(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024136345
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】電気刺激システム
(51)【国際特許分類】
A61N 1/36 20060101AFI20240927BHJP
【FI】
A61N1/36
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023047440
(22)【出願日】2023-03-24
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 令和4年3月25日にウェブサイト https://doi.org/10.21203/rs.3.rs-1402009/v1に掲載。
(71)【出願人】
【識別番号】523107743
【氏名又は名称】台灣共振波研發股▲ふん▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100167689
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 征二
(72)【発明者】
【氏名】張文▲傑▼
(72)【発明者】
【氏名】莊立民
【テーマコード(参考)】
4C053
【Fターム(参考)】
4C053JJ02
4C053JJ04
4C053JJ06
4C053JJ21
(57)【要約】 (修正有)
【課題】電気刺激パルスの組合せを生成し、電極構造体を介して電気刺激パルスの組合せを対象の皮膚に送達することによって、糖尿病患者の血糖変動の安定化を達成し、体内の炎症因子を低減することができる電気刺激システムを提供する。
【解決手段】電気刺激システム1000は、電気刺激発生器1と少なくとも1つの電極構造体2を備える。電気刺激発生器は、電気刺激パルスの組合せを生成し、電気刺激パルスの組合せを電極構造体を介して対象の皮膚に送達することによって、血糖変動の安定化を達成し、炎症反応を低減する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気刺激システムであって、
動作周期が50%以上で波形が方形波の複数の単相パルスグループでそれぞれ構成される第1の周波数グループ、第2の周波数グループ、及び第3の周波数グループを含む、1~20000Hzの電気刺激パルスの組合せを生成する電気刺激発生器と、
前記電気刺激発生器に電気的に接続され、対象の皮膚に接触して前記電気刺激パルスの組合せを送達する接触面を有する電極構造体と、を備え、
前記電気刺激パルスの組合せは、前記第1の周波数グループから前記第3の周波数グループまで順に出力され、前記第1の周波数グループの周波数範囲は、10~20000Hzであり、前記第2の周波数グループの周波数範囲は、1~30Hzであり、前記第3の周波数グループの周波数範囲は、5~30Hzである電気刺激システム。
【請求項2】
前記第1の周波数グループの出力時間は2300~2350秒であり、前記第2の周波数グループの出力時間は900~1000秒であり、前記第3の周波数グループの出力時間は320~400秒であることを特徴とする請求項1に記載の電気刺激システム。
【請求項3】
前記電気刺激パルスの組合せの出力時間は、3520~3750秒であることを特徴とする請求項1に記載の電気刺激システム。
【請求項4】
前記電気刺激パルスの組合せは、さらに10Vpp未満の電位差を含むことを特徴とする請求項1に記載の電気刺激システム。
【請求項5】
前記電極構造体は前記対象の腹部皮膚に接触することを特徴とする請求項1に記載の電気刺激システム。
【請求項6】
前記電気刺激システムが糖尿病の症状を改善することは、血糖変動の安定化を達成すること、または炎症反応を低減することであることを特徴とする請求項1に記載の電気刺激システム。
【請求項7】
前記電気刺激システムが血糖変動の安定化を達成することは、血糖値の変動(glycemic variability,GV)を抑えることであることを特徴とする請求項6に記載の電気刺激システム。
【請求項8】
前記電気刺激システムが炎症反応を低減することは、C反応性タンパク質(C-Reactive Protein,CRP)及び線維芽細胞増殖因子21(Fibroblast growth factor 21,FGF-21)のタンパク質の発見量を減少させることであることを特徴とする請求項6に記載の電気刺激システム。
【請求項9】
