IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日揮触媒化成株式会社の特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024136502
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】二酸化炭素吸着剤
(51)【国際特許分類】
   B01J 20/18 20060101AFI20240927BHJP
【FI】
B01J20/18 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023047637
(22)【出願日】2023-03-24
(71)【出願人】
【識別番号】000190024
【氏名又は名称】日揮触媒化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】三津井 知宏
(72)【発明者】
【氏名】鈴鹿 泰宏
【テーマコード(参考)】
4G066
【Fターム(参考)】
4G066AA13B
4G066AA20B
4G066AA61B
4G066BA09
4G066BA20
4G066BA23
4G066BA25
4G066BA26
4G066BA36
4G066CA35
4G066DA03
4G066FA37
(57)【要約】
【課題】 二酸化炭素吸着量が多く、かつ低い温度での二酸化炭素保持率が高い二酸化炭素吸着剤を提供する。
【解決手段】 ゼオライトおよびアルミナ系粒子を含む二酸化炭素吸着剤成型体であって、アルミナ系粒子の含有量が、成型体100質量%に対して、5質量%以上30質量%以下の範囲にあり、アルミナ系粒子の表面にナトリウムが担持されており、アルミナ系粒子のナトリウム含有量が、アルミナ系粒子100質量%に対して、0.1質量%以上である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゼオライトおよびアルミナ系粒子を含む二酸化炭素吸着剤であって、
前記アルミナ系粒子の含有量が、前記成型体100質量%に対して、5質量%以上、30質量%以下の範囲にあり、
前記アルミナ系粒子の表面にナトリウムが担持されており、
前記アルミナ系粒子のナトリウム含有量が、アルミナ系粒子100質量%に対して、0.1質量%以上である、
二酸化炭素吸着剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二酸化炭素吸着剤に関する。
【背景技術】
【0002】
地球温暖化の原因の一つとして、温室効果ガスの排出が挙げられる。温室効果ガスとしては、二酸化炭素(CO)、メタン(CH)、フロン類(CFCs等)などが挙げられる。特に、温室効果ガスの代表格である二酸化炭素は、発電所や製鉄所、石油精製工場から多く排出されるので、二酸化炭素の排出量を低減する技術について関心が集まっている。一方、二酸化炭素の排出量を低減する技術とは別に、二酸化炭素を回収し貯留する技術(Carbon dioxide Capture and Storage:「CCS」)にも関心が集まっている。
【0003】
二酸化炭素を貯蔵するためには、まず二酸化炭素を媒体(例えば、排気ガスや大気等)から分離する必要がある。二酸化炭素の分離方法は、化学吸収法としてアルカリ溶液やアミン類の溶液に吸収させる方法(例えば、特許文献1)や、物理吸着法として吸着剤に吸着させて分離する方法(例えば、特許文献2)などが知られている。後者の方法においては、活性炭やゼオライトを含む吸着剤が使用されている。このような吸着剤を使用する方法では、温度および圧力を変動させる温度・圧力スイング法(PTSA法)、あるいは圧力のみを変動させる圧力スイング法(PSA法)により二酸化炭素の吸着除去が行なわれる。一般的には、低い温度及び高い圧力で吸着剤に二酸化炭素を吸着させ、吸着温度より高い温度及び低い圧力で二酸化炭素を吸着剤から脱着させて吸着剤を再生する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開WO2023/013397号公報
