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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024136433
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】冷凍サイクル装置
(51)【国際特許分類】
   F25B 1/10 20060101AFI20240927BHJP
   F25B 1/00 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
F25B1/10 E
F25B1/00 396D
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023047549
(22)【出願日】2023-03-24
(71)【出願人】
【識別番号】505461072
【氏名又は名称】日本キヤリア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】弁理士法人志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大原 悠希
(57)【要約】
【課題】信頼性の高い冷凍サイクル装置を提供すること。
【解決手段】冷凍装置システムは、放熱器と、第1膨張弁と、気液分離器と、第3膨張弁と、吸熱器と、低段圧縮部と、インタークーラーと、高段圧縮部と、を備える。放熱器は、流れ込む冷媒を放熱する。第1膨張弁は、放熱器が放熱した冷媒を膨張させる。第3膨張弁は、気液分離器から流出される液相の冷媒を膨張させる。吸熱器は、第3膨張弁による膨張後の冷媒を吸熱する。低段圧縮部は、吸熱器による吸熱後の冷媒を圧縮する、二段圧縮機。インタークーラーは、低段圧縮部の吐出した冷媒を冷却する。高段圧縮部は、インタークーラーによる冷却後の冷媒を圧縮し、圧縮後の冷媒を放熱器に吐出する、二段圧縮機。前記気液分離器が気相の冷媒を吐出する吐出口と前記高段圧縮部が冷媒を吸込む吸込口とは、第2膨張弁を備える第1インジェクション回路と第1の冷媒配管とによって接続される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
流れ込む冷媒を放熱する放熱器と、
前記放熱器が放熱した冷媒を膨張させる第1膨張弁と、
前記第1膨張弁により膨張され液相と気相との混合の状態にある冷媒を、液相と気相とに分離し、それぞれ異なる流出先に流出する気液分離器と、
前記気液分離器から流出される液相の冷媒を膨張させる第3膨張弁と、
前記第3膨張弁による膨張後の冷媒を吸熱する吸熱器と、
前記吸熱器による吸熱後の冷媒を圧縮する、二段圧縮機の低段圧縮部と、
前記低段圧縮部の吐出した冷媒を冷却するインタークーラーと、
前記インタークーラーによる冷却後の冷媒を圧縮し、圧縮後の冷媒を前記放熱器に吐出する、二段圧縮機の高段圧縮部と、
を備える冷凍サイクル装置であって、
前記気液分離器が気相の冷媒を吐出する吐出口と前記高段圧縮部が冷媒を吸込む吸込口とは、第2膨張弁を備える第1インジェクション回路と第1の冷媒配管とによって接続される、
冷凍サイクル装置。
【請求項2】
前記冷凍サイクル装置は、前記インタークーラーが冷却後の冷媒を吐出する吐出口と、前記第1の冷媒配管と、を、第1の接続部によって接続する第2の冷媒配管を有する、
請求項1に記載の冷凍サイクル装置。
【請求項3】
前記気液分離器が液相の冷媒を吐出する吐出口と、前記第1インジェクション回路の一部であって前記第2膨張弁による膨張後の冷媒が通過する部位とを、冷媒を膨張させる第4膨張弁を介して接続する、第2インジェクション回路をさらに備える、
請求項2に記載の冷凍サイクル装置。
【請求項4】
前記気液分離器が液相の冷媒を吐出する吐出口と、前記第1の冷媒配管の一部とを、冷媒を膨張させる第4膨張弁を介して接続する第2インジェクション回路をさらに備える、
請求項2に記載の冷凍サイクル装置。
【請求項5】
前記第2膨張弁の開度を制御する制御部と、
前記インタークーラーによって冷却された冷媒と前記第2膨張弁による膨張後の冷媒とが混合された冷媒の圧力である中間圧力を測定する中間圧力測定器と、
外気温度を測定する外気温度測定器と、
をさらに備え、
前記制御部は、冷媒が過熱度を得ることができるように、前記第2膨張弁の開度を制御する、
