(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024136243
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】自動植毛システム、学習プログラム、植毛パターンデータ決定プログラム、及び端末プログラム
(51)【国際特許分類】
A41G 3/00 20060101AFI20240927BHJP
【FI】
A41G3/00 H
A41G3/00 N
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023047292
(22)【出願日】2023-03-23
(71)【出願人】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(74)【代理人】
【識別番号】110003926
【氏名又は名称】弁理士法人イノベンティア
(72)【発明者】
【氏名】飯塚 直人
(72)【発明者】
【氏名】日月 快
(72)【発明者】
【氏名】小田 晶美
(57)【要約】
【課題】植毛完成品の髪型の決定を支援することが可能な自動植毛システム、学習プログラム、植毛パターンデータ決定プログラム、及び端末プログラムを提供する。
【解決手段】自動植毛システム100は、情報端末20及びサーバ装置30の少なくとも一方から人物の頭部が撮影された画像である頭部画像を取得し、頭部画像に基づいて、自動植毛装置120により作成される植毛完成品の髪型を決定し、決定された植毛完成品の髪型に基づいて、複数の座標の各々における植毛の有無を含む植毛パターンデータを決定し、植毛パターンデータに基づいて、植毛対象物に毛髪材を植毛する植毛機構部の制御を行う。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
情報端末及びサーバ装置の少なくとも一方から人物の頭部が撮影された画像である頭部画像を取得する画像取得部と、
前記頭部画像に基づいて、植毛機構部により作成される植毛完成品の髪型を決定する完成品髪型決定部と、
前記完成品髪型決定部により決定された前記植毛完成品の髪型に基づいて、複数の座標の各々における植毛の有無を含む植毛パターンデータを決定する植毛パターンデータ決定部と、
前記植毛パターンデータに基づいて、植毛対象物に毛髪材を植毛する植毛機構部の制御を行う機構制御部と、を備える、自動植毛システム。
【請求項2】
前記植毛機構部は、複数の毛髪材を収容するストッカと、前記ストッカから前記複数の毛髪材の少なくとも1つを引き出す引出鉤針と、を含み、
前記機構制御部は、前記植毛パターンデータに基づいて、前記ストッカの初期位置又は前記引出鉤針の初期位置を決定する、請求項1に記載の自動植毛システム。
【請求項3】
前記植毛パターンデータ決定部は、植毛完成品の髪型と植毛パターンデータとが対応付けられたデータベースを参照し、前記完成品髪型決定部により決定された前記植毛完成品の髪型に対応付けられた前記植毛パターンデータを出力する、請求項1または2に記載の自動植毛システム。
【請求項4】
情報端末及びサーバ装置の少なくとも一方から人物の頭部が撮影された画像である頭部画像を取得し、当該頭部画像に映る人物の識別子及び当該頭部画像の取得時期の少なくとも一方に対応付けて学習モデルに機械学習させる学習処理と、
前記学習処理の後に、類似する髪型ごとにクラスタリングし、クラスタリングされたクラスタのうち、特定の人物の識別子の頭部画像が存在するか、又は頭部画像の取得時期が最新であるクラスタを出力する学習済モデルを生成するモデル生成処理と、
出力された前記クラスタの髪型を、自動植毛装置による植毛により作成される植毛完成品の髪型として出力する出力処理と、をコンピュータのプロセッサに実行させる、学習プログラム。
【請求項5】
複数の人物の識別子のうちから、ユーザによる入力操作又は選択操作に基づいて決定された識別子を、前記特定の人物の識別子として登録する登録処理を、さらに前記プロセッサに実行させる、請求項4に記載の学習プログラム。
【請求項6】
情報端末及びサーバ装置の少なくとも一方から人物の頭部が撮影された画像である頭部画像に基づいて、自動植毛装置により作成される植毛完成品の髪型を決定する完成品髪型決定処理と、
前記完成品髪型決定処理により決定された前記植毛完成品の髪型に基づいて、複数の座標の各々における植毛の有無を含む植毛パターンデータを決定する植毛パターンデータ決定処理と、をコンピュータのプロセッサに実行させる、植毛パターンデータ決定プログラム。
【請求項7】
前記完成品髪型決定処理は、
