(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024136492
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】生体情報測定システム及び便座装置
(51)【国際特許分類】
G01N 33/497 20060101AFI20240927BHJP
【FI】
G01N33/497 D
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023047625
(22)【出願日】2023-03-24
(71)【出願人】
【識別番号】000010087
【氏名又は名称】TOTO株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】青木 大生
(72)【発明者】
【氏名】川崎 春奈
(72)【発明者】
【氏名】永野 晃貴
(72)【発明者】
【氏名】藤野 翔太
(72)【発明者】
【氏名】樋口 仁郎
(72)【発明者】
【氏名】木塚 里子
(72)【発明者】
【氏名】戸崎 正道
【テーマコード(参考)】
2G045
【Fターム(参考)】
2G045AA25
2G045CB04
2G045DA17
2G045DB06
(57)【要約】
【課題】ガス測定に関する処理を適切に実行すること。
【解決手段】実施形態に係る生体情報測定システムは、トイレ室に設置された大便器のボウル内に排出される排便ガスに基づいて、前記トイレ室の利用者の生体情報を測定する生体情報測定システムであって、気体に含まれるガスに反応するガスセンサを備えたガス検出装置と、前記ガス検出装置を制御する制御装置と、を有し、前記ガスセンサは、センサ素子と、測定用の抵抗素子とが配置されたものであり、前記制御装置は、前記利用者の前記大便器の使用時以外の間に前記ガスセンサによる測定値があらかじめ決められた範囲内の値となるように前記ガス検出装置を制御し、基準値として用いられる前記測定値を所定の値に制御する基準値制御を実行し、前記ガス検出装置は、前記基準値制御により制御された前記基準値を用いて排便ガス測定に関する処理を実行する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トイレ室に設置された大便器のボウル内に排出される排便ガスに基づいて、前記トイレ室の利用者の生体情報を測定する生体情報測定システムであって、
気体に含まれるガスに反応するガスセンサを備えたガス検出装置と、
前記ガス検出装置を制御する制御装置と、
を有し、
前記ガスセンサは、センサ素子と、測定用の抵抗素子とが配置されたものであり、
前記制御装置は、
前記利用者の前記大便器の使用時以外の間に前記ガスセンサによる測定値があらかじめ決められた範囲内の値となるように前記ガス検出装置を制御し、基準値として用いられる前記測定値を所定の値に制御する基準値制御を実行し、
前記ガス検出装置は、
前記基準値制御により制御された前記基準値を用いて排便ガス測定に関する処理を実行する
ことを特徴とする生体情報測定システム。
【請求項2】
前記制御装置は、
前記ガスセンサの前記抵抗素子の抵抗値を変更することにより、前記基準値を前記所定の値に制御する前記基準値制御を実行する
ことを特徴とする請求項1に記載の生体情報測定システム。
【請求項3】
前記制御装置は、
前記排便ガス測定の終了ごとに前記基準値制御を実行する
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の生体情報測定システム。
【請求項4】
前記制御装置は、
前記ガスセンサの前記測定値をフィードバックする処理により前記基準値制御を実行する
ことを特徴とする請求項3に記載の生体情報測定システム。
【請求項5】
前記制御装置は、
前記利用者の排便行為を予測する情報に関する排便行為利用予測情報を取得し、前記排便行為利用予測情報を取得した際に前記基準値制御を実行する
ことを特徴とする請求項3に記載の生体情報測定システム。
【請求項6】
前記利用者の前記大便器の便座への着座を検知する着座検知手段、
を有し、
前記制御装置は、
前記着座検知手段による検知に基づく排便行為利用予測情報を取得し、前記排便行為利用予測情報を取得した際に前記基準値制御を実行する
ことを特徴とする請求項5に記載の生体情報測定システム。
【請求項7】
トイレ室に設置された大便器のボウル内に排出される排便ガスに基づいて、前記トイレ室の利用者の生体情報を測定する便座装置であって、
気体に含まれるガスに反応するガスセンサを備えたガス検出装置と、
前記ガス検出装置を制御する制御装置と、
を有し、
前記ガスセンサは、センサ素子と、測定用の抵抗素子とが配置されたものであり、
前記制御装置は、
前記利用者の前記大便器の使用時以外の間に前記ガスセンサによる測定値があらかじめ決められた範囲内の値となるように前記ガス検出装置を制御し、基準値として用いられる前記測定値を所定の値に制御する基準値制御を実行し、
前記ガス検出装置は、
前記基準値制御により制御された前記基準値を用いて排便ガス測定に関する処理を実行する
ことを特徴とする便座装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
開示の実施形態は、生体情報測定システム及び便座装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、トイレの利用者が大便を排泄する際に排出される排便ガスをガスセンサにより検知し、利用者の体調を測定する生体情報測定システムが知られている。(例えば、特許文献1参照)。また、ガスセンサにおいて、抵抗素子の抵抗値とセンサ素子の抵抗値を同等に設定するガス検出システムが知られている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第6674623号公報
【特許文献2】特開2022-174045号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した従来技術には、改善の余地がある。例えば、抵抗素子の抵抗値とセンサ素子の抵抗値を同等に設定するだけでは、排便ガスを測定する環境が変化する場合に対応することが難しく、環境の変化等に応じてガスセンサの測定値が変動する場合がある。このような場合、ガスセンサの分解能が安定せず、例えば経時変化を観測したい場合等に適切な測定を行うことが難しく、改善の余地がある。そのため、ガス測定に関する処理を適切に実行することが望まれている。
【0005】
開示の実施形態は、ガス測定に関する処理を適切に実行することができる生体情報測定システム及び便座装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態の一態様に係る生体情報測定システムは、トイレ室に設置された大便器のボウル内に排出される排便ガスに基づいて、前記トイレ室の利用者の生体情報を測定する生体情報測定システムであって、気体に含まれるガスに反応するガスセンサを備えたガス検出装置と、前記ガス検出装置を制御する制御装置と、を有し、前記ガスセンサは、センサ素子と、測定用の抵抗素子とが配置されたものであり、前記制御装置は、前記利用者の前記大便器の使用時以外の間に前記ガスセンサによる測定値があらかじめ決められた範囲内の値となるように前記ガス検出装置を制御し、基準値として用いられる前記測定値を所定の値に制御する基準値制御を実行し、前記ガス検出装置は、前記基準値制御により制御された前記基準値を用いて排便ガス測定に関する処理を実行することを特徴とする。
【0007】
実施形態の一態様に係る生体情報測定システムによれば、トイレ空間の温湿度条件や芳香剤により、非排便時におけるガスセンサに対する検出値が変動したとしても、所定のタイミングでガスセンサの基準値を所定の範囲内に制御することで測定ごとの分解能の変化を抑えることができる。したがって、実施形態の一態様に係る生体情報測定システムによれば、排便時の測定ごとに、トイレ空間の環境条件が異なっていたとしても、精度よく排便ガスを検出できるとともに、日々の排便ガスの測定条件を揃えることができ、排便ガスから得られる利用者の体調の経時変化を精度よく捉えることができる。したがって、生体情報測定システムは、ガス測定に関する処理を適切に実行することができることができる。
【0008】
発明者らは、先の特許文献1などに記載のように排便ガスからトイレ利用者の体調の測定が精度よく実施できないか研究を続けていた。研究の中で、特許文献1のようにトイレで排便ガスを検出する場合においては、大便器のボウル内の気体を吸引しガスを検出するため、検出したい排便ガスのみならず、トイレ空間の温湿度の条件やトイレ空間に残留したガスや芳香剤、人由来の香水や人の動きによる空気の変化等のトイレ特有のノイズによる影響を受け、ガスセンサの基準となる検出値が変化し分解能の変化が大きく、経時変化を確認する際には排便ガスから得られる利用者の体調に関する測定精度が大幅に低下することがわかった。他方で、特許文献2の構成を採用することで抵抗素子とセンサ素子の抵抗値を同等とし、1回あたりの排便ガスに関する検出値の分解能を良化することはできるものの、毎回の測定時ごとに基準値が変わることにより分解能が変化してしまい、排便ガス情報の経時変化を評価することができない課題に直面した。そこで、実施形態の一態様に係る生体情報測定システムにより、トイレ空間に残留した臭気ガスや芳香剤等のノイズに影響を受けた場合でも、精度よく排便ガス量の経時変化を測定することが可能となった。
