(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024136421
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】水素製造装置及び水素製造方法
(51)【国際特許分類】
C01B 3/08 20060101AFI20240927BHJP
C01B 32/60 20170101ALI20240927BHJP
C01B 3/56 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
C01B3/08 Z
C01B32/60
C01B3/56 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023047534
(22)【出願日】2023-03-24
(71)【出願人】
【識別番号】390037154
【氏名又は名称】大和ハウス工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100162031
【弁理士】
【氏名又は名称】長田 豊彦
(74)【代理人】
【識別番号】100175721
【弁理士】
【氏名又は名称】高木 秀文
(72)【発明者】
【氏名】河目 裕介
【テーマコード(参考)】
4G140
【Fターム(参考)】
4G140FA02
4G140FB04
4G140FC01
4G140FE01
(57)【要約】
【課題】水素を好適に製造することができる水素製造装置を提供する。
【解決手段】水中で鉄と二酸化炭素とを反応させて水素を生成する反応器30と、反応器30に二酸化炭素を供給する加圧用ポンプ50と、反応器30内で生成された水素と二酸化炭素とを分離する水素分離膜モジュール60と、水素分離膜モジュール60により分離された水素の量を計測する流量計80と、を具備する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水中で金属と二酸化炭素とを反応させて水素を生成する反応器と、
前記反応器に二酸化炭素を供給する二酸化炭素供給部と、
前記反応器内で生成された水素と二酸化炭素とを分離する分離部と、
前記分離部により分離された水素の量を計測する水素量計測部と、
を具備する、
水素製造装置。
【請求項2】
前記二酸化炭素供給部は、
加圧した二酸化炭素を前記反応器に供給可能であり、
前記分離部は、
前記二酸化炭素供給部により前記反応器を介して供給された二酸化炭素の圧力により、水素と二酸化炭素とを分離する、
請求項1に記載の水素製造装置。
【請求項3】
前記反応器内の気体の量を検出する気相検出部と、
前記気相検出部の検出結果に基づいて、前記反応器内の水素の発生量を推定する推定部と、
を具備する請求項2に記載の水素製造装置。
【請求項4】
前記気相検出部は、
前記反応器内の二酸化炭素の量を検出する二酸化炭素検出部を含む、
請求項3に記載の水素製造装置。
【請求項5】
前記反応器は、
金属を粉砕させる機構を備え、
前記反応器と前記二酸化炭素供給部とを接続する経路と、前記反応器と前記分離部とを接続する経路と、の少なくとも一方は、防振性を有する配管により形成されている、
請求項1に記載の水素製造装置。
【請求項6】
反応器内に、水及び金属を供給する原料供給工程と、
前記反応器内に二酸化炭素を供給すると共に、前記反応器の動作を開始し、前記反応器内で水素を生成する水素生成工程と、
前記反応器で生成された水素の量を計測する計測部の計測結果を用いて、前記反応器で所定期間内に生成された水素の量が第一の量以下であるか否かを判断する生成量判断工程と、
前記生成量判断工程において、前記反応器で所定期間内に生成された水素の量が前記第一の量以下であると判断された場合に前記反応器の動作を停止する停止工程と、
を具備する水素製造方法。
【請求項7】
前記水素生成工程において、
加圧した二酸化炭素を前記反応器内に常時供給する第一制御を実行可能である、
請求項6に記載の水素製造方法。
【請求項8】
前記計測部は、
前記反応器内の水素と二酸化炭素とを分離することで得られた水素の量を計測する水素量計測部と、
前記反応器内の気体の量に基づいて前記反応器内の水素の発生量を推定する推定部と、を含み、
前記水素生成工程において、
前記推定部の推定結果である推定水素発生量が、前記第一の量よりも大きい第二の量以下である場合に、加圧した二酸化炭素を供給し、
前記水素量計測部の計測結果が、前記反応器内での前記推定水素発生量の総量を超えた場合に、加圧した二酸化炭素の供給を停止する第二制御を実行可能である、
請求項7に記載の水素製造方法。
【請求項9】
前記水素生成工程で生成された水素が貯留される水素貯留部の水素の貯留量が、基準貯留量未満である場合は前記第一制御を実行し、
前記水素貯留部の水素の貯留量が、前記基準貯留量以上である場合は前記第二制御を実行する、
請求項8に記載の水素製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水素製造装置及び水素製造方法の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、化学反応により水素を製造する技術は公知となっている。例えば、特許文献1に記載の如くである。
【0003】
特許文献1には、ボールミル等の装置内に金属(鉄鋼金属等)、水及び二酸化炭素の原料を入れて、装置を動作させることで、金属を粉砕しながら各原料を攪拌することで、金属、水及び二酸化炭素を反応させて、水素を製造する方法が記載されている。上記特許文献1に記載された方法では、原料の金属としてスクラップを用いることができる。
