(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024136395
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】時計
(51)【国際特許分類】
G04B 43/00 20060101AFI20240927BHJP
【FI】
G04B43/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023047505
(22)【出願日】2023-03-24
(71)【出願人】
【識別番号】000001443
【氏名又は名称】カシオ計算機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001254
【氏名又は名称】弁理士法人光陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小林 義弘
(72)【発明者】
【氏名】森 翔馬
(72)【発明者】
【氏名】網倉 遼
(57)【要約】
【課題】時計内部の部品の破損を防止する。
【解決手段】時計100が、ケース本体1内に配置されるモジュール2と、少なくとも一つの針を支持し、モジュール2から上方へと突出する針支持部25と、モジュール2よりも上方(視認側、時計100において視認される側)に配置されるブリッジ部材5と、を備え、ブリッジ部材5は、上方(視認方向)からの平面視におけるケース本体1の略中心に位置し、かつ上下方向に沿って針支持部25を挿通させる被挿通部511を有する中心部51と、中心部51から分岐し、自由端側がケース本体1に係止される複数の分岐部52と、を含んでいる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケース内に配置されるモジュール本体と、
少なくとも一つの針を支持し、前記モジュール本体から上方へと突出する針支持部と、
前記モジュール本体よりも上方に配置されるブリッジ部材と、を備え、
前記ブリッジ部材は、
上方からの平面視における前記ケースの略中心に位置し、かつ上下方向に沿って前記針支持部を挿通させる被挿通部を有する中心部と、
前記中心部から分岐し、自由端側が前記ケースに係止される複数の分岐部と、を含む、
ことを特徴とする時計。
【請求項2】
前記分岐部は、前記中心部周りに略等間隔に設けられ、
各分岐部は、前記上方からの平面視において前記中心部を起点として前記ケースの半径方向に延びる、
ことを特徴とする請求項1に記載の時計。
【請求項3】
前記分岐部は、前記中心部から前記自由端までの間の少なくとも一部に、前記中心部から離れるにつれて前記中心部からの高さが高くなる勾配部を有する、
ことを特徴とする請求項1に記載の時計。
【請求項4】
前記分岐部は、前記中心部から前記自由端までの間の少なくとも一部が第1の腕部と第2の腕部とに分岐しており、前記第1の腕部と前記第2の腕部との間は開口している、
ことを特徴とする請求項1に記載の時計。
【請求項5】
前記第1の腕部と前記第2の腕部との間には、少なくとも一つのリブが形成されている、
ことを特徴とする請求項4に記載の時計。
【請求項6】
前記モジュール本体には、前記ケースの外周側から内部に挿通される軸部材を備える操作部が設けられ、
前記分岐部の少なくとも一つは、前記上方からの平面視において前記軸部材の少なくとも一部と重なる、
ことを特徴とする請求項1に記載の時計。
【請求項7】
前記モジュール本体には、前記ケースの外周側から内部に挿通される軸部材を備える操作部が設けられ、
前記分岐部の少なくとも一つは、前記上方からの平面視において前記軸部材の挿通方向と略平行に配置される、
ことを特徴とする請求項1に記載の時計。
【請求項8】
前記モジュール本体には、前記ケースの外周側から内部に挿通されるりゅうず軸部材を備えるりゅうずが設けられ、
前記分岐部の少なくとも一つは、前記上方からの平面視において前記りゅうず軸部材の挿通方向と略平行に配置される、
ことを特徴とする請求項1に記載の時計。
【請求項9】
前記モジュール本体と前記ブリッジ部材との間には、日車が配置され、
前記分岐部のいずれか1つには、前記日車における日付に相当する数字を示す日付表示窓が設けられている、
ことを特徴とする請求項1に記載の時計。
【請求項10】
前記モジュール本体の外周縁に沿って見切り部材が配置されており、
前記ブリッジ部材の前記分岐部の自由端側は、前記見切り部材と前記モジュール本体又は前記ケースとの間に挟まれて係止されている、
ことを特徴とする請求項1に記載の時計。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、時計に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、腕時計のような機器には、落下などの衝撃からベゼルのような外装部材や文字板、内部のモジュール(ムーブメント)等の破損を防止するよう工夫がされているものがある。