情報端末及びサーバ装置の少なくとも一方から取得した頭部画像を、当該頭部画像に映る人物の識別子及び当該頭部画像の取得時期の少なくとも一方に対応付けて機械学習させ、類似する髪型ごとにクラスタリングすることにより生成された学習済モデルから、クラスタリングされたクラスタのうち、特定の人物の識別子の頭部画像が存在するか、又は頭部画像の取得時期が最新であるクラスタを出力させる処理と、
出力された前記クラスタの髪型を、前記植毛完成品の髪型に決定する処理と、を含む、請求項6に記載の植毛パターンデータ決定プログラム。
【請求項8】
前記植毛パターンデータ決定処理は、植毛完成品の髪型と植毛パターンデータとが対応付けられたデータベースを参照し、前記完成品髪型決定処理により決定された前記植毛完成品の髪型に対応付けられた前記植毛パターンデータを出力する処理を含む、請求項6または7に記載の植毛パターンデータ決定プログラム。
【請求項9】
撮影部を有する情報端末のプロセッサに制御処理を実行させる端末プログラムであって、
自動植毛装置の植毛パターンデータに基づく植毛により作成される植毛完成品の髪型を決定するための頭部画像であって、同一の人物の頭部を複数の方向から撮影する撮影処理と、
前記頭部画像に基づいて前記植毛完成品の髪型を決定する髪型決定装置であって、前記植毛完成品の髪型に基づいて、複数の座標の各々における植毛の有無を含む植毛パターンデータを決定する髪型決定装置に、前記撮影処理により撮影された前記頭部画像を送信する送信処理と、を前記プロセッサに実行させる、端末プログラム。
【請求項10】
前記撮影処理が実行される際に、撮影する方向又は頭部の部分を案内する表示又は音声を出力する出力処理を、前記プロセッサにさらに実行させる、請求項9に記載の端末プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動植毛システム、学習プログラム、植毛パターンデータ決定プログラム、及び端末プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、植毛対象物に毛髪材を結び付ける自動植毛システムが知られている。このような自動植毛システムは、例えば、特許文献1に開示されている。
【0003】
特許文献1の自動植毛装置は、短尺の毛髪糸が配置されたストッカと、第1鉤針と、第2鉤針と、植毛ネットが配置されたエキセンとを備える。エキセンは、第1鉤針が植毛ネットの横糸を引っ掛けた状態で、第1鉤針よりも下方となるように旋回する。そして、第2鉤針は、ストッカから毛髪糸を引き出す。そして、第1鉤針は、引き出された毛髪糸を補足し、その後、毛髪糸を植毛ネットに結び付ける(植毛する)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、上記特許文献1に記載されているような自動植毛装置により作成される植毛完成品(ウィッグ、かつらなど)の髪型は、多種多様であり、植毛完成品を設計する者が、作成する髪型を逐一決定するのは、時間及び労力がかかるという問題点がある。
【0006】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、植毛完成品の髪型の決定を支援することが可能な自動植毛システム、学習プログラム、植毛パターンデータ決定プログラム、及び端末プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、以下に開示する自動植毛システムは、情報端末及びサーバ装置の少なくとも一方から人物の頭部が撮影された画像である頭部画像を取得する画像取得部と、前記頭部画像に基づいて、植毛機構部により作成される植毛完成品の髪型を決定する完成品髪型決定部と、前記完成品髪型決定部により決定された前記植毛完成品の髪型に基づいて、複数の座標の各々における植毛の有無を含む植毛パターンデータを決定する植毛パターンデータ決定部と、前記植毛パターンデータに基づいて、植毛対象物に毛髪材を植毛する植毛機構部の制御を行う機構制御部と、を備える。なお、「髪型」には、頭髪の形状のみならず、頭髪の色彩を含む、広い概念を意味する。
【発明の効果】
【0008】
上記の構成によれば、植毛完成品の髪型の決定を支援することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、一実施形態における自動植毛システム100、情報端末20、及びサーバ装置30を示すブロック図である。
【
図3】
図3は、サーバ装置30のブロック図である。
【
図4】
図4は、自動植毛システム100による機械学習と学習済モデルMからの出力の例を示す図である。
【
図5】
図5は、機械学習装置130のブロック図である。
【
図6】
図6は、情報処理装置110のブロック図である。
【
図7】
