(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024136488
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】介護浴槽用原料、介護浴槽用成形材料および介護浴槽ユニット
(51)【国際特許分類】
C08J 5/24 20060101AFI20240927BHJP
C08K 3/22 20060101ALI20240927BHJP
C08K 3/26 20060101ALI20240927BHJP
C08K 3/24 20060101ALI20240927BHJP
C08K 7/02 20060101ALI20240927BHJP
C08L 101/00 20060101ALI20240927BHJP
C08F 283/01 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
C08J5/24 CEZ
C08K3/22
C08K3/26
C08K3/24
C08K7/02
C08L101/00
C08F283/01
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023047621
(22)【出願日】2023-03-24
(71)【出願人】
【識別番号】503090980
【氏名又は名称】ジャパンコンポジット株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103517
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 寛之
(74)【代理人】
【識別番号】100149607
【弁理士】
【氏名又は名称】宇田 新一
(72)【発明者】
【氏名】三牧 博昭
(72)【発明者】
【氏名】小田 敬一
【テーマコード(参考)】
4F072
4J002
4J127
【Fターム(参考)】
4F072AA02
4F072AA07
4F072AB09
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4J127FA02
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(57)【要約】
【課題】耐薬品性に優れ、表面の欠陥を抑制できる介護浴槽を製造するための介護浴槽用原料、その介護浴槽用原料を含む介護浴槽用成形材料、および、その介護浴槽用成形材料の硬化物を含む介護浴槽を備える介護浴槽ユニットを提供すること。
【解決手段】介護浴槽用原料は、樹脂成分および充填材を含む。充填材は、水酸化アルミニウムを含む。水酸化アルミニウムの含有割合が、充填材100質量部に対して、50質量部以上である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂成分および充填材を含み、
前記充填材が、水酸化アルミニウムを含み、
前記水酸化アルミニウムの含有割合が、前記充填材100質量部に対して、50質量部以上である、介護浴槽用原料。
【請求項2】
前記充填材が、さらに、炭酸カルシウムを含み、
前記炭酸カルシウムの含有割合が、前記充填材100質量部に対して、5質量部以上50質量部以下である、請求項1に記載の介護浴槽用原料。
【請求項3】
請求項1または2に記載の介護浴槽用原料と、強化繊維とを含む介護浴槽用成形材料。
【請求項4】
請求項3に記載の介護浴槽用成形材料の硬化物を含む介護浴槽を備える介護浴槽ユニット。
【請求項5】
前記介護浴槽が、マンセル表色系において明度が6以上かつ彩度が8以下の淡色系である、請求項4に記載の介護浴槽ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、介護浴槽用原料、介護浴槽用成形材料および介護浴槽ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、樹脂成分(例えば、不飽和ポリエステル樹脂)を含む成形材料(とりわけ、シートモールディングコンパウンド(SMC))からなる成形品は、とりわけ、外観、機械的特性、耐水性、および、耐食性に優れる。そのため、このような成形品を、浴槽の材料として用いることが知られている。
【0003】
また、このような成形材料として、結晶性不飽和ポリエステル樹脂およびビニルエステル樹脂を含む樹脂成分と、ソフトン1200(炭酸カルシウム)と、ガラス繊維とを含むシートモールディングコンパウンド(SMC)が提案されている(例えば、下記特許文献1の実施例1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一方、浴槽のうち、とりわけ、要介護者の利用に供する介護浴槽には、高度な耐薬品性と表面欠陥を抑制することとが要求される。
【0006】
詳しくは、医療現場および介護現場では、介護浴槽は、要介護者が利用する度に、洗浄される。介護浴槽には、要介護者の汚物が付着している場合もあるため、このような洗浄には、薬品(例えば、塩酸、次亜塩素酸ナトリウム)が用いられる。そのため、介護浴槽には、高度な耐薬品性と汚物などが堆積しないように浴槽表面の欠陥が少ないこととが要求される。
【0007】
本発明は、耐薬品性に優れ、表面の欠陥を抑制できる介護浴槽を製造するための介護浴槽用原料、その介護浴槽用原料を含む介護浴槽用成形材料、および、その介護浴槽用成形材料の硬化物を含む介護浴槽を備える介護浴槽ユニットを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明[1]は、樹脂成分および充填材を含み、前記充填材が、水酸化アルミニウムを含み、前記水酸化アルミニウムの含有割合が、前記充填材100質量部に対して、50質量部以上である、介護浴槽用原料である。
【0009】
本発明[2]は、前記充填材が、さらに、炭酸カルシウムを含み、前記炭酸カルシウムの含有割合が、前記充填材100質量部に対して、5質量部以上50質量部以下である、上記[1]に記載の介護浴槽用原料を含んでいる。
【0010】
本発明[3]は、上記[1]または[2]に記載の介護浴槽用原料と、強化繊維とを含む介護浴槽用成形材料を含んでいる。
【0011】
本発明[4]は、上記[3]に記載の介護浴槽用成形材料の硬化物を含む介護浴槽を備える介護浴槽ユニットを含んでいる。
【0012】
本発明[5]は、前記介護浴槽が、マンセル表色系において明度が6以上かつ彩度が8以下の淡色系である、上記[4]に記載の介護浴槽ユニットを含んでいる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の介護浴槽用原料は、所定割合の水酸化アルミニウムを含む。そのため、耐薬品性に優れる介護浴槽を製造することができる。
