(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024136281
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】ケーブル曲がり部用移動抑制装置
(51)【国際特許分類】
H02G 9/00 20060101AFI20240927BHJP
H02G 9/04 20060101ALI20240927BHJP
H02G 9/08 20060101ALI20240927BHJP
H02G 9/10 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
H02G9/00
H02G9/04
H02G9/08
H02G9/10
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023047358
(22)【出願日】2023-03-23
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2024-06-21
(71)【出願人】
【識別番号】000141060
【氏名又は名称】株式会社関電工
(74)【代理人】
【識別番号】100075410
【弁理士】
【氏名又は名称】藤沢 則昭
(74)【代理人】
【識別番号】100135541
【弁理士】
【氏名又は名称】藤沢 昭太郎
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 立雄
(72)【発明者】
【氏名】土橋 勝彦
【テーマコード(参考)】
5G369
【Fターム(参考)】
5G369AA10
5G369BA03
5G369BA05
5G369BA06
5G369CB01
5G369CB04
5G369DD02
(57)【要約】
【課題】ケーブルの曲がり部でケーブルの移動抑制効果が得られる。
【解決手段】ケーブルの曲がり部のケーブルの外周を被うスペーサ及び当該スペーサの外周を被うスプリング付きクリートで固定する装置において、前記クリート7の、ケーブル1の引張り方向と反対側の端部に接するケーブル1外周にストッパー8を被せて密着固定し、当該ストッパー8の外周面に抑えプレート19が巻き付けられ、抑えプレート19の外周に固定バンド20が設けられ、ケーブル1の曲がり部の内側となる前記鍔17の部分に、鍔17の外端面を被う円弧状プレート21を当て、一端部が鉤型部22aを成し当該鉤型部22aに続く他端部が棒状平板部22bである鍔補強治具22の鉤型部22aを円弧状プレート21の外周縁及びストッパー8の鍔17に被せ、棒状平板部22bを前記抑えプレート21の上に載せて固定バンド20で固定する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハンドホール、マンホール、U字型溝、洞道のいずれか内のケーブルの曲がり部のケーブルを、当該ケーブルの外周を被うスペーサ及び当該スペーサの外周を被う金属製のスプリング付きクリートで固定する装置において、
前記クリートの、ケーブルの引張り方向と反対側の端部に接するケーブル外周に、管状のゴム又は合成樹脂から成るストッパーを被せて密着して固定し、当該ストッパーの前記クリートに接する側の一端に鍔が設けられ、当該鍔の外端面が前記クリートのスペーサの端面に当接され、
当該ストッパーの外周面に抑えプレートが巻き付けられて被せられ、当該抑えプレートの外周に設けた1個又は複数個の固定バンドで固定され、
ケーブルの曲がり部の内側となる前記鍔の部分に、当該鍔の外端面の一部又は全部を被う円弧状プレートを当て、一端部が鉤型部を成し当該鉤型部に続く他端部が棒状平板部である鍔補強治具の前記鉤型部を前記円弧状プレートの外周縁及び前記ストッパーの鍔の外周に被せ、棒状平板部を前記抑えプレートの上に当て、当該鍔補強治具は前記棒状平板部の上から前記固定バンドで固定されたことを特徴とする、ケーブル曲がり部用移動抑制装置。
【請求項2】
前記鍔補強治具の鉤型部に続く棒状平板部に直方体形状の補強リブを設け、当該補強リブの天板部に設けたバンド受け溝に前記固定バンドを巻き付けたことを特徴とする、請求項1に記載のケーブル曲がり部用移動抑制装置。