例えば特許文献1には、時計が熱電モジュールを備える場合に、複数の分岐部を持つ支持要素を設けることで熱電モジュールを衝撃から保護する構造が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の構成では、時計の着用時に手首に接触する側であって、バンドの存在や位置関係を考慮すると、裏蓋には落下などによる直接的な打撃が起こりにくく衝撃の伝わりにくい裏蓋付近に熱電モジュールを配置し、この熱電モジュールを衝撃から保護する支持要素も裏蓋側に配置している。
【0005】
時計の場合、落下などにより直接的な損傷が起こりやすいのは、裏蓋側よりも視認側からの衝撃を受けた場合である。視認側や側部から衝撃を受けると外観的に破損するおそれがあるだけでなく、時計内部のモジュールに含まれる精密部品等が破損するおそれがある。
この点、特許文献1に記載の構成は、時計内部のモジュール等に加わる衝撃を十分に緩和することのできるものではなかった。
【0006】
本発明はこうした課題を解決するためのものであり、時計内部の部品の破損を防止することのできる時計を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するために、本発明に係る時計は、
ケース内に配置されるモジュール本体と、
少なくとも一つの針を支持し、前記モジュール本体から上方へと突出する針支持部と、
前記モジュール本体よりも上方に配置されるブリッジ部材と、を備え、
前記ブリッジ部材は、
上方からの平面視における前記ケースの略中心に位置し、かつ上下方向に沿って前記針支持部を挿通させる被挿通部を有する中心部と、
前記中心部から分岐し、自由端側が前記ケースに係止される複数の分岐部と、を含む、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、時計内部の部品の破損を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図2】
図1におけるII-IIに沿って時計を断面した状態を示す要部断面斜視図である。
【
図3】
図1におけるIII-IIIに沿って時計を断面した状態を示す要部断面斜視図である。
【
図5】本実施形態のブリッジ部材を側面から見た場合の斜視図である。
【
図6】本実施形態のブリッジ部材を上方から見た場合の斜視図である。
【
図7】本実施形態のブリッジ部材を下方から見た場合の斜視図である。
【
図8】時計が視認側から落下した場合について説明するための模式的断面図である。
【
図9】
図8に示す時計にブリッジ部材が配置された状態で視認側から落下した場合について説明するための模式的断面図である。
【
図10】ブリッジ部材の一変形例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1から
図9を参照しつつ、本発明に係る時計の一実施形態について説明する。
なお、以下に述べる実施形態には、本発明を実施するために技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲を以下の実施形態及び図示例に限定するものではない。
【0011】
[構成]
図1は、本実施形態における時計の正面図である。また
図2は、
図1におけるII-IIに沿って時計を断面した状態を示す要部断面斜視図である。
図3は、
図1におけるIII-IIIに沿って時計を断面した状態を示す要部断面斜視図である。
なお、
図2及び
図3では、電池など一部構成について図示を省略している。
【0012】
図1から
図3に示すように、本実施形態における時計100は、ケース(以下「ケース本体1」とする。)を有している。
ケース本体1は、例えば金やチタン、ステンレス鋼(SUS)、アルミニウム等の金属材料で形成されている。なお、ケース本体1を構成する材料はここに例示したものに限定されず、炭素繊維強化樹脂等の複合材料でもよい。
本実施形態のケース本体1は、上下が開口した中空の短柱形状に形成されており、ケース本体1の裏面側(時計における非視認側)の開口部分は、裏蓋部材11により閉塞されている。なお、裏蓋部材11はケース本体1と一体的に形成されていてもよい。
また内部の中空部分が各種部品を収納する収納空間を構成している。本実施形態では、ケース本体1内に後述のモジュール2(モジュール本体)が配置されている。
【0013】
ケース本体1の
図1における外側部等には、ユーザが各種入力操作を行う各種操作部12が設けられている。本実施形態では、操作部12として、時計における3時側の側面にりゅうず12aを備え、時計における6時側や4時側、8時側の側面等に押ボタン12bを備える場合を例示している。なお、以下において、単に「操作部12」としたときは、りゅうず12a及び押ボタン12bの両方を含むものとする。