【0014】
本発明の介護浴槽用成形材料は、本発明の介護浴槽用原料を含む。そのため、耐薬品性に優れる介護浴槽を製造することができる。
【0015】
本発明の介護浴槽ユニットは、本発明の介護浴槽用成形材料の硬化物を含む介護浴槽を備える。そのため、耐薬品性に優れ、表面の欠陥を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】
図1は、本発明の介護浴槽ユニットの一実施形態(入浴介助装置としての仰臥位入浴装置を備えた介護浴槽ユニット)を示す概略図である。
【
図2】
図2は、本発明の介護浴槽ユニットの一実施形態(入浴介助装置としての座位入浴装置を備えた介護浴槽ユニット)を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
1.介護浴槽用原料
介護浴槽用原料は、樹脂成分および充填材を含む。
【0018】
<樹脂成分>
樹脂成分は、ラジカル重合性樹脂を含む。
【0019】
ラジカル重合性樹脂としては、例えば、不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、ウレタン(メタ)アクリレートが挙げられる。ラジカル重合性樹脂として、各種物性(靱性、強度、耐久性、耐候性、耐熱水性、および、透明性)に優れる観点から、好ましくは、不飽和ポリエステル樹脂およびビニルエステル樹脂が挙げられる。
【0020】
不飽和ポリエステル樹脂は、不飽和ポリエステルおよび重合性単量体を含む。つまり、不飽和ポリエステル樹脂は、不飽和ポリエステルおよび重合性単量体を含む不飽和ポリエステル樹脂組成物である。
【0021】
不飽和ポリエステルは、特に限定されないが、多塩基酸と多価アルコールとの反応により得られる化合物が好適である。この反応で使用される各原料は、求められる性能により、それぞれ1種又は2種以上使用してもよい。また、ジシクロペンタジエン(DCPD)により変性されていてもよい。
【0022】
多塩基酸は、必須成分としてのエチレン性不飽和二重結合を有する多塩基酸(以下、エチレン性不飽和結合含有多塩基酸とする。)と、任意成分としてのエチレン性不飽和二重結合を有しない多塩基酸(以下、エチレン性不飽和結合不含多塩基酸とする。)とを含む。
【0023】
エチレン性不飽和結合含有多塩基酸としては、例えば、エチレン性不飽和脂肪族二塩基酸およびその無水物、エチレン性不飽和脂肪族二塩基酸のハロゲン化物、および、エチレン性不飽和脂肪族二塩基酸のアルキルエステルが挙げられる。
【0024】
エチレン性不飽和脂肪族二塩基酸としては、例えば、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、および、ジヒドロムコン酸が挙げられる。また、エチレン性不飽和結合含有多塩基酸には、例えば、上記のエチレン性不飽和脂肪族二塩基酸から誘導される酸無水物が含まれる。エチレン性不飽和脂肪族二塩基酸から誘導される酸無水物としては、例えば、無水マレイン酸が挙げられる。エチレン性不飽和結合含有多塩基酸としては、好ましくは、無水マレイン酸が挙げられる。
【0025】
エチレン性不飽和結合不含多塩基酸としては、例えば、飽和脂肪族多塩基酸、飽和脂環族多塩基酸、芳香族多塩基酸、これらの酸の無水物、これらの酸のハロゲン化物、および、これらの酸のアルキルエステルが挙げられる。
【0026】
飽和脂肪族多塩基酸としては、例えば、飽和脂肪族二塩基酸が挙げられる。
【0027】
飽和脂肪族二塩基酸としては、例えば、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、メチルコハク酸、2,2-ジメチルコハク酸、2,3-ジメチルコハク酸、ヘキシルコハク酸、グルタル酸、2-メチルグルタル酸、3-メチルグルタル酸、2,2-ジメチルグルタル酸、3,3-ジメチルコハク酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、および、セバシン酸が挙げられる。また、飽和脂肪族多塩基酸には、上記の飽和脂肪族二塩基酸から誘導される酸無水物が含まれる。飽和脂肪族二塩基酸から誘導される酸無水物としては、例えば、無水シュウ酸、および、無水コハク酸が挙げられる。
【0028】
飽和脂環族多塩基酸としては、例えば、飽和脂環族二塩基酸が挙げられる。
【0029】
飽和脂環族二塩基酸としては、例えば、ヘット酸、1,2-ヘキサヒドロフタル酸、1,1-シクロブタンジカルボン酸、および、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸(cis-またはtrans-1,4-シクロヘキサンジカルボン酸もしくはその混合物)が挙げられる。飽和脂環族多塩基酸としては、上記の飽和脂環族二塩基酸から誘導される酸無水物が含まれる。飽和脂環族二塩基酸から誘導される酸無水物としては、例えば、無水ヘット酸が挙げられる。
【0030】
芳香族多塩基酸としては、例えば、芳香族二塩基酸が挙げられる。
【0031】
芳香族二塩基酸としては、例えば、フタル酸(オルソフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸)、トリメリット酸、および、ピロメリット酸が挙げられる。また、芳香族多塩基酸には、上記の芳香族二塩基酸から誘導される酸無水物が挙げられる。芳香族二塩基酸から誘導される酸無水物としては、例えば、無水フタル酸が挙げられる。芳香族二塩基酸として、好ましくは、オルソフタル酸、テレフタル酸、および、イソフタル酸が挙げられる。芳香族二塩基酸として、より好ましくは、テレフタル酸、および、イソフタル酸が挙げられる。芳香族二塩基酸として、さらに好ましくは、イソフタル酸が挙げられる。
【0032】
多塩基酸は、単独使用または2種以上併用できる。
【0033】
多塩基酸が、エチレン性不飽和結合含有多塩基酸およびエチレン性不飽和結合不含多塩基酸を含む場合には、全多塩基酸100モルに対して、エチレン性不飽和結合含有多塩基酸の配合割合は、例えば、50モル%以上、好ましくは、60モル%以上、より好ましくは、70モル%以上、また、例えば、95モル%以下、好ましくは、90モル%以下である。また、エチレン性不飽和結合不含多塩基酸の配合割合は、例えば、5モル以上、好ましくは、10モル以上、また、例えば、50モル%以下、好ましくは、40モル%以下、より好ましくは、30モル%以下である。
【0034】
多価アルコールとしては、例えば、2価アルコールおよび3価アルコールが挙げられる。
【0035】
