(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024013637
(43)【公開日】2024-02-01
(54)【発明の名称】原価管理システム、原価管理方法、及び原価管理プログラム
(51)【国際特許分類】
G06Q 40/12 20230101AFI20240125BHJP
G06Q 50/08 20120101ALI20240125BHJP
G06Q 10/00 20230101ALI20240125BHJP
【FI】
G06Q40/00 400
G06Q50/08
G06Q10/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022115884
(22)【出願日】2022-07-20
(71)【出願人】
【識別番号】398040527
【氏名又は名称】株式会社オービック
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小関 峻介
(72)【発明者】
【氏名】新田 駿侍
(72)【発明者】
【氏名】蒲原 崇士
(72)【発明者】
【氏名】上野 剛光
【テーマコード(参考)】
5L049
5L055
【Fターム(参考)】
5L049AA20
5L049CC07
5L055BB63
(57)【要約】
【課題】赤字工事の原価の不正操作について、低コスト及び高精度での早期発見を可能とする原価管理システム、原価管理方法、及び原価管理プログラムを提供することを目的とする。
【解決手段】本実施の形態に係る原価管理システムは、会計年月及び工事毎の事業所、部門、受注金額を有する受注計上データと、会計年月及び工事毎の事業所、部門、原価金額を有する工事原価計上履歴データと、を含む業務データに基づいて、会計年月及び工事毎の累計受注金額及び累計原価金額を含む工事累積データを取得し、累計受注金額<累計原価金額となる場合を異常として検知し、その会計年月及び工事を検知する検知手段と、前記業務データに基づいて、検知した工事について、検知した会計年月の前後の分析用データを分析用画面に表示する表示制御手段と、を備えている。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
制御部を備えた原価管理システムであって、
前記制御部は、
会計年月及び工事毎の事業所、部門、受注金額を有する受注計上データと、会計年月及び工事毎の事業所、部門、原価金額を有する工事原価計上履歴データと、を含む業務データにアクセス可能に構成されており、
前記業務データに基づいて、会計年月及び工事毎の累計受注金額及び累計原価金額を含む工事累積データを取得し、累計受注金額<累計原価金額となる場合を異常として検知し、その会計年月及び工事を検知する検知手段と、
前記業務データに基づいて、検知した工事について、検知した会計年月の前後の分析用データを分析用画面に表示する表示制御手段と、
を備えたことを特徴とする原価管理システム。
【請求項2】
前記表示制御手段は、前記分析用画面の所定のエリアに、異常として検知した工事、会計年月、原価金額、検知方法を含むメッセージを表示することを特徴とする請求項1に記載の原価管理システム。
【請求項3】
前記表示制御手段は、前記分析用画面の所定のエリアに、前記工事累積データに基づいて、異常が検知された工事について、月毎の受注金額と原価金額の発生推移を示すグラフを表示することを特徴とする請求項1に記載の原価管理システム。
【請求項4】
前記業務データは、さらに、契約月、工事、事業所、部門、予定工期を有する工事基本情報データを含み、
前記表示制御手段は、前記業務データに基づいて、異常を検知した工事を管轄している部門について、工事経過月/予定工期で算出される工期進捗率、工事、事業所、部門、累積原価金額/累積受注金額で算出される原価率を含む進捗率別原価率データを取得し、前記分析用画面の所定のエリアに、取得した進捗率別原価率データに基づいて、工事毎の工期進捗率別の原価率推移を示すグラフを表示することを特徴とする請求項1に記載の原価管理システム。
【請求項5】
前記業務データは、原価修正番号、会計年月、付替元工事、付替先工事、原価金額を有する原価修正データを含み、
前記表示制御手段は、前記業務データに基づいて、異常を検知した工事を付替元工事として、その付替先工事について、原価修正番号、事業所、部門、原価金額を含む原価付替明細データを取得し、取得した原価付替明細データのうち、原価金額が最も大きいレコードの付替先工事について、前記業務データに基づいて、会計年月、事業所、部門、累積受注金額、累積原価金額を含む原価付替先工事累積データを取得し、前記分析用画面の所定のエリアに、取得した原価付替先工事累積データに基づいて、月毎の受注金額と原価金額の発生推移を示すグラフを表示することを特徴とする請求項1に記載の原価管理システム。
【請求項6】
前記業務データは、さらに、契約月、工事、事業所、部門、予定工期を有する工事基本情報データを含み、
前記表示制御手段は、取得した原価付替明細データのうち、原価金額が最も大きいレコードの付替先工事を管轄している部門について、前記業務データに基づいて、工事経過月/予定工期で算出される工期進捗率、工事、事業所、部門、累積原価金額/累積受注金額で算出される原価率を含む原価付替先組織の進捗率別原価率データを取得し、前記分析用画面の所定のエリアに、取得した原価付替先組織の進捗率別原価率データに基づいて、工事毎の工期進捗率別の原価率推移を示すグラフを表示することを特徴とする請求項5に記載の原価管理システム。
【請求項7】
前記業務データは、契約月、工事、事業所、部門、予定工期を有する工事基本情報データと、原価修正番号、会計年月、付替元工事、付替先工事、原価金額を有する原価修正データとを含み、
前記制御手段は、異常が検知された工事について、異常を検知した工事を付替元工事として、その付替先工事について、原価修正番号、事業所、部門、原価金額を含む原価付替明細データを取得し、前記分析用画面の所定のエリアに、取得した原価付替明細データに基づいた表を表示することを特徴とする請求項1に記載の原価管理システム。
【請求項8】
前記分析用画面は、データ抽出条件を設定するためのエリアであり、集計単位を事業所又は部門で指定可能な抽出条件エリアを備え、前記表示制御手段は、グラフ又は表の集計単位を、前記抽出条件エリアで指定される事業所又は部門で切り替えることを特徴とする請求項2~7のいずれか1つに記載の原価管理システム。
【請求項9】
制御部を備えた情報処理装置が実行する原価管理方法であって、
前記制御部は、
会計年月及び工事毎の事業所、部門、受注金額を有する受注計上データと、会計年月及び工事毎の事業所、部門、原価金額を有する工事原価計上履歴データと、を含む業務データにアクセス可能に構成されており、
前記制御部において実行される、
前記業務データに基づいて、会計年月及び工事毎の累計受注金額及び累計原価金額を含む工事累積データを取得し、累計受注金額<累計原価金額となる場合を異常として検知し、その会計年月及び工事を検知する検知工程と、
前記業務データに基づいて、検知した工事について、検知した会計年月の前後の分析用データを分析用画面に表示する表示制御工程と、
を含むことを特徴とする原価管理方法。
【請求項10】
制御部を備えた情報処理装置に実行させるための原価管理プログラムであって、
前記制御部は、
会計年月及び工事毎の事業所、部門、受注金額を有する受注計上データと、会計年月及び工事毎の事業所、部門、原価金額を有する工事原価計上履歴データと、を含む業務データにアクセス可能に構成されており、
前記制御部において、
前記業務データに基づいて、会計年月及び工事毎の累計受注金額及び累計原価金額を含む工事累積データを取得し、累計受注金額<累計原価金額となる場合を異常として検知し、その会計年月及び工事を検知する検知工程と、
前記業務データに基づいて、検知した工事について、検知した会計年月の前後の分析用データを分析用画面に表示する表示制御工程と、
を実行させるための原価管理プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原価管理システム、原価管理方法、及び原価管理プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近時、受注した工事について、赤字工事の原価の不正操作(隠蔽操作)が行われることが多い。工事毎の受注金額と原価金額を、経過月別に集計比較して初めて原価の異常に気付くことができる。さらに、不正操作の発覚までに様々なデータ収集・計算処理が必要となるため、多くの作業時間の発生や作業ミス、確認漏れが発生しやすいリスクが存在する。従来、原価を管理するシステムとして、例えば、特許文献1がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1では、赤字工事の原価の不正操作を検出することに関して何ら記載されていない。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであり、赤字工事の原価の不正操作について、低コスト及び高精度での早期発見を可能とする原価管理システム、原価管理方法、及び原価管理プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
制御部を備えた原価管理システムであって、前記制御部は、会計年月及び工事毎の事業所、部門、受注金額を有する受注計上データと、会計年月及び工事毎の事業所、部門、原価金額を有する工事原価計上履歴データと、を含む業務データにアクセス可能に構成されており、前記業務データに基づいて、会計年月及び工事毎の累計受注金額及び累計原価金額を含む工事累積データを取得し、累計受注金額<累計原価金額となる場合を異常として検知し、その会計年月及び工事を検知する検知手段と、前記業務データに基づいて、検知した工事について、検知した会計年月の前後の分析用データを分析用画面に表示する表示制御手段と、を備えたことを特徴とする。
【0007】
また、本発明の一態様によれば、前記表示制御手段は、前記分析画面の所定のエリアに、異常として検知した工事、会計年月、原価金額、検知方法を含むメッセージを表示することにしてもよい。
【0008】
また、本発明の一態様によれば、前記表示制御手段は、前記分析用画面の所定のエリアに、前記工事累積データに基づいて、異常が検知された工事について、月毎の受注金額と原価金額の発生推移を示すグラフを表示することにしてもよい。
【0009】
また、本発明の一態様によれば、前記業務データは、さらに、契約月、工事、事業所、部門、予定工期を有する工事基本情報データを含み、前記表示制御手段は、前記業務データに基づいて、異常を検知した工事を管轄している部門について、工事経過月/予定工期で算出される工期進捗率、工事、事業所、部門、累積原価金額/累積受注金額で算出される原価率を含む進捗率別原価率データを取得し、前記分析用画面の所定のエリアに、取得した進捗率別原価率データに基づいて、工事毎の工期進捗率別の原価率推移を示すグラフを表示することにしてもよい。
【0010】
また、本発明の一態様によれば、前記業務データは、原価修正番号、会計年月、付替元工事、付替先工事、原価金額を有する原価修正データを含み、前記表示制御手段は、前記業務データに基づいて、異常を検知した工事を付替元工事として、その付替先工事について、原価修正番号、事業所、部門、原価金額を含む原価付替明細データを取得し、取得した原価付替明細データのうち、原価金額が最も大きいレコードの付替先工事について、前記業務データに基づいて、会計年月、事業所、部門、累積受注金額、累積原価金額を含む原価付替先工事累積データを取得し、取得した原価付替先工事累積データに基づいて、前記分析用画面の所定のエリアに、月毎の受注金額と原価金額の発生推移を示すグラフを表示することにしてもよい。
【0011】
また、本発明の一態様によれば、前記業務データは、さらに、契約月、工事、事業所、部門、予定工期を有する工事基本情報データを含み、取得した原価付替明細データのうち、原価金額が最も大きいレコードの付替先工事を管轄している部門について、前記業務データに基づいて、工事経過月/予定工期で算出される工期進捗率、工事、事業所、部門、累積原価金額/累積受注金額で算出される原価率を含む原価付替先組織の進捗率別原価率データを取得し、前記分析用画面の所定のエリアに、取得した原価付替先組織の進捗率別原価率データに基づいて、工事毎の工期進捗率別の原価率推移を示すグラフを表示することにしてもよい。
