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特開2024-136258情報処理プログラム、情報処理方法、および情報処理装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024136258
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】情報処理プログラム、情報処理方法、および情報処理装置
(51)【国際特許分類】
   G06N 10/60 20220101AFI20240927BHJP
【FI】
G06N10/60
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023047321
(22)【出願日】2023-03-23
(71)【出願人】
【識別番号】000005223
【氏名又は名称】富士通株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】518253439
【氏名又は名称】株式会社QunaSys
(74)【代理人】
【識別番号】100104190
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 昭徳
(72)【発明者】
【氏名】金杉 翔太
(72)【発明者】
【氏名】中川 裕也
(72)【発明者】
【氏名】筒井 翔一朗
(57)【要約】
【課題】量子コンピュータを用いてGreen関数を演算し易くすること。
【解決手段】情報処理装置100は、物質の性質を解析する際に用いられる、量子ビットによって表現されたGreen関数110を記憶する。Green関数110は、特定の項111を含む。情報処理装置100は、物質が有する性質に応じて、特定の項111に対応する複数の量子回路120のうち2以上の量子回路120が分類されたいずれかのグループ130を記憶する。情報処理装置100は、記憶したいずれかのグループ130の中から、いずれかの量子回路120を選択する。情報処理装置100は、選択したいずれかの量子回路120が表す期待値を測定することにより、記憶したいずれかのグループ130のうち、他の量子回路120が表す期待値を測定する処理を省略するよう、演算部101を制御する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
物質の性質を解析する際に用いられる、量子ビットによって表現されたGreen関数を形成する特定の項に対応する複数の量子回路のそれぞれが表す期待値を用いて前記Green関数を演算する場合について、前記物質が有する空間群対称性、ゲージ対称性、粒子正孔対称性、または、時間反転対称性の少なくともいずれかの性質に応じて、前記複数の量子回路のうち同一の期待値に対応する量子回路同士が同一のグループに分類されるよう前記複数の量子回路が分類された際に2以上の量子回路が分類されたいずれかのグループの中から、いずれかの量子回路を選択し、
選択した前記いずれかの量子回路が表す期待値を測定することにより、前記いずれかのグループのうち、選択した前記いずれかの量子回路とは異なる量子回路が表す期待値を測定する処理を省略するよう、前記Green関数を演算する演算部を制御する、
処理をコンピュータに実行させることを特徴とする情報処理プログラム。
【請求項2】
前記選択する処理は、
前記いずれかのグループに分類された前記2以上の量子回路のそれぞれを形成するパウリゲートの数に基づいて、前記いずれかのグループの中から、前記パウリゲートの数が相対的に小さいいずれかの量子回路を選択する、ことを特徴とする請求項1に記載の情報処理プログラム。
【請求項3】
前記選択する処理は、
前記物質が有する空間群対称性、ゲージ対称性、粒子正孔対称性、または、時間反転対称性の少なくともいずれかの性質に応じて、前記複数の量子回路のうち、同一の期待値に対応する量子回路同士が同一のグループに分類されるよう前記複数の量子回路が分類された際に2以上の量子回路がそれぞれ分類された1以上のグループのそれぞれについて、当該グループの中から、いずれかの量子回路を選択し、
前記制御する処理は、
前記1以上のグループのそれぞれについて、選択した前記いずれかの量子回路が表す期待値を測定することにより、当該グループのうち、選択した前記いずれかの量子回路とは異なる量子回路が表す期待値を測定する処理を省略するよう、前記演算部を制御する、ことを特徴とする請求項2に記載の情報処理プログラム。
【請求項4】
前記制御する処理は、
前記複数の量子回路のうち期待値がゼロである量子回路を特定する、
処理を前記コンピュータに実行させ、
前記制御する処理は、
特定した前記量子回路が表す期待値を測定する処理を省略するよう、前記演算部を制御する、ことを特徴とする請求項1~3のいずれか一つに記載の情報処理プログラム。
【請求項5】
物質の性質を解析する際に用いられる、量子ビットによって表現されたGreen関数を形成する特定の項に対応する複数の量子回路のそれぞれが表す期待値を用いて前記Green関数を演算する場合について、前記物質が有する空間群対称性、ゲージ対称性、粒子正孔対称性、または、時間反転対称性の少なくともいずれかの性質に応じて、前記複数の量子回路のうち同一の期待値に対応する量子回路同士が同一のグループに分類されるよう前記複数の量子回路が分類された際に2以上の量子回路が分類されたいずれかのグループの中から、いずれかの量子回路を選択し、
選択した前記いずれかの量子回路が表す期待値を測定することにより、前記いずれかのグループのうち、選択した前記いずれかの量子回路とは異なる量子回路が表す期待値を測定する処理を省略するよう、前記Green関数を演算する演算部を制御する、
処理をコンピュータが実行することを特徴とする情報処理方法。
【請求項6】
物質の性質を解析する際に用いられる、量子ビットによって表現されたGreen関数を形成する特定の項に対応する複数の量子回路のそれぞれが表す期待値を用いて前記Green関数を演算する場合について、前記物質が有する空間群対称性、ゲージ対称性、粒子正孔対称性、または、時間反転対称性の少なくともいずれかの性質に応じて、前記複数の量子回路のうち同一の期待値に対応する量子回路同士が同一のグループに分類されるよう前記複数の量子回路が分類された際に2以上の量子回路が分類されたいずれかのグループの中から、いずれかの量子回路を選択し、
選択した前記いずれかの量子回路が表す期待値を測定することにより、前記いずれかのグループのうち、選択した前記いずれかの量子回路とは異なる量子回路が表す期待値を測定する処理を省略するよう、前記Green関数を演算する演算部を制御する、
制御部を有することを特徴とする情報処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報処理プログラム、情報処理方法、および情報処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、材料開発または創薬研究などの分野において、高分子または固体結晶などの物質に関する量子多体系のシミュレーションを実施し、物質の性質などを解析することがある。例えば、固体材料のGreen関数を演算することにより、固体材料に関する量子多体系のシミュレーションを実施することがある。
【0003】
先行技術としては、例えば、量子コンピュータが計算したスピン演算子の期待値に基づいて、古典的なコンピュータが、ハミルトニアン演算子に相当するハミルトニアン行列の要素および重なり行列の要素を計算し、一電子Green関数を計算するものがある。また、例えば、ユニタリ演算子の線形和における各係数に基づいて設定したn層のパラメータ群に含まれるパラメータに基づいて所定の演算を実行する量子ゲートの演算結果に基づいて、ユニタリ演算子の線形和を特定する技術がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2021-068281号公報
【特許文献2】特開2022-007590号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来技術では、量子多体系のシミュレーションを実施することが難しい。例えば、古典的なコンピュータを用いて、固体材料のGreen関数を演算することが考えられるが、固体材料のGreen関数を演算する際にかかるリソース量が指数的に増大する傾向がある。一方で、例えば、量子コンピュータを用いて、固体材料のGreen関数を演算することが考えられるが、Green関数を形成する特定の項に対応する複数の量子回路の期待値を測定することになり、測定の回数が膨大になる傾向がある。
【0006】
1つの側面では、本発明は、量子コンピュータを用いてGreen関数を演算し易くすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
1つの実施態様によれば、物質の性質を解析する際に用いられる、量子ビットによって表現されたGreen関数を形成する特定の項に対応する複数の量子回路のそれぞれが表す期待値を用いて前記Green関数を演算する場合について、前記物質が有する空間群対称性、ゲージ対称性、粒子正孔対称性、または、時間反転対称性の少なくともいずれかの性質に応じて、前記複数の量子回路のうち同一の期待値に対応する量子回路同士が同一のグループに分類されるよう前記複数の量子回路が分類された際に2以上の量子回路が分類されたいずれかのグループの中から、いずれかの量子回路を選択し、選択した前記いずれかの量子回路が表す期待値を測定することにより、前記いずれかのグループのうち、選択した前記いずれかの量子回路とは異なる量子回路が表す期待値を測定する処理を省略するよう、前記Green関数を演算する演算部を制御する情報処理プログラム、情報処理方法、および情報処理装置が提案される。
【発明の効果】
【0008】
一態様によれば、量子コンピュータを用いてGreen関数を演算し易くすることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、実施の形態にかかる情報処理方法の一実施例を示す説明図である。
図2図2は、情報処理システム200の一例を示す説明図である。
図3図3は、情報処理装置100のハードウェア構成例を示すブロック図である。
図4図4は、量子コンピュータ201のハードウェア構成例を示すブロック図である。
図5図5は、情報処理装置100の機能的構成例を示すブロック図である。
図6図6は、量子回路600の一例を示す説明図である。
図7図7は、同一の期待値に対応する2以上の量子回路600を同一のグループに分類する一例を示す説明図である。