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に記載された方法のように、金属にスクラップを用いた場合には、原料の金属の品質がばらつくことが想定される。この場合、同じ量の原料を装置内に投入しても、水素の発生量にばらつきが生じることが想定される。このように水素の発生量にばらつきが生じる場合、反応時間をどの程度に設定すればよいかを事前に予測し難い。その場合、水素製造装置の制御や追加の原料の投入の判断が困難となるため、水素を好適に製造し難い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は以上の如き状況に鑑みてなされたものであり、その解決しようとする課題は、水素を好適に製造することができる水素製造装置及び水素製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0008】
即ち、請求項1においては、水中で金属と二酸化炭素とを反応させて水素を生成する反応器と、前記反応器に二酸化炭素を供給する二酸化炭素供給部と、前記反応器内で生成された水素と二酸化炭素とを分離する分離部と、前記分離部により分離された水素の量を計測する水素量計測部と、を具備するものである。
【0009】
請求項2においては、前記二酸化炭素供給部は、加圧した二酸化炭素を前記反応器に供給可能であり、前記分離部は、前記二酸化炭素供給部により前記反応器を介して供給された二酸化炭素の圧力により、水素と二酸化炭素とを分離するものである。
【0010】
請求項3においては、前記反応器内の気体の量を検出する気相検出部と、前記気相検出部の検出結果に基づいて、前記反応器内の水素の発生量を推定する推定部と、を具備するものである。
【0011】
請求項4においては、前記気相検出部は、前記反応器内の二酸化炭素の量を検出する二酸化炭素検出部を含むものである。
【0012】
請求項5においては、前記反応器は、金属を粉砕させる機構を備え、前記反応器と前記二酸化炭素供給部とを接続する経路と、前記反応器と前記分離部とを接続する経路と、の少なくとも一方は、防振性を有する配管により形成されているものである。
【0013】
請求項6においては、反応器内に、水及び金属を供給する原料供給工程と、前記反応器内に二酸化炭素を供給すると共に、前記反応器の動作を開始し、前記反応器内で水素を生成する水素生成工程と、前記反応器で生成された水素の量を計測する計測部の計測結果を用いて、前記反応器で所定期間内に生成された水素の量が第一の量以下であるか否かを判断する生成量判断工程と、前記生成量判断工程において、前記反応器で所定期間内に生成された水素の量が前記第一の量以下であると判断された場合に前記反応器の動作を停止する停止工程と、を具備するものである。
【0014】
請求項7においては、前記水素生成工程において、加圧した二酸化炭素を前記反応器内に常時供給する第一制御を実行可能であるものである。
【0015】
請求項8においては、前記計測部は、前記反応器内の水素と二酸化炭素とを分離することで得られた水素の量を計測する水素量計測部と、前記反応器内の気体の量に基づいて前記反応器内の水素の発生量を推定する推定部と、を含み、前記水素生成工程において、前記推定部の推定結果である推定水素発生量が、前記第一の量よりも大きい第二の量以下である場合に、加圧した二酸化炭素を供給し、前記水素量計測部の計測結果が、前記反応器内での前記推定水素発生量の総量を超えた場合に、加圧した二酸化炭素の供給を停止する第二制御を実行可能であるものである。
【0016】
請求項9においては、前記水素生成工程で生成された水素が貯留される水素貯留部の水素の貯留量が、基準貯留量未満である場合は前記第一制御を実行し、前記水素貯留部の水素の貯留量が、前記基準貯留量以上である場合は前記第二制御を実行するものである。
【発明の効果】
【0017】
本発明は、水素を好適に製造することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の一実施形態に係る水素製造装置を用いた水素製造方法の様子を示した模式図。
【
図2】水素製造装置の制御に用いられる機器の構成を示したブロック図。
【
図4】ハイスピード制御で実行される処理を示したフローチャート。
【
図5】省エネ制御で実行される処理を示したフローチャート。
【
図6】反応器内の水素及び二酸化炭素の物質量と時間との関係を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下では、
図1及び
図2を用いて、本発明の一実施形態に係る水素製造装置1の構成について説明する。
【0020】
水素製造装置1は、原料である金属と二酸化炭素とを水中で反応させることで、水素を製造するものである。本実施形態では原料の金属として、鉄を採用している。水素製造装置1は、例えば燃料として利用される水素を製造する。水素製造装置1は、水タンク10、鉄供給装置20、反応器30、二酸化炭素ボンベ40、加圧用ポンプ50、水素分離膜モジュール60、水素貯留部70、流量計80、固液分離機90及び制御装置100を具備する。
【0021】
図1に示すように、水素製造装置1を構成する上記各機器(水タンク10や鉄供給装置20、反応器30等)は、固体及び液体(鉄及び水等)の流路である固液経路2や、気体(水素及び二酸化炭素)の流路である気相経路3によって接続されている。図例では、固液経路2を破線、気相経路3を一点鎖線で示している。
【0022】
図1に示す水タンク10は、水素の製造に使用される水を貯留するものである。上記水は、外部から適宜供給(補充)される。水タンク10に貯留された水は、例えば適宜のポンプ等を用いて後述する反応器30に供給される。
【0023】