請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の電気刺激システムを使用する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気刺激システム及びその方法に関し、特に、電気刺激パルスの組合せを生成し、患者に送達することによって、血糖変動の安定化を達成し、炎症反応を低減することができる電気刺激システム及びその方法に関する。
【背景技術】
【0002】
2型糖尿病は、高血糖、相対的なインスリン(insulin)不足、インスリン抵抗性などの特徴を持つ慢性代謝性疾患である。2型糖尿病の完治方法はまだ開発されておらず、高血糖や糖尿病の合併症を抑えるために、薬物療法が最も一般的な方法となっている。ただし、ビグアナイド系、スルホニルウレア系、メグリチニド系、阻害薬、GLP-1アナログなどの経口血糖降下薬を服用すると、副作用による不快感(低血糖など)が生じ、生活の質の低下につながるため、患者が時間通りに薬を服用することをやめる可能性がある。そのため、現在の治療法に対して、非薬物的な方法で補助または代替する技術の開発が急務となっている。
【0003】
また、糖尿病の治療や改善のために、経皮的電気神経刺激装置(Transcutaneous electrical nerve stimulator, TENS)をヒトに使用した場合の関連データはほとんどない。糖尿病誘発モデルマウスの糖化ヘモグロビン(HbA1c)及び空腹時血糖値を、電気刺激装置を用いて低下させることを開示した先行技術文献はわずかであった。ヒトの血糖変動の安定化を効果的に達成し、関連する炎症状態を抑えるとの記載はない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記事情に鑑みて、先行技術及び公知の電気刺激装置でヒトに有効に適用して2型糖尿病を治療できない問題を改善するために、本発明は、電気刺激パルスの組合せを生成し、電極構造体を介して電気刺激パルスの組合せを対象の皮膚に送達することによって、糖尿病患者の血糖変動の安定化を達成し、体内の炎症因子を低減する電気刺激システムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、電気刺激システム及び電気刺激パルスの組合せを生成する方法を提供する。これによって生成された電気刺激パルスの組合せにより、糖尿病関連の症状を改善することができる。本発明に係る電気刺激システムにおいて、生成された電気刺激パルスの組合せは、電極構造体を介してヒトの皮膚を通して体内に送達される。本発明に係る電気刺激システムは、ヒトへの副作用の心配がなく、現在の糖尿病治療薬よりもヒトへの適応性が高く、非侵襲的で携帯可能な電気刺激システムである。このように、電気刺激システムによって生成される電気刺激パルスの組合せは、血糖変動の安定化を達成し、炎症反応を低減することが可能である。
【0006】
上記の目的を達成するため、本発明は、電気刺激発生器と少なくとも1つの電極構造体を備える電気刺激システムを提供する。前記電気刺激発生器は、電気刺激パルスの組合せを生成する。前記電気刺激パルスの組合せの周波数は、1~20000Hzである。前記電気刺激パルスの組合せは、第1の周波数グループ、第2の周波数グループ、及び第3の周波数グループから構成される。前記第1の周波数グループ、前記第2の周波数グループ、及び前記第3の周波数グループは、それぞれ複数の単相パルスグループで構成される。前記単相パルスグループは、動作周期が50%以上である。前記単相パルスグループの波形は方形波である。前記電極構造体は、前記電気刺激発生器に電気的に接続され、接触面を有し、前記接触面で対象の皮膚に接触して前記電気刺激パルスの組合せを送達する。前記電気刺激パルスの組合せは、前記第1の周波数グループから前記第3の周波数グループまで順に出力される。前記第1の周波数グループの周波数範囲は、10~20000Hzである。前記第2の周波数グループの周波数範囲は、1~30Hzである。前記第3の周波数グループの周波数範囲は、5~30Hzである。
【0007】
本発明の実施形態において、前記電気刺激パルスの組合せの前記第1の周波数グループの出力時間は2300~2350秒である。前記第2の周波数グループの出力時間は900~1000秒である。前記第3の周波数グループの出力時間は320~400秒である。
【0008】
本発明の実施形態において、前記電気刺激パルスの組合せの出力時間は、3520~3750秒である。
【0009】
本発明の実施形態において、前記電気刺激パルスの組合せは、さらに10Vpp未満の電位差を含む。
【0010】
本発明の実施形態において、前記電極構造体は前記対象の腹部皮膚に接触する。
【0011】
本発明の実施形態において、前記電気刺激システムが糖尿病の症状を改善することは、血糖変動の安定化を達成すること、または炎症反応を低減することである。
