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特開2024-136423筆記具のクリップ部を含む樹脂成形品を製造する製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024136423
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】筆記具のクリップ部を含む樹脂成形品を製造する製造方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 45/36 20060101AFI20240927BHJP
   B29C 45/17 20060101ALI20240927BHJP
   B43K 25/02 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
B29C45/36
B29C45/17
B43K25/02 200
B43K25/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023047537
(22)【出願日】2023-03-24
(71)【出願人】
【識別番号】303022891
【氏名又は名称】株式会社パイロットコーポレーション
(71)【出願人】
【識別番号】000111890
【氏名又は名称】パイロットインキ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】猪飼 智哉
(72)【発明者】
【氏名】西田 夏美
【テーマコード(参考)】
2C041
4F202
4F206
【Fターム(参考)】
2C041AA01
2C041AB06
2C041AC02
4F202AG14
4F202AH53
4F202AM32
4F202CA11
4F202CB01
4F202CK54
4F202CK75
4F206AG14
4F206AH53
4F206AM32
4F206AR13
4F206JA07
4F206JL02
4F206JQ81
(57)【要約】
【課題】筆記具のクリップ部を含む樹脂成形品を製造する製造方法であって、クリップ部の形状精度を高めることができる製造方法を提供すること。
【解決手段】 本発明は、筆記具のクリップ部を含む樹脂成形品を製造する製造方法であって、右方側モールドの右方空洞を区画する空洞側内面の一部を構成する一方で、当該右方空洞の内方側へと突出移動可能な右方補助部材と、左方側モールドの左方空洞を区画する空洞側内面の一部を構成する一方で、当該左方空洞の内方側へと突出移動可能な左方側補助部材と、を用いる。成形工程の後、右方側モールドと左方側モールドとを互いから離隔して右方空洞と左方空洞とを互いから離隔させる一方で、右方補助部材を右方空洞の内方側へと突出させながら左方補助部材を左方空洞の内方側へと突出させて、樹脂成形品が右方補助部材と左方補助部材とによって挟持された状態を維持する。
【選択図】 図14
【特許請求の範囲】
【請求項1】
筆記具のクリップ部を含む樹脂成形品を製造する製造方法であって、
前記クリップ部の右方の輪郭に対応する右方空洞を有する右方側モールドと、
前記クリップ部の左方の輪郭に対応する左方空洞を有する左方側モールドと、
前記右方側モールドの前記右方空洞を区画する空洞側内面の一部を構成する一方で、当該右方空洞の内方側へと突出移動可能な右方補助部材と、
前記左方側モールドの前記左方空洞を区画する空洞側内面の一部を構成する一方で、当該左方空洞の内方側へと突出移動可能な左方側補助部材と、
を用いて、
前記右方側モールドと前記左方側モールドとを隣接させて、前記右方空洞と前記左方空洞とによって成形空間を区画する型閉工程と、
前記型閉工程の後、前記成形空間内に樹脂材料を射出して、前記樹脂成形品を成形する成形工程と、
前記成形工程の後、前記右方側モールドと前記左方側モールドとを互いから離隔して前記右方空洞と前記左方空洞とを互いから離隔させる一方で、前記右方補助部材を前記右方空洞の内方側へと突出させながら前記左方補助部材を前記左方空洞の内方側へと突出させて、前記樹脂成形品が前記右方補助部材と前記左方補助部材とによって挟持された状態を維持する第1型開工程と、
前記第1型開工程の後、前記右方補助部材及び前記左方補助部材を前記樹脂成形品から離隔する第2型開工程と、
を備えたことを特徴とする製造方法。
【請求項2】
前記成形空間が区画された状態において、前記右方補助部材の一部である右方当接部と前記左方補助部材の一部である左方当接部とが、互いに当接しており、
前記第1型開工程の間も、前記右方当接部と前記左方当接部とは、互いに当接している
ことを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記成形空間が区画された状態において、前記右方補助部材の一部である右方当接部と前記左方補助部材の一部である左方当接部との両方が、前記右方側モールド及び前記左方側モールドから独立して設けられた位置決めストッパ部に当接しており、
前記第1型開工程の間も、前記右方当接部と前記左方当接部とは、前記位置決めストッパ部に当接している
ことを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
【請求項4】