各操作部12は、軸部材121と操作頭部122とを含んでいる。操作部12がりゅうず12aである場合には、軸部材121としてりゅうず軸部材(巻真)を備えている。また操作部12が押ボタン12bである場合には、軸部材121としてボタンパイプ等を備えている。なお、各操作部12では、軸部材121と操作頭部122以外詳細な構成は省略している。
【0014】
ケース本体1の側面であって操作部12の取付け位置には内外に貫通する孔部13が形成されており、操作部12がりゅうず12aである場合にも押ボタン12bである場合も、軸部材121がケース本体1の外側から内側に向って孔部13に挿通される。
軸部材121のうちケース本体1内に挿入されている側の端部(先端部)は、ケース本体1内に収容されているモジュール2(モジュール2(モジュール本体)に含まれる基板等)と接続される。特に操作部12がりゅうず12aである場合には、軸部材121としてのりゅうず軸部材が、モジュール2の外周側から内部に挿通されている。
また軸部材121の他端側(基端側)には、ユーザが操作を行う部分である操作頭部122が取り付けられている。操作頭部122は、ケース本体1の外部に露出して配置される。
【0015】
図1及び
図3に示すように、ケース本体1の、アナログ時計における12時側及び6時側には、それぞれ図示しないバンドを取り付けるバンド取付け部31が形成されている。
【0016】
ケース本体1の表面側(時計における視認側)には、開口部分を囲むように外装部材(ベゼル)14が設けられている。本実施形態では、外装部材(ベゼル)14は、ねじ141によってケース本体1に固定されている。
外装部材(ベゼル)14は、ケース本体1と同様に、例えば金やチタン、ステンレス鋼(SUS)、アルミニウム等の金属材料で形成されている。なお、ケース本体1に外装部材(ベゼル)14が設けられることは必須ではない。
【0017】
ケース本体1の表面側(時計における視認側)の開口部分は、風防部材15(
図9参照)により閉塞されている。風防部材15は、例えばガラス材料や透明な樹脂材料等により形成された透明な部材(カバー部材)である。風防部材15はケース本体1自体の開口部に取り付けられていてもよいし、外装部材(ベゼル)14の内側等に取り付けられていてもよい。
【0018】
モジュール2(モジュール本体)は、例えば樹脂等で形成されるハウジングに時計100の各種動作部等を構成する部品が組み付けられたものである。モジュール2に組み込まれる部品には、各種の精密部品等も含まれる。
例えば時計100が電子時計である場合、モジュール2は、時計における表示を行うための各種動作部及びこれらを制御する制御部、制御部(制御回路)等を搭載する基板等を含む。
【0019】
例えば時計100が
図1に例示するようなアナログ表示方式である場合には、動作部として、針(すなわち、時針、分針、秒針等の指針)21、当該針(指針)21を回転動作させる歯車列(輪列機構)や駆動部(モータ等)等がモジュール2に組み付けられる。このようにアナログ表示方式の時計100の場合、時計100は、少なくとも一つの針21を支持する針支持部25を備える。針支持部25は、モジュール2(モジュール本体)から上方へと突出するように設けられる。
また時計100がデジタル表示方式である場合には、動作部として、上記各構成の代わりに液晶(Liquid Crystal)表示パネル等を含む表示部等を備え、この表示部が時計の表面側(視認側)に配置される。
なお時計100は、デジタル方式とアナログ方式の両方を有するハイブリッドタイプでもよく、この場合には、双方の構成部を動作部として有する。
【0020】
またモジュール2は、ケース本体1の表面側(時計における視認側)に配置される文字板22を含んでいる。
文字板22上には日付表示を行うための日車23が設けられている。日車23は例えば
図1に示すように、周方向に数字が並んだ環状の部材であり、針(指針)21等と同様に歯車列(輪列機構)等によって適宜回転駆動する。
なお時計100(時計100のモジュール2)が文字板22を含むことは必須ではない。文字板を有さず、内部の歯車列(輪列機構)等が視認可能な構成としてもよい。時計100(時計100のモジュール2)が文字板22を含まない場合には、日車23は例えばモジュール2の視認側の面上に配置される。
【0021】
また本実施形態の時計100には、モジュール2(モジュール本体)の外周縁に沿って見切り部材4が配置されている。例えば時計100が文字板22を有する場合には、文字板22の外周部分に、文字板22等の外周端を覆うように見切り部材4が配置される。見切り部材4は例えば環状に形成された部材であり、時刻を示す標識(時字41)や目盛等がその周縁に設けられている。また見切り部材4には後述のブリッジ部材5の設置脚部54(先端部533)に対応する位置に空洞となった部分が形成されており、この空洞部分の内部に設置脚部54(先端部533)が配置されるようになっている。
