(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024136331
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】画像投影装置
(51)【国際特許分類】
G02B 27/01 20060101AFI20240927BHJP
B60K 35/23 20240101ALI20240927BHJP
B60R 11/02 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
G02B27/01
B60K35/00 A
B60R11/02 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023047417
(22)【出願日】2023-03-23
(71)【出願人】
【識別番号】000001133
【氏名又は名称】株式会社小糸製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001667
【氏名又は名称】弁理士法人プロウィン
(72)【発明者】
【氏名】堀 匡紘
(72)【発明者】
【氏名】村上 一臣
(72)【発明者】
【氏名】森本 憂士
(72)【発明者】
【氏名】藤吉 貴智
(72)【発明者】
【氏名】原 秀樹
【テーマコード(参考)】
2H199
3D020
3D344
【Fターム(参考)】
2H199DA03
2H199DA15
2H199DA29
2H199DA30
2H199DA33
2H199DA44
2H199DA46
3D020BA04
3D020BC02
3D344AA03
3D344AB01
3D344AC25
(57)【要約】
【課題】空間を有効に活用して小型化を図ることが可能な画像投影装置を提供する。
【解決手段】表示部(WS)に対して投影画像を投影する画像投影装置であって、表示部(WS)に対して画像光を照射する画像照射部(11)と、画像照射部から照射された画像光を反射する第1ミラー(12)と、第1ミラー(12)で反射された画像光を反射する第2ミラー(13)を備え、対向する第1ミラー(12)と第2ミラー(13)の両端同士を結んだ領域をミラー間領域とし、画像照射部(11)は、ミラー間領域の幅方向における一方に偏って配置されており、少なくとも一部がミラー間領域内に位置していることを特徴とする画像投影装置(10)。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表示部に対して投影画像を投影する画像投影装置であって、
前記表示部に対して画像光を照射する画像照射部と、
前記画像照射部から照射された前記画像光を反射する第1ミラーと、
前記第1ミラーで反射された前記画像光を反射する第2ミラーを備え、
対向する前記第1ミラーと前記第2ミラーの両端同士を結んだ領域をミラー間領域とし、
前記画像照射部は、前記ミラー間領域の幅方向における一方に偏って配置されており、少なくとも一部が前記ミラー間領域内に位置していることを特徴とする画像投影装置。
【請求項2】
請求項1に記載の画像投影装置であって、
前記第1ミラーは、前記ミラー間領域において前記画像光を幅方向に中間結像させ、高さ方向に中間結像させず、前記第2ミラーに到達させることを特徴とする画像投影装置。
【請求項3】
請求項1に記載の画像投影装置であって、
前記第1ミラーの反射面は、幅方向において、前記画像照射部に近い側の曲率半径をRnとし、前記画像照射部から遠い側の曲率半径をRfとしたとき、Rn<Rfの関係を満たすことを特徴とする画像投影装置。
【請求項4】
請求項3に記載の画像投影装置であって、
前記第1ミラーの反射面は、上側の横方向の曲率半径をRuとし、下側の横方向の曲率半径をRbとしたときに、Ru>Rbの関係を満たすことを特徴とする画像投影装置。
【請求項5】
請求項1に記載の画像投影装置であって、
前記第1ミラーの反射面は、前記画像照射部に近い側の高さをHnとし、前記画像照射部から遠い側の高さをHfとしたとき、Hn<Hfの関係を満たすことを特徴とする画像投影装置。
【請求項6】
請求項1に記載の画像投影装置であって、
前記第1ミラーの反射面における最大の高さをH1maxとし、
前記第2ミラーの反射面における最大の高さをH2maxとしたとき、
0.5≦H1max/H2max≦1.5の範囲であることを特徴とする画像投影装置。