図8図8は、グループの中からいずれかの量子回路600を選択する一例を示す説明図である。
図9図9は、効果の一例を示す説明図(その1)である。
図10図10は、効果の一例を示す説明図(その2)である。
図11図11は、効果の一例を示す説明図(その3)である。
図12図12は、全体処理手順の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、図面を参照して、本発明にかかる情報処理プログラム、情報処理方法、および情報処理装置の実施の形態を詳細に説明する。
【0011】
(実施の形態にかかる情報処理方法の一実施例)
図1は、実施の形態にかかる情報処理方法の一実施例を示す説明図である。情報処理装置100は、Green関数を演算する演算部を制御するコンピュータである。情報処理装置100は、例えば、サーバ、または、PC(Personal Computer)などである。
【0012】
演算部は、例えば、情報処理装置100とは異なる他のコンピュータである。演算部は、具体的には、量子コンピュータである。演算部は、例えば、情報処理装置100であってもよい。
【0013】
Green関数は、例えば、材料開発または創薬研究などの分野において用いられる。Green関数は、具体的には、主に固体材料の性質を解析する際に用いられる。例えば、Green関数をフーリエ変換したスペクトル関数に基づいて、固体材料の性質を解析することが考えられる。性質は、例えば、準粒子スペクトル、バンド構造、電子密度、電磁場に対する応答などである。
【0014】
Green関数は、例えば、下記式(1)によって表現される。Hは、ハミルトニアンである。tは、時間のパラメータである。a,bは、電子のインデックスである。caは、電子の消滅演算子である。cb†は、電子の生成演算子である。θは、Heavisideの階段関数である。|ψ0>は、ハミルトニアンHの基底状態である。なお、以下の説明では、簡単のため、ゼロ温度のGreen関数を考えるが、同様の議論は、有限温度のGreen関数に対しても適用可能である。
【0015】
【数1】
【0016】
スペクトル関数は、例えば、下記式(2)によって表現される。ここで、kは波数である。
【0017】
【数2】
【0018】
しかしながら、Green関数を演算することが難しいという問題がある。例えば、古典的なコンピュータを用いて、Green関数を演算する場合が考えられる。この場合、量子系サイズの増大に応じて、Green関数を演算する際にかかるリソース量が指数的に増大する傾向がある。リソース量は、例えば、メモリ使用量である。このため、古典的なコンピュータを用いて、Green関数を演算することは難しい。
【0019】
これに対し、例えば、量子コンピュータを用いて、Green関数を演算する場合が考えられる。具体的には、下記式(3)のJordan-Wigner変換を用いて、上記式(1)を量子ビット表示した下記式(4)によって、Green関数を表現することにより、量子コンピュータを用いて、Green関数を演算することが考えられる。ここで、λa (n)は、複素定数である。Pa (n)は、パウリ演算子である。Uは、時間発展演算子e-iHtを近似するユニタリゲートである。
【0020】
【数3】
【0021】
【数4】
【0022】
この場合でも、Green関数を演算することは難しい。例えば、Green関数を演算する際、上記式(4)のうち、下記式(5)のKab (nm)で表す特定の項に対応する複数の量子回路の期待値を測定することになる。従って、量子系サイズの増大に応じて、量子回路の数が増大し、測定の回数が膨大になる傾向がある。このため、量子コンピュータを用いて、Green関数を演算することは難しい。
【0023】
【数5】
【0024】
そこで、本実施の形態では、量子コンピュータを用いてGreen関数を演算し易くすることができる情報処理方法について説明する。
【0025】
図1において、情報処理装置100は、物質の性質を解析する際に用いられる、量子ビットによって表現されたGreen関数110を記憶する。Green関数110は、特定の項111を含む。特定の項111は、具体的には、上述した上記式(5)のKab (nm)である。
【0026】
情報処理装置100は、Green関数110を演算する演算部101を制御可能であるとする。演算部101は、特定の項111に対応する複数の量子回路120のそれぞれの量子回路120が表す期待値を用いてGreen関数110を演算する。演算部101は、情報処理装置100とは異なる量子コンピュータである。演算部101は、情報処理装置100に含まれていてもよい。演算部101は、量子コンピュータのエミュレータであってもよい。
【0027】
(1-1)情報処理装置100は、物質が有する性質に応じて、複数の量子回路120のうち2以上の量子回路120が分類されたいずれかのグループ130を記憶する。グループ130は、複数の量子回路120のうち同一の期待値に対応する量子回路120同士が同一のグループ130に分類されるよう複数の量子回路120が分類された際に、2以上の量子回路120が分類された集まりである。
【0028】
同一の期待値に対応する量子回路120同士は、例えば、絶対値が同一である期待値を表す量子回路120同士である。物質が有する性質は、例えば、空間群対称性、ゲージ対称性、粒子正孔対称性、または、時間反転対称性の少なくともいずれかの性質である。
【0029】
情報処理装置100は、例えば、予め設定されたいずれかのグループ130を記憶する。情報処理装置100は、例えば、物質が有する性質に応じて、複数の量子回路120を分類することにより、2以上の量子回路120が分類されたいずれかのグループ130を特定し、特定したいずれかのグループ130を記憶していてもよい。
【0030】
これにより、情報処理装置100は、同一の期待値に対応する2以上の量子回路120を特定することができる。
【0031】
(1-2)情報処理装置100は、記憶したいずれかのグループ130の中から、いずれかの量子回路120を選択する。情報処理装置100は、選択したいずれかの量子回路120が表す期待値を測定することにより、記憶したいずれかのグループ130のうち、他の量子回路120が表す期待値を測定する処理を省略するよう、演算部101を制御する。他の量子回路120は、選択したいずれかの量子回路120とは異なる量子回路120である。
【0032】
情報処理装置100は、例えば、記憶したいずれかのグループ130のうち、測定したいずれかの量子回路120が表す期待値を、当該いずれかの量子回路120とは異なる量子回路120が表す期待値としても利用するよう、演算部101を制御する。
【0033】
これにより、情報処理装置100は、記憶したいずれかのグループ130について、いずれかの量子回路120が表す期待値を測定すれば、当該いずれかの量子回路120とは異なる量子回路120が表す期待値を測定せずに済ませることができる。
【0034】
このため、情報処理装置100は、Green関数110を演算する際における期待値の測定の回数の低減化を図ることができ、演算部101にかかる処理負担および処理時間の低減化を図ることができる。情報処理装置100は、演算部101において、Green関数110を演算し易くすることができる。
【0035】
ただし、情報処理装置100は厳密なGreen関数が満たす対称性の性質に基づいて動作するため、時間発展演算子を近似するユニタリゲートUや基底状態|ψ0>を準備する際に、元々のハミルトニアンの対称性を破る近似を導入している場合には、情報処理装置100を使用した場合の計算結果と情報処理装置100を使用しない場合の計算結果とは一般に異なる。
【0036】
ここでは、説明の簡略化のため、情報処理装置100が、1つのグループ130に着目し、演算部101をどのように制御するのかについて説明した。情報処理装置100は、例えば、2以上の量子回路120が分類されたグループ130が複数存在する場合、それぞれのグループ130について、演算部101を、上述した通り制御することが好ましい。また、演算部101は、例えば、情報処理装置100の制御に依らない量子回路120については、当該量子回路120が表す期待値を独立して測定することが考えられる。
【0037】
ここでは、情報処理装置100が、単独で演算部101を制御する場合について説明したが、これに限らない。例えば、情報処理装置100が、他のコンピュータと協働し、演算部101を制御する場合があってもよい。具体的には、他のコンピュータが、物質が有する性質に応じて、複数の量子回路120を分類する機能を有し、情報処理装置100が、2以上の量子回路120が分類されたいずれかのグループ130を、他のコンピュータから受信する場合があってもよい。例えば、複数のコンピュータが、協働して情報処理装置100としての機能を実現する場合があってもよい。具体的には、クラウド上に、情報処理装置100としての機能が実現される場合があってもよい。
【0038】
(情報処理システム200の一例)
次に、図2を用いて、図1に示した情報処理装置100を適用した、情報処理システム200の一例について説明する。
【0039】
図2は、情報処理システム200の一例を示す説明図である。図2において、情報処理システム200は、情報処理装置100と、量子コンピュータ201とを含む。
【0040】
情報処理システム200において、情報処理装置100と量子コンピュータ201とは、有線または無線のネットワーク210を介して接続される。ネットワーク210は、例えば、LAN(Local Area Network)、WAN(Wide Area Network)、インターネットなどである。
【0041】
情報処理装置100は、量子コンピュータ201を制御するコンピュータである。情報処理装置100は、量子ビットによって表現されたGreen関数を記憶する。Green関数は、特定の項を含む。特定の項は、具体的には、上述した上記式(5)のKab (nm)である。
【0042】
情報処理装置100は、物質が有する性質に応じて、特定の項に対応する複数の量子回路のうち同一の期待値に対応する量子回路同士が同一のグループに分類されるよう複数の量子回路を分類した複数のグループを記憶する。複数のグループは、少なくとも、2以上の量子回路が分類されたグループを1以上含む。
【0043】
物質が有する性質は、例えば、空間群対称性、ゲージ対称性、粒子正孔対称性、または、時間反転対称性の少なくともいずれかの性質である。
【0044】
情報処理装置100は、例えば、予め設定された複数のグループを記憶する。情報処理装置100は、例えば、物質が有する性質に応じて、複数の量子回路を分類することにより、複数のグループを特定し、特定した複数のグループを記憶していてもよい。