【0009】
実施形態の一態様に係る生体情報測定システムにおいて、前記制御装置は、前記ガスセンサの前記抵抗素子の抵抗値を変更することにより、前記基準値を前記所定の値に制御する前記基準値制御を実行することを特徴とする。
【0010】
実施形態の一態様に係る生体情報測定システムによれば、ガスセンサの前記抵抗素子の抵抗値を変更することにより、前記基準値を前記所定の値に制御する前記基準値制御を適切に実行することができる。したがって、生体情報測定システムは、ガス測定に関する処理を適切に実行することができることができる。
【0011】
実施形態の一態様に係る生体情報測定システムにおいて、前記制御装置は、前記排便ガス測定の終了ごとに前記基準値制御を実行することを特徴とする。
【0012】
実施形態の一態様に係る生体情報測定システムによれば、排便行為毎に基準値制御を実行することができ、排便ガス検出毎に、分解能の変化を抑え測定することが可能となり、例えば、前回の利用者の臭い(香水、直前の利用者の排便ガス等)の影響など都度変化するトイレ環境に対応し、より排便ガスから得られる利用者の体調の経時変化を精度よく捉えることができる。したがって、生体情報測定システムは、ガス測定に関する処理を適切に実行することができることができる。
【0013】
実施形態の一態様に係る生体情報測定システムにおいて、前記制御装置は、前記ガスセンサの前記測定値をフィードバックする処理により前記基準値制御を実行することを特徴とする。
【0014】
実施形態の一態様に係る生体情報測定システムによれば、フィードバック制御により現在出力されているガスセンサの検出値を元に基準値制御できるので、より精度良く基準値を調整可能となるため、精度よくガスセンサの検出値に基づいて基準値制御を実行することができ、排便ガス検出時に分解能の変化を抑え、測定することが可能となる。したがって、生体情報測定システムは、ガス測定に関する処理を適切に実行することができることができる。
【0015】
実施形態の一態様に係る生体情報測定システムにおいて、前記制御装置は、前記利用者の排便行為を予測する情報に関する排便行為利用予測情報を取得し、前記排便行為利用予測情報を取得した際に前記基準値制御を実行することを特徴とする。
【0016】
実施形態の一態様に係る生体情報測定システムによれば、排便行為前を検知し基準値制御を行うことが可能となり、排便ガス検出時に効果的に分解能の変化を抑え、測定することが可能となる。したがって、生体情報測定システムは、ガス測定に関する処理を適切に実行することができることができる。
【0017】
実施形態の一態様に係る生体情報測定システムは、前記利用者の前記大便器の便座への着座を検知する着座検知手段、を有し、前記制御装置は、前記着座検知手段による検知に基づく排便行為利用予測情報を取得し、前記排便行為利用予測情報を取得した際に前記基準値制御を実行することを特徴とする。
【0018】
実施形態の一態様に係る生体情報測定システムによれば、排便行為まで空気の変化が少ない着座のタイミングで基準値制御を行うことが可能となり、より効果的に排便ガス検出時の分解能の変化を抑え、測定することが可能となる。したがって、生体情報測定システムは、ガス測定に関する処理を適切に実行することができることができる。
【0019】
実施形態の一態様に係る便座装置は、トイレ室に設置された大便器のボウル内に排出される排便ガスに基づいて、前記トイレ室の利用者の生体情報を測定する便座装置であって、気体に含まれるガスに反応するガスセンサを備えたガス検出装置と、前記ガス検出装置を制御する制御装置と、を有し、前記ガスセンサは、センサ素子と、測定用の抵抗素子とが配置されたものであり、前記制御装置は、前記利用者の前記大便器の使用時以外の間に前記ガスセンサによる測定値があらかじめ決められた範囲内の値となるように前記ガス検出装置を制御し、基準値として用いられる前記測定値を所定の値に制御する基準値制御を実行し、前記ガス検出装置は、前記基準値制御により制御された前記基準値を用いて排便ガス測定に関する処理を実行することを特徴とする。
【0020】
実施形態の一態様に係る便座装置によれば、トイレ空間の温湿度条件や芳香剤などの影響により、非排便時におけるガスセンサに対する検出値が変動したとしても、所定のタイミングでガスセンサの基準値を所定の範囲内に制御することで測定ごとの分解能の変化を抑えることができる。したがって、実施形態の一態様に係る便座装置によれば、排便時の測定ごとに、トイレ空間の環境条件が異なっていたとしても、精度よく排便ガスを検出できるとともに、日々の排便ガスの測定条件を揃えることができ、排便ガスから得られる利用者の体調の経時変化を精度よく捉えることができる。したがって、便座装置は、ガス測定に関する処理を適切に実行することができることができる。
【発明の効果】
【0021】
実施形態の一態様によれば、ガス測定に関する処理を適切に実行することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】
図1は、実施形態に係るトイレ室の構成の一例を示す斜視図である。
【
図2】
図2は、実施形態に係る測定装置の構成の一例を示す平面図である。
【
図3】
図3は、実施形態に係る生体情報測定システムの全体概要の一例を示す図である。
【
図4】
図4は、利用者の行動とシステムの動作の関係の一例を示す図である。
【
図5】
図5は、実施形態に係る便座装置の構成の一例を示すブロック図である。
【
図6】
図6は、実施形態に係る制御装置の構成の一例を示すブロック図である。
【
図7】
図7は、ガスセンサの構成の一例を示す図である。
【
図8】
図8は、実施形態に係る基準値制御の一例を示す図である。
【
図9】
図9は、実施形態に係る基準値制御のタイミングの一例を示す図である。
【
図10】
図10は、基準値のフィードバック制御を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、添付図面を参照して、本願の開示する生体情報測定システム及び便座装置の実施形態を詳細に説明する。なお、以下に示す実施形態によりこの発明が限定されるものではない。本願では、腸内発酵由来で健康度の高さを示すガスを健康系ガスと称し、腸内腐敗由来で健康度の低さを示すガスを臭気性ガスと称する。
【0024】
例えば、健康系ガスは、腸内の善玉菌による発酵で生成されるガスである。例えば、健康系ガスは、腸内発酵由来で腸内の健康度が高い程多くなるガスであってもよい。具体例としては、健康系ガスは、一例として、水素、二酸化炭素、酢酸、メタン、エタノール、水等がある。
【0025】
また、例えば、臭気性ガスは、腸内の悪玉菌による発酵で生成されるガスである。例えば、臭気性ガスは、排便ガスのうち、硫黄成分を含むガスであってもよい。臭気性ガスは、一例として、アンモニア、トリメチルアミン、硫化水素、メチルメルカプタン、インドール、スカトール等がある。なお、ここでいう排便ガスとは、腸から出るガスであり、例えば、排便ガスには、排便と同時に出てくるガスや排便と同時に排出されないガスも含まれる。
【0026】
<1.実施形態>
以下では、ガスの収集場所となるトイレ室Rや生体情報測定システム1の概要について説明した後、生体情報測定システム1が実行する各種処理やその処理を行うための構成について説明する。
【0027】
<1-1.トイレ室の構成例>
まず、実施形態に係る生体情報測定システムの構成について
図1を参照して説明する。
図1は、実施形態に係る生体情報測定システムの構成の一例を示す斜視図である。なお、
図1では、測定装置4の構成を図示するために便座5や便蓋9を透過した態様で図示する。
【0028】
図1に示すように、トイレ室Rには、床面Fに、便器7が設置される。なお、以下では、床面Fからトイレ室Rの空間内に臨む向きを上と記載する場合がある。トイレ室Rには、吸引装置10及びガス検出装置20を含むガス検出を行う測定装置4等の生体情報測定システム1の構成要素が配置される。
【0029】
便器7は、大便器であり、便器7には、ボウル部8が形成される。ボウル部8は、下方に凹んだ形状であり、利用者の排泄物を受ける部位である。なお、便器7は、図示のような床置き式に限らず、生体情報測定システム1を適用可能であれば、どのような形式でもよく、壁掛け式等のような形式であってもよい。便器7には、ボウル部8が臨む開口の端部の全周にわたってリム部が設けられる。トイレ室Rには、例えば、便器7付近に洗浄水を貯留する洗浄水タンクが設置されてもよいし、洗浄水タンクが設置されない、いわゆるタンクレス式でもよい。
【0030】
例えば、トイレ室Rに設けられた洗浄用の洗浄操作部(図示省略)が利用者により操作されると、便器7のボウル部8への洗浄水の供給による便器洗浄が実施される。洗浄操作部は操作レバーや、操作装置30に表示された便器洗浄オブジェクトに対するタッチ操作であってもよい。なお、洗浄操作部は、操作レバーなどのような利用者の手動によって便器洗浄を実施させるものに限らず、着座センサのような利用者を検知するセンサの人体検知によって便器洗浄を実施させるものでもよい。
【0031】
便座装置2は、便器7の上部に取り付けられ、本体部3と、測定装置4と、便座5と、洗浄ノズル6とを備える。便座装置2は、排泄物を受けるボウル部8が形成された便器7の上部に載置される。便座装置2は、洗浄ノズル6が洗浄水を噴射する前にボウル部8に進出するように便器7の上部に載置される。なお、便座装置2は、便器7に対して着脱可能に取り付けられてもよいし、便器7と一体化するように取り付けられてもよい。
