(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024136379
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】細隙灯顕微鏡
(51)【国際特許分類】
A61B 3/135 20060101AFI20240927BHJP
【FI】
A61B3/135
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023047475
(22)【出願日】2023-03-24
(71)【出願人】
【識別番号】000220343
【氏名又は名称】株式会社トプコン
(74)【代理人】
【識別番号】100107010
【弁理士】
【氏名又は名称】橋爪 健
(72)【発明者】
【氏名】渥實 智海
(72)【発明者】
【氏名】森嶋 俊一
(72)【発明者】
【氏名】豊島 未来
【テーマコード(参考)】
4C316
【Fターム(参考)】
4C316AA01
4C316AB16
4C316AB19
4C316FY02
4C316FZ01
(57)【要約】
【課題】 照明部・照明発光部の配置を顕微鏡部・撮影部に被らないようにして、視界を妨げないようにすること。
【解決手段】 細隙灯顕微鏡は、照明発光部6、撮影部5を備える。照明発光部6は、照明部(スリット照明等)を備え、スリット光を照明する。撮影部5は、顕微鏡部(対物レンズ・撮影カメラ部等)を備え、被検眼(角膜、前眼部等)を撮影する。細隙灯顕微鏡は、スリット光を撮影部の撮影光軸の斜め下又は斜め上、若しくは斜め下及び斜め上の両方から照明(照明光軸)することで、照明発光部6の回転軸(旋回軸)のまわりの旋回時等に視野を遮ることを防ぐことができる。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
細隙灯顕微鏡において、
被検眼にスリット形状のスリット光を照明する照明発光部と、
前記照明発光部を被検眼に対して水平面上で回転軸のまわりに旋回させるための照明発光駆動部と、
被検眼に照明されるスリット光の照明角度であるスリット照明絞り角度を制御するスリット照明絞り角度駆動部と、
被検眼の画像を撮影する撮影部と、
制御部と
を備え、
前記撮影部が被検眼を撮影するための撮影光軸と前記照明発光部が被検眼を照明するための照明光軸との水平面における角度であるスリット照明旋回角度が入力され又は予め設定され、
前記制御部は、前記照明発光駆動部により、前記撮影部の撮影視界を遮らない位置から、スリット照明旋回角度でスリット光を照明し、
前記制御部は、スリット照明旋回角度に応じて、スリット光が被検眼に照射されるようにスリット照明絞り角度に前記スリット照明絞り角度駆動部を制御する、
ことを特徴とする細隙灯顕微鏡。
【請求項2】
請求項1に記載された細隙灯顕微鏡において、
スリット光の形状をくさび形状に制御するスリット幅駆動部を、
さらに備え、
撮影光軸と照明光軸との鉛直面におけるなす角度であるスリット照明光角度が入力され又は予め設定され、
前記制御部は、前記照明発光駆動部により、撮影光軸に対して、前記撮影部の撮影視界を遮らない位置から、スリット照明光角度でスリット光を照明し、
前記制御部は、スリット照明光角度にしたがい、矩形のスリット光が被検眼に照射されるようにくさび形状に前記スリット幅駆動部を制御する、
ことを特徴とする細隙灯顕微鏡。
【請求項3】
請求項1又は2に記載された細隙灯顕微鏡において、
前記制御部は、前記照明発光駆動部により、撮影光軸に対して、斜め下、斜め上、又は、斜め下と斜め上の両方からスリット照明旋回角度でスリット光を照明することを特徴とする細隙灯顕微鏡。
【請求項4】
請求項1又は2に記載された細隙灯顕微鏡において、
前記照明発光部のスリット照明旋回角度を検出する照明発光部角度検出部を、
さらに備え、
前記制御部は、前記照明発光部角度検出部の検出角度に従い、前記照明発光部が手動又は自動で予め定められたスリット照明旋回角度の設定角度になるように、前記照明発光駆動部を駆動する、
ことを特徴とする細隙灯顕微鏡。
【請求項5】
請求項1又は2に記載された細隙灯顕微鏡において、
前記制御部は、スリット照明旋回角度とスリット照明絞り角度との対応を記憶した記憶部を参照してスリット照明旋回角度に対するスリット照明絞り角度を求めること、又は、スリット照明旋回角度に対するスリット照明絞り角度についての予め定められた関係式によりスリット照明絞り角度を求めることを特徴とする細隙灯顕微鏡。
【請求項6】