【0045】
情報処理装置100は、複数のグループのそれぞれのグループについて、当該グループの中から、いずれかの量子回路を選択する。情報処理装置100は、特定した複数のグループのそれぞれのグループと、当該グループの中から選択したいずれかの量子回路とを特定可能に示し、Green関数を演算することを要求する演算依頼を生成する。演算依頼は、Green関数を含んでいてもよい。
【0046】
情報処理装置100は、生成した演算依頼を、量子コンピュータ201に送信する。情報処理装置100は、Green関数を演算した結果を、量子コンピュータ201から受信する。情報処理装置100は、Green関数を演算した結果を、利用者が参照可能に出力する。情報処理装置100は、例えば、サーバ、または、PCなどである。
【0047】
量子コンピュータ201は、Green関数を演算するコンピュータである。量子コンピュータ201は、演算依頼を、情報処理装置100から受信する。量子コンピュータ201は、演算依頼に基づいて、複数のグループのそれぞれのグループと、当該グループの中から選択されたいずれかの量子回路とを特定する。
【0048】
量子コンピュータ201は、特定した複数のグループのそれぞれのグループについて、当該グループの中から選択されたいずれかの量子回路が表す期待値を測定する。量子コンピュータ201は、特定した複数のグループのうち、2以上の量子回路が分類されたグループごとに、当該グループの中から選択されたいずれかの量子回路とは異なる量子回路が表す期待値として、測定した期待値を利用する。
【0049】
これにより、量子コンピュータ201は、2以上の量子回路が分類されたグループの中から選択されたいずれかの量子回路とは異なる量子回路が表す期待値を測定せずに、当該グループに属するすべての量子回路が表す期待値を利用可能にすることができる。このため、量子コンピュータ201は、Green関数を演算する際の期待値の測定の回数の低減化を図ることができ、Green関数を演算し易くすることができる。
【0050】
量子コンピュータ201は、特定の項に対応する複数の量子回路のそれぞれの量子回路が表す期待値に基づいて、Green関数を演算する。量子コンピュータ201は、Green関数を演算した結果を、情報処理装置100に送信する。これにより、量子コンピュータ201は、Green関数を演算することができる。量子コンピュータ201は、Green関数を演算する際にかかる処理負担および処理時間の低減化を図ることができる。量子コンピュータ201は、Green関数を演算した結果を、情報処理装置100で利用可能にすることができる。
【0051】
ここでは、情報処理装置100と量子コンピュータ201とが異なる装置である場合について説明したが、これに限らない。例えば、情報処理装置100が、量子コンピュータ201としての機能を有し、量子コンピュータ201としても動作する場合があってもよい。
【0052】
(情報処理装置100のハードウェア構成例)
次に、図3を用いて、情報処理装置100のハードウェア構成例について説明する。
【0053】
図3は、情報処理装置100のハードウェア構成例を示すブロック図である。図3において、情報処理装置100は、CPU(Central Processing Unit)301と、メモリ302と、ネットワークI/F(Interface)303と、記録媒体I/F304と、記録媒体305とを有する。また、各構成部は、バス300によってそれぞれ接続される。
【0054】
ここで、CPU301は、情報処理装置100の全体の制御を司る。メモリ302は、例えば、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)およびフラッシュROMなどを有する。具体的には、例えば、フラッシュROMやROMが各種プログラムを記憶し、RAMがCPU301のワークエリアとして使用される。メモリ302に記憶されるプログラムは、CPU301にロードされることにより、コーディングされている処理をCPU301に実行させる。
【0055】
ネットワークI/F303は、通信回線を通じてネットワーク210に接続され、ネットワーク210を介して他のコンピュータに接続される。そして、ネットワークI/F303は、ネットワーク210と内部のインターフェースを司り、他のコンピュータからのデータの入出力を制御する。ネットワークI/F303は、例えば、モデムやLANアダプタなどである。
【0056】
記録媒体I/F304は、CPU301の制御に従って記録媒体305に対するデータのリード/ライトを制御する。記録媒体I/F304は、例えば、ディスクドライブ、SSD(Solid State Drive)、USB(Universal Serial Bus)ポートなどである。記録媒体305は、記録媒体I/F304の制御で書き込まれたデータを記憶する不揮発メモリである。記録媒体305は、例えば、ディスク、半導体メモリ、USBメモリなどである。記録媒体305は、情報処理装置100から着脱可能であってもよい。
【0057】
情報処理装置100は、上述した構成部の他、例えば、キーボード、マウス、ディスプレイ、プリンタ、スキャナ、マイク、スピーカーなどを有してもよい。また、情報処理装置100は、記録媒体I/F304や記録媒体305を複数有していてもよい。また、情報処理装置100は、記録媒体I/F304や記録媒体305を有していなくてもよい。
【0058】
(量子コンピュータ201のハードウェア構成例)
次に、図4を用いて、量子コンピュータ201のハードウェア構成例について説明する。
【0059】
図4は、量子コンピュータ201のハードウェア構成例を示すブロック図である。図4において、量子コンピュータ201は、CPU401と、メモリ402と、ネットワークI/F403と、記録媒体I/F404と、記録媒体405とを有する。量子コンピュータ201は、さらに、演算装置I/F406と、量子演算装置407とを有する。また、各構成部は、バス400によってそれぞれ接続される。
【0060】
ここで、CPU401は、量子コンピュータ201の全体の制御を司る。メモリ402は、例えば、ROM、RAMおよびフラッシュROMなどを有する。具体的には、例えば、フラッシュROMやROMが各種プログラムを記憶し、RAMがCPU401のワークエリアとして使用される。メモリ402に記憶されるプログラムは、CPU401にロードされることにより、コーディングされている処理をCPU401に実行させる。
【0061】
ネットワークI/F403は、通信回線を通じてネットワーク210に接続され、ネットワーク210を介して他のコンピュータに接続される。そして、ネットワークI/F403は、ネットワーク210と内部のインターフェースを司り、他のコンピュータからのデータの入出力を制御する。ネットワークI/F403は、例えば、モデムやLANアダプタなどである。
【0062】
記録媒体I/F404は、CPU401の制御に従って記録媒体405に対するデータのリード/ライトを制御する。記録媒体I/F404は、例えば、ディスクドライブ、SSD、USBポートなどである。記録媒体405は、記録媒体I/F404の制御で書き込まれたデータを記憶する不揮発メモリである。記録媒体405は、例えば、ディスク、半導体メモリ、USBメモリなどである。記録媒体405は、量子コンピュータ201から着脱可能であってもよい。
【0063】
演算装置I/F406は、CPU401の制御に従って量子演算装置407に対するアクセスを制御する。演算装置I/F406は、マイクロ波パルス発生器を利用して、CPU401からの出力信号を、量子演算装置407に対する入力信号に変換し、量子演算装置407に送信する。演算装置I/F406は、マイクロ波パルス復調器を利用して、量子演算装置407からの出力信号を、CPU401に対する入力信号に変換し、CPU401に送信する。量子演算装置407は、10mKの極低温に冷却された、1以上の量子ビットチップを搭載した演算装置である。量子ビットチップは、例えば、論理量子ビットを表す。量子演算装置407は、1以上の量子ビットチップを利用して、入力信号に応じて所定の演算を実施し、所定の演算を実施した結果に対応する出力信号を出力する。
【0064】
量子コンピュータ201は、上述した構成部の他、例えば、キーボード、マウス、ディスプレイ、プリンタ、スキャナ、マイク、スピーカーなどを有してもよい。また、量子コンピュータ201は、記録媒体I/F404や記録媒体405を複数有していてもよい。また、量子コンピュータ201は、記録媒体I/F404や記録媒体405を有していなくてもよい。また、量子演算装置407における量子ビットチップは、マイクロ波以外の方法で制御されていてもよい。量子演算装置407における量子ビットチップは、例えば、光量子ビットを実現していてもよい。
【0065】
(情報処理装置100の機能的構成例)
次に、図5を用いて、情報処理装置100の機能的構成例について説明する。
【0066】
図5は、情報処理装置100の機能的構成例を示すブロック図である。情報処理装置100は、記憶部500と、取得部501と、分類部502と、選択部503と、指示部504と、出力部505とを含む。情報処理装置100は、演算部510と通信可能である。演算部510は、情報処理装置100に含まれていてもよい。
【0067】
記憶部500は、例えば、図3に示したメモリ302や記録媒体305などの記憶領域によって実現される。以下では、記憶部500が、情報処理装置100に含まれる場合について説明するが、これに限らない。例えば、記憶部500が、情報処理装置100とは異なる装置に含まれ、記憶部500の記憶内容が情報処理装置100から参照可能である場合があってもよい。
【0068】
取得部501~出力部505は、制御部の一例として機能する。取得部501~出力部505は、具体的には、例えば、図3に示したメモリ302や記録媒体305などの記憶領域に記憶されたプログラムをCPU301に実行させることにより、または、ネットワークI/F303により、その機能を実現する。各機能部の処理結果は、例えば、図3に示したメモリ302や記録媒体305などの記憶領域に記憶される。
【0069】
記憶部500は、各機能部の処理において参照され、または更新される各種情報を記憶する。記憶部500は、例えば、物質の性質を解析する際に用いられる、量子ビットによって表現されたGreen関数を記憶する。記憶部500は、具体的には、Green関数を表す、量子ビット表示された上記式(4)を記憶する。Green関数は、例えば、予め設定される。Green関数は、例えば、取得部501によって取得される場合があってもよい。