【0012】
本発明の実施形態において、前記電気刺激システムが血糖変動の安定化を達成することは、血糖値の変動(glycemic variability,GV)を抑えることである。
【0013】
本発明の実施形態において、前記電気刺激システムが炎症反応を低減することは、C反応性タンパク質(C-Reactive Protein,CRP)及び線維芽細胞増殖因子21(Fibroblast growth factor 21,FGF-21)のタンパク質の発見量を減少させることである。これら2つのタンパク質の減少によって、臓器の線維化も改善される。
【0014】
本発明は、前記電気刺激システムで電気刺激パルスの組合せを生成する方法を提供する。前記方法によって生成される電気刺激パルスの組合せは、電極構造体を介して糖尿病を患っている対象に送達される。前記方法によって生成される単相パルスグループは、経皮的に対象に送達される。作用後、従来の技術では達成できなかった効果を達成でき、糖尿病患者の体内の炎症因子を低減し、血糖変動の安定化を達成することが可能である。
【0015】
上記の目的を達成するため、本発明は、電気刺激システム及び電気刺激パルスの組合せを生成する方法を提供する。
【0016】
当業者は、図面および後述する実施態様を参照すれば、本発明の他の目的、および本発明の技術的手段と実施態様を理解することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明に係る電気刺激システムを示す模式図である。
【
図2】本発明の実施形態において、電気刺激システムを使用した対象の平均血糖変動幅(mean amplitude of glycemic excursion,MAGE)を示す模式図である。
【
図3】本発明の実施形態において、電気刺激システムを使用した個々のグループの平均血糖変動幅(mean amplitude of glycemic excursion,MAGE)を示す模式図である。
【
図4】本発明の実施形態において、電気刺激システムを使用した対象の炎症因子であるC反応性タンパク質(C-Reactive Protein,CRP)の量を示す模式図である。
【
図5】本発明の実施形態において、電気刺激システムを使用した対象の炎症因子である線維芽細胞増殖因子21(Fibroblast growth factor 21,FGF-21)の量を示す模式図である。
【
図6】本発明の実施形態に係る電気刺激パルスのパターンを示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、実施形態により本発明を説明する。本発明の実施形態は、本発明を特定の環境、用途、または特別な方法で実施されるように限定する意図はない。従って、実施形態の説明は、本発明を説明するためのものであり、本発明を限定するためのものではない。なお、実施形態及び図面において、本発明と直接関係のない構成要素は省略され、図示されていない。図面において、各要素の寸法関係は、理解を容易にするためのものであり、実際の寸法比率を制限するためのものではない。
【0019】
図1は、本発明の実施形態に係る電気刺激システム1000を示す模式図である。電気刺激システム1000は、電気刺激発生器1と、2つの電極構造体2を備える。電気刺激発生器1には、2つの電極構造体2が信号伝送線を介して接続されている。2つの電極構造体2は、対象の腹部に貼り付けられ、電気刺激発生器1から生成された電気刺激パルスの組合せを対象に送達する。なお、本実施形態では、電気刺激システム1000が信号伝送線及び対応の2つの電極構造体2を備える場合について説明するが、使用状況や需要に応じて調整することができ、この実施形態に限定されるものではない。
【0020】
本実施形態において、電気刺激システム1000は、電気刺激システム1000に設置されるインターフェースモジュール3を備える。インターフェースモジュール3は、主に、ユーザが電気刺激システム1000の操作と調整を行うためのものである。前記操作と調整は、システム動作のスイッチ及びデフォルトプログラミングを実行するための指令信号が含まれる。インターフェースモジュール3は、機能が実行されているときに表示画面をユーザに提供するものであり、本発明において特に限定はない。
【0021】