前記右方補助部材は、弾性部材の付勢力によって、前記右方空洞の内方側へと突出移動可能となっており、
前記左方補助部材も、弾性部材の付勢力によって、前記左方空洞の内方側へと突出移動可能となっている
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の製造方法。
【請求項5】
前記クリップ部は、裏面側に間隙狭窄用凸部を有しており、
前記第1型開工程において、前記間隙狭窄用凸部が、前記右方補助部材と前記左方補助部材とによって挟持される
ことを特徴とする請求項1乃至3に記載の製造方法。
【請求項6】
前記クリップ部は、裏面側に間隙狭窄用凸部を有しており、
前記第1型開工程において、前記間隙狭窄用凸部が、前記右方補助部材と前記左方補助部材とによって挟持される
ことを特徴とする請求項4に記載の製造方法。
【請求項7】
筆記具のクリップ部を含む樹脂成形品を製造する製造装置であって、
前記クリップ部の右方の輪郭に対応する右方空洞を有する右方側モールドと、
前記クリップ部の左方の輪郭に対応する左方空洞を有する左方側モールドと、
前記右方側モールドの前記右方空洞を区画する空洞側内面の一部を構成する一方で、当該右方空洞の内方側へと突出移動可能な右方補助部材と、
前記左方側モールドの前記左方空洞を区画する空洞側内面の一部を構成する一方で、当該左方空洞の内方側へと突出移動可能な左方側補助部材と、
を備え、
前記右方側モールドと前記左方側モールドとは、互いに隣接するように移動されて、前記右方空洞と前記左方空洞とによって成形空間を区画するようになっており、及び、互いから離隔するように移動されて、前記成形空間を開放するようになっており、
前記成形空間が開放される際において、前記右方補助部材が前記右方空洞の内方側へと突出されると共に前記左方補助部材が前記左方空洞の内方側へと突出され、成形後の樹脂成形品が前記右方補助部材と前記左方補助部材とによって挟持された状態が一時的に維持されるようになっている
ことを特徴とする製造装置。
【請求項8】
前記成形空間が区画された状態において、前記右方補助部材の一部である右方当接部と前記左方補助部材の一部である左方当接部とが、互いに当接するようになっており、
前記樹脂成形品が前記右方補助部材と前記左方補助部材とによって挟持された状態が一時的に維持されている間も、前記右方当接部と前記左方当接部とは、互いに当接するようになっている
ことを特徴とする請求項7に記載の製造装置。
【請求項9】
前記右方側モールド及び前記左方側モールドから独立して設けられた位置決めストッパ部
を更に備え、
前記成形空間が区画された状態において、前記右方補助部材の一部である右方当接部と前記左方補助部材の一部である左方当接部との両方が、前記位置決めストッパ部に当接するようになっており、
前記樹脂成形品が前記右方補助部材と前記左方補助部材とによって挟持された状態が一時的に維持されている間も、前記右方当接部と前記左方当接部とは、前記位置決めストッパ部に当接するようになっている
ことを特徴とする請求項7に記載の製造装置。
【請求項10】
前記右方補助部材は、弾性部材の付勢力によって、前記右方空洞の内方側へと突出移動可能となっており、
前記左方補助部材も、弾性部材の付勢力によって、前記左方空洞の内方側へと突出移動可能となっている
ことを特徴とする請求項7乃至9のいずれかに記載の製造装置。
【請求項11】
前記クリップ部は、裏面側に間隙狭窄用凸部を有しており、
前記成形空間が開放される際において、前記間隙狭窄用凸部が前記右方補助部材と前記左方補助部材とによって挟持された状態が一時的に維持されるようになっている
ことを特徴とする請求項7乃至9に記載の製造装置。
【請求項12】
前記クリップ部は、裏面側に間隙狭窄用凸部を有しており、
前記成形空間が開放される際において、前記間隙狭窄用凸部が前記右方補助部材と前記左方補助部材とによって挟持された状態が一時的に維持されるようになっている
ことを特徴とする請求項10に記載の製造装置。
【請求項13】
筆記具のクリップ部を含む樹脂成形品であって、
前記クリップ部は、裏面側に間隙狭窄用凸部を有しており、
請求項5に記載の方法によって製造された
ことを特徴とする樹脂成形品。
【請求項14】
筆記具のクリップ部を含む樹脂成形品であって、
前記クリップ部は、裏面側に間隙狭窄用凸部を有しており、
前記間隙狭窄用凸部の左右両側の各々に、0.005mm~0.3mmの深さの圧接跡ないし当接跡が形成されている
ことを特徴とする樹脂成形品。
【請求項15】
請求項13または14に記載の樹脂成形品を含む筆記具。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、筆記具のクリップ部を含む樹脂成形品を製造する製造方法に関する。また、本発明は、筆記具のクリップ部を含む樹脂成形品を製造する製造装置に関する。更に、本発明は、当該製造方法ないし当該製造装置によって製造された樹脂成形品に関する。
【背景技術】
【0002】
ボールペン等の筆記具は、従来より様々なデザインを有する商品が開発され販売されている。
【0003】
一般的な構成では、筆記具は、前後方向(長手方向)に延びるクリップ部を有している(図1乃至図3参照)。クリップ部は、通常、表面側には滑らかなデザインが採用される(商品ブランド名が印刷されることもある)一方で、裏面側には、ポケット等の布片に保持(クリップ)されるために軸筒側の表面との間の間隙を狭めるための間隙狭窄用凸部(「玉部」と呼ばれる)が設けられている。