請求項1又は2に記載された細隙灯顕微鏡において、
前記演算部は、
前記撮影部が撮影したスリット光に従いスリット光の照明角度を求め、スリット光の照明角度が垂直になるように前記スリット照明絞り角度駆動部によりスリット照明絞り角度を調整することを特徴とする細隙灯顕微鏡。
【請求項7】
請求項2に記載された細隙灯顕微鏡において、
前記照明発光部のスリット照明光角度を検出する照明発光部角度検出部を、
さらに備え、
前記照明発光駆動部は、前記照明発光部を略鉛直方向の角度で回動又は移動量で移動し、
前記制御部は、前記照明発光部角度検出部の検出角度に従い、前記照明発光部が手動又は自動で予め定められたスリット照明光角度の設定角度になるように、前記スリット幅駆動部を駆動する、
ことを特徴とする細隙灯顕微鏡。
【請求項8】
請求項7に記載された細隙灯顕微鏡において、
前記制御部は、スリット照明光角度とくさび形状との対応を記憶した記憶部を参照してスリット照明光角度に対するくさび形状を求めること、又は、スリット照明光角度に対するくさび形状についての予め定められた関係式によりくさび形状を求めることを特徴とする細隙灯顕微鏡。
【請求項9】
請求項7に記載された細隙灯顕微鏡において、
前記演算部は、前記撮影部が撮影したスリット光に従いスリット光の形状を求め、スリット光が矩形形状になるように前記スリット照明絞り角度駆動部によりくさび形状を調整することを特徴とする細隙灯顕微鏡。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、細隙灯顕微鏡に関する。
【背景技術】
【0002】
従来技術として、細隙灯顕微鏡(スリットランプ顕微鏡)に関して、例えば、次のような特許文献がある。
特許文献1には、「スリットランプ顕微鏡において、照明系の条件を検知する検知手段を有し、前記検知手段の検知結果に基づき照明光源の光度を制御することを特徴とする」(請求項1)ことが記載されている。
また、特許文献2には、「実施形態のスリットランプ顕微鏡は、1以上の動作モードの動作内容を示す動作モード情報を予め記憶する。照明系は、出力波長が異なる2以上の光源を含む。いずれかの動作モードには照明波長が関連付けられている。指定された動作モードに照明波長が関連付けられているとき、制御部は、この照明波長に基づいて2以上の光源のいずれかに光を出力させるように制御を行う。」(要約)ということが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018-187064号公報
【特許文献2】特開2019-58786号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来技術のスリットランプ顕微鏡では、顕微鏡部の前に照明部が置かれ顕微鏡部と照明部が一定の角度になると、照明部が顕微鏡部の視界を妨げてしまう場合があった。
【0005】
本発明は、以上の点に鑑み、照明部・照明発光部の配置を顕微鏡部・撮影部に被らないようにして、視界を妨げないようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の解決手段によると、
細隙灯顕微鏡において、
被検眼にスリット形状のスリット光を照明する照明発光部と、
前記照明発光部を被検眼に対して水平面上で回転軸のまわりに旋回させるための照明発光駆動部と、
被検眼に照明されるスリット光の照明角度であるスリット照明絞り角度を制御するスリット照明絞り角度駆動部と、
被検眼の画像を撮影する撮影部と、
制御部と
を備え、
前記撮影部が被検眼を撮影するための撮影光軸と前記照明発光部が被検眼を照明するための照明光軸との水平面における角度であるスリット照明旋回角度が入力され又は予め設定され、
前記制御部は、前記照明発光駆動部により、前記撮影部の撮影視界を遮らない位置から、スリット照明旋回角度でスリット光を照明し、
前記制御部は、スリット照明旋回角度に応じて、スリット光が被検眼に照射されるようにスリット照明絞り角度に前記スリット照明絞り角度駆動部を制御する、
ことを特徴とする細隙灯顕微鏡である。
【発明の効果】
【0007】
本発明は、照明部・照明発光部の配置を顕微鏡部・撮影部に被らないようにして、視界を妨げないようにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図6】斜め照射によるスリット形状についての説明図。
【
図7】照明発光部の旋回時のスリット形状についての説明図。
【
図9】第1の実施の形態の細隙灯顕微鏡の制御系のブロック構成図。
【
