(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024136391
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】搬送装置及び印刷装置
(51)【国際特許分類】
B65H 20/02 20060101AFI20240927BHJP
B41J 11/00 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
B65H20/02 Z
B41J11/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023047498
(22)【出願日】2023-03-24
(71)【出願人】
【識別番号】000001443
【氏名又は名称】カシオ計算機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004185
【氏名又は名称】インフォート弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100121083
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 宏義
(74)【代理人】
【識別番号】100138391
【弁理士】
【氏名又は名称】天田 昌行
(74)【代理人】
【識別番号】100074099
【弁理士】
【氏名又は名称】大菅 義之
(74)【代理人】
【識別番号】100182936
【弁理士】
【氏名又は名称】矢野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100166408
【弁理士】
【氏名又は名称】三浦 邦陽
(72)【発明者】
【氏名】徳田 裕亮
【テーマコード(参考)】
2C058
3F103
【Fターム(参考)】
2C058AB15
2C058AC06
2C058AD06
2C058AE04
2C058AF31
2C058BA08
3F103BA12
(57)【要約】
【課題】厚みが互いに異なる複数の搬送対象・印刷対象のそれぞれを適切に搬送することができる搬送装置及び印刷装置を提供する。
【解決手段】搬送対象を搬送する搬送ローラと、前記搬送ローラに回転力を伝達するとともに、前記搬送ローラと一体に構成された最終回転伝達部材と、前記最終回転伝達部材より前段に位置する前段回転伝達部材と、を有する回転伝達部材列と、前記最終回転伝達部材と、前記前段回転伝達部材とを回転自在に支持するとともに、前記前段回転伝達部材に含まれる基準回転伝達部材の回動軸を中心として回動する回動支持アームと、を有することを特徴とする搬送装置。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送対象を搬送する搬送ローラと、
前記搬送ローラに回転力を伝達するとともに、前記搬送ローラと一体に構成された最終回転伝達部材と、前記最終回転伝達部材より前段に位置する前段回転伝達部材と、を有する回転伝達部材列と、
前記最終回転伝達部材と、前記前段回転伝達部材とを回転自在に支持するとともに、前記前段回転伝達部材に含まれる基準回転伝達部材の回動軸を中心として回動する回動支持アームと、
を有することを特徴とする搬送装置。
【請求項2】
前記基準回転伝達部材は、前記回動支持アームが支持する前記前段回転伝達部材のうち、前記回転伝達部材列上において前記最終回転伝達部材から最も離れた回転伝達部材である、
ことを特徴とする請求項1に記載の搬送装置。
【請求項3】
前記回動支持アームは、前記回動支持アームが支持する前記最終回転伝達部材および前記回動支持アームが支持する前記前段回転伝達部材について、互いに隣接する回転伝達部材同士の軸間距離を保持する、
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の搬送装置。
【請求項4】
前記回転伝達部材列を介して前記搬送ローラに回転力が伝達されると、前記搬送ローラを前記搬送対象に押し付ける方向に前記回動支持アームを回動させるような力が前記回動支持アームに作用する、
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の搬送装置。
【請求項5】
前記前段回転伝達部材に回転力を付与する駆動手段をさらに有する、
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の搬送装置。
【請求項6】
