(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024136246
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】画像処理装置及び画像処理プログラム
(51)【国際特許分類】
H04N 1/00 20060101AFI20240927BHJP
【FI】
H04N1/00 002B
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023047295
(22)【出願日】2023-03-23
(71)【出願人】
【識別番号】000005496
【氏名又は名称】富士フイルムビジネスイノベーション株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】林 輝威
(72)【発明者】
【氏名】綱島 俊治
(72)【発明者】
【氏名】三好 伸和
(72)【発明者】
【氏名】黒田 生喜
【テーマコード(参考)】
5C062
【Fターム(参考)】
5C062AA05
5C062AB17
5C062AB21
5C062AB38
5C062AB40
5C062AC02
5C062AC03
5C062AC34
5C062AC55
5C062AE01
(57)【要約】
【課題】画像データの同期信号のノイズを計測する場合と比較して、画像データの異常の予兆を精度良く検出する。
【解決手段】画像処理装置10は、シリアル転送により画像データ及び同期信号を含む転送データを取得する取得部20と、転送データから再生クロックを抽出するクロック再生部21と、自装置で生成した計測用クロックのカウント数に応じて、予め定めたサンプリング数を設定し、サンプリング数によって定まる周期毎に再生クロックのクロック数の変動を監視し、クロック数が第1上限閾値と第1下限閾値とにより定まる第1範囲内で変動した場合に、画像データに異常の予兆が有ると判定する異常判定部23と、を備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロセッサを備え、
前記プロセッサは、
シリアル転送により画像データ及び同期信号を含む転送データを取得し、
前記転送データから再生クロックを抽出し、
自装置で生成した計測用クロックのカウント数に応じて、予め定めたサンプリング数を設定し、
前記サンプリング数によって定まる周期毎に前記再生クロックのクロック数の変動を監視し、
前記クロック数が第1上限閾値と第1下限閾値とにより定まる第1範囲内で変動した場合に、前記画像データに異常の予兆が有ると判定する、
画像処理装置。
【請求項2】
前記プロセッサは、前記同期信号の間隔を1つの単位とし、当該単位を予め定めた数の間隔に分割し、前記サンプリング数を設定する、
請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記プロセッサは、前記画像データの1ライン当たりの画素数を1つの単位とし、当該単位を予め定めた数の間隔に分割し、前記サンプリング数を設定する、
請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記プロセッサは、前記クロック数が前記第1範囲内で、かつ、前記第1上限閾値よりも小さい第2上限閾値と前記第1下限閾値よりも大きい第2下限閾値とにより定まる第2範囲外である場合に、前記画像データに異常の予兆が有ると判定する、
請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項5】
前記プロセッサは、予め定めたデータ数に基づいて前記サンプリング数を設定し、
前記サンプリング数によって定まる範囲の開始端と終了端に対応する前記第2範囲は、前記範囲の開始端と終了端との間の部分に対応する前記第2範囲よりも狭い、
請求項4に記載の画像処理装置。
【請求項6】
前記プロセッサは、前記画像データに異常の予兆が有ると予め定めた回数以上判定した場合に、異常の予兆が有ることを報知する、
請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項7】
前記プロセッサは、前記クロック数が前記第1範囲外である場合に、前記画像データに異常が発生していると判定する、
請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項8】
前記プロセッサは、前記画像データに異常が発生していると判定した場合、異常が発生していることを報知する、
請求項7に記載の画像処理装置。
