IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ NTN株式会社の特許一覧

特開2024-136253車輪用軸受装置及び車輪用軸受装置の製造方法
<>
  • 特開-車輪用軸受装置及び車輪用軸受装置の製造方法 図1
  • 特開-車輪用軸受装置及び車輪用軸受装置の製造方法 図2
  • 特開-車輪用軸受装置及び車輪用軸受装置の製造方法 図3
  • 特開-車輪用軸受装置及び車輪用軸受装置の製造方法 図4
  • 特開-車輪用軸受装置及び車輪用軸受装置の製造方法 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024136253
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】車輪用軸受装置及び車輪用軸受装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
   F16C 33/58 20060101AFI20240927BHJP
   F16C 19/18 20060101ALI20240927BHJP
   F16C 33/64 20060101ALI20240927BHJP
   B60B 35/02 20060101ALI20240927BHJP
   B60B 35/14 20060101ALI20240927BHJP
   B23P 13/00 20060101ALI20240927BHJP
   B24B 9/00 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
F16C33/58
F16C19/18
F16C33/64
B60B35/02 L
B60B35/14 V
B23P13/00
B24B9/00 601J
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023047306
(22)【出願日】2023-03-23
(71)【出願人】
【識別番号】000102692
【氏名又は名称】NTN株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002217
【氏名又は名称】弁理士法人矢野内外国特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】林 正明
【テーマコード(参考)】
3C049
3J701
【Fターム(参考)】
3C049AA02
3C049AA09
3C049CA01
3C049CA02
3C049CB01
3C049CB10
3J701AA02
3J701AA16
3J701AA25
3J701AA32
3J701AA44
3J701AA54
3J701AA62
3J701AA72
3J701BA53
3J701BA56
3J701BA69
3J701DA03
3J701DA11
3J701FA31
3J701GA03
3J701XB03
3J701XB26
3J701XB31
3J701XB33
(57)【要約】
【課題】車輪用軸受装置において、内輪のアウター側の外径面取り部への応力集中を防止することができるものとする。
【解決手段】外方部材(外輪2)と、インナー側端部に小径段部3aを有するハブ輪3およびハブ輪3の小径段部3aに設けられる内輪4からなる内方部材と、を備える車輪用軸受装置であって、内輪4は、アウター側の外径面取り部4fとインナー側の外径面取り部4gとを有し、内輪4のアウター側部の径方向寸法Aに対するアウター側の外径面取り部4fの径方向寸法a1の比が、内輪4のインナー側部の径方向寸法Bに対するインナー側の外径面取り部4gの径方向寸法b11の比より大きく、内輪4のアウター側の外径面取り部4fは、熱処理されている熱処理部であり、研削加工されている面または旋削加工されている面を有し、内輪4のアウター側の外径面取り部4fの表面粗さがRa6.3以下で構成されているものとする。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内周に複列の外側軌道溝を有する外方部材と、
外周のインナー側端部に小径段部を有するハブ輪、および前記ハブ輪の小径段部に設けられる内輪からなり、前記複列の外側軌道溝に対向する複列の内側軌道溝を有する内方部材と、
前記外方部材と前記内方部材との両軌道溝間に転動自在に収容された複列の転動体と、を備える車輪用軸受装置であって、
