(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024136381
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】キャリアテープの巻取り方法
(51)【国際特許分類】
B65D 85/86 20060101AFI20240927BHJP
【FI】
B65D85/86 300
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023047478
(22)【出願日】2023-03-24
(71)【出願人】
【識別番号】000190116
【氏名又は名称】信越ポリマー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112335
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 英介
(74)【代理人】
【識別番号】100101144
【弁理士】
【氏名又は名称】神田 正義
(74)【代理人】
【識別番号】100101694
【弁理士】
【氏名又は名称】宮尾 明茂
(74)【代理人】
【識別番号】100124774
【弁理士】
【氏名又は名称】馬場 信幸
(72)【発明者】
【氏名】相沢 純一
【テーマコード(参考)】
3E096
【Fターム(参考)】
3E096AA11
3E096BA08
3E096CA15
3E096FA09
(57)【要約】
【課題】 巻き緩みと反りの発生を抑制することのできるキャリアテープの巻取り方法を提供する。
【解決手段】 巻取リール1に長い帯形のキャリアテープ10を巻き取るキャリアテープの巻取り方法であり、キャリアテープ10よりも幅広の層間テープ20をキャリアテープ10と共に多層のトラバース巻きに巻き取り、層間テープ20を樹脂フィルム21としてそのキャリアテープ10から食み出た側部22を隣接するキャリアテープ10の側部に接触させて重ねる。樹脂フィルム21の側部22がキャリアテープ10の側部から食み出し、隣接するキャリアテープ10の側部に重なってキャリアテープ10の重ね巻きと同等の干渉連結効果を発揮するので、キャリアテープ10の姿勢の安定化が期待できる。したがって、キャリアテープ10の巻き緩みの発生を防ぐことができる他、キャリアテープ10に大きな反りの発生するおそれを有効に払拭することができる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
巻取リールにキャリアテープを巻き取るキャリアテープの巻取り方法であって、キャリアテープよりも幅広の層間テープをキャリアテープと共にトラバース巻きに巻き取り、層間テープのキャリアテープから食み出た側部を隣接するキャリアテープの側部に重ねることを特徴とするキャリアテープの巻取り方法。
【請求項2】
層間テープを、キャリアテープの表面に積層される樹脂フィルムとしてその厚さを20μm以上50μm以下とし、この樹脂フィルムの幅を、キャリアテープの幅の1.5倍以上3倍未満とする請求項1記載のキャリアテープの巻取り方法。
【請求項3】
樹脂フィルムの静摩擦係数を、JIS K7125:1999の摩擦係数試験方法に準拠して測定した場合に0.2以上とする請求項2記載のキャリアテープの巻取り方法。
【請求項4】
樹脂フィルムの表面粗さ(Ra)を、JIS B0601:2013に準拠して測定した場合に0.2μm以上とする請求項2又は3記載のキャリアテープの巻取り方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体や電子部品の収納、保管、搬送、輸送等に用いられるキャリアテープの巻取り方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、複数の電子部品を個々に収納し、保管、搬送、輸送等する場合には、ハンドリングしにくい小型の電子部品を効率的に取り扱ったり、電子部品の破損を未然に防いだり、あるいはできるだけ多くの電子部品を収納する観点から、キャリアテープが使用されている。
【0003】
この種のキャリアテープ10は、