鉄供給装置20は、原料の鉄を反応器30に供給するものである。上記原料の鉄としては、鉄くず等の廃棄物として回収された鉄を採用可能である。上記鉄は、外部から適宜供給(補充)される。
【0024】
図1に示す反応器30は、鉄及び二酸化炭素を水中で反応させて水素を生成するものである。反応器30の内部には、上記原料を反応させるための空間が設けられている。反応器30の内部に、鉄、水及び二酸化炭素が供給されることで、反応器30内において水に二酸化炭素が溶け込んだ炭酸水と、鉄と、が化学反応を起こし、水素が生成される。上記反応が行われた後、反応器30の内部には、生成された水素と、未反応の二酸化炭素(気体)と、水(炭酸水)と、副生成物(副産物)として炭酸鉄が存在する。
【0025】
本実施形態では、反応器30として、内部に供給された鉄を粉砕する粉砕機(振動ミル)を採用している。反応器30内には、鉄を粉砕するための粉砕媒体(例えばステンレス球等)が入れられている。反応器30を振動させて粉砕媒体を運動させることで、反応器30内の鉄を粉砕することができる。粉砕されて表面積が増大した鉄を使用することで、二酸化炭素との反応効率を向上させることができる。本実施形態によれば、反応器30を動作させることで、鉄を粉砕させながら化学反応を促進させることができ、効率的に水素を生成することができる。反応器30は、固液供給部31、固液排出部32、気相供給部33、気相排出部34及び二酸化炭素センサ35を具備する。
【0026】
固液供給部31は、水タンク10からの水及び鉄供給装置20からの鉄が供給される部分である。固液供給部31は、鉄及び水の供給を許容する開放状態と、鉄及び水の供給を規制する閉鎖状態と、に切り替え可能である。水タンク10及び鉄供給装置20と、固液供給部31と、は固液経路2により接続されている。
【0027】
固液排出部32は、副産物の炭酸鉄及び水が排出される部分である。固液排出部32は、後述する固液分離機90へ炭酸鉄及び水を排出する。固液排出部32は、炭酸鉄及び水の排出を許容する開放状態と、炭酸鉄及び水の排出を規制する閉鎖状態と、に切り替え可能である。
【0028】
気相供給部33は、原料である二酸化炭素が供給される部分である。気相供給部33には、後述する加圧用ポンプ50からの二酸化炭素が供給される。
【0029】
気相排出部34は、生成された水素及び未反応の二酸化炭素が排出される部分である。気相排出部34は、後述する水素分離膜モジュール60へ水素及び二酸化炭素を排出する。
【0030】
なお、本実施形態においては、気相供給部33及び気相排出部34は、常時開放しているものとする。
【0031】
二酸化炭素センサ35は、反応器30の内部の二酸化炭素(気体)の濃度を検出するものである。
【0032】
二酸化炭素ボンベ40は、原料の二酸化炭素が貯留されるものである。上記二酸化炭素は、外部から適宜供給(補充)される。また、二酸化炭素の外部からの供給手段としては、例えば二酸化炭素回収装置を採用可能である。二酸化炭素ボンベ40に貯留された二酸化炭素は、気相供給部33を介して反応器30に供給される。二酸化炭素ボンベ40には、二酸化炭素の供給及び供給の停止を切り替える開閉手段(例えばバルブ等)が設けられている。
【0033】
加圧用ポンプ50は、二酸化炭素ボンベ40の二酸化炭素を加圧して反応器30へ供給するものである。加圧用ポンプ50は、二酸化炭素ボンベ40と反応器30との間に設けられる。加圧用ポンプ50を動作させた際には、加圧された二酸化炭素(加圧二酸化炭素)が、反応器30へ供給される。
【0034】
二酸化炭素ボンベ40、加圧用ポンプ50及び気相供給部33(反応器30)は、気相経路3により接続されている。ここで、本実施形態では、気相経路3のうち、加圧用ポンプ50と気相供給部33とを接続する部分である第一経路3aを、防振性を有し、反応器30の振動を吸収可能なフレキシブル配管で形成している。これにより、反応器30の振動が加圧用ポンプ50による二酸化炭素の供給に影響を及ぼすことを抑制することができる。
【0035】
水素分離膜モジュール60は、反応器30の気相排出部34から排出された水素及び二酸化炭素の混合気体を、水素と二酸化炭素とに分離させるものである。水素分離膜モジュール60は、水素のみを通す(二酸化炭素は通さない)水素分離膜を有する。上記水素分離膜に対して圧力をかけて上記混合気体を導入することで、水素分離膜を通過する水素と、通過しない二酸化炭素と、を分離することができる。本実施形態では、加圧用ポンプ50による加圧二酸化炭素の圧力により、混合気体を水素分離膜モジュール60に導入すると共に、水素分離膜に水素を通過させることで、水素と二酸化炭素とを分離させる。水素分離膜モジュール60により分離された水素は、後述する水素貯留部70に供給される。
【0036】
気相排出部34(反応器30)及び水素分離膜モジュール60は、気相経路3により接続されている。ここで、本実施形態では、気相経路3のうち、気相排出部34と水素分離膜モジュール60とを接続する部分である第二経路3bを、第一経路3aと概ね同様なフレキシブル配管で形成している。これにより、反応器30の振動が水素分離膜モジュール60による分離に影響を及ぼすことを抑制することができる。
【0037】
また、本実施形態では、水素分離膜モジュール60により分離された二酸化炭素を、気相経路3を介して二酸化炭素ボンベ40に戻すことで、上記分離された二酸化炭素を反応器30に供給可能な構成としている。これにより、水素分離膜モジュール60で分離した二酸化炭素を反応器30での反応に再利用することができる。
【0038】