【0070】
記憶部500は、例えば、特定の項に対応する複数の量子回路を特定可能に示す情報を記憶する。記憶部500は、具体的には、特定の項に対応する複数の量子回路のそれぞれの量子回路を識別するインデックスを記憶する。複数の量子回路を特定可能に示す情報は、例えば、予め設定される。複数の量子回路を特定可能に示す情報は、例えば、取得部501によって取得される場合があってもよい。
【0071】
記憶部500は、例えば、物質が有する性質に応じて、複数の量子回路のうち同一の期待値に対応する量子回路同士が同一のグループに分類されるよう複数の量子回路を分類した複数のグループを特定可能に示す情報を記憶する。物質が有する性質は、例えば、空間群対称性、ゲージ対称性、粒子正孔対称性、または、時間反転対称性の少なくともいずれかの性質である。
【0072】
複数のグループは、例えば、2以上の量子回路が分類されたグループを含む。複数のグループは、例えば、分類部502によって特定される。複数のグループを特定可能に示す情報は、例えば、分類部502によって生成される。複数のグループを特定可能に示す情報は、例えば、取得部501によって取得される場合があってもよい。
【0073】
記憶部500は、例えば、2以上の量子回路が分類されたグループの中から選択されたいずれかの量子回路を特定可能に示す情報を記憶する。記憶部500は、具体的には、いずれかの量子回路を識別するインデックスを記憶する。いずれかの量子回路は、例えば、選択部503によって選択される。いずれかの量子回路を特定可能に示す情報は、例えば、選択部503によって生成される。
【0074】
取得部501は、各機能部の処理に用いられる各種情報を取得する。取得部501は、取得した各種情報を、記憶部500に記憶し、または、各機能部に出力する。また、取得部501は、記憶部500に記憶しておいた各種情報を、各機能部に出力してもよい。取得部501は、例えば、利用者の操作入力に基づき、各種情報を取得する。取得部501は、例えば、情報処理装置100とは異なる装置から、各種情報を受信してもよい。
【0075】
取得部501は、例えば、Green関数を取得する。取得部501は、具体的には、利用者の操作入力に基づき、Green関数の入力を受け付けることにより、Green関数を取得する。取得部501は、具体的には、Green関数を、他のコンピュータから受信することにより取得してもよい。取得部501は、より具体的には、Green関数が予め設定されていない場合、Green関数を取得する。
【0076】
取得部501は、例えば、特定の項に対応する複数の量子回路を特定可能に示す情報を取得する。取得部501は、具体的には、利用者の操作入力に基づき、複数の量子回路を特定可能に示す情報の入力を受け付けることにより、複数の量子回路を特定可能に示す情報を取得する。取得部501は、具体的には、複数の量子回路を特定可能に示す情報を、他のコンピュータから受信することにより取得してもよい。取得部501は、より具体的には、複数の量子回路を特定可能に示す情報が予め設定されていない場合、複数の量子回路を特定可能に示す情報を取得する。
【0077】
取得部501は、例えば、複数のグループを特定可能に示す情報を取得する。取得部501は、具体的には、利用者の操作入力に基づき、複数のグループを特定可能に示す情報の入力を受け付けることにより、複数のグループを特定可能に示す情報を取得する。取得部501は、具体的には、複数のグループを特定可能に示す情報を、他のコンピュータから受信することにより取得してもよい。取得部501は、より具体的には、分類部502で複数の量子回路を分類しない場合、複数のグループを特定可能に示す情報を取得する。
【0078】
取得部501は、例えば、Green関数を演算することを要求する演算依頼を取得する。演算依頼は、例えば、Green関数と、複数の量子回路を特定可能に示す情報とを含んでいてもよい。演算依頼は、例えば、複数のグループを特定可能に示す情報を含んでいてもよい。取得部501は、具体的には、利用者の操作入力に基づき、演算依頼の入力を受け付けることにより、演算依頼を取得する。取得部501は、具体的には、演算依頼を、他のコンピュータから受信することにより取得してもよい。
【0079】
取得部501は、いずれかの機能部の処理を開始する開始トリガーを受け付けてもよい。開始トリガーは、例えば、利用者による所定の操作入力があったことである。開始トリガーは、例えば、他のコンピュータから、所定の情報を受信したことであってもよい。開始トリガーは、例えば、いずれかの機能部が所定の情報を出力したことであってもよい。
【0080】
取得部501は、例えば、複数の量子回路を特定可能に示す情報を取得したことを、分類部502の処理を開始する開始トリガーとして受け付けてもよい。取得部501は、例えば、複数のグループを特定可能に示す情報を取得したことを、選択部503と、指示部504との処理を開始する開始トリガーとして受け付けてもよい。
【0081】
取得部501は、例えば、Green関数と、複数の量子回路を特定可能に示す情報とを含む演算依頼を取得したことを、分類部502と、選択部503と、指示部504との処理を開始する開始トリガーとして受け付けてもよい。取得部501は、例えば、Green関数と、複数の量子回路を特定可能に示す情報と、複数のグループを特定可能に示す情報とを含む演算依頼を取得したことを、選択部503と、指示部504との処理を開始する開始トリガーとして受け付けてもよい。
【0082】
分類部502は、複数の量子回路を複数のグループに分類する。分類部502は、例えば、物質が有する性質に応じて、複数の量子回路のうち同一の期待値に対応する量子回路同士を同一のグループに分類するよう、複数の量子回路を複数のグループに分類する。これにより、分類部502は、複数のグループを特定することができる。分類部502は、Green関数を演算する際にかかる処理負担および処理時間の低減化を図る指針を得ることができる。
【0083】
分類部502は、物質が有する性質に応じて、複数の量子回路のうち期待値がゼロである量子回路を特定する。これにより、分類部502は、Green関数を演算する際に、期待値を測定しなくてもよい量子回路を特定することができ、Green関数を演算する際にかかる処理負担および処理時間の低減化を図る指針を得ることができる。
【0084】
選択部503は、複数のグループのうち、2以上の量子回路が分類された1以上のグループのそれぞれのグループの中から、いずれかの量子回路を選択する。
【0085】
選択部503は、例えば、複数のグループのうち、2以上の量子回路が分類された1以上のグループのそれぞれのグループについて、当該グループに分類された2以上の量子回路のそれぞれの量子回路を形成するパウリゲートの数を特定する。選択部503は、例えば、1以上のグループのそれぞれのグループについて、特定したパウリゲートの数に基づいて、当該グループの中から、特定したパウリゲートの数が相対的に小さいいずれかの量子回路を選択する。
【0086】
これにより、選択部503は、1以上のグループのそれぞれのグループについて、期待値を実際に測定する量子回路を選択することができ、当該グループのうち、選択した量子回路とは異なる、期待値を測定しなくてよい他の量子回路を特定可能にすることができる。選択部503は、1以上のグループのそれぞれのグループについて、期待値を実際に測定する量子回路として、パウリゲートの数が相対的に小さいいずれかの量子回路を選択することができる。このため、選択部503は、1以上のグループのそれぞれのグループについて、期待値を実際に測定する際にかかる処理負担および処理時間の低減化を図ることができる。
【0087】
選択部503は、例えば、複数のグループのうち、2以上の量子回路が分類された1以上のグループのそれぞれのグループの中から、ランダムにいずれかの量子回路を選択してもよい。これにより、選択部503は、1以上のグループのそれぞれのグループについて、期待値を実際に測定する量子回路を選択することができ、グループのうち、選択した量子回路とは異なる、期待値を測定しなくてよい他の量子回路を特定可能にすることができる。
【0088】
選択部503は、例えば、利用者の操作入力に基づき、複数のグループのうち、2以上の量子回路が分類された1以上のグループのそれぞれのグループの中から、いずれかの量子回路の選択を受け付けてもよい。これにより、選択部503は、1以上のグループのそれぞれのグループについて、期待値を実際に測定する量子回路を選択することができ、グループのうち、選択した量子回路とは異なる、期待値を測定しなくてよい他の量子回路を特定可能にすることができる。
【0089】
指示部504は、演算部510を制御する。指示部504は、例えば、複数のグループのうち、2以上の量子回路が分類された1以上のグループのそれぞれのグループの中から選択部503で選択されたいずれかの量子回路を特定可能に示し、Green関数を演算することを要求する演算依頼を生成する。演算依頼は、例えば、Green関数と、複数のグループのそれぞれのグループと、複数の量子回路を特定可能に示す情報とを含んでいてもよい。演算依頼は、ゼロの期待値を表す量子回路を特定可能に示す情報を含んでいてもよい。指示部504は、例えば、生成した演算依頼を、演算部510に送信することにより、演算部510を制御する。
【0090】
指示部504は、具体的には、2以上の量子回路が分類された1以上のグループのそれぞれのグループについて、当該グループの中から選択部503で選択されたいずれかの量子回路が表す期待値を測定するよう、演算部510を制御する。指示部504は、具体的には、1つの量子回路が分類された1以上のグループがあれば、当該1以上のグループのそれぞれのグループについて、当該グループに属する1つの量子回路が表す期待値を測定するよう、演算部510を制御する。
【0091】
指示部504は、具体的には、2以上の量子回路が分類された1以上のグループのそれぞれのグループについて、当該グループのうち、選択部503で選択されたいずれかの量子回路とは異なる他の量子回路を特定するよう、演算部510を制御する。指示部504は、具体的には、2以上の量子回路が分類された1以上のグループのそれぞれのグループについて、当該グループのうち、特定した他の量子回路が表す期待値を測定する処理を省略するよう、演算部510を制御する。これにより、指示部504は、Green関数を演算する際に演算部510にかかる処理負担および処理時間の低減化を図ることができる。
【0092】
