(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024136498
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】空気吹出構造
(51)【国際特許分類】
B60H 1/34 20060101AFI20240927BHJP
B60H 1/00 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
B60H1/34 611Z
B60H1/34 651Z
B60H1/00 102S
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023047632
(22)【出願日】2023-03-24
(71)【出願人】
【識別番号】000241500
【氏名又は名称】トヨタ紡織株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001036
【氏名又は名称】弁理士法人暁合同特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 迪吉
【テーマコード(参考)】
3L211
【Fターム(参考)】
3L211BA05
3L211DA14
3L211DA57
(57)【要約】
【課題】乗物室内の意匠性を確保しつつ、空気の吹出方向を調整可能な空気吹出構造を提供する。
【解決手段】壁面部32に開口形成された細長状の吹出口14と、壁面部32の室外側に配されて空気を吹出口14に案内する空気流路22を形成するダクト36と、吹出口14に平行に延び、外周面の一部が吹出口14から室内側に突出した状態でダクト36内に回動可能に配され、ダクト36内の空気を、自身に形成された貫通孔70を通して吹出口14に案内する回動フィン34と、を備え、貫通孔70が、回動フィン34の回転軸Aから室内側にずれた位置において回転軸Aに対して交差する方向に貫通している構成とする。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗物の送風装置における空気吹出構造であって、
乗物室の意匠面をなす板状の壁面部に開口形成された細長状の吹出口と、
前記壁面部の室外側に配されて空気を前記吹出口に案内する空気流路を形成するダクトと、
前記吹出口に平行に延び、外周面の一部が前記吹出口から突出した状態で前記ダクト内に回動可能に配され、前記ダクト内の空気を、自身に形成された貫通孔を通して前記吹出口に案内する回動フィンと、
を備え、
前記貫通孔は、前記回動フィンの回転軸から室内側にずれた位置において前記回転軸に対して交差する方向に貫通していることを特徴とする空気吹出構造。
【請求項2】
前記貫通孔は、前記回転軸と平行に延びる長孔であり、
前記回動フィンは、前記貫通孔より室内側の部分である室内側部が、前記回転軸を中心とする円柱状をなしている請求項1に記載の空気吹出構造。
【請求項3】
前記回動フィンは、前記貫通孔より室外側の部分である室外側部に、前記室内側部より上流側に延び出した延出部を有している請求項2に記載の空気吹出構造。
【請求項4】
前記ダクトは、前記延出部の先端が対向する壁面を形成する箇所に、前記回動フィンの前記回転軸を中心とする円筒形状とされた円筒部を有している請求項3に記載の空気吹出構造。
【請求項5】
前記ダクトは、前記円筒部の上流側に、内部を流れる空気を前記壁面部から離間させる方向に案内するガイド部を有している請求項4に記載の空気吹出構造。
【請求項6】
前記ダクトは、前記円筒部の下流側に室内側に向かって突出形成され、前記延出部が上流側から当接する第1ストッパ部を有している請求項4または請求項5に記載の空気吹出構造。
【請求項7】
前記回動フィンは、前記室外側部の下流側に、外周面が前記回転軸を中心とする円弧状をなす円弧形成部を有している請求項3から請求項5のいずれか一項に記載の空気吹出構造。
【請求項8】
前記回動フィンは、周方向における前記延出部と前記円弧形成部との間に、前記円弧形成部の外周面より前記回転軸側に窪んだ凹所を有しており、
前記ダクトは、前記凹所に入り込んで、前記円弧形成部が下流側から当接する第2ストッパ部を有している請求項7に記載の空気吹出構造。
【請求項9】