図7は、データベース113bを説明するための図である。
【
図8】
図8は、植毛パターンデータDの例を示す図である。
【
図9】
図9は、自動植毛装置120のブロック図である。
【
図10】
図10は、自動植毛装置120の構造を後方から見た模式図である。
【
図11】
図11は、情報端末20のタッチパネル22に表示される画面例(1)の図である。
【
図12】
図12は、情報端末20のタッチパネル22に表示される画面例(2)の図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、本開示は、以下の実施形態に限定されるものではなく、本開示の構成を充足する範囲内で、適宜設計変更を行うことが可能である。また、以下の説明において、同一部分または同様な機能を有する部分には同一の符号を異なる図面間で共通して用い、その繰り返しの説明は省略する。また、実施形態および変形例に記載された各構成は、適宜組み合わされてもよいし、変更されてもよい。また、説明を分かりやすくするために、以下で参照する図面においては、構成が簡略化または模式化して示されたり、一部の構成部材が省略されたりしている。
【0011】
[自動植毛システム100の全体構成]
図1は、本実施形態における自動植毛システム100、情報端末20、及びサーバ装置30を示すブロック図である。自動植毛システム100は、情報端末20及びサーバ装置30から頭部画像PLを取得し、頭部画像PLに基づいて植毛完成品(かつら又はウィッグなど)の髪型を決定し、当該植毛完成品を製造するために、植毛対象物(植毛ネット)200(
図10参照)に毛髪材100a(
図10参照)を植毛するシステムである。例えば、自動植毛システム100は、市場で流行している髪型又は流行する可能性が高い髪型を推定し、推定した髪型を有する植毛完成品を製造するシステムである。ここで、「髪型」とは、例えば、頭部の各部における髪の長さ、髪の形状、髪の色、髪の密度、髪の分け目、及び髪の生え際の位置の情報を意味するが、これらのうちの一部の情報のみが含まれていてもよい。
【0012】
自動植毛システム100は、複数の情報端末20及び複数のサーバ装置30とネットワークNを介して通信するように構成されている。自動植毛システム100は、情報処理装置110と、自動植毛装置120と、機械学習装置130とを含む。なお、ネットワークNは、例えば、インターネット及びLocal Area Network(LAN)であるが、これら以外のネットワーク(例えば、Wide Area Network(WAN))を用いてもよい。
【0013】
[情報端末20の構成]
情報端末20は、例えば、植毛完成品を使用するユーザ(エンドユーザ)が使用する端末である。情報端末20は、例えば、スマートフォン、スマートウォッチ、パーソナルコンピュータ、またはタブレット端末として構成される。
【0014】
図2は、情報端末20のブロック図である。
図2に示すように、情報端末20は、制御部21と、タッチパネル22と、通信部23と、記憶部24と、スピーカ25とを含む。制御部21は、端末プログラム24aを実行することにより制御処理を実行するプロセッサ(回路)を含む。そして、制御部21は、情報端末20の各制御処理を実行する。また、タッチパネル22は、画像を表示するディスプレイを含むとともに、ユーザからのタッチ操作(入力操作又は選択操作)を受けつける。通信部23は、通信インターフェイスであり、ネットワークNに接続されている。記憶部24は、データを記憶可能なROM及びRAMの少なくとも一方を含む。記憶部24には、端末プログラム24aが記憶されている。端末プログラム24aは、情報端末20の制御処理を実行するアプリケーションプログラムである。なお、専用のアプリケーションソフトウェアを用いることに限られず、情報処理装置110に接続するブラウザ用ソフトウェア(例えば、Webブラウザ)が情報端末20にインストールされていてもよい。スピーカ25は、制御部21の指令に応じて音声を出力する。
【0015】
[サーバ装置30の構成]
図1に示すサーバ装置30は、例えば、Webサーバである。すなわち、サーバ装置30は、ネットワークN(例えば、インターネット)を介して、情報端末20、及び自動植毛システム100などクライアント端末のウェブブラウザに対して、データ(テキストデータ及び画像データ)を提供する装置である。
【0016】
図3は、サーバ装置30のブロック図である。
図3に示すように、サーバ装置30は、制御部31と、通信部32と、記憶部33とを含む。制御部31は、サーバ装置30の各制御処理を実行するプロセッサを含む。通信部32は、通信インターフェイスであり、ネットワークNに接続されている。記憶部33は、データを記憶可能なROM及びRAMの少なくとも一方を含む。記憶部33には、データベース33aが記憶されている。なお、サーバ装置30は、オンプレミス型(据え置き型)のサーバ装置でもよいし、クラウド上に構成されたサーバ装置であってもよい。