【請求項7】
請求項1から6の何れか一つに記載の画像投影装置であって、
前記第2ミラーは、高さ方向への前記画像光の反射方向を可変とされていることを特徴とする画像投影装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像投影装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、車両内に各種情報を表示する装置として、アイコンを点灯表示する計器盤が用いられている。また、表示する情報量の増加とともに、計器盤に画像表示装置を埋め込むことや、計器盤全体を画像表示装置で構成することも提案されている。
【0003】
しかし、計器盤は車両のフロントガラス(ウィンドシールド)より下方に位置しているため、計器盤に表示された情報を運転者等の搭乗者が視認するには、運転中に視線を下方に移動させる必要があり好ましくない。そこで、フロントガラスに画像を投影して、搭乗者が車両の前方を視認したときに情報を読み取れるようにするヘッドアップディスプレイ(以下HUD:Head Up Display)のような画像投影装置が提案されている(例えば、特許文献1,2を参照)。
【0004】
従来の画像投影装置は、画像照射部が画像を含んだ照射光を照射し、自由曲面ミラー等で照射光を反射させて、ウィンドシールド等の表示部を介して空間中に画像が結像するように搭乗者の視点の位置に到達させる。これにより、搭乗者は視点に入射した照射光によって、奥行き方向における結像位置に画像が表示されているように認識することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2019-119248号公報
【特許文献2】特開2019-119262号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このような画像投影装置は、車両のウィンドシールド下方において、ダッシュボード内に収容されることが多い。また、運転者の視点位置に対して虚像を投影するため、運転席の前方に配置されることが通常である。しかし、運転席とウィンドシールドの間には、ステアリングや計器類が配置されており、画像投影装置を収容するための空間を確保することが困難であった。
【0007】
そこで本発明は、上記従来の問題点に鑑みなされたものであり、空間を有効に活用して小型化を図ることが可能な画像投影装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明の画像投影装置は、表示部に対して投影画像を投影する画像投影装置であって、前記表示部に対して画像光を照射する画像照射部と、前記画像照射部から照射された前記画像光を反射する第1ミラーと、前記第1ミラーで反射された前記画像光を反射する第2ミラーを備え、対向する前記第1ミラーと前記第2ミラーの両端同士を結んだ領域をミラー間領域とし、前記画像照射部は、前記ミラー間領域の幅方向における一方に偏って配置されており、少なくとも一部が前記ミラー間領域内に位置していることを特徴とする。
【0009】
このような本発明の画像投影装置では、画像照射部の少なくとも一部が、対向する第1ミラーと第2ミラーの両端同士を結んだミラー間領域内に位置しているため、空間を有効に活用して小型化を図ることが可能となる。
【0010】
また、本発明の一態様では、前記第1ミラーは、前記ミラー間領域において前記画像光を幅方向に中間結像させ、高さ方向に中間結像させず、前記第2ミラーに到達させる。
【0011】
また、本発明の一態様では、前記第1ミラーの反射面は、幅方向において、前記画像照射部に近い側の曲率半径をRnとし、前記画像照射部から遠い側の曲率半径をRfとしたとき、Rn>Rfの関係を満たす。
【0012】
また、本発明の一態様では、前記第1ミラーの反射面は、上側の横方向の曲率半径をRuとし、下側の横方向の曲率半径をRbとしたときに、Ru>Rbの関係を満たす。
【0013】
また、本発明の一態様では、前記第1ミラーの反射面は、前記画像照射部に近い側の高さをHnとし、前記画像照射部から遠い側の高さをHfとしたとき、Hn<Hfの関係を満たす。
【0014】
また、本発明の一態様では、前記第1ミラーの反射面における最大の高さをH1maxとし、前記第2ミラーの反射面における最大の高さをH2maxとしたとき、0.5≦H1max/H2max≦1.5の範囲である。
