(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024013635
(43)【公開日】2024-02-01
(54)【発明の名称】水位推測システム、及び水位推測方法
(51)【国際特許分類】
H04N 7/18 20060101AFI20240125BHJP
G01C 13/00 20060101ALI20240125BHJP
【FI】
H04N7/18 D
G01C13/00 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022115882
(22)【出願日】2022-07-20
(71)【出願人】
【識別番号】597132849
【氏名又は名称】株式会社日立ソリューションズ・クリエイト
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】弁理士法人一色国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】上出 真治
(72)【発明者】
【氏名】中矢 雄志
(72)【発明者】
【氏名】新井 達成
【テーマコード(参考)】
5C054
【Fターム(参考)】
5C054CA04
5C054CC02
5C054FC15
5C054FE14
5C054HA38
(57)【要約】 (修正有)
【課題】貯水部の水位を簡便な手順で精度良く推定する水位推測システム及び水位推測方法を提供する。
【解決手段】水位推測システム30は、貯水部を所定方向から撮影した第1画像を記憶し、第1画像上での、貯水部の水位を示す貯水部と水との境界部を、複数の水位について設定し、設定した各境界部上に基準点を設定することにより、第1画像上の、貯水部における第1画像上の水位の変動方向を特定し、設定されたタイミングにおいて、貯水部を所定方向から撮影した第2画像を取得し、取得した第2画像上の水面の部分を特定し、第1画像上の複数の水位での境界部、第1画像上の水位の変動方向及び第2画像上の特定した水面の部分に基づき、第2画像における水位を推定し、推定した水位を示す情報を出力する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水を貯留している貯水部を所定の方向から撮影した第1画像を記憶する記憶装置、及び、
前記第1画像上での、前記貯水部の水位を示す、前記貯水部と前記水との境界部を、複数の水位について設定する処理と、
前記設定した各境界部上に所定の基準点を設定することにより、前記第1画像上の、前記貯水部における前記第1画像上の水位の変動方向を特定する処理と、
設定されたタイミングにおいて、前記貯水部を前記所定の方向から撮影した第2画像を取得し、取得した第2画像上の水面の部分を特定する処理と、
前記第1画像上の前記複数の水位での前記境界部、前記第1画像上の前記水位の変動方向、及び、前記第2画像上の前記特定した水面の部分に基づき、前記第2画像における水位を推定する処理と、
前記推定した水位を示す情報を出力する処理とを実行する処理装置
を備える、水位推測システム。
【請求項2】
前記処理装置は、
前記境界部として直線の線分又は曲線部を設定し、
前記直線の線分を対角線とする矩形又は前記曲線部の両端部を結ぶ線分を対角線とする矩形における重心の位置を、前記境界部の前記基準点として設定する、
請求項1に記載の水位推測システム。
【請求項3】
前記処理装置は、前記複数の境界部として、複数の直線の線分又は曲線部を互いに略平行に設定する、請求項1に記載の水位推測システム。
【請求項4】
前記処理装置は、前記第2画像における水位として、前記第1画像に設定した各水位のうち対応する水位を特定する、請求項1に記載の水位推測システム。
【請求項5】
前記処理装置は、前記第1画像上での前記境界部の設定を、入力装置を介してユーザから受け付ける、請求項1に記載の水位推測システム。
【請求項6】
前記処理装置は、前記第1画像における水及び当該水以外の部分の境界を所定の数値モデルに基づき認識し、認識した境界を前記境界部の候補として出力する、請求項1に記載の水位推測システム。
【請求項7】
情報処理装置が、
水を貯留している貯水部を所定の方向から撮影した第1画像を記憶し、
前記第1画像上での、前記貯水部の水位を示す、前記貯水部と前記水との境界部を、複数の水位について設定する処理と、