【請求項3】
前記抑えプレートの、ストッパーの鍔に当たる端縁部に折り返し縁が形成されていることを特徴とする、請求項1又は2に記載のケーブル曲がり部用移動抑制装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、地中送電線路等のハンドホール、マンホール、U字トラフ、洞道等の内部でのケーブル布設の高低差による滑落等によるケーブル曲がり部箇所のケーブルの移動を抑制する装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
上記地中送電線路に用いる高圧又は特別高圧ケーブル1をマンホールやハンドホール等に布設する際には、
図12に示すように、ハンドホール等2内の接続部3の前後のケーブル1を、当該ケーブル1の熱による伸縮を吸収させるため、スネーク状に曲げてオフセット部4を設けている。また、上記ハンドホール等2をつなぐ管路に高低差のある場合にはケーブル1に大きな滑落力が発生し、接続部3に影響を与える恐れがある。また、地中線路の上の道路を車両が走行する場合、多数回の車両の走行により、いわゆる波乗り現象によるケーブル1の移動が発生する恐れがある。これらのケーブル1の移動を阻止するためケーブルクリート等の拘束装置による移動抑制措置が取られている。
【0003】
この移動抑制措置としては、ケーブルを外側から圧力をかけて挟み込んで把持、固定するクリートが用いられているが、前記ケーブルの遮蔽層が銅テープや銅ワイヤーの場合では、その挟み込む力は銅テープでは0.2MPa以下、銅ワイヤーでは0.23MPa以下としなければケーブルにダメージを与えてしまう恐れがある。
【0004】
前記クリートによってマンホール等のケーブルの移動を阻止する構造のものは従来から種々開発されている。
【0005】
特許文献1のものは、その一つであり、波乗り現象によって移動するケーブルを、このケーブルが引っ張られる側のマンホール内で拘束するためのケーブル拘束方法であって、フレーム40を備えているクリート22により、波乗り現象による引っ張り力を受けているケーブルをクランプした後に、このケーブルに作用している引っ張り力に対抗してフレーム44を支持するに当たり、フレームをケーブルに合わせた傾きのままで、該フレームに設けられている複数本のロッド50のフレーム44からの突出量を個別に調整し、これらのロッド50を通じてフレーム44をマンホールの内壁に支持するものである。
【0006】
また、特許文献2のものは、他の一つの例であり、波乗り現象によって移動しようとするケーブル4をマンホール2内で拘束するためのケーブル拘束装置であって、ケーブル4をクランプするクランプ部41を有するクリート40と、クリート40を支持するフレーム50と、管路口6の両側に配置された任意の方向に延びる形態を成し、管路口6から離れた位置でマンホール2の内壁7に固定された一対の鋼材と、フレーム50に固定された少なくとも一対のフレーム固定部60と、一対の鋼材にそれぞれ固定された少なくとも一対の鋼材固定部30と、一対のフレーム固定部60と一対の鋼材固定部30とを連結する連結部材70であって、一対のフレーム固定部60と一対の鋼材固定部30との間隔を調整可能な連結部材70を備えたものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2014―39402号公報
【特許文献2】特開2019―68502号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記特許文献1及び2のものはいずれも波乗り現象を抑える目的で開発されたものであるが、マンホール等内から管路口に向かうケーブルの傾きに合わせてクリートの支持姿勢を調整可能な拘束装置であって、ケーブルの拘束力を直接高めるものではない。
【0009】
また一般的に、上記クリートは1個当たり100kgfの拘束力となっており、例えば700kgfのケーブル移動力を止めようとすると7個のクリートが必要とりなり、その上、クリート同士の間隔を空けなければ設置個数分の拘束力を100%確保できない。すなわち、クリート7個の設置では並べたクリートの端から端までで1,300mmのケーブル直線部が必要となる。