図10】(A)第1の実施の形態の細隙灯顕微鏡の概略構成図、(B)照明部旋回時の概略説明図。
【
図11】第1の実施の形態の細隙灯顕微鏡の動作を表すフローチャート。
【
図12】スリット照明絞り角度のテーブルの説明図。
【
図13】スリット角度の自動調整についてのフローチャート。
【
図14】第2の実施の形態の細隙灯顕微鏡の制御系のブロック構成図。
【
図15】(A)第2の実施の形態の細隙灯顕微鏡の概略構成図、(B)照明光くさび形状補正の概略説明図。
【
図16】第2の実施の形態の細隙灯顕微鏡の動作を表すフローチャート。
【
図17】スリット照明絞り角度のテーブルの説明図。
【
図18】くさび角度自動調整についてのフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0009】
この発明に係る細隙灯顕微鏡の実施形態の一例について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、この明細書に記載された文献の記載内容を、以下の実施形態の内容として適宜援用することが可能である。
まず方向を定義しておく。装置光学系において最も被検者側に位置する光学素子から被検者に向かう方向を前方向(z方向)とし、その逆方向を後方向とする。また、前方向に直交する水平方向を左右方向(x方向)とする。更に、前後方向と左右方向の双方に直交する方向を上下方向(y方向)とする。
【0010】
A.細隙灯顕微鏡の一例
図1に、細隙灯顕微鏡の一例の外観構成図を示す。
図2に、細隙灯顕微鏡の一例の概要構成図を示す。
この実施形態に係る細隙灯顕微鏡の外観構成について、
図1及び
図2を参照しながら説明する。なお、本発明はこの他にも適宜の細隙灯顕微鏡又は眼科装置に適用することができる。
細隙灯顕微鏡1には、制御部(コンピュータ、CPU)100が接続されている。制御部100は、各種の制御処理や演算処理を行う。制御部100には、被検眼Eの前眼部の画像を撮影し結果を出力するまでの一連の動作指令を予め記憶部101に記憶させておき、後述する顎受け台10に配置した圧力センサー等で被検者を検知した後自動的に動作を行わせることができる。一連の動作指令はバージョンアップされるごとに書き換えることができる。なお、顕微鏡本体(光学系等を格納する筐体)とは別に制御部100を設ける代わりに、顕微鏡本体に同様の制御部、コンピュータ、CPU等を搭載した構成を適用することも可能である。制御部100は、
図1には図示されていないが、入力部102を有する。またモニター等の表示部(表示装置)103を接続し撮影カメラ5aで撮影した被検眼Eの前眼部Ea等の画像を表示することも可能である。
【0011】
細隙灯顕微鏡1は架台2上に載置される。なお、制御部100は他のテーブル上又はその他の場所に設置されていてもよい。支持部8は、架台駆動部(移動機構部)3を介して水平方向、左右方向及び上下方向に移動可能に構成されている。
支持部8は、撮影部(撮影系)5及び照明発光部(照明系)6を支持する。支持部8の一端には、撮影部5を支持する固定柱7が取り付けられている。固定柱7の上部には、中央に撮影カメラ5aが設置され、撮影カメラ5aを中心に左右に第1ステレオカメラ5b、第2ステレオカメラ5cがステレオカメラ支持部5dに固定配置され、照明発光部6を取り囲むように設置されている。なお、第1ステレオカメラ5b、第2ステレオカメラ5cをステレオカメラ支持部5dに配置せずに、撮影部5が第1ステレオカメラ5b及び第2ステレオカメラ5cを撮影カメラ5aと一体に備えるようにしても良い。
【0012】
撮影カメラ5aの上部には、平行投影光を発光する光源9a、9bが設置され、撮像カメラレンズを兼用し、被検眼Eの角膜Eaに平行投影光が投影され、被検眼Eと細隙灯顕微鏡1のアラメントが調整される。
支持部8の他端の上部には、照明発光部6を支持する回動筒部基部6e、照明発光駆動部(照明部回動部)6fが設置され、照明部6bを旋回軸周りに旋回させ、スリット照明光を被検眼Eに対し左側から、あるいは右側から照射することができる。
回動筒部基部6eの上部には、回動筒部6dが旋回軸のまわりに回動可能に設置され、回動筒部6dにはスリット照明部回動アーム6cを介しスリット6aを支持する照明部6bが配置されている。図示されていないが、スリット照明部回動アーム6cを鉛直下方に傾斜させる回動部が回動筒部6dに配置されている。
なお、スリット照明部回動アーム6cは、取り外し可能に構成してもよく、被検眼Eを斜め下部方向から斜め照明させるカーブした回動アームを装着することもできる。
