IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社カネカの特許一覧

特開2024-136429カテーテルハンドルおよびそれを備えたカテーテル
<>
  • 特開-カテーテルハンドルおよびそれを備えたカテーテル 図1
  • 特開-カテーテルハンドルおよびそれを備えたカテーテル 図2
  • 特開-カテーテルハンドルおよびそれを備えたカテーテル 図3
  • 特開-カテーテルハンドルおよびそれを備えたカテーテル 図4
  • 特開-カテーテルハンドルおよびそれを備えたカテーテル 図5
  • 特開-カテーテルハンドルおよびそれを備えたカテーテル 図6
  • 特開-カテーテルハンドルおよびそれを備えたカテーテル 図7
  • 特開-カテーテルハンドルおよびそれを備えたカテーテル 図8
  • 特開-カテーテルハンドルおよびそれを備えたカテーテル 図9
  • 特開-カテーテルハンドルおよびそれを備えたカテーテル 図10
  • 特開-カテーテルハンドルおよびそれを備えたカテーテル 図11
  • 特開-カテーテルハンドルおよびそれを備えたカテーテル 図12
  • 特開-カテーテルハンドルおよびそれを備えたカテーテル 図13
  • 特開-カテーテルハンドルおよびそれを備えたカテーテル 図14
  • 特開-カテーテルハンドルおよびそれを備えたカテーテル 図15
  • 特開-カテーテルハンドルおよびそれを備えたカテーテル 図16
  • 特開-カテーテルハンドルおよびそれを備えたカテーテル 図17
  • 特開-カテーテルハンドルおよびそれを備えたカテーテル 図18
  • 特開-カテーテルハンドルおよびそれを備えたカテーテル 図19
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024136429
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】カテーテルハンドルおよびそれを備えたカテーテル
(51)【国際特許分類】
   A61M 25/092 20060101AFI20240927BHJP
【FI】
A61M25/092 510
A61M25/092 500
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023047544
(22)【出願日】2023-03-24
(71)【出願人】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(74)【代理人】
【識別番号】110002837
【氏名又は名称】弁理士法人アスフィ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】金子 卓弥
【テーマコード(参考)】
4C267
【Fターム(参考)】
4C267AA12
4C267BB04
4C267BB07
4C267BB40
4C267BB52
4C267CC08
4C267CC22
4C267CC26
4C267HH08
(57)【要約】
【課題】スライダーの変位範囲を細かく調整することができるカテーテルハンドルとそれを備えたカテーテルを提供する。
【解決手段】カテーテルのチューブを操作するためのハンドルであって、ハンドル本体2と、ハンドル本体2の内腔に配置され、長手方向に変位可能に設けられたスライダー3と、遠位部がチューブの内腔に配置され、近位部がスライダー3に接続された線状部材とを備え、ハンドル本体2の内面には、長手方向に交互に並んだ凹部12と凸部から構成された保持部11が設けられ、ストッパー21は、保持部11の凹部12に嵌め込まれる突起部と、スライダー3と当接する第1当接部と第2当接部を有し、第1当接部が第2当接部よりも近位側および遠位側に位置するように保持部11に保持可能に形成され、突起部と第1当接部との間の長手方向の距離が、突起部と第2当接部との間の長手方向の距離と異なる。
【選択図】図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
カテーテルのチューブを操作するためのハンドルであって、
近位側から遠位側に長手方向に延びる内腔を有するハンドル本体と、
前記ハンドル本体の内腔に配置され、前記長手方向に変位可能に設けられたスライダーと、
遠位部が前記チューブの内腔に配置され、近位部が前記スライダーに直接または間接的に接続された線状部材とを備え、
前記ハンドル本体の内面には、前記長手方向に交互に並んだ凹部と凸部から構成された保持部が設けられ、
前記保持部にはストッパーが保持され、前記スライダーが前記ストッパーと当接することにより、前記スライダーの前記長手方向への変位範囲が制限され、
前記ストッパーは、前記保持部の前記凹部に嵌め込まれる突起部と、前記スライダーとの当接箇所を有する第1当接部と第2当接部を有し、
前記ストッパーは、前記第1当接部が前記第2当接部よりも近位側に位置するように前記保持部に保持可能に形成されるとともに、前記第1当接部が前記第2当接部よりも遠位側に位置するように前記保持部に保持可能に形成されており、
前記ストッパーが前記保持部に保持された状態において、前記突起部と前記第1当接部との間の前記長手方向の距離が、前記突起部と前記第2当接部との間の前記長手方向の距離と異なるカテーテルハンドル。
【請求項2】
前記ハンドル本体の内面には、前記保持部として、前記スライダーの近位側への変位を制限するストッパーを保持するための第1保持部と第2保持部が設けられ、
前記第1保持部は、前記第2保持部に対して、前記ハンドル本体の内面の周方向の異なる位置に設けられるとともに、前記長手方向に重なる位置に設けられている請求項1に記載のカテーテルハンドル。
【請求項3】
前記ハンドル本体の内面には、前記保持部として、前記スライダーの遠位側への変位を制限するストッパーを保持するための第3保持部と第4保持部が設けられ、
前記第3保持部は、前記第4保持部に対して、前記ハンドル本体の内面の周方向の異なる位置に設けられるとともに、前記長手方向に重なる位置に設けられている請求項1に記載のカテーテルハンドル。
【請求項4】
前記ハンドル本体の内面には、前記保持部として、前記スライダーの近位側への変位を制限するストッパーを保持するための第1保持部と第2保持部と、前記スライダーの遠位側への変位を制限するストッパーを保持するための第3保持部と第4保持部が設けられ、
前記第1保持部は、前記第2保持部に対して、前記ハンドル本体の内面の周方向の異なる位置に設けられるとともに、前記長手方向に重なる位置に設けられており、
前記第3保持部は、前記第4保持部に対して、前記ハンドル本体の内面の周方向の異なる位置に設けられるとともに、前記長手方向に重なる位置に設けられている請求項1に記載のカテーテルハンドル。
【請求項5】
前記保持部における前記凹部の前記長手方向の配置ピッチは0.5mm以上4.0mm以下である請求項1に記載のカテーテルハンドル。
【請求項6】
前記ストッパーは複数の前記突起部を有し、前記ストッパーが前記保持部に保持された状態で、複数の前記突起部は複数の前記凹部に嵌め込まれる請求項1に記載のカテーテルハンドル。
【請求項7】
前記ハンドルは、前記長手方向に延びる回転軸を有し、前記ハンドル本体に対して回転可能に設けられた回転ノブを有しており、
前記回転ノブは前記長手方向に延びる内腔を有し、当該内腔に前記スライダーの一部が配置され、
前記スライダーの外面に第1係合部が設けられ、前記回転ノブの内面に前記第1係合部に係合する第2係合部が設けられ、
前記第1係合部と前記第2係合部の少なくとも一方が、らせん状に延びるように配置されている請求項1に記載のカテーテルハンドル。
【請求項8】
前記ハンドルは、前記長手方向に延びる回転軸を有し、前記ハンドル本体に対して回転可能に設けられた回転ノブを有しており、
前記スライダーは前記長手方向に延びる内腔を有し、当該内腔に前記回転ノブの一部が配置され、
前記スライダーの内面に第1係合部が設けられ、前記回転ノブの外面に前記第1係合部に係合する第2係合部が設けられ、
前記第1係合部と前記第2係合部の少なくとも一方が、らせん状に延びるように配置されている請求項1に記載のカテーテルハンドル。
【請求項9】
前記ハンドルは、前記長手方向の垂直方向に延びる回転軸を有する回転部材を有しており、
前記スライダーに第1係合部が設けられ、前記回転部材の外面に前記第1係合部に係合する第2係合部が設けられ、
前記第1係合部を有する前記スライダーがラックとして機能し、前記第2係合部を有する前記回転部材がピニオンとして機能する請求項1に記載のカテーテルハンドル。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか一項に記載のカテーテルハンドルと、