前記設定した各境界部上に所定の基準点を設定することにより、前記第1画像上の、前記貯水部における前記第1画像上の水位の変動方向を特定する処理と、
設定されたタイミングにおいて、前記貯水部を前記所定の方向から撮影した第2画像を取得し、取得した第2画像上の水面の部分を特定する処理と、
前記第1画像上の前記複数の水位での前記境界部、前記第1画像上の前記水位の変動方向、及び、前記第2画像上の前記特定した水面の部分に基づき、前記第2画像における水位を推定する処理と、
前記推定した水位を示す情報を出力する処理とを実行する、
水位推測方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水位推測システム、及び水位推測方法に関する。
【背景技術】
【0002】
河川等の貯水部における水位の判定は、水位計、監視カメラを用いたた目視により行われることが多い。しかしながら、近年では、甚大な風水災害が多発しているため、精度良くかつ安価な水位判定の方法に対するニーズが高まっている。
【0003】
水位判定のためのシステムはこれまでにも開発されている。例えば、特許文献1には、画像取得装置により取得された河川画像に、河川の増水や氾濫などに対する水防活動の判断や住民の避難行動の参考となる基準水位を示す基準水位線を重ね合わせた基準水位合成画像を生成する処理部と、処理部により生成された基準水位合成画像を出力する出力部とを備える河川管理装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、実用的な精度及び価格で提供可能なシステムの構築は容易ではない。例えば、特許文献1では、撮影した動画の一部を画像として抽出して用いることが記載されている。しかしながら、動画を用いて水位を判定する場合は通信データ量が大きくなり、性能(緊急災害への迅速な対応等)及び管理コストの点で問題が生じうる。
【0006】
また、河川を撮影する監視カメラの配置は河川や撮影エリアによって異なる。また、撮影画像における河川の流れ方向も撮影画像ごとに異なることが多く、これも水位の判定精度を低下させる原因となりうる。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、貯水部の水位を簡便な手順で精度良く推定することが可能な水位推測システム、及び水位推測方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するための本発明の一つは、水を貯留している貯水部を所定の方向から撮影した第1画像を記憶する記憶装置、及び、前記第1画像上での、前記貯水部の水位を示す、前記貯水部と前記水との境界部を、複数の水位について設定する処理と、前記設定した各境界部上に所定の基準点を設定することにより、前記第1画像上の、前記貯水部における前記第1画像上の水位の変動方向を特定する処理と、設定されたタイミングにおいて、前記貯水部を前記所定の方向から撮影した第2画像を取得し、取得した第2画像上の水面の部分を特定する処理と、前記第1画像上の前記複数の水位での前記境界部、前記第1画像上の前記水位の変動方向、及び、前記第2画像上の前記特定した水面の部分に基づき、前記第2画像における水位を推定する処理と、前記推定した水位を示す情報を出力する処理とを実行する処理装置を備える、水位推測システム、である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、貯水部の水位を簡便な手順で精度良く推定することができる。
上記した以外の構成及び効果等は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本実施形態に係る水位監視システムの構成の一例を示す図である。
【
図2】水位推測システムが備えるハードウェア及び水位推測システムが有する機能の一例を示す図である。
【
図3】河川水位監視処理の概要を説明するフロー図である。
【
図4】水位境界線設定処理の詳細を説明するフロー図である。
【
図5】平常画像及び平常画像に設定した水位境界線の一例を示す図である。
【
図6】複数の水位境界線を設定した平常画像の一例を示す図である。
【
図7】増水方向決定処理の詳細を説明するフロー図である。
【
図8】直線線分の水位境界線に対して、外接矩形及び水位基準点を設定した例を示す図である。
【
図10】初期設定情報設定処理の詳細を説明するフロー図である。
【
図12】推測開始時刻設定処理の詳細を説明するフロー図である。
【