【0013】
固定柱7は架台駆動部3のXYZ駆動部3aのz方向駆動部3a1によりz方向駆動台3a2が移動し、被検眼Eに対しz方向(前後方向)に移動可能に取り付けられている。被検眼Eへのアライメント調整の際に移動される。
また、固定柱7は架台駆動部3のXYZ駆動部3aのx方向駆動部(図示せず)によりx方向駆動台3b2が移動され、被検眼Eに対しx方向(左右方向)に移動可能に取り付けられている。被検眼Eの左右眼を切り替える際に移動される。被検眼Eの右眼が撮影された後、左眼が撮影される。
さらに、固定柱7は架台駆動部3のXYZ駆動部3aのy方向駆動部3cにより上下方向に移動され、被検眼Eに対し、撮影カメラ5aが正面に対峙するように高さ調整することができる。
【0014】
撮影部5は、光源9a、9bから、被検眼Eの角膜Eaに平行投影光が発光され、撮影部の対物レンズと撮像素子の間に配置されたハーフミラーを介して被検眼Eの前眼部に平行投影光が投影され、前眼部にプルキンエ輝点が投影され、前眼部画像が撮影される。撮影された前眼部画像に基づき被検眼Eの位置が検出され、自動的に支持台8及び固定柱7がxyz方向に移動し、被検眼Eと細隙灯顕微鏡1本体のアラメントが調整され、被検眼Eの撮影に最適な距離に細隙灯顕微鏡1本体が配置される。
【0015】
ここで、オートアライメント(ラフアライメント)について説明する。
被検者が顎受けに顎を乗せ、被検眼Eの検査を開始し、ステレオカメラ5b、5cにより被検眼Eを撮影する。撮影した画像から被検眼Eの瞳孔を検出し、被検眼Eの3次元位置を特定する。瞳孔の代わりにプルキン輝点を検出してもよい。
すなわち、制御部100は顕微鏡1本体のXYZ駆動部3aを駆動し、被検眼Eと顕微鏡1本体が測定開始の基準位置である規定の位置まで移動させる。以上により、被検眼Eと顕微鏡1本体はアライメントが行われる。
【0016】
照明発光部6は、被検眼Eに照明光を照射する。照明発光部6は、前述のように、回動筒の旋回軸を中心に左右方向に駆動することができる。それにより被検眼Eに対する照明光の照射方向が変更される。回動筒部6dの、図示しないスリット照明部回動アーム6cを鉛直下方に傾斜させる回動部により、スリット照明部回動アーム6cを下方に傾斜させ、斜め方向から被検眼Eが斜め照明される。
なお、照明部回動アーム6cを、被検眼Eを斜め下部方向から斜め照明させるカーブした回動アームに取り換え、装着することにより、照明発光部6は上下方向にも移動可能又は回動可能なように構成してもよい。照明光の仰角や俯角を変更できるように構成してもよい。
また、照明部回動アーム6cを被検眼Eの視線に対し、下部の位置に配置させるように平行移動可能又は回動可能なリンク機構からなるアームを装着し、かつ、照明部6bを被検眼に対し後方に傾斜可能にすることで同様の斜め下部照明が可能となり、斜め下部からの被検眼Eの照明および撮影を可能にすることができる。
【0017】
撮影部5に対峙する位置には顎受け台10が配置されている。顎受け台10には、被検者の顔を安定配置させるための顎受部10aと額当て10bが設けられている。
撮影カメラ5aには、対物レンズ、平行光を導光する光学レンズから構成されている。
なお、撮影倍率を変更するためのオートフォーカス機構を設置してもよく、自動的に撮影倍率が調整される。更に、撮影カメラ5aには、被検眼Eを撮影するための撮像装置が接続されている。撮像装置は撮像素子を含んで構成されている。撮像素子は、光を検出して画像信号(電気信号)を出力する光電変換素子である。画像信号は制御部100に入力される。撮像素子としては、たとえばCCD(Charge Coupled Device)イメージセンサや、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)イメージセンサが用いられる。
更に、制御部100の代わりに、モバイル等の携帯端末装置200の表示画面100aに前眼部Ea等の画像を表示し、携帯端末装置200の演算処理装置を介して遠隔操作し、被検眼Eの撮影を行うこともできる。
【0018】
B.概要
図3に、従来の細隙灯顕微鏡の概要説明図を示す。
ここで、従来例について説明する。
図3の正面図は、被検者から見た撮影部5と照明発光部6の状態を示す。正面図が示すように、撮影部5の顕微鏡部を通過して被検眼に照射される平行光束と照明部が重なってしまい、照明部が旋回することによって、場所によって顕微鏡部からの平行光束やステレオカメラの視界が遮られる場合がある。
【0019】
そこで、本発明の実施の形態では、以下説明するように、回転軸(旋回軸)のまわりの旋回時等に視野を遮ることを防ぐことができる。