前記カテーテルハンドルの遠位側に設けられたチューブとを有するカテーテル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カテーテルに用いられるハンドルと、それを備えたカテーテルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
カテーテルは、通常、血管や消化管や尿管などの体腔に挿入するためのチューブと、チューブの近位側に設けられたハンドルとから構成されている。カテーテルには、手元側のハンドルを操作してチューブの遠位端部を屈曲できるように構成されたものが知られている。このようなカテーテルは、チューブの内腔にワイヤが配され、ワイヤの遠位端部がチューブの遠位端部に固定され、ワイヤの近位端部がハンドルの内部に配置され、ハンドルを操作することによりチューブの遠位端部を屈曲できるようになっている。例えば、ハンドルの内部にスライダーが配置され、スライダーにワイヤが接続され、ハンドルを操作してスライダーをハンドルの長手方向に変位させることにより、チューブの内腔に配置されたワイヤを近位側に引いたり遠位側に押し込むことができ、これによりチューブの遠位端部を屈曲させることができる。
【0003】
このようなカテーテルハンドルとして、例えば特許文献1には、第1のワイヤと第2ワイヤを含むカテーテルの末端のたわみを制御するためのカテーテルハンドルであって、スライド室を有するスライドベースと、スライドベースに回転可能に結合され、内腔に内側右ねじと内側左ねじが形成された調整ノブと、スライド室内に配置され、第1のワイヤが結合し、外側右ねじが形成された第1のスライドと、スライド室内に配置され、第2のワイヤが結合し、外側左ねじが形成された第2のスライドとを有し、調整ノブの内側ねじがスライドの外側ねじと係合し、調整ノブの回転によって第1のスライドと第2のスライドがスライド室内で互いに反対方向に変位するように構成されたカテーテルハンドルが開示されている。
【0004】
特許文献2には、先端部がカテーテルの先端領域に結合された2つの制御ワイヤを備えたカテーテルハンドルであって、ハウジングと、ハウジング内に配置され、ハウジング内で直線的に並進するように構成された摺動アセンブリと、ハウジングに対して回転自在に設けられた制御ノブを有し、前記2つの制御ワイヤの基端部がハウジング内に配置され、摺動アセンブリを直線的に並進させることによって摺動アセンブリが2つの制御ワイヤのそれぞれを別個に操作するように構成され、制御ノブを第1の回転方向へ回転させることによって、摺動アセンブリが先端側へ変位して2つの制御ワイヤの一方に張力をかけ、それによりカテーテルが第1の偏向方向に偏向し、制御ノブを第2の回転方向へ回転させることによって、摺動アセンブリが基端側へ変位して2つの制御ワイヤの他方に張力をかけ、それによりカテーテルが第2偏向方向に偏向するように構成されたカテーテルハンドルが開示されている。
【0005】
特許文献3には、カテーテルのチューブの先端可撓部分を操作するためのカテーテルハンドルであって、ハウジングと、ハウジングの軸方向を中心に回転可能に設けられた回転操作部と、ハウジングの内部に配置され、前記軸方向に移動可能な第1スライダーと第2スライダーと、第1スライダーと接離可能に配置され、チューブの先端部分を第1方向に偏向させるための第1操作用ワイヤの基端部が固定され、前記軸方向に移動可能な第1アンカーと、第2スライダーと接離可能に配置され、チューブの先端部分を第2方向に偏向させるための第2操作用ワイヤの基端部が固定され、前記軸方向に移動可能な第2アンカーと、回転操作部の回転運動を、第1スライダーおよび第2スライダーを互いに反対の前記軸方向へ等しい距離移動させる直線運動に変換する送り機構とを有するカテーテルハンドルが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006-187606号公報
【特許文献2】特表2015-523892号公報
【特許文献3】特開2018-99480号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
カテーテルでは、ハンドルを操作してチューブの遠位端部の動きを適切に制御できることが望ましい。例えば特許文献1~3に開示されたカテーテルであれば、チューブの内腔にワイヤが配され、ワイヤの遠位端部がチューブの遠位端部に固定され、ワイヤの近位端部がハンドルの内部に設けられたスライダーに接続されているが、スライダーの変位範囲を細かく調整できることが望ましい。これにより、ハンドルを操作して、チューブの遠位端部の動きを適切に制御することができるようになる。その結果、カテーテルによってより正確な施術が可能となり、またカテーテルを体腔に挿入して使用する際に、不用意に体腔を傷つけたりすることを防ぐことができる。
【0008】
本発明は前記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、内部にスライダーを備えたカテーテルハンドルであって、スライダーの変位範囲を細かく調整することができるカテーテルハンドルとそれを備えたカテーテルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決することができた本発明のカテーテルハンドルおよび当該カテーテルハンドルを備えたカテーテルは、下記の通りである。
[1] カテーテルのチューブを操作するためのハンドルであって、
近位側から遠位側に長手方向に延びる内腔を有するハンドル本体と、
前記ハンドル本体の内腔に配置され、前記長手方向に変位可能に設けられたスライダーと、
遠位部が前記チューブの内腔に配置され、近位部が前記スライダーに直接または間接的に接続された線状部材とを備え、
前記ハンドル本体の内面には、前記長手方向に交互に並んだ凹部と凸部から構成された保持部が設けられ、
前記保持部にはストッパーが保持され、前記スライダーが前記ストッパーと当接することにより、前記スライダーの前記長手方向への変位範囲が制限され、
前記ストッパーは、前記保持部の前記凹部に嵌め込まれる突起部と、前記スライダーとの当接箇所を有する第1当接部と第2当接部を有し、
前記ストッパーは、前記第1当接部が前記第2当接部よりも近位側に位置するように前記保持部に保持可能に形成されるとともに、前記第1当接部が前記第2当接部よりも遠位側に位置するように前記保持部に保持可能に形成されており、
前記ストッパーが前記保持部に保持された状態において、前記突起部と前記第1当接部との間の前記長手方向の距離が、前記突起部と前記第2当接部との間の前記長手方向の距離と異なるカテーテルハンドル。
[2] 前記ハンドル本体の内面には、前記保持部として、前記スライダーの近位側への変位を制限するストッパーを保持するための第1保持部と第2保持部が設けられ、
前記第1保持部は、前記第2保持部に対して、前記ハンドル本体の内面の周方向の異なる位置に設けられるとともに、前記長手方向に重なる位置に設けられている[1]に記載のカテーテルハンドル。
[3] 前記ハンドル本体の内面には、前記保持部として、前記スライダーの遠位側への変位を制限するストッパーを保持するための第3保持部と第4保持部が設けられ、
前記第3保持部は、前記第4保持部に対して、前記ハンドル本体の内面の周方向の異なる位置に設けられるとともに、前記長手方向に重なる位置に設けられている[1]に記載のカテーテルハンドル。
[4] 前記ハンドル本体の内面には、前記保持部として、前記スライダーの近位側への変位を制限するストッパーを保持するための第1保持部と第2保持部と、前記スライダーの遠位側への変位を制限するストッパーを保持するための第3保持部と第4保持部が設けられ、
前記第1保持部は、前記第2保持部に対して、前記ハンドル本体の内面の周方向の異なる位置に設けられるとともに、前記長手方向に重なる位置に設けられており、
前記第3保持部は、前記第4保持部に対して、前記ハンドル本体の内面の周方向の異なる位置に設けられるとともに、前記長手方向に重なる位置に設けられている[1]に記載のカテーテルハンドル。
[5] 前記保持部における前記凹部の前記長手方向の配置ピッチは0.5mm以上4.0mm以下である[1]~[4]のいずれかに記載のカテーテルハンドル。
[6] 前記ストッパーは複数の前記突起部を有し、前記ストッパーが前記保持部に保持された状態で、複数の前記突起部は複数の前記凹部に嵌め込まれる[1]~[5]のいずれかに記載のカテーテルハンドル。
[7] 前記ハンドルは、前記長手方向に延びる回転軸を有し、前記ハンドル本体に対して回転可能に設けられた回転ノブを有しており、
前記回転ノブは前記長手方向に延びる内腔を有し、当該内腔に前記スライダーの一部が配置され、
前記スライダーの外面に第1係合部が設けられ、前記回転ノブの内面に前記第1係合部に係合する第2係合部が設けられ、
前記第1係合部と前記第2係合部の少なくとも一方が、らせん状に延びるように配置されている[1]~[6]のいずれかに記載のカテーテルハンドル。
[8] 前記ハンドルは、前記長手方向に延びる回転軸を有し、前記ハンドル本体に対して回転可能に設けられた回転ノブを有しており、
