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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024136414
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】クーラントタンク
(51)【国際特許分類】
   B23Q 11/00 20060101AFI20240927BHJP
   B23Q 11/10 20060101ALI20240927BHJP
   B24B 55/03 20060101ALI20240927BHJP
   B01D 21/26 20060101ALI20240927BHJP
   B03C 1/00 20060101ALI20240927BHJP
   B03C 1/02 20060101ALI20240927BHJP
   B03C 1/14 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
B23Q11/00 U
B23Q11/10 E
B24B55/03
B01D21/26
B03C1/00 A
B03C1/02 C
B03C1/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023047525
(22)【出願日】2023-03-24
(71)【出願人】
【識別番号】593146017
【氏名又は名称】光精工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147625
【弁理士】
【氏名又は名称】澤田 高志
(72)【発明者】
【氏名】西村 憲一
(72)【発明者】
【氏名】西村 昌能
(72)【発明者】
【氏名】加藤 直樹
(72)【発明者】
【氏名】出口 稔
(72)【発明者】
【氏名】東條 哲弥
【テーマコード(参考)】
3C011
3C047
【Fターム(参考)】
3C011BB33
3C011EE09
3C047GG13
3C047GG17
3C047GG18
(57)【要約】
【課題】スラッジの堆積量を減少させ得るとともに小型化を可能にするクーラントタンクを提供する。
【解決手段】クーラントタンクは、タンクユニット20、循環ポンプ30および供給ポンプ40を備え、比較的クリーンなクーラント液Ceを加工機Mに送る。タンクユニット20のタンク21ではクーラント液Cの渦流が発生するため、タンク21内にスラッジの沈殿や堆積が生じにくくなる。また循環ポンプ30および供給ポンプ40は、いずれもタンク21内のほぼ中央部に設けられることから、タンク21の中央部に無駄なスペースができない。さらにタンク21のほかにクリーンタンクを設ける必要もない。そのため、クーラント清浄システム10では、このようなクーラントタンクを用いることにより、二槽式ではなく一槽式のクーラント清浄システム10を構成することが可能になる。したがって、スラッジの堆積量を減少させ、かつ、小型化にすることができる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
スラッジが混入したダーティなクーラント液を清浄するクーラント清浄システムであり前記スラッジの混入量が少ないクリーンなクーラント液を分離する分離装置を有するシステム、に用いられるクーラントタンクであって、
前記ダーティなクーラント液が外部から流入するタンク本体と、
前記タンク本体内のほぼ中央部に設けられ前記タンク本体内のクーラント液を吸引して前記分離装置に圧送し前記クリーンなクーラント液を前記タンク本体の内周縁部に戻して前記タンク本体内に渦流を発生させる第1ポンプと、
前記タンク本体内のほぼ中央部に設けられ前記渦流の渦中心に流れる前記スラッジの混入量が前記ダーティなクーラント液よりも少ない比較的クリーンなクーラント液を吸引して前記外部に送る第2ポンプと、
を備える、ことを特徴とするクーラントタンク。
【請求項2】
前記第2ポンプの吸引口は、前記第1ポンプの吸引口よりも前記タンク本体の底面の反対側に位置する、ことを特徴とする請求項1に記載のクーラントタンク。
【請求項3】
前記第2ポンプの吸引口は、前記第1ポンプの吸引口よりも前記タンク本体の底面の側に位置する、ことを特徴とする請求項1に記載のクーラントタンク。
【請求項4】
前記タンク本体は、前記タンク本体の底面に対する垂直方向視による外観形状が矩形である、ことを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載のクーラントタンク。
【請求項5】
前記タンク本体は、前記垂直方向視による内側四隅をそれぞれ覆う曲面部を有する、ことを特徴とする請求項4に記載のクーラントタンク。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スラッジが混入したクーラント液を清浄するクーラント清浄システムに用いられるクーラントタンクに関するものである。
【背景技術】
【0002】
スラッジが混入したクーラント液を清浄するクーラント清浄システムとして、例えば、下記の特許文献1に開示される「クーラント清浄装置」がある。この装置では、円形状を有するクーラントタンク内においてスラッジが混入したクーラント液に渦流を発生させ得るように構成するとともにクーラントタンクの中央にジェットポンプを配置する。これにより、クーラントタンクの中央の底面にスラッジを集積させて、その集積したスラッジをジェットポンプでタンク外の磁気分離器に圧送した後、当該クーラントタンクに戻すことでクーラント液の清浄を可能にしている。
【0003】
また、このようなクーラント清浄システムには、下記特許文献2に開示される「クーラント再生システム」もある。このシステムでは、クーラントタンク内にスラッジが混入したクーラント液を流す環状流路を設けるとともに流路の途中にクーラント液を吸引するポンプを配置する。これにより、スラッジが混入したクーラント液は、環状流路で旋回流として流れている状態でクーラントタンクに貯留されるため、スラッジがタンクの底に沈殿しにくくなる。また、ポンプで吸引されたクーラント液は、タンク外の濾過機に送られてスラッジが分離され除去される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005-40936号公報