【特許文献2】特開2001-347123号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ゼオライトを用いた従来の二酸化炭素吸着剤では、低い温度では二酸化炭素の保持率が低くなるという課題があった。
【0006】
そこで、本発明は、二酸化炭素吸着量が多く、かつ低い温度での二酸化炭素保持率が高い二酸化炭素吸着剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、二酸化炭素吸着剤を構成するバインダー成分の一つであるアルミナ系粒子に着目した。具体的には、表面にナトリウムが担持されたアルミナ系粒子とゼオライトとを含む二酸化炭素吸着剤を用いることで、前記課題を解決できることを見出した。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、二酸化炭素吸着量が多く、かつ低い温度での二酸化炭素保持率が高い二酸化炭素吸着剤を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明は、二酸化炭素吸着剤に関する発明(以下、「本発明の吸着剤」ともいう。)を含む。以下、本発明の吸着剤について詳述する。
【0010】
[本発明の吸着剤]
本発明の吸着剤は、ゼオライトおよびアルミナ系粒子を含む成型体であって、前記アルミナ系粒子の含有量が、前記成型体100質量%に対して、5質量%以上、30質量%以下の範囲にあり、前記アルミナ系粒子の表面にナトリウムが担持されており、前記アルミナ系粒子のナトリウム含有量が、アルミナ系粒子100質量%に対して、0.1質量%以上である。
【0011】
従来の二酸化炭素吸着剤は、二酸化炭素を吸着する成分であるゼオライトの比率を少しでも高めることで、二酸化炭素の吸着量を増加させている。例えば、特許文献2では、ゼオライトの含有率を95%以上とすることが提案されている。これに対し、本発明の吸着剤は、ゼオライト以外の成分であるアルミナ系粒子を5質量%以上、30質量%以下の範囲で含む。さらに、前述のアルミナ系粒子として、当該粒子の表面にナトリウムが担持されたアルミナ系粒子を用いることで、二酸化炭素の吸着量および低い温度における二酸化炭素保持率(30℃における二酸化炭素保持率)を高めている。以下、本発明の吸着剤について、詳述する。
【0012】
本発明の吸着剤は、ゼオライトおよびアルミナ系粒子を含む成型体である。本発明の用途である二酸化炭素の吸着においては、リアクターに吸着剤を充填して、二酸化炭素を含むガスを流通して当該吸着剤と接触させることで、二酸化炭素を吸着剤に吸着させる。この時、吸着剤が粉末状であるとガスを流通しにくくなるので、成型体の吸着剤が用いられる。
【0013】
本発明の吸着剤は、ゼオライトを含む。ゼオライトは、結晶性の多孔質アルミのケイ酸塩の総称であって、その構造に由来する広い表面積を有している。このような特徴を利用して、ゼオライトは様々な物質の吸着または分離に使用されている。本発明の吸着剤においては、二酸化炭素を吸着する成分として使用される。
【0014】
本発明の吸着剤に含まれるゼオライトの構造コードは、A型(LTA)、チャバザイト(CHA)およびフォージャサイト(FAU)から選ばれる少なくとも1種であることが好ましく、FAUであることがより好ましい。FAUは、SiO/Alモル比によってさらに細かく分類され、SiO/Alモル比が4以上の場合はY型、SiO/Alモル比が4未満の場合は、X型に分類される。本発明においては、X型が好ましく、特にSiO/Alモル比が2以下のX型ゼオライトが特に好ましい。本発明の吸着剤は、このようなゼオライトを含むことで、二酸化炭素の吸着量と30℃における二酸化炭素保持率を高めている。
【0015】
本発明の吸着剤に含まれるゼオライトは、アルカリ金属またはアルカリ土類金属でイオン交換されたゼオライトであることが好ましい。ゼオライトは一般的にイオン交換サイトを有しており、当該サイトのイオン種によって細孔径が変化することが知られている。本発明の吸着剤においては、ナトリウム(Na)でイオン交換されたゼオライトであることが好ましい。このようにゼオライトにイオン交換されたアルカリ金属とアルミナ系粒子の表面のアルカリ金属とをそろえることで、二酸化炭素吸着量および30℃における二酸化炭素保持率をより高めることができる。