図3に示すように、巻取リール1にトラバース巻き(スパイラル巻き)される樹脂シート11と、この樹脂シート11の長手方向に連続して配列形成される複数のポケット13とを備え、樹脂シート11の側部長手方向に複数のスプロケット孔12が連続して配列形成されており、製造された後、巻取リール1にトラバース巻きに巻き取られて保管、搬送、輸送される(特許文献1、2参照)。
【0004】
キャリアテープ10を巻取リール1にトラバース巻きに巻き取る場合には、巻取リール1の巻芯4にキャリアテープ10をテープ幅程度分だけずらしながら張力を加えて多層の普通巻きUWに巻き取るが、テープ幅の狭いキャリアテープ10を巻取リール1にトラバース巻きに巻き取る場合には、長いキャリアテープ10を崩れにくく巻き取る観点から、普通巻きUWと重ね巻きOWとを交互に繰り返すことが少なくない。
【0005】
キャリアテープ10を、普通巻きUWと重ね巻きOWとを交互に繰り返してトラバース巻きする場合には、先ず、巻取リール1の巻芯4の一側板2寄りから他側板3方向に1層目のキャリアテープ10をテープ幅程度分だけずらしながら張力を加えて巻き取り、キャリアテープ10の一側部と他側部とを重ねることなく普通巻きする(
図3参照)。こうして巻取リール1の他側板3付近まで1層目のキャリアテープ10を普通巻きしたら、キャリアテープ10の移動方向を反転させ、2層目のキャリアテープ10を横方向にずらしながら張力を加えて巻き取るが、この際、キャリアテープ10の他側部と一側部とを重ねて重ね巻きする(
図4参照)。
【0006】
巻取リール1の一側板2付近まで2層目のキャリアテープ10を重ね巻きしたら、キャリアテープ10の移動方向を再度反転させ、3層目のキャリアテープ10をテープ幅程度分だけずらしながら張力を加えて巻き取るが、この際、1層目同様、キャリアテープ10を普通巻きUWに巻き取る。以下、これらの普通巻きUWと重ね巻きOWの巻き工程が交互に繰り返される(
図5参照)ことにより、キャリアテープ10が多層のトラバース巻きに巻き取られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2001‐247158号公報
【特許文献2】特開平10‐059471号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従来におけるキャリアテープ10は、以上のようにトラバース巻きに巻き取られるが、輸送時の振動等により巻き緩みが発生することがある。この弊害を解消する手段としては、(1)キャリアテープ10に強い張力を加えて巻き取る方法、(2)キャリアテープ10をテープ幅以下でずらしながら
図4に示す重ね巻きする方法があげられる。
【0009】
しかしながら、(1)の方法の場合には、巻き緩みの発生を防止することができるものの、キャリアテープ10に過度の張力が作用するので、キャリアテープ10に大きな反りが発生することがある。また、(2)の方法の場合には、隣接するキャリアテープ10の側部同士が重なって干渉するので、巻き緩みの発生を防ぐことができるが、キャリアテープ10に大きな反りの発生するおそれが少なくない。
【0010】
本発明は上記に鑑みなされたもので、巻き緩みと反りの発生を抑制することのできるキャリアテープの巻取り方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明においては上記課題を解決するため、巻取リールにキャリアテープを巻き取るキャリアテープの巻取り方法であって、
キャリアテープよりも幅広の層間テープをキャリアテープと共にトラバース巻きに巻き取り、層間テープのキャリアテープから食み出た側部を隣接するキャリアテープの側部に重ねることを特徴としている。
【0012】
なお、巻取リールにキャリアテープと層間テープを多層のトラバース巻きに巻き取る際、キャリアテープの一方の側部と他方の側部とを重ねずに普通巻きに巻き取ることができる。
また、層間テープを、キャリアテープの表面に積層される樹脂フィルムとしてその厚さを20μm以上50μm以下とし、この樹脂フィルムの幅を、キャリアテープの幅の1.5倍以上3倍未満とすることが好ましい。
【0013】
また、樹脂フィルムの静摩擦係数を、JIS K7125:1999の摩擦係数試験方法に準拠して測定した場合に0.2以上とすることが好ましい。
