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特開2024-136431セルロースナノファイバー製造装置及びセルロースナノファイバーの製造方法
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  • 特開-セルロースナノファイバー製造装置及びセルロースナノファイバーの製造方法 図1
  • 特開-セルロースナノファイバー製造装置及びセルロースナノファイバーの製造方法 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024136431
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】セルロースナノファイバー製造装置及びセルロースナノファイバーの製造方法
(51)【国際特許分類】
   D21H 11/18 20060101AFI20240927BHJP
   C08B 15/04 20060101ALI20240927BHJP
   D21H 15/02 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
D21H11/18
C08B15/04
D21H15/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023047547
(22)【出願日】2023-03-24
(71)【出願人】
【識別番号】000183484
【氏名又は名称】日本製紙株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112427
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 芳洋
(72)【発明者】
【氏名】村松 利一
(72)【発明者】
【氏名】渡部 啓吾
(72)【発明者】
【氏名】中村 泰隆
(72)【発明者】
【氏名】寺坂 博史
(72)【発明者】
【氏名】高橋 正成
【テーマコード(参考)】
4C090
4L055
【Fターム(参考)】
4C090AA04
4C090AA06
4C090BA34
4C090BC01
4C090BD19
4C090CA01
4C090CA26
4C090CA34
4C090DA10
4C090DA31
4L055AA02
4L055AC06
4L055AF09
4L055AF46
4L055AG07
4L055AG99
4L055BA12
4L055CA13
4L055CA16
4L055EA25
4L055EA32
(57)【要約】
【課題】高圧ホモジナイザーの解繊ノズルの長寿命化を実現する。
【解決手段】パルプ繊維の微細化処理を行う単孔ノズル型の高圧ホモジナイザーを備えるセルロースナノファイバー製造装置であって、前記高圧ホモジナイザーが備える単孔ノズルの径φが0.1mm以上0.8mm以下である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
パルプ繊維の微細化処理を行う単孔ノズル型の高圧ホモジナイザーを備えるセルロースナノファイバー製造装置であって、
前記高圧ホモジナイザーが備える単孔ノズルの孔径φが0.1mm以上0.8mm以下であることを特徴とするセルロースナノファイバー製造装置。
【請求項2】
パルプ繊維の微細化処理を行う単孔ノズル型の高圧ホモジナイザーを使用した解繊工程を有するセルロースナノファイバーの製造方法であって、
前記高圧ホモジナイザーが備える単孔ノズルの孔径φが0.1mm以上0.8mm以下であることを特徴とするセルロースナノファイバーの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高圧ホモジナイザーを備えるセルロースナノファイバー製造装置及び高圧ホモジナイザーを用いたセルロースナノファイバーの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
物質をナノメートルの領域すなわち原子や分子のスケールにおいて、自在に制御する技術であるナノテクノロジーから、様々な便利な新素材やデバイスが生まれることが期待される。特に、繊維を極限まで細くすると、従来の繊維にはなかった、まったく新しい物理学的な性質が生まれることから、ナノオーダーの繊維(ナノファイバー)が非常に注目されている。このナノファイバーを応用することで、例えば、どんな細かい異物も通過させない高性能フィルターによる浄化装置の実現、化学繊維の強度アップや高機能衣服の実現、燃料電池の効率アップなどへの展開が期待されている。
【0003】
セルロースナノファイバーは、1000nm以下のナノレベルの繊維径を持つ繊維であり、一般的には高圧ホモジナイザーによる機械的せん断力で化学変性したセルロース繊維を解繊することにより得ることができる。ここで化学変性したセルロース繊維の解繊には、例えばY型のインターアクションチャンバー(Y型ノズル)を備える高圧ホモジナイザー(株式会社パウレック製マイクロフルイダイザー)などが用いられていた(非特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】株式会社パウレック 製品情報 https://www.powrex.co.jp/microfluidizer