【請求項9】
シリアル転送により画像データ及び同期信号を含む転送データを取得し、
前記転送データから再生クロックを抽出し、
自装置で生成した計測用クロックのカウント数に応じて、予め定めたサンプリング数を設定し、
前記サンプリング数によって定まる周期毎に前記再生クロックのクロック数の変動を監視し、
前記クロック数が第1上限閾値と第1下限閾値とにより定まる第1範囲内で変動した場合に、前記画像データに異常の予兆が有ると判定する処理を、
コンピュータに実行させるための画像処理プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像処理装置及び画像処理プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、同期信号におけるノイズの発生状況に基づいてメンテナンスを行う画像形成装置が記載されている。この画像形成装置は、読み取った原稿の画像データを生成し、画像データを同期信号に同期させて転送する読み取り手段と、読み取り手段から受信した画像データに画像処理を施す画像処理手段と、同期信号に発生したノイズを除去するマスク処理を実行するマスク処理実行手段と、同期信号に発生したノイズに関する情報を生成する生成手段と、画像形成装置のメンテナンスに関する管理を行う管理装置へ直接的又は間接的にノイズに関する情報を送信する送信手段と、を備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、シリアル転送により画像データ及び同期信号を含む転送データを取得する画像処理装置においては、同期信号のノイズを計測することにより、画像データの異常の予兆を検出する場合がある。
【0005】
しかしながら、同期信号のノイズとして計測できないレベルの異常の予兆は検出することができないため、検出精度の向上が望まれている。
【0006】
本開示は、画像データの同期信号のノイズを計測する場合と比較して、画像データの異常の予兆を精度良く検出することができる画像処理装置及び画像処理プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、第1態様に係る画像処理装置は、プロセッサを備え、前記プロセッサが、シリアル転送により画像データ及び同期信号を含む転送データを取得し、前記転送データから再生クロックを抽出し、自装置で生成した計測用クロックのカウント数に応じて、予め定めたサンプリング数を設定し、前記サンプリング数によって定まる周期毎に前記再生クロックのクロック数の変動を監視し、前記クロック数が第1上限閾値と第1下限閾値とにより定まる第1範囲内で変動した場合に、前記画像データに異常の予兆が有ると判定する。
【0008】
また、第2態様に係る画像処理装置は、第1態様に係る画像処理装置において、前記プロセッサが、前記同期信号の間隔を1つの単位とし、当該単位を予め定めた数の間隔に分割し、前記サンプリング数を設定する。
【0009】
また、第3態様に係る画像処理装置は、第1態様に係る画像処理装置において、前記プロセッサが、前記画像データの1ライン当たりの画素数を1つの単位とし、当該単位を予め定めた数の間隔に分割し、前記サンプリング数を設定する。
【0010】
また、第4態様に係る画像処理装置は、第1態様に係る画像処理装置において、前記プロセッサが、前記クロック数が前記第1範囲内で、かつ、前記第1上限閾値よりも小さい第2上限閾値と前記第1下限閾値よりも大きい第2下限閾値とにより定まる第2範囲外である場合に、前記画像データに異常の予兆が有ると判定する。
【0011】
また、第5態様に係る画像処理装置は、第4態様に係る画像処理装置において、前記プロセッサが、予め定めたデータ数に基づいて前記サンプリング数を設定し、前記サンプリング数によって定まる範囲の開始端と終了端に対応する前記第2範囲は、前記範囲の開始端と終了端との間の部分に対応する前記第2範囲よりも狭い。
【0012】
また、第6態様に係る画像処理装置は、第1態様に係る画像処理装置において、前記プロセッサが、前記画像データに異常の予兆が有ると予め定めた回数以上判定した場合に、異常の予兆が有ることを報知する。
【0013】
また、第7態様に係る画像処理装置は、第1態様に係る画像処理装置において、前記プロセッサが、前記クロック数が前記第1範囲外である場合に、前記画像データに異常が発生していると判定する。
【0014】
また、第8態様に係る画像処理装置は、第7態様に係る画像処理装置において、前記プロセッサが、前記画像データに異常が発生していると判定した場合、異常が発生していることを報知する。
【0015】
