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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024136312
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】電位治療器
(51)【国際特許分類】
   A61N 1/10 20060101AFI20240927BHJP
【FI】
A61N1/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023047395
(22)【出願日】2023-03-23
(71)【出願人】
【識別番号】304062432
【氏名又は名称】株式会社 リブレックス
(74)【代理人】
【識別番号】100165423
【弁理士】
【氏名又は名称】大竹 雅久
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 宗敬
(72)【発明者】
【氏名】馬場 徹
【テーマコード(参考)】
4C053
【Fターム(参考)】
4C053EE02
4C053EE03
4C053EE05
(57)【要約】
【課題】出力電圧を好適に調整可能であって、故障時の短絡電流を安全に抑制しつつ、使用時の出力電流を大きくして優れた治療効果が得られる電位治療器を提供する。
【解決手段】交流の出力電圧を人体に印加して治療を行う電位治療器であって、少なくとも電圧を調整可能な電源装置2と、電源装置に接続され電源装置から入力される交流を昇圧して出力電圧を生成する高圧トランス3と、高圧トランスの一次側回路4に設けられ切替手段14、15を介して選択的に接続される複数の一次側電流制限抵抗10と、高圧トランスの二次側回路5に設けられた二次側電流制限抵抗30と、を具備し、選択的に接続された一次側電流制限抵抗及び二次側電流制限抵抗を含む高圧トランスのインピーダンスにより出力電圧の短絡電流を規定値以下に制限する。これにより、短絡電流を規定値に制限すると共に出力電流を大きくすることができ、安全で優れた治療効果が得られる。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
交流の出力電圧を人体に印加して治療を行う電位治療器であって、
少なくとも電圧を調整可能な電源装置と、
前記電源装置に接続され前記電源装置から入力される交流を昇圧して前記出力電圧を生成する高圧トランスと、
前記高圧トランスの一次側回路に設けられ切替手段を介して選択的に接続される複数の一次側電流制限抵抗と、
前記高圧トランスの二次側回路に設けられた二次側電流制限抵抗と、を具備し、
選択的に接続された前記一次側電流制限抵抗及び前記二次側電流制限抵抗を含む前記高圧トランスのインピーダンスにより前記出力電圧の短絡電流を規定値以下に制限することを特徴とする電位治療器。
【請求項2】
前記出力電圧の最高値を印加する状態において、前記短絡電流を制限する合計抵抗値は、選択的に接続された前記一次側電流制限抵抗に30~50%が、前記二次側電流制限抵抗に50~70%が、分割して配分されていることを特徴とする請求項1に記載の電位治療器。
【請求項3】
前記一次側回路には、前記高圧トランスの変圧比が異なる複数のタップが設けられており、
複数の前記一次側電流制限抵抗は、それぞれ前記タップの何れかに直列接続されていることを特徴とする請求項1に記載の電位治療器。
【請求項4】
複数の前記一次側電流制限抵抗は、それぞれ接続された状態において、前記出力電圧の最高値を印加する際に前記電源装置から入力される最高電圧の交流と同じ電圧の交流が入力されても前記短絡電流を前記規定値以下に制限できる抵抗値であることを特徴とする請求項3に記載の電位治療器。
【請求項5】
前記二次側回路には、前記高圧トランスに並列接続され前記出力電圧が最高値である場合にインピーダンス60MΩ以上または開放となる並列インピーダンス回路が設けられていることを特徴とする請求項1から請求項4の何れか1項に記載の電位治療器。
【請求項6】
前記二次側回路には、二次側ダイオードと、前記二次側ダイオードに並列または直列に接続された二次側ダイオード回路抵抗と、を有する二次側ダイオード回路が更に設けられていることを特徴とする請求項1から請求項4の何れか1項に記載の電位治療器。
【請求項7】
前記出力電圧の最高値を印加する状態において、
前記二次側ダイオードを導通する極側の前記短絡電流は、前記規定値よりも大きく、
前記二次側ダイオードを非導通の極側の前記短絡電流は、前記規定値よりも小さくなることを特徴とする請求項6に記載の電位治療器。
【請求項8】
前記一次側回路には、一次側ダイオードと、前記一次側ダイオードに並列または直列に接続された一次側ダイオード回路抵抗と、を有する一次側ダイオード回路が更に設けられていることを特徴とする請求項1から請求項4の何れか1項に記載の電位治療器。
【請求項9】
前記出力電圧の最高値を印加する状態において、前記一次側ダイオード回路抵抗の抵抗値は、選択的に接続された前記一次側電流制限抵抗の抵抗値よりも小さいことを特徴とする請求項8に記載の電位治療器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電位治療器に関し、特に、出力電圧を安全に変更することができる電位治療器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、人体に交流の高電圧を印加して治療を行う電位治療器が利用されている。この種の電位治療器において、電圧を変化させて治療を行うものが知られている。
例えば、特許文献1には、昇圧トランスにて昇圧した高電圧を人体に印加する電位治療器において、昇圧トランスを駆動するインバータ回路と、インバータ回路を制御する制御部を設け、出力電圧調節手段を制御部に接続して昇圧トランスの出力電圧を調節可能に構成した電位治療器が開示されている。
【0003】
また例えば、特許文献2には、交流電源に接続される電源回路と、電源回路の出力側に接続されて任意波形の交流電圧を生成するインバータと、インバータによって生成される交流電圧を出力電圧に昇圧するトランスと、インバータを制御する制御装置と、を有し、制御装置でインバータを制御することにより、出力電圧の波形を周期的に変化させる電位治療器が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000-271233号公報
【特許文献2】特開2016-073372号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1及び特許文献2に開示されているように、この種の電位治療器は、人体に印加される交流の電圧等を調整可能に構成されている。これにより、治療を受けるそれぞれの利用者に応じて印加される電圧等を好適に調整することができ、それぞれの利用者に適合する優れた治療効果が得られる。人体に対する治療効果を高めるためには、安全な範囲内で出力電流値は大きい方が良い。