【0004】
クリップ部は、ペン先の出没機能を有する筆記具においては、当該出没機能の操作のためのノック部材を兼ねることもある。後述する実施例は、そのようなノック部材の機能を兼ねるものである。もっとも、本明細書における「クリップ部」は、少なくとも本願出願の時点では、そのようなノック部材としての機能の有無によって限定されない。
【0005】
クリップ部を含む樹脂成形品は、合成樹脂(例えば、ポリカーボネート樹脂)の成形体により得られる。
【0006】
より具体的には、クリップ部の右方の輪郭に対応する右方空洞を有する右方側モールドと、クリップ部の左方の輪郭に対応する左方空洞を有する左方側モールドと、を用いて、右方側モールドと左方側モールドとを隣接させて、右方空洞と左方空洞とによって成形空間を区画する型閉工程と、成形空間内に樹脂材料を射出して樹脂成形品を成形する成形工程と、右方側モールドと左方側モールドとを互いから離隔して樹脂成形品を取り出す型開工程と、を備えた製造方法によって製造される。
【0007】
そのような製造方法及び製造装置は、例えば、特許文献1に記載されている。特許文献1の図3及び段落0011の記載によれば、クリップ部を含む樹脂成形品について、左右方向の中央面で2分割して、それらの割り型を用いた射出成型によって量産可能である旨が説明されている。
【0008】
特許文献2においても、概ね同様の説明がなされている。特許文献2の図1図2図5及び図7並びに段落0008の記載によれば、クリップ部を含む樹脂成形品について、左右方向の中央面で2分割して、それらの割り型であるキャビティブロックを用いた射出成型が可能である旨が説明されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】実開平7-5785号公報
【特許文献2】特開2010-260210号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本件発明者は、前述したような従来の製造方法では、クリップ部の形状精度が不十分な場合が生じ得ることを知見した。
【0011】
具体的には、右方側モールドと左方側モールドとを互いから離隔して樹脂成形品を取り出す型開工程において、樹脂成形品が右方側モールド及び左方側モールドの各々から離隔するタイミングが完全に同時でない場合があり得て、そのような場合、樹脂成形品が右方側モールド及び左方側モールドのいずれか一方のみに付着した状態となり得る。この時、付着が継続している右方側モールドまたは左方側モールドが開放動作のために更に移動すると、樹脂成形品は当該移動の影響を受けて(くっついたまま一緒に移動してしまって)、不所望の曲がりが発生し得る。
【0012】
このような曲がりは、筆記具としての美観を損ねてしまう。筆記具の美観に対する消費者の感覚は、極めて繊細であり、製品精度を下げれば商品としての人気上昇/売上上昇の障害となり得る。一方で、製品精度を上げれば不良品率が上がることとなり高コストに繋がり得る。
【0013】
また、一方のみのモールドとの付着継続の程度によっては、樹脂成形品に不所望の「擦れキズ」(抜けキズ)が付いてしまう可能性もある(当然、不良品となる)。これは、特に樹脂成形品が微細な凹凸模様のデザインを有するような場合に、問題となり得る。
【0014】
更に、クリップ部がノック部材を兼ねる場合には、曲がりの程度によって、クリップ部の移動不良(例えば軸筒側表面に対する摺動不良)が発生する可能性もある(当然、不良品となる)。
【0015】
本件発明者は、様々な実験を介して、型開工程の実施について、樹脂成形品が十分に固まった後(十分に固まるであろうと予測される所定時間の経過後)まで待つことで、前述のような問題発生をある程度回避できることを知見した。しかしながら、そのような回避策は、製造時間の短縮化を阻害するし、前述のような問題発生を完全に(または大幅に)回避するまでには至らなかった。
【0016】
本発明は、以上のような背景に基づいてなされたものであり、その目的とするところは、筆記具のクリップ部を含む樹脂成形品を製造する製造方法であって、クリップ部の形状精度を高めることができる製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明は、筆記具のクリップ部を含む樹脂成形品を製造する製造方法であって、前記クリップ部の右方の輪郭に対応する右方空洞を有する右方側モールドと、前記クリップ部の左方の輪郭に対応する左方空洞を有する左方側モールドと、前記右方側モールドの前記右方空洞を区画する空洞側内面の一部を構成する一方で、当該右方空洞の内方側へと突出移動可能な右方補助部材と、前記左方側モールドの前記左方空洞を区画する空洞側内面の一部を構成する一方で、当該左方空洞の内方側へと突出移動可能な左方側補助部材と、を用いて、前記右方側モールドと前記左方側モールドとを隣接させて、前記右方空洞と前記左方空洞とによって成形空間を区画する型閉工程と、前記型閉工程の後、前記成形空間内に樹脂材料を射出して、前記樹脂成形品を成形する成形工程と、前記成形工程の後、前記右方側モールドと前記左方側モールドとを互いから離隔して前記右方空洞と前記左方空洞とを互いから離隔させる一方で、前記右方補助部材を前記右方空洞の内方側へと突出させながら前記左方補助部材を前記左方空洞の内方側へと突出させて、前記樹脂成形品が前記右方補助部材と前記左方補助部材とによって挟持された状態を維持する第1型開工程と、前記第1型開工程の後、前記右方補助部材及び前記左方補助部材を前記樹脂成形品から離隔する第2型開工程と、を備えたことを特徴とする製造方法である。
