(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024136500
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】弾性クローラ
(51)【国際特許分類】
B62D 55/24 20060101AFI20240927BHJP
【FI】
B62D55/24
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023047634
(22)【出願日】2023-03-24
(71)【出願人】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】弁理士法人有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】福島 康晴
(57)【要約】
【課題】生産性に優れた弾性クローラ8の提供。
【解決手段】弾性クローラ8は、
A:無端形状であって、内周面18及び外周面20を有しており、弾性を有するメインベルト10、
B:周方向に沿って並んでおり、かつ、それぞれが内周面18から突出する複数の駆動突起12、
C:周方向に沿って並んでおり、かつ、それぞれが外周面20から突出する複数の第一ラグ14、
並びに
D:周方向に沿って並んでおり、それぞれが外周面20から突出しており、かつ、その左右方向長さが第一ラグ14の左右方向長さよりも小さい複数の第二ラグ16
を有している。周方向において、それぞれの駆動突起12の中心位置は、いずれの第一ラグ14の中心位置ともオーバーラップせず、かついずれの第二ラグ16の中心位置ともオーバーラップしない。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
A:無端形状であって、内周面及び外周面を有しており、弾性を有するメインベルト、
B:周方向に沿って並んでおり、かつ、それぞれが上記内周面から突出する複数の駆動突起、
C:周方向に沿って並んでおり、かつ、それぞれが上記外周面から突出する複数の第一ラグ、
並びに
D:周方向に沿って並んでおり、それぞれが上記外周面から突出しており、かつ、その左右方向長さが上記第一ラグの左右方向長さよりも小さい複数の第二ラグ
を備えており、
周方向において、それぞれの駆動突起の中心位置が、いずれの第一ラグの中心位置ともオーバーラップせず、かついずれの第二ラグの中心位置ともオーバーラップしない、弾性クローラ。
【請求項2】
上記第一ラグの周方向の中心位置が、軸方向に沿って変動する、請求項1に記載の弾性クローラ。
【請求項3】
上記第二ラグの周方向の中心位置が、軸方向に沿って変動する、請求項1又は2に記載の弾性クローラ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書は、弾性クローラを開示する。詳細には、本明細書は、2種類のラグと駆動突起とを有する弾性クローラを開示する。
【背景技術】
【0002】
除雪機は、弾性クローラを有している。従来の弾性クローラが、特開2006-248470公報に開示されている。この弾性クローラは、無端形状を有するゴムベルトと、このゴムベルトの内周面から突出する駆動突起と、このゴムの外周面から突出するラグとを有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の弾性クローラでは、駆動突起の周方向位置とラグの周方向位置とが一致する箇所が存在する。この箇所は、クローラが得られるためのゴムの架橋反応の、律速となる。このクローラのための架橋時間は、長い。このクローラは、生産性に劣る。
【0005】
本出願人の意図するところは、生産性に優れた弾性クローラの提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本明細書が開示する弾性クローラは、
A:無端形状であって、内周面及び外周面を有しており、弾性を有するメインベルト、
B:周方向に沿って並んでおり、かつ、それぞれが上記内周面から突出する複数の駆動突起、
C:周方向に沿って並んでおり、かつ、それぞれが上記外周面から突出する複数の第一ラグ、
並びに
D:周方向に沿って並んでおり、それぞれが上記外周面から突出しており、かつ、その左右方向長さが上記第一ラグの左右方向長さよりも小さい複数の第二ラグ
を有する。このクローラでは、周方向において、それぞれの駆動突起の中心位置が、いずれの第一ラグの中心位置ともオーバーラップせず、かついずれの第二ラグの中心位置ともオーバーラップしない。
【発明の効果】
【0007】