前記内輪は、アウター側の外径面取り部とインナー側の外径面取り部とを有し、
前記内輪のアウター側部の径方向寸法に対する前記アウター側の外径面取り部の径方向寸法の比が、前記内輪のインナー側部の径方向寸法に対する前記インナー側の外径面取り部の径方向寸法の比より大きく、
前記内輪のアウター側の外径面取り部は、熱処理されている熱処理部であり、研削加工されている面または旋削加工されている面を有し、
前記内輪のアウター側の外径面取り部の表面粗さがRa6.3以下で構成されている、車輪用軸受装置。
【請求項2】
前記内輪のアウター側の外径面取り部の面取りの径方向寸法が0.1~1.5mmで構成されている、請求項1に記載の車輪用軸受装置。
【請求項3】
前記内輪の表面硬度が50~70HRCである、請求項1に記載の車輪用軸受装置。
【請求項4】
請求項1~請求項3の何れか一項に記載の車輪用軸受装置の製造方法であって、
前記内輪のアウター側の外径面取り部を、熱処理後にさらに研削加工しまたは旋削加工する、車輪用軸受装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車輪用軸受装置及び車輪用軸受装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車等の懸架装置において車輪を回転自在に支持する車輪用軸受装置が知られている。前記車輪用軸受装置は、内周に複列の外側軌道溝を有する外方部材と、外周のインナー側端部に小径段部を有するハブ輪、およびハブ輪の小径段部に設けられる内輪からなり、複列の外側軌道溝に対向する複列の内側軌道溝を有する内方部材と、外方部材と内方部材との両軌道溝間に転動自在に収容された複列の転動体と、を備える。
【0003】
また、前記車輪用軸受装置には、インナー側の外径面取り部(インナー側端面と外径側端面との境界部分の面取り部)を熱処理後に切削加工されている面で構成することによって、インナー側の外径面取り部に、ハブ輪の加締め加工時にフープ応力が生じることによる応力集中を防止するものがある(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005-14081号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、内輪のアウター側部の径方向寸法は、インナー側部の径方向寸法に比べて小さく構成されていることから、内輪のアウター側部は、インナー側部に比べて、内輪をハブ輪に圧入する際のフープ応力が生じやすい構成である。また、車輪用軸受装置では、内輪のアウター側の外径面取り部(アウター側端面と外径側端面との境界部分の面取り部)において表面粗さが粗くなった場合には、ハブ輪の小径段部に内輪を設ける際のフープ応力が生じることによって応力集中を助長する場合がある。このように内輪のアウター側の外径面取り部において表面粗さが粗くなって応力集中が生じることによって、軸受の耐久性低下につながる可能性がある。
【0006】
そこで、本発明においては、表面粗さが粗くなることによる内輪のアウター側の外径面取り部への応力集中を防止することができる車輪用軸受装置及び車輪用軸受装置の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
即ち、内周に複列の外側軌道溝を有する外方部材と、外周のインナー側端部に小径段部を有するハブ輪、および前記ハブ輪の小径段部に設けられる内輪からなり、前記複列の外側軌道溝に対向する複列の内側軌道溝を有する内方部材と、前記外方部材と前記内方部材との両軌道溝間に転動自在に収容された複列の転動体と、を備える車輪用軸受装置であって、前記内輪は、アウター側の外径面取り部とインナー側の外径面取り部とを有し、前記内輪のアウター側部の径方向寸法に対する前記アウター側の外径面取り部の径方向寸法の比が、前記内輪のインナー側部の径方向寸法に対する前記インナー側の外径面取り部の径方向寸法の比より大きく、前記内輪のアウター側の外径面取り部は、熱処理されている熱処理部であり、研削加工されている面または旋削加工されている面を有し、前記内輪のアウター側の外径面取り部の表面粗さがRa6.3以下で構成されているものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0009】