【0018】
本発明方法によれば、右方側モールドと左方側モールドとを互いから離隔して右方空洞と左方空洞とを互いから離隔させる際に、右方補助部材を右方空洞の内方側へと突出させながら左方補助部材を左方空洞の内方側へと突出させて、樹脂成形品が右方補助部材と左方補助部材とによって挟持された状態が維持される。これにより、樹脂成形品がそのように挟持された状態で、当該挟持部位を除いた全ての領域が先行して右方側モールド及び左方側モールドから離隔されることとなるため、樹脂成形品が右方側モールドまたは左方側モールドとの付着継続のために曲がってしまうということが顕著に抑制される。
【0019】
本発明方法において、前記成形空間が区画された状態において、前記右方補助部材の一部である右方当接部と前記左方補助部材の一部である左方当接部とが、互いに当接しており、前記第1型開工程の間も、前記右方当接部と前記左方当接部とは、互いに当接していることが好ましい。
【0020】
この場合、成形空間が区画された状態において、右方補助部材と左方補助部材とを互いに対して付勢させておくことが可能となる。このため、右方補助部材及び左方補助部材の各々の空洞側内面の一部としての機能(空洞側内面としての形状精度)を高めることが容易である。
【0021】
あるいは、本発明方法において、前記成形空間が区画された状態において、前記右方補助部材の一部である右方当接部と前記左方補助部材の一部である左方当接部との両方が、前記右方側モールド及び前記左方側モールドから独立して設けられた位置決めストッパ部に当接しており、前記第1型開工程の間も、前記右方当接部と前記左方当接部とは、前記位置決めストッパ部に当接していることが好ましい。
【0022】
この場合、成形空間が区画された状態において、右方補助部材と左方補助部材とを位置決めストッパ部に対して付勢させておくことが可能となる。このため、右方補助部材及び左方補助部材の各々の空洞側内面の一部としての機能(空洞側内面としての形状精度)を高めることが容易である。更に、この場合、右方補助部材の付勢力と左方補助部材の付勢力との間に不均衡が生じても、一方が他方を押し込むということが無いため、より一層高い曲がり発生防止効果が期待できる。
【0023】
また、本発明方法において、前記右方補助部材は、弾性部材(例えばコイルバネ)の付勢力によって、前記右方空洞の内方側へと突出移動可能となっており、前記左方補助部材も、弾性部材(例えばコイルバネ)の付勢力によって、前記左方空洞の内方側へと突出移動可能となっていることが好ましい。
【0024】
これによれば、極めてシンプル且つコンパクトな構成で、右方補助部材及び左方補助部材の突出移動性能を実現することができる。
【0025】
本件発明者の実際の検証によれば、第1型開工程において右方補助部材と左方補助部材とによって挟持される部位には、極めて浅い(具体的には0.005mm~0.3mmの深さの、好適には0.02mm~0.05mmの深さの)圧接跡ないし当接跡が残る。(逆に言えば、そのような極めて浅い圧接跡ないし当接跡が残されている場合、本発明方法によって製造されたものと考えられる。)そのような圧接跡ないし当接跡は、目立たない部位において残ることが好ましい。一般に、クリップ部は、裏面側に間隙狭窄用凸部を有しており、当該間隙狭窄用凸部は、目立たない部位である。従って、第1型開工程において、当該間隙狭窄用凸部が、右方補助部材と左方補助部材とによって挟持されることが好ましい。
【0026】
また、本発明は、筆記具のクリップ部を含む樹脂成形品を製造する製造装置であって、前記クリップ部の右方の輪郭に対応する右方空洞を有する右方側モールドと、前記クリップ部の左方の輪郭に対応する左方空洞を有する左方側モールドと、前記右方側モールドの前記右方空洞を区画する空洞側内面の一部を構成する一方で、当該右方空洞の内方側へと突出移動可能な右方補助部材と、前記左方側モールドの前記左方空洞を区画する空洞側内面の一部を構成する一方で、当該左方空洞の内方側へと突出移動可能な左方側補助部材と、
を備え、前記右方側モールドと前記左方側モールドとは、互いに隣接するように移動されて、前記右方空洞と前記左方空洞とによって成形空間を区画するようになっており、及び、互いから離隔するように移動されて、前記成形空間を開放するようになっており、前記成形空間が開放される際において、前記右方補助部材が前記右方空洞の内方側へと突出されると共に前記左方補助部材が前記左方空洞の内方側へと突出され、成形後の樹脂成形品が前記右方補助部材と前記左方補助部材とによって挟持された状態が一時的に維持されるようになっていることを特徴とする製造装置である。
【0027】
本発明装置によれば、成形空間が開放される際において、右方補助部材が右方空洞の内方側へと突出されると共に左方補助部材が左方空洞の内方側へと突出され、成形後の樹脂成形品が右方補助部材と左方補助部材とによって挟持された状態が一時的に維持されるようになっている。これにより、樹脂成形品がそのように挟持された状態で、当該挟持部位を除いた全ての領域が先行して右方側モールド及び左方側モールドから離隔されることとなるため、樹脂成形品が右方側モールドまたは左方側モールドとの付着継続のために曲がってしまうということが顕著に抑制される。