なお、電気刺激発生器1は、電気刺激パルスの組合せを生成する。前記電気刺激パルスの組合せは、第1の周波数グループ、第2の周波数グループ、及び第3の周波数グループを含む。前記第1の周波数グループ、前記第2の周波数グループ、及び前記第3の周波数グループは、それぞれ複数の単相パルスグループで構成される。前記単相パルスグループは、動作周期が50%以上である。前記単相パルスグループの波形は方形波である。電気刺激発生器1は、制御モジュール、駆動モジュール、および出力モジュール(図示せず)を含んでもよい。前記モジュールの組み合わせにより、インターフェースモジュール3から生成されたコマンド信号をトリガーして受信し、対応する駆動信号を出力し、出力プログラムに予め設定された電気刺激パルス、動作周期、周波数、及び電位差を調整する。なお、制御モジュール、駆動モジュール、および出力モジュールの組み合わせは、実際のニーズに応じて調整することができ、本発明において特に限定はない。
【0022】
本実施形態において、前記電極構造体2は、対象に接着可能なシート状構造体、布状構造体、または装着可能なウェアラブルデバイスである。前記電極構造体2は、電気刺激発生器1に電気的に接続され、電気刺激発生器1から生成された電気刺激パルスの組合せを対象の体内に送達する。電極構造体2の構造は、本発明において限定されるものではない。詳しくは、電極構造体2は、対象の皮膚に接触する接触面を有する。本発明の実施形態において、電極構造体が接触する位置は、腹部の皮膚であることが好ましい。
【0023】
次に、電気刺激パルスの組合せの作用周波数について説明する。
図6も併せて参照すると、電気刺激パルスの組合せは、第1の周波数グループから第3の周波数グループまで順に出力される。前記第1の周波数グループの周波数範囲は、好ましくは10~20000Hzであり、より好ましくは13~18122Hzである。前記第2の周波数グループの周波数範囲は、好ましくは1~30Hzであり、より好ましくは1~28Hzである。前記第3の周波数グループの周波数範囲は、好ましくは5~30Hzであり、より好ましくは6~26Hzである。電気刺激パルスの組合せの出力時間は、好ましくは3520~3750秒であり、より好ましくは3633秒である。前記第1の周波数グループの出力時間は、好ましくは2300~2350秒であり、より好ましくは2312秒である。前記第2の周波数グループの出力時間は、好ましくは900~1000秒であり、より好ましくは949秒である。前記第3の周波数グループの出力時間は、好ましくは320~400秒であり、より好ましくは372秒である。前記第1の周波数グループ、前記第2の周波数グループ、及び前記第3の周波数グループの周波数範囲内での出力周波数と出力時間は、実際のニーズに応じて調整することができ、特に限定はない。
【0024】
詳しくは、本実施形態において、前記第1の周波数グループは、47個の単相パルスグループで構成される。第1の周波数グループの単相パルスグループには、次のものが順に含まれている:18122Hzで出力時間7秒の第1の単相パルスグループ、10000Hzで出力時間15秒の第2の単相パルスグループ、7344Hzで出力時間19秒の第3の単相パルスグループ、5000Hzで出力時間24秒の第4の単相パルスグループ、4200Hzで出力時間26秒の第5の単相パルスグループ、3672Hzで出力時間28秒の第6の単相パルスグループ、3175Hzで出力時間30秒の第7の単相パルスグループ、3000Hzで出力時間31秒の第8の単相パルスグループ、2127Hzで出力時間36秒の第9の単相パルスグループ、2112Hzで出力時間35秒の第10の単相パルスグループ、2007Hzで出力時間30秒の第11の単相パルスグループ、1865Hzで出力時間37秒の第12の単相パルスグループ、1850Hzで出力時間37秒の第13の単相パルスグループ、1550Hzで出力時間39秒の第14の単相パルスグループ、1234Hzで出力時間42秒の第15の単相パルスグループ、1043Hzで出力時間44秒の第16の単相パルスグループ、1000Hzで出力時間45秒の第17の単相パルスグループ、921Hzで出力時間45秒の第18の単相パルスグループ、880Hzで出力時間47秒の第19の単相パルスグループ、867Hzで出力時間46秒の第20の単相パルスグループ、807Hzで出力時間45秒の第21の単相パルスグループ、778Hzで出力時間57秒の第22の単相パルスグループ、751Hzで出力時間49秒の第23の単相パルスグループ、730Hzで出力時間45秒の第24の単相パルスグループ、705Hzで出力時間48秒の第25の単相パルスグループ、668Hzで出力時間54秒の第26の単相パルスグループ、652Hzで出力時間55秒の第27の単相パルスグループ、625Hzで出力時間54秒の第28の単相パルスグループ、612Hzで出力時間51秒の第29の単相パルスグループ、595Hzで出力時間54秒の第30の単相パルスグループ、542Hzで出力時間57秒の第31の単相パルスグループ、522Hzで出力時間53秒の第32の単相パルスグループ、484