即ち、本願の発明によれば、表面粗さが粗くなることによる内輪のアウター側の外径面取り部への応力集中を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の一実施形態に係る車輪用軸受装置を示す断面図。
図2】同じく車輪用軸受装置の内輪を示す拡大断面図。
図3】同じく車輪用軸受装置の内輪と研削砥石とを示す拡大断面図。
図4】同じく車輪用軸受装置の内輪と研削砥石とを示す拡大断面図。
図5】(A)同じく車輪用軸受装置の内輪を示す拡大断面図、(B)同じく車輪用軸受装置の内輪を示す拡大断面図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明を実施するための形態を、添付の図面を用いて説明する。
【0012】
図1に示す車輪用軸受装置1は、本発明に係る車輪用軸受装置の一実施形態であり、自動車等の車両の懸架装置において車輪を回転自在に支持するものである。
【0013】
車輪用軸受装置1は第3世代と称呼される構成を備えており、外方部材である外輪2と、内方部材であるハブ輪3および内輪4と、転動列である二列のインナー側ボール列5およびアウター側ボール列6と、インナー側シール部材9およびアウター側シール部材10とを具備する。
【0014】
ここで、インナー側とは、車体に取り付けた際の車輪用軸受装置1の車体側を表し、アウター側とは、車体に取り付けた際の車輪用軸受装置1の車輪側を表す。また、軸方向とは車輪用軸受装置1の回転軸に沿った方向を表し、軸方向一端側はアウター側であり、軸方向他端側はインナー側である。
【0015】
外輪2のインナー側端部には、インナー側シール部材9が嵌合可能なインナー側開口部2aが形成されている。外輪2のアウター側端部には、アウター側シール部材10が嵌合可能なアウター側開口部2bが形成されている。外輪2の内周面には、インナー側の外側軌道溝2cと、アウター側の外側軌道溝2dとが形成されている。
【0016】
外輪2の外周面には、外輪2を車体側部材に取り付けるための車体取り付けフランジ2eが一体的に形成されている。車体取り付けフランジ2eには、車体側部材と外輪2とを締結する締結部材(ここでは、ボルト)が挿入されるボルト孔2gが設けられている。
【0017】
ハブ輪3の外周面3fにおけるインナー側端部には、アウター側端部よりも縮径された小径段部3aが形成されている。ハブ輪3のアウター側端部には、車輪を取り付けるための車輪取り付けフランジ3bが一体的に形成されている。車輪取り付けフランジ3bには、複数のボルト孔3dが形成されている。ボルト孔3dには、ハブ輪3と車輪又はブレーキ部品とを締結するためのハブボルト3eが圧入されている。車輪取り付けフランジ3bは、径方向外側へ延びるハブフランジの一例である。
【0018】
ハブ輪3の外周面3fには、外輪2のアウター側の外側軌道溝2dに対向するようにアウター側の内側軌道溝3cが設けられている。つまり、内方部材のアウター側には、ハブ輪3によって内側軌道溝3cが構成されている。アウター側シール部材10は、外輪2とハブ輪3とによって形成された環状空間のアウター側開口端に嵌合されており、当該アウター側開口端を塞いでいる。アウター側シール部材10は、密封装置の一例である。
【0019】
内輪4は、ハブ輪3の小径段部3aに設けられている。内輪4は、圧入または加締め加工によりハブ輪3の小径段部3aに固定されている。内輪4は、転動列であるインナー側ボール列5およびアウター側ボール列6に予圧を付与している。内輪4の外周面には、外輪2のインナー側の外側軌道溝2cと対向するようにインナー側の内側軌道溝4aが設けられている。つまり、内方部材のインナー側には、内輪4によって内側軌道溝4aが構成されている。
【0020】
転動列であるインナー側ボール列5とアウター側ボール列6とは、転動体である複数のボール7が保持器8によって保持されることにより構成されている。インナー側ボール列5は、内輪4の内側軌道溝4aと、外輪2のインナー側の外側軌道溝2cとの間に転動自在に挟まれている。アウター側ボール列6は、ハブ輪3の内側軌道溝3cと、外輪2のアウター側の外側軌道溝2dとの間に転動自在に挟まれている。つまり、インナー側ボール列5とアウター側ボール列6とは、外方部材と内方部材との両軌道溝間に転動自在に収容されている。車輪用軸受装置1においては、外輪2と、ハブ輪3および内輪4と、インナー側ボール列5と、アウター側ボール列6とによって複列アンギュラ玉軸受が構成されている。
【0021】