【0015】
また、本発明の一態様では、前記第2ミラーは、高さ方向への前記画像光の反射方向を可変とされている。
【発明の効果】
【0016】
本発明では、空間を有効に活用して小型化を図ることが可能な画像投影装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】第1実施形態に係る画像投影装置10について説明する図であり、
図1(a)は画像投影装置10を用いた虚像の投影を示す模式図であり、
図1(b)は画像投影装置10の概要を示す模式平面図である。
【
図2】第1実施形態に係る画像投影装置10の構造例を示す図であり、
図2(a)は模式上面図であり、
図2(b)は模式斜視図である。
【
図3】第1実施形態に係る画像投影装置10の内部構造例を示す図であり、
図3(a)は上部カバー110を外した状態を示す模式斜視図であり、
図3(b)は上部カバー110を外した状態を示す模式上面図であり、
図3(c)は下部筐体100の一部を破断して示す模式斜視図である。
【
図4】画像投影装置10の内部における各部材の配置を示す図であり、
図4(a)は第1ミラー12の背面側からの側面視図であり、
図4(b)は第1ミラー12の斜め上からの斜視図である。
【
図5】画像照射部11から照射された画像光の通過領域を示す図であり、
図5(a)は模式上面図であり、
図5(b)は第1ミラー12背面側からの側面視図である。
【
図6】上部カバー110を組み合わせた状態における画像光の通過領域と画像光通過部113の関係を示す模式斜視図である。
【
図7】第2実施形態に係る画像投影装置10における、第1ミラー12での反射面と第2ミラー13での反射面における高さについて説明する模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
(第1実施形態)
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、処理には、同一の符号を付すものとし、適宜重複した説明は省略する。
図1は、本実施形態に係る画像投影装置10について説明する図であり、
図1(a)は画像投影装置10を用いた虚像の投影を示す模式図であり、
図1(b)は画像投影装置10の概要を示す模式平面図である。
図1(a)および
図1(b)中に示した実線は、画像光の光路を示している。
図1(b)に示した一点鎖線は、光が通過する領域を示している。
【0019】
図1(a)において、紙面に対して垂直方向はX軸方向であり車両の左右方向に対応し、紙面の左右方向はY軸方向であり車両の前後方向に対応し、紙面の上下方向はZ軸方向であり車両の上下方向に対応している。また、
図1(b)において、紙面に対して垂直方向はZ軸方向であり車両の上下方向に対応し、紙面の左右方向はY軸方向であり車両の前後方向に対応し、紙面の上下方向はX軸方向であり車両の左右方向に対応している。
【0020】
図1(a)に示すように、画像投影装置10は車両1搭載され、画像投影装置10から投影された画像光は、ウィンドシールド(表示部)WSで反射されて運転者の視点位置に照射される。運転者は、画像光が入射してきた光路の延長上に結像された虚像Pを視認する。
【0021】
また、
図1(b)に示すように画像投影装置10は、画像照射部11と、第1ミラー12と、第2ミラー13を備えている。画像投影装置10では、各部と情報通信可能に接続された制御部を用いて、各部を制御している。制御部の構成は限定されないが、一例として情報処理を行うためのCPU(Central Processing Unit)や、メモリ装置、記録媒体、情報通信装置等を備えるものが挙げられる。制御部は、予め定められたプログラムに従って各部の動作を制御し、画像を含んだ情報(画像情報)を画像照射部11に送出する。
【0022】
画像照射部11は、制御部からの画像情報に基づいて、画像を含んだ光を画像光として第1ミラー12に対して照射する部分である。画像照射部11の構成は限定されず、バックライト、画像表示部の組み合わせを備えるとしてもよい。バックライトは、画像表示部に対して照射光を照射する部分であり、例えば発光ダイオード(LED:Light Emitting Diode)により光を照射するものを用いることができる。画像表示部は、制御部からの画像信号に応じて投影画像を表示する部分である。画像表示部に表示された投影画像に対して、バックライトからの照射光が照射されることで、画像表示部から画像光が照射される。画像表示部の具体的構成は限定されず、例えば液晶表示装置等を用いることができる。