【0028】
本発明装置において、前記成形空間が区画された状態において、前記右方補助部材の一部である右方当接部と前記左方補助部材の一部である左方当接部とが、互いに当接するようになっており、前記樹脂成形品が前記右方補助部材と前記左方補助部材とによって挟持された状態が一時的に維持されている間も、前記右方当接部と前記左方当接部とは、互いに当接するようになっていることが好ましい。
【0029】
この場合、成形空間が区画された状態において、右方補助部材と左方補助部材とを互いに対して付勢させておくことが可能となる。このため、右方補助部材及び左方補助部材の各々の空洞側内面の一部としての機能(空洞側内面としての形状精度)を高めることが容易である。
【0030】
あるいは、本発明装置において、前記右方側モールド及び前記左方側モールドから独立して設けられた位置決めストッパ部を更に備え、前記成形空間が区画された状態において、前記右方補助部材の一部である右方当接部と前記左方補助部材の一部である左方当接部との両方が、前記位置決めストッパ部に当接するようになっており、前記樹脂成形品が前記右方補助部材と前記左方補助部材とによって挟持された状態が一時的に維持されている間も、前記右方当接部と前記左方当接部とは、前記位置決めストッパ部に当接するようになっていることが好ましい。
【0031】
この場合、成形空間が区画された状態において、右方補助部材と左方補助部材とを位置決めストッパ部に対して付勢させておくことが可能となる。このため、右方補助部材及び左方補助部材の各々の空洞側内面の一部としての機能(空洞側内面としての形状精度)を高めることが容易である。更に、この場合、右方補助部材の付勢力と左方補助部材の付勢力との間に不均衡が生じても、一方が他方を押し込むということが無いため、より一層高い曲がり発生防止効果が期待できる。
【0032】
また、本発明装置において、前記右方補助部材は、弾性部材(例えばコイルバネ)の付勢力によって、前記右方空洞の内方側へと突出移動可能となっており、前記左方補助部材も、弾性部材(例えばコイルバネ)の付勢力によって、前記左方空洞の内方側へと突出移動可能となっていることが好ましい。
【0033】
これによれば、極めてシンプル且つコンパクトな構成で、右方補助部材及び左方補助部材の突出移動性能を実現することができる。
【0034】
また、前述のように、本件発明者の実際の検証によれば、右方補助部材と左方補助部材とによって挟持される部位には、極めて浅い(具体的には0.005mm~0.3mmの深さの)圧接跡ないし当接跡が残る。従って、間隙狭窄用凸部が、右方補助部材と左方補助部材とによって挟持されることが好ましい。
【0035】
また、本発明は、本発明方法によって製造された樹脂成形品である。
【0036】
更に、本発明は、本発明方法によって製造された樹脂成形品を含む筆記具である。
【発明の効果】
【0037】
本発明方法によれば、右方側モールドと左方側モールドとを互いから離隔して右方空洞と左方空洞とを互いから離隔させる際に、右方補助部材を右方空洞の内方側へと突出させながら左方補助部材を左方空洞の内方側へと突出させて、樹脂成形品が右方補助部材と左方補助部材とによって挟持された状態が維持される。これにより、樹脂成形品がそのように挟持された状態で、当該挟持部位を除いた全ての領域が先行して右方側モールド及び左方側モールドから離隔されることとなるため、樹脂成形品が右方側モールドまたは左方側モールドとの付着継続のために曲がってしまうということが顕著に抑制される。
【0038】
本発明装置によれば、成形空間が開放される際において、右方補助部材が右方空洞の内方側へと突出されると共に左方補助部材が左方空洞の内方側へと突出され、成形後の樹脂成形品が右方補助部材と左方補助部材とによって挟持された状態が一時的に維持されるようになっている。これにより、樹脂成形品がそのように挟持された状態で、当該挟持部位を除いた全ての領域が先行して右方側モールド及び左方側モールドから離隔されることとなるため、樹脂成形品が右方側モールドまたは左方側モールドとの付着継続のために曲がってしまうということが顕著に抑制される。
【図面の簡単な説明】
【0039】
図1】本発明方法によって製造される樹脂成形品を含む筆記具の概略斜視図である。
図2図1の筆記具の側面図である。
図3図1の筆記具の縦断面図である。
図4図1の筆記具の部品であって、クリップ部を含む樹脂成形品を示す斜視図である。
図5図4の樹脂成形品の側面図である。
図6】本発明方法を実施するための本発明装置の第1実施形態である製造装置の概略断面図であり、型閉工程実施後の状態を示している。
図7図6の製造装置の概略断面図であり、第1型開工程実施中の状態を示している。
図8図6の製造装置の概略断面図であり、第2型開工程実施後の状態を示している。
図9図6の製造装置の型閉工程実施後の状態を示す概略斜視図である。
図10図6の製造装置の第1型開工程実施中の状態を示す概略斜視図である。
図11図6の製造装置の左方側部分について第1型開工程実施中の状態を示す概略斜視図である。
図12図6の製造装置について第2型開工程実施後の状態を示す概略斜視図である。
図13】本発明方法を実施するための本発明装置の第2実施形態である製造装置の概略断面図であり、型閉工程実施後の状態を示している。