さらに、樹脂フィルムの表面粗さ(Ra)を、JIS B0601:2013に準拠して測定した場合に0.2μm以上とすることが好ましい。
【0014】
ここで、特許請求の範囲におけるキャリアテープは、帯形のシートと、このシートの中央部の長手方向に並べて形成されて小物品を収納する複数の収納凹部とを備え、シートの両側部のうち少なくとも一側部の長手方向に複数のスプロケット孔が並べて設けられる。このキャリアテープは、単層構造でも良いが、多層構造が好適である。また、層間テープは、透明、不透明、半透明のいずれでも良く、キャリアテープの表面に直接的に積層される。この層間テープの側部は、層間テープの片側と両側のいずれでも良い。
【0015】
本発明によれば、巻取リールにキャリアテープをトラバース巻きに巻き取る場合に、層間テープの側部がキャリアテープの側部から食み出し、隣接するキャリアテープの側部に接触して重なるが、この重なりがキャリアテープの重ね巻きと略同等の干渉連結効果を発揮するので、キャリアテープの位置や姿勢が安定する。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、層間テープのキャリアテープから食み出た側部を隣接するキャリアテープの側部に重ねるので、キャリアテープの巻き緩みと反りの発生を抑制することができるという効果がある。
【0017】
請求項2記載の発明によれば、層間テープが紙ではなく、樹脂フィルムなので、塵埃の発生を防いでキャリアテープの汚染を防止することができる。また、樹脂フィルムの幅がキャリアテープの幅の1.5倍未満ではないので、層間テープのキャリアテープから食み出た側部を隣接するキャリアテープの側部に確実に重ねることができる。また、樹脂フィルムの幅がキャリアテープの幅の3倍を越えないので、樹脂フィルムの無駄を省いて低コスト化を図ることができる。
【0018】
請求項3記載の発明によれば、樹脂フィルムの静摩擦係数がJIS K7125:1999の摩擦係数試験方法に準拠して測定した場合に0.2以上なので、トラバース巻きされたキャリアテープの滑りに伴う巻き崩れを抑制することができ、キャリアテープの巻き緩みや反りの発生するおそれを払拭することができる。
【0019】
請求項4記載の発明によれば、樹脂フィルムの表面粗さ(Ra)がJIS B0601:2013に準拠して測定した場合に0.2μm以上なので、キャリアテープの巻き緩みや反り発生のおそれを払拭することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明に係るキャリアテープの巻取り方法の実施形態を模式的に示す説明図である。
【
図2】本発明に係るキャリアテープの巻取り方法の実施形態におけるキャリアテープを模式的に示す説明図で、(a)図は平面図、(b)図は(a)図の断面図である。
【
図3】巻取リールの巻芯に1層目のキャリアテープを普通巻きのトラバース巻きに巻き取る状態を示す説明図である。
【
図4】巻取リールの巻芯に2層目のキャリアテープを重ね巻きのトラバース巻きに巻き取る状態を示す説明図である。
【
図5】巻取リールの巻芯にキャリアテープを普通巻きと重ね巻きのトラバース巻きに巻き取った状態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照して本発明の好ましい実施の形態を説明すると、本実施形態におけるキャリアテープの巻取り方法は、
図1に示すように、巻取リール1にキャリアテープ10を巻き取る場合に、キャリアテープ10よりも幅広の層間テープ20をキャリアテープ10と共にトラバース巻きに巻き取り、層間テープ20のキャリアテープ10から食み出た側部22を隣接するキャリアテープ10に接触させることにより、国連サミットで採択されたSDGs(国連の持続可能な開発のための国際目標であり、17のグローバル目標と169のターゲット(達成基準)からなる持続可能な開発目標)の目標9の達成に貢献する。
【0022】
巻取リール1は、
図1や
図3に示すように、相対向する円板形の一側板2と他側板3とを備え、これら一側板2と他側板3の中心間に、キャリアテープ10が巻かれる円筒形の巻芯4が挟持される。この巻取リール1を構成する一側板2、他側板3、及び巻芯4は、粉塵の発生を防止する観点から、例えばポリスチレン樹脂や再生ポリスチレン樹脂等の所定の樹脂により成形され、これらの樹脂には、帯電防止剤や導電剤等が選択的に添加される。