2価アルコールとしては、例えば、脂肪族ジオール、脂環族ジオール、および、芳香族ジオールが挙げられる。脂肪族ジオールとしては、例えば、アルカンジオール、および、エーテルジオールが挙げられる。アルカンジオールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール(1,2-または1,3-プロパンジオールもしくはその混合物)、ブチレングリコール(1,2-または1,3-または1,4-ブチレングリコールもしくはその混合物)、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2,2,2-トリメチルペンタンジオール、および、3,3-ジメチロールヘプタンが挙げられる。エーテルジオールとしては、例えば、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、および、ジプロピレングリコールが挙げられる。脂環族ジオールとしては、例えば、シクロヘキサンジオール(1,2-または1,3-または1,4-シクロヘキサンジオールもしくはその混合物)、シクロヘキサンジメタノール(1,2-または1,3-または1,4-シクロヘキサンジメタノールもしくはその混合物)、シクロヘキサンジエタノール(1,2-または1,3-または1,4-シクロヘキサンジエタノールもしくはその混合物)、および、水素化ビスフェノールAが挙げられる。芳香族ジオールとしては、例えば、ビスフェノールAのエチレンオキシド付加物、および、ビスフェノールAのプロピレンオキシド付加物が挙げられる。
【0036】
3価アルコールとしては、例えば、グリセリン、トリメチロールプロパン、および、トリイソプロパノールアミンが挙げられる。
【0037】
多価アルコールとして、好ましくは、2価アルコールが挙げられる。多価アルコールとして、より好ましくは、脂肪族ジオールが挙げられる。多価アルコールとして、さらに好ましくは、アルカンジオールが挙げられる。多価アルコールとして、とりわけ好ましくは、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、水素化ビスフェノールA、ビスフェノールAのエチレンオキシド付加物、および、ビスフェノールAのプロピレンオキシド付加物が挙げられる。
【0038】
多価アルコールは、単独使用または2種以上併用できる。
【0039】
そして、不飽和ポリエステルは、多塩基酸と多価アルコールとを反応させることにより調製される。
【0040】
多塩基酸に対する多価アルコールの当量比(多価アルコールのヒドロキシル基/多塩基酸のカルボキシル基)は、例えば、0.9以上、好ましくは、0.95以上、また、例えば、1.2以下、好ましくは、1.1以下である。
【0041】
反応温度は、例えば、150℃以上、好ましくは、190℃以上、また、例えば、250℃以下、好ましくは、230℃以下である。
【0042】
なお、上記の反応において、必要に応じて、公知の溶剤および公知の反応触媒を配合することもできる。
【0043】
これにより、不飽和ポリエステルを調製できる。
【0044】
不飽和ポリエステルの酸価(測定方法:JIS K6901(2008年)に準拠)は、例えば、5mgKOH/g以上、好ましくは、10mgKOH/g以上、また、例えば、40mgKOH/g未満、好ましくは、30mgKOH/g以下である。
【0045】
不飽和ポリエステルの重量平均分子量は、例えば、2000以上、好ましくは、4000以上、また、例えば、25000以下、好ましくは、20000以下である。
【0046】
なお、重量平均分子量は、GPC(ゲル浸透クロマトグラフィー)によるポリスチレン換算の重量平均分子量である。重量平均分子量は、不飽和ポリエステルをGPC測定することにより求めることができる。
【0047】
不飽和ポリエステルは、単独使用または2種以上併用できる。
【0048】
ビニルエステル樹脂は、ビニルエステルおよび重合性単量体を含む。つまり、ビニルエステル樹脂は、ビニルエステルおよび重合性単量体を含むビニルエステル樹脂組成物である。
【0049】
ビニルエステルは、エポキシ樹脂と不飽和モノカルボン酸との付加反応物である。
【0050】
エポキシ樹脂は、少なくとも1つのエポキシ基を含有する。エポキシ樹脂として、例えば、ビスフェノール型エポキシ樹脂(例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂など)、ノボラック型エポキシ樹脂(例えば、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、臭素化ノボラック型エポキシ樹脂など)、脂肪族型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、および、水添ビスフェノール型エポキシ樹脂、アミン型エポキシ樹脂が挙げられる。エポキシ樹脂として、好ましくは、ビスフェノール型エポキシ樹脂が挙げられる。エポキシ樹脂として、より好ましくは、ビスフェノールA型エポキシ樹脂が挙げられる。
【0051】
エポキシ樹脂は、単独使用または2種以上併用することができる。
【0052】
エポキシ樹脂のエポキシ当量は、例えば、100以上、好ましくは、200以上、例えば、700以下、好ましくは、500以下、さらに好ましくは、400以下である。なお、エポキシ当量は、JIS K 7236に準拠して測定できる。
【0053】
不飽和モノカルボン酸は、少なくとも1つの不飽和二重結合と、少なくとも1つのカルボキシ基とを含有する。不飽和モノカルボン酸として、例えば、不飽和モノ脂肪酸(例えば、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、ソルビン酸など)、芳香族不飽和モノカルボン酸(例えば、ケイ皮酸など)、エステル結合含有不飽和モノカルボン酸(例えば、酸無水物と不飽和アルコールとの反応物など)などが挙げられる。なお、(メタ)アクリルは、メタクリルおよび/またはアクリルと同義である。不飽和モノカルボン酸として、好ましくは、メタクリル酸が挙げられる。
【0054】
不飽和モノカルボン酸は、単独使用または2種以上併用することができる。
【0055】
そして、ビニルエステルは、上記したエポキシ樹脂のエポキシ基と上記した不飽和一塩基酸のカルボキシ基とを開環付加反応させることにより調製される。
【0056】
ラジカル重合性樹脂は、単独使用または2種以上併用できる。不飽和ポリエステルと、ビニルエステルとを併用する場合には、不飽和ポリエステルの含有割合は、不飽和ポリエステルと、ビニルエステルとの総量100質量部に対して、例えば、50質量部以上、好ましくは、60質量部以上、より好ましくは、70質量部以上、また、例えば、80質量部以下である。また、ビニルエステルの含有割合は、不飽和ポリエステルと、ビニルエステルとの総量100質量部に対して、例えば、20質量部以上、また、例えば、50質量部以下、好ましくは、40質量部以下、より好ましくは、30質量部以下である。
【0057】