内輪4は、アウター側端部にアウター側端面4bを有し、インナー側端部にインナー側端面4cを有している。内輪4は、内側軌道溝4aのアウター側の外径端部に小径外径側端面4dを有し、内側軌道溝4aのインナー側の外径端部に大径外径側端面4eを有している。内輪4は、アウター側端面4bと小径外径側端面4dとの境界部分にアウター側の外径面取り部4fを有している。内輪4のアウター側の外径面取り部4fは、面取りされて構成されている。内輪4は、インナー側端面4cと大径外径側端面4eとの境界部分にインナー側の外径面取り部4gを有している。内輪4のインナー側の外径面取り部4gは、面取りされて構成されている。内輪4のアウター側部の径方向寸法(アウター側部の肉厚寸法)Aに対するアウター側の外径面取り部4fの径方向寸法a1の比が、内輪4のインナー側部の径方向寸法(のインナー側部の肉厚寸法)Bに対するインナー側の外径面取り部4gの径方向寸法b1の比より大きく構成されている。内輪4のアウター側部の径方向寸法Aに対するアウター側の外径面取り部4fの軸方向寸法a2の比が、内輪4のインナー側部の径方向寸法Bに対するインナー側の外径面取り部4gの軸方向寸法b2の比より大きく構成されている。内輪4の少なくともアウター側部は熱処理が施されている熱処理部で構成されている。つまり、内輪4のアウター側の外径面取り部4fは、内輪4のアウター側部を構成する一部であることから熱処理部として構成されている。内輪4のアウター側の外径面取り部4fは、熱処理前に予め研削工具によって研削加工されまたは切削工具によって旋削加工されている面で構成されており、熱処理後にさらに研削加工または旋削加工されている面を有して構成されている。内輪4のアウター側の外径面取り部4fは、研削加工または旋削加工による表面を視認できる。
【0022】
このように、内輪4のアウター側部の径方向寸法Aに対するアウター側の外径面取り部4fの径方向寸法a1の比が、内輪4のインナー側部の径方向寸法Bに対するインナー側の外径面取り部4gの径方向寸法b1の比より大きく構成して、アウター側の外径面取り部4fを比較的大きく構成していることから、ハブ輪3の小径段部3aに内輪4を設ける際のフープ応力(内輪4の圧入時のフープ応力)が生じること抑制することができる。またこのように、内輪4のアウター側の外径面取り部4fは熱処理後に研削加工または旋削加工されている面で構成されていることから、内輪4のアウター側の外径面取り部4fにおいて表面粗さが粗くなった状態を解消することができ、ハブ輪3の小径段部3aに内輪4を設ける際のフープ応力が生じることによる、内輪4のアウター側の外径面取り部4fへの応力集中を防止することができる。
【0023】
車輪用軸受装置1の製造方法として、前述の研削加工または旋削加工が施された後に、内輪4のアウター側の外径面取り部4fをズブ焼入れにより熱処理する。そして、ズブ焼入れにより熱処理した後に、内輪4のアウター側の外径面取り部4fを、さらに研削工具によって研削加工、または、切削工具によって旋削加工する。
【0024】
このように、内輪4のアウター側の外径面取り部4fを、さらに研削加工または旋削加工することから、熱処理変形の影響を受けずに高精度な面取り加工を行うことができ、内輪4のアウター側の外径面取り部4fにおいて表面粗さが粗くなった状態を解消することができる。また、ハブ輪3の小径段部3aに内輪4を設ける際の内輪4の外径面に生じるフープ応力は300MPa以下となるように構成されている。したがって、ハブ輪3の小径段部3aに内輪4を設ける際のフープ応力が生じることによる応力集中を防止することができる。
【0025】
図3に示すように、内輪4のアウター側の外径面取り部4fの研削加工または旋削加工を行う際には、例えば、研削砥石20を用いて行われる。研削砥石20は、内輪4のアウター側端面4b、アウター側の外径面取り部4f、小径外径側端面4d、内側軌道溝4a、および大径外径側端面4eを同時に研削加工を行うことが可能な形状に構成されている。また図4に示すように、研削砥石20は、内輪4の小径外径側端面4dには接触せずに、アウター側端面4b、アウター側の外径面取り部4f、内側軌道溝4a、および大径外径側端面4eを同時に研削加工を行うことが可能な形状に構成することもできる。このように構成することによって、内輪4のアウター側の外径面取り部4fは研削加工または旋削加工を簡易に行うことができる。なお、内輪4のアウター側の外径面取り部4fの研削加工を行うにあたって、このような構成であることに限定されず、例えば、アウター側の外径面取り部4fのみを研削加工または旋削加工する構成、小径外径側端面4dとアウター側の外径面取り部4fとを同時に研削加工または旋削加工する構成、または小径外径側端面4dとアウター側の外径面取り部4fと小径外径側端面4dを同時に研削加工または旋削加工する構成としてもよいものとする。