図14図13の製造装置の概略断面図であり、第1型開工程実施中の状態を示している。
図15図13の製造装置の概略断面図であり、第2型開工程実施後の状態を示している。
【発明を実施するための形態】
【0040】
(筆記具1の構成)
まず、本発明方法によって製造される樹脂成形品を含む筆記具の一実施形態を説明する。図1は、本実施形態の筆記具1の概略縦断面図であり、図2は、本実施形態の筆記具1の側面図であり、図3は、本実施形態の筆記具1の縦断面図である。また、図4は、本実施形態の筆記具1の部品であって、クリップ部を含む樹脂成形品10を示す斜視図であり、図5は、図4の樹脂成形品10の側面図である。
【0041】
図1乃至図5に示すように、本実施形態の筆記具1は、クリップ部を有する樹脂成形品10を含んでいる。クリップ本体部11と、クリップ本体部11の裏面側の間隙狭窄用凸部12とが、クリップ部を形成している。後述するように間隙狭窄用凸部12の左右両面に圧接跡ないし当接跡(図5における破線より下方前側の領域12a)が存在している点を除けば、従来の筆記具と概ね同様の構成である。
【0042】
より詳細には、筆記具1は、前後方向(長手方向)に延びるクリップ本体部11を有している。クリップ本体部11の表面側には、滑らかなデザインが採用されている(商品ブランド名等が印刷され得る)。クリップ本体部11の裏面側には、ポケット等の布片に保持(クリップ)されるために軸筒側の表面との間の間隙を狭めるための間隙狭窄用凸部12(「玉部」と呼ばれる)が設けられている。
【0043】
また、本実施形態のクリップ本体部11は、ペン先の出没機能の操作のためのノック部材を兼ねている。このため、クリップ本体部11の後方端が接続部13を介して筒部14に接続されており、当該筒部14の前方側にカム面14cが形成されている。筒部14は、筆記具1の軸筒内に収容されている。
【0044】
クリップ本体部11が前方に移動されること(ノック動作)に伴って、カム面14cが軸筒内の対応する構成要素と協働し(詳細な説明は省略する)、ペン先の突出状態または没入状態が交互に選択(ロック)されるようになっている。
【0045】
(樹脂成形品10の製造装置(第1実施形態))
樹脂成形品10は、樹脂材料(例えばPC、PP、PE、ABS、AS、PS、PMMA、PA、PET、PBT、POM、又はこれらのポリマーアロイ、ポリマーブレンド)の射出成形によって製造される。
【0046】
図6乃至図8は、本発明方法を実施するための本発明装置の第1実施形態である製造装置の概略断面図である。当該断面は、製造中の樹脂成形品10の図5のA-A線断面に対応している。図6は、型閉工程実施後の状態を示しており、図7は、第1型開工程実施中の状態を示しており、図8は、第2型開工程実施後の状態を示している。また、図9乃至図12は、本実施形態の製造装置の概略斜視図である。図9は、型閉工程実施後の状態を示しており、図10は、第1型開工程実施中の状態を示しており、図11は、左方側部分について第1型開工程実施中の状態を示しており、図12は、第2型開工程実施後の状態を示している。
【0047】
図6乃至図12に示すように、本実施形態の製造装置は、クリップ部(クリップ本体部11及び間隙狭窄用凸部12)の右方の輪郭に対応する右方空洞21を有する右方側モールド20と、クリップ部の左方の輪郭に対応する左方空洞41を有する左方側モールド40と、を備えている。各モールド20、40は、例えば焼き入れ鋼やプリハードン鋼等からなる。
【0048】
そして、右方側モールド20の右方空洞21を区画する空洞側内面の一部(図中、符号31を付している)を構成する一方で、右方空洞の内方側(図6乃至図8において左方側)へと突出移動可能な右方補助部材30が設けられている。更に、左右対称に、左方側モールド40の左方空洞41を区画する空洞側内面の一部(図中、符号51を付している)を構成する一方で、左方空洞の内方側(図6乃至図8において右方側)へと突出移動可能な左方補助部材50が設けられている。各補助部材30、50も、例えば焼き入れ鋼やプリハードン鋼等からなる。
【0049】
右方補助部材30は、図10及び図11に示すように、やや平たい断面(例えば8mm×2.3mm程度)の直方体状の摺動部33を有しており、図6乃至図8に示すように、当該摺動部33が右方側モールド20の右方空洞側の壁部26を摺動可能に貫通している。
【0050】
摺動部33の露出端側(図6乃至図8において左端側)の一部が、右方空洞21を区画する空洞側内面の一部(図中、符号31を付している)を構成している。一方、摺動部33の露出端側(図6乃至図8において左端側)の残部は、右方当接部32として、後述する左方補助部材50の摺動部53の露出端側の左方当接部52に対して、互いに当接するようになっている(図6の状態及び図7の状態では、実際に当接している)。
【0051】
摺動部33の奥側は、円筒フランジ部34に接続されており、当該円筒フランジ部34は、右方側モールド20に設けられた収容空間25内において、摺動部53の軸線方向に移動可能となっている。
【0052】
より詳細には、右方側モールド20の右方端壁22から収容空間25内に円柱状案内部23が延出しており、当該円柱状案内部23をガイドとして、円筒フランジ部34が移動可能となっている。
【0053】
