(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024136438
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】成形サイクル休止方法、射出装置、および射出成形機
(51)【国際特許分類】
B29C 45/78 20060101AFI20240927BHJP
B29C 45/24 20060101ALI20240927BHJP
B29C 45/50 20060101ALI20240927BHJP
B29C 45/77 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
B29C45/78
B29C45/24
B29C45/50
B29C45/77
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023047555
(22)【出願日】2023-03-24
(71)【出願人】
【識別番号】000004215
【氏名又は名称】株式会社日本製鋼所
(74)【代理人】
【氏名又は名称】杉谷 嘉昭
(74)【代理人】
【識別番号】100147072
【弁理士】
【氏名又は名称】杉谷 裕通
(72)【発明者】
【氏名】尾辻 靖貴
(72)【発明者】
【氏名】赤木 誉志
【テーマコード(参考)】
4F206
【Fターム(参考)】
4F206AM10
4F206AM19
4F206AM32
4F206AP032
4F206AP051
4F206AR031
4F206AR061
4F206AR071
4F206AR11
4F206JA07
4F206JD01
4F206JL06
4F206JL08
4F206JM01
4F206JM04
4F206JN03
4F206JN11
4F206JP14
4F206JQ86
(57)【要約】
【課題】加熱シリンダ内の樹脂の劣化を防止する成形サイクルの休止方法を提供する。
【解決手段】加熱シリンダ(19)と、スクリュ(20)とを備えた射出装置(3)において成形サイクルの運転を休止する方法として構成する。成形サイクルの休止方法は、加熱シリンダ(19)の温度を成形サイクル実施時温度から待機時温度まで低下させる降温処理(33)と、所定の終了条件が成立するまで樹脂のパージを繰り返し実施する継続パージ処理(35)とを実施する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱シリンダと、該加熱シリンダに入れられたスクリュとを備えた射出装置において成形サイクルの運転を休止するとき、
前記加熱シリンダの温度を成形サイクル実施時温度から待機時温度まで低下させる降温処理と、
所定の終了条件が成立するまで樹脂のパージを繰り返し実施する継続パージ処理と、を実施する成形サイクル休止方法。
【請求項2】
前記降温処理は、予め設定された規定時間と予め設定された規定温度幅に基づいて、前記規定時間ごとに前記規定温度幅だけ前記加熱シリンダの温度を低下させるようにする、請求項1に記載の成形サイクル休止方法。
【請求項3】
前記成形サイクル実施時温度は、前記加熱シリンダにおける長さ方向の区分であるゾーン毎に異なっており、前記規定温度幅はゾーン毎で共通の温度幅とする、請求項2に記載の成形サイクル休止方法。
【請求項4】
前記成形サイクル休止方法は、前記継続パージ処理については成形サイクルの運転の停止を検出したら開始するようにし、
前記降温処理については、成形サイクルの運転の停止を検出してから予め設定された猶予時間まで前記加熱シリンダの温度の低下の開始を見合わせて前記猶予時間の経過後に開始するようにし、
前記猶予時間に到達する前に成形サイクルの運転の再開を検出したら、前記降温処理の実施をキャンセルすると共に前記継続パージ処理を停止する、請求項1または2に記載の成形サイクル休止方法。
【請求項5】
前記継続パージ処理は、前記スクリュを回転して樹脂を計量する計量動作と、前記スクリュを軸方向に駆動して樹脂を射出する射出動作とを繰り返すようにする、請求項1または2に記載の成形サイクル休止方法。
【請求項6】