Hzで出力時間55秒の第33の単相パルスグループ、462Hzで出力時間56秒の第34の単相パルスグループ、435Hzで出力時間60秒の第35の単相パルスグループ、421Hzで出力時間56秒の第36の単相パルスグループ、380Hzで出力時間60秒の第37の単相パルスグループ、348Hzで出力時間55秒の第38の単相パルスグループ、302Hzで出力時間60秒の第39の単相パルスグループ、160Hzで出力時間69秒の第40の単相パルスグループ、141Hzで出力時間65秒の第41の単相パルスグループ、125Hzで出力時間72秒の第42の単相パルスグループ、95Hzで出力時間76秒の第43の単相パルスグループ、80Hzで出力時間78秒の第44の単相パルスグループ、66Hzで出力時間75秒の第45の単相パルスグループ、40Hzで出力時間85秒の第46の単相パルスグループ、及び13Hzで出力時間105秒の第47の単相パルスグループ。また、前記第2の周波数グループは、9個の単相パルスグループで構成される。第2の周波数グループの単相パルスグループには、次のものが順に含まれている:9Hzで出力時間106秒の第48の単相パルスグループ、6Hzで出力時間110秒の第49の単相パルスグループ、1Hzで出力時間133秒の第50の単相パルスグループ、28Hzで出力時間72秒の第51の単相パルスグループ、19Hzで出力時間72秒の第52の単相パルスグループ、10Hzで出力時間24秒の第53の単相パルスグループ、8Hzで出力時間144秒の第54の単相パルスグループ、6Hzで出力時間144秒の第55の単相パルスグループ、及び5Hzで出力時間144秒の第56の単相パルスグループ。また、前記第3の周波数グループは、5個の単相パルスグループで構成される。第3の周波数グループの単相パルスグループには、次のものが順に含まれている:6Hzで出力時間144秒の第57の単相パルスグループ、7Hzで出力時間144秒の第58の単相パルスグループ、8Hzで出力時間36秒の第59の単相パルスグループ、17Hzで出力時間36秒の第60の単相パルスグループ、及び26Hzで出力時間12秒の第61の単相パルスグループ。
【0025】
本実施形態において、前記第1の周波数グループの単相パルスグループは、順次出力される。前のグループが終了すると、次のグループの出力周波数は前の出力周波数より低くなる。また、第2の周波数グループは、第1の周波数変動グループ及び第2の周波数変動グループを含んでもよい。第1の周波数変動グループにある単相パルスグループの数は、第2の周波数変動グループにある単相パルスグループの数より少ない。具体的に、第1の周波数変動グループの周波数範囲は、好ましくは10~1Hzであり、より好ましくは9~1Hzである。その出力時間は、好ましくは300~360秒であり、より好ましくは349秒である。具体的に、第2の周波数変動グループの周波数範囲は、好ましくは30~4Hzであり、より好ましくは28~5Hzである。その出力時間は、好ましくは550~650秒であり、より好ましくは600秒である。
【0026】
以上のように、第1の周波数変動グループでは、9Hzの第48の単相パルスグループ、6Hzの第49の単相パルスグループ、及び1Hzの第50の単相パルスグループが順次出力される。前のグループが終了すると、次のグループの出力周波数は前の出力周波数より低くなる。第2の周波数変動グループでは、28Hzの第51の単相パルスグループ、19Hzの第52の単相パルスグループ、10Hzの第53の単相パルスグループ、8Hzの第54の単相パルスグループ、6Hzの第55の単相パルスグループ、及び5Hzの第56の単相パルスグループが順次出力される。前のグループが終了すると、次のグループの出力周波数は前の出力周波数より低くなる。次に、本実施形態において、前記第3の周波数グループの単相パルスグループは、順次出力される。前のグループが終了すると、次のグループの出力周波数は前の出力周波数より高くなる。
【0027】
具体的に、電気刺激パルスで発生する電位差の範囲は、10Vpp未満である。本発明で使用する電位差は、電圧電位差である。同様に、本発明で使用する電位差は、技術分野で一般的に見られるピークツーピーク電圧(Vpp)、最大電圧(Vmax)、または二乗平均平方根電圧(Vrms)であってもよい。電位差の範囲は、7.2Vpp以下であることが好ましい。本発明に係る電気刺激システム1000は、前記範囲内で電圧電位差を安定して出力し、ヒトへの適用に適した電圧電位差を提供することができる。
【0028】
本実施形態において、電気刺激システム1000は、血糖変動の安定化を達成し、または炎症反応を低減することによって、糖尿病の症状を改善することが可能である。
【0029】