請求項1ないし4のいずれか一項に記載の冷凍サイクル装置。
【請求項6】
前記制御部は、さらに、前記中間圧力が冷媒の蒸発圧力よりも高いように、前記第2膨張弁の開度を制御する、
請求項5に記載の冷凍サイクル装置。
【請求項7】
前記冷媒は、二酸化炭素である、
請求項1に記載の冷凍サイクル装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、冷凍サイクル装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、低段圧縮と高段圧縮との二段圧縮サイクルを用いた冷凍サイクル装置の開発が行われている。このような冷凍サイクル装置はインタークーラーを備え、インタークーラーにて冷媒を冷却することで成績係数(Coefficient of Performance:COP)を向上させることが期待されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006-242557号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、これまで提案された技術では、外気温度が低くなるとインタークーラーにおいて冷媒が凝縮してしまい、高段圧縮において過熱度を得られなくなり、液バックが発生する虞があった。
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、信頼性の高い冷凍サイクル装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態の冷凍装置は、放熱器と、第1膨張弁と、気液分離器と、第3膨張弁と、吸熱器と、低段圧縮部と、インタークーラーと、高段圧縮部と、を備える。放熱器は、流れ込む冷媒を放熱する。第1膨張弁は、前記放熱器が放熱した冷媒を膨張させる。気液分離器は、前記第1膨張弁により膨張され液相と気相との混合の状態にある冷媒を、液相と気相とに分離し、それぞれ異なる流出先に流出する。第3膨張弁は、前記気液分離器から流出される液相の冷媒を膨張させる。吸熱器は、前記第3膨張弁による膨張後の冷媒を吸熱する。低段圧縮部は、前記吸熱器による吸熱後の冷媒を圧縮する、二段圧縮機。インタークーラーは、前記低段圧縮部の吐出した冷媒を冷却する。高段圧縮部は、前記インタークーラーによる冷却後の冷媒を圧縮し、圧縮後の冷媒を前記放熱器に吐出する、二段圧縮機。前記気液分離器が気相の冷媒を吐出する吐出口と前記高段圧縮部が冷媒を吸込む吸込口とは、第2膨張弁を備える第1インジェクション回路および、と第1の冷媒配管とによって接続される。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】第1の実施形態の冷凍サイクル装置の概要を説明する第1の説明図。
図2】第1の実施形態の冷凍サイクル装置を説明する第2の説明図。
図3】第1の実施形態における適切な中間圧力を説明する第1の説明図。
図4】第1の実施形態における適切な中間圧力を説明する第2の説明図。
図5】第1の実施形態における適切な中間圧力を説明する第3の説明図。
図6】第1の実施形態における適切な中間圧力を説明する第4の説明図。
図7】第1の実施形態における決定条件が満たされる状況の一例を示す図。
図8】第1の実施形態における制御装置のハードウェア構成の一例を示す図。
図9】第1の実施形態における冷凍サイクル装置が実行する処理の流れの一例を示すフローチャート。
図10】第2の実施形態の冷凍サイクル装置の概要を説明する説明図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、実施形態の冷凍サイクル装置を、図面を参照して説明する。
【0009】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態の冷凍サイクル装置10の概要を説明する第1の説明図である。図2は、第1の実施形態の冷凍サイクル装置10の概要を説明する第2の説明図である。より具体的には、図2は、実施形態の冷凍サイクル装置10で生じる冷媒の変化の様子を示すP-h線図である。Pは冷媒の圧力を示し、hは冷媒の比エンタルピーを示す。図2において直線L0は、冷媒の飽和蒸気線および飽和液線を示す。
【0010】