【0016】
本発明の吸着剤は、アルミナ系粒子を含む。本発明において、アルミナ系粒子は、アルミニウム(Al)を主成分とする無機酸化物粒子を指すものとする。本発明において、アルミナ系粒子は、成型体に含まれるゼオライトの粒子間隙を埋めるバインダーとしての機能を有している。アルミナ系粒子の具体例としては、酸化アルミニウム、アルミナ水和物等がある。本発明においては、アルミナ水和物であることが好ましい。アルミナ水和物の具体例としては、ベーマイト、擬ベーマイト、ギブサイト、バイヤライト等がある。本発明の吸着剤においては、ベーマイトまたは擬ベーマイトが好ましい。さらに、ベーマイトまたは擬ベーマイトの結晶子径は、25nm以下であることが好ましく、20nm以下であることがより好ましく、15nm以下であることが特に好ましい。結晶子径が小さいベーマイト、または擬ベーマイトを含むと、二酸化炭素吸着量および30℃における二酸化炭素保持率がさらに向上する。
【0017】
本発明の吸着剤に含まれるアルミナ系粒子の含有量は、成型体100質量%に対して、Al換算で、1質量%以上、30質量%以下であり、5質量%以上、30質量%以下であることが好ましく、5質量%以上、25質量%以下であることがより好ましい。アルミナ系粒子の含有量が前述の範囲にあると、二酸化炭素吸着量および30℃における二酸化炭素保持率がさらに向上する。
【0018】
本発明の吸着剤に含まれるアルミナ系粒子は、その表面にナトリウムが担持されている。本発明の吸着剤は、ゼオライトと共にこのようなアルミナ系粒子を含むことで、従来のゼオライトとバインダーとの組み合わせでは得られなかった二酸化炭素吸着量および30℃における二酸化炭素保持率が向上するという効果が得られる。
【0019】
アルミナ系粒子のナトリウム含有量は、アルミナ系粒子100質量%に対して、NaO換算で、0.1質量%以上であり、0.1質量%以上、15質量%以下の範囲にあることが好ましく、0.5質量%以上、10質量%以下の範囲にあることがより好ましい。アルミナ系粒子のナトリウム含有量が前述の範囲にあると、二酸化炭素吸着量および30℃における二酸化炭素保持率がさらに向上する。
【0020】
本発明の吸着剤に含まれるナトリウム含有量(ゼオライトにイオン交換されたナトリウム、アルミナ系粒子の表面に存在するナトリウム等、吸着剤に含まれるすべてのナトリウムの総量)は、成型体100質量%に対して、NaO換算で、0.01質量%以上であることが好ましく、1質量%以上、30質量%以下の範囲にあることがより好ましく、10質量%以上、25質量%以下の範囲にあることが特に好ましい。また、本発明の吸着剤は、Na以外のアルカリ金属の含有量が、成型体100質量%に対して、5質量%以下であることが好ましく、3質量%以下であることがより好ましく、1質量%以下であることが特に好ましい。さらに、本発明の吸着剤は、アルカリ土類金属の含有量が、成型体100質量%に対して、MeO(Me:アルカリ土類金属)換算で、5質量%以下であることが好ましく、3質量%以下であることがより好ましく、1質量%以下であることが特に好ましい。このように本発明の吸着剤に含まれるNa以外のアルカリ金属およびアルカリ土類金属の含有量が少なくなると、ナトリウムの効果がより際立ち、二酸化炭素吸着量および30℃における二酸化炭素保持率がさらに向上する。
【0021】
本発明の吸着剤に含まれるSiとAlとのモル比率(ゼオライトに含まれるSi、Al、アルミナ系粒子に含まれるAl等、吸着剤に含まれるすべてのSiとAlの総量に対するモル比率)は、SiO/Alモル比で、0.01以上、5以下の範囲にあることが好ましく、0.1以上、4以下の範囲にあることがより好ましく、0.5以上、3.5以下の範囲にあることが特に好ましい。
【0022】
本発明の吸着剤の比表面積は、400m/g以上、700m/g以下の範囲にあることが好ましく、400m/g以上、650m/g以下の範囲にあることがより好ましく、450m/g以上、650m/g以下の範囲にあることが特に好ましい。比表面積が前述の範囲にあると、二酸化炭素吸着量がさらに向上する。本発明における比表面積は、BET1点法により求められた比表面積を指すものとする。
【0023】