ラジカル重合性樹脂は、好ましくは、硬化時の樹脂分離による外観不良防止の観点から、ビニルエステル樹脂およびウレタン(メタ)アクリレートを含まず、不飽和ポリエステル樹脂からなる。
【0058】
重合性単量体としては、例えば、スチレン系モノマー、および、(メタ)アクリル酸エステル系モノマーが挙げられる。
【0059】
スチレン系モノマーとしては、例えば、スチレン、ビニルトルエン、t-ブチルスチレン、および、クロロスチレンが挙げられる。
【0060】
(メタ)アクリル酸エステル系モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、(メタ)アクリル酸アリルエステル、環構造含有(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステル、(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステル、(メタ)アクリル酸アミノアルキルエステル、(メタ)アクリル酸フルオロアルキルエステル、および、多官能(メタ)アクリル酸エステルが挙げられる。(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸t-ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル)、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸トリデシル、および、(メタ)アクリル酸ステアリルが挙げられる。(メタ)アクリル酸アリルエステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸アリルが挙げられる。環構造含有(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸テトラヒドロフルフリル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンテニル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニル、および、(メタ)アクリル酸ジシクロペンテニルオキシエチルが挙げられる。(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、および、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシプロピルが挙げられる。(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸2-メトキシエチル、および、(メタ)アクリル酸2-エトキシエチルが挙げられる。(メタ)アクリル酸アミノアルキルエステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸ジエチルアミノエチル、および、これらのクロライド塩が挙げられる。(メタ)アクリル酸フルオロアルキルエステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸トリフルオロエチル、および、(メタ)アクリル酸ヘプタデカフルオロデシルが挙げられる。多官能(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、および、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0061】
重合性単量体としては、好ましくは、スチレン系モノマー、および、(メタ)アクリル酸アルキルエステルが挙げられる。重合性単量体としては、より好ましくは、スチレンおよびメタクリル酸メチルが挙げられる。重合性単量体としては、さらに好ましくは、スチレンが挙げられる。
【0062】
重合性単量体は、単独使用または2種以上併用できる。
【0063】
そして、上記した不飽和ポリエステルを、重合性単量体(好ましくは、スチレン)に溶解させ、必要により、添加剤を配合することにより、不飽和ポリエステル樹脂を調製する。
【0064】
不飽和ポリエステル樹脂の調製においては、重合性単量体の配合割合は、不飽和ポリエステル100質量部に対して、例えば、50質量部以上、好ましくは、60質量部以上、また、例えば、80質量部以下、好ましくは、70質量部以下である。
【0065】
そして、上記したビニルエステルを、重合性単量体(好ましくは、スチレン)に溶解させ、必要により、添加剤を配合することにより、ビニルエステル樹脂を調製する。
【0066】
ビニルエステル樹脂の調製においては、重合性単量体の配合割合は、ビニルエステル100質量部に対して、例えば、50質量部以上、好ましくは、60質量部以上、また、例えば、80質量部以下、好ましくは、70質量部以下である。
【0067】
また、不飽和ポリエステル樹脂またはビニルエステル樹脂を調製した後、この不飽和ポリエステル樹脂を、他の成分(充填材、添加剤(後述))と混合する際に、さらに、重合性単量体を配合することもできる。
【0068】
ラジカル重合性樹脂の配合割合は、樹脂成分100質量部に対して、20質量部以上、好ましくは、30質量部以上、より好ましくは、40質量部以上、また、例えば、70質量部以下、60質量部以下である。
【0069】
樹脂成分は、好ましくは、低収縮化剤を含む。
【0070】
低収縮化剤としては、例えば、ポリエチレン、ポリスチレン、スチレン系熱可塑性エラストマー、架橋ポリスチレン、ポリ酢酸ビニル-ポリスチレンブロックコポリマー、ポリ酢酸ビニル、ポリメタクリル酸メチル、および、飽和ポリエステル樹脂が挙げられる。低収縮化剤として、好ましくは、ポリエチレン、架橋ポリスチレン、ポリ酢酸ビニル-ポリスチレンブロックコポリマー、および、ポリスチレンが挙げられる。低収縮化剤として、より好ましくは、ポリエチレン、架橋ポリスチレン、および、ポリスチレンが挙げられる。
【0071】
低収縮化剤は、単独使用または2種以上併用できる。
【0072】
また、低収縮化剤を上記重合性単量体に溶解させることにより、低収縮化剤の重合性単量体溶液として調製することもできる。
【0073】
低収縮化剤の重合性単量体溶液において、低収縮化剤の固形分濃度は、例えば、20質量%以上、また、例えば、70質量%以下である。
【0074】
低収縮化剤の配合割合は、樹脂成分100質量部に対して、例えば、1質量部以上、好ましくは、3質量部以上、また、例えば、20質量部以下、好ましくは、10質量部以下である。
【0075】
樹脂成分は、好ましくは、ラジカル重合性樹脂および低収縮化剤を含む。樹脂成分は、より好ましくは、ラジカル重合性樹脂および低収縮化剤からなる。
【0076】
<充填材>
充填材は、必須成分として、水酸化アルミニウムを含む。
【0077】
水酸化アルミニウムは、耐薬品性を付与するとともに、介護浴槽(後述)の外観を向上させるための成分である。
