(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024136341
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】真空遮断器の操作機構
(51)【国際特許分類】
H01H 33/666 20060101AFI20240927BHJP
H02B 13/035 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
H01H33/666 L
H02B13/035 331
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023047433
(22)【出願日】2023-03-24
(71)【出願人】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004185
【氏名又は名称】インフォート弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100121083
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 宏義
(74)【代理人】
【識別番号】100138391
【弁理士】
【氏名又は名称】天田 昌行
(74)【代理人】
【識別番号】100132067
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 喜雅
(74)【代理人】
【識別番号】100120444
【弁理士】
【氏名又は名称】北川 雅章
(72)【発明者】
【氏名】土井 達也
【テーマコード(参考)】
5G017
5G026
【Fターム(参考)】
5G017AA24
5G017BB01
5G017EE06
5G017HH02
5G017HH04
5G026LA02
5G026LB01
5G026LB07
(57)【要約】
【課題】可動接点と固定接点との間の距離を精度良く調整できるようにすること。
【解決手段】真空遮断器(1)の操作機構(20)は、遮断ばね(22)の弾性力をリンク機構(21)を介して伝達し、固定接点(14)及び可動接点(12)を開極する。操作機構は、絶縁性ガスが充填される内部空間を形成する隔壁(2a)を貫通しつつリンク機構と可動接点とを接続するロッド部材(24)と、隔壁の外側であってロッド部材の延出方向中間部に設けられる接圧調整部(25)と、リンク機構の開極動作を規制した状態で、可動接点を変位させる接点間距離調整部(52)とを備えている。接点間距離調整部は、ロッド部材における隔壁と接圧調整部との間に力を加えて可動接点を変位させる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
遮断ばねの弾性力がリンク機構を介して伝達することで可動接点及び固定接点を開極する真空遮断器の操作機構であって、
絶縁性ガスが充填される内部空間を形成する隔壁を貫通しつつ前記リンク機構と前記可動接点とを接続するロッド部材と、
前記隔壁の外側であって前記ロッド部材の延出方向中間部に設けられる接圧調整部と、
前記リンク機構の開極動作を規制した状態で、前記可動接点を変位させる接点間距離調整部とを備え、
前記接点間距離調整部は、前記ロッド部材における前記隔壁と前記接圧調整部との間に力を加えて前記可動接点を変位させることを特徴とする真空遮断器の操作機構。
【請求項2】
前記接点間距離調整部は、前記隔壁に装着されることを特徴とする請求項1に記載の真空遮断器の操作機構。
【請求項3】
前記接点間距離調整部は、前記隔壁に装着される雄ねじ部と、前記雄ねじ部に螺合する雌ねじ部とを備え
前記雌ねじ部は、回転操作されることで中心軸方向に移動して前記可動接点を変位させることを特徴とする請求項1に記載の真空遮断器の操作機構。
【請求項4】
前記隔壁には、前記ロッド部材を貫通しつつ該ロッド部材との間の気密を維持するガスシールが装着され、
前記雄ねじ部は、前記ガスシールに一体に設けられていることを特徴とする請求項3に記載の真空遮断器の操作機構。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、開閉接点を有する真空遮断器の操作機構に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に開示される真空遮断器は、戻しばねの蓄勢力によりシャフト及びシャフトに固着されるレバーを回動し、絶縁ロッドを押し下げて可動接点が固定接点から離反する。レバーの一端には絶縁ロッドが連結され、他端にはピンが取り付けられる。各接点の消耗量を測定するため、ナットに螺着される調整ボルトが用いられる。調整ボルトを回してピンを下降させると、レバーが回動して絶縁ロッドが上昇し、接点が開極状態から閉極状態に移行する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の構成では、レバーを含む回動機構を介して絶縁ロッドを押し下げて可動接点を固定接点から離反するので、かかる回動機構の加工公差や組み立て公差によって、該離反での可動接点の変位に誤差が発生し易くなる。このため、調整ボルトの操作で各接点の距離を調整するときに、可動接点の位置決め精度が低くなり、各接点間の距離を精度良く調整することが困難になる、という問題がある。
