-100℃まで冷却した(降温過程)。次いで、-100℃で5分間保持した後、10℃/分で150℃まで昇温し、昇温過程で得られるエンタルピー曲線が極大値を示す温度を融点とし、融解に伴う吸熱量の総和を融解熱量とした。ピークが観測されないか、融解熱量の値が1J/g以下の場合、融点(Tm)は観測されないとみなした。融点、および融解熱量の求め方はJIS K 7121に基づいて行った。
【0160】
[乳化安定性評価]
得られた水系潤滑剤組成物を室温で1週間貯蔵させた後の外観を目視により評価を行った。評価基準は以下のとおりである。なお、水系分散体をアルミダイカスト等の水系潤滑剤として用いる場合、乳化安定性が高い程、品質安定性の点で好ましい。
○:濁り・析出物・沈殿がいずれもなし
×:濁り・析出物・沈殿のいずれかが一つ以上が発生
【0161】
[金属への固着性評価]
得られた水系潤滑剤組成物をステンレス製(SUS304)シャーレに20g秤取り、250℃で2時間の耐熱試験を実施した後の状態を目視・触感より評価を行った。評価基準は以下のとおりである。なお、水系分散体をアルミダイカスト等の水系潤滑剤として用いる場合、金属への固着量が少ない程、成形加工の寸法安定性に優れ、また、金型に固着した潤滑剤の清掃頻度を減らせることができるため、好ましい。
○:金属への固着なし
×:金属への固着あり
【0162】
[残存率の評価]
得られた水系潤滑剤組成物をステンレス製(SUS304)シャーレに20g秤取り、250℃で2時間の耐熱試験を実施した後の重量から残存率を算出し、評価を行った。
なお、水系分散体をアルミダイカスト等の水系潤滑剤として用いる場合、残存率が高い程、潤滑性を保つことができ、金型への固着を防止できるため、好ましい。残存率が5.0%未満であると、潤滑性の欠乏および金型への固着が発生し、残存率が5.0%以上であると、十分な潤滑性を保つことができ、金型への固着が防止できる。
【0163】
実施例および比較例で用いたエチレン・α-オレフィン共重合体は以下の製造例(製造
方法)で得た。
【0164】
〔製造例1-1〕〔エチレン・α-オレフィン共重合体(A―1)〕
充分に窒素置換した内容積2Lのステンレス製オートクレーブに、ヘプタン760mLおよびプロピレン120gを装入し、系内の温度を150℃に昇温した後、水素0.85MPa、エチレン0.19MPaを供給することにより全圧を3MPaGとした。次に、トリイソブチルアルミニウム0.4mmol、[メチルフェニルメチレン(η5-シクロペンタジエニル)(η-2,7-ジ-tert-ブチルフルオレニル)]ジルコニウムジクロリド0.0002mmol、および、N,N-ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート0.002mmolを窒素で圧入し、撹拌回転数を400rpmにすることで重合を開始した。その後、エチレンのみを連続的に供給することにより全圧を3MPaGに保ち、150℃で5分間重合を行った。少量のエタノールを系内に添加することで重合を停止した後、未反応のエチレン、プロピレン、水素をパージした。得られた重合溶液を、0.2mol/Lの塩酸1000mLで3回、次いで蒸留水1000mLで3回洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥後、溶媒を減圧留去し、粗エチレン・プロピレン共重合体を得た。
【0165】
内容積1Lのステンレス製オートクレーブに、0.5質量%のPd/アルミナ触媒のヘキサン溶液100mL、および、得られた粗エチレン・α-オレフィン共重合体の30質量%ヘキサン溶液500mLを加え、オートクレーブを密閉した後、窒素置換を行なった。次いで、撹拌しながら140℃まで昇温し、系内を水素置換した後、水素で1.5MPaまで昇圧して15分間水素添加反応を行った。反応液をろ過により水添触媒をろ別した後、溶媒を減圧留去し、減圧下80℃で24時間乾燥することで、エチレン・プロピレン共重合体であるエチレン・α-オレフィン共重合体(A-1)を得た。
【0166】
得られたエチレン・α-オレフィン共重合体(A-1)は、重量平均分子量(Mw):5100、分子量分布(Mw/Mn):1.7、100℃動粘度:150mm2/s、エチレン含有率:48モル%であり、融点は観測されなかった。
【0167】
〔製造例1-2〕〔エチレン・α-オレフィン共重合体(A―2)〕