【0078】
水酸化アルミニウムの平均粒子径は、例えば、1μm以上、また、例えば、50μm以下、好ましくは、25μm以下である。
【0079】
なお、水酸化アルミニウムの平均粒子径は、レーザー回折・散乱式粒子径分布測定装置により粒子径分布曲線を作成し、50質量%相当粒子径を算出することにより求めることができる。
【0080】
水酸化アルミニウムの含有割合は、充填材100質量部に対して、50質量部以上、好ましくは、70質量部以上、より好ましくは、80質量部以上、さらに好ましくは、85質量部以上、また、例えば、100質量部以下、好ましくは、95質量部以下である。
【0081】
水酸化アルミニウムの含有割合が、上記下限以上であれば、耐薬品性および介護浴槽(後述)の外観に優れる介護浴槽(後述)を製造することができる。
【0082】
一方、水酸化アルミニウムの含有割合が、上記下限未満であれば、耐薬品性が低下する。そうすると、耐薬品性に優れる介護浴槽(後述)を製造することができない。
【0083】
また、充填材は、任意成分として、炭酸カルシウムを含む。炭酸カルシウムを含むと、光沢が向上し外観が向上する。
【0084】
炭酸カルシウムの含有割合は、充填材100質量部に対して、例えば、5質量部以上、また、例えば、50質量部以下、好ましくは、30質量部以下、より好ましくは、20質量部以下、さらに好ましくは、15質量部以下である。
【0085】
上記炭酸カルシウムの含有割合が、上記上限以下であれば、表面欠陥(スカミング、波打ち)および成形クラックの発生を抑制できる。
【0086】
また、充填材は、必要により、水酸化アルミニウムおよび炭酸カルシウム以外の他の充填材を含む。
【0087】
他の充填材として、例えば、無機充填材が挙げられる。無機充填材としては、例えば、酸化物(例えば、アルミナ、酸化チタン)、水酸化物(例えば、水酸化マグネシウム(但し、水酸化アルミニウムを除く。))、炭酸塩(但し、炭酸カルシウムを除く。)、硫酸塩(例えば、硫酸バリウム)、シリカ(例えば、結晶性シリカ、溶融シリカ、フュームドシリカ、乾式シリカ(アエロジル))、中空フィラー、ケイ酸塩(例えば、珪砂、珪藻土、ガラスパウダー、ガラスバルーン、マイカ、クレー、カオリン、タルク)、フッ化物(例えば、ホタル石)、リン酸塩(例えば、リン酸カルシウム)、および、金属粉末、セラミック、ミルドファイバー、粘土鉱物(例えば、スメクタイト)が挙げられる。
【0088】
他の充填材は、単独使用または2種以上併用できる。
【0089】
他の充填材の含有割合は、充填材100質量部に対して、例えば、1質量部以上、好ましくは、5質量部以上、また、例えば、20質量部以下、好ましくは、10質量部以下である。とりわけ、他の充填材が硫酸バリウムである場合には、硫酸バリウムの含有割合は、充填材100質量部に対して、例えば、コスト、外観および成形性の観点から、1質量部以上、好ましくは、5質量部以上、また、例えば、40質量部以下、好ましくは、20質量部以下、より好ましくは、10質量部以下である。
【0090】
充填材は、好ましくは、他の充填材を含まず、水酸化アルミニウムおよび炭酸カルシウムからなる。
【0091】
充填材の含有割合は、樹脂成分100質量部に対して、50質量部以上、好ましくは、100質量部以上、また、例えば、300質量部以下、好ましくは、200質量部以下である。
【0092】
<添加剤>
介護浴槽用原料は、必要により、本発明の効果を損なわない範囲で、添加剤を配合することができる。
【0093】
添加剤としては、例えば、重合禁止剤、硬化剤、離型剤、着色剤、増粘剤、難燃剤、湿潤分散剤、柄材、抗菌剤、親水剤、光触媒、紫外線吸収剤、紫外線安定剤、分離防止剤、シランカップリング剤、帯電防止剤、チクソ付与剤、チクソ安定剤、および、重合促進剤が挙げられる。添加剤は、単独使用または2種以上併用できる。
【0094】
重合禁止剤は、可使時間、硬化反応を調整するために配合される。
【0095】
重合禁止剤としては、例えば、ハイドロキノン化合物、ベンゾキノン化合物、カテコール化合物、フェノール化合物、および、N-オキシル化合物が挙げられる。
【0096】
重合禁止剤として、好ましくは、ベンゾキノン化合物、ハイドロキノン化合物およびN-オキシル化合物が挙げられる。
【0097】
ベンゾキノン化合物として、例えば、パラベンゾキノンが挙げられる。
【0098】
ハイドロキノン化合物として、例えば、ハイドロキノン、メチルハイドロキノン、および、t-ブチルハイドロキノンが挙げられる。ハイドロキノン化合物として、好ましくは、t-ブチルハイドロキノンが挙げられる。
【0099】
重合禁止剤として、より好ましくは、ベンゾキノン化合物およびN-オキシル化合物が挙げられる。
【0100】
重合禁止剤の配合割合は、樹脂成分100質量部に対して、例えば、0.01質量部以上、好ましくは、0.05質量部以上、また、例えば、0.5質量部以下、好ましくは、0.2質量部以下、より好ましくは、0.15質量部以下である。
【0101】
硬化剤としては、例えば、パーオキサイドが挙げられる。パーオキサイドとしては、例えば、ベンゾイルパーオキサイド、t-ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、t-アミルパーオキシイソプロピルカーボネート、t-ヘキシルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、アミルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、2-エチルヘキシルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、t-ブチルパーオキシベンゾエート、t-ヘキシルパーオキシベンゾエート、および、t-ヘキシルパーオキシアセテートが挙げられる。硬化剤として、好ましくは、t-ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、t-アミルパーオキシイソプロピルカーボネート、t-ブチルパーオキシベンゾエート、t-ブチル-2-エチルヘキサノエート、t-へキシルパーオキシアセテートが挙げられる。硬化剤として、より好ましくは、t-ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、t-アミルパーオキシイソプロピルカーボネート、t-へキシルパーオキシアセテートが挙げられる。硬化剤として、さらに好ましくは、t-アミルパーオキシイソプロピルカーボネート、t-へキシルパーオキシアセテートが挙げられる。
【0102】
硬化剤は、単独使用または2種以上併用できる。
【0103】
硬化剤の配合割合は、樹脂成分100質量部に対して、例えば、0.1質量部以上、好ましくは、0.5質量部以上、また、例えば、5質量部以下、好ましくは、2質量部以下である。