【0005】
本発明は、このような実情に鑑みてなされたものであり、可動接点と固定接点との間の距離を精度良く調整することができる真空遮断器の操作機構を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明における一態様の真空遮断器の操作機構は、遮断ばねの弾性力がリンク機構を介して伝達することで可動接点及び固定接点を開極する真空遮断器の操作機構であって、絶縁性ガスが充填される内部空間を形成する隔壁を貫通しつつ前記リンク機構と前記可動接点とを接続するロッド部材と、前記隔壁の外側であって前記ロッド部材の延出方向中間部に設けられる接圧調整部と、前記リンク機構の開極動作を規制した状態で、前記可動接点を変位させる接点間距離調整部とを備え、前記接点間距離調整部は、前記ロッド部材における前記隔壁と前記接圧調整部との間に力を加えて前記可動接点を変位させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、接点間距離調整部によりロッド部材における可動接点に近い位置に力を加えて各接点間の距離を調整することができる。これにより、接点間距離調整部と可動接点との間にて加工公差や組み立て公差が生じる構成を少なくすることができる。この結果、接点間距離調整部による可動接点の変位の誤差を抑制して可動接点の位置決め精度を高め、各接点間の距離を精度良く調整することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施の形態に係る操作機構が適用された真空遮断器の部分概略斜視図である。
【
図4】接点間距離調整前に閉極した状態の
図2と同様の断面図である。
【
図5】接点間距離調整中の状態の
図2と同様の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態に係る操作機構が適用された真空遮断器について、添付の図面を参照しながら詳細に説明する。なお、本発明は、下記の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲内で適宜変形して実施することができるものである。以下の図においては、説明の便宜上、一部の構成を省略することがある。
【0010】
本発明は、例えば、キュービクル形ガス絶縁開閉装置(C-GIS:Cubicle-Type Gas Insulated Switchgear、以下では単に「開閉装置」という)を構成する真空遮断器に適用される。しかしながら、本発明が適用される開閉装置については、これに限定されるものではなく適宜変更が可能である。
【0011】
図1は、実施の形態に係る操作機構が適用された真空遮断器の部分概略斜視図である。
図1に示すように、真空遮断器1は、密閉した内部空間を形成し、SF6ガス等の絶縁性ガスが充填される金属製の筐体2を備えている。ここで、本明細書及び特許請求の範囲において、「上」、「下」、「前」、「後」、「左」、「右」は各図において矢印で示した方向を基準として用いる。
【0012】
図1では、筐体2の一部として上下方向に沿って設けられる隔壁2aを図示しており、隔壁2aの後方を絶縁性ガスが充填される内側の空間として形成し、前方を大気が存在する外側としている。また、筐体2は、隔壁2aの前面から前方に延出し、左右方向に直交する方向に向けられた一対の仕切壁2b(一方は図示省略)を備えている。図示省略した仕切壁は、図示した仕切壁2bの左側に所定間隔を隔てて仕切壁2bと同様に設けられる。
【0013】
図2は、
図1の縦断面図である。
図2に示すように、真空遮断器1は、筐体2の内側に設けられた三相の主回路部10を備えている。三相の主回路部10は、概ね同一構造とされて
図2の紙面直交方向(左右方向)に並んで設けられ、
図2及び後述する
図4及び
図5では、三相の主回路部10のうちの1つを簡略化して図示している。
【0014】
主回路部10は、セラミック等によって形成される絶縁筒からなる真空容器(図示省略)と、真空容器の内部で接離可能に設けられた可動接点12及び固定接点14を備えている。可動接点12及び固定接点14によって開閉接点が構成される。
【0015】
主回路部10では、可動接点12及び固定接点14が接触状態(閉極状態、
図4参照)で通電(閉路)し、
図2に示す離間状態(開極状態)で通電を遮断(開路)するものである。なお、
図2では、可動接点12及び固定接点14の距離が最も大きくなる最大開極時の状態を示している。可動接点12は、前後方向に延出する可動側ロッド15に支持される。