【特許文献2】特開2010-214487号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1のクーラント清浄装置では、タンク外の磁気分離器に圧送されたクーラント液は、クーラントタンクに戻された後、当該クーラントタンクの外周面に併設された別のクリーンタンクを介してクリーンポンプに吸引されて工作機械等に供給される。そのため、このクーラント清浄装置は、クーラントタンクに加えてクリーンタンクを必要とすることから、二槽式になってしまい、装置の全体形状が大型になるという問題がある。
【0006】
また、上記特許文献2のクーラント再生システムは、クーラントタンク内に環状流路を形成するため、その中央の環内に無駄なスペースが生じてしまう。また流路中には、クーラント液を吸引するポンプが存在することから、ポンプの存在が環状流路内を流れるクーラント液の流れを妨げてその付近にスラッジが堆積し得る。つまり、このシステムは、クーラントタンクの中央以外にポンプを配置したことに起因し、中央に無駄なスペースが生じることに加えてクーラント流の障害やスラッジの堆積が発生し得るという問題がある。
【0007】
本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであり、スラッジの堆積量を減少させ得るとともに小型化を可能にするクーラントタンクを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、特許請求の範囲に記載された請求項1の技術的手段を採用する。この手段によると、クーラントタンクは、タンク本体、第1ポンプおよび第2ポンプを備え、スラッジが混入したダーティなクーラント液を清浄するクーラント清浄システムに用いられる。このシステムは、スラッジの混入量が少ないクリーンなクーラント液を分離する分離装置を有する。クーラントタンクの第1ポンプは、外部からダーティなクーラント液が流入するタンク本体内のほぼ中央部に設けられ、タンク本体内のクーラント液を吸引して分離装置に圧送しクリーンなクーラント液をタンク本体の内周縁部に戻してタンク本体内に渦流を発生させる。第2ポンプは、タンク本体内のほぼ中央部に設けられ渦流の渦中心に流れるスラッジの混入量がダーティなクーラント液よりも少ない比較的クリーンなクーラント液を吸引して外部に送る。
【0009】
これにより、スラッジの混入量が少ない比較的クリーンなクーラント液を外部(例えば、クーラント液を必要としている加工機等)に送ることが可能になる。また、タンク本体内では、クーラント液の渦流が発生するため、スラッジの沈殿や堆積が生じにくくなる。また、第1ポンプおよび第2ポンプは、いずれもタンク本体内のほぼ中央部に設けられることから、上記特許文献2のクーラント再生システムで生じたような無駄なスペースができない。さらに、タンク本体のほかにクリーンタンクを設ける必要もないため、このようなクーラントタンクを用いることで、上記特許文献1のクーラント清浄装置のような二槽式ではなく、一槽式の清浄装置や清浄システムを構成することが可能になる。
【0010】
また、特許請求の範囲に記載された請求項2の技術的手段を採用する。この手段によると、第2ポンプの吸引口は、第1ポンプの吸引口よりもタンク本体の底面の反対側に位置する。これにより、クーラント液の渦流によってスラッジがタンク本体のほぼ中央部において底面の側で回流する場合には、ほぼ中央部の底面の側に存在するスラッジは第1ポンプの吸引口を介して吸引されるため、第2ポンプの吸引口の付近ではスラッジが減少する。典型的には、スラッジは、クーラント液に対して比重が大きいためクーラント液中では沈むことから、クーラント液の比重に対してスラッジの比重が十分に大きい(重い)ときには、このようにスラッジが底面の側で回流し得る。
【0011】
また、特許請求の範囲に記載された請求項3の技術的手段を採用する。この手段によると、第2ポンプの吸引口は、第1ポンプの吸引口よりもタンク本体の底面の側に位置する。これにより、クーラント液の渦流によってスラッジがタンク本体のほぼ中央部において底面の反対側、つまりクーラント液の液面側に巻き上げられる場合には、ほぼ中央部の底面の反対側、つまりクーラント液の液面側に存在するスラッジは第1ポンプの吸引口を介して吸引されるため、第2ポンプの吸引口の付近ではスラッジが減少する。典型的には、スラッジは、クーラント液に対して比重が大きいためクーラント液中では沈むが、例えば、クーラント液の比重に対してスラッジの比重が近いときには、このようにスラッジが液面側に巻き上げられ得る。
【0012】
また、特許請求の範囲に記載された請求項4の技術的手段を採用する。この手段によると、タンク本体は、その底面に対する垂直方向視による外観形状が矩形である。矩形には長方形および正方形が含まれる。これにより、タンク本体の外観形状が楕円形(長方形の長辺と同じ長さの長径および短辺と同じ長さの短径を有する)または円形(正方形の一辺と同じ長さの直径を有する)である場合に比べて、タンク本体はクーラント液の貯留量が増加する。
【0013】
また、特許請求の範囲に記載された請求項5の技術的手段を採用する。この手段によると、タンク本体は、その底面に対する垂直方向視による内側四隅をそれぞれ覆う曲面部を有する。これにより、このような曲面部がない場合に比べ、矩形のタンク本体の内側四隅を流れるクーラント液は、流れが円滑になるため、タンク本体の内側四隅にスラッジが堆積しにくくなる。なお、このような曲面部に代えて、内側四隅にこのような曲面形状を有するようにタンク本体自体の形状を構成してもよい。
【発明の効果】
【0014】