【0032】
便座装置2は、測定装置4等の構成により、トイレ室Rに設置された便器7のボウル部8内に排出される排便ガスに基づいて、トイレ室Rの利用者の生体情報を測定する。測定装置4は、吸引装置10とガス検出装置20とを有する。なお、測定装置4については
図2で詳述する。
【0033】
図1に示すように、便座5は、環状に形成され、ボウル部8の端部(リム部)に沿って、便器7の開口に重なる位置に配置される。便座5は、利用者が着座する。便座5は、着座した利用者の臀部を支持する着座部として機能する。また、便蓋9は、便座装置2に必要に応じて取り付けられ、便座装置2は、便蓋9を有しなくてもよい。
【0034】
洗浄ノズル6は、洗浄用の水を吐水するためのノズルである。洗浄ノズル6は、電動モータなどの駆動源(
図5中のノズルモータ61等)の駆動により、本体部3の筐体に対して進退可能に構成される。また、洗浄ノズル6は、図示しない水道管などの水源に接続される。そして、洗浄ノズル6は、
図1に示すように、本体部3の筐体に対して進出した位置(「進出位置」ともいう)にあるときに、水源からの水を利用者の身体へ噴出させて局部を洗浄する。
【0035】
図1では、洗浄ノズル6が進出位置にある状態を示す。なお、洗浄ノズル6は、便器7(ボウル部8等)内の洗浄用にも共用されてもよい。洗浄ノズル6は、利用者の局部を洗浄する局部洗浄モードと、便器7内に水を撒く便器洗浄モードとを切り替え可能に用いられてもよい。例えば、洗浄ノズル6は、便座装置2による制御に応じて、局部洗浄モードと便器洗浄モードとを切り替え可能に用いられてもよい。
【0036】
操作装置30は、トイレ室R内に設けられる。操作装置30は、利用者が操作可能な位置に設けられる。操作装置30は、利用者が便座5に着座時において、操作可能な位置に設けられる。
図1では、操作装置30は、便座5に着座した利用者から見て左側方の壁面Wに配置される。なお、操作装置30は、便座5に着座した利用者が利用可能であれば、壁面に限らず、種々の態様により配置されてもよい。例えば、操作装置30は、便座装置2と一体に設けられてもよい。
【0037】
操作装置30は、便座装置2と所定のネットワークを介して、有線または無線により通信可能に接続される。例えば、便座装置2と操作装置30とは、情報の送受信が可能であれば、どのような接続であってもよく、有線により通信可能に接続されてもよいし、無線により通信可能に接続されてもよい。
【0038】
操作装置30は、例えばタッチパネル機能により表示面(例えば表示画面31)を介して利用者からの各種操作を受け付ける。また、操作装置30は、スイッチやボタンを備え、スイッチやボタン等により各種操作を受け付けてもよい。表示画面31は、例えば液晶ディスプレイや有機EL(Electro-Luminescence)ディスプレイ等によって実現されるタブレット端末等の表示画面であり、各種情報を表示するための表示装置である。つまり、操作装置30は、表示画面31により利用者の入力を受け付け、利用者への出力も行う。表示画面31は、各種情報を表示する表示装置である。
【0039】
操作装置30は、トイレ室R内で提供される各種機能を制御するためのユーザの操作を受け付ける。操作装置30は、便座装置2による局部洗浄の実行を制御するためのユーザの操作を受け付ける。例えば、操作装置30は、上述したユーザの操作を受け付けるスイッチやボタン等を有し、スイッチやボタン等に対するユーザの接触に応じて、各種処理を実行してもよい。なお、上記は一例であり、操作装置30は、各種処理を実行するユーザによる操作を受け付けてもよい。
【0040】
生体情報測定システム1は、後述する各種の構成や処理により、トイレ室Rに設置された便器7のボウル部8内に排出される排便ガスに基づいて、トイレ室Rの利用者の生体情報を測定する。生体情報測定システム1は、排便ガスを適切に測定するために制御を実行する。生体情報測定システム1は、測定等により収集した情報を基に、利用者のスマートフォン等のユーザ端末(
図3中の表示手段300に相当)に情報提供を行ってもよい。また、生体情報測定システム1は測定等により収集した情報を基に、トイレ室Rの操作装置30(もしくは表示画面31)へ情報提供を行っても良い。
【0041】
<1-2.測定装置の構成>
次に、測定装置4の構成について
図2を参照して説明する。
図2は、実施形態に係る測定装置の構成の一例を示す平面図である。
図2に示す例では、測定装置4は、本体部3内に配置される場合を一例として示す。
図2では、測定装置4が配置される箇所の本体部3の筐体(カバー)を取り除いて測定装置4の構成を図示する。
【0042】
測定装置4は、便器7のボウル部8内のガスを吸引する吸引装置10と、吸引されたガスの成分を検出するガス検出装置20とを有する。
【0043】
吸引装置10は、便器7のボウル部8内のガスを吸引するためのファンを有する。吸引装置10は、便器7のボウル部8内に連通するダクト11が接続される。ダクト11は、ボウル部8内のガスを測定装置4へ流入させる流路として機能する。吸引装置10は、ファンを駆動させることにより、ダクト11を流路としてボウル部8内のガスを吸引する。例えば、吸引装置10は、制御装置100の制御に応じて吸引に関する処理を実行する。なお、吸引装置10が便座装置2に組み込まれている脱臭装置等と共用される場合、吸引装置10は制御装置100とは別の制御手段(装置)により制御されてもよい。
【0044】
ガス検出装置20は、吸引装置10により吸引されたガスの成分の検出に関する処理を実行する。
図2では、ガス検出装置20は、ボウル部8側から見て吸引装置10の後段に配置される。なお、
図2は一例に過ぎず、ガス検出装置20は、吸引装置10が吸引したガスを導入可能な位置であれば任意の位置に配置されてもよい。ガス検出装置20は、本体部3外に連通するダクト12が接続される。ダクト12は、ガス検出装置20内のガスを測定装置4から流出させる流路として機能する。例えば、吸引装置10の駆動に応じて、ガス検出装置20内のガスがダクト12を流路として測定装置4外へ放出される。
【0045】
例えば、ガス検出装置20は、制御装置100の制御に応じてガスの検出に関する処理を実行する。ガス検出装置20は、気体に含まれるガスに反応するガスセンサ40を備える。ガスセンサ40は、ガスの特定の成分を検出する。
【0046】
例えば、ガスセンサ40は、半導体式ガスセンサが用いられる。ガスセンサ40は、水素を検出可能な水素ガスセンサであってもよい。ガスセンサ40は、臭気性ガスを検出可能な臭気性ガスセンサであってもよい。ガスセンサ40は、メタンを検出可能なメタンガスセンサであってもよい。例えば、ガス検出装置20は、複数のガスセンサ40を有する。複数のガスセンサ40には、水素ガスセンサであるガスセンサ40a、臭気性ガスセンサであるガスセンサ40b、メタンガスセンサであるガスセンサ40cが含まれてもよい。ガスセンサ40a~40cを、特に区別せずに説明する場合、ガスセンサ40として説明する。
【0047】
なお、上記は一例に過ぎず、ガスセンサは、半導体式のガスセンサ40に限らず、任意の態様のセンサが用いられてもよい。例えば、ガス検出装置20は、赤外線式のCO2センサ(二酸化炭素濃度測定器)等のガスセンサを有してもよい。
【0048】
<1-3.生体情報測定システムの全体概要例>
次に、生体情報測定システム1の全体概要の一例について、
図3を参照して説明する。
図3は、実施形態に係る生体情報測定システムの全体概要の一例を示す図である。なお、
図1及び
図2で説明した内容と同様の点については適宜説明を省略する。
【0049】
図3では、生体情報測定システム1は、吸引装置10と、ガス検出装置20と、制御装置100と、推定手段200とを含む。
図1及び
図2では便座装置2が吸引装置10と、ガス検出装置20と、制御装置100とを有する場合を示したが、これに限られない。例えば、制御装置100は、吸引装置10及びガス検出装置20とは別に設けられ、吸引装置10及びガス検出装置20と無線または有線により通信することにより、吸引装置10及びガス検出装置20を制御してもよい。また、上述したように吸引装置10は、制御装置100とは別の制御手段により制御されてもよい。
【0050】
推定手段200は、ガス検出装置20による検出により取得される情報を基に推定処理を実行する機能を有するコンピュータ(情報処理装置)である。例えば、推定手段200は、トイレ室R外に位置するクラウドサーバ(サーバ装置)であってもよい。この場合、推定手段200は、便座装置2またはガス検出装置20等のトイレ室R内に配置される装置(「トイレ内装置」ともいう)とインターネット等の所定のネットワークを介して、有線または無線により通信可能に接続される。
【0051】
また、推定手段200は、表示手段300等の利用者への情報を表示する装置と、インターネット等の所定のネットワークを介して、有線または無線により通信可能に接続される。なお、推定手段200は、情報の送受信が可能であれば、トイレ内装置及び表示手段300等の装置とどのように接続されてもよく、有線により通信可能に接続されてもよいし、無線により通信可能に接続されてもよい。なお、推定手段200は、制御装置100と通信可能であってもよい。
【0052】