【0010】
一方、近年、再生可能エネルギー事業が増えているが、そこに必要な自営線(地中送電線)の布設に際しては、コスト削減のため安価な小型のハンドホールやトラフが採用されており、前記の滑落や波乗り現象によるケーブルの移動防止対策用のスペースがなく、更に十分なオフセットが取れていない場合がある。上記のクリート7個を並べる場合には、前記ハンドホールやU字トラフを長く延ばす工事をしなければならない。
【0011】
この様な状況で小スペースにおいても採用できる拘束力の高いケーブル移動抑制装置が開発された。
【0012】
このケーブル移動抑制装置は、
図13に示すように、ハンドホール等から管路内に導出するケーブル1を、ケーブル1の外周を被うスペーサ15及び当該スペーサ15の外周を被う金属製のスプリング付きクリート7で固定する装置において、管路口5の側壁等に支持された架台6に固定された前記スプリング付きクリート7で前記ケーブル1を把持し、管路口5とは反対の前記クリート7の側端面の前記スペーサ15の一端面に、当該スペーサ15と接する外周端縁に鍔17を有する管状のゴム又は合成樹脂から成るストッパー8の前記鍔17の端面を当接させて当該ストッパー8をケーブル1の外周に被せて密着して固定し、当該ストッパー8の外周面に、当該外周面を締め付ける1個又は複数個の締め付けバンド9を設けたものである。
【0013】
この装置は当該装置の前後のケーブル1が直線状であれば、ケーブル移動の抑制効果が十分生じるが、当該装置のストッパー付近のケーブル1が曲がっている場合は移動抑制効果が出ない。
【0014】
この様に前記ストッパー付近のケーブルが曲がっている場合、
図14に示すように、ストッパー8の鍔17の一部(ケーブル曲がり部の内側)だけがクリート7及びスペーサ15に当たり、そこに荷重が集中することで当該ストッパー8の前記鍔17が折れ曲がり、クリート7のアルミ金具の内側にストッパー8が入り込んでしまいケーブルの移動拘束力が得られない。
【0015】
この発明は、ケーブルの曲がり部であってもケーブルの移動抑制効果が得られる、ケーブルの曲がり部用移動抑制装置を提供することを目的としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
請求項1の発明は、ハンドホール、マンホール、U字型溝、洞道のいずれか内のケーブルの曲がり部のケーブルを、当該ケーブルの外周を被うスペーサ及び当該スペーサの外周を被う金属製のスプリング付きクリートで固定する装置において、前記クリートの、ケーブルの引張り方向と反対側の端部に接するケーブル外周に、管状のゴム又は合成樹脂から成るストッパーを被せて密着して固定し、当該ストッパーの前記クリートに接する側の一端に鍔が設けられ、当該鍔の外端面が前記クリートのスペーサの端面に当接され、当該ストッパーの外周面に抑えプレートが被せられ、当該抑えプレートの外周に設けた1個又は複数個の固定バンドで固定され、ケーブルの曲がり部の内側となる前記鍔の部分に、当該鍔の外端面の一部又は全部を被う円弧状プレートを当て、一端部が鉤型部を成し当該鉤型部に続く他端部が棒状平板部である鍔補強治具の前記鉤型部を前記円弧状プレートの外周縁及び前記ストッパーの鍔の外周に被せ、棒状平板部を前記抑えプレートの上に当て、当該鍔補強治具は前記棒状平板部の上から前記固定バンドで固定された、ケーブル曲がり部用移動抑制装置とした。
【0017】
また、請求項2の発明は、前記鍔補強治具の鉤型部に続く棒状平板部に直方体形状の補強リブを設け、当該補強リブの天板部に設けたバンド受け溝に前記固定バンドを巻き付けた、請求項1に記載のケーブル曲がり部用移動抑制装置とした。
【0018】
また、請求項3の発明は、前記抑えプレートの、ストッパーの鍔に当たる端縁部に折り返し縁が形成されている、請求項1又は2に記載のケーブル曲がり部用移動抑制装置とした。
【発明の効果】
【0019】