【0023】
キャリアテープ10は、
図1や
図2(a)、(b)に示すように、長く巻き取る観点から巻取リール1の巻芯4にトラバース巻き(スパイラル巻き)される長さ200m~2000mの樹脂シート11と、この樹脂シート11に配列形成されて電子部品を収納する複数のポケット13とを備え、樹脂シート11の両側部のうち少なくとも一側部に複数のスプロケット孔12が並べてパンチングされるエンボスキャリアテープである。
【0024】
樹脂シート11は、所定の樹脂含有の成形材料により、厚さ0.1mm以上0.5mm以下の細長い帯形のテープに成形され、巻取リール1に多層に普通巻きされる。この樹脂シート11の成形材料は、所定の樹脂に必要な帯電防止剤やカーボンの導電剤等が選択的に添加されることで調製される。成形材料の所定の樹脂としては、特に限定されるものではないが、例えば炭化水素系樹脂、非晶性ポリエチレンテレフタレート(APET)樹脂、ポリカーボネート(PC)樹脂、ポリプロピレン(PP)樹脂、ABS樹脂、MBS樹脂等があげられる。
【0025】
これらの樹脂の中では、キャリアテープ10の巻き癖や反りを未然に防止する観点から、炭化水素系樹脂を主成分とするのが好ましい。この炭化水素系の樹脂としては、例えば汎用性に優れる透明のポリスチレン(PS)樹脂、静電気トラブルを防止可能な導電性ポリスチレン樹脂、ポリエチレン(PE)樹脂等があげられる。
【0026】
樹脂シート11は、1種類の樹脂により単層形成されても良いが、好ましくは多機能化の観点から、複数種の樹脂により積層形成される。例えば、1層目から3層目までが厚さの異なるポリスチレン樹脂の積層構造に形成されたり、1層目が薄いポリエチレン樹脂、2層目が厚いポリスチレン樹脂、及び3層目が薄いポリエチレン樹脂の積層構造に形成される。また、1層目がポリスチレン樹脂、2層目がポリエチレン樹脂、及び3層目がポリスチレン樹脂の積層構造でも良いし、1層目が薄いABS樹脂、2層目が厚いポリスチレン樹脂、及び3層目が薄いABS樹脂の三層構造でも良い。
【0027】
但し、キャリアテープ10の製造コストを削減する観点からすると、樹脂シート11の50%以上がポリスチレン樹脂で、しかも、中心の芯となる層がポリスチレン樹脂であるのが好ましい。
【0028】
樹脂シート11は、JISにより規格化されているが、テープ幅が4mm以上32mm以下(4mm、8mm、12mm、16mm、24mm、32mm)のタイプが主に用いられる。テープ幅が24mm以下のタイプの場合には、樹脂シート11の一側部長手方向に複数のスプロケット孔12が並べてパンチングされ、樹脂シート11の一側部が複数のスプロケット孔12付きのスプロケットフランジに形成されるとともに、樹脂シート11の他側部が複数のスプロケット孔12無しのフリーフランジに形成される。これに対し、テープ幅が32mm以上のタイプの場合には、樹脂シート11の両側部長手方向に複数のスプロケット孔12がそれぞれ並べてパンチングされており、この樹脂シート11の両側部が複数のスプロケット孔12付きのスプロケットフランジに形成される。
【0029】
複数のポケット13は、樹脂シート11の中央部、換言すれば、エンボス領域の長手方向に所定の間隔で並べてエンボス形成され、各ポケット13が平面矩形の有底角筒形に形成される。この複数のポケット13は、各種の電子部品、例えばアルミ電解コンデンサ、ICチップ、抵抗素子、ダイオード等を収納し、樹脂シート11の表面に粘着タイプのカバーテープが後から粘着されることにより、開口が封止されて電子部品の飛び出しが防止される。カバーテープは、例えばポリスチレン樹脂やポリカーボネート樹脂等により成形された透明の樹脂テープからなり、樹脂シート11の中央部からフリーフランジに亘る領域に粘着される。
【0030】
層間テープ20は、
図1に示すように、例えばキャリアテープ10の樹脂シート11よりも幅の広い透明の樹脂フィルム21からなり、樹脂シート11の表面に積層されて側部22を食み出させ、この食み出た側部22を隣接するキャリアテープ10の側部に重ねて接触させることによりキャリアテープ10の巻き姿勢の安定に資するよう機能する。