【0012】
また、本発明の一態様によれば、前記業務データは、契約月、工事、事業所、部門、予定工期を有する工事基本情報データと、原価修正番号、会計年月、付替元工事、付替先工事、原価金額を有する原価修正データとを含み、前記異常が検知された工事について、異常を検知した工事を付替元工事として、その付替先工事について、原価修正番号、事業所、部門、原価金額を含む原価付替明細データを取得し、前記分析用画面の所定のエリアに、取得した原価付替明細データに基づいた表を表示することにしてもよい。
【0013】
また、本発明の一態様によれば、前記分析用画面は、データ抽出条件を設定するためのエリアであり、集計単位を事業所又は部門で指定可能な抽出条件エリアを備え、前記表示制御手段は、グラフ又は表の集計単位を、前記抽出条件エリアで指定される事業所又は部門で切り替えることにしてもよい。
【0014】
また、上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明は、制御部を備えた情報処理装置が実行する原価管理方法であって、前記制御部は、会計年月及び工事毎の事業所、部門、受注金額を有する受注計上データと、会計年月及び工事毎の事業所、部門、原価金額を有する工事原価計上履歴データと、を含む業務データにアクセス可能に構成されており、前記制御部において実行される、前記業務データに基づいて、会計年月及び工事毎の累計受注金額及び累計原価金額を含む工事累積データを取得し、累計受注金額<累計原価金額となる場合を異常として検知し、その会計年月及び工事を検知する検知工程と、前記業務データに基づいて、検知した工事について、検知した会計年月の前後の分析用データを分析用画面に表示する表示制御工程と、を含むことを特徴とする。
【0015】
また、上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明は、制御部を備えた情報処理装置に実行させるための原価管理プログラムであって、前記制御部は、会計年月及び工事毎の事業所、部門、受注金額を有する受注計上データと、会計年月及び工事毎の事業所、部門、原価金額を有する工事原価計上履歴データと、を含む業務データにアクセス可能に構成されており、前記制御部において、前記業務データに基づいて、会計年月及び工事毎の累計受注金額及び累計原価金額を含む工事累積データを取得し、累計受注金額<累計原価金額となる場合を異常として検知し、その会計年月及び工事を検知する検知工程と、前記業務データに基づいて、検知した工事について、検知した会計年月の前後の分析用データを分析用画面に表示する表示制御工程と、を実行させるための原価管理プログラムであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明は、赤字工事の原価の不正操作について、低コスト及び高精度での早期発見を可能とすることが可能となるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】
図1は、赤字工事のイメージを説明するための図である。
【
図2】
図2は、原価の異常検知イメージを説明するための図である。
【
図3】
図3は、分析初期画面の表示例を示す図である。
【
図4】
図4は、分析用画面の表示例を示す図である。
【
図5】
図5は、実施の形態の原価管理システムのハードウェア構成を示すブロック図である。
【
図6】
図6は、受注計上データの構成例を示す図である。
【
図7】
図7は、工事原価計上履歴データの構成例を示す図である。
【
図8】
図8は、原価修正データの構成例を示す図である。
【
図9】
図9は、工事基本情報データの構成例を示す図である。
【
図10】
図10は、自動検知実行スケジュールデータの構成例を示す図である。
【
図11】
図11は、工事データの取得範囲条件データの構成例を示す図である。
【
図12】
図12は、異常判定結果データの構成例を示す図である。
【
図13】
図13は、異常判定結果メッセージデータの構成例を示す図である。
【
図14】
図14は、異常判定結果メッセージ詳細データの構成例を示す図である。
【
図15】
図15は、本実施の形態の原価管理システムの制御部の全体の処理の概略を説明するためのフローを示す図である。
【
図16】
図16は、本実施の形態における原価管理システムの制御部の処理の具体例を説明するための図である。
【
図17】
図17は、本実施の形態における原価管理システムの制御部の処理の具体例を説明するための図である。
【
図18】
図18は、本実施の形態における原価管理システムの制御部の処理の具体例を説明するための図である。
【
図19】
図19は、本実施の形態における原価管理システムの制御部の処理の具体例を説明するための図である。
【
図20】
図20は、本実施の形態における原価管理システムの制御部の処理の具体例を説明するための図である。
【
図21】
図21は、本実施の形態における原価管理システムの制御部の処理の具体例を説明するための図である。
【
図22】
図22は、本実施の形態における原価管理システムの制御部の処理の具体例を説明するための図である。
【
図23】
図23は、本実施の形態における原価管理システムの制御部の処理の具体例を説明するための図である。
【
図24】
図24は、本実施の形態における原価管理システムの制御部の処理の具体例を説明するための図である。
【
図25】
図25は、本実施の形態における原価管理システムの制御部の処理の具体例を説明するための図である。
【
図26】
図26は、本実施の形態における原価管理システムの制御部の処理の具体例を説明するための図である。
【
図27】
図27は、本実施の形態における原価管理システムの制御部の処理の具体例を説明するための図である。
【
図28】
図28は、本実施の形態における原価管理システムの制御部の処理の具体例を説明するための図である。
【
図29】
図29は、本実施の形態における原価管理システムの制御部の処理の具体例を説明するための図である。
【
図30】
図30は、本実施の形態における原価管理システムの制御部の処理の具体例を説明するための図である。
【
図31】
図31は、本実施の形態における原価管理システムの制御部の処理の具体例を説明するための図である。
【
図32】
図32は、本実施の形態における原価管理システムの制御部の処理の具体例を説明するための図である。
【
図33】
図33は、本実施の形態における原価管理システムの制御部の処理の具体例を説明するための図である。
【
図34】
図34は、本実施の形態における原価管理システムの制御部の処理の具体例を説明するための図である。
【
図35】
図35は、本実施の形態における原価管理システムの制御部の処理の具体例を説明するための図である。
【
図36】
図36は、本実施の形態における原価管理システムの制御部の処理の具体例を説明するための図である。
【
図37】
図37は、本実施の形態における原価管理システムの制御部の処理の具体例を説明するための図である。
【
図38】
図38は、本実施の形態における原価管理システムの制御部の処理の具体例を説明するための図である。
【
図39】
図39は、本実施の形態における原価管理システムの制御部の処理の具体例を説明するための図である。
【
図40】
図40は、本実施の形態における原価管理システムの制御部の処理の具体例を説明するための図である。
【
図41】
図41は、本実施の形態における原価管理システムの制御部の処理の具体例を説明するための図である。
【
図42】
図42は、本実施の形態における原価管理システムの制御部の処理の具体例を説明するための図である。
【
図43】
図43は、本実施の形態における原価管理システムの制御部の処理の具体例を説明するための図である。
【
図44】
図44は、本実施の形態における原価管理システムの制御部の処理の具体例を説明するための図である。
【
図45】
図45は、本実施の形態における原価管理システムの制御部の処理の具体例を説明するための図である。
【
図46】
図46は、本実施の形態における原価管理システムの制御部の処理の具体例を説明するための図である。
【
図47】
図47は、本実施の形態における原価管理システムの制御部の処理の具体例を説明するための図である。
【
図48】
図48は、本実施の形態における原価管理システムの制御部の処理の具体例を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を適用した実施の形態となる原価管理システムを、図面に基づいて詳細に説明する。
【0019】
[1.概要]
本発明の概要を、(背景・前提)、(課題)、(施策・効果)、(分析画面)の順に説明する。
【0020】
(背景・前提)
近年、会社の不正・従業員や幹部の横領など、不祥事が増加傾向にある。コロナによる影響も重なり、さらなる増加を促している。これらの不正は、人の手で検知できる範囲を超えてきており、人の手以外の手段で早期発見・対処できる仕組みが求められている。
【0021】
不正の早期発見・対処への対策、人の手によらない対策として不正パターンをシナリオ化して、定期的に自動で検知するシステムを構築することが望まれる。シナリオのパターンは以下のように多数存在しており、それぞれに対応したシステムを構築する必要がある。
【0022】
・売上実績に関する不正:売上金額の改ざん→実績増し
・仕入実績に関する不正:取引先との共謀による架空支払→癒着
・在庫に関する不正:期末在庫金額の水増し→利益操作
・原価に関する不正:工事原価の付け替え→工事毎の利益操作
【0023】
本実施の形態では、原価に関する不正シナリオに着目する。原価に関する不正の目的として下記が考えられる。
【0024】
・赤字となった工事の原価を他の黒字の工事に付け替えて、黒字の工事に修正→赤字工事の発生=会社の信用を落とす原因となるため、隠蔽しようとする。
・工事損失引当金計上の回避→(工事会計基準)赤字工事が認識されたタイミングで工事損失引当金の計上が必要となる。会社の経営リスクとして外部に認識されやすく、会計・税務上の粉飾決算を行う動機につながる。このため、組織ぐるみの悪質な利益操作につながりやすい。
・管理者責任の追及を回避→プロジェクト責任者レベルでは、このインセンティブが働きやすい。工事利益を会社単位でみた場合に、総利益が変わらない。このため、原価付け替えが不正処理となると認識できていない社員がいるケースが存在する。
【0025】
本実施の形態では、これらの原価に関する不正を防止する対策の一つとして利用可能なシステムを構築して提案する。
【0026】
当シナリオで扱う赤字工事を下記のように定義する。赤字工事は、工事の受注金額を上回る原価が発生している工事である。不正の特徴として、下記が挙げられる。
【0027】
1.工期中に工事の受注金額を超える原価が発生する。
2.原価を別工事に付け替える操作が発生する。
3.工期末には受注金額ギリギリの原価となる。
【0028】
図1は、赤字工事のイメージを説明するための図である。
図1において、工事Aと工事Bを受注して、原価を計上した場合を一例として説明する。工事Aは、コスト(原価金額)が売上(受注金額)を上回っているため、赤字工事となっている。工事Aのコストの一部を工事Bに付け替えると、工事Aが黒字工事として認識される。工事Aと工事Bの利益を合計した総利益は原価付替前後で変化していない。
【0029】
原価付け替えにおける、正常パターンと不正パターンの違いについて説明する。
・正常パターン
運用イメージ:共通負担原価の配賦→いずれも利益が出る範囲内で原価発生する場合を想定しており、科目(費目)訂正や原価付替先ミスの修正の場合である。
・不正パターン
運用イメージ:黒字工事への原価付け替え→赤字となる工事で発生し、原価付け替え後はギリギリ利益が出る原価率となる場合である。
【0030】
原価付け替え元工事の、原価付け替え前後の原価の変動を確認することで、不正かどうかの切り分けが可能である。