充分に窒素置換した内容積2Lのステンレス製オートクレーブに、ヘプタン760mLおよびプロピレン120gを装入し、系内の温度を150℃に昇温した後、水素0.85MPa、エチレン0.19MPaを供給することにより全圧を3MPaGとした。次に、トリイソブチルアルミニウム0.4mmol、[ジフェニルメチレン(η-3-n-ブチルシクロペンタジエニル)(η-2,7-ジ-tert-ブチルフルオレニル)]ジルコニウムジクロリド0.0002mmol、および、N,N-ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート0.002mmolを窒素で圧入し、撹拌回転数を400rpmにすることで重合を開始した。その後、エチレンのみを連続的に供給することにより全圧を3MPaGに保ち、150℃で5分間重合を行った。少量のエタノールを系内に添加することで重合を停止した後、未反応のエチレン、プロピレン、水素をパージした。得られた重合溶液を、0.2mol/Lの塩酸1000mLで3回、次いで蒸留水1000mLで3回洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥後、溶媒を減圧留去し、粗エチレン・プロピレン共重合体を得た。
【0168】
内容積1Lのステンレス製オートクレーブに、0.5質量%のPd/アルミナ触媒のヘキサン溶液100mL、および、得られた粗エチレン・α-オレフィン共重合体の30質量%ヘキサン溶液500mLを加え、オートクレーブを密閉した後、窒素置換を行なった。次いで、撹拌しながら140℃まで昇温し、系内を水素置換した後、水素で1.5MPaまで昇圧して15分間水素添加反応を行った。反応液をろ過により水添触媒をろ別した後、溶媒を減圧留去し、減圧下80℃で24時間乾燥することで、エチレン・プロピレン共重合体であるエチレン・α-オレフィン共重合体(A-2)を得た。
【0169】
得られたエチレン・α-オレフィン共重合体(A-2)は、重量平均分子量(Mw):4800、分子量分布(Mw/Mn):1.7、100℃動粘度:150mm2/s、エチレン含有率:49モル%であり、融点は観測されなかった。
【0170】
実施例および比較例で用いたグラフト変性共重合体は以下の製造例(製造方法)で得た
【0171】
〔製造例2-1〕〔グラフト変性共重合体(X-1)〕
窒素吹込管、水冷コンデンサーおよび温度計を装着した撹拌機付ガラス製500ml反応器に、製造例1-1で得られた共重合体(A-1)120g、2-アリルオキシエタノール15gおよびジ-tert-ブチルペルオキシド3gを仕込み、1時間窒素置換を行い、溶存酸素を追い出した。その後反応器内温度を150℃に昇温し、3時間反応を行ったのち、反応器内温度を180℃に昇温し、減圧(10Torr)下で不純物(未反応2-アリルオキシエタノールおよびジ-tert-ブチルペルオキシドの分解物)を除去した。以上の操作により、グラフト変性共重合体(X-1)を得た。
【0172】
得られたグラフト変性共重合体(X-1)のグラフト割合は7質量%であった。なお、前記グラフト割合は、アセチル化法による水酸基価の測定により試料中の水酸基含量の定量を行い、その値から水酸基含有グラフトモノマー成分の含有量を算出した。また、重量平均分子量(Mw):4800、分子量分布(Mw/Mn):1.7、100℃動粘度:190mm2/sであり、融点は観測されなかった。
【0173】
〔製造例2-2〕〔グラフト変性共重合体(X-2)〕
製造例1-1で得られた共重合体(A-1)を製造例1-2で得られた共重合体(A-2)に変更したこと以外は、製造例2-1と同様に反応を行い、同様に不純物の除去を行った。以上の操作によりグラフト変性共重合体(X-2)を得た。
【0174】
得られたグラフト変性共重合体(X-2)のグラフト割合は6質量%であった。なお、前記グラフト割合は、アセチル化法による水酸基価の測定により試料中の水酸基含量の定量を行い、その値から水酸基含有グラフトモノマー成分の含有量を算出した。また、重量平均分子量(Mw):4600、分子量分布(Mw/Mn):1.8、100℃における動粘度:180mm2/sであり、融点は観測されなかった。
【0175】
実施例および比較例で用いた各成分の詳細は以下のとおりである。
[アミン化合物(Y)]
アミン化合物(Y-1)として、AMP-90(Angus Chemical社製、2-アミノ-2-メチル-1-プロパノール、AMP-90は同社の登録商標)を使用した。
アミン化合物(Y-2)として、2-(2-アミノエトキシ)エタノール(DGA)(富士フイルム和光純薬(株)製)を使用した。
【0176】
[シリコーンオイル(Z)含有エマルジョン]
シリコーンオイル(Z)含有エマルジョン(eZ-1)として、アルキルアラルキル変性シリコーンオイルエマルション DOWSITM SM 7001 Ex Emulsion(ダウ・東レ(株)製、不揮発分54%)を使用した。
【0177】
[界面活性剤]