前記スライダーは前記長手方向に延びる内腔を有し、当該内腔に前記回転ノブの一部が配置され、
前記スライダーの内面に第1係合部が設けられ、前記回転ノブの外面に前記第1係合部に係合する第2係合部が設けられ、
前記第1係合部と前記第2係合部の少なくとも一方が、らせん状に延びるように配置されている[1]~[6]のいずれかに記載のカテーテルハンドル。
[9] 前記ハンドルは、前記長手方向の垂直方向に延びる回転軸を有する回転部材を有しており、
前記スライダーに第1係合部が設けられ、前記回転部材の外面に前記第1係合部に係合する第2係合部が設けられ、
前記第1係合部を有する前記スライダーがラックとして機能し、前記第2係合部を有する前記回転部材がピニオンとして機能する[1]~[6]のいずれかに記載のカテーテルハンドル。
[10] [1]~[9]のいずれかに記載のカテーテルハンドルと、前記カテーテルハンドルの遠位側に設けられたチューブとを有するカテーテル。
【発明の効果】
【0010】
本発明のカーテルハンドルおよびカテーテルは、ハンドル内部の保持部にストッパーが保持され、ストッパーは、保持部に嵌め込まれる突起部と、スライダーとの当接箇所を有する第1当接部と第2当接部を有し、突起部と第1当接部との間の距離が、突起部と第2当接部との間の距離と異なるように構成されている。そのため、ストッパーの設置方向を変えてストッパーを保持部に設置することにより、スライダーの長手方向への変位範囲を細かく調整することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】カテーテルハンドルを備えたカテーテルの構成例を表し、カテーテルの全体図を表す。
図2図1に示したカテーテルに設けられたカテーテルハンドルの内部構造の平面図を表す。
図3図2に示したカテーテルハンドルの内部構造からスライダーとシャフトとストッパーと線状部材を除いた平面図を表す。
図4図2に示したカテーテルハンドルの内部構造からストッパーを除いた一部拡大図を表す。
図5図4に示したカテーテルハンドルの内部構造の保持部の拡大図を表す。
図6】ストッパーの構成例を表し、ストッパーの斜視図を表す。
図7図6に示したストッパーの正面図を表す。
図8】ストッパーの他の構成例を表し、ストッパーの斜視図を表す。
図9図8に示したストッパーの正面図を表す。
図10図4に示したカテーテルハンドルの内部構造において、保持部にストッパーを設置した状態の平面図の一例を表す。
図11図4に示したカテーテルハンドルの内部構造において、保持部にストッパーを設置した状態の平面図の他の例を表す。
図12図2に示したカテーテルハンドルのXII-XII断面図を表す。
図13図2に示したカテーテルハンドルの内部構造の平面図の変形例を表す。
図14図13に示したカテーテルハンドルの内部構造であって、スライダーを長手方向に沿って一部切除した平面図を表す。
図15】カテーテルハンドルを備えたカテーテルの他の構成例を表し、カテーテルの全体図を表す。
図16図15に示したカテーテルに設けられたカテーテルハンドルの内部構造の平面図を表す。
図17】カテーテルハンドルの他の構成例を表し、カテーテルハンドルの内部構造の平面図を表す。
図18】比較対象となるストッパーの構成例を表し、ストッパーの斜視図を表す。
図19図18に示したストッパーの正面図を表す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、下記実施の形態に基づき本発明のカテーテルハンドルと当該ハンドルを備えたカテーテルを具体的に説明するが、本発明はもとより下記実施の形態によって制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも勿論可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。なお、各図面において、便宜上、ハッチングや部材符号等を省略する場合もあるが、かかる場合、明細書や他の図面を参照するものとする。また、図面における種々部材の寸法は、本発明の特徴の理解に資することを優先しているため、実際の寸法とは異なる場合がある。
【0013】
図1を参照して、カテーテルハンドルを備えたカテーテルの構成を説明する。本発明の実施の形態に係るカテーテル41は、カテーテルハンドル1(以下、「ハンドル」と称する場合がある)と、ハンドル1の遠位側に設けられたチューブ42とを有する。カテーテル41は、例えば、チューブ42を患者の血管や消化管などの体腔に挿入して、治療や検査に用いられる。
【0014】
本発明において、カテーテル41の近位側とは、カテーテル41の延在方向に対して使用者の手元側の方向を指し、遠位側とは近位側の反対方向、すなわち処置対象側の方向を指す。
【0015】
チューブ42は、可撓性を有する管状構造を有しており、例えば、ポリオレフィン樹脂(例えば、ポリエチレンやポリプロピレン)、ポリアミド樹脂(例えば、ナイロン)、ポリエステル樹脂(例えば、PET)、芳香族ポリエーテルケトン樹脂(例えば、PEEK)、ポリエーテルポリアミド樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリイミド樹脂、フッ素樹脂(例えば、PTFE、PFA、ETFE)等の合成樹脂や、ステンレス鋼、炭素鋼、ニッケルチタン合金等の金属から構成することができる。金属材料は、合成樹脂チューブ内に埋め込まれた金属線材としても用いることができる。チューブ42の長手方向(遠近方向)の長さは、ハンドル1の同方向の長さの数倍から数十倍程度長くなっており、例えば、500mm~1200mm程度である。チューブ42の外径は、例えば、0.6mm~5mm程度とすればよい。
【0016】
チューブ42は内腔を有しており、内部に1つの内腔を有するシングルルーメン構造であっても、複数の内腔を有するマルチルーメン構造のいずれであってもよい。チューブ42は、複数の同軸の内腔が設けられたコアキシャル構造を有するものであってもよい。チューブ42の内腔には、チューブ42を操作するためのワイヤが配置される。ワイヤは、例えばチューブ42の遠位端部の曲がりを制御するために設けられる。この場合、ワイヤの遠位端部はチューブ42の遠位端部、例えばチューブ42の遠位側1/3の部分に固定されることが好ましい。チューブ42の内腔には、導線、光ファイバ、内視鏡などが配置されてもよく、ガイドワイヤや別の処置具を挿通するための内腔が設けられたり、薬剤や造影剤、任意の流体を流通させるための内腔が設けられてもよい。
【0017】
ハンドル1はチューブ42の近位側に設けられ、カテーテルとして組み立てた際には、チューブ42の内腔に配されたワイヤの近位端部がハンドル1に接続される。
【0018】
ハンドル1の詳細について、図2図12を参照して説明する。図2図12には、図1に示したカテーテルに備えられるカテーテルハンドルの構成例が示されている。図2は、カテーテルハンドルの内部構造の平面図の一例を表し、図3は、図2に示したカテーテルハンドルの内部構造からスライダーとシャフトとストッパーと線状部材を除いた平面図を表し、図4は、図2に示したカテーテルハンドルの内部構造からストッパーを除いた一部拡大図を表し、図5は、図4に示したカテーテルハンドルの内部構造の保持部の拡大図を表し、図12は、図2に示したカテーテルハンドルのXII-XII断面図を表す。図6図9は、ストッパーの構成例を表し、図10および図11は、図4に示したカテーテルハンドルの内部構造において、保持部にストッパーを設置した状態の平面図を表す。なお図12では、ハンドル本体の切除された部分も含めたハンドルの断面図が示されている。
【0019】
ハンドル1は、長手方向xに延びる内腔を有するハンドル本体2と、ハンドル本体2の内腔に配置され、長手方向xに変位可能に設けられたスライダー3と、遠位部がチューブ42の内腔に配置され、近位部がスライダー3に直接または間接的に接続された線状部材6とを有する。ハンドル1は、カテーテル41の近位側と遠位側に基づき、近位側と遠位側が定められ、長手方向xは近位側から遠位側または遠位側から近位側に延びる方向として定められる。また、長手方向xに対する直交方向として径方向と周方向が定められる。
【0020】
ハンドル本体2は、長手方向xに延びる内腔を有する。ハンドル本体2の内腔は、長手方向xに長い形状に形成されていることが好ましく、長手方向xを軸とした円筒状(円柱状)や多角柱状に形成された部分を有することが好ましい。
【0021】
ハンドル本体2の内腔には、スライダー3が配置される。スライダー3は、ハンドル本体2の内腔で、長手方向xに変位可能に設けられている。ハンドル1は、使用の際、ハンドル1の外側から操作してスライダー3が長手方向xに変位するように構成されており、従って、ハンドル1はスライダー3の操作部を有することが好ましい。スライダー3の操作部は、一部がハンドル本体2の内腔に配置され、他部がハンドル本体2の外に配置され、すなわちハンドル1の外側に露出して設けられることが好ましい。これにより、ハンドル1の外側から操作して、スライダー3を長手方向xに変位させることができる。