請求項1の発明では、スラッジの混入量が少ないクーラント液を外部(例えば、クーラント液を必要としている加工機等)に送ることが可能になる。またタンク本体内では、クーラント液の渦流が発生するため、スラッジの沈殿や堆積が生じにくくなる。また、第1ポンプおよび第2ポンプは、いずれもタンク本体内のほぼ中央部に設けられることから、上記特許文献2のクーラント再生システムで生じたような無駄なスペースができない。さらに、タンク本体のほかにクリーンタンクを設ける必要もないため、このようなクーラントタンクを用いることで、上記特許文献1のクーラント清浄装置のような二槽式ではなく、一槽式の清浄装置や清浄システムを構成することが可能になる。したがって、スラッジの堆積量を減少させ、かつ、小型化にすることができる。
【0015】
請求項2の発明では、クーラント液の渦流によってスラッジがタンク本体(ほぼ中央部)の底面の側で回流する場合には、ほぼ中央部の底面の側に存在するスラッジは第1ポンプの吸引口を介して吸引されるため、第2ポンプの吸引口の付近ではスラッジが減少する。したがって、タンク本体の底面の反対側に位置する第2ポンプは、スラッジの混入量が少ないクーラント液を吸引することができ、それを外部(例えば、クーラント液を必要としている加工機等)に送ることが可能になる。
【0016】
請求項3の発明では、クーラント液の渦流によってスラッジがクーラント液の液面側に巻き上げられる場合には、クーラント液の液面側に存在するスラッジは第1ポンプの吸引口を介して吸引されるため、第2ポンプの吸引口の付近ではスラッジが減少する。したがって、タンク本体の底面の側に位置する第2ポンプは、スラッジの混入量が少ないクーラント液を吸引することができ、それを外部(例えば、クーラント液を必要としている加工機等)に送ることが可能になる。
【0017】
請求項4の発明では、タンク本体の外観形状が楕円形(長方形の長辺と同じ長さの長径および短辺と同じ長さの短径を有する)または円形(正方形の一辺と同じ長さの直径を有する)である場合に比べて、タンク本体はクーラント液の貯留量が増加する。したがって、同量のクーラント液を貯留する場合にはタンク本体をさらに小型にすることができる。
【0018】
請求項5の発明では、このような曲面部がない場合に比べ、矩形のタンク本体の内側四隅を流れるクーラント液は、流れが円滑になるため、タンク本体の内側四隅にスラッジが堆積しにくくなる。したがって、スラッジの堆積量をさらに減少させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明のクーラントタンクの一例を適用したクーラント清浄システムの一実施形態の構成概要を示す説明図である。
図2】本実施形態のクーラント清浄システムに用いられるクーラントタンクの構成例を示す説明図である。
図3】クーラントタンクを構成するタンクユニットのタンク内におけるクーラント液やスラッジの流れを示す説明図である。図3(A)は図2に相当する平面方向から見た説明図である。図3(B)は図1に相当する断面方向から見た説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明のクーラントタンクの一例を適用したクーラント清浄システムの一実施形態について図を参照して説明する。まず、クーラント清浄システムの構成を図1および図2に基づいて説明する。図1には、本実施形態のクーラント清浄システム10の構成概要を表した説明図が図示されている。図2には、本実施形態のクーラント清浄システム10に用いられるクーラントタンクの構成例を表した説明図が図示されている。なお、図1に表されているタンクユニット20は、図2に示すI-I線(一点鎖線)により切断したその断面を矢印方向から見た断面図である。また、本明細書においては、重力方向のことを「下方」、反重力方向のことを「上方」と表現する場合がある。なお、図1および図3において薄い灰色に着色されている部分は、貯留されているクーラント液Cを表している。
【0021】
図1に示すように、クーラント清浄システム10は、主に、タンクユニット20、循環ポンプ30、供給ポンプ40、マグネットセパレータ50、サイクロンセパレータ60、スラッジタンク70等により構成されている。クーラント清浄システム10は、加工機Mから排出されるスラッジが混入したダーティなクーラント液Caを清浄して再び加工機Mに供給するものである。なお、タンクユニット20(タンク本体)、循環ポンプ30(第1ポンプ)および供給ポンプ40(第2ポンプ)を含む概念が特許請求の範囲に記載の「クーラントタンク」に相当し得るものである。
【0022】
加工機Mは、例えば、研削盤や研磨機であり、ワークWを研削や研磨する砥石Pを備えている。クーラント液C(後述する比較的クリーンなクーラント液Ce)は、砥石PがワークWを研削や研磨する際の冷却液として加工機Mに供給された後、当該加工機Mから、研削切粉や砥粉等のスラッジが混入したダーティなクーラント液Caとしてマグネットセパレータ50に排出される。後述するように、スラッジには、磁性体スラッジFと非磁性体スラッジSが含まれており、前者はマグネットセパレータ50により、また後者はサイクロンセパレータ60により、それぞれ分離されて除去される。なお、加工機Mは、ワークWを切削する工具を備えた工作機械である場合もある。またクーラント液Cは、例えば、水溶性または不水溶性の研削液、研磨液や切削液等である。
【0023】
タンクユニット20は、主に、タンク21、Rガイド22、ノズル23,24等により構成されている。図2に示すように、タンク21は、平面視において矩形状の外観形状を有する有底無蓋の金属製の容器である。ここで平面視とは、タンク21の底部21bの内面(底面)に対する垂直方向から当該タンク21を見ることである(以下同じ)。図1に示す断面図においては、タンク21は、その深さが比較的浅い形状を有するように表されているが、クーラント液Cの貯留可能容量に基づいてタンク21の幅、奥行きや高さ(深さ)等の各サイズが任意に設定される。
【0024】
