(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024136316
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】地盤改良装置及び地盤改良方法
(51)【国際特許分類】
E02D 3/12 20060101AFI20240927BHJP
【FI】
E02D3/12 102
【審査請求】有
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023047400
(22)【出願日】2023-03-23
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-07-18
(71)【出願人】
【識別番号】391019740
【氏名又は名称】三信建設工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】506343704
【氏名又は名称】株式会社トーメック
(71)【出願人】
【識別番号】597028287
【氏名又は名称】埼玉八栄工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100166039
【弁理士】
【氏名又は名称】富田 款
(72)【発明者】
【氏名】武田 耕造
(72)【発明者】
【氏名】島野 嵐
【テーマコード(参考)】
2D040
【Fターム(参考)】
2D040AA01
2D040AB05
2D040AC04
2D040BB01
2D040EA01
2D040EB02
(57)【要約】
【課題】特殊なベースマシンが不要で、含水比が高い軟弱土を対象にした地盤改良において水質汚濁を抑制でき、改良強度の低下を防いで高品質の地盤改良を可能にする地盤改良装置を提供する。
【解決手段】地盤改良装置1は、網目構造カバー9の内側で改良材と土を混合攪拌する攪拌翼5と、攪拌翼5を回転可能に支持する攪拌翼支持部7と、攪拌翼支持部7に固定された網目構造カバー9を有する。網目構造カバー9は、攪拌翼5の周囲と上を覆うように、かつ、攪拌翼5の一部が下から突き出るように設けられている。このような地盤改良装置を用いて、例えば河川の底泥(ヘドロ)を対象にした地盤改良を行うことで、施工中のヘドロのまきあげを網目構造カバーにより効率的に抑止できる。また、攪拌翼により濁度が悪化した混合領域は網目構造カバー内側の水流が減少することによって外側への逸走は抑制され、その結果、河川水の汚濁が抑制される。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
含水比が高い軟弱土を対象にした地盤改良に用いる装置であって、
改良材と土を混合攪拌するための攪拌翼と、
前記攪拌翼を支持する攪拌翼支持部と、
前記攪拌翼の周囲と上を覆うように設けられた網目構造カバーと、
を有することを特徴とする地盤改良装置。
【請求項2】
前記網目構造カバーは、前記攪拌翼の周囲と上を覆うように、かつ、前記攪拌翼の一部が下から突き出るように、前記攪拌翼支持部に設けられている、
ことを特徴とする請求項1に記載の地盤改良装置。
【請求項3】
前記攪拌翼の周囲と上を覆う前記網目構造カバーは、少なくともその一部が、単一の網目部材または多重構造の網目部材で構成される、ことを特徴とする請求項1に記載の地盤改良装置。
【請求項4】
前記網目構造カバーを多重構造の網目部材で構成する場合において、
前記多重構造の網目部材は、異なる網目寸法を有する、
ことを特徴とする請求項3に記載の地盤改良装置。
【請求項5】
前記網目構造カバーを多重構造の網目部材で構成する場合において、
前記網目構造カバーの平面視で、網目を形成する部材が他の網目を横切るように、前記多重構造の網目部材を構成している、ことを特徴とする請求項3に記載の地盤改良装置。
【請求項6】
前記網目構造カバーの鉛直方向において、網目仕様が変わるように当該網目構造カバーが構成されている、
ことを特徴とする請求項3に記載の地盤改良装置。
【請求項7】
前記改良材とは異なる別材料を地中に注入するための吐出口を、
更に有することを特徴とする請求項1ないし6のいずれかに記載の地盤改良装置。
【請求項8】
水質汚濁の原因物質を吸着または吸引するための汚濁物質吸着/吸引手段を、
更に有することを特徴とする請求項1ないし6のいずれかに記載の地盤改良装置。
【請求項9】
前記網目構造カバーは上下動可能に設けられ、
前記網目構造カバーが上に移動することで、前記攪拌翼が相対的に前記網目構造カバーの下から更に突き出るように構成されている、
ことを特徴とする請求項1ないし6のいずれかに記載の地盤改良装置。
【請求項10】
請求項1に記載の地盤改良装置を用いて、含水比が高い軟弱土を対象に地盤改良する方法であって、
攪拌翼の一部が網目構造カバーの下から突き出た地盤改良装置を地中で昇降させ、
昇降する過程で前記網目構造カバーの内側に進入した土と、前記地盤改良装置から吐出した改良材を、前記網目構造カバーの内側の攪拌翼で混合攪拌し、
前記網目構造カバーの内側の土または改良材と土の混合土が、前記地盤改良装置を昇降させる過程で、前記網目構造カバーの網目によって細分化されるとともに当該網目を通り抜ける、
ことを特徴とする地盤改良方法。
【請求項11】