推定手段200は、トイレ内装置から受信した情報を用いて、利用者の健康状態に関する推定処理を実行する。なお、これまでに取得したデータは推定手段200で蓄積してもよいし、表示手段300に蓄積してもよい。推定手段200は、利用者の排便ガスにおける健康系ガスの量と臭気性ガスの量とに基づいて、利用者の健康状態を推定するための情報(「健康推定情報」ともいう)またはそれに関連する情報を生成する。推定手段200は、利用者の健康推定情報として、利用者の排便ガスにおける健康系ガスの量と臭気性ガスの量との比に基づいてスコアを算出する。例えば、推定手段200は、比率、臭気単体等の任意の情報を用いてもよい。なお、上記は一例に過ぎず、推定手段200は、任意の情報を利用者の健康推定情報として生成してもよい。例えば、推定手段200は、以下のような情報を利用者の健康推定情報として生成してもよいし、以下のような処理結果に基づいて健康推定情報を生成してもよい。
【0053】
例えば、推定手段200は、測定値から利用者の腸の状態に関する情報を推定してもよい。例えば、推定手段200は、菌の状態に関する情報を推定してもよい。この場合、例えば、推定手段200は、ある菌の占有率や善玉菌悪玉菌量や比率などを推定してもよい。また、例えば、推定手段200は、代謝物の状態を推定してもよい。この場合、例えば、推定手段200は、有用物質、有害物質の量やそれらの比率などを推定してもよい。例えば、推定手段200は、腸内pHの状態を推定してもよい。また、推定手段200は、上記のような情報をスコア化したり、良し悪しを評価したりした情報を生成してもよい。例えば、推定手段200は、上記のような情報を利用者の健康推定情報として生成してもよい。
【0054】
また、例えば、推定手段200は、測定値から利用者の健康状態に関する情報を生成してもよい。この場合、例えば、推定手段200は、利用者の腸内環境に関するスコアや良し悪しを評価した情報を生成してもよい。例えば、推定手段200は、利用者の腸内環境に関する情報を生成してもよい。例えば、推定手段200は、利用者の免疫に関する情報を生成してもよい。例えば、推定手段200は、利用者の痩せやすさに関する情報を生成してもよい。例えば、推定手段200は、コレステロール指数に関する情報を生成してもよい。例えば、推定手段200は、代謝スコアに関する情報を生成してもよい。例えば、推定手段200は、上記のような情報を利用者の健康推定情報として生成してもよい。なお、上述した各例は例示に過ぎず、推定手段200は、上記に限らず利用者の健康状態に関連する様々な情報を生成してもよい。
【0055】
推定手段200は、算出した比に基づいて、利用者の排便ガスにおける健康系ガスが臭気性ガスよりも多い程、利用者が健康であると推定する。推定手段200は、算出した比に基づいて、利用者の排便ガスにおける臭気性ガスが健康系ガスよりも多い程、利用者が不健康であると推定する。なお、上記は一例に過ぎず、推定手段200は、算出したスコアを基に任意の推定を行ってもよい。推定手段200は、利用者に提供する情報を表示手段300へ送信する。推定手段200は、利用者の健康推定情報として算出したスコアを、その利用者が利用する表示手段300へ送信する。
【0056】
推定手段200は、クラウドサーバ(サーバ装置)に限らず、任意の装置であってもよい。すなわち、推定手段200の装置構成及び配置は、所望の処理が実現可能であれば、任意の形態が採用可能である。例えば、推定手段200は、生体情報測定システム1の管理者等が携帯可能なノートパソコン等の携帯端末(デバイス)であってもよい。また、推定手段200は、トイレ室R内に配置されてもよい。例えば、推定手段200は、トイレ室R内に配置される構成であってもよい。例えば、推定手段200の機能は、便座装置2が有してもよい。この場合、制御装置100が推定手段200としての機能を有してもよい。
【0057】
表示手段300は、利用者へ提供する情報を表示する表示装置(コンピュータ)である。例えば、表示手段300は、利用者(ユーザ)が所有するユーザ端末(携帯端末)であってもよい。この場合、表示手段300は、例えば、スマートフォンや、携帯電話機や、PDA(Personal Digital Assistant)、タブレット型端末や、ノート型PC(Personal Computer)等により実現される。例えば、表示手段300は、推定手段200等の生体情報測定システム1に含まれる装置と所定のネットワークを介して、有線または無線により通信可能に接続される。
【0058】
表示手段300は、推定手段200との間で情報を送受信する。表示手段300は、利用者に提供する情報を推定手段200から受信する。表示手段300は、利用者の健康推定情報として算出されたスコアを推定手段200から受信する。表示手段300は、利用者の健康推定情報として算出されたスコアを含む情報を表示する。
【0059】
図3では、表示手段300は、利用者の健康推定情報として算出されたスコアを、利用者の腸内環境スコアとして表示する。例えば、表示手段300は、利用者の腸内環境スコアを、排泄の日時ごとに時系列で表示する。表示手段300は、スコアの目標値と、利用者の腸内環境スコアの経時変化を示す情報と、その評価を示す文字情報とを表示する。例えば、表示手段300は、推定手段200に情報を要求し、推定手段200から取得した情報を表示してもよい。
【0060】
なお、上記は一例に過ぎず、生体情報測定システム1は、所望の処理を実現可能であれば任意の装置構成が採用可能である。生体情報測定システム1において、便座装置2が表示手段300以外の構成を有してもよい。例えば、便座装置2は、測定装置4、制御装置100及び推定手段200を有してもよい。また、例えば、表示手段300は、生体情報測定システム1に含まれなくてもよいし、生体情報測定システム1に含まれてもよい。例えば、表示手段300がトイレ室Rの操作装置30である場合、表示手段300は、生体情報測定システム1に含まれてもよい。この場合、操作装置30が利用者の健康推定情報を表示する機能を有する。
【0061】
<1-4.利用者の行動とシステムの動作>
次に、生体情報測定システム1を利用する利用者の動き(行動)と生体情報測定システム1の動き(動作)の関係の一例について、
図4を用いて説明する。
図4は、利用者の行動とシステムの動作の関係の一例を示す図である。
【0062】
まず、
図4を参照して、トイレ室Rを利用して排便を行う利用者の行動の流れについて説明する。トイレ室Rの利用者は、
図4に示すような第1段階~第7段階の行動を行う。
【0063】
まず、利用者は、第1段階の行動として、トイレ室Rへの入室する行動を行う。トイレ室R内へ入室した利用者は、第2段階の行動として、トイレ室R内で脱衣する行動を行う。脱衣した利用者は、第3段階の行動として、トイレ室Rの便座5に着座する行動を行う。便座5に着座した利用者は、第4段階の行動として、便器7のボウル部8へ排便する行動を行う。
【0064】
排便した利用者は、第5段階の行動として、便座装置2の局部洗浄の利用やトイレットペーパーにより、排便後の局部の保清等の仕上げの行動を行う。排便後の仕上げが完了した利用者は、第6段階の行動として、立ち上がって便座5から離座する行動を行う。離座した利用者は、第7段階の行動として、便器7の洗浄、トイレ室Rからの退室、及び生体情報測定システム1による排便ガス解析結果の確認等を行う。
【0065】
次に、上述した利用者の行動に対応する生体情報測定システム1の動作の流れについて説明する。生体情報測定システム1は、トイレ室Rに入室した利用者の排便が開始されるまでに、ガスの吸引を開始する。
図4では、生体情報測定システム1は、第1段階から第3段階の間にガスの吸引を開始する。これにより、生体情報測定システム1は、利用者の排便前に測定準備を完了する。例えば、生体情報測定システム1は、利用者が排便を行う前のボウル部8内の気体(ガス)を吸引することにより、利用者の排便後のガスと比較するための基準(ベースライン)となるガスを吸引する。例えば、生体情報測定システム1は、ベースラインからの増分(増加量)を算出して、排便ガスに含まれる成分の量を推定(算出)する。
【0066】
生体情報測定システム1は、着座した利用者が排便を行い離座するまでに間に排便ガスの測定を実行する。
図4では、生体情報測定システム1は、第4段階になる前から第5段階の間に利用者の排便ガスの測定を実行する。これにより、生体情報測定システム1は、利用者の着座中随時ガスを吸引し、データを取得する。
【0067】
生体情報測定システム1は、排便ガスの測定が完了した後、排便ガスの解析を実行する。
図4では、生体情報測定システム1は、第6段階から第7段階の間に利用者の排便ガスの解析を実行する。これにより、生体情報測定システム1は、利用者が排便を終了した後、その利用者ついて取得した排便ガス(結果)の情報に基づいて解析し、スコアを算出する。生体情報測定システム1は、利用者の排便ガスの解析し、その解析結果を利用者に提供する。なお、解析および結果の提供は、第6段階から第7段階に限らず、その情報が提供可能な状況であれば、任意のタイミングで行われてもよい。例えば、生体情報測定システム1は、測定中、測定終了次第等の任意のタイミングで解析および結果等の各種の情報の提供を行ってもよい。
【0068】
<1-5.便座装置の機能構成>
次に、便座装置2の機能構成について
図5を参照して説明する。
図5は、実施形態に係る便座装置の構成の一例を示すブロック図である。
図5に示すように、便座装置2は、人感センサ32と、着座センサ33と、照度センサ34と、制御装置100と、ノズルモータ61と、洗浄ノズル6とを備える。
【0069】
なお、