なお、本実施形態のタンクユニット20のタンク21に貯留されるクーラント液Cは、後述するように、マグネットセパレータ50やサイクロンセパレータ60によって概ねスラッジが除去されてこれらのセパレータ50,60から排出されたものではあるものの、スラッジが完全に除去されたものではない。そのため、タンク21内のクーラント液Cには、少量のスラッジが混入している。
【0025】
図2に示すように、本実施形態では、タンク21は、その外観形状が平面視で正方形状を有するように構成されており、周壁部21aの内側四隅にはRガイド22が設けられている。Rガイド22は、例えば、中心角90度の円弧状の曲面を有する部材である。本実施形態では、当該曲面形状に加工した薄板をタンク21の四隅に溶接により固定しているが、このような曲面形状を四隅に有するようにタンク21の形状自体を構成してもよい。つまり、タンク21の四隅の形状を角丸(または丸角)にしてもよい。
【0026】
またタンク21には、後述するように、一端がサイクロンセパレータ60の吐出口64に接続される配管13の他端やその分岐管14に連通するノズル23,24が周壁部21aを貫通して当該周壁部21aに取り付けられている。本実施形態では、ノズル23,24は、タンク21の平面視において、互いに対向する位置かつ両者の吐出口が互いに反対方向を向くようにタンク21に設けられている。
【0027】
循環ポンプ30は、主に、本体部31と浸漬部32により構成されている。本体部31には図略のモータが収容されており、このモータにより回転する図略の羽根車等が浸漬部32に収容されている。浸漬部32は、タンクユニット20のタンク21に貯留されたクーラント液Cに浸漬された状態で、図略の羽根車等が回転すると吸引口33を介してクーラント液Cを汲み上げるとともに外部に圧送し得るように構成されている。本実施形態では、循環ポンプ30は、浸漬部32の吸引口33がタンク21のほぼ中央部21cの底部21b付近に位置するようにタンク21に取り付けられている。
【0028】
即ち、循環ポンプ30は、タンク21の平面視においてそのほぼ中央部21c(図2に示す一点鎖線円内)に位置しかつ浸漬部32の吸引口33が底部21bの付近に位置するように、タンク21に取り付けられている。また循環ポンプ30の本体部31には配管12の一端が接続され、その配管12の他端はサイクロンセパレータ60の導入口63に接続されている。これにより、循環ポンプ30は、タンク21のほぼ中央部21cの底部21b付近においてクーラント液Cを汲み上げる。例えば、後述するクーラント液Cの渦流によってスラッジがタンク21のほぼ中央部21cにおいて底部21b付近で回流する場合には、液面付近よりもスラッジの混入量が多いクーラント液Cbを循環ポンプ30が汲み上げる。そのため、タンク21内でも比較的スラッジの混入量が多いクーラント液Cbが配管12を経由してサイクロンセパレータ60に圧送される。
【0029】
供給ポンプ40は、本実施形態では循環ポンプ30よりも小型ではあるものの、循環ポンプ30とほぼ同様に構成されている。即ち、供給ポンプ40は、主に、本体部41と浸漬部42により構成されており、図略のモータが本体部41に収容され、このモータにより回転する図略の羽根車等が浸漬部42に収容されている。供給ポンプ40も、タンク21に貯留されたクーラント液Cに浸漬部42が浸漬された状態で、図略の羽根車等が回転すると吸引口43を介してクーラント液Cを汲み上げて外部に圧送する。本実施形態では、供給ポンプ40の吸引口43は、循環ポンプ30の吸引口33よりもクーラント液Cの液面側、即ちタンク21の底部21bの反対側に位置している。
【0030】
供給ポンプ40は、タンク21の平面視においてそのほぼ中央部21c(図2に示す一点鎖線円内)に位置し(循環ポンプ30および供給ポンプ40の羽根車の回転軸に対して両者が径方向に隣接するように配置されている)かつ浸漬部42の吸引口43が循環ポンプ30の吸引口33よりもクーラント液Cの液面側に位置するように、タンク21に取り付けられている。また供給ポンプ40の本体部41には配管16の一端が接続され、その配管16の他端は加工機Mの導入口に接続されている。
【0031】
これにより、供給ポンプ40は、タンク21のほぼ中央部21cの液面に近い位置おいてクーラント液Cを汲み上げる。このような液面に近い位置は、その反対側、つまり底部21b付近においてスラッジの混入量が多いクーラント液Cbが循環ポンプ30により汲み上げられていることから、スラッジが少なくなり易い。そのため、タンク21内でもスラッジの混入量が少ない比較的クリーンなクーラント液Ceが配管16を経由して加工機Mに圧送される。
【0032】
マグネットセパレータ50は、主に、貯留槽51、マグネットドラム53、排出ガイド55等により構成されている。マグネットセパレータ50は、貯留槽51内に貯留されたクーラント液Cに混入しているスラッジに含まれる鉄粉等の磁性体スラッジFを、マグネットドラム53に吸着させて分離するとともに当該マグネットドラム53と図略のローラとにより挟圧してクーラント液Cを絞り出した後、排出ガイド55から外部に排出する。これにより、クーラント液Cから研削切粉等の磁性体スラッジFが除去される。
【0033】
本実施形態では、マグネットセパレータ50は、タンク21の上方に配置されてタンクユニット20に取り付けられて貯留槽51の下方には排出口56が設けられている。そのため、磁性体スラッジFが除かれた貯留槽51内のクーラント液Cは、排出口56から、直接、タンク21内に排出される。なお、このクーラント液Cは、マグネットセパレータ50では分離することのできない非磁性体スラッジSを含んでいるものの、磁性体スラッジFは概ね除去されているため、ダーティなクーラント液Caもややクリーンである。
【0034】
サイクロンセパレータ60は、主に、円柱筒部61と円錐筒部62により構成されている。円柱筒部61は、無底有蓋の円筒体であり周壁部に導入口63を有するとともに蓋部に吐出口64を有する。円錐筒部62は、円柱筒部61と同径の大径部分から下方に向かい縮径する円錐台体であり、円柱筒部61の下端に接続されている。この円錐筒部62の最下部には排出口65が設けられている。円柱筒部61および円錐筒部62の内周壁は、導入口63から流入したクーラント液Cbがそれらの内周壁の周方向に沿って旋回し得るように構成されている。このクーラント液Cbは、循環ポンプ30によりタンクユニット20のタンク21から汲み上げられたものである。