図4に、細隙灯顕微鏡の概要説明図(1)を示す。
図4(A)に正面図の概要、
図4(B)に側面図の概要をそれぞれ示す。細隙灯顕微鏡は、照明発光部6、撮影部5を備える。照明発光部6は、照明部(スリット照明等)を備え、スリット光を用いて被検眼を照明する。撮影部5は、顕微鏡部(撮影系(対物レンズ・撮影カメラ部等))を備え、被検眼(角膜、前眼部等)を撮影する。
本実施の形態の細隙灯顕微鏡は、スリット光を撮影部の撮影光軸の斜め下から照明(照明光軸)することで、照明発光部6の回転軸(旋回軸)のまわりの旋回時等に視野を遮ることを防ぐことができる。被検眼Eにスリット光を照明する方向は、上記に限定されず、斜め上から、又は斜め下及び斜め上から照明することもできる。特に、撮影部5に被らないように照明発光部6を配置することによって、照明発光部6の旋回によって撮影部5の視野が遮られるのを防ぐことができる。
【0020】
図5に、細隙灯顕微鏡の概要説明図(2)を示す。
この実施の形態の細隙灯顕微鏡では、オートスリットランプ(オート細隙灯顕微鏡)を考慮した場合であり、図にその上面図の概要を示す。細隙灯顕微鏡は、
図4で説明したような照明発光部6、撮影部5に加え、撮影部5がさらにステレオカメラを備える。
本実施の形態の細隙灯顕微鏡は、スリット光を撮影部5の撮影光軸の斜め下又は斜め上、若しくは斜め下及び斜め上の両方から照明(照明光軸)することで、
図2で説明したように照明発光部6の回転軸(旋回軸)のまわりの旋回よって視野を遮ることを防ぐことができる。図示の例では、さらに、照明発光部6が撮影部5の顕微鏡部やステレオカメラ等の配置より低い位置なので、ステレオカメラ等による撮影時の邪魔にならない。
【0021】
図6に、斜め照射によるスリット形状についての説明図を示す。
本実施の形態の細隙灯顕微鏡は、
図6(A)のように、スリット光を斜めに照明することによって、スリット矩形で照らされて、くさび形状に照明されるため、
図6(B)のように、照射されるスリット光の形状をくさび形にすることによって、スリットの形状を保つようにする。照明発光部6は、例えば、プロジェクターで使用されるデジタルミラーデバイス(DMD)などを用いて、任意の形状に変更して照明することができる。
【0022】
図7に、照明発光部の旋回時のスリット形状についての説明図を示す。
本実施の形態の細隙灯顕微鏡では、斜め照射なので、
図7(A)のように、照明発光部6を旋回することによってスリット矩形が傾くため、
図7(B)のように、スリットの配置・角度を回転させて、照射されるスリット光の傾きを相殺する。傾いたスリット分についてスリット角度を回転させることによって、スリット光(スリット矩形)を垂直にする。例えば、照明の撮影系に対する角度とスリット角度とのテーブル等の対応関係を記憶部で保持しておき、連動して変更することができる(各種手法について詳細は後述)。
【0023】
図8に、細隙灯顕微鏡の他の実施の形態の説明図を示す。
図4では、照明発光部6を撮影光軸の下側に配置した例を示したが、以下のような配置構成とすることができる。
(1)下方向に照明発光部6を配置し、撮影部5の光軸と重ならない移動または旋回する(
図4参照)。
(2)上方向に照明発光部6を配置し、撮影部5の光軸と重ならない移動または旋回する(
図8(A)参照)。
(3)上下方向に照明発光部6を配置し、撮影部5の光軸と重ならない移動または旋回する(
図8(B)参照)。これにより、例えば光量ムラを無くすことができる。
【0024】
C.第1の実施の形態の細隙灯顕微鏡の詳細説明
図9に、第1の実施の形態の細隙灯顕微鏡の制御系のブロック構成図を示す。
本実施の形態の細隙灯顕微鏡は、入力部102、制御部(CPU)100、撮影部5、架台駆動部3、照明発光部6、照明発光駆動部6f、照明発光部角度検出部70、スリット照明絞り角度駆動部80、スリット照明絞り角度検出部90、記憶部101、表示部103、を備える。
【0025】
図10(A)に、第1の本実施の形態の細隙灯顕微鏡の概略構成図を示し、
図10(B)に、照明部旋回時の概略説明図を示す。
図10(A)では、一例として、被検眼、撮影部5、照明発光部角度検出部70、照明発光部6等が示される。照明発光部6は、照明部旋回中心(回転軸、旋回軸)の回りに旋回する。
なお、撮影部5の光軸(撮影光軸)と照明発光部6の光軸(照明光軸)の水平面におけるなす角を旋回角θと定義する。旋回角θとスリット照明絞りの角度θ
sには相関関係がある。照明発光部6の旋回角を設定すると、例えば、制御部100は記憶部101に保持されているテーブルからスリット照明絞り角度θ