【0104】
離型剤としては、例えば、脂肪酸、脂肪酸金属塩、液体ワックス、フッ素ポリマー、および、シリコン系ポリマーが挙げられる。脂肪酸としては、例えば、ステアリン酸、および、ラウリン酸が挙げられる。脂肪酸金属塩としては、ステアリン酸亜鉛、および、ステアリン酸カルシウムが挙げられる。
【0105】
離型剤としては、好ましくは、脂肪酸金属塩、より好ましくは、ステアリン酸亜鉛が挙げられる。
【0106】
離型剤は、単独使用または2種以上併用できる。
【0107】
離型剤の配合割合は、樹脂成分100質量部に対して、例えば、1質量部以上、好ましくは、3質量部以上、また、例えば、10質量部以下である。
【0108】
着色剤は、特に制限されない。着色剤として、例えば、酸化チタン、カーボンブラック、ベンガラ、フタロシアニンブルーなどの公知の顔料を混合したポリエステルトナーが挙げられる。
【0109】
着色剤として、好ましくは、ポリエステルトナーが挙げられる。
【0110】
着色剤は、単独使用または2種以上併用できる。
【0111】
着色剤の配合割合は、樹脂成分100質量部に対して、例えば、1質量部以上、好ましくは、5質量部以上、また、例えば、20質量部以下である。
【0112】
増粘剤は、介護浴槽用原料を加熱圧縮成形に適した粘度まで増粘させるために配合される。増粘剤は、好ましくは、介護浴槽用原料を強化繊維(後述)に含浸させる前(好ましくは、直前)に配合される。
【0113】
増粘剤としては、例えば、アルカリ土類金属酸化物、および、アルカリ土類金属水酸化物が挙げられる。アルカリ土類金属酸化物としては、例えば、酸化マグネシウムが挙げられる。アルカリ土類金属水酸化物としては、例えば、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウムが挙げられる。
【0114】
増粘剤として、好ましくは、アルカリ土類金属酸化物が挙げられる。増粘剤として、より好ましくは、酸化マグネシウムが挙げられる。
【0115】
増粘剤は、単独使用または2種以上併用できる。
【0116】
増粘剤の配合割合は、樹脂成分100質量部に対して、例えば、0.5質量部以上、また、例えば、10質量部以下、好ましくは、3質量部以下である。
【0117】
<介護浴槽用原料の調製>
介護浴槽用原料は、樹脂成分と、充填材と、必要により配合される添加剤とを混合することにより調製される。
【0118】
そして、介護浴槽用原料は、所定割合の水酸化アルミニウムを含む。そのため、耐薬品性に優れる介護浴槽(後述)を製造することができる。
【0119】
そのため、この介護浴槽用原料は、介護浴槽(後述)の製造、および、その介護浴槽(後述)を成形するための介護浴槽用成形材料の製造に好適に用いられる。
【0120】
2.介護浴槽用成形材料
介護浴槽用成形材料は、介護浴槽用原料と強化繊維とを含む。
【0121】
<強化繊維>
強化繊維としては、例えば、無機繊維、有機繊維および天然繊維が挙げられる。無機繊維としては、例えば、ガラス繊維、炭素繊維、金属繊維、および、セラミック繊維が挙げられる。有機繊維としては、例えば、ポリビニルアルコール系繊維、ポリエステル系繊維、ポリアミド系繊維、フッ素樹脂系繊維、および、フェノール系繊維が挙げられる。天然繊維としては、例えば、麻およびケナフが挙げられる。
【0122】
強化繊維として、好ましくは、無機繊維が挙げられる。強化繊維として、より好ましくは、ガラス繊維が挙げられる。
【0123】
強化繊維の形状は、例えば、クロス状(例えば、ロービングクロス)、マット状(例えば、チョップドストランドマット、プリフォーマブルマット、コンティニュアンスストランドマット、および、サーフェーシングマット)、ストランド状、ロービング状、不織布状、および、ペーパー状が挙げられる。
【0124】
強化繊維の長さは、特に制限されず、例えば、1.5mm以上、強度を向上させる観点から、好ましくは、5mm以上、より好ましくは、15mm以上であり、また、例えば、80mm以下、好ましくは、40mm以下である。
【0125】
<介護浴槽用成形材料の調製>
介護浴槽用成形材料を調製するには、介護浴槽用原料に、強化繊維を配合する。具体的には、強化繊維に介護浴槽用原料を含浸させる。
【0126】
介護浴槽用成形材料を調製する方法としては、公知の方法が挙げられる。具体的には、SMC(シートモールディングコンパウンド)、TMC(シックモールディングコンパウンド)、BMC(バルクモールディングコンパウンド)が挙げられる。好ましくは、SMC、TMCが挙げられ、より好ましくは、SMCが挙げられる。
【0127】
強化繊維の含有割合は、成形材料に対して、例えば、15質量%以上、また、例えば、60質量%以下である。
【0128】
これにより、介護浴槽用原料と強化繊維とを含む介護浴槽用成形材料(好ましくは、シート状の介護浴槽用成形材料)が得られる。
【0129】
そして、この介護浴槽用成形材料は、上記の介護浴槽用原料を含む。そのため、耐薬品性に優れる介護浴槽(後述)を製造することができる。
【0130】
3.介護浴槽ユニット
介護浴槽ユニットは、介護浴槽と、入浴介助装置とを備える。詳しくは、介護浴槽ユニットは、介護浴槽と、要介護者の入浴を介助するための入浴介助装置とを備える。また、介護浴槽ユニットは、入浴介助装置を備える点で、とりわけ、介護を要しない者の利用に供する浴槽(以下、このような浴槽を一般用浴槽と称する場合がある。)と区別される。
【0131】
介護浴槽ユニットについて、
図1を参照して、詳述する。
【0132】
介護浴槽ユニット1は、介護浴槽2と、入浴介助装置としての仰臥位入浴装置3とを備える。
【0133】
介護浴槽2は、一側開放の箱型形状を有し、ストレッチャー4(後述)をその内側に収容し得る大きさおよび形状を有する。
【0134】
介護浴槽2は、上記の介護浴槽用成形材料の硬化物からなる。
【0135】
介護浴槽用成形材料を、硬化させるには、まず、介護浴槽用成形材料を、加熱圧縮成形(後述)できるように、増粘させるため、熟成する。
【0136】
熟成において、熟成温度は、例えば、20℃以上、また、例えば、50℃以下である。また、熟成時間は、例えば、8時間以上、また、例えば、120時間以下である。
【0137】
これにより、介護浴槽用成形材料が、保形される。
【0138】
次いで、介護浴槽用成形材料を、公知の方法により、加熱圧縮成形する。
【0139】
加熱圧縮成形の条件は、目的および用途に応じて、適宜設定される。加熱圧縮成形において、成形温度は、例えば、100℃以上、また、例えば、200℃以下である。また、成形圧力は、例えば、0.1MPa以上、好ましくは、1MPa以上、より好ましくは、5MPa以上、また、例えば、20MPa以下、好ましくは、15MPa以下である。