【0035】
これにより、サイクロンセパレータ60の導入口63から流入したクーラント液Cbは、旋回しながら円柱筒部61から円錐筒部62に移動するにつれて高速に旋回するため、その遠心力によって、固体は回転外方向の周壁付近に集まって下向きの螺旋状流に流されて最下部の排出口65から下方に排出される。また、液体は、遠心力によって回転内方向の中心軸付近に集まるとともに中心部分に発生する上昇流により上方に押し上げられて最上部の吐出口64から吐出する。つまり、クーラント液Cbに混入したスラッジに含まれる磁性体スラッジF以外の砥粉等の非磁性体スラッジSがクーラント液Cbから分離されてクリーンなクーラント液Ccとして圧送される。
【0036】
本実施形態では、サイクロンセパレータ60は、タンクユニット20、マグネットセパレータ50やスラッジタンク70よりも最も高い位置に設けられており、吐出口64には配管13の一端が接続され、また排出口65は、サイクロンセパレータ60の下方かつスラッジタンク70の上方に位置するスラッジポット(図示省略)に接続されている。スラッジポットは、サイクロンセパレータ60で分離された非磁性体スラッジSを濃縮するとともに、それが有するバルブを開弁することで上澄みのクーラント液と濃縮された非磁性体スラッジSとを下方のスラッジタンク70に排出し得るように構成されている。なお、配管13の他端やその途中に接続される配管14は、前述したように、タンクユニット20のノズル23,24に接続されている(図2参照)。
【0037】
このため、サイクロンセパレータ60により砥粉等の非磁性体が分離されたクリーンなクーラント液Ccは、サイクロンセパレータ60からの吐出圧に加えて、上方のサイクロンセパレータ60から下方のタンクユニット20への落差を利用した圧力差によって、配管13,14を経由してタンクユニット20のタンク21に圧送される。これにより、タンク21内に吐出されたクリーンなクーラント液Ccは、ノズル23,24の吐出口が向く方向にクーラント液Cの流れをつくる。
【0038】
本実施形態では、前述したように、ノズル23,24は、それらの吐出口がタンク21の平面視において互いに反対方向を向くようにタンク21に設けられている。そのため、図2に示す平面視のタンク21内を流れるクーラント液Cは、時計回りの旋回流をつくる。即ち、図3(A)に示すように、クーラント液Cは、破線太矢印で表したように時計回りに旋回する渦流になる。このようなクーラント液Cの流れについては、後で図3を参照しながら詳述する。
【0039】
スラッジタンク70は、有底無蓋の矩形箱であり、サイクロンセパレータ60や図略のスラッジポットの下方に設けられている。スラッジタンク70は、サイクロンセパレータ60により分離されて排出口65からスラッジポットを介して排出された砥粉等の非磁性体スラッジSと、それを含むため汚れ度合いが高い、高ダーティなクーラント液Cdと、を貯留する金属製の容器である。なお、図1には、作業者がスラッジタンク70から非磁性体スラッジSを掻き出して回収する回収容器75が図示されている。また、同図おいて濃い灰色に着色されている部分は、非磁性体スラッジSを表している。
【0040】
スラッジタンク70に貯留されている高ダーティなクーラント液Cdは、サイクロンセパレータ60で分離されたクリーンなクーラント液Ccに比べると、スラッジの混入割合が高い。そのため、スラッジタンク70には、このような高ダーティなクーラント液Cdをマグネットセパレータ50に戻すための排出口71が設けられている。この排出口71には、配管15の一端が接続されており、配管15の他端はマグネットセパレータ50の貯留槽51の上方で開口している。これにより、スラッジタンク70に貯留された高ダーティなクーラント液Cdは、配管15を経由してマグネットセパレータ50の貯留槽51に戻される。
【0041】
このように本実施形態のクーラント清浄システム10を構成することによって、タンクユニット20のタンク21のほぼ中央部21cではスラッジの混入量が少ない比較的クリーンなクーラント液Ceを供給ポンプ40により汲み上げることが可能である。そのため、タンク21のほかにクリーンタンク等を設けることなく、比較的クリーンなクーラント液Ceを加工機Mに供給することができる。なお、上述したクーラント液Ca~Ceは、これらに含まれるスラッジの混入量が多い順に並べると、Cd>Ca>Cb>Ce>Ccになる。
【0042】
ここで図3を参照しながらタンク21内のクーラント液Cの流れについて説明する。図3(A)には、平面方向からタンク21内を見た説明図が図示されている。図3(B)には、断面方向からタンク21内を見た説明図が図示されている。
【0043】
図3(A)に示すように、本実施形態では、タンク21のノズル23,24からクリーンなクーラント液Ccが吐出されることによって(破線矢印)、タンク21内のクーラント液Cは、破線太矢印で表したように時計回りに旋回する渦流、つまり旋回流を生じながらタンク21内を流れる。これにより、このような旋回流がない場合に比べてタンク21の底部21bに沈殿して溜まるスラッジの量(スラッジの堆積量)を減らすことができる。
【0044】
また、本実施形態では、タンク21の周壁部21aの四隅にはRガイド22が設けられているため、このようなRガイド22が四隅にない場合に比べてクーラント液Cは流れが円滑になる。これにより、Rガイド22がない場合には周壁部21aの四隅を中心に堆積してしまうスラッジを大幅に削減することが可能になるので、スラッジの堆積量をさらに減少させることができる。なお、ノズル23,24の吐出口をそれぞれ反対方向に向けることによって、タンク21内の旋回流を反時計回りにすることが可能である。
【0045】