この弾性クローラは、短時間の架橋にて製造されうる。このクローラは、生産性に優れる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、一実施形態に係る弾性クローラが駆動輪及び従動輪と共に示された模式的側面図である。
【
図2】
図2は、
図1の弾性クローラの一部が示された拡大側面図である。
【
図6】
図6は、他の実施形態に係る弾性クローラが示された側面図である。
【
図8】
図8は、
図7の弾性クローラの一部が示された拡大底面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、適宜図面が参照されつつ、好ましい実施形態が詳細に説明される。
【0010】
図1に、走行装置2が示されている。この走行装置2は、駆動輪4、従動輪6及び弾性クローラ8を有している。クローラ8は、駆動輪4と従動輪6との間に巻き掛けられている。この走行装置2は、図示されない駆動手段(エンジン等)を有している。この駆動手段により、駆動輪4が回転させられる。駆動輪4の回転により、クローラ8が回転する。クローラ8の回転により、装置2が走行する。典型的な走行装置2として、除雪機が挙げられる。
【0011】
図2-5に、弾性クローラ8が示されている。これらの図面において、矢印Xは左右方向を表し、矢印Yは前後方向を表し、矢印Zは厚み方向を表す。左右方向Xは、駆動輪4の軸方向でもある。前後方向は、クローラ8の周方向でもある。
図1-5に示されるように、このクローラ8は、メインベルト10、複数の駆動突起12、複数の第一ラグ14(メインラグ)、複数の第二ラグ16(サブラグ)及び抗張体17を有している。クローラ8が、他のラグを有してもよい。
【0012】
図1に示されるように、メインベルト10は、無端形状を有する。このメインベルト10は、内周面18及び外周面20を有している。
図3-5に示されるように、メインベルト10は、一対の外縁22をさらに有している。
図4において矢印Wmは、メインベルト10の幅を表す。幅Wmは、左側の外縁22から右側の外縁22までの距離である。メインベルト10の幅Wmは、クローラ8の幅でもある。一般的な弾性クローラ8の幅Wmは、100mm以上600mm以下である。メインベルト10は、弾性材料から形成されている。メインベルト10の典型的な材質は、架橋されたゴム組成物である。
【0013】
図2から明らかなように、それぞれの駆動突起12は、メインベルト10の内周面18から突出している。
図3に示されるように、複数の駆動突起12が、周方向に沿って並んでいる。これらの駆動突起12は、左側列I及び右側列IIを形成している。左側列Iでは、複数の駆動突起12が、周方向に沿って等ピッチで並んでいる。右側列IIでは、複数の駆動突起12が、周方向に沿って等ピッチで並んでいる。本実施形態では、左側列Iに属する駆動突起12の周方向位置は、右側列IIに属する駆動突起12の周方向位置と一致している。左側列Iに属する駆動突起12と、右側列IIに属する駆動突起12とは、離間している。右側列IIに属する駆動突起12は、左側列Iに属する駆動突起12の形状とは、鏡面対象な形状を有している。
【0014】
図2に示されるように、駆動突起12は、ピーク面24と、一対の斜面26とを有している。本実施形態では、ピーク面24は曲面である。ピーク面24が平面であってもよい。それぞれの斜面26は、ピーク面24からメインベルト10まで延びている。
【0015】
駆動突起12は、弾性材料から形成されている。駆動突起12の典型的な材質は、架橋されたゴム組成物である。本実施形態では、駆動突起12は、メインベルト10と一体である。従って、駆動突起12の材質は、メインベルト10の材質と同じである。
【0016】
図2から明らかなように、それぞれの第一ラグ14は、メインベルト10の外周面20から突出している。
図4に示されるように、複数の第一ラグ14が、周方向に沿って並んでいる。本実施形態では、これらの第一ラグ14は、等ピッチで並んでいる。第一ラグ14のピッチは、駆動突起12のピッチと同じである。第一ラグ14のピッチが、駆動突起12のピッチと異なってもよい。第一ラグ14は、中心線CLに対して対称な形状を有している。
【0017】
図2に示されるように、第一ラグ14は、ピーク面28と、一対の斜面30とを有している。本実施形態では、ピーク面28は平面である。ピーク面28が曲面であってもよい。それぞれの斜面30は、ピーク面28からメインベルト10まで延びている。
【0018】
第一ラグ14の典型的な材質は、架橋されたゴム組成物である。本実施形態では、第一ラグ14は、メインベルト10と一体である。従って、第一ラグ14の材質は、メインベルト10の材質と同じである。