更に、上記目的を達成するために、第9態様に係る画像処理プログラムは、シリアル転送により画像データ及び同期信号を含む転送データを取得し、前記転送データから再生クロックを抽出し、自装置で生成した計測用クロックのカウント数に応じて、予め定めたサンプリング数を設定し、前記サンプリング数によって定まる周期毎に前記再生クロックのクロック数の変動を監視し、前記クロック数が第1上限閾値と第1下限閾値とにより定まる第1範囲内で変動した場合に、前記画像データに異常の予兆が有ると判定する処理を、コンピュータに実行させる。
【発明の効果】
【0016】
第1態様及び第9態様によれば、画像データの同期信号のノイズを計測する場合と比較して、画像データの異常の予兆を精度良く検出することができる、という効果を有する。
【0017】
第2態様によれば、同期信号を用いてサンプリング数を設定することができる、という効果を有する。
【0018】
第3態様によれば、画像データを用いてサンプリング数を設定することができる、という効果を有する。
【0019】
第4態様によれば、第1範囲のみを用いて異常の予兆を判定する場合と比較して、異常の予兆をより精度良く検出することができる、という効果を有する。
【0020】
第5態様によれば、第2範囲を変化させない場合と比較して、異常の予兆をより精度良く検出することができる、という効果を有する。
【0021】
第6態様によれば、ユーザが画像データに異常の予兆が有ることを把握することができる、という効果を有する。
【0022】
第7態様によれば、画像データの同期信号のノイズを計測する場合と比較して、画像データの異常の発生を精度良く検出することができる、という効果を有する。
【0023】
第8態様によれば、ユーザが画像データに異常が発生していることを把握することができる、という効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】実施形態に係る画像処理システムの構成の一例を示すブロック図である。
【
図2】実施形態に係る画像処理装置の機能的な構成の一例を示すブロック図である。
【
図3】実施形態に係る異常判定部の具体的な構成の一例を示すブロック図である。
【
図4】実施形態に係る水平同期信号、計測用クロック数、及び再生クロック数の一例を示すタイミングチャートである。
【
図6】実施形態に係る画像処理プログラムによる処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面を参照して、本開示の技術を実施するための形態の一例について詳細に説明する。なお、動作、作用、機能が同じ働きを担う構成要素及び処理には、全図面を通して同じ符号を付与し、重複する説明を適宜省略する場合がある。各図面は、本開示の技術を十分に理解できる程度に、概略的に示してあるに過ぎない。よって、本開示の技術は、図示例のみに限定されるものではない。また、本実施形態では、本開示の技術と直接的に関連しない構成や周知な構成については、説明を省略する場合がある。
【0026】
図1は、本実施形態に係る画像処理システム100の構成の一例を示すブロック図である。
【0027】
図1に示すように、本実施形態に係る画像処理システム100は、画像処理装置10と、画像読取装置30と、を備えている。画像処理装置10は、シリアル通信に用いるケーブルCを介して、画像読取装置30とシリアル通信可能に接続される。
【0028】
画像処理装置10は、CPU(Central Processing Unit)11と、ROM(Read Only Memory)12と、RAM(Random Access Memory)13と、入出力部(I/O)14と、受信部15と、画像処理部16と、表示部17と、を備えている。なお、
図1においては、画像処理装置10の主要部のみを示しており、受信部15、画像処理部16、及び表示部17以外の各機能部の図示は省略する。
【0029】
CPU11、ROM12、RAM13、及びI/O14は、バスを介して各々接続されている。I/O14には、受信部15、画像処理部16、及び表示部17と接続されている。受信部15、画像処理部16、及び表示部17は、I/O14を介して、CPU11と相互に通信可能とされる。
【0030】