【0140】
これにより、介護浴槽用成形材料が、賦形および硬化し、介護浴槽2が得られる。
【0141】
介護浴槽2は、要介護者10の出血などがあった場合に、早期に気付く必要があるため、好ましくは、淡色系である。淡色系とは、マンセル表色系において明度が6以上かつ彩度が8以下であり、好ましくは、明度が7以上、かつ彩度が7以下であり、より好ましくは、明度が8以上かつ彩度が6以下である。
【0142】
マンセル表色系において、明度および彩度が、上記範囲内であれば、使用による退色が目立たず、浴槽の退色による色ムラであるのか、洗剤や薬液、または汚れが付着していることによる色ムラであるのかを判別しやすいため、医療機器として使用される介護浴槽において、好適に用いることができる。
【0143】
仰臥位入浴装置3は、ストレッチャー4と、ストレッチャー4を上下方向に昇降可能とする電気回路ユニット(図示せず)とを備える。
【0144】
ストレッチャー4は、略平板形状を有し、介護浴槽2の内側に収容可能な大きさおよび形状を有する。ストレッチャー4は、その中央部分から折り畳み可能に構成されている。要介護者10は、ストレッチャー4に横たわりながら、入浴することができる。
【0145】
そして、介護浴槽ユニット1は、上記の介護浴槽用成形材料の硬化物を含む介護浴槽2を備える。そのため、耐薬品性に優れる。
【0146】
4.作用効果
介護浴槽用原料は、所定割合の水酸化アルミニウムを含む。そのため、耐薬品性に優れる介護浴槽を製造することができる。
【0147】
詳しくは、浴槽のうち、とりわけ、要介護者の利用に供する介護浴槽には、高度な耐薬品性が要求される。
【0148】
具体的には、医療現場および介護現場では、介護浴槽は、要介護者が利用する度に、洗浄される。介護浴槽には、要介護者の汚物が付着している場合もあるため、このような洗浄には、酸(例えば、塩酸、次亜塩素酸ナトリウム)が用いられる。そのため、介護浴槽には、高度な耐薬品性が要求される。
【0149】
鋭意検討した結果、介護浴槽用原料は、上記記載の特定割合の水酸化アルミニウムを含むことが必須であることを見出した。その結果、耐薬品性に優れる介護浴槽を製造することができる。
【0150】
一方、一般用浴槽において、淡色系の一般用浴槽では、介護浴槽に要求されるような耐薬品性は要求されず、むしろ、衛生的な外観の向上および安価にできるという観点から、充填材として、水酸化アルミニウムが配合されず、炭酸カルシウムのみが配合される。
【0151】
しかし、この介護浴槽用原料では、上記したように、介護浴槽に要求されるような高度な耐薬品性を確保する観点から、炭酸カルシウムよりも、水酸化アルミニウムが配合される。
【0152】
また、介護浴槽には、汚物などの堆積を抑制する観点から、介護浴槽の表面欠陥を抑制することが要求される。とりわけ、ラジカル重合性樹脂が不飽和ポリエステル樹脂を含む場合には、SMC成形品表面において部分的に光沢低下を伴う外観不良が発生することがありスカミング現象と呼ばれている。スカミングの原因は不飽和ポリエステルと相溶性の低い低収縮剤成分が成形時に分離、析出し表面を汚染するものであったり、重合性単量体が加熱圧縮成型中に気化し、成形品表面でゲル化して荒れたり、と複合要因がある。
【0153】
介護浴槽2は、一般浴槽とは大きく異なる形状であるため、成形時の材料の流動性が好適でなければ、介護浴槽2の上縁面およびスロープ面に、金型内で材料がぶつかり合う事による波うちおよび/または前述のスカミングが発生したり、スロープ面および浴槽立ち面のコーナーに、微細なクラックが発生する。波うちおよびスカミングは、外観上好ましくないだけでなく、介護浴槽2の表面の洗浄不良の原因になる。具体的には、波うちの谷間部およびスカミング表面の微細空隙部に汚物などが入り込み洗浄しても除去が容易ではない。特に、スカミング表面では汚物が除去不能となる場合もある。要介護者は感染抵抗力が弱い人の割合が高く汚物の残留は病原菌感染の原因となるため、介護浴槽では汚物残留防止で波打ち、スカミング発生は好ましくない。成形時クラックが発生すると廃棄品となる。
【0154】
一方、この介護浴槽用原料では、上記記載の特定割合の水酸化アルミニウムを含むことが必須であることを見出した。その結果、上記波うちおよびスカミングを抑制し、外観を向上できる。
【0155】
また、介護浴槽用成形材料は、上記の介護浴槽用原料を含む。そのため、耐薬品性に優れる介護浴槽を製造することができる。
【0156】
また、介護浴槽ユニットは、上記の介護浴槽用成形材料の硬化物を含む介護浴槽を備える。そのため、耐薬品性に優れる。
【0157】
5.変形例
上記した説明では、入浴介助装置としての仰臥位入浴装置を備えた介護浴槽ユニットについて詳述したが、入浴介助装置は、これに限定されず、例えば、座位入浴装置も挙げられる。
【0158】
このような場合には、詳しくは、
図2示すように、介護浴槽ユニット1は、介護浴槽2と、入浴介助装置としての座位入浴装置5とを備える。
【0159】
座位入浴装置5は、車いすである。この介護浴槽ユニット1では、介護浴槽2の一側面から、座位入浴装置5が、進入可能に構成されている。これにより、要介護者10は、座位入浴装置5に座りながら、入浴することができる。
【実施例0160】
以下の記載において用いられる配合割合(含有割合)、物性値、パラメータなどの具体的数値は、上記の「発明を実施するための形態」において記載されている、それらに対応する配合割合(含有割合)、物性値、パラメータなど該当記載の上限値(「以下」、「未満」として定義されている数値)または下限値(「以上」、「超過」として定義されている数値)に代替できる。また、以下の記載において特に言及がない限り、「部」および「%」は質量基準である。
【0161】
<不飽和ポリエステル樹脂の製造>
製造例1
温度計、窒素ガス導入管、還流冷却器、分留器および攪拌機を備えたフラスコを反応器とした。この反応器に、イソフタル酸2.0mol、プロピレングリコール5.5mol、ネオペンチルグリコール5.0molを仕込み、窒素ガス雰囲気下で撹拌しながら200~210℃の温度で重縮合反応させた。酸価が10mgKOH/gになった時点で150℃まで冷却し、無水マレイン酸8.0molを仕込み、再び、210~220℃で8時間反応させて、酸価が29.0mgKOH/gの不飽和ポリエステルを得た。
【0162】
次いで、得られた不飽和ポリエステル60質量部にスチレン40質量部を混合した。これにより、不飽和ポリエステル樹脂を得た。
【0163】
<ビニルエステル樹脂の製造>
製造例2