【0023】
第1ミラー12は、画像照射部11から到達した画像光を第2ミラー13方向に反射する光学部材である。
図1(b)に示した例では第1ミラー12の凹面形状として、凹面の曲率が一定ではない自由曲面ミラー等を用いている。
【0024】
第2ミラー13は、第1ミラー12から到達した画像光をウィンドシールドWS方向に反射する光学部材である。第2ミラー13は、表示部であるウィンドシールドWSに対して画像光を投影するため、本発明における出射ミラーに相当している。
図1に示した例では、第2ミラー13として画像光を虚像Pとして投影するために必要な光学設計された凹面形状の自由曲面ミラーを示している。後述するように、第2ミラー13は所定の回転軸を中心として回動可能にされており、高さ方向への画像光の反射方向を可変とされている。したがって、第2ミラー13は、ウィンドシールドWSに対する画像光の入射角度と入射位置を調整可能とされている。
【0025】
第1ミラー12および第2ミラー13の反射面は、ウィンドシールドWSを介して画像光を虚像Pとして投影するために、運転者の視点方向に光径が拡大するように設計されている。したがって、第1ミラー12および第2ミラー13の組み合わせは、本発明における投影光学部に相当している。ここで、視点方向に光径が拡大するとは、反射後に光径が一貫して拡大する場合だけでなく、光径が縮小して中間地点において結像した後に拡大する場合も含む。
【0026】
ウィンドシールドWSは、車両の運転席前方に設けられて可視光を透過する部分である。ウィンドシールドWSは、車両の内側面では画像投影装置10から入射した画像光を視点方向に対して反射し、車両の外部からの光を視点方向に対して透過するため、本発明における表示部に相当している。
図1(a)に示したように、ウィンドシールドWSは自由曲面で構成されているため、高さ方向において曲率が変化し一定ではない。ここでは表示部としてウィンドシールドWSを用いた例を示したが、ウィンドシールドWSとは別に表示部としてコンバイナーを用意し、画像投影装置10からの光を視点方向に反射するとしてもよい。また、車両の前方に位置するものに限定されず、搭乗者の視点に対して画像を投影するものであれば側方や後方に配置するとしてもよい。
【0027】
虚像Pは、ウィンドシールドWSで反射された画像光が搭乗者の視点位置(アイボックス)に到達した際に、空間中に結像されたように表示される画像である。虚像Pが結像される位置は、画像投影装置10に含まれる投影光学部とウィンドシールドWSの合成焦点距離によって決まる。
【0028】
また
図1(a)(b)では、画像光の中心位置における光路を一本の直線として実線で描いている。しかし、実際の画像光は、画像照射部11において所定の面積で表示されたものであり、進行方向に垂直な方向に所定の面積をもっている。
図1(b)に一点鎖線で示したように、面積を持った画像光の通過する領域は、第1ミラー12で反射されて横幅方向(X軸方向)の光径が縮小されながら進行し、第1ミラー12と第2ミラー13の間において中間結像され、第2ミラー13まで到達する。それに対して、高さ方向(Z軸方向)においては、第1ミラー12で反射された画像光は、中間結像せずに第2ミラー13まで到達する。
【0029】
図1(b)において破線で示した領域は、対向する第1ミラー12と第2ミラー13の上下の両端同士を結んだミラー間領域である。本実施形態の画像投影装置10では、画像照射部11は、少なくとも一部がミラー間領域の幅方向における一方に偏って配置されており、ミラー間領域内に位置している。ここで、
図1(b)に一点鎖線で示した領域が、画像光の通過する光通過領域であり、幅方向において中間結像させているため、画像照射部11がミラー間領域に位置しても、画像照射部11によって画像光が遮られることはない。
【0030】
また、画像照射部11がミラー間領域に配置されているため、画像光の中心位置における光路は、
図1(b)に実線で示したように、画像照射部11から第1ミラー12までと、第1ミラー12から第2ミラー13までとが鋭角とされている。
【0031】
図2は、本実施形態に係る画像投影装置10の構造例を示す図であり、
図2(a)は模式上面図であり、