また例えばケース本体1の視認側の開口部には、内側に向って張り出す内向きフランジ部が設けられており、見切り部材4は、この内向きフランジ部と文字板22との間に挟まれて係止されている。
【0022】
さらに、モジュール2(モジュール本体)よりも上方(視認側)には、ブリッジ部材5が配置されている。ブリッジ部材5は、例えばチタン、ステンレス鋼(SUS)、アルミニウム等の各種金属材料で形成されている。
図4は、本実施形態のブリッジ部材の平面図である。
図5は、本実施形態のブリッジ部材を側方から見た場合の斜視図であり、
図6は、ブリッジ部材を上方から見た場合の斜視図であり、
図7は、ブリッジ部材を下方から見た場合の斜視図である。
図4から
図7に示すように、本実施形態のブリッジ部材5は、上方(視認方向)からの平面視におけるケース本体1の略中心に位置し、かつ上下方向に沿って針支持部25(後述)を挿通させる被挿通部511を有する中心部(押圧中心)51と、複数の分岐部52とを含んでいる。ここでいう「上方(視認方向)」とは、時計100を平面視する方向である。このうち中心部51は、本実施形態ではモジュール2における設置面の中心に接触しているが、中心部51はモジュール2における設置面に接触していなくともよく、例えば後述する被挿通部511に針支持部25が挿通されることで被挿通部511が針支持部25に係止されていれば良い。
なお、ブリッジ部材5の中心部51が接触するのはモジュール2における「設置面」の中心に限定されない。例えばモジュール2が「設置面」と言えるような面を有さない場合には、モジュール2の視認側の中心となるような位置に接触していればよい。
【0023】
本実施形態では前述のように、モジュール2の視認側に文字板22が載置されており、ブリッジ部材5は、文字板22の上面(風防部材15に対向する面)上に配置される。文字板22において風防部材15に対向する面は、ブリッジ部材5が配置される設置面である。中心部51が接する「モジュール2における設置面の中心」は、本実施形態では文字板22の面内中心である。
【0024】
モジュール2は、設置面(すなわち、文字板22の表面)の中心に対応する位置に少なくとも一つの針(指針)21を支持する針支持部25を備えている。針支持部25はモジュール2の内側から上方に向って突出しており、ブリッジ部材5の中心部51は、針支持部25が上下軸方向に沿って挿通される貫通孔である被挿通部511を有している。
ブリッジ部材5の中心部51に針支持部25が挿通されることで、ブリッジ部材5を位置決めし、衝撃を受けても位置ずれを生じないようになっている。また、針支持部25もブリッジ部材5によって保護され、位置がずれにくくなる。針支持部25が位置ずれしないことで針支持部25に取り付けられた針(指針)21についても衝撃によってずれるのを防ぐことができる。さらに針支持部25はモジュール2内部から突出しているものであるため、針支持部25が保護されることでモジュール2内への衝撃の影響を緩和する効果も期待できる。
【0025】
分岐部52は、中心部51から複数に分岐して、モジュール2の外周側に向って延びている。本実施形態では、
図4から
図7に示すように、分岐部52は、中心部51周りに略等間隔に設けられ、各分岐部52は、上方(視認方向)からの平面視において中心部52を起点としてモジュール2の半径方向に延在する。
ブリッジ部材5にいくつの分岐部52を設けるかは適宜設定されるが、本実施形態では、中心部51の外周から3つの分岐部52が分岐しており、
図4に示す上面視において、中心部51を中心とした三又状態に形成されている。
【0026】
さらに本実施形態の分岐部52は、中心部51から自由端までの間の少なくとも一部が2つの腕部53(第1の腕部及び第2の腕部)に分岐している。これにより、
図4に示すように、ブリッジ部材5を、中心部51を中心とした腕部53の数で見た場合に、六又状態となっている。
図示例では、各分岐部52は、中心部51から連続して設けられた基端部531の途中から2つの腕部53(第1の腕部及び第2の腕部)に分岐している。
【0027】
また分岐部52は、中心部51から自由端までの間の少なくとも一部に、中心部51から離れるにつれて設置面からの高さが高くなる傾斜を有する勾配部を有している。
どの程度の範囲でどの程度高さが高くなるか等は適宜定められるが、例えば
図4に示すように、分岐部52は中心部51に接する部分が最も低く、これに連続する基端部531では徐々に設置面から離れるように高さが高くなっていく。このように本実施形態では基端部531が傾斜を有する勾配部である。
【0028】
なお、本実施形態では、前述のように基端部531の途中から二又に分岐して2つの腕部53(第1の腕部及び第2の腕部)を構成しており、2つの腕部53は分岐端から自由端側にかけてV字状に開いている。