【0031】
異常の検知方法について説明する。正常であれば、履歴に赤字となる原価の計上が残らない。不正が行われるケースとして、下記の流れが考えられる。
(1)工期中に発生した原価を工事に紐づけて計上
(2)工事毎の原価を確認して、赤字工事であることを認識
(3)赤字隠蔽のため、原価を別工事に付け替え
【0032】
そのため、本シナリオでは「履歴上に赤字となるタイミングを持つ工事が存在しないか」に着目する。次に、ユーザ側で分析画面を用いて検知されたデータを確認する。原価の発生傾向や赤字→黒字に修正されている状況を確認して、異常なデータか否かの判断を行う。
【0033】
図2は、原価の異常検知イメージを説明するための図である。
図2において、工事Aを10,000円、工事Bを20,000円で受注した場合を一例として説明する。工事Aについては、2021/05~2021/07までの発注が12,000円となっており、赤字となっている。他方、工事Bについては、2021/04~2021/7までの発注は10,000円であり、黒字となっている。
【0034】
ここで、2021/08/05に、工事Aから工事Bに3,000円の原価付替を行う。これは、工事Aが赤字→黒字に修正されており、本シナリオで不正となるパターン(不正処理)である。
【0035】
工事完成時は、工事Aの利益が1,000円(黒字)、工事Bの利益が5,000円(黒字)となっており、合計利益は、6,000円で、原価付替前後で変化しない。
【0036】
さらに、不正をよりばれにくくするため、複数の工事に分散して原価を付け替えるケースも考えられる。
【0037】
(課題)
不正パターンを検知する場合に以下の課題(1)(2)がある。
【0038】
(1)複数の組み合わせによる集計・比較確認が必要、集計処理に時間がかかる。
確認対象は、工事に紐づく全ての受注データ・原価データであり、必要な集計単位は、以下の単位「 」での月毎に集計が必要となる。
【0039】
「工事」→経過月毎の工事原価の状況と増加傾向の確認が必要である。
「工事×組織」→不正処理を行っている組織に気づくために、「工事×組織」毎の原価より増加傾向の確認が必要となる。
「受注金額・原価金額」→赤字原価が発生している実態の確認が必要となる。
「原価付け替え元工事・原価付け替え先工事」→付け替え先工事の原価が継続して黒字となっていること、また、原価付け替えにより一時的に原価金額が急増している状態確認が必要である。
【0040】
確認方法:上記「必要な集計単位」毎に、月別の受注金額・原価金額を集計する必要がある。このため、膨大なデータから複数の集計が必要となるため、作業に時間がかかる。
同一の集計単位内で月毎に比較する必要があるため、確認漏れ・ミスが発生する。
【0041】
(2)工事毎に月経過毎の累積原価金額を集計する必要があり、時間がかかり確認ミス・漏れが発生しやすい。
赤字原価の履歴確認=受注金額を超える原価金額となるタイミングを確認する必要がある最新の原価情報は調整された後の黒字原価となるため、原価調整前の状態までさかのぼった確認が必要となる。また、工事毎の原価を集計するだけでもかなりの数のデータが想定されるが、さらに、原価計上の履歴毎の集計が必要となるため、より膨大なデータの集計処理が必要となる。このように、集計時間がかかり、集計ミスや比較対象選択ミスといった人為的なミスが発生する。
【0042】
(施策・効果)
本実施の形態の原価管理システムでは、上記課題を解決するために、以下の(1)~(6)の施策によって不正判別をサポートする。
【0043】
(1)過去に赤字となる原価が計上された履歴が残っている工事を自動で検知する。
工事の工期間で経過月毎の原価を自動算出、受注金額を上回る原価が発生している履歴を検知→集計コストを削減、集計ミス・計算ミスを排除する。履歴上赤字となったタイミングが存在していることの確認漏れを防止する。
【0044】
(2)異常検知された工事の月別の受注金額と原価金額を集計、工期間の原価金額の増加傾向を可視化する。
過去に受注金額を上回る原価金額が発生している状態を月単位の時系列で確認できるようにする。原価の推移は以下のパターンがある。
・工期末にかけて原価増加→通常の原価発生傾向
・受注金額を超えた原価発生→赤字工事となる瞬間
・受注金額をギリギリ超えない程度に翌月原価減少→赤字工事を隠蔽した形跡
各月の受注・原価金額の集計コストを排除でき、月毎の比較確認の漏れ・ミスがなくなる。
【0045】
(3)異常検知された工事を管理している組織の情報に着目して、組織が管理している工事毎の原価率を進捗率単位で集計して可視化する。
工事の原価の調整の目的→赤字工事の隠蔽操作(組織・会社の評価を守る)が多い。担当者個人単位で行う不正とは考えにくい。組織単位での不正が行われることを想定:複数の工事で不正操作が行われている可能性が高い。組織が管理する工事の進捗率毎の原価率算出コストを排除でき、工事毎の確認漏れ・ミスがなくなる。また、組織別の状況確認より、怪しい組織を特定でき、影響範囲を迅速に把握できる。
【0046】
(4)異常検知された工事の原価付け替え先工事に着目する。
月別の受注金額と原価金額を集計、工期間の原価金額の増加傾向を可視化する。特定のタイミングで原価が急激に増える傾向を確認できる可能性がある。原価付け替え先では、
以下のパターンで原価が増加する場合がある。
・工期末にかけて原価増加→通常の原価発生傾向
・他工事から原価付け替え→急な原価増加(今までの傾向と異なる原価の増加)
各月の受注・原価金額の集計コストを排除でき、月毎の比較確認の漏れ・ミスがなくなる。原価付け替え先工事の「過去の原価の状態」と「原価付け替え後の状態」を確認することで、利益の一部を不正隠蔽用にあてた形跡を確認できる。
【0047】
(5)異常検知された工事の原価付け替え先工事を管理している組織の情報に着目し、組織が管理している工事毎の原価率を進捗率単位で集計して可視化する。
原価の付け替えの前提条件:原価付け替え元と先の両方をコントロールできる。原価が増える=利益が減る。利益コントロールがしやすい環境でなければ不正がばれやすい。付け替え先の工事管理組織によって、不正の見え方が変わる。
・付け替え元組織と同一組織→組織内で不正操作を行っている(単一組織の不正)。
・付け替え元組織と異なる組織→組織間で共謀して不正操作を行っている(複数組織の不正)。
「原価付け替え元工事」と「付け替え先工事」それぞれの組織情報を集計するためのコストを排除できる。不正の原因を調査する必要がある範囲を迅速に把握することができる。
【0048】
(6)原価付け替えデータの明細を一覧にして可視化する。
原価付け替え前後のデータより、不正の特徴を分析可能とする。特徴例)原価付替処理の担当者(責任者)とデータ登録者が異なる=他人情報を悪用した形跡。付け替え先が複数あった場合にも、付け替え先に限定した情報を迅速に確認できる。
【0049】
(分析画面)
本実施の形態の原価管理システムの分析画面について説明する。分析画面では、「工事別の受注・原価金額」と「原価付け替え元と先の工事の原価率」を出力する。異常検知した情報は、異常と一目でわかるように色や文字サイズを変えて強調表現を行う。確認できる異常検知データは、工事毎の受注金額を超える原価金額の発生履歴(赤字工事履歴)が対象となっており、赤字工事となっていた履歴を持つ工事を検知する。
【0050】
分析画面は、
図3に示すような分析初期画面と、
図4に示すような分析用画面とで構成される。分析画面は、
図3から
図4の順番で画面が切り替わる。
【0051】
図3の分析初期画面では、異常を検知した結果メッセージ表示を一覧で表示して、異常を検知した結果メッセージを概要レベルで出力する。
【0052】
エリアA1は、異常検知処理に関するメッセージを表示するエリアである。異常として検知されたタイミング・工事・検知された月の原価金額を表示する。概要ベースで出力するため、詳細な検知方法についてはメッセージを選択して画面を切り替える必要がある。異常として検知された情報が多数存在した場合は、複数縦並びで表示される。
【0053】
図4の分析用画面では、異常を検知した結果メッセージの分析に必要なグラフを表示
する。
図3の分析初期画面でメッセージを選択したタイミングで切り替わる。分析に必要なグラフを表示して、メッセージは詳細な検知に関わる情報を出力する。
図4の分析用画面は、エリアA1~エリアA7の複数の表示エリアを備えている。
【0054】
(1)エリアA1は、異常検知処理に関するメッセージを表示するエリアである。「異常を検知する際に使用した検知方法」や「異常を検知したデータのキーとなる情報」を表示する。異常として検知された情報が複数ある場合は、その数分のメッセージ表示を行う。表示されたメッセージをクリックすると、エリアA2~エリアA6のグラフにおいて、クリックした異常検知情報に関連する部分を強調する。
【0055】
(2)エリアA2は、異常検知された工事に紐づく受注金額と原価金額を出力するグラフ1を表示するエリアである。「月毎の受注金額と原価金額の発生推移」を確認できるグラフ1を出力する。異常検知された工事が赤字工事となるまでの推移、赤字が黒字にかわる推移を確認できる。
【0056】
(3)エリアA3は、「異常検知された工事を管理している組織」が管理している工事毎の原価率を出力するグラフ2を表示するエリアである。「工事毎の工期進捗率別の原価率推移」を比較確認できるグラフ2を出力する。異常検知された工事以外にも不自然な推移をしている工事がないか確認できる。例えば、管理している別工事への原価付け替え=付け替え先の工事の原価率が急増するタイミングが可視化される可能性がある。
【0057】
(4)エリアA4は、原価付け替え先工事に紐づく受注金額と原価金額を出力するグラフ3を表示するエリアである。「月毎の受注金額と原価金額の発生推移」を確認できるグラフ3を出力する。原価付け替え前までは利益が大きく、原価付け替え後に原価が急増している推移を確認できる。
【0058】
(5)エリアA5は、「原価付け替え先工事を管理している組織」が管理している工事毎の原価率を出力するグラフ4を表示するエリアである。「工事毎の工期進捗率別の原価率推移」を比較確認できるグラフを出力する。組織内で管理している工事を原価の付け替え先とした場合、エリアA3のグラフ2と同じ情報が表示される。違う組織の場合、別工事でも原価付け替え先となっているものが存在する可能性がある。
【0059】
(6)エリアA6は、付け替えが行われた原価の伝票の一覧を出力する表を出力するエリアである。「原価となる伝票事の明細」と「付け替え先工事の情報」を確認できる表を出力する。原価を分散して調整している場合、複数の付け替え先の工事が確認できる。利益の付け替え目的による原価付け替えの場合、付け替え先の工事が完了または先の完了予定日となっていることを確認できる。
【0060】
(7)エリアA7は、エリアA2~A6に出力するグラフや表について、基準日、期間開始、期間終了、集計単位(部門又は事業所)、工事種類等の抽出条件を指定するための抽出条件指定エリアである。部門と事業所の選択を切り替えることで、部門又は事業所で集計単位を切り替えることができる。
【0061】
このように、本実施の形態の原価管理システムでは、(1)膨大な業務データの中から定期的に原価の異常を検知でき、(2)工事毎・受注原価毎・組織毎・会計年月毎といった様々な条件でデータを集計して比較が必要となる内容を、システムにて自動で処理するため、作業ミスのリスクを回避でき、(3)異常とその根拠を分析確認する画面があるため、信頼性の高い原価の不正の検知を実施でき、赤字工事の原価の不正操作について、低コスト及び高精度での早期発見が可能となる。
【0062】
[2.構成]
図5は、本実施の形態に係る原価管理システム100の構成の一例を示すブロック図である。
図5において、原価管理システム100は、制御部102と通信インターフェース部104と記憶部106と入出力インターフェース部108と、を備えている。原価管理システム100が備えている各部は、任意の通信路を介して通信可能に接続されている。
【0063】