前記終了条件は、前記射出動作における射出圧力が規定の許容射出圧力を超えることである、請求項5に記載の成形サイクル休止方法。
【請求項7】
前記終了条件は、前記加熱シリンダの温度が予め設定されたパージ不要温度まで低下することである、請求項1または2に記載の成形サイクル休止方法。
【請求項8】
加熱シリンダと、
前記加熱シリンダ内に入れられているスクリュと、
制御装置と、を備え、
前記制御装置は、成形サイクルの運転の停止を検出したら、成形サイクル休止処理を実施するようになっており、
前記成形サイクル休止処理は、前記加熱シリンダの温度を成形サイクル実施時温度から待機時温度まで低下させる降温処理と、
所定の終了条件が成立するまで樹脂のパージを繰り返し実施する継続パージ処理と、を備えている、射出装置。
【請求項9】
前記降温処理は、予め設定された規定時間と予め設定された規定温度幅に基づいて、前記規定時間ごとに前記規定温度幅だけ前記加熱シリンダの温度を低下させるようになっている、請求項8に記載の射出装置。
【請求項10】
前記成形サイクル実施時温度は、前記加熱シリンダにおける長さ方向の区分であるゾーン毎に異なっており、前記規定温度幅はゾーン毎で共通の温度幅とする、請求項9に記載の射出装置。
【請求項11】
前記制御装置は、前記継続パージ処理については成形サイクルの運転の停止を検出したら開始し、
前記降温処理については、成形サイクルの運転の停止を検出してから予め設定された猶予時間まで前記加熱シリンダの温度の低下の開始を見合わせて前記猶予時間の経過後に開始するようにし、
前記猶予時間に到達する前に成形サイクルの運転の再開を検出したら、前記降温処理の実施をキャンセルすると共に前記継続パージ処理を停止する、請求項8または9に記載の射出装置。
【請求項12】
前記継続パージ処理は、前記スクリュを回転して樹脂を計量する計量動作と、前記スクリュを軸方向に駆動して樹脂を射出する射出動作とを繰り返すようにする、請求項8または9に記載の射出装置。
【請求項13】
前記終了条件は、前記射出動作における射出圧力が規定の許容射出圧力を超えることである、請求項12に記載の射出装置。
【請求項14】
前記終了条件は、前記加熱シリンダの温度が予め設定されたパージ不要温度まで低下することである、請求項8または9に記載の射出装置。
【請求項15】
射出装置と、
型締装置と、
制御装置と、を備え、
前記射出装置は、加熱シリンダと、
前記加熱シリンダ内に入れられているスクリュと、を備え、
前記制御装置は、成形サイクルの運転の停止を検出したら、成形サイクル休止処理を実施するようになっており、
前記成形サイクル休止処理は、前記加熱シリンダの温度を成形サイクル実施時温度から待機時温度まで低下させる降温処理と、
所定の終了条件が成立するまで樹脂のパージを繰り返し実施する継続パージ処理と、を備えている、射出成形機。
【請求項16】
前記降温処理は、予め設定された規定時間と予め設定された規定温度幅に基づいて、前記規定時間ごとに前記規定温度幅だけ前記加熱シリンダの温度を低下させるようになっている、請求項15に記載の射出成形機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、射出成形機において成形サイクルの運転状態から休止状態に移行させる成形サイクル休止方法、成形サイクル休止処理を備えた射出装置、および射出成形機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
射出成形機は金型を型締めする型締装置、射出材料を溶融して金型に射出する射出装置等を備えている。射出装置は加熱シリンダと、この加熱シリンダ内に入れられているスクリュとを備えている。加熱シリンダをヒータにより加熱し、スクリュを回転しながら樹脂をホッパから供給すると樹脂は溶融して加熱シリンダの前方に送られる。すなわち計量される。加熱シリンダの先端に設けられている射出ノズルを型締された金型にタッチさせ、スクリュを軸方向に駆動する。そうすると樹脂が金型に射出され、成形品が得られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【0004】