sを読み出し、スリット照明絞り駆動部80を駆動する(各種手法について詳細は後述)。なお、旋回角θの基準位置、スリット照明絞り角度θ
sの基準位置は、適宜設定することができる。
【0026】
図10(B)では、照明発光部6のスリット部の詳細について示される。図示のように、(スリット)照明光出力部を旋回させることによって、被検眼(角膜上、前眼部等)に照射されるスリット光の角度を補正する。スリット照明絞り角の旋回については、スリットの長手方向が、スリット中心を軸に回転する。
【0027】
以下、第1の実施の形態の細隙灯顕微鏡の動作について説明する。
図11は、第1の実施の形態の細隙灯顕微鏡の動作を表すフローチャートである。ここでは、特に、照明部旋回時におけるスリット角度回転について説明する。
以下各ステップについて説明する。
・S10: 検者が入力部102に角度を入力する。または事前のモード設定により撮影角度が決まっている場合はその角度が制御部100(CPU)へ送られる。この角度は例えば、水平面での照明発光部6(照明部)の旋回角θの情報である。旋回角度の入力方法は手動でも事前のシーケンスからでもよい。例えば、症状による照明角度が決まっている場合は、その角度を自動的に選択するようにすることができる。
・S12: 制御部100は照明発光部6が入力された角度になるように、照明発光駆動部6fを駆動する。
・S14: 照明発光部角度検出部70は照明発光部6の回転軸(旋回軸)のまわりの角度(スリット照明光旋回角度θ)を検出し、検出結果を制御部100へ送る。
・S16: 制御部100は設定した角度と照明発光部角度検出部70からの角度を比較し、設定角度になっていなければS12へ戻り、設定角度になっていた場合にはS18に進む判断を行う。
【0028】
・S18: 制御部100は記憶部101に保持されているテーブルまたは式又は他の処理方法等を用いてスリット照明絞り角度θsの設定を行う(詳細は後述)。
・S20: 制御部100はS18で設定したスリット照明絞り角度θsになるようにスリット照明絞り角度駆動部80を駆動する。
・S22: 制御部100は設定した角度とスリット照明絞り角度検出部90からの角度を比較し、設定角度になっていなければS20へ戻り、設定角度になっていた場合には次のステップに進む又は処理を終了(END)する判断を行う。ここで、入力された照明発光部6(照明部)の旋回角(スリット照明光旋回角度θ)及び/又はそれに対応するスリット角(スリット照明絞り角度θs)で照明できる状態を示している。
制御部100は、さらに照明発光部6(照明部)の旋回角(スリット照明光旋回角度θ)及び/又はそれに対応するスリット角(スリット照明絞り角度θs)を記憶部101に記憶する及び/又は表示部103に表示しても良い。
なお、スリット照明光旋回角度θをマニュアルで設定する場合は、S10~S16の処理を省略しても良い。
【0029】
(ステップS18の詳細:照明発光部6(照明部)旋回時のスリット絞り角度の算出について)
ステップS18では、制御部100は、例えば、以下の「テーブルを用いた角度設定処理」、「式を用いた角度設定処理」、又は、「スリット角度の自動調整処理」等により、スリット照明絞り角度θs(スリット照明角)の設定を行うことができる。
【0030】
・テーブルを用いた角度設定処理
図12に、スリット照明絞り角度のテーブルの説明図を示す。
記憶部101は、図示のような、旋回角とスリット照明絞り角度のテーブルを保持することができる。この場合、S18において、例えば、制御部100は記憶部101に保持されているこのテーブルを参照して、入力された旋回角度θ(旋回角)に基づき、スリット照明絞り角度θ
s(スリット照明角)を求めることにより、角度の設定を行うことができる。
【0031】
・式を用いた角度設定処理
この場合、S18において、制御部100は、予め定められた式を用いて、入力された旋回角度θ(旋回角)により、スリット照明絞り角度θs(スリット照明角)を求めることにより、角度の設定を行うことができる。制御部100は、事前に旋回角度と照明角度の例えば次式のような関係式を算出し、入力された旋回角度θに応じて、スリット照明角度θsを決定することができる。
θs=Aθ+B
(A,B:予め定められたパラメータ)
【0032】
・スリット角度の自動調整処理
図13に、スリット角度の自動調整についてのフローチャートを示す。