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、非特許文献1に開示されている高圧ホモジナイザーにおいては、解繊処理時に解繊ノズル(Y型ノズル)に非常に高い圧力が繰り返しかかるため、解繊ノズルの消耗が激しく、高価な解繊ノズルを高頻度で交換しなければならないという問題があった。
【0006】
本発明は、高圧ホモジナイザーの解繊ノズルの長寿命化を実現したセルロースナノファイバー製造装置及びセルロースナノファイバーの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、以下の(1)~(2)を提供する。
(1)パルプ繊維の微細化処理を行う単孔ノズル型の高圧ホモジナイザーを備えるセルロースナノファイバー製造装置であって、前記高圧ホモジナイザーが備える単孔ノズルの孔径φが0.1mm以上0.8mm以下であることを特徴とするセルロースナノファイバー製造装置。
(2)パルプ繊維の微細化処理を行う単孔ノズル型の高圧ホモジナイザーを使用した解繊工程を有するセルロースナノファイバーの製造方法であって、前記高圧ホモジナイザーが備える単孔ノズルの孔径φが0.1mm以上0.8mm以下であることを特徴とするセルロースナノファイバーの製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、高圧ホモジナイザーの解繊ノズルの長寿命化を実現したセルロースナノファイバー製造装置及びセルロースナノファイバーの製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施の形態に係る高圧ホモジナイザーの構成を示す図である。
図2】実施の形態に係る単孔ノズルの構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態に係るセルロースナノファイバー製造装置及びセルロースナノファイバーの製造方法を説明する。
【0011】
本発明の実施の形態に係るセルロースナノファイバー製造装置は、図1に示すようにパルプ繊維の微細化処理を行う単孔ノズル型の高圧ホモジナイザー2を備えるセルロースナノファイバー製造装置であって、単孔ノズル(オリフィス)4と、単孔ノズル4の下流に配置される配管6、継手7、プラグ8を備える下流配管を有する。この単孔ノズル型の高圧ホモジナイザー2で用いられる単孔ノズル4は、単孔ノズルの孔径φが0.1mm以上0.8mm以下である。
【0012】
図2は実施の形態に係る単孔ノズルの構成を示す断面図である。単孔ノズル4は、焼結担持体4aにより担持された結晶ダイヤ4bを備えており、焼結担持体4a及び結晶ダイヤ4bにノズル4cが形成されている。化学変性セルロース分散液は、ノズル4cを図2に示す矢印の方向に通過する。
【0013】
このセルロースナノファイバー製造装置を用いたセルロースナノファイバーの製造方法においては、高圧ホモジナイザーの解繊ノズルを耐久性に優れるものとしたことから、解繊ノズルの長寿命化を実現することができ、セルロースナノファイバーの製造コストの低減を図ることができる。
【0014】
(セルロースナノファイバーの製造方法)
本発明のセルロースナノファイバーの製造方法は、実施の形態に係る高圧ホモジナイザーによりセルロース原料に対して機械的せん断力を加えて解繊する解繊工程を有する。本発明においては、セルロース原料として化学変性セルロースを用いることが可能であり、その場合には解繊工程に供する前に、化学変性セルロースの分散液を脱水・洗浄する工程、化学変性セルロースの分散液濃度を調整する工程を行うことが好ましい。
【0015】
(セルロースナノファイバー)
セルロースナノファイバーとは、植物繊維をナノレベルまで細かくほぐすことによって製造される素材のことであり、一般に平均繊維径が3~500nm程度、平均アスペクト比が50以上の微細繊維である。セルロースナノファイバーの平均繊維径および平均繊維長は、電界放出型走査電子顕微鏡(FE-SEM)を用いて、各繊維を観察した結果から得られる繊維径および繊維長を平均することによって得ることができる。また、アスペクト比は下記の式により算出することができる。
アスペクト比=平均繊維長/平均繊維径
【0016】
(セルロース原料)
本発明において、セルロース原料とは、セルロースを主体とした様々な形態の材料をいい、パルプ(晒又は未晒木材パルプ、晒又は未晒非木材パルプ、精製リンター、ジュート、マニラ麻、ケナフ等の草本由来のパルプなど)、酢酸菌等の微生物によって生産されるセルロース等の天然セルロース、セルロースを銅アンモニア溶液、モルホリン誘導体等の何らかの溶媒に溶解した後に紡糸された再生セルロース、及び上記セルロース原料に加水分解、アルカリ加水分解、酵素分解、爆砕処理、振動ボールミル等の機械的処理等をすることによってセルロースを解重合した微細セルロースなどが例示される。