図13】水位判定処理の詳細を説明するフロー図である。
【
図14】水位推測処理の詳細を説明するフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の実施の形態を、図面を参照しつつ説明する。
【0012】
図1は、本実施形態に係る水位監視システム1の構成の一例を示す図である。水位監視システム1は、1又は複数の撮影装置10と、水位管理システム20と、水位推測システム30とを含んで構成されている。
【0013】
撮影装置10は、河川40沿いの所定箇所に、所定の撮影方向が設定された状態で設置される。撮影装置10は、河川40の画像を所定のタイミング(例えば、所定の時刻、所定の時間間隔)で撮影する。撮影装置10は、1又は複数の所定の撮影エリアに、1又は複数台設けられる。
【0014】
水位管理システム20は、河川40を管理する管理者等が使用する、1又は複数の情報処理装置からなる情報処理システムである。水位管理システム20は、撮影装置10が撮影した画像を取得し記憶する。また、水位管理システム20は、水位推測システム30が推測した河川40の水位に関する情報(次述)を表示する。
【0015】
水位推測システム30は、1又は複数の情報処理装置からなる情報処理システムである。水位推測システム30は、水位管理システム20から水位の推測を依頼する推測依頼情報を受信すると、水位管理システム20が記憶している画像に撮影されている河川40の水位を推測する。そして、水位推測システム30は、推測した水位の情報を、水位推測システム30に送信する。
【0016】
撮影装置10、水位管理システム20、及び水位推測システム30の間は、例えば、インターネット、LAN(Local Area Network)、WAN(Wide Area Network)、又は専
用線等の有線又は無線の通信ネットワークにより通信可能となっている。
【0017】
次に、
図2は、水位推測システム30が備えるハードウェア及び水位推測システム30が有する機能の一例を示す図である。
【0018】
水位推測システム30は、水位境界線設定部101、増水方向決定部102、初期設定情報設定部103、推測開始時刻設定部104、水位判定部105の各機能部を備える。
【0019】
水位境界線設定部101は、撮影装置10が撮影した河川40の画像上の、当該河川40の貯水部(低水路、堤防等)と水との境界部(以下、水位境界線という)を、河川40の複数の正常水位の場合について設定する。水位境界線は、例えば、画像上での、河川40の水面と堤防の川表側の法面との境界線である。
【0020】
増水方向決定部102は、水位境界線設定部101で設定した各水位境界線に所定の基準点(以下、水位基準点という)を設定することにより、河川40の画像上の、河川40の水位の変動方向(本実施形態では、増水方向)を特定する。
【0021】
水位境界線及び水位基準点の情報は、閾値線パラメータDB300に記録される。
【0022】
初期設定情報設定部103は、河川40の水位に関する通知を水位管理システム20に行う条件を定義した情報である初期設定情報113を設定する。
【0023】
推測開始時刻設定部104は、河川40の水位の監視を開始するタイミングの情報(推測開始時刻)を設定する。
【0024】
水位判定部105は、推測開始時刻が到来した場合に、河川40の現在の画像を取得し、取得した画像(以下、現在画像という)における水面の部分を、後述する水面判定モデル111により特定する。そして、水位判定部105は、前記の各水位境界線及び増水方向と、上記水面の部分の情報とに基づき、現在画像における水の水位を推定する。推定結果は、推測結果DB200に記録される。
【0025】
水面判定モデル111は、河川40の画像を入力すると、その画像上の河川40の水面部分及びそれ以外の部分を特定する、例えばセマンティックセグメンテーション(Semantic Segmentation)を活用した学習済みモデルである。水面判定モデル111は、例えば
、全国の河川の各画像の特徴量を、ディープラーニングにより機械学習することで構築される。水面判定モデル111は、画像の画素情報(画素の内容及び座標)が入力される入力層と、画素情報から画像の特徴量を抽出して出力する1又は複数の中間層(隠れ層)と、画像の特徴量から水面の部分の座標を出力する出力層とを有するニューラルネットワークである。このニューラルネットワークとしては、例えば、CNN(Convolution Neural