前記壁面部は、乗物としての車両の天井の意匠面を形成する天井材である請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の空気吹出構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乗物の送風装置における空気吹出構造に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、自動車のインストルメントパネルに配設され、空調装置で調節された空調空気を車内に吹き出す空気吹出口に使用されるレジスタが記載されている。このレジスタは、比較的大きな吹出口とされており、その吹出口の内部に配された複数枚のフィンを有する部材の向きを、その吹出口から突出する形で設けられた操作ノブをスライドさせることで、変更可能な構成とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年では、自動車におけるインストゥルメントパネル以外の個所、例えば、天井など壁面部に、空気の吹出口を設ける場合がある。その場合、上記特許文献1に記載のような比較的大きな吹出口の構造は、乗物室内の意匠性を低下させてしまうという問題がある。一方で、吹出口を小さくすると、空気が吹き出される方向を調整する機構を設けることが困難となる。
【0005】
本発明は、そのような実情に鑑みてなされたものであり、乗物室内の意匠性を確保しつつ、空気の吹出方向を調整可能な空気吹出構造を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本願に開示される空気吹出構造は、下記の構成とされている。
(1)乗物の送風装置における空気吹出構造であって、
乗物室の意匠面をなす板状の壁面部に開口形成された細長状の吹出口と、
前記壁面部の室外側に配されて空気を前記吹出口に案内する空気流路を形成するダクトと、
前記吹出口に平行に延び、外周面の一部が前記吹出口から突出した状態で前記ダクト内に回動可能に配され、前記ダクト内の空気を、自身に形成された貫通孔を通して前記吹出口に案内する回動フィンと、
を備え、
前記貫通孔は、前記回動フィンの回転軸から室内側にずれた位置において前記回転軸に対して交差する方向に貫通していることを特徴とする空気吹出構造。
【0007】
本願に開示の空気吹出構造は、ダクト内を流れる空気が、回動フィンの貫通孔の貫通方向に変更されつつ吹出口に案内され、吹出口から吹き出される。つまり、吹出口から吹き出される空気の向きは、その貫通孔の貫通方向、つまり、回動フィンの回転位置に応じた方向となり、吹き出される空気の風向を調整することが可能である。なお、本願に開示の空気吹出構造は、乗員が回動フィンの乗物室に突出した部分を押さえて、回動フィンを回転させることで、風向を調節することが可能である。本願に開示の空気吹出構造は、比較的隙間の小さな細長状(帯状)の吹出口から、回動フィンの一部のみが乗物室に突出する構成であるため、乗物室の意匠性の低下を抑えることができる。
【0008】
本願に開示の空気吹出構造は、貫通孔が回転軸より室内側にオフセットした位置に貫通形成されていることで、貫通孔より室内側の部分を小さくして乗物室内への突出量を減らすことができる。また、貫通孔が回転軸より室内側にオフセットした位置に貫通形成されていることによって、風向を壁面部に沿う方向に近づけても、貫通孔から吹き出された空気が、吹出口の口縁に接触してしまうような事態を回避し易い構成となる。
【0009】
また、上記構成の空気吹出構造において、以下に示す種々の態様とすることが可能である。なお、本発明は以下の態様に限定されるものではなく、当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を施した種々の態様で実施することができる。
【0010】
(2)前記貫通孔は、前記回転軸と平行に延びる長孔であり、
前記回動フィンは、前記貫通孔より室内側の部分である室内側部が、前記回転軸を中心とする円柱状をなしている(1)項に記載の空気吹出構造。
【0011】
この構成の空気吹出構造は、回動フィンの室内側に突出する部分の外周面が、円弧状をなしていることで、回動フィンの外周面、詳しく言えば、室内側部の外周面と吹出口の口縁との間の隙間を一定にすることができ、回動フィンの回転位置によらず、余計な隙間が生じないようになっている。
【0012】
(3)前記回動フィンは、前記貫通孔より室外側の部分である室外側部に、前記室内側部より上流側に延び出した延出部を有している(2)項に記載の空気吹出構造。
【0013】
この構成の空気吹出構造は、延出部の存在によって、ダクトを流れる空気を貫通孔内に誘導させることができ、ダクト内の空気を効果的に吹出口に案内することができる。
【0014】