指示部504は、具体的には、複数の量子回路のうち期待値がゼロであることが対称性から保証される量子回路の測定処理を省略するよう、演算部510を制御する。これにより、指示部504は、Green関数を演算する際に演算部510にかかる処理負担および処理時間の低減化を図ることができる。
【0093】
指示部504は、Green関数を演算した結果を、演算部510から受信する。
【0094】
出力部505は、少なくともいずれかの機能部の処理結果を出力する。出力形式は、例えば、ディスプレイへの表示、プリンタへの印刷出力、ネットワークI/F303による外部装置への送信、または、メモリ302や記録媒体305などの記憶領域への記憶である。これにより、出力部505は、少なくともいずれかの機能部の処理結果を利用者に通知可能にし、情報処理装置100の利便性の向上を図ることができる。
【0095】
出力部505は、例えば、分類部502で特定した複数のグループを出力する。出力部505は、具体的には、複数のグループを、利用者が参照可能に出力する。出力部505は、具体的には、複数のグループを、他のコンピュータに送信してもよい。これにより、出力部505は、複数のグループを、外部で利用可能にすることができる。
【0096】
出力部505は、例えば、2以上の量子回路が分類された1以上のグループのそれぞれのグループの中から選択部503で選択されたいずれかの量子回路を特定可能に示す情報を出力する。出力部505は、具体的には、選択部503で選択されたいずれかの量子回路を特定可能に示す情報を、利用者が参照可能に出力する。出力部505は、具体的には、選択部503で選択されたいずれかの量子回路を特定可能に示す情報を、他のコンピュータに送信してもよい。これにより、出力部505は、選択部503で選択されたいずれかの量子回路を特定可能に示す情報を、外部で利用可能にすることができる。
【0097】
出力部505は、例えば、指示部504で受信したGreen関数を演算した結果を出力する。出力部505は、具体的には、Green関数を演算した結果を、利用者が参照可能に出力する。出力部505は、具体的には、Green関数を演算した結果を、他のコンピュータに送信してもよい。これにより、出力部505は、Green関数を演算した結果を、外部で利用可能にすることができる。
【0098】
演算部510は、演算依頼を受信する。演算部510は、演算依頼に基づいて、Green関数と、特定の項に対応する複数の量子回路と、複数のグループとを特定する。演算部510は、演算依頼に基づいて、2以上の量子回路が分類された1以上のグループのそれぞれのグループについて、当該グループの中から選択されたいずれかの量子回路と、当該いずれかの量子回路とは異なる他の量子回路とを特定する。
【0099】
演算部510は、2以上の量子回路が分類された1以上のグループのそれぞれのグループについて、当該グループの中から選択されたいずれかの量子回路が表す期待値を測定する。演算部510は、複数のグループのうち、1つの量子回路が分類された1以上のグループがあれば、当該1以上のグループのそれぞれのグループについて、当該グループに属する1つの量子回路が表す期待値を測定する。
【0100】
演算部510は、2以上の量子回路が分類された1以上のグループのそれぞれのグループについて、当該グループのうち、特定した他の量子回路が表す期待値を測定する処理を省略する。演算部510は、例えば、2以上の量子回路が分類された1以上のグループのそれぞれのグループについて、当該グループのうち、測定したいずれかの量子回路が表す期待値を、特定した他の量子回路が表す期待値として利用する。
【0101】
演算部510は、複数の量子回路のうち期待値がゼロである量子回路が表す期待値を測定する処理を省略する。演算部510は、複数の量子回路のうち期待値がゼロである量子回路が表す期待値として、ゼロを利用する。
【0102】
これにより、演算部510は、複数の量子回路のそれぞれの量子回路が表す期待値を利用可能にすることができる。演算部510は、2以上の量子回路が分類された1以上のグループのそれぞれのグループについて、当該グループのうち、特定した他の量子回路が表す期待値を測定する処理を省略することができ、処理量および処理時間の低減化を図ることができる。
【0103】
演算部510は、Green関数を形成する特定の項に対応する複数の量子回路のそれぞれの量子回路が表す期待値を用いてGreen関数を演算する。これにより、演算部510は、Green関数を演算することができる。演算部510は、Green関数を演算する際にかかる処理負担および処理時間の低減化を図ることができる。
【0104】
ここでは、情報処理装置100が、取得部501と、分類部502と、選択部503と、指示部504と、出力部505とを含む場合について説明したが、これに限らない。例えば、情報処理装置100が、いずれかの機能部を含まない場合があってもよい。具体的には、情報処理装置100が、分類部502を含まない場合があってもよい。
【0105】
(情報処理装置100の動作例)
次に、図6図11を用いて、情報処理装置100の動作例について説明する。動作例では、情報処理装置100は、フェルミオン系のハミルトニアンHに対して定義されるGreen関数を演算するよう、量子コンピュータ201を制御する。Green関数は、具体的には、上記式(1)によって表現される。
【0106】
ここで、θ(t)は、階段関数である。|ψ0>は、ハミルトニアンHに対する基底状態である。{A,B}=AB+BAは、演算子AとBとに対する反交換子である。caとcb†とは、それぞれフェルミオンの消滅演算子と生成演算子とである。a,bは、フェルミオンのモードを表す添え字である。量子コンピュータ201は、Green関数を演算する場合、caとcb†とを、下記式(6)および下記式(7)に示すようにパウリ行列表示して取り扱う。
【0107】
【数6】
【0108】
【数7】
【0109】
ここで、Pa (n)(n=1,2)は、パウリ行列のテンソル積を表す。上記式(6)および上記式(7)は、上記式(3)の具体例であり、標準的な手法であるJordan-Wigner変換は、この上記式(3)の形式に表現することができる。従って、上記式(1)は、下記式(8)に書き換えることができる。下記式(8)のうち、Ka,b (n,m)(t)は、下記式(9)によって表現される。
【0110】
【数8】
【0111】
【数9】
ここで、Ka,b (n,m)(t)は、図6に後述する量子回路600が表す期待値に対応する。従って、Ka,b (n,m)(t)の添え字(a,b),(n,m)のすべての組み合わせに対応する複数の量子回路600のそれぞれの量子回路600が表す期待値を特定すれば、Green関数を演算可能である。
【0112】
ここで、(n,m)の組み合わせは、(1,1),(1,2),(2,1),(2,2)である。このため、添え字aがM通りの値を取るとすれば、添え字(a,b),(n,m)の組み合わせの総数は、4M2である。従って、4M2個の量子回路600のそれぞれの量子回路600が表す期待値を特定すれば、Green関数を演算可能である。
【0113】
ここで、図6を用いて、量子回路600の一例について説明する。
【0114】
図6は、量子回路600の一例を示す説明図である。図6において、量子回路600の上線601は、補助量子ビットに対応する。量子回路600の下線602は、系を表す量子ビットに対応する。記号611~615は、量子ゲートを表す。記号616は、補助量子ビットに対する期待値を測定することを表す。補助量子ビットに対する期待値は、Re<ψ0|U†Pa (n)UPb (m)|ψ0>である。このため、U≒e-iHtである場合、補助量子ビットに対する期待値は、Ka,b (n,m)(t)の近似値になる。
【0115】
ここで、情報処理装置100は、複数の量子回路600のうち、期待値の測定を実施する量子回路600と、期待値の測定を省略する量子回路600とを設定することにより、Green関数を演算する際にかかる処理負担および処理時間の低減化を図る。
【0116】
情報処理装置100は、例えば、物質が有する性質に応じて、同一の期待値に対応する2以上の量子回路を同一のグループに分類する。情報処理装置100は、例えば、グループのうち、いずれかの量子回路600を選択し、期待値の測定を実施する量子回路600として設定する。情報処理装置100は、例えば、グループのうち、選択した量子回路600とは異なる他の量子回路600を特定し、期待値の測定を省略する量子回路600として設定する。
【0117】
物質が有する性質は、例えば、空間群対称性、ゲージ対称性、粒子正孔対称性、または、時間反転対称性の少なくともいずれかの性質である。空間群対称性は、例えば、空間対称性と、並進対称性とを含む。
【0118】
空間対称性は、物質の結晶構造または分子構造の空間操作に対する対称性である。空間操作は、例えば、回転、鏡映、または、反転などである。結晶構造は、例えば、230種類の空間群を用いて分類可能である。
【0119】
並進対称性は、物質の固体結晶において結晶構造の周期性を表す対称性である。
【0120】
ゲージ対称性は、粒子数保存則に対応する。ゲージ対称性は、全電子数が不変であることを表す対称性である。例えば、物質が平衡状態の安定な状態である場合に、ゲージ対称性が存在する。
【0121】
粒子正孔対称性は、電子と正孔との数が等しいことを表す対称性である。例えば、物質が超伝導体またはhalf-fillingの固体系などである場合に、粒子正孔対称性が存在する。
【0122】
時間反転対称性は、電子スピンの反転操作に関する対称性である。例えば、物質に対する外部磁場および自発磁化などが存在しない場合に、時間反転対称性が存在する。
【0123】
情報処理装置100は、例えば、物質が有するいずれの性質が成立するのかを示し、物質が有するいずれの性質を考慮するのかを指定する指示情報を受け付けてもよい。情報処理装置100は、例えば、指示情報に基づいて、物質が有する指定の性質に応じて、同一の期待値に対応する2以上の量子回路を同一のグループに分類し、期待値の測定を実施する量子回路600と、期待値の測定を省略する量子回路600とを設定する。
【0124】
指示情報は、例えば、空間対称性に関する第1パラメータを含む。第1パラメータは、例えば、0~230のいずれかの値である。第1パラメータは、例えば、値が0である場合、空間対称性を考慮しないことを示す。第1パラメータは、例えば、値が1~230のいずれかの値である場合、当該値に対応する空間群における空間対称性を考慮することを示す。空間群は、数学的な集合として表現した空間操作の集まりである。自然界に存在する物質の結晶構造は、230種類の空間群のいずれかの空間群に分類することができる。
【0125】