高品質な成形品を得ることができる射出成形機の運転方法が、色々な特許文献によって提案されている。例えば特許文献1には、射出成形機を休止していた状態から成形サイクルを開始するときの射出成形機の運転方法が提案されている。特許文献1に記載の運転方法では、成形サイクルの開始から、成形が安定するまでに要する成形サイクル回数、すなわち安定化回数を推定するようにしている。この安定化回数は、休止していたときに加熱シリンダ内に残っていた樹脂の量を、1回の成形サイクルで射出される樹脂量で除して得るようにしている。安定化回数に達するまでは射出操作により樹脂をパージすることができる。安定化回数を経た後の成形サイクルでは、劣化のない樹脂で射出することができるので高品質な成形品を得ることができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の方法のように、成形サイクルの休止状態から開始するときの射出成形の運転方法を実施すれば、休止していた期間に加熱シリンダ内に残っていた樹脂を使用せずに成形品を成形することができ、良品が得られるはずである。しかしながら、解決すべき課題も見受けられる。例えば射出成形によって成形される成形品には、携帯電話に搭載されるレンズ等の光学製品がある。このような光学製品では黒点の混入等のいわゆるコンタミネーションがわずかでも発生すると製品として採用できない。成形サイクルの休止時間が長い場合には加熱シリンダ内に残っていた樹脂が劣化する可能性が高い。樹脂が劣化してしまうと安定化回数分、あるいはそれ以上の回数樹脂をパージしたとしても、加熱シリンダ内に劣化した樹脂の一部が残留する危険があり、成形品の品質が保証できない。
【0006】
本開示において、加熱シリンダ内の樹脂の劣化を防止する成形サイクルの休止方法を提供する。
【0007】
その他の課題と新規な特徴は、本明細書の記述及び添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示は、加熱シリンダと、該加熱シリンダに入れられたスクリュとを備えた射出装置において成形サイクルの運転を休止する方法として構成する。成形サイクルの休止方法は、加熱シリンダの温度を成形サイクル実施時温度から待機時温度まで低下させる降温処理と、所定の終了条件が成立するまで樹脂のパージを繰り返し実施する継続パージ処理と、を実施するように構成する。
【発明の効果】
【0009】
本開示は、加熱シリンダ内の樹脂の劣化を確実に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】第1の実施形態に係る成形サイクル休止処理ソフトウエア群を含む、第1の実施形態に係る射出成形機の正面図である。
【
図2】第1の実施形態に係る射出装置の正面断面図である。
【
図3A】第1の実施形態に係る成形サイクル休止処理のうち、降温処理を示すフローチャートである。
【
図3B】第1の実施形態に係る成形サイクル休止処理のうち、継続パージ処理を示すフローチャートである。
【
図4A】第2の実施形態に係る成形サイクル休止処理ソフトウエア群を示すブロック図である。
【
図4B】第2の実施形態に係る成形サイクル休止処理の降温処理を示すフローチャートである。
【
図5A】第3の実施形態に係る成形サイクル休止処理ソフトウエア群を示すブロック図である。
【
図5B】第3の実施形態に係る成形サイクル休止処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、具体的な実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。ただし、以下の実施の形態に限定される訳ではない。説明を明確にするため、以下の記載及び図面は、適宜簡略化されている。各図面において、同一の要素には同一の符号が付されており、必要に応じて重複説明は省略されている。また、図面が煩雑にならないように、ハッチングが省略されている部分がある。
【0012】
[第1の実施形態]
<射出成形機>
第1の実施形態に係る射出成形機1は、
図1に示されているように、ベッドB上に設けられている型締装置2と、ベッドB上において型締装置2の側方に設けられている射出装置3と、これらを制御する制御装置4と、を備えている。制御装置4は、