CPU11、ROM12、RAM13、及びI/O14によって制御回路が構成される。制御回路は、画像処理装置10の一部の動作を制御するサブ制御回路として構成されてもよいし、画像処理装置10の全体の動作を制御するメイン制御回路の一部として構成されてもよい。制御回路の各ブロックの一部又は全部には、例えば、LSI(Large Scale Integration)等の集積回路又はIC(Integrated Circuit)チップセットが用いられる。上記各ブロックに個別の回路を用いてもよいし、一部又は全部を集積した回路を用いてもよい。上記各ブロック同士が一体として設けられてもよいし、一部のブロックが別に設けられてもよい。また、上記各ブロックのそれぞれにおいて、その一部が別に設けられてもよい。制御回路の集積化には、LSIに限らず、専用回路又は汎用プロセッサを用いてもよい。
【0031】
ROM12には、本実施形態に係る異常予兆判定を実行する画像処理プログラム12Aが記憶される。画像処理プログラム12Aは、例えば、画像処理装置10に予めインストールされていてもよい。画像処理プログラム12Aは、不揮発性の記憶媒体に記憶して、又はネットワークを介して配布して、画像処理装置10に適宜インストールすることで実現してもよい。なお、不揮発性の記憶媒体の例としては、CD-ROM(Compact Disc Read Only Memory)、光磁気ディスク、HDD、DVD-ROM(Digital Versatile Disc Read Only Memory)、フラッシュメモリ、メモリカード等が想定される。
【0032】
一方、画像読取装置30は、送信部31を備える。送信部31は、画像データ及び同期信号を含む転送データをシリアル転送で画像処理装置10に送信する。
【0033】
画像処理装置10の受信部15は、画像読取装置30の送信部31から送信された転送データを受信する。
【0034】
画像処理部16は、受信部15により受信された転送データに含まれる画像データに対して各種の画像処理を行う。
【0035】
表示部17には、例えば、液晶ディスプレイ(LCD:Liquid Crystal Display)、有機EL(Electro Luminescence)ディスプレイ等が用いられる。表示部17は、画像処理装置10に関する各種情報を表示する。
【0036】
ところで、上述したように、シリアル転送により画像データ及び同期信号を含む転送データを取得する画像処理装置において、同期信号のノイズを計測することにより、画像データの異常の予兆を検出する場合、同期信号のノイズとして計測できないレベルの異常の予兆は検出することができない。このため、異常の予兆の検出精度の向上が望まれている。
【0037】
本実施形態に係る画像処理装置10は、シリアル転送により画像データ及び同期信号を含む転送データを取得し、転送データから再生クロックを抽出し、自装置で生成した計測用クロックのカウント数に応じて、予め定めたサンプリング数を設定し、サンプリング数によって定まる周期毎に再生クロックのクロック数の変動を監視し、クロック数が第1上限閾値と第1下限閾値とにより定まる第1範囲内で変動した場合に、画像データに異常の予兆が有ると判定する。
【0038】
つまり、同期信号以外の全ての信号の基となる再生クロックのクロック数を監視対象としたため、画像データの同期信号のノイズを計測する場合と比較して、画像データの異常の予兆が精度良く検出される。
【0039】
具体的には、
図2を参照して、本実施形態に係る画像処理装置10の機能構成について説明する。
【0040】
図2は、本実施形態に係る画像処理装置10の機能的な構成の一例を示すブロック図である。
【0041】
図2に示すように、本実施形態に係る画像処理装置10は、取得部20、クロック再生部21、変換部22、異常判定部23、報知部24、及び画像処理部16を備えている。なお、取得部20、クロック再生部21、変換部22、異常判定部23、及び報知部24は、CPU11がROM12に記憶されている画像処理プログラム12AをRAM13に書き込むことで実行される。
【0042】
取得部20は、シリアル転送により画像データ及び同期信号を含む転送データを取得する。なお、画像データは、静止画でもよいし、動画でもよい。
【0043】
クロック再生部21は、取得部20により取得された転送データから再生クロックを抽出する。
【0044】
変換部22は、シリアル/パラレル変換を行う。変換部22は、クロック再生部21から入力された再生クロック及び転送データをシリアル/パラレル変換し、得られた画素クロック、同期信号、及び画像データを画像処理部16に出力する。なお、取得部20、クロック再生部21、及び変換部22は、受信部15の一機能として実現してもよい。
【0045】
