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特開2024-13625吸収性物品の製造方法及び吸収性物品の製造装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024013625
(43)【公開日】2024-02-01
(54)【発明の名称】吸収性物品の製造方法及び吸収性物品の製造装置
(51)【国際特許分類】
   A61F 13/15 20060101AFI20240125BHJP
   A61F 13/535 20060101ALI20240125BHJP
【FI】
A61F13/15 321
A61F13/15 390
A61F13/15 355Z
A61F13/535 100
A61F13/535 200
A61F13/15 351Z
A61F13/15 370
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022115859
(22)【出願日】2022-07-20
(71)【出願人】
【識別番号】000122298
【氏名又は名称】王子ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】細谷 真澄
(72)【発明者】
【氏名】桃瀬 知之
(72)【発明者】
【氏名】吉田 英聡
【テーマコード(参考)】
3B200
【Fターム(参考)】
3B200AA01
3B200BB17
3B200DB05
3B200DB12
3B200DB16
3B200DB23
3B200EA02
3B200EA05
3B200EA27
(57)【要約】
【課題】本発明は、下層吸収材及び上層吸収材をプレスしたときの位置ずれを抑止することを目的とする。
【解決手段】下層吸収材と上層吸収材とが積層された吸収コアを有する吸収性物品の製造方法であって、回転可能な第1フォーミングドラムの表面に前記下層吸収材を形成する第1形成工程と、回転可能な第2フォーミングドラムの表面に前記上層吸収材を形成する第2形成工程と、前記第1フォーミングドラムの前記表面から剥離された前記下層吸収材及び前記第2フォーミングドラムの前記表面から剥離された前記上層吸収材をプレスするプレス工程と、前記プレス工程により前記下層吸収材及び前記上層吸収材がプレスされる前に、前記下層吸収材及び前記上層吸収材の少なくとも一方にエアを吹き付ける吹き付け工程と、を備える吸収性物品の製造方法。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下層吸収材と上層吸収材とが積層された吸収コアを有する吸収性物品の製造方法であって、
回転可能な第1フォーミングドラムの表面に前記下層吸収材を形成する第1形成工程と、
回転可能な第2フォーミングドラムの表面に前記上層吸収材を形成する第2形成工程と、
前記第1フォーミングドラムの前記表面から剥離された前記下層吸収材及び前記第2フォーミングドラムの前記表面から剥離された前記上層吸収材をプレスするプレス工程と、
前記プレス工程により前記下層吸収材及び前記上層吸収材がプレスされる前に、前記下層吸収材及び前記上層吸収材の少なくとも一方にエアを吹き付ける吹き付け工程と、
を備える吸収性物品の製造方法。
【請求項2】
前記第1フォーミングドラムの前記表面から前記下層吸収材を剥離する第1剥離工程を備え、
前記吹き付け工程は、前記第1剥離工程が行われている間に前記下層吸収材と前記第1フォーミングドラムの前記表面との間にエアを吹き付けることを含む、
請求項1に記載の吸収性物品の製造方法。
【請求項3】
前記吹き付け工程は、前記第1フォーミングドラムの回転方向の下流側から上流側に向けてエアを流すことで、前記第1フォーミングドラムの前記回転方向の前記下流側における前記下層吸収材の端部にエアを吹き付けることを含む、
請求項2に記載の吸収性物品の製造方法。
【請求項4】
前記第1フォーミングドラムの前記回転方向の前記下流側における前記下層吸収材の前記端部は、第1部分と、前記下層吸収材の前記端部の前記第1部分の厚みよりも薄い第2部分と、を有し、
前記下層吸収材の前記端部の前記第2部分の厚みが、前記第1フォーミングドラムの前記回転方向の前記下流側に向かって徐々に薄くなっている、
請求項3に記載の吸収性物品の製造方法。
【請求項5】
前記第1フォーミングドラムの前記表面に複数の前記下層吸収材が非連続の状態で形成されている、
請求項2に記載の吸収性物品の製造方法。
【請求項6】
前記第2フォーミングドラムの前記表面から前記上層吸収材を剥離する第2剥離工程を備え、
前記吹き付け工程は、前記第2剥離工程が行われている間に前記上層吸収材と前記第2フォーミングドラムの前記表面との間にエアを吹き付けることを含む、
請求項1に記載の吸収性物品の製造方法。
【請求項7】
前記吹き付け工程は、前記第2フォーミングドラムの回転方向の下流側から上流側に向けてエアを流すことで、前記第2フォーミングドラムの前記回転方向の前記下流側における前記上層吸収材の端部にエアを吹き付けることを含む、
請求項6に記載の吸収性物品の製造方法。
【請求項8】
前記第2フォーミングドラムの前記回転方向の前記下流側における前記上層吸収材の前記端部は、第1部分と、前記上層吸収材の前記端部の前記第1部分の厚みよりも薄い第2部分と、を有し、
前記上層吸収材の前記端部の前記第2部分の厚みが、前記第2フォーミングドラムの前記回転方向の前記下流側に向かって徐々に薄くなっている、
請求項7に記載の吸収性物品の製造方法。
【請求項9】
前記第2フォーミングドラムの前記表面に複数の前記上層吸収材が非連続の状態で形成されている、
請求項6に記載の吸収性物品の製造方法。
【請求項10】
前記プレス工程は、前記下層吸収材の積層面と前記上層吸収材の積層面とを重ねた状態で前記下層吸収材及び前記上層吸収材をプレスすることを含み、
前記吹き付け工程は、前記下層吸収材の前記積層面及び前記上層吸収材の前記積層面の少なくとも一方にエアを吹き付けることを含む、
請求項1から9の何れか一項に記載の吸収性物品の製造方法。
【請求項11】
前記第1フォーミングドラムの前記表面から剥離された前記下層吸収材の前記積層面に高吸収性重合体であるSAPの粒子を散布する散布工程を備え、