図5に示す便座装置2の構成は一例に過ぎず、各構成が個別に設けられる場合、便座装置2は、便座5のみを有してもよい。このように、
図5に示す便座装置2の構成は一例に過ぎず、便座装置2は、任意の構成が採用可能である。人感センサ32や着座センサ33や照度センサ34等は、所望のセンシングが可能であれば任意の箇所に配置されてもよい。また、便座装置2は、利用者の便座5への着座を検知可能であればよく、人感センサ32、着座センサ33及び照度センサ34のうち少なくとも1つを有すればよい。便座装置2は、通信装置(例えば
図6中の制御装置100の通信部110等)により、所定のネットワーク(インターネット等)を介して、有線または無線で推定手段200等の情報処理装置との間で情報の送受信を行う。
【0070】
人感センサ32は、人体を検知する機能を有する。例えば、人感センサ32は、利用者の便座5への着座を検知する着座検知手段として用いられる。例えば、人感センサ32は、赤外線信号を用いた焦電センサ等により実現される。例えば、人感センサ32は、μ(マイクロ)波センサ等により実現されてもよい。例えば、人感センサ32は、赤外線投受光式の測距センサであり、人(利用者)が便座5に着座する直前において便座5の付近に存在する人体や、便座5に着座した利用者を検知してもよい。
【0071】
人感センサ32は、利用者による便座5からの離座を検知する離座検知センサとしても機能する。人感センサ32は、便座5に対する利用者の着座状態を検知する。人感センサ32は、検知信号を制御装置100へ出力する。なお、上記は一例であり、人感センサ32は、上記に限らず、種々の手段により人体を検知してもよい。例えば、人感センサ32は、便座5へ接近した人(利用者など)を検知する。
【0072】
着座センサ33は、便座装置2への人の着座を検知する機能を有する。例えば、着座センサ33は、利用者の便座5への着座を検知する着座検知手段として用いられる。例えば、着座センサ33は、荷重センサ等により実現される。着座センサ33は、利用者が便座5に着座したことを検知する。着座センサ33は、便座5に対する利用者による着座を検知可能である。
【0073】
着座センサ33は、利用者による便座5からの離座を検知する離座検知センサとしても機能する。着座センサ33は、便座5に対する利用者の着座状態を検知する。なお、上記は一例であり、着座センサ33は、上記に限らず、種々の手段により便座装置2への人の着座を検知してもよい。着座センサ33は、着座検知信号を制御装置100へ出力する。
【0074】
照度センサ34は、照度を検知するセンサである。例えば、照度センサ34は、利用者の便座5への着座を検知する着座検知手段として用いられる。例えば、照度センサ34は、ボウル部8を臨む位置に配置され、ボウル部8内の照度を検知する。
【0075】
照度センサ34は、利用者による便座5からの離座を検知する離座検知センサとしても機能する。照度センサ34は、便座5に対する利用者の着座状態を検知する。なお、上記は一例に過ぎず、照度センサ34は、照度により利用者の便座5への着座が検知可能であれば、どのような位置に配置されてもよい。
【0076】
制御装置100は、各種構成や処理を制御する。制御装置100は、ガスの測定等に関する各種の情報処理を実行するコンピュータ(情報処理装置)である。制御装置100は、制御に必要な構成を有すればどのような装置であってもよく、例えばマイクロコンピュータ等であってもよい。
【0077】
制御装置100は、ガスを測定するための各種構成を制御する。制御装置100は、ガス検出装置20を制御する。制御装置100は、利用者の便器7の使用時以外の間にガスセンサ40による測定値があらかじめ決められた範囲内の値となるようにガス検出装置20を制御し、基準値として用いられる測定値を所定の値に制御する基準値制御を実行する。制御装置100は、ガスセンサ40の抵抗素子の抵抗値を変更することにより、基準値を所定の値に制御する基準値制御を実行する。
【0078】
制御装置100は、利用者の排便行為を予測する情報に関する排便行為利用予測情報を取得し、排便行為利用予測情報を取得した際に基準値制御を実行する。制御装置100は、着座検知手段による検知に基づく排便行為利用予測情報を取得し、排便行為利用予測情報を取得した際に基準値制御を実行する。
【0079】
制御装置100は、有線により、ガス検出装置20に制御情報を送信する。なお、制御装置100は、無線により、ガス検出装置20に制御情報を送信してもよい。例えば、制御装置100は、便座装置2と別装置として構成される場合、無線により、ガス検出装置20の制御情報を便座装置2へ送信してもよい。この場合、便座装置2の制御装置が受信した制御情報を基にガス検出装置20を制御してもよい。
【0080】
制御装置100は、吸引装置10を制御してもよい。例えば、制御装置100は、吸引装置10の吸引の開始や停止を制御する。制御装置100は、有線により、吸引装置10に制御情報を送信する。なお、制御装置100は、無線により、吸引装置10に制御情報を送信してもよい。例えば、制御装置100は、便座装置2と別装置として構成される場合、無線により、吸引装置10の制御情報を便座装置2へ送信してもよい。この場合、便座装置2の制御装置が受信した制御情報を基に吸引装置10を制御してもよい。
【0081】
また、制御装置100は、上記以外にも生体情報測定システム1の各種構成を制御する。制御装置100は、ノズルモータ61等を制御する。制御装置100は、操作装置30から送信された信号に基づいて、ノズルモータ61等を制御する。
【0082】
制御装置100は、操作装置30から送信された局部洗浄に関する制御指示の信号に基づいて、ノズルモータ61を制御する。制御装置100は、洗浄ノズル6を進退させるためにノズルモータ61を制御する。なお、制御装置100は、ノズルモータ61に限らず、様々な機構の制御を行ってもよい。例えば、制御装置100は、流体の流れを電磁的方法により制御する弁(バルブ)の機能を有する電磁弁の開閉を制御する。例えば、制御装置100は、電磁弁を制御することにより、例えば給水管からの水道水の供給および停止を切り替える。
【0083】
制御装置100は、有線により、ノズルモータ61等に制御情報を送信する。なお、制御装置100は、無線により、ノズルモータ61等に制御情報を送信してもよい。例えば、制御装置100は、便座装置2と別装置として構成される場合、無線により、ノズルモータ61等の制御情報を便座装置2へ送信してもよい。この場合、便座装置2の制御装置が受信した制御情報を基にノズルモータ61等を制御してもよい。
【0084】
また、制御装置100は、
図1に示すような便蓋9や便座5を制御してもよい。この場合、制御装置100は、操作装置30から送信された信号に基づいて、便蓋9や便座5を制御する。制御装置100は、操作装置30から送信された便蓋開閉に関する制御指示の信号に基づいて、便蓋9を制御する。制御装置100は、操作装置30から送信された着座部開閉に関する制御指示の信号に基づいて、便座5を制御する。制御装置100は、有線により、便蓋9や便座5に制御情報を送信する。なお、制御装置100は、無線により、便蓋9や便座5に制御情報を送信してもよい。
【0085】
制御装置100は、人感センサ32、着座センサ33及び照度センサ34等の着座検知手段による利用者の着座が検知されたか否かを判定する。制御装置100は、着座検知手段から取得した着座検知手段による検知に基づく排便行為利用予測情報による便座5への利用者の着座が検知されたか否かを判定する。
【0086】
ノズルモータ61は、洗浄ノズル6を進退駆動する駆動源(モータ)である。ノズルモータ61は、洗浄ノズル6を本体部3に対して進退させる制御を実行する。ノズルモータ61は、制御装置100からの指示に応じて洗浄ノズル6を進退させる制御を実行する。
【0087】
図5に示す構成では、便座装置2に、制御装置100等が含まれる構成を一例として示したが、制御装置100、人感センサ32、着座センサ33及び照度センサ34等は、便座装置2とは別装置として構成されてもよい。例えば、制御装置100は、便座装置2とは別装置で構成されてもよい。例えば、制御装置100は、サーバ装置であり、便座装置2から離間した位置に配置されてもよい。この場合、制御装置100は、便座装置2、人感センサ32、着座センサ33及び照度センサ34等の各装置と通信し、各種の情報を各装置から受信する。また、この場合、便座装置2は、ノズルモータ61等の便座装置2の各種構成を制御するための構成(制御回路等)を有してもよい。なお、上記は一例に過ぎず、生体情報測定システム1は、所望の処理が可能であれば、任意の装置構成が採用可能である。
【0088】
<1-6.制御装置の機能構成>
以下、制御装置の機能構成について
図6を参照して説明する。
図6は、実施形態に係る制御装置の構成の一例を示すブロック図である。
図6に示すように、制御装置100は、通信部110と、記憶部120と、制御部130とを有する。なお、制御装置100の構成は、
図6に示した構成に限られず、所望の処理を実現可能であれば他の構成であってもよい。例えば、制御装置100は、通信部110を有しなくてもよい。
【0089】
通信部110は、例えば、通信回路等によって実現される。通信部110は、所定のネットワークと有線または無線で接続され、外部の情報処理装置との間で情報の送受信を行う。例えば、通信部110は、所定のネットワークと有線または無線で接続され、操作装置30等の他の装置との間で情報の送受信を行う。なお、通信部110は、制御装置100とは別装置(通信装置)として構成され、便座装置2が有してもよい。