【0022】
図2および図3に示したハンドル1(1A)では、操作部として回転ノブ5が設けられている。回転ノブ5は、長手方向xに延びる回転軸を有し、ハンドル本体2に対して回転可能に設けられる。回転ノブ5は、ハンドル本体2の内腔の少なくとも一部に配置されることが好ましく、長手方向xに対する一部のみが、ハンドル本体2の内腔に配置されることが好ましい。
【0023】
回転ノブ5は、長手方向xに延びる内腔を有し、当該内腔にスライダー3の一部が配置されていることが好ましい。回転ノブ5の内腔は、ハンドル本体2の内腔とともに、ハンドル1の内部空間を形成することが好ましい。回転ノブ5の内腔は、長手方向xを中心とした円筒状に形成された部分を有することが好ましい。回転ノブ5の内腔はハンドル本体2の内腔と長手方向xに連通し、回転ノブ5の内腔とハンドル本体2の内腔とが一体的にハンドル1の内部空間を形成し、当該内部空間にスライダー3が配置されることが好ましい。
【0024】
ハンドル本体2は、遠位側と近位側の少なくとも一方がオープンに形成され、オープンに形成されたハンドル本体2の遠位側または近位側から回転ノブ5が挿入され、回転ノブ5がハンドル本体2の内腔に配置されることが好ましい。一方、回転ノブ5は、ハンドル本体2に挿入され、ハンドル本体2の内腔に位置する近位側または遠位側がオープンに形成されることが好ましい。これにより、ハンドル本体2の内腔と回転ノブ5の内腔とから一体的にハンドル1の内部空間が形成される。図2および図3では、ハンドル本体2の遠位側がオープンに形成され、回転ノブ5の近位側がオープンに形成され、回転ノブ5がハンドル本体2の遠位側からハンドル本体2の内腔に挿入されている。ハンドル1は、ハンドル本体2と回転ノブ5が外側に露出しており、例えば、一方の手でハンドル本体2を持って、もう一方の手で回転ノブ5を持ってハンドル本体2に対して回転させることにより、ハンドル1Aを操作することができる。
【0025】
ハンドル1Aは、回転ノブ5を長手方向xを中心として回転させることにより、スライダー3が長手方向xに変位するように形成されている。そのために、スライダー3の外面に第1係合部14が設けられ、回転ノブ5の内面に、第1係合部14に係合する第2係合部15が設けられ、第1係合部14と第2係合部15の少なくとも一方がらせん状に延びるように配置されている。このようにスライダー3の外面に第1係合部14が形成され、回転ノブ5の内面に第2係合部15が形成されることにより、回転ノブ5の長手方向xを中心とした回転移動をスライダー3の長手方向xの平行移動へと変換させることができる。
【0026】
第1係合部14と第2係合部15は、凸部と溝の組み合わせにより形成することができる。すなわち、第1係合部14と第2係合部15は、一方が凸部であり他方が溝であることが好ましい。なお、溝として第1係合部14または第2係合部15が形成される場合、溝はらせん状に連続的に延びるように形成されることが好ましい。溝は、有底溝であってもよく、貫通溝であってもよいが、スライダー3または回転ノブ5の強度を確保する点から、溝は有底溝であることが好ましい。一方、凸部として第1係合部14または第2係合部15が形成される場合は、連続的にらせん状に延びる凸条として設けられても、断続的にらせん状に延びる凸条として設けられてもよく、あるいは単なる突起としても設けられてもよい。図面では、スライダー3に設けられた第1係合部14が凸部(らせん状に延びる凸条)として形成され、回転ノブ5に設けられた第2係合部15が溝として形成されている。
【0027】
第1係合部14および/または第2係合部15は、連続的または断続的にらせん状に1周以上延びるように形成されてもよく、1周未満となるように形成されてもよい。なお、第1係合部14と第2係合部15の少なくとも一方は、連続的または断続的にらせん状に1周以上延びるように形成されることが好ましく、2周以上延びるように形成されることがより好ましく、3周以上延びるように形成されることがさらに好ましい。一方、第1係合部14と第2係合部15の他方は、連続的または断続的にらせん状に1周未満となるように形成されてもよく、例えば、らせん状に半周のみ延びるように設けられてもよい。図面に示したハンドル1では、スライダー3に設けられた第1係合部14が、らせん状に1周以上延びるように形成され、回転ノブ5に設けられた第2係合部15が、らせん状に1周未満延びるように形成されている。
【0028】
ハンドル1Aは、回転ノブ5を長手方向xを中心として回転させた際に、スライダー3が回転ノブ5とともに回転しないようにするために、スライダー3の外面に第3係合部16が設けられ、ハンドル本体2の内面に第3係合部16と係合する第4係合部17が設けられ、第3係合部16と第4係合部17の少なくとも一方が長手方向xに延びるように形成されていることが好ましい(図3および図12を参照)。これにより、スライダー3が長手方向xを中心に回転することなく、スライダー3を長手方向xに沿って変位させることができる。
【0029】
第3係合部16と第4係合部17は、凸部と溝の組み合わせにより形成することができる。すなわち、第3係合部16と第4係合部17は、一方が凸部であり他方が溝であることが好ましい。図面に示したハンドル1Aでは、スライダー3の外面に設けられた第3係合部16が凸部として形成され、ハンドル本体2の内面に設けられた第4係合部17が溝として形成されている。溝として形成される第3係合部16または第4係合部17は、長手方向xに延びるように形成されることが好ましく、長手方向xに連続的に延びるように形成されることがより好ましい。一方、凸部として形成される第3係合部16または第4係合部17は、長手方向xに延びるように形成されてもよく、そうでなくてもよい。
【0030】
ハンドル本体2の内腔には、長手方向xに延びるシャフト4が設けられることが好ましい。シャフト4はハンドル本体2に固定され、ハンドル本体2に対して回転したり移動しないように設けられることが好ましく、ハンドル本体2と一体的に形成されてもよい。シャフト4はハンドル本体2よりも遠位側および/または近位側に延びるように設けられてもよい。
【0031】
シャフト4の遠位側にはチューブ42が接続することが好ましい。シャフト4とチューブ42の接続部は、ハンドル1の内部空間にあってもよく、ハンドル1の内部空間よりも遠位側にあってもよく、ハンドル1の外側にあってもよい。シャフト4はチューブ42と一体的に形成することもできる。
【0032】
シャフト4は、中実状に形成されてもよく、中空状に形成されてもよい。なお、シャフト4は中空状に形成され、シャフト4の内腔がチューブ42の内腔と連通していることが好ましい。これにより、シャフト4の内腔およびチューブ42の内腔を通して、カテーテル41の手元側から処置対象部に処置具を送達したり、薬剤や造影剤を注入することができる。処置具としては、電極カテーテル、アブレーションカテーテル、マッピングカテーテル、バルーンカテーテル、マイクロカテーテル、鉗子、レーザープローブ、ファイバースコープ、高周波処置具、電気水圧衝撃破砕プローブ等が挙げられる。シャフト4は、このような処置具の挿入を可能とするために、ハンドル1の外側に近位側開口を有することが好ましい。シャフト4は分岐部を有していてもよく、シャフト4の分岐部に切り替えコックが設けられていてもよい。これにより、例えば、処置具の挿入口と薬剤等の注入口とを分けて設けることができる。
【0033】
スライダー3には線状部材6が接続される。線状部材6は、遠位部がチューブ42の内腔に配置され、近位部がハンドル本体2の内腔に配置される。線状部材6の遠位部はチューブ42を制御するためのワイヤとなる。線状部材6の遠位端部、すなわち遠位端を含むその近傍部分は、チューブ42の遠位端部に固定されることが好ましい。線状部材6の遠位端部は、例えば線状部材6の遠位端から近位側に100mm以内の部分として規定することができる。チューブ42の遠位端部は、例えばチューブ42の遠位端から近位側に100mm以内の部分として規定することができる。
【0034】
ハンドル本体2の内腔に配置された線状部材6の近位部は、スライダー3に直接または間接的に接続される。線状部材6の近位部は、スライダー3に直接接続されてもよく、スライダー3に設けられた固定具に線状部材6の近位部が取り付けられることにより、スライダー3に間接的に接続されてもよい。線状部材6の近位部は、スライダー3とともに長手方向xに変位する。
【0035】
線状部材6は、ハンドル1の内部空間で、シャフト4またはチューブ42の内腔からその外側に延出し、スライダー3に接続することが好ましい。ハンドル1を操作して、スライダー3を長手方向xに変位させることにより、チューブ42の内腔に配置された線状部材6を近位側に引いたり遠位側に押し込むことができ、これにより、例えばチューブ42の遠位端部の曲がりを制御したりすることができる。