指示情報は、例えば、並進対称性に関する第2パラメータを含む。第2パラメータは、例えば、並進対称性を考慮するか否かを示すフラグである。フラグは、例えば、Trueである場合、周期境界条件であり、並進対称性が成立し、並進対称性を考慮することを示す。フラグは、例えば、Falseである場合、開放端条件であり、並進対称性が成立せず、並進対称性を考慮しないことを示す。
【0126】
指示情報は、例えば、ゲージ対称性に関する第3パラメータを含む。第3パラメータは、例えば、ゲージ対称性を考慮するか否かを示すフラグである。フラグは、例えば、Trueである場合、粒子数が保存し、ゲージ対称性が成立し、ゲージ対称性を考慮することを示す。フラグは、例えば、Falseである場合、粒子数が保存せず、ゲージ対称性が成立せず、ゲージ対称性を考慮しないことを示す。
【0127】
指示情報は、例えば、粒子正孔対称性に関する第4パラメータを含む。第4パラメータは、例えば、粒子正孔対称性を考慮するか否かを示すフラグである。フラグは、例えば、Trueである場合、物質が超伝導体またはhalf-fillingなどであり、粒子正孔対称性が成立し、粒子正孔対称性を考慮することを示す。フラグは、例えば、Falseである場合、粒子正孔対称性が成立せず、粒子正孔対称性を考慮しないことを示す。
【0128】
指示情報は、例えば、時間反転対称性に関する第5パラメータを含む。第5パラメータは、例えば、時間反転対称性を考慮するか否かを示すフラグである。フラグは、例えば、Trueである場合、時間反転対称性が成立し、時間反転対称性を考慮することを示す。フラグは、例えば、Falseである場合、物質が磁場下または磁性体であり、時間反転対称性が成立せず、時間反転対称性を考慮しないことを示す。
【0129】
まず、情報処理装置100が、ゲージ対称性に応じて、同一の期待値に対応する2以上の量子回路を同一のグループに分類する具体例について説明する。ハミルトニアンHが、U(1)ゲージ対称性を保存するとすれば、下記式(10)が成立する。
【0130】
【数10】
【0131】
上記式(9)のKa,b (n,m)(t)は、上記式(6)および上記式(7)に基づいて、フェルミオン表示によって、下記式(11)と、下記式(12)と、下記式(13)と、下記式(14)との組み合わせに書き換えることができる。
【0132】
【数11】
【0133】
【数12】
【0134】
【数13】
【0135】
【数14】
【0136】
上記式(11)と、上記式(12)と、上記式(13)と、上記式(14)とに、上記式(10)を適用すると、下記式(15)および下記式(16)が成立する。
【0137】
【数15】
【0138】
【数16】
【0139】
このため、情報処理装置100は、Ka,b (1,1)(t)を表す量子回路600と、Ka,b (2,2)(t)を表す量子回路600とを、同一のグループに分類する。情報処理装置100は、分類したグループのうち、Ka,b (1,1)(t)を表す量子回路600と、Ka,b (2,2)(t)を表す量子回路600とのいずれか一方の量子回路600を、期待値の測定を省略する量子回路600に設定する。
【0140】
情報処理装置100は、Ka,b (1,2)(t)を表す量子回路600と、Ka,b (2,1)(t)を表す量子回路600とを、同一のグループに分類する。情報処理装置100は、分類したグループのうち、Ka,b (1,2)(t)を表す量子回路600と、Ka,b (2,1)(t)を表す量子回路600とのいずれか一方の量子回路600を、期待値の測定を省略する量子回路600に設定する。
【0141】
次に、情報処理装置100が、例えば、時間反転対称性に応じて、同一の期待値に対応する2以上の量子回路を同一のグループに分類する具体例について説明する。ハミルトニアンHが、ある対象操作R^の下で不変であることは、下記式(17)によって表現される。ここで、便宜上、Rの上に^を付した記号を、「R^」と表記する場合がある。
【0142】
【数17】
【0143】
上記式(15)および上記式(16)に、上記式(17)を適用すると、下記式(18)が成立する。
【0144】
【数18】
【0145】
ここで、δnmは、Kroneckerのデルタである。情報処理装置100は、上記式(18)に基づいて、物質が有する性質に応じて、同一の期待値に対応する2以上の量子回路を同一のグループに分類する具体例について説明する。
【0146】
以下の説明では、物質は、周期境界条件で定義されたNサイトの格子模型によって表現されるとする。また、フェルミオンのモードは、サイトの番号j(=1,2,…,N)と、スピンσ(=↑,↓)によって指定されるとする。従って、a=jσ(=1↑,2↑,…,N↑,1↓,2↓,…,N↓)である。添え字(a,b)=(jσ,j′σ′)の総数は、(2N)2=4N2である。
【0147】
ここで、時間反転操作Θ^のフェルミオン演算子に対する作用は、下記式(19)および下記式(20)によって定義される。
【0148】
【数19】
【0149】
【数20】
【0150】
時間反転対称性が保存する場合、[H,Θ^]=0が成立する。このため、上記式(18)において、R^=Θ^とすれば、上記式(19)および上記式(20)に基づいて、下記式(21)および下記式(22)が成立する。
【0151】
【数21】
【0152】
【数22】
【0153】
このため、情報処理装置100は、Kj,j′↑(n,m)(t)を表す量子回路600と、Kj,j′↓(n,m)(t)を表す量子回路600とを、同一のグループに分類する。情報処理装置100は、分類したグループのうち、Kj,j′↑(n,m)(t)を表す量子回路600と、Kj,j′↓(n,m)(t)を表す量子回路600とのいずれか一方の量子回路600を、期待値の測定を省略する量子回路600に設定する。
【0154】
情報処理装置100は、Kj,j′↓(n,m)(t)を表す量子回路600と、Kj,j′↑(n,m)(t)を表す量子回路600とを、同一のグループに分類する。情報処理装置100は、分類したグループのうち、Kj,j′↓(n,m)(t)を表す量子回路600と、Kj,j′↑(n,m)(t)を表す量子回路600とのいずれか一方の量子回路600を、期待値の測定を省略する量子回路600に設定する。
【0155】
次に、情報処理装置100が、例えば、空間群対称性に応じて、同一の期待値に対応する2以上の量子回路を同一のグループに分類する具体例について説明する。空間群対称性は、空間対称性と、並進対称性とを含む。空間群対称性は、例えば、結晶構造の空間操作に対する不変性を表す対称性である。
【0156】
空間操作は、回転、鏡映、反転、または、並進などである。空間群は、数学的な集合として表現した空間操作の集まりである。自然界に存在する物質の結晶構造は、230種類の空間群のいずれかの空間群に分類することができる。空間群Gに属する対称操作gk^のフェルミオン演算子に対する作用は、下記式(23)によって表現される。
【0157】
【数23】
【0158】
ここで、πkは、下記式(24)によって表現される。下記式(24)は、空間群Gに属する対称操作gk^によるサイトインデックスjの変換則を表す。
【0159】
【数24】
【0160】
ある系の結晶構造が空間群Gに属する場合、ハミルトニアンHは、対称操作gk^∈Gの下で不変である。換言すれば、[H,gk^]=0である。従って、上記式(18)において、R^=gk^とすれば、上記式(23)により、下記式(25)が成立する。
【0161】
【数25】
【0162】
このため、情報処理装置100は、Kjσ,j′σ′(n,m)(t)を表す量子回路600と、Kπk(j)σ,πk(j)σ′(n,m)(t)を表す量子回路600とのいずれか一方の量子回路600を、期待値の測定を省略する量子回路600に設定する。
【0163】
例えば、サイト数N=L2の2次元正方格子に対する対称操作は、4回回転操作、垂直方向の鏡映操作、水平方向の鏡映操作、および、並進操作などが考えられる。対象操作に対して、上記式(25)を考慮すれば、Kjσ,j′σ′(n,m)(t)の値が異なる独立なサイトインデックスの組み合わせ(j,j′)は、(√N+2)(√N+4)/8通りである。ここで、図7を用いて、情報処理装置100が、空間対称性に応じて、同一の期待値に対応する2以上の量子回路600を同一のグループに分類する具体例について説明する。
【0164】
図7は、同一の期待値に対応する2以上の量子回路600を同一のグループに分類する一例を示す説明図である。図7において、物質の構造700を示す。物質の構造700は、線701を基準に左右反転しても、同様の構造710となる。従って、電子4と電子1との関係に関する期待値と、電子2と電子5との関係に関する期待値とは、同一の期待値となる。ここで、便宜上、例えば。サイト1上の電子を電子1と表現する。従って、Green関数G14 R(t)=Green関数G52 R(t)である。
【0165】
このため、情報処理装置100は、電子4と電子1との関係に関する期待値と、電子2と電子5との関係に関する期待値との2つの期待値のうち、いずれか一方の期待値を表す量子回路600を、期待値の測定を省略する量子回路600に設定する。情報処理装置100は、2つの期待値のうち、いずれか一方の期待値を測定すれば、他方の期待値を測定しなくても、2つの期待値を利用可能であることを特定することができる。
【0166】
次に、情報処理装置100が、例えば、粒子正孔対称性に応じて、同一の期待値に対応する2以上の量子回路を同一のグループに分類する具体例について説明する。粒子正孔対称性は、例えば、固体中で電子と正孔との数が等しいことを表す対称性である。サイトNの格子模型において、全電子数がサイト数と等しい場合に、粒子正孔対称性が保存する。粒子正孔対称性の定義は、副格子自由度の存在に依存する。
【0167】
ここで、例えば、2つの副格子A,Bで構成される格子模型について、粒子正孔変換Ξ^は、下記式(26)および下記式(27)によって定義される。
【0168】
【数26】
【0169】
【数27】
【0170】
粒子正孔対称性が保存する場合、[H,Ξ^]=0である。このため、上記式(18)において、R^=Ξ^とすれば、上記式(26)により、下記式(28)が成立する。
【0171】
【数28】
【0172】
従って、サイトjとサイトj′とが、同一の副格子に属する場合、(ηjηj′=+1)について、(n,m)に対する対角成分Kjσ,j′σ′(n,n)は、非ゼロであり、非対角成分は、ゼロである。一方で、サイトjとサイトj′とが異なる副格子に属する場合(ηjηj′=-1)について、(n,m)に対する対角成分Kjσ,j′σ′(n,m)(n≠m)は、非ゼロであり、他の対角成分は、ゼロである。このため、情報処理装置100は、粒子正孔対称性が保存する系において、ゼロになる期待値Kjσ,j′σ′(n,m)を表す量子回路600を、期待値の測定を省略する量子回路600に設定する。