【0031】
樹脂フィルム21は、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂、ポリエチレンエーテルエーテルケトン(PEEK)樹脂、ポリビニルアルコール(PVA)樹脂、あるいはポリ塩化ビニル(PVC)樹脂含有の成形材料により薄膜に成形されるが、これらの樹脂の中では透明性、耐熱性、強度等に優れるポリエチレンテレフタレート樹脂の採用が好ましい。樹脂フィルム21の厚さは、実用性、成形性、強度等を考慮すると、20μm以上50μm以下、好ましくは25μm以上50μm以下、より好ましくは30μm以上50μm以下が良い。この樹脂フィルム21の厚さは、専用のマイクロメータ等を使用して測定することが可能である。
【0032】
樹脂フィルム21の幅は、キャリアテープ10の側部から樹脂フィルム21の側部22を適切に食み出させてトラバース巻きされたキャリアテープ10の形態を安定させる観点から、キャリアテープ10の幅の1.5倍以上3倍未満、好ましくは1.6倍以上3倍未満、より好ましくは1.66倍以上3倍未満が良い。
【0033】
具体的な幅としては、キャリアテープ10の幅が4mmの場合には幅6.0mm以上12mm未満、好ましくは幅6.7mm前後、キャリアテープ10の幅が8mmの場合には幅12mm以上24mm未満、好ましくは幅13.3mm前後、キャリアテープ10の幅が12mmの場合には幅18mm以上36mm未満、好ましくは幅20mm前後、キャリアテープ10の幅が16mmの場合には幅24mm以上48mm未満、好ましくは幅26.7mm前後、キャリアテープ10の幅が24mmの場合には幅36mm以上72mm未満、好ましくは幅40mm前後、キャリアテープ10の幅が32mの場合には幅48mm以上96mm未満、好ましくは幅53.3mm前後が良い。
【0034】
樹脂フィルム21の静摩擦係数は、JIS K7125:1999の摩擦係数試験方法に準拠して測定された場合に0.2以上、好ましくは0.2以上0.5以下、より好ましくは0.21以上0.3以下が良い。これは、静摩擦係数が0.2未満の場合には、樹脂フィルム21の側部22と隣接するキャリアテープ10の側部との間に滑りが発生し、トラバース巻きされた長いキャリアテープ10が崩れやすくなるからである。樹脂フィルム21の静摩擦係数を測定する場合には、例えばAGS‐X〔株式会社島津製作所製:製品名〕等の測定機器を使用することができる。
【0035】
樹脂フィルム21の表面粗さ(Ra)は、JIS B0601:2013に準拠して測定された場合に0.2μm以上、好ましくは0.2μm以上2μm以下、より好ましくは0.2μm以上1.0μm以下、さらに好ましくは0.2μm以上0.7μm以下が良い。これは、表面粗さ(Ra)が0.2μm以上であれば、トラバース巻きされたキャリアテープ10の形態を崩れにくくすることができるからである。樹脂フィルム21の表面粗さ(Ra)を測定する場合には、各種の表面粗さ計、例えば株式会社キーエンス製、オリンパス株式会社製、株式会社佐藤商事製等を使用することができる。
【0036】
このような樹脂フィルム21は、キャリアテープ10の樹脂シート11に着脱自在に積層されると、少なくとも一方の側部22、好ましくは両側部22がキャリアテープ10の側部から食み出し、この食み出た側部22がトラバース巻きされて隣接する列のキャリアテープ10の側部に接触して被覆されることにより、キャリアテープ10の傾斜を抑制してその姿勢を安定させる。
【0037】
上記構成において、製造したキャリアテープ10を巻取リール1に多層のトラバース巻きに巻き取る場合には、先ず、キャリアテープ10の表面に層間テープ20である樹脂フィルム21を積層してその側部22をキャリアテープ10の側部から食み出させ、その後、巻取リール1の巻芯4の一側板2寄りから他側板3方向に1層目のキャリアテープ10を樹脂フィルム21と共にテープ幅程度分だけずらしながら張力を加えて巻き取り、キャリアテープ10の一側部と他側部とを重ねることなく突き合わせて普通巻きする(
図1参照)。
【0038】
この際、樹脂フィルム21の一側部22は、キャリアテープ10の一側部から巻取リール1の巻芯幅方向に食み出し、隣接する列のキャリアテープ10の他側部に接触して被覆されるが、この被覆がキャリアテープ10の重ね巻きOWと同等の干渉連結効果を発揮するので、キャリアテープ10の位置や姿勢が安定する。