本実施形態において、電気刺激システム1000は、血糖値の変動(glycemic variability,GV)を抑えることによって、糖尿病患者の血糖変動の安定化を達成することが可能である。
【0030】
本実施形態において、電気刺激システム1000は、C反応性タンパク質(C-Reactive Protein,CRP)及び線維芽細胞増殖因子21(Fibroblast growth factor 21,FGF-21)のタンパク質の発見量を減少させることによって、糖尿病患者の炎症反応を低減することが可能である。これら2つのタンパク質の減少によって、臓器の線維化も改善される。
【0031】
本実施形態では、前記電気刺激システムに適用される方法も提供される。前記方法は、血糖変動の安定化を達成し、炎症反応を低減することが可能な電気刺激パルスの組合せを生成することができる。
【0032】
実施例1
【0033】
[血糖変動の安定化]
【0034】
本発明の実現可能性を検証するために、まず、糖尿病関連疾患を改善するための人体実験を実施する。この実験は、多施設共同、前向き、二重盲検、無作為化、プラセボ対照試験である(臨床試験番号:NCT03102424)。本発明に係る電気刺激システム(電気刺激パルスのパターンは
図6参照)を2型糖尿病の被験者に使用し、血糖コントロールの改善状況を観察した。全ての参加基準を満たし、除外基準を満たさない2型糖尿病患者を、本発明に係る電気刺激システムを使用するグループ(以下、TENSグループ)とプラセボグループに1対1の割合でランダムに分けた。プラセボグループでは、被験者に効果のない電気刺激パルスを与える。実験方法は、電気刺激システムの電極構造体をそれぞれ被験者の腹部皮膚の左右両側に貼り付け、夕食後1時間、1日1時間、週5日以上の頻度で20週間にわたって電気刺激システムを使用する。0週目、4週目、12週目、20週目の3食前、3食後2時間、就寝時の7つの時点の血糖値を自己測定する(self-monitoring of blood glucose,SMBG)。
【0035】
本実施例では、電気刺激システムの試験結果を表1に示す。
【0036】
【0037】
詳しくは、本発明の実施例において、血糖値の変動(glycemic variability,GV)の指標として、7つの時点のSMBGデータを用いて平均血糖変動幅(mean amplitude of glycemic excursion,MAGE)を算出した。
図2、表1に示すように、被験者に電気刺激パルスの付与を20週間行った結果、TENSグループの7つの時点のSMBGデータは、ベースライン状態の184から173に低下したことがわかった。プラセボグループでは、ベースライン状態の180から172に低下した。計算後、TENSグループの平均血糖変動幅MAGEは、ベースライン状態の85から66に低下した。プラセボグループでは、ベースラインの88から79に低下した。TENSグループでは、0週目から20週目まで7つの時点のSMBGデータ及びMAGEが減少傾向にあることがわかった。MAGEの変化は統計的に有意であり(P=0.009)、プラセボグループに比べて比較的安定したGVを維持したことがわかった。
【0038】
次に、本発明に係る電気刺激システムを分類条件の異なる被験者グループに使用し、その影響を検討した。
図3に示すように、本発明の電気刺激システムをTENSグループとプラセボグループに使用すると、TENSグループのMAGEの減少は、特に女性グループ(P=0.042)、糖化ヘモグロビン(HbA1c)≧8.0%の患者グループ(P=0.002)、及びBMI<26.9kg/m
2のグループ(P=0.047)で統計的有意差が認められた。本発明に係る電気刺激システムは、糖尿病患者のMAGEを減少させ、血糖変動の安定化に大きな効果を発揮することがわかった。
【0039】
実施例2
【0040】
[炎症反応の低減]
【0041】
実施例2では、本発明に係る電気刺激システムを被験者に20週間使用した後、血液検査で発現する炎症因子に違いがあるかどうかを分析した。
図4~
図5および表1に示すように、実験の結果、被験者に電気刺激パルスの付与を行った後、TENSグループで測定されたC反応性タンパク質(C-Reactive Protein,CRP)の量はベースライン状態の0.22から0.16に低下し、プラセボグループではベースライン状態の0.24から0.38に増加した。TENSグループで測定された線維芽細胞増殖因子21(Fibroblast growth factor 21,FGF-21)のタンパク質の量は、ベースライン状態の0.29から0.24に低下した。プラセボグループでは、ベースライン状態の0.35から0.32に低下した。0週目から20週目までのCRPとFGF-21は、プラセボグループに比べ、TENSグループで有意に低下していることが明らかになった。CRPとFGF-21のタンパク質の発現量の減少に関するデータから、本発明に係る電気刺激システムが糖尿病患者の炎症性サイトカインを低減し、炎症反応を抑えることによって、糖尿病関連の症状を改善できることがわかった。