前記下層吸収材の前記積層面にエアが吹き付けられた後に前記散布工程が行われる、
請求項10に記載の吸収性物品の製造方法。
【請求項12】
前記第1フォーミングドラムの前記表面から剥離された前記下層吸収材を搬送する搬送工程を備え、
前記吹き付け工程は、前記搬送工程が行われている間に前記下層吸収材の前記積層面にエアを吹き付けることを含む、
請求項10に記載の吸収性物品の製造方法。
【請求項13】
下層吸収材と上層吸収材とが積層された吸収コアを有する吸収性物品の製造装置であって、
回転可能な第1フォーミングドラムの表面に前記下層吸収材を形成する第1形成装置と、
回転可能な第2フォーミングドラムの表面に前記上層吸収材を形成する第2形成装置と、
前記第1フォーミングドラムの前記表面から剥離された前記下層吸収材及び前記第2フォーミングドラムの前記表面から剥離された前記上層吸収材をプレスするプレス装置と、
前記プレス装置により前記下層吸収材及び前記上層吸収材がプレスされる前に、前記下層吸収材及び前記上層吸収材の少なくとも一方にエアを吹き付ける吹き付け装置と、
を備える吸収性物品の製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸収性物品の製造方法及び吸収性物品の製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
尿や体液等の液体を吸収する吸収性物品が知られている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-97871号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
吸収性物品は、吸収コアを有している。下層吸収材及び上層吸収材をプレスすることにより、吸収コアが製造されている。下層吸収材及び上層吸収材をプレスしたときに位置ずれが発生すると、所望の吸収コアを製造できなくなる場合がある。本発明は、下層吸収材及び上層吸収材をプレスしたときの位置ずれを抑止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、下層吸収材と上層吸収材とが積層された吸収コアを有する吸収性物品の製造方法であって、回転可能な第1フォーミングドラムの表面に前記下層吸収材を形成する第1形成工程と、回転可能な第2フォーミングドラムの表面に前記上層吸収材を形成する第2形成工程と、前記第1フォーミングドラムの前記表面から剥離された前記下層吸収材及び前記第2フォーミングドラムの前記表面から剥離された前記上層吸収材をプレスするプレス工程と、前記プレス工程により前記下層吸収材及び前記上層吸収材がプレスされる前に、前記下層吸収材及び前記上層吸収材の少なくとも一方にエアを吹き付ける吹き付け工程と、を備える吸収性物品の製造方法である。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、上層吸収材及び下層吸収材をプレスしたときの位置ずれが抑止される。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、実施形態に係る吸収性パッドの平面図である。
図2図2は、実施形態に係る吸収性パッドの分解斜視図である。
図3図3は、実施形態に係る吸収性パッドの内部構造を示す図である。
図4図4は、実施形態に係る吸収性パッドの吸収コアを製造する工程のフローチャートである。
図5図5は、吸収性パッドの製造装置の一例を示す図である。
図6図6(A)は、上層吸収マットの一部を示す斜視図であり、図6(B)は、上層吸収マットの一部を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下に、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。なお、以下の実施形態の構成は例示であり、本発明はこれらの実施の形態の構成に限定されるものではない。
【0009】
<実施形態>
本実施形態では、交換式の吸収性パッド(本願でいう「吸収性物品」の一例である)に
ついて、着用者の腹部に対向して配置される前身頃と背部に対向して配置される後身頃とを結ぶ方向を長手方向とする。これらの前身頃(長手方向の一側)と後身頃(長手方向の他側)との間(長手方向の中央)には、着用者の股下に配置(股間に対向して配置)される股下部が連接して位置している。また、吸収性パッドが着用者に着用された状態(以下、「着用状態」と略称する)において、着用者の肌に向かう側(着用された状態で内側)を肌面側とし、肌面側の反対側(着用された状態で外側)を非肌面側とする。さらに、肌面側と非肌面側とを結ぶ方向を厚み方向とし、長手方向と厚み方向の何れにも直交する方向を幅方向とする。そのほか、厚み方向から視ることを平面視とする。
【0010】
図1は、本実施形態に係る吸収性パッドの平面図である。吸収性パッド1は、着用状態において着用者の陰部を覆う股下に対応する股下領域1Bと、股下領域1Bの腹部側に位置し、着用者の前身頃と腰回りに対応する部位である前身頃領域1Fと、股下領域1Bの背部側に位置し、着用者の後身頃と腰回りに対応する部位である後身頃領域1Rとを有する。股下領域1Bを中心に、吸収体が組み込まれている。前身頃領域1Fと後身頃領域1Rの先、吸収性パッドの短手方向と長手方向の吸収体のない部分では、吸収体を覆う全てのシートがホットメルト接着剤等で接着されており、非接着部分からの体液流入を防ぎ、吸収体の位置を規制する。吸収性パッド1は、下衣肌着と肌面との間に着用されることにより、着用者の肌に密着する。また、この吸収性パッド1をテープ型おむつやパンツ型おむつの内側に着用すれば、吸収性パッド1が排出液を吸収するので、例え着用者から排出液が発生したとしても、吸収性パッド1のみを交換し、おむつ自体は再利用することができる。
【0011】