冷凍サイクル装置10は、放熱器(凝縮器)1と、第1膨張弁2と、気液分離器3と、第2膨張弁4と、第3膨張弁5と、吸熱器(蒸発器)6と、低段圧縮部71と高段圧縮部72とからなる二段圧縮機7と、インタークーラー8と、これらに冷媒を流通させる冷媒配管100と、を備える。冷凍サイクル装置10に流れる冷媒は、R410A、R32もしくは二酸化炭素(CO2)等の冷媒を含む。冷媒は、相変化しながら冷凍サイクル装置10内を循環する。本実施形態の冷凍サイクル装置10は、例えば冷却運転のみが行われる冷凍機に使用される。すなわち、凝縮器(放熱器)1は室外熱交換器であり、蒸発器(吸熱器)6は室内熱交換器である。冷凍サイクル装置10は、二段圧縮サイクルによって冷凍を行う。
【0011】
放熱器1は、流入する冷媒を凝縮する。放熱器1による凝縮とは、具体的には、等圧冷却である。このように放熱器1は、冷媒を放熱し、放熱後の冷媒配管に流出する。放熱器1による放熱前の冷媒の状態は、図2のP-h線図における状態J1である。放熱器1による放熱後の冷媒の状態は、図2のP-h線図における状態J2である。なお、図2のP-h線図の横軸は冷媒の比エンタルピーを示し、縦軸は冷媒の圧力を示す。
【0012】
第1膨張弁2は、放熱器1で放熱された冷媒を膨張させる。第1膨張弁2による膨張は、具体的には、等エンタルピー膨張である。第1膨張弁2による膨張後の冷媒の状態は、図2のP-h線図における状態J3である。第1膨張弁2により、冷媒は、液相の冷媒と気相の冷媒との混合の状態になる。
【0013】
気液分離器3は、第1膨張弁2により膨張され液相と気相との混合の状態にある冷媒を、液相と気相とに分離し、それぞれ異なる流出先に流出する。気液分離器3は、気相の冷媒を第2膨張弁4へ流出する。図2において、気液分離器3の第2膨張弁4へ流出する気相の冷媒の状態は、図2のP-h線図における状態J9である。気液分離器3は、液相の冷媒を第3膨張弁5へ流出する。気液分離器3から第3膨張弁5へ流出する液相の冷媒の状態は、図2のP-h線図における状態J4である。
【0014】
第2膨張弁4は、開度を変更が可能な膨張弁であって、気液分離器3から流出する気相の冷媒を膨張させる膨張弁である。第2膨張弁4による膨張とは、具体的には、等エンタルピー膨張である。第2膨張弁4による膨張後の冷媒の状態は、図2のP-h線図における状態J10である。
【0015】
第3膨張弁5は、気液分離器3によって吐出された液相の冷媒を膨張させる。第3膨張弁5による膨張とは、具体的には、等エンタルピー膨張である。第3膨張弁5による膨張後の冷媒の状態は、図2のP-h線図における状態J5である。
【0016】
吸熱器6は、第3膨張弁5による膨張後の冷媒を吸熱する。吸熱器6による吸熱とは、具体的には、等圧加熱である。吸熱器6による吸熱後の冷媒の状態は、図2のP-h線図における状態J6である。
【0017】
二段圧縮機7の低段圧縮部71は、吸込んだ冷媒を圧縮する。低段圧縮部71による圧縮前の冷媒の状態は、図2のP-h線図における状態J6である。したがって、低段圧縮部71による圧縮対象の冷媒は、例えば吸熱器6による吸熱後の冷媒である。低段圧縮部71による圧縮後の冷媒の状態は、図2のP-h線図における状態J7である。低段圧縮部71は、圧縮後の冷媒を吐出する。
【0018】
インタークーラー8は、低段圧縮部71の吐出した冷媒を例えば外気温度まで冷却する。冷却目標温度は、外気温度に応じて適宜変更可能である。インタークーラー8によって冷やされた冷媒の状態は、図2のP-h線図における状態J7と状態J8との線上のいずれかの点、すなわち状態J11である。なお、以下の説明では、インタークーラー8によって冷やされた冷媒の状態は、図2のP-h線図において状態J11とするが、この限りではなく、上述したように、図2のP-h線図における状態J7と状態J8との線上のいずれかの点であればよい。インタークーラー8によって冷やされた冷媒は、第2膨張弁4による膨張後の冷媒と混合され、高段圧縮部72に吸込まれる。高段圧縮部72による圧縮前の冷媒の状態は、図2のP-h線図における状態J8である。
【0019】
高段圧縮部72は、後述する中間状態の冷媒を吸込み圧縮する。詳しくは、高段圧縮部72には、インタークーラー8から流出する冷媒が供給される。高段圧縮部72による圧縮後の冷媒の状態は、図2のP-h線図における状態J1である。高段圧縮部72は、圧縮後の冷媒を放熱器1に吐出する。上述したように、放熱器1には、二段圧縮機7の高段圧縮部72から吐出された冷媒が流入し、放熱器1の内部に取り込まれ、再び上記の冷凍サイクル動作が繰り返される。なお、CO2を冷媒に使用した場合は、高温・高圧では臨界状態となるため、完全な気体冷媒とはならない。