図2(b)は模式斜視図である。
図2(a)(b)に示すように、画像投影装置10は、下部筐体100と、上部カバー110と、アクチュエータ120とを備えている。
【0032】
下部筐体100は、画像投影装置10の外形を構成する筐体の下方部分を成す部材である。下部筐体100は底面と側壁を有しており、底面と側面で構成された空間内に、画像投影装置10に含まれる各部が収用される。また、下部筐体100の側壁には複数の取り付け部が設けられており、車両側の取り付け位置に締結部材等を用いて画像投影装置10を固定することが可能となっている。また、下部筐体100の外側にはアクチュエータ120が取り付けられている。
【0033】
上部カバー110は、画像投影装置10の外形を構成する筐体の上方部分を成す部材である。上部カバー110は天面と周縁部を有しており、周縁部の外形は下部筐体100の側壁と対応した形状となっている。下部筐体100と上部カバー110は組み合わされて画像投影装置10の外形を構成しており、内部に
図1に示した画像照射部11、第1ミラー12、第2ミラー13と後述する各部を収容している。
図2では、上部カバー110の天面の形状として、内部に収容した各部の形状が反映された凹凸形状の例を示しているが、平坦な天面や曲面の天面等を用いるとしてもよい。また上部カバー110には、開口部111と、遮光壁112と、画像光通過部113が設けられている。
【0034】
開口部111は、上部カバー110の天面に設けられた開口である。
図2(a)に示したように、開口部111からは第2ミラー13の反射面と、遮光壁112を視認可能である。したがって、第2ミラー13で反射された画像光は、開口部111を介して画像投影装置10の外部に照射される。開口部111は、画像光を照射するための部分であるため、透光性のカバー部材で開口部111を覆うとしてもよい。
【0035】
遮光壁112は、上部カバー110の開口部111から下部筐体100方向に設けられた光を遮るための壁である。
図2(a)では、第1ミラー12に近い開口部111の一辺から、中央に向けて傾斜した遮光壁112を設けた例を示している。遮光壁112の一部は切り欠かれて画像光通過部113が設けられている。
【0036】
画像光通過部113は、遮光壁112の一部に設けられた切り欠きであり、画像光が通過できる領域である。画像光通過部113の具体的な形状は限定されないが、立体的に考慮した画像光の通過する空間を遮光壁112から取り除いたものである。本実施形態では、第1ミラー12によって画像光が幅方向で中間結像され、高さ方向では中間結像されないため、画像光通過部113は画像光の中間結像位置に配置され、歪んだ台形形状である例を示している。
【0037】
アクチュエータ120は、第2ミラー13を回転駆動するための動力を供給する部分である。また、アクチュエータ120は下部筐体100に取り付けられるとともに、可動部が下部筐体100に設けられた貫通孔を介して下部筐体100内にまで挿入されている。アクチュエータ120の具体的な構成は限定されないが、電動モータとラックギヤ等を用いて、外部から共有された電力と制御信号に基づいて、可動部を往復運動させる構成等を用いることができる。
【0038】
図3は、本実施形態に係る画像投影装置10の内部構造例を示す図であり、
図3(a)は上部カバー110を外した状態を示す模式斜視図であり、
図3(b)は上部カバー110を外した状態を示す模式上面図であり、
図3(c)は下部筐体100の一部を破断して示す模式斜視図である。
図3に示したように、下部筐体100内には、画像照射部11と、第1ミラー12と、第2ミラー13の他に、回動アーム14と、制御基板15が収用されている。また、下部筐体100の底面上には、遮光部材101が配置されている。
【0039】
回動アーム14は、第2ミラー13の一方の端部に接続されて、回転軸を中心に第2ミラー13を回動するための部材である。また、回動アーム14の一端には、アクチュエータ120の可動部が連結されている。また、回動アーム14の他端は回転軸を中心に回動可能に軸支されている。これにより、アクチュエータ120が制御信号に応じて可動部を上下方向に移動させると、可動部の先端が回動アーム14の先端を上下移動させ、回動アーム14および第2ミラー13が回転軸を中心に回動する。
【0040】