また、吸収性パッド1には、吸収性パッド1と着用者の肌との間に液体の流出経路となる隙間が形成されるのを抑制するべく、着用者の脚周り部(大腿部)を取り巻く部位に、弾性体2L,2Rが設けられている。弾性体2L,2Rは、吸収性パッド1の長手方向に延在する。上記弾性体2L,2Rよりも吸収性パッド1の肌面側幅方向内側に延在する一対のサイドシートであるサイドシート8L,8Rの、吸収性パッド1の幅方向の中央側の端には、弾性体3BL,3BRが付されている。サイドシート8L,8Rは、着用の際に弾性体3BL,3BRの力により立ち上がり、立体ギャザー3L,3Rとなる。吸収性パッド1は、レグギャザーとして機能する弾性体2L,2Rの力により着用者の体形に沿い、弾性体3BL,3BRの力により立ち上がった立体ギャザー3L,3Rにより着用者の肌面に密着するので、着用者から排出される体液は、吸収性パッド1から漏出することなく吸収性パッド1の吸収体に吸収される。なお、弾性体2L,2Rや弾性体3BL,3BRを構成する弾性部材としては糸ゴムや帯状のゴム等を適宜選択できる。また、弾性体2L,2R,3BL,3BRは、平行する複数本の糸ゴムであってよい。
【0012】
図2は、本実施形態に係る吸収性パッドの分解斜視図である。吸収性パッド1は、立体ギャザー3L,3Rを形成するサイドシート8L,8Rと、トップシート7と、バックシート5と、吸収体6と、弾性体2L,2Rを備えるカバーシート4とを備え、肌面側から非肌面側まで順に積層されている。吸収性パッド1の前身頃端部と後身頃端部では、吸収体6は存在せず、全てのシートが接着されている。なお、吸収体6の形態は矩形であってもよい。なお、各シートの接着には、ホットメルト接着剤による接着、超音波融着などが含まれる。トップシート7は、本開示における肌面側シートの一例であり、バックシート5は、本開示における非肌面側シートの一例である。
【0013】
カバーシート4は、吸収性パッド1の外装面を形成し、吸収性パッド1全体の形態を維持しやすくする丈夫なシートである。カバーシート4には、一般的にポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート等の合成繊維で構成された不織布が用いられる。カバーシート4は、液透過性であってもよく、液不透過性であってもよい。また、液不透過性を有する不織布の複数個所に穿孔して通気性を持たせてもよい。本実施形態ではカ
バーシート4が存在しているが、後述するバックシート5に形態維持効果を併せ持たせ、カバーシート4を省略することもできる。バックシート5は、液不透過性のシートである。バックシート5は、一例としては、排出液の漏れを抑制するためにポリエチレンフィルム等の熱可塑性の液不透過性樹脂を材料として形成されたフィルムシートである。バックシート5は、着用状態での蒸れを抑制するため、透湿性及びガス透過性、すなわち気体透過性を有している。
【0014】
トップシート7は、吸収体6の吸水面を被覆するように着用者の肌面側に配置される、熱可塑性樹脂の繊維を含んで形成されたスパンボンド不織布や、エアスルー不織布等からなる。このトップシート7は、その一部又は全部において液透過性を有する。そのため、吸収性パッド1が設置された状態において、着用者から放出された体液は、着用者の肌に接触し得るトップシート7を通って吸収体6に進入し、そこで吸収される。また、トップシート7は親水性を有していてもよい。なお、吸収性パッド1の長手方向と、吸収体6及びトップシート7の長手方向とは、同じである。
【0015】
バックシート5、吸収体6、トップシート7は、何れも前身頃領域1Fから後身頃領域1Rにまで延在する。よって、バックシート5と吸収体6とトップシート7が積層されているカバーシート4で着用者の陰部を覆うと、バックシート5と吸収体6とトップシート7の各長手方向の両端部は、着用者の腹側と背側に位置する状態となる。すなわち、着用者の陰部は、着用者の腹側から背側まで吸収体6に覆われる状態となる。したがって、被着用者が仰臥位を取っている場合でも、伏臥位を取っている場合でも、排出液はトップシート7を介して吸収体6に接触することになる。
【0016】
サイドシート8L,8Rは、透湿性を備えるが、非透水性の不織布である。前述の通りサイドシート8L,8Rは立体ギャザー3L,3Rとして肌に密着するため、サイドシート8L,8Rに当接した排出物は吸収性パッド1の幅方向にはこれ以上漏洩せず、排出物に含まれる水分は吸収体6に順次吸収される。トップシート7は、肌触りが良く、親水性の不織布である。肌に当接して体液を直接受け止め、順次吸収体6に吸収させる役割をする。また、吸収体6が既に吸収した体液の逆流を防ぐ。弾性体2L,2Rは、吸収性パッド1の幅方向端部に設けられており、吸収性パッド1は弾性体2L,2Rの収縮力により着用者の体形に添うように付勢される。すなわち弾性体2L,2Rはサイドギャザーとして機能する。
【0017】
図3は、本実施形態に係る吸収性パッドの内部構造を示す図である。具体的には、図1の吸収性パッド1における、A-A線の断面図である。吸収性パッド1は、吸収体6を、吸収体6の肌面側に設けられたトップシート7と、吸収体6の側面部に設けられたサイドシート8L,8Rと、吸収体6の非肌面側に設けられたバックシート5で包み込んだ形態になっている。吸収体6は、吸収コア6Cと、吸収コア6Cを包むコアラップシート6Wとを有する。トップシート7とサイドシート8L,8Rは、トップシート7の肌面側両端部で接合されており、サイドシート8L,8Rとバックシート5は、非肌面側で接合されている。このように、吸収体6を包み込む各シート同士が接合されて袋状の空間を形成しているので、吸収体6は当該袋状の空間から逸脱しない。
【0018】
吸収体6は、一例としては、パルプ繊維、レーヨン繊維、またはコットン繊維のようなセルロース系繊維の短繊維や、ポリエチレン、ポリプロピレン、またはポリエチレンテレフタレート等の合成繊維に親水化処理を施した短繊維の隙間に、水を吸収し保持することのできる架橋構造を持つ親水性ポリマーであるSAP(高吸収性重合体:Super Absorbent Polymer)等の粒状の吸収性樹脂を保持させた構造を有する。よって、吸収体6では、液体を吸収する前後の吸収性樹脂の体積変動は、基本的には吸収性樹脂を隙間に保持する短繊維内で行われることになる。したがって、吸収体6全体を俯
瞰してみると、液体を吸収した吸収体6の厚みの膨張率は、吸収性樹脂自体の膨張率ほど大きくはないと言える。
【0019】
