(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024136428
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】カテーテルハンドルおよびそれを備えたカテーテル
(51)【国際特許分類】
A61M 25/092 20060101AFI20240927BHJP
【FI】
A61M25/092 510
A61M25/092 500
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023047543
(22)【出願日】2023-03-24
(71)【出願人】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(74)【代理人】
【識別番号】110002837
【氏名又は名称】弁理士法人アスフィ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】金子 卓弥
【テーマコード(参考)】
4C267
【Fターム(参考)】
4C267AA12
4C267BB04
4C267BB07
4C267BB40
4C267BB52
4C267CC08
4C267CC22
4C267CC26
4C267HH30
(57)【要約】
【課題】スムーズにハンドルを操作することができ、ハンドルを操作する際の異音の発生が抑えられたカテーテルハンドルとそれを備えたカテーテルを提供する。
【解決手段】らせん状に延びる第1係合部16を有し、軸方向に変位可能なスライダー4と、第1係合部16に係合する第2係合部17を有する回転ノブ5と、遠位部がチューブ22の内腔に配置され、近位部が回転ノブ5の内腔に配置された第1ワイヤ6と第2ワイヤ7と、第1端部が第1接続部9で第1ワイヤ6の近位部に接続され、第2端部が第2接続部10で第2ワイヤ7の近位部に接続された線状部材8と、線状部材8の一部が当接した反転ガイド14とを備え、線状部材8は、反転ガイド14との当接部分より第1端部側の部分でスライダー4に固定され、スライダー4が最も遠位側に変位した状態で、第1接続部9と第2接続部10がスライダー4の遠位端よりも遠位側に位置するカテーテルハンドル1。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
カテーテルのチューブを操作するためのハンドルであって、
近位側から遠位側に軸方向に延びる内腔を有するハンドル本体と、
前記ハンドル本体の内腔に配置され、前記軸方向に延び、前記ハンドル本体に固定されたシャフトと、
前記シャフトの外側に配置され、らせん状に延びる第1係合部を外面に有しており、前記シャフトに沿って前記軸方向に変位可能に設けられたスライダーと、
前記軸方向に延びる回転軸を有し、前記ハンドル本体に対して回転可能に設けられた回転ノブであって、前記軸方向に延びる内腔を有し、前記スライダーの前記第1係合部に係合する第2係合部を内面に有する回転ノブと、
遠位部が前記チューブの内腔に配置され、近位部が前記回転ノブの内腔に配置された第1ワイヤと、
遠位部が前記チューブの内腔に配置され、近位部が前記回転ノブの内腔に配置された第2ワイヤと、
前記ハンドル本体の内腔と前記回転ノブの内腔に配置され、一方端側の第1端部と他方端側の第2端部を有する線状部材であって、前記第1端部が第1接続部で前記第1ワイヤの近位部に接続され、前記第2端部が第2接続部で前記第2ワイヤの近位部に接続された線状部材と、
前記ハンドル本体の内腔に配置され、前記線状部材の一部が当接した反転ガイドとを備え、
前記線状部材は、前記反転ガイドと当接する部分より前記第1端部側の部分で、前記スライダーに固定されており、
前記スライダーが最も遠位側に変位した状態で、前記第1接続部と前記第2接続部が前記スライダーの遠位端よりも遠位側に位置するカテーテルハンドル。
【請求項2】
前記線状部材は前記第1ワイヤと前記第2ワイヤよりも曲げ剛性が小さい請求項1に記載のカテーテルハンドル。
【請求項3】
前記第1ワイヤと前記第2ワイヤは金属線材であり、前記線状部材は繊維ロープである請求項1に記載のカテーテルハンドル。
【請求項4】
前記第1ワイヤの近位端部は環状に形成された第1環状部を有し、前記線状部材の前記第1端部が前記第1環状部に結ばれることにより前記第1接続部が形成されており、
前記第2ワイヤの近位端部は環状に形成された第2環状部を有し、前記線状部材の前記第2端部が前記第2環状部に結ばれることにより前記第1接続部が形成されている請求項1に記載のカテーテルハンドル。
【請求項5】
前記線状部材の前記第1端部が前記第1環状部に結ばれることにより形成された結び目、および、前記線状部材の前記第2端部が前記第2環状部に結ばれることにより形成された結び目は、接着剤により固められている、または、溶融固化されている請求項4に記載のカテーテルハンドル。
【請求項6】
前記線状部材は、前記スライダーの少なくとも遠位側1/3の部分で前記スライダーに固定されている請求項1に記載のカテーテルハンドル。
【請求項7】
前記線状部材は、前記スライダーの少なくとも遠位側1/3の部分と近位側1/3の部分で前記スライダーに固定されている請求項1に記載のカテーテルハンドル。
【請求項8】
前記第1係合部と前記第2係合部は、一方が凸部であり他方が溝である請求項1に記載のカテーテルハンドル。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか一項に記載のカテーテルハンドルと、
前記カテーテルハンドルの遠位側に設けられたチューブとを有するカテーテル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カテーテルに用いられるハンドルと、それを備えたカテーテルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
カテーテルは、通常、血管や消化管や尿管などの体腔に挿入するためのチューブと、チューブの近位側に設けられたハンドルとから構成されている。カテーテルには、手元側のハンドルを操作してチューブの遠位端部を屈曲できるように構成されたものが知られている。このようなカテーテルは、チューブの内腔にワイヤが配され、ワイヤの遠位端部がチューブの遠位端部に固定され、ワイヤの近位端部がハンドルに接続され、ハンドルを操作することによりチューブの遠位端部を屈曲できるようになっている。例えば、チューブの内腔にワイヤが2本配されたカテーテルでは、ハンドルを操作することにより、2本のワイヤの一方を近位側に引っ張ることでチューブの遠位端部を一方側に屈曲させ、他方を引っ張ることでチューブの遠位端部を他方側に屈曲させることができる。