Network)、SVM(Support Vector Machine)、ベイジアンネットワーク、又は回帰木等を適用することが可能である。
【0026】
次に、水位推測システム30は、ハードウェアとしてCPU (Central Processing Unit)
、DSP (Digital Signal Processor)、GPU (Graphics Processing Unit)、FPGA (Field-Programmable Gate Array)等の処理装置31(プロセッサ)と、ROM (Read Only Memory)、RAM (Random Access Memory)等の主記憶装置32(メモリ)と、HDD (Hard Disk Drive)
、SSD (Solid State Drive)などの補助記憶装置33と、NIC(Network Interface Card)、無線通信モジュール、USB (Universal Serial Interface)モジュール、又はシリアル
通信モジュール等で構成される通信装置34と、マウスやキーボード等で構成される入力装置35と、液晶ディスプレイまたは有機EL (Electro-Luminescence)ディスプレイ等で
構成される出力装置36とを備える。なお、水位管理システム20も同様のハードウェアを備える。
【0027】
水位推測システム30の各機能部の機能は、処理装置31が、主記憶装置32又は補助
記憶装置33に格納されている各プログラムを読み出して実行することにより実現される。また各プログラムは、例えば、記録媒体に記録して配布することができる。なお、各情報処理装置は、その全部または一部が、例えば、クラウドシステムによって提供される仮想サーバのように、仮想化技術やプロセス空間分離技術等を用いて提供される仮想的な情報処理資源を用いて実現されるものであってもよい。また、水位推測システム30によって提供される機能の全部または一部は、例えば、クラウドシステムがAPI (Application Programming Interface)等を介して提供するサービスによって実現してもよい。
次に、水位監視システム1で行われる処理について説明する。
【0028】
<河川水位監視処理>
図3は、水位監視システム1で行われる、河川の現在の水位を推定する処理(河川水位監視処理)の概要を説明するフロー図である。
【0029】
まず、撮影装置10は、河川40の画像を撮影する(s10)。具体的には、各撮影装置10は、水位が通常の範囲内にある場合の河川40の画像(以下、平常画像又は第1画像という)を撮影する。そして、各撮影装置10は、撮影した平常画像を、水位管理システム20に送信する。
【0030】
水位推測システム30は、水位管理システム20から各平常画像を受信し、受信した各平常画像の水位境界線を設定する水位境界線設定処理s20を実行する。水位境界線設定処理s20の詳細は後述する。
【0031】
そして、水位推測システム30は、各平常画像について、水位境界線設定処理s20で設定した水位境界線に基づき、当該平常画像上の河川40の増水方向を決定する増水方向決定処理s30を実行する。増水方向決定処理s30の詳細は後述する。
【0032】
また、水位推測システム30は、初期設定情報113を決定する初期設定情報設定処理s40を実行する。
【0033】
また、水位推測システム30は、推測開始時刻を設定する推測開始時刻設定処理s50を実行する。
【0034】
その後、水位推測システム30は、推測開始時刻設定処理s50で設定した推測開始時刻が到来すると、河川40の水位を推測する水位判定処理s60を実行する。水位判定処理s60は、随時繰り返し実行される。
以下、各処理の詳細を説明する。
【0035】
<水位境界線設定処理>
図4は、水位境界線設定処理s20の詳細を説明するフロー図である。
【0036】
水位境界線設定部101は、平常画像を取得する(s21)。例えば、水位境界線設定部101は所定の画像編集プログラムを起動し、ユーザから平常画像の指定を受け付け、当該平常画像を、水位管理システム20から読み込んで画面に表示する。なお、以下では、水位境界線設定部101が、ある一つの撮影装置10が撮影した一つの平常画像を処理する場合について説明する。
【0037】
水位境界線設定部101は、s21で取得した平常画像に対して、河川40と貯水部(堤防等)との境界線(水位境界線)を設定し、設定した水位境界線の、平常画像上の座標の情報を閾値線パラメータDB300に記録する(s22)。