水素貯留部70は、水素を貯留するものである。水素貯留部70に貯溜された水素は、必要に応じて水素を利用する設備である水素利用設備4へ供給される。水素貯留部70及び水素利用設備4は、気相経路3により接続されている。また、水素貯留部70の内部には、水素貯留部70内の水素の貯留量を検出する容量センサ71が設けられている。
【0039】
流量計80は、水素分離膜モジュール60により分離された水素の流量を計測するものである。流量計80は、水素分離膜モジュール60と水素貯留部70とを接続する気相経路3に設けられている。流量計80は、気相経路3を単位時間(例えば1秒)に流れる水素の量を計測可能である。
【0040】
固液分離機90は、反応器30の固液排出部32から排出された固体及び液体(炭酸鉄及び水)を、固体(炭酸鉄)と液体(水)とに分離するものである。固液分離機90としては、例えば遠心分離機やスクリューコンベヤ、沈殿槽等を採用可能である。
【0041】
固液分離機90により分離された炭酸鉄は、副産物である炭酸鉄を貯蔵する副産物貯蔵設備5に供給される。副産物貯蔵設備5に貯蔵された炭酸鉄は、適宜売却、又は廃棄される。一方、固液分離機90により分離された水は、水タンク10に戻される。これにより、固液分離機90で分離した水を、反応器30での反応に再利用することができる。
【0042】
固液排出部32(反応器30)、固液分離機90及び副産物貯蔵設備5は、固液経路2により接続されている。また、固液分離機90及び水タンク10は、固液経路2により接続されている。
【0043】
制御装置100は、各種の情報の処理を実行可能なものである。制御装置100は、CPUやメモリ等を備える。
図2に示すように、制御装置100は、水素製造装置1の固液供給部31、固液排出部32、二酸化炭素センサ35、容量センサ71及び流量計80に電気的に接続されている。また、制御装置100は、水素製造装置1の各機器(反応器30や加圧用ポンプ50等)に電気的に接続されると共に、上記各機器等の動作を制御可能である。
【0044】
制御装置100は、上記二酸化炭素センサ35、容量センサ71及び流量計80の検出結果を取得すると共に、検出結果に基づいて、水素製造装置1の各機器を動作させて、水素の製造を行う制御を実行可能である。
【0045】
以下では、
図3から
図5までを用いて、水素製造装置1による水素の製造の様子について説明する。
【0046】
本実施形態に係る水素製造装置1は、加圧用ポンプ50で加圧した二酸化炭素(加圧二酸化炭素)を反応器30内に常時供給しながら水素を製造する「ハイスピード制御」(
図4を参照)と、加圧二酸化炭素を水素の反応効率が低下したタイミングで反応器30内に供給する「省エネ制御」(
図5を参照)と、を実行可能である。また、水素製造装置1は、「ハイスピード制御」と「省エネ制御」とを切り替え可能な「制御判断処理」(
図3を参照)を実行可能である。
【0047】
まず、
図3に示す「制御判断処理」について説明する。制御判断処理において、制御装置100は、水素貯留部70の容量センサ71の検出結果に基づいて、「ハイスピード制御」及び「省エネ制御」の何れの制御を実行するかを判断する。
【0048】
ステップS101において、制御装置100は、容量センサ71の検出値に基づいて、水素貯留部70の水素の貯留量が、予め設定された基準貯留量未満であるか否かを判断する。本実施形態では、上記基準貯留量を、水素貯留部70の容量の50%に設定している。なお、基準貯留量としては上述した値に限定されず、任意の値を採用可能である。
【0049】
制御装置100は、水素貯留部70の水素の貯留量が基準貯留量未満である場合(ステップS101:YES)、ステップS102の処理へ移行して「ハイスピード制御」を実行する。一方、制御装置100は、水素貯留部70の水素の貯留量が基準貯留量以上である場合(ステップS101:NO)、ステップS103の処理へ移行して「省エネ制御」を実行する。また、制御装置100は、「ハイスピード制御」及び「省エネ制御」を実行した後、ステップS101の処理へ移行する。
【0050】
次に、
図4に示す「ハイスピード制御」について説明する。ハイスピード制御において、制御装置100は、加圧二酸化炭素を反応器30内に常時供給した状態で、水素の製造を行う。
【0051】
なお、「ハイスピード制御」を開始する時点では、反応器30の内部の原料は空であるものとする。またこの時点では、反応器30の固液供給部31は開放状態とされ、固液排出部32は閉鎖状態とされているものとする。
【0052】
図4に示すステップS111からステップS114までの処理において、制御装置100は、反応器30内に原料を供給すると共に反応器30を動作させ、水素を生成する。具体的には、制御装置100は、水タンク10からの水及び鉄供給装置20からの鉄を、反応器30(固液供給部31)に供給し(ステップS111)、固液供給部31を閉鎖状態にする(ステップS112)。
【0053】
また、制御装置100は、二酸化炭素ボンベ40の開閉手段を開放し、加圧用ポンプ50を動作させて、加圧二酸化炭素を反応器30(気相供給部33)に供給する(ステップS113)。本実施形態では、上記加圧二酸化炭素を供給することで、反応器30内の気圧が高まり、二酸化炭素を水に溶けやすくすることができる。これにより、反応器30内の水(炭酸水)中の二酸化炭素濃度を高め、水中での鉄と二酸化炭素との反応効率を向上させることができる。
【0054】
また、制御装置100は、反応器30を動作(振動)させる(ステップS114)。これにより、反応器30内で鉄を粉砕して鉄の表面積を増大させることで、二酸化炭素との反応効率を向上させて水素を生成することができる。
【0055】