【0017】
[自動植毛システム100の各部の構成]
(機械学習装置130の構成)
機械学習装置130は、
図4に示した学習フェーズを実行するための装置である。すなわち、機械学習装置130は、頭部画像PL(頭髪画像)に、当該頭部画像PLに映る人物の識別子IL及び頭部画像PLの取得日時の少なくとも一方を対応付けて、学習モデルMaに機械学習させる。例えば、機械学習装置130は、ネットワークNを介してサーバ装置30から、頭部画像PLを取得する。また、機械学習装置130は、情報端末20から送信された人物(情報端末20の使用者)の識別子ILが対応付けられた頭部画像PLを受信する。
【0018】
また、機械学習装置130は、複数の頭部画像PLを学習モデルMaに機械学習させた後、クラスタリング処理を行う。クラスタリング処理とは、類似する特徴(類似する髪型)を有する複数の頭部画像PLごとに、複数のクラスタに分ける処理である。すなわち、機械学習装置130は、教師なし学習を実行する。機械学習装置130は、クラスタリング処理を実行して、学習済モデルMを完成させる。また、機械学習装置130は、学習済モデルMを完成させた後においても、情報端末20又はサーバ装置30から頭部画像PLを取得し、クラスタリング処理を実行して、学習済モデルMを更新する。
【0019】
図5に示すように、機械学習装置130は、制御部131と、記憶部132と、通信部133と、入力部134とを含む。制御部131は、プログラムを実行することにより制御処理を実行するプロセッサ(回路)を含む。そして、制御部131は、機械学習装置130の各制御処理を実行するように構成されている。記憶部132は、学習用データ記憶領域132aと、学習済モデル記憶領域132bとを含む。通信部133は、通信インターフェイスであり、ネットワークNに接続されている。入力部134は、キーボード、マウス、タッチパネル等のユーザインタフェースである。なお、入力部134は、画像を読み取る読取装置として構成されていてもよい。例えば、ユーザは、入力部134を用いて、各Webサイトを検索して、サーバ装置30から任意の頭部画像PLを取得する。また、制御部131は、通信部133を介して、(例えば、ユーザの操作を介することなく自動的に)、サーバ装置30及び情報端末20から頭部画像PL及び識別子ILを取得する。制御部131は、取得した頭部画像PL及び識別子ILを、学習用データ記憶領域132aに記憶する。そして、制御部131は、作成した学習済モデルMを、学習済モデル記憶領域132bに記憶する。
【0020】
(情報処理装置110の構成)
情報処理装置110は、
図4に示す出力フェーズの処理を実行する装置である。すなわち、情報処理装置110は、頭部画像PLが学習された学習済モデルMを用いて、植毛完成品の髪型Sを決定し、植毛パターンデータDを決定する装置である。
【0021】
図6に示すように、情報処理装置110は、制御部111と、表示部112と、記憶部113と、操作部114と、通信部115と、を含む。情報処理装置110は、例えば、パーソナルコンピュータ、スマートフォン、またはタブレット端末として構成されている。制御部111は、プログラム113aを実行することにより制御処理を実行するプロセッサ(回路)を含む。表示部112は、制御部111による指令に応じて画像を表示する液晶ディスプレイ又は有機ELディスプレイを含む。記憶部113は、SSD(Solid State Drive)又はHDD(Hard Disk Drive)の少なくとも一方を含む。そして、記憶部113には、植毛パターンデータDと、プログラム113aと、データベース113bとが記憶されている。操作部114は、キーボード、マウス、タッチパネル等のユーザインタフェースである。また、表示部112がタッチパネルとして構成されている場合には、当該タッチパネルが操作部114と表示部112とを兼ねてもよい。通信部115は、通信インターフェイスであり、ネットワークNを介して機械学習装置130と自動植毛装置120とに接続されている。ネットワークNは、例えば、インターネット、及びLAN(Local Area Network)である。なお、通信部115は、ネットワークNを介さずに、直接的に有線又は無線により自動植毛装置120に接続されてもよい。
【0022】