【0006】
しかしながら、従来技術の電位治療器は、最高出力電圧が印可された状態で導子や絶縁マット等に絶縁不良が発生しても人体に危険電流が流れないように、電流制限抵抗等が設けられている。この電流制限抵抗等は、最大出力電圧で安全電流となるよう設定されている。そのため、出力電圧を下げて使用する場合には、電流制限抵抗等によって電流値が過剰に抑えられ、人体を流れる電流値が小さくなり過ぎて治療効果が低下するという問題点がある。
【0007】
具体的には、例えば、特許文献1の図2に示されるように、従来技術の電位治療器は、高圧トランスの二次巻線の一端は、十数MΩの電流制限抵抗(同文献の抵抗器13)を介して通電シートの電極等の導子に接続され、二次巻線の他端は、十数MΩの渡抵抗(同文献の抵抗器14)を介して一次側回路に接続されている。
【0008】
電流制限抵抗及び渡抵抗は、導子及び絶縁マット等が破損して絶縁が劣化した際、絶縁劣化による故障電流、即ち短絡電流、を人体に安全なレベル、詳しくは1mA以下に抑え、人体に大電流が流れることを抑制するものである。
【0009】
例えば、高圧トランスの最高出力電圧を9000V(実効値、以下同じ)とした場合、短絡電流を安全なレベルである1mA以下に抑えるため、高圧トランスの二次側に9.5MΩの電流制限抵抗と0.5MΩの渡抵抗が設けられたとする。この場合、導子や絶縁マット等に絶縁不良が発生しても、短絡電流は、9000V/10MΩ=0.9mAであり、1mA以下に抑えられる。
【0010】
この電位治療器において、高圧トランスの出力電圧を2250Vに調整して利用する場合、故障時の短絡電流は、2250V/10MΩ=0.225mAであり、安全な範囲に抑えられる。しかし、治療のための出力電圧及び出力電流も低下し、その低下率は、電流制限抵抗及び渡抵抗の抵抗値が大きいほど大きくなる。詳しくは、実際の使用時の電位は導体等の容量結合で供給されるため、導子、利用者人体及び絶縁マットの全負荷容量を200pFと仮定した場合、60Hzの波形の例では、端子部の出力電圧は1797V、出力電流は0.135mAとなる。
【0011】
なお、出力電圧9000V、周波数60Hz、電流制限等の抵抗値10MΩにおいて、出力電流は、容量負荷200pFで0.542mA、容量負荷1000pFで0.870mAとなる。また、出力電圧2250V、周波数60Hz、抵抗値10MΩでは、出力電流は、容量負荷200pFで0.135mA、容量負荷1000pFで0.217mAとなる。出力電流値は負荷容量によって変化するが、短絡電流が最大で1mAを越えないよう電流制限抵抗が選択される。
【0012】
上記の治療のための出力電圧及び出力電流は、高圧トランスの出力電圧を2250Vとした場合に短絡電流が1mAとなるよう電流制限抵抗等の抵抗値を小さくした場合に比べると低い値である。即ち、電流制限抵抗及び渡抵抗の抵抗値が過大であるため低電圧時の治療効果が低くなっている。
【0013】
換言すれば、出力電圧を2250Vとして利用する際には、電流制限抵抗等の抵抗値を小さくすれば、出力電圧及び出力電流を大きくして低電圧出力時の電位治療器の治療効果を高めることができる。
【0014】
例えば、合計の抵抗値が2.5MΩとなるような電流制限抵抗及び渡抵抗が設けられたとすれば、高圧トランスの出力電圧を2250Vに調整して利用する場合であっても、出力電圧は2211V、出力電流は0.167mAと、何れも10MΩの電流制限抵抗等が設けられた場合よりも大きくできる。なお、導子を密着させて、容量負荷を1000pFとした場合は、出力電流は0.618mAとなり、更に導体を直接接触した場合は、出力電流は0.9mAとなる。
【0015】
しかしながら、低電圧で使用する場合を想定して抵抗値の小さい電流制限抵抗等を採用すると、当然のことながら高電圧で使用する際には短絡電流が大きくなり安全値である1mAを越えることとなる。よって、上記した従来技術の構成では、安全性の観点から、抵抗値の小さい電流制限抵抗等を採用することはできない。
【0016】
そこで、高圧トランスの二次側に抵抗値が違う複数の電流制限抵抗等と、リレー等の切り替え手段と、を設けることにより、電流制限抵抗等の抵抗値を変更できるようにする構成が考えられる。しかし、例えば、9000Vの高電圧になる回路に、抵抗値を可変とするためのリレー等の切替装置を設けることは、切替装置が大型で高価であるため現実的ではない。
【0017】
また、高電圧の回路にリレー等の切替装置を設けることは、遮断や投入時に発生するアークによってリレー等の接点が溶着するリスクがある。出力電圧に応じて抵抗値を変える構成を採用する場合、例えば、低電圧で使用するために抵抗値の小さい電流制限抵抗等を選択的に接続した状態でもリレー等の接点が溶着する恐れがある。そうすると、出力電圧の設定を高電圧に変更しても、電流制限抵抗等の抵抗値が小さい状態となって、短絡電流が安全値である1mAを大きく超えてしまう危険性がある。
【0018】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、出力電圧を好適に調整可能であって、故障時の短絡電流を安全に抑制しつつ、使用時の出力電流を大きくして優れた治療効果が得られる電位治療器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明の電位治療器は、交流の出力電圧を人体に印加して治療を行う電位治療器であって、少なくとも電圧を調整可能な電源装置と、前記電源装置に接続され前記電源装置から入力される交流を昇圧して前記出力電圧を生成する高圧トランスと、前記高圧トランスの一次側回路に設けられ切替手段を介して選択的に接続される複数の一次側電流制限抵抗と、前記高圧トランスの二次側回路に設けられた二次側電流制限抵抗と、を具備し、選択的に接続された前記一次側電流制限抵抗及び前記二次側電流制限抵抗を含む前記高圧トランスのインピーダンスにより前記出力電圧の短絡電流を規定値以下に制限することを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明の電位治療器は、少なくとも電圧を調整可能な電源装置と、前記電源装置に接続され前記電源装置から入力される交流を昇圧して出力電圧を生成する高圧トランスと、前記高圧トランスの一次側回路に設けられ切替手段を介して選択的に接続される複数の一次側電流制限抵抗と、前記高圧トランスの二次側回路に設けられた二次側電流制限抵抗と、を具備し、選択的に接続された前記一次側電流制限抵抗及び前記二次側電流制限抵抗を含む前記高圧トランスのインピーダンスにより前記出力電圧の短絡電流を規定値以下に制限する。これにより、出力電圧を変更して治療を行う際、その出力電圧に対応する好適な一次側電流制限抵抗が選択的に接続され、短絡電流を規定値以下に制限して安全な治療を行うことができる。そして、出力電圧に応じた一次側電流制限抵抗が選択されることにより、出力電圧及び出力電流の過剰な低下を抑えることができる。よって、故障時の短絡電流を安全に抑制しつつ、使用時の出力電流を大きくすることができ、優れた治療効果が得られる。