【0017】
本発明において、シート状のセルロース原料を用いる場合、0.5~5cm角程度の大きさに粗砕することが好ましい。前記大きさに粗砕することにより、効率的、且つ均一に次の反応工程おいて、セルロース原料を変性することができる。なお、粗砕する方法は特に限定されるものではないが、一軸回転せん断式粉砕機、二軸回転せん断式粉砕機、多軸スクリュー式粉砕機、シュレッダー、ギロチンカッターなどを使用することができる。これらの中でも一軸回転せん断式粉砕機、シュレッダーを使用することが粗砕の観点から好ましい。
【0018】
セルロースは、グルコース単位当たり3つのヒドロキシル基を有しており、各種の化学変性を行うことが可能である。本発明においては、化学変性して得られたセルロース原料(化学変性セルロース)を用いてもよい。化学変性としては、例えば、酸化(カルボキシル化)、カルボキシメチル化、カチオン化、エステル化などが挙げられる。中でも酸化(カルボキシル化)、カルボキシメチル化がより好ましい。
【0019】
(セルロースの化学変性)
(酸化)
本発明において、セルロース原料の酸化は公知の方法を用いて行うことができ、特に限定されるものではないが、セルロースナノファイバーの絶乾質量に対して、カルボキシル基の量が0.5mmol/g~3.0mmol/gになるように調整することが好ましい。
【0020】
その一例として、セルロースをN-オキシル化合物、及び、臭化物、ヨウ化物若しくはこれらの混合物からなる群から選択される化合物の存在下で酸化剤を用いて水中で酸化することにより得ることができる。この酸化反応により、セルロース表面のグルコピラノース環のC6位の一級水酸基が選択的に酸化され、表面にアルデヒド基と、カルボキシル基またはカルボキシレート基を有するセルロース系ファイバーを得ることができる。反応時のセルロースの濃度は特に限定されないが、5質量%以下が好ましい。N-オキシル化合物とは、ニトロキシラジカルを発生しうる化合物をいう。N-オキシル化合物としては、目的の酸化反応を促進する化合物であれば、いずれの化合物も使用できる。
【0021】
N-オキシル化合物の使用量は、原料となるセルロースを酸化できる触媒量であれば特に制限されない。例えば、絶乾1gのセルロースに対して、0.01~10mmolが好ましく、0.02~1mmolがより好ましく、0.05~0.5mmolがさらに好ましい。また、反応系に対し0.1~4mmol/L程度がよい。
【0022】
臭化物とは臭素を含む化合物であり、その例には、水中で解離してイオン化可能な臭化アルカリ金属が含まれる。また、ヨウ化物とはヨウ素を含む化合物であり、その例には、ヨウ化アルカリ金属が含まれる。臭化物またはヨウ化物の使用量は、酸化反応を促進できる範囲で選択できる。臭化物およびヨウ化物の合計量は、例えば、絶乾1gのセルロースに対して、0.1~100mmolが好ましく、0.1~10mmolがより好ましく、0.5~5mmolがさらに好ましい。
【0023】
酸化剤としては、公知のものを使用でき、例えば、ハロゲン、次亜ハロゲン酸、亜ハロゲン酸、過ハロゲン酸またはそれらの塩、ハロゲン酸化物、過酸化物などを使用できる。中でも、安価で環境負荷の少ない次亜塩素酸ナトリウムは好ましい。酸化剤の適切な使用量は、例えば、絶乾1gのセルロースに対して、0.5~500mmolが好ましく、0.7~50mmolがより好ましく、1~25mmolがさらに好ましく、3~10mmolが最も好ましい。また、例えば、N-オキシル化合物1molに対して1~40molが好ましい。
【0024】
セルロースの酸化工程は、比較的温和な条件であっても反応を効率よく進行させることができる。よって、反応温度は4~40℃が好ましく、また15~30℃程度の室温であってもよい。反応の進行に伴ってセルロース中にカルボキシル基が生成するため、反応液のpHの低下が認められる。酸化反応を効率よく進行させるためには、水酸化ナトリウム水溶液などのアルカリ性溶液を添加して、反応液のpHを8~12、好ましくは10~11程度に維持することが好ましい。反応媒体は、取扱い性の容易さや、副反応が生じにくいこと等から水が好ましい。
【0025】
酸化反応における反応時間は、酸化の進行の程度に従って適宜設定することができ、通常は0.5~6時間、例えば、1~4時間程度である。また、酸化反応は、2段階に分けて実施してもよい。例えば、1段目の反応終了後に濾別して得られた酸化セルロースを、再度、同一または異なる反応条件で酸化させることにより、1段目の反応で副生する食塩による反応阻害を受けることなく、効率よく酸化させることができる。
【0026】