【0038】
ここで、
図5は、平常画像及び平常画像に設定した水位境界線の一例を示す図である。同図に示すように、この平常画像400には、河川40の水面401、河川40の貯水部である堤防402、及び、堤防402外の構造物403が撮影されている。この平常画像400は、河川40を見下ろす高さで固定された撮影装置10(不図示)から撮影された画像である。この平常画像400が示す河川40の水面401の高さは、堤防402の川表側の法面における、ある水位の水位線404に達している。
【0039】
ここで、例えば、画像編集プログラムは、ユーザから、水位境界線として、上記の水位線404に沿った線分(曲線でも直線でもよい)の描画を入力装置35を介して受け付ける。この線分は、平常画像400の水位線404全体である必要はなく、その一部でもよい。
【0040】
なお、水位線404が曲線である場合、画像編集プログラムは、ユーザから、その曲線に近似する直線の描画を水位境界線として受け付けてもよい。本実施形態では、
図4に示すように、曲線をなす水位線404の一部を直線で近似した線分が、水位境界線406として設定されるものとする。
【0041】
ここで、水位境界線は、水位推測システム30により自動的に設定され又はユーザに提案されてもよい。例えば、水位境界線設定部101は、平常画像を水面判定モデル111に入力して得た出力値に基づき、水とそれ以外の部分との境界(例えば、水位線404)を認識し、認識した境界を平常画像400に重ねて表示することで、当該認識した境界を、設定すべき水位境界線の候補としてユーザに提案し、もしくは自動的に水位境界線を設定してもよい。
【0042】
次に、
図3に示すように、水位境界線設定部101は、s22で設定した水位境界線の水位よりも水位が上昇した状態における、平常画像上の水位境界線の描画を受け付け、その水位境界線の座標(平常画像上の座標)を閾値線パラメータDB300に記録する(s23)
【0043】
例えば、水位境界線設定部101は、s22から平常画像を継続して表示した状態で、ユーザから、新たな水位境界線の描画の入力を受け付ける。なお、水位境界線設定部101は、ユーザから、s22で表示した平常画像が示す水位よりも高い水位の河川40を撮影した他の平常画像の指定をユーザから受け付け、その平常画像を水位管理システム20から読みこんでこれを表示することで、水位境界線の描画の入力を受け付けてもよい。
【0044】
そして、水位境界線設定部101は、s23で描画した水位境界線が示す水位よりも高い水位での水位境界線の入力を行うか否かを確認する(s24)。例えば、水位境界線設定部101は、ユーザから、より高い水位での水位境界線の入力を行うか否かの確認入力を受け付ける。
【0045】
より高い水位での水位境界線の入力を行う場合は(s24:NO)、水位境界線設定部101はs23の処理を実行し、より高い水位での水位境界線の入力を行わない場合は(s24:YES)、水位境界線設定処理s20は終了する。また、水位境界線設定部101は、自動的に所定回数、s23の処理を実行するようにしてもよい。
【0046】
ここで、
図6は、複数の水位境界線を設定した平常画像400の一例を示す図である。この平常画像400には、
図5で説明した最も水位が低い場合の(最初に設定した)水位境界線406(第1水位境界線)と、さらに水位が上昇した場合の水位境界線407(第2水位境界線)と、さらに水位が上昇した正常水位の限界水位の場合の水位境界線408(第3水位境界線)とが設定されている。第1水位境界線、第2水位境界線、第3水位境
界線は互いに平行ないし略平行に設定されており、それぞれの長さも同一ないし略同一である。また、第1水位境界線、第2水位境界線、及び第3水位境界線の延伸方向は、河川40の流れの方向409と平行ないし略平行となっており、かつ、それらの並び方向は、河川40の流れの方向409と垂直ないし略垂直の方向となっている。
【0047】
このように、各水位境界線は同じ長さで、それぞれが互いに整列して描画され、水位推測システム30によりユーザに提案され、又は水位推測システム30により自動的に設定されることが好ましい。
【0048】
<増水方向決定処理>
次に、
図7は、増水方向決定処理s30の詳細を説明するフロー図である。
増水方向決定部102は、水位境界線設定処理s20で水位境界線を設定した平常画像(以下、水位閾値線画像という)を読み込む(s31)。