【0016】
図1及び
図2に示すように、真空遮断器1は、固定接点14に対し可動接点12を接離する方向(前後方向)に駆動する操作機構20を更に備えている。操作機構20は、リンク機構21と、中心軸が概ね前後方向に延出して配置される遮断ばね22(ばね部材)と、筐体2の隔壁2aを貫通するロッド部材24と、ロッド部材24の延出方向中間部に設けられる接圧調整部25とを備えている。
【0017】
遮断ばね22は、後端(一端)が第1ホルダ27によって保持され、前端(他端)が第2ホルダ28によって保持される。第1ホルダ27は、ブラケット29を介して隔壁2aに支持される。遮断ばね22は、引張コイルばねにより構成され、
図1に示す状態から前後方向の長さを伸長することで、第2ホルダ28を後方に移動する方向の弾性力を蓄勢する(
図4参照)。
【0018】
ロッド部材24は、三相に応じて3本設けられ、リンク機構21の後述する第1レバー41(
図2では不図示)と、可動接点12を支持する可動側ロッド15とを接続する。ロッド部材24は、隔壁2aより後方の主回路部10にて可動側ロッド15と同軸上で連結される。ロッド部材24は、可動側ロッド15に連結されて隔壁2aを貫通する絶縁ロッド31と、絶縁ロッド31の前端に設けられて面取りした角柱状をなす連結部材32と、接圧調整部25の前端から前方に延出する軸部材33とを備えている。連結部材32は、絶縁ロッド31の前端側と接圧調整部25とを連結しており、接圧調整部25と隔壁2aとの間に配置される。
【0019】
接圧調整部25は、隔壁2aの外側となる前方の空間に設けられる。接圧調整部25は、圧縮コイルばねからなる接圧ばね35と、接圧ばね35の内側に配置されて前後方向に延出するガイド部36と、接圧ばね35の前後両側にて接圧ばね35の弾性力を受ける受け板37、38とを備えている。
【0020】
接圧ばね35は、固定接点14から可動接点12が離れた開極した状態で自然長より所定長さ圧縮され、この状態から閉極した状態で更に圧縮されて可動接点12と固定接点14と間の接圧を付与可能に設けられる。
【0021】
ガイド部36は、図示省略したが、前後方向に延出する長孔と該長孔に挿入されるピンとを備えた構成を例示でき、接圧ばね35の前後方向の伸縮や、各受け板37、38の前後方向の相対変位をガイドする。
【0022】
リンク機構21は、開閉軸40と、第1レバー41と、第2レバー42と、第3レバー43とを備えている。開閉軸40は、左右方向に延出しており、両端が軸受(不図示)を介して回転可能に支持される。
【0023】
第1レバー41は、3本のロッド部材24における軸部材33の前端側にそれぞれ設けられる。第1レバー41は、先端側にてピン41aを介して軸部材33の前端側に回転可能に連結される。また、第1レバー41の基端側は、開閉軸40に固定して支持される。
【0024】
第2レバー42は、3箇所設けられる第1レバー41のうち、左右方向にて中央の第1レバー41の右側近傍に設けられる。第2レバー42の基端側は、開閉軸40に固定して支持される。第2レバー42は、先端側にてピン42aを介して第2ホルダ28の前端側に回転可能に連結される。
【0025】
第3レバー43は、3箇所設けられる第1レバー41のうち、左右方向にて中央の第1レバー41の左側近傍に設けられる。第3レバー43は、基端側が開閉軸40に固定して支持され、先端が第1レバー41と同様に下方向に向けられている。第3レバー43の先端にはピン43aが設けられる。
【0026】
リンク機構21にて、遮断ばね22の弾性力により第2ホルダ28を後方に移動すると、第1レバー41、第2レバー42及び開閉軸40を
図2にて時計方向に回動し、ロッド部材24及び可動接点12を前方に移動して固定接点14から可動接点12を離間する。よって、操作機構20においては、遮断ばね22の弾性力がリンク機構21を介して伝達することで可動接点12及び固定接点14が開極される。
【0027】
操作機構20にあっては、3本のロッド部材24それぞれに設けられるガスシール51及び接点間距離調整部52を更に備えている。ガスシール51は、隔壁2aの前面に装着され、且つ、ロッド部材24の絶縁ロッド31を貫通している。
【0028】
図3は、接点間距離調整部の分解斜視図である。
図3に示すように、ガスシール51は、円板状をなすフランジ部54と、フランジ部54の前面(厚さ方向一方の面)から前方に突出する突出筒部55とを備えている。フランジ部54は、後面(厚さ方向他方の面)が隔壁2a(
図1参照)の前面に当接するよう装着される。
【0029】
フランジ部54及び突出筒部55の前後方向に延出する中心軸位置には、絶縁ロッド31が挿通される挿通穴56が形成される。挿通穴56の内部には、絶縁ロッド31の外周面に摺動可能に当接するOリング(図示省略)が設けられる。かかるOリングによって、絶縁ロッド31との間の気密が維持され、隔壁2aの内外での気密も維持される。
【0030】