請求項1の発明によれば、従来から使用されているスプリング付きクリート1個と当該クリートに一端を当接させたストッパーをケーブル外周に固定するだけでケーブルの移動を抑制できる。つまり、この発明の装置はケーブルの外側にストッパーを取り付けて固定しており、当該ストッパーがクリートの端面に当たってケーブルが引かれる力に対抗するものであり、クリートは支持金物に堅固に固定されているのでケーブルの移動が止められる。
【0020】
その上、当該ケーブルが曲がっている曲がり部においても、上記ケーブルの移動抑止効果が得られる。すなわち、ケーブルが曲がっていると、当該箇所のケーブルの内側に位置するストッパーの鍔の一部(ケーブル曲がり部の内側)だけがクリート及びスペーサに当たり、そこに荷重が集中しようとするが、この鍔の箇所に円弧状プレート及び鍔補強治具が設けられているため、荷重が分散し、また、当該鍔の箇所が鍔補強治具に囲まれているため前記鍔が圧縮されて折れ曲がり、クリートのアルミ金具の内側にストッパーが入り込んでしまう恐れがない。それ故、直線状のケーブルと同様なケーブル移動抑止効果が得られる。
【0021】
これにより、このケーブル曲がり部用移動抑制装置は、従来のスプリング付きクリートを、相互に間隔を空けて5個ケーブルに固定した場合より以上の荷重(500kgf以上)に対しても移動しない。従って、装置が小型であっても大きな抑止力を有するため、装置全体が小型となり場所を取らないため、マンホール、ハンドホール、U字トラフ及び洞道内でコンパクトに使用できる。
【0022】
また、請求項2の発明によれば、鍔補強治具を固定する固定バンドが鍔補強治具の補強リブの天板部のバンド受け溝に嵌められているため、当該固定バンドが外れる恐れがなく、しっかりと鍔補強治具を固定でき、ケーブルの曲がり部であってもケーブルの移動抑制力がより高くなる。
【0023】
また、請求項3の発明によれば、抑えプレートの、ストッパーの鍔に当たる端縁部が折り返し縁となっているため、抑えプレートの端縁部が鍔の内側に刺さって鍔に亀裂が入る等の恐れがない。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】この発明の実施の形態例1のケーブル曲がり部用移動抑制装置の使用状態を示す側面図である。
【
図2】この発明の実施の形態例1のケーブル曲がり部用移動抑制装置の使用状態を示す平面図である。
【
図3】この発明の実施の形態例1のケーブル曲がり部用移動抑制装置の使用状態における鍔補強構造箇所の要部断面図である。
【
図4】この発明の実施の形態例1のケーブル曲がり部用移動抑制装置のスプリング付きクリートの正面図である。
【
図5】この発明の実施の形態例1のケーブル曲がり部用移動抑制装置のスプリング付きクリートの側面図である。
【
図6】この発明の実施の形態例1のケーブル曲がり部用移動抑制装置のストッパーの側面図である。
【
図7】この発明の実施の形態例1のケーブル曲がり部用移動抑制装置のストッパーの、
図6のX-X線断面図である。
【
図8】この発明の実施の形態例1のケーブル曲がり部用移動抑制装置のストッパーの抑えブレートの展開図である。
【
図9】この発明の実施の形態例1のケーブル曲がり部用移動抑制装置のストッパーの抑えブレートを略筒状にした状態の斜視図である。
【
図10】この発明の実施の形態例1のケーブル移動抑制装置のストッパーの鍔補強治具の説明図であり、(a)図は側面図、(b)図は平面図、(c)図は正面図である。
【
図11】この発明の実施の形態例1のケーブル移動抑制装置のストッパーの円弧状プレートの概略構成図であり、(a)図は正面図、(b)図は平面図である。
【
図12】この発明の実施の形態例1のケーブル移動抑制装置を使用するハンドホールの平面図である。
【
図13】開発されたケーブル移動抑制装置の直線状ケーブルでの使用状態を示す側面図である。
【
図14】開発されたケーブル移動抑制装置のケーブルの曲がり部での使用状態を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
(実施の形態例1)
この発明の実施の形態例1のケーブル曲がり部用移動抑制装置Aを
図1~
図11に基づいて説明する。
【0026】
このケーブル曲がり部用移動抑制装置Aは、