異常判定部23は、自装置で生成した計測用クロックのカウント数に応じて、予め定めたサンプリング数を設定し、サンプリング数によって定まる周期毎に再生クロックのクロック数の変動を監視し、クロック数が第1上限閾値ThH1と第1下限閾値ThL1とにより定まる第1範囲W1内で変動した場合に、画像データに異常の予兆が有ると判定する。具体的には、異常判定部23は、再生クロックのクロック数が第1範囲W1内で、かつ、第2範囲W2外である場合に、画像データに異常の予兆が有ると判定する。なお、第2範囲W2は、第1上限閾値ThH1よりも小さい第2上限閾値ThH2と第1下限閾値ThL1よりも大きい第2下限閾値ThL2とにより定まる範囲である。
【0046】
また、異常判定部23は、再生クロックのクロック数が第1範囲W1外である場合に、画像データに異常が発生していると判定する。
【0047】
なお、異常判定部23は、例えば、同期信号の間隔を1つの単位とし、当該単位を予め定めた数の間隔に分割し、サンプリング数を設定する。また、異常判定部23は、画像データの1ライン当たりの画素数を1つの単位とし、当該単位を予め定めた数の間隔に分割し、サンプリング数を設定してもよい。
【0048】
図3は、本実施形態に係る異常判定部23の具体的な構成の一例を示すブロック図である。
【0049】
図3に示すように、本実施形態に係る異常判定部23は、クロックカウンタ23A、23Bと、比較部23Cと、を備えている。
【0050】
クロックカウンタ23Aは、計測用クロックを入力とし、計測用クロックのクロック数を出力する。一方、クロックカウンタ23Bは、再生クロックを入力とし、再生クロックのクロック数を出力する。
【0051】
比較部23Cは、クロックカウンタ23Aからの計測用クロックのクロック数、及び、クロックカウンタ23Bからの再生クロックのクロック数を入力とし、異常の発生又は異常の予兆を判定結果として出力する。比較部23Cには、比較閾値パラメータとして、上述の第1上限閾値ThH1、第1下限閾値ThL1、第2上限閾値ThH2、及び第2下限閾値ThL2が入力される。これらの第1上限閾値ThH1、第1下限閾値ThL1、第2上限閾値ThH2、及び第2下限閾値ThL2は、例えば、ROM12に予め記憶されている。比較部23Cは、上述したように、再生クロックのクロック数が第1上限閾値ThH1と第1下限閾値ThL1とにより定まる第1範囲W1内で、かつ、第2上限閾値ThH2と第2下限閾値ThL2とにより定まる第2範囲W2外である場合に、画像データに異常の予兆が有ると判定し、再生クロックのクロック数が第1範囲W1外である場合に、画像データに異常が発生していると判定する。
【0052】
次に、
図4及び
図5を参照して、本実施形態に係る異常予兆判定処理について具体的に説明する。
【0053】
図4は、本実施形態に係る水平同期信号、計測用クロック数、及び再生クロック数の一例を示すタイミングチャートである。また、
図5は、
図4に示すX部を拡大した図である。
【0054】
例えば、水平同期信号の間隔、あるいは、画像データの1ライン当たりの画素数を1つの単位とし、当該単位を計測用クロック数により所定数のサンプリング間隔に分割する。例えば、
図4に示すように、画像データの1ライン当たりの画素数を8分割し、8つのサンプリング間隔T1とする。具体的には、画像データを600dpi(dot per inch)で画像処理する場合、A4サイズ長手方向の画素数は7000以上となり、1画素を1画素クロックで処理する場合、1ラインのサイクルは8000画素クロック程度となる。1ラインを8分割する場合、サンプリング間隔T1は1000画素クロックとなる。
【0055】
シリアル/パラレル変換前の再生クロックは、シリアル/パラレル変換後の画素クロックよりも早い。例えば、画素クロックが25MHzとした場合、再生クロックは100MHzとなる。一例として、計測用クロックを画素クロックとし、画素クロックで1000カウントをサンプリング間隔T1とする場合、理想的な再生クロックでカウントすると、サンプリング間隔T1毎のクロック数は4000になる。このとき、データ転送時の電磁干渉を低減するために転送時クロックにSSC(Spread Spectrum Clocking:スペクトラム拡散クロック)をかける場合がある。SSCは、クロックの周波数を意図的に変調する手法である。例えば、0.5%ダウンスプレッドでSSCをかけた場合、再生クロックのクロック数は、3980以上4000以下となる。
【0056】
上記の動作環境において、データ転送時の変動などを考慮して、受信した転送データから抽出した再生クロック(例えば、4000)に対して、例えば±3%程度のマージンを持たせて、第1範囲W1を定める、第1下限閾値ThL1を3860とし、第1上限閾値ThH1を4120として設定する。再生クロックのクロック数が、この第1範囲W1から外れた場合に、受信した画像データに異常発生(エラー発生)として判定する。