本発明の吸着剤の細孔容積は、0.20mL/g以上、0.60mL/g以下の範囲にあることが好ましく、0.20mL/g以上、0.55mL/gの範囲にあることがより好ましく、0.25mL/g以上、0.55mL/gの範囲にあることが特に好ましい。細孔容積が前述の範囲にあると、二酸化炭素吸着量がさらに向上する。本発明における細孔容積は、窒素吸着法により得られる吸着等温線から求められた細孔分布において、細孔直径が1nm~500nmの細孔容積の総量を指すものとする。
【0024】
本発明の吸着剤の平均細孔径は、3.0nm以上、7.0nm以下の範囲にあることが好ましく、3.5nm以上、6.5nm以下の範囲にあることがより好ましく、3.5nm以上、6.0nm以下の範囲にあることが特に好ましい。平均細孔径が前述の範囲にあると、二酸化炭素吸着量がさらに向上する。本発明における細孔容積は、窒素吸着法により得られる吸着等温線から求められた細孔分布における平均細孔径を指すものとする。
【0025】
本発明の吸着剤は、成型体であって、球状、柱状(円柱状や四つ葉状を含む)またはこれらに類する形状の成型体であることが好ましい。また、そのサイズ(吸着剤の外形で最小の長さ)は、0.5mm以上、6mm以下の範囲にあることが好ましく、1mm以上5mm以下の範囲にあることがより好ましく、3mm以上、5mm以下の範囲にあることが特に好ましい。このようなサイズに成型された本発明の吸着剤は、ガスを流通する際の圧力損失が低くなり、プロセス設計上好ましい。
【0026】
[本発明の吸着剤の製造方法]
本発明の吸着剤は、例えば、以下(1)~(3)工程を備えた製造方法を用いて調製することができる。
(1)アルミナ系粒子を調製するアルミナ系粒子調製工程
(2)前記アルミナ系粒子の表面にナトリウムを担持するナトリウム担持工程
(3)表面にナトリウムが担持された前記アルミナ系粒子とゼオライトとを混合して成型体を調製する成型工程
【0027】
以下、この製造方法を一例として本発明の吸着剤の製造方法(以下、「本発明の製造方法」ともいう。)を詳述するが、本発明の吸着剤の製造方法は、この製造方法のみに限定されない。
【0028】
本発明の製造方法は、アルミナ系粒子を調製する工程を含む。この工程では、酸化アルミニウム(Al)、ベーマイト(AlOOH)、水酸化アルミニウム(Al(OH))などのアルミナ系粒子を調製する。または、市販のアルミナ系粒子を購入してこの工程を代用することもできる。
【0029】
アルミナ系粒子を調製する方法は、公知の方法を使用することができる。例えば、アルミニウム塩(例えば硫酸アルミニウム)の水溶液と、中和剤(例えばアルミン酸ソーダ)の水溶液とをpH6~11の範囲で反応させることで、ベーマイトを調製することができる。このベーマイトを焼成することで、種々の結晶構造(例えば、ガンマ)を有する酸化アルミニウムを調製することもできる。
【0030】
本発明の製造方法は、ナトリウム担持工程を含む。この工程では、前述のアルミナ系粒子調製工程にて得られたアルミナ系粒子の表面にナトリウムを担持する。
【0031】
ナトリウムを担持する方法は、従来公知の方法を使用することができる。例えば、アルミナ系粒子にナトリウムを含む水溶液を噴霧担持する方法、アルミナ系粒子とナトリウムとを水溶液中で混合したあと水を除去する方法等を使用することができる。ナトリウムを含む水溶液は、ナトリウム塩を水に溶解して調製することができる。ナトリウム塩の具体例は、炭酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、塩化ナトリウム等がある。
【0032】
本発明の製造方法は、成型工程を含む。この工程では、前述のナトリウム担持工程で得られた表面にナトリウムが担持されたアルミナ系粒子とゼオライトとを混合して成型体を調製する。
【0033】
成型体を調整する方法は、従来公知の方法を使用することができる。例えば、アルミナ系粒子とゼオライトと溶媒とを混合して捏和物を調製し、この捏和物をペレット状に押出成型する方法、アルミナ系粒子とゼオライトとを乾式混合した後、ペレット状に圧縮成型する方法等を使用することができる。
【0034】