通信インターフェース部104は、ルータ等の通信装置および専用線等の有線または無線の通信回線を介して、原価管理システム100をネットワーク300に通信可能に接続する。通信インターフェース部104は、他の装置と通信回線を介してデータを通信する機能を有する。ここで、ネットワーク300は、原価管理システム100とサーバ200等とを相互に通信可能に接続する機能を有し、例えばインターネットやLAN(Local Area Network)等である。
【0064】
入出力インターフェース部108には、入力装置112および出力装置114が接続されている。出力装置114には、モニタ(家庭用テレビを含む)の他、スピーカやプリンタを用いることができる。入力装置112には、キーボード、マウス、および、マイクの他、マウスと協働してポインティングデバイス機能を実現するモニタを用いることができる。なお、以下では、出力装置114をモニタ114として記載する場合がある。
【0065】
記憶部106には、各種のデータベース、テーブル、および、ファイルなどが格納される。記憶部106には、OS(Operating System)と協働してCPU(Central Processing Unit)に命令を与えて各種処理を行うためのコンピュータプログラムが記録される。記憶部106として、例えば、RAM(Random Access Memory)・ROM(Read Only Memory)等のメモリ装置、ハードディスクのような固定ディスク装置、フレキシブルディスク、および、光ディスク等を用いることができる。
【0066】
記憶部106は、業務データベース106aと、異常検知実行用データテーブル106bと、異常判定結果データテーブル106cと、を備えている。
【0067】
業務データベース106aは、業務データを格納するためのデータベースである。業務データは、受注計上データ、工事原価計上履歴データ、原価修正データ、工事基本情報データ等を含んでいる。
図6は、受注計上データの構成例、
図7は工事原価計上履歴データの構成例、
図8は、原価修正データの構成例、
図9は、工事基本情報データの構成例を示す図である。
【0068】
受注計上データは、
図6に示すように、会計年月、工事名、事業所、部門、担当者、受注金額を含んでいてもよい。
【0069】
工事原価計上履歴データは、
図7に示すように、会計年月、工事名、事業所、部門、担当者、原価金額、原価伝票番号、原価修正番号、原価修正金額を含んでいてもよい。
【0070】
原価修正データは、
図8に示すように、原価修正番号、会計年月、工事原価紐日、付替元工事、付替先工事、担当者、登録担当者、原価金額を含んでいてもよい。
【0071】
工事基本情報データは、
図9に示すように、契約月、工事名、事業所、部門、予定工期(月)、完了予定日、完了日、工事種類を含んでいてもよい。
【0072】
異常検知実行用データテーブル106bは、自動検知実行スケジュールデータや工事データの取得範囲条件データ等を格納するためのテーブルである。
図10は、自動検知実行スケジュールデータの構成例、
図11は、工事データの取得範囲条件データの構成例を示す図である。
【0073】
自動検知実行スケジュールデータは、
図10に示すように、検知ID、スケジュールID、実行条件、実行時間を含んでいてもよい。検知ID及びスケジュールIDは、データ参照時のkey情報となる。検知部102bは、自動検知実行スケジュールデータに従って、原価の異常検知の自動実行を行う。同図に示す例では、1行目は、検知ID「AB001」、スケジュールID「SH001」、実行条件「毎月の5営業日目」、実行時間「23:00」となっている。ここで、実行条件を、「5営業日目」としているのは、前月の月次締め処理が確定したタイミングを想定している。
【0074】
工事データの取得範囲条件データは、
図11に示すように、検知ID、スケジュールID、対象列、FROM条件、TO条件を含んでいてもよい。検知ID及びスケジュールIDは、データ参照時のkey情報となる。検知部102bは、工事データの取得範囲条件データで指定される取得範囲内で、原価の異常検知の自動実行を行う。同図に示す例では、1行目は、検知ID「AB001」、スケジュールID「SH001」、対象列「会計年月」、FROM条件「自動検知処理月-1年」、TO条件「自動検知処理月-1月」となっている。
【0075】
異常判定結果データテーブル106cは、異常判定結果データ、異常判定結果メッセージデータ、異常判定結果メッセージ詳細データ等の異常検知実行の判定結果を格納するためのテーブルである。検知部102bは、原価の異常を検知した場合に、異常判定結果データ、異常判定結果メッセージデータ、異常判定結果メッセージ詳細データを異常判定結果データテーブル106cに格納する。
図12は、異常判定結果データの構成例、
図13は、異常判定結果メッセージデータの構成例、
図14は、異常判定結果メッセージ詳細データの構成例を示す図である。
【0076】
異常判定結果データは、
図12に示すように、検知ID、JOBID、メッセージID、会計年月、事業所、部門、工事、累積受注金額、累積原価金額を含んでいてもよい。検知ID及びJOBIDは、データ参照時のkey情報となる。
【0077】
異常判定結果メッセージデータは、
図13に示すように、検知ID、JOBID、メッセージID、異常度、定義名、概要、検知対象を含んでいてもよい。検知ID及びJOBIDは、データ参照時のkey情報となる。
【0078】
異常判定結果メッセージ詳細データは、
図14に示すように、検知ID、JOBID、メッセージID、検知手法、基準値名、基準値、比較対象名、比較対象、判定方法を含んでいてもよい。検知ID及びJOBIDは、データ参照時のkey情報となる。
【0079】
図5に戻り、制御部102は、原価管理システム100を統括的に制御するCPU等である。制御部102は、OS等の制御プログラム・各種の処理手順等を規定したプログラム・所要データなどを格納するための内部メモリを有し、格納されているこれらのプログラムに基づいて種々の情報処理を実行する。
【0080】
制御部102は、記憶部106に格納されている、業務データベース106a、異常検知実行用データテーブル106b、異常判定結果データテーブル106c等にアクセス可能に構成されている。なお、業務データベース106a、異常検知実行用データテーブル106b、異常判定結果データテーブル106cは、他の場所(例えば、サーバ200)に設けられていてもよく、制御部102がアクセス可能な構成であればよい。
【0081】
制御部102は、機能概念的に、記憶制御部102aと、検知部102bと、表示制御部102cと、を備えている。
【0082】
記憶制御部102aは、例えば、ネットワーク300を介して接続される不図示の業務システムから日々の業務データを取得して業務データベース106aに格納してもよく、また、モニタ114に表示される不図示の入力画面でのオペレータの操作等に応じて、日々の業務データを入力して、業務データベース106aに格納してもよい。
【0083】
また、記憶制御部102aは、例えば、モニタ114に表示される不図示のデータ設定画面でのオペレータの操作等に応じて、自動検知実行スケジュールデータや工事データの取得範囲条件データを設定して、異常検知実行用データテーブル106bに格納する。
【0084】
検知部102bは、異常検知実行用データテーブル106bに格納されている自動検知実行スケジュールデータ及び工事データの取得範囲条件データに従って、原価の異常検出を実行し、業務データベース106aに格納されている業務データに基づいて、会計年月及び工事毎の累計受注金額及び累計原価金額を含む工事累積データを取得し、累計受注金額<累計原価金額となる場合を異常として検知し、その会計年月及び工事を検知する。検知部102bは、異常を検知した場合には、異常判定結果データ、異常判定結果メッセージデータ、及び異常判定結果メッセージ詳細データを異常判定結果データテーブル106cに格納する。
【0085】
表示制御部102cは、モニタ114への分析画面(分析初期画面、分析用画面)の表示制御を行う。表示制御部102cは、業務データベース106aに格納されている業務データに基づいて、検知部102bで異常を検知した工事について、検知した会計年月の前後の分析用データ(例えば、
図4のグラフ1~グラフ4、表等)を分析用画面に表示する。
【0086】
表示制御部102cは、分析用画面の所定のエリア(例えば、
図4のエリアA1)に、異常として検知した工事、会計年月、原価金額、検知方法を含むメッセージを表示することにしてもよい。
【0087】
表示制御部102cは、分析用画面の所定のエリア(例えば、
図4のエリアA2)に、工事累積データに基づいて、異常が検知された工事について、月毎の受注金額と原価金額の発生推移を示すグラフ(例えば、
図4のグラフ1)を表示することにしてもよい。
【0088】
業務データは、さらに、契約月、工事、事業所、部門、予定工期を有する工事基本情報データを含むことにしてもよく、表示制御部102cは、業務データに基づいて、異常を検知した工事を管轄している部門について、工事経過月/予定工期で算出される工期進捗率、工事、事業所、部門、累積原価金額/累積受注金額で算出される原価率を含む進捗率別原価率データを取得し、分析用画面の所定のエリア(例えば、
図4のエリアA3)に、取得した進捗率別原価率データに基づいて、工事毎の工期進捗率別の原価率推移を示すグラフ(例えば、
図4のグラフ2)を表示することにしてもよい。
【0089】
業務データは、原価修正番号、会計年月、付替元工事、付替先工事、原価金額を有する原価修正データを含むことにしてもよく、表示制御部102cは、業務データに基づいて、異常を検知した工事を付替元工事として、その付替先工事について、原価修正番号、事業所、部門、原価金額を含む原価付替明細データを取得し、取得した原価付替明細データのうち、原価金額が最も大きいレコードの付替先工事について、業務データに基づいて、会計年月、事業所、部門、累積受注金額、累積原価金額を含む原価付替先工事累積データを取得し、分析用画面の所定のエリア(例えば、
図4のエリアA4)に、取得した原価付替先工事累積データに基づいて、月毎の受注金額と原価金額の発生推移を示すグラフ(例えば、
図4のグラフ3)を表示することにしてもよい。
【0090】
業務データは、さらに、契約月、工事、事業所、部門、予定工期を有する工事基本情報データを含むことにしてもよく、表示制御部102cは、取得した原価付替明細データのうち、原価金額が最も大きいレコードの付替先工事を管轄している部門について、前記業務データに基づいて、工事経過月/予定工期で算出される工期進捗率、工事、事業所、部門、累積原価金額/累積受注金額で算出される原価率を含む原価付替先組織の進捗率別原価率データを取得し、分析用画面の所定のエリア(例えば、
図4のエリアA5)に、取得した原価付替先組織の進捗率別原価率データに基づいて、工事毎の工期進捗率別の原価率推移を示すグラフ(例えば、グラフA4)を表示することにしてもよい。
【0091】
業務データは、契約月、工事、事業所、部門、予定工期を有する工事基本情報データと、原価修正番号、会計年月、付替元工事、付替先工事、原価金額を有する原価修正データとを含むことにしてもよく、表示制御部102cは、異常が検知された工事について、異常を検知した工事を付替元工事として、その付替先工事について、原価修正番号、事業所、部門、原価金額を含む原価付替明細データを取得し、分析用画面の所定のエリア(例えば、
図4のエリアA6)に、取得した原価付替明細データに基づいた表を表示することにしてもよい。
【0092】
また、分析用画面は、データ抽出条件を設定するためのエリアであり、集計単位を事業所又は部門で指定可能な抽出条件エリア(例えば、
図4のエリアA7)を備え、表示制御部102cは、グラフ又は表の集計単位を、抽出条件エリアで指定される事業所又は部門で切り替えることにしてもよい。
【0093】
[3.具体例]
図5~
図48を参照して、本実施の形態における原価管理システム100の制御部102の処理の具体例について説明する。
【0094】
(3-1.全体の処理)
図15は、本実施の形態における原価管理システムの制御部102の全体の処理の概略を説明するためのフローを示す図である。
【0095】
図15を参照して、本実施の形態における原価管理システム100の制御部102の全体の処理の概略を説明する。