図4に示すように、制御部111は、学習済モデルMから、クラスタCを出力する。例えば、制御部111は、操作部114により入力された特定の人物の識別子、又は、複数の識別子から操作部114により選択された特定の人物の識別子、を取得する。制御部111は、学習済モデルMに、特定の人物の識別子の頭部画像が存在するクラスタCを出力させる。また、制御部111は、学習済モデルMに、頭部画像の取得時期が最新であるクラスタCを出力させる。「特定の人物」とは、一般のユーザに影響力(広告する力)を有する者であり、例えば、インフルエンサー、芸能人、ファッションモデル、スポーツ選手、及び、その他著名人である。この構成によれば、特定の人物(例えば、インフルエンサー及び著名人など)の識別子の頭部画像が存在するか、又は頭部画像の取得時期が最新であるクラスタの髪型が、植毛完成品の髪型として出力されるので、ユーザは、自身で流行中又は流行する可能性が高い髪型を調査することなく、流行中又は流行する可能性が高い髪型を植毛完成品の髪型に決定することができる。また、流行に合わせた生産計画を立てることができるので、不要な在庫をかかえるリスクを低減することができる。
【0023】
そして、制御部111は、学習済モデルMから出力されたクラスタCから髪型の特徴を抽出する。例えば、制御部111は、髪型の特徴として、頭部の各部における髪の長さ、髪の形状、髪の色、髪の密度、髪の分け目、及び髪の生え際の位置を、例えば、数値データとして抽出する。そして、制御部111は、抽出した髪型の特徴を、植毛完成品の髪型として決定する。
図7に示すように、データベース113bには、植毛完成品の髪型が、植毛パターンデータが対応付けられた状態で記憶されている。例えば、データベース113bでは、頭部の各部における髪の長さ、髪の形状、髪の色、髪の密度、髪の分け目、及び髪の生え際の位置、各特徴(パラメータ)が互いに異なる「髪型1」、「髪型2」・・・、が、植毛パターンデータD(「データ1」、「データ2」、・・・)にそれぞれ対応付けされている。
【0024】
そして、制御部111は、データベース113bを参照して、決定された植毛完成品の髪型に基づく、植毛パターンデータDを決定する。
図7の場合、制御部111は、決定された植毛完成品の髪型が「髪型1」の場合、「データ1」を取得する。植毛パターンデータDを都度新たに生成することなく、データベース113bを参照することにより、植毛完成品の髪型に対応する植毛パターンデータDを容易に決定することができる。この結果、制御部111の制御負担を軽減することができる。
【0025】
図8に示すように、植毛パターンデータDは、例えば、植毛対象物(ネット)の形状、植毛対象物の寸法、植毛のピッチ、各座標における植毛の有無と、各座標における毛髪の種類(例えば、色又は材料)、各座標における毛髪の本数、各座標における毛髪の結び方、及び各座標における毛髪の長さなどの情報が含まれる。
【0026】
(自動植毛装置120の構成)
自動植毛装置120は、植毛パターンデータDに基づいて、植毛対象物(ネット)に対して毛髪材(ファイバー、人毛、又は動物毛など)を植毛して、植毛完成品(ウィッグやかつら)を製造する装置である。
図9に示すように、自動植毛装置120は、植毛機構部121、制御部122、記憶部123、操作部124、通信部125、及び表示部126を含む。
【0027】
制御部122は、プログラムを実行することにより制御処理を実行するプロセッサ(回路)を含む。例えば、制御部122は、SCADA(Supervisory Control And Data Acquisition)として構成されていてもよい。記憶部123は、SSD(Solid State Drive)又はHDD(Hard Disk Drive)の少なくとも一方を含む。記憶部123には、情報処理装置110から取得した植毛パターンデータDが記憶されている。操作部124は、キーボード、マウス、タッチパネル等のユーザインタフェースである。また、表示部126がタッチパネルとして構成されている場合には、当該タッチパネルが操作部124と表示部126とを兼ねてもよい。通信部125は、通信インターフェイスであり、ネットワークを介して情報処理装置110に接続されている。ネットワークは、インターネット、及びLAN(Local Area Network)である。なお、通信部125は、ネットワークを介さずに、直接的に有線又は無線により情報処理装置110に接続されてもよい。
【0028】
植毛機構部121は、エキセン10、図示しない植毛鉤針、引出鉤針330、ストッカ40、及び反転ローラー80を含む。エキセン10、植毛鉤針、引出鉤針330、ストッカ40、及び反転ローラー80の各々は、図示しない駆動部により、移動されるか又は回転される。制御部122は、シーケンスプログラムに基づいて、植毛パターンデータDを参照しながら、駆動部を制御する。ストッカ40は、エキセン10よりも上方に配置されている。予め切り揃えられた短尺な複数本の毛髪材100aにより、毛髪材束100bが構成されている。毛髪材束100bは、ストッカ40の上にエキセン10の中心線の延びる方向に交差する方向に長い列状に寝かされて収容されている。植毛ネット200は、反転ローラー80及びエキセン10に展開している。引出鉤針330は、エキセン10よりも下方に配置される。