本開示におけるSAP粒子は、SAPを含む樹脂組成物を粒状としたものを指す。ここで言う「SAPを含む樹脂組成物」とは、SAPのみからなる組成物、SAPを主成分とし、これに吸水性に悪影響を及ぼさない程度に他の物質が含まれた組成物、の双方を包含する概念である。「他の物質」としては、添加剤(粒子表面を疎水化する目的で添加される表面改質剤等)、SAPの合成時に残存した未反応のモノマー等を挙げることができる。
【0020】
本実施形態に係る吸収性パッド1の吸収コア6Cは、複数の吸収マットを積層して形成されている。具体的には、吸収コア6Cは、着用者の肌面側に設けられた上層吸収マット6aと、着用者の非肌面側に設けられた下層吸収マット6bとを備えている。上層吸収マット6aの積層面と下層吸収マット6bの積層面とが向かい合った状態で積層されている。上層吸収マット6aの積層面は、上層吸収マット6aの厚み方向に対して垂直な面であり、着用者の非肌面側に向けられている。下層吸収マット6bの積層面は、下層吸収マット6bの厚み方向に対して垂直な面であり、着用者の肌面側に向けられている。したがって、上層吸収マット6aの積層面は、下層吸収マット6bと対向する面であり、下層吸収マット6bの積層面は、上層吸収マット6aと対向する面である。上層吸収マット6aは、本開示における上層吸収材の一例であり、下層吸収マット6bは、本開示における下層吸収材の一例である。
【0021】
上層吸収マット6aは、パルプ繊維とSAP粒子を混合して形成してもよい。この場合、トップシート7側から上層吸収マット6aに排出液が流入すると、排出液は上層吸収マット6aに含まれるSAP粒子に吸収され、排出液を固定することができる。下層吸収マット6bは、パルプ繊維とSAP粒子を混合して形成してもよい。また、下層吸収マット6bの設計上、SAPの粒子を混入させないようにしてもよい。SAPの粒子を含まない場合、下層吸収マット6bは、パルプ繊維を成形して形成されている。
【0022】
上層吸収マット6aは吸収体6の長手方向全領域において、下層吸収マット6b以上の横幅を有してもよい。下層吸収マット6bは吸収体6の長手方向全領域において、上層吸収マット6a以上の横幅を有してもよい。例えば、上層吸収マット6aを砂時計型とし、下層吸収マット6bを略長方形状としてもよい。吸収体6において、排出液が最も流入する箇所は幅方向中央部である。この箇所において吸収コア6Cを多層構造とすることで、排出液を効率よく吸収可能となる。
【0023】
股下領域1Bは、着用者の両足に挟まれる状態になるので、幅方向内側に向けて圧縮圧力がかかる。一方で、前身頃領域1Fや後身頃領域1Rにおいては、着用者の体重がかかることで、吸収体6の厚み方向への圧力がかかる。これらの圧力に対応するため、上層吸収マット6aの股下領域1Bには括れが設けられている。
【0024】
SAP粒子は、排出液を吸収して固定することができるが、排出液の吸収には一定の時間がかかる。下層吸収マット6bは、上層吸収マット6aが吸収できなかった排出液を一時的に保持しながら拡散し、より広範囲の上層吸収マット6aで排出液を吸収させる役割を果たす。SAPの粒子が吸水して膨張すると、排出液の流路を阻害する、所謂コアブロッキング現象が発生することがあるが、下層吸収マット6bが含有するSAP粒子の量は少量であり、排出液は、下層吸収マット6bの内部を比較的容易に移動することができる。このため、下層吸収マット6bは、上層吸収マット6aよりも液体拡散性が高く、排出液の拡散層としての機能を有している。
【0025】
吸収コア6Cは、上層吸収マット6aと下層吸収マット6bとの間に配置されたSAP層11L,11Rを有している。SAP層11L,11Rは、SAP粒子が複数集まって形成されている。図3に示すように、吸収コア6Cの左方にはSAP層11Lが配置され、吸収コア6Cの右方にはSAP層11Rが配置されている。SAP層11L,11Rは、平面視において、長方形状に形成されていてもよいし、楕円形状またはその他の多角形状に形成されていてもよい。吸収コア6Cは、上層吸収マット6aと下層吸収マット6bとの間にSAP層11L,11Rを設けることにより、全体として排出液の吸収量を増加させることができる。この他、SAP粒子を上層吸収マット6aと下層吸収マット6bの層間の幅方向中央部にも散布して、SAP層11L,11Rを有するSAP層とすることも可能である。
【0026】
SAP層11L、11Rは、一例としては、吸収コア6Cの製造工程上、下層吸収マット6b上にSAPの粒子を散布することにより形成される。また、SAP層11L、11Rは、上層吸収マット6aと下層吸収マット6bとの間に挟持されている。このため、着用者の動作により吸収性パッド1が動いた場合でも、SAP層11L,11Rに含まれるSAP粒子の移動は抑制される。なお、下層吸収マット6bの表面に接着剤を塗布し、下層吸収マット6bの表面にSAP粒子を接着してもよい。
【0027】
コアラップシート6Wは、薄い液透過性のシートであり、吸収コア6Cをコアラップシート6Wで包むことにより、上述の吸収コア6CのSAPが他の構造に混入しにくくなる。また、吸収コア6Cの型崩れが抑制される。コアラップシート6Wは、不織布またはパルプ繊維で形成することができ、パルプ繊維の一例としてはティッシュペーパーを用いることができる。なお、吸収体6はバックシート5とトップシート7に包まれており、これらのシートによっても型崩れを抑制できるため、コアラップシート6Wを設けない形態としてもよい。なお、図3に示す形態では、コアラップシート6Wは、上層コアラップシート6Wa及び下層コアラップシート6Wbの2枚のシートから構成されている。上層コアラップシート6Waは、吸収コア6Cの肌面側であるトップシート7側を覆い、下層コアラップシート6Wbは、吸収コア6Cの非肌面側であるバックシート5側と、吸収コア6Cの側面側とを覆う。上層コアラップシート6Waと下層コアラップシート6Wbは、吸収コア6Cの肌面側の幅方向両端部において積層し、互いに接着されている。このため、吸収体6の肌面側は上層コアラップシート6Waから構成され、吸収体6の側面側と非肌面側は、下層コアラップシート6Wbから構成されている。
【0028】