【0173】
次に、図8を用いて、情報処理装置100が、グループの中からいずれかの量子回路600を選択し、期待値の測定を実施する量子回路600として設定する一例について説明する。
【0174】
図8は、グループの中からいずれかの量子回路600を選択する一例を示す説明図である。ここで、グループに属する2以上の量子回路600は、それぞれ、同一の期待値に対応していても、期待値の測定を実施する際にかかる処理負担および処理時間が異なるという性質がある。具体的には、グループに属する2以上の量子回路600のそれぞれの量子回路600を形成するパウリゲートの数が異なるという性質がある。
【0175】
例えば、量子回路600を形成するパウリゲートは、フェルミオン(電子)の生成演算子および消滅演算子に起因する要素である。フェルミオンの生成演算子および消滅演算子は、順序を入れ替えた場合に符号が反転する性質(=反交換性)を有する。このため、フェルミオンの生成演算子および消滅演算子を量子ビット表示すると、インデックスに応じてパウリゲートの数が異なることになる。
【0176】
具体的には、N個の電子が存在する状態を表現する波動関数は、下記式(29)によって表現される。下記式(29)に対して、消滅演算子ciを作用させると、下記式(30)が成立する。例えば、消滅演算子ciを作用させ、i番目の電子を消すため、消滅演算子ciを、1~i-1番目の演算子と入れ替えることになり、入れ替える回数分の(-1)が乗算されることになる。
【0177】
【数29】
【0178】
【数30】
【0179】
(-1)i-1をJordan-Wigner変換で量子ビット表示する場合、下記式(31)に示すパウリゲートが用いられる。このため、インデックスiの値に依存して、量子回路600を形成するパウリゲートの数が異なることになる。
【0180】
【数31】
【0181】
図8の例では、例えば、図8の4×4格子模型800では、原子1と原子2とのペア(1,2)に対応する期待値の1つは、下記式(32)によって表現される。従って、原子1と原子2とのペア(1,2)に対応する期待値を表す量子回路600のパウリゲートの数は、3である。
【0182】
【数32】
【0183】
例えば、図8の4×4格子模型800では、原子16と原子15とのペア(16,15)に対応する期待値の1つは、下記式(33)によって表現される。従って、原子16と原子15とのペア(16,15)に対応する期待値を表す量子回路600のパウリゲートの数は、31である。
【0184】
【数33】
【0185】
このため、情報処理装置100は、グループに属する2以上の量子回路600のうち、期待値の測定を実施する量子回路600として、パウリゲートの数が最も小さい量子回路600を選択することが好ましい。換言すれば、情報処理装置100は、グループに属する2以上の量子回路600のうち、期待値の測定を省略する量子回路600として、パウリゲートの数が相対的に大きい量子回路600を選択することが好ましい。
【0186】
次に、図9図11を用いて、情報処理装置100による効果の一例について説明する。
【0187】
図9図11は、効果の一例を示す説明図である。図9図11の例では、情報処理装置100が、図9に示すHubbard模型900のGreen関数を演算する際にかかる処理時間および処理負担の低減化を図る場合について説明する。Hubbard模型900は、電子相関が強い固体中の電子の振舞いを量子論的に記述するモデルである。
【0188】
この場合、情報処理装置100は、空間対称性と、ゲージ対称性と、並進対称性と、粒子正孔対称性とを考慮して、期待値の測定を実施する量子回路600を選択する。空間対称性は、格子の形状に依存する空間群に関し、図9に示す4回回転と、対角ミラーと、垂直ミラーとの対称操作が存在する。並進対称性は、周期境界条件である場合に成立する。粒子正孔対称性は、half-fillingである場合に成立する。Green関数の量子ビット表示は、Jordan-Wigner変換が用いられる。次に、図10の説明に移行する。
【0189】
図10において、Hubbard模型900のサイト数N=L2であるとする。Nは、偶数であるとする。ここで、物質が有する対称性を考慮せず、すべての量子回路600が表す期待値の測定を実施する従来の手法では、測定の回数は、4N2である。
【0190】
これに対し、開放端条件(OBC)である場合、情報処理装置100が、物質が有する対称性を考慮し、期待値の測定を省略する量子回路600を設定する新たな手法では、測定の回数は、N(N+2)/4である。さらに、half-fillingである場合、新たな手法では、測定の回数は、N(N+2)/8である。
【0191】
また、周期境界条件(PBC)である場合、情報処理装置100が、物質が有する対称性を考慮し、期待値の測定を省略する量子回路600を設定する新たな手法では、測定の回数は、(√N+2)(√N+4)/4である。さらに、half-fillingである場合、新たな手法では、測定の回数は、(√N+2)(√N+4)/8である。
【0192】
図10のグラフ1000は、従来の手法(Conventional)において、期待値の測定を実施する量子回路600の数を示す。また、図10のグラフ1000は、開放端条件(OBC)である場合に新たな手法(Symmetry-using(OBC))において、期待値の測定を実施する量子回路600の数を示す。また、図10のグラフ1000は、周期境界条件(PBC)である場合に新たな手法(Symmetry-using(PBC))において、期待値の測定を実施する量子回路600の数を示す。
【0193】
具体的には、4×4サイトのサイト数N=16のHubbard模型900について、従来の手法において、期待値の測定を実施する量子回路600の数は、1024である。また、具体的には、4×4サイトのサイト数N=16のHubbard模型900について、新たな手法(Symmetry-using(OBC))において、期待値の測定を実施する量子回路600の数は、72である。また、具体的には、4×4サイトのサイト数N=16のHubbard模型900について、新たな手法(Symmetry-using(PBC))において、期待値の測定を実施する量子回路600の数は、12である。
【0194】
このように、情報処理装置100は、従来の手法に比べて、開放端条件(OBC)である場合、期待値の測定を実施する量子回路600の数を、約1/14に低減することができる。このため、情報処理装置100は、従来の手法に比べて、Green関数を演算する際にかかる処理負担および処理時間の低減化を図ることができる。
【0195】
同様に、情報処理装置100は、従来の手法に比べて、周期境界条件(PBC)である場合、期待値の測定を実施する量子回路600の数を、約1/85に低減することができる。このため、情報処理装置100は、従来の手法に比べて、Green関数を演算する際にかかる処理負担および処理時間の低減化を図ることができる。次に、図11の説明に移行する。
【0196】
図11の例では、情報処理装置100が設定した、期待値の測定を実施する量子回路600に基づいて、量子コンピュータ201が、2×2サイトのサイト数N=4のHubbard模型900についてGreen関数を演算したとする。基底状態|ψ0>は、厳密解とする。時間発展演算子Uは、Trotter分解によって近似するとする。
【0197】
図11のグラフ1100は、情報処理装置100が設定した、期待値の測定を実施する量子回路600に基づいて、量子コンピュータ201がGreen関数を演算した場合の実部を、点線で表す。図11のグラフ1100は、従来の手法により、すべての量子回路600が表す期待値の測定を実施するよう、量子コンピュータ201がGreen関数を演算した場合の実部を、実線で表す。
【0198】
図11のグラフ1110は、情報処理装置100が設定した、期待値の測定を実施する量子回路600に基づいて、量子コンピュータ201がGreen関数を演算した場合の虚部を、点線で表す。図11のグラフ1110は、従来の手法により、すべての量子回路600が表す期待値の測定を実施するよう、量子コンピュータ201がGreen関数を演算した場合の虚部を、実線で表す。
【0199】
これにより、情報処理装置100は、従来の手法に比べて、周期境界条件(PBC)である場合、期待値の測定を実施する量子回路600の数を、6/64に低減することができる。また、情報処理装置100は、時間t=0~30において、従来手法で求めたGreen関数との平均絶対値誤差を、1.39×10-14にすることができる。このため、情報処理装置100は、従来の手法に比べて、Green関数の計算精度を維持することができる。なお、ここで従来手法と情報処理装置100との計算結果に差が生じることは、Trotter分解で近似した時間発展演算子が厳密にはハミルトニアンの対称性を満たさないことに起因する。
【0200】
このように、情報処理装置100は、Green関数を演算する際に計測を実施する量子回路600の数の低減化を図ることができる。このため、情報処理装置100は、Green関数を演算する際にかかる処理負担および処理時間の低減化を図ることができる。情報処理装置100は、Green関数を演算する精度の低下を回避することができる。
【0201】
(全体処理手順)
次に、図12を用いて、情報処理装置100が実行する、全体処理手順の一例について説明する。全体処理は、例えば、図3に示したCPU301と、メモリ302や記録媒体305などの記憶領域と、ネットワークI/F303とによって実現される。
【0202】
図12は、全体処理手順の一例を示すフローチャートである。図12において、情報処理装置100は、解析する対象の物質の模型と、対象の物質が有する性質とを表すデータを取得する(ステップS1201)。
【0203】
次に、情報処理装置100は、計算量の低減化を図るか否かを判定する(ステップS1202)。ここで、計算量の低減化を図る場合(ステップS1202:Yes)、情報処理装置100は、ステップS1204の処理に移行する。一方で、計算量の低減化を図らない場合(ステップS1202:No)、情報処理装置100は、ステップS1203の処理に移行する。
【0204】
ステップS1203では、情報処理装置100は、Green関数を形成する特定の項Kab (nm)に対応するすべての量子回路が表す期待値を測定する(ステップS1203)。そして、情報処理装置100は、ステップS1208の処理に移行する。
【0205】