図3(B)に示すように、本実施形態では、供給ポンプ40の吸引口43は、循環ポンプ30の吸引口33よりもタンク21の底部21bの反対側、つまりクーラント液Cの液面側に位置する(循環ポンプ30の吸引口33は下方、供給ポンプ40の吸引口43は上方)。そのため、クーラント液Cの渦流によってスラッジがタンク21のほぼ中央部21cにおいて底部21bの側(タンク21の下方)に回流したり集まったりする場合には、タンク21の下方に存在する循環ポンプ30の吸引口33からスラッジが吸引される(一点鎖線矢印)。そして、それを含んだクーラント液Cがタンク21内でも比較的スラッジの混入量が多いクーラント液Cbとしてサイクロンセパレータ60に送られる。
【0046】
これにより、クーラント液Cの液面側の付近ではスラッジが減少することから、タンク21の上方に存在する供給ポンプ40の吸引口43から吸引されるクーラント液Cは、比較的クリーンなクーラント液Ceになる(二点鎖線矢印)。つまり、クーラント液Ceは、サイクロンセパレータ60から吐出されるクリーンなクーラント液Ccに比べるとスラッジの混入量は多いものの、加工機Mが許容する範囲内のスラッジの混入量に留まる。そのため、このような比較的クリーンなクーラント液Ceが供給ポンプ40により汲み上げられて当該加工機Mに供給される(図3(A)や図3(B)参照)。なお、このようにタンク21のほぼ中央部21cの底部21bの側にスラッジが回流したり集まったりする場合はクーラント液Cに対してスラッジの比重が十分に大きい(重い)ときである。
【0047】
本実施形態のクーラント清浄システム10による技術的な効果を確認するため、本願発明者らは、次の[1],[2]に示すような検証作業を行った。
【0048】
[1]比較例のクーラント清浄システム(二槽式)を用いた確認
比較例のクーラント清浄システムのダーティタンクに貯留されるクーラント液に含まれるスラッジの混入量と、本実施形態のクーラント清浄システム10のタンク21に貯留されるクーラント液に含まれるスラッジの混入量と、を確認したところ、次のような結果が得られた。採取したクーラント液はそれぞれ300ml(ミリリットル)である。
(1) 本実施形態のクーラント清浄システム: 8.5mg/300ml
(2) 比較例のクーラント清浄システム : 46.1mg/300ml
【0049】
なお、比較例のクーラント清浄システムは二槽式であり、本実施形態のタンク21に相当するダーティタンクと、このダーティタンクとは別体に設けられるクリーンタンクとを備えている。
【0050】
ダーティタンクは、その中央部に、本実施形態の循環ポンプ30に相当する循環ポンプを備え、またその周壁部に、本実施形態のノズル23,24に相当するノズルを2つ備えている。これらのノズルには、循環ポンプで汲み上げられたクーラント液が本実施形態の配管13や分岐管14に相当するものを介して戻される。これにより、本実施形態のタンク21と同様にダーティタンク内にクーラント液の旋回流を発生させる。なお、ダーティタンクには、後述のサイクロンセパレータから吐出されたクリーンなクーラント液は圧送されない。
【0051】
クリーンタンクは、ダーティタンクの循環ポンプにより汲み上げられたクーラント液が本実施形態のサイクロンセパレータ60に相当するサイクロンセパレータに送られた後、クリーンなクーラント液としてこのサイクロンセパレータから吐出されたものが圧送されるように構成されている。また本実施形態の供給ポンプ40に相当する供給ポンプがクリーンタンクに設けられている。これにより、クリーンタンクに貯留されたクリーンなクーラント液がこの供給ポンプにより汲み上げて加工機Mに供給され得る。
【0052】
[2]本実施形態のクーラント清浄システム10を用いた確認
クーラント清浄システム10のタンク21内において次の2箇所のクーラント液Cを採取してそれに含まれるスラッジの混入量を確認したところ、次のような結果が得られた。
(1) 循環ポンプ30で汲み上げられたクーラント液Cb: 1.12mg/100ml
(2) 供給ポンプ40で汲み上げられたクーラント液Ce: 0.88mg/100ml
【0053】
以上の検証結果から、本実施形態のクーラント清浄システム10は、上記特許文献1に開示されるクーラント清浄装置のように、二槽式ではないにもかかわらず、タンクユニット20のタンク21内に貯留されているクーラント液Cを十分に清浄することが可能であり、またタンク21の底部21bに堆積するスラッジの堆積量を減少させることが可能であることも確認できた(上記[1](1),(2))。
【0054】
また、本実施形態のクーラント清浄システム10においては、クーラント液Cに対してスラッジの比重が十分に大きいときには(クーラント液Cに対するスラッジの比重:4.0)、タンク21のほぼ中央部21cの底部21bの側にスラッジが回流したり集まったりする。そのため、循環ポンプ30で汲み上げられたクーラント液Cbに比べて、供給ポンプ40で汲み上げられたクーラント液Ceが、スラッジの混入量が少ないことが確認できた(上記[2](1),(2))。
【0055】
なお、クーラント液Cに対してスラッジの比重が近いときには(例えば、クーラント液Cに対するスラッジの比重:2.0~3.5)、供給ポンプ40の吸引口43を、循環ポンプ30の吸引口33よりもタンク21の底部21bに位置するように構成する(循環ポンプ30の吸引口33は上方、供給ポンプ40の吸引口43は下方)。これにより、クーラント液Cの渦流によってスラッジがタンク21のほぼ中央部21cにおいてクーラント液の液面側に巻き上げられる場合には、タンク21の上方に存在する循環ポンプ30の吸引口33からスラッジが吸引される。そのため、このような液面側に存在するスラッジを含んだクーラント液Cがタンク21内でも比較的スラッジの混入量が多いクーラント液Cbとしてサイクロンセパレータ60に送られる。
【0056】
これにより、タンク21の底部21bの側や底部21bの付近ではスラッジが減少することから、タンク21の下方に存在する供給ポンプ40の吸引口43から吸引されるクーラント液Cは、比較的クリーンなクーラント液Ceになる。つまり、クーラント液Ceは、サイクロンセパレータ60から吐出されるクリーンなクーラント液Ccに比べるとスラッジの混入量は多いものの、加工機Mが許容する範囲内のスラッジの混入量に留まる。そのため、このような比較的クリーンなクーラント液Ceが供給ポンプ40により汲み上げられて当該加工機Mに供給される。