【0003】
このようなカテーテルハンドルとして、例えば特許文献1には、先端部がカテーテルの先端領域に結合された2つの制御ワイヤを備えたカテーテルハンドルであって、ハウジングと、ハウジング内に配置され、ハウジング内で直線的に並進するように構成された摺動アセンブリと、ハウジングに対して回転自在に設けられた制御ノブを有し、前記2つの制御ワイヤの基端部がハウジング内に配置され、摺動アセンブリを直線的に並進させることによって摺動アセンブリが2つの制御ワイヤのそれぞれを別個に操作するように構成され、制御ノブを第1の回転方向へ回転させることによって、摺動アセンブリが先端側へ変位して2つの制御ワイヤの一方に張力をかけ、それによりカテーテルが第1の偏向方向に偏向し、制御ノブを第2の回転方向へ回転させることによって、摺動アセンブリが基端側へ変位して2つの制御ワイヤの他方に張力をかけ、それによりカテーテルが第2偏向方向に偏向するように構成されたカテーテルハンドルが開示されている。
【0004】
特許文献2には、カテーテルの遠位部分を偏向させるカテーテルハンドルであって、第1の直径を有し、第1のワイヤが連結される第1の回転部材と、前記第1の直径より小さい第2の直径を有し、第2のワイヤが連結される第2の回転部材とを有し、第2の回転部材は、第2の回転部材の中心点が第1の回転部材の中心点からずれるように、第1の回転部材に連結され、第1および第2の回転部材は、第1のワイヤを介した第1の回転部材の回転が、第2の回転部材および第2のワイヤを回転させて、カテーテルの遠位部分を偏向させるように構成されたカテーテルハンドルが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特表2015-523892号公報
【特許文献2】特表2018-515215号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のように、従来様々なカテーテルハンドルが提案されており、本発明の目的は、新規の構造を有し、スムーズにハンドルを操作することができ、ハンドルを操作する際の異音の発生を抑えることができるカテーテルハンドルとそれを備えたカテーテルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決することができた本発明のカテーテルハンドルおよび当該カテーテルハンドルを備えたカテーテルは、下記の通りである。
[1] カテーテルのチューブを操作するためのハンドルであって、
近位側から遠位側に軸方向に延びる内腔を有するハンドル本体と、
前記ハンドル本体の内腔に配置され、前記軸方向に延び、前記ハンドル本体に固定されたシャフトと、
前記シャフトの外側に配置され、らせん状に延びる第1係合部を外面に有しており、前記シャフトに沿って前記軸方向に変位可能に設けられたスライダーと、
前記軸方向に延びる回転軸を有し、前記ハンドル本体に対して回転可能に設けられた回転ノブであって、前記軸方向に延びる内腔を有し、前記スライダーの前記第1係合部に係合する第2係合部を内面に有する回転ノブと、
遠位部が前記チューブの内腔に配置され、近位部が前記回転ノブの内腔に配置された第1ワイヤと、
遠位部が前記チューブの内腔に配置され、近位部が前記回転ノブの内腔に配置された第2ワイヤと、
前記ハンドル本体の内腔と前記回転ノブの内腔に配置され、一方端側の第1端部と他方端側の第2端部を有する線状部材であって、前記第1端部が第1接続部で前記第1ワイヤの近位部に接続され、前記第2端部が第2接続部で前記第2ワイヤの近位部に接続された線状部材と、
前記ハンドル本体の内腔に配置され、前記線状部材の一部が当接した反転ガイドとを備え、
前記線状部材は、前記反転ガイドと当接する部分より前記第1端部側の部分で、前記スライダーに固定されており、
前記スライダーが最も遠位側に変位した状態で、前記第1接続部と前記第2接続部が前記スライダーの遠位端よりも遠位側に位置するカテーテルハンドル。
[2] 前記線状部材は前記第1ワイヤと前記第2ワイヤよりも曲げ剛性が小さい[1]に記載のカテーテルハンドル。
[3] 前記第1ワイヤと前記第2ワイヤは金属線材であり、前記線状部材は繊維ロープである[1]または[2]に記載のカテーテルハンドル。
[4] 前記第1ワイヤの近位端部は環状に形成された第1環状部を有し、前記線状部材の前記第1端部が前記第1環状部に結ばれることにより前記第1接続部が形成されており、前記第2ワイヤの近位端部は環状に形成された第2環状部を有し、前記線状部材の前記第2端部が前記第2環状部に結ばれることにより前記第1接続部が形成されている[1]~[3]のいずれかに記載のカテーテルハンドル。
[5] 前記線状部材の前記第1端部が前記第1環状部に結ばれることにより形成された結び目、および、前記線状部材の前記第2端部が前記第2環状部に結ばれることにより形成された結び目は、接着剤により固められている、または、溶融固化されている[4]に記載のカテーテルハンドル。
[6] 前記線状部材は、前記スライダーの少なくとも遠位側1/3の部分で前記スライダーに固定されている[1]~[5]のいずれかに記載のカテーテルハンドル。
[7] 前記線状部材は、前記スライダーの少なくとも遠位側1/3の部分と近位側1/3の部分で前記スライダーに固定されている[1]~[6]のいずれかに記載のカテーテルハンドル。
[8] 前記第1係合部と前記第2係合部は、一方が凸部であり他方が溝である[1]~[7]のいずれかに記載のカテーテルハンドル。
[9] [1]~[8]のいずれかに記載のカテーテルハンドルと、前記カテーテルハンドルの遠位側に設けられたチューブとを有するカテーテル。
【発明の効果】
【0008】
本発明のカーテルハンドルおよびカテーテルによれば、回転ノブを回転させることにより、ハンドル内に設けられたスライダーをハンドルの軸方向に変位させることができ、これにより、線状部材を介して第1ワイヤと第2ワイヤを近位側に引いたり遠位側に押し込むことができ、カテーテルハンドルの遠位側に設けられたチューブを操作することができる。この際、第1ワイヤと第2ワイヤがスライダーに接触することが抑えられるため、スライダーをスムーズに軸方向に変位させることができる。また、スライダーが第1ワイヤや第2ワイヤに接触することにより異音が発生することを抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】カテーテルハンドルを備えたカテーテルの全体図を表す。