また、右方端壁22と円筒フランジ部34との間には、コイルバネ24が介在されていて、摺動部33を露出端側に付勢している。図7の状態及び図8の状態では、円筒フランジ部34が右方空洞側の壁部26に当接していて、すなわち、コイルバネ24が最も伸長した状態にあるが、当該状態でも、コイルバネ24は自然状態からは圧縮された状態である。
【0054】
コイルバネ24は、例えば、線径0.65mm、コイル径5mm、自然長15mm、密着長6.5mm、バネ定数2.9N/mm、図6の状態での圧縮長さ10mm、図7及び図8の状態での圧縮長さ12.5mm、である。
【0055】
左方補助部材50は、右方補助部材30と左右対称であって、図10及び図11に示すように、やや平たい断面(例えば8mm×2.3mm程度)の直方体状の摺動部53を有しており、図6乃至図8に示すように、当該摺動部53が左方側モールド40の左方空洞側の壁部46を摺動可能に貫通している。
【0056】
摺動部53の露出端側(図6乃至図8において右端側)の一部が、左方空洞41を区画する空洞側内面の一部(図中、符号51を付している)を構成している。一方、摺動部53の露出端側(図6乃至図8において左端側)の残部は、左方当接部52として、右方補助部材30の摺動部33の露出端側の右方当接部32に対して、互いに当接するようになっている(図6の状態及び図7の状態では、実際に当接している)。
【0057】
摺動部53の奥側は、円筒フランジ部54に接続されており、当該円筒フランジ部54は、左方側モールド40に設けられた収容空間45内において、摺動部53の軸線方向に移動可能となっている。
【0058】
より詳細には、左方側モールド40の左方端壁42から収容空間45内に円柱状案内部43が延出しており、当該円柱状案内部43をガイドとして、円筒フランジ部54が移動可能となっている。
【0059】
また、左方端壁42と円筒フランジ部54との間には、コイルバネ44が介在されていて、摺動部53を露出端側に付勢している。図7の状態及び図8の状態では、円筒フランジ部54が右方空洞側の壁部46に当接していて、すなわち、コイルバネ44が最も伸長した状態にあるが、当該状態でも、コイルバネ44は自然状態からは圧縮された状態である。
【0060】
コイルバネ44は、コイルバネ24と同様、例えば、線径0.65mm、コイル径5mm、自然長15mm、密着長6.5mm、バネ定数2.9N/mm、図6の状態での圧縮長さ10mm、図7及び図8の状態での圧縮長さ12.5mm、である。
【0061】
従来構造と略同様に、右方側モールド20と左方側モールド40とは、互いに隣接するように移動されて、右方空洞21と左方空洞41とによって成形空間を区画するようになっている(図6の状態)。また、右方側モールド20と左方側モールド40とは、互いから離隔するように移動されて、成形空間を開放するようになっている(図7及び図8の状態)。各モールド20、40の移動は、不図示のガイドレールに沿ってスライドするようになされるため、各モールド20、40は「スライドキャビティ」とも呼ばれる。
【0062】
一方、本実施形態の特徴として、成形空間が開放される際において、コイルバネ24から右方補助部材30の円筒フランジ部34に与えられる付勢力及びコイルバネ44から左方補助部材50の円筒フランジ部54に与えられる付勢力によって、右方補助部材30が右方空洞21の内方側(図6乃至図8において左方側)へと突出されると共に左方補助部材50が左方空洞41の内方側(図6乃至図8において右方側)へと突出されるようになっている(図7の状態)。これにより、成形後の樹脂成形品10が右方補助部材30と左方補助部材50とによって挟持された状態が、一時的に維持されるようになっている。
【0063】
本実施形態では、成形後の樹脂成形品10における間隙狭窄用凸部12の領域12a(図5における破線より下方前側の領域)が、右方補助部材30と左方補助部材50とによって挟持されるようになっている。間隙狭窄用凸部12の左右方向の厚みは、1.0mm程度であり、領域12aの前後方向長さは、9.7mm程度であり、領域12aの高さは、2.7mm程度である。
【0064】
その他、本実施形態では、筒部14のカム面14cを成形するための前方側コアピン60(図9乃至図12参照)も、成形空間の形成に寄与するようになっている。
【0065】
(樹脂成形品10の製造装置の作用(製造方法))
まず、右方側モールド20と左方側モールド40とが、互いに隣接するように移動されて、右方空洞21と左方空洞41とによって成形空間が区画される(型閉工程:図6の状態)。この時、本実施形態では、前方側コアピン60(図9乃至図12参照)も、成形空間の形成に寄与する。
【0066】
次に、成形空間内に樹脂材料が射出されて、樹脂成形品10が成形される(成形工程)。
【0067】
そして、右方側モールド20と左方側モールド40とが、互いから離隔するように移動されて、成形空間が開放される(第1型開工程:図7の状態)。この時、コイルバネ24から右方補助部材30に与えられる付勢力及びコイルバネ44から左方補助部材50に与えられる付勢力によって、右方補助部材30が右方空洞21の内方側へと突出されると共に左方補助部材50が左方空洞41の内方側へと突出される。これにより、成形後の樹脂成形品10が右方補助部材30と左方補助部材50とによって挟持された状態が、一時的に維持される。
【0068】