図1において示されているモニタを備えた操作端末だけでなく、図には示されていないが、ベッドBの中に設けられているプログラマブルコントローラ、制御盤等を含めて構成されている。しかしながら、
図1ではモニタを備えた操作端末を示して便宜的に制御装置4であるとして説明している。
【0013】
<型締装置>
型締装置2は、ベッドBに固定されている固定盤7と、ベッドB上をスライド自在に設けられている可動盤8と、型締ハウジング9と、を備えている。固定盤7と型締ハウジング9は複数本のタイバー11、11、…により連結されており、可動盤8は固定盤7と型締ハウジング9の間でスライド自在になっている。型締ハウジング9と可動盤8の間には型締機構が、すなわち本実施の形態においてはトグル機構13が設けられている。固定盤7と可動盤8には、それぞれ固定側金型15と、可動側金型16とが設けられている。従って、トグル機構13を駆動すると金型15、16が型開閉される。
【0014】
<射出装置>
射出装置3は、加熱シリンダ19と、加熱シリンダ19内に設けられているスクリュ20と、スクリュ駆動装置22と、を備えている。加熱シリンダ19はスクリュ駆動装置22に支持されており、スクリュ20はスクリュ駆動装置22によって回転方向と軸方向とに駆動されるようになっている。加熱シリンダ19にはホッパ23と、射出ノズル24とが設けられている。また、加熱シリンダ19にはヒータ25、25、…が設けられている。
【0015】
図2には、射出装置3の一部が拡大して示されている。加熱シリンダ19はその長さ方向に渡って複数のゾーンに区分されている。すなわちホッパ23が設けられているホッパゾーンHP、そしてホッパゾーンHPから下流に向かって、第1のゾーンH1、第2のゾーンH2、第3のゾーンH3、第4のゾーンH4になっている。射出ノズル24が設けられているゾーンは、この実施形態においては1個のゾーンであるノズルゾーンNHになっている。しかしながら、射出ノズル24が設けられているゾーンについても複数のゾーンに区分することもできる。
【0016】
加熱シリンダ19の各ゾーンHP、H1、…のうち、ホッパゾーンHPを除く他のゾーンH1、H2、…にはそれぞれヒータ25、25、…と温度センサ27、27、…とが設けられている。ヒータ25、25、…と温度センサ27、27、…とによってそれぞれのゾーンHP、H1、…を独立して温度制御できるようになっている。
【0017】
<成形サイクル休止処理ソフトウエア群>
第1の実施形態に係る射出成形機1の制御装置4には、
図1に示されているように第1の実施形態に係る成形サイクル休止処理ソフトウエア群30が設けられている。成形サイクル休止処理ソフトウエア群30は、後で詳しく説明するように、射出成形機1を成形サイクルの運転状態から休止状態に移行する成形サイクル休止処理を実施するソフトウエア群である。制御装置4において動作する制御プログラムと、各種設定データとから構成されている。具体的には、各種設定データが格納されている設定情報ファイル32と、制御プログラムである降温処理33と、同様に制御プログラムである継続パージ処理35とから構成されている。なお、これらは説明する上で便宜的に示された構成であって、他のファイル、制御プログラム等から構成することもできる。
【0018】
第1の実施形態において設定情報ファイル32には、次の設定データが格納されている。
・成形サイクル実施時温度
成形サイクルの運転中において加熱シリンダ19を制御する目標温度である。各ゾーンHP、H1、H2、…毎に、成形サイクル実施時温度が設定されている。例えば、射出される樹脂がポリカーボネートの場合には、第1のゾーンH1は290℃、第2のゾーンH2は300℃、等、のように設定されている。
【0019】
・待機時温度
成形サイクルの休止状態における加熱シリンダ19の温度である。樹脂が溶融状態を維持する温度であって、長時間溶融状態を維持しても劣化の虞がない温度になっている。例えば樹脂がポリカーボネートの場合、160℃、170℃等が設定されている。待機時温度として適切な温度は、樹脂のガラス転移点または融点から+30℃までの温度であり、好ましくはガラス転移点または融点から+10~20℃までの温度である。