【0020】
ところで、インタークーラーを備える二段圧縮サイクルにおいては、低段吐出からインタークーラー、高段吸込までの圧力は、中間圧力と呼称される。したがって、冷凍サイクル装置10においては、低段圧縮部71が冷媒を吐出する部位である吐出口710から、インタークーラー8を経由して、高段圧縮部72が冷媒を吸込む部位である吸込口720までの冷媒の圧力を中間圧力とする。図1において、吐出口710は、低段圧縮部71が冷媒を吐出する吐出口の一例である。また、図1において、吸込口720は、高段圧縮部72が冷媒を吸込む吸込口の一例である。
【0021】
冷凍サイクル装置10においては、気液分離器3が気相の冷媒を吐出する部位である吐出口31と、高段圧縮部72が冷媒を吸込む吸込口720とは、後述する第1インジェクション回路121および第2膨張弁4を介して、第1の冷媒配管111で接続されている。また、インタークーラー8が冷媒を流出する部位である流出口81は、第2の冷媒配管112によって、第1の冷媒配管111と接続されている。
【0022】
図1において符号121を付した太線が、第1インジェクション回路の一例である。すなわち、冷凍サイクル装置10は、気液分離器3が気相の冷媒を吐出する部位である吐出口31と、第1の冷媒配管111と第2の冷媒配管112とが接続される第1の接続部113とを、第2膨張弁4を介して接続する第1インジェクション回路121を備える。
【0023】
したがって気液分離器3の吐出口31から流出した気相の冷媒は、第1インジェクション回路121内を通り、第2膨張弁4によって膨張される。続けて、その膨張後の冷媒と、低段圧縮部71が吐出しインタークーラー8によって冷却された冷却後の冷媒と、が、第1の接続部113にて混合する。そして、その混合した冷媒は、第1の冷媒配管111を通り、高段圧縮部72の吸込口720に吸い込まれる。すなわち、第1インジェクション回路121および第1の冷媒配管111内の冷媒の状態は、図2のP-h線図において、状態J9、状態J10、状態J8の状態を含む。その中で第1インジェクション回路121内の冷媒の状態は、図2のP-h線図において、状態J9、状態J10の状態を含む。
【0024】
図2のP-h線図における冷媒の状態は、気液分離器3の吐出口31から流出する状態J9の冷媒が、第2膨張弁4によって膨張され、状態J10となる。また、インタークーラー8で冷却された状態J11冷媒と、第2膨張弁4によって膨張された状態J10の冷媒とが混合し、加重平均の状態(以下「中間状態」という)にある、状態J8となる。したがって、高段圧縮部72が吸込む冷媒は、中間状態の冷媒である。なお、上述した中間圧力は、中間状態にある冷媒の圧力である。
【0025】
このように、冷凍サイクル装置10の第1の冷媒配管111では、図2のP-h線図上で状態J8となる中間状態は、インタークーラー8によって冷却された後の冷媒と第2膨張弁4による膨張後の冷媒とが混合された状態で存在している。したがって、中間圧力は、第2膨張弁4の開閉の度合(すなわち開度)に左右される。第2膨張弁4の弁が閉じる方向(すなわち開度が小さくなる方向)に動作する場合、中間圧力が下がる。
【0026】
第2膨張弁4の弁が開く方向(すなわち開度が大きくなる方向)に動作する場合、中間圧力が上昇する。なぜなら、第2膨張弁4の弁の開度が小さくなれば、第2膨張弁4の膨張後に第1インジェクション回路121を流通する冷媒の量が低下し、第2膨張弁4の弁の開度が大きくなれば、第2膨張弁4の膨張後に第1インジェクション回路121に流通する冷媒の量が増加するから、である。
【0027】
そして、中間圧力が適切であれば、図2のP-h線図が示すような過熱度が得られる。したがって、第2膨張弁4の開度が適切であれば、過熱度が得られる。なお、過熱度は、図2の状態J8の比エンタルピーと、基準エンタルピーとの差である。基準エンタルピーは、飽和蒸気線および飽和液線L0が示す比エンタルピーであって状態J8の圧力における比エンタルピーのうち、状態J8の比エンタルピーとの差が最も小さい比エンタルピー、である。
【0028】