前記回動支持アームが支持する前記前段回転伝達部材は、前記回転伝達部材列上において前記最終回転伝達部材から最も離れた回転伝達部材である前記基準回転伝達部材と、前記回転伝達部材列上において前記最終回転伝達部材と前記基準回転伝達部材の間に位置する2n(nはゼロ又は正の整数)個の仲介回転伝達部材とを有する、
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の搬送装置。
【請求項7】
請求項1又は請求項2に記載の搬送装置と、
前記搬送対象としての印刷対象への印刷を行う印刷部と、
を有し、
前記搬送ローラは、前記印刷部との間に前記印刷対象を挟んで回転することによって、前記印刷対象を搬送する、
ことを特徴とする印刷装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、搬送装置及び印刷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、単票にもロール紙にも印字等をすることができるプリンタが記載されている。このプリンタは、記録ヘッドと、記録紙が供給される給紙口と、記録紙をガイドする記録紙ガイドまたはロール紙を支持するホルダが着脱可能に取り付けられる取り付け部と、プラテンローラと、記録紙が排紙される排紙口と、を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載のプリンタは、厚みが互いに異なる複数の搬送対象・印刷対象のそれぞれを適切に搬送するという観点において、改良の余地がある。
【0005】
そこで本発明は、厚みが互いに異なる複数の搬送対象・印刷対象のそれぞれを適切に搬送することができる搬送装置及び印刷装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様の搬送装置は、搬送対象を搬送する搬送ローラと、前記搬送ローラに回転力を伝達するとともに、前記搬送ローラと一体に構成された最終回転伝達部材と、前記最終回転伝達部材より前段に位置する前段回転伝達部材と、を有する回転伝達部材列と、前記最終回転伝達部材と、前記前段回転伝達部材とを回転自在に支持するとともに、前記前段回転伝達部材に含まれる基準回転伝達部材の回動軸を中心として回動する回動支持アームと、を有することを特徴とする。
【0007】
本発明の一態様の印刷装置は、上述した搬送装置と、前記搬送対象としての印刷対象への印刷を行う印刷部と、を有し、前記搬送ローラは、前記印刷部との間に前記印刷対象を挟んで回転することによって、前記印刷対象を搬送する、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
以上の各態様によれば、厚みが互いに異なる複数の搬送対象・印刷対象のそれぞれを適切に搬送することができる搬送装置及び印刷装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】ラベルプリンタの全体構成の一例を示す図である。
【
図2】ラベルプリンタに含まれる搬送・印刷ユニットの構成の一例を示す図である。
【
図3】搬送駆動モータ及び減速ギヤ列の構成の一例を示す図である。
【
図4】回動支持アームによるギヤ支持構造の第1の例を示す図である。
【
図5】回動支持アームによるギヤ支持構造の第2の例を示す図である。
【
図6】ラベルプリンタのハードウェア構造を概念的に示したブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本明細書において、「回転伝達部材」は「ギヤ」と読み替えてもよい。また、「最終回転伝達部材」は「最終ギヤ」と読み替えてもよく、「前段回転伝達部材」は「前段ギヤ」と読み替えてもよく、「回転伝達部材列」は「ギヤ列」と読み替えてもよく、「基準回転伝達部材」は「基準ギヤ」と読み替えてもよく、「仲介回転伝達部材」は「仲介ギヤ」と読み替えてもよい。また、本明細書において、「回転伝達部材」は、「ギヤ」のみならず(に加えて/代えて)、プーリ等の摩擦による摩擦伝達(回転伝達)を行う部材であってもよい。その意味で、「回転伝達部材」は、「ギヤ」を含む上位概念の用語として定義される。
【0011】
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0012】
図1は、搬送装置及び印刷装置としてのラベルプリンタ1の全体構成の一例を示す図である。
【0013】
図2A~
図2Dは、ラベルプリンタ1に含まれる搬送・印刷ユニット1Xの構成の一例を示す図である。
図2Aはある角度から見た斜視図、