図15において、検知部102bは、異常検知処理を実行する(ステップS1)。具体的には、異常検知処理では、検知部102bは、異常検知実行用データテーブル106bに格納されている自動検知実行スケジュールデータ及び工事データの取得範囲条件データに従って、原価の異常検出を実行し、業務データベース106aに格納されている業務データに基づいて、会計年月及び工事毎の累計受注金額及び累計原価金額を含む工事累積データを取得し、累計受注金額<累計原価金額となる場合を異常として検知し、その会計年月及び工事を検知する。
【0096】
表示制御部102cは、分析用画面表示処理を実行する(ステップS2)。具体的には、分析用画面表示処理では、業務データベース106aに格納されている業務データに基づいて、検知部102bで異常を検知した工事について、検知した会計年月の前後の分析用データ(例えば、
図4のグラフ1~グラフ4、表等)を分析用画面に表示する。
【0097】
この場合、表示制御部102cは、分析用画面のエリアA1に、異常として検知した工事、会計年月、原価金額、検知方法を含むメッセージを表示することにしてもよい。
【0098】
また、表示制御部102cは、分析用画面のエリアA2に、工事累積データに基づいて、異常が検知された工事について、月毎の受注金額と原価金額の発生推移を示すグラフ1を表示することにしてもよい。
【0099】
また、表示制御部102cは、業務データに基づいて、異常を検知した工事を管轄している部門について、工事経過月/予定工期で算出される工期進捗率、工事、事業所、部門、累積原価金額/累積受注金額で算出される原価率を含む進捗率別原価率データを取得し、分析用画面のエリアA3に、取得した進捗率別原価率データに基づいて、工事毎の工期進捗率別の原価率推移を示すグラフ2を表示することにしてもよい。
【0100】
また、表示制御部102cは、業務データに基づいて、異常を検知した工事を付替元工事として、その付替先工事について、原価修正番号、事業所、部門、原価金額を含む原価付替明細データを取得し、取得した原価付替明細データのうち、原価金額が最も大きいレコードの付替先工事について、業務データに基づいて、会計年月、事業所、部門、累積受注金額、累積原価金額を含む原価付替先工事累積データを取得し、分析用画面の所定のエリアA4に、取得した原価付替先工事累積データに基づいて、月毎の受注金額と原価金額の発生推移を示すグラフ3を表示することにしてもよい。
【0101】
また、表示制御部102cは、取得した原価付替明細データのうち、原価金額が最も大きいレコードの付替先工事を管轄している部門について、業務データに基づいて、工事経過月/予定工期で算出される工期進捗率、工事、事業所、部門、累積原価金額/累積受注金額で算出される原価率を含む原価付替先組織の進捗率別原価率データを取得し、分析用画面のエリアA5に、取得した原価付替先組織の進捗率別原価率データに基づいて、工事毎の工期進捗率別の原価率推移を示すグラフ4を表示することにしてもよい。
【0102】
表示制御部102cは、異常が検知された工事について、異常を検知した工事を付替元工事として、その付替先工事について、原価修正番号、事業所、部門、原価金額を含む原価付替明細データを取得し、分析用画面のエリアA6に、取得した原価付替明細データに基づいた表を表示することにしてもよい。
【0103】
また、表示制御部102cは、データ抽出条件を設定するためのエリアであり、集計単位を事業所又は部門で指定可能な抽出条件エリアを分析用画面のエリアA7に表示し、グラフ又は表の集計単位を、指定される事業所又は部門で切り替えることにしてもよい。
【0104】
(3-2.サンプルデータ)
図16~
図48は、本実施の形態における原価管理システム100の制御部102の処理の具体例を説明するためのサンプルデータを示す図である。
図16~
図48を参照して、本実施の形態における原価管理システム100の制御部102の処理の具体例を説明する。
【0105】
原価管理システム100では、工事の経過月に着目する仕様が存在する。経過月の定義は下記の通りとする。経過月:工事内の初受注登録月より経過した月、初受注登録月=「受注計上データ」上の工事別初回登録伝票の会計年月とする。
【0106】
(S1:異常検知処理)
図16~
図19を参照して、異常検知処理の具体例を説明する。検知部102bは、異常検知実行用データテーブル106bに格納されている自動検知実行スケジュールデータ及び工事データの取得範囲条件データに従って、原価の異常検出を実行し、業務データベース106aに格納されている業務データに基づいて、会計年月及び工事毎の累計受注金額及び累計原価金額を含む工事累積データを取得し、累計受注金額<累計原価金額となる場合を異常として検知し、その会計年月及び工事を検知する。
【0107】
1.業務データベース106a内の受注計上データ及び工事原価計上履歴データより、受注金額を超えた工事を異常として検知する処理
【0108】
(1)事前設定
(1-1)記憶制御部102aは、予め異常検知に必要な情報を異常検知実行用データテーブル106bに保存しておく(事前に提供するデータ)。具体的には、自動検知実行スケジュールデータと、工事データの取得範囲条件データを異常検知実行用データテーブル106bに設定しておく。
【0109】
図16(A)は、自動検知実行スケジュールデータのデータ例を示す図である。同図に示す例では、毎月の5営業日目の「23:00」に自動検知を実行する。5営業日目としているのは、前月の月次締め処理が確定したタイミングを想定している。検知IDとスケジュールIDをデータ参照時のキー情報としている。
【0110】
図16(B)は、工事データの取得範囲条件データのデータ例を示している。同図に示す例では、工事データの取得範囲を、対象列「会計年月」について、「自動検知処理月-1年」から「自動検知処理月-1月」としている。検知IDとスケジュールIDをデータ参照時のキー情報としている。
【0111】
(2)検知部102bは、異常検知を自動実行する。
(2-1)まず、異常を検知するタイミング情報を取得する。具体的には、
図17(A)、(B)に示すように、異常検知実行用データテーブル106bに設定されている自動検知実行スケジュールデータを取得する。
【0112】
(2-2)自動実行したタイミングが、異常を検知するタイミングであるか判定する。
図17(C)は、自動実行タイミング判定処理を説明するための図である。同図に示す例では、起動タイミングが「2021/04/07」の5営業日目で、自動検知実行スケジュールデータが「毎月の5営業日目」であるので、実行判定結果は、「実行する」となる。
【0113】
実行判定結果により、後続処理を行うか否か処理が分岐する。実行判定結果「実行する」の場合は、(2-3)以降の処理を実行する。実行判定結果「実行しない」の場合は、処理を終了する。
【0114】
営業日の判断方法は、業務データベース106aに存在するカレンダーマスタ(不図示)を参照して休日/営業日を判断する。カレンダーマスタは販売の営業カレンダーベースで、常に最新化されている。
【0115】
(2-3)異常を検知するデータの範囲条件を取得する。
(2-3-1)具体的には、
図17(D)、(E)に示すように、異常検知実行用データテーブル106bに設定されている工事データの取得範囲条件データを取得する。
【0116】
(2-4)業務データベース106a内の受注計上データと工事原価計上履歴データを参照して、受注金額を超えた原価金額が発生した工事を検知する。
(2-4-1)まず、
図18(A)に示すように、抽出条件列「会計年月」、FROM条件「2020/04」、TO条件「2021/03」をパラメータとして、業務データベース106a内の受注計上データと工事原価計上履歴データより工事累積データを取得する。
【0117】
図18(B)は、工事累積データのデータ例を示している。工事累積データは、会計年月、工事名、事業所、部門、担当者、受注金額、累積受注金額、原価金額、累積原価金額を含んでいてもよい。
図18(C)は、受注計上データのデータ例を示している。
図18(D)は、工事原価計上履歴データのデータ例を示している。
【0118】
工事累積データの「累積受注金額」は、受注計上データより「受注金額」を取得する際に、月経過毎の累積を集計して算出する。例えば、工事Eの会計年月「2020/04」の「累積受注金額」は、受注計上データの会計年月「2020/02」の受注金額「800,000」+会計年月「2020/04」の受注金額「300,000」=1,100,000で算出する。
【0119】
工事累積データの「累積原価金額」は、工事原価計上履歴データより原価金額を取得する際に、月経過毎の累積を集計して算出する。例えば、工事Aの会計年月「2020/06」の「累積原価金額」は、[工事原価計上履歴データ]の会計年月「2020/05」の原価金額「200,000」+会計年月「2020/06」の原価金額「50,000」=250,000で算出する。
【0120】
(2-4-2)(2-4-1)で取得した工事累積データより「累積受注金額」と「累積原価金額」を比較する。具体的には、以下の異常判定手法(ルールベース)を使用して異常と判定される工事の存在を確認する。
【0121】
異常検知手法:ルールベース
基準値:累積受注金額
比較対象:累積原価金額
異常判定方法:基準値<比較対象
【0122】
図19(C)は、検知対象の工事累積データのデータ例(
図18(B)と同じ)、
図19(A)は、異常判定結果の例、
図19(B)は、異常判定手法(ルールベース)を説明するための図を示している。
【0123】
工事累積データの会計年月「2021/02」及び工事「工事A」について、累積受注金額「1,000,000」<累積原価金額「1,300,000」となっているので、
図19(A)に示すように、異常判定結果は、会計年月「2021/02」、工事「工事A」、累積受注金額「1,000,000」、累積原価金額「1,300,000」、判定結果「異常」となる。
【0124】
図19(B)において、異常判定手法(ルールベース)は、基準となる値(基準値)と比較して、異常判定したい対象(比較対象)がどの位置にあるかを判定する手法である。異常判定手法(ルールベース)の選択理由は、本シナリオでは、受注金額を超える原価金額が発生した工事=赤字工事となる点に着目しているため、基準値と比較対象が明確なため採用している。
【0125】
(2-4-3)(2-4-2)で異常と判断した工事の異常判定結果データを異常判定結果データテーブル106cに保存する。同時に、分析画面に表示するためのメッセージである異常判定結果メッセージデータ及び異常判定結果メッセージ詳細データを異常判定結果データテーブル106cに保存する。
【0126】
図19(D)は、異常判定結果データのデータ例、
図19(E)は、異常判定結果メッセージデータのデータ例、
図19(F)は、異常判定結果メッセージ詳細データのデータ例を示している。
【0127】
(S2:分析用画面表示処理)
図20~
図48を参照して、分析用画面表示処理の具体例を説明する。表示制御部102cは、業務データベース106aに格納されている業務データに基づいて、検知部102bで異常を検知した工事について、検知した会計年月の前後の分析用データ(例えば、
図4のグラフ1~グラフ4、表等)を分析用画面に表示する。
【0128】
2.1で検知した異常なデータと検知するために参照した異常なデータと関連のあるデータを分析初期画面に表示する処理を実行する。
(1)異常判定結果データテーブル106cより、異常として自動検知された情報を分析初期画面に出力する。
(1-1)まず、異常を検知した結果データと結果メッセージを取得する。
具体的には、
図20(A)に示すように、JOBID「工事原価付アラート」をパラメータ(キー)として、異常判定結果データテーブル106cから
図20(B)に示すような異常判定結果データと、
図20(C)に示す異常判定結果メッセージデータ及び
図20(D)に示す異常判定結果メッセージ詳細データとを取得する。なお。検知された情報を一覧に表示するため、検知IDは未設定の状態でデータを取得する。
【0129】
(1-2)異常を検知した結果メッセージを画面に表示する。
具体的には、