請求項1に記載の地盤改良装置を用いて、含水比が高い軟弱土を対象に地盤改良する方法であって、
攪拌翼の一部が網目構造カバーの下から突き出た地盤改良装置を地中の所定深度まで貫入させた後、攪拌翼による混合攪拌を開始する、ことを特徴とする地盤改良方法。
【請求項12】
前記地盤改良装置を地中の所定深度まで貫入させた後、定位置攪拌行う、ことを特徴とする請求項11に記載の地盤改良方法。
【請求項13】
請求項9に記載の地盤改良装置を用いて、含水比が高い軟弱土を対象に地盤改良する方法であって、
攪拌翼の一部が網目構造カバーの下から突き出した地盤改良装置を地中に貫入し、その際、前記攪拌翼の周囲と上を覆う網目構造カバーが貫入抵抗を受けて上に向かって移動し、
改良対象の土と、地盤改良装置から吐出した改良材を、前記網目構造カバーの下から相対的に突き出した攪拌翼で混合攪拌する、
ことを特徴とする地盤改良方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、攪拌翼を備えた地盤改良装置(混合処理装置)とこれを用いた地盤改良方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、含水比が高い軟弱土、例えば河川の底泥(ヘドロ)などを対象にした地盤改良が実施されている。地盤改良に用いる従来の地盤改良装置を
図1に示す。
図1(a)に示す従来の地盤改良装置は、改良対象土と固化材を混合攪拌する縦回転式の攪拌翼を有している。
図1(b)に示す従来の地盤改良装置は、改良対象土と固化材を混合攪拌する横回転式の攪拌翼を有している。
【0003】
しかしながら、
図1(a)(b)に示すような従来の地盤改良装置では、その攪拌翼の回転方向(縦回転、横回転)にかかわらず、河川水と直接接している河川底泥を攪拌することによって、混合土が水中に拡散する恐れがあり、河川水の水質(濁度やpHなど)が極端に悪化する恐れがある。
【0004】
また、底泥に固化材を混合攪拌する際に、底泥と河川水の境界部分が乱されて、底泥中に余分な水が混入して改良強度が低下する恐れがある。さらに、固化材が河川水に希釈されてしまい、底泥の固化処理に適した固化材量が確保できなくなり、改良強度が低下する恐れがある。なお、湖沼の底や海底などの水底地盤やヘドロ状の地盤などを対象とした施工においても同様の問題が生じる恐れがある。
【0005】
このような問題を回避するため、河川を二重の鋼矢板で締め切った後に、河川水を排水して、ヘドロのような泥状地盤でも施工が可能な特殊なベースマシンに搭載した処理機で中層混合処理を行う場合がある。しかしながら、地盤改良のために、二重締切の鋼矢板を打設してその中に中詰材の投入した後、河川水の排水を行うなどの時間を要し、工費がかさんでしまう。さらに、このような特殊なベースマシンの供給は極めて限定されており、施工性も非常に悪くなる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述した従来技術の問題点に鑑み、本発明の目的は、上記のような特殊なベースマシンが不要で、含水比が高い軟弱土を対象にした地盤改良において水質汚濁を抑制することができ、また、改良強度の低下を防いで高品質の地盤改良を可能にする、新たな地盤改良装置と地盤改良方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的は、含水比が高い軟弱土を対象にした地盤改良に用いる装置であって、
改良材(地盤改良材)と土を混合攪拌するための攪拌翼と、
前記攪拌翼を支持する攪拌翼支持部と、
前記攪拌翼の周囲と上を覆うように設けられた網目構造カバーと、
を有する地盤改良装置により達成される。
【0008】
上記地盤改良装置において、網目構造カバーは、攪拌翼の周囲と上を覆うように、かつ、攪拌翼の一部が下から突き出るように、攪拌翼支持部に設けられている。
【0009】
また、上記地盤改良装置において、攪拌翼の周囲と上を覆う網目構造カバーは、少なくともその一部を、単一の網目部材(多重ではない単層構造の網目部材)または多重構造の網目部材で構成することができる。
【0010】
また、上記地盤改良装置において、網目構造カバーを多重構造の網目部材で構成する場合には、異なる網目寸法(部位によって網目寸法が異なる構造)を有する多重構造の網目部材を用いることができる。
【0011】
また、上記地盤改良装置において、網目構造カバーを多重構造の網目部材で構成する場合には、網目構造カバーの平面視で、網目を形成する部材が他の網目を横切って見えるように、多重構造の網目部材を構成してもよい。
【0012】
また、上記地盤改良装置において、網目構造カバーの鉛直方向において、網目仕様が異なるように(変化するように)当該網目構造カバーを構成してもよい。
【0013】
また、上記地盤改良装置は、改良材とは異なる別材料を地中に注入するための吐出口を、更に具備してもよい。
【0014】
また、上記地盤改良装置は、水質汚濁の原因物質を吸着または吸引するための汚濁物質吸着/吸引手段を、更に具備してもよい。
【0015】
また、上記地盤改良装置において、網目構造カバーを上下動可能に設けてもよい。この場合には、可動式の網目構造カバーが上に移動することで、攪拌翼が相対的に網目構造カバーの下から更に突き出るように構成する。このような可動タイプの網目構造カバーは、例えば、スライド治具やワイヤーなどを使って網目構造カバーを取り付けることで実現できる。