【0042】
一方、糖化ヘモグロビン(HbA1c)の変化も注目すべきポイントの一つである。本発明の実施例において、表1に示すように、被験者に電気刺激パルスの付与を20週間行った結果、TENSグループで測定されたHbA1cはベースライン状態の8.1から7.9に低下し、プラセボグループではベースライン状態の8.1から7.8に低下した。TENSグループとプラセボグループでは、HbA1cの発現量に大きな変化がないことがわかった。従って、本発明の電気刺激システムを使用して血糖変動の安定化を達成し、または炎症反応を低減することは、HbA1cを変化させることによって達成されるものではないことがわかった。
【0043】
上述のように、本発明に係る電気刺激システム及びその適用方法は、血糖変動の安定化を達成し、血糖値の変動(glycemic variability,GV)を抑えることが可能であり、従来技術にない炎症反応の抑制という特殊な効果を達成することができる。
【0044】
上述の実施例は、本発明の実施形態を説明するものであり、本発明の特徴構成を説明するものである。本発明は上記実施例に限定されるものではない。当業者が容易になし得る変更または均等配置も本発明の範囲内にある。本発明の権利の保護範囲は、特許出願の範囲に基づくものとする。
【誤訳訂正書】
【提出日】2024-07-18
【誤訳訂正1】
【訂正対象書類名】明細書
【訂正対象項目名】0006
【訂正方法】変更
【訂正の内容】
【0006】
上記の目的を達成するため、本発明は、電気刺激発生器と少なくとも1つの電極構造体を備える電気刺激システムを提供する。前記電気刺激発生器は、電気刺激パルスの組合せを生成する。前記電気刺激パルスの組合せの周波数は、1~20000Hzである。前記電気刺激パルスの組合せは、第1の周波数グループ、第2の周波数グループ、及び第3の周波数グループから構成される。前記第1の周波数グループ、前記第2の周波数グループ、及び前記第3の周波数グループは、それぞれ複数の単相パルスグループで構成される。前記単相パルスグループは、デューティサイクルが50%以上である。前記単相パルスグループの波形は方形波である。前記電極構造体は、前記電気刺激発生器に電気的に接続され、接触面を有し、前記接触面で対象の皮膚に接触して前記電気刺激パルスの組合せを送達する。前記電気刺激パルスの組合せは、前記第1の周波数グループから前記第3の周波数グループまで順に出力される。前記第1の周波数グループの周波数範囲は、10~20000Hzである。前記第2の周波数グループの周波数範囲は、1~30Hzである。前記第3の周波数グループの周波数範囲は、5~30Hzである。
【誤訳訂正2】
【訂正対象書類名】明細書
【訂正対象項目名】0021
【訂正方法】変更
【訂正の内容】
【0021】
なお、電気刺激発生器1は、電気刺激パルスの組合せを生成する。前記電気刺激パルスの組合せは、第1の周波数グループ、第2の周波数グループ、及び第3の周波数グループを含む。前記第1の周波数グループ、前記第2の周波数グループ、及び前記第3の周波数グループは、それぞれ複数の単相パルスグループで構成される。前記単相パルスグループは、デューティサイクルが50%以上である。前記単相パルスグループの波形は方形波である。電気刺激発生器1は、制御モジュール、駆動モジュール、および出力モジュール(図示せず)を含んでもよい。前記モジュールの組み合わせにより、インターフェースモジュール3から生成されたコマンド信号をトリガーして受信し、対応する駆動信号を出力し、出力プログラムに予め設定された電気刺激パルス、デューティサイクル、周波数、及び電位差を調整する。なお、制御モジュール、駆動モジュール、および出力モジュールの組み合わせは、実際のニーズに応じて調整することができ、本発明において特に限定はない。
【誤訳訂正4】
【訂正対象書類名】特許請求の範囲
【訂正対象項目名】全文
【訂正方法】変更
【訂正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気刺激システムであって、
デューティサイクルが50%以上で波形が方形波の複数の単相パルスグループでそれぞれ構成される第1の周波数グループ、第2の周波数グループ、及び第3の周波数グループを含む、1~20000Hzの電気刺激パルスの組合せを生成する電気刺激発生器と、