制御基板15は、配線パターンが形成されるとともに、電子部品や端子が搭載され、画像照射部11およびアクチュエータ120の駆動を制御する部分である。制御基板15の具体的な構成は限定されないが、ガラスエポキシで構成された平板状の基板表面に配線がパターニングされたプリント配線基板等を用いることができる。
図3では図示を省略しているが、制御基板15には端子部が搭載されており、端子部には配線ケーブルが接続されて、画像投影装置10の外部との間で電力および制御信号の伝達が可能となっている。また、画像照射部11およびアクチュエータ120と制御基板15との間も、配線ケーブル等が接続されて、電力と制御信号の伝達が可能となっている。
【0041】
遮光部材101は、光を遮る材料で構成されて、下部筐体100の底面に沿って設けられる略板状の部材である。遮光部材101は、一方の辺が延伸されて遮光傾斜面部102と、遮光低面部103が形成され、遮光部材101の一部は立設されてミラー前遮光部104と、遮光壁部105が形成されている。また、第1ミラー12は遮光部材101上に配置され、第2ミラー13は、遮光低面部103上に配置されている。ここでは遮光部材101として下部筐体100の底面に沿った形状を示したが、底面と遮光部材101の間に所定の空間を設けることができれば、形状は限定されない。
【0042】
遮光傾斜面部102は、光を遮る材料で構成されて遮光部材101と一体に形成され、第1ミラー12側から第2ミラー13側に向かって下方に傾斜した部分である。また、遮光傾斜面部102の第2ミラー13側での端部には、遮光低面部103が延伸して形成されている。
図3では、遮光傾斜面部102を曲面形状とした例を示しているが、具体的な形状は限定されない。
【0043】
遮光低面部103は、光を遮る材料で構成されて遮光傾斜面部102から延伸して形成され、第2ミラー13の下方まで設けられた部分である。遮光低面部103は遮光傾斜面部102の最も低い位置から延伸されているため、遮光部材101の第1ミラー12を搭載する面との間で段差をもって配置される。
図3では、遮光低面部103を平面形状とした例を示しているが、具体的な形状は限定されない。遮光部材101に遮光傾斜面部102が設けられ、遮光傾斜面部102から延伸して遮光低面部103が形成されていることで、遮光低面部103を第1ミラー12よりも低い位置に設けて、第2ミラー13が回動する空間を確保することができる。
【0044】
ミラー前遮光部104は、光を遮る材料で構成されて遮光部材101上に立設された部分である。
図3に示した例では、ミラー前遮光部104は第1ミラー12の下部において画像照射部11との間に設けられており、画像光が第1ミラー12に入射する領域を限定している。また、ミラー前遮光部104の形状を第1ミラー12の下部に沿った形状として、第1ミラー12の位置決めおよび保持をサポートするとしてもよい。
【0045】
遮光壁部105は、光を遮る材料で構成されて遮光部材101上に立設された部分である。遮光壁部105は、第1ミラー12や第2ミラー13に、意図しない光である迷光が入射することを防止する。
図3に示した例では、遮光壁部105の上部には水平方向に延伸された部分が設けられている。また
図3に示した例では、遮光壁部105は第1ミラー12と第2ミラー13の間の画像照射部11とは反対側において、概ねミラー間領域に沿って設けられている。遮光壁部105は迷光を防止するため、外部から光が侵入しやすい位置に設けられることが好ましく、一例としてはアクチュエータ120の可動部が挿入されている位置の周辺が挙げられる。ここでは遮光壁部105を遮光部材101から立設した例を示したが、上部カバー110から下方に延伸させるとしてもよい。
【0046】
図4は、画像投影装置10の内部における各部材の配置を示す図であり、
図4(a)は第1ミラー12の背面側からの側面視図であり、
図4(b)は第1ミラー12の斜め上からの斜視図である。アクチュエータ120は可動部121を備えており、その先端が回動アーム14の先端に連結されている。
【0047】
図4(a)に示すように、画像照射部11と第1ミラー12と第2ミラー13と制御基板15は、
図1におけるXY平面(水平方向)に配列されている。また、ミラー間領域は、対向する第1ミラー12と第2ミラー13の四隅同士を結んだ立体的な空間を構成している。
図4に示した例では、画像照射部11は、立体的なミラー間領域の幅方向(横方向)において右方向に偏って配置されており、少なくとも一部がミラー間領域内に位置している。ここでは画像照射部11が右方向に偏って配置された例を示したが、各部の配置を左右反転させるとしてもよい。