【0057】
また、第1範囲W1内であっても、再生クロックのクロック数が変動した場合に異常の予兆有りと判定する。異常の予兆は、異常判定に用いる第1上限閾値ThH1及び第1下限閾値ThL1とは別に、異常予兆判定に用いる第2上限閾値ThH2及び第2下限閾値ThL2を設定する。受信した転送データから抽出した再生クロック(例えば、4000)に対して、例えば±2%程度のマージンを持たせて、第2範囲W2を定める、第2下限閾値ThL2を3900とし、第2上限閾値ThH2を4080として設定する。再生クロックのクロック数が、第1範囲W1内で、かつ、第2範囲W2から外れた場合に、受信した画像データに異常予兆有りとして判定する。
【0058】
図4に示す8つのサンプリング間隔T1に対応する再生クロック数をC1~C8とした場合、再生クロック数C3、C6では、一例として、
図5に示すように、異常予兆有りと判定し、再生クロック数C4、C5では、異常発生(エラー発生)と判定する。
【0059】
ここで、予め定めたデータ数に基づいてサンプリング数を設定し、サンプリング数によって定まる範囲(以下、「サンプリング範囲」という。)の開始端と終了端に対応する第2範囲W2を、サンプリング範囲の開始端と終了端との間の部分に対応する第2範囲W2よりも狭くしてもよい。なお、予め定めたデータ数は、例えば、同期信号の間隔を1つの単位とし、当該単位を予め定めた数の間隔に分割して定めてもよいし、画像データの1ライン当たりの画素数を1つの単位とし、当該単位を予め定めた数の間隔に分割して定めてもよい。サンプリング範囲の開始端と終了端は、例えば、
図4に示す再生クロック数C1、C8として表され、サンプリング範囲の開始端と終了端との間の部分は、例えば、
図4に示す再生クロック数C2~C7として表される。
【0060】
つまり、サンプリング範囲の開始端(再生クロック数C1)及び終了端(再生クロック数C8)では、サンプリング範囲のその他の部分(再生クロック数C2~C7)よりも異常が発生し易い。このため、サンプリング範囲の開始端(再生クロック数C1)及び終了端(再生クロック数C8)では、サンプリング範囲のその他の部分(再生クロック数C2~C7)と比較して、第2範囲W2を狭くして、異常の予兆を厳しく判定することが望ましい。このように部分的に第2範囲W2を変化させることにより、異常の予兆がより精度良く検出される。
【0061】
図2に戻り、異常判定部23の判定結果は、報知部24に入力される。報知部24は、異常判定部23が画像データに異常の予兆が有ると予め定めた回数以上判定した場合に、異常の予兆が有ることを報知する。予め定めた回数には、例えば、実験あるいは過去の知見に基づき適切な回数が設定される。ここで、報知とは、例えば、表示部17に異常の予兆が有ることを示すメッセージを表示して報知してもよいし、スピーカ(図示省略)から異常の予兆を示す警告音を出力して報知してもよい。
【0062】
また、報知部24は、異常判定部23が画像データに異常が発生していると判定した場合、異常が発生していることを報知する。ここで、報知とは、例えば、表示部17に異常の発生を示すメッセージを表示して報知してもよいし、スピーカ(図示省略)から異常の発生を示す警告音を出力して報知してもよい。
【0063】
次に、
図6を参照して、本実施形態に係る画像処理装置10の作用について説明する。
【0064】
図6は、本実施形態に係る画像処理プログラム12Aによる処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【0065】
まず、画像読取装置30から、シリアル転送により画像データ及び同期信号を含む転送データを受信すると、CPU11により画像処理プログラム12Aが実行され、以下の各ステップを実行する。
【0066】
図6のステップS101では、CPU11が、シリアル転送により画像データ及び同期信号を含む転送データを取得する。
【0067】
ステップS102では、CPU11が、ステップS101で取得した転送データから再生クロックを抽出する。
【0068】
ステップS103では、CPU11が、一例として、上述の
図4に示すように、自装置で生成した計測用クロックのカウント数に応じて、サンプリング数を設定する。
【0069】
ステップS104では、CPU11が、一例として、上述の
図4に示すように、ステップS103で設定したサンプリング数によって定まる周期毎に再生クロックの変動を監視する。
【0070】
ステップS105では、CPU11が、一例として、上述の