図20(E)に示すように、
図20(C)の異常判定結果メッセージデータの異常度、定義名、概要、検知対象を抽出して、
図20(F)に示すように、分析初期画面のエリアA1に表示する。
【0130】
(1-3)分析初期画面を起動したタイミングの日付を取得して、分析初期画面の抽出条件の基準日にセットする。具体的には、
図21(A)、(B)に示すように、基準日「2021/04/10」を分析期画面の抽出条件の基準日にセットする。
【0131】
(2)分析初期画面で異常を検知した結果メッセージを選択して、分析用画面を起動する。(1)の一覧から選択した異常判定結果データ、異常判定結果メッセージデータ、異常判定結果メッセージ詳細データを参照して以下の処理を行う。
【0132】
(2-1)メッセージを詳細情報表示に切り替えて、グラフ・表の出力領域を確保する。
1.メッセージを詳細表示に切り替える。具体的には、
図22(A)に示す異常判定結果メッセージ詳細データについて、
図22(B)に示すように、検知手法、基準値名、比較対象名、判定方法を参照して、
図22(C)に示すようなメッセージの詳細表示を行う(検知手法や判定理由の追加を行う)。
【0133】
2.分析用画面のグラフ・表の出力領域を確保する。本システムでは、例えば、グラフ4つ・表1つの出力を行う。そのため、グラフ4つ・表1つ分の出力領域を確保する。
【0134】
(2-2)抽出条件を設定する。
1.異常判定結果メッセージデータに紐づく異常判定結果データが持つ会計年月をもとに、分析用データの取得範囲を取得する。
(i)異常検知した月より前後1年の範囲になる会計年月を取得する。具体的には、
図23(A)に示すように、
図23(B)に示す異常判定結果データから異常検知月の会計年月「2021/02」を取得し、1年前の会計年月「2020/03」、1年後の会計年月「2022/03」を取得する。
【0135】
ここで、1年前後としているのは、異常検知用に事前に提供するデータ「工事データの取得範囲条件データ」の1年範囲で検知する条件に合わせた設定となっている。範囲を広げて分析したい場合は、抽出条件の期間開始~終了を変更することで対応可能となっている。
【0136】
(ii)蓄積された業務データを参照して、データが存在する範囲に絞った範囲を取得する。ここでは、説明の簡略化のため、「2020/04~2021/03」の範囲でのみデータが存在することとする。
図23(C)に示すように、分析用データ取得範囲条件を、抽出条件列「会計年月」、FROM条件「2020/04(2020/03より後の月より採用)、TO条件「2021/03(2022/03より前の月より採用)とする。
【0137】
2.1の情報を初期表示値としてセットした状態の抽出条件を設定する。具体的には、
図23(D)に示すように、抽出条件初期値を、基準日「2021/04/10(分析画面起動タイミング)、期間開始「2020/04(分析用データ取得範囲条件のFROM条件)、期間終了「2021/03(分析用データ取得範囲条件のTO条件)に設定する。
図23(E)、(F)に示すように、グラフ表示状態に切り替わるタイミングで、グラフ出力用のデータを抽出するための抽出項目を表示する。集計については、「部門」を固定の初期値として設定して表示する。
【0138】
(2-3)業務データベース106a内の受注計上データと工事原価計上履歴データより工事累積データを取得する。抽出条件に初期セットした条件をもとに、「工事累積データ」を取得し、グラフ1表示用のデータとして取得する。
【0139】
具体的には、
図24(A)に示す抽出条件初期値と、
図24(C)に示す異常判定結果データの工事「工事A」に基づいて、
図24(B)に示すような期間開始「2020/04」、期間終了「2021/03」、指定工事「工事A」をパラメータとして、
図24(D)に示すような工事累積データを取得する。工事累積データの「累積受注金額」、「累積原価金額」の算出は、
図18と同様であるのでその詳細な説明は省略する。
【0140】
(2-4)業務データベース106a内の受注計上データ、工事原価計上履歴データ、及び工事基本情報データより進捗率別原価率データを取得する。
【0141】
図25(C)は、異常判定結果データのデータ例、
図25(D)は、進捗率別原価率データのデータ例、
図25(E)は、工事基本情報のデータ例、
図25(F)は、受注計上データのデータ例、
図25(G)は、工事原価計上履歴データのデータ例を示している。
【0142】
図25(A)に示す抽出条件初期値と、
図25(C)に示す異常判定結果データの部門「部門A」に基づいて、
図25(B)に示すような期間開始「2020/04」、期間終了「2021/03」、集計「部門」、指定組織「部門A」をパラメータとして、
図25(D)に示すような進捗率別原価率データをグラフ2表示用データとして取得する。期間開始~終了の使用用途については、指定期間内に原価計上されている工事に限定して取得する際に使用する。今回の例では、「2020/04~2021/03」の間で原価が計上されている工事を取得対象とする。
【0143】
進捗率別原価率データは、
図25(D)に示すように、工期進捗率、工事名、事業所、部門、原価率を含んでいる。
図25(E)に示す工事基本情報データをベースとして、進捗率別原価率データを取得する。
【0144】
工事基本情報データの初回登録月(契約月)からの経過月と工事予定工期(月)に基づいて、以下の式を使用して、進捗率別原価率データの「工期進捗率」を算出する。
【0145】
工期進捗率算出式:工期進捗率=工事経過月/予定工期
工事の開始月=初回受注登録月として経過月をカウントする。
【0146】
例えば、
図25(E)において、部門Aの工事Aについては、契約月(初回受注登録月)「2020/04」、予定工期(12)となっているので、会計年月「2020/06」は、経過月「2」、予定工期「12」、進捗率17%(=2/12)となる。
【0147】
進捗率別原価率データの「原価率」は、
図25(F)に示す受注計上データと
図25(G)に示す工事原価計上履歴データに基づいて算出する。受注計上データより受注金額を取得する際に、月経過毎の累積を集計した「累積受注金額」を算出する。また、工事原価計上履歴データより「原価金額」を取得する際に、月経過毎の累積を集計した「累積原価金額」を算出する。算出した「累積受注金額」と「累積原価金額」を用いて、以下の式で原価率を算出する。
【0148】
原価率算出式:原価率=累積原価金額/累積受注金額
【0149】
(2-5)業務データベース106a内の受注計上データ、工事原価計上履歴データ、基本情報データ、原価修正データより原価付替明細データを取得する。
【0150】
図26(C)は、異常判定結果データのデータ例、
図26(D)は、原価付替明細データのデータ例、
図26(E)は、工事基本情報のデータ例、
図26(F)は、受注計上データのデータ例、
図26(G)は、工事原価計上履歴データのデータ例、
図26(H)は、原価修正データの例を示している。
【0151】
図26(A)に示す抽出条件初期値と、
図26(C)に示す異常判定結果データの工事「工事A」に基づいて、
図26(B)に示すような期間開始「2020/04」、期間終了「2021/03」、指定工事「工事A」をパラメータとして、
図26(D)に示すような原価付替明細データを表表示用データとして取得する。
【0152】
原価付替明細データは、
図26(D)に示すように、原価修正番号、付替先工事、工事種類、受注日、完了予定日、完了日、事業所、部門、担当者、登録担当者、工事原価紐日、原価金額を含んでいる。
【0153】
「事業所・部門」は、原価修正データの指定工事(付替元工事)の付替先工事(原価付替先)に紐づく工事基本情報データのものを取得する。担当者・登録担当者は原価修正データのものを取得する。
【0154】
工事原価計上履歴データに存在する「原価修正データ」に紐づくレコードについて説明する。
図26(G)の工事原価計上履歴データの例では、2021/03時点で工事Aの原価を別の工事に付替している。このデータは、工事A視点では原価が減る処理となる。そのため、工事原価計上履歴データ上の工事Aに関する原価修正レコードの金額は符号反転したものが蓄積される。
【0155】
以下の(2-6)(2-7)では、(2-5)で取得したレコードより、金額がもっとも大きいレコードの情報をもとにデータを取得する。
【0156】
(2-6)業務データベース106a内の受注計上データと工事原価計上履歴データより原価付替先工事累積データを取得する。
【0157】
図27(C)は、原価付替明細データのデータ例((2-5)で取得したデータ)、
図27(D)は、原価付替先工事累積データのデータ例、
図27(E)は、受注計上データのデータ例、
図27(F)は、工事原価計上履歴データのデータ例を示している。
【0158】
図27(A)に示す抽出条件初期値と、
図27(C)に示す原価付替明細データの付替先工事「工事D」に基づいて、
図27(B)に示すような期間開始「2020/04」、期間終了「2021/03」、指定工事「工事D」をパラメータとして、
図27(D)に示すような原価付替先工事累積データをグラフ3表示用データとして取得する。
【0159】
図27(D)に示すように、原価付替先工事累積データは、会計年月、工事名、事業所、部門、担当者、受注金額、累積受注金額、原価金額、累積原価金額を含んでいる。
【0160】
原価付替先工事累積データの「累積受注金額」は、受注計上データより「受注金額」を取得する際に、月経過毎の累積を集計して算出する。原価付替先工事累積データの「累積原価金額」は、工事原価計上履歴データより「原価金額」を取得する際に、月経過毎の累積を集計して算出する。
【0161】
(2-7)業務データベース106a内の受注計上データ、工事原価計上履歴データ、及び基本情報データより原価付替先組織の進捗率別原価率データを取得する。
【0162】
図28(C)は、原価付替明細データのデータ例((2-5)で取得したデータ)、
図28(D)は、原価付替先組織の進捗率別原価率データのデータ例、
図28(E)は、工事基本情報データのデータ例、
図28(F)は、受注計上データのデータ例、
図28(G)は、工事原価計上履歴データのデータ例を示している。
【0163】
図28(A)に示す抽出条件初期値と、
図28(C)に示す原価付替明細データの部門「部門B」に基づいて、
図28(B)に示すような期間開始「2020/04」、期間終了「2021/03」、指定組織「部門B」をパラメータとして、
図28(D)に示すような原価付替先組織の進捗率別原価率データをグラフ4表示用データとして取得する。
【0164】
期間開始~終了の使用用途については、指定期間内に原価計上されている工事に限定して取得する際に使用する。今回の例では、2020/04~2021/03の間で原価が計上されている工事を取得対象とする。
【0165】
図28(D)に示すように、原価付替先組織の進捗率別原価率データは、工期進捗率、工事名、事業所、部門、原価率を含んでいる。
【0166】
原価付替先組織の進捗率別原価率データは、工事基本情報データをベースとして、データを取得する。工事基本情報データの初回登録月(契約月)からの経過月と工事予定工期より、以下の式により、「工期進捗率」を算出する。
【0167】
工期進捗率算出式:工期進捗率=工事経過月/予定工期
工事の開始月=初回受注登録月として経過月をカウントする。
【0168】
受注計上データより「受注金額」を取得する際に、月経過毎の累積を集計した「累積受注金額」を算出する。工事原価計上履歴データより「原価金額」を取得する際に、月経過毎の累積を集計した「累積原価金額」を算出する。算出した「累積受注金額」と「累積原価金額」を用いて、以下の式により原価率を計算する。
【0169】
原価率算出式:原価率=累積原価金額/累積受注金額
【0170】
(2-8)工事累積データ、進捗率別原価率データ、原価付替明細データ、原価付替先工事累積データ、原価付替先組織の進捗率別原価率データをグラフ1~4、表にバインド(割当)する。計4つのグラフ・1つの表にバインドを実施する。
【0171】
1.グラフ1に工事累積データをバインドする。
例えば、
図29(A)に示すデータバインド情報(X軸、Y軸、凡例、タイトル)に従って、