【0020】
・終了条件
第1の実施形態に係る成形サイクル休止処理ソフトウエア群30は、成形サイクルを休止状態に移行する際に継続パージ処理35によってパージを繰り返す。終了条件は継続パージ処理35を終了させる条件である。色々な条件を採用することができるが、第1の実施形態では射出成形機1において一般的に設けられている射出圧力異常が採用されている。射出成形機1ではスクリュ20を駆動して樹脂を射出するとき、スクリュ20に作用する軸力、つまり射出圧力を監視している。この射出圧力が正常範囲を超えて高いとき、射出圧力異常として検出して警報が出力されるようになっている。第1の実施形態では、スクリュ20を駆動してパージするとき、この射出圧力異常が発生したら終了条件が成立したとしてパージを終了するようになっている。
【0021】
<成形サイクル休止処理>
第1の実施形態に係る成形サイクル休止処理を説明する。オペレータは制御装置4において運転停止の操作を行い、第1の実施形態に係る成形サイクル休止処理を実行する。具体的には、制御装置4は成形サイクル休止処理として、次に説明する降温処理33と、継続パージ処理35とを並行して実行する。
【0022】
<降温処理>
第1の実施形態に係る降温処理33は、
図3Aに示されているように、最初にステップS01を実行する。すなわち各ゾーンH1、H2、…(
図2参照)についてヒータ25、25、…を停止する。ヒータ25、25、…を停止すると各ゾーンH1、H2、…の温度は低下する。降温処理33は、ステップS02を実行して、待機時温度に到達したゾーンH1、H2、…があるか否かをチェックする。到達したゾーンH1、H2、…がなければ(NO)、ステップS02を繰り返す。到達したゾーンH1、H2、…があれば(YES)、ステップS03に移行する。
【0023】
ステップS03では、待機時温度に到達したゾーンH1、H2、…について、待機時温度を目標温度とする温度制御に切り換える。すなわち待機時温度に到達したゾーンH1、H2、…については、以後、待機時温度で維持されるようにする。次に降温処理33は、ステップS04を実行して全てのゾーンH1、H2…が待機時温度に到達したか否かをチェックする。待機時温度に到達していないゾーンH1、H2…があれば(NO))ステップS02に戻る。すなわち、新たに待機時温度に到達するゾーンH1、H2…が出現するまで監視する。一方、全てのゾーンH1、H2…が待機時温度に到達したら(YES)、降温処理33を完了する。
【0024】
<継続パージ処理>
第1の実施形態に係る継続パージ処理35(
図1参照)は、上で説明した第1の実施形態に係る降温処理33と並行して制御装置4によって実行される。第1の実施形態に係る継続パージ処理35は、最初に
図3Bに示されているように、ステップS11によりパージを実行する。パージは、スクリュ位置を固定にしてスクリュ20(
図1参照)を回転させて樹脂を射出ノズル24から排出する方法もある。しかしながらここでは計量動作と射出動作とによってパージを実施する。すなわちスクリュ20を回転して樹脂がスクリュ20の先端に計量される計量動作を実施し、所定量の樹脂が計量されたらスクリュ20の回転を停止して軸方向に駆動する射出動作を実施する。このようにして樹脂をパージする。
【0025】
継続パージ処理35は、次にステップS12を実行する。すなわち終了条件が成立しているか否かをチェックする。パージにおける射出動作では、制御装置4が射出圧力を監視している。射出圧力異常が発生していなければ終了条件が成立していないとして(NO)、ステップS11に戻る。すなわちパージを繰り返す。一方、射出圧力異常が発生すれば終了条件が成立したとして(YES)、継続パージ処理35を完了する。なお、射出圧力異常は射出動作における射出圧力が高くなっている場合に発生する。つまり樹脂の温度が低下して粘度が高くなると発生する。十分に温度が低くなっているので、このような射出圧力異常の検出によってパージを終了しても、以後樹脂の劣化の虞はない。なお、終了条件の成立を待たずに、オペレータが制御装置4(