(4)前記ダクトは、前記延出部の先端が対向する壁面を形成する箇所に、前記回動フィンの前記回転軸を中心とする円筒形状とされた円筒部を有している(3)項に記載の空気吹出構造。
【0015】
この構成の空気吹出構造は、ダクトに円筒部が形成されていることで、ダクトと回動フィンとの間に空気が流れ込みにくくされており、ダクト内の空気を効果的に貫通孔に流入させることができる。
【0016】
(5)前記ダクトは、前記円筒部の上流側に、内部を流れる空気を前記壁面部から離間させる方向に案内するガイド部を有している(4)項に記載の空気吹出構造。
【0017】
本願に開示の空気吹出構造において、回動フィンが、貫通孔の貫通方向の壁面部に対してなす角度が大きくなるほど、貫通孔の上流側の開口は、室外側を向いていくことになる。この構成の空気吹出構造は、室外側を向いた貫通孔の上流側の開口に向けて、空気の流れを変更するため、空気を貫通孔にスムースに流入させることができる。
【0018】
(6)前記ダクトは、前記円筒部の下流側に室内側に向かって突出形成され、前記延出部が上流側から当接する第1ストッパ部を有している(4)項または(5)項に記載の空気吹出構造。
【0019】
この構成の空気吹出構造は、第1ストッパ部によって回動フィンの一方側への回転範囲を規定することができる。
【0020】
(7)前記回動フィンは、前記室外側部の下流側に、外周面が前記回転軸を中心とする円弧状をなす円弧形成部を有している(3)項から(6)項のいずれか一項に記載の空気吹出構造。
【0021】
この構成の空気吹出構造は、この室側側部における下流側の部分は、吹出口の口縁に近接することになり、その吹出口の口縁との間の隙間を一定にすることができ、回動フィンの回転位置によらず、余計な隙間が生じないようになっている。
【0022】
(8)前記回動フィンは、周方向における前記延出部と前記円弧形成部との間に、前記円弧形成部の外周面より前記回転軸側に窪んだ凹所を有しており、
前記ダクトは、前記凹所に入り込んで、前記円弧形成部が下流側から当接する第2ストッパ部を有している(7)項に記載の空気吹出構造。
【0023】
この構成の空気吹出構造は、第2ストッパ部によって回動フィンの他方側への回転範囲を規定することができる。
【0024】
(9)前記壁面部は、乗物としての車両の天井の意匠面を形成する天井材である(1)項から(8)項のいずれか一項に記載の空気吹出構造。
【0025】
車両は、空調装置の吹出口がインストゥルメントパネルに設けられる場合が多く、車室内の温度が前方側と後方側とで温度差が生じやすい。そこで、近年では、天井に後方側の座席に向けて、空気を送風するための装置が設けられる場合がある。本願に開示の空気吹出構造は、その天井に設けられる空気の吹出口に好適である。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、乗物室内の意匠性を確保しつつ、空気の吹出方向を調整可能な空気吹出構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】本発明の空気吹出構造が採用された実施形態の送風装置を備える車両の天井を車室内から視た斜視図
【
図4】吹出口ユニットを車室内から視た斜視図(風向が後方に向いている状態)
【
図5】
図4に示した状態において吹出口ユニットのハウジング内部を示す斜視図
【
図6】
図4に示した状態における吹出口ユニットの側面断面図
【
図7】吹出口ユニットを車室内から視た斜視図(風向が下方に向いている状態)
【
図8】
図7に示した状態において吹出口ユニットのハウジング内部を示す斜視図
【
図9】
図7に示した状態における吹出口ユニットの側面断面図
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明の空気吹出構造は、乗物である車両(自動車)10の送風装置12に採用されている。具体的には、
図1に示すように、送風装置12は、室内前方側の空気を室内後方側に送るべく、車両10の天井に設けられており、その送風装置12の吹出口14に、本発明の空気吹出構造が採用されている。以下、
図1から
図9を参照しつつ、この送風装置12について説明しつつ、本発明の空気吹出構造について説明することとする。なお、図面の一部には、符号Fr,Rr,L,R,U,Dを用いて方向を示しており、それぞれ、車両10の前方側,後方側,車幅方向における左側,右側,上側,下側を表している。
【0029】
送風装置12は、
図2に示すように、車体の天井部分を構成するルーフパネル15と、そのルーフパネル15の室内内側を覆うルーフトリム(天井材)16との間に設けられている。そして、