図2Bは別の角度から見た斜視図、
図2Cは平面図、
図2Dは
図2CのD-D線に沿う断面図である。
【0014】
ラベルプリンタ1は、帯状の搬送対象・印刷対象であるテープ2を搬送・印刷してラベルを作成するためのものである。
【0015】
テープ2はテープカートリッジ3に収容されている。ラベルプリンタ1の筐体内のカートリッジ装着部4にテープカートリッジ3を装着し、テープカートリッジ3から引き出されたテープ2に対して印刷を行う。ラベルプリンタ1での印刷は、サーマルヘッド(印刷部)10を用いた熱転写式で行われる。
【0016】
具体的には、印刷に際して、サーマルヘッド10とプラテンローラ(搬送ローラ)20の間にテープ2とインクリボン5を重ねて挟む。インクリボン5は、テープ2と共にテープカートリッジ3に収容されている。サーマルヘッド10とプラテンローラ20の間において、インクリボン5がサーマルヘッド10側に位置し、テープ2がプラテンローラ20側に位置する。インクリボン5は基材とインク層が積層した構成であり、基材がサーマルヘッド10の発熱素子に接し、インク層がテープ2に接している。サーマルヘッド10の発熱素子を加熱すると、基材を通してインク層に伝熱され、インク層のインクが溶融してテープ2に付着する。また、サーマルヘッド10とプラテンローラ20の間にテープ2とインクリボン5を挟んだ状態でプラテンローラ20を回転させると、プラテンローラ20との間に働く摩擦力によって、テープ2とインクリボン5が長手方向に搬送される。
【0017】
サーマルヘッド10の発熱部は、例えば、テープ2及びインクリボン5の幅方向へ複数の発熱素子を並べたライン状である。テープ2及びインクリボン5の幅方向は、プラテンローラ20の回転によって搬送されるテープ2及びインクリボン5の進行方向に対して垂直な方向である。サーマルヘッド10上の複数の発熱素子を選択的に加熱して1ライン分の印刷を行ったら、プラテンローラ20を回転駆動してテープ2及びインクリボン5を重ねて搬送し、次の1ライン分の印刷を行う。このようにして、1ライン毎の印刷及び搬送を順次行って、印刷データに含まれる全内容を印刷する。
【0018】
ラベルプリンタ1において、印刷時の(1ライン毎の印刷を行う際の)進行方向にテープ2及びインクリボン5を搬送する動作を順送とし、印刷時の進行方向とは反対方向にテープ2及びインクリボン5を搬送する動作を逆送とする。換言すれば、搬送方向の下流側への移動が順送であり、搬送方向の上流側への移動が逆送である。サーマルヘッド10とプラテンローラ20の間ではテープ2とインクリボン5が重なって進行するので、当該箇所ではテープ2とインクリボン5は互いに同じ方向に順送及び逆送される。
【0019】
ラベルプリンタ1に設けたカバー(図示略)を開けることで、カートリッジ装着部4が露出する。カートリッジ装着部4内には、前述のサーマルヘッド10とプラテンローラ20に加えて、インクリボン巻き取りシャフト6が設けられている。なお、ラベルプリンタ1のカバーを開けた段階で露出するのは、サーマルヘッド10、プラテンローラ20、インクリボン巻き取りシャフト6などの一部のみである。その他の大部分の部品(モータやギヤ類など)は、カートリッジ装着部4の底壁などによって覆われている。
【0020】
図3に示すように、プラテンローラ20を回転させる駆動源として搬送駆動モータ(駆動手段)7が備えられる。搬送駆動モータ7の出力軸(モータギヤ)7Xの回転が減速ギヤ列(ギヤ列)40を介して伝達される。
図3に示す通り、減速ギヤ列40は、搬送駆動モータ7からプラテンローラ20に回転力を伝達するものであるが、減速ギヤ列40が途中で分岐して、搬送駆動モータ7からインクリボン巻き取りシャフト6に回転力を伝達するようになっていてもよい(その場合における分岐部分は
図3には描いていない)。搬送駆動モータ7の出力軸7Xと、減速ギヤ列40を構成する各ギヤの軸はいずれも、
図1、
図2D及び
図3等の紙面に対して垂直に延びている。
【0021】
「回転伝達部材列」としての減速ギヤ列(ギヤ列)40は、「回転伝達部材」として、ギヤ41と、ギヤ42と、ギヤ43と、ギヤ44と、ギヤ45と、ギヤ46と、ギヤ47とを有している。ギヤ41~ギヤ46が、「前段ギヤ、前段回転伝達部材」に相当し、ギヤ47が、「最終ギヤ、最終回転伝達部材」に相当する。また、詳しくは後述するが、ギヤ44又はギヤ45は、「前段ギヤ、前段回転伝達部材」に含まれる「基準ギヤ、基準回転伝達部材」、後述する回動支持アーム60が支持する「前段ギヤ、前段回転伝達部材」のうち、「ギヤ列、回転伝達部材列」上において「最終ギヤ、最終回転伝達部材」から最も離れたギヤである「基準ギヤ、基準回転伝達部材」に相当する。さらに、ギヤ45及びギヤ46は、「ギヤ列、回転伝達部材列」上において「最終ギヤ、最終回転伝達部材」と「基準ギヤ、基準回転伝達部材」の間に位置する「仲介ギヤ、仲介回転伝達部材」に相当する。