下層コアラップシート6Wbと、バックシート5は、吸収性パッド1の長手方向に略線状に塗布された、複数のホットメルト等の接着剤HMで接着され、接着領域を形成している。接着剤HMは幅方向から見ると間欠的に塗布されて互いに離間した複数の接着部を構成しており、接着部の合間には、長手方向から見ると略線状に、接着剤HMが塗布されていない非接着領域である非接着部が形成されている。下層コアラップシート6Wbとバックシート5の間に進入した排出液は、当該非接着領域で保持される。コアラップシートを2枚のシートで構成する場合、上層コアラップシート6Waと下層コアラップシート6Wbは、同じ素材で構成されていてよい。上層コアラップシート6Waと下層コアラップシート6Wbは、例えば、ティッシュペーパーであってもよい。また、上層コアラップシート6Waと下層コアラップシート6Wbは、別の素材で構成されていてもよい。
【0029】
次に、本実施形態に係る吸収性パッド1の製造方法について説明する。本実施形態に係る吸収性パッド1の製造方法は、吸収コア6Cを製造する工程に特徴を有しているため、以降では、吸収コア6Cを製造する工程について説明する。図4は、本実施形態に係る吸収コア6Cを製造する工程のフローチャートである。まず、ステップS101において、下層吸収マット6bを形成する第1形成工程が行われる。ステップS102において、下層吸収マット6bにエアを吹き付ける第1吹き付け工程が行われる。ステップS103に
おいて、下層吸収マット6bの積層面にSAPの粒子を散布する散布工程が行われる。下層吸収マット6bの積層面にSAPの粒子が散布されることで、下層吸収マット6bの積層面にSAP層11L、11Rが形成される。
【0030】
ステップS104において、上層吸収マット6aを形成する第2形成工程が行われる。ステップS105において、上層吸収マット6aにエアを吹き付ける第2吹き付け工程が行われる。ステップS106において、上層吸収マット6aの積層面と下層吸収マット6bの積層面とを重ねた状態で上層吸収マット6a及び下層吸収マット6bをプレスするプレス工程が行われる。上層吸収マット6a及び下層吸収マット6bをプレスすることにより製造された吸収コア6Cを用いて吸収性パッド1が製造される。
【0031】
本実施形態に係る吸収性パッド1の製造方法では、プレス工程により上層吸収マット6a及び下層吸収マット6bがプレスされる前に、第1吹き付け工程及び第2吹き付け工程を行う。これに限定されず、本実施形態に係る吸収性パッド1の製造方法では、プレス工程により上層吸収マット6a及び下層吸収マット6bがプレスされる前に、第1吹き付け工程及び第2吹き付け工程の少なくとも一方を行ってもよい。
【0032】
ステップS102において、下層吸収マット6bの積層面にエアを吹き付けた場合、下層吸収マット6bの積層面が荒れた状態になり、下層吸収マット6bが嵩高になる。下層吸収マット6bの積層面が荒れることにより、下層吸収マット6bとSAP層11L,11Rとの嵌合力が高まる。また、ステップS105において、上層吸収マット6aの積層面にエアを吹き付けた場合、上層吸収マット6aの積層面が荒れた状態になり、上層吸収マット6aが嵩高になる。上層吸収マット6aの積層面が荒れることにより、上層吸収マット6aとSAP層11L,11Rとの嵌合力が高まる。上層吸収マット6a及び下層吸収マット6bの少なくとも一方とSAP層11L,11Rとの嵌合力が高まることにより、吸収性パッド1の製造工程中におけるSAP層11L,11Rに含まれるSAP粒子の移動がより抑制される。製造された吸収性パッド1を着用者が着用し、着用者の動作により吸収性パッド1が動いた場合でも、SAP層11L,11Rに含まれるSAP粒子の移動がより抑制される。
【0033】
例えば、上層吸収マット6aの積層面及び下層吸収マット6bの積層面が荒れていない場合、上層吸収マット6a及び下層吸収マット6bをプレスすることにより上層吸収マット6a及び下層吸収マット6bの位置ずれが発生する可能性がある。上層吸収マット6a及び下層吸収マット6bをプレスしたときに位置ずれが発生すると、所望の吸収コア6Cを製造できなくなり、吸収コア6Cから排出液が漏れたり、吸収性パッド1の着用感が損なわれたりする。上層吸収マット6aの積層面及び下層吸収マット6bの積層面の少なくとも一方が荒れることにより、上層吸収マット6a及び下層吸収マット6bを重ねた際に上層吸収マット6aの繊維と下層吸収マット6bの繊維とが絡み合い易くなる。これにより、上層吸収マット6aと下層吸収マット6bとの嵌合力が高まり、上層吸収マット6a及び下層吸収マット6bをプレスしたときの上層吸収マット6a及び下層吸収マット6bの位置ずれが抑止され、所望の吸収コア6Cを製造することが可能となる。吸収性パッド1の製造後においても上層吸収マット6a及び下層吸収マット6bの位置ずれが抑止される。上層吸収マット6a及び下層吸収マット6bの位置ずれが抑止されることで、吸収コア6Cからの排出液の漏れが抑止され、吸収性パッド1の着用感が向上する。また、上層吸収マット6aから下層吸収マット6bへの排出液の移動速度が高まると共に、排出液の移動量が大きくなる。
【0034】
次に、図5を参照して、本実施形態に係る吸収性パッド1の製造方法についてより詳細に説明する。図5は、吸収性パッド1の製造装置30の一例を示す図である。吸収性パッド1の製造方法に用いる製造装置30は、搬送路31と、形成装置32と、エア吹き付け
装置33と、SAP散布装置34と、形成装置35と、エア吹き付け装置36と、プレス装置37とを備える。形成装置32は、フォーミングドラム41と、供給装置42とを有する。形成装置35は、フォーミングドラム43と、供給装置44とを有する。プレス装置37は、第1ローラー45及び第2ローラー46を有する。なお、図5に示す製造装置30の構成要素の全てが必須というわけではなく、適宜、製造装置30の構成要素の追加又は削除がなされてもよい。
【0035】
搬送路31は、上層吸収マット6a及び下層吸収マット6bを所定方向に搬送するコンベアである。形成装置32は、フォーミングドラム41の表面に下層吸収マット6bを形成する装置である。フォーミングドラム41は、矢印R1方向に回転可能な回転体である。供給装置42は、下層吸収マット6bを形成するための繊維(以下、下層繊維と表記する。)をフォーミングドラム41の表面(外周面)に供給する。フォーミングドラム41の表面には下層繊維を所定形状に成形するための成形型が設けられており、フォーミングドラム41の表面の成形型に下層繊維を供給することで、フォーミングドラム41の表面に下層吸収マット6bが形成される。フォーミングドラム41の表面に、一つの成形型を設けてもよいし、複数の成形型を設けてもよい。フォーミングドラム41の周方向に複数の成形型が並ぶように、フォーミングドラム41の表面に複数の成形型を設けてもよい。