【0039】
こうして巻取リール1の他側板3付近まで1層目のキャリアテープ10を普通巻きしたら、キャリアテープ10の移動方向を反転させ、2層目のキャリアテープ10を樹脂フィルム21と共に横方向にずらしながら張力を加えて巻き取り、キャリアテープ10の他側部と一側部とを重ねることなく突き合わせて普通巻きする(
図1参照)。
【0040】
この際、樹脂フィルム21の一側部22は、キャリアテープ10の一側部から巻取リール1の巻芯幅方向に食み出し、隣接する列のキャリアテープ10の他側部に接触して被覆されるが、この被覆がキャリアテープ10の重ね巻きOWと同等の干渉連結効果を発揮するので、キャリアテープ10の位置や姿勢の安定化が期待できる。
なお、樹脂フィルム21の両側部22がキャリアテープ10の側部から食み出している場合には、樹脂フィルム21の他側部22をキャリアテープ10の他側部から巻取リール1の巻芯幅方向に食み出させ、隣接する列のキャリアテープ10の一側部に接触させて被覆しても良い。
【0041】
以下、これらの普通巻きUWが繰り返されることにより、キャリアテープ10は、多層のトラバース巻きに巻き取られ、この巻き取られた形態で収納、保管、搬送、輸送等される。
【0042】
上記によれば、樹脂フィルム21の側部22がキャリアテープ10の側部から食み出し、隣接するキャリアテープ10の側部に重なってキャリアテープ10の重ね巻きOWと同等の作用効果を発揮するので、キャリアテープ10の姿勢の安定化が大いに期待できる。したがって、キャリアテープ10の巻き緩みの発生を防ぐことができる他、キャリアテープ10に大きな反りの発生するおそれを有効に払拭することができる。加えて、普通巻きUWに重ね巻きOWを組み合わせてこれらを交互に繰り返す手間を省くことができる。
【0043】
また、層間テープ20が用紙ではなく、樹脂フィルム21なので、塵埃の発生を防いでキャリアテープ10の汚染を防止することができる。さらに、樹脂フィルム21が厚さ20μm以上50μm以下の薄膜なので、例え隣接するキャリアテープ10の側部に重なっても、隣接するキャリアテープ10の傾斜を低減することができ、キャリアテープ10の巻き緩みの発生防止が期待できる。
【0044】
なお、上記実施形態におけるキャリアテープ10の樹脂シート11の片面あるいは全面には、電子部品の取り出しを容易にするシリコーンを必要に応じて塗布しても良い。また、キャリアテープ10の樹脂シート11に、帯電防止剤や導電剤を選択的に塗布しても良い。また、各ポケット13を平面円形、楕円形、多角形等の有底筒形に成形しても良い。
【実施例0045】
以下、本発明に係るキャリアテープの巻き取り方法の実施例を比較例と共に説明する。
〔実施例1〕
先ず、多層構造の樹脂シートを用意して軟化させ、この軟化した樹脂シートを成形して複数のポケットを形成するとともに、樹脂シートの一側部長手方向に複数のスプロケット孔を並べてパンチングし、樹脂シートを裁断して幅4mmのキャリアテープを製造した。樹脂シートは、1層目から3層目までが厚さの異なるポリスチレン樹脂の3層構造のシートであり、厚さを計測したところ0.3mmであった。
【0046】
こうしてキャリアテープを製造したら、キャリアテープの樹脂シート表面に層間テープである樹脂フィルムを積層してその両側部をキャリアテープの側部から食み出させた。樹脂フィルムは、市販されている厚さ50μmのポリエチレンテレフタレート樹脂フィルムとし、このポリエチレンテレフタレート樹脂フィルムの幅は6.0mmとした。また、樹脂フィルムの静摩擦係数をJIS K7125:1999の摩擦係数試験方法に準拠して測定したところ、0.21であった。
【0047】
次いで、巻取リールの巻芯幅方向にキャリアテープを樹脂フィルムと共にテープ幅程度分だけずらしながら張力を加えて巻き取り、キャリアテープの一側部と他側部とを重ねることなく多層の普通巻きにトラバース巻きした。このトラバース巻きしたキャリアテープを観察したところ、樹脂フィルムの側部は、キャリアテープの側部から食み出して隣接する列のキャリアテープの側部に重なっていた。