反応器30で生成された水素及び未反応の二酸化炭素の混合気体は、気相排出部34を介して排出されて水素分離膜モジュール60に供給され、水素と二酸化炭素とに分離される。また、上記水素は水素貯留部70に貯留され、二酸化炭素は二酸化炭素ボンベ40に戻される。制御装置100は、ステップS114の処理を実行した後、ステップS115の処理に移行する。
【0056】
ステップS115の処理において、制御装置100は、流量計80の検出結果に基づいて、反応器30での水素の発生が停止したか否かを判断する。本実施形態において、制御装置100は、流量計80が水素の流量を検出しなくなった(流量計80の検出値が概ね0になった)場合、水素の発生が停止したと判断する。この場合、反応器30内の鉄が全て反応に利用されたことが推定される。
【0057】
制御装置100は、反応器30での水素の発生が停止したと判断した場合(ステップS115:YES)、ステップS116の処理へ移行する。一方、制御装置100は、反応器30での水素の発生が停止していないと判断した場合(ステップS115:NO)、ステップS114の処理へ移行する。
【0058】
ステップS116からステップS119までの処理において、制御装置100は、反応器30の動作を停止すると共に、加圧二酸化炭素の供給を停止し、反応器30内の反応物(炭酸鉄及び水)の排出を行う。具体的には、制御装置100は、反応器30の動作を停止すると共に、二酸化炭素ボンベ40の開閉手段を閉鎖させ、加圧用ポンプ50を停止させて加圧二酸化炭素の反応器30(気相供給部33)への供給を停止する(ステップS116)。次に、制御装置100は、固液排出部32を開放状態にし(ステップS117)、反応器30内の炭酸鉄及び水を固液分離機90へ排出する(ステップS118)。上記炭酸鉄及び水の排出後、制御装置100は、固液供給部31を開放状態にすると共に、固液排出部32を閉鎖状態にする(ステップS119)。これにより、反応器30内に新たな原料を供給する準備が完了する。制御装置100は、上記各処理を実行した後、ハイスピード制御を終了する。また制御装置100は、ハイスピード制御の終了後、制御判断処理(
図3を参照)に移行する。
【0059】
上述の如きハイスピード制御によれば、加圧二酸化炭素を反応器30内に常時供給しながら水素の製造を行うことで、反応器30内の水(炭酸水)中の二酸化炭素濃度を常に高く維持することができ、水素の反応効率を向上させることができる。また、ハイスピード制御によれば、反応器30内の鉄が全て反応に利用されたことを、流量計80の検出値に基づいてリアルタイムで(ほとんどダイムラグなく)判断することができ、原料の入れ替えを適切なタイミングで行うことができる。
【0060】
次に、
図5に示す「省エネ制御」について説明する。省エネ制御において、制御装置100は、反応器30内での反応効率が低下した場合に、加圧二酸化炭素を反応器30内に供給して水素の製造を行う。なお、以下では、ハイスピード制御と重複する点については説明を省略する。
【0061】
図5に示すステップS121からステップS124までの処理において、制御装置100は、反応器30内に原料を供給すると共に反応器30を動作させ、水素を生成する。なお、ステップS121からステップS124までの処理は、ステップS123の処理を除いて、ハイスピード制御におけるステップS111からステップS114までの処理と概ね同様である。ステップS123において、制御装置100は、二酸化炭素ボンベ40の開閉手段を開放し、加圧用ポンプ50を動作させて、加圧二酸化炭素を反応器30(気相供給部33)に供給する点はステップS113と同様であるが、一定量(反応器30の気相の体積を満たす量)の加圧二酸化炭素を供給した時点で、二酸化炭素ボンベ40の開閉手段を閉鎖し、加圧用ポンプ50を停止させて、加圧二酸化炭素の反応器30(気相供給部33)への供給を停止する点で、ステップS113の処理と異なる。制御装置100は、例えば二酸化炭素センサ35の検出値に基づいて、上記一定量の加圧二酸化炭素が反応器30に供給されたことを判断可能である。
【0062】
ステップS121、ステップS122及びステップS124の処理は、ステップS111、ステップS112及びステップS114の処理と概ね同様であるので説明を省略する。制御装置100は、上記各処理を実行した後、ステップS125の処理に移行する。
【0063】
ステップS124の処理において反応器30の動作を開始した後、反応器30内で反応が進み水素が生成される。制御装置100は、反応器30内で発生したと推定される水素の量(推定水素発生量)を、単位時間ごとに計測する。上記単位時間としては、例えば30分を採用可能である。
【0064】
ここで水素は、センサにより濃度の測定を直接行うことが困難な場合がある。そこで本実施形態では、二酸化炭素センサ35の検出値(二酸化炭素濃度)に基づいて、反応器30での推定水素発生量を算出している。以下では、二酸化炭素センサ35の検出値に基づいて推定水素発生量を算出する方法について説明する。
【0065】
図6に示すグラフは、容器内に鉄、水及び二酸化炭素を入れて経過を観察した水素発生試験の結果を示すものである。上記グラフでは、水素及び二酸化炭素の量(物質量)と、時間と、の関係を示している。上記グラフで示すように、容器内では、二酸化炭素の消費に伴い、水素の量が増加する。より詳細には、容器内の水素の発生量は、二酸化炭素消費量の略9割(87%~92%)に相当する。例えば、反応開始から300分経過後の二酸化炭素消費量は8.97(mmol)、水素生成量は7.84(mmol)である。
【0066】
本実施形態では、上記二酸化炭素消費量と水素生成量との関係に基づいて、二酸化炭素センサ35の検出値から算出した二酸化炭素消費量の9割の値を、反応器30内で発生したと推定される水素の量(推定水素発生量)として算出する。
【0067】
