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  • 特開-ドリル加工装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024136481
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】ドリル加工装置
(51)【国際特許分類】
   B26F 1/16 20060101AFI20240927BHJP
   B23B 41/00 20060101ALI20240927BHJP
   B23Q 11/14 20060101ALI20240927BHJP
   B23Q 11/10 20060101ALI20240927BHJP
   B26D 7/10 20060101ALI20240927BHJP
   B26D 7/20 20060101ALI20240927BHJP
   B26D 5/00 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
B26F1/16
B23B41/00 D
B23Q11/14
B23Q11/10 F
B26D7/10
B26D7/20
B26D5/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023047610
(22)【出願日】2023-03-24
(71)【出願人】
【識別番号】000233332
【氏名又は名称】ビアメカニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003133
【氏名又は名称】弁理士法人近島国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鴨志田 啓一
【テーマコード(参考)】
3C021
3C036
3C060
【Fターム(参考)】
3C021EA02
3C021EA04
3C021GA01
3C036AA01
3C060AA11
3C060BA05
3C060BG01
(57)【要約】
【課題】加工品質の低下の防止を図ることが可能なドリル加工装置を提供する。
【解決手段】ドリル加工装置(1)は、ワーク(12)を設置するテーブル(2)と、ワーク(12)に加工を行うドリル(26)と、ワーク(12)に対してドリル(26)がある側からワーク(12)を冷却する第1冷却手段と、テーブル(2)を冷却する第2冷却手段(50)と、を備える。ワーク(12)が第1冷却手段と第2冷却手段(50)とにより冷却されるので、ワーク(12)が熱で変形することの防止を図ることができ、加工品質の低下の防止を図ることができる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークを設置するテーブルと、
前記ワークに加工を行うドリルと、
前記ワークに対して前記ドリルがある側から前記ワークを冷却する第1冷却手段と、
前記テーブルを冷却する第2冷却手段と、を備える、
ことを特徴とするドリル加工装置。
【請求項2】
前記ワークは、プリント基板であり、
前記プリント基板に接離するように移動可能で、前記ドリルが貫通して移動可能な貫通孔を有する基板押え部材を備え、
前記第1冷却手段は、
前記貫通孔に開口する空気供給路と、
前記空気供給路に空気を供給する空気供給装置と、を含む、
ことを特徴とする請求項1に記載のドリル加工装置。
【請求項3】
前記第2冷却手段は、前記テーブルを環境温度よりも所定温度低くなるように冷却する、
ことを特徴とする請求項1に記載のドリル加工装置。
【請求項4】
前記環境温度を検出する第1温度検出センサと、
前記テーブルの温度を検出する第2温度検出センサと、
前記第2温度検出センサの検出結果に基づき、前記第2冷却手段を制御し、前記テーブルを前記第1温度検出センサの検出結果よりも前記所定温度低くなるように冷却する制御手段と、を備える、
ことを特徴とする請求項3に記載のドリル加工装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドリルによりワークに加工を行うドリル加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えばプリント基板等のワークにドリルにより穴明け等の加工を行うものにあって、プレッシャフットによりワークを抑えると共に、プレッシャフットにおけるドリルが貫通する貫通孔に圧縮エアを供給することでドリルを冷却するものが提案されている(特許文献1参照)。このようにドリルを冷却することで、ドリルの温度の上昇が抑えられ、樹脂が熱で融けることを抑えて加工した穴の内面を滑らかにし、かつドリルの長寿命化も図られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000-334697号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、近年、ドリルの回転速度の高速化や穴の高密度化により、ドリルをエアで冷却するだけでは不十分となっており、穴開け加工による残留熱がワークに蓄積し、ワークが温度上昇の影響で熱変形した(歪んだ)状態となり、その状態で穴明け加工が進められることで、加工品質が低下してしまうという問題があった。