【
図2】
図1に示したカテーテルに設けられたカテーテルハンドルの内部構造の平面図を表す。
【
図3】
図2に示したカテーテルハンドルの内部構造であって、スライダーを軸方向に沿って一部切除した平面図を表す。
【
図4】
図2に示したカテーテルハンドルの内部構造からスライダーとシャフトを除いた平面図を表す。
【
図5】
図2に示したカテーテルハンドルにおいて、スライダーを最も遠位側に変位させた状態の平面図を表す。
【
図6】
図2に示したカテーテルハンドルにおいて、スライダーを最も近位側に変位させた状態の平面図を表す。
【
図8】
図2に示したカテーテルハンドルのVIII-VIII断面図を表す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、下記実施の形態に基づき本発明のカテーテルハンドルと当該ハンドルを備えたカテーテルを具体的に説明するが、本発明はもとより下記実施の形態によって制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも勿論可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。なお、各図面において、便宜上、ハッチングや部材符号等を省略する場合もあるが、かかる場合、明細書や他の図面を参照するものとする。また、図面における種々部材の寸法は、本発明の特徴の理解に資することを優先しているため、実際の寸法とは異なる場合がある。
【0011】
図1を参照して、カテーテルハンドルを備えたカテーテルの全体を説明する。本発明の実施の形態に係るカテーテル21は、カテーテルハンドル1(以下、「ハンドル」と称する場合がある)と、ハンドル1の遠位側に設けられたチューブ22とを有する。カテーテル21は、例えば、チューブ22を患者の血管や消化管などの体腔に挿入して、治療や検査に用いられる。
【0012】
本発明において、カテーテルの近位側とは、カテーテルの延在方向に対して使用者の手元側の方向を指し、遠位側とは近位側の反対方向、すなわち処置対象側の方向を指す。
【0013】
チューブ22は、可撓性を有する管状構造を有しており、例えば、ポリオレフィン樹脂(例えば、ポリエチレンやポリプロピレン)、ポリアミド樹脂(例えば、ナイロン)、ポリエステル樹脂(例えば、PET)、芳香族ポリエーテルケトン樹脂(例えば、PEEK)、ポリエーテルポリアミド樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリイミド樹脂、フッ素樹脂(例えば、PTFE、PFA、ETFE)等の合成樹脂や、ステンレス鋼、炭素鋼、ニッケルチタン合金等の金属から構成することができる。金属材料は、合成樹脂チューブ内に埋め込まれた金属線材としても用いることができる。チューブ22の軸方向(遠近方向)の長さは、ハンドル1の同方向の長さの数倍から数十倍程度長くなっており、例えば、500mm~1200mm程度である。チューブ22の外径は、例えば、0.6mm~5mm程度とすればよい。
【0014】
チューブ22は内腔を有しており、内部に1つの内腔を有するシングルルーメン構造であっても、複数の内腔を有するマルチルーメン構造のいずれであってもよい。チューブ22は、複数の同軸の内腔が設けられたコアキシャル構造を有するものであってもよい。チューブ22の内腔には、チューブ22を操作するためのワイヤが配置される。ワイヤは、例えばチューブ22の遠位端部の曲がりを制御するために設けられる。この場合、ワイヤの遠位端部はチューブ22の遠位端部、例えばチューブ22の遠位側1/3の部分に固定されることが好ましい。チューブ22の内腔には、導線、光ファイバ、内視鏡などが配置されてもよく、ガイドワイヤや別の処置具を挿通するための内腔が設けられたり、薬剤や造影剤、任意の流体を流通させるための内腔が設けられてもよい。
【0015】
ハンドル1はチューブ22の近位側に設けられ、カテーテルとして組み立てた際には、チューブ22の内腔に配されたワイヤの近位端部がハンドル1に接続される。
【0016】
カテーテルハンドルの詳細について、
図2~
図8を参照して説明する。
図2は、
図1に示したカテーテルに設けられたカテーテルハンドルの内部構造の平面図を表し、
図3は、
図2に示したカテーテルハンドルの内部構造であって、スライダーを軸方向に沿って一部切除した平面図を表し、
図4は、
図2に示したカテーテルハンドルの内部構造からスライダーとシャフトを除いた平面図を表し、
図5および
図6は、
図2に示したカテーテルハンドルにおいてスライダーを最も遠位側または近位側に変位させた状態の平面図を表し、
図7は第1接続部と第2接続部の構成例を表し、
図8は、
図2に示したカテーテルハンドルのVIII-VIII断面図を表す。
図2、
図5および
図6では、カテーテルハンドルのハウジングとなるハンドル本体と回転ノブを軸方向に沿って切除し、内部構造が見えるようにしたカテーテルハンドルの平面図が示されている。
図8では、
図2においてハンドル本体の切除された部分が点線で示されている。
【0017】
本発明の実施の形態に係るハンドル1は、軸方向xに延びる内腔を有するハンドル本体2と、ハンドル本体2の内腔に配置され、軸方向xに延び、ハンドル本体2に固定されたシャフト3と、ハンドル本体2の内腔であってシャフト3の外側に配置され、らせん状に延びる第1係合部16を外面に有し、シャフト3に沿って軸方向xに変位可能に設けられたスライダー4と、軸方向xに延びる回転軸を有し、ハンドル本体2に対して回転可能に設けられ、スライダー4の第1係合部16に係合する第2係合部17を内面に有する回転ノブ5とを有する。ハンドル1において、軸方向xとは、回転ノブ5の回転軸が延びる方向に相当し、軸方向xに対する一方側と他方側として、近位側と遠位側が定められる。また、軸方向xに対する直交方向として径方向が定められる。
【0018】
ハンドル本体2は、軸方向xに延びる内腔を有する(
図4を参照)。ハンドル本体2の内腔は、軸方向xを中心とした円筒状に形成された部分を有することが好ましく、当該内腔の円筒状に形成された部分に回転ノブ5が配置されることが好ましい。回転ノブ5は、軸方向xに延びる回転軸を有し、ハンドル本体2に対して軸方向xを中心に回転可能に設けられる。回転ノブ5は、ハンドル本体2の内腔の少なくとも一部に配置されることが好ましく、軸方向xに対する一部のみが、ハンドル本体2の内腔に配置されることが好ましい。
【0019】