【0016】
また、前述した目的は、上記地盤改良装置を用いて含水比が高い軟弱土を対象に地盤改良する方法であって、
攪拌翼の一部が網目構造カバーの下から突き出た地盤改良装置を地中で昇降させ、
昇降する過程で前記網目構造カバーの内側に進入した土と、前記地盤改良装置から吐出した改良材を、前記網目構造カバーの内側の攪拌翼で混合攪拌し、
前記網目構造カバーの内側の土または改良材と土の混合土が、前記地盤改良装置を昇降させる過程で、前記網目構造カバーの網目によって細分化されるとともに当該網目を通り抜ける、
ことによって達成される。
【0017】
また、前述した目的は、上記地盤改良装置を用いて含水比が高い軟弱土を対象に地盤改良する方法であって、攪拌翼の一部が網目構造カバーの下から突き出た地盤改良装置を地中の所定深度まで貫入させながら攪拌翼による混合攪拌を行う、ことによって達成される。
【0018】
また、前述した目的は、上記地盤改良装置地盤改良装置を地中の所定深度まで貫入させた後、貫入を停止させて定位置攪拌行う、ことによって達成される。
【0019】
また、前述した目的は、上記地盤改良装置を用いて、含水比が高い軟弱土を対象に地盤改良する方法であって、
攪拌翼の一部が網目構造カバーの下から突き出した地盤改良装置を地中に貫入し、その際、前記攪拌翼の周囲と上を覆う網目構造カバーが貫入抵抗を受けて上に向かって移動し、
改良対象の土と、地盤改良装置から吐出した改良材を、前記網目構造カバーの下から相対的に突き出した攪拌翼で混合攪拌する、
ことによって達成される。
【発明の効果】
【0020】
本発明の地盤改良装置は、攪拌翼の周囲と上を覆うように設けられた網目構造カバーを有している。網目構造カバーは、例えば攪拌翼の上半程度を覆うように設けられる。
このような網目構造カバーを具備する地盤改良装置を用いて、例えば河川の底泥(ヘドロ)を対象にした地盤改良を実施することで、(
図10の上に示す従来技術との比較で)
図10の下に示すように、施工中のヘドロのまきあげを網目構造カバーにより効率的に抑止できる。
また、攪拌翼により濁度が悪化した混合領域は網目構造カバー内側で水流が大きく減じられることによって外側への逸走は抑制される。その結果、河川水の汚濁を抑制することができる。
また、(
図11の上に示す従来技術との比較で)
図11の下に示すように、地盤改良装置から吐出された改良材は、網目構造カバーが在ることでカバー外側への逸走が抑制される。さらに、攪拌翼により流動化した混合攪拌土は、網目構造カバーが在ることでカバー外側に逸走されることなく、限定された範囲で混合攪拌される。その結果、従来のように改良強度の低下を招くことがなく、高い改良品質を確保できる。
また、地盤改良装置の昇降に際しては、攪拌翼を覆うカバーが網目状であるため、
図13、
図14に示すように混合土が当該カバーの網目を容易に通過することができ、原位置の土を連続的に混合攪拌できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】従来の地盤改良装置を示す図であって、
図1(a)は縦回転式の攪拌翼を備えた地盤改良装置を示しており、
図1(b)は横回転式の攪拌翼を備えた地盤改良装置を示している。
【
図2】本発明に係る地盤改良装置の一例を示す図である。
【
図3】
図2の地盤改良装置を拡大して示す側面図と正面図である。
【
図4】
図3の地盤改良装置を示す側面図と正面図であって、網目構造カバーを透視した状態で示している。
【
図5】本発明に係る地盤改良装置の別の例を示す側面図と、網目構造カバーを透視した状態で示す透視図である。
【
図6】網目構造カバーの取り付け態様の具体例を示す側面図である。
【
図7】網目構造カバーの網目構造(鋼製部材などの網目形成部材によって形成される網目間隔や網目構造)のバリエーションを示す平面図である。
【
図8】網目構造カバーの網目仕様の一例を示す図である。
【
図9】本発明に係る地盤改良装置の別の例を示す側面図である。
【
図10】従来の地盤改良装置を用いた施工イメージ(
図10上)と、本発明の地盤改良装置を用いた施工イメージ(
図10下)を対比して示す図であって、主として網目構造カバーが在ることによる効果を示している。
【
図11】従来の地盤改良装置を用いた施工イメージ(
図11上)と、本発明の地盤改良装置を用いた施工イメージ(
図11下)を対比して示す図であって、主として網目構造カバーが在ることによる効果を示している。
【
図12】従来の地盤改良装置を用いた施工イメージ(
図12上)と、本発明の地盤改良装置を用いた施工イメージ(
図12下)を対比して示す図であって、主として網目構造カバーが在ることによる効果を示している。
【
図13】地盤改良装置の昇降時における網目構造カバーの機能作用を示す図である。
【
図14】網目構造カバーの網目による機能作用を示す拡大図である。
【
図15】本発明に係る地盤改良装置を用いた他の施工例を示す図である。
【
図16】本発明に係る地盤改良装置の別の例を示す図である。
【
図17】
図16の地盤改良装置を用いた施工例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明に係る地盤改良装置は、含水比が高い軟弱土を対象にした地盤改良に用いる装置である。改良対象である「含水比が高い軟弱土」の具体例としては、例えば水底(河川や湖沼の底あるいは海底など)に堆積した低密度で含水比の高いヘドロ(底泥)のほか、ヘドロ状の地盤などの軟弱土が挙げられる。以下、添付図面に基づいて、本発明の具体的実施形態について説明する。