前記電気刺激発生器に電気的に接続され、対象の皮膚に接触して前記電気刺激パルスの組合せを送達する接触面を有する電極構造体と、を備え、
前記電気刺激パルスの組合せは、前記第1の周波数グループから前記第3の周波数グループまで順に出力され、前記第1の周波数グループの周波数範囲は、10~20000Hzであり、18122Hzの第1の単相パルスグループ、10000Hzの第2の単相パルスグループ、7344Hzの第3の単相パルスグループ、5000Hzの第4の単相パルスグループ、4200Hzの第5の単相パルスグループ、3672Hzの第6の単相パルスグループ、3175Hzの第7の単相パルスグループ、3000Hzの第8の単相パルスグループ、2127Hzの第9の単相パルスグループ、2112Hzの第10の単相パルスグループ、2007Hzの第11の単相パルスグループ、1865Hzの第12の単相パルスグループ、1850Hzの第13の単相パルスグループ、1550Hzの第14の単相パルスグループ、1234Hzの第15の単相パルスグループ、1043Hzの第16の単相パルスグループ、1000Hzの第17単相パルスグループ、921Hzの第18の単相パルスグループ、880Hzの第19の単相パルスグループ、867Hzの第20の単相パルスグループ、807Hzの第21の単相パルスグループ、778Hzの第22の単相パルスグループ、751Hzの第23の単相パルスグループ、730Hzの第24の単相パルスグループ、705Hzの第25の単相パルスグループ、668Hzの第26の単相パルスグループ、652Hzの第27の単相パルスグループ、625Hzの第28の単相パルスグループ、612Hzの第29の単相パルスグループ、595Hzの第30の単相パルスグループ、542Hzの第31の単相パルスグループ、522Hzの第32の単相パルスグループ、484Hzの第33の単相パルスグループ、462Hzの第34の単相パルスグループ、435Hzの第35の単相パルスグループ、421Hzの第36の単相パルスグループ、380Hzの第37の単相パルスグループ、348Hzの第38の単相パルスグループ、302Hzの第39の単相パルスグループ、160Hzの第40の単相パルスグループ、141Hzの第41の単相パルスグループ、125Hzの第42の単相パルスグループ、95Hzの第43の単相パルスグループ、80Hzの第44の単相パルスグループ、66Hzの第45の単相パルスグループ、40Hzの第46の単相パルスグループ、および13Hzの第47の単相パルスグループが順に含まれ、前記第1の周波数群の出力時間は2300~2350秒であり、前記第2の周波数グループの周波数範囲は、1~30Hzであり、9Hzの第48の単相パルスグループ、6Hzの第49の単相パルスグループ、1Hzの第50の単相パルスグループ、28Hzの第51の単相パルスグループ、19Hzの第52の単相パルスグループ、10Hzの第53の単相パルスグループ、8Hzの第54の単相パルスグループ、6Hzの第55の単相パルスグループ、および5Hzの第56の単相パルスグループが順に含まれ、前記第2の周波数グループの出力時間は900~1000秒であり、前記第3の周波数グループの周波数範囲は、5~30Hzであり、6Hzの第57の単相パルスグループ、7Hzの第58の単相パルスグループ、8Hzの第59の単相パルスグループ、17Hzの第60の単相パルスグループ、および26Hzの第61の単相パルスグループが順に含まれ、前記第3の周波数グループの出力時間は320秒~400秒である電気刺激システム。
【請求項2】
前記電気刺激パルスの組合せの出力時間は、3520~3750秒であることを特徴とする請求項1に記載の電気刺激システム。
【請求項3】
前記電気刺激パルスの組合せは、さらに10Vpp未満の電位差を含むことを特徴とする請求項1に記載の電気刺激システム。
【請求項4】
前記電極構造体は前記対象の腹部皮膚に接触することを特徴とする請求項1に記載の電気刺激システム。
【請求項5】
前記電気刺激システムが糖尿病の症状を改善することは、血糖変動の安定化を達成すること、または炎症反応を低減することであることを特徴とする請求項1に記載の電気刺激システム。
【請求項6】
前記電気刺激システムが血糖変動の安定化を達成することは、血糖値の変動(glycemic variability,GV)を抑えることであることを特徴とする請求項5に記載の電気刺激システム。
【請求項7】
前記電気刺激システムが炎症反応を低減することは、C反応性タンパク質(C-Reactive Protein,CRP)及び線維芽細胞増殖因子21(Fibroblast growth factor 21,FGF-21)のタンパク質の発現量を減少させることであることを特徴とする請求項5に記載の電気刺激システム。
【外国語明細書】