【0090】
記憶部120は、例えば、RAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリ等の半導体メモリ素子、または、ハードディスク、光ディスク等の記憶装置によって実現される。例えば、記憶部120は、各種の情報処理のプログラム等によって使用されるデータ等を非一時的に記録するコンピュータが読み取り可能な記録媒体である。
【0091】
実施形態に係る記憶部120は、処理に必要な様々な情報を記憶する。記憶部120は、各種センサ等の他の装置から取得した各種情報を記憶する。記憶部120は、各種の情報処理で用いる様々な情報を記憶する。例えば、記憶部120は、目標値等の基準値制御に関する情報を記憶する。
【0092】
図6に戻り、説明を続ける。制御部130は、例えば、MPU(Micro Processing Unit)やCPU(Central Processing Unit)等によって、制御装置100内部に記憶されたプログラム(例えば、本開示に係る各種の情報処理のプログラム等)がRAM等を作業領域として実行されることにより実現される。また、制御部130は、例えば、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)やFPGA(Field Programmable Gate Array)等の集積回路により実現されてもよい。
【0093】
図6に示すように、制御部130は、取得部131と、処理部132と、出力部133とを有し、以下に説明する情報処理の機能や作用を実現または実行する。なお、制御部130の内部構成は、
図6に示した構成に限られず、後述する情報処理を行う構成であれば他の構成であってもよい。
【0094】
取得部131は、各種情報を取得する。取得部131は、記憶部120から各種情報を取得する。取得部131は、他の装置から情報を受信する。取得部131は、各種のセンサが検知した情報(検知情報等)を各種のセンサから受信する。
【0095】
取得部131は、着座検知手段により検知された情報(検知情報等)を着座検知手段から取得する。取得部131は、人感センサ32、着座センサ33及び照度センサ34のうち少なくとも1つのセンサが検知した情報(検知情報等)をそのセンサから受信する。
【0096】
取得部131は、着座検知手段による検知に基づく排便行為利用予測情報を取得する。例えば、取得部131は、利用者の着座を示す排便行為利用予測情報を取得する。
【0097】
処理部132は、各種の処理を行う。処理部132は、記憶部120に記憶された情報を用いて、各種の処理を行う。処理部132は、ガス検出装置20を制御する。
【0098】
処理部132は、利用者の便器7の使用時以外の間にガスセンサ40による測定値があらかじめ決められた範囲内の値となるようにガス検出装置20を制御し、基準値として用いられる測定値を所定の値に制御する基準値制御を実行する。処理部132は、ガスセンサ40の抵抗素子の抵抗値を変更することにより、基準値を所定の値に制御する基準値制御を実行する。処理部132は、排便ガス測定の終了ごとに基準値制御を実行する。処理部132は、ガスセンサ40の測定値をフィードバックする処理により基準値制御を実行する。
【0099】
処理部132は、利用者の排便行為を予測する排便行為利用予測情報を取得部131が取得した場合、基準値制御を実行する。処理部132は、利用者の便座5への着座を示す排便行為利用予測情報を取得部131が取得した場合、基準値制御を実行する。
【0100】
処理部132は、判定処理を行う。処理部132は、記憶部120に記憶された各種の情報を用いて判定処理を行う。処理部132は、取得部131により取得された各種の情報を用いて基準値制御を実行するか否かを判定する。
【0101】
処理部132は、算出処理を行う。処理部132は、記憶部120に記憶された各種の情報を用いて算出処理を行う。処理部132は、取得部131により取得された各種の情報を用いて算出処理を行う。
【0102】
処理部132は、ガスに関する各種情報を算出する。処理部132は、ガス検出装置20により測定された測定値を基に値を算出する。処理部132は、ガスセンサ40により測定された電圧値を基に、センサ素子の抵抗値を算出する。例えば、処理部132は、電圧値とセンサ素子の抵抗値との関係を示す関数を用いて、測定した電圧値からセンサ素子の抵抗値を算出する。処理部132は、式(1)を用いてセンサ素子の抵抗値を算出する。
【0103】
処理部132は、算出したセンサ素子の抵抗値を基に、ガスの濃度を算出してもよい。この場合、処理部132は、抵抗値とガスの濃度との関係を示す関数を用いて、算出した抵抗値からガスの濃度を算出する。
【0104】
出力部133は、各種情報を出力する出力処理を実行する。出力部133は、各種情報を送信する送信部として機能する。出力部133は、外部の情報処理装置へ情報を送信することにより、出力処理を実行する。出力部133は、外部の情報処理装置へ情報を送信する。例えば、出力部133は、推定手段200へ各種情報を送信する。例えば、出力部133は、推定手段200管理者が利用するパソコン、スマートフォン等の管理者装置へ各種情報を送信する。また、出力部133は、操作装置30(もしくは表示画面31)へ情報を送信することにより、出力処理を実行しても良い。
【0105】
出力部133は、推定手段200が推定処理に用いる各種情報を推定手段200へ送信する。出力部133は、ガス検出装置20により測定された測定値を示す情報を送信する。出力部133は、処理部132により算出された値を示す情報を送信する。
【0106】
<1-7.ガスセンサ>
ここから、ガスセンサの構成例について
図7を用いて説明する。
図7は、ガスセンサの構成の一例を示す図である。具体的には、
図7は、半導体式のガスセンサ40の回路構成CRの一例を示す図である。
【0107】
ガスセンサ40は、センサ素子と、測定用の抵抗素子とが配置されたものである。
図7では、ガスセンサ40は、センサ素子(
図7中のセンサ抵抗RSに対応)と、測定用の抵抗素子(
図7中の抵抗素子RLに対応)とが直列接続された回路構成CRを有する。
【0108】
半導体式のガスセンサ40では、以下のような式(1)を用いてガス量と関係がある値が算出される。式(1)は、
図7中に示す回路構成CRに対応し、
図7中の関数FC1と同様の式である。
【0109】
RS =((Vc-Vout)/Vout)×RL … (1)
【0110】
式(1)中の「RS」は、センサ素子の抵抗値を示す。例えば、式(1)中の「RS」は、ガスセンサ40による測定を基に算出される値の一例であるセンサ抵抗RSの抵抗値を示す。このように、式(1)は、抵抗値の計算式である。
【0111】
式(1)中の「RL」は、抵抗素子RLの抵抗値を示す。式(1)中の「Vc」は、回路電圧Vcの電圧値を示す。式(1)中の「Vout」は、抵抗素子における出力電圧Voutの電圧値を示す。例えば、式(1)中の「Vout」は、ガスセンサ40により測定される測定値の一例である抵抗素子RLの電圧値を示す。
【0112】
式(1)でのセンサ抵抗RSの抵抗値は、ガス量と関係のある指標である。生体情報測定システム1は、ガス量と関係ある指標(抵抗値)を測定値(電圧値)から算出し、算出した抵抗値からガス量を算出する。なお、半導体式のガスセンサの原理等についての詳細な説明は省略するが、例えば
図7の回路構成CRのみに示される「RH」はセンサ素子を熱するためのヒータ(抵抗)に対応し、「V
H」はヒータの電圧に対応する。なお、本発明におけるガスセンサは、半導体式のセンサに限らず、上記式(1)を満たすセンサであれば代替可能である。
【0113】
<1-8.基準値制御>
ここから、上述したガスセンサ40の構成を前提とした基準値制御に関する処理例について説明する。まず、基準値制御に関する処理の説明に先だって、基準値の違いによる分解能変化について説明する。例えば、基準値は、排便ガスの測定前の測定値(電圧値)であり、ベースラインとして用いられる値である。
【0114】
例えば、出力電圧Voutの電圧値(測定値)が2.5Vから2.7Vに変化した場合の例を説明する。この例では、例えば2.5Vが基準値(ベースライン)となり、そこから電圧値が0.2V増大した例を示す。まず、出力電圧Voutの電圧値が2.5Vの場合、以下のような式(2)となる。
【0115】
RS =((5-2.5)/2.5)×RL … (2)
【0116】
式(2)に示すように、出力電圧Voutの電圧値が2.5Vの場合、「RS=1RL」となる。
【0117】
次に、出力電圧Voutの電圧値が2.7Vの場合、以下のような式(3)となる。
【0118】
RS =((5-2.7)/2.7)×RL … (3)
【0119】
式(3)に示すように、出力電圧Voutの電圧値が2.7Vの場合、「RS=0.852RL」となる。このように、出力電圧Voutの電圧値が2.5Vから2.7Vに変化した場合、センサ抵抗RSの抵抗値が14.8%程度減少する。
【0120】
例えば、出力電圧Voutの電圧値(測定値)が4.5Vから4.7Vに変化した場合の例を説明する。この例では、例えば4.5Vが基準値(ベースライン)となり、そこから電圧値が0.2V増大した例を示す。まず、出力電圧Voutの電圧値が4.5Vの場合、以下のような式(4)となる。
【0121】