図29(B)に示すような、選択した異常検知結果データの工事(図に示す例では、工事A)についての工事累積データをグラフ1にバインドする。グラフ1において、タイトルは、工事Aの金額推移、X軸は、会計年月、Y軸は、累計受注金額or累計原価金額、凡例は、受注金額、原価金額となっている。
【0172】
2.グラフ2に進捗率別原価率データをバインドする。
例えば、
図29(C)に示すデータバインド情報(X軸、Y軸、凡例、タイトル)に従って、
図29(E)に示すような、選択した異常検知結果データの工事管理部門(図に示す例では、部門A)についての進捗率別原価率データをグラフ2にバインドする。グラフ2において、タイトルは、工事A管理部門(部門A)の工事別原価推移、X軸は工事進捗率、Y軸は、原価率、凡例は、工事A、工事B、工事Cとなっている。
【0173】
3.グラフ3に原価付替先工事累積データをバインドする。
例えば、
図29(D)に示すデータバインド情報(X軸、Y軸、凡例、タイトル)に従って、
図29(F)に示すような、原価付替明細データ内で一番高額な原価金額となっているレコードの原価修正番号・工事(図に示す例では、原価修正番号:NO0002、原価付替先工事:工事D)についての原価付替先工事累積データをグラフ3にバインドする。グラフ3において、タイトルは、原価修正番号:NO0002、原価付替先工事:工事Dの金額推移、X軸は会計年月、Y軸は、累積受注金額or原価金額、凡例は、受注金額、原価金額となっている。
【0174】
4.グラフ4に原価付替先組織の進捗率別原価率データをバインドする。
例えば、
図30(A)に示すデータバインド情報(X軸、Y軸、凡例、タイトル)に従って、
図30(B)に示すような、原価付替明細データ内で一番高額な原価金額となっているレコードの工事・部門(図に示す例では、工事D管理部門(部門B)についての原価付替先組織の進捗率別原価率データをグラフ4にバインドする。グラフ4において、タイトルは、工事D管理部門(部門B) 工事別原価率推移、X軸は工期進捗率、Y軸は、原価率、凡例は、工事D、工事E、工事Fとなっている。
【0175】
5.表に「原価付替明細データ」をバインドする。
例えば、
図30(C)に示すデータバインド情報(列名、タイトル)に従って、
図30(D)に示すような、原価付替明細データ内で一番高額な原価金額となっているレコードの工事・部門についての原価付替明細データを表にバインドする。表において、タイトルは、工事A:原価付替済伝票一覧、列名は、原価付替明細データの列名全てとなっている。
【0176】
6.バインドしたグラフ1~4・表を分析用画面に出力する。
バインドしたグラフ1~4及び表を、
図30(E)に示すように、分析用画面のエリアA2~A6にそれぞれ出力する。
【0177】
7.表のレコードにクリック機能を付与する。
グラフ3・4のバインド用データを取得する際に使用するデータ取得用パラメータにある指定組織を選択するための機能として設定する。レコード単位でクリック選択できるように設定する。
図31(A)に示す表において、例えば、赤枠レコードをクリックした場合、
図31(B)、(C)に示すように、グラフ3用バインドデータである原価付替先工事累積データを取得するためのパラメータの「指定工事」、グラフ4用バインドデータである原価付替先組織の進捗率別原価率データを取得するためのパラメータの「部門」が当該レコードの内容に切り替わり、
図31(D)に示すグラフ3・4の表示内容が切り替わる。
【0178】
グラフ3・4の切り替えを利用した分析例は(3-2)ユーザ操作による分析(2)にて記載する。
【0179】
8.メッセージに紐づく異常判定結果データが持つ組織・工事の情報をもとに、異常対象のデータを強調する。
図32(A)は、グラフ着色パラメータのデータ例、
図32(B)は異常判定結果データのデータ例、
図32(C)は、分析用画面の表示例を示している。
【0180】
グラフ着色パラメータに従って、グラフの折れ線・凡例を強調表示する。グラフ着色パラメータには、
図32(A)に示すように、凡例の異常フラグ(True or False)、参考情報フラグ(True or False)、凡例色、折れ線色が設定されている。参考情報は、異常か否か判定する対象(当ジョブでは原価金額)が如何に異常か確認するための情報である。
【0181】
グラフ2にて、折れ線・凡例を赤色表現する強調を行う。具体的には、凡例の組織・工事と異常検知された組織・工事が同一のものに対して凡例の異常フラグが「True」の色(赤色)を適用する。異常検知された組織・工事以外の凡例に対して凡例の異常フラグが「False」の色を適用する。
【0182】
グラフ1、3については、受注金額について、原価金額の推移が正常か否か判断するための参考情報として表示している。上記の参考情報フラグTrueの色を適用する。
【0183】
グラフ1、3については、原価金額について、上記の異常フラグTrueの色を適用する(当シナリオでは、原価金額より異常か否かの判定を行っているため、異常検知結果同様に強調する)。
【0184】
グラフ4については、工事の折れ線・凡例について、グラフ3で表示している工事のものを参考情報として表示する。上記の参考情報フラグTrueの色を適用する。
【0185】
分析用画面の初期表示の注目ポイントは以下の通りである。
(1)分析用画面のエリアA1には、メッセージを表示する。
異常検知された対象、検知の手法、異常と判断した基準値を含めた詳細な情報を出力する。確認するユーザ側としては、異常の可能性がある工事が分かっている状態から分析が可能となる。
【0186】
(2)分析用画面のエリアA2~A6には、グラフ1~4、表を表示する。
グラフ1で、異常検知された工事の受注金額・原価金額の発生状況を確認できる。月が経過するにつれて原価金額がどのように推移しているか確認する。受注金額を超える原価金額が発生している月が存在した場合、異常と捉えられる。今回の例では、2021/02時点で受注金額より多い原価金額が発生していることがわかる。さらに、2021/03時点で原価金額が受注金額を下回る推移をしている。このことから、2021/03で原価付替による原価不正操作が行われている可能性がある。
【0187】
グラフ2で、異常検知された工事を管理している組織の全工事の原価率推移を確認できる。予定工期と経過月より算出した工期進捗率別に原価率の推移を確認する。工事の原価不正操作は、対外的な印象操作が目的になりやすいため、組織単位で行われやすい。他工事についても同様に原価率が100%を上回る原価が発生しているものがある可能性がある。今回の例では、異常検知された工事のみ原価100%を超えていることがわかる。
【0188】
グラフ3で、異常検知された工事の原価付替データより、一番高額な原価の付替先となった工事を確認できる。グラフ1と同様に、受注金額・原価金額の発生状況を確認できる。不正な原価付替の場合、原価付替処理前後で原価金額が急増している状態を確認できる可能性がある。今回の例では、2020/06と2021/02で原価金額の急増傾向が見られる。2020/06時点では、受注金額も増加しているため、追加受注に伴う影響と考えられる。2021/02時点では、受注に伴わない増加のため、予定外の増加と考えられる。2021/02が原価付替月と同じ月なため、不正な原価の増加と考えられる。
【0189】
グラフ4で、グラフ3で対象となった工事を管理している組織の全工事の原価率推移を確認できる。グラフ2同様に、予定工期と経過月より算出した工期進捗率別に原価率の推移を確認する。原価付替先の工事を管理している組織は、原価付替元工事を管理している組織と同じ若しくは関係が強い組織(不正の場合:不正に関与している組織)となる可能性がある。今回の場合、異常検知された工事の管理組織(部門A)とは別組織(部門B)のため、部門Aと部門Bとの間で認識合わせて原価の付け替えが行われている可能性がある。工事Aに限らず、他工事でも同様に原価付け替えが行われる可能性が浮上するため、要注意な組織として認識できる。
【0190】
表で、異常検知された工事より原価付替を行った明細の一覧を確認できる。付け替えられた原価金額、付け替え先の工事、付け替え先の数に注目して確認する。特に付け替え先の数が多い場合、付替する原価を複数工事に分散していると分かる。今回の場合、工事B・工事D・工事Gに原価を分散していることが分かる。組織を跨いで原価を付け替えているため、複数組織が関与した不正が発生している可能性がある。
【0191】
以降は、当システムを扱うユーザ側での操作が必要である。
図33~
図48を参照して、分析用画面のグラフの表示を切り替えて分析を実施する場合を説明する。
【0192】
(3)分析用のグラフの表示を切り替えて分析を実施
上記の(1)の一覧から選択した異常判定結果データ、異常判定結果メッセージデータ、異常判定結果メッセージ詳細データを参照して以下の処理を行う。
【0193】
(3-1)組織の出力単位を切り替えて工事別の原価率推移の状況を確認・分析する。組織の種類(例:事業所)単位で集計したデータを出力する。
【0194】
図33(A)は、分析用画面の抽出条件、
図33(B)は、抽出用のパラメータ、
図33(C)は、異常判定結果データのデータ例、
図33(D)は、進捗率別原価率データ、
図33(E)は、原価付替先組織の進捗率別原価率データ、
図33(F)は、工事基本情報のデータ例、
図33(G)は、受注計上データのデータ例、
図33(H)は、工事原価計上履歴データのデータ例を示している。
【0195】
1.
図33(A)に示す抽出条件の集計の項目より、事業所のボタンをクリックしてグラフの表示を切り替える。
【0196】
2.指定した抽出条件をもとに、業務データベース106aから進捗率別原価率データと原価付替先組織の進捗率別原価率データをグラフ2,4表示用データとして取得する。グラフ2・4以外は上記(2-3)~(2-7)同様にパラメータを設定して、データを取得する。上記(2-5)で取得したレコードより、金額がもっとも大きいレコードの情報をもとにグラフ2・4用のデータを取得する。事業所単位で取得を行う今回の場合、グラフ2・4が同一条件・同一データ取得方法となるため、得られるデータが同じものになる。
【0197】
3.
図34(A)、(B)に示すように、グラフ2に進捗率別原価率データをバインドし、
図34(C)、(D)に示すように、グラフ4に原価付替先組織の進捗率別原価率データをバインドする。なお、グラフ2・4以外は上記(2-8)と同様にグラフにバインドする。
【0198】
4.
図34(E)に示すように、グラフ1~4を分析用画面のエリアA2~A5に出力する。
【0199】
5.
図35に示すように、メッセージに紐づく異常判定結果データ』が持つ組織・工事の情報をもとに、異常対象のデータを強調する。
図32と同様な処理を行う。
【0200】
6.表示後のグラフよりデータを分析する。
図36は、グラフ2・4を用いた分析イメージを説明するための図である。ここでの確認ポイントは、赤字工事の回避=組織の対外からの評価を落とさないようにすることが目的の可能性があるので、組織ぐるみの不正の可能性を考える。
【0201】
図36(A)に示すグラフ2では、(1)原価率が急増しているので、工期終盤での急増が通常とは考えにくく、原価の付け替えによる増加が考えられる。(2)原価率が100%を上回る赤字工事が他にも存在しているので、工事損失引当金の計上対象となる。そのため、翌月に原価付け替えによる不正が行われる可能性があるので、翌月要確認対象の工事である。(3)利益が大きい工事が存在し、別で赤字工事が存在しているため、原価の付け替え先対象となる可能性がある。そのため、翌月要確認対象の工事となる。
【0202】
図36(B)に示すグラフ4では、(4)上記の(1)で確認した通り、原価率が急増している工事の一つが原価付け替え先となっていることが確認できる。他も同様に原価付け替え先となっていることを確認する。
【0203】
(3-2)原価付替先の工事を切り替えて別の原価付替先の工事の受注金額・原価金額推移・原価率推移を確認・分析する。
図37~
図41は、原価付替先の工事を切り替えて別の原価付替先の工事の受注金額・原価金額推移・原価率推移を確認・分析を説明するための図である。
【0204】
1.