前述の方法で成型体に成型した後で、成型体に含まれる水等の溶媒を乾燥で除去してもよい。さらに、成型体を空気中で焼成すると、成型体の強度をより高めることができる。成型体を焼成する温度は400℃以上、650℃以下の範囲にあることが好ましい。焼成する温度が高すぎると、ゼオライトの結晶構造が壊れてしまい、二酸化炭素の吸着量が低下することがある。
【0035】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0036】
[測定方法ないし評価方法]
各種測定ないし評価は以下のように行った。
【0037】
[1]結晶構造および結晶子径(アルミナ系粒子)
アルミナ水和物微粒子のX線回折パターンは、株式会社リガク製MiniFlexにより測定した。測定条件は、操作軸を2θ/θとし、線源にCuKαを用い、連続式測定方法により、電圧を40kV、電流を15mAとし、開始角度:2θ=5°から終了角度:2θ=50°まで、サンプリング幅を0.02°とし、スキャン速度を10.0°/minとした。2θ=14.5°の(020)面に相当する回折ピークの半値幅からシェラー式より結晶子径を算出した。
【0038】
[2]組成(SiO/Alモル比、Na含有量、K含有量、Ca含有量)
測定試料3gを容量30mlの蓋付きジルコニアボールに採取して、加熱処理(200℃、20分)し、焼成(700℃、5分)した後、Na:2gおよびNaOH:1gを加えて15分間溶融した。さらに、HSO:25mlと水200mlを加えて溶解したのち、純水で500mlになるように希釈して試料とした。得られた試料について、誘導結合プラズマ(ICP)発光分光分析装置((株)島津製作所製、ICPS-8100、解析ソフトウェアICPS-8000)を用いて、各成分の含有量を酸化物(SiO2、Al2O3、Na2O、K2O、CaO)質量基準で測定した。
【0039】
[3]比表面積
測定試料を磁製ルツボ(B-2型)に約30mL採取し、600℃の温度で2時間加熱処理後、デシケータに入れて室温まで冷却し、測定用サンプルを得た。次に、このサンプルを1g取り、全自動表面積測定装置(湯浅アイオニクス社製、マルチソーブ12型)を用いて、試料の比表面積(m/g)をBET法にて測定した。
【0040】
[4]細孔容積および平均細孔径
マイクロトラック・ベル株式会社製のBELSORP-miniVer2.5.6により細孔容積と平均細孔径を測定した。具体的には、真空排気しながら500℃で2時間熱処理した測定試料に対して、窒素ガスを吸着させ、BJH法の相対圧力(P/P0=0.99)の脱着側等温線により細孔容積(ml/g)と平均細孔径(nm)を算出した。
【0041】
[5]二酸化炭素吸着量および30℃における二酸化炭素保持率
二酸化炭素吸着脱離試験は、マイクロトラック・ベル社製「BELCATII」を用いて行った。測定セル中に測定試料0.1gを入れ、毎分50mlのヘリウムガス流通下、400℃で1時間排気処理を行い、その後、温度を30℃にし、1時間二酸化炭素ガスを導入して吸着量を測定した。次いで、ヘリウムガスを1時間導入し、30℃で脱離する二酸化炭素量(X)を計測した後、30℃から毎分10℃で300℃まで昇温しながら温度上昇にともなって脱離する二酸化炭素量(Y)を計測した。
【0042】
30℃における二酸化炭素保持率(%)=(X/(X+Y))×100
[実施例1]
アルミナ系粒子の調製工程
アルミン酸ナトリウム水溶液(Al濃度換算で3質量%)12.7kgに、撹拌しながら濃度26質量%のグルコン酸ナトリウム水溶液500gを添加し、硫酸アルミニウム(Al濃度換算で1.5質量%)28kgを5分間かけて添加した。次いで、撹拌を停止し、60℃で90分間熟成を行った後、平板フィルターで濾過し、濃度1.5%のアンモニア水で洗浄した。得られた洗浄ケーキは純水と混合し、Alとして8.0質量%の懸濁液を調製した。この懸濁液を95℃に加温し、濃度10%の硝酸を添加してpH7.5に調整し、95℃に維持しながら5時間撹拌した。次いで、濃度20%の酢酸を添加してpH4.0に調整し、95℃に維持しながら5時間撹拌し、アルミナ水和物微粒子の懸濁液を得た。この懸濁液を35℃に調整した後、噴霧乾燥機で液滴として入口温度が250℃、出口温度が100℃の噴霧乾燥を行い、アルミナ系粒子を得た。
【0043】
ナトリウム担持工程