回転ノブ5は、軸方向xに延びる内腔を有する。回転ノブ5の内腔は、ハンドル本体2の内腔とともに、ハンドル1の内部空間を形成することが好ましい。回転ノブ5の内腔は、軸方向xを中心とした円筒状に形成された部分を有することが好ましい。回転ノブ5の内腔はハンドル本体2の内腔と軸方向xに連通し、回転ノブ5の内腔とハンドル本体2の内腔とが一体的にハンドル1の内部空間を形成し、当該内部空間にシャフト3やスライダー4が配置されることが好ましい。
【0020】
ハンドル本体2は、遠位側と近位側の少なくとも一方がオープンに形成され、オープンに形成されたハンドル本体2の遠位側または近位側から回転ノブ5が挿入され、回転ノブ5がハンドル本体2の内腔に配置されることが好ましい。一方、回転ノブ5は、ハンドル本体2に挿入され、ハンドル本体2の内腔に位置する近位側または遠位側がオープンに形成されることが好ましい。これにより、ハンドル本体2の内腔と回転ノブ5の内腔とから一体的にハンドル1の内部空間が形成される。図面に示したハンドル1では、ハンドル本体2の遠位側がオープンに形成され、回転ノブ5の近位側がオープンに形成され、回転ノブ5がハンドル本体2の遠位側からハンドル本体2の内腔に挿入されている。ハンドル1は、ハンドル本体2と回転ノブ5が外側に露出しており、例えば、一方の手でハンドル本体2を持って、もう一方の手で回転ノブ5を持ってハンドル本体2に対して回転させることにより、ハンドル1を操作することができる。
【0021】
ハンドル本体2の内腔には、シャフト3が軸方向xに延びるように配置される(
図3を参照)。シャフト3はハンドル本体2に固定され、ハンドル本体2に対して回転したり移動しないように設けられる。シャフト3はハンドル本体2と一体的に形成されてもよい。シャフト3は、回転ノブ5の回転軸となる位置に配置されることが好ましい。シャフト3は、ハンドル本体2の内腔から回転ノブ5の内腔にかけて設けられることが好ましく、ハンドル本体2と回転ノブ5よりも遠位側および/または近位側に延びるように設けられてもよい。
【0022】
シャフト3の遠位側にはチューブ22が接続されることが好ましい。シャフト3とチューブ22の接続部は、ハンドル1の内部空間にあってもよく、ハンドル1の内部空間よりも遠位側にあってもよく、ハンドル1の外側にあってもよい。シャフト3はチューブ22と一体的に形成することもできる。
【0023】
シャフト3は、中実状に形成されてもよく、中空状に形成されてもよい。なお、シャフト3は中空状に形成され、シャフト3の内腔がチューブ22の内腔と連通していることが好ましい。これにより、シャフト3の内腔およびチューブ22の内腔を通して、カテーテル21の手元側から処置対象部に処置具を送達したり、薬剤や造影剤を注入することができる。処置具としては、電極カテーテル、アブレーションカテーテル、マッピングカテーテル、バルーンカテーテル、マイクロカテーテル、鉗子、レーザープローブ、ファイバースコープ、高周波処置具、電気水圧衝撃破砕プローブ等が挙げられる。シャフト3は、このような処置具の挿入を可能とするために、ハンドル1の外側に近位側開口を有することが好ましい。シャフト3は分岐部を有していてもよく、シャフト3の分岐部に切り替えコックが設けられていてもよい。これにより、例えば、処置具の挿入口と薬剤等の注入口とを分けて設けることができる。
【0024】
シャフト3の外側には、スライダー4が配置されている。スライダー4はハンドル1の内部空間に配置され、ハンドル本体2の内腔から回転ノブ5の内腔にかけて配置されている(
図2および
図3を参照)。スライダー4は、シャフト3に対して径方向の外側に配置されており、従って、スライダー4には、軸方向xに延び、スライダー4を軸方向xに貫通する貫通穴が設けられ、この貫通穴にシャフト3が挿通されていることが好ましい。
【0025】
スライダー4は、シャフト3に沿って軸方向xに変位可能に設けられており、すなわち、ハンドル1の内部空間を軸方向xに移動可能に設けられている。スライダー4は、軸方向xの長さが、ハンドル1の内部空間におけるシャフト3の軸方向xの長さよりも短く形成されていることが好ましく、またハンドル1の内部空間の軸方向xの長さよりも短く形成されていることが好ましい。
【0026】
スライダー4は、回転ノブ5を軸方向xを中心として回転させることにより、軸方向xに変位するように形成されている。そのために、スライダー4の外面にらせん状に延びる第1係合部16が形成され、回転ノブ5の内面に第1係合部16に係合する第2係合部17が形成されている。
【0027】
第1係合部16は、スライダー4の外面、すなわちスライダー4の径方向の外方側の面に、らせん状に延びるように形成される。詳細には、第1係合部16は、ハンドル1の軸方向xを軸としたらせん状に延びるようにスライダー4の外面に形成され、好ましくは、円筒状に形成されたスライダー4の外面に形成される。第1係合部16は、連続的に形成されても、断続的に形成されてもよい。第1係合部16は、近位側から遠位側に向かって、右回りのらせん状に形成されてもよく、左回りのらせん状に形成されてもよい。
【0028】
第2係合部17は、回転ノブ5の内面、すなわち回転ノブ5の径方向の内方側の面に、第1係合部16に係合可能に形成される(
図3および
図4を参照)。第2係合部17は、回転ノブ5の内面にらせん状に延びるように形成され、詳細には、ハンドル1の軸方向xを軸としたらせん状に延びるように形成される。第2係合部17は、好ましくは、円筒状に形成された回転ノブ5の内面に形成される。第2係合部17は、連続的に形成されても、断続的に形成されてもよい。
【0029】
上記のようにスライダー4の外面に第1係合部16が形成され、回転ノブ5の内面に第2係合部17が形成されることにより、回転ノブ5を軸方向xを中心として回転させることにより、スライダー4をハンドル1の内部空間において軸方向xに移動させることができる。すなわち、らせん状に形成された第1係合部16と第2係合部17によって、回転ノブ5の軸方向xを中心とした回転移動をスライダー4の軸方向xの平行移動へと変換させることができる。
【0030】
第1係合部16と第2係合部17は、連続的または断続的にらせん状に1周以上延びるように形成されてもよく、1周未満となるように形成されてもよい。なお、第1係合部16と第2係合部17の少なくとも一方は、連続的または断続的にらせん状に1周以上延びるように形成されることが好ましく、2周以上延びるように形成されることがより好ましく、3周以上延びるように形成されることがさらに好ましい。一方、第1係合部16と第2係合部17の他方は、連続的または断続的にらせん状に1周未満となるように形成されてもよく、例えば、らせん状に半周のみ延びるように設けられてもよい。図面に示したハンドル1では、スライダー4に設けられた第1係合部16が、らせん状に1周以上延びるように形成され、回転ノブ5に設けられた第2係合部17が、らせん状に1周未満延びるように形成されている。