図37(A)に示す表より、表示したい明細のレコードをクリックしてグラフの表示を切り替える。
【0205】
2.1で選んだレコードの工事・組織情報をもとに、原価付替先工事累積データと原価付替先組織の進捗率別原価率データをグラフ3,4の表示用のデータとして取得する。
【0206】
(i)
図37(B)に示すパラメータに従って、業務データベース106aから
図37(D)に示すようなグラフ3表示用データである原価付替先工事累積データを取得する。
【0207】
(ii)
図38(A)に示すようなパラメータに従って、業務データベース106aから
図38(C)に示すようなグラフ4表示用データである原価付替先組織の進捗率別原価率データを取得する。
【0208】
3.
図39(A)、(B)に示すように、グラフ3に原価付替先工事累積データをバインドし、
図39(C)、(D)に示すように、グラフ4に原価付替先組織の進捗率別原価率データ」をバインドする。なお、グラフ3、4以外は上記の(2-8)同様にグラフにバインドする。
【0209】
4.
図39(E)に示すように、グラフ1~4を分析用画面に出力する。
【0210】
5.
図40に示すように、メッセージに紐づく異常判定結果データが持つ組織・工事の情報をもとに、異常対象のデータを強調する。
【0211】
6.表示後のグラフよりデータを分析する。
図41は、グラフ3、4を用いた分析イメージを説明するための図である。
図41(A)は、グラフ3の例、
図41(B)はグラフ4の例、
図41(C)は、原価付替明細データのデータ例((2-5)で取得したデータ)を示している。
【0212】
ここでの確認ポイントは、原価の付け替えの隠蔽操作の一つとして、複数工事への原価の分散が行われる可能性がある。複数工事へ原価分散すると、分散の数だけ表のレコードができるため、それぞれの確認が必要となる。付け替え先工事の取引額が大きい場合、付け替えた原価が埋もれてばれにくくなることが考えられる。
【0213】
図41(A)、(B)に示すように、グラフ3、4において、原価付け替え額がすでに発生している原価金額と比べて少額なため、埋もれてしまっている(原価付け替え前後での金額変動の特徴が現れていない)。そのため、金額差がある工事間での原価付け替えが行われた場合、このようなケースが発生する可能性がある。原価金額を細かい金額に分割して付け替える場合も同様に、このような見え方となる可能性がある。
【0214】
(3-3)工事種類を指定して特定工事の原価の状況を確認・分析する。
図42~
図48を参照して、工事種類を指定して特定工事の原価の状況を確認・分析する場合を説明する。
【0215】
1.分析用画面の抽出条件の項目を工事種類に値を入力してグラフの表示を切り替える。
図42は、分析用画面の抽出条件の例を示しており、以下では、工事種類に「鉄筋工事」を入力して抽出した例を説明する。
【0216】
2.指定した抽出条件をもとに、原価付替明細データと進捗率別原価率データと原価付替先組織の進捗率別原価率データをグラフ2、4、表の表示用のデータとして取得する。
【0217】
(i)
図43(A)に示すようなパラメータに従って、業務データベース106aから
図43(C)に示すようなグラフ2表示用データである進捗率別原価率データを取得する。その際、
図43(C)に示すように、
図43(D)に示す工事基本情報データからパラメータの「工事種類」をもとに「工事」を抽出する。同図に示す例では、工事種類「鉄筋工事をキーとして「工事D」を抽出する。
【0218】
(ii)
図44(A)に示すようなパラメータに従って、業務データベース106aから
図44(C)に示すような表表示用データである原価付替明細データを取得する。その際、
図44(C)に示すように、
図44(D)に示す工事基本情報データからパラメータの「工事種類」をもとに「工事」を抽出する。同図に示す例では、工事種類「鉄筋工事」をキーとして「工事D」を抽出する。
【0219】
(iii)
図45(A)に示すようなパラメータに従って、業務データベース106aから
図45(C)に示すようなグラフ4表示用データである原価付替先組織の進捗率別原価率データを取得する。その際、
図45(C)に示すように、
図45(D)に示す工事基本情報データからパラメータの「工事種類」をもとに「工事」を抽出する。同図に示す例では、工事種類「鉄筋工事」をキーとして「工事D」を抽出する。
【0220】
3.
図46(A)、(B)に示すように、グラフ2に進捗率別原価率データをバインドし、
図46(C)、(D)に示すように、グラフ4に原価付替先組織の進捗率別原価率データをバインドし、
図46(E)、(F)に示すように、表に『原価付替明細データ』をバインドする。なお、グラフ2・4・表以外は上記の(2-8)と同様にグラフにバインドする。
【0221】
4.
図47(A)に示すように、グラフ1~4・表を分析用画面のエリアA2~A6に出力する。
【0222】
5.
図47(B)~(D)に示すように、メッセージに紐づく異常判定結果データが持つ組織・工事の情報をもとに、異常対象のデータを強調する。
【0223】
6.表示後のグラフよりデータを分析する。
図48は、グラフ2、4、表を用いた分析イメージを説明するための図である。ここでの確認ポイントは、国のチェックが入る等、厳密管理される工事で不正が行われるとは考えにくい(例:浚渫工事)。原価操作、利益操作が比較的容易な工事に不正が発生しやすい。
【0224】
図48(A)に示すように、グラフ2では、(1)異常検知された工事が含まれている。(2)他の工事でも同様に赤字工事となっているものが存在しているので、同様に原価付け替えによる不正が発生する可能性がある。
【0225】
図48(B)に示すように、グラフ4では、(1)原価付け替え先の工事が含まれている。(2)他工事にも同様の原価率急増傾向が確認できる。今回の例で部門Aと部門Bはどちらも事業所A所属ということを用いると、工事が同類のものを対象に原価付け替えが行われている可能性があると考えられる。
【0226】
以上説明したように、本実施の形態によれば、業務データベース106aに格納されている業務データに基づいて、会計年月及び工事毎の累計受注金額及び累計原価金額を含む工事累積データを取得し、累計受注金額<累計原価金額となる場合を異常として検知し、その会計年月及び工事を検知する検知部102bと、業務データに基づいて、検知した工事について、検知した会計年月の前後の分析用データを分析用画面に表示する表示制御部102cと、を備えているので、赤字工事の原価の不正操作について、低コスト及び高精度での早期発見を可能とする。
【0227】
[4.国連が主導する持続可能な開発目標(SDGs)への貢献]
本実施形態により、業務効率化や企業の適切な経営判断を推進することに寄与することができるので、SDGsの目標8及び9に貢献することが可能となる。
【0228】
また、本実施形態により、廃棄ロス削減や、ペーパレス・電子化を推進することに寄与することができるので、SDGsの目標12、13及び15に貢献することが可能となる。
【0229】
また、本実施形態により、統制、ガバナンス強化に寄与することができるので、SDGsの目標16に貢献することが可能となる。
【0230】
[5.他の実施形態]
本発明は、上述した実施の形態以外にも、特許請求の範囲に記載した技術的思想の範囲内において種々の異なる実施形態にて実施されてよいものである。
【0231】
例えば、実施形態において説明した各処理のうち、自動的に行われるものとして説明した処理の全部または一部を手動的に行うこともでき、あるいは、手動的に行われるものとして説明した処理の全部または一部を公知の方法で自動的に行うこともできる。
【0232】
また、本明細書中や図面中で示した処理手順、制御手順、具体的名称、各処理の登録データや検索条件等のパラメータを含む情報、画面例、データベース構成については、特記する場合を除いて任意に変更することができる。
【0233】
また、原価管理システム100に関して、図示の各構成要素は機能概念的なものであり、必ずしも物理的に図示の如く構成されていることを要しない。
【0234】
例えば、原価管理システム100が備える処理機能、特に制御部にて行われる各処理機能については、その全部または任意の一部を、CPUおよび当該CPUにて解釈実行されるプログラムにて実現してもよく、また、ワイヤードロジックによるハードウェアとして実現してもよい。尚、プログラムは、本実施形態で説明した処理を情報処理装置に実行させるためのプログラム化された命令を含む一時的でないコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録されており、必要に応じて原価管理システム100に機械的に読み取られる。すなわち、ROMまたはHDD(Hard Disk Drive)などの記憶部などには、OSと協働してCPUに命令を与え、各種処理を行うためのコンピュータプログラムが記録されている。このコンピュータプログラムは、RAMにロードされることによって実行され、CPUと協働して制御部を構成する。
【0235】
また、このコンピュータプログラムは、原価管理システム100に対して任意のネットワークを介して接続されたアプリケーションプログラムサーバに記憶されていてもよく、必要に応じてその全部または一部をダウンロードすることも可能である。
【0236】
また、本実施形態で説明した処理を実行するためのプログラムを、一時的でないコンピュータ読み取り可能な記録媒体に格納してもよく、また、プログラム製品として構成することもできる。ここで、この「記録媒体」とは、メモリーカード、USB(Universal Serial Bus)メモリ、SD(Secure Digital)カード、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、EPROM(Erasable Programmable Read Only Memory)、EEPROM(登録商標)(Electrically Erasable and Programmable Read Only Memory)、CD-ROM(Compact Disk Read Only Memory)、MO(Magneto-Optical disk)、DVD(Digital Versatile Disk)、および、Blu-ray(登録商標) Disc等の任意の「可搬用の物理媒体」を含むものとする。
【0237】
また、「プログラム」とは、任意の言語または記述方法にて記述されたデータ処理方法であり、ソースコードまたはバイナリコード等の形式を問わない。なお、「プログラム」は必ずしも単一的に構成されるものに限られず、複数のモジュールやライブラリとして分散構成されるものや、OSに代表される別個のプログラムと協働してその機能を達成するものをも含む。なお、実施形態に示した各装置において記録媒体を読み取るための具体的な構成および読み取り手順ならびに読み取り後のインストール手順等については、周知の構成や手順を用いることができる。
【0238】
記憶部に格納される各種のデータベース等は、RAM、ROM等のメモリ装置、ハードディスク等の固定ディスク装置、フレキシブルディスク、および、光ディスク等のストレージ手段であり、各種処理やウェブサイト提供に用いる各種のプログラム、テーブル、データベース、および、ウェブページ用ファイル等を格納する。
【0239】
また、原価管理システム100は、既知のパーソナルコンピュータまたはワークステーション等の情報処理装置として構成してもよく、また、任意の周辺装置が接続された当該情報処理装置として構成してもよい。また、原価管理システム100は、当該装置に本実施形態で説明した処理を実現させるソフトウェア(プログラムまたはデータ等を含む)を実装することにより実現してもよい。
【0240】
更に、装置の分散・統合の具体的形態は図示するものに限られず、その全部または一部を、各種の付加等に応じてまたは機能負荷に応じて、任意の単位で機能的または物理的に分散・統合して構成することができる。すなわち、上述した実施形態を任意に組み合わせて実施してもよく、実施形態を選択的に実施してもよい。
【符号の説明】
【0241】
100 原価管理システム
102 制御部
102a 記憶制御部
102b 検知部
102c 表示制御部
104 通信インターフェース部
106 記憶部
106a 業務データベース
106b 異常検知実行用データテーブル
106c 異常判定結果データテーブル
108 入出力インターフェース部
112 入力装置
114 出力装置
300 ネットワーク