【0023】
(地盤改良装置の構成)
はじめに、
図2~
図9に基づいて、地盤改良装置の構成について説明する。
【0024】
本実施形態の地盤改良装置1は、例えば
図2に示すようなベースマシン3に取り付けて用いる。この地盤改良装置1は、
図2、
図3、
図4に示すように、
・地中に注入した改良材と改良対象土を混合攪拌する攪拌翼5と、
・攪拌翼5を回転可能に支持する攪拌翼支持部7(装置本体)と、
・攪拌翼5の周囲と上を覆う、底無し略籠状の網目構造カバー9と、
・地中で改良材を注入するための吐出口11を
有している。
【0025】
なお、
図2に例示する実施形態では、バックホウタイプのベースマシン3に地盤改良装置1に取り付けているが、ベースマシンのタイプは特に限定されるものではなく、地盤改良装置1を例えば
図1(b)に示すような地盤改良専用機などの施工機に取り付けることもできる。
【0026】
攪拌翼5は、網目構造カバー9の内側に位置し、装置本体をなす攪拌翼支持部7に回転可能に設けられている。本実施形態の地盤改良装置1は、攪拌翼の一例として、縦回転式の攪拌翼5を具備している。
【0027】
吐出口11から地中に注入する改良材(地盤改良材)の具体例としては、例えばセメント系固化材をスラリー状にしたものなどが挙げられる。
【0028】
網目構造カバー9は、
図3に示すように、攪拌翼5の四方を囲む鉛直壁をなす網目状の側部13と、天端部分である網目状の頂部15を具備しており、底が開口した(底が無い)角柱状部材で構成されている。この網目構造カバー9は、攪拌翼5の周囲と上を覆うように、かつ、
図3に示すように攪拌翼5の一部が網目構造カバーの下の開口部から突き出るように、攪拌翼支持部7に設けられている。
【0029】
また、網目構造カバー9は、当該カバーを支持するカバー支持部17を有している。本実施形態では、網目構造カバー9のカバー支持部17は、装置本体である攪拌翼支持部7に対し溶接により固定されている。なお、
図16に基づいて後述するとおり、網目構造カバー9のカバー支持部17を攪拌翼支持部7に対しスライド治具を介して取り付けて、網目構造カバー9をスライド自在にすることも可能である。
【0030】
本実施形態では一例として、網目構造カバー9が攪拌翼5の上半程度を覆い、かつ、網目構造カバー9の下の開口部から攪拌翼5が部分的に突き出るように、網目構造カバー9が攪拌翼支持部7に固定されている。
図3に示すように、網目構造カバー9の下の開口部から攪拌翼5が部分的に突き出す構成を採用することで、支持地盤への攪拌翼5の到達が容易になる。
【0031】
網目構造カバー9を構成する網目部材は、例えば、枠と、当該枠の内側で多数の網目を形成するように設けられたワイヤーなどからなる鋼製部材(以下「網目形成部材」という)で構成される。このような網目部材で網目構造カバーを構成することで、有孔鉄板による密閉式あるいはパンチングメタル式の構造よりも計量化できる。
【0032】
ワイヤーなどの網目形成部材によって形成される網目形状は、
図7(A)に例示するような四角形の網目(升目構造の網目部材)でもよく、または、
図7(a)に例示するような六角形の網目(ハニカム構造の網目部材)でもよい。なお、網目形状は
図7に例示するような多角形に限定されず、曲線等を含むその他の形状の網目を採用することもできる。また、網目仕様(網目寸法、網目形状、網目の数、網目形成部材の幅など)は、特に限定されるものではなく、改良対象土、固化処理諸元、汚濁防止の要求レベルなどに応じて調整できる。なお、網目寸法とは、網目の開口寸法である。網目形状とは、網目の開口形状である。
【0033】
また、網目構造カバー9は、その一部または全部が、単一の網目部材(単層の網目部材)、または多重の網目構造(複数枚の網目部材を重ね合わせたもの)で構成される。すなわち、網目構造カバーを、
図7(A)(a)に例示するような単一の網目部材(単層の網目部材)で構成してもよく、あるいは、
図7(B)(b)に例示するような二重構造、
図7(C)(c)に例示するような三重構造などの多重の網目構造の網目部材で構成することもできる。
【0034】
多重の網目構造を採用する場合には、例えば複数枚の網目部材で網目構造カバー9を構成する。この場合、複数枚の網目部材の間隔は特に限定されるものではなく、改良対象土、固化処理諸元、汚濁防止の要求レベルなどに応じて、網目部材の間隔を調整できる。
【0035】
また、前述した多重の網目構造を採用する場合には、網目構造カバーの全部をそのような多重構造で構成してもよく、あるいは、網目構造カバーの一部をそのような多重構造で構成してもよい。例えば、網目構造カバー9の側部13の一部分だけを多重構造で構成してもよく、また、網目構造カバー9の頂部15の一部分だけを多重構造で構成してもよい。
【0036】
また、網目構造カバー9を単一の網目部材(単層の網目部材)で構成する場合には、網目部材の部位によって網目仕様(網目寸法、網目形状、網目の数、網目形成部材の幅など)を変えてもよい。
【0037】
また、網目構造カバー9を多重の網目構造(複数枚の網目部材を重ね合わせたもの)で構成する場合には、当該複数枚の網目部材は、