【0036】
フォーミングドラム41は、吸引機構が内蔵されており、吸引機構によってフォーミングドラム41の表面に形成された下層吸収マット6bが吸引される。フォーミングドラム41が回転し、フォーミングドラム41の表面に形成された下層吸収マット6bが搬送路31の近傍に移動したときに吸引機構による吸引を停止する。これにより、フォーミングドラム41の表面から下層吸収マット6bが剥離し、下層吸収マット6bがフォーミングドラム41から搬送路31に移動する。すなわち、下層吸収マット6bがフォーミングドラム41から搬送路31に転写される。このようにして、フォーミングドラム41の表面から下層吸収マット6bを剥離する剥離工程が行われる。フォーミングドラム41の表面から下層吸収マット6bを剥離する剥離工程は、第1剥離工程の一例である。
【0037】
エア吹き付け装置33は、下層吸収マット6bにエアを吹き付ける。エア吹き付け装置33は、エアを貯蔵するタンクと、タンクに貯蔵されたエアを下層吸収マット6bに吹き付けるためのノズルとを有する送風装置(エア供給装置)であってもよい。エアの吹き付け位置は変更可能であってもよいし、エアの吹き付け位置を固定してもよい。エア吹き付け装置33は、複数の位置にエアを吹き付けることが可能であってもよい。エア吹き付け装置33は、下層吸収マット6bの剥離工程が開始される前から下層吸収マット6bの剥離工程が終了するまでの間における所定期間、下層吸収マット6bにエアを吹き付けてもよい。
【0038】
エア吹き付け装置33は、下層吸収マット6bの剥離工程が行われている間、下層吸収マット6bの積層面にエアを吹き付けてもよい。この場合、エア吹き付け装置33は、下層吸収マット6bとフォーミングドラム41の表面との間にエアを吹き付けてもよい。具体的には、下層吸収マット6bの積層面とフォーミングドラム41の表面との間にエアが吹き付けられる。エア吹き付け装置33は、フォーミングドラム41の回転方向(矢印R1方向)の逆方向に向けてエアを流してもよい。エア吹き付け装置33は、フォーミングドラム41の回転方向の下流側から上流側に向けてエアを流すことで、フォーミングドラム41の回転方向の下流側における下層吸収マット6bの端部にエアを吹き付けてもよい。これにより、フォーミングドラム41の表面から下層吸収マット6bを搬送路31側に引き剥がす方向の力とは異なる方向の力が下層吸収マット6bに加わる。この結果、フォーミングドラム41の回転方向の下流側における下層吸収マット6bの端部においてフォーミングドラム41の表面から下層吸収マット6bが剥離し易くなる。
【0039】
エア吹き付け装置33は、下層吸収マット6bの剥離工程が行われた後に下層吸収マット6bの積層面にエアを吹き付けてもよい。エア吹き付け装置33は、フォーミングドラム41の表面から剥離された下層吸収マット6bを搬送する搬送工程が行われている間に下層吸収マット6bの積層面にエアを吹き付けてもよい。例えば、下層吸収マット6bの搬送が開始されてから下層吸収マット6bがSAP散布装置34の下方に搬送されるまでの間における所定期間、エア吹き付け装置33は、下層吸収マット6bの積層面にエアを吹き付けてもよい。エア吹き付け装置33は、下層吸収マット6bの剥離工程が行われている間に下層吸収マット6bの積層面にエアを吹き付け、下層吸収マット6bの剥離工程が行われた後に下層吸収マット6bの積層面にエアを再度吹き付けてもよい。下層吸収マット6bの剥離工程が行われている間に下層吸収マット6bの積層面に吹き付けるエアの量と、下層吸収マット6bの剥離工程が行われた後に下層吸収マット6bの積層面に吹き付けるエアの量とが、同じであってもよいし、異なってもよい。
【0040】
下層吸収マット6bは、SAP散布装置34の下方に搬送される。SAP散布装置34は、下層吸収マット6bの積層面にSAP粒子を散布し、下層吸収マット6bの積層面にSAP層11L,11Rを形成する。下層吸収マット6bの積層面に対するエア吹き付け工程が行われた後、SAP散布装置34によるSAP粒子の散布工程が行われることにより、下層吸収マット6bの積層面にSAP層11L,11Rが形成される。下層吸収マット6bの積層面に対するエア吹き付け工程により下層吸収マット6bの積層面が荒れているため、SAP層11L,11Rに含まれるSAP粒子の移動がより抑制される。
【0041】
SAP散布装置34は、下層吸収マット6bの積層面におけるエアが吹き付けられた領域にSAP粒子を散布してもよい。下層吸収マット6bの積層面の全体にエアが吹き付けられた場合、SAP散布装置34は、下層吸収マット6bの積層面の全体にSAP粒子を散布してもよい。下層吸収マット6bの積層面の一部の領域にエアが吹き付けられた場合、SAP散布装置34は、下層吸収マット6bの積層面の一部の領域にSAP粒子を散布してもよい。
【0042】
形成装置35は、フォーミングドラム43の表面に上層吸収マット6aを形成する装置である。フォーミングドラム43は、矢印R2方向に回転可能な回転体である。供給装置44は、上層吸収マット6aを形成するための繊維(以下、上層繊維と表記する。)をフォーミングドラム43の表面(外周面)に供給する。フォーミングドラム43の表面には上層繊維を所定形状に成形するための成形型が設けられており、フォーミングドラム43の表面の成形型に上層繊維を供給することで、フォーミングドラム43の表面に上層吸収マット6aが形成される。フォーミングドラム43の表面に、一つの成形型を設けてもよいし、複数の成形型を設けてもよい。フォーミングドラム43の周方向に複数の成形型が並ぶように、フォーミングドラム43の表面に複数の成形型を設けてもよい。
【0043】