【0057】
以上説明したように、本実施形態のクーラント清浄システム10では、スラッジの混入量が少ない比較的クリーンなクーラント液Ceを加工機Mに送ることが可能になる。またタンクユニット20のタンク21内では、クーラント液Cの渦流が発生するため、スラッジの沈殿や堆積が生じにくくなる。そのため、タンク21内に堆積したスラッジを除去する清掃の回数を大幅に削減することができる。また、循環ポンプ30および供給ポンプ40は、いずれもタンク21内のほぼ中央部21cに設けられることから、上記特許文献2のクーラント再生システムで生じたような無駄なスペースができない。さらに、タンク21のほかにクリーンタンクを設ける必要もない。そのため、本実施形態のクーラント清浄システム10にこのようなタンクユニット20を用いることで、上記特許文献1のクーラント清浄装置のような二槽式ではなく、一槽式のクーラント清浄システム10を構成することが可能になる。したがって、スラッジの堆積量を減少させ、かつ、小型化にすることができる。
【0058】
また、本実施形態のクーラント清浄システム10では、タンクユニット20のタンク21は、平面視(底部21bに対する垂直方向視)による外観形状が矩形である。これにより、タンク21の外観形状が楕円形(長方形の長辺と同じ長さの長径および短辺と同じ長さの短径を有する)または円形(正方形の一辺と同じ長さの直径を有する)である場合に比べて、タンク21はクーラント液Cの貯留量が増加する。したがって、同量のクーラント液Cを貯留する場合にはタンク21をさらに小型にすることができる。
【0059】
さらに、本実施形態のクーラント清浄システム10では、タンク21は、平面視(底部21bに対する垂直方向視)による周壁部21aの内側四隅をそれぞれ覆うRガイド22を有する。これにより、このようなRガイド22がない場合に比べて、タンク21の内側四隅を流れるクーラント液Cは流れが円滑になる。そのため、タンク21の内側四隅にスラッジが堆積しにくくなるので、スラッジの堆積量をさらに減少させることができる。
【0060】
なお、上述した実施形態のクーラント清浄システム10の構成を技術的思想の創作として概念すると、次のように表現することができる。
[1]スラッジが混入したダーティなクーラント液が外部から流入するタンク本体と、
前記ダーティなクーラント液から前記スラッジの混入量が少ないクリーンなクーラント液を分離する分離装置と、
前記タンク本体内のほぼ中央部に設けられ前記タンク本体内のクーラント液を吸引して前記分離装置に圧送し前記クリーンなクーラント液を前記タンク本体の内周縁部に戻して前記タンク本体内に渦流を発生させる第1ポンプと、
前記タンク本体内のほぼ中央部に設けられ前記渦流の渦中心に流れる前記スラッジの混入量が前記ダーティなクーラント液よりも少ない比較的クリーンなクーラント液を吸引して前記外部に送る第2ポンプと、
を備える、ことを特徴とするクーラント清浄システム。
[2]前記第2ポンプの吸引口は、前記第1ポンプの吸引口よりも前記タンク本体の底面の反対側に位置する、ことを特徴とする[1]に記載のクーラント清浄システム。
[3]前記第2ポンプの吸引口は、前記第1ポンプの吸引口よりも前記タンク本体の底面の側に位置する、ことを特徴とする[1]に記載のクーラント清浄システム。
[4]前記タンク本体は、前記底面に対する垂直方向視による外観形状が矩形である、ことを特徴とする[1]~[3]のいずれかに記載のクーラント清浄システム。
[5]前記タンク本体は、前記垂直方向視による内側四隅をそれぞれ覆う曲面部を有する、ことを特徴とする[4]に記載のクーラント清浄システム。
【0061】
[1]に記載のクーラント清浄システムは、タンク本体、分離装置、第1ポンプおよび第2ポンプを備える。タンク本体には、スラッジが混入したダーティなクーラント液が外部から流入する。分離装置は、ダーティなクーラント液からスラッジの混入量が少ないクリーンなクーラント液を分離する。第1ポンプは、外部からダーティなクーラント液が流入するタンク本体内のほぼ中央部に設けられ、タンク本体内のクーラント液を吸引して分離装置に圧送しクリーンなクーラント液をタンク本体の内周縁部に戻してタンク本体内に渦流を発生させる。第2ポンプは、タンク本体内のほぼ中央部に設けられ渦流の渦中心に流れるスラッジの混入量がダーティなクーラント液よりも少ない比較的クリーンなクーラント液を吸引して外部に送る。
【0062】
これにより、タンク本体内では、クーラント液の渦流が発生するため、スラッジの沈殿や堆積が生じにくくなる。また、第1ポンプおよび第2ポンプは、いずれもタンク本体内のほぼ中央部に設けられることから、上記特許文献2のクーラント再生システムで生じたような無駄なスペースができない。さらに、タンク本体のほかにクリーンタンクを設ける必要もないため、上記特許文献1のクーラント清浄装置のような二槽式ではなく、一槽式のクーラント清浄システムを構成することが可能になる。したがって、スラッジの堆積量を減少させ、かつ、小型化にすることができる。
【0063】
[2]に記載のクーラント清浄システムでは、第2ポンプの吸引口は、第1ポンプの吸引口よりもタンク本体の底面の反対側に位置する。これにより、クーラント液の渦流によってスラッジがタンク本体のほぼ中央部において底面の側で回流する場合には、ほぼ中央部の底面の側に存在するスラッジは第1ポンプの吸引口を介して吸引されるため、第2ポンプの吸引口の付近ではスラッジが減少する。したがって、タンク本体の底面の反対側に位置する第2ポンプは、スラッジの混入量が少ないクーラント液を吸引することができ、それを外部(例えば、クーラント液を必要としている加工機等)に送ることが可能になる。典型的には、スラッジは、クーラント液に対して比重が大きいためクーラント液中では沈むことから、クーラント液の比重に対してスラッジの比重が十分に大きい(重い)ときには、このようにスラッジが底面の側で回流し得る。