カルボキシル化(酸化)方法の別の例として、オゾンを含む気体とセルロース原料とを接触させることにより酸化する方法を挙げることができる。この酸化反応により、グルコピラノース環の少なくとも2位及び6位の水酸基が酸化されると共に、セルロース鎖の分解が起こる。オゾンを含む気体中のオゾン濃度は、50~250g/mであることが好ましく、70~220g/mであることがより好ましい。セルロース原料に対するオゾン添加量は、セルロース原料の固形分を100質量部とした際に、0.1~30質量部であることが好ましく、5~30質量部であることがより好ましい。オゾン処理温度は、0~50℃であることが好ましく、20~50℃であることがより好ましい。オゾン処理時間は、特に限定されないが、1~360分程度であり、30~300分程度が好ましい。オゾン処理の条件がこれらの範囲内であると、セルロースが過度に酸化及び分解されることを防ぐことができ、酸化セルロースの収率が良好となる。オゾン処理を施した後に、酸化剤を用いて、追酸化処理を行ってもよい。追酸化処理に用いる酸化剤は、特に限定されないが、二酸化塩素、亜塩素酸ナトリウム等の塩素系化合物や、酸素、過酸化水素、過硫酸、過酢酸などが挙げられる。例えば、これらの酸化剤を水またはアルコール等の極性有機溶媒中に溶解して酸化剤溶液を作成し、溶液中にセルロース原料を浸漬させることにより追酸化処理を行うことができる。
【0027】
セルロース系ファイバーのカルボキシル基、カルボキシレート基、アルデヒド基の量は、上記した酸化剤の添加量、反応時間をコントロールすることで調整することができる。カルボキシル基量の測定方法は例えば、酸化セルロースの0.5質量%スラリー(水分散液)60mLを調製し、0.1M塩酸水溶液を加えてpH2.5とした後、0.05Nの水酸化ナトリウム水溶液を滴下してpHが11になるまで電気伝導度を測定し、電気伝導度の変化が緩やかな弱酸の中和段階において消費された水酸化ナトリウム量(a)から、下式を用いて算出することができる。
カルボキシル基量〔mmol/g酸化セルロース又はセルロースナノファイバー〕
=a〔mL〕×0.05/酸化セルロース質量〔g〕
【0028】
(カルボキシメチル化)
本発明において、セルロース原料のカルボキシメチル化は公知の方法を用いて行うことができ、特に限定されるものではないが、セルロースの無水グルコース単位当たりのカルボキシメチル基置換度が0.01~0.50となるように調整することが好ましい。その一例として次のような製造方法を挙げることができるが、従来公知の方法で合成してもよく、市販品を使用してもよい。セルロースを発底原料にし、溶媒に3~20質量倍の水及び/又は低級アルコール、具体的にはメタノール、エタノール、N-プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、N-ブタノール、イソブタノール、第3級ブタノール等の単独、又は2種以上の混合媒体を使用する。なお、低級アルコールの混合割合は、60~95質量%である。マーセル化剤としては、発底原料の無水グルコース残基当たり0.5~20倍モルの水酸化アルカリ金属、具体的には水酸化ナトリウム、水酸化カリウムを使用する。発底原料と溶媒、マーセル化剤を混合し、反応温度0~70℃、好ましくは10~60℃、かつ反応時間15分~8時間、好ましくは30分~7時間、マーセル化処理を行う。その後、カルボキシメチル化剤をグルコース残基当たり0.05~10.0倍モル添加し、反応温度30~90℃、好ましくは40~80℃、かつ反応時間30分~10時間、好ましくは1時間~4時間、エーテル化反応を行う。
【0029】
グルコース単位当たりのカルボキシメチル置換度の測定方法としては、例えば、次の方法によって得ることができる。すなわち、1)カルボキシメチル化セルロース繊維(絶乾)約2.0gを精秤して、300mL容共栓付き三角フラスコに入れる。2)硝酸メタノール1000mLに特級濃硝酸100mLを加えた液100mLを加え、3時間振とうして、カルボキシメチルセルロース塩(CM化セルロース)を水素型CM化セルロースにする。3)水素型CM化セルロース(絶乾)を1.5~2.0g精秤し、300mL容共栓付き三角フラスコに入れる。4)80%メタノール15mLで水素型CM化セルロースを湿潤し、0.1NのNaOHを100mL加え、室温で3時間振とうする。5)指示薬として、フェノールフタレインを用いて、0.1NのHSOで過剰のNaOHを逆滴定する。6)カルボキシメチル置換度(DS)を、次式によって算出する。
A=[(100×F’-(0.1NのHSO)(mL)×F)×0.1]/(水素型CM化セルロースの絶乾質量(g))
DS=0.162×A/(1-0.058×A)
A:水素型CM化セルロースの1gの中和に要する1NのNaOH量(mL)
F’:0.1NのHSOのファクター
F:0.1NのNaOHのファクター
【0030】
(カチオン化)
本発明において、セルロース原料のカチオン化は公知の方法を用いて行うことができ、カチオン化により例えば、アンモニウム、ホスホニウム、スルホニウム、これらアンモニウム、ホスホニウムまたはスルホニウムを有する基をセルロース分子に有することができるが、アンモニウムを有する基が好ましく、特に、四級アンモニウムを含む基が好ましい。具体的なカチオン化の方法としては、特に限定されるものではないが、一例として、セルロース原料にグリシジルトリメチルアンモニウムクロリド、3-クロロ-2ヒドロキシプロピルトリアルキルアンモニウムハイドライト又はそのハロヒドリン型などのカチオン化剤と触媒である水酸化アルカリ金属(水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなど)を水及び/又は炭素数1~4のアルコールの存在下で反応させることによって、四級アンモニウムを含む基を有する、カチオン変性されたセルロースを得ることができる。