図1および
図2に示すように、ルーフトリム16に取り付けられたカバー18に形成された吸入口18aから車室前方側の空気を吸いこんで、ルーフトリム16におけるカバー18の後方側に形成された一対の吹出口14から空気を放出する。
【0030】
送風装置12は、
図3に示すように、吸入口18aから空気を吸い込むための送風ファン20と、送風ファン20が吸い込んだ空気を後方の吹出口14まで送るエアダクト(空気流路)22と、からなる。エアダクト22は、送風ファン20が吸い込んだ空気を清浄する空気清浄ユニット24と、空気清浄ユニット24の後端に接続されたダクト部材26と、二股に分かれたダクト部材26の一対の後端26aに接続された一対の吹出口ユニット30と、を主体として構成される。
【0031】
空気清浄ユニット24は、詳しい説明は省略するが、送風ファン20から送り出された空気を、光触媒作用を利用して臭い成分等を分解したり、菌やウイルス等の微生物を殺菌したりするとともに、空気をフィルタによって空気をろ過する構成のものである。そして、空気清浄ユニット24で清浄された空気が、下流側(後方側)に送られる。ダクト部材26は、ルーフトリム16の裏面(上面)に沿う形で固定されることで、ダクト部材26とルーフトリム16の室外側面との間に、エアダクト22の一部が形成されている。そのダクト部材26とルーフトリム16で形成されたエアダクト22に、空気清浄ユニット24で清浄された空気が、吹出口14に向かって送られる。
【0032】
そして、一対の吹出口ユニット30が有する吹出口14から、車室内の左右の後部座席側に向かって、空気が吹き出される。本実施形態の送風装置12において、本発明の空気吹出構造は、この吹出口ユニット30に採用されている。吹出口ユニット30は、
図4から
図9に示すように、吹出口14を有するベゼル32と、吹出口14から吹き出される風向を変更する回動フィン34と、回動フィン34を収容してエアダクト22の下流側の端部を形成するハウジング36と、を含んで構成される。
【0033】
ベゼル32は、
図4,
図7に示すように、ルーフトリム16に形成された矩形状の開口16aの周縁を覆うもので、ほぼ中央に細長状(帯状)の吹出口14が形成されており、概して矩形の枠状の部材である。このベゼル32は、複数の掛止部40と爪部42と(
図5,
図6等参照)によって、ルーフトリム16の開口16aの室内側の口縁を覆うように、室内側から取り付けられる。
【0034】
ハウジング36は、ルーフトリム16の裏面(室外画面)に接する状態で配される板状のベース50と、そのベース50に取り付けられてベース50との間で中空状をなすハウジング本体52と、からなる。ベース50は、ルーフトリム16の開口16aとほぼ同寸法形状の開口50aを有しており、その開口50aとルーフトリム16の開口16aとが一致するように配される。そして、それら開口16a,50aに上述したベゼル32が取り付けられる。具体的には、ベゼル32は、掛止部40と爪部42とが、開口16a,50aから挿入されて、ベース50の開口50aの口縁に係合している。つまり、ベース50とベゼル32とは、ルーフトリム16を挟持する状態で固定されている。
【0035】
一方、
図3に示すように、ハウジング本体52は、概して箱状でベース50との間でエアダクト22を形成するダクト部54と、ダクト部54の外縁から外側に張り出したフランジ部56と、を有する。ハウジング本体52は、ダクト部54においてベース50の開口50aを覆う位置で、フランジ部56がベース50の周縁に接する状態で固定されることで、ダクト部54とベース50との間にエアダクト22が形成される。なお、ダクト部54は、上流側(前方側)に開口しており、その開口に取り付けられた連結部材58によってダクト部材26と連結されている。
【0036】
回動フィン34は、
図5,6等に示すように、車幅方向、換言すれば、エアダクト22の延びる方向に直交する方向に長い回転体60と、その回転体60の両側面(車幅方向における両側面)から外側に向かって突出形成された一対の軸部62と、を有している。そして、回動フィン34は、ハウジング本体52のダクト部54内に収容されている。具体的には、ダクト部54は、一対の側壁部に嵌合孔が形成されており、その嵌合孔に対して、回動フィン34の一対の軸部62が軸線まわりに回転可能に嵌合している。それにより、回動フィン34は、ハウジング本体52内に一対の軸部62を中心として回動可能に保持されている。そして、回動フィン34を保持したハウジング本体52がベース50に取り付けられると、回動フィン34は、その下端が吹出口14から室内側に突出する状態となる。ちなみに、