【0021】
また、選択的に接続され短絡電流を制限する複数の一次側電流制限抵抗は、高圧トランスの二次側回路のように高電圧に昇圧されることのない高圧トランスの一次側回路に設けられている。そのため、このような選択的に切替接続可能な電流制限抵抗を高電圧になる二次側回路に設ける場合に比べて、安全に構成機器の小型化を図ることができ製造コストを抑えることもできる。
【0022】
また、切替接続可能な一次側電流制限抵抗は、低電圧の一次側回路に設けられているので、高電圧の二次側回路に設けられる場合に比べると、切替手段の接点等が溶着する危険性も低い。
【0023】
また、本発明の電位治療器によれば、前記出力電圧の最高値を印加する状態において、前記短絡電流を制限する合計抵抗値は、選択的に接続された前記一次側電流制限抵抗に30~50%が、前記二次側電流制限抵抗に50~70%が、分割して配分されても良い。このような抵抗配分により、短絡電流を安全な規定値の範囲内に制限することができると共に、一次側電流制限抵抗と励磁インピーダンスとの分圧による出力電圧の低下を抑えて、利用者が体感可能な優れた治療効果が得られる。また、一次側電流制限抵抗若しくは二次側電流制限抵抗が何らかの原因で破損しても、最低限の電流抑制ができるので安全である。
【0024】
また、本発明の電位治療器によれば、前記一次側回路には、前記高圧トランスの変圧比が異なる複数のタップが設けられており、複数の前記一次側電流制限抵抗は、それぞれ前記タップの何れかに直列接続されても良い。このような構成により、一次側電流制限抵抗の選択的な接続による出力電圧の好適な調整が可能となる。よって、短絡電流を制限しつつ出力電圧を変更することができ、安全で優れた電位治療を行うことができる。
【0025】
また、本発明の電位治療器によれば、複数の前記一次側電流制限抵抗は、それぞれ接続された状態において、前記出力電圧の最高値を印加する際に前記電源装置から入力される最高電圧の交流と同じ電圧の交流が入力されても前記短絡電流を前記規定値以下に制限できる抵抗値であっても良い。これにより、仮に切替手段の接点等が溶着する不具合が発生しても、短絡電流が規定値を超えることはなく、安全性を確保することができる。
【0026】
また、本発明の電位治療器によれば、前記二次側回路には、前記高圧トランスに並列接続され前記出力電圧が最高値である場合にインピーダンス60MΩ以上または開放となる並列インピーダンス回路が設けられても良い。これにより、一次側回路に一次側電流制限抵抗を追加することによる出力電圧の低下を抑え、短絡電流を安全に制限することができる。即ち、高圧トランスの励磁インピーダンス、二次側回路に設けられる電圧安定化のための並列抵抗その他インピーダンスの影響を抑えて一次側電流制限抵抗を設けることができる。
【0027】
また、本発明の電位治療器によれば、前記二次側回路には、二次側ダイオードと、前記二次側ダイオードに並列または直列に接続された二次側ダイオード回路抵抗と、を有する二次側ダイオード回路が更に設けられても良い。これにより、正極及び負極の抵抗値を変えて短絡電流を制限することができる。よって、正負極の平均短絡電流を安全な範囲に抑えつつ、正負極何れかの最高出力電圧を高め出力電流を増やして利用者の体感治療効果を高めることができる。
【0028】
また、本発明の電位治療器によれば、前記出力電圧の最高値を印加する状態において、前記二次側ダイオードを導通する極側の前記短絡電流は、前記規定値よりも大きく、前記二次側ダイオードを非導通の極側の前記短絡電流は、前記規定値よりも小さくても良い。これにより、正負極の平均短絡電流を規定値以下に制限して安全性を確保しつつ、正負極何れかについては、短絡電流が規定値よりも大きくなる出力電圧及び出力電流として利用者の体感治療効果を高めることができる。
【0029】
また、本発明の電位治療器によれば、前記一次側回路には、一次側ダイオードと、前記一次側ダイオードに並列または直列に接続された一次側ダイオード回路抵抗と、を有する一次側ダイオード回路が更に設けられても良い。これにより、正極及び負極の抵抗値を変えて短絡電流を制限することができる。よって、正負極の平均短絡電流を安全な範囲に抑えつつ、正負極何れかの最高出力電圧を高め出力電流を増やして利用者の体感治療効果を高めることができる。
【0030】
また、本発明の電位治療器によれば、前記出力電圧の最高値を印加する状態において、前記一次側ダイオード回路抵抗の抵抗値は、選択的に接続された前記一次側電流制限抵抗の抵抗値よりも小さくても良い。これにより、励磁電流のバランスが大きく乱れることを抑制し、高圧トランスの機能を維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】本発明の実施形態に係る電位治療器の概略構成を示す(A)回路図、(B)等価回路図である。
図2】本発明の実施形態に係る電位治療器の概略構成を示す回路図である。
図3】本発明の実施形態に係る電位治療器の他の例の概略構成を示す回路図である。
図4】本発明の実施形態に係る電位治療器の更に他の例の概略構成を示す回路図である。
図5】本発明の実施形態に係る電位治療器の更に他の例の概略構成を示す回路図である。
図6】本発明の実施形態に係る電位治療器の更に他の例の概略構成を示す回路図である。
図7】本発明の実施形態に係る電位治療器の更に他の例の概略構成を示す回路図である。
図8】本発明の実施形態に係る電位治療器の更に他の例の概略構成を示す回路図である。
図9】本発明の実施形態に係る電位治療器の更に他の例の概略構成を示す回路図である。
図10】本発明の実施形態に係る電位治療器の更に他の例の概略構成を示す回路図である。
図11】本発明の実施形態に係る電位治療器の更に他の例の概略構成を示す回路図である。
図12】本発明の実施形態に係る電位治療器の更に他の例の概略構成を示す回路図である。
図13】本発明の実施形態に係る電位治療器の更に他の例の概略構成を示す回路図である。
図14】本発明の実施形態に係る電位治療器の更に他の例の概略構成を示す回路図である。
図15】本発明の実施形態に係る電位治療器の(A)コンデンサがない場合、(B)コンデンサがある場合、の出力波形を示す図である。
図16】本発明の実施形態に係る電位治療器の更に他の例の概略構成を示す回路図である。
図17】本発明の実施形態に係る電位治療器の更に他の例の概略構成を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明の実施形態に係る電位治療器1を図面に基づき詳細に説明する。