【0049】
増水方向決定部102は、水位閾値線画像に対して、その水位閾値線画像に描画された水位境界線が示す水位のレベル(以下、水位レベルという)を設定し、閾値線パラメータDB300に記憶する(s32)。例えば、増水方向決定部102は、水位境界線設定処理s20で設定した順に(すなわち水位が高くなる順に)、各水位境界線に対して、「レベル1」、「レベル2」、「レベル3」、・・・の情報をそれぞれ対応付けて設定する。
【0050】
次に、増水方向決定部102は、水位閾値線画像の各水位境界線上に、河川40の水位レベルに関する代表点ないし基準点である水位基準点を設定し、閾値線パラメータDB300に記憶する(s33)。
【0051】
例えば、増水方向決定部102は、水位境界線の両端を結ぶ直線を対角線の一つとする矩形(例えば長方形。以下、外接矩形という。)の各頂点の座標を算出し、算出した各頂点の座標に基づき外接矩形の重心点を算出し、これを水位基準点とする。また、例えば、増水方向決定部102は、各水位閾値線画像上における水位境界線の両端部の2座標の中間点を水位基準点として算出する。
図8に、
図5で示した直線線分の水位境界線406に対して、外接矩形411及び水位基準点412を設定した例を示す。
【0052】
ここで、水位境界線406は必ずしも直線である必要はなく、曲線部(両端部を有する曲線)であっても外接矩形の重心点を算出することができる。具体的には、増水方向決定部102は、曲線部の両端部を結ぶ直線の線分を対角線の一つとする矩形を外接矩形とする。
【0053】
なお、ここで説明した水位基準点の設定方法は例示であり、水位境界線の定め方は上記のように一定の基準に即していればよい。
【0054】
次に、
図7に示すように増水方向決定部102は、水位基準点をその水位レベルの昇順(レベル1、レベル2、・・・)に記憶し、これらを河川40の水位の上昇方向(増水方向)として記憶する(s34)。以上で増水方向決定処理s30は終了する。
【0055】
例えば、増水方向決定部102は、レベル1の水位基準点からレベル2の水位基準点への方向と、レベル2の水位基準点からレベル3の水位基準点への増水方向との平均的な方向を増水方向として特定する。なお、水位境界線設定処理s20で各水位境界線の長さを同一とし各水位境界線の位置を整列して設定していれば、各レベル間の増水方向は全て同一となり処理が簡便である。
【0056】
(閾値線パラメータDB)
ここで、
図9は、閾値線パラメータDB300の一例である。閾値線パラメータDB300は、平常画像の番号301、平常画像を撮影した撮影装置10の識別子が設定されるカメラ302、撮影エリアの識別子が設定されるグループ303、平常画像に対応づけられた水位レベルが設定されるレベル304、平常画像における水位境界線の一端の座標が設定される始点座標305、平常画像における水位境界線の他端の座標が設定される終点座標306、及び、平常画像における水位基準点の座標が設定される矩形中心座標307の各データ項目を有する。
【0057】
<初期設定情報設定処理>
次に、
図10は、初期設定情報設定処理s40の詳細を説明するフロー図である。
【0058】
初期設定情報設定部103は、初期設定情報113の入力を受け付ける初期設定入力画面を表示する(s41)。そして、初期設定情報設定部103は、初期設定入力画面を通じて、ユーザから、初期設定の入力を受け付ける(s42)。初期設定情報設定部103は、ユーザから入力された初期設定が正しいものであるか否かをユーザに確認させるための画面を表示する(s43)。初期設定情報設定部103は、ユーザから確認の入力があった場合、入力された初期設定を初期設定情報113に登録する(s44)。なお、初期設定情報設定処理s40は、水位管理システム20が水位推測システム30を呼び出すことで実行されてもよい。
【0059】
(初期設定情報)
図11は、初期設定情報113の一例を示す図である。初期設定情報113は、水位に関する通知を行うタイミングとして、水位が基準水位を超える前に通知を行う旨の設定情報1131を記憶している。なお、設定情報1131が特に指定されない場合は、水位が基準水位を超えた場合にその最大のレベルの通知が行われる(デフォルト値1132)。なお、初期設定情報113は、撮影装置10ごと又は撮影エリアごとに設定されてもよい。
【0060】
<推測開始時刻設定処理>
図12は、推測開始時刻設定処理s50の詳細を説明するフロー図である。
【0061】