図5および
図8においては、ハウジング本体52を図示していないが、回動フィン34を、そのハウジング本体52に保持された位置において示している。
【0037】
回動フィン34の回転体60は、延設方向に延びてその延設方向に直交する方向に貫通する長孔(貫通孔)70が形成されている。長孔70は、
図6および
図9に示すように、貫通方向において一定の内寸L1で貫通形成されており、内部に、延設方向に一定間隔で複数のフィン72が設けられている。つまり、長孔70は、エアダクト22内の空気を吹出口14に向かって案内するものとなっている。この回動フィン34は、乗員が室内側に突出した部分を押さえて一対の軸部62(回転軸A)まわりに回転させることで、長孔70の向きが変更される。詳しく言えば、長孔70の貫通方向のルーフトリム16の板面に対してなす角度が変更され、吹出口14から吹き出される風向が変更される構成となっている。
【0038】
なお、この回転体60の回転軸Aは、一対の軸部62を結んだ直線が相当する。そして、
図6および
図9に示すように、長孔70は、この回転軸Aに対して、室内側にずれた位置において貫通形成されている。詳しく言えば、長孔70の径方向における中央が、回転軸Aと交わらず、径方向外側(室内側)に位置している。これにより、回転体60の長孔70より径方向外側(室内側)の部分である室内側部74は、長孔70の径方向における中央が回転軸Aと交わる場合に比較して、小さくすることができる。つまり、回転体60の室内側への突出量を抑えることができ、吹出口ユニット30を目立たせない構成となっている。
【0039】
また、この室内側部74は、回転軸Aを中心とする概して円柱状をなしている。これにより、
図6および
図9に示すように、回動フィン34がいずれの回転位置にある場合においても、室内側部74と、吹出口14の口縁のうちエアダクト22の上流側に位置する部分である上流側口縁14aとの間の隙間が一定に保たれ、その隙間を常時小さくすることができる。つまり、その隙間からの空気の漏れを抑えることができる。
【0040】
回転体60において、長孔70より室外側の部分である室外側部76には、室内側部74に対向する壁面を有して長孔70の室外側面を形成する長孔形成部78と、その長孔形成部78の上流側の端部から延び出した上流側延出部80と、長孔形成部78の下流側の端部から延び出した下流側延出部82とを有している。上流側延出部80は、上流側に向かって延び出しており、室内側部74の上流側の端部より上流側に延び出した形状となっている。この上流側延出部80は、上流側に向かうほど広がる形状、詳しく言えば、上流側に向かうほど室外側に向かって傾斜する形状とされている。その上流側延出部80によって、長孔70に空気を案内し易い構造となっている。
【0041】
一方、下流側延出部82は、回転軸Aを中心とする円筒形状をなしており、外周面が回転軸Aを中心とする円弧状をなす円弧形成部に相当する。この下流側延出部82は、吹出口14の口縁のうち下流側に位置する部分である下流側口縁14bに近接している。しかしながら、外周面が回転軸Aを中心とする円弧状をなしているため、
図6および
図9に示すように、回動フィン34がいずれの回転位置にある場合においても、下流側延出部82と吹出口14の下流側口縁14bとの間の隙間が一定に保たれ、その隙間を常時小さくすることができる。つまり、その隙間からの空気の漏れを抑えることができる。なお、この下流側延出部82の外周面の回転軸Aからの距離(半径)と、上述した室内側部74の外周面の回転軸Aからの距離(半径)とは、同じ程度とされている。
【0042】
また、室外側部76には、回転軸Aの延びる方向に一定間隔で、複数のリブ84が立設している。複数のリブ84は、長孔70の貫通方向に延び、上流側延出部80の内面から下流側延出部82の内面に連結している。また、複数のリブ84は、回転軸A側に窪んだ形状をなしており、回動フィン34は、
図6および
図9に示すように、回転軸Aの延びる方向からの視点において、円弧形成部としての下流側延出部82の外周面より窪んだ凹所86を有していると考えることができる。
【0043】
この回動フィン34を保持しているハウジング本体52は、回動フィン34の上流側延出部80の先端に対向する壁面を形成する部分が、回動フィン34の回転軸Aを中心とする円筒形状をなす円筒壁面部(円筒部)90とされている。それにより、この円筒壁面部90と回動フィン34との隙間は、回動フィン34の回転位置に依らず一定となり、エアダクト22を流れてきた空気が、回動フィン34の室外側部76の背面側にほぼ入り込まないようになっている。