フォーミングドラム43は、吸引機構が内蔵されており、吸引機構によってフォーミングドラム43の表面に形成された上層吸収マット6aが吸引される。下層吸収マット6bがフォーミングドラム43の下方に搬送され、フォーミングドラム43が回転することで、フォーミングドラム43の表面に形成された上層吸収マット6aが下層吸収マット6bの上方に移動したときに吸引機構による吸引を停止する。これにより、フォーミングドラム43の表面から上層吸収マット6aが剥離し、上層吸収マット6aの積層面と下層吸収マット6bの積層面とが重なった状態で上層吸収マット6aがフォーミングドラム43から搬送路31に移動する。すなわち、上層吸収マット6aがフォーミングドラム43から搬送路31に転写される。このようにして、フォーミングドラム43の表面から上層吸収マット6aを剥離する剥離工程が行われる。フォーミングドラム43の表面から上層吸収マット6aを剥離する剥離工程は、第2剥離工程の一例である。
【0044】
エア吹き付け装置36は、上層吸収マット6aにエアを吹き付ける。エア吹き付け装置36は、エアを貯蔵するタンクと、タンクに貯蔵されたエアを上層吸収マット6aに吹き付けるためのノズルとを有する送風装置(エア供給装置)であってもよい。エアの吹き付け位置は変更可能であってもよいし、エアの吹き付け位置を固定してもよい。エア吹き付け装置36は、複数の位置にエアを吹き付けることが可能であってもよい。エア吹き付け装置36は、上層吸収マット6aの剥離工程が開始される前から上層吸収マット6aの剥離工程が終了するまでの間における所定期間、上層吸収マット6aにエアを吹き付けてもよい。
【0045】
エア吹き付け装置36は、上層吸収マット6aの剥離工程が行われている間、上層吸収マット6aにエアを吹き付けてもよい。エア吹き付け装置36は、上層吸収マット6aの剥離工程が行われている間、上層吸収マット6aとフォーミングドラム43の表面との間にエアを吹き付けてもよい。具体的には、上層吸収マット6aの積層面の反対面とフォーミングドラム43の表面との間にエアが吹き付けられる。エア吹き付け装置36は、フォーミングドラム43の回転方向(矢印R2方向)の逆方向に向けてエアを流してもよい。エア吹き付け装置36は、フォーミングドラム43の回転方向の下流側から上流側に向けてエアを流すことで、フォーミングドラム43の回転方向の下流側における上層吸収マット6aの端部にエアを吹き付けてもよい。これにより、フォーミングドラム43の表面から上層吸収マット6aを搬送路31側に引き剥がす方向の力とは異なる方向の力が上層吸収マット6aに加わる。この結果、フォーミングドラム43の回転方向の下流側における上層吸収マット6aの端部においてフォーミングドラム43の表面から上層吸収マット6aが剥離し易くなる。
【0046】
エア吹き付け装置36は、上層吸収マット6aの剥離工程が開始される前から上層吸収マット6aの剥離工程が終了するまでの間における所定期間、上層吸収マット6aの積層面にエアを吹き付けてもよい。上層吸収マット6aとフォーミングドラム43の表面との間に吹き付けるエアの量と、上層吸収マット6aの積層面に吹き付けるエアの量とが、同じであってもよいし、異なってもよい。
【0047】
上層吸収マット6a及び下層吸収マット6bは、プレス装置37に搬送される。プレス装置37は、フォーミングドラム41の表面から剥離された下層吸収マット6b及びフォーミングドラム43の表面から剥離された上層吸収マット6aをプレスする装置である。プレス装置37は、上層吸収マット6aの積層面と下層吸収マット6bの積層面とを重ねた状態で上層吸収マット6a及び下層吸収マット6bをプレスする。第1ローラー45は、矢印R3方向に回転可能な回転体である。第2ローラー46は、矢印R4方向に回転可能な回転体である。第1ローラー45及び第2ローラー46が回転することにより、第1ローラー45及び第2ローラー46によって上層吸収マット6a及び下層吸収マット6bが押圧される。これにより、上層吸収マット6aの積層面と下層吸収マット6bの積層面とを重ねた状態で上層吸収マット6a及び下層吸収マット6bがプレスされる。上述したように、上層吸収マット6aの積層面及び下層吸収マット6bの積層面の少なくとも一方が荒れることにより、上層吸収マット6a及び下層吸収マット6bをプレスしたときの上層吸収マット6a及び下層吸収マット6bの位置ずれが抑止される。
【0048】
フォーミングドラム41の表面に複数の下層吸収マット6bが連続した状態で形成され、フォーミングドラム43の表面に複数の上層吸収マット6aが連続した状態で形成されてもよい。この場合、上層吸収マット6a及び下層吸収マット6bをプレスした後、上層吸収マット6a及び下層吸収マット6bを所定サイズにカットすることで、複数の吸収コア6Cが製造される。また、上層吸収マット6a及び下層吸収マット6bを所定サイズにカットした後、上層吸収マット6a及び下層吸収マット6bをプレスしてもよい。
【0049】
また、フォーミングドラム41の表面に複数の下層吸収マット6bが非連続の状態で形成され、フォーミングドラム43の表面に複数の上層吸収マット6aが非連続の状態で形成されてもよい。これにより、上層吸収マット6a及び下層吸収マット6bのカット工程を省略することができる。フォーミングドラム41の表面に複数の下層吸収マット6bを非連続の状態で形成することにより、フォーミングドラム41の表面から複数の下層吸収マット6bのそれぞれが剥離し易くなる。フォーミングドラム43の表面に複数の上層吸収マット6aを非連続の状態で形成することにより、フォーミングドラム43の表面から複数の上層吸収マット6aのそれぞれが剥離し易くなる。
【0050】
搬送路31の上流側に配置された形成装置32、フォーミングドラム41、供給装置42を、第1形成装置、第1フォーミングドラム、第1供給装置と呼称してもよい。搬送路31の下流側に配置された形成装置35、フォーミングドラム43、供給装置44を、第2形成装置、第2フォーミングドラム、第2供給装置と呼称してもよい。
【0051】
次に、フォーミングドラム43の表面に設けられた成形型について説明する。例えば、図6に示す上層吸収マット6aを形成するための成形型がフォーミングドラム43の表面に設けられてもよい。図6(A)は、上層吸収マット6aの一部を示す斜視図であり、図6(B)は、上層吸収マット6aの一部を示す側面図である。図6(A)、(B)には、上層吸収マット6aの長手方向の両端部の一方が示されている。上層吸収マット6aの長手方向の両端部の一方は、フォーミングドラム43の回転方向の下流側における上層吸収マット6aの端部である。上層吸収マット6aの長手方向の両端部の他方の構成は、上層吸収マット6aの長手方向の両端部の一方の構成と同様であってもよい。また、図6(A)、(B)に示す上層吸収マット6aの構成は、下層吸収マット6bに適用することが可能である。したがって、図6(A)、(B)に示す上層吸収マット6aと同様の構成を有する下層吸収マット6bを形成するための成形型がフォーミングドラム41の表面に設けられてもよい。