【0031】
なお、この方法において、得られるカチオン変性されたセルロースのグルコース単位当たりのカチオン置換度は、反応させるカチオン化剤の添加量、水及び/又は炭素数1~4のアルコールの組成比率をコントロールすることによって、調整することができる。ここでいう置換度とは、セルロースを構成する単位構造(グルコピラノース環)あたりの導入された置換基の個数を示す。言い換えると、「導入された置換基のモル数を、グルコピラノース環の水酸基の総モル数で割った値」として定義する。純粋セルロースは単位構造(グルコピラノース環)あたり3個の置換可能な水酸基を有しているため、本発明のセルロース繊維の置換度の理論最大値は3(最小値は0)である。
【0032】
本発明において、カチオン化されたセルロースのグルコース単位当たりのカチオン置換度は0.01~0.40であることが好ましい。セルロースにカチオン置換基を導入することで、セルロース同士が電気的に反発する。このため、カチオン置換基を導入したセルロースは容易にナノ解繊することができる。なお、グルコース単位当たりのカチオン置換度が0.01より小さいと、十分にナノ解繊することができない。一方、グルコース単位当たりのカチオン置換度が0.40より大きいと、膨潤あるいは溶解するため、繊維形態を維持できなくなり、ナノファイバーとして得られなくなる場合がある。
【0033】
グルコース単位当たりのカチオン置換度は、試料(カチオン変性されたセルロース)を乾燥させた後に、全窒素分析計TN-10(三菱化学)で窒素含有量を測定し、次式により算出することができる。ここで言う置換度とは、無水グルコース単位1モル当たりの置換基のモル数の平均値を表している。
カチオン置換度=(162×N)/(1-151.6×N)
N:窒素含有量
【0034】
(エステル化)
セルロース原料または解繊セルロース繊維をエステル化して、エステル化セルロース繊維またはエステル化セルロースナノファイバーを得る方法は、特に限定されないが例えば、セルロース原料または解繊セルロース繊維に対し化合物Aを反応させる方法が挙げられる。化合物Aについては後述する。
【0035】
セルロース原料または解繊セルロース繊維に対し化合物Aを反応させる方法としては例えば、セルロース原料または解繊セルロース繊維に化合物Aの粉末又は水溶液を混合する方法、セルロース原料または解繊セルロース繊維のスラリーに化合物Aの水溶液を添加する方法等が挙げられる。これらのうち、反応の均一性が高まり、且つエステル化効率が高くなることから、セルロース原料または解繊セルロース繊維又はそのスラリーに化合物Aの水溶液を混合する方法が好ましい。
【0036】
化合物Aとしては例えば、リン酸系化合物(例、リン酸、ポリリン酸)、亜リン酸、ホスホン酸、ポリホスホン酸、これらのエステル等が挙げられる。化合物Aは、塩の形態でもよい。上記の中でも、低コストであり、扱いやすく、またセルロース原料(例、パルプ繊維)のセルロースにリン酸基を導入して、解繊効率の向上が図れるなどの理由から、リン酸系化合物が好ましい。リン酸系化合物は、リン酸基を有する化合物であればよく、例えば、リン酸、リン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸三ナトリウム、ピロリン酸ナトリウム、メタリン酸ナトリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸水素二カリウム、リン酸三カリウム、ピロリン酸カリウム、メタリン酸カリウム、リン酸二水素アンモニウム、リン酸水素二アンモニウム、リン酸三アンモニウム、ピロリン酸アンモニウム、メタリン酸アンモニウム等が挙げられる。用いられるリン酸系化合物は、1種、あるいは2種以上の組み合わせでもよい。これらのうち、リン酸基導入の効率が高く、下記解繊工程で解繊しやすく、かつ工業的に適用しやすい観点から、リン酸、リン酸のナトリウム塩、リン酸のカリウム塩、リン酸のアンモニウム塩が好ましく、リン酸のナトリウム塩がより好ましく、リン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウムがさらに好ましい。また、反応の均一性が高まり、且つリン酸基導入の効率が高くなることから、エステル化においてはリン酸系化合物の水溶液を用いることが好ましい。リン酸系化合物の水溶液のpHは、リン酸基導入の効率が高くなることから、7以下が好ましい。パルプ繊維の加水分解を抑える観点から、pH3~7がより好ましい。
【0037】