【0044】
また、ハウジング本体52(詳しく言えば、ダクト部54)は、円筒壁面部90の下流側の端部から、下方(室内側)に向かって突出する立壁部92と、その立壁部92の下端から概して水平に後方に向かって延び、下方を向く天面を形成する天面部94と、を有している。つまり、これら立壁部92および天面部94は、回動フィン34の凹所86に入り込んだ構造となっている。そして、立壁部92は、
図9に示すように、回動フィン34を、上流側延出部80を上方側に位置させる方向(
図9において右回り)に回転させた場合、つまり、長孔70の下流側(風向)が下方に向くように回転させた場合に、上流側延出部80および複数のリブ84の上流側部分84aが上流側から当接し、回動フィン34のそれ以上の回転が規制される。つまり、立壁部92は、回動フィン34の一方側への回転範囲を規定する第1ストッパ部として機能する。一方、天面部94は、
図6に示すように、回動フィン34を、下流側延出部82を上方側に位置させる方向(
図6において左回り)に回転させた場合、つまり、長孔70の下流側(風向)が後方に向くように回転させた場合に、下流側延出部82および複数のリブ84の下流側部分84bが下方から当接し、回動フィン34のそれ以上の回転が規制される。つまり、天面部94は、回動フィン34の他方側への回転範囲を規定する第2ストッパ部として機能する。
【0045】
図9に示すように、ハウジング本体52は、円筒壁面部90の上流側に、下流側に向かって上昇傾斜する傾斜壁面部96を有している。また、ベース50における傾斜壁面部96の下方に位置する部分には、傾斜壁面部96とほぼ同じ傾斜角度で上昇傾斜するガイド部98が形成されている。これら傾斜壁面部96およびガイド部98によって、内部を流れる空気をルーフトリム16から離間させる方向(室外側あるいは上方側)に案内される。つまり、回動フィン34が
図9に示すように長孔70の上流側が上方に位置している場合であっても、傾斜壁面部96およびガイド部98によって、長孔70に向かって空気が案内され、スムースに空気を流すことができる。一方、回動フィン34が
図6に示すように長孔70の上流側が下方に位置している場合であっても、上方側延出部80が、上流側ほど上方に向かって傾斜する形状とされているため、傾斜壁面部96およびガイド部98によって上方側を向いて空気を、スムースに長孔70内に案内できるようになっている。
【0046】
以上のように、本実施形態における吹出口ユニット30は、車室の意匠面をなす板状の壁面部(ルーフトリム16とベゼル32によって形成されている)に開口形成された細長状の吹出口14と、壁面部の室外側に配されて空気を吹出口14に案内するエアダクト22を形成するダクトとしてのハウジング36と、吹出口14に平行に延び、外周面の一部が吹出口14から室内側に突出した状態でハウジング36内に回動可能に配され、ハウジング36内の空気を、自身に形成された貫通孔である長孔70を通して吹出口14に案内する回動フィン34と、を備え、長孔70は、回動フィン34の回転軸Aから室内側にずれた位置において回転軸Aに対して交差する方向に貫通していることを特徴としている。
【0047】
このような構成により、本実施形態の空気吹出構造を持つ吹出口ユニット30は、長孔70が回転軸Aより室内側にオフセットした位置に貫通形成されていることによって、前述したように室内側への突出量が小さな構造で、かつ、
図6に示すように風向をルーフトリム16の壁面部に沿う方向に近づけても、長孔70から吹き出された空気が、吹出口14の口縁に接触してしまうような事態を回避することができる。
【0048】
上記実施形態の空気吹出構造は、車両の天井に設けられていたが、それに限定されず、例えば側壁や床上等、車室内の天井以外の個所に設ける事も可能である。さらに言えば、本発明の空気吹出構造は、自動車の空気吹出構造に限定されず、自動車以外の乗物の空気吹出構造に用いることもできる。
【符号の説明】
【0049】
12…送風装置、14…吹出口、16…ルーフトリム〔天井材,壁面部〕、22…エアダクト〔空気流路〕、30…吹出口ユニット〔空気吹出構造〕、32…ベゼル〔壁面部〕、34…回動フィン、36…ハウジング〔ダクト〕、62…軸部〔回転軸A〕、70…長孔〔貫通孔〕、74…室内側部、76…室外側部、80…上流側延出部〔延出部〕、82…下流側延出部〔円弧形成部〕、86…凹所、90…円筒壁面部〔円筒部〕、92…立壁部〔第1ストッパ部〕、94…天面部〔第2ストッパ部〕、98…ガイド部