【0031】
第1係合部16と第2係合部17は、凸部と溝の組み合わせにより形成することができる。すなわち、第1係合部16と第2係合部17は、一方が凸部であり他方が溝であることが好ましい。なお、溝として第1係合部16または第2係合部17が形成される場合、溝はらせん状に連続的に延びるように形成されることが好ましい。溝は、有底溝であってもよく、貫通溝であってもよいが、スライダー4または回転ノブ5の強度を確保する点から、溝は有底溝であることが好ましい。一方、凸部として第1係合部16または第2係合部17が形成される場合は、凸部は連続的に延びるらせん状に設けられても、断続的に延びるらせん状に設けられてもよい。図面では、スライダー4に設けられた第1係合部16が凸部(凸条)として形成され、回転ノブ5に設けられた第2係合部17が溝として形成されている。
【0032】
ハンドル1の内部空間からチューブ22の内腔にかけて第1ワイヤ6と第2ワイヤ7が配置される。第1ワイヤ6と第2ワイヤ7はそれぞれ、遠位部がチューブ22の内腔に配置され、近位部が回転ノブ5の内腔に配置される。第1ワイヤ6は、遠位端部がチューブ22の遠位端部に固定されることが好ましく、第2ワイヤ7は、遠位端部がチューブ22の遠位端部に固定されることが好ましい。この場合、ハンドル1を操作して第1ワイヤ6を近位側に引っ張ることにより、チューブ22の遠位端部を一方側に曲げることができ、ハンドル1を操作して第2ワイヤ7を近位側に引っ張ることにより、チューブ22の遠位端部を他方側に曲げることができる。第1ワイヤ6の遠位端部は、例えば第1ワイヤ6の遠位端から近位側に100mm以内の部分として規定することができ、第2ワイヤ7の遠位端部は、例えば第2ワイヤ7の遠位端から近位側に100mm以内の部分として規定することができる。チューブ22の遠位端部は、例えばチューブ22の遠位端から近位側に100mm以内の部分として規定することができる。
【0033】
第1ワイヤ6の近位部と第2ワイヤ7の近位部は、回転ノブ5の内腔で、シャフト3またはチューブ22の内腔からその外側に延出することが好ましい。また、スライダー4が最も遠位側に変位した状態で、スライダー4の遠位端よりも遠位側で、第1ワイヤ6の近位部と第2ワイヤ7の近位部がシャフト3またはチューブ22の内腔からその外側に延出することが好ましい。
【0034】
ハンドル1の内部空間には、近位側で屈曲し、両端が遠位側に向かって延びる線状部材8が設けられる(
図3を参照)。線状部材8は、線状部材8の延在方向に対して一方端と他方端を有し、一方端を含む部分が第1端部として規定され、他方端を含む部分が第2端部として規定される。線状部材8は、ハンドル本体2の内腔と回転ノブ5の内腔に配置され、第1端部が第1接続部9で第1ワイヤ6の近位部に接続され、第2端部が第2接続部10で第2ワイヤ7の近位部に接続される。
【0035】
線状部材8の第1端部と第2端部の間の中間部は、ハンドル本体2の内腔において近位側に屈曲して配置されている。線状部材8の中間部の一部はスライダー4と軸方向xに重なるように配置され、線状部材8の第1端部(第1接続部9で第1ワイヤ6に接続した部分)と第2端部(第2接続部10で第2ワイヤ7に接続した部分)がスライダー4の遠位端よりも遠位側に位置する。
【0036】
第1接続部9と第2接続部10において、線状部材8の第1ワイヤ6および第2ワイヤ7への接続は、接着、溶着、カシメ、結索等の公知の接合手段により行うことができる。
【0037】
ハンドル本体2の内腔には、線状部材8の中間部での屈曲をガイドするための反転ガイド14が設けられ、線状部材8の中間部の少なくとも一部が反転ガイド14に当接している。反転ガイド14は、ハンドル本体2に固定されており、ハンドル1の操作の際、ハンドル本体2に対して回転したり移動したりしないように設けられる。反転ガイド14はハンドル本体2と一体的に形成されてもよい。あるいは、反転ガイド14は、軸方向xの異なる位置でハンドル本体2に固定可能となっていてもよい。
図3では、反転ガイド14はネジ止めによりハンドル本体2に固定されている。
【0038】
反転ガイド14は、軸方向xに対して、スライダー4と重なる位置に設けられるか、スライダー4よりも近位側に設けられることが好ましい。より好ましくは、スライダー4が最も近位側に変位した状態で、スライダー4よりも近位側に設けられる。
【0039】
反転ガイド14には、線状部材8を遠位側にUターンさせるガイド通路が設けられ、当該ガイド通路に線状部材8が当接する。ガイド通路は、軸方向xに沿った平面視で、近位側に凸となるU字状または弧状(例えば、半円状)に形成されることが好ましい。ガイド通路は管状通路として形成されることが好ましく、線状部材8の中間部が、管状通路の内腔に挿通されることが好ましい。
【0040】
線状部材8は、ハンドル1の内部空間において、反転ガイド14より第1端部側の部分と反転ガイド14より第2端部側の部分とが連動して、軸方向xに変位可能となっている。線状部材8は、反転ガイド14より第1端部側の部分が、反転ガイド14との当接部分を介して、反転ガイド14より第2端部側の部分と繋がっているため、反転ガイド14より第1端部側の部分が近位側に変位することにより、反転ガイド14より第2端部側の部分が遠位側に変位することができ、反転ガイド14より第1端部側の部分が遠位側に変位することにより、反転ガイド14より第2端部側の部分が近位側に変位することができる。
【0041】
線状部材8は、反転ガイド14と当接する部分より第1端部側の部分で、スライダー4に固定されている。