【0019】
図2から明らかなように、それぞれの第二ラグ16は、メインベルト10の外周面20から突出している。
図4に示されるように、複数の第二ラグ16が、周方向に沿って並んでいる。本実施形態では、これらの第二ラグ16は、等ピッチで並んでいる。第二ラグ16のピッチは、駆動突起12のピッチと同じである。第二ラグ16のピッチが、駆動突起12のピッチと異なってもよい。それぞれの第二ラグ16は、第一ラグ14と隣接している。本実施形態では、複数の第一ラグ14と複数の第二ラグ16とが、周方向に沿って交互に配置されている。第二ラグ16は、中心線CLに対して対称な形状を有している。左右方向Xにおいて、第二ラグ16の長さは、第一ラグ14の長さよりも小さい。
【0020】
図2に示されるように、第二ラグ16は、ピーク面32と、一対の斜面34とを有している。本実施形態では、ピーク面32は平面である。ピーク面32が曲面であってもよい。それぞれの斜面34は、ピーク面32からメインベルト10まで延びている。
【0021】
第二ラグ16の典型的な材質は、架橋されたゴム組成物である。本実施形態では、第二ラグ16は、メインベルト10と一体である。従って、第二ラグ16の材質は、メインベルト10の材質と同じである。
【0022】
図5に示されるように、抗張体17は、メインベルト10に埋設されている。抗張体17は、複数のコード36を有している。これらのコード36は、左右方向に並列している。それぞれのコード36は、前後方向に延在している。このコード36は、メインベルト10の過剰な伸張を抑制しうる。コード36の典型的な材質は、スチール、ステンレススチール等の金属である。コード36が、有機繊維から形成されてもよい。抗張体17を含まない弾性クローラ8を、装置2が有してもよい。織布である抗張体17を、クローラ8が有してもよい。このクローラ8は、メインベルト10に埋設された、コード36以外の金属部品(例えば芯金)を、含んでいない。
【0023】
図5には、駆動輪4も示されている。この駆動突起12は、ディスク38と複数のピン40とを有している。ディスク38が回転することで、ピン40が駆動突起12に当接しうる。このピン40が駆動突起12を押すことで、エンジンの駆動力がクローラ8に伝達される。この伝達によりクローラ8が回転し、さらに転動輪が回転する。クローラ8の回転によって第一ラグ14及び第二ラグ16が地面を押し、牽引力が発生する。この牽引力により、走行装置2が前進する。
【0024】
図2において、符号Spは駆動突起12の中心位置を通過する線分を表し、符号S1は第一ラグ14の中心位置を通過する線分を表し、符号S2は第二ラグ16の中心位置を通過する線分を表す。線分Spは、駆動突起12のピーク面24の前後方向中心を通過する。線分S1は、第一ラグ14のピーク面28の前後方向中心を通過する。線分S2は、第二ラグ16のピーク面32の前後方向中心を通過する。これらの線分は、それぞれ、厚み方向Zに延びている。線分Spの周方向位置は、線分S1のそれと異なっている。さらに、線分Spの周方向位置は、線分S2のそれと異なっている。クローラ8の全周に渡り、線分Spの周方向位置が線分S1のそれと一致する箇所はなく、線分Spの周方向位置が線分S2のそれと一致する箇所もない。換言すれば、周方向において、それぞれの駆動突起12の中心位置は、いずれの第一ラグ14の中心位置ともオーバーラップしておらず、かついずれの第二ラグ16の中心位置ともオーバーラップしていない。
【0025】
この弾性クローラ8の製造では、予備成形体が、モールドのキャビティに投入される。この予備成形体の主な材質は、未架橋のゴム組成物である。この予備成形体は、キャビティ面からの熱伝導により、昇温する。この昇温によりゴム分子が架橋反応を起こし、クローラ8が得られる。
【0026】
駆動突起12の周方向位置は、クローラ8において、ゴムボリュームが多い箇所である。第一ラグ14の周方向位置は、クローラ8において、ゴムボリュームが多い箇所である。第二ラグ16の周方向位置は、クローラ8において、ゴムボリュームが多い箇所である。ゴムボリュームが多い箇所には、モールドからの熱が伝導しにくい。ゴムボリュームが多い箇所は、架橋反応の律速となり得る。前述の通り、それぞれの駆動突起12の中心位置は、いずれの第一ラグ14の中心位置ともオーバーラップしておらず、かついずれの第二ラグ16の中心位置ともオーバーラップしていない。換言すれば、このクローラ8のための予備成形体では、熱が伝導しにくい箇所が、分散している。このクローラ8のための架橋時間は、短くて足りうる。このクローラ8では、架橋密度のバラツキが小さい。
【0027】