図1(A)は、本発明の実施形態に係る電位治療器1の概略構成を示す回路図であり、図1(B)は、電位治療器1の概略構成を示す等価回路図である。なお、図1(B)において、高圧トランス3の巻線抵抗及び一次巻線と一次巻線の漏れインダクタンスの値は、カットコアを使用する場合が多く一次側電流制限抵抗10及び二次側電流制限抵抗30の抵抗値に比べて非常に小さい値であるので無視し、高圧トランス3については励磁インピーダンス29のみを示している。また、図1(A)及び(B)並びに図2以降において、短絡電流を破線矢印で示している。
【0033】
図1(A)及び(B)を参照して、電位治療器1は、交流の出力電圧を人体に印加して治療を行う装置であって、電源装置2と、一次側電流制限抵抗10と、高圧トランス3と、二次側電流制限抵抗30と、を有する。
【0034】
電源装置2は、図示しない交流電源に接続されて、電位治療のための交流電力を高圧トランス3の一次側回路4に供給する装置である。電源装置2は、高圧トランス3に送られる交流の少なくとも電圧を、例えば0~24Vに変更可能な装置であり、例えば、図示しないインバータ等を備えていても良い。
【0035】
具体的には、電源装置2は、交流電源からの交流電圧をインバータで利用できる安定した直流電圧に変換する図示しない電源回路を備えていても良い。電源回路は、妨害電磁波対策のための図示しないフィルタ回路や、過負荷、過電圧若しくは低電圧等の異常時に電源回路の動作を停止させる図示しない過負荷保護回路等を備えても良い。
【0036】
電源装置2のインバータは、電源回路の出力側に接続され、電源回路から供給される直流電圧を所定の電圧の交流に変換して出力する。なお、電源装置2のインバータには、異常時に出力を停止するための図示しない過電流保護回路や保護ヒューズ等が設けられても良い。
【0037】
また、電位治療器1には、図示しない操作部、表示部及び制御装置が設けられている。操作部は、利用者が操作指令を入力する装置であり、制御装置等に接続されている。表示部は、出力電圧、出力電流、周波数、タイマ等の各種設定条件及び出力状況等を表示するものである。
【0038】
制御装置は、操作部の入力及び各種設定値等に基づき所定の演算を実行して電源装置2等を制御する装置である。具体的には、制御装置は、出力電圧の波形制御、タイマ制御、表示制御、過負荷監視及び電圧監視等を行う。電源装置2は、制御装置からの指令を受け、所定の電圧及び周波数の波形を出力する。
【0039】
高圧トランス3は、電源装置2の出力側に一次側電流制限抵抗10を介して接続され、電源装置2から入力される交流の電圧を出力電圧まで昇圧する。高圧トランス3の変圧比は、例えば、1:375である。高圧トランス3に入力される一次側回路4の最高入力電圧が24Vであるとすれば、二次側回路5の最高出力電圧は、例えば9000Vとなる。
【0040】
高圧トランス3で昇圧された出力電圧は、二次側電流制限抵抗30、図示しない保護回路及び出力コネクタ等を介して、例えば、通電シート等の導子6に伝わり、人体に印加される。
【0041】
なお、導子6には、高圧トランス3の一端子側の二次側回路5のみが接続されている。高圧トランス3の他端子側は、図示を省略するが渡抵抗を介して電源装置2の電源回路側に接続され、大地接地されても良い。
【0042】
一次側電流制限抵抗10は、短絡電流を制限する抵抗であり、高圧トランス3の一次側回路4に設けられている。詳細については後述するが、一次側電流制限抵抗10は、抵抗値を変更できるよう構成されている。例えば、電位治療器1が前述の最高出力電圧9000Vで使用される場合、一次側電流制限抵抗10の抵抗値は、35.6Ωであり、二次側換算抵抗値は、5MΩとなる。これは等価回路的には、一次側に10MΩの抵抗を挿入したのと同等である。
【0043】
二次側電流制限抵抗30は、短絡電流を制限する抵抗であり、高圧トランス3の二次側回路5に設けられている。二次側電流制限抵抗30の抵抗値は、例えば、5MΩである。
よって、一次側電流制限抵抗10と二次側電流制限抵抗30の合計抵抗値(二次側換算)は、5MΩ+5MΩ=10MΩとなる。
【0044】
上記の設定で電位治療器1が使用され、導子6及び絶縁マット等が損傷して絶縁不良が発生すると、人体を流れる恐れがある短絡電流は、励磁インピーダンス29等を無視すれば、9000V/10MΩ=0.9mAである。従って、短絡電流は、規定値である1mA以下となり、安全基準を満たす。
【0045】
ここで、本実施形態に係る電位治療器1のように、高圧トランス3の一次側回路4に短絡電流を制限する一次側電流制限抵抗10が設けられる構成では、出力電圧は、一次側電流制限抵抗10と励磁インピーダンス29との分圧になる。即ち、出力電圧は、入力電圧から一次側電流制限抵抗10による電圧降下分を引いた、励磁インピーダンス29による電圧となる。
【0046】
ところが、高圧トランス3の励磁インピーダンス29は、概ね20~40MΩ程度である。50Hzの低周波では磁束密度が高くなり損失が大きくなるため、高い値の励磁インピーダンス29を得ることは困難である。
【0047】
そのため、一次側回路4に設けられる一次側電流制限抵抗10の比率が大きすぎると、出力電圧が低くなり過ぎるという問題点がある。そこで、出力電圧の最高値を印加する状態において、選択的に接続された一次側電流制限抵抗10に、短絡電流を制限する合計抵抗値の30~50%が分割配分されることが望ましい。即ち、短絡電流を制限する合計抵抗値の50~70%は、二次側電流制限抵抗30に配分される。
【0048】
このような抵抗配分により、短絡電流を安全な1mA以下の範囲に制限することができると共に、一次側電流制限抵抗10と励磁インピーダンス29との分圧による出力電圧の低下を抑えて、利用者が体感可能な優れた治療効果が得られる。
【0049】
例えば、一次側電流制限抵抗10の二次側換算の抵抗値は、短絡電流を制限する合計抵抗値の50%である5MΩ、二次側電流制限抵抗30の抵抗値は合計抵抗値の50%である5MΩである。この場合、出力の周波数を50Hzとすれば、励磁インピーダンス29は、トランスの鉄心材料にもよるが、約20MΩとなる。
【0050】
そうすると、出力の単純抵抗分圧比は、20MΩ/(20MΩ+5MΩ)×100=約80%になり、出力電圧は低下する。なお、単純抵抗分圧比ではなく、発明者らの実測によれば、上記の条件で90%以上の出力電圧が得られている。なお、周波数を150Hz以上とすると、珪素鋼板のトランスでは励磁インピーダンスが増大するので、周波数150Hz以上の成分を波形の主体としても良い。
【0051】
上記の構成において、電源装置2からの入力電圧を10%高くして9900Vとすれば、従来技術のように100%の抵抗値を二次側回路5に設けた構成と略同等の出力電圧が得られる。そして、一次側回路4に設けられた一次側電流制限抵抗10で、短絡電流の約50%を制限することができる。
【0052】
また、一次側電流制限抵抗10が、短絡電流を制限する合計抵抗値の30%以下であると、利用者の体感に大きな変化が得られなかった。従って、一次側電流制限抵抗10の分割配分は、短絡電流を制限する合計抵抗値の30%以上が好ましい。