ここで、上述した適切な中間圧力について図3図6を用いて説明する。図3は、実施形態における適切な中間圧力を説明する第1の説明図である。図4は、実施形態における適切な中間圧力を説明する第2の説明図である。図5は、実施形態における適切な中間圧力を説明する第3の説明図である。図6は、実施形態における適切な中間圧力を説明する第4の説明図である。
【0029】
図3は、図4図6にて詳細に説明するP-h線図上の領域R101を示す。図3は、外気温度等高線上で圧力が外気温度飽和圧力である位置を示す。外気温度飽和圧力は、温度が外気温度である際の冷媒の飽和圧力、である。線L2は、外気温度等高線を示す。外気温度等高線とは、冷媒の温度が外気温度であるときの冷媒の圧力Pと比エンタルピーhとの関係を示すグラフである。冷媒がインタークーラー8によって外気温度まで冷却された場合、すなわちインタークーラー出口温度と、外気温度が同じである場合、第2膨張弁4の開度を変化させれば、冷媒の状態は外気温度等高線に沿って変化する。図3の横軸は比エンタルピーhであり、縦軸は圧力Pである。
【0030】
図4は、領域R101の拡大図の一例を示す。図4は、凝縮液が生じてしまう場合の外気温度飽和圧力と中間圧力との関係を示す。図4は、外気温度飽和圧力が中間圧力よりも低いことを示す。このような場合、凝縮液が生じる。
【0031】
図5は、領域R101の拡大図の他の一例を示す。図5は、飽和液が生じる場合の外気温度飽和圧力と中間圧力との関係を示す。図5は、外気温度飽和圧力と中間圧力と一致することを示す。このような場合、飽和液が生じる。
【0032】
図6は、領域R101の拡大図のさらに他の一例を示す。図6は、過熱度を得られる場合の外気温度飽和圧力と中間圧力との関係を示す。図6は、外気温度飽和圧力が中間圧力よりも高いことを示す。すなわち、図6は、中間圧力が外気温度飽和圧力よりも低いことを示す。このような場合、過熱度を得られる。
【0033】
このように、冷媒が外気温度まで冷却された場合、図4から図6において適切な中間圧力とは図6の場合であり、外気温度飽和圧力よりも低いという条件を満たす圧力である。
【0034】
また、この限りではなく、冷媒が外気温度まで冷却されない場合、インタークーラー出口温度と、外気温度が同じであるとは限らない。例えば外気温度よりもインタークーラー出口温度が高くなる場合でも、中間圧力が外気温度飽和圧力より高くとも過熱度が得られる場合がある。詳しくは、中間圧力における飽和温度がインタークーラー出口温度より低い状態にあればよい。すなわち、ガスクーラー出口温度が、飽和蒸気線よりも冷媒の比エンタルピーが大きい場合、過熱度が得られる。
【0035】
したがって冷凍サイクル装置10では、冷媒が外気温度まで冷却された場合、中間圧力が外気温度飽和圧力よりも低くあるように第2膨張弁4の開度が制御されることで、高段圧縮部72の吸込口720において過熱度が得られて液バックの発生が抑制される。その結果、冷凍サイクル装置10では、故障の虞を低減することができ、また、COPの低下も抑制できる。
【0036】
また、冷凍サイクル装置10では、冷媒が外気温度まで冷却されない場合、中間圧力における飽和温度がインタークーラー出口温度より低くなるように第2膨張弁4の開度が制御されることで、高段圧縮部72の吸込口720において過熱度が得られて液バックの発生が抑制される。その結果、冷凍サイクル装置10では、故障の虞を低減することができ、また、COPの低下も抑制できる。
【0037】
このように、冷凍サイクル装置10は、開度の変更可能な第2膨張弁4を備えるため、COPの低下を抑制することが可能である。また、冷凍サイクル装置10は、高段圧縮部72の吸込口720において過熱度を得られるように第2膨張弁4を制御するため、故障の虞を低減することができ、COPの低下を抑制することが可能である。
【0038】
ところで、このような制御は、装置によって自動的に実行されてもよいし、手動で行われてもよい。すなわち、第2膨張弁4の開度の変更は、装置によって行われてもよいし、手動で行われてもよい。以下、上述した冷凍サイクル装置10における第2膨張弁4の制御方法について、図1に戻って説明する。
【0039】
図1の説明に戻る。冷凍サイクル装置10は、さらに、中間圧力測定器102と、外気温度測定器103と、制御装置11と、を備える。中間圧力測定器102は、中間圧力を測定する。外気温度測定器103は、外気温度を測定する。
【0040】