その後、右方側モールド20と左方側モールド40とが、更に互いから離隔するように移動されて、右方補助部材30の右方当接部32と左方補助部材50の左方当接部52との間の当接状態が解消し、右方補助部材30及び左方補助部材50が樹脂成形品10から離隔する。(第2型開工程:図8の状態)。
【0069】
以上の通り、本実施形態の製造装置ないし製造方法によれは、右方側モールド20と左方側モールド40とを互いから離隔して右方空洞21と左方空洞41とを互いから離隔させる際に、右方補助部材30を右方空洞の内方側へと突出させながら左方補助部材50を左方空洞の内方側へと突出させて、樹脂成形品10が右方補助部材30と左方補助部材50とによって挟持された状態が維持される。これにより、樹脂成形品10がそのように挟持された状態で、当該挟持部位を除いた全ての領域が先行して右方側モールド20及び左方側モールド40から離隔されることとなるため、樹脂成形品10が右方側モールド20または左方側モールド40との付着継続のために曲がってしまうということが顕著に抑制される。
【0070】
また、本実施形態の製造装置ないし製造方法によれば、成形空間が区画された状態において(図6参照)、右方補助部材30の一部である右方当接部32と左方補助部材50の一部である左方当接部52とが、互いに対して付勢されている。これにより、右方補助部材30及び左方補助部材50の各々の空洞側内面の一部としての機能(空洞側内面の一部としての領域31、51の形状精度)が高められている。
【0071】
また、本実施形態の製造装置ないし製造方法によれば、右方補助部材30は、コイルバネ24の付勢力によって、右方空洞21の内方側へと突出移動可能となっており、左方補助部材50も、コイルバネ44の付勢力によって、左方空洞41の内方側へと突出移動可能となっている。このような構成により、極めてシンプル且つコンパクトな構成でありながら、右方補助部材30及び左方補助部材50の突出移動性能を所望の通りに設計ないし実現することができる。
【0072】
なお、本件発明者の実際の検証によれば、本実施形態において右方補助部材30と左方補助部材50とによって挟持される部位(間隙狭窄用凸部12の領域12a)には、極めて浅い(具体的には0.005mm~0.3mmの深さの、好適には0.02mm~0.05mmの深さの)圧接跡ないし当接跡が残る。逆に言えば、そのような極めて浅い圧接跡ないし当接跡が残されている場合、本発明方法によって製造されたものと考えられる。
【0073】
(樹脂成形品10の製造装置(第2実施形態))
図13乃至図15は、本発明方法を実施するための本発明装置の第2実施形態である製造装置の概略断面図である。当該断面も、製造中の樹脂成形品10の図5のA-A線断面に対応している。図13は、型閉工程実施後の状態を示しており、図14は、第1型開工程実施中の状態を示しており、図15は、第2型開工程実施後の状態を示している。
【0074】
本実施形態の製造装置は、右方側モールド20及び左方側モールド40から独立して設けられた位置決めストッパ部70を備えている。
【0075】
そして、摺動部33の露出端側の右方当接部32と摺動部53の露出端側の左方当接部52とが互いに対して当接することに加えて(あるいは当該当接の代わりに)、それらの各々が、位置決めストッパ部70に対して当接するようになっている。(右方当接部32と左方当接部52とが互いに当接しない場合、右方当接部32と左方当接部52と位置決めストッパ部70(の上面)とによって、間隙狭窄用凸部12のための「型」が規定され得る。)
【0076】
本実施の形態のその他の構成は、第1実施形態の製造装置と同様である。図13乃至図15において、第1実施形態と同様の構成部分には同様の符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0077】
本実施形態の製造装置ないし製造方法によれば、成形空間が区画された状態において(図13参照)、右方補助部材30の一部である右方当接部32と左方補助部材50の一部である左方当接部52とが、それぞれ、位置決めストッパ部70に対して付勢されている。これにより、右方補助部材30及び左方補助部材50の各々の空洞側内面の一部としての機能(空洞側内面の一部としての領域31、51の形状精度)が高められている。
【0078】
更に、本実施形態によれば、コイルバネ24による右方補助部材30の付勢力とコイルバネ44による左方補助部材50の付勢力との間に不均衡が生じても、一方が他方を押し込むということが無いため、より一層高い曲がり発生防止効果が期待できる。
【符号の説明】
【0079】
1 筆記具
10 樹脂成形品
11 クリップ本体部(クリップ部)
12 間隙狭窄用凸部(クリップ部)
12a 領域
13 接続部
14 筒部
14c カム面
20 右方側モールド
21 右方空洞
22 右方端壁
23 円柱状案内部
24 コイルバネ
25 収容空間
26 壁部
30 右方補助部材
31 空洞側内面の一部としての領域
32 右方当接部
33 摺動部
34 円筒フランジ部
40 左方側モールド
41 左方空洞
42 左方端壁
43 円柱状案内部
44 コイルバネ
45 収容空間
46 壁部
50 左方補助部材
51 空洞側内面の一部としての領域
52 左方当接部
53 摺動部
54 円筒フランジ部
60 前方側コアピン
70 位置決めストッパ部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15