よって、前述のとおり、最高出力電圧における一次側電流制限抵抗10の分割配分は、合計抵抗値の30~50%が好ましい。
【0053】
図2は、電位治療器1の概略構成を示す回路図であり、一次側電流制限抵抗10の抵抗値を変更する構成を示している。図2を参照して、一次側電流制限抵抗10は、抵抗値の異なる複数の抵抗、例えば、第1の一次側電流制限抵抗11、第2の一次側電流制限抵抗12、第3の一次側電流制限抵抗13を有する。
【0054】
第1~3の一次側電流制限抵抗11、12、13は、それぞれ並列に設けられており、切替手段として、例えば第1のリレー14及び第2のリレー15を介して、選択的に一次側回路4に接続される。
【0055】
具体的には、一次側回路4には、第1の一次側電流制限抵抗11及び第2の一次側電流制限抵抗12の何れかを選択的に接続する第2のリレー15と、第3の一次側電流制限抵抗13を選択的に接続する第1のリレー14と、が設けられている。
【0056】
第1のリレー14の切り換えにより、一次側電流制限抵抗10が、第1~2の一次側電流制限抵抗11、12の何れかになるか、第3の一次側電流制限抵抗13になるかが選択される。
【0057】
また、第2のリレー15の切り換えにより、一次側電流制限抵抗10が、第1の一次側電流制限抵抗11になるか、第2の一次側電流制限抵抗12になるかが選択される。なお、第1のリレー14及び第2のリレー15の切替制御は、利用者によって入力された設定情報等に基づき図示しない制御装置によって行われる。
【0058】
一次側電流制限抵抗10の例について更に詳しく説明する。なお、以下に説明する電圧、電流及び抵抗値等の数値は、簡略化のために、高圧トランス3の巻線抵抗、漏れインダクタンス及び励磁インピーダンス29等を無視している。
【0059】
第1の一次側電流制限抵抗11は、例えば、出力電圧を最高出力電圧である9000Vとした際に接続される抵抗であり、その抵抗値は、例えば、177Ω、二次側換算抵抗値は、25MΩである。
【0060】
これにより、最高出力電圧9000Vにおける短絡電流は、9000V/(25MΩ+5MΩ)=0.3mA、となる。よって、短絡電流を規定値の1mA以下である0.3mA以下に下げて、短絡時の電撃ショック、及び治療中の利用者に外部の人が触れた場合の部分短絡現象による電撃ショックを緩和することができる。
【0061】
第2の一次側電流制限抵抗12は、例えば、出力電圧を最高出力電圧である9000Vとする際に接続される抵抗であり、その抵抗値は、例えば、35.5Ω、二次側換算抵抗値は、5MΩである。これにより、最高出力電圧で使用する際の短絡電流を0.9mAとして、規定値である1mA以下に制限することができる。
【0062】
第3の一次側電流制限抵抗13は、例えば、出力電圧を3600V、即ち一次側回路4の入力電圧を9.6Vとした際に接続される抵抗であり、その抵抗値は、例えば、0.7Ω、二次側換算抵抗値は、0.1MΩである。従って、第3の一次側電流制限抵抗13と二次側電流制限抵抗30の合計抵抗値(二次側換算)は、0.1MΩ+5MΩ=5.1MΩとなる。これにより、出力電圧3600Vで使用する際に絶縁不良等で発生する短絡電流は、3600V/5.1MΩ=0.71mAである。よって、短絡電流は、規定値である1mA以下となる。
【0063】
このような構成により、出力電圧を変更して治療を行う際、その出力電圧に対応する好適な一次側電流制限抵抗10、即ち第1~3の一次側電流制限抵抗11、12、13、が選択的に接続され、短絡電流を規定値以下に制限して安全な治療を行うことができる。
【0064】
そして、出力電圧に応じた一次側電流制限抵抗10が選択されることにより、出力電圧及び出力電流の過剰な低下を抑えることができる。よって、故障時の短絡電流を安全に抑制しつつ、使用時の出力電流を大きくすることができ、優れた治療効果が得られる。
【0065】
第1の一次側電流制限抵抗11及び第2の一次側電流制限抵抗12は、2段階の接点、即ち第1のリレー14及び第2のリレー15を介して接続される。そして、第1のリレー14及び第2のリレー15が励磁されていない状態では、最小電流となる第1の一次側電流制限抵抗11が接続されている。このような多数接点の組み合わせにより安全性を向上させる構成となっている。
【0066】
また、選択的に接続され短絡電流を制限する複数の一次側電流制限抵抗10は、高圧トランス3の二次側回路5のように高電圧に昇圧されることのない高圧トランス3の一次側回路4に設けられている。そのため、このような選択的に切替接続可能な抵抗を高電圧になる二次側回路5に設ける場合に比べて、構成機器の小型化を図ることができ製造コストを抑えることもできる。
【0067】
また、切替接続可能な一次側電流制限抵抗10は、一次側回路4に設けられているので、高電圧の二次側回路5に設けられる場合に比べると、切替手段としての第1のリレー14、第2のリレー15の接点等が溶着する危険性も低い。よって、接点の溶着によって規定値を超える危険電流が人体に流れることを防ぐことができる。
【0068】
次に、図3から図17を参照して、電位治療器1の実施形態を変形した例について詳細に説明する。なお、図3から図17では、既に説明した実施形態と同一若しくは同様の作用、効果を奏する構成要素については、同一の符号を付し、その説明を省略する。また、各図において、一次側回路4に複数設けられる一次側電流制限抵抗10については、一部のみを示してその他は省略している。
【0069】
図3は、電位治療器1の他の例の概略構成を示す回路図であり、一次側電流制限抵抗10の選択的な接続を変更した例を示している。図3を参照して、第1~3の一次側電流制限抵抗11、12、13は、それぞれの切替手段として、例えば第1のリレー35、第2のリレー36及び第3のリレー37を介して、一次側回路4に選択的に接続される構成でも良い。
【0070】
具体的には、一次側回路4には、第1の一次側電流制限抵抗11を接続する第1のリレー35と、第2の一次側電流制限抵抗12を接続する第2のリレー36と、第3の一次側電流制限抵抗13を接続する第3のリレー37と、が並列に設けられている。
【0071】
一次側電流制限抵抗10は、第1のリレー35の閉動作により第1の一次側電流制限抵抗11が、第2のリレー36の閉動作により第2の一次側電流制限抵抗12が、第3のリレー37の閉動作により第3の一次側電流制限抵抗13が、選択的に接続される。
【0072】
図4は、電位治療器1の更に他の例の概略構成を示す回路図であり、一次側電流制限抵抗10の選択的な接続を変更した例を示している。図4を参照して、一次側回路4には、高圧トランス3の変圧比が異なる複数のタップ16、17が設けられている。
【0073】
複数の一次側電流制限抵抗10、即ち第1~3の一次側電流制限抵抗11、12、13は、それぞれタップ16、17の何れかに直列接続されるよう設けられている。
【0074】