【0005】
そこで本発明は、加工品質の低下の防止を図ることが可能なドリル加工装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、ワークを設置するテーブルと、前記ワークに加工を行うドリルと、前記ワークに対して前記ドリルがある側から前記ワークを冷却する第1冷却手段と、前記テーブルを冷却する第2冷却手段と、を備える、ことを特徴とするドリル加工装置である。
【発明の効果】
【0007】
本発明によると、テーブルを冷却することでワークの温度上昇を防止することができ、その状態で加工を進めることができて、加工品質の低下の防止を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本実施の形態に係るドリル加工装置を示す模式図である。
図2】(a)は本ドリル加工装置でプリント基板に穴明け加工を開始した際の加工位置を示す模式図、(b)は本ドリル加工装置でプリント基板に穴明け加工の終了間際の加工位置を示す模式図である。
図3】本ドリル加工装置におけるドリルとプレッシャフットとを示す断面図である。
図4図3におけるJ矢視図である。
図5】本ドリル加工装置のテーブルの一例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態に係るドリル加工装置について図を用いて説明をする。なお、以下の説明において、X軸方向、Y軸方向とは、加工対象を平面視で視た際の状態を基準とし、Z軸方向とは、X軸方向及びY軸方向から側方視で視た際の状態を基準とする。図1において、X軸方向は図中矢印で示す左右方向であり、Y軸方向は図示を省略した手前奥方向でX軸方向に直交する方向であり、Z軸方向は、X軸方向及びY軸方向に直交する上下方向である。
【0010】
[ドリル加工装置の概略構成]
まず、ドリル加工装置の概略構成について図1を用いて説明する。図1は本実施の形態に係るドリル加工装置を示す模式図である。なお、図1に示すスピンドル11及びドリル26の外周側には、図示を省略したプレッシャフット30(図3参照)が配置されているが、その説明は後述する。
【0011】
図1に示すように、本実施の形態に係るドリル加工装置1は、加工テーブル2上に載置されたワーク(加工対象)としてのプリント基板12に穴明け加工を行うドリル加工装置である。ドリル加工装置1は、プリント基板12に対して加工テーブル2とは反対側に、つまり加工テーブル2の上方に、図示を省略したコラムが配置されており、そのコラムに対してXY軸方向に移動可能に支持されたベース7及びサドル10(図3参照)が、スピンドル11を、図示を省略したモータにより高速で回転可能となるように保持している。そして、スピンドル11の主軸先端には、ドリル26が取付けられている。
【0012】
[プレッシャフットの構成]
ついで、プリント基板12に接離するように移動可能である基板押え部材としてのプレッシャフット30の構成について図3及び図4を用いて説明する。図3は本ドリル加工装置におけるドリルとプレッシャフットとを示す断面図、図4図3におけるJ矢視図である。なお、ドリル側の冷却とは、プリント基板12に対してテーブル2とは上下方向の反対側、つまりドリル26がある側から、プリント基板12におけるドリル26の加工位置の冷却を行うものを指している。
【0013】
図3に示すように、プレッシャフット30は、スピンドル11の外周に嵌合し、シリンダ21に支持されている。穴31は、その軸心がスピンドル11の軸心Oと同軸であり、スピンドル11の主軸11aの外径よりも大径である。軸32は、プレッシャフット30に設けられた軸であり、軸32の軸心Pは、軸心Oに対して角度θで傾斜するように配置されている。面33は、上記軸32に対して垂直(直交)する面である。第1冷却手段としての空気の供給通路34は、その端部が軸心Pと軸心Oを含む面内で軸心Pからの距離Rの位置で面33に開口している。空気の供給通路34の端部は、継手35及びホース36を介して空気供給装置としての圧縮空気発生源60に接続されている。
【0014】