【0052】
上層吸収マット6aの長手方向の両端部の一方は、柱部分(肉厚部)である第1部分21と、上層吸収マット6aの長手方向の中央側に向かって第1部分21よりも窪んだ窪み部分である第2部分22とを有する。上層吸収マット6aの長手方向の両端部の一方が、第1部分21及び第2部分22を有してもよいし、上層吸収マット6aの長手方向の両端部の両方が、第1部分21及び第2部分22を有してもよい。第2部分22は、第1部分21の厚みよりも薄い肉薄部である。図6(A)、(B)に示すように、第2部分22は、上層吸収マット6aの長手方向の端部側に向かって徐々に薄くなっている勾配部(勾配形状)を有する。上層吸収マット6aがフォーミングドラム43の表面に形成された状態においては、第2部分22の厚みが、フォーミングドラム43の回転方向の下流側に向かって徐々に薄くなっている。第2部分22の勾配面は、曲面であってもよいし、傾斜面であってもよい。第2部分22の勾配面は、上層吸収マット6aの積層面の反対面と連続し、かつ、上層吸収マット6aの端部の側面と連続している。
【0053】
第1部分21及び第2部分22は、上層吸収マット6aの幅方向に沿って隣接している。図6(A)、(B)では、複数の第1部分21及び複数の第2部分22が、上層吸収マット6aの幅方向に沿って交互に隣接するように配置されている。したがって、複数の第1部分21が、上層吸収マット6aの幅方向に沿って間欠的に配置され、複数の第2部分22が、上層吸収マット6aの幅方向に沿って間欠的に配置されている。一つの第1部分21及び一つの第2部分22が、上層吸収マット6aの幅方向に沿って隣接するように配置されてもよい。
【0054】
フォーミングドラム43の表面には、第1部分21及び第2部分22の各形状に対応した溝部及び突起部を有する成形型が設けられている。フォーミングドラム43の表面に設
けられた成形型に上層繊維を供給することで、第1部分21及び第2部分22を有する上層吸収マット6aがフォーミングドラム43の表面に形成される。
【0055】
第2部分22は、上層吸収マット6aの長手方向の中央側に向かって第1部分21よりも窪んでいる。そのため、フォーミングドラム43の回転方向の下流側における上層吸収マット6aの端部にエアを吹き付けた場合、第2部分22から上層吸収マット6aとフォーミングドラム43の表面との間にエアが入り込み易くなる。これにより、フォーミングドラム43の表面から上層吸収マット6aを搬送路31側に引き剥がす方向の力とは異なる方向の力が上層吸収マット6aに加わる。この結果、フォーミングドラム43の回転方向の下流側における上層吸収マット6aの端部においてフォーミングドラム43の表面から上層吸収マット6aが剥離し易くなる。
【0056】
上層吸収マット6aの端部に第1部分21を設けることで、フォーミングドラム43の表面から上層吸収マット6aを剥離する際に第2部分22が切れてしまうことが抑止される。上層吸収マット6aの端部に第1部分21を設けることで、上層吸収マット6aの端部に吹き付けたエアが流れる方向を制御することが可能となり、上層吸収マット6aとフォーミングドラム43の表面との間にエアを集中的に流すことが可能となる。
【0057】
第2部分22は、上層吸収マット6aの長手方向の端部側に向かって徐々に薄くなっている勾配部を有している。第2部分22は、第1部分21に隣接しており、第1部分21を支持する支持部として機能する。第2部分22の勾配面を曲面又は傾斜面とすることで、第2部分22から上層吸収マット6aとフォーミングドラム43の表面との間にエアがより入り込み易くなる。
【0058】
図6(A)、(B)に示す第2部分22の形状に限定されず、第2部分22は他の形状であってもよい。第2部分22の勾配面は、上層吸収マット6aの積層面の反対面と連続し、かつ、上層吸収マット6aの積層面と連続してもよい。第2部分22は、上層吸収マット6aの長手方向の端部側に向かって段階的に薄くなっている階段部(階段形状)を有してもよい。
【0059】
〈変形例〉
本実施形態の変形例について説明する。エア吹き付け装置33とエア吹き付け装置36とを一体化してもよい。例えば、エア吹き付け装置33の構成とエア吹き付け装置36の構成とを有するエア吹き付け装置が、上層吸収マット6a及び下層吸収マット6bの少なくとも一方にエアを吹き付けてもよい。また、エア吹き付け装置33が、上層吸収マット6a及び下層吸収マット6bの少なくとも一方にエアを吹き付けてもよいし、エア吹き付け装置36が、上層吸収マット6a及び下層吸収マット6bの少なくとも一方にエアを吹き付けてもよい。
【0060】
以上、本実施形態について説明したが、本発明の内容は上記実施の形態に限られるものではない。上記実施形態では、吸収性パッドを例に挙げて説明したが、本発明はこれに限定されず、本発明は、テープ型使い捨ておむつや、パンツ型使い捨ておむつ等の吸収性物品にも適用可能である。
【0061】
以上で開示した実施形態や変形例に含まれる特徴は、それぞれ組み合わせることができる。
【符号の説明】
【0062】
1・・吸収性パッド
1B・・股下領域
1F・・前身頃領域
1R・・後身頃領域
2L,2R・・弾性体
3BL,3BR・・弾性体
3L,3R・・立体ギャザー
4・・カバーシート
5・・バックシート
6・・吸収体
6C・・吸収コア
6a・・上層吸収マット
6b・・下層吸収マット
6W・・コアラップシート
6Wa・・上層コアラップシート
6Wb・・下層コアラップシート
7・・トップシート
8L,8R・・サイドシート
HM・・ホットメルト
11L,11R・・SAP層
21・・第1部分
22・・第2部分
30・・製造装置
31・・搬送路
32,35・・形成装置
33,36・・エア吹き付け装置
34・・SAP散布装置
37・・プレス装置
41,43・・フォーミングドラム
42,44・・供給装置
45・・第1ローラー
46・・第2ローラー
図1
図2
図3
図4
図5
図6