具体的には、第1の一次側電流制限抵抗11及び第2の一次側電流制限抵抗12は、タップ16に接続されている。タップ16の変圧比は、例えば、1:375である。従って、例えば、二次側回路5への出力電圧を最高出力電圧である9000Vとする場合、一次側回路4の入力電圧は、24Vとなる。
【0075】
前述のとおり、第1の一次側電流制限抵抗11は、例えば、出力電圧を最高出力電圧である9000Vとした際に接続される抵抗であり、その抵抗値は、例えば、177Ω、二次側換算抵抗値は、25MΩである。なお、励磁インピーダンスによる電圧降下を補償するために電源電圧は、例えば、10%UPの26.4Vとなる場合もある。
【0076】
これにより、最高出力電圧9000Vにおける短絡電流は、9000V/(25Ω+5Ω)=0.3mA、となる。よって、短絡電流を規定値の1mA以下である0.3mA以下に下げて、短絡時の電撃ショック、及び治療中の利用者に外部の人が触れた場合の部分短絡現象による電撃ショックを緩和することができる。
【0077】
第2の一次側電流制限抵抗12は、例えば、出力電圧を最高出力電圧である9000Vとする際に接続される抵抗であり、その抵抗値は、例えば、35.5Ω、二次側換算抵抗値は、5MΩである。これにより、最高出力電圧で使用する際の短絡電流を0.9mAとして、規定値である1mA以下に制限することができる。
【0078】
なお、第1の一次側電流制限抵抗11及び第2の一次側電流制限抵抗12の選択的な接続は、切替手段としての第2のリレー15を切り換えることにより行われる。
【0079】
第3の一次側電流制限抵抗13は、タップ17に接続されている。タップ17の変圧比は、タップ16の変圧比と異なり、例えば、1:150である。タップ17にタップ16と同じ入力電圧、即ち24V、の交流が入力された場合、二次側回路5への出力電圧は、3600Vとなる。なお、励磁インピーダンスの誤差が例えば10%ある場合は出力電圧も低下するので、入力電圧の最大値を24V×1.1=26.4Vとしても良い。
【0080】
第3の一次側電流制限抵抗13は、例えば、出力電圧を3600Vとした際に接続される抵抗であり、その抵抗値は、例えば、4.4Ω、二次側換算抵抗値は、0.1MΩである。従って、第3の一次側電流制限抵抗13と二次側電流制限抵抗30の合計抵抗値(二次側換算)は、0.1MΩ+5MΩ=5.1MΩとなる。これにより、出力電圧3600Vで使用する際に絶縁不良等で発生する短絡電流は、3600V/5.1MΩ=0.71mAである。よって、短絡電流は、規定値である1mA以下となり、安全な範囲である。
【0081】
なお、第3の一次側電流制限抵抗13の選択的な接続は、切替手段としての第1のリレー14を切り換えることにより行われる。
【0082】
以上説明の如く、電位治療器1は、一次側電流制限抵抗10の選択的な接続による出力電圧の好適な調整が可能となる。よって、短絡電流を制限しつつ出力電圧を変更することができ、安全で優れた電位治療を行うことができる。
【0083】
また、前述のとおり、第1~3の一次側電流制限抵抗11、12、13は、それぞれが接続された状態において、出力電圧の最高値を印加する際に電源装置2から入力される最高電圧の交流と同じ電圧の交流が入力されても短絡電流を規定値以下に制限できる抵抗値である。
【0084】
即ち、第1~3の一次側電流制限抵抗11、12、13は、何れが選択的に接続されても、出力電圧の最高値、例えば9000V、を印加する際に電源装置2から入力される最高電圧、例えば24V、の交流が入力されても短絡電流を規定値である1mA以下に制限できる。これにより、仮に第1のリレー14、第2のリレー15の接点等が溶着する不具合が発生しても、短絡電流が規定値の1mAを超えることはなく、安全性を確保することができる。
【0085】
図5は、電位治療器1の他の例の概略構成を示す回路図であり、一次側電流制限抵抗10の選択的な接続を変更した例を示している。図5を参照して、一次側回路4に高圧トランス3の変圧比が異なる複数のタップ16、17が設けられる構成において、第1の一次側電流制限抵抗11を接続する第1のリレー35と、第2の一次側電流制限抵抗12を接続する第2のリレー36と、第3の一次側電流制限抵抗13を接続する第3のリレー37と、が並列に設けられても良い。
【0086】
このような構成によっても、第1~3の一次側電流制限抵抗11、12、13は、選択的に切り替えられる。即ち、第1のリレー35の閉動作により第1の一次側電流制限抵抗11が、第2のリレー36の閉動作により第2の一次側電流制限抵抗12が、第3のリレー37の閉動作により第3の一次側電流制限抵抗13が、選択的に接続される。
【0087】
図6は、電位治療器1の更に他の例の概略構成を示す回路図であり、二次側回路5に二次側ダイオード回路32が設けられた例を示している。図6を参照して、二次側回路5には、二次側ダイオード回路32が設けられても良い。
【0088】
二次側ダイオード回路32は、二次側ダイオード33と、二次側ダイオード33に対して並列に接続された二次側ダイオード回路抵抗34と、を有する。このような構成により、正極及び負極の抵抗値を変えて短絡電流を制限することができる。よって、正負極の平均短絡電流を安全な範囲に抑えつつ、正負極何れかの最高出力電圧を高め出力電流を増やして利用者の体感治療効果を高めることができる。
【0089】
詳しくは、電位治療器1では、最高電圧が利用者の体感に影響する。そのため、正負の何れかの電圧が高くなれば、電位治療の効果を向上させることが期待できる。本実施形態の例では、正極時は、大きな抵抗値となり、負極時は、小さな抵抗値となる。
【0090】
例えば、一次側電流制限抵抗10の抵抗値は3.6MΩ、二次側電流制限抵抗30の抵抗値は4MΩ、二次側ダイオード回路抵抗34の抵抗値は3MΩでも良い。その場合、最高出力電圧9000Vを発生する条件における短絡電流は、正極側が0.83mAであるが、負極側は1.15mAとなり1mAを超える。
【0091】
しかし、正極の半波と負極の半波との平均が実短絡電流であるため、実短絡電流は、(0.83+1.15)/2=0.99mAとなり、規定値の1mA以下となる。このように、瞬時値であるが負極の半波の短絡電流を1mAよりも大きくすることが可能である。よって、利用者に印加される出力は、大きな電源パワーとなり、電流及び電圧の最大値に起因する治療効果を増大することができる。
【0092】
このように、電位治療器1は、出力電圧の最高値を印加する状態において、二次側ダイオード33を導通する極側の短絡電流は、規定値よりも大きい、そして、二次側ダイオード33を非導通の極側の短絡電流は、規定値よりも小さい。
【0093】
これにより、正負極の平均短絡電流を規定値以下に制限して安全性を確保しつつ、正負極何れかについては、短絡電流が規定値よりも大きくなる出力電圧及び出力電流として利用者の体感治療効果を高めることができる。
【0094】