制御装置11は、後述するようにバスで接続されたCPU(Central Processing Unit)等のプロセッサ901とメモリ902とを備える制御部12を備え、プログラムを実行する。制御装置11は、プログラムの実行により、放熱器1と、第1膨張弁2と、気液分離器3と、第2膨張弁4と、第3膨張弁5と、吸熱器6と、低段圧縮部71と、インタークーラー8と、高段圧縮部72と、中間圧力測定器102と、外気温度測定器103との各動作を制御する。より具体的には、制御部12が、プログラムの実行により、放熱器1と、第1膨張弁2と、気液分離器3と、第2膨張弁4と、第3膨張弁5と、吸熱器6と、低段圧縮部71と、インタークーラー8と、高段圧縮部72と、中間圧力測定器102と、外気温度測定器103との各動作を制御する。
【0041】
制御部12は、開度決定処理を実行する。開度決定処理は、中間圧力測定器102と、外気温度測定器103との各測定結果に基づいて、第2膨張弁4の開度を決定する処理である。制御部12は、第2膨張弁4の開度が、開度決定処理で決定された開度であるように、第2膨張弁4の動作を制御する。
【0042】
開度決定処理では、例えば以下の決定条件を満たすように、予め定められた所定の規則にしたがって、開度が決定される。決定条件は、例えば、高段圧縮部72の吸込口720において過熱度を得られる、という条件である。より詳しくは、冷媒が外気温度まで冷却される場合、中間圧力が外気温度飽和圧力よりも低い、という条件である。また、冷媒が外気温度まで冷却されない場合、中間圧力が外気温度飽和圧力より高い、という条件である。
【0043】
決定条件は、例えば、中間圧力が冷媒の蒸発圧力よりも高い、という条件であってもよい。すなわち、決定条件は、冷媒が外気温度まで冷却される場合、中間圧力が外気温度飽和圧力よりも低い、という条件だけでなく、さらに、中間圧力が冷媒の蒸発圧力よりも高い、という条件を含んでもよい。また、冷媒が外気温度まで冷却されない場合、中間圧力が外気温度飽和圧力より高い、という条件だけでなく、さらに、中間圧力が冷媒の蒸発圧力よりも高い、という条件を含んでもよい。
【0044】
なお、開度決定処理において、外気温度飽和圧力の算出が必要な場合、外気温度飽和圧力の算出も開度決定処理において実行される。したがって、開度決定処理において、外気温度飽和圧力の算出が必要な場合、制御部12は、外気温度飽和圧力の算出を行う。なお、外気温度飽和圧力は、外気温度測定器103の測定結果に基づいて得られてもよいし、インタークーラー8の流出口81に設置された温度センサ(図示しない)に基づいて得られてもよい。
【0045】
図7は、第1の実施形態における決定条件が満たされる状況の一例を示す図である。図7は、横軸が外気温度を示し、縦軸が圧力を示す。図7は、決定条件の満たされる状況は、冷媒が外気温度まで冷却される場合、中間圧力が外気温度飽和圧力より低く冷媒の蒸発圧力よりも高い状況であることを示す。図7が示すように、外気温度飽和圧力は、外気温度に依存する。
【0046】
<制御装置11のハードウェア構成の一例>
図8は、第1の実施形態における制御装置11のハードウェア構成の一例を示す図である。制御装置11は、上述したように、バスで接続されたCPU等のプロセッサ901とメモリ902とを備える制御部12を備え、プログラムを実行する。制御装置11は、プログラムの実行によって制御部12、入力部13、通信部14、記憶部15及び出力部16を備える装置として機能する。
【0047】
より具体的には、プロセッサ901が記憶部15に記憶されているプログラムを読み出し、読み出したプログラムをメモリ902に記憶させる。プロセッサ901が、メモリ902に記憶させたプログラムを実行することによって、制御装置11は、制御部12、入力部13、通信部14、記憶部15及び出力部16を備える装置として機能する。
【0048】
制御部12は、制御装置11が備える各種機能部の動作を制御する。また、制御部12は、例えば、放熱器1と、第1膨張弁2と、気液分離器3と、第2膨張弁4と、第3膨張弁5と、吸熱器6と、低段圧縮部71と、インタークーラー8と、高段圧縮部72と、中間圧力測定器102と、外気温度測定器103との各動作を制御する。制御部12は、上述したように例えば、開度決定処理を実行する。
【0049】
入力部13は、マウスやキーボード、タッチパネル等の入力装置を含んで構成される。入力部13は、これらの入力装置を制御装置11に接続するインタフェースとして構成されてもよい。入力部13は、制御装置11に対する各種情報の入力を受け付ける。