【0022】
プラテンローラ20は減速ギヤ列(ギヤ列)40の最終ギヤ47と一体であり、最終ギヤ47に回転力が伝達されると、プラテンローラ20が自身の回転軸を中心として回転する。搬送駆動モータ7の出力軸7Xの回転方向を切り替えることで、プラテンローラ20の動作が変更される。
【0023】
テープ2を順送させる際のプラテンローラ20の回転方向を、順送方向の回転とする。テープ2を逆送させる際のプラテンローラ20の回転方向を、逆送方向の回転とする。プラテンローラ20の順送方向の回転は、
図1、
図3における反時計方向の回転である。
【0024】
搬送駆動モータ7の出力軸7Xに関して、プラテンローラ20を順送方向に回転させる駆動の方向を正転、プラテンローラ20を逆送方向に回転させる駆動の方向を逆転とする。搬送駆動モータ7の出力軸7Xの正転は、
図1、
図3における時計方向の回転である。
【0025】
搬送駆動モータ7の出力軸7Xを正転させると、プラテンローラ20に回転力が伝達され、プラテンローラ20が順送方向の回転を行う。搬送駆動モータ7の出力軸7Xを逆転させると、プラテンローラ20が逆送方向の回転を行う。
【0026】
テープカートリッジ3の構造を説明する。テープカートリッジ3内に円筒状のテープコアが設けられ、印刷前のテープ2がテープコアに対してロール状に巻かれている。テープカートリッジ3をカートリッジ装着部4に装着すると、カートリッジ装着部4内に設けたコア支持突起(図示略)に対してテープコアが回転可能に支持される。
【0027】
テープカートリッジ3内にはさらに、それぞれが円筒状のインクリボン供給コアとインクリボン巻き取りコアが設けられている。印刷前のインクリボン5がインクリボン供給コアにロール状に巻かれており、インクリボン供給コアから引き出されたインクリボン5は、インクリボン巻き取りコアに接続する。
【0028】
テープカートリッジ3をカートリッジ装着部4に装着すると、カートリッジ装着部4内に設けたコア支持突起(図示略)に対してインクリボン供給コアが回転可能に支持される。また、インクリボン巻き取りコアの内部にインクリボン巻き取りシャフト6が挿入されて係合する。インクリボン巻き取りシャフト6が回転(順送方向の回転)すると、インクリボン巻き取りシャフト6の回転力が伝達されてインクリボン巻き取りコアが回転(順送方向の回転)する。
【0029】
テープカートリッジ3は、ヘッド挿入部を有している。ヘッド挿入部は、テープカートリッジ3をカートリッジ装着部4に装着したときにサーマルヘッド10が挿入される凹部である。テープコアとインクリボン供給コアから引き出されたテープ2とインクリボン5は、互いに重なってヘッド挿入部を通る。ヘッド挿入部を通ったテープ2は、ラベルプリンタ1に設けた搬送経路を通ってラベルプリンタ1の外部へ排出される。ヘッド挿入部を通ったインクリボン5はテープカートリッジ3内に戻ってインクリボン巻き取りコアに至る。
【0030】
このように、ラベルプリンタ1は、搬送対象・印刷対象であるテープ2(インクリボン5を含む)を搬送するプラテンローラ(搬送ローラ)20を有している。プラテンローラ(搬送ローラ)20は、搬送対象・印刷対象であるテープ2への印刷を行うサーマルヘッド(印刷部)10との間にテープ2を挟んで回転することによってテープ2を搬送する。
【0031】
また、ラベルプリンタ1は、プラテンローラ(搬送ローラ)20に回転力を伝達する減速ギヤ列(ギヤ列)40を有している。減速ギヤ列40は、プラテンローラ(搬送ローラ)20と一体に構成された最終ギヤ47と、最終ギヤ47より前段に位置する前段ギヤ(ギヤ41~46)とを有している。
【0032】
ところで、プラテンローラ20は、搬送駆動モータ7の駆動力による回転動作に加えて(伴って)、サーマルヘッド10に対する距離及び接触圧を変化させる接離移動が可能である。そのような接離移動を可能とする機構として各種が知られているが、例えば、減速ギヤ列(ギヤ列)40に含まれるギヤ41~46の途中に設けられた太陽ギヤの回転軸に支持された揺動アーム、及び、当該揺動アームの位置を変更させるためのカム部材を利用したものを採用することができる。この場合、カム部材の回転位置を変化させることにより、揺動アームの揺動を介してプラテンローラ20に接離動作を行わせ、サーマルヘッド10に対するプラテンローラ20の接触及び離間の切り替えと、接触時の接触圧の変更(例えば、軽圧付与、標準圧付与)とを行わせることができる。