更に、出力電圧を下げて利用する際も同様に、二次側ダイオード回路32によって正極及び負極の抵抗値を変えることにより、正負極の電流値を変えることができる。例えば、出力電圧3600Vを発生する条件として、一次側電流制限抵抗10の二次側換算抵抗値が0.1MΩ、二次側電流制限抵抗30の抵抗値が4MΩ、二次側ダイオード回路抵抗34の抵抗値が3MΩでも良い。短絡電流は、正極側が0.5mA、負極側が0.88mAとなる。よって、負極側では大きな短絡電流となって、治療効果に優れた大きな電源パワーを得ることができる。
【0095】
また、上記条件における平均短絡電流は、(0.5+0.88)/2=0.67mAである。これに対して従来技術では、単純電流制限抵抗を10MΩとしたとき、平均短絡電流は、0.36mAである。このように、本実施形態に係る電位治療器1では、従来技術よりも平均短絡電流についても大幅に増大することがでいる。
【0096】
図7は、電位治療器1の更に他の例の概略構成を示す回路図である。図7を参照して、二次側ダイオード回路32が設けられた電位治療器1は、図4に示した電位治療器1のように、高圧トランス3の一次側回路4に変圧比が異なる複数のタップ16、17が設けられても良い。そして、複数の一次側電流制限抵抗10は、それぞれが対応するタップ16、17に接続されている。
【0097】
そして、二次側回路5には、高圧トランス3に並列接続された並列インピーダンス回路としての並列抵抗31が設けられても良い。並列抵抗31は、例えば、二次側電流制限抵抗30と二次側ダイオード回路32との間に接続され、出力電圧が最高値である、例えば9000Vの場合に、インピーダンスが60MΩ以上または開放となる抵抗器等である。
【0098】
このような構成により、一次側回路4に一次側電流制限抵抗10を追加することによる出力電圧の低下を抑え、短絡電流を安全に制限することができる。即ち、高圧トランス3の励磁インピーダンス29(図1(B)参照)、二次側回路5に設けられる電圧安定化のための並列抵抗31その他図示しないインピーダンス等の影響を抑えて、一次側回路4に一次側電流制限抵抗10を設けることが可能となる。
【0099】
詳しくは、並列抵抗31の抵抗値は、従来技術では、せいぜい20MΩ程度であった。しかし、この程度の抵抗値では、一次側電流制限抵抗10を設ける構成において、分圧効果による出力電圧の低下が抑制されるには不十分である。
【0100】
並列抵抗31の抵抗値を、一次側回路4に設けられる一次側電流制限抵抗10の抵抗値、例えば第1の一次側電流制限抵抗11の二次側換算抵抗値25MΩ、第2の一次側電流制限抵抗12の二次側換算抵抗値3.8MΩ等に比べて、十分大きな値にする必要がある。
【0101】
並列抵抗31の抵抗値が小さいと、出力電圧が低下して誤差となるため、この抵抗値は、一次側電流制限抵抗10の抵抗値の数倍は必要である。そこで、本実施形態に係る電位治療器1では、並列抵抗31の抵抗値は、例えば、60~100MΩである。
【0102】
また、並列抵抗31は、通常、高圧トランス3の出力を安定化させるために挿入される抵抗である。高圧トランス3を開放状態、つまり無負荷の状態で使用すると、出力電圧が過大になる場合がある。しかし、ストレイキャパシタ等で、出力が安定している場合は、一次側回路4に一次側電流制限抵抗10を設けて抵抗値を分配するときの誤差の原因になる並列抵抗31は開放されても良い。
【0103】
図8は、電位治療器1の更に他の例の概略構成を示す回路図であり、並列抵抗31の接続位置を変更した例である。図8に示すように、並列インピーダンス回路としての並列抵抗31は、高圧トランス3と二次側ダイオード回路32との間に接続されても良い。即ち、並列抵抗31は、電位治療器1の使用時等、必要な場合には、高圧トランス3を無負荷としないように挿入されるものである。
【0104】
図9は、電位治療器1の更に他の例の概略構成を示す回路図であり、二次側ダイオード回路32の構成を変更した例である。図9を参照して、二次側ダイオード回路32には、並列に接続される正負逆方向となる一対の二次側ダイオード33が設けられても良い。
【0105】
そして、並列に設けられた一対の二次側ダイオード33の一方には、二次側ダイオード回路抵抗34aが直列に接続され、他方の二次側ダイオード33には、二次側ダイオード回路抵抗34bが直列に接続されている。二次側ダイオード回路抵抗34aと二次側ダイオード回路抵抗34bは、抵抗値が異なる。
【0106】
このような構成によっても、正極及び負極の抵抗値を変えて、正負極何れかの最高出力電圧を高め出力電流を増やして体感治療の効果を高めることができると共に、正負極の平均短絡電流を安全な範囲に抑えて短絡電流を制限することができる。
【0107】
図10は、電位治療器1の更に他の例の概略構成を示す回路図であり、一次側回路4に一次側ダイオード回路20が設けられた例を示している。図10に示すように、電位治療器1は、一次側回路4に一次側ダイオード回路20が設けられても良い。
【0108】
一次側ダイオード回路20は、一次側ダイオード21と、一次側ダイオード21に並列に接続された一次側ダイオード回路抵抗22と、を有する。これにより、正極及び負極の抵抗値を変えて短絡電流を制限することができる。よって、正負極の平均短絡電流を安全な範囲に抑えつつ、正負極何れかの最高出力電圧を高め出力電流を増やして体感治療の効果を高めることができる。
【0109】
なお、一次側回路4で正極と負極の抵抗を大きく変えると、励磁電流の正負極のバランスが乱れるため、励磁インピーダンス29(図1(B)参照)の非線形特性が顕著となり、出力波形に影響する。励磁インピーダンス29は、略インダクタンス成分となるため、位相がズレて、正負のどちらの波形にも影響する。このことを考慮して、一次側回路4の抵抗値が設定される。
【0110】
換言すれば、励磁電流のアンバランスに起因する正負極の出力電圧変化、即ち誤差と、一次側ダイオード回路20及び二次側ダイオード回路32による極性抵抗の効果と、を利用して、二次側回路5に発生する電圧波形が制御される。
【0111】
そこで、一次側回路4の正負極で異なる抵抗制御は、正極と負極の抵抗値の比が2を超えないことが望ましい。具体的には、出力電圧の最高値を印加する状態において、一次側ダイオード回路抵抗22の抵抗値は、選択的に接続された一次側電流制限抵抗10の抵抗値よりも小さい。
【0112】
正極の抵抗値は、一次側ダイオード回路抵抗22の抵抗値と一次側電流制限抵抗10の抵抗値との合計値であり、負極の抵抗値は、一次側電流制限抵抗10の抵抗値となる。よって、一次側ダイオード回路抵抗22の抵抗値が一次側電流制限抵抗10の抵抗値よりも小さければ、正極と負極の抵抗値の比は2を超えない。
【0113】
このように、適正な抵抗値の一次側ダイオード回路抵抗22が設けられることにより、励磁電流のバランスが大きく乱れることが抑制され、高圧トランス3の機能を維持することができる。このような適正な抵抗値でないと、励磁電流のバランスが大きく乱れて、磁歪振動や、励磁電流の正負極差による鉄心の飽和が発生し、過大な励磁電流が流れて、高圧トランス3の効果が得られなくなる。
【0114】