【0029】
そして、制御部122は、植毛パターンデータDに応じて、引出鉤針330の初期位置を決定する。例えば、
図10に示すように、植毛が行われる座標に一致する引出鉤針330の初期位置は、ストッカ40との距離が近い位置Q1に決定される。また、植毛が行われない座標に一致する引出鉤針330の初期位置は、ストッカ40との距離が遠い位置Q2に決定される。例えば、位置Q2は、位置Q1よりも低い位置である。これにより、複数の引出鉤針330が一斉にストッカ40に向かって上昇した際に、初期位置が位置Q2の引出鉤針330は、ストッカ40に到達しない。これにより、初期位置が位置Q2の引出鉤針330は、毛髪材100aを捕捉しないで位置Q2に戻ることとなり、当該引出鉤針330が配置された座標における植毛は実施されない。
【0030】
(頭部画像PLの撮影について)
図11及び
図12は、情報端末20により頭部画像PLが撮影される際における案内表示の例を示す図である。
図11及び
図12に示す処理は、情報端末20が、端末プログラム24aを実行することにより実現される。情報端末20は、植毛パターンデータDに基づく植毛により作成される植毛完成品の髪型を決定するための頭部画像を、撮影部26により撮影する。また、情報端末20は、同一の人物の頭部を複数の方向から撮影する。そして、情報端末20は、複数の方向から撮影した頭部画像PLを、撮影された人物の識別子IL(予め記憶部24に記憶されている)に対応付けた状態で、機械学習装置130に送信する。
【0031】
また、
図11及び
図12に示すように、情報端末20のタッチパネル22には、撮影が実行される際に、撮影する方向又は頭部の部分を案内する表示又は音声を出力する。例えば、
図11に示すように、「正面から撮影してください。」という文字がタッチパネル22上に表示され、「正面から撮影してください。」という音声メッセージが出力される。その後、タッチパネル22上に表示された「撮影」ボタンがタッチされることにより、頭部画像が撮影される。撮影後、
図12に示すように、「左側を撮影してください。」という文字がタッチパネル22上に表示され、「左側を撮影してください。」という音声メッセージが出力される。その後、例えば、頭部の右側、背面、及び上面の撮影が行われる。
【0032】
[変形例]
以上、上述した実施形態は本開示を実施するための例示に過ぎない。よって、本開示は上述した実施形態に限定されることなく、その趣旨を逸脱しない範囲内で上述した実施形態を適宜変形して実施することが可能である。
【0033】
(1)上記実施形態では、クラスタリング処理が実行された学習済モデルを用いて、植毛完成品の髪型を決定する例を示したが、本開示はこれに限られない。例えば、1つの頭部画像から特徴(髪型)を抽出して、抽出された髪型に基づいて、植毛パターンデータが決定されてもよい。
【0034】
(2)上記実施形態では、植毛パターンデータに基づいて、引出鉤針の初期位置を決定する例を示したが、本開示はこれに限られない。例えば、植毛パターンデータに基づいて、ストッカの初期位置を決定してもよい。例えば、植毛されない座標上のストッカが、植毛される座標上のストッカよりも上方(引出鉤針に対してより遠い位置)に配置されてもよい。
【0035】
(3)上記実施形態では、データベースを参照して、植毛完成品の髪型に対応付けられた植毛パターンデータを出力する例を示したが、本開示はこれに限られない。例えば、植毛完成品の髪型と植毛パターンデータとが機械学習された学習済モデルを用いて、入力された髪型に対応する植毛パターンデータが出力されてもよい。
【0036】
(4)上記実施形態では、植毛パターンデータが、植毛の有無、植毛パターンの形状、植毛パターンの寸法、ピッチ、毛髪材の種類、1つの座標当たりの髪の本数、毛髪材の長さ、及び結び方の各データを含む例を示したが、本開示はこれに限られない。すなわち、植毛パターンデータには、少なくとも植毛の有無が含まれていればよい。
【0037】
(5)上記実施形態では、撮影する方向又は頭部の部分を案内する表示及び音声の両方を情報端末から出力する例を示したが、本開示はこれに限られない。すなわち、表示又は音声のいずれか一方のみが出力されてもよい。
【0038】