【0033】
ここで、従来のラベルプリンタ(印刷装置)において、プラテンローラがサーマルヘッドに対する位置を変動させる(接離移動する)ことによって、厚みが異なるテープに対応することができる。しかし、プラテンローラがサーマルヘッドに対する位置を変動させる(接離移動する)ためのギヤの追従が不安定であって、ギヤの歯飛びを誘発するおそれがあった。その意味で、従来のラベルプリンタ(印刷装置)は、厚みが異なる搬送対象・印刷対象を適切に搬送することができるものとは言えなかった。また、上述した特許文献1のプリンタは、記録紙又はロール紙の搬送面に対するプラテンローラの支持高さが一定であるため、ギヤの追従が不安定である以前の問題として、記録紙又はロール紙の厚みに応じた適切な搬送を実行することが困難であった。
【0034】
さらに、従来のラベルプリンタ(印刷装置)において、「回転伝達部材」として、「ギヤ」ではなく、プーリ等の摩擦による摩擦伝達(回転伝達)を行うものを採用する場合、プラテンローラがサーマルヘッドに対する位置を変動させる(接離移動する)際における回転伝達部材の空転が発生するおそれがあり、やはり、厚みが異なる搬送対象・印刷対象を適切に搬送することができるものとは言えなかった。
【0035】
本発明者は、上記の問題点を重要な技術課題として捉えて、厚みが互いに異なる複数の搬送対象・印刷対象のそれぞれを適切に搬送するために、プラテンローラ20に直結された(と一体となった)最終ギヤ47を含んだ、減速ギヤ列(ギヤ列)40の少なくとも一部を回動自在に支持する回動支持アーム60を着想するに至った。
【0036】
図4A、
図4Bは、回動支持アーム60によるギヤ支持構造の第1の例を示す図である。回動支持アーム60は、減速ギヤ列(ギヤ列)40の最終ギヤ47と、最終ギヤ47より前段に位置する前段ギヤのうちのギヤ44~46とを支持するとともに、前段ギヤに含まれる「基準ギヤ」としてのギヤ44の回動軸を中心として回動する。基準ギヤ44は、回動支持アーム60が支持する前段ギヤのうち、減速ギヤ列(ギヤ列)40上において最終ギヤ47から最も離れたギヤとして定義される。これにより、回動支持アーム60の回動動作を円滑にすることができる。回動支持アーム60は、回動支持アーム60が支持する最終ギヤ47および回動支持アーム60が支持する前段ギヤについて、互いに隣接するギヤ同士の軸間距離を保持する。回動支持アーム60は、自身が支持する減速ギヤ列(ギヤ列)40の最終ギヤ47と、最終ギヤ47より前段に位置する前段ギヤのギヤ44~46とのうち、隣接するギヤ同士の軸間距離を保持する。
【0037】
図4A、
図4Bは、順送方向への動作を描いている。ギヤ43が反時計回りに回転し、回動支持アーム60に支持されたギヤ44が時計回りに回転し、ギヤ45が反時計回りに回転し、ギヤ46が時計回りに回転し、ギヤ47が反時計回りに回転する。ギヤ44~47は、隣接するギヤ同士の軸間距離を保持した状態で回動支持アーム60に支持される。
【0038】
このため、回動支持アーム60に支持されないギヤ43からの駆動入力があると、ギヤ44~47の回転駆動とは別に、ギヤ44~47を支持した回動支持アーム60全体が、基準ギヤ44の回動軸を中心として時計回りに回動する。すなわち、減速ギヤ列(ギヤ列)40を介してプラテンローラ20に回転力が伝達されると、プラテンローラ20を搬送対象・印刷対象であるテープ2(インクリボン5)に押し付ける方向に回動支持アーム60を回動させるような力が回動支持アーム60に作用する。その結果、ギヤ44~47の軸間距離が保持されて、ギヤ44~47を安定的に追従させることで、ギヤ44~47の歯飛びを防止することができる。
【0039】
このように、厚みが異なるテープ2の搬送に伴うプラテンローラ20の位置移動(サーマルヘッド10への接離移動)に対してギヤが安定的に追従することで、ギヤの歯飛びを防止することができる。また、プラテンローラ20のギヤ(最終ギヤ47)と、プラテンローラ20の位置移動(サーマルヘッド10への接離移動)に追従させるためのギヤ(ギヤ44~46)とを同じ部材(部品)としての回動支持アーム60に配置することにより、各ギヤの軸間距離が常に保持されることになり、より一層、ギヤの歯飛びを防止することができる。
【0040】