【0026】
ズブ焼入れによる熱処理が施された後にさらに研削加工されまたは旋削加工された内輪4のアウター側の外径面取り部4fの表面粗さは、Ra6.3以下となるように構成されている。このように構成することによって、ハブ輪3の小径段部3aに内輪4を設ける際のフープ応力が生じることによる応力集中をより確実に防止することができる。
【0027】
ズブ焼入れによる熱処理が施された後にさらに研削加工されまたは旋削加工された内輪4のアウター側の外径面取り部4fの径方向寸法a1は、0.1~1.5mmとなるように構成されている。このように0.1mm以上とすることによって、内輪4のアウター側の外径面取り部4fの剛性を担保しつつ、ハブ輪3の小径段部3aに内輪4を設ける際のフープ応力が生じることによる応力集中をより確実に防止することができる。また、1.5mm以下とすることで、ハブ輪に突き当てる内輪のアウター側の端面を十分確保することができるため、突き当てが安定し、剛性を確保できる。内輪4のアウター側の外径面取り部4fの面取りの軸方向寸法a2も同様に0.1~1.5mmとなるよう構成されている事が好ましい。このように構成することによって、内輪4のアウター側の外径面取り部4fの剛性を担保しつつ、ハブ輪3の小径段部3aに内輪4を設ける際のフープ応力が生じることによる応力集中をより確実に防止することができる。
【0028】
図5(A)に示すように、内輪4のアウター側の外径面取り部4fはR面で構成してもよく、また図5(B)に示すように、内輪4のアウター側の外径面取り部4fはC面で構成してもよいものとする。また、内輪4のアウター側の外径面取り部4fはR面で構成されるとき、コントロール半径とする構成とすることもできる。このように構成することによって内輪4のアウター側の外径面取り部4fの表面の凹凸を少なくしてハブ輪3の小径段部3aに内輪4を設ける際のフープ応力が生じることによる応力集中をより確実に防止することができる。
【0029】
内輪4への熱処理において内輪4の表面の全域に亘って焼き入れが施されて、内輪4の表面が焼き入れ部で構成される。このように内輪4の表面が焼き入れ部の表面硬度は50~70HRCである。このように構成することによって、内輪4の耐久性を確保することができる。なお、内輪4の熱処理について、全体を焼入れするズブ焼入れとしたが、高周波焼入れ等が施されていても良いものとする。
【0030】
なお、第3世代と呼称される車輪用軸受装置を例示したが、本発明に係る車輪用軸受装置はこうした構造に限定されず、例えば、ハブ輪の小径段部に一対の内輪を圧入した第1世代あるいは第2世代構造であっても良いものとする。また、転動体をボール列5、6とした複列アンギュラ玉軸受を例示したが、これに限らず転動体に円錐ころを使用した複列円すいころ軸受であっても良いものとする。また、ハブ輪3の小径段部3aに内輪4を配置する際に、ハブ輪3を加締め加工する構成に代えてハブ輪3を加締め加工しない構成であっても良いものとする。
【0031】
以上、本発明の実施の形態について説明を行ったが、本発明はこうした実施の形態に何等限定されるものではなく、あくまで例示であって、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、さらに種々なる形態で実施し得ることは勿論のことであり、本発明の範囲は、特許請求の範囲の記載によって示され、さらに特許請求の範囲に記載の均等の意味、および範囲内のすべての変更を含む。
【符号の説明】
【0032】
1 車輪用軸受装置
2 外輪
2a インナー側開口部
2b アウター側開口部
2c (インナー側の)外側軌道溝
2d (アウター側の)外側軌道溝
3 ハブ輪
3a 小径段部
3b 車輪取り付けフランジ
3c 内側軌道溝
3f 外周面
4 内輪
4a 内側軌道溝
4b アウター側端面
4c インナー側端面
4d 小径外径側端面
4e 大径外径側端面
4f アウター側の外径面取り部
4g インナー側の外径面取り部
5 インナー側ボール列
6 アウター側ボール列
A 内輪のアウター側部の径方向寸法
a1 内輪のアウター側の外径面取り部の径方向寸法
B 内輪のインナー側部の径方向寸法
b1 内輪のインナー側の外径面取り部の径方向寸法
図1
図2
図3
図4
図5