エステル化の方法としては例えば、以下の方法が挙げられる。セルロース原料または解繊セルロース繊維の懸濁液(例えば、固形分濃度0.1~10質量%)に化合物Aを撹拌しながら添加し、セルロースにリン酸基を導入する。セルロース原料または解繊セルロース繊維を100質量部とした際に、化合物Aがリン酸系化合物の場合、化合物Aの添加量はリン元素量として、0.2質量部以上が好ましく、1質量部以上がより好ましい。これにより、エステル化セルロース繊維またはエステル化セルロースナノファイバーの収率をより向上させることができる。上限は500質量部以下が好ましく、400質量部以下がより好ましい。これにより化合物Aの使用量に見合った収率を効率よく得ることができる。従って、0.2~500質量部が好ましく、1~400質量部がより好ましい。
【0038】
セルロース原料または解繊セルロース繊維に対し化合物Aを反応させる際、さらに化合物Bを反応系に加えてもよい。化合物Bを反応系に加える方法としては例えば、セルロース原料または解繊セルロース繊維のスラリー、化合物Aの水溶液、又はセルロース原料もしくは解繊セルロース繊維と化合物Aのスラリーに、化合物Bを添加する方法が挙げられる。
【0039】
化合物Bは特に限定されないが、塩基性を示すことが好ましく、塩基性を示す窒素含有化合物がより好ましい。「塩基性を示す」とは通常、フェノールフタレイン指示薬の存在下で化合物Bの水溶液が桃~赤色を呈すること、または/および化合物Bの水溶液のpHが7より大きいことを意味する。塩基性を示す窒素含有化合物は、本発明の効果を奏する限り特に限定されないが、アミノ基を有する化合物が好ましい。アミノ基を有する化合物として例えば、尿素、メチルアミン、エチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ピリジン、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミンなどが挙げられる。この中でも低コストで扱いやすい点で、尿素が好ましい。化合物Bの添加量は、2~1000質量部が好ましく、100~700質量部がより好ましい。反応温度は0~95℃が好ましく、30~90℃がより好ましい。反応時間は特に限定されないが、通常1~600分程度であり、30~480分が好ましい。エステル化反応の条件がこれらのいずれかの範囲内であると、セルロースが過度にエステル化されて溶解しやすくなることを抑制することができ、リン酸エステル化セルロースの収率を向上させることができる。
【0040】
セルロース原料または解繊セルロース繊維に化合物Aを反応させた後、通常はエステル化セルロース繊維またはエステル化セルロースナノファイバーの懸濁液が得られる。エステル化セルロース繊維またはエステル化セルロースナノファイバーの懸濁液は必要に応じて脱水される。脱水後には加熱処理を行うことが好ましい。これにより、セルロース原料または解繊セルロース繊維の加水分解を抑えることができる。加熱温度は、100~170℃が好ましく、加熱処理の際に水が含まれている間は130℃以下(更に好ましくは110℃以下)で加熱し、水を除いた後100~170℃で加熱処理することがより好ましい。
【0041】
リン酸エステル化セルロースにおいては、セルロースにリン酸基置換基が導入されており、セルロース同士が電気的に反発する。そのため、リン酸エステル化セルロース繊維は容易にセルロースナノファイバーまで解繊することができる(このようにセルロースナノファイバーとなるまで行う解繊を、ナノ解繊ともいう。)。リン酸エステル化セルロース繊維のグルコース単位当たりのリン酸基置換度は0.001以上が好ましい。これにより、十分な解繊(例えばナノ解繊)が実施できる。リン酸エステル化セルロース繊維のグルコース単位当たりのリン酸基置換度の上限は0.40以下が好ましい。これにより、リン酸エステル化セルロース繊維の膨潤又は溶解を抑制し、セルロースナノファイバーが得られない事態の発生を抑制することができる。従って、リン酸エステル化セルロース繊維のグルコース単位当たりのリン酸基置換度は、0.001~0.40であることが好ましい。また、リン酸エステル化により変性されているセルロースナノファイバー(リン酸エステル化セルロースナノファイバー)のグルコース単位当たりのリン酸基置換度は0.001以上が好ましい。上限は、0.40以下が好ましい。したがって、リン酸エステル化セルロースナノファイバーのグルコース単位当たりのリン酸基置換度は0.001~0.40であることが好ましい。リン酸エステル化セルロース繊維に対して、煮沸後冷水で洗浄する等の洗浄処理がなされることが好ましい。これにより解繊を効率よく行うことができる。
【0042】
なお、このセルロース原料を化学変性させ、変性セルロースを得る工程で使用される反応タンクは特に限定されるものではないが、撹拌羽根を設けたタンク、パルパー、ニーダー、リボン型混合装置、スクリュー型混合装置などを例示することができる。これらの中でも概ね原料濃度3%以下で反応を進める場合は、液体や液状のスラリーの撹拌を行うことができる撹拌羽根を設けたタンクやパルパーを使用することが好ましい。また、概ね原料濃度3%を超える条件で反応を進める場合は、反応物が液状の形態を取らず固形状であるため、それらを混合撹拌できるニーダー、リボン型混合装置、スクリュー型混合装置を使用することが好ましい。
【0043】
(洗浄工程)