図2において、矢印L1は駆動突起12の中心位置と第一ラグ14の中心位置との周方向距離を表し、矢印L2は駆動突起12の中心位置と第二ラグ16の中心位置との周方向距離を表す。熱が伝導しにくい箇所の分散の観点から、距離L1と距離L2との比(L1/L2)は、1/9以上9/1以下が好ましい。この比(L1/L2)は3/7以上がより好ましく、4/6以上が特に好ましい。この比(L1/L2)は7/3以下がより好ましく、6/4以下が特に好ましい。距離L1は5mm以上が好ましく、7mm以上がより好ましく、10mm以上が特に好ましい。距離L2は5mm以上が好ましく、7mm以上がより好ましく、10mm以上が特に好ましい。
【0028】
図6及び7に、他の実施形態に係る弾性クローラ42が示されている。このクローラ42は、メインベルト44、複数の駆動突起46、複数の第一ラグ48(メインラグ)、複数の第二ラグ50(サブラグ)を有している。クローラ42が、他のラグを有してもよい。このクローラ42の、第一ラグ48及び第二ラグ50を除く部位の仕様は、
図1-5に示された弾性クローラ8のそれらと同じである。従って、駆動突起46の形状及びパターンは、
図3に示された駆動突起12のそれらと同じである。
【0029】
図6から明らかなように、メインベルト44は、内周面52及び外周面54を有している。それぞれの第一ラグ48は、メインベルト44の外周面54から突出している。
図7に示されるように、複数の第一ラグ48が、周方向に沿って並んでいる。本実施形態では、これらの第一ラグ48は、等ピッチで並んでいる。第一ラグ48のピッチは、駆動突起46のピッチと同じである。第一ラグ48のピッチが、駆動突起46のピッチと異なってもよい。第一ラグ48は、中心線CLに対して対称な形状を有している。第一ラグ48は、中心線CLから外縁57に向かって後側(
図7の上側)へと向かっている。
【0030】
図6に示されるように、第一ラグ48は、ピーク面56と、一対の斜面58とを有している。本実施形態では、ピーク面56は平面である。ピーク面56が曲面であってもよい。それぞれの斜面58は、ピーク面56からメインベルト44まで延びている。
【0031】
第一ラグ48の典型的な材質は、架橋されたゴム組成物である。本実施形態では、第一ラグ48は、メインベルト44と一体である。従って、第一ラグ48の材質は、メインベルト44の材質と同じである。
【0032】
図6から明らかなように、それぞれの第二ラグ50は、メインベルト44の外周面54から突出している。
図7に示されるように、複数の第二ラグ50が、周方向に沿って並んでいる。本実施形態では、これらの第二ラグ50は、等ピッチで並んでいる。第二ラグ50のピッチは、駆動突起46のピッチと同じである。第二ラグ50のピッチが、駆動突起46のピッチと異なってもよい。それぞれの第二ラグ50は、第一ラグ48と隣接している。本実施形態では、複数の第一ラグ48と複数の第二ラグ50とが、周方向に沿って交互に配置されている。第二ラグ50は、中心線CLに対して対称な形状を有している。第二ラグ50は、中心線CLから外縁57に向かって後側(
図7の上側)へと向かっている。左右方向Xにおいて、第二ラグ50の長さは、第一ラグ48の長さよりも小さい。
【0033】
図6に示されるように、第二ラグ50は、ピーク面60と、一対の斜面62とを有している。本実施形態では、ピーク面60は平面である。ピーク面60が曲面であってもよい。それぞれの斜面62は、ピーク面60からメインベルト44まで延びている。
【0034】
第二ラグ50の典型的な材質は、架橋されたゴム組成物である。本実施形態では、第二ラグ50は、メインベルト44と一体である。従って、第二ラグ50の材質は、メインベルト44の材質と同じである。
【0035】
図8は、
図7の弾性クローラ42の一部が示された拡大底面図である。
図8には、第一ラグ48の、中心線CLよりも右にある部分のみが示されている。第一ラグ48の細部は省略されており、その輪郭のみが示されている。
図8には、第二ラグ50の、中心線CLよりも右にある部分のみが示されている。第二ラグ50の細部は省略されており、その輪郭のみが示されている。
図8には、左側列I(
図3参照)の駆動突起46が示されている。
図8では省略されているが、このクローラ42は、右側列IIの駆動突起46も有している。
図8では、透視されたときの駆動突起46の位置が、点線で示されている。
図8において、符号Spは駆動突起46のピーク面の前後方向中心を通過する線分を表す。
【0036】
図8において、符号S1aは左右方向中心CLにおける第一ラグ48のピーク面56の前後方向中心を通過する線分を表し、符号S1bは外縁57における第一ラグ48のピーク面56の前後方向中心を通過する線分を表す。第一ラグ48の前後方向中心位置は、左右方向中心CLから外縁57に向かって、後側(