【0048】
図4(a)(b)に示したように、第1ミラー12は自由曲面ミラーであり、反射面の位置によって曲率が異なり、各位置における幅方向の曲率と高さ方向の曲率も異なっている。また、第1ミラー12の高さは一定ではなく、画像照射部11に近い側が低く、画像照射部11から遠い側が高くなっている。第2ミラー13も自由曲面ミラーであり、反射面の位置によって曲率が異なっている。第2ミラー13は、ウィンドシールドWSに対して画像光を反射するため、画像光の歪みを小さくするために、高さを略一定とすることが好ましい。
【0049】
図5は、画像照射部11から照射された画像光の通過領域を示す図であり、
図5(a)は模式上面図であり、
図5(b)は第1ミラー12背面側からの側面視図である。図中において二点鎖線で示された領域が、画像光の通過領域を示している。画像照射部11から照射された画像光は、第1ミラー12の反射面で反射されて第2ミラー13の反射面に到達する。画像光は第2ミラー13で反射されてウィンドシールドWS方向に照射されるが、
図5においては簡便のために図示を省略している。画像照射部11からの画像光は、高さ方向および横方向に光径が拡大して第1ミラー12に照射される。
【0050】
画像照射部11の画像表示部から照射された画像光は矩形状であり、第1ミラー12に対して斜めに照射される。したがって、第1ミラー12の反射面における画像光の照射領域は、
図5(b)に示すように略台形状となっている。第1ミラー12の反射面における画像光の照射領域において、四隅をそれぞれA点、B点、C点、D点とする。
図5(b)に示した例では、第1ミラー12の反射面においてA点は左上に位置し、B点は左下に位置し、C点は右下に位置し、D点は右上に位置している。
図5(b)に示したように、第1ミラー12の反射面は、画像照射部に近い側の高さ(C点とD点の距離)をHnとし、画像照射部から遠い側の高さ(A点とB点の距離)をHfとしたとき、Hn<Hfの関係を満たしている。
【0051】
第1ミラー12で反射された画像光は、横方向に関しては中間結像位置で中間結像され、高さ方向に関しては中間結像されずに第2ミラー13に到達する。したがって、第2ミラー13の反射面での画像光の照射領域は
図5(a)に示すように画像光における左右方向が入れ替わる。したがって、第1ミラー12の反射面においてA点は右上に位置し、B点は右下に位置し、C点は左下に位置し、D点は左上に位置している。
【0052】
図5(a)に示したように、画像光の通過領域は、中間結像位置において横方向断面積(光径)が最も小さくなっており、第2ミラー13に向かって光径が拡大する。したがって、画像照射部11の一部がミラー間領域に位置しても、画像光の通過領域と画像照射部11が重ならず、画像光が画像照射部11によって遮られることがない。これにより、画像投影装置10内の空間を有効に活用して、画像投影装置の小型化を図ることが可能となる。
【0053】
また、画像照射部11の一部をミラー間領域に位置させることで、画像照射部11から第1ミラー12までの画像光の光路と、第1ミラー12から第2ミラー13までの画像光の光路を鋭角に反射させることができる。これにより、第1ミラー12の反射面における画像光の照射領域の歪みを小さくし、光学設計を容易にすることができる。
【0054】
本実施形態では、画像照射部11を横方向の一方に偏らせて配置するとともに、第1ミラー12で画像光を横方向で中間結像させているため、画像光の横方向での入射角と反射角が各位置で異なる。また、第1ミラー12の反射面は、幅方向において、画像照射部11に近い側の曲率半径をRnとし、画像照射部11から遠い側の曲率半径をRfとしたとき、Rn<Rfの関係を満たしている。より具体的には、A点の横方向での曲率半径よりもD点の横方向での曲率半径が小さく、B点の横方向での曲率半径よりもC点の横方向での曲率半径が小さい。これにより、第1ミラー12での横方向における画像光の入射角度と反射角度の違いを適切に補正して、第2ミラー13に照射される画像光の歪みを小さくすることができる。また、画像照射部11から遠い側での曲率半径を大きくすることで、画像光の結像倍率を揃えることができる。
【0055】