推測開始時刻設定部104は、水位管理システム20に、推測依頼情報112を送信する(s51)。そして、推測開始時刻設定部104は、水位管理システム20から、推測開始時刻を受信する(s52)。推測開始時刻設定部104は、受信した推測開始時刻を記憶する(s53)。なお、推測開始時刻設定処理s50は、水位管理システム20が水位推測システム30を呼び出すことで実行されてもよい。
【0062】
<水位判定処理>
図13は、水位判定処理s60の詳細を説明するフロー図である。
【0063】
水位判定部105は、現在時刻を取得する(s61)。水位判定部105は、現在時刻が、河川40の水位の推測時刻(推測開始時刻、又は2回目以降の推測時刻)であるか否かを判定する(s62)。
【0064】
水位判定部105は、現在時刻が水位の推測時刻である場合、河川40の現在の水位を推測する水位推測処理s63を実行する。水位推測処理s63の詳細は後述する。
【0065】
水位判定部105は、水位管理システム20から随時、河川40の次回の水位の推測時
刻の情報の受信を待機している(s64)。
【0066】
水位判定部105は、河川40の水位の推測を再び行うか否かを判定する(s65)。例えば、水位判定部105は、次回の水位の推測時刻の情報を一定時間内に受信したか否かを判定する。
【0067】
河川40の水位の推測を再び行う場合は(s65:NO)、水位判定部105はs61の処理を実行し、河川40の水位の推測を終了する場合は(s65:YES)、水位判定処理s60は終了する。
【0068】
なお、水位判定部105は、自身に予め設定された情報により、推測を行うタイミングを判定してもよい。
【0069】
<水位推測処理>
図14は、水位推測処理s63の詳細を説明するフロー図である。
水位判定部105は、撮影装置10を一つ選択し、水位管理システム20から、その撮影装置10が撮影した現在の河川40の画像(以下、現在画像又は第2画像という)の取得要求を送信する(s631)。そして、水位判定部105は、現在の河川40の画像を受信する(s632)。
【0070】
水位判定部105は、現在画像を解析し、現在画像上の河川40の水面の部分を特定する(s633)。
【0071】
具体的には、水位判定部105は、水面判定モデル111に現在画像を入力することで、現在画像上の各座標(画素)が河川40の水面の部分であるか又はそれ以外の部分であるかを示す情報(以下、画素情報という)を、それぞれ出力する。
【0072】
水位判定部105は、s633で特定した現在画像上の河川40の水面の部分と、現在画像に対応する平常画像(同じ撮影装置10が撮影した平常画像)における各水位境界線とに基づき、現在の河川40の水位を推定する(s634)。
【0073】
具体的には、水位判定部105は、平常画像上の各レベルの水位境界線と、平常画像上の増水方向の情報と、現在画像の画素情報とに基づき、現在画像の水位レベルを判定する。
【0074】
例えば、水位判定部105は、閾値線パラメータDB300から取得した各レベルの水位境界線の座標に基づき、平常画像上の座標系における各レベルの水位境界線の領域を特定する。そして、水位判定部105は、特定した領域及び現在画像の画素情報に基づき、レベル1の水位境界線が、現在画像の水面の部分のいずれとも一致していないか(水位境界線が水面上に全くないか)否かを判定する。水位境界線が水面上に一部でもある場合は、水位境界線が水面と全く一致しなくなるまで、次のレベル(レベル2、3、・・・)の水位境界線について繰り返し処理を行う。そして、あるレベルの水位境界線が水面と全く一致しなくなった場合に、そのときのレベルを、現在画像の水位のレベルとする。なお、そのようなレベルを特定できなかった場合は、水位判定部105は、現在画像の水位のレベルは正常の水位レベルを超えていると判定する。
【0075】
水位判定部105は、s634での水位レベルの推定結果が、初期設定情報113が示す通知の条件を満たしているか否かを判定する。水位判定部105は、初期設定情報113が当該条件を満たしている場合は、s634での水位の推定結果に関する情報(例えば、撮影装置10の識別子、グループ、水位レベル)を、水位管理システム20に送信する
(s635)。その後、水位管理システム20は、受信した情報を画面に表示する。
【0076】