【0050】
通信部14は、制御装置11を外部装置に接続するための通信インタフェースを含んで構成される。通信部14は、有線又は無線を介して制御部12による制御先と通信を行う。制御部12による制御先は、例えば、放熱器1と、第1膨張弁2と、気液分離器3と、第2膨張弁4と、第3膨張弁5と、吸熱器6と、低段圧縮部71と、インタークーラー8と、高段圧縮部72と、中間圧力測定器102と、外気温度測定器103と、である。
【0051】
通信部14は、例えば中間圧力測定器102との通信によって、中間圧力測定器102の測定結果を取得する。通信部14は、例えば外気温度測定器103との通信によって、外気温度測定器103の測定結果を取得する。制御部12は、通信部14の取得した情報を取得する。通信部14は、例えば第2膨張弁4との通信によって、制御部12の指示を第2膨張弁4に送信する。このようにして、制御部12は、通信部14を介して、第2膨張弁4の動作を制御する。
【0052】
記憶部15は、磁気ハードディスク装置や半導体記憶装置などのコンピュータ読み出し可能な記憶媒体装置(non-transitory computer-readable recording medium)を用いて構成される。記憶部15は制御装置11に関する各種情報を記憶する。記憶部15は、例えば入力部13又は通信部14を介して入力された情報を記憶する。記憶部15は、例えば第2膨張弁4の制御の履歴を記憶する。記憶部15は、例えば開度決定処理で生じた各種情報を記憶する。
【0053】
出力部16は、各種情報を出力する。出力部16は、例えばCRT(Cathode Ray Tube)ディスプレイや液晶ディスプレイ、有機EL(Electro-Luminescence)ディスプレイ等の表示装置を含んで構成される。出力部16は、これらの表示装置を制御装置11に接続するインタフェースとして構成されてもよい。出力部16は、例えば入力部13又は通信部14に入力された情報を出力する。
【0054】
図9は、第1の実施形態における冷凍サイクル装置10が実行する処理の流れの一例を示すフローチャートである。制御部12が、通信部14を介して、中間圧力測定器102と、外気温度測定器103との各測定結果を取得する(ステップS101)。すなわち、制御部12が、中間圧力と外気温度との各測定結果を取得する。次に制御部12が開度決定処理を実行する(ステップS102)。開度決定処理の実行により、ステップS101で得られた中間圧力と外気温度とに基づいて、第2膨張弁4の開度が決定される。次に、制御部12は、通信部14を介して、開度がステップS102で決定された開度であるように第2膨張弁4の動作を制御する(ステップS103)。
【0055】
このように構成された第1の実施形態の冷凍サイクル装置10は、開度の変更が可能な第2膨張弁4を備える。したがって冷凍サイクル装置10は、高段圧縮部72の吸込口720において過熱度を得ることができ、液バックの発生を抑制することができる。そのため冷凍サイクル装置10は、故障の虞を低減することができ、また、COPの低下を抑制することができる。
【0056】
(第2の実施例)
図10は、第2の実施形態の冷凍サイクル装置10aの概要を説明する説明図である。以下説明の簡単の冷凍サイクル装置10と同様の機能を備えるものについては図1及び図8と同じ符号を付すことで説明を省略する。
【0057】
冷凍サイクル装置10aは、気液分離器3に代えて気液分離器3aを備える点と、さらに第4膨張弁41を備える第2インジェクション回路122を備える点と、で冷凍サイクル装置10と異なる。
【0058】
気液分離器3aは、第1膨張弁2により膨張され液相と気相との混合の状態にある冷媒を液相と気相とに分離しそれぞれ異なる流出先に流出する点と、気相の冷媒を第2膨張弁4へ流出する点とで気液分離器3と同じである。気液分離器3aは、液相の冷媒を第3膨張弁5だけでなく、第4膨張弁41へ流出する点で、気液分離器3と異なる。すなわち、気液分離器3aは、液相の冷媒を吐出する吐出口と第3膨張弁5とをつなぐ冷媒配管と、液相の冷媒を吐出する吐出口と第4膨張弁41とをつなぐ冷媒配管と、を備える。本実施形態では、液相の冷媒を吐出する吐出口と第3膨張弁5とをつなぐ冷媒配管の途中で、第4膨張弁41につながる冷媒配管、すなわち第2インジェクション回路122が分岐するように設けられているがこの限りではなく、吐出口と第3膨張弁5をつなぐ冷媒配管と、吐出口と第4膨張弁41をつなぐ冷媒配管と、が、気液分離器3aから別々に設けられていてもよい。