図5に示すように、再生クロックのクロック数が第1範囲W1内でかつ第2範囲W2外であるか否かを判定する。再生クロックのクロック数が第1範囲W1内でかつ第2範囲W2外であると判定した場合(肯定判定の場合)、ステップS106に移行し、再生クロックのクロック数が第1範囲W1内でかつ第2範囲W2外ではないと判定した場合(否定判定の場合)、ステップS109に移行する。
【0071】
ステップS106では、CPU11が、一例として、上述の
図5に示すように、画像データについて異常の予兆が有ると判定する。
【0072】
ステップS107では、CPU11が、異常の予兆が有ると判定した回数が所定回数以上であるか否かを判定する。異常の予兆が有ると判定した回数が所定回数以上であると判定した場合(肯定判定の場合)、ステップS108に移行し、異常の予兆が有ると判定した回数が所定回数未満であると判定した場合(否定判定の場合)、ステップS104に戻り処理を繰り返す。
【0073】
ステップS108では、CPU11が、一例として、表示部17に異常の予兆が有ることを示すメッセージを表示して、異常の予兆を報知し、本画像処理プログラム12Aによる一連の処理を終了する。
【0074】
一方、ステップS109では、CPU11が、一例として、上述の
図5に示すように、再生クロックのクロック数が第1範囲W1外であるか否かを判定する。再生クロックのクロック数が第1範囲W1外であると判定した場合(肯定判定の場合)、ステップS110に移行し、再生クロックのクロック数が第1範囲W1外ではないと判定した場合(否定判定の場合)、ステップS104に戻り処理を繰り返す。
【0075】
ステップS110では、CPU11が、一例として、上述の
図5に示すように、画像データについて異常の発生と判定する。
【0076】
ステップS111では、CPU11が、一例として、表示部17に異常の発生を示すメッセージを表示して、異常の発生を報知し、本画像処理プログラム12Aによる一連の処理を終了する。
【0077】
このように本実施形態によれば、同期信号以外の全ての信号の基となる再生クロックのクロック数を監視対象としたため、画像データの同期信号のノイズを計測する場合と比較して、画像データの異常の予兆が精度良く検出される。
【0078】
また、画像データの1ラインを複数の範囲に分割して再生クロックのクロック数を監視することができるため、画像データの1ラインにおける異常の予兆の分布が精度良く検出される。
【0079】
なお、上記各実施形態において、プロセッサとは広義的なプロセッサを指し、汎用的なプロセッサ(例えば、CPU:Central Processing Unit、等)や、専用のプロセッサ(例えば、GPU:Graphics processing Unit、ASIC:Application Specific Integrated Circuit、FPGA:Field Programmable Gate Array、プログラマブル論理デバイス、等)を含むものである。
【0080】
また、上記各実施形態におけるプロセッサの動作は、1つのプロセッサによって成すのみでなく、物理的に離れた位置に存在する複数のプロセッサが協働して成すものであってもよい。また、プロセッサの各動作の順序は、上記各実施形態において記載した順序のみに限定されるものではなく、適宜変更してもよい。
【0081】
以上、実施形態は、画像処理装置が備える各部の機能をコンピュータに実行させるためのプログラムの形態としてもよい。実施形態は、これらのプログラムを記憶したコンピュータが読み取り可能な非一時的記憶媒体の形態としてもよい。
【0082】
その他、上記実施形態で説明した画像処理装置の構成は、一例であり、主旨を逸脱しない範囲内において状況に応じて変更してもよい。
【0083】
また、上記実施形態で説明したプログラムの処理の流れも、一例であり、主旨を逸脱しない範囲内において不要なステップを削除したり、新たなステップを追加したり、処理順序を入れ替えたりしてもよい。
【0084】
また、上記実施形態では、プログラムを実行することにより、実施形態に係る処理がコンピュータを利用してソフトウェア構成により実現される場合について説明したが、これに限らない。実施形態は、例えば、ハードウェア構成や、ハードウェア構成とソフトウェア構成との組み合わせによって実現してもよい。
【0085】
以上の実施形態に関し、更に以下を開示する。
【0086】
(((1)))に係る画像処理装置は、プロセッサを備え、前記プロセッサが、シリアル転送により画像データ及び同期信号を含む転送データを取得し、前記転送データから再生クロックを抽出し、自装置で生成した計測用クロックのカウント数に応じて、予め定めたサンプリング数を設定し、前記サンプリング数によって定まる周期毎に前記再生クロックのクロック数の変動を監視し、前記クロック数が第1上限閾値と第1下限閾値とにより定まる第1範囲内で変動した場合に、前記画像データに異常の予兆が有ると判定する。
【0087】
(((2)))に係る画像処理装置は、(((1)))に係る画像処理装置において、前記プロセッサが、前記同期信号の間隔を1つの単位とし、当該単位を予め定めた数の間隔に分割し、前記サンプリング数を設定する。
【0088】
(((3)))に係る画像処理装置は、(((1)))に係る画像処理装置において、前記プロセッサが、前記画像データの1ライン当たりの画素数を1つの単位とし、当該単位を予め定めた数の間隔に分割し、前記サンプリング数を設定する。
【0089】
(((4)))に係る画像処理装置は、(((1)))~(((3)))の何れか1に係る画像処理装置において、前記プロセッサが、前記クロック数が前記第1範囲内で、かつ、前記第1上限閾値よりも小さい第2上限閾値と前記第1下限閾値よりも大きい第2下限閾値とにより定まる第2範囲外である場合に、前記画像データに異常の予兆が有ると判定する。
【0090】
(((5)))に係る画像処理装置は、(((4)))に係る画像処理装置において、前記プロセッサが、予め定めたデータ数に基づいて前記サンプリング数を設定し、前記サンプリング数によって定まる範囲の開始端と終了端に対応する前記第2範囲は、前記範囲の開始端と終了端との間の部分に対応する前記第2範囲よりも狭い。
【0091】
(((6)))に係る画像処理装置は、(((1)))~(((5)))の何れか1に係る画像処理装置において、前記プロセッサが、前記画像データに異常の予兆が有ると予め定めた回数以上判定した場合に、異常の予兆が有ることを報知する。
【0092】
(((7)))に係る画像処理装置は、(((1)))~(((6)))の何れか1に係る画像処理装置において、前記プロセッサが、前記クロック数が前記第1範囲外である場合に、前記画像データに異常が発生していると判定する。
【0093】
(((8)))に係る画像処理装置は、(((7)))に係る画像処理装置において、前記プロセッサが、前記画像データに異常が発生していると判定した場合、異常が発生していることを報知する。
【0094】
(((9)))に係る画像処理プログラムは、シリアル転送により画像データ及び同期信号を含む転送データを取得し、前記転送データから再生クロックを抽出し、自装置で生成した計測用クロックのカウント数に応じて、予め定めたサンプリング数を設定し、前記サンプリング数によって定まる周期毎に前記再生クロックのクロック数の変動を監視し、前記クロック数が第1上限閾値と第1下限閾値とにより定まる第1範囲内で変動した場合に、前記画像データに異常の予兆が有ると判定する処理を、コンピュータに実行させる。
【0095】
(((1)))及び(((9)))によれば、画像データの同期信号のノイズを計測する場合と比較して、画像データの異常の予兆を精度良く検出することができる、という効果を有する。
【0096】
(((2)))によれば、同期信号を用いてサンプリング数を設定することができる、という効果を有する。
【0097】
(((3)))によれば、画像データを用いてサンプリング数を設定することができる、という効果を有する。
【0098】
(((4)))によれば、第1範囲のみを用いて異常の予兆を判定する場合と比較して、異常の予兆をより精度良く検出することができる、という効果を有する。
【0099】
(((5)))によれば、第2範囲を変化させない場合と比較して、異常の予兆をより精度良く検出することができる、という効果を有する。
【0100】
(((6)))によれば、ユーザが画像データに異常の予兆が有ることを把握することができる、という効果を有する。
【0101】
(((7)))によれば、画像データの同期信号のノイズを計測する場合と比較して、画像データの異常の発生を精度良く検出することができる、という効果を有する。
【0102】
(((8)))によれば、ユーザが画像データに異常が発生していることを把握することができる、という効果を有する。
【符号の説明】
【0103】
10 画像処理装置
11 CPU
12 ROM
12A 画像処理プログラム
13 RAM
14 I/O
15 受信部
16 画像処理部
17 表示部
20 取得部
21 クロック再生部
22 変換部
23 異常判定部
23A、B クロックカウンタ
23C 比較部
24 報知部
30 画像読取装置
31 送信部
100 画像処理システム