このため、基端部531における傾斜は、中心部51から離れるにつれて高くなる高さ方向の傾きを有するとともに、自由端側に向ってV字状に開く方向への傾きも有している。
【0029】
基端部531に連続する部分である中央部532は、その高さが維持されたほぼ水平な部分である。設置面からの高さが維持されているため、設置面である文字板22の上に立体的な装飾や機能部(機能針等を用いた各種表示部)等がある場合にも、ブリッジ部材5の各腕部53がこれらと干渉しない。
中央部532に連続する自由端側の部分である先端部533はモジュールの外周縁側に配置される。先端部533からは設置脚部54が垂設されている。
設置脚部54は設置面上に接するとともに、モジュール2の外周縁又はケース本体1の少なくとも一つに係止されている。
【0030】
本実施形態では、例えば
図2、
図3に示すように、ブリッジ部材5が設置されている設置面(例えばモジュール2(モジュール本体)に含まれる文字板22の表面)と、文字板22の外周縁を覆うように配置されている見切り部材4(見切り部材4内部の空洞部分の上面42)との間に設置脚部54(先端部533)が挟まれている。これにより、ブリッジ部材5が設置面から浮き上がらないようにモジュール2の外周縁(文字板22の外周縁)に係止される。
また前述のように、見切り部材4は、ケース本体1の内向きフランジ部と文字板22との間に挟まれて係止されており、設置脚部54が設置面と見切り部材4との間に挟み込まれることで、ブリッジ部材5はケース本体1との関係でも間接的に係止される。
【0031】
また本実施形態において時計における6時位置となる部分には、文字板22上の日車23の日付に相当する数字を示す日付表示窓551が設けられる。
本実施形態では、日付表示窓551が形成された枠部材55が、分岐部52の腕部53の1つに設けられている。具体的には、ブリッジ部材5を設置面上に配置した際に時計における6時側に配置される腕部53の先端部533に連続して枠部材55が形成されている。
これにより、別途枠部材を設けずにブリッジ部材5を設置するだけで、日付表示窓を設けることができる。ブリッジ部材5は各種金属材料等で形成された立体的な部材であり、これに連接される枠部材55も立体的に形成される。このため、単に文字板22上に印刷等より日付表示窓を設けるよりも立体的で高級感のある外観とすることができる。
【0032】
さらにいくつかの設置脚部54における設置面と対向する側には、位置決め用の凸部541が設けられている。
本実施形態では、
図5から
図7に示すように、ほぼ対角位置となる2箇所に凸部541が配置されている。
設置面となるモジュール2(本実施形態では文字板22)の表面には、凸部541に対応する位置に図示しない凹部が設けられている。凸部541を凹部に嵌め込むことでブリッジ部材5が位置決めされ、設置面上でブリッジ部材5が回転したり、位置ずれすることが防止される。
【0033】
また前述のように本実施形態のモジュール2(モジュール本体)には、操作部12(12a,12b)の軸部材121(りゅうず軸部材やボタンパイプ)がケース本体1の外周側から内部に挿通されており、ブリッジ部材5は、上方(視認方向)からの平面視において分岐部52の少なくとも一つが軸部材121の少なくとも一部と重なるように配置されることが好ましく、より好ましくは分岐部52が上方(視認方向)からの平面視において軸部材121の挿通方向と略平行に配置されることが好ましい。
【0034】
例えば
図2には、軸部材121としてモジュール2の外周側から内部にりゅうずのりゅうず軸部材が挿通されている場合に、分岐部52の一つが軸部材121(りゅうず軸部材)の挿通方向と略平行に配置されている場合を図示している。
軸部材121は細く、折れやすい部材である。この点、ブリッジ部材5の分岐部52を軸部材121と並行して配置することで、時計100に衝撃が加わった場合にケース本体やモジュール2が撓んだり撚れたりするのを分岐部52が防ぎ、軸部材121が破損するのを防止する効果が期待できる。特に、りゅうず軸部材は細い先端部分がモジュール2の奥まで挿入されている場合が多く(
図2参照)、モジュール2の撓みを抑えることが破損を防ぐために効果的である。
【0035】
また分岐部52が2つの腕部53(第1の腕部及び第2の腕部)に分岐した部分では、2つの腕部53(第1の腕部及び第2の腕部)間が開口している。そしてこの開口している部分には、少なくとも一つのリブ521が形成されている。
ブリッジ部材5の分岐部52を適宜開口させることで、軽量化を図ることができる。
また分岐部52の、開口している部分にリブ521を形成することで、軽量化を図りつつも時計100に衝撃が加わった際にはブリッジ部材5の変形を防止し、衝撃を吸収、分散して全体としての剛性や強度を高めることができる。
なお、