RS =((5-4.5)/4.5)×RL … (4)
【0122】
式(4)に示すように、出力電圧Voutの電圧値が4.5Vの場合、「RS=0.11RL」となる。
【0123】
次に、出力電圧Voutの電圧値が4.7Vの場合、以下のような式(5)となる。
【0124】
RS =((5-4.7)/4.7)×RL … (5)
【0125】
式(5)に示すように、出力電圧Voutの電圧値が4.7Vの場合、「RS=0.06RL」となる。このように、出力電圧Voutの電圧値が4.5Vから4.7Vに変化した場合、センサ抵抗RSの抵抗値が42.5%程度減少する。
【0126】
上述したように、同じ0.2Vの変化でも基準値により、センサ抵抗RSの抵抗値の変化量が異なる。このように、基準値が変化すると、分解能が変化する。そのため、分解能の変化を抑制し、分解能を安定させるためには、基準値の変化を抑制することが望ましい。
【0127】
一方で、ガスセンサの使用環境によって基準値の出力が変化しやすい傾向がある。トイレ空間(例えばトイレ室R内の空間等)は、ノイズが多い傾向がある。例えば、トイレ空間におけるノイズの例としては、芳香剤、洗剤、アルコール除菌剤、香水、直前の利用者の排便ガス、脱臭ファン流量、温度、湿度、便器の付着臭、利用者の動き、便蓋の開閉、ドア開閉等がある。また、ガスセンサの使用環境としては、吸引装置(例えば吸引装置10等)により、常時ガスセンサに空気を送り続ける。
【0128】
上述したような二つの要因により、測定値(基準値)が変化しやすい。すなわち、トイレ空間とガスセンサの使用環境により基準値が変化しやすく、分解能が変化しやすい。分解能が変化すると測定に与えるノイズの影響等が変化するため、ガス測定に関する処理を適切に実行することが難しい。
【0129】
例えば、ガス量や濃度、算出したスコアを経時変化で評価する場合、分解能の変化が評価に与える影響が特に大きい。例えば、測定毎に分解能が変化すると、ノイズの影響度合いが変わるため、経時変化による評価に影響する。すなわち、経時変化で評価する場合、分解能が変化すると正しく評価できない場合が生じ得る。例えば、ガス量や濃度、算出したスコアを経時変化により評価する場合、分解能の変化が評価に影響を与える。
【0130】
そこで、生体情報測定システム1は、分解能を安定させるためには、基準値の変化を抑制するために、基準値制御を実行する。例えば、生体情報測定システム1は、利用者の便器7の使用時以外の間にガスセンサ40による測定値があらかじめ決められた範囲内の値となるようにガス検出装置20を制御し、基準値として用いられる測定値を所定の値に制御する基準値制御を実行する。
【0131】
そして、生体情報測定システム1は、基準値制御により制御された基準値を用いて排便ガス測定に関する処理を実行する。例えば、ガス検出装置20は、制御装置100による基準値制御により制御された基準値を用いて排便ガス測定に関する処理を実行する。
【0132】
<1-8-1.基準値制御の概要>
以下、生体情報測定システム1による基準値制御の例について説明する。まず、
図8を用いて、基準値制御の概要について説明する。
図8は、実施形態に係る基準値制御の一例を示す図である。
【0133】
生体情報測定システム1は、基準値の変化を抑制するために、測定用の抵抗素子の抵抗値を変更する。すなわち、半導体式のガスセンサ40の回路構成CRでは、測定用の抵抗素子である抵抗素子RLには可変抵抗が用いられる。
図8に示すように、生体情報測定システム1は、基準値(測定値)が所定の値(目標値)となるように抵抗素子RLの抵抗値を変更する。例えば、目標値は、抵抗素子RLの電圧値として測定可能な値に設定される。なお、目標値は、任意の値が設定可能であり、分解能が最も良くなる値に設定されてもよい。
【0134】
図8中のグラフGR11は、基準値制御による測定値の制御の一例を示し、縦軸が測定値(抵抗素子RLの電圧値)を示し、横軸が時間経過を示す。例えば、グラフGR11の時点t11は、排便ガスの測定開始前の時点に対応する。
【0135】
グラフGR11の線LN11は、測定値(抵抗素子RLの電圧値)の時間変化を示す。
図8に示すように、生体情報測定システム1は、排便ガスの測定開始前の時点t11において、基準値制御を実行し、基準値となる測定値(抵抗素子RLの電圧値)を目標値になるように、抵抗素子RLの抵抗値を変更する。生体情報測定システム1は、利用者が排便を開始するまでの任意のタイミングで基準値制御を実行する。例えば、生体情報測定システム1は、着座検知手段の検知等により利用者の着座を検知し、検知したタイミングで基準値制御を開始してもよい。なお、基準値制御のタイミングについては後述する。そして、生体情報測定システム1は、時点t11以後に、基準値制御により制御された基準値(ベースライン)を基に利用者の排便ガス測定を行う。
【0136】
これにより、生体情報測定システム1は、測定値が変化する場合でも基準値制御によって分解能の変化を抑制することができる。生体情報測定システム1は、例えば温度、湿度、芳香剤等のノイズ要因の影響を排除することができる。なお、上述した基準値制御の処理は一例に過ぎず、生体情報測定システム1は任意のタイミングで任意の態様により基準値制御を行ってもよく、例えば着座検知手段の検知が行われているタイミング以外で連続的に基準値制御を行ってもよい。この点について、以下説明する。
【0137】
<1-8-2.基準値制御のタイミング例>
次に、
図9を用いて、基準値制御のタイミング例について説明する。
図9は、実施形態に係る基準値制御のタイミングの一例を示す図である。なお、
図8で説明した内容と同様の点については適宜説明を省略する。
【0138】
生体情報測定システム1は、排便ガス測定の終了ごとに基準値制御を実行する。具体的には、生体情報測定システム1は、排便ガス測定前に、毎回基準値制御を実行する。
【0139】
図9中のグラフGR21は、利用者によるトイレ室Rの利用に応じて生体情報測定システム1が実行する排便ガス測定ごとの基準値制御による測定値の制御の一例を示す。グラフGR21の線LN21は、測定値(抵抗素子RLの電圧値)の時間変化を示す。
【0140】
図9中の測定処理MS1は、
図9に示す複数回(2回)の排便ガス測定のうち1回目の排便ガスの測定に対応する。例えば、測定処理MS1は、
図9に示す2回のトイレ室Rの利用のうち1回目の利用者(「利用者U1」ともいう)についての排便ガス測定の例を示す。測定処理MS1に示すように、利用者U1は、トイレ室Rへ入室、便座5への着座、ボウル部8への排便、便座5からの離座、トイレ室Rからの退出という手順により、トイレ室Rを利用する。
【0141】
例えば、グラフGR21の時点t21は、利用者U1の排便ガスの測定開始前の時点に対応する。
図9に示すように、生体情報測定システム1は、利用者U1の排便ガスの測定、すなわち1回目の排便ガス測定開始前の時点t21において、基準値制御を実行し、基準値となる測定値(抵抗素子RLの電圧値)を目標値になるように、抵抗素子RLの抵抗値を変更する。例えば、生体情報測定システム1は、着座検知手段の検知等により利用者U1の着座を検知し、検知したタイミングで基準値制御を開始してもよい。そして、生体情報測定システム1は、時点t21以後に、基準値制御により制御された基準値(ベースライン)を基に、利用者U1の排便ガス測定を行う。
【0142】
また、
図9中の測定処理MS2は、
図9に示す複数回(2回)の排便ガス測定のうち2回目の排便ガスの測定に対応する。例えば、測定処理MS2は、
図9に示す2回のトイレ室Rの利用のうち2回目の利用者(「利用者U2」ともいう)についての排便ガス測定の例を示す。測定処理MS2に示すように、利用者U2は、トイレ室Rへ入室、便座5への着座、ボウル部8への排便、便座5からの離座、トイレ室Rからの退出という手順により、トイレ室Rを利用する。なお、利用者U2は、利用者U1と異なる利用者であってもよいし、利用者U1と同じ利用者であってもよい。
【0143】
例えば、グラフGR21の時点t22は、利用者U2の排便ガスの測定、すなわち2回目の排便ガス測定開始前の時点に対応する。
図9に示すように、生体情報測定システム1は、利用者U2の排便ガスの測定開始前の時点t22において、基準値制御を実行し、基準値となる測定値(抵抗素子RLの電圧値)を目標値になるように、抵抗素子RLの抵抗値を変更する。例えば、生体情報測定システム1は、着座検知手段の検知等により利用者U2の着座を検知し、検知したタイミングで基準値制御を開始してもよい。そして、生体情報測定システム1は、時点t22以後に、基準値制御により制御された基準値(ベースライン)を基に、利用者U2の排便ガス測定を行う。
【0144】
上述したように、生体情報測定システム1は、排便ガス測定前に毎回基準値制御を実行する。このように、生体情報測定システム1は、次の排便ガス測定までに毎回基準値制御を行えることで、排便ガス測定毎に分解能の変化を抑えて測定することができる。生体情報測定システム1は、例えば直前の利用者の排便ガス、便器付着臭等のノイズ要因の影響を排除することができる。
【0145】
<1-8-3.基準値のフィードバック制御>
次に、
図10を用いて、基準値のフィードバック制御について説明する。
図10は、基準値のフィードバック制御を示す図である。生体情報測定システム1は、ガスセンサ40の測定値をフィードバックする処理により基準値制御を実行する。
【0146】
生体情報測定システム1は、