ステップS125において、制御装置100は、反応器30での単位時間あたりの推定水素発生量が、基準発生量以下であるか否かを判断する。本実施形態では、前回の単位時間(ステップS125での判断の対象となる推定水素発生量の単位時間の1つ前の単位時間)の推定水素発生量の6割の値を、基準発生量として採用している。単位時間あたりの推定水素発生量が、前回の単位時間あたりの推定水素発生量の6割の値以下となると、以降の反応効率が低下する傾向がある(
図6を参照)。このため、単位時間あたりの推定水素発生量が基準発生量以下となった場合、反応器30内での反応効率が低下したことが推定される。
【0068】
制御装置100は、反応器30での単位時間あたりの推定水素発生量が、基準発生量以下であると判断した場合(ステップS125:YES)、ステップS126の処理へ移行する。一方、制御装置100は、反応器30での単位時間あたりの推定水素発生量が、基準発生量を超えていると判断した場合(ステップS125:NO)、ステップS124の処理へ移行する。
【0069】
ステップS126において、制御装置100は、二酸化炭素ボンベ40の開閉手段を開放し、加圧用ポンプ50を動作させて、加圧二酸化炭素を反応器30へ供給する。上記加圧を行うことで、反応器30で生成された水素及び未反応の二酸化炭素の混合気体は、水素分離膜モジュール60により水素と二酸化炭素とに分離可能となる。また、これによれば、分離された水素の流量を流量計80により計測し、上記計測結果に基づいた水素の発生量(水素量)の算出を制御装置100により行うことができる。制御装置100は、ステップS126の処理を実行した後、ステップS127の処理へ移行する。
【0070】
ステップS127において、制御装置100は、流量計80の計測結果に基づく水素量が、反応器30内での推定水素発生量の総量(推定総発生量)を超えたか否かを判断する。ここで、「推定水素発生量の総量」とは、反応器30内に全ての材料が供給されたとき(ステップS123で二酸化炭素の供給が開始されたとき)から、反応器30内で生成された水素に対する推定水素発生量の合計である。なお、後述するステップS129の処理(ステップS129:NO)で、ステップS125の処理へ移行した場合、推定総発生量はリセットされる。
【0071】
流量計80の計測結果に基づく水素量が、推定総発生量を超えた場合、推定総発生量に相当する量の水素が、反応器30から排出されたことが推定される。制御装置100は、流量計80の計測結果に基づく水素量が推定総発生量を超えたと判断した場合には、ステップS128の処理に移行する。一方、制御装置100は、流量計80の計測結果に基づく水素量が推定総発生量以下であると判断した場合には、ステップS126の処理に移行する(加圧二酸化炭素の供給を継続する)。
【0072】
ステップS128において、制御装置100は、二酸化炭素ボンベ40の開閉手段を閉鎖し、加圧用ポンプ50による加圧二酸化炭素の反応器30への供給を停止する。制御装置100は、ステップS128の処理を実行した後、ステップS129の処理へ移行する。
【0073】
ステップS129において、制御装置100は、二酸化炭素センサ35の検出結果に基づいて、反応器30での水素の発生が停止したか否かを判断する。本実施形態において、制御装置100は、二酸化炭素センサ35の検出結果に基づく推定水素発生量が概ね0になった場合、水素の発生が停止したと判断する。この場合、反応器30への二酸化炭素の供給は完了していることから、反応器30内の鉄が反応し尽くした結果、水素の発生が停止したことが推定される。
【0074】
制御装置100は、反応器30での水素の発生が停止したと判断した場合(ステップS129:YES)、ステップS130の処理へ移行する。一方、制御装置100は、反応器30での水素の発生が停止していないと判断した場合(S129:NO)、ステップS125の処理へ移行する。
【0075】
ステップS130からステップS133までの処理は、ハイスピード制御におけるステップS116からステップS119までの処理と概ね同様であるので、説明を省略する。なお、ステップS130においては、ステップS128の段階で既に二酸化炭素ボンベ40の開閉手段を閉鎖し、加圧二酸化炭素の供給を停止させているため、反応器30の動作を停止する処理を行うだけでよい点がステップS116と異なる。制御装置100は、上記各処理を実行した後、省エネ制御を終了する。また制御装置100は、省エネ制御の終了後、制御判断処理(
図3を参照)に移行する。
【0076】
上述の如き省エネ制御によれば、加圧二酸化炭素の供給を少なくすることで、省エネルギー化、省コスト化を図ることができる。また、水素の反応効率が低下したタイミングで、加圧二酸化炭素を供給することで、水素の反応効率の低下を抑制することができる。
【0077】
上述の如き水素製造装置1によれば、水素貯留部70の水素量が基準貯留量に達するまでは(ステップS101:YES)、ハイスピード制御を実行して効率的に水素の製造を行い、水素貯留部70の水素量が基準貯留量に達した際には(ステップS101:NO)、省エネ制御を実行して、省エネルギー化を図ることができる。
【0078】
また、本実施形態によれば、水素分離膜モジュール60により分離された水素の流量を流量計80により計測することで、くず鉄等の品質が不安定な原料を使用した場合でも、好適に水素を製造することができる。すなわち、原料の品質がばらつく場合、同じ量の原料を水槽内に投入しても、水素の発生量にばらつきが生じ易くなる。このため、従来の水素製造装置では、製造にあたり反応時間をどの程度に設定すればよいかを事前に予測し難く、水素製造装置の制御や追加の原料の投入の判断が困難であった。一方、本実施形態に係る水素製造装置1によれば、水素分離膜モジュール60により分離された水素の流量を流量計80により計測することで、反応器30での水素の発生量を把握し、原料の追加や排出のタイミングを制御することができ、好適に水素を製造することができる。