図1に示すように、地中送電線路に設けたハンドホール等2内で、管路口5の箇所のケーブル1を、管路口5の側壁に支持された架台6に固定されたスプリング付きクリート7で把持し、当該スプリング付きクリート7脇のケーブル1の外周にストッパー8を固定して成り、当該ストッパー8の外周を金属板から成る抑えプレート19で巻きつけ、当該抑えプレート19の外周を間隔を空けて設けた数本の固定バンド20で押さえたものでる。
【0027】
そしてさらに、
図2に示すように、前記ケーブル1が曲がっている箇所の内側に位置するストッパー8の鍔17箇所に当該鍔17の外側、クリート7のスペーサ15との間に円弧状プレート21を介在させ、この円弧状プレート21とともに鍔17の上から鍔補強治具22を装着し、当該鍔補強治具22を前記固定バンド20で固定したものである。
【0028】
以下、当該ケーブル曲がり部用移動抑制装置Aの各構成部材について詳細に説明する。
【0029】
前記スプリング付きクリート7は、既存のものであり、
図4及び
図5に示すように、台座10の上端が断面上向き凹部の半湾曲した下部フレーム11を形成し、当該下部フレーム11に対向して、断面下向き凹部の半湾曲した上部フレーム12が設けられ、これらの下部フレーム11と上部フレーム12の各耳部でボルト・ナット13によりこれらのフレーム11、12を締め付け、固定するものである。
【0030】
さらに、前記上部フレーム12の両側の耳部には、スプリング部14が設けられ、各スプリング部14内では、前記ボルト・ナット13のボルトが伸びて入っており、当該ボルト外周にスプリング14aが設けられ、当該スプリング14aにより、上部フレーム12を下部フレーム11に押し付けるよう常時一定の圧力で付勢されている。
【0031】
また、前記下部フレーム11及び上部フレーム12の内周に形成された円形部にゴム製の円筒状のスペーサ15が設けられ、当該スペーサ15の内部に、両端を貫通したケーブル勘合孔16が設けられている。また、前記台座10はその両側に、前記架台6にスプリング付きクリート7を取り付けるボルト・ナット10aが設けられている。
【0032】
前記ストッパー8は、前記スペーサ15の材質と同じ材質で、
図6及び
図7に示すように、形状、大きさもほぼ前記スペーサ15と同じであり、円筒形状を成し、その両端外周縁に鍔17が設けられており、当該ストッパー8の内部に、両端を貫通したケーブル勘合孔18が設けられている。
【0033】
なお、この実施の形態例1ではストッパー8はスペーサ15と同じ材質、ほぼ同じ大きさを有したものを使用しているが、他の材質のものでもケーブル1に密着する材質であればよい。また、ストッパー8の大きさ(幅)は100mm以上であり、スプリング付きクリート7に入り込まない厚さが鍔17に必要である。また、ストッパー8の一端面の全面がクリート7に接することが必要である。
【0034】
更に、上記実施の形態例1では、ストッパー8の両端外周に鍔17を設けているが、当該鍔17はストッパー8の、クリート7側の一端外周にのみ設けたものでもよい。
【0035】
また、前記ストッパー8の外周は前記ケーブル1から剥がれないように前記金属板から成る抑えプレート19が設けられている。この抑えプレート19は、
図8に示すように、金属板19aから成り、当該金属板19aの両端縁に間隔を空けて多数の切り込み19bが設けられている。そして、ストッパー8に巻き付けつるように筒状に形成した際、
図9に示すように、ストッパー8の両端の鍔17の箇所で当該鍔17の内側面に沿うように前記各切り込み19bの間の各端縁19cを略直角に折り曲げて折り返し縁19dを形成している。また、前記鍔補強治具22を設ける箇所の前記折り返し縁19d´は180度折り曲げて扁平にしている。
【0036】
前記固定バンド20は、
図1及び
図2に示すように、市販の締め付けバンドで、一端部の止め具20aでバンドの一端部を止めて、環状にして、締め付けることが出来るものであり、複数の固定バンド20を、ストッパー8に負荷がかかった際に接着面が浮かないように前記抑えプレート19の外周を固定しているものである。
【0037】
前記鍔補強治具22は、