図4等に示すように、軸部材121(例えばりゅうず軸部材)の挿通方向と略平行に配置され、軸部材121(例えばりゅうず軸部材)の少なくとも一部と重なるように配置される分岐部52については、開口している部分に形成されるリブ521の数を多くし(図示例では他の分岐部52よりも1つリブ521の数が多い場合を示す)、より剛性や強度を高める構成としている。
なお、リブ521の形状は直線状でなくともよく、適宜折れ曲がっていても良い。また、リブ521を格子状等に設定しても良い。
【0036】
[作用]
本実施形態の時計100を組み立てる場合には、ケース本体1内にモジュール2を収容して、ケース本体1の側部等にりゅうず12aや押ボタン12b等の操作部12を取り付ける。
モジュール2の視認側に文字板22を配置し、その上からブリッジ部材5を配置する。このとき中心部51の被挿通部511に針支持部25を挿通させ、針支持部25に指針(指針)21を取り付ける。
【0037】
また文字板22の外周端を覆うように見切り部材4を配置し、見切り部材4と文字板22との間でブリッジ部材5を係止する。
そして視認側の開口部分を風防部材15で閉塞するとともに、非視認側の開口部分を裏蓋部材11で閉塞する。また
図1等に示すように、視認側に外装部材(ベゼル)14を配置し、複数箇所(図示例では時計における12時側、6時側に各2箇所ずつ、計4箇所)でねじ止めする。
これにより、時計100が完成する。
【0038】
このようにして形成された時計100が、例えば時計100の上面側(視認側)や側部から落下したり、壁等にぶつかる等すると、外部から激しい衝撃が時計100に加わる。
【0039】
図8及び
図9は、時計が視認側から落下した場合について説明する模式的説明図である。
図8は従来の構成の時計を示している。
図8に示すように、従来の時計でもモジュール2の外周端部は見切り部材4等によって押さえられているため、風防部材15の設けられている側(視認側)から時計100が落下した場合に、モジュール2全体が視認側からケース本体1の外部に飛び出すことはない。
しかし、モジュール2の中央部では、衝撃によりモジュール2が大きく撓む。なお
図8では撓み後のモジュール2の仮想的な表面を二点鎖線で示している。
モジュール2の中央部には図示例にあるように針(指針)21を支持する針支持部25が設けられており、モジュール2が撓むと、二点鎖線で示すように針支持部25やこれに支持されている針(指針)21が風防部材15に当たってしまい、破損するおそれがある。また時計100が液晶表示パネル等を有するデジタル表示が可能なものである場合には液晶表示パネルが割れてしまうおそれもある。また針(指針)21や液晶表示パネルが衝突すると風防部材15も傷つくおそれがある。
【0040】
これに対して、
図9は、本実施形態に示すブリッジ部材5をモジュール2の設置面上に配置した例であり、
図8の場合と同様に風防部材15の設けられている側(視認側)から時計100が落下した場合を図示している。
図9に示すように、ブリッジ部材5は、モジュール2における設置面の中心(文字板22の面内中心)に中心部51が接しており、さらにこの中心部51から自由端側に向って徐々に高くなるように傾斜し、かつ自由端側に向ってV字状に開いてそれぞれ腕部53を形成している。
これにより、モジュール2の外周部から、中心部51が接している設置面の中心に向って、ブリッジ部材5によりモジュール2の設置面(文字板22の表面)を押さえつける力が集中する構造となっている。
このため、特にモジュール2の中央部の撓みが効果的に防止され、針支持部25やこれに支持されている針(指針)21が風防部材15とぶつかるおそれも回避できる。
【0041】
[効果]
以上のように本実施形態における時計100は、ケース本体1内に配置されるモジュール2(モジュール本体)と、少なくとも一つの針21を支持し、モジュール2(モジュール本体)から上方へと突出する針支持部25と、モジュール2(モジュール本体)よりも上方(視認側)に配置されるブリッジ部材5と、を備え、ブリッジ部材5は、上方(視認方向)からの平面視におけるケース本体1の略中心に位置し、かつ上下方向に沿って針支持部25を挿通させる被挿通部511を有する中心部51と、中心部51から分岐し、自由端側がモジュール2の外周縁又はケース本体1の少なくとも一つに係止される複数の分岐部52と、を含んでいる。
これにより、時計100が上面側(視認側)から落下する等により、時計100に激しい衝撃が加わった際にも、ケース本体1内部に収容されているモジュール2、特にモジュール2の中央部分が風防部材15側に撓んで針支持部25やこれに支持されている針(指針)21が風防部材15と衝突して破損するのを効果的に防ぐことができる。またモジュール2には各種の精密部品が搭載されているが、モジュール2が大きく撓むのを防止できるため、モジュール内部の部品の破損も回避できる。時計がデジタル方式の表示部を備える場合も同様にモジュール2の撓みを抑えることで液晶表示パネル等の割れや破損を防ぐことができる。