トラバース巻きしたら、キャリアテープの巻き緩みと大きな反りの有無を目視により検査した。検査の結果、キャリアテープに巻き緩みと大きな反りは確認されなかった。
【0048】
〔実施例2〕
基本的には実施例1と同様であるが、樹脂シートを裁断して幅8mmのキャリアテープを製造した。また、樹脂フィルムは、市販されている厚さ50μmのポリエチレンテレフタレート樹脂フィルムとしたが、このポリエチレンテレフタレート樹脂フィルムの幅は13.3mmに変更した。
実施例1と同様にトラバース巻きしたキャリアテープの巻き緩みと大きな反りの有無を目視により検査したが、検査の結果、キャリアテープに巻き緩みと大きな反りは何ら確認されなかった。
【0049】
〔実施例3〕
基本的には実施例1と同様であるが、樹脂シートを裁断して幅12mmのキャリアテープを製造した。また、樹脂フィルムは、市販されている厚さ50μmのポリエチレンテレフタレート樹脂フィルムとしたが、このポリエチレンテレフタレート樹脂フィルムの幅は35mmに変更した。
実施例1と同様にトラバース巻きしたキャリアテープの巻き緩みと大きな反りの有無を目視により検査したが、検査の結果、キャリアテープに巻き緩みと大きな反りは確認されなかった。
【0050】
〔実施例4〕
基本的には実施例1と同様であるが、幅16mmのキャリアテープを製造した。また、樹脂フィルムは、厚さ50μmのポリエチレンテレフタレート樹脂フィルムとしたが、このポリエチレンテレフタレート樹脂フィルムの幅は26.7mmに変更した。
実施例1と同様、トラバース巻きしたキャリアテープの巻き緩みと大きな反りの有無を目視により検査したが、検査の結果、キャリアテープに巻き緩みと大きな反りは何ら確認されなかった。
【0051】
〔実施例5〕
基本的には実施例1と同様であるが、幅24mmのキャリアテープを製造した。また、樹脂フィルムは、厚さ50μmのポリエチレンテレフタレート樹脂フィルムとしたが、このポリエチレンテレフタレート樹脂フィルムの幅は54mmに拡大した。
実施例1と同様、トラバース巻きしたキャリアテープの巻き緩みと大きな反りの有無を目視により検査したところ、キャリアテープに巻き緩みと大きな反りは確認されなかった。
【0052】
〔実施例6〕
基本的には実施例1と同様であるが、樹脂シートの両側部長手方向に複数のスプロケット孔を並べてパンチングし、樹脂シートを裁断して幅32mmのキャリアテープを製造した。また、樹脂フィルムは、厚さ50μmのポリエチレンテレフタレート樹脂フィルムとしたが、このポリエチレンテレフタレート樹脂フィルムの幅は95mmに拡大した。
実施例1と同様、トラバース巻きしたキャリアテープの巻き緩みと大きな反りの有無を目視により検査した。検査の結果、キャリアテープに僅かな巻き緩みと反りが確認されたが、実用上支障のない範囲であった。
【0053】
〔比較例1〕
先ず、多層構造の樹脂シートを用意して軟化させ、この軟化した樹脂シートを成形して複数のポケットを形成するとともに、樹脂シートの一側部長手方向に複数のスプロケット孔を並べてパンチングし、樹脂シートを裁断して幅12mmのキャリアテープを製造した。樹脂シートは、1層目から3層目までが厚さの異なるポリスチレン樹脂の3層構造のシートとし、厚さを計測したところ0.3mmであった。また、キャリアテープの樹脂シート表面には、層間テープである樹脂フィルムを積層しなかった。
【0054】
次いで、巻取リールの巻芯幅方向に製造したキャリアテープをテープ幅程度分だけずらしながら張力を加えて巻き取り、キャリアテープの一側部と他側部とを重ねることなく多層の普通巻きにトラバース巻きし、その後、トラバース巻きしたキャリアテープの巻き緩みと大きな反りの有無を目視により検査した。検査の結果、層間テープである樹脂フィルムを省略したので、キャリアテープに巻き緩みと大きな反りが確認され、実用性に疑義が生じた。
【0055】
〔比較例2〕
基本的には比較例1と同様であるが、普通巻きと重ね巻きを交互に繰り返してキャリアテープを多層のトラバース巻きに巻き取り、その後、トラバース巻きしたキャリアテープの巻き緩みと大きな反りの有無を目視により検査した。
検査の結果、キャリアテープの巻き緩みは確認されなかったものの、層間テープである樹脂フィルムを省略したので、キャリアテープに大きな反りが生じ、実用上の問題が生じた。