図4Bにおいて、符号F及び符号F’は、回動支持アーム60の基準ギヤ44の回動軸を中心とした回動力によって生じる押付力を示している。その他、図示は省略しているが、プラテンローラ20のギヤ(最終ギヤ47)の回転力によって生じる搬送対象・印刷対象としてのテープ2(インクリボン5)からの反力による押付力も発生する。つまり、回動支持アーム60は、最終ギヤ47と一体に構成されたプラテンローラ20をテープ2(インクリボン5)、さらにはサーマルヘッド10に押し付ける方向に回動し、これにより、ギヤ44~47の歯飛びを防止しつつプラテンローラ20を搬送対象・印刷対象としてのテープ2(インクリボン5)に押し付ける方向に力を発生させることが可能になる。
【0041】
なお、
図4A、
図4Bには描いていない逆送方向への動作時には、回動支持アーム60が基準ギヤ44の回動軸を中心とした反時計回りへの回動力を与えることになる。しかし、
図1、
図2A、
図2Bに示すように、プラテンローラ20は、当該プラテンローラ20の回転軸を回転自在に支持する支持部材8に支持されており、且つ、この支持部材8は、ばね9に連動及び支持されるとともに、ばね9によって回動支持アーム60を搬送対象・印刷対象としてのテープ2(インクリボン5)に押し付ける力が発生するので、押圧力の低下による印字の不具合は生じない。
【0042】
図5A、
図5Bは、回動支持アーム60Xによるギヤ支持構造の第2の例を示す図である。回動支持アーム60Xは、減速ギヤ列(ギヤ列)40の最終ギヤ47と、最終ギヤ47より前段に位置する前段ギヤのうちのギヤ45、46とを支持するとともに、前段ギヤに含まれる「基準ギヤ」としてのギヤ45の回動軸を中心として回動する。基準ギヤ45は、回動支持アーム60が支持する前段ギヤのうち、減速ギヤ列(ギヤ列)40上において最終ギヤ47から最も離れたギヤとして定義される。これにより、回動支持アーム60Xの回動動作を円滑にすることができる。回動支持アーム60は、回動支持アーム60が支持する最終ギヤ47および回動支持アーム60が支持する前段ギヤについて、互いに隣接するギヤ同士の軸間距離を保持する。回動支持アーム60は、自身が支持する減速ギヤ列(ギヤ列)40の最終ギヤ47と、最終ギヤ47より前段に位置する前段ギヤのギヤ45、46とのうち、隣接するギヤ同士の軸間距離を保持する。
【0043】
図5Bにおいて、符号F及び符号F”は、回動支持アーム60の基準ギヤ44の回動軸を中心とした回動力によって生じる力を示している。その他、図示は省略しているが、プラテンローラ20のギヤ(最終ギヤ47)の回転力によって生じる搬送対象・印刷対象としてのテープ2(インクリボン5)からの反力による押付力も発生する。符号F及び符号F”で示す力は、回動支持アーム60を、最終ギヤ47と一体に構成されたプラテンローラ20をテープ2(インクリボン5)、さらにはサーマルヘッド10から引き離す方向に働く。しかし、
図1、
図2A、
図2Bに示すように、プラテンローラ20は、当該プラテンローラ20の回転軸を回転自在に支持する支持部材8に支持されており、且つ、この支持部材8は、ばね9に連動及び支持されるとともに、ばね9によって回動支持アーム60を搬送対象・印刷対象としてのテープ2(インクリボン5)に押し付ける力が発生するので、押圧力の低下による印字の不具合は生じない。従って、符号F及び符号F”で示す力にかかわらず、ギヤ44~47の歯飛びを防止しつつプラテンローラ20を搬送対象・印刷対象としてのテープ2(インクリボン5)に押し付ける方向に力を発生させることが可能になる。
【0044】
図4A、
図4B(第1の例)と
図5A、
図5B(第2の例)を比較すると、回動支持アーム60の回動による押付力F、F’が、プラテンローラ20をテープ2(インクリボン5)、さらにはサーマルヘッド10に押し付ける方向に働くという点で、
図4A、
図4B(第1の例)の方が優れている。この要件を満足するために、回動支持アーム60が支持する「前段ギヤ」は、減速ギヤ列(ギヤ列)上において最終ギヤから最も離れたギヤである基準ギヤと、減速ギヤ列(ギヤ列)上において最終ギヤと基準ギヤの間に位置する2n(nはゼロ又は正の整数)個の仲介ギヤとを有することが好ましい。
図4A、
図4B(第1の例)では、n=1、つまり、仲介ギヤとしてギヤ45、46を設けた場合を描いているが、n=0、つまり仲介ギヤが存在しなくてもよいし、n≧2、つまり仲介ギヤが4個以上の偶数個であってもよい。
【0045】
比較例として、プラテンローラと一体に構成された最終ギヤが他のギヤとは別々に支持されており、他のギヤとは別個に、プラテンローラと最終ギヤがサーマルヘッドに対して接離移動する場合を想定する。テープの厚みが大きい場合は、プラテンローラと最終ギヤがサーマルヘッドとの距離を長くとって直前のギヤとの軸間距離が短くなり、テープの厚みが小さい場合は、プラテンローラと最終ギヤがサーマルヘッドとの距離を短くとって直前のギヤとの軸間距離が長くなる。また、最終ギヤの直前のギヤに注目したとき、それより1つ前のギヤとの軸間距離もプラテンローラと最終ギヤの接離移動に合わせて変動する。