図10に示すフィードバック制御FBのように、制御器である可変抵抗(抵抗素子RL)を制御することにより、制御対象となるガスセンサ40の測定値を制御する。このように、生体情報測定システム1は、可変抵抗である抵抗素子RLをガスセンサ40の測定値を用いたフィードバック制御理により基準値制御を実行する。これにより、生体情報測定システム1は、現在のガスセンサ40の測定値に基づいて制御することができる。
【0147】
<1-8-4.排便行為前での基準値制御>
次に、
図11を用いて、基準値制御のタイミングの具体例について説明する。
図11は、排便行為前の行動の一例を示す図である。生体情報測定システム1は、
図11中の排便前行為一覧LT1に示す複数の排便前行為を基に排便行為前を検知し、基準値制御を行う。
【0148】
生体情報測定システム1は、利用者がトイレ室Rのドアを開ける行為を排便前行為として検知し、利用者がトイレ室Rのドアを開ける行為を検知したタイミングで、トイレ室Rについての基準値制御を行ってもよい。この場合、生体情報測定システム1は、トイレ室Rのドアの開閉を検知するドアセンサを有し、ドアセンサの検知を基に利用者がトイレ室Rのドアを開ける行為を示す情報を取得する。
【0149】
生体情報測定システム1は、利用者がトイレ室Rのドアの鍵をかける行為を排便前行為として検知し、利用者がトイレ室Rのドアの鍵をかける行為を検知したタイミングで、トイレ室Rについての基準値制御を行ってもよい。この場合、生体情報測定システム1は、トイレ室Rのドアの鍵の施錠有無を検知するドアセンサを有し、ドアセンサの検知を基に利用者がトイレ室Rのドアの鍵をかける行為を示す情報を取得する。
【0150】
生体情報測定システム1は、利用者がトイレ室Rの照明をつける行為を排便前行為として検知し、利用者がトイレ室Rの照明をつける行為を検知したタイミングで、トイレ室Rについての基準値制御を行ってもよい。この場合、生体情報測定システム1は、照度センサ34の検知を基に利用者がトイレ室Rの照明をつける行為を示す情報を取得してもよいし、照度のスイッチのONOFFの状態を基にトイレ室Rの照明をつける行為を示す情報を取得してもよい。
【0151】
生体情報測定システム1は、利用者がトイレ室Rの便座5に近づく行為を排便前行為として検知し、利用者がトイレ室Rの便座5に近づく行為を検知したタイミングで、トイレ室Rについての基準値制御を行ってもよい。この場合、生体情報測定システム1は、人感センサ32の検知を基に利用者がトイレ室Rの照明をつける行為を示す情報を取得する。
【0152】
生体情報測定システム1は、利用者がトイレ室Rの便蓋9を開ける行為を排便前行為として検知し、利用者がトイレ室Rの便蓋9を開ける行為を検知したタイミングで、トイレ室Rについての基準値制御を行ってもよい。この場合、生体情報測定システム1は、トイレ室Rの便蓋9の開閉を検知する開閉検知センサを有し、開閉検知センサの検知を基に利用者がトイレ室Rの便蓋9を開ける行為を示す情報を取得する。
【0153】
生体情報測定システム1は、利用者がトイレ室Rの便座5に着座する行為を排便前行為として検知し、利用者がトイレ室Rの便座5に着座する行為を検知したタイミングで、トイレ室Rについての基準値制御を行ってもよい。この場合、生体情報測定システム1は、
図12中の着座検知一覧LT2に示す着座検知手段の一例である各センサによる検知を基に、利用者がトイレ室Rの便座5に着座する行為を示す情報を取得する。
【0154】
着座検知一覧LT2中の荷重センサは着座センサ33に対応し、照度センサは照度センサ34に対応し、人感センサは人感センサ32に対応する。生体情報測定システム1は、着座検知手段の検知により利用者の着座を検知し、検知したタイミングで基準値制御を開始する。このように、着座のタイミングで基準値制御を実行することで、生体情報測定システム1は、排便行為まで空気質の変化が少ない着座のタイミングで基準値制御を行えるため、より適切に基準値を設定することが可能となる。
【0155】
生体情報測定システム1は、利用者がトイレ室Rを予約する行為を排便前行為として検知し、利用者がトイレ室Rを予約する行為に基づくタイミングで、トイレ室Rについての基準値制御を行ってもよい。この場合、生体情報測定システム1は、トイレ室Rの予約を示す予約情報をトイレ室Rの予約を管理する外部装置から取得し、取得した予約情報に基づくタイミングで、トイレ室Rについての基準値制御を行う。例えば、生体情報測定システム1は、予約情報を取得したタイミングでトイレ室Rについての基準値制御を行ってもよい。例えば、予約情報に使用開始予定時間が含まれる場合、生体情報測定システム1は、使用開始予定時間の直前(例えば数分前等)にトイレ室Rについての基準値制御を行う。
【0156】
生体情報測定システム1は、利用者が自身のユーザ端末とトイレ室Rの機器(例えば便座装置2等)とを同期させる行為を排便前行為として検知し、利用者がユーザ端末とトイレ室Rの機器とを同期させる行為を検知したタイミングで、トイレ室Rについての基準値制御を行ってもよい。この場合、生体情報測定システム1は、利用者のユーザ端末とトイレ室Rの機器とが同期を開始することを示す同期開始情報を取得したタイミングでトイレ室Rについての基準値制御を行ってもよい。
【0157】
上述したように、生体情報測定システム1は、様々な行為のうち任意の行動を排便前行為として、その行為に基づくタイミングで基準値制御を実行する。このように、生体情報測定システム1は、排便行為前に基準値制御を行えるので、より効果的に制御を行うことができる。生体情報測定システム1は、例えば洗剤、アルコール除菌剤、ドアの開閉、利用者の動き、香水、便蓋開閉等のノイズ要因の影響を排除することができる。
【0158】
なお、上述してきた各実施形態及び変形例は、処理内容を矛盾させない範囲で適宜組み合わせることが可能である。
【0159】
さらなる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。このため、本発明のより広範な態様は、以上のように表しかつ記述した特定の詳細および代表的な実施形態に限定されるものではない。したがって、添付の特許請求の範囲およびその均等物によって定義される総括的な発明の概念の精神または範囲から逸脱することなく、様々な変更が可能である。
【0160】
上述してきた各実施形態及び変形例について、以下のような構成であってもよいが、以下には限られない。
(1)
トイレ室に設置された大便器のボウル内に排出される排便ガスに基づいて、前記トイレ室の利用者の生体情報を測定する生体情報測定システムであって、
気体に含まれるガスに反応するガスセンサを備えたガス検出装置と、
前記ガス検出装置を制御する制御装置と、
を有し、
前記ガスセンサは、センサ素子と、測定用の抵抗素子とが配置されたものであり、
前記制御装置は、
前記利用者の前記大便器の使用時以外の間に前記ガスセンサによる測定値があらかじめ決められた範囲内の値となるように前記ガス検出装置を制御し、基準値として用いられる前記測定値を所定の値に制御する基準値制御を実行し、
前記ガス検出装置は、
前記基準値制御により制御された前記基準値を用いて排便ガス測定に関する処理を実行する
ことを特徴とする生体情報測定システム。
(2)
前記制御装置は、
前記ガスセンサの前記抵抗素子の抵抗値を変更することにより、前記基準値を前記所定の値に制御する前記基準値制御を実行する
ことを特徴とする(1)に記載の生体情報測定システム。
(3)
前記制御装置は、
前記排便ガス測定の終了ごとに前記基準値制御を実行する
ことを特徴とする(1)または(2)に記載の生体情報測定システム。
(4)
前記制御装置は、
前記ガスセンサの前記測定値をフィードバックする処理により前記基準値制御を実行する
ことを特徴とする(3)に記載の生体情報測定システム。
(5)
前記制御装置は、
前記利用者の排便行為を予測する情報に関する排便行為利用予測情報を取得し、前記排便行為利用予測情報を取得した際に前記基準値制御を実行する
ことを特徴とする(3)または(4)に記載の生体情報測定システム。
(6)
前記利用者の前記大便器の便座への着座を検知する着座検知手段、
を有し、
前記制御装置は、
前記着座検知手段による検知に基づく排便行為利用予測情報を取得し、前記排便行為利用予測情報を取得した際に前記基準値制御を実行する
ことを特徴とする(5)に記載の生体情報測定システム。
(7)
トイレ室に設置された大便器のボウル内に排出される排便ガスに基づいて、前記トイレ室の利用者の生体情報を測定する便座装置であって、
気体に含まれるガスに反応するガスセンサを備えたガス検出装置と、
前記ガス検出装置を制御する制御装置と、
を有し、
前記ガスセンサは、センサ素子と、測定用の抵抗素子とが配置されたものであり、
前記制御装置は、
前記利用者の前記大便器の使用時以外の間に前記ガスセンサによる測定値があらかじめ決められた範囲内の値となるように前記ガス検出装置を制御し、基準値として用いられる前記測定値を所定の値に制御する基準値制御を実行し、
前記ガス検出装置は、
前記基準値制御により制御された前記基準値を用いて排便ガス測定に関する処理を実行する
ことを特徴とする便座装置。
【符号の説明】
【0161】
1 生体情報測定システム
2 便座装置
3 本体部
4 測定装置
5 便座
6 洗浄ノズル
7 便器
8 ボウル部
9 便蓋
10 吸引装置
20 ガス検出装置
40 ガスセンサ
100 制御装置
110 通信部
120 記憶部
130 制御部
131 取得部
132 処理部
133 出力部
200 推定手段
R トイレ室