【0036】
線状部材6としては、ステンレス鋼、炭素鋼、ニッケルチタン合金等の金属線材や、ポリアミド樹脂(例えば、ナイロン)、ポリオレフィン樹脂(例えば、ポリエチレンやポリプロピレン)、ポリエステル樹脂(例えば、PET)、芳香族ポリエーテルケトン樹脂(例えば、PEEK)、ポリイミド樹脂、芳香族ポリアミド樹脂(例えば、アラミド)、フッ素系樹脂(例えば、PTFE、PFA、FEP、ETFE)等の合成樹脂から形成された樹脂線材(すなわち繊維材料)を用いることができる。これらの金属線材や樹脂線材は、モノフィラメント構造を有していてもよく、マルチフィラメント構造を有していてもよい。線状部材6は、コイル状の金属や合成樹脂によって形成された筒体によって被覆されていてもよい。
【0037】
カテーテル41では、ハンドル1を操作してチューブ42の遠位端部の動きを適切に制御できることが望ましい。例えばハンドル1によってチューブ42の遠位端部の曲がりを制御する場合であれば、そのチューブ42の遠位端部の屈曲範囲を適切に制御できることが望ましい。これにより、より正確な施術が可能となり、またカテーテル41を体腔に挿入して使用する際に、不用意に体腔を傷つけたりすることを防ぐことができる。そのために、ハンドル1は、ハンドル本体2の内部に、スライダー3の長手方向xへの変位範囲を制限するストッパー21が設置できるように、構成されている。具体的には、図2図5に示すように、ハンドル1は、ハンドル本体2の内面に、長手方向xに交互に並んだ凹部12と凸部13から構成された保持部11が設けられ、保持部11にストッパー21が保持されるように構成されている。ストッパー21は、スライダー3を長手方向xに変位させた際にスライダー3の一部が当接するように設けられ、スライダー3がストッパー21と当接することにより、スライダー3の長手方向xへの変位範囲が制限される。スライダー3は、外面に、長手方向xに変位させた際にストッパー21と当接する規制部3Aを有する。図面に示したハンドル1では、規制部3Aがスライダー3の外面から突出して設けられているが、スライダー3の近位端や遠位端が規制部として機能してもよい。
【0038】
図5に示すように、保持部11は、ハンドル本体2の内面に、凹部12と凸部13が長手方向xに交互に配置されて構成される。ハンドル1の内部から見て、凹部12は凸部13に対して窪んで形成され、すなわち凹部12の底部が凸部13の頂部よりも径方向の外方に位置するように形成される。ハンドル1の内部から見て、凸部13は凹部12に対して突出して形成され、すなわち凸部13の頂部が凹部12の底部よりも径方向の内方に位置するように形成される。
【0039】
1つの保持部11において、凹部12と凸部13はそれぞれ複数配置されることが好ましく、例えば、凸部13が長手方向xに複数並んで配置され、複数並んだ各凸部13の間に凹部12が配置されることが好ましい。複数の凹部12は長手方向xに略等間隔で配置されることが好ましく、複数の凸部13は長手方向xに略等間隔で配置されることが好ましい。各凹部12の長手方向xの長さは、各凸部13の長手方向xの長さの0.8倍以上が好ましく、0.9倍以上がより好ましく、1.2倍以下が好ましく、1.1倍以下がより好ましい。
【0040】
1つの保持部11に含まれる凹部12の数は2以上が好ましく、3以上がより好ましく、4以上がさらに好ましい。これにより、スライダー3の長手方向xへの変位範囲を細かく制御することが可能となる。1つの保持部11に含まれる凹部12の数の上限は特に限定されないが、15以下、12以下、10以下または8以下であってもよい。ストッパー21は、1つの保持部11のいずれかの凹部12に嵌め込まれることにより、保持部11に保持される。従って、1つの保持部11に含まれる凹部12の数は、ストッパー21の突起部22の数よりも多いことが好ましく、これにより、1つの保持部11においてストッパー21を設置する箇所を変えることにより、スライダー3の長手方向xへの変位範囲を変えることができる。
【0041】
ハンドル本体2の内面には、近位側の保持部11(すなわち、スライダー3の近位側への変位を制限するストッパー21を保持するための保持部11)と遠位側の保持部11(すなわち、スライダー3の遠位側への変位を制限するストッパー21を保持するための保持部11)の少なくとも一方が設けられればよい。好ましくは、ハンドル本体2の内面には、近位側の保持部11と遠位側の保持部11の両方が設けられる。近位側の保持部11は、スライダー3が最も遠位側に変位した状態で、スライダー3の規制部3Aよりも近位側に位置し、遠位側の保持部11は、スライダー3が最も近位側に変位した状態で、スライダー3の規制部3Aよりも遠位側に位置する。
【0042】
近位側の保持部11は、1つのみ設けられてもよく、2つ以上設けられてもよい。図2図4では、スライダー3の近位側への変位を制限するストッパー21を保持するための保持部11として、第1保持部11Aと第2保持部11Bが設けられている。第1保持部11Aは、第2保持部11Bに対して、ハンドル本体2の内面の周方向の異なる位置に設けられるとともに、長手方向xに重なる位置に設けられている。このように第1保持部11Aと第2保持部11Bが設けられることにより、スライダー3の近位側への変位範囲を安定して制限することができる。第1保持部11Aと第2保持部11Bは、ハンドル本体2の内部の長手方向xに沿った側面視で、第1保持部11Aと第2保持部11Bの間にスライダー3が位置するように設けられることが好ましい。
【0043】
図2図4では、第1保持部11Aの凹部12と第2保持部11Bの凹部12が長手方向xの略同位置に設けられている。第1保持部11Aの凹部12と第2保持部11Bの凹部12が長手方向xに略同位置に設けられることの具体例として、第1保持部11Aの凹部12の遠位端と第2保持部11Bの凹部12の遠位端の長手方向xのずれは、第1保持部11Aと第2保持部11Bにおける凹部12の長手方向xの配置ピッチの1/6以下であることが好ましく、1/8以下がより好ましく、1/10以下がさらに好ましい。
【0044】
遠位側の保持部11は、1つのみ設けられてもよく、2つ以上設けられてもよい。図2図4では、スライダー3の遠位側への変位を制限するストッパー21を保持するための保持部11として、第3保持部11Cと第4保持部11Dが設けられている。第3保持部11Cは、第4保持部11Dに対して、ハンドル本体2の内面の周方向の異なる位置に設けられるとともに、長手方向xに重なる位置に設けられている。このように第3保持部11Cと第4保持部11Dが設けられることにより、スライダー3の遠位側への変位範囲を安定して制限することができる。第3保持部11Cと第4保持部11Dは、ハンドル本体2の内部の長手方向xに沿った側面視で、第3保持部11Cと第4保持部11Dの間にスライダー3が位置するように設けられることが好ましい。
【0045】
図2図4では、第3保持部11Cの凹部12と第4保持部11Dの凹部12が長手方向xの略同位置に設けられている。第3保持部11Cの凹部12と第4保持部11Dの凹部12が長手方向xに略同位置に設けられることの具体例として、第3保持部11Cの凹部12の近位端と第4保持部11Dの凹部12の近位端の長手方向xのずれは、第3保持部11Cと第4保持部11Dにおける凹部12の長手方向xの配置ピッチの1/6以下であることが好ましく、1/8以下がより好ましく、1/10以下がさらに好ましい。
【0046】
ストッパー21について、図6図9を参照して詳しく説明する。図6図9には、ストッパーの構成例が示されている。図6は、ストッパーの構成例であってストッパーの斜視図を表し、図7は、図6に示したストッパーの正面図を表し、図8は、ストッパーの他の構成例であってストッパーの斜視図を表し、図9は、図8に示したストッパーの正面図を表す。図7および図9には、ストッパーの保持部への挿入方向から見た正面図が示されている。
【0047】
ストッパー21は、保持部11の凹部12に嵌め込まれる突起部22と、スライダー3との当接箇所を有する第1当接部23と第2当接部24を有する。ストッパー21は、第1当接部23が第2当接部24よりも近位側に位置するように保持部11に保持可能に形成されるとともに、第1当接部23が第2当接部24よりも遠位側に位置するように保持部11に保持可能に形成されており、ストッパー21が保持部11に保持された状態において、第1当接部23と突起部22との間の長手方向xの距離L1が、第2当接部24と突起部22との間の長手方向xの距離L2と異なるように構成されている。
【0048】
第1当接部23と第2当接部24は、ストッパー21を保持部11に設置した際のストッパー21の設置方向に応じて、スライダー3が当接し得る箇所を意味する。すなわち、第1当接部23が第2当接部24よりも近位側に位置するようにストッパー21を保持部11に設置し、スライダー3を長手方向xに変位させた場合に、スライダー3は第1当接部23と第2当接部24のうちの一方に当接し、第1当接部23が第2当接部24よりも遠位側に位置するようにストッパー21を保持部11に設置し、スライダー3を長手方向xに変位させた場合に、スライダー3は第1当接部23と第2当接部24のうちの他方に当接する。