図7(B)(b)に例示するように、それぞれ同じ網目寸法を有していてもよく、あるいは、
図7(C)(c)に例示するように、異なる網目寸法を有してもよい。
【0038】
また、網目構造カバー9を多重の網目構造(複数枚の網目部材を重ね合わせたもの)で構成する場合、
図7(B)(b)(C)(c)に例示するように、網目構造カバーの平面視で、いずれか一の網目部材の網目形成部材が、隣接する他の網目部材の網目を横切って見えるように、複数枚の網目部材を重ねている。
図7(B)に例示する実施形態では、同じ網目寸法を有する2枚の網目部材を網目位置をずらして重ねており、これにより、四角形の網目を4分割している。また、
図7(b)に例示する実施形態では、同じ網目寸法を有する2枚の網目部材を網目位置をずらして重ねており、これにより、六角形の網目を3分割している。
図7(C)に例示する実施形態では、網目寸法が異なる3枚の網目部材(網目寸法大が2枚、小が1枚)を重ねており、これにより、網目寸法大の四角形の網目を16分割している。
図7(c)に例示する実施形態では、網目寸法が異なる3枚の網目部材(網目寸法大が2枚、小が1枚)を重ねており、これにより、網目寸法大の六角形の網目を12分割している。
このように、同じ又は異なる網目寸法の網目部材を複数枚組み合わせて多重構造とすることで、網目を細分化することができるので、網目構造カバーの網目寸法を自在に調整することが可能になる。
【0039】
また、網目構造カバー9の鉛直壁である側部13の網目仕様(網目寸法、網目形状、網目の数、網目形成部材の幅など)は、上下方向において必ずしも一様である必要はなく、必要に応じてその網目仕様を上下方向で変えることが可能である。
すなわち、
図8(a)に示すように、網目構造カバー9の内側で発生するせん断流れの速度(攪拌翼5の回転によって生じるせん断流れの流速)は、攪拌翼5に近いほど速い流れになる(
図8においてv
1>v
2>v
3)。そこで、例えば
図8(b)に示すように、網目構造カバー9の鉛直壁である側部13について、攪拌翼5に近いほど小さな網目寸法(x
1<x
2<x
3)とし、かつ、攪拌翼13から離れるほど大きな網目寸法となるように、網目を構成することもできる。すなわち、網目構造カバー9の側部13の鉛直方向において網目寸法を変化させてもよく、例えば、側部13の上方の網目寸法を大きくし、下方の網目寸法を小さく設定してもよい。
また、
図8(b)に示すように、網目構造カバー9の鉛直壁である側部13について、攪拌翼5に近い位置では多重化させる網目部材の枚数を増やし、かつ、攪拌翼から離れた位置では多重化させる網目部材の枚数を減らす(又は単一構造とする)こともできる。すなわち、網目構造カバー9の側部13について、その鉛直方向において厚み方向の構成(網目部材の枚数や多重化させる場合の網目部材の間隔)を変化させてもよく、例えば、側部の上方の網目部材の枚数を少なくし、下方の網目部材の枚数を多く設定してもよい。
図8に示す実施形態によれば、網目構造カバー9の内側で発生するせん断流れの速度(攪拌翼の回転によって生じるせん断流れの流速)は、攪拌翼5に近いほど速い流れになる(v
1>v
2>v
3)が、網目構造の違いによって攪拌翼5に近いほどせん断流れに対する抵抗fが大きくなるので、攪拌で生じる高速の流れを効率的に抑止することができる。すなわち、
図8(b)に例示するような単一~多重構造を持つ段違い網目構造の抵抗により、網目部分では速度が実質ゼロとなるため、カバー外側への拡散が抑制される。その結果、回転する攪拌翼5によってかく乱された「流れ」をカバー内部に限定させることができる。
【0040】
なお、
図8に示す例では、網目構造カバー9の鉛直壁である側部13の一部を三重の網目構造(3数枚の網目部材を重ね合わせたもの)で構成し、三重の網目部材の間隔をd
1、d
2に設定しているが、多重構造を採用する場合の網目部材の枚数や、網目部材の間隔(d
1、d
2)は特に限定されるものではなく、改良対象土や固化処理諸元などに応じて最適な条件に設定することができる。
【0041】
また、網目構造カバー9の頂部を長く伸ばすことによって、より汚濁の低下を図ることもできる。
【0042】
また、網目構造カバー9には、別材料(改良材とは別の第2材料)を地中に注入するための第2の吐出口を設けてもよい。これにより、網目構造カバー9から別材料を吐出することができる。
【0043】
上記のような第2の吐出口は、例えば、当該別材料が流通可能なホースや配管などを網目構造カバーに沿って取り付けることで実現できる。具体的には、例えば
図9に例示するように、別材料用の吐出孔が設けられた吐出部材21を、網目構造カバー9に沿って配置するとともに、この吐出部材21を配管23に接続する。吐出部材21は、配管を兼ねており、網目構造カバー9の内側に向かって別材料を吐出する吐出孔を一つまたは複数有している。そして、配管23や吐出部材21を介して別材料をポンプで圧送することで、任意のタイミングで当該別材料を地中で注入することができる。
【0044】
網目構造カバーから吐出する別材料の具体例としては、例えば下記のいずれか1種または2種以上が挙げられる。
凝集剤:無機系凝集剤、高分子凝集剤等
中和剤:炭酸ガス、硫酸バンド、希硫酸等(酸性の場合は苛性ソーダや消石灰)
混和材:分散剤、減水剤、硬化促進剤、硬化遅延剤等