(6)上記実施形態では、制御部の動作を制御する各プログラムが、記憶部に記憶されている態様を例示した。しかし、植毛システムにおけるプログラムを記憶した、コンピュータ読み取り可能な任意の記憶媒体(プログラム記憶媒体)や、無線または有線の通信回線を通じて伝送されるプログラム(プログラム製品)も、実施形態に含まれる。
【0039】
また、上述した構成は、以下のように説明することができる。
【0040】
第1の構成に係る自動植毛システムは、情報端末及びサーバ装置の少なくとも一方から人物の頭部が撮影された画像である頭部画像を取得する画像取得部と、頭部画像に基づいて、植毛機構部により作成される植毛完成品の髪型を決定する完成品髪型決定部と、完成品髪型決定部により決定された植毛完成品の髪型に基づいて、複数の座標の各々における植毛の有無を含む植毛パターンデータを決定する植毛パターンデータ決定部と、植毛パターンデータに基づいて、植毛対象物に毛髪材を植毛する植毛機構部の制御を行う機構制御部と、を備える(第1の構成)。
【0041】
上記第1の構成によれば、頭部画像に基づいて、植毛機構部により作成される植毛完成品の髪型を決定するので、植毛完成品の髪型を自動的に決定することができる。
【0042】
ここで、自動植毛装置は、各駆動部の動作内容が記述されたシーケンスプログラムを実行することにより動作が制御される。そして、自動植毛装置によって植毛されるパターンを変更しようとする場合、自動植毛装置を使用する者(ユーザ)が、植毛のパターンの変更に合わせた自動植毛装置内の各駆動部の動作内容を設計し、当該動作内容に合わせたシーケンスプログラムを記述し直す必要がある。ユーザが熟練者でない場合、これらのユーザの作業を行うことは困難である。また、ユーザが熟練者であっても、各駆動部の動作内容の設計とシーケンスプログラムを記述する作業には、時間及び労力がかかる。これに対して、上記第1の構成によれば、完成品髪型決定部により決定された植毛完成品の髪型に基づいて、複数の座標の各々における植毛の有無を含む植毛パターンデータを決定することができる。これにより、植毛パターンデータ決定部により植毛機構部により植毛を行うための植毛パターンデータが決定されるので、ユーザが熟練者でなくても、植毛パターンデータを容易に決定(設計)することができる。
【0043】
第1の構成において、植毛機構部は、複数の毛髪材を収容するストッカと、ストッカから複数の毛髪材の少なくとも1つを引き出す引出鉤針と、を含んでもよい。機構制御部は、前記植毛パターンデータに基づいて、ストッカの初期位置又は引出鉤針の初期位置を決定するように構成されてもよい(第2の構成)。
【0044】
上記第2の構成によれば、ストッカの初期位置又は引出鉤針の初期位置を決定することにより、座標に応じて植毛の有無を容易に制御することができる。
【0045】
第1または第2の構成において、植毛パターンデータ決定部は、植毛完成品の髪型と植毛パターンデータとが対応付けられたデータベースを参照し、完成品髪型決定部により決定された植毛完成品の髪型に対応付けられた植毛パターンデータを出力するように構成されてもよい(第3の構成)。
【0046】
上記第3の構成によれば、植毛パターンデータを新たに生成することなく、データベースを参照することにより、植毛完成品の髪型に対応する植毛パターンデータを容易に決定することができる。この結果、植毛パターンデータ決定部の制御負担を軽減することができる。
【0047】
第4の構成に係る学習プログラムは、情報端末及びサーバ装置の少なくとも一方から人物の頭部が撮影された画像である頭部画像を取得し、当該頭部画像に映る人物の識別子及び当該頭部画像の取得時期の少なくとも一方に対応付けて学習モデルに機械学習させる学習処理と、学習処理の後に、類似する髪型ごとにクラスタリングし、クラスタリングされたクラスタのうち、特定の人物の識別子の頭部画像が存在するか、又は頭部画像の取得時期が最新であるクラスタを出力する学習済モデルを生成するモデル生成処理と、出力されたクラスタの髪型を、自動植毛装置による植毛により作成される植毛完成品の髪型として出力する出力処理と、をコンピュータのプロセッサに実行させる(第4の構成)。
【0048】
上記第4の構成によれば、特定の人物(例えば、インフルエンサー及び著名人など)の識別子の頭部画像が存在するか、又は頭部画像の取得時期が最新であるクラスタの髪型が、植毛完成品の髪型として出力されるので、ユーザは、自身で流行中又は流行する可能性が高い髪型を調査することなく、流行中又は流行する可能性が高い髪型を植毛完成品の髪型に決定することができる。また、流行に合わせた生産計画を立てることができるので、不要な在庫をかかえるリスクを低減することができる。
【0049】
第4の構成において、プログラムは、複数の人物の識別子のうちから、ユーザによる入力操作又は選択操作に基づいて決定された識別子を、特定の人物の識別子として登録する登録処理を、さらにプロセッサに実行させるように構成されてもよい(第5の構成)。