制御部100は、撮影部5から被検眼(角膜上、前眼部等)の画像を撮像し、例えば予め定められた閾値で2値化すること等適宜の手法により、画像中のスリット光を抽出する(S101)。S102で、制御部100は、スリット光角度が垂直又は垂直に近い状態になったかを判断し、Noであれば、照明発光駆動部6fによりスリット角度を予め定められた方向及び角度で走査する等により調整する(S103)。一方、Yesの場合は処理を終了する。
【0033】
D.第2の実施の形態の細隙灯顕微鏡の詳細説明
第2の実施の形態の細隙灯顕微鏡は、概略、第1の実施の形態にさらに、斜め下からの角度も変更可能にしたものである。特に、スリット発光駆動部60が水平方向だけでなく、鉛直方向にも駆動できるようにしたものである。例えば、球体のようなものにアームが付いていて鉛直・水平に動作可能等とすることができる。
なお、細隙灯顕微鏡の実施の形態としては、第1の実施の形態の構成又は第2の実施の形態の構成の一方の構成を備えるようにしてもよいし、又は、第1と第2の実施の形態の両方の構成を備えるようにしてもよい。また、第1と第2の実施の形態の両方の構成を備える場合、第1の実施の形態の構成による動作と、第2の実施の形態の構成による動作は、いずれを先に実行してもよい。
【0034】
図14に、第2の実施の形態の細隙灯顕微鏡の制御系のブロック構成図を示す。
本実施の形態の細隙灯顕微鏡は、第1の実施の形態の各構成部に加え、特に、スリット幅駆動部300、スリット幅検出部400を備える。ここで、照明発光部角度検出部70は、照明発光部6(照明部)の旋回角度の検出に加え、鉛直方向の角度又は上下方向の移動量も検出する。また、照明発光駆動部6fは、照明発光部6(照明部)の旋回方向の駆動・移動に加え、鉛直方向の角度又は移動量にも回動又は移動する。
【0035】
図15(A)に、第2の実施の形態の細隙灯顕微鏡の概略構成図を示し、
図15(B)に、照明光くさび形状補正の概略説明図を示す。
図15(A)では、一例として、被検眼、撮影部5、照明発光部角度検出部70、照明発光部6等が示される。照明発光部6は、照明部旋回中心(回転軸、旋回軸)の回りに旋回するとともに、鉛直方向の角度又は移動量にも回動/回転又は移動する。
なお、撮影部5の光軸(撮影光軸)と照明発光部の光軸(照明光軸)の鉛直面におけるなす角をスリット照明光角度γと定義する。スリット照明光角度γとスリットくさび形状ψは相関関係がある。制御部100は、スリット照明角度γを設定し、くさび形状を算出する。制御部100はスリット幅駆動部300を駆動しくさび形状になるように制御する。くさび形状を制御することにより、矩形のスリット光が被検眼に照射される。
なお、一般に、γの角度が変わらない限りψの角度は変わらない。なお、スリット照明光角度γの基準位置、スリットくさび形状ψの基準位置は、適宜設定することができる。
図15(B)では、照明発光部6のスリット部の詳細について示される。図示のように、スリット)照明光出力部のスリットをくさび形にすることによって、照明発光部6(照明部)の角度γによる照明光のくさび形状を相殺する。
【0036】
以下、細隙灯顕微鏡の動作について説明する。
図16に、第2の実施の形態の細隙灯顕微鏡の動作を表すフローチャートである。ここでは、特に、照明部角度変更時におけるスリットくさび形状補正について説明する。
以下各ステップについて説明する。
・S50 検者が入力部102に角度を入力する。この角度は例えば、照明発光部6(照明部)の鉛直面のスリット照明光角度γ(照明角度)の情報である。照明光角度の入力方法は手動でも事前のシーケンスからでもよい。例えば、症状による照明角度が決まっている場合は、その角度を自動的に選択するようにすることができる。照明光角度の入力方法は手動でも事前のシーケンスからでもよい。例えば、症状による照明角度が決まっている場合は、その角度を自動的に選択するようにすることができる。
・S52: 制御部100は照明発光部6が入力された角度になるように、照明発光駆動部6fを駆動する。
・S54 照明発光部角度検出部70は回転軸の角度(スリット照明光角度γ)を検出し、検出結果を制御部100へ送る。
・S56: 制御部100は設定した角度と照明発光部角度検出部70からの角度を比較し、設定角度になっていなければS52へ戻り、設定角度になっていた場合にはS58に進む判断を行う。
【0037】
・S58: 制御部100は記憶部101に保持されているテーブルまたは式又は他の処理方法等を用いてスリット照明絞りのくさび形状の設定を行う(詳細は後述)。
・S60: 制御部100はS58で設定したくさび形状になるようにスリット幅駆動部300を駆動する。