また、本実施形態の画像投影装置10では、画像照射部11から照射された画像光が高さ方向にも拡大しながら第1ミラー12に対して照射される。また、画像照射部11から照射された画像光は、中心位置が第1ミラー12に対して仰角で照射されているため、画像光の横方向での入射角と反射角が各位置で異なる。また、第1ミラー12の反射面は、上側の横方向の曲率半径をRuとし、下側の横方向の曲率半径をRbとしたときに、Ru>Rbの関係を満たしている。より具体的には、A点の曲率半径よりもB点の曲率半径が小さく、D点の曲率半径よりもC点の曲率半径が小さい。これにより、第1ミラー12での高さ方向における画像光の入射角度と反射角度の違いを適切に補正して、第2ミラー13に照射される画像光の歪みを小さくすることができる。
【0056】
図6は、上部カバー110を組み合わせた状態における画像光の通過領域と画像光通過部113の関係を示す模式斜視図である。
図6に示したように、上部カバー110の開口部111内には、第1ミラー12と第2ミラー13の間に遮光壁112が設けられている。また、遮光壁112は下方に傾斜して設けられており、画像光は画像光通過部113内を通過して第2ミラー13に到達する。また、遮光壁112は画像光の横方向での中間結像位置の両側に位置しており、中間結像位置は画像光通過部113近傍に位置している。
【0057】
第1ミラー12が画像光を横方向で中間結像させているため、中間結像位置における画像光の断面積を小さくすることができ、画像光通過部113の面積を小さくすることができる。これにより、遮光壁112で遮光可能な面積を大きくして、画像照射部11まで到達する外光を低減することができる。また、遮光壁112を上部カバー110と一体に形成しているため、遮光壁112と画像光通過部113の位置合わせが容易になる。
【0058】
上述したように、本実施形態の画像投影装置10では、画像照射部11の少なくとも一部が、対向する第1ミラー12と第2ミラー13の両端同士を結んだミラー間領域内に位置しているため、空間を有効に活用して小型化を図ることが可能となる。
【0059】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について
図7を用いて説明する。第1実施形態と重複する内容は説明を省略する。
図7は、本実施形態に係る画像投影装置10における、第1ミラー12での反射面と第2ミラー13での反射面における高さについて説明する模式図である。図中に二点鎖線で示した領域が、第1ミラー12において画像光が照射される照射領域を示している。
図5(a)に示した第1実施形態では、第1ミラー12での画像光の照射領域が台形形状の場合であり、画像照射部11から遠い側での高さが近い側よりも大きかった。換言すると、第1ミラー12の反射面における最大の高さH1maxは、画像照射部11から遠い側での高さであった。
【0060】
図7に示したように、本実施形態では、第1ミラー12の曲面形状と画像光の入射角度によって、照射領域は上下の辺が曲がった形状である。
図7では簡便のために第1ミラー12の反射面(画像光の照射領域)について外形を直線で描いているが、照射領域の外形は曲線であってもよい。
図7に示したように、第1ミラー12の反射面における最大の高さをH1maxとする。また、第2ミラー13の反射面における最大の高さをH2maxとする。
【0061】
H1maxとH2maxの比率は、0.5≦H1max/H2max≦1.5の範囲であることが好ましい。H1maxとH2maxの比率をこの範囲とすることで、第1ミラー12での高さ方向における光学的パワーを小さくすることができる。これにより、第2ミラー13に対して画像光を照射するための光学設計が容易になり、高さ方向における画像光の歪みを抑制することができる。H1max/H2maxの比率がこの範囲から外れると、第1ミラー12または第2ミラー13の高さが大きくなり、画像投影装置10の小型化が困難になる。
【0062】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0063】
10…画像投影装置
11…画像照射部
12…第1ミラー
13…第2ミラー
14…回動アーム
15…制御基板
100…下部筐体
101…遮光部材
102…遮光傾斜面部
103…遮光低面部
104…ミラー前遮光部
105…遮光壁部
110…上部カバー
111…開口部
112…遮光壁
113…画像光通過部
120…アクチュエータ
121…可動部