図1参照)を操作して継続パージ処理35を停止させることもできる。
【0026】
第1の実施形態に係る成形サイクル休止処理は、樹脂の温度を成形サイクル実施時温度から待機時温度まで低下させるようにすると共に、温度が高い間はパージを繰り返し実行するようにしている。したがって、成形サイクルの運転状態から休止状態に移行するに際して、加熱シリンダ19(
図1参照)内の樹脂が劣化する虞がない。つまり成形サイクルを再開しても、劣化した樹脂がないので、成形品への黒点混入等の成形不良を防止することができる。
【0027】
[第2の実施形態]
<第2の実施形態に係る射出成形機>
第2の実施形態に係る射出成形機についても、各装置、部材等については、
図1、2に示されている第1の実施形態に係る射出成形機1、射出装置3と同様に構成されている。したがって、各装置、部材等についての説明は省略する。第2の実施形態は、制御装置4に設けられている成形サイクル休止処理ソフトウエア群30Aが、
図4Aに示されているように、第1の実施形態と相違している。第2の実施形態に係る成形サイクル休止処理ソフトウエア群30Aを説明する。
【0028】
<成形サイクル休止処理ソフトウエア群>
第2の実施形態に係る成形サイクル休止処理ソフトウエア群30Aも、設定情報ファイル32Aと、降温処理33Aと、継続パージ処理35Aとから構成されている。これらのうち、継続パージ処理35Aについては第1の実施形態における継続パージ処理35(
図1参照)と同様に構成されているので、説明を省略する。
【0029】
第2の実施形態における設定情報ファイル32Aには、第1の実施形態における設定情報ファイル32(
図1参照)と同様に、成形サイクル実施時温度と待機時温度と終了条件とが格納されている。これら設定データは第1の実施形態と同様であるので説明を省略する。第2の実施形態における設定情報ファイル32Aには、他の設定データとして、次の設定データが格納されている。
・規定時間
・規定温度幅
第2の実施形態に係る成形サイクル休止処理の降温処理33Aでは、次に説明するように樹脂温度を実質的に一定の温度変化で低下させるようにしている。これらの設定データは温度変化を一定にするためのものである。
【0030】
<成形サイクル休止処理>
成形サイクルの運転を停止するとき、オペレータは制御装置4において運転停止の操作を行い、第2の実施形態に係る成形サイクル休止処理を実行する。第2の実施形態に係る成形サイクル休止処理として、制御装置4は次に説明する降温処理33Aと、継続パージ処理35Aとを並行して実行する。
【0031】
<降温処理>
第2の実施形態に係る降温処理33Aは、最初に
図4Bに示されているように、ステップS21を実行する。このステップS21では、それぞれのゾーンH1、H2…について目標温度を設定し温度制御する。目標温度は、現在のゾーンH1、H2…の温度から設定情報ファイル32Aに設定されている規定温度幅だけ低い温度とする。次いでステップS22を実行する。すなわち、設定情報ファイル32Aに設定されている規定時間が経過したかをチェックする。規定時間を経過していなければ(NO)、処理を継続する。経過していれば(YES)、ステップS23に移行する。
【0032】
ステップS23では、待機時温度に到達したゾーンH1、H2…があるか否かをチェックする。無ければ(NO)、ステップS21に戻って処理を繰り返す。すなわち、それぞれのゾーンH1、H2…について目標温度をさらに規定温度幅だけ下げて温度制御する。一方、待機時温度に到達したゾーンH1、H2…があれば(YES)、ステップS24を実行する。すなわち当該ゾーンH1、H2…について待機時温度を一定にする温度制御に切り換える。
【0033】
次いでステップS25を実行する。ステップS25では全てのゾーンH1、H2…について待機時温度に到達したかをチェックする。待機時温度に到達していないゾーンH1、H2…があれば(NO)、ステップS21に戻る。全てのゾーンH1、H2…が待機時温度に到達していれば(YES)、降温処理33Aを終了する。
【0034】
継続パージ処理35Aは第1の実施形態における継続パージ処理35と同様であるので説明を省略する。
【0035】