その後、水位判定部105は、未選択の撮影画像があるか否かを確認する(s636)。未選択の撮影画像がある場合は(s636:NO)、水位判定部105は、その未選択の撮影画像を選択してs631の処理を実行する。未選択の撮影画像がない場合は(s636:NO)、水位推測処理s63は終了する。
【0077】
図15は、水位管理システム20が表示する河川40の水位の情報の画面(水位推測結果画面)の一例を示す図である。水位推測結果画面500は、河川40の名称501、撮影装置10の識別子502、グループの名称503、現在の河川40の水位レベル504、及び、その水位のレベルが正常の水位のレベル内であるか否かを示す情報505を表示している。
【0078】
以上のように、本実施形態の水位推測システム30は、貯水部たる河川40を所定の方向から撮影した平常画像上での、河川40の水位を示す、堤防402と河川40の水との境界部(水位境界線)を、複数の水位について設定し、各水位境界線上に水位基準点を設定することにより平常画像上の河川40の水位の変動方向を特定する。そして、水位推測システム30は、現在画像における水面の部分を特定し、平常画像上の各水位での水位境界線、平常画像上の水位の変動方向、及び現在画像の水面の部分に基づき、現在画像における水の水位レベルを推定する。
【0079】
このように、本実施形態の水位推測システム30は、平常画像上で河川40の各水位の線及び水位の変動方向の基準点を設定しておけば、現在の河川40の画像が示す水位のレベルを算出することができる。すなわち、本実施形態の水位推測システム30によれば、貯水部の水位を簡便な手順で精度良く推定することができる。例えば、撮影装置10の位置にかかわらず、河川の水位を任意のタイミングで精度良く推定することができる。
【0080】
また、本実施形態の水位推測システム30は、水位境界線として直線の線分又は曲線を設定し、その直線の線分を対角線とする矩形、又は曲線の両端部を結ぶ線分を対角線とする矩形における重心の位置を水位基準点として設定する。
【0081】
このような処理により、水位の変動を表す水位基準点を簡便に設定することができる。
【0082】
また、本実施形態の水位推測システム30は、各水位境界線として、直線の線分又は曲線部を互いに略平行に設定する。
【0083】
これにより、水位の変動の基準を表す点として正確な水位基準点を設定することができる。
【0084】
また、本実施形態の水位推測システム30は、現在画像における河川40の水位として、平常画像に設定した各水位のうち対応する水位を特定する。
【0085】
このようにすることで、ユーザは、現在の河川40の水位の状態、例えば、水害の発生の危険性があるか否かを容易に把握することができる。
【0086】
以上、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲内で、任意の構成要素を用いて実施可能である。以上説明した実施形態や変形例はあくまで一例であり、発明の特徴が損なわれない限り、本発明はこれらの内容に限定されるものではない。また、上記では種々の実施形態や変形例を説明したが、本発明はこれらの内容に限定されるものではない。本発明の技術的思想の範囲内で考えられるその他の態様も本
発明の範囲内に含まれる。
【0087】
例えば、本実施形態の各装置が備える各機能部の一部は他の装置に設けてもよいし、別装置が備える機能部を同一の装置に設けてもよい。
【0088】
また、本実施形態では、河川の水位を推測するものとしたが、湖、沼、ダム、海(具体的には、港湾等)等の、所定の貯水部(貯水構造)が水を貯留している場合のその水位を推測する場合にも適用できる。
【0089】
また、本実施異形態では、水位推測システム30は、増水方向を決定するものとしたが、減水方向を決定してもよい。
【0090】
また、本実施形態では、水面判定モデル111は、機械学習により作成される学習済みモデルであるとしたが、水面とそれ以外の部分を判別可能であれば、他の種類の数値モデル(例えば、画像のパターンマッチングを行うモデル)を用いてもよい。
【0091】
また、本実施形態では、第1水位境界線、第2水位境界線、第3水位境界線を直線とし、互いに平行であるとしたが(
図6)、必ずしも互いに平行になっていなくてもよい。例えば、ユーザが、河川40の水面と堤防の川表側の法面の状態に応じて水位境界線の入力を行った結果、第1水位境界線、第2水位境界線、及び第3水位境界線が互いに平行になっていなくてもよい。
【符号の説明】
【0092】
1 水位監視システム
10 撮影装置
20 水位管理システム
30 水位推測システム