【0059】
図10において符号122を付した太線が、第2インジェクション回路の一例である。すなわち、冷凍サイクル装置10aは、気液分離器3aが液相の冷媒を吐出する部位である吐出口とつながる冷媒配管と、第2の接続部114とを、第4膨張弁41を介して接続する第2インジェクション回路122を備える。第2の接続部114は、第1インジェクション回路121の一部であって第2膨張弁4による膨張後の冷媒が通過する部位へと接続する。
【0060】
第4膨張弁41は、流入してきた冷媒を膨張させる。したがって、第4膨張弁41は、気液分離器3によって吐出された液相の冷媒を膨張させる。また、第4膨張弁41は、開度が変更可能である。
【0061】
冷凍サイクル装置10の場合、気液分離器3の気相の冷媒を吐出する部位である吐出口31から流出する冷媒とインタークーラー8が冷媒を流出する部位である流出口81から流出する冷媒との混合冷媒は運転条件によって過熱度が過大となる場合がある。
【0062】
第2実施形態の冷凍サイクル装置10aであれば、気液分離器3aの液相の冷媒を、開度が変更可能な第4膨張弁41が備わる2インジェクション回路122によって第1インジェクション回路121にインジェクションすることで、過熱度が過大になることを抑制することができる。
【0063】
すなわち第2インジェクション回路122に開度が変更可能な第4膨張弁41が備わることで、より適切な過熱度を取ることができ、液バックの発生が抑制される。その結果、冷凍サイクル装置10aにおいても、故障の虞を低減することができ、また、COPの低下も抑制できる。
【0064】
本実施形態では、第2インジェクション回路122の第2の接続部114は、第2膨張弁4と、第1の接続部113と、の間の位置に配置したがこの限りではなく、第2膨張弁4の膨張後であれば、第1インジェクション回路121に限らず、第1の冷媒配管111に第2の接続部114が設けられてもよい。
【0065】
以上説明した少なくともひとつの実施形態によれば、開度の変更が可能な第2膨張弁4を備えることにより、冷凍サイクル装置10では、故障の虞を低減することができる。また、COPの低下を抑制することができる。
【0066】
(変形例)
上記各実施形態では、制御部12はソフトウェア機能部であるものとしたが、LSI等のハードウェア機能部であってもよい。
【0067】
制御装置11は、ネットワークを介して通信可能に接続された複数台の情報処理装置を用いて実装されてもよい。この場合、制御部12は、複数の情報処理装置に分散して実装されてもよい。
【0068】
制御装置11の各機能の全て又は一部は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)やPLD(Programmable Logic Device)やFPGA(Field Programmable Gate Array)等のハードウェアを用いて実現されてもよい。プログラムは、コンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録されてもよい。コンピュータ読み取り可能な記録媒体とは、例えばフレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD-ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置である。プログラムは、電気通信回線を介して送信されてもよい。
【0069】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0070】
10…冷凍サイクル装置、1…凝縮器、2…第1膨張弁、3…気液分離器、4…第2膨張弁、5…第3膨張弁、6…蒸発器、7…二段圧縮機、71…低段圧縮部、72…高段圧縮部、8…インタークーラー、41…第4膨張弁、31…吐出口、710…吐出口、720…吸込口、91…吸込口、121…第1インジェクション回路、122…第2インジェクション回路、102…中間圧力測定器、103…外気温度測定器、11…制御装置、12…制御部、13…入力部、14…通信部、15…記憶部、16…出力部、901…プロセッサ、902…メモリ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10