【0079】
また、本実施形態によれば、反応器30での水素の発生が停止したと判断した場合に(ステップS115:YES、ステップS129:YES)、反応器30内の反応物を排出する構成としているので、鉄を最後まで反応させることができる。またその結果、副産物である炭酸鉄としての純度が上がり、炭酸鉄の活用や売却がし易くなる。
【0080】
以上の如く、本実施形態に係る水素製造装置1は、
水中で金属(鉄)と二酸化炭素とを反応させて水素を生成する反応器30と、
前記反応器30に二酸化炭素を供給する二酸化炭素供給部(加圧用ポンプ50)と、
前記反応器30内で生成された水素と二酸化炭素とを分離する分離部(水素分離膜モジュール60)と、
前記水素分離膜モジュール60により分離された水素の量を計測する水素量計測部(流量計80)と、
を具備するものである。
【0081】
このように構成することにより、水素を好適に製造することができる。すなわち、水素分離膜モジュール60により分離された水素の量(流量)を流量計80により計測することで、反応器30での水素の発生量を把握することができ、水素を好適に製造することができる。
【0082】
また、前記加圧用ポンプ50は、
加圧した二酸化炭素を前記反応器30に供給可能であり、
前記水素分離膜モジュール60は、
前記加圧用ポンプ50により前記反応器30を介して供給された二酸化炭素の圧力により、水素と二酸化炭素とを分離するものである。
【0083】
このように構成することにより、水素分離膜モジュール60での水素の分離に用いられる加圧二酸化炭素を利用して、反応器30内の二酸化炭素濃度を高くし、水素の反応効率を向上させることができる。
【0084】
また、本実施形態に係る水素製造装置1は、
前記反応器30内の気体の量を検出する気相検出部(二酸化炭素センサ35)と、
前記気相検出部の検出結果に基づいて、前記反応器内の水素の発生量を推定する推定部(制御装置100)と、
を具備するものである。
【0085】
このように構成することにより、反応器30内での水素の発生量の推定結果に基づいて、例えば原料の供給等、水素の製造に関する制御を行うことができる。また本実施形態では、加圧用ポンプ50で加圧された二酸化炭素の圧力を用いて、水素分離膜モジュール60で水素を分離する構成であるため、加圧用ポンプ50による加圧を行っていない場合は流量計80による水素の量の測定を行うことができないが、気相検出部を設けたことで、加圧用ポンプ50による加圧を行っていない場合でも、反応器30内での水素の発生量を推定することができる。
【0086】
また、前記気相検出部は、
前記反応器30内の二酸化炭素の量を検出する二酸化炭素検出部(二酸化炭素センサ35)を含むものである。
【0087】
このように構成することにより、反応器30内の水素の発生量を好適に推定することができる。すなわち、水素はセンサによる濃度の測定が困難な場合があり、反応器30内の水素の発生量は直接測定し難い。そこで、二酸化炭素センサ35の検出結果に基づいて反応器30内の水素の発生量を推定することで、反応器30内の水素の発生量を好適に推定することができる。
【0088】
また、前記反応器30は、
鉄を粉砕させる機構を備え、
前記反応器30と前記加圧用ポンプ50とを接続する経路(第一経路3a)と、前記反応器30と前記水素分離膜モジュール60とを接続する経路(第二経路3b)と、の少なくとも一方は、防振性を有する配管により形成されているものである。
【0089】
このように構成することにより、反応器30で発生する振動が、加圧用ポンプ50や水素分離膜モジュール60に影響することを抑制することができる。
【0090】
また、本実施形態に係る水素製造方法は、
反応器30内に、水及び鉄を供給する原料供給工程(ステップS111、ステップS121)と、
前記反応器内に二酸化炭素を供給すると共に、前記反応器の動作を開始し、前記反応器内で水素を生成する水素生成工程(ステップS113、ステップS114、ステップS123、ステップS124)と、
前記反応器30で生成された水素の量を計測する計測部(流量計80、二酸化炭素センサ35)の計測結果を用いて、前記反応器30で所定期間内に(単位時間あたりに)生成された水素の量が第一の量以下であるか(水素の発生が停止したか)否かを判断する生成量判断工程(ステップS115、ステップS129)と、
前記生成量判断工程において、前記反応器30で所定期間内に生成された水素の量が前記第一の量以下である(水素の発生が停止した)と判断された場合に前記反応器30の動作を停止する停止工程(ステップS116、ステップS130)と、
を具備するものである。
【0091】
このように構成することにより、水素を好適に製造することができる。すなわち、計測部(流量計80、二酸化炭素センサ35)の計測結果に基づいて、反応器30での水素の発生量を把握して水素の製造のための制御を行うことができ、水素を好適に製造することができる。
【0092】
また、本実施形態に係る水素製造方法は、
前記水素生成工程(ステップS113、ステップS114)において、
加圧した二酸化炭素を前記反応器30内に常時供給する第一制御(ハイスピード制御)を実行可能であるものである。
【0093】
このように構成することにより、加圧した二酸化炭素を反応器30内に常時供給することで、反応器30内の水(炭酸水)中の二酸化炭素濃度を常に高く維持することができ、水素の反応効率を向上させることができる。
【0094】
また、前記計測部は、