図7の上側)へと向かう。線分S1aと線分S1bとに挟まれたゾーンZ1は、第一ラグ48の前後方向中心位置の変動ゾーンである。変動ゾーンZ1の周方向長さ(線分S1aと線分S1bとの距離)は、5mm以上が好ましい。この長さは、50mm以下が好ましい。
【0037】
図8において、符号S2aは左右方向中心CLにおける第二ラグ50のピーク面60の前後方向中心を通過する線分を表し、符号S2bは左右方向外側端における第二ラグ50のピーク面60の前後方向中心を通過する線分を表す。第二ラグ50の前後方向中心位置は、左右方向中心CLから外側端に向かって、後側(
図7の上側)へと向かう。線分S2aと線分S2bとに挟まれたゾーンZ2は、第二ラグ50の前後方向中心位置の変動ゾーンである。変動ゾーンZ2の周方向長さ(線分S2aと線分S2bとの距離)は、3mm以上が好ましい。この長さは、30mm以下が好ましい。
【0038】
線分Spの周方向位置は、第一ラグ48の変動ゾーンZ1(線分S1aと線分S1bとの間)に含まれていない。さらに、線分Spの周方向位置は、第二ラグ50の変動ゾーンZ2(線分S2aと線分S2bとの間)に含まれていない。クローラ42の全周に渡り、線分Spの周方向位置が第一ラグ48の変動ゾーンZ1に含まれる箇所はなく、線分Spの周方向位置が第二ラグ50の変動ゾーンZ2に含まれる箇所もない。換言すれば、それぞれの駆動突起46の中心位置は、いずれの第一ラグ48の中心位置ともオーバーラップしておらず、かついずれの第二ラグ50の中心位置ともオーバーラップしていない。
【0039】
このクローラ42のための予備成形体では、熱が伝導しにくい箇所が、分散している。このクローラ42のための架橋時間は、短くて足りうる。このクローラ42では、架橋密度のバラツキが小さい。
【0040】
図8において、矢印L1は駆動突起46の中心位置と第一ラグ48の変動ゾーンZ1との周方向距離を表し、矢印L2は駆動突起46の中心位置と第二ラグ50の変動ゾーンZ2との周方向距離を表す。熱が伝導しにくい箇所の分散の観点から、距離L1と距離L2との比(L1/L2)は、1/9以上9/1以下が好ましい。この比(L1/L2)は3/7以上がより好ましく、4/6以上が特に好ましい。この比(L1/L2)は7/3以下がより好ましく、6/4以下が特に好ましい。距離L1は5mm以上が好ましく、7mm以上がより好ましく、10mm以上が特に好ましい。距離L2は5mm以上が好ましく、7mm以上がより好ましく、10mm以上が特に好ましい。
【0041】
[開示項目]
以下の項目のそれぞれは、好ましい実施形態の開示である。
【0042】
[項目1]
A:無端形状であって、内周面及び外周面を有しており、弾性を有するメインベルト、
B:周方向に沿って並んでおり、かつ、それぞれが上記内周面から突出する複数の駆動突起、
C:周方向に沿って並んでおり、かつ、それぞれが上記外周面から突出する複数の第一ラグ、
並びに
D:周方向に沿って並んでおり、それぞれが上記外周面から突出しており、かつ、その左右方向長さが上記第一ラグの左右方向長さよりも小さい複数の第二ラグ
を備えており、
周方向において、それぞれの駆動突起の中心位置が、いずれの第一ラグの中心位置ともオーバーラップせず、かついずれの第二ラグの中心位置ともオーバーラップしない、弾性クローラ。
【0043】
[項目2]
上記第一ラグの周方向の中心位置が、軸方向に沿って変動する、項目1に記載の弾性クローラ。
【0044】
[項目3]
上記第二ラグの周方向の中心位置が、軸方向に沿って変動する、項目1又は2に記載の弾性クローラ。
【産業上の利用可能性】
【0045】
前述の弾性クローラは、種々の走行装置に適している。このクローラは特に、除雪機に適している。
【符号の説明】
【0046】
2・・・走行装置
4・・・駆動輪
6・・・従動輪
8・・・弾性クローラ
10・・・メインベルト
12・・・駆動突起
14・・・第一ラグ
16・・・第二ラグ
17・・・抗張体
18・・・内周面
20・・・外周面
22・・・外縁
24・・・駆動突起のピーク面
26・・・駆動突起の斜面
28・・・第一ラグのピーク面
30・・・第一ラグの斜面
32・・・第二ラグのピーク面
34・・・第二ラグの斜面
36・・・コード
38・・・ディスク
40・・・ピン
42・・・弾性クローラ
44・・・メインベルト
46・・・駆動突起
48・・・第一ラグ
50・・・第二ラグ
52・・・内周面
54・・・外周面
56・・・第一ラグのピーク面
57・・・外縁
58・・・第一ラグの斜面
60・・・第二ラグのピーク面
62・・・第二ラグの斜面