【0045】
また、網目構造カバー9の網目内部にとどまっている懸濁水に、上述した配管や吐出部材などを介して凝集剤等を投入することによってさらに汚濁を防止してもよい。
【0046】
また、上記のような第2の吐出口を設ける場合には、その吐出タイミングを予め定めた条件に従って制御してもよい。例えば、別材料の吐出のON/OFF制御(ホースや管を介して別材料を圧送するポンプのON/OFF制御)を、地盤改良装置の貫入速度や攪拌翼の回転速度に連動させてもよい。また、別材料の吐出タイミングを、地盤改良装置の位置(深度)に応じて制御してもよい。
【0047】
また、地盤改良装置には、濁水の元となる汚濁物質(施工時の撹拌等が招く汚濁の原因物質である土の粒子など)を吸着または吸引する汚濁物質吸着/吸引手段を設けてもよい。汚濁物質吸着/吸引手段の具体例としては、汚濁物質を吸着するフィルター材(例えば多孔質材や組網繊維、不織布など)や、汚濁物質を吸引するポンプやホース等が挙げられる。汚濁物質をポンプやホース等で吸引した場合には、さらに地上で濁水処理してもよい。汚濁物質吸着/吸引手段としてフィルター材を設ける場合には、例えば、当該フィルター材を網目構造カバーの一部(カバー外側または内側)に設けることができ、また、このようなフィルター材の複数個所に設けることもできる。また、汚濁物質吸着/吸引手段として、汚濁物質を吸引するポンプやホース等を設ける場合には、当該ホースの先端(吸引口)が網目構造カバーの内側に位置するように設けてもよい。
【0048】
また、上述した実施形態では、地盤改良装置は、一例として縦回転式の攪拌翼を具備しているが、攪拌翼の種類はこれに限定されない。例えば、
図5に示すように、横回転式の攪拌翼を具備してもよい。この場合、地盤改良装置1は、改良対象土と改良材を混合攪拌する横回転式の攪拌翼6と、攪拌翼6と一体回転する攪拌翼支持部8(ロッド)と、攪拌翼6の周囲と上を覆う略籠形状の網目構造カバー9と、地中で改良材を注入するための吐出口を有している。
【0049】
また、
図5に例示する実施形態では、カバー支持部17を介して網目構造カバー9を攪拌翼支持部8(ロッド)に固定しているが、網目構造カバー9を固定する部位は特に限定されるものではなく、
図6(a)に示すようにベースマシン3に固定してもよい。また、網目構造カバー9は必ずしも
図6(a)に示すように固定する必要はなく、例えば
図6(b)に示すように網目構造カバー9をワイヤー31を介して上下動可能に取り付けてもよい。また、
図6(b)では、ワイヤー31を介して網目構造カバー9を吊り下げているが、ロッドなどの棒状部材を介して網目構造カバー9を取り付けてもよい。
【0050】
(地盤改良方法)
次に、上記構成の地盤改良装置を用いた地盤改良方法について説明する。
本実施形態の地盤改良方法は、例えば水底(河川や湖沼の底あるいは海底など)に堆積した低密度で含水比の高いヘドロ(底泥)や、ヘドロ状の地盤などの含水比が高い軟弱土を対象に実施する。地盤改良装置を用いた地盤改良方法の様子を(従来技術と対比して)
図10、
図11に示す。
【0051】
施工にあたっては、攪拌翼5の一部が網目構造カバー9の下から突き出した地盤改良装置1を用いる。具体的には、攪拌翼5を回転させつつ、地盤改良装置1を地中で鉛直方向で前進または後退させる(すなわち
図10の下に示すような貫入または引上げを行う)とともに、その過程で
図11に示すように改良材を注入する。なお、
図5に例示した横回転式の攪拌翼6を具備する地盤改良装置1を用いた場合も、同様であり、
図12の下に示すような貫入または引上げを行うとともに、その過程で改良材を注入する。
【0052】
地盤改良装置1を地中に貫入する過程では、網目構造カバー9の下の開口部を介して、土が網目構造カバー9の内側に進入し、さらに、頂部15の網目を介して網目構造カバー9の外側に通り抜ける。土が下から上に向かって網目構造カバー9内を通り抜ける過程では、網目構造カバー9内に下の開口部から進入した土と、地盤改良装置1の吐出口から注入した改良材を、カバー9内の攪拌翼5が混合攪拌する。また、
図13に示すように、網目構造カバー9内の土または改良材と土の混合土は、地盤改良装置1を貫入する過程で、網目構造カバー9の頂部15(天端部分)の網目によって細分化されて当該網目を通過する。
【0053】
また、網目構造カバー9の頂部15の網目を通過する過程では、
図14に例示するような、網目形成部材による分岐(網目を通過する土の細分化)が連続的に行われ、その結果、土や混合土が細分化される。したがって、地盤改良装置1の昇降の際に、処理対象土が網目構造カバー9の網目を通過することで二次元的に攪拌される。なお、網目構造カバー9の網目構造の多重化や網目間隔の最適化により、複数回、多次元的な攪拌を行うことが可能である。
【0054】
一方、地盤改良装置1を引き上げる過程では、貫入時とは逆に、網目構造カバー9の頂部15の網目を介して、土が網目構造カバー9の内側に進入し、さらに、下の開口部を介して網目構造カバー9の外側に通り抜ける。土が上から下に向かって網目構造カバー内を通り抜ける過程では、網目構造カバー9内に頂部15から進入した土と、地盤改良装置1の吐出口から吐出した改良材を、カバー9内の攪拌翼5が混合攪拌する。網目構造カバー9の頂部15の網目を土が通り抜ける過程では、網目形成部材による分岐(網目を通過する土の細分化)が連続的に行われ、その結果、土や混合土が二次元的に攪拌される。