第2の実施形態に係る成形サイクル休止処理では、各ゾーンH1、H2…の温度降下の速度を実質的に一定にすることができる。したがって、安定的に樹脂温度を低下させながらパージをすることになり、加熱シリンダ19(
図1参照)内の樹脂の劣化を確実に防止することができる。
【0036】
[第3の実施形態]
<第3の実施形態に係る射出成形機>
第3の実施形態に係る射出成形機についても、各装置、部材等については、
図1、2に示されている第1の実施形態に係る射出成形機1、射出装置3と同様に構成されている。したがって、各装置、部材等についての説明を省略する。第3の実施形態は、制御装置4に設けられている成形サイクル休止処理ソフトウエア群30Bが、
図5Aに示されているように、第1の実施形態と相違している。第3の実施形態に係る成形サイクル休止処理ソフトウエア群30Bを説明する。
【0037】
<成形サイクル休止処理ソフトウエア群>
第3の実施形態に係る成形サイクル休止処理ソフトウエア群30Bも、設定情報ファイル32Bと、降温処理33Bと、継続パージ処理35Bと、から構成されている。
【0038】
第3の実施形態における設定情報ファイル32Bには、第2の実施形態における設定情報ファイル32A(
図4A参照)と同様に、成形サイクル実施時温度と待機時温度と規定時間と規定温度幅とが格納されている。これらは第1、第2の実施形態で説明した設定データと同じであるので説明を省略する。これらの設定データの他に、次の設定データが格納されている。
【0039】
・猶予時間
第3の実施形態に係る成形サイクル休止処理では、成形サイクルの運転を停止すると制御装置4(
図1参照)がこれを検出して休止状態に移行するようにしている。ただし後で説明するように休止状態への移行を中止することもある。この猶予期間は、制御装置4が休止状態への移行を中止するか否かを判断するための時間になっている。
【0040】
・許容射出圧力
許容射出圧力は、継続パージ処理35Bがパージを終了させるか否かを判断する終了条件の一つである。第1の実施形態では、射出成形機1において一般的に設けられている射出圧力異常が終了条件として採用され、パージの射出動作においてこの射出圧力異常が検出されたら終了条件が成立したと判断していた。第3の実施形態では、射出圧力異常を検出するための射出圧力とは別に許容射出圧力が設定されている。これらは同じ値であってもよいし、別の値であってもよい。パージの射出動作において許容射出圧力を超える射出圧力が検出されたら終了条件が成立したと判断する。
【0041】
・パージ不要温度
パージ不要温度は、継続パージ処理35Bがパージを終了させるか否かを判断する終了条件の一つである。全てのゾーンH1、H2…(
図2参照)についてこのパージ不要温度より低下していれば、樹脂は劣化しないと判断して終了条件が成立したと判断する。なお、パージ不要温度は待機時温度と同じ温度であってもよいし、待機時温度より高い温度であってもよい。
【0042】
<成形サイクル休止処理>
第3の実施形態でも、オペレータが制御装置4(
図1参照)において成形サイクルの運転停止の操作を行うと共に明示的に成形サイクル休止処理の実行を指令することもできる。しかしながら、第3の実施形態に係る成形サイクル休止処理は、オペレータにより成形サイクルの運転が停止されると、制御装置4がこれを検出し休止状態に移行するようになっている。以下、説明する。
【0043】
オペレータが成形サイクルを停止する。そうすると制御装置4は、
図5Bに示されているように、ステップS31を実行する。ステップS31では、停止されてからの経過時間をチェックしており、所定の規定時間、例えば十数秒間が経過したか否かをチェックする。経過してなければ(NO)、ステップS31を継続する。経過していれば(YES)、制御装置4は休止状態への移行に向けた準備段階に入る。すなわちステップS32により継続パージ処理35Bを開始する。準備段階では、降温処理33Bの実行は保留する。
【0044】