【0046】
また、比較例として、最終ギヤの直前のギヤ、及び、それより1つ前のギヤを支持部材に支持し、当該支持部材を最終ギヤの直前のギヤより1つ前のギヤを中心として回動可能とするとともに、当該支持部材を搬送対象・印刷対象ひいてはサーマルヘッドに押し付けるような荷重を付与する場合を想定する。この場合、ギヤ列に駆動力が入力されたとき、支持部材が、最終ギヤとその直前のギヤの噛み合いを解除する方向(例えば反時計回り)への力を受けるため、当該力が、支持部材を搬送対象・印刷対象ひいてはサーマルヘッドに押し付けるような荷重を上回って、最終ギヤとその直前のギヤの間で歯飛びが発生するおそれがある。
【0047】
図6は、ラベルプリンタ1のハードウェア構造を概念的に示したブロック図である。このハードウェア構造には、先に説明したサーマルヘッド10、プラテンローラ20、インクリボン巻き取りシャフト6、搬送駆動モータ7、減速ギヤ列(ギヤ列)40が含まれている。
【0048】
ラベルプリンタ1はさらに、制御装置70、テープ検知センサ71、切断装置72、切断装置駆動部73、ヘッド駆動部74、温度センサ75を備えている。また、搬送駆動モータ7と減速ギヤ列(ギヤ列)40は搬送駆動手段76を構成している。
【0049】
制御装置70は、ラベルプリンタ1を包括的に制御するものである。制御装置70は少なくとも、CPU(Central Processing Unit)などのプロセッサと、記憶部とを含んでいる。制御装置70において、記憶部に記憶されているプログラムを読み出して、プロセッサでの演算によって実行させることで、ラベルプリンタ1における各部の動作が行われる。ラベルプリンタ1に入力された印刷データは制御装置70によって処理され、テープ2(インクリボン5)の印刷や搬送などの動作が制御される。
【0050】
ラベルプリンタ1への印刷データの入力形態は限定されない。ラベルプリンタ1が備える入力部(キーボードやタッチパネルなど)へのユーザの操作で印刷データの入力を行ってもよいし、ラベルプリンタ1とは別の電子装置(パーソナルコンピュータやスマートフォンなど)で生成した印刷データをラベルプリンタ1に送信してもよい。いずれのデータ入力形態においても、印刷ジョブの実行指示信号を制御装置70が受けると、制御装置70がラベルプリンタ1の各部を制御して、印刷データに含まれる内容の印刷を行わせる。
【0051】
テープ検知センサ71は、カートリッジ装着部4の内部から外部へ向かうテープ2の搬送経路上に位置しており、当該位置におけるテープ2の有無(通過)を検出するセンサである。テープ検知センサ71は、テープ2の搬送経路を挟んで対向する発光素子と受光素子を備え、発光素子から出射された光が受光素子で受光されるか否かを検知する。発光素子からの光が受光素子によって受光される場合には、制御装置70は、発光素子と受光素子の間にテープ2が存在していないと判定する。発光素子からの光が受光素子によって受光されない場合には、制御装置70は、発光素子と受光素子の間にテープ2が存在している(テープ検知センサ71の位置をテープ2が通過している)と判定する。そして、受光素子で受光が検知される状態と受光が検知されない状態との切り替わりの瞬間に、テープ2の先端がテープ検知センサ71の位置に達したと判定される。
【0052】
切断装置72は、テープ2の搬送経路上に設けられて、印刷後のテープ2を切断するものであり、テープ2の厚み方向の全体を切断するフルカッターと、テープ2の剥離紙を残して基材のみを切断するハーフカッターとを備えている。切断装置駆動部73は、切断装置72の各カッターを駆動する切断用モータを備えており、制御装置70によって制御される。
【0053】
ヘッド駆動部74は、サーマルヘッド10を駆動して発熱素子を加温させる機能を有する。制御装置70は、入力された印刷データに基づいてヘッド駆動部74を制御し、印刷のライン毎に加温させる発熱素子を選択する。また、制御装置70は、ヘッド駆動部74を介してサーマルヘッド10へのエネルギー印加を制御して、発熱素子の発熱強度(単位時間当たりの上昇温度)を変更する。
【0054】
温度センサ75は、サーマルヘッド10の周辺温度を測定する温度測定手段を構成している。周辺の温度は、サーマルヘッド10の加温時の温度上昇の速さなどに影響を及ぼすので、印刷制御において、温度センサ75によって検出した温度を参照することで、制御の精度を高めることができる。