【0055】
上述した地盤改良装置1を用いた施工方法によれば、網目構造カバー9が、攪拌による比較的高速の流れを大きく抑止し、昇降による混合攪拌に支障を与えない。これによって、攪拌翼5による土砂まきあげや水質汚濁を低減させつつ、地盤改良装置1の上下の運動を阻害させない。
【0056】
また、上述したように昇降しながら施工する場合、網目構造カバー9の頂部15(網目構造の天端部分)の網目を介して土が移動できるため、連続的な改良ができる。また、土や混合土が網目を通り抜ける際に二次元的な攪拌が期待できる。
【0057】
また、網目構造カバー9の内部に攪拌翼5があるため、比較的限定された範囲内での攪拌が達成でき、その結果として改良土は開放系(網目構造カバーの無い従来技術)より均質化される。また、網目構造カバー9内の拘束効果や、網目構造カバーの頂部の網目を改良土が通過することにより、一層改良効果が向上する。
【0058】
なお、改良対象土や固化処理諸元によって攪拌土の性状が異なるが、改良対象土や施工仕様などに応じて、網目の数や網目の間隔(平面間隔や厚み方向間隔)を調整することは可能である。
【0059】
(その他の実施形態)
上述した実施形態は本発明に係る地盤改良方法の一例であって、当該方法を実施する際に工程は上述したものに限定されない。
【0060】
すなわち、網目構造カバー9により、汚濁抑制や改良品質の向上が期待できるため、通常では底泥の天端に攪拌装置深度基準点をセットして施工開始する手順を、攪拌装置深度基準点を底泥内部に押し込んで施工開始しても良い。例えば
図15に示すように、地盤改良装置を地盤の所定深度まで貫入させた後、改良材の注入と攪拌翼による混合攪拌を開始してもよい。
【0061】
また、地盤改良装置1を地盤の所定深度まで貫入させた後、貫入を停止させて定位置攪拌行うことも可能である。
【0062】
また、前述した実施形態では、網目構造カバー9のカバー支持部17は、装置本体である攪拌翼支持部7に対し溶接により固定されている。そのため、地盤改良装置1の貫入時には、
図10の下に示すように、攪拌翼5と網目構造カバー9が一体となって、地中で昇降する。
しかしながら、網目構造カバー7は必ずしも固定する必要はなく、
図16に示すように上下動可能に取り付けることも可能である。
図16に示す実施形態では、網目構造カバー9のカバー支持部17を攪拌翼支持部7に対しスライド治具19(例えばガイドレール)を介して取り付けて、網目構造カバー9をスライド治具19に沿ってスライド自在に(すなわち上下動自在に)構成している。
【0063】
上述したスライド式の網目構造カバー9を具備する地盤改良装置で施工する様子を
図17に示す。同図に示すように、地盤改良装置1を地中に貫入する過程では、(処理対象土の天端によって押されることによって)網目構造カバー9が上にスライドすることで、当該カバー9の下端が地表面に接地した状態を維持する。一方、攪拌翼5は、網目構造カバー9が上に向かってスライドすることで、相対的に網目構造カバー9の下から更に突き出るようになっている。
【0064】
なお、
図16、
図17に例示する実施形態は一例であり、網目構造カバー9のスライド長さは特に限定されるものではない。
また、網目構造カバー9を上下動可能に取り付ける場合には、必ずしも、スライド治具19を使う必要はなく、例えば
図6(b)に示すようにワイヤー31を使って網目構造カバー9を吊り下げてもよい。
【0065】
また、地盤改良装置に水質監視センサーや音響カメラなどの監視装置を取り付けて、A.I.(人工知能手段)による判定機能を付加させて、最適施工仕様を維持する機能を持たせてもよい。このような機能は、例えば、水質監視センサーや音響カメラなどの監視装置と、これらの監視装置から得られたデータに基づいて所定の判定を実行するA.I.と、当該A.I.の判定結果に基づいて所定の制御を実行する制御手段(コンピュータ)等によって実現される。
【0066】
また図示する実施形態では、本発明の用途の一例として中層混合処理を例示したが、本発明の適用対象は図示するような中層混合処理に限定されるものではなく、含水比が高い軟弱土を対象にしたあらゆる地盤改良に利用することができる。
【0067】
(網目構造カバーによる優れた効果)
上述した網目構造カバーを具備する本発明の地盤改良装置および地盤改良方法によれば、次の優れた効果が達成される。
【0068】
本発明に係る地盤改良装置1は、攪拌翼5の周囲と上を覆うように、かつ、攪拌翼5の一部が下から突き出るように設けられた、底が無い略籠状の網目構造カバー9を有している。このような網目構造カバー9を地盤改良装置1に設けることで、回転する攪拌翼5によってかく乱される部分を当該カバー9内部に限定させることができる。
【0069】
また、網目構造カバー9の内側で発生しているせん断流れの速度がカバー9内に限定され、網目構造の抵抗により速度が実質ゼロとなるため、外側への拡散が抑制される。
【0070】
また、網目構造カバー9によって限定された範囲内(網目構造カバー9の内側)での攪拌なので、より均質な改良が期待できる。すなわち、(
図11の上に示す従来技術との比較で)
図11の下に示すように、地盤改良装置から吐出された改良材は、網目構造カバー9が在ることでカバー外側に逸走されることがない。さらに、(