界面活性剤(C-1)として、エマルゲン1108(花王(株)製、ポリオキシエチレンアルキルエーテル)を使用した。
【0178】
[実施例1~4、9、比較例1~2]
前記変性共重合体(X-1)~(X-2)、もしくは共重合体(A-1)~(A-2)のいずれかと、界面活性剤(C-1)とを表1に記載の配合量で配合し、撹拌速度50rpmで撹拌しながら、70℃まで昇温した。次に、アミン化合物(Y-1)~(Y-2)のいずれかと純水の混合溶液を加え、撹拌速度を150rpmとして30分間撹拌した。続いて70℃の温水を投入し、撹拌速度を250rpmとして60分間撹拌した後、30分間放冷することで水分散体組成物を得た。得られた水分散体組成物を、シリコーンオイル(Z)含有エマルジョン(eZ-1)と純水を38:62の比率で混合した水溶液と、常温にて撹拌速度250rpmで30分間撹拌・混合し、水系潤滑剤組成物を得た。得られた水系潤滑剤組成物は前記方法に従い、乳化安定性、金属への固着性、残存率を評価した。得られた水系潤滑剤組成物の質量比および評価結果を表1に示す。
【0179】
[実施例5~8]
前記変性共重合体(X-1)~(X-2)のいずれを表1に記載の配合量で配合し、撹拌速度50rpmで撹拌しながら、70℃まで昇温した。次に、アミン化合物(Y-1)~(Y-2)のいずれかと純水の混合溶液を加え、撹拌速度を150rpmとして30分間撹拌した。続いて70℃の温水を投入し、撹拌速度を250rpmとして60分間撹拌した後、30分間放冷することで水分散体組成物を得た。得られた水分散体組成物を、シリコーンオイル(Z)含有エマルジョン(eZ-1)と純水を38:62の比率で混合した水溶液と、常温にて撹拌速度250rpmで30分間撹拌・混合し、水系潤滑剤組成物を得た。得られた水系潤滑剤組成物は前記方法に従い、乳化安定性、金属への固着性、残存率を評価した。得られた水系潤滑剤組成物の質量比および評価結果を表1に示す。
【0180】
[比較例3]
前記変性共重合体(X-1)と、界面活性剤(C-1)とを表1に記載の配合量で配合し、撹拌速度50rpmで撹拌しながら、70℃まで昇温した。次に、70℃の温水を投入し、撹拌速度を250rpmとして60分間撹拌した後、30分間放冷することで水分散体組成物を得た。得られた水分散体組成物を、シリコーンオイル(Z)含有エマルジョン(eZ-1)と純水を38:62の比率で混合した水溶液と、常温にて撹拌速度250rpmで30分間撹拌・混合し、水系潤滑剤組成物を得た。得られた水系潤滑剤組成物の質量比および評価結果を表1に示す。
【0181】
[比較例4]
界面活性剤(C-1)を表1に記載の配合量で配合し、撹拌速度50rpmで撹拌しながら、70℃まで昇温した。次に、70℃の温水を投入し、撹拌速度を250rpmとして60分間撹拌した後、30分間放冷することで水分散体組成物を得た。得られた水分散体組成物を、シリコーンオイル(Z)含有エマルジョン(eZ-1)と純水を38:62の比率で混合した水溶液と、常温にて撹拌速度250rpmで30分間撹拌・混合し、水系潤滑剤組成物を得た。得られた水系潤滑剤組成物の質量比および評価結果を表1に示す。
【0182】
[比較例5~6]
アミン化合物(Y-1)~(Y-2)のいずれかと純水とを表1に記載の配合量で配合し、撹拌速度を250rpmで撹拌しながら70℃まで昇温させた後、60分間撹拌した。その後、30分間放冷することで水分散体組成物を得た。得られた水分散体組成物を、シリコーンオイル(Z)含有エマルジョン(eZ-1)と純水を38:62の比率で混合した水溶液と、常温にて撹拌速度250rpmで30分間撹拌・混合し、水系潤滑剤組成物を得た。得られた水系潤滑剤組成物の質量比および評価結果を表1に示す。
【0183】
[比較例7~8]
界面活性剤(C-1)を表1に記載の配合量で配合し、撹拌速度50rpmで撹拌しながら、70℃まで昇温した。次に、アミン化合物(Y-1)~(Y-2)のいずれかと純水の混合溶液を加え、撹拌速度を150rpmとして30分間撹拌した。続いて70℃の温水を投入し、撹拌速度を250rpmとして60分間撹拌した後、30分間放冷することで水分散体組成物を得た。得られた水分散体組成物を、シリコーンオイル(Z)含有エマルジョン(eZ-1)と純水を38:62の比率で混合した水溶液と、常温にて撹拌速度250rpmで30分間撹拌・混合し、水系潤滑剤組成物を得た。得られた水系潤滑剤組成物の質量比および評価結果を表1に示す。
【0184】
[比較例9]
シリコーンオイル(Z)含有エマルジョン(eZ-1)と純水とを38:62の比率で配合し、常温にて撹拌速度250rpmで30分間撹拌・混合し、水系潤滑剤組成物を得た。得られた水系潤滑剤組成物の質量比および評価結果を表1に示す。
【0185】
【表1】