【0055】
制御装置70は、搬送駆動手段76を構成する搬送駆動モータ7を駆動させて、出力軸7Xを正転又は逆転させる。前述のように、出力軸7Xが正転すると、プラテンローラ20が順送方向の回転を行う。出力軸7Xが逆転すると、プラテンローラ20が逆送方向の回転を行う。
【0056】
以上の実施形態は、発明の理解を容易にするために具体例を示したものであり、本発明はこれら実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲において、さまざまな変形、変更が可能である。
【0057】
本実施形態のラベルプリンタ1は、インクリボン5のインクを被印刷媒体であるテープ2に付着させて印刷する熱転写式である。熱転写式には印刷開始時の加温不足によるインクの溶融不良が生じやすいという課題があるため、本発明の有用性が高い。しかし、本発明の適用対象となる印刷装置はこれに限定されない。例えば、発色剤を含む被印刷媒体に対して熱を加えて顕色化させる感熱式の印刷装置においても、本発明を適用することも可能である。
【0058】
感熱式の印刷装置の場合は、
図1に示すラベルプリンタ1の内部構造及びテープカートリッジ3から、インクリボン5の支持及び搬送に関係する構成要素を省略したものとして構成が可能である。また、サーマルヘッド10の予熱範囲の設定については、インクリボン5を省略した上で、少なくともテープ2の幅よりも広い範囲を予熱範囲に設定することが好ましい。
【0059】
本実施形態の印刷装置は、サーマルヘッド10の位置を固定にし、プラテンローラ20を移動させている。サーマルヘッド10には、配線を接続する必要性や、テープカートリッジ3のヘッド挿入部内に収める必要性がある。このような制約が多いサーマルヘッド10ではなく、周辺構造の制約が少ないプラテンローラ20側に圧力変更手段を備えることが好適である。しかし、本発明は、プラテンローラの位置が固定されていてサーマルヘッド側が移動して互いに接離する構成を排除するものではない。
【0060】
以上の実施形態では、回動支持アーム60が、減速ギヤ列(ギヤ列)40の最終ギヤ47と、最終ギヤ47より前段に位置する前段ギヤのうちのギヤ44~46とを回転自在に支持するとともに、前段ギヤに含まれる「基準ギヤ」としてのギヤ44の回動軸を中心として回動する。あるいは、回動支持アーム60が、減速ギヤ列(ギヤ列)40の最終ギヤ47と、最終ギヤ47より前段に位置する前段ギヤのうちのギヤ45、46とを回転自在に支持するとともに、前段ギヤに含まれる「基準ギヤ」としてのギヤ45の回動軸を中心として回動する。但し、これらはあくまで一例であり、回動支持アーム60は、減速ギヤ列(ギヤ列)40の最終ギヤ47と、「前段ギヤの少なくとも1つ」とを回転自在に支持するとともに、「前段ギヤに含まれる基準ギヤ」の回動軸を中心として回動すればよい。また、「基準ギヤ」は、回動支持アーム60が支持する前段ギヤのうち、減速ギヤ列(ギヤ列)40上において最終ギヤ47から最も離れたギヤに限定されず、前段ギヤに含まれるいずれかのギヤであればよい。
【0061】
以上の実施形態では、減速ギヤ列(ギヤ列)40の前段ギヤ(ギヤ41~46)、ひいては最終ギヤ47に回転力を付与する「駆動手段」として、搬送駆動モータ7を例示して説明した。しかし「駆動手段」は搬送駆動モータ7に限定されず、その他の回転駆動機構を採用してもよい。
【符号の説明】
【0062】
1 ラベルプリンタ(搬送装置、印刷装置)
1X 搬送・印刷ユニット
2 テープ(搬送対象、印刷対象)
3 テープカートリッジ
4 カートリッジ装着部
5 インクリボン
6 インクリボン巻き取りシャフト
7 搬送駆動モータ(駆動手段)
7X 出力軸(モータギヤ)
8 支持部材
9 ばね
10 サーマルヘッド(印刷部)
20 プラテンローラ(搬送ローラ)
40 減速ギヤ列(ギヤ列、回転伝達部材列)
41 ギヤ(前段ギヤ、前段回転伝達部材)
42 ギヤ(前段ギヤ、前段回転伝達部材)
43 ギヤ(前段ギヤ、前段回転伝達部材)
44 ギヤ(前段ギヤ、基準ギヤ、前段回転伝達部材、基準回転伝達部材)
45 ギヤ(前段ギヤ、基準ギヤ、仲介ギヤ、前段回転伝達部材、基準回転伝達部材、仲介回転伝達部材)
46 ギヤ(前段ギヤ、仲介ギヤ、前段回転伝達部材、仲介回転伝達部材)
47 ギヤ(最終ギヤ、最終回転伝達部材)
60 60X 回動支持アーム
70 制御装置
71 テープ検知センサ
72 切断装置
73 切断装置駆動部
74 ヘッド駆動部
75 温度センサ
76 搬送駆動手段