図10に示すように、一端部が断面下向きのコ字型形状の鉤型部22aを成し、他端部が前記鉤型部22aに続く棒状平板部22bとなっている。また、前記鍔補強治具22の鉤型部22aに続く棒状平板部22bの上面に直方体形状の補強リブ22cを載置して設け、当該補強リブ22cの天板部の外端凸部22dによりバンド受け溝22eが設けられている。
【0038】
また、前記円弧状プレート21は
図11に示すように、半環状のプレートから成り、一定の厚さを有している。当該円弧状プレート21は必ずしも半円環形状でなくても良く、ケーブル1の曲がり部においてストッパー8の鍔17の圧縮がない箇所の鍔17の外周面には当てる必要がなく、半円又はそれより外周長が短い円弧状のプレートでもよい。
【0039】
このケーブル曲がり部用移動抑制装置Aは以上の構成から成り、前記ハンドホール等2内の管路口5付近のケーブル1に、スペーサ15とともにスプリング付きクリート7を装着し、当該スプリング付きクリート7を架台6に固定する。そして、前記管路口5と反対側のスペーサ15の一端に、ストッパー8の一端を当接させて、当該ストッパー8をケーブル1の外周に固定する。当該ストッパー8は接着剤を用いてケーブル1の外周に密着させて取り付ける。
【0040】
このケーブル1に取り付けたストッパー8の外周に前記抑えプレート19を巻き回して被せ、この抑えプレート19の上から固定バンド20を被せて、抑えプレート19を固定する。そして、ケーブル1の曲がり部の内側の前記スペーサ15とストッパー8との間に円弧状プレート21を嵌め、この円弧状プレート21と共にストッパー8の鍔17を鍔補強治具22の鉤型部22aで挟持して被冠し、当該鍔補強治具22の棒状平板部22bを前記抑えプレート19表面に当てる。
【0041】
そして、当該鍔補強治具22の前記バンド受け溝22eに前記固定バンド20の一つを巻き付け、当該鍔補強治具22を固定する。当該鍔補強治具22はケーブル曲がり部の内側の荷重がかかる箇所の鍔17に、1個又は複数個設けてもよい。
【0042】
これによりケーブル曲がり部でのケーブル移動抑制を措置する際、ストッパー8の鍔17の、特に曲がり部の内側に位置する鍔17の箇所に圧力がかかっても、当該圧力が一点に集中せず、円弧状プレート21によって圧力箇所が広がり、また、鍔17の外周に鍔補強治具22を有するため、従来のように鍔17が圧縮されてクリート7内に入り込む恐れがない。
【0043】
従って、ケーブルの曲がり部においても、ケーブル1に移動する力が作用した時に、前記ストッパー8の端面がスプリング付きクリート7又はスペーサ15の端面に当たり、ケーブル1の移動を阻止する。
【0044】
上記実施の形態例1では鍔補強治具22に補強リブ22cを設け、当該補強リブ22cのバンド受溝22eに固定バンド20を掛けているが、鍔補強治具22を硬い材質で作れば補強リブ22cを設けず、固定バンド20を鍔補強治具22の外周に直接掛けてもよい。また、上記実施の形態例1では抑えプレート19の両端部に折り返し縁19dを設けたが、当該折り返し縁19dを付けない場合もある。抑えプレート19の両端部が丸みを帯びていれば鍔17の内側に食い込む恐れがない。
【0045】
また、上記実施の形態例1では、3心ケーブルで説明したが、このケーブル曲がり部用移動抑止装置Aは単心ケーブルにも使用でき、同様の効果を有する。また、上記実施の形態例1では、ハンドホール等2の管路口5付近のケーブル1に当該ケーブル曲がり部用移動抑止装置Aを設けたが、これに限らずマンホール、U字トラフ及び洞道内のいずれかに設けても同様の効果を有する。
【符号の説明】
【0046】
A ケーブル曲がり部用移動抑制装置
1 ケーブル 2 ハンドホール等
3 接続部 4 オフセット部
5 管路口 6 架台
7 スプリング付きクリート 8 ストッパー
9 締め付けバンド 10 台座
10a ボルト・ナット 11 下部フレーム
12 上部フレーム 13 ボルト・ナット
14 スプリング部 14a スプリング
15 スペーサ 16 ケーブル嵌合孔
17 鍔 18 ケーブル嵌合孔
19 抑えプレート 19a 金属板
19b 切り込み 19c 端縁
19d 折り返し縁 20 固定バンド
20a 止め具 21 円弧状プレート
22 鍔補強治具 22a 鉤型部
22b 棒状平板部 22c 補強リブ
22d 外端凸部 22e バンド受け溝