【0049】
ストッパー21が保持部11に保持された状態における突起部22と第1当接部23との間の長手方向xの距離L1とは、突起部22の第1当接部23側の端から第1当接部23までの長手方向xの距離を意味する。図9に示すようにストッパー21に突起部22が複数設けられる場合は、最も第1当接部23側にある突起部22の第1当接部23側の端から第1当接部23までの長手方向xの距離を意味する。ストッパー21が保持部11に保持された状態における突起部22と第2当接部24との間の長手方向xの距離L2とは、突起部22の第2当接部24側の端から第2当接部24までの長手方向xの距離を意味する。図9に示すようにストッパー21に突起部22が複数設けられる場合は、最も第2当接部24側にある突起部22の第2当接部24側の端から第2当接部24までの長手方向xの距離を意味する。
【0050】
図6図9に示したストッパー21では、突起部22の第1当接部23側の端面が第1当接部23となっている。そのため、突起部22と第1当接部23との間の長手方向xの距離L1は0となっている。一方、第2当接部24は突起部22から離れて位置しており、突起部22の第2当接部24側の端から第2当接部24までの長手方向xの離隔距離が距離L2となっている。
【0051】
ストッパー21において、突起部22は1つのみ設けられてもよく、2つ以上設けられてもよい。突起部22は、保持部11の凹部12への挿入方向に略平行に延在していることが好ましく、当該方向に連続的に延在していてもよく、断続的に延在していてもよい。図6および図7には、突起部22が1つのみ設けられたストッパー21の構成例が示されており、図8および図9には、突起部22が2つ設けられたストッパー21の構成例が示されている。図8および図9では、突起部22は、ストッパー21が保持部11に保持された状態で、長手方向xに並んで2つ設けられている。
【0052】
ハンドル1は、上記のように構成されたストッパー21が、第1当接部23が第2当接部24よりも近位側に位置するように保持部11に設置できるように形成されているとともに、第1当接部23が第2当接部24よりも遠位側に位置するように保持部11に設置できるように形成されている。これにより、スライダー3の長手方向xへの変位範囲を細かく調整することが可能となる。これについて図10および図11を参照して説明する。
【0053】
図10および図11は、図4に示したハンドルの内部構造において、保持部11にストッパー21を設置した状態の平面図を表しており、図10では、第1当接部23が第2当接部24よりも近位側に位置するように、ストッパー21が保持部11に保持された状態が示されており、図11では、第1当接部23が第2当接部24よりも遠位側に位置するように、ストッパー21が保持部11に保持された状態が示されている。図10および図11では、図8および図9に示したストッパー21が保持部11に設置された例が示されている。図10および図11に示すように、ストッパー21は異なる設置方向で保持部11に設置できるように構成されているため、スライダー3の長手方向xの変位範囲を、保持部11の凹部12の配置ピッチよりも短い長さで調整することができる。そのため、スライダー3の長手方向xへの変位範囲を細かく調整することが可能となる。凹部12の配置ピッチは、長手方向xに隣接する凹部12の遠位端(または近位端)の間の長手方向xの離隔距離(図5における矢印Pの長さ)を意味し、凹部12の配置ピッチの値は平均ピッチを意味する。
【0054】
近位側の保持部11である第1保持部11Aと第2保持部11Bにストッパー21を設置して、スライダー3の近位側への変位を制限する場合を検討する。図10では、第1当接部23が第2当接部24よりも近位側に位置するようにストッパー21が第1保持部11Aと第2保持部11Bに保持されており、スライダー3を近位側に変位させた際のスライダー3の当接箇所は第2当接部24となる。第2当接部24は、長手方向xにおいて、各凹部12の遠位端から距離L2だけ遠位側に設置される。図11では、第1当接部23が第2当接部24よりも遠位側に位置するようにストッパー21が第1保持部11Aと第2保持部11Bに保持されており、スライダー3を近位側に変位させた際のスライダー3の当接箇所は第1当接部23となる。第1当接部23は、長手方向xにおいて、各凹部12の遠位端から距離L1だけ遠位側に設置される。距離L1は距離L2と異なることから、第1保持部11Aと第2保持部11Bに、ストッパー21の設置の向きを適宜選択して、ストッパー21を設置することにより、スライダー3の近位側への変位範囲を、保持部11の凹部12の配置ピッチよりも短い長さで調整することができる。
【0055】
遠位側の保持部11である第3保持部11Cと第4保持部11Dにストッパー21を設置して、スライダー3の遠位側への変位を制限する場合を検討する。図10では、第1当接部23が第2当接部24よりも近位側に位置するようにストッパー21が第3保持部11Cと第4保持部11Dに保持されており、スライダー3を遠位側に変位させた際のスライダー3の当接箇所は第1当接部23となる。第1当接部23は、長手方向xにおいて、各凹部12の近位端から距離L1だけ近位側に設置される。図11では、第1当接部23が第2当接部24よりも遠位側に位置するようにストッパー21が第3保持部11Cと第4保持部11Dに保持されており、スライダー3を近位側に変位させた際のスライダー3の当接箇所は第2当接部24となる。第2当接部24は、長手方向xにおいて、各凹部12の近位端から距離L2だけ遠位側に設置される。距離L1は距離L2と異なることから、第3保持部11Cと第4保持部11Dに、ストッパー21の設置の向きを適宜選択して、ストッパー21を設置することにより、スライダー3の遠位側への変位範囲を、保持部11の凹部12の配置ピッチよりも短い長さで調整することができる。
【0056】
これに対して、図18および図19には比較対象としてストッパー31の構成例を示したが、ストッパー31では、第1当接部33と突起部32との間の長手方向xの距離L1と、第2当接部34と突起部32との間の長手方向xの距離L2が同じに構成されているため、上記に説明したストッパー21と比べて、スライダー3の長手方向xへの変位範囲を細かく調整することができない。ストッパー31では、保持部11における凹部12の配置ピッチ、すなわち長手方向xに複数並んで設けられた凹部12の配置ピッチを最小単位として、スライダー3の長手方向xの変位範囲を調整することしかできない。換言すれば、保持部11の凹部12の配置ピッチよりも短い長さで、スライダー3の長手方向xの変位範囲を調整することはできない。
【0057】
近位側の保持部11である第1保持部11Aと第2保持部11Bにストッパー21を設置する場合、第1保持部11Aに設置したストッパー21の設置方向と第2保持部11Bに設置したストッパー21の設置方向はともに同じであることが好ましい。また、第1保持部11Aに設置したストッパー21の第1当接部23(または第2当接部24)と第2保持部11Bに設置したストッパー21の第1当接部23(または第2当接部24)は、長手方向xに略同位置にあることが好ましく、第1保持部11Aに設置したストッパー21の第1当接部23(または第2当接部24)と第2保持部11Bに設置したストッパー21の第1当接部23(または第2当接部24)の長手方向xのずれは、第1保持部11Aと第2保持部11Bにおける凹部12の長手方向xの配置ピッチの1/6以下であることが好ましく、1/8以下がより好ましく、1/10以下がさらに好ましい。
【0058】
遠位側の保持部11である第3保持部11Cと第4保持部11Dにストッパー21を設置する場合、第3保持部11Cに設置したストッパー21の設置方向と第4保持部11Dに設置したストッパー21の設置方向はともに同じであることが好ましい。また、第3保持部11Cに設置したストッパー21の第1当接部23(または第2当接部24)と第4保持部11Dに設置したストッパー21の第1当接部23(または第2当接部24)は、長手方向xに略同位置にあることが好ましく、第3保持部11Cに設置したストッパー21の第1当接部23(または第2当接部24)と第4保持部11Dに設置したストッパー21の第1当接部23(または第2当接部24)の長手方向xのずれは、第3保持部11Cと第4保持部11Dにおける凹部12の長手方向xの配置ピッチの1/6以下であることが好ましく、1/8以下がより好ましく、1/10以下がさらに好ましい。
【0059】
ストッパー21は複数の突起部22を有し、ストッパー21が保持部11に保持された状態で、複数の突起部22が複数の凹部12に嵌め込まれることが好ましい。このようにストッパー21が形成されることにより、ストッパー21を安定して保持部11に保持させることができる。