前記反応器30内の水素と二酸化炭素とを分離することで得られた水素の量を計測する水素量計測部(流量計80、制御装置100)と、
前記反応器30内の気体の量に基づいて前記反応器30内の水素の発生量を推定する推定部(二酸化炭素センサ35、制御装置100)と、を含み、
前記水素生成工程(ステップS123、ステップS124)において、
前記推定部(二酸化炭素センサ35、制御装置100)の推定結果である推定水素発生量が、前記第一の量よりも大きい第二の量(前回の単位時間あたりの推定水素発生量の6割の値)以下である場合に、加圧した二酸化炭素を供給し、
前記流量計80の計測結果が、前記反応器30内での前記推定水素発生量の総量を超えた場合に、加圧した二酸化炭素の供給を停止する第二制御(省エネ制御)を実行可能であるものである。
【0095】
このように構成することにより、推定水素発生量が第二の量以下となり、水素の反応効率が低下したタイミングで加圧二酸化炭素を供給することで、水素の反応効率の低下を抑制することができる。また、加圧二酸化炭素の供給を常時行うのではなく、水素の反応効率が低下したタイミングで行うことで、省エネルギー化を図ることができる。
【0096】
また、本実施形態に係る水素製造方法は、
前記水素生成工程で生成された水素が貯留される水素貯留部70の水素の貯留量が、基準貯留量未満である場合は前記ハイスピード制御を実行し、
前記水素貯留部70の水素の貯留量が、前記基準貯留量以上である場合は前記省エネ制御を実行するものである。
【0097】
このように構成することにより、水素貯留部70の水素の貯留量が基準貯留量に達するまでは(ステップS101:YES)、ハイスピード制御を実行して効率的に水素の製造を行い、水素貯留部70の水素量が基準貯留量に達した際には(ステップS101:NO)、省エネ制御を実行して、省エネルギー化を図ることができる。
【0098】
なお、本実施形態に係る加圧用ポンプ50は、本発明に係る二酸化炭素供給部の実施の一形態である。
また、本実施形態に係る水素分離膜モジュール60は、本発明に係る分離部の実施の一形態である。
また、本実施形態に係る二酸化炭素センサ35は、本発明に係る二酸化炭素検出部の実施の一形態である。
また、本実施形態に係る流量計80及び二酸化炭素センサ35は、本発明に係る計測部の実施の一形態である。
また、本実施形態に係る制御装置100は、本発明に係る推定部の実施の一形態である。
【0099】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の技術的思想の範囲内で適宜の変更が可能である。例えば、水素製造装置1を構成する各部の構成等は、上述したものに限定されず、適宜変更可能である。水素製造装置1においては、液体、気体、固体の供給および排出に、
図1に図示されないポンプやコンベヤ等の種々の機構を適宜使用可能である。また、上記説明で例示した具体的な数値は一例であり、任意に変更することが可能である。
【0100】
また、本実施形態では、水素製造装置1に、水タンク10、鉄供給装置20、二酸化炭素ボンベ40、水素貯留部70及び固液分離機90を含めているが、上記各部の一部、又は全部を水素製造装置1に含めなくてもよい。
【0101】
また、本実施形態では、制御判断処理において、水素貯留部70の水素の貯留量に応じて、ハイスピード制御及び省エネ制御の切り替えを行う例を示したが、このような態様に限定されない。例えば、任意のタイミングでハイスピード制御及び省エネ制御の切り替えを行うようにしてもよい。この場合は、作業者による操作等で、制御の切り替えを行うようにしてもよい。
【0102】
また、本実施形態では、反応器30の水素の発生が停止した(水素の発生量が概ね0になった)と判断された場合に(ステップS115:YES、ステップS125:YES)、反応器30の停止及び材料の排出を行う構成としているが、このような態様に限定されない。例えば、反応器30の水素の発生量が、0より大きい値の所定の基準以下となれば、反応器30の停止及び材料の排出を行う構成としてもよい。
【0103】
また、本実施形態では、二酸化炭素センサ35の検出値に基づいて、反応器30での推定水素発生量を算出した例を示したが、このような態様に限定されない。例えば、水素の濃度を測定可能なセンサを用いて、反応器30での推定水素発生量を算出するようにしてもよい。
【0104】
また、本実施形態では、反応器30のうち気相供給部33及び気相排出部34を常時開放させた例を示しているが、このような態様に限定されない。例えば、気相供給部33及び気相排出部34を、固液供給部31及び固液排出部32と概ね同様に開放状態と閉鎖状態とに切替可能な構成に形成してもよい。この場合、例えば省エネ制御において、二酸化炭素の供給や水素の排出を行わない場合に気相供給部33及び気相排出部34を閉鎖状態にするようにしてもよい。
【0105】
また、本実施形態では、水素製造装置1の固液供給部31や固液排出部32の開閉や、原料の供給等を自動で行う例を示したが、上記動作等を手動で行うようにしてもよい。
【0106】
また、本実施形態では、原料として鉄を用いているが、鉄以外の金属を用いてもよい。鉄以外の金属としては、アルミニウム、マグネシウム、チタン、亜鉛、マンガン、ニッケル、クロムなどが使用できる。また、これらのうち2種類以上の混合物でもよい。
【0107】
また、本実実施形態では、反応器30に振動ミルを採用しているが、金属を粉砕できる装置であれば、他の装置を採用してもよい。反応器30としては、例えば、アトライタやビーズミル、ハンマーミル等の装置を採用可能である。
【符号の説明】
【0108】
1 水素製造装置
30 反応器
50 加圧用ポンプ
60 水素分離膜モジュール
80 流量計
100 制御装置