本発明において、得られた化学変性セルロースの分散液を、脱水処理後に水で洗浄する工程であり、この工程により不純物が少ないセルロースナノファイバーを得ることができる。
【0044】
この工程では、遠心分離式、真空脱水式、加圧脱水式のタイプの脱水装置を使用することができる。具体的には、遠心分離式:(タナベウィルテック製遠心分離機、コクサン製遠心分離機など)、真空脱水式:ドラム型真空脱水機、月島機械製水平ベルトフィルター、加圧脱水式:フィルタープレス、チューブプレス、スクリュープレス、ベルトプレス水平ベルトフィルター、ポリディスクフィルター、振動スクリーンなどを挙げることができる。これらの中でも脱水原料に強いせん断力を加えることなく脱水を行うことができるため、加圧脱水式(フィルタープレス、チューブプレス)、遠心分離式(タナベウィルテック製遠心分離機、コクサン製遠心分離機など)、真空脱水式(ドラム型真空脱水機、月島機械製水平ベルトフィルター)が好ましい。また、これらの複数を組み合わせて使用することもできる。
【0045】
(化学変性セルロースの濃度調整工程)
本発明において、次の解繊工程を効率よく行うために、化学変性セルロースの分散液の濃度を0.1質量%~10質量%に調整することが好ましい。0.1質量%未満であると変性パルプの存在が少なすぎるため十分に解繊できない。一方、10質量%を超えると解繊が進行するに従い、変性パルプ分散液の粘度が高くなり、変性パルプに十分な力を加えることができなくなるため十分に解繊することができなくなる。
【0046】
(解繊工程)
本発明において、化学変性セルロースの解繊には、上述の実施の形態に係る高圧ホモジナイザーが用いられる。高圧ホモジナイザーによる解繊は、水分散体に50MPa以上の圧力を印加し、かつ強力なせん断力を印加することにより行われる。印加する圧力は、より好ましくは100MPa以上であり、さらに好ましくは140MPa以上である。また、高圧ホモジナイザーでの解繊・分散処理に先立って、必要に応じて、高速せん断ミキサーなどの公知の混合、攪拌、乳化、分散装置を用いて、上記のセルロースナノファイバーに予備処理を施すことも可能である。
【0047】
上記の処理で解繊する場合、セルロース繊維原料としての固形分濃度は0.1質量%以上、好ましくは0.2質量%以上、特に0.3質量%以上、また10質量%以下、特に6質量%以下であることが好ましい。固形分濃度が低過ぎると、処理するセルロース繊維原料の量に対して液量が多くなり過ぎ効率が悪く、固形分濃度が高過ぎると流動性が悪くなる。
【実施例0048】
[実施例1]
(セルロースナノファイバーの製造)
針葉樹由来の漂白済み未叩解クラフトパルプ(白色度85%、絶乾状態)を、TEMPO(Sigma Aldrich社製、絶乾1gのセルロースに対し0.05mmol)と臭化ナトリウム(絶乾1gのセルロースに対し1.0mmol)を溶解した水溶液(絶乾1gのセルロースに対して水溶液量100ml)に加え、パルプが均一に分散するまで撹拌した。反応系に次亜塩素酸ナトリウム水溶液を次亜塩素酸ナトリウムが5.5mmol/gになるように添加し、室温にて酸化反応を開始した。反応中は系内のpHが低下するが、3M水酸化ナトリウム水溶液を逐次添加し、pH10に調整した。次亜塩素酸ナトリウムが消費され系内のpHが変化しなくなった時点で反応を終了した。
【0049】
反応後の混合物をガラスフィルターで濾過してパルプ分離し、パルプを十分に水洗することで酸化されたパルプ(カルボキシル化セルロース)を得た。この時のパルプ収率は90%であり、酸化反応に要した時間は90分、カルボキシル基量は1.4mmol/gであった。反応混合物に水を加えて濃度を3.0重量%(w/v)に調整し、高圧ホモジナイザー(20℃、150Mpa)で4回処理して、酸化セルロースナノファイバー分散液を得た。
【0050】
高圧ホモジナイザーは、微細化を促進する単孔型の解繊ノズル(単孔ノズル)(ノズル径φ0.20mm)を有するものを使用した。単孔ノズルの交換時期は、約100万shotである。得られた酸化セルロースナノファイバーの平均繊維径は3.9nm、平均繊維長は620nmであった。
【0051】
得られた酸化セルロースナノファイバー分散液のB60粘度(mPas)、透明度(%)、異物量(%)Area、単孔ノズルの詰まり回数(回/100ショット)を表1に示す。B60粘度(mPas)、透明度(%)、異物量(%)Areaの測定方法は以下の通りである。
【0052】
<B60粘度の測定>
ガラスビーカーに、酸化セルロースナノファイバーの固形分濃度が1.0質量%となるように水分散体300gを調製する。水分散体を25℃とし、JIS-Z-8803の方法に準じて、B型粘度計(東機産業社製)を用いて、回転数60rpmで3分後の粘度を測定した。
【0053】
<透明度の測定>
固形分濃度を1.0質量%となるように酸化セルロースナノファイバー水分散体を調製後、UV-VIS分光光度計 UV-1800(株式会社島津製作所製)を用い、光路長10mmの角型セルを用いて、660nm 光の透過率(%)を測定し、透明度とした。
【0054】
<異物量の測定>