【0064】
[3]に記載のクーラント清浄システムでは、第2ポンプの吸引口は、第1ポンプの吸引口よりもタンク本体の底面の側に位置する。これにより、クーラント液の渦流によってスラッジがタンク本体のほぼ中央部において底面の反対側、つまりクーラント液の液面側に巻き上げられる場合には、ほぼ中央部の底面の反対側、つまりクーラント液の液面側に存在するスラッジは第1ポンプの吸引口を介して吸引されるため、第2ポンプの吸引口の付近ではスラッジが減少する。したがって、タンク本体の底面の側に位置する第2ポンプは、スラッジの混入量が少ないクーラント液を吸引することができ、それを外部(例えば、クーラント液を必要としている加工機等)に送ることが可能になる。典型的には、スラッジは、クーラント液に対して比重が大きいためクーラント液中では沈むが、例えば、クーラント液の比重に対してスラッジの比重が近いときには、このようにスラッジが液面側に巻き上げられ得る。
【0065】
[4]に記載のクーラント清浄システムでは、タンク本体は、底面に対する垂直方向視による外観形状が矩形である。矩形には長方形および正方形が含まれる。これにより、タンク本体の外観形状が楕円形(長方形の長辺と同じ長さの長径および短辺と同じ長さの短径を有する)または円形(正方形の一辺と同じ長さの直径を有する)である場合に比べて、タンク本体はクーラント液の貯留量が増加する。したがって、同量のクーラント液を貯留する場合にはタンク本体をさらに小型にすることができる。
【0066】
[5]に記載のクーラント清浄システムでは、タンク本体は、垂直方向視による内側四隅をそれぞれ覆う曲面部を有する。これにより、このような曲面部がない場合に比べ、矩形のタンク本体の内側四隅を流れるクーラント液は、流れが円滑になるため、タンク本体の内側四隅にスラッジが堆積しにくくなる。したがって、スラッジの堆積量をさらに減少させることができる。
【0067】
なお、上述した実施形態では、分離装置の一例として、サイクロンセパレータ60を設ける構成を例示して説明したが、本発明のクーラントタンクが用いられるクーラント清浄システムが有する分離装置は、スラッジの混入量が少ないクリーンなクーラント液を分離することが可能な装置であれば、例えば、上述したマグネットセパレータ50であってもよい。
【0068】
また、上述した実施形態では、タンク本体の一例として、タンクユニット20のタンク21は、その外観形状が底部21bに対する垂直方向視(平面視)で正方形状を有するように構成したが、同視においてタンク21が長方形状を有するように構成してもよい。また、タンク21の内側四隅には曲面部の一例として、Rガイド22を設ける構成を例示して説明したが、当該内側四隅にスラッジが堆積することを許容する場合にはRガイド22が設ける必要はない。これにより、タンクユニット20を構成する部品点数を削減することが可能になる。
【0069】
さらに、上述した実施形態では、第1ポンプおよび第2ポンプの一例として、循環ポンプ30と供給ポンプ40をそれらの羽根車の回転軸に対して径方向に隣接させて配置する構成を例示して説明したが、本発明のクーラントタンクを構成する第1ポンプと第2ポンプは、それらの羽根車の回転軸が同軸になるように、例えば、循環ポンプ30と供給ポンプ40を同軸上に配置してもよい。また、循環ポンプ30と供給ポンプ40を別々に設ける構成を例示して説明したが、これらを一体に構成してもよい。
【0070】
これにより、循環ポンプ30および供給ポンプ40をタンク21の中央部に配置することが可能になるので、タンク21内を流れるクーラント液Cの旋回流の中心位置に循環ポンプ30および供給ポンプ40を設けることが可能になる。したがって、本実施形態のタンク21に設けられる循環ポンプ30や供給ポンプ40に比べて、スラッジの混入量が多いクーラント液Cbや比較的クリーンなクーラント液Ceを、より効率的に汲み上げることができる。
【0071】
また、上述した実施形態では、タンクユニット20、循環ポンプ30および供給ポンプ40を備えるクーラントタンクを、クーラント清浄システム10に用いる場合を例示して説明したが、本発明のクーラントタンクはそれが備える第1ポンプおよび第2ポンプを必要とするクーラント清浄システムであれば、他の構成を有するシステムにも用いることができる。また、クーラント液は、外部(研削熱、研磨熱、切削熱等の加工熱(摩擦熱)が発生し得る発熱部位を有する加工機等)の発熱部位を冷却するために用いられる液体であれば、水溶性または不水溶性の研削液、研磨液や切削液等、以外の液体でもよい。
【0072】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、上述した具体例を様々に変形または変更したものが含まれる。また、本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時の請求項に記載の組合せに限定されるものではない。さらに、本明細書または図面に例示した技術は、複数の目的を同時に達成するものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つ。なお、[符号の説明]の欄における括弧内の記載は、上述した各実施形態で用いた用語と、特許請求の範囲に記載の用語との対応関係を明示し得るものである。
【符号の説明】
【0073】
10…クーラント清浄システム
20…タンクユニット(タンク本体)
21…タンク
21a…周壁部
21b…底部(底面)
21c…ほぼ中央部
22…Rガイド(曲面部)
23,24…ノズル
30…循環ポンプ(第1ポンプ)
40…供給ポンプ(第2ポンプ)
33,43…吸引口
50…マグネットセパレータ
60…サイクロンセパレータ(分離装置)
70…スラッジタンク
C…クーラント液
Ca…ダーティなクーラント液
Cb…クーラント液
Cc…クリーンなクーラント液
Cd…高ダーティなクーラント液
Ce…比較的クリーンなクーラント液
F…磁性体スラッジ(スラッジ)
M…加工機(外部)
P…砥石
S…非磁性体スラッジ(スラッジ)
W…ワーク
図1
図2
図3