図3では、スライダー4に設けられた固定具15で、線状部材8がスライダー4に固定されている。これにより、回転ノブ5を軸方向xを中心として回転させると、スライダー4が軸方向xに変位し、それに合わせて線状部材8の反転ガイド14より第1端部側の部分を軸方向xに変位させることができるとともに、線状部材8の反転ガイド14より第2端部側の部分をそれとは反対の軸方向xに変位させることができる。具体的には、スライダー4が近位側に変位すると、それに合わせて線状部材8の反転ガイド14より第1端部側の部分が近位側に変位し、線状部材8の反転ガイド14より第2端部側の部分が遠位側に変位する。スライダー4が遠位側に変位すると、それに合わせて線状部材8の反転ガイド14より第1端部側の部分が遠位側に変位し、線状部材8の反転ガイド14より第2端部側の部分が近位側に変位する。これにより、チューブ22の内腔に配置された第1ワイヤ6と第2ワイヤ7を近位側に引いたり遠位側に押し込むことができ、例えばチューブ22の遠位端部の曲がりを制御したりすることができる。例えば、回転ノブ5を手元側から見て右回りに回転させることにより、チューブ22の遠位端部を一方側に曲げ、回転ノブ5を手元側から見て左回りに回転させることにより、チューブ22の遠位端部を他方側に曲げることができる。
【0042】
線状部材8は、スライダー4が最も近位側に変位した状態で、反転ガイド14と当接する部分より第1端部側の部分が、スライダー4に固定されている。このように線状部材8をスライダー4に固定することで、スライダー4の軸方向xの変位に関わらず、線状部材8が反転ガイド14との当接部分より第1端部側の部分でスライダー4に固定されることとなる。一方、線状部材8は、反転ガイド14との当接部分より第2端部側の部分でスライダー4に固定されないことが好ましく、詳細には、線状部材8は、スライダー4が最も近位側に変位した状態で、反転ガイド14との当接部分より第2端部側の部分が、スライダー4に固定されないことが好ましい。
【0043】
線状部材8は、スライダー4と軸方向xに重なる部分において、スライダー4の内腔すなわち軸方向xに延びる貫通穴に配置されることが好ましい。従って、スライダー4の貫通穴の内面とシャフト3との間には、軸方向xに延びる隙間(スライダー4を軸方向xに貫通する隙間)が形成され、当該隙間に線状部材8が配置されることが好ましい。
【0044】
線状部材8は、スライダー4の内面に固定されることが好ましい。
図3では、スライダー4の内面に線状部材8の固定具15が設置され、この固定具15に線状部材8が固定されているが、線状部材8は、スライダー4の内面に接着剤等で直接固定されてもよい。スライダー4の内面に線状部材8を直接固定する場合は、固定具15はなくてもよい。線状部材8の固定具15またはスライダー4の内面への固定方法としては、接着剤による接着、溶着、嵌合、カシメ、結索、ネジ止め等が挙げられる。
【0045】
なお、図面には示されていないが、スライダー4は内層と外層を有し、線状部材8が内層と外層の間に配置されてもよい。この場合、線状部材8は、内層と外層の間に挟まれることで、スライダー4に固定されることとなる。
【0046】
ハンドル1は、線状部材8の第1端部が第1ワイヤ6に接続された第1接続部9と、線状部材8の第2端部が第2ワイヤ7に接続された第2接続部10が、スライダー4が最も遠位側に変位した状態で、スライダー4の遠位端よりも遠位側に位置する(
図5を参照)。このように第1接続部9と第2接続部10が位置することにより、スライダー4の軸方向xへの変位に関わらず、第1ワイヤ6と第2ワイヤ7をスライダー4の遠位端よりも遠位側に位置させることができる。そのため、スライダー4を軸方向xに変位させたときに、第1ワイヤ6と第2ワイヤ7がスライダー4に接触することが抑えられる。その結果、スライダー4をスムーズに軸方向xに変位させることができ、またスライダー4が第1ワイヤ6や第2ワイヤ7に接触することにより異音が発生することを抑えることができる。
【0047】
これについて、
図2、
図5および
図6を参照して詳しく説明する。
図5には、ハンドル1においてスライダー4が最も遠位側に変位した状態が示され、
図6には、ハンドル1においてスライダー4が最も近位側に変位した状態が示され、
図2には、ハンドル1においてスライダー4が軸方向xのほぼ中間に位置した状態が示されている。線状部材8は、反転ガイド14と当接する部分より第1端部側の部分で、スライダー4に固定されているため、スライダー4を軸方向xに変位させても、第1接続部9とスライダー4の遠位端との間の軸方向xの長さは変わらない。そのため、第1接続部9がスライダー4の遠位端より位置するように線状部材8をスライダー4に固定することにより、スライダー4の軸方向xへの変位に関わらず、第1接続部9をスライダー4の遠位端よりも遠位側に位置させることができる。一方、第2接続部10は、スライダー4の軸方向xへの変位によってスライダー4との軸方向xの相対位置が変化し、スライダー4が最も遠位側に変位したときに第2接続部10が最も近位側に位置する。そのため、スライダー4が最も遠位側に変位した状態で第2接続部10がスライダー4の遠位端よりも遠位側に位置していれば、スライダー4の軸方向xへの変位に関わらず、第2接続部10をスライダー4の遠位端よりも遠位側に位置させることができる。
【0048】
第1接続部9と第2接続部10は、スライダー4が最も遠位側に変位した状態で、少なくとも一部がスライダー4の遠位端よりも遠位側に位置すればよいが、第1接続部9と第2接続部10の全体が、スライダー4が最も遠位側に変位した状態で、スライダー4の遠位端よりも遠位側に位置することが好ましい。また、第1ワイヤ6と第2ワイヤ7の全体が、スライダー4が最も遠位側に変位した状態で、スライダー4の遠位端よりも遠位側に位置することが好ましい。
【0049】
第1ワイヤ6、第2ワイヤ7、線状部材8としては、ステンレス鋼、炭素鋼、ニッケルチタン合金等の金属線材や、ポリアミド樹脂(例えば、ナイロン)、ポリオレフィン樹脂(例えば、ポリエチレンやポリプロピレン)、ポリエステル樹脂(例えば、PET)、芳香族ポリエーテルケトン樹脂(例えば、PEEK)、ポリイミド樹脂、芳香族ポリアミド樹脂(例えば、アラミド)、フッ素樹脂(例えば、PTFE、PFA、FEP、ETFE)等の合成樹脂から形成された樹脂線材(すなわち繊維材料)を用いることができる。これらの金属線材や樹脂線材は、モノフィラメント構造を有していてもよく、マルチフィラメント構造を有していてもよい。第1ワイヤ6、第2ワイヤ7、線状部材8は、コイル状の金属や合成樹脂によって形成された筒体によって被覆されていてもよい。
【0050】
第1ワイヤ6と第2ワイヤ7と線状部材8は、同じ材料から構成されてもよく、異なる材料から構成されてもよい。なお、線状部材8は、第1ワイヤ6と第2ワイヤ7とは異なる材料から構成されていることが好ましい。線状部材8は反転ガイド14で比較的小さい屈曲半径で屈曲させることができるように、曲げやすい材料から構成されることが好ましい。一方、第1ワイヤ6と第2ワイヤ7は、チューブ22の内腔に配置され、ハンドル1での線状部材8の軸方向xの動きが、第1ワイヤ6と第2ワイヤ7を介してチューブ22の遠位端部まで好適に伝わることが求められることから、比較的剛性の高い材料から構成されることが好ましく、線状部材8よりも屈曲性は求められない。従って、線状部材8は、第1ワイヤ6と第2ワイヤ7よりも曲げ剛性が小さいことが好ましい。