・S62: 制御部100は設定したくさび形状とスリット幅検出部400からのくさび形状を比較し、設定した形状になっていなければS60へ戻り、設定した形状になっていた場合には次のステップに進む又は処理を終了(END)する判断を行う。ここで、入力された照明発光部6(照明部)の照明角(スリット照明光角度γ)及び/又はそれに対応するくさび形状(スリットくさび形状ψ)で照明できる状態を示している。
制御部100は、さらに照明発光部6(照明部)の照明角(スリット照明光角度γ)及び/又はそれに対応するくさび形状(スリットくさび形状ψ)を記憶部101に記憶する及び/又は表示部103に表示しても良い。
なお、スリット照明光角度γをマニュアルで設定する場合は、S50~S56の処理を省略しても良い。
【0038】
(ステップS58の詳細:照明発光部6(照明部)角度変更時のスリットくさび形状補正角度の算出について)
ステップS58では、制御部100は、例えば、以下の「テーブルを用いたくさび形状設定処理」、「式を用いたくさび形状設定処理」、「くさび形状の自動調整処理」等により、くさび形状ψの設定を行うことができる。
【0039】
・テーブルを用いたくさび形状設定処理
図17に、スリット照明絞り角度のテーブルの説明図を示す。
記憶部101は、図示のような、照明角度γとくさび形状ψのテーブルを保持することができる。くさび形状は、スリットの上端と下端を基準に対してどの程度変化させるかを定義する。また、直接くさび形状を定める数値で持ってもよい。この場合、S58において、例えば、制御部100は記憶部101に保持されているこのテーブルを参照して、入力されたスリット照明光角度γ(照明角度)に基づき、くさび形状ψを求めることにより、くさび形状の設定を行うことができる。この場合は、スリット形状の上端・下端のそれぞれの減少率・増加率が予め定められ、制御部100はスリット幅駆動部300を制御・駆動して、照明発光部6からのスリット光のくさび形状を設定・調整する。
【0040】
・式を用いたくさび形状設定処理
この場合、S58において、制御部100は、予め定められた式を用いて、入力された旋スリット照明光角度γ(照明角度)に基づき、くさび形状ψを求めることにより、くさび形状の設定を行うことができる。制御部100は、事前に照明角度とくさび形状の例えば次式のような関係式を算出し、入力された照明角γに応じて、くさび形状ψを決定することができる。
くさび形状の上端幅 ψu=Lγ-M
くさび形状の下端幅 ψb=Lγ+M
(L,M:予め定められたパラメータ)
【0041】
・くさび形状の自動調整処理
図18に、くさび角度自動調整についてのフローチャートを示す。
制御部100は、撮影部5から被検眼(角膜上、前眼部等)の画像を撮像し、例えば予め定められた閾値で2値化すること等適宜の手法により、画像中のスリット光を抽出する(S201)。S202で、制御部100は、スリット光が矩形又は矩形に近い状態になったかを判断し、Noであれば、照明発光駆動部6fによりスリット角度を予め定められた長さで台形形状の上端を短く及び/又は下端を長くしてくさび形状を調整して設定する(S203)。一方、Yesの場合は処理を終了する。
【0042】
E.実施の形態の効果
本実施の形態は、例えば、次のような効果を奏する。
・照明発光部・照明部の旋回時に視野を遮ることを防ぐことができる。
・照明発光部・照明部の配置を顕微鏡部の視界を遮らない位置に配置することによって、視界を遮ることを防ぐことが出来る。
・オートスリットランプの場合、位置決めに使用するステレオカメラの視界も遮らないようにすることによって、照明発光部・照明部がどの角度にあっても、ステレオカメラによる位置決めが出来る。
・照明発光部・照明部と撮影部・顕微鏡部がどの角度の関係になっても、視界が遮られることがなくなる。
・オートスリットランプの場合、位置決めのステレオカメラを遮ることがなくなるため、照明部を所定の位置に戻すことなく、架台の位置調整をすることが出来る。
【符号の説明】
【0043】
1 細隙灯顕微鏡
2 架台
3、3a、3a1、3a2、3b、3b1、3b2、3c 移動機構部(架台駆動部)
5、5a、5b、5c、5d、5e、5d 撮影部(撮影系)
6、6a、6b、6c、6d、6e、6f 照明発光部(照明系)
7 固定柱
8 支持部
9、9a、9b 平行投影光光源
10 顎受け台
70 照明発光部角度検出部
80 スリット照明絞り角度駆動部
90 スリット照明絞り角度検出部
100 制御部(コンピュータ、CPU)
101 記憶部
103 表示部
200、200a 携帯端末装置
E 被検眼