継続パージ処理35Bでは、第1の実施形態と同様に計量動作と射出動作とを実施してパージする。そして終了条件が成立しなければパージを継続し、終了条件が成立すればパージを完了するようにしている。第3の実施形態において継続パージ処理35Bの終了条件は既に説明したように2個設けられている。すなわち、許容射出圧力とパージ不要温度である。パージの射出動作において許容射出圧力を超える射出圧力が検出されれば終了条件が成立したと判断することになる。あるいは全てのゾーンH1、H2…(
図2参照)がパージ不要温度より低下していることが検出されれば終了条件が成立したと判断することになる。
【0045】
さて、ステップS32において継続パージ処理35Bを開始したら、制御装置4はステップS33を実行する。すなわち、オペレータによって成形サイクルが再開されたか否かを判定する。再開されていなければ(NO)、ステップS34を実行して猶予時間が経過したか否かを判定する。猶予時間が経過していなければ(NO)、ステップS33に戻る。一方、ステップS33において、オペレータによる成形サイクルの再開が検出されたら(YES)、ステップS35を実行する。すなわち、実行中の継続パージ処理35Bを停止する。次いでステップS31に戻る。つまり降温処理33Bを実行せず、休止状態への移行はキャンセルする。以下、制御装置4は成形サイクルを行う。
【0046】
ステップS34において猶予時間が経過したと判断したら(YES)、制御装置4は準備段階を終了して休止状態への移行を開始する。つまり、ステップS36により降温処理33Bを開始する。第3の実施形態において降温処理33Bは、第2の実施形態における降温処理33A(
図4A)と同様に処理するので説明を省略する。
【0047】
降温処理33Bが開始され、所定の時間が経過すると、既に実行されている継続パージ処理35Bにおいて、上で説明したいずれかの終了条件が成立して終了することになる。全てのゾーンH1、H2…について待機時温度に達したら既に説明したように降温処理33Bも終了する。すなわち、成形サイクル休止処理が完了する。
【0048】
第3の実施形態に係る成形サイクル休止処理では、制御装置4(
図1参照)が成形サイクルの運転の停止を検出して休止状態に移行すべきか否かを判断している。したがって、加熱シリンダ19内の樹脂が劣化する前に安全に休止状態に移行することができる。さらには、第3の実施形態に係る成形サイクル休止処理では猶予時間を設けて休止状態に移行する前の準備段階が設けられている。したがって、成形サイクルの運転の停止時間が短く、早期に運転が再開されるときには、樹脂の温度が低下することがなく、効率良く運転を再開することができる。
【0049】
[変形例]
第1、2、3の実施形態は色々変形することができる。例えば、終了条件として他の条件を採用することができる。例えば、スクリュ20の回転時のトルクを条件とすることができる。樹脂の温度が低下するとトルクが上昇する。スクリュ20の回転時のトルクが規定の許容トルクに達したら終了条件が成立したとすることができる。さらには、他の異常状態の検出により終了させる場合もある。例えば樹脂の材料切れ等の異常状態である。材料切れが発生すると継続パージ処理35において計量動作を実施するとき、スクリュ20を回転しても適切に計量されない。計量時間が規定の時間をオーバーしたり、スクリュ20が後退しない空転異常が発生したりしたら、当然に継続パージ処理35を終了させる必要がある。つまり、このような異常発生についても終了条件とすることができる。
【0050】
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は既に述べた実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能であることはいうまでもない。以上で説明した複数の例は、適宜組み合わせて実施されることもできる。
【符号の説明】
【0051】
1 射出成形機 2 型締装置
3 射出装置 4 制御装置
7 固定盤 8 可動盤
9 型締ハウジング 11 タイバー
13 トグル機構 15 固定側金型
16 可動側金型 19 加熱シリンダ
20 スクリュ 22 スクリュ駆動装置
23 ホッパ 24 射出ノズル
25 ヒータ 27 温度センサ
30 成形サイクル休止処理ソフトウエア群
32 設定情報ファイル 33 降温処理
35 継続パージ処理