【0042】
またブリッジ部材5の中心部51が、針支持部25が上下軸方向に沿って挿通される被挿通部511を有していることにより、ブリッジ部材5の位置ずれを防止でき、衝撃が加わった際のモジュール2の撓みをモジュール2の中央部で効果的に抑えることができる。
また、針支持部25もブリッジ部材5によって保護され、針支持部25及び針支持部25に取り付けられた針(指針)21が衝撃によって位置ずれするのを防ぐことができる。さらに針支持部25はモジュール2内部から突出しているものであるため、針支持部25に大きな衝撃が加わるとモジュール2内の各種部品にも影響が及び破損のおそれがある。この点針支持部25が保護されることでモジュール2内への衝撃の影響を緩和することもできる。
またこのように本実施形態では、ブリッジ部材5の被挿通部511に沿って針支持部25が挿通している。このため、衝撃が加わりブリッジ部材5やモジュール2が撓んだとしても、ブリッジ部材5はあくまで上下方向(針支持部25に沿う方向)に撓む。これにより、針支持部25が折れることも防ぐことができる。
【0043】
また本実施形態では、分岐部52は、中心部51周りに略等間隔に設けられ、各分岐部52は、中心部51を起点としてモジュール2の半径方向に延びている。
これにより、中心部51を中心としてバランスよくモジュール2全体を押さえることができる。これによりモジュール2の撓みを効果的に防止する。
【0044】
また本実施形態では、分岐部52は、中心部51から自由端までの間の少なくとも一部に、中心部51から離れるにつれて設置面からの高さが高くなる勾配部を有する。本実施形態では基端部531が傾斜するように形成されている。
これにより、分岐部52から中心部51に向って効果的に押圧力が集中するようになっており、モジュール2(本実施形態では文字板22)の表面である設置面を十分に押圧してモジュール2の中央部における撓みを抑えることができる。
【0045】
また本実施形態では、分岐部52は、中心部51から自由端までの間の少なくとも一部が複数の腕部53(第1の腕部と第2の腕部)に分岐しており、これら複数の腕部53(第1の腕部と第2の腕部)の間は開口している。
このように開口している部分があることにより、ブリッジ部材5を軽量に構成することができる。
【0046】
また本実施形態では、複数の腕部53(第1の腕部と第2の腕部)の間には、少なくとも一つのリブが形成されている。
これにより、ブリッジ部材5の軽量化を実現しつつ十分な強度、剛性を持たせることができる。
【0047】
また本実施形態では、モジュール2には、外周側から内部に挿通される軸部材121を備える操作部12が設けられ、分岐部52の少なくとも一つは、上方(視認方向)からの平面視において軸部材121の少なくとも一部と重なる。
軸部材121は比較的細く、折れたり破損しやすいが、分岐部52を軸部材121と重なるように設けることで、時計100に衝撃が加わった際に軸部材121を衝撃から保護することができる。
【0048】
また本実施形態では、モジュール2には、外周側から内部に挿通される軸部材121を備える操作部12が設けられ、分岐部52の少なくとも一つは、上方(視認方向)からの平面視において軸部材121の挿通方向と略平行に配置される。
軸部材121は比較的細く、折れたり破損しやすいが、分岐部52を軸部材121の挿通方向と略平行に配置することで、時計100に衝撃が加わった際に軸部材121を衝撃から保護し折れにくくすることができる。
【0049】
また本実施形態のモジュール2には、外周側から内部に挿通される軸部材121としてりゅうず軸部材を備えるりゅうず12aが設けられ、分岐部53の少なくとも一つは、上方(視認方向)からの平面視において軸部材121(りゅうず軸部材)の挿通方向と略平行に配置される。
りゅうず軸部材はボタンパイプ等他の軸部材121と比べて細く、長い上、モジュール2の奥まで挿入されていることが多い。このためモジュール2が撓むと、特に折れたり破損しやすいが、分岐部52を軸部材121(りゅうず軸部材)の挿通方向と略平行に配置することで、時計100に衝撃が加わった際に軸部材121(りゅうず軸部材)を衝撃から保護し折れにくくすることができる。
またりゅうず12aが設けられている場合、時計100の重心がりゅうず12a側(
図1において右側)に偏りやすく、りゅうず12a側から落下する可能性が高い。このためりゅうず12aの設けられている側では特に衝撃への対策が重要となる。この点、本実施形態のように分岐部52を軸部材121(りゅうず軸部材)の挿通方向と略平行に配置することで、落下時等の衝撃を効果的に吸収することができ、りゅうず12aの軸部材121(りゅうず軸部材)やモジュール2等の破損を防ぐことができる。
【0050】