酸化セルロースナノファイバー(CNF)を絶乾で1g含有する水性懸濁液に、CNF絶乾重量を100部としたとき、ポリエチレングリコール(PEG、分子量600)を200部加えて、スターラーを用いて2時間撹拌したあと、超音波洗浄機にて脱泡した。そして、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム上にゴム枠を載せてしっかりと固定し、純水を注ぎ込み、漏れないことを確認した後、内部の水を捨てた。これにより、PETフィルムに付着していた埃も除去した。
【0055】
乾燥させたPETフィルム上のゴム枠内にCNF分散液を泡立てないように注ぎ、40℃で一昼夜静置した。乾燥が十分であることを確認し、CNFフィルムを取り出した。得られたCNFフィルムの大きさは18cm×18cmであり、厚さは、0.1mmであった。
【0056】
次いで、暗幕の中に、板状のLEDライトを設置し、エアダスターで埃を除去しながら、LEDライトの上に、検体であるCNFフィルムを2枚の偏光板で挟んだ状態で設置した。これら2枚の偏光板はそれらの偏光軸方向が互いに直交するような状態に配置した。なお、2枚の偏光板はCNFフィルム全体を覆うことができる大きさとした。
【0057】
そして、下方のLEDライトから光を照射し、フィルム全体が視野に収まるように上方からデジタルカメラで透過画像を撮影した。得られた撮影画像をもとに、CNF分散液中の異物の有無を確認するとともに、得られた撮影画像の画像解析により、異物の面積比率を算出した。画像解析は、WayneRasband社が提供している画像解析ソフトImageJを使用した。
[実施例2]
実施例1の高圧ホモジナイザーの単孔ノズルを、ノズル径φ0.26mmを有するものに変更した点以外は、実施例1と同様にして酸化セルロースナノファイバー分散液を得た。得られた酸化セルロースナノファイバー分散液のB60粘度(mPas)、透明度(%)、異物量(%)Area、単孔ノズルの詰まり回数(回/100ショット)を表1に示す。
[実施例3]
実施例1の高圧ホモジナイザーの単孔ノズルを、ノズル径φ0.34mmを有するものに変更した点以外は、実施例1と同様にして酸化セルロースナノファイバー分散液を得た。得られた酸化セルロースナノファイバー分散液のB60粘度(mPas)、透明度(%)、異物量(%)Area、単孔ノズルの詰まり回数(回/100ショット)を表1に示す。
[実施例4]
実施例1の高圧ホモジナイザーの単孔ノズルを、ノズル径φ0.50mmを有するものに変更した点以外は、実施例1と同様にして酸化セルロースナノファイバー分散液を得た。得られた酸化セルロースナノファイバー分散液のB60粘度(mPas)、透明度(%)、異物量(%)Area、単孔ノズルの詰まり回数(回/100ショット)を表1に示す。
[実施例5]
実施例1の高圧ホモジナイザーの単孔ノズルを、ノズル径φ0.70mmを有するものに変更した点以外は、実施例1と同様にして酸化セルロースナノファイバー分散液を得た。得られた酸化セルロースナノファイバー分散液のB60粘度(mPas)、透明度(%)、異物量(%)Area、単孔ノズルの詰まり回数(回/100ショット)を表1に示す。
【0058】
[比較例1]
高圧ホモジナイザーを、Y型の解繊ノズルを有するものに変更した点以外は、実施例1と同様にして酸化セルロースナノファイバー分散液を得た。Y型ノズルの交換時期は、約1万shotである。得られた酸化セルロースナノファイバー分散液のB60粘度(mPas)、透明度(%)、異物量(%)Area、単孔ノズルの詰まり回数(回/100ショット)を表1に示す。
[比較例2]
実施例1の高圧ホモジナイザーの単孔ノズルを、ノズル径φ0.05mmを有するものに変更した点以外は、実施例1と同様にして酸化セルロースナノファイバー分散液を得た。得られた酸化セルロースナノファイバー分散液のB60粘度(mPas)、透明度(%)、異物量(%)Area、単孔ノズルの詰まり回数(回/100ショット)を表1に示す。
[比較例3]
実施例1の高圧ホモジナイザーの単孔ノズルを、ノズル径φ0.90mmを有するものに変更した点以外は、実施例1と同様にして酸化セルロースナノファイバー分散液を得た。得られた酸化セルロースナノファイバー分散液のB60粘度(mPas)、透明度(%)、異物量(%)Area、単孔ノズルの詰まり回数(回/100ショット)を表1に示す。
【0059】
【表1】


【0060】
実施例1~5においては、長時間にわたり解繊ノズルの交換を行うことなく、良好な品質のセルロースナノファイバーの製造を行うことができることが示された。比較例1は、実施例1~5の解繊ノズルに比較して短時間で交換が必要であり、製造コストが高くなることが示された。比較例2の解繊ノズルを用いた場合には、ノズル詰りの発生回数が多くセルロースナノファイバーの生産性が低下することが示された。比較例3の解繊ノズルを用いた場合には、酸化パルプの解繊性が低下することが示された。
【符号の説明】
【0061】
2…高圧ホモジナイザー、4…単孔ノズル、4a…焼結担持体、4b…結晶ダイヤ、4c…ノズル、6…下流配管、7…継手、8…プラグ

図1
図2