接点間距離調整部52は、突出筒部55の外周に形成される雄ねじ部61と、雄ねじ部61に螺合する雌ねじ部62とを備えている。
【0031】
雄ねじ部61は、突出筒部55の外周にねじ溝を設けて構成されるので、ガスシール51に一体に設けられている。また、ガスシール51に雄ねじ部61が一体に設けられることで、ガスシール51と共に雄ねじ部61が隔壁2a(
図1参照)に装着される。更には、雄ねじ部61に雌ねじ部62が螺合することで、雄ねじ部61及び雌ねじ部62により構成される接点間距離調整部52が隔壁2aに装着される。
【0032】
雌ねじ部62は、ナット状となる六角柱に沿う外周面形状を備え、スパナ等の工具によって回転操作可能に設けられる。かかる回転操作によって、雄ねじ部61に対して雌ねじ部62が中心軸方向となる前後方向に移動可能となる。雌ねじ部62は、後方から雄ねじ部61を受容して螺合し、また、前面側には絶縁ロッド31が挿通される穴が形成される。雌ねじ部62の前面は、押圧面63として形成される。
【0033】
図1及び
図2に戻り、接点間距離調整部52にあっては、隔壁2aに装着され、且つ、雄ねじ部61及び雌ねじ部62に絶縁ロッド31が貫通されるので、隔壁2aと接圧調整部25との間に配設されている。
【0034】
ここで、真空遮断器1の運用にあたり、定期的な真空度確認試験の実施が推奨されている。真空度確認試験では、可動接点12及び固定接点14の間を規定の距離に調整及び保持し、規定の電圧を印加することで真空漏れの有無が確認される。そこで、本実施の形態においては、接点間距離調整部52によって可動接点12及び固定接点14の間の距離を調整及び保持している。
【0035】
以下、真空遮断器1の真空度確認試験方法について、
図2に加え、
図4及び
図5を用いて説明する。
図2は、最大開極時の状態を示す断面図である。
図4は、接点間距離調整前に閉極した状態の
図2と同様の断面図である。
図5は、接点間距離調整中の状態の
図2と同様の断面図である。なお、真空度確認試験は、三相に対応する3つの主回路部10それぞれで実施されるが、以下では、左右3つ並ぶ主回路部10のうち、中央の主回路部10の試験について説明する。
【0036】
まず、所定の電流経路と主回路部10との接続を遮断した状態とし、且つ、
図2に示すように、可動接点12及び固定接点14を開極した離間状態とする。
【0037】
その後、一対の仕切壁2b(一方は図示省略)を左右に架け渡すように支え板101がボルト等で装着される。かかる装着と前後して、支え板101に油圧ジャッキ102が装着される。油圧ジャッキ102は、支え板101より後方を押圧軸103として前後方向に駆動可能に設けられ、押圧軸103の後端側はコ字状に形成される。油圧ジャッキ102は、押圧軸103の後端が第3レバー43のピン43aを受容するように設置される。
【0038】
また、ロッド部材24にて、接圧調整部25とガスシール51との間となるガイド部36の上面に距離検出器105が設置される。距離検出器105は、レーザ変位計等により構成することが例示できる。更に、点検対象となる主回路部10の可動接点12及び固定接点14の通電を真空遮断器1の外部から計測する計測器106が設置される。
【0039】
続いて、
図2に示す状態から、
図4に示すように、油圧ジャッキ102を駆動して押圧軸103を後方に移動することで、ロッド部材24が後方に押し込まれる。この押し込みと同時に、計測器106によって可動接点12及び固定接点14の通電が計測される。そして、計測器106の計測結果から可動接点12及び固定接点14が通電することが確認され、言い換えると、接圧調整部25の接圧ばね35が初期状態から僅かに圧縮されるタイミングにて、油圧ジャッキ102を僅かに前方に動かし、油圧ジャッキ102の駆動が停止されロックされる。これにより、可動接点12の大まかな位置合わせが完了する。
【0040】
なお、
図4に示すように、油圧ジャッキ102でロッド部材24を押し込むことで、リンク機構21における各レバー41~43及び開閉軸40を
図4にて反時計方向に回動し、第2ホルダ28が前方に移動される。これにより、遮断ばね22が伸長(蓄勢)しつつ、リンク機構21を介して遮断ばね22の弾性力を油圧ジャッキ102によって受けるので、各レバー41~43及び開閉軸40の時計方向の回動が規制される。更には、ロッド部材24が前方に移動して可動接点12が固定接点14から離れる方向への動作が規制される。よって、
図4の状態では、油圧ジャッキ102によってリンク機構21による開極動作が規制されることとなる。
【0041】
次いで、
図4に示す状態から、接点間距離調整部52の雌ねじ部62を回転操作することで、