図10の上に示す従来技術との比較で)
図10の下に示すように、攪拌翼5により流動化した混合攪拌土は、網目構造カバー9が在ることでカバー外側に逸走されることなく、限定された範囲で混合攪拌される。その結果、従来のように改良強度の低下を招くことがなく、高い品質を確保できる。
【0071】
また、
図10に示すように昇降しながら施工する場合、
図13に例示するように網目構造カバー9の頂部15(天端部分)の網目を介して土が移動できる。したがって、攪拌翼5を覆うように網目構造カバー9を設けても、当該カバーが地盤改良装置の処理土で昇降動作を邪魔することがなく、連続的な改良ができる。
【0072】
また、処理対象土の流動性や粘性などに応じて網材幅や昇降速度などを変えることで、網目構造カバー9を構成する網目部材背面の乱流による攪拌も期待できる。
【符号の説明】
【0073】
1 地盤改良装置
3 ベースマシン
5 攪拌翼(縦回転式)
6 攪拌翼(横回転式)
7 攪拌翼支持部(装置本体)
8 攪拌翼支持部(ロッド)
9 底が無い略籠形状の網目構造カバー
11 吐出口
13 側部(網目構造カバーの鉛直壁)
15 頂部(網目構造カバーの天端部分)
17 カバー支持部
19 スライド治具
21 吐出部材
23 配管
31 ワイヤー
【手続補正書】
【提出日】2023-06-07
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
含水比が高い軟弱土を対象にした地盤改良に用いられ、地中で昇降させる地盤改良装置であって、
攪拌翼の周囲と上を覆うように設けられた網目構造カバーと、
地盤改良装置を地中で昇降させる過程で前記網目構造カバーの内側に進入した土と、地盤改良装置から吐出した改良材を、前記網目構造カバーの内側で混合攪拌するための攪拌翼と、
前記攪拌翼を支持する攪拌翼支持部と、を有しており、
前記網目構造カバーの内側の土または改良材と土の混合土が、地盤改良装置を地中で昇降させる過程で、前記網目構造カバーの網目によって細分化されるとともに当該網目を通り抜ける、ことを特徴とする地盤改良装置。
【請求項2】
前記網目構造カバーは、前記攪拌翼の周囲と上を覆うように、かつ、前記攪拌翼の一部が下から突き出るように、前記攪拌翼支持部に設けられている、
ことを特徴とする請求項1に記載の地盤改良装置。
【請求項3】
前記攪拌翼の周囲と上を覆う前記網目構造カバーは、少なくともその一部が、単一の網目部材または多重構造の網目部材で構成される、ことを特徴とする請求項1に記載の地盤改良装置。
【請求項4】
前記網目構造カバーを多重構造の網目部材で構成する場合において、
前記多重構造の網目部材は、異なる網目寸法を有する、
ことを特徴とする請求項3に記載の地盤改良装置。
【請求項5】
前記網目構造カバーを多重構造の網目部材で構成する場合において、
前記網目構造カバーの平面視で、網目を形成する部材が他の網目を横切るように、前記多重構造の網目部材を構成している、ことを特徴とする請求項3に記載の地盤改良装置。
【請求項6】
前記網目構造カバーの鉛直方向において、網目仕様が変わるように当該網目構造カバーが構成されている、
ことを特徴とする請求項3に記載の地盤改良装置。
【請求項7】
前記改良材とは異なる別材料を地中に注入するための吐出口を、
更に有することを特徴とする請求項1ないし6のいずれかに記載の地盤改良装置。
【請求項8】
水質汚濁の原因物質を吸着または吸引するための汚濁物質吸着/吸引手段を、
更に有することを特徴とする請求項1ないし6のいずれかに記載の地盤改良装置。
【請求項9】
前記網目構造カバーは上下動可能に設けられ、
前記網目構造カバーが上に移動することで、前記攪拌翼が相対的に前記網目構造カバーの下から更に突き出るように構成されている、
ことを特徴とする請求項1ないし6のいずれかに記載の地盤改良装置。
【請求項10】
請求項1に記載の地盤改良装置を用いて、含水比が高い軟弱土を対象に地盤改良する方法であって、
攪拌翼の一部が網目構造カバーの下から突き出た地盤改良装置を地中で昇降させ、
昇降する過程で前記網目構造カバーの内側に進入した土と、前記地盤改良装置から吐出した改良材を、前記網目構造カバーの内側の攪拌翼で混合攪拌し、
前記網目構造カバーの内側の土または改良材と土の混合土が、前記地盤改良装置を昇降させる過程で、前記網目構造カバーの網目によって細分化されるとともに当該網目を通り抜ける、
ことを特徴とする地盤改良方法。
【請求項11】
請求項1に記載の地盤改良装置を用いて、含水比が高い軟弱土を対象に地盤改良する方法であって、
攪拌翼の一部が網目構造カバーの下から突き出た地盤改良装置を地中の所定深度まで貫入させた後、攪拌翼による混合攪拌を開始する、ことを特徴とする地盤改良方法。
【請求項12】
前記地盤改良装置を地中の所定深度まで貫入させた後、定位置攪拌行う、ことを特徴とする請求項11に記載の地盤改良方法。
【請求項13】
請求項9に記載の地盤改良装置を用いて、含水比が高い軟弱土を対象に地盤改良する方法であって、
攪拌翼の一部が網目構造カバーの下から突き出した地盤改良装置を地中に貫入し、その際、前記攪拌翼の周囲と上を覆う網目構造カバーが貫入抵抗を受けて上に向かって移動し、
改良対象の土と、地盤改良装置から吐出した改良材を、前記網目構造カバーの下から相対的に突き出した攪拌翼で混合攪拌する、
ことを特徴とする地盤改良方法。