【0050】
上記第5の構成によれば、ユーザが入力操作又は選択操作することにより、ユーザが希望する人物(著名人)の識別子を、特定の人物の識別子として登録することができる。この結果、プログラムは、ユーザが所望する植毛完成品の髪型を決定することができる。
【0051】
第6の構成に係る植毛パターンデータ決定プログラムは、情報端末及びサーバ装置の少なくとも一方から人物の頭部が撮影された画像である頭部画像に基づいて、自動植毛装置により作成される植毛完成品の髪型を決定する完成品髪型決定処理と、完成品髪型決定処理により決定された植毛完成品の髪型に基づいて、複数の座標の各々における植毛の有無を含む植毛パターンデータを決定する植毛パターンデータ決定処理と、をコンピュータのプロセッサに実行させる(第6の構成)。
【0052】
上記第6の構成によれば、頭部画像に基づいて、自動植毛装置により作成される植毛完成品の髪型を自動的に決定することができる。また、植毛パターンデータ決定処理により自動植毛装置により植毛を行うための植毛パターンデータが決定されるので、ユーザが熟練者でなくても、植毛パターンデータを容易に決定(設計)することができる。
【0053】
第6の構成において、完成品髪型決定処理は、情報端末及びサーバ装置の少なくとも一方から取得した頭部画像を、当該頭部画像に映る人物の識別子及び当該頭部画像の取得時期の少なくとも一方に対応付けて機械学習させ、類似する髪型ごとにクラスタリングすることにより生成された学習済モデルから、クラスタリングされたクラスタのうち、特定の人物の識別子の頭部画像が存在するか、又は頭部画像の取得時期が最新であるクラスタを出力させる処理と、出力されたクラスタの髪型を、植毛完成品の髪型に決定する処理と、を含んでもよい(第7の構成)。
【0054】
上記第7の構成によれば、特定の人物(例えば、インフルエンサー及び著名人など)の識別子の頭部画像が存在するか、又は頭部画像の取得時期が最新であるクラスタの髪型が、植毛完成品の髪型として出力されるので、ユーザは、自身で流行中又は流行する可能性が高い髪型を調査することなく、流行中又は流行する可能性が高い髪型を植毛完成品の髪型に決定することができる。
【0055】
第6または第7の構成において、植毛パターンデータ決定処理は、植毛完成品の髪型と植毛パターンデータとが対応付けられたデータベースを参照し、完成品髪型決定処理により決定された植毛完成品の髪型に対応付けられた植毛パターンデータを出力する処理を含んでもよい(第8の構成)。
【0056】
上記第8の構成によれば、植毛パターンデータを新たに生成することなく、データベースを参照することにより、植毛完成品の髪型に対応する植毛パターンデータを容易に決定することができる。この結果、植毛パターンデータ決定部の制御負担を軽減することができる。
【0057】
第9の構成に係る端末プログラムは、撮影部を有する情報端末のプロセッサに制御処理を実行させる端末プログラムであって、自動植毛装置の植毛パターンデータに基づく植毛により作成される植毛完成品の髪型を決定するための頭部画像であって、同一の人物の頭部を複数の方向から撮影する撮影処理と、頭部画像に基づいて植毛完成品の髪型を決定する髪型決定装置であって、植毛完成品の髪型に基づいて、複数の座標の各々における植毛の有無を含む植毛パターンデータを決定する髪型決定装置に、撮影処理により撮影された頭部画像を送信する送信処理と、をプロセッサに実行させる(第9の構成)。
【0058】
上記第9の構成によれば、植毛完成品の髪型を決定するための頭部画像を、髪型決定装置に送信することができるので、植毛完成品の髪型の決定を支援することができる。
【0059】
第9の構成において、端末プログラムは、撮影処理が実行される際に、撮影する方向又は頭部の部分を案内する表示又は音声を出力する出力処理を、プロセッサにさらに実行させるように構成されてもよい(第10の構成)。
【0060】
上記第10の構成によれば、表示又は音声に従って、ユーザは撮影すればよいので、ユーザは、容易に頭部画像を撮影することができる。
【符号の説明】
【0061】
20:情報端末、21:制御部、22:タッチパネル、24a:端末プログラム、25:スピーカ、26:撮影部、30:サーバ装置、100:自動植毛システム、100a:毛髪材、110:情報処理装置、111:制御部、113:記憶部、113a:プログラム、120:自動植毛装置、121:植毛機構部、122:制御部、130:機械学習装置、131:制御部、330:引出鉤針、D:植毛パターンデータ、IL:識別子、M:学習済モデル、Ma:学習モデル、PL:頭部画像、S:髪型