【0060】
ストッパー21は、上記に説明したように、第1当接部23が第2当接部24よりも近位側に位置するように保持部11に設置できるように形成されるとともに、第1当接部23が第2当接部24よりも遠位側に位置するように保持部11に設置できるように形成されているが、このようにストッパー21が形成されるために、ストッパー21は、突起部22の延在方向に対する一方側と他方側の両方から、保持部11の凹部12に挿入可能に形成されていることが好ましい。図6および図8に示したストッパー21では、図面の手前側から凹部12に挿入可能であるとともに、図面の奥側から凹部12に挿入可能に形成されている。
【0061】
ストッパー21は、保持部11に保持された状態で、長手方向xに延びる対称面を有する形状であることが好ましい。これにより、ストッパー21を、突起部22の延在方向の一方側と他方側のいずれの方向からも、保持部11の凹部12に挿入することが容易になる。
【0062】
第1当接部23と突起部22との間の長手方向xの距離L1と、第2当接部24と突起部22との間の長手方向xの距離L2の差は、保持部11における凹部12の配置ピッチよりも短いことが好ましい。距離L1と距離L2の差は、凹部12の配置ピッチの平均値の0.3倍以上が好ましく、0.4倍以上がより好ましく、また0.7倍以下が好ましく、0.6倍以下がより好ましい。距離L1と距離L2は、保持部11における凹部12の配置ピッチよりも短いことが好ましく、保持部11における凹部12の配置ピッチの平均値の0.8倍以下がより好ましく、0.7倍以下がさらに好ましく、0.6倍以下がさらにより好ましい。
【0063】
保持部11における凹部12の長手方向xの配置ピッチは0.5mm以上4.0mm以下であることが好ましい。1つの保持部11においてこのように凹部12が形成されることにより、スライダー3の長手方向xへの変位範囲を正確かつ細かく調整することが容易になる。保持部11における凹部12の長手方向xの配置ピッチは0.8mm以上がより好ましく、1.0mm以上がさらに好ましく、また3.0m以下がより好ましく、2.5mm以下がさらに好ましい。また、第1保持部11Aにおける凹部12の長手方向xの配置ピッチは、第2保持部11Bにおける凹部12の長手方向xの配置ピッチと同じであることが好ましい。第3保持部11Cにおける凹部12の長手方向xの配置ピッチは、第4保持部11Dにおける凹部12の長手方向xの配置ピッチと同じであることが好ましい。
【0064】
図2に示されるように、上記に説明したハンドル1Aでは、1本の線状部材6がチューブ42の内腔に配置され、この線状部材6がスライダー3に接続していたが、2本以上の線状部材6がチューブ42の内腔に配置され、この線状部材6がスライダー3に接続していてもよい。そのように構成されたカテーテルハンドルの構成例を図13および図14に示す。
【0065】
図13および図14には、図1に示したカテーテルに備えられるカテーテルハンドルの他の構成例が示されている。図13は、図12に示したカテーテルハンドルの内部構造の平面図の変形例を表し、図14は、図13に示したカテーテルハンドルの内部構造であって、スライダー3を長手方向xに沿って一部切除した平面図を表す。なお、図13および図14に示したハンドルの説明において、上記の説明と重複する部分の説明は省略する。
【0066】
図13および図14に示したハンドル1(1B)では、線状部材6が、近位側で屈曲し、両端が遠位側に延びるように配置されている。線状部材6は、一方側の端として第1端を、他方側の端として第2端を有し、第1端を含む部分が第1部分6A、第2端を含む部分が第2部分6B、第1部分6Aと第2部分6Bの間の部分が中間部分6Cと規定される。第1端と第2端は、線状部材6をまっすぐに延ばしたときの一方端と他方端として規定される。そして、線状部材6を中間部分6Cで屈曲させ、屈曲部を含む中間部分6Cの少なくとも一部がハンドル本体2の内腔に配置され、第1部分6Aと第2部分6Bの少なくとも一部がチューブ42の内腔に配置される。
【0067】
線状部材6は、第1部分6Aと第2部分6Bがチューブ42を制御するためのワイヤとなる。第1部分6Aの遠位端部、すなわち第1端を含むその近傍部分と、第2部分6Bの遠位端部、すなわち第2端を含むその近傍部分は、チューブ42の遠位端部に固定されることが好ましい。この場合、ハンドル1Bを操作して、第1部分6Aを近位側に引っ張ることにより、チューブ42の遠位端部を一方側に曲げることができ、第2部分6Bを近位側に引っ張ることにより、チューブ42の遠位端部を他方側に曲げることができる。
【0068】
線状部材6の中間部分6Cは、回転ノブ5の内腔からハンドル本体2の内腔にかけて延在することが好ましい。線状部材6は、スライダー3と長手方向xに重なる部分において、スライダー3の内腔すなわち長手方向xに延びる貫通穴に配置されることが好ましい。従って、スライダー3の貫通穴の内面とシャフト4との間には、長手方向xに延びる隙間(スライダー3を長手方向xに貫通する隙間)が形成され、当該隙間に線状部材6が配置されることが好ましい。
【0069】
ハンドル1Bには、ハンドル本体2の内腔に、線状部材6の中間部分6Cでの屈曲をガイドするための反転ガイド8が設けられ、線状部材6の中間部分6Cの一部が反転ガイド8に当接している。反転ガイド8は、ハンドル本体2に固定され、ハンドル1Bの操作の際、ハンドル本体2に対して回転したり移動したりしないように設けられる。反転ガイド8は、長手方向xに対して、スライダー3よりも近位側に設けられ、詳細には、スライダー3が最も近位側に変位した状態で、スライダー3の近位端よりも近位側に設けられる。
【0070】
線状部材6は、ハンドル1の内部空間において、反転ガイド8より第1端側(第1部分6A側)の部分と反転ガイド8より第2端側(第2部分6B側)の部分とが連動して、長手方向xに変位可能となっている。線状部材6は、反転ガイド8より第1端側の部分が反転ガイド8と当接している部分を介して反転ガイド8より第2端側の部分と繋がっているため、反転ガイド8より第1端側の部分が近位側に変位することにより、反転ガイド8より第2端側の部分が遠位側に変位することができ、反転ガイド8より第1端側の部分が遠位側に変位することにより、反転ガイド8より第2端側の部分が近位側に変位することができる。
【0071】
線状部材6は、線状部材6の反転ガイド8との当接部分より第1端側の部分で、スライダー3に固定されている。図14では、スライダー3に設けられた固定具9で、線状部材6がスライダー3に固定されている。これにより、回転ノブ5を長手方向xを中心として回転させると、スライダー3が長手方向xに変位し、それに合わせて線状部材6の反転ガイド8より第1端側の部分を長手方向xに変位させることができるとともに、線状部材6の反転ガイド8より第2端側の部分をそれとは反対の長手方向xに変位させることができる。これにより、チューブ42の内腔に配置された線状部材6の第1部分6Aと第2部分6Bを近位側に引いたり遠位側に押し込むことができ、例えばチューブ42の遠位端部の曲がりを制御したりすることができる。例えば、回転ノブ5を手元側から見て右回りに回転させることにより、チューブ42の遠位端部を一方側に曲げ、回転ノブ5を手元側から見て左回りに回転させることにより、チューブ42の遠位端部を他方側に曲げることができる。
【0072】
線状部材6は、スライダー3の内面に固定されることが好ましい。図14では、スライダー3の内面に線状部材6の固定具9が設置され、この固定具9に線状部材6が固定されているが、線状部材6は、スライダー3の内面に接着剤等で直接固定されてもよい。スライダー3の内面に線状部材6を直接固定する場合は、固定具9はなくてもよい。線状部材6の固定具9またはスライダー3の内面への固定方法としては、接着剤による接着、溶着、嵌合、カシメ、結索、ネジ止め等が挙げられる。
【0073】
線状部材6は、スライダー3が最も近位側に変位した状態で、反転ガイド8との当接部分より第1端側の部分が、スライダー3に固定されている。このように線状部材6をスライダー3に固定することで、スライダー3の長手方向xの変位に関わらず、線状部材6が反転ガイド8との当接部分より第1端側の部分でスライダー3に固定されることとなる。一方、線状部材6は、反転ガイド8との当接部分より第2端側の部分でスライダー3に固定されないことが好ましく、詳細には、線状部材6は、スライダー3が最も近位側に変位した状態で、反転ガイド8との当接部分より第2端側の部分が、スライダー3に固定されないことが好ましい。
【0074】
線状部材6の第1部分6Aと第2部分6Bと中間部分6Cは、同じ材料から構成されてもよく、異なる材料から構成されてもよい。なお、中間部分6Cは、第1部分6Aと第2部分6Bとは異なる材料から構成されていることが好ましい。図13および図14では、線状部材6は、接続部7で中間部分6Cが第1部分6Aまたは第2部分6Bと接続している。
【0075】