温度計、窒素ガス導入管、還流冷却器および攪拌機を備えたフラスコを反応器とした。この反応器に、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(エポキシ当量185)1850質量部(10.0当量)、ビスフェノールA317質量部(2.78当量)、触媒としてトリエチルベンジルアンモニウムクロライド0.5質量部を仕込み、窒素を吹き込みながら、170℃で5時間反応させてエポキシ当量が300のエポキシ樹脂を得た。120℃まで冷却後、重合禁止剤としてハイドロキノン2.0質量部、触媒としてトリエチルベンジルアンモニウムクロライド5.0質量部、メタクリル酸636質量部(7.40当量)を添加し、空気を吹き込みながら、110℃で8時間反応させ、酸価6.7mgKOH/gのビニルエステルを得た。
【0164】
次いで、得られたビニルエステルにスチレン1869部(ビニルエステル100質量部に対して66.7質量部)を加えることによりスチレン40質量%含有のビニルエステル樹脂を得た。
【0165】
<介護浴槽用原料および介護浴槽用成形材料の調製>
実施例1
下記の成分を、順に添加しながら混合した。これにより、介護浴槽用原料を調製した。
不飽和ポリエステル樹脂:製造例1の不飽和ポリエステル樹脂70質量部(不飽和ポリエステル42質量部、スチレン28質量部)
重合性単量体:スチレン15質量部
低収縮化剤:ポリスチレン溶液15質量部(ポリスチレン5質量部、スチレン10質量部)
充填材:水酸化アルミニウム150質量部
重合禁止剤:パラベンゾキノン0.05質量部
硬化剤:t-アミルパーオキシイソプロピルカーボネート1質量部
離型剤:ステアリン酸亜鉛5質量部
着色剤:ポリエステルトナー(ホワイト系トナー)10質量部
増粘剤:酸化マグネシウム1.0質量部
次いで、公知のシートモールディングコンパウンド(SMC)含浸機を用いて、ドクターブレードを通してキャリア―フィルム上に塗布した介護浴槽用原料上にガラスロービングを連続的に1インチに切断し、ガラス繊維含有率が25質量%となるように添加し、含浸工程を経て、介護浴槽用成形材料(シートモールディングコンパウンド(SMC))を得た。次いで、この介護浴槽用成形材料を、40℃で48時間熟成させ、介護浴槽用成形材料が加熱圧縮成形可能な状態になるまで増粘させた。
【0166】
実施例2~実施例5、比較例1~比較例3
実施例1と同様の手順で、介護浴槽用原料および介護浴槽用成形材料を調製した。但し、表1の記載に基づいて、各成分の処方を変更した。
【0167】
<評価>
[試験片の製造]
各実施例および各比較例の介護浴槽用成形材料を、平板金板を用いて、加熱圧縮成形して、300mm×300mm×4mmの平板状の試験片を得た。
【0168】
[耐薬品性]
(耐酸性試験)
各実施例および各比較例の試験片を、100mm×100mm四方に分割切断した。次いで、その試験片を、10%塩酸に浸漬し、25℃で24時間放置した。その後、試験片を塩酸から取り出して、十分に水洗いして、乾いた布で水気を拭き取った後に、試験片の外観を目視で観察した。耐酸性試験について、以下の基準に基づき、評価した。その結果を表1に示す。
{基準}
〇:外観に変化がほとんど観測されなかった。
×:光沢が低下した。または、表面が腐食した。
【0169】
(耐アルカリ性試験)
各実施例および各比較例の試験片を、10%次亜塩素酸ナトリウムに浸漬し、25℃で48時間放置した。その後、試験片を次亜塩素酸ナトリウム溶液から取り出して、十分に水洗いして、乾いた布で水気を拭き取った後に、試験片の外観を目視で観察した。耐アルカリ性試験について、以下の基準に基づき、評価した。その結果を表1に示す。
{基準}
〇:外観に変化がほとんど観測されなかった。
×:光沢が低下した。または、表面が腐食した。
【0170】
(耐洗剤性試験)
各実施例および各比較例の試験片を、バスマジックリン(花王(株))原液(洗剤原液)に浸漬し、25℃で96時間放置した。その後、試験片を上記洗剤原液から取り出して、十分に水洗いして、24時間乾燥させた後に、試験片の外観を目視で観察した。耐洗剤性試験について、以下の基準に基づき、評価した。その結果を表1に示す。
{基準}
〇:外観に変化がほとんど観測されなかった。
×:光沢が低下した。または、表面が腐食した。
【0171】
(耐入浴剤性試験)
各実施例および各比較例の試験片を、バスクリン ラベンダーの香り((株)バスクリン製)(入浴剤溶液)の50%溶液に浸漬し、40℃で96時間放置した。その後、試験片を上記入浴剤溶液から取り出して、十分に水洗いして、24時間乾燥させた後に、試験片に対して、色差計にてΔEを測定した。耐入浴剤性試験について、以下の基準に基づき、評価した。その結果を表1に示す。
{基準}
〇:ΔEが、2以下であった。
×:ΔEが、2を超過した。
【0172】
[介護浴槽の成形]
各実施例および各比較例のそれぞれの介護浴槽用成形材料を使用して介護浴槽を成形した。成形温度 上型/下型=145℃/130℃、成形保持時間480秒、成形圧 面圧10MPaの条件にて、縦1000mm、横2000mm、高さ700mmの介護浴槽成形品を得た。
【0173】
[外観]
(光沢)
各実施例および各比較例の介護浴槽成形品の上縁面について、JIS Z8741(1997年)に準拠し、入射角60°、受光角60°の条件で、光沢を測定した。測定位置はバスタブ上縁面四隅それぞれとし、4つの測定値の平均を算出した。その結果を表1に示す。
【0174】
(スカミング)
各実施例および各比較例の介護浴槽成形品の上縁面およびスロープ面について、目視にてスカミング発生の有無を確認した。スカミングについて、以下の基準に基づき、評価した。その結果を表1に示す。
{基準}
○:目視によりスカミングが観測されなかった。
△:目視によりスカミングが僅かに観測された。
×:目視によりスカミングが多数観測された。
【0175】
(波打ち)
各実施例および各比較例の介護浴槽成形品の上縁面およびスロープ面について、目視にて波打ち発生の有無を確認した。波打ちについて、以下の基準に基づき、評価した。その結果を表1に示す。
{基準}
○:目視により波打ちが観測されなかった。
△:目視により小さな波打ちが観測された。
×:目視により大きな波打ちが観測された。
【0176】
(クラック発生数)
各実施例および各比較例の介護浴槽成形品のスロープ面および浴槽立ち面のコーナー部についてクラック発生の有無を確認した。10台成形中のクラック発生が観察された台数を表1に示す。
【0177】
[色]
各実施例および各比較例の試験片について、色目およびマンセル表色系(色相、明度、彩度)を確認した。その結果を表1に示す。なお、マンセル表色系の表示方法はJIS Z8721(1993年)に準拠した。
【0178】
(血液付着視認性)
各実施例および各比較例に対して、血液付着視認性を評価した。具体的には、血液の代用として赤染料を浴槽にマイクロシリンジにて1滴(0.05ml)滴下し、1m離れた場所から目視で付着を確認した。
{基準}
○ 赤染料が付着した箇所が目視で見えた。
× 赤染料が付着した箇所が目視で見えなかった。
【0179】