図5に示すように、雄ねじ部61とのねじ作用によって雌ねじ部62が前方に移動される。この移動により、雌ねじ部62の押圧面63から連結部材32に前方への力が加わって連結部材32が前方に押し込まれ、接圧ばね35が圧縮されて可動接点12が前方に変位される。雌ねじ部62の回転操作と同時に、計測器106によって可動接点12及び固定接点14の通電が計測され、通電が開始(停止)されるピンポイントの位置にて雌ねじ部62の回転操作が停止される。このとき、距離検出器105と、ガスシール51のフランジ部54または隔壁2aとの間の距離が距離検出器105により検出され、検出した距離によって基準点の位置が設定される。
【0042】
基準点の位置を設定後、雌ねじ部62の回転操作によって接圧ばね35の圧縮長さを変化させることで、可動接点12の前後方向の位置が微調整される。かかる調整微は、距離検出器105の検出結果(基準点の位置からの距離)を確認しながら行われ、可動接点12と固定接点14の間の距離が設定距離となるまで継続される。このとき、雌ねじ部62は、筐体2内部の絶縁性ガス及び主回路部10の真空の差圧による後方への力と、接圧ばね35による後方への弾性力とを受けることで、可動接点12の位置が保持される。
【0043】
可動接点12と固定接点14との間の距離を設定距離とした後、各接点12、14間に規定の電圧を印加され、閃絡の有無によって主回路部10の真空容器(図示省略)内の真空度を確認することで試験が完了する。
【0044】
試験の完了後、連結部材32から距離検出器105が取り外され、主回路部10と計測器106との接続も解除される。また、仕切壁2bから支え板101及び油圧ジャッキ102が取り外されることで、操作機構20から油圧ジャッキ102が取り外される。
【0045】
このように、本実施の形態によれば、接点間距離調整部52にて雌ねじ部62を操作してロッド部材24の連結部材32に力を加え、可動接点12を変位することで各接点12、14の間の距離を調整できる。よって、接点間距離調整部52で力を加える位置と可動接点12との間の構成を絶縁ロッド31等として極めて少なくすることができる。これにより、距離調整にて、操作機構20の複数の構成における加工公差や組み立て公差の影響を受け難くなり、可動接点12の変位量の誤差を小さくすることができる。しかも、接圧調整部25より可動接点12側にて、接点間距離調整部52から連結部材32に力が加えられるので、ロッド部材24の動作負荷等による接圧ばね35の伸縮の影響を受けなくなり、これによっても、可動接点12の変位量の誤差を小さくできる。このように、本実施の形態によれば、接点間距離調整部52による可動接点12の変位の誤差を抑制して可動接点12の位置決め精度を高め、各接点12、14間の距離を精度良く調整することができる。
【0046】
また、遮断ばね22の弾性力が非常に大きくなる場合、従来にあっては、弾性力を支持する強度を確保するため、各接点12、14の間の距離を調整すべく設置される構造が大型化する傾向がある。この点、本実施の形態では、支え板101や油圧ジャッキ102は試験時だけ装着すればよく、接点間距離調整部52は隔壁2a前方の僅かなスペースに配置できるので、操作機構20が大型化することを回避できる。更には、ガスシール51の一部を雄ねじ部61として接点間距離調整部52を構成できるので、接点間距離調整部52の占有領域の縮小化、構成の簡略化を図ることができる。
【0047】
なお、本発明は上記実施の形態に限定されず、種々変更して実施することが可能である。上記実施の形態において、添付図面に図示されている大きさや形状、向きなどについては、これに限定されず、本発明の効果を発揮する範囲内で適宜変更することが可能である。その他、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更して実施することが可能である。
【0048】
上記の確認試験にて距離検出器105を用いたが、これに限られるものでなく、種々の変更が可能である。例えば、雌ねじ部62及び雄ねじ部61を細目ねじとして雌ねじ部62の回転操作量から距離を換算したり、雌ねじ部62とフランジ部54との間にシムプレートを配置することで距離を測定したりしてもよい。
【0049】
また、接点間距離調整部52は、隔壁2aと接圧調整部25との間に位置するロッド部材24に力を加えて可動接点12を変位できる限りにおいて、変更してもよい。例えば、隔壁2aに装着されて連結部材32に押圧力を付与できるアクチュエータ等の直動機構を用いて接点間距離調整部52を構成してもよい。但し、雄ねじ部61及び雌ねじ部62によって接点間距離調整部52を構成した方が、単純な構成で安定的且つ保守管理負担も少なくして利用できる点で有利となる。
【0050】
また、操作機構20の第3レバー43は、油圧ジャッキ102との連結専用として設けてもよいし、操作機構20を手動操作する際のレバーとの兼用としてもよい。
【符号の説明】
【0051】
1 :真空遮断器
2a :隔壁
12 :可動接点
14 :固定接点
20 :操作機構
21 :リンク機構
22 :遮断ばね(ばね部材)
24 :ロッド部材
25 :接圧調整部
51 :ガスシール
52 :接点間距離調整部
61 :雄ねじ部
62 :雌ねじ部