上記軸32には、ベアリング37を介してプレッシャフット30の基板押えピース38が回転自在に支持されている。基板押えピース38は、面38aが面33に当接しており、図4に示すように、貫通孔39A~39Dが設けられている。貫通孔39A~39Dの内径は、貫通孔39Aが5mm、貫通孔39Bは3mm、貫通孔39は1mm、貫通孔39Dは8mmである。空気供給路としての吹き出し通路40A~40Dは、それぞれの一方の出口が貫通孔39A~39Dの内面に開口し、他方は軸心Pとそれぞれの軸心を結ぶ線上でかつ軸心Pからの距離Rの位置で面38aに接続している。
【0015】
図3に示すように、ギヤ40は、基板押えピース38の外周に形成され、ピニオン41と噛み合っている。パルスモータ42は、ピニオン41を回転させる。ブラケット43は、パルスモータ42をプレッシャフット30に固定している。
【0016】
[ドリルの保持及び貫通孔の選択]
次に、本ドリル加工装置1におけるドリルの選択について説明する。まず、パルスモータ42を動作させ、貫通孔39Dの軸心を軸心Oに合わせる。使用されるドリル26の外径はプリント基板12に開ける穴に合わせて、例えば最大6.3mmから最小0.1mmである。そのため、図示を省略したドリルホルダから、貫通孔39Dを通して、穴明けに使用するドリル26を主軸11aに保持させる。ドリル26を主軸11aに保持させたら、パルスモータ42を動作させ、貫通孔39A~39Dのうち、ドリル26に適した貫通孔の軸心を軸心Oに合わせる。すなわち、例えばドリル26が3mmの場合、貫通孔39Aの軸心を軸心Oに合わせる。すると、吹き出し通路40Aの他方の端部は供給通路34の一方の端部に接続される。なお、何れの貫通孔39A~39Dの軸心を軸心Oに合わせても、吹き出し通路40A~40Dの他方の端部は供給通路34の一方の端部に接続される。
【0017】
[ドリル加工及びドリル側の冷却と、その問題点]
続いて、ドリル加工及びドリル側の冷却と、その問題点について、図3を参照しつつ、図2(a)、図2(b)を用いて説明する。図2(a)は本ドリル加工装置でプリント基板に穴明け加工を開始した際の加工位置を示す模式図、図2(b)は本ドリル加工装置でプリント基板に穴明け加工の終了間際の加工位置を示す模式図である。
【0018】
制御部100が圧縮空気発生源60を動作させると、圧縮した空気(圧縮エア)が、図3に示すように、軸心Oに合わされた貫通孔39A~39Dの何れかの側面から内部に吹き出す。即ち、本実施の形態においては、この圧縮空気発生源60、供給通路34、吹き出し通路40A~40D等によって、プリント基板12をドリル26の側から冷却する第1冷却手段が構成されている。
【0019】
このように圧縮エアが吹き出されている状態で、制御部100は、図2(a)に示すように、スピンドル11及びドリル26を回転させつつプリント基板12に向けて下降させていき、穴明け加工を行う。この際、貫通孔39A~39Dの何れかから吹き出した圧縮エアは、ダクト23を介して集塵装置に吸引される。この結果、加工により発生する切粉は直ちに吸引され、プレッシャフット30の内部、或いはプリント基板12上に切粉が殆ど残ることはない。
【0020】
以上のように、貫通孔39A~39Dの何れかから供給される圧縮空気は、ドリル26を冷却するから、ドリル26の温度の上昇は低減される。しかしながら、近年、ドリル26の回転速度が高速化しており、また、プリント基板12に対する穴明け箇所が密集して高密度化しており、プリント基板12に残留した熱が蓄積し易く、プリント基板12の熱変形を防止し難いという問題がある。特に、図2(b)に示すように、1箇所の穴明け加工における終了間際では、ドリル26がプリント基板12に深く入り込んでおり、上述したようにプレッシャフット30の内部から圧縮エアでドリル26を冷却したとしても、穴明け加工時にプリント基板12で発生する熱を冷却し難く、プリント基板12の熱変形を防止し難くいため、加工品質の低下を招く虞がある。そこで、本実施の形態に係るドリル加工装置1では、以下に説明する第2冷却手段としてのテーブル冷却装置50を備えるものである。
【0021】
[テーブル冷却装置の構成]
ついで、本実施の形態に係るドリル加工装置1のテーブル冷却装置50について図1図2(a)、図2(b)、及び図5を用いて説明する。図5は本ドリル加工装置のテーブルの一例を示す断面図である。図1図2(a)及び図2(b))に示すように、テーブル2の下方には、そのテーブル2を冷却する例えば水冷式のテーブル冷却装置50が配置されている。図5に示すように、テーブル2は、上板2Aと、その下方に配置されたテーブル本体2Bとを有しており、テーブル本体2Bには、その上方に複数の溝部2Baが形成されていて、上板2Aによって閉塞されることで冷却液(冷却水)を循環させる循環経路を構成している。テーブル冷却装置50は、図示を省略したポンプを有しており、この閉塞された複数の溝部2Baにより構成された循環経路に不図示のクーラにより冷却した冷却液を循環させることでテーブル2を冷却する。