中間部分6Cは反転ガイド8で比較的小さい屈曲半径で屈曲させることができるように、曲げやすい材料から構成されることが好ましい。一方、第1部分6Aと第2部分6Bは、チューブ42の内腔に配置され、ハンドル1での線状部材6の長手方向xの動きが、第1部分6Aと第2部分6Bを介してチューブ42の遠位端部まで好適に伝わることが求められることから、比較的剛性の高い材料から構成されることが好ましく、中間部分6Cよりも屈曲性は求められない。従って、中間部分6Cは、第1部分6Aと第2部分6Bよりも曲げ剛性が小さいことが好ましい。
【0076】
線状部材6の中間部分6Cは繊維ロープから構成されることが好ましい。これにより、中間部分6Cの強度を確保しつつ、中間部分6Cを反転ガイド8でスムーズに屈曲させやすくなる。一方、線状部材6の第1部分6Aと第2部分6Bは金属線材から構成されることが好ましい。これにより、チューブ42の内腔に配置された第1部分6Aと第2部分6Bを近位側に引いたり遠位側に押し込むことにより、チューブ42の遠位端部の曲がり等を反応性良く制御することが容易になる。第1部分6Aと第2部分6Bは、金属材料から構成されたワイヤーロープであってもよい。
【0077】
図13および図14に示したハンドル1Bにおいても、ハンドル本体2の内面に保持部11が設けられ、ストッパー21が、第1当接部23が第2当接部24よりも近位側に位置するように、保持部11に保持可能に形成されるともに、第1当接部23が第2当接部24よりも遠位側に位置するように、保持部11に保持可能に形成されるように構成されている。そのため、ハンドル1Bの使用の際、スライダー3の長手方向xへの変位範囲を細かく調整することが可能となる。ハンドル1Bでは、第1保持部11Aと第2保持部11Bに設けられたストッパー21によって、線状部材6の第1部分6Aを近位側に引く範囲を制限することができ、第3保持部11Cと第4保持部11Dに設けられたストッパー21によって、線状部材6の第2部分6Bを近位側に引く範囲を制限することができる。
【0078】
図1図14に示したハンドル1A,1Bは、回転ノブ5が長手方向xに延びる内腔を有し、回転ノブ5の内腔にスライダー3の一部が配置されて構成され、回転ノブ5を長手方向xを中心に回転させることにより、スライダー3を長手方向xに変位させることができるように構成されていたが、スライダー3を長手方向xに変位させる機構は当該構成に限定されない。以下、様々な形態のカテーテルハンドルの構成例について説明する。
【0079】
図15および図16には、上記に説明したハンドル1A,1Bとは異なる機構によりスライダー3を長手方向xに変位させることができるカテーテルハンドルの構成例を示した。図15は、カテーテルハンドルを備えたカテーテルの全体図を表し、図16は、図15に示したカテーテルに設けられたカテーテルハンドルの内部構造の平面図を表す。図16には、スライダーと回転ノブを長手方向xに沿って一部切除した平面図が示されている。なお、図15および図16に示したハンドルの説明において、上記の説明と重複する部分の説明は省略する。
【0080】
図15および図16に示したハンドル1(1C)は、ハンドル本体2の内腔に配置され、長手方向xに変位可能に設けられたスライダー3と、長手方向xに延びる回転軸を有し、ハンドル本体2に対して回転可能に設けられた回転ノブ5を有する。スライダー3は長手方向xに延びる内腔を有し、当該内腔に回転ノブ5の一部が配置されており、スライダー3の内面に第1係合部14が設けられ、回転ノブ5の外面に第1係合部14に係合する第2係合部15が設けられ、第1係合部14と第2係合部15の少なくとも一方がらせん状に延びるように配置されている。ハンドル1Cでは、ハンドル1A,1Bとは異なり、第1係合部14がスライダー3の外面ではなく内面に設けられ、第2係合部15が回転ノブ5の内面ではなく外面に設けられている。ハンドル1Cにおいても、回転ノブ5を長手方向xを中心に回転させることにより、スライダー3を長手方向xに変位させることができる。
【0081】
ハンドル1Cにおいても、ハンドル本体2の内面に保持部11が設けられ、ストッパー21が、第1当接部23が第2当接部24よりも近位側に位置するように、保持部11に保持可能に形成されるともに、第1当接部23が第2当接部24よりも遠位側に位置するように、保持部11に保持可能に形成されるように構成されている。そのため、ハンドル1Cの使用の際、スライダー3の長手方向xへの変位範囲を細かく調整することが可能となる。
【0082】
図17には、上記に説明したハンドル1A~1Cとは異なる機構によりスライダー3を長手方向xに変位させることができるカテーテルハンドルの構成例を示した。図17は、カテーテルハンドルの内部構造の平面図を表す。なお、図17に示したハンドルの説明において、上記の説明と重複する部分の説明は省略する。
【0083】
図17に示したハンドル1(1D)は、ハンドル本体2の内腔に配置され、長手方向xに変位可能に設けられたスライダー3と、長手方向xの垂直方向に延びる回転軸を有する回転部材18を有する。スライダー3には第1係合部14が設けられ、回転部材18の外面には第1係合部14に係合する第2係合部15が設けられ、第1係合部14を有するスライダー3がラックとして機能し、第2係合部15を有する回転部材18がピニオンとして機能するように構成されている。図17に示したハンドル1Dでは、回転部材18と同軸の回転軸を有する回転操作部19が設けられており、回転操作部19の一部がハンドル1Dの外側に露出している。回転操作部19はスライダー3の操作部として機能し、回転操作部19を回転させることにより、回転部材18を回転させることができる。ハンドル1Dでは、ハンドル1Dの外側から回転操作部19を操作することにより、スライダー3を長手方向xに変位させることができる。
【0084】
ハンドル1Dにおいても、ハンドル本体2の内面に保持部11が設けられ、ストッパー21が、第1当接部23が第2当接部24よりも近位側に位置するように、保持部11に保持可能に形成されるともに、第1当接部23が第2当接部24よりも遠位側に位置するように、保持部11に保持可能に形成されるように構成されている。そのため、ハンドル1Dの使用の際、スライダー3の長手方向xへの変位範囲を細かく調整することが可能となる。
【0085】
以上、本発明のカテーテルハンドルについて説明したが、本発明のカテーテルハンドルは、ハンドル本体の内腔に配置されたスライダーを長手方向に変位させることにより、チューブの内腔で線状部材を遠位側または近位側に変位できるものであれば、スライダーの長手方向への変位機構は特に限定されない。例えば、従来技術の特許文献に開示されるカテーテルハンドルに本発明を適用してもよい。また、本発明のカテーテルハンドルは、チューブの内腔で線状部材を遠位側または近位側に変位させるものであれば、チューブの遠位端部の曲がりを制御するものに限定されない。例えば、カテーテルハンドルを操作することによって、線状部材をチューブの遠位端から出し入れできるものであってもよい。あるいは、線状部材の遠位端部にナイフやスネアなどの処置具を取り付け、カテーテルハンドルを操作することによって、線状部材の遠位端部に取り付けた処置具がチューブの遠位端から出し入れできるものであってもよい。
【0086】
本発明のカーテルハンドルおよびカテーテルによれば、ストッパーの設置方向を変えてストッパーを保持部に設置することにより、スライダーの長手方向への変位範囲を細かく調整することができ、チューブの遠位端部の動きを適切に制御することができる。また、スライダーの変位範囲の調整を部品の共通化により効率的に実現できる。さらに、カテーテルは治療用途によってチューブの長さや径が異なる場合があり、そのような場合、これまではチューブの仕様に応じてカテーテルハンドルを新たに設計する必要があった。しかし、本発明のカテーテルハンドルを用いれば、スライダーの長手方向への変位範囲を細かく調整することができるため、チューブの長さや径に関わらず適切にチューブの遠位端部の動きを適切に制御することができる。そのため、チューブの仕様に関わらずカテーテルハンドルの共通化を図ることができ、カテーテル開発を効率化することができる。
【符号の説明】
【0087】
1:カテーテルハンドル
2:ハンドル本体
3:スライダー、3A:規制部
4:シャフト
5:回転ノブ
6:線状部材、6A:第1部分、6B:第2部分、6C:第3部分
7:接続部
8:反転ガイド
9:固定具
11:保持部、11A:第1保持部、11B:第2保持部、11C:第3保持部、11D:第4保持部
12:凹部
13:凸部
14:第1係合部
15:第2係合部
16:第3係合部
17:第4係合部
18:回転部材
19:回転操作部
21,31:ストッパー
22,32:突起部
23,33:第1当接部
24,34:第2当接部
41:カテーテル
42:チューブ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19