【0051】
線状部材8、第1ワイヤ6、第2ワイヤ7の曲げ剛性は、例えばJIS L 1913:2010の剛軟度試験に従い測定し、その結果から曲げ剛性の大小を比較することができる。あるいは、カトーテック社製の一本曲げ試験機KES-FB2-SHや純曲げ試験機KES-FB2-Sなどの曲げ試験機を用いて測定し、曲げ剛性の大小を比較することもできる。
【0052】
線状部材8としては繊維ロープを用いることが好ましい。これにより、線状部材8の強度を確保しつつ、線状部材8を反転ガイド14でスムーズに屈曲させやすくなる。繊維ロープは、撚糸を撚り合わせてストランドとし、さらにこれを撚り合わせるなどして形成される。そのため、繊維ロープの表面には、撚り合わせによる大きな凹凸が形成され、反転ガイド14との接触面積を減らすことができ、反転ガイド14における滑り性を高めることができる。また、線状部材8の軸方向xへの剛性を確保しやすくなり、第1端部と反転ガイド14との間および第2端部と反転ガイド14との間で線状部材8が撓むのを抑えることができる。
【0053】
繊維ロープは、破断を防止する点から高強度の繊維材料から構成されることが好ましく、いわゆるスーパー繊維から構成されることが好ましい。スーパー繊維としては、例えば、アラミド繊維、超高分子量ポリエチレン繊維、ポリアリレート繊維、超高強力ポリビニルアルコール繊維、ポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール(PBO)繊維、ポリフェニレンサルファイド(PPS)繊維等が挙げられる。スーパー繊維は、例えば、引張強度が1GPa以上、好ましく2GPa以上であり、弾性率が25GPa以上、好ましく50GPa以上であることが好ましい。
【0054】
第1ワイヤ6と第2ワイヤ7は金属線材であることが好ましい。これにより、チューブ22の内腔に配置された第1ワイヤ6と第2ワイヤ7を近位側に引いたり遠位側に押し込むことにより、チューブ22の遠位端部の曲がり等を反応性良く制御することが容易になる。第1ワイヤ6と第2ワイヤ7は、金属材料から構成されたワイヤーロープであってもよい。
【0055】
線状部材8、第1ワイヤ6、第2ワイヤ7の外径は、例えば100μm~1500μm程度とすることができる。なお、ここで説明した外径は、断面形状が円形の場合は直径を意味し、断面形状が非円形の場合は長径と短径の平均値を表す。長径は、断面形状の外縁の長軸方向の長さ(外縁の最大径)を意味し、短径とは、長軸方向に対して垂直方向となる短軸方向の長さのうちの最も長くなる長さを意味する。
【0056】
線状部材8の外径は、第1ワイヤ6の外径と第2ワイヤ7の外径よりも大きいことが好ましい。線状部材8の外径をある程度大きく形成することで、スライダー4を軸方向xに変位させ、線状部材8をハンドル本体2の内腔や回転ノブ5の内腔で軸方向xに変位させたときに、線状部材8がスライダー4や回転ノブ5に巻き込まれたり、引っ掛かったりすることが起こりにくくなる。
【0057】
図7に示すように、第1ワイヤ6の近位端部は環状に形成された第1環状部11を有し、線状部材8の第1端部が第1環状部11に結ばれることにより第1接続部9が形成されることが好ましい。第2ワイヤ7の近位端部は環状に形成された第2環状部12を有し、線状部材8の第2端部が第2環状部12に結ばれることにより第2接続部10が形成されることが好ましい。これにより、第1接続部9と第2接続部10が線状部材8の結び目13として形成され、結び目13によって第1接続部9と第2接続部10がある程度の大きさで形成される。その結果、スライダー4の内面とシャフト3との間の隙間に第1接続部9と第2接続部10が入り込みにくくなり、スライダー4を軸方向xに変位させたときに線状部材8が撓んでも、第1ワイヤ6と第2ワイヤ7がスライダー4に接触することが抑えられる。また、第1接続部9と第2接続部10がクッションとしての役割を果たすことができ、第1接続部9と第2接続部10がスライダー4に接触しても異音の発生がより抑えられる。結び目13は、スライダー4が最も遠位側に変位した状態で、少なくとも一部がスライダー4の遠位端よりも遠位側に位置していればよいが、結び目13の全体が、スライダー4が最も遠位側に変位した状態で、スライダー4の遠位端よりも遠位側に位置することが好ましい。
【0058】
第1環状部11は、第1ワイヤ6の近位端部が環状に形成されることにより、形成されることが好ましい。第2環状部12は、第2ワイヤ7の近位端部が環状に形成されることにより、形成されることが好ましい。
図7に示すように、第1ワイヤ6の近位端部を折り曲げて環状に形成し、第1ワイヤ6どうしを接合することで、第1環状部11を形成することができ、第2ワイヤ7の近位端部を折り曲げて環状に形成し、第2ワイヤ7どうしを接合することで、第2環状部12を形成することができる。このように第1環状部11と第2環状部12が形成されることにより、第1環状部11が第1ワイヤ6と一体的に形成され、第2環状部12が第2ワイヤ7と一体的に形成され、第1環状部11と第2環状部12を簡便かつ強固に形成することができる。
【0059】
第1ワイヤ6どうしの接合、第2ワイヤ7どうしの接合は、接着、溶着、半田付け、カシメ、結索等の公知の接合手段により行うことができる。なかでも第1ワイヤ6どうし、第2ワイヤ7どうしを強固に接合することができる点から、半田付け、カシメ、またはこれらの組み合わせにより接合することが好ましい。第1環状部11と第2環状部12は、環状部材を第1ワイヤ6の近位端部または第2ワイヤ7の近位端部に取り付けることにより形成されてもよい。
【0060】
線状部材8を第1環状部11または第2環状部12へ結ぶ際には種々の結び方を採用することができ、その種類は特に限定されない。結び方の種類としては、一重結び、二重結び、もやい結び、巻き結び、8の字結び、S字結び、てぐす結び、縦結び、引き結び等が挙げられる。
【0061】
線状部材8の第1端部が第1環状部11に結ばれることにより形成された結び目13は、接着剤により固められている、または、溶融固化されていることが好ましい。線状部材8の第2端部が第2環状部12に結ばれることにより形成された結び目13は、接着剤により固められている、または、溶融固化されていることが好ましい。これにより、第1接続部9における線状部材8の結び目13と第2接続部10における線状部材8の結び目13が解けにくくなり、線状部材8を第1ワイヤ6と第2ワイヤ7に強固に結びつけることができる。