また本実施形態では、モジュール2とブリッジ部材5との間には、日車23が配置され、ブリッジ部材5には日車23における、日付に相当する数字を示す日付表示窓551が設けられている。
これにより、ブリッジ部材5を所定位置に配置するだけで、金属材料等で形成された立体的な日付表示窓551を設けることができる。このため、単に文字板22上に印刷等より日付表示窓を設ける等した場合よりも立体的で高級感のある外観とすることができる。
【0051】
また本実施形態では、モジュール2の外周縁に沿って見切り部材4が配置されており、ブリッジ部材5の分岐部52の自由端側は、見切り部材4とモジュール2又はケース本体1との間に挟まれて係止されている。
このように本来配置される部材によってブリッジ部材5の自由端側を係止するため、別途係止用の部材を設ける必要がなく、部品点数や組立工数の増加を抑えることができる。
【0052】
なお、以上本発明の実施形態について説明したが、本発明は、かかる実施形態に限定されず、その要旨を逸脱しない範囲で、種々変形が可能であることは言うまでもない。
【0053】
例えば本実施形態では、ブリッジ部材5が上面視において三又の分岐部52を備え、各分岐部52がさらに二又に分かれて腕部53を構成し、ブリッジ部材5全体が中心部51を中心とした六又形状に形成されている場合を例示したが、ブリッジ部材5の具体的な構成、形状はここに示したものに限定されない。
【0054】
例えばブリッジ部材5は、中心部51を中心としてほぼ均等な間隔で分岐部52が延びている構成であればよく、分岐部52は三又に限定されない。
さらに各分岐部52がさらにいくつの腕部53に分岐するかは限定されず、1つの分岐部52が三又以上に分岐してもよい。
また、各分岐部52が複数の腕部53に分岐することは必須ではない。例えば
図10に示すように、ブリッジ部材5aは、各分岐部52aがそれぞれ一つながりとなっており、腕部等を備えない構成であってもよい。さらに、分岐部52を複数の腕部53に分岐させて部分的に開口させるのではなく、一つながりとしながらも部分的に厚みの薄い部分を設けてもよい。これにより開口部分を設けなくてもブリッジ部材の軽量化を実現することができる。
【0055】
またブリッジ部材5は、例えば日付表示を行う位置等によって形状や配置が変更されてもよい。
また例えば本実施形態において設置面となる文字板22の表面には、針支持部25に支持された針(指針)21の他に、小針(機能針)を用いた各種の表示部等が設けられてもよい。この場合、ブリッジ部材5の形状や配置は、各種表示部の表示を妨げないように調整される。
【0056】
また本実施形態では、ブリッジ部材5の分岐部52の自由端側がモジュール2(文字板22)の外周縁と見切り部材4(見切り部材4内部の空洞部分の上面42)との間に挟まれて係止される場合を例示したが、分岐部52を係止させる構成はこれに限定されない。
例えばケース本体1の表面側の開口部内周等に設けられた内向きフランジ部等とモジュール2(文字板22)の外周縁との間に分岐部52が挟まれて係止されてもよい。
【0057】
またブリッジ部材5が設置される設置面は文字板22の表面に限定されない。
例えばモジュール2が、上面(視認側の面)が平面であるようなモジュールケース等を備えている場合には、当該モジュールケースの上面を設置面としてブリッジ部材5が設置されてもよい。
【0058】
また本実施形態では、操作部12としてりゅうず12aが設けられている場合に、ブリッジ部材5の分岐部53の少なくとも一つは、軸部材121(りゅうず軸部材)の挿通方向と略平行に配置されることとしたが、分岐部53が略平行に配置されるのはりゅうず軸部材に限定されない。
例えばブリッジ部材5の分岐部53は、押ボタン12bの軸部材121であるボタンパイプの少なくとも一部と重なり、好ましくはボタンパイプと略平行に配置されるようにしてもよい。
また、複数の分岐部をそれぞれ操作部12の軸部121と略平行に配置されるようにしてもよい。
【0059】
また、本実施形態ではブリッジ部材5が時計100に適用される場合を例示したが、ブリッジ部材5を適用可能な機器はこれに限定されない。
例えば衝撃による変形や破損等が懸念される部品をケース本体1内部に収容する機器に、本実施形態に示すようなブリッジ部材5を広く適用してもよい。
【0060】
以上本発明のいくつかの実施形態を説明したが、本発明の範囲は、上述の実施の形態に限定するものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲とその均等の範囲を含む。
【符号の説明】
【0061】
1 ケース本体(ケース)
11 裏蓋部材
12 操作部
121 軸部材
14 外装部材(ベゼル)
15 風防部材
2 モジュール(モジュール本体)
21 指針(指針)
22 文字板
23 日車
25 針支持部
4 見切り部材
5 ブリッジ部材
51 中心部
52 分岐部
521 リブ
53 腕部
54 設置脚部
100 時計