【0022】
また、ドリル加工装置1には、各部の動作を制御する制御手段としての制御部100が備えられており、制御部100は、テーブル冷却装置50の図示を省略したポンプを駆動制御可能に構成されている。さらに、ドリル加工装置1は、このドリル加工装置1が設置されている環境の温度(以下、「環境温度」という)を検出する第1温度検出センサ91と、テーブルの温度を検出する第2温度検出センサ92と、を備えており、それら第1温度検出センサ91及び第2温度検出センサ92は、制御部100に検出した温度の情報を信号として出力する。なお、制御部100は、図示を省略したCPU、RAM、ROM等を有する一般的なコンピュータで構成することができる。
【0023】
[テーブル冷却装置の動作]
制御部100は、第2温度検出センサ92の検出結果に基づき、テーブル冷却装置50のポンプ(不図示)を制御し、テーブル2を第1温度検出センサ91の検出結果よりも所定温度低くなるように冷却する。具体的に制御部100は、第1温度検出センサ91が検出した環境温度に対して、テーブル2が例えば1~2度程度の所定温度低くなるように、第2温度検出センサ92の検出結果をフィードバック制御する形で、テーブル冷却装置50を制御する。
【0024】
即ち、テーブル2は、環境温度に対して冷やし過ぎると、発熱したときと反対にプリント基板12が変形して(歪んで)しまう可能性がある。そのため、環境温度に対して、テーブル2の温度を1~2度程度低くすることで、プリント基板12を環境温度よりも僅かに低い程度の温度に維持する。これにより、テーブル冷却装置50によってプリント基板12が変形することを防止しつつ、ドリル26による穴明け加工の発熱によってもプリント基板12が変形することを防止することができる。
【0025】
以上説明したように、本ドリル加工装置1によれば、プレッシャフット30からの圧縮エアでドリル26を冷却すると共に、テーブル冷却装置50によりプリント基板12が冷却されていることで、穴明け加工時にドリル26に接した樹脂が熱により融けることを抑えて、加工した穴の内面が滑らかになり、加工品質を向上することができる。また、プリント基板12を過冷却して変形させた状態で穴明け加工を行うことも無いため、加工品質を向上することができる。なお、ドリル26の発熱も冷却されるので、ドリル26の長寿命化も図ることができる。
【0026】
[他の実施の形態の可能性]
なお、以上説明した本実施の形態においては、ドリル26によりワークとしてのプリント基板12に穴明け加工を行うドリル加工装置1を一例として説明したが、これに限らず、ドリルを用いてワークを切削等を行うものであれば、どのようなドリル加工装置であっても構わない。
【0027】
また、本実施の形態においては、テーブル冷却装置50が水冷式であるものを説明したが、これに限らず、例えば油冷式、空冷式、ヒートポンプ式、ペルチェ式等、どのような方式のものでも構わない。また、テーブル冷却装置50が例えば油圧式やヒートポンプ式である場合は同様に制御部100が不図示のポンプを駆動制御し、例えば空冷式である場合は制御部100が不図示のファンを駆動制御し、例えばペルチェ式である場合は制御部100が不図示のペルチェ素子を駆動制御することで、テーブル2の温度を調整することができる。
【0028】
また、本実施の形態においては、テーブルの温度を環境温度に対して1~2度程度低く冷却するものを説明したが、これに限らず、ドリル加工時の発熱量、ドリル加工装置が設置される環境、ワークの材質や大きさ、等によって適宜な温度に冷却すればよく、つまり所定温度はこれらの条件によって適宜に設定されればよい。
【0029】
また、本実施の形態においては、第1温度検出センサ91と第2温度検出センサ92とを備えて制御部100に温度の情報を出力するものを説明したが、これらの温度の情報は、制御部100がどのように入手しても構わない。即ち、環境温度は、工場等で予め設定された温度であれば、制御部100にその温度を入力しておいても構わない。また、ワークの温度は、ドリルの回転速度等から発熱量を算出し、その値を制御部100に入力しておくことで、穴明け加工の回数や密集度から演算しても構わない。
【符号の説明】
【0030】
1…ドリル加工装置
2…テーブル
12…プリント基板(ワーク)
26…ドリル
30…プレッシャフット(基板押え部材)
34…供給通路(第1冷却手段)
39A~36D…貫通孔
40A~40D…空気供給路(第1冷却手段)
50…テーブル冷却装置(第2冷却手段)
60…圧縮空気発生源(第1冷却手段、空気供給装置)
91…第1温度検出センサ
92…第2温度検出センサ
100…制御部(制御手段)
図1
図2
図3
図4
図5