【0062】
結び目13は接着剤により固められていることがより好ましい。すなわち、結び目13に接着剤が塗布され、接着剤が固化することにより、結び目13が固められていることが好ましい。これにより、線状部材8の構成材料によらず線状部材8の結び目13を固めることが容易になる。
【0063】
線状部材8のスライダー4への固定位置(固定具15が設けられる場合は固定具15の設置位置)は特に限定されないが、線状部材8は、スライダー4の少なくとも遠位側1/2の部分でスライダー4に固定されることが好ましく、スライダー4の少なくとも遠位側1/3の部分でスライダー4に固定されることがより好ましい。このように線状部材8がスライダー4に固定されることにより、線状部材8のスライダー4への固定箇所から第1端部までの長さを短くすることができる。そのため、スライダー4を遠位側に変位させたときに、スライダー4の遠位端よりも遠位側の部分で線状部材8が撓みにくくなり、第1ワイヤ6がスライダー4に接触することがより起こりにくくなる。
【0064】
線状部材8は、スライダー4の少なくとも近位側1/3の部分でスライダー4に固定されることも好ましい。このように線状部材8がスライダー4に固定されることにより、線状部材8のスライダー4への固定箇所から反転ガイド14までの長さを短くすることができる。そのため、スライダー4を近位側に変位させたときに、線状部材8のスライダー4への固定位置と反転ガイド14との間の部分で線状部材8が撓みにくくなり、線状部材8がスムーズに反転ガイド14に導入されやすくなる。
【0065】
なおハンドル1は、スライダー4を近位側に変位させたときに線状部材8のスライダー4への固定箇所から第2端部までの部分が撓んでも、チューブ22の遠位端部が一方側に曲げられることで第2ワイヤ7が遠位側に引っ張られ、線状部材8の撓みを解消することができる。すなわち、スライダー4を近位側に変位させると第1ワイヤ6が近位側に引っ張られ、これによりチューブ22の遠位端部が一方側に曲げられ、これに伴い第2ワイヤ7がチューブ22の内腔に引き込まれ遠位側に引っ張られる。その結果、線状部材8のスライダー4への固定箇所から第2端部までの部分に撓みが生じても、当該撓みが解消される。同様に、スライダー4を遠位側に変位させたときに線状部材8のスライダー4への固定箇所から第1端部までの部分が撓んでも、チューブ22の遠位端部が他方側に曲げられることで第1ワイヤ6が遠位側に引っ張られ、線状部材8の撓みを解消することができる。すなわち、スライダー4を遠位側に変位させると第2ワイヤ7が近位側に引っ張られ、これによりチューブ22の遠位端部が他方側に曲げられ、これに伴い第1ワイヤ6がチューブ22の内腔に引き込まれ遠位側に引っ張られる。その結果、線状部材8のスライダー4への固定箇所から第1端部までの部分に撓みが生じても、当該撓みが解消される。
【0066】
ハンドル1は、回転ノブ5を軸方向xを中心として回転させた際に、スライダー4が回転ノブ5とともに回転しないようにするために、次のように構成されることが好ましい。すなわち、スライダー4の外面に第3係合部18が設けられ、ハンドル本体2の内面に第3係合部18と係合する第4係合部19が設けられ、第3係合部18と第4係合部19の少なくとも一方が軸方向xに延びるように形成されていることが好ましい。これにより、スライダー4が軸方向xを中心に回転することなく、スライダー4を軸方向xに沿って変位させることができる。
【0067】
第3係合部18と第4係合部19は、凸部と溝の組み合わせにより形成することができる。すなわち、第3係合部18と第4係合部19は、一方が凸部であり他方が溝であることが好ましい。図面に示したハンドル1では、スライダー4の外面に設けられた第3係合部18が凸部として形成され、ハンドル本体2の内面に設けられた第4係合部19が溝として形成されている。
【0068】
溝として形成される第3係合部18または第4係合部19は、軸方向xに延びるように形成されることが好ましく、軸方向xに連続的に延びるように形成されることがより好ましい。溝は、有底溝であってもよく、貫通溝であってもよいが、スライダー4またはハンドル本体2の強度を確保する点から、溝は有底溝であることが好ましい。一方、凸部として形成される第3係合部18または第4係合部19は、軸方向xに延びるように形成されてもよく、そうでなくてもよい。
【0069】
図面に示されるように、第3係合部18が凸部として形成され、第4係合部19が溝として形成される場合、スライダー4の外面に第3係合部18として形成された凸部は、スライダー4において、第1係合部16よりも近位側に配置されることが好ましい。ハンドル本体2の内面に第4係合部19として形成された溝の少なくとも一部は、反転ガイド14よりも遠位側に配置されることが好ましい。
【0070】
なお、図面には示されていないが、スライダー4の外面に第3係合部18として溝が形成される場合は、当該溝は、スライダー4において、第1係合部16と軸方向xに重なる位置に形成されてもよく、第1係合部16よりも近位側に形成されてもよい。この場合、ハンドル本体2の内面に第4係合部19として形成された凸部は、少なくとも一部が、反転ガイド14よりも遠位側に配置されることが好ましい。
【0071】
以上、本発明のカテーテルハンドルについて説明したが、本発明のカテーテルハンドルは、チューブの内腔で第1ワイヤと第2ワイヤを遠位側または近位側に変位させるものであれば、チューブの遠位端部の曲がりを制御するものに限定されない。例えば、カテーテルハンドルを操作することによって、第1ワイヤおよび/または第2ワイヤをチューブの遠位端から出し入れできるものであってもよい。あるいは、第1ワイヤの遠位端部や第2ワイヤの遠位端部にナイフやスネアなどの処置具を取り付け、カテーテルハンドルを操作することによって、第1ワイヤの遠位端部や第2ワイヤの遠位端部に取り付けた処置具がチューブの遠位端から出し入れできるものであってもよい。
【符号の説明】
【0072】
1:カテーテルハンドル
2:ハンドル本体
3:シャフト
4:スライダー
5:回転ノブ
6:第1ワイヤ
7:第2ワイヤ
8:線状部材
9:第1接続部
10:第2接続部
11:第1環状部
12:第2環状部
13:結び目
14:反転ガイド
15:固定具
16:第1係合部
17:第2係合部
18:第3係合部
19:第4係合部
21:カテーテル
22:チューブ