このアルミナ系粒子を純水と混合し、Alとして20.0質量%の懸濁液を調製した。次いで、Naの含有量がアルミナ系粒子100質量%に対してNaO換算で0.5質量%となるように炭酸水素ナトリウム粉末を添加し、30分間撹拌した。この懸濁液を噴霧乾燥機で液滴として入口温度が250℃、出口温度が100℃の噴霧乾燥を行い、アルミナ系粒子(1)を得た。このアルミナ系粒子(1)の性状を、前述の[1]、[2]に記載された測定方法を用いて分析した。その結果を表1に示す。
【0044】
成型工程
ゼオライトとして、SiO/Alモル比が2.7、Naの含有量がゼオライト100質量%に対してNaO換算で18.0質量%、比表面積が680m/gのフォージャサイト型ゼオライト(1)を準備した。このフォージャサイト型ゼオライト(1)85gと前述の工程で得られたアルミナ系粒子(1)23gと水40gとを混合して充分に混練し、押出成型機(ダイス穴径=2.3mmφ)にて押出成型した。次いで、120℃で24時間乾燥し、長さ約5mmにカットした後、600℃で2時間焼成して成型体を得た。この成型体の性状を、前述の[1]~[5]に記載された測定方法および評価方法を用いて分析した。その結果を表1に示す。
【0045】
[実施例2]
ナトリウム担持工程において、Naの含有量が、アルミナ系粒子100質量%に対してNaO換算で1.0質量%となるように炭酸水素ナトリウム粉末を添加したこと以外は実施例1と同様の方法でアルミナ系粒子(2)を得た。
【0046】
成型体の調製工程において、フォージャサイト型ゼオライト(1)を96g、アルミナ系粒子(1)を12g用いたこと以外は、実施例1と同様の方法で成型体を得た。この成型体の性状を、前述の[1]~[5]に記載された測定方法および評価方法を用いて分析した。その結果を表1に示す。
【0047】
[実施例3]
ナトリウム担持工程において、Naの含有量が、アルミナ系粒子100質量%に対してNaO換算で5.0質量%となるように炭酸水素ナトリウム粉末を添加したこと以外は実施例1と同様の方法でアルミナ系粒子(2)を得た。
【0048】
成型工程において、ゼオライトとして、SiO/Alモル比が3.5、Naの含有量がNaO換算で17.0質量%、比表面積が700m/gのフォージャサイト型ゼオライト(2)を準備したこと、フォージャサイト型ゼオライト(1)の代わりにフォージャサイト型ゼオライト(2)を用いたこと、アルミナ系粒子(1)の代わりにアルミナ系粒子(2)を用いたこと以外は、実施例1と同様の方法で成型体を得た。この成型体の性状を、前述の[1]~[5]に記載された測定方法および評価方法を用いて分析した。その結果を表1に示す。
【0049】
[実施例4]
ナトリウム担持工程において、Naの含有量がアルミナ系粒子100質量%に対してNaO換算で8.0質量%となるように炭酸水素ナトリウム粉末を添加したこと以外は、以外は実施例1と同様の方法でアルミナ系粒子(3)を得た。
【0050】
成型工程において、アルミナ系粒子(2)の代わりにアルミナ系粒子(3)を用いたこと以外は、実施例3と同様の方法で成型体を得た。この成型体の性状を、前述の[1]~[5]に記載された測定方法および評価方法を用いて分析した。その結果を表1に示す。
【0051】
[実施例5]
アルミナ系粒子調製工程
結晶子径が25nmのアルミナベーマイト粉末(品名;Catapal-200、Sasol社製)を準備した。
【0052】
ナトリウム担持工程
このアルミナベーマイト粉末と純水と混合し、Alとして20.0質量%の懸濁液を調製した。次いで、Naの含有量がアルミナベーマイト粉末100質量%に対してNaO換算で5.0質量%となるように炭酸水素ナトリウム粉末を添加し、30分間撹拌した。この懸濁液を噴霧乾燥機で液滴として入口温度が250℃、出口温度が100℃の噴霧乾燥を行い、アルミナ系粒子(4)を得た。
【0053】
成型工程において、アルミナ系粒子(2)の代わりにアルミナ系粒子(4)を用いたこと以外は、実施例3と同様の方法で成型体を得た。この成型体の性状を、前述の[1]~[5]に記載された測定方法および評価方法を用いて分析した。その結果を表1に示す。
【0054】
[比較例1]
ナトリウム担持工程を行わなかったこと以外は、実施例1と同様の方法でアルミナ系粒子(5)を得た。
成型工程において、アルミナ系粒子(2)の代わりにