(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024136249
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】水処理装置、水処理システム、水処理方法、水処理プログラム
(51)【国際特許分類】
B01D 21/30 20060101AFI20240927BHJP
【FI】
B01D21/30 J
B01D21/30 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023047300
(22)【出願日】2023-03-23
(71)【出願人】
【識別番号】507214083
【氏名又は名称】メタウォーター株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】菅原 良行
(57)【要約】
【課題】少ないエネルギーかつ簡単な機構で汚泥の濃度を調整できる。
【解決手段】液体である対象物が貯留される槽と、槽の内部に配置され、槽に貯留された対象物を攪拌し、槽の中央と槽の側面部とで対象物の液面の液位差を変動させる液位差調整部と、槽の側面に配置され、槽の側面部の液位が所定値以上になった場合に対象物が排出される分離液排出部と、を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体である対象物が貯留される槽と、
前記槽の内部に配置され、前記槽に貯留された対象物を攪拌し、前記槽の中央と前記槽の側面部とで対象物の液面の液位差を変動させる液位差調整部と、
前記槽の側面に配置され、前記槽の側面部の液位が所定値以上になった場合に対象物が排出される分離液排出部と、を有する水処理装置。
【請求項2】
液位差調整部は、前記槽に貯留された対象物を撹拌する液面撹拌機を有し、
前記撹拌機の回転数を制御することによって、対象物の液面に生じる液位差を制御する請求項1に記載の水処理装置。
【請求項3】
前記液面攪拌機は、円板と、前記円板の上面に配置された攪拌翼と、を有する請求項2に記載の水処理装置。
【請求項4】
前記分離液排出部は、前記槽の上流に対象物を排出する請求項1に記載の水処理装置。
【請求項5】
前記槽に供給される対象物の汚泥濃度を計測する計測部を有し、
前記液位差調整部は、前記汚泥濃度が閾値以下となった場合、液位差を変動させて分離液を排出する請求項1に記載の水処理装置。
【請求項6】
前記槽の上流に配置され、凝集剤が投入された対象物を攪拌し、凝集フロックを生成する凝集槽を有する請求項1に記載の水処理装置。
【請求項7】
前記槽は、前記液位差調整部の周囲に配置され、前記液位差調整部が配置されている領域と他の領域とを区画する隔壁を有し、
前記隔壁は、前記分離液排出部と接続し、前記液位差調整部が配置されている領域と他の領域とを連通する開口が形成される請求項1に記載の水処理装置。
【請求項8】
請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の水処理装置と、
前記水処理装置に対象物を供給する前処理装置と、
前記水処理装置から排出される濃縮汚泥を処理する後処理装置と、を含む水処理システム。
【請求項9】
槽に液体である対象物を供給し、前記槽に対象物を所定液位まで貯留させるステップと、
前記槽の内部に配置され、前記槽に貯留された対象物を攪拌し、攪拌条件を変動させて、前記槽の中央と、前記槽の側面部とで対象物の液面の液位差を変動させるステップと、
前記槽の側面に配置され、前記層の側面部の液位が所定値以上になった場合に対象物を排出するステップと、を含む水処理方法。
【請求項10】
槽に供給される対象物の汚泥の濃度を計測するステップと、
前記槽の内部に配置され、前記槽に貯留された対象物を攪拌し、攪拌条件を変動させて、前記槽の中央と、前記槽の側面部とで対象物の液面の液位差を設定するステップと、
設定した前記液位差を前記槽の液面に発生させるステップと、含む処理を実行させる水処理プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水処理装置、水処理システム、水処理方法、水処理プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
汚水が含まれる対象物を処理する浄水システムでは、特許文献1に記載のように、対象物に凝集剤を投入し、汚泥を凝集させ、脱水処理を行う。浄水システムは、脱水を効率よく行うため、汚泥を濃縮する。特許文献1に記載の装置では、混和槽で濃縮を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
汚泥を処理する装置は、安定して運転するために、各部での汚泥の濃度は安定していることがより好ましい。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、少ないエネルギーかつ簡単な機構で汚泥の濃度を調整できる水処理装置、水処理システム、水処理方法、水処理プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本開示の水処理装置は、液体である対象物が貯留される槽と、前記槽の内部に配置され、前記槽に貯留された対象物を攪拌し、前記槽の中央と前記槽の側面部とで対象物の液面の液位差を変動させる液位差調整部と、前記槽の側面に配置され、前記槽の側面部の液位が所定値以上になった場合に対象物が排出される分離液排出部と、を有する。
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本開示の水処理方法は、槽に液体である対象物を供給し、前記槽に対象物を所定液位まで貯留させるステップと、前記槽の内部に配置され、前記槽に貯留された対象物を攪拌し、攪拌条件を変動させて、前記槽の中央と、前記槽の側面部とで対象物の液面の液位差を変動させるステップと、前記槽の側面に配置され、前記層の側面部の液位が所定値以上になった場合に対象物を排出するステップと、を含む。
【0008】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本開示の水処理プログラムは、槽に供給される対象物の汚泥の濃度を計測するステップと、前記槽の内部に配置され、前記槽に貯留された対象物を攪拌し、攪拌条件を変動させて、前記槽の中央と、前記槽の側面部とで対象物の液面の液位差を設定するステップと、設定した前記液位差を前記槽の液面に発生させるステップと、含む処理を実行させる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、少ないエネルギーかつ簡単な機構で汚泥の濃度を調整できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、本実施形態に係る水処理システムの概略構成を示す模式図である。
【
図2】
図2は、本実施形態に係る水処理装置の上面図である。
【
図3】
図3は、他の実施形態に係る水処理装置の概略構成を示す模式図である。
【
図4】
図4は、他の実施形態に係る水処理装置の上面図である。
【
図5】
図5は、他の実施形態に係る水処理装置の概略構成を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明の好適な実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下に説明する実施形態により本発明が限定されるものではない。
【0012】
(第1の実施形態)
図1は、本実施形態に係る水処理システムの概略構成を示す模式図である。水処理システム1は、前処理装置2と、水処理装置10と、後処理装置4と、を有する。前処理装置は、複数の下水管から供給される対象物を一時的に貯留する貯留槽である。前処理装置2は、水処理装置10に対象物を供給する。水処理装置10は、前処理装置2から対象物が供給され、対象物の汚泥の濃度を所定の濃度の濃縮汚泥として下流に排出する。水処理装置10は、汚泥の濃度が低い分離液の排出量を制御することで、濃縮汚泥の濃度を制御する。対象物は、汚泥を含む液体であり、例えば下水や工場排水等である。分離液は、汚泥を含まないことが好ましい。濃縮汚泥は、例えば凝集剤で凝集した凝集フロックを含む液体であり、対象物よりも汚泥の濃度が高い液体である。水処理装置10については、後述する。後処理装置4は、水処理装置10で濃縮された汚泥(濃縮汚泥)を処理する。例えば、後処理装置4は、濃縮汚泥に対して脱水処理、乾燥処理等を行う。水処理システム1は、水処理装置10で分離した分離液を浄化する装置を備えていてもよい。
【0013】
図1に加え、
図2を用いて、水処理装置について説明する。
図2は、本実施形態に係る水処理装置の上面図である。
図1及び
図2に示すように、本実施形態に係る水処理装置10は、供給管12と、凝集剤投入部13と、凝集分離槽14と、汚泥排出管16と、分離液排出管18と、測定部38と、制御装置39と、を含む。
【0014】
供給管12は、凝集分離槽14に接続された配管であり、対象物を供給する。凝集剤投入部13は、供給管12に流れる対象物に凝集剤を投入する。
【0015】
凝集分離槽14は、供給管12、汚泥排出管16、分離液排出管18と接続される。凝集分離槽14は、凝集剤が投入された対象物が、供給管12から供給される。凝集分離槽14に供給された対象物は、凝集剤により汚泥が凝集される。これにより、凝集した汚泥は、汚泥フロックとなる。凝集分離槽14は、汚泥排出管16から汚泥、具体的には汚泥フロックを含む対象物を排出する。凝集分離槽14は、分離液排出管18から分離液を排出する。
【0016】
凝集分離槽14は、凝集槽20と、処理槽22と、攪拌機30と、液位差調整部32と、第1仕切板34と、第2仕切板36と、を含む。
【0017】
凝集槽20は、供給管12と処理槽22とに接続される容器である。凝集槽20は、鉛直方向下側の端部である底面近傍で処理槽22と接続する。凝集槽20は、内部に撹拌機30が配置される。攪拌機30は、駆動源40と、回転軸42と、攪拌翼44と、を含む。駆動源40は、回転軸42を回転させる動力源であり、例えばモータである。回転軸42は、駆動源40に接続され、回転する棒状の部材であり、攪拌翼44が固定される。攪拌翼44は、凝集槽20の液面よりも下に配置される。攪拌翼44は、回転軸に直交する方向に延び、回転方向が短辺となる板状の部材である。攪拌機30は、駆動源40で、回転軸42を回転させ、攪拌翼44を回転させることで、凝集槽20内の液体を攪拌する。
【0018】
凝集槽20は、供給管12から対象物が供給される。凝集槽20は、攪拌機30で内部が攪拌され、対象物の汚泥と凝集剤とが攪拌され、汚泥フロックが形成される。凝集槽20は、形成された汚泥フロックが底面に沈降し、処理槽22に排出される。
【0019】
処理槽22は、凝集槽20と、汚泥排出管16、分離液排出管18とに接続される容器である。処理槽22は、円筒の容器であり、液位差調整部32が配置される。処理槽22は、凝集槽20とは、外周の壁面が繋がっている。つまり、凝集槽20は、円筒の処理槽22の外周の壁面が、処理槽22と接続する領域の壁面となる。処理槽22は、鉛直方向下側の底部近傍で、凝集槽20と汚泥排出管16と接続する。処理槽22は、凝集槽20と接続する位置と、汚泥排出管16と接続する位置とが、円筒の周方向において、対向する位置である。処理槽22は、液位差調整部32が駆動していない状態で対象物の液面となる位置よりも高い位置で、分離液排出管18と接続している。
【0020】
液位差調整部32は、処理槽22に供給された対象物に旋回流を発生させ、処理槽22に供給された対象物の液面(以下、単に「処理槽22の液面」という)に液位差を発生させる。液面の液位差とは、処理槽22の旋回流の中心と端部との鉛直方向の高さの差である。液位差調整部32は、駆動源50と、回転軸52と、底板54と、攪拌翼56と、を含む。駆動源50は、回転軸52を回転させる動力源であり、例えばモータである。回転軸52は、駆動源50に接続され、回転する棒状の部材でり、鉛直方向下側の端部に底板54と、攪拌翼56が固定される。回転軸52は、
図2に示すように、上面から見た場合、円筒の処理槽22の中心となる位置に配置される。底板54は、回転軸に直交する方向が径方向となる円板である。底板54は、外径が処理槽22よりも小さい。処理槽22は、水平方向において、底板54と隙間が形成され、隙間を液体が通過する。攪拌翼56は、処理槽22の液面よりも下で、かつ、底板54よりも上に配置される。攪拌翼56は、回転軸52に直交する方向に延び、回転方向が短辺となる板状の部材である。
【0021】
液位差調整部32は、駆動源50で、回転軸52を回転させ、攪拌翼56を回転させることで、処理槽22の液面に液位差を発生させる。液位差調整部32は、回転軸52の回転数で液位差を調整できる。液位差調整部32が回転軸52を回転させない状態では、処理槽22の液面が、液面L1、つまり、全域で同じ高さとなる。液位差調整部32が回転軸52を所定回転速度で回転させた状態では、処理槽22の液面に液位差が生じ、回転軸52から離れるにしたがって液位が高くなる液面L2となる。液位差調整部32が液面L2よりも早い回転速度で回転軸回転させた状態では、処理槽22の液面に液面L2よりも大きい液位差が生じ、回転軸52から離れるにしたがって液位が高くなる液面L3となる。液位差調整部32の回転数は数十/分から数百回転/分である。本明細書では、液位差調整部32が回転速度を制御することによって、処理槽22の液面に液位差を発生させること、並びに、液位差を高くすること及び低くすることを総称して、「液位差を変動させる」という。
【0022】
第1仕切板34は、処理槽22と凝集槽20との境界となる壁面の鉛直方向上側に移動可能に配置された板状部材である。第1仕切板34は、処理槽22と凝集槽20との境界となる壁面の鉛直方向上側を塞ぐ位置34Gと、塞がない位置とを移動可能である。第1仕切板34は、位置34Gに配置されることで、処理槽22内の液体の液位が高くなった場合でも処理槽22の液体が凝集槽20に流入しない状態となる。第2仕切板36は、処理槽22と分離液排出管18の接続部の鉛直方向上側に移動可能に配置された板状部材である。第2仕切板36は、処理槽22と分離液排出管18との接続部を塞ぐ位置36Gと、塞がない位置とを移動可能である。第2仕切板36は、位置36Gに配置されることで、処理槽22から分離液排出管18に液体が排出されない状態となる。
【0023】
汚泥排出管16は、処理槽22の底面の近傍に接続された配管である。汚泥排出管16は、
図1に示すように、処理槽22との接続位置よりも下流側(後処理装置4側)で、接続位置より鉛直方向上側になるように配置される。また、汚泥排出管16は、処理槽22との接続位置よりも下流側に、水平方向に延びた部分を有するように配置される。汚泥排出管16の水平部分は、供給管12と同じ高さまたは供給管12よりも低い位置に設けられる。
【0024】
凝集分離槽14は、供給管12から対象物が供給され、かつ、液位差調整部32が稼働していない状態では、水平部分が対象物で満たされるように運転され、
図1に示すL1が液面となる(この液位L1を「基準の液面」という)。供給管12から対象物が供給されない状態では、凝集分離槽14の液面が下がることとなる。液面が汚泥排出管16の水平部分の高さを下回ると、液体が汚泥排出管16を通過できなくなり、処理槽22から汚泥排出管16に液体が排出されなくなる。
【0025】
分離液排出管18は、処理槽22の基準の液面よりも上で、処理槽22と接続される配管である。分離液排出管18は、鉛直方向において、供給管12、汚泥排出管16よりも高い位置で、処理槽22と接続する。分離液排出管18は、
図2に示すように、処理槽22の周方向の一部に配置される。処理槽22の外周部分の液面が、処理槽22と分離液排出管18との接続部(以下、単に「接続部」ともいう)よりも高くなった場合、処理槽22の分離液が分離液排出管18に流入する。
【0026】
測定部38は、供給管12を流れる対象物の汚泥濃度を計測する。測定部38が汚泥濃度を計測する方法は、周知の種々の方法を用いることができ、例えば、濁度や、透明度、比重等に基づいて計測する。測定部38は、測定した汚泥濃度を制御装置39に出力する。
【0027】
制御装置39は、測定部38で計測した汚泥濃度に基づいて液位差調整部32の駆動を制御する。制御装置39は、汚泥濃度が閾値以下の濃度となった場合、液位差調整部32を駆動し、処理槽22に旋回流を発生させ、液位差を発生させる。
【0028】
(水処理装置の動作)
次に、上述のように構成された水処理装置10の動作について説明する。まず、液位差調整部32を駆動していない状態での水処理装置10の動作を説明する。水処理装置10は、供給管12に流れ方向70で対象物が流れ、凝集剤投入部13で凝集剤が投入された後、凝集分離槽14の凝集槽20に供給される。凝集槽20に供給された対象物は、攪拌機30で攪拌され、凝集剤と汚泥が混合される。対象物に含まれる汚泥は、凝集剤により凝集され、汚泥フロック(濃縮汚泥)となる。凝集槽20は、鉛直方向上側の液面近傍の供給管12から対象物が供給され、鉛直方向下側の底部近傍に接続された処理槽22に汚泥フロックを排出する。これにより、凝集槽20の内部には、攪拌機30で攪拌される流れとともに、鉛直方向上側から鉛直方向下側に向かう流れ方向71の流れが形成され、処理槽22との接続部近傍で、処理槽22に向かう流れ方向72の流れが形成される。また、凝集槽20で形成された汚泥フロックは、凝集して比重が重くなるため、流れ方向71、流れ方向72に沿って移動しやすい状態となる。
【0029】
処理槽22に流入した対象物のうち比重が重い汚泥フロックは、流れ方向73で流れ、汚泥排出管16に向かう。汚泥排出管16に流入した汚泥フロックを含む対象物は、濃縮汚泥として、汚泥排出管16に沿って流れ方向74で流れ、下流側に排出される。処理槽22に流入した対象物のうち汚泥フロックよりも相対的に比重が軽い水等の一部は、流れ方向75で流れ、分離液排出管18から分離液として排出される。
【0030】
次に、液位差調整部32を稼働させている場合の処理について説明する。水処理装置10は、測定部38で、汚泥濃度が閾値以下である場合、汚泥排出管16から排出する汚泥の濃度を所定の濃度とするために、液位差調整部32を稼働させる。水処理装置10は、液位差調整部32が稼働し、攪拌翼56が回転すると、処理槽22の液面に液位差が発生し、処理槽22の外周の液位が高くなる。水処理装置10は、処理槽22の外周の液位が分離液排出管18との接続部よりも高くなると、処理槽22にある対象物のうち液面近傍に移動している分離液が流れ方向76の流れで分離液排出管18に流入する。また、水処理装置10は、処理槽22の外周の液位が凝集槽20との接続部よりも高くなると、処理槽22にある対象物のうち液面近傍に移動している分離液が流れ方向77の流れで凝集槽20に流入する。水処理装置10は、分離液排出管18または凝集槽20に分離液を排出することで、処理槽22の汚泥の濃度の低下を抑制する。これにより、汚泥排出管16から排出される液体の汚泥の濃度が、供給管12から供給される対象物の汚泥濃度の変動を抑制する。
【0031】
このように、本実施形態の水処理装置10は、液位差調整部32で処理槽22に液位差を発生させることで、分離液を処理槽22から外部に排出することができる。また、液位差調整部32で発生させる液位差を制御することで、排出する分離液の量を調整することができる。液位差調整部32は、攪拌翼56の回転速度を制御することで液位差を制御できる。本実施形態の水処理装置10は、液位で排出量を制御することで、分離液の排出を分離液排出管18の開度や、分離液排出管18の鉛直方向の位置で制御する場合よりも簡単に制御することができる。また、水処理装置10は、液位差調整部32で液位を制御することで、分離液の排出量を制御することができるため、分離液排出管に吸引ポンプを設け、排出量等を計測しつつ、吸引ポンプを制御するよりも少ないエネルギーで分離液の排出量を制御できる。また、駆動源も1つのモータで実現可能であるため構成が簡単となる。
【0032】
また、本実施形態は、処理槽22の分離液を分離液排出管18に排出することで、分離液を系外に排出することができる。これにより、汚泥濃度を安定した汚泥を汚泥排出管から排出することができる。
【0033】
また、本実施形態は、処理槽22の分離液を凝集槽20に排出することで、分離液に含まれる凝集剤を再利用することができる。これにより、水処理装置10としての凝集剤の投入量を低減することができる。また、供給される対象物の汚泥の濃度が許容範囲である場合、処理槽22の分離液を凝集槽20のみに排出することで、処理槽22の液面側に滞留する凝集剤を凝集槽20に供給して再利用することができる。また、凝集槽20を流れる液体の量を増加させることができ、流れ方向71,72,73の流れを適切に形成して、汚泥フロックを汚泥排出管16から排出できる。これにより、汚泥を適切に調質することができる。
【0034】
本実施形態の水処理装置10は、分離液排出管18を設け、分離液排出管18から分離液を排出することで、処理槽22の汚泥の濃度の低下を抑制し、濃縮汚泥の濃度を一定に保つことができる。また、水処理装置10は、第1仕切板34で開閉する処理槽22と凝集槽20の境界を介して、処理槽22の分離液を凝集槽20に排出することで、凝集剤の再利用ができる。水処理装置10は、第1仕切板34、第2仕切板36を設けることで、分離液の排出先を切り替えることができる。これにより、処理槽22の汚泥の濃度や、凝集剤の状態により、分離液を排出する経路を切り替え、好適に水を処理することができる。また、本実施形態の水処理装置10は、処理槽22から凝集槽20と分離液排出管18の両方に分離液を排出したが、いずれか一方のみとしてもよい。水処理装置10は、分離液の排出先を、分離液排出管18のみとするか、凝集槽20のみとするか、あるいはその両方とするかを制御してよい。
【0035】
本実施形態の第1仕切板34、第2仕切板36は、分離液を排出するか否かを切り替える機構としたが、第1仕切板34、第2仕切板36を高さ調整可能な機構とし、分離液を排出する割合を調整可能としてもよい。また、第1仕切板34、第2仕切板36で、処理槽22との接続する外周の長さを調整して、分離液の排出割合を調整してもよい。具体的には、水処理装置10は、水位差調部32の駆動条件を一定として、処理槽22の外周での液面の高さを一定としつつ、第1仕切板34、第2仕切板36の高さを調整することで、分離液排出管18に排出する分離液の量と、凝集槽20に排出する分離液の量を調整してもよい。また、第1仕切板34、第2仕切板36は、開度を調整する機構とし、分離液を排出する割合を調整可能としてもよい。
【0036】
本実施形態の水処理装置10は、液位差調整部32に攪拌翼56の下側に平坦な底板54を設けることで、攪拌翼56の回転で発生する回転軸周りの流れが底板よりも鉛直方向下側に伝達することを抑制できる。これにより、汚泥フロックが流れる処理槽22の鉛直方向下側の凝集槽20から汚泥排出管16に向かう流れに回転方向の力が加わることを抑制でき、汚泥フロックを汚泥排出管16に好適に排出できる。
【0037】
本実施形態の水処理装置10においては、供給管12と汚泥排出管16の流量の制御は、配管の高さによる調整に限定されず、それぞれにポンプを設け、ポンプの駆動で流量を制御してもよい。
【0038】
本実施形態の水処理装置10は、
図2に示すように、汚泥排出管16と分離液排出管18とが上から見た場合に重ならない位置に構成されることで、分離液排出管18をより低い位置に配置できる。これにより、分離液を排出するために必要な液位差が小さくなり、液位差調整部32を駆動するための動力を削減することができる。
【0039】
本実施形態の水処理装置10は、凝集槽に供給する対象物に凝集剤を混合することで、汚泥の凝集を効率よく行うことができる。なお、水処理装置10は、凝集剤を投入していない凝集槽にも用いることができる。例えば、沈殿池を凝集槽としてもよい。
【0040】
(第2の実施形態)
次に、
図3及び
図4を用いて、他の実施形態の水処理装置を説明する。
図3は、他の実施形態に係る水処理装置の概略構成を示す模式図である。
図4は、他の実施形態に係る水処理装置の上面図である。
【0041】
図3及び
図4に示す水処理装置110は、滞留槽に液位差で分離液を排出する処理槽を配置している。水処理装置110は、供給管112と、凝集槽114と、汚泥排出管116と、分離液排出管118と、を含む。供給管112は、原汚泥を含む対象物を凝集槽114に供給する。濃縮汚泥排出管116は、凝集槽114の汚泥の濃度が濃い領域、具体的には、凝集槽114の底面近傍から、凝集槽114の液体を排出することで、汚泥が凝集した濃縮汚泥を排出する。
【0042】
凝集槽114は、供給管112から供給された対象物を一時的に貯留する槽である。凝集槽114は、上述した水処理装置10に代えて配置される槽である。凝集槽114は、既設の貯留槽、例えば上述した水処理装置10の前処理装置2に配置された槽としてもよい。凝集槽114を既存の槽とした場合、後述する処理槽122を追設することで、本実施形態の凝集槽114となる。供給管112は、凝集槽20との接続部となる。なお、凝集槽114は、対象物を一時的に貯留することで、重力沈降で汚泥を底面側に沈降させる沈降槽とてもよい。これにより、凝集槽114は、鉛直方向上側の領域の汚泥濃度が、鉛直方向下側の領域の汚泥濃度よりも低くなる。
【0043】
凝集槽114は、処理槽122が配置される。処理槽122は、底面及び外周に凝集槽114の内部に配置されている。処理槽122は、円筒形状である。処理槽122は、鉛直方向において凝集槽114の中央よりも上側に底面が配置される。つまり、処理槽122は、凝集槽114の鉛直方向上側の汚泥濃度が低い液体が滞留する領域に配置される。処理槽122は、凝集槽114の液面よりも下の外周に開口123が開口される。処理槽122は、開口123を通過して、凝集槽114の液体が内部に流入する。
【0044】
処理槽122は、内部に液位差調整部132が配置される。液位差調整部132は、駆動源50と、回転軸52と、底板54と、攪拌翼56と、を含む。各部の構成は、液位差調整部32と同様である。分離液排出管118は、処理槽122の外周面の、凝集槽114の液面よりも上側となる位置に接続される。
【0045】
処理槽122は、液位差調整部132で液位差を変動させることで、分離液排出管118との接続位置の液位を制御し、分離液排出管118への分離液の排出量を制御する。
【0046】
水処理装置110は、対象物が滞留する凝集槽114の液面側の領域に処理槽122を設けることで、処理槽122の内部に流入する液体の汚泥濃度を低くすることができる。特に、処理槽122を、外周面(側面)と底面を有し、外周面の開口123から凝集槽114の液体が流入する形状とすることで、液位差調整部132の回転により発生した流れが、処理槽122の周囲に配置された凝集槽114に伝わることを抑制できる。これにより、処理槽122内で沈降した汚泥が液位差調整部132の回転によって舞い上がることを抑制できるため、処理槽122の内部に流入する汚泥濃度を低くすることができ、凝集槽114の液体の流れを安定させ、汚泥を好適に汚泥排出管116に排出することができる。
【0047】
なお、処理槽122の開口123の位置、配置は、限定されず、処理槽122の底面に設けてもよい。ただし、開口123は、液位差調整部132の回転により発生した流れが、凝集槽114に伝わることが抑制できる位置、大きさとするのが好ましい。そのため、開口123は、処理槽122の底面よりも側面に設けるほうが好ましい。また、供給管112及び汚泥排出管116から離れた位置(下部よりも上部)に設けるほうが好ましい。
【0048】
(第3の実施形態)
次に、
図5を用いて、他の実施形態の水処理装置を説明する。
図5は、他の実施形態に係る水処理装置の概略構成を示す模式図である。水処理装置は、液位差調整部の駆動源と、汚泥を処理する他の駆動源を共通化してもよい。
【0049】
図5に示す水処理装置210は、供給管212と、凝集槽220と、処理槽222と、汚泥排出管216と、分離液排出管217,218と、を含む。供給管212は、凝集槽220に凝集剤が供給された対象物を供給する。凝集槽220は、上面を含めて閉じられた箱型の領域であり、供給管212との接続部から離れた位置に開口282が形成される。凝集槽220は、攪拌機298が配置される。
【0050】
処理槽222は、開口282を介して凝集槽220と接続される。処理槽222は、凝集槽220の開口282が形成された面と上面に接して配置される。処理槽222は、凝集槽220から供給された対象物が凝集槽220の上側の領域まで充填される。処理槽222は、液位差調整部290が配置される。
【0051】
液位差調整部290は、上から見た場合、処理槽222と凝集槽220が重なる領域、つまり、凝集槽220の鉛直方向上側に配置される。液位差調整部290は、駆動源292と、回転軸294と、攪拌翼296と、を有する。液位差調整部290は、さらに底板を備えていてもよい。各部の構成は、液位差調整部32と同様である。液位差調整部290は、回転軸294が、攪拌槽290の内部に挿入され、攪拌機298と連結している。本実施形態の攪拌機298は、回転軸294に固定された攪拌翼である。液位差調整部290は、回転軸294を回転させることで、攪拌翼296を回転させて処理槽222の液面に液位差を発生させ、かつ、攪拌翼298を回転させて凝集槽220の内部を攪拌する。攪拌槽222は、側面に分離液排出管218が接続され、液位差が発生し、分離液排出管218との接続位置以上の液位となった場合、内部の分離液が分離液排出管218に排出される。
【0052】
処理槽222は、汚泥排出管216と、分離液排出管217が接続される。汚泥排出管216は、処理槽222の底面近傍に接続される。分離液排出管217は、処理槽222の液面近傍に接続される。汚泥排出管216は、処理槽222から汚泥が濃縮された濃縮汚泥が排出される。分離液排出管217は、分離液が排出される。
【0053】
水処理装置210は、供給管212から供給された対象物が凝集槽220に供給されて攪拌された後、処理槽222に供給され、開口282から処理槽222に供給される。処理槽222に供給された対象物のうち、汚泥フロックを含む濃縮汚泥は、開口部286から貯留槽280に排出される。処理槽222の液位差調整部290の近傍は、凝集槽220よりも鉛直方向上側の領域となり、到達する汚泥が少ない領域となる。貯留槽280に排出された液体は、汚泥フロックを含む濃縮汚泥が汚泥排出管216から排出され、分離液が分離液排出管217から排出される。
【0054】
水処理装置210は、液位差調整部290を回転させ、液位差を変動させることで、分離液排出管218から排出する分離液の量を制御することができる。
【0055】
水処理装置210は、攪拌槽を攪拌させる攪拌機298の回転軸を液位差調整部290の回転軸と一体にすることで、1つの駆動源で、攪拌と液位差の調整を行うことができる。
【0056】
以上、本発明の実施形態を説明したが、これら実施形態等の内容により実施形態が限定されるものではない。また、前述した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、いわゆる均等の範囲のものが含まれる。さらに、前述した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。
【符号の説明】
【0057】
1 水処理システム
2 前処理装置
4 後処理装置
10 水処理装置
12 供給管
13 凝集剤投入部
14 凝集分離槽
16 汚泥排出管
18 分離液排出管
20 凝集槽
22 処理槽
30 攪拌機
32 液位差調整部
34 第1仕切板
36 第2仕切板
38 測定部
39 制御装置
40、50 駆動源
42、52 回転軸
44、56 攪拌翼
54 底板
70、71、72、73、74、75、76、77 流れ方向