ステップS1204では、情報処理装置100は、取得したデータに基づいて、特定の項Kab (nm)に対応する複数の量子回路を分類し、複数のグループを特定する(ステップS1204)。そして、情報処理装置100は、複数のグループのそれぞれのグループについて、当該グループの中から、パウリゲートの数が最も小さい量子回路を選択する(ステップS1205)。
【0206】
次に、情報処理装置100は、複数のグループのそれぞれのグループについて、当該グループの中から選択した量子回路が表す期待値を測定するよう、量子コンピュータ201を制御する(ステップS1206)。そして、情報処理装置100は、複数のグループのそれぞれのグループについて、当該グループのうち、選択した量子回路が表す期待値を、他の量子回路が表す期待値に設定するよう、量子コンピュータ201を制御する(ステップS1207)。
【0207】
次に、情報処理装置100は、Green関数を形成する特定の項Kab (nm)に対応するすべての量子回路が表す期待値を用いて、Green関数を演算するよう、量子コンピュータ201を制御する(ステップS1208)。そして、情報処理装置100は、全体処理を終了する。これにより、情報処理装置100は、Green関数を演算する際にかかる処理負担および処理時間の低減化を図ることができる。情報処理装置100は、Green関数を精度よく演算することができる。
【0208】
ここで、情報処理装置100は、図12の一部ステップの処理の順序を入れ替えて実行してもよい。例えば、ステップS1202の処理と、ステップS1203~S1205の処理との順序は入れ替え可能である。また、情報処理装置100は、図12の一部ステップの処理を省略してもよい。例えば、ステップS1202の処理は省略可能である。
【0209】
以上説明したように、情報処理装置100によれば、物質が有する性質に応じて、複数の量子回路のうち2以上の量子回路が分類されたいずれかのグループの中から、いずれかの量子回路を選択することができる。情報処理装置100によれば、選択したいずれかの量子回路が表す期待値を測定することにより、いずれかのグループのうち、他の量子回路が表す期待値を測定する処理を省略するよう、Green関数を演算する演算部を制御することができる。これにより、情報処理装置100は、Green関数を演算する際にかかる処理負担および処理時間の低減化を図ることができる。
【0210】
情報処理装置100によれば、いずれかのグループに分類された2以上の量子回路のそれぞれの量子回路を形成するパウリゲートの数に基づいて、いずれかのグループの中から、パウリゲートの数が相対的に小さいいずれかの量子回路を選択することができる。これにより、情報処理装置100は、Green関数を演算する際にかかる処理負担および処理時間を低減し易くすることができる。
【0211】
情報処理装置100によれば、物質が有する性質に応じて、2以上の量子回路がそれぞれ分類された1以上のグループのそれぞれのグループについて、当該グループの中から、いずれかの量子回路を選択することができる。情報処理装置100によれば、1以上のグループのそれぞれのグループについて、選択したいずれかの量子回路が表す期待値を測定することにより、当該グループのうち、他の量子回路が表す期待値を測定する処理を省略するよう、演算部を制御することができる。これにより、情報処理装置100は、Green関数を演算する際にかかる処理負担および処理時間の低減化を図ることができる。
【0212】
情報処理装置100によれば、複数の量子回路のうち期待値がゼロである量子回路を特定することができる。情報処理装置100によれば、特定した量子回路が表す期待値を測定する処理を省略するよう、演算部を制御することができる。これにより、情報処理装置100は、Green関数を演算する際にかかる処理負担および処理時間の低減化を図ることができる。
【0213】
情報処理装置100によれば、いずれかのグループのうち、測定したいずれかの量子回路が表す期待値を、いずれかの量子回路とは異なる量子回路が表す期待値としても利用するよう、演算部を制御することができる。これにより、情報処理装置100は、演算部が、Green関数を演算可能にすることができる。
【0214】
なお、本実施の形態で説明した情報処理方法は、予め用意されたプログラムをPCやワークステーションなどのコンピュータで実行することにより実現することができる。本実施の形態で説明した情報処理プログラムは、コンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録され、コンピュータによって記録媒体から読み出されることによって実行される。記録媒体は、ハードディスク、フレキシブルディスク、CD(Compact Disc)-ROM、MO(Magneto Optical disc)、DVD(Digital Versatile Disc)などである。また、本実施の形態で説明した情報処理プログラムは、インターネットなどのネットワークを介して配布してもよい。
【0215】
上述した実施の形態に関し、さらに以下の付記を開示する。
【0216】
(付記1)物質の性質を解析する際に用いられる、量子ビットによって表現されたGreen関数を形成する特定の項に対応する複数の量子回路のそれぞれが表す期待値を用いて前記Green関数を演算する場合について、前記物質が有する空間群対称性、ゲージ対称性、粒子正孔対称性、または、時間反転対称性の少なくともいずれかの性質に応じて、前記複数の量子回路のうち同一の期待値に対応する量子回路同士が同一のグループに分類されるよう前記複数の量子回路が分類された際に2以上の量子回路が分類されたいずれかのグループの中から、いずれかの量子回路を選択し、
選択した前記いずれかの量子回路が表す期待値を測定することにより、前記いずれかのグループのうち、選択した前記いずれかの量子回路とは異なる量子回路が表す期待値を測定する処理を省略するよう、前記Green関数を演算する演算部を制御する、
処理をコンピュータに実行させることを特徴とする情報処理プログラム。
【0217】
(付記2)前記選択する処理は、
前記いずれかのグループに分類された前記2以上の量子回路のそれぞれを形成するパウリゲートの数に基づいて、前記いずれかのグループの中から、前記パウリゲートの数が相対的に小さいいずれかの量子回路を選択する、ことを特徴とする付記1に記載の情報処理プログラム。
【0218】
(付記3)前記選択する処理は、
前記物質が有する空間群対称性、ゲージ対称性、粒子正孔対称性、または、時間反転対称性の少なくともいずれかの性質に応じて、前記複数の量子回路のうち、同一の期待値に対応する量子回路同士が同一のグループに分類されるよう前記複数の量子回路が分類された際に2以上の量子回路がそれぞれ分類された1以上のグループのそれぞれについて、当該グループの中から、いずれかの量子回路を選択し、
前記制御する処理は、
前記1以上のグループのそれぞれについて、選択した前記いずれかの量子回路が表す期待値を測定することにより、当該グループのうち、選択した前記いずれかの量子回路とは異なる量子回路が表す期待値を測定する処理を省略するよう、前記演算部を制御する、ことを特徴とする付記2に記載の情報処理プログラム。
【0219】
(付記4)前記制御する処理は、
前記複数の量子回路のうち期待値がゼロである量子回路を特定する、
処理を前記コンピュータに実行させ、
前記制御する処理は、
特定した前記量子回路が表す期待値を測定する処理を省略するよう、前記演算部を制御する、ことを特徴とする付記1~3のいずれか一つに記載の情報処理プログラム。
【0220】
(付記5)前記演算部は、前記いずれかのグループのうち、測定した前記いずれかの量子回路が表す期待値を、前記いずれかの量子回路とは異なる量子回路が表す期待値としても利用する、ことを特徴とする付記1~3のいずれか一つに記載の情報処理プログラム。
【0221】
(付記6)物質の性質を解析する際に用いられる、量子ビットによって表現されたGreen関数を形成する特定の項に対応する複数の量子回路のそれぞれが表す期待値を用いて前記Green関数を演算する場合について、前記物質が有する空間群対称性、ゲージ対称性、粒子正孔対称性、または、時間反転対称性の少なくともいずれかの性質に応じて、前記複数の量子回路のうち同一の期待値に対応する量子回路同士が同一のグループに分類されるよう前記複数の量子回路が分類された際に2以上の量子回路が分類されたいずれかのグループの中から、いずれかの量子回路を選択し、
選択した前記いずれかの量子回路が表す期待値を測定することにより、前記いずれかのグループのうち、選択した前記いずれかの量子回路とは異なる量子回路が表す期待値を測定する処理を省略するよう、前記Green関数を演算する演算部を制御する、
処理をコンピュータが実行することを特徴とする情報処理方法。
【0222】
(付記7)物質の性質を解析する際に用いられる、量子ビットによって表現されたGreen関数を形成する特定の項に対応する複数の量子回路のそれぞれが表す期待値を用いて前記Green関数を演算する場合について、前記物質が有する空間群対称性、ゲージ対称性、粒子正孔対称性、または、時間反転対称性の少なくともいずれかの性質に応じて、前記複数の量子回路のうち同一の期待値に対応する量子回路同士が同一のグループに分類されるよう前記複数の量子回路が分類された際に2以上の量子回路が分類されたいずれかのグループの中から、いずれかの量子回路を選択し、
選択した前記いずれかの量子回路が表す期待値を測定することにより、前記いずれかのグループのうち、選択した前記いずれかの量子回路とは異なる量子回路が表す期待値を測定する処理を省略するよう、前記Green関数を演算する演算部を制御する、
制御部を有することを特徴とする情報処理装置。
【符号の説明】
【0223】
100 情報処理装置
101,510 演算部
110 Green関数
111 特定の項
120,600 量子回路
130 グループ
200 情報処理システム
201 量子コンピュータ
210 ネットワーク
300,400 バス
301,401 CPU
302,402 メモリ
303,403 ネットワークI/F
304,404 記録媒体I/F
305,405 記録媒体
406 演算装置I/F
407 量子演算装置
500 記憶部
501 取得部
502 分類部
503 選択部
504 指示部
505 出力部
601 上線
602 下線
611~616 記号
700,710 構造
701 線
800 格子模型
900 Hubbard模型
1000,1100,1110 グラフ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12