図11は、電位治療器1の更に他の例の概略構成を示す回路図であり、一次側ダイオード回路20の極性を変更した例を示している。図11に示すように、一次側回路4に設けられた一次側ダイオード回路20と、二次側回路5に設けられた二次側ダイオード回路32とは、極性が逆であっても良い。
【0115】
即ち、一次側ダイオード回路20の一次側ダイオード21と、二次側ダイオード回路32の二次側ダイオード33とは、逆極性に設けられても良い。このような構成によっても、一次側回路4及び二次側回路5それぞれの回路において、正極及び負極の抵抗値を異なる値として、短絡電流を制限することができる。そして、正負極の平均短絡電流を安全な範囲に抑えつつ、出力電圧及び出力電流の半波を好適に増大させて治療の効果を高めることができる。
【0116】
図12は、電位治療器1の更に他の例の概略構成を示す回路図であり、一次側ダイオード回路20にリレー23が追加された例を示している。図12を参照して、一次側回路4には、一次側ダイオード回路20に対して並列に、リレー23が設けられても良い。
【0117】
リレー23は、図示しない制御装置に接続されており、制御装置によって開閉制御される接点である。これにより、制御装置による一次側ダイオード回路20の切替制御が可能となる。
【0118】
具体的には、リレー23の接点が開放されている状態では、一次側ダイオード回路20を利用した前述の極性抵抗制御、即ち正極と負極の抵抗値を異なる値とした電流制限の制御が行われる。
【0119】
他方、リレー23の接点が接続されると、一次側ダイオード回路20が無効となり、一次側ダイオード回路抵抗22による電流制限がなくなる。つまり、一次側ダイオード回路20による極性抵抗制御が行われず、一次側電流制限抵抗10のみによる通常の電流制限が行われる。
【0120】
このように、一次側ダイオード回路抵抗22による電流制限を切り替えることができるリレー23が設けられることにより、使用状態に応じた好適な出力制御が可能となる。なお、リレー23が設けられる位置は、一次側ダイオード回路抵抗22の接続を制御できる位置であれば良く、種々の変更例が考えられる。
【0121】
図13は、電位治療器1の更に他の例の概略構成を示す回路図であり、一次側ダイオード回路20が設けられた他の例を示している。図13に示すように、一次側回路4に一次側ダイオード回路20が設けられ、二次側回路5には二次側ダイオード回路32(図10参照)が設けられない構成でも良い。
【0122】
このように、二次側ダイオード回路32がなく、一次側ダイオード回路20のみが設けられる構成によっても、励磁電流のバランスが極端に乱れない範囲になるよう正負極抵抗を設定して高性能な電位治療を行うことができる。そして、正負極の平均短絡電流が規定値を超えない安全な電流制限を行うことができる。
【0123】
図14は、電位治療器1の更に他の例の概略構成を示す回路図であり、コンデンサ24が設けられた例を示している。図14を参照して、一次側回路4には、コンデンサ24が設けられても良い。
【0124】
具体的には、コンデンサ24は、励磁電流の極性を好適にバランスさせる回路であり、一次側電流制限抵抗10に対して直列に接続されている。コンデンサ24が設けられることにより、励磁電流の正負極のバランスが最適化される。
【0125】
図15(A)及び(B)は、コンデンサ24に出力波形の変化を示す図であり、図15(A)は、コンデンサ24がない場合、図15(B)は、コンデンサ24がある場合の出力波形を示している。
【0126】
図10及び図15(A)を参照して、一次側ダイオード回路20及び二次側ダイオード回路32が設けられた構成において、コンデンサ24がない回路では、出力電圧は、正極若しくは負極にシフトする。
【0127】
図14及び図15(B)を参照して、一次側回路4にコンデンサ24が設けられた回路では、出力電圧にバイアスが加わり、出力電圧がシフトする。具体的には、出力電圧は、図15(B)に破線で示す波形から実線で示す波形にシフトする。例えば、出力電圧は、正負極平均値が約0Vになるようシフトされても良い。この場合、出力電圧がシフトされても前述の短絡電流の極性効果は維持される。
【0128】
図16は、電位治療器1の更に他の例の概略構成を示す回路図であり、位相シフトインピーダンス回路25が設けられた例を示している。図6に示すように、一次側回路4には、位相シフトインピーダンス回路25が設けられても良い。
【0129】
位相シフトインピーダンス回路25は、励磁電流の位相を調整する回路であり、例えば、高圧トランス3に対して並列に接続される。位相シフトインピーダンス回路25の構成としては、図示を省略するが、例えば、コンデンサのみの回路またはコンデンサと抵抗が直列若しくは並列に接続された回路等である。
【0130】
位相シフトインピーダンス回路25が設けられることにより、励磁電流のみの位相を好適に調整して、正負極の抵抗を変えた極性効果を更に改善することができる。即ち、電位治療器1は、優れた安全性と治療性能を発揮することができる。
【0131】
図17は、電位治療器1の更に他の例の概略構成を示す回路図であり、位相シフトインピーダンス回路25の接続の変形例を示す図である。図17に示すように、高圧トランス3の一次側回路4には、変圧比が異なるタップ26が設けられ、位相シフトインピーダンス回路25は、タップ26に接続されても良い。
このような構成によっても、出力電圧の好適な位相調整が可能であり、故障時の短絡電流を安全に抑制しつつ、優れた治療効果が得られる。
【0132】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。電圧、電流、抵抗値等の数値、選択的に接続されるよう複数設けられる一次側電流制限抵抗10の数、切替手段としての第1のリレー14、第2のリレー15その他の回路構成等は、実施形態の一例を示すものである。その他、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の変更実施が可能である。
【符号の説明】
【0133】
1 電位治療器
2 電源装置
3 高圧トランス
4 一次側回路
5 二次側回路
6 導子
10 一次側電流制限抵抗
11 第1の一次側電流制限抵抗
12 第2の一次側電流制限抵抗
13 第3の一次側電流制限抵抗
14 第1のリレー
15 第2のリレー
16 第1のタップ
17 第2のタップ
20 一次側ダイオード回路
21 一次側ダイオード
22 一次側ダイオード回路抵抗
23 リレー
24 コンデンサ
25 位相シフトインピーダンス回路
26 タップ
29 励磁インピーダンス
30 二次側電流制限抵抗
31 並列抵抗
32 二次側ダイオード回路
33 二次側ダイオード
34、34a、34b 二次側ダイオード回路抵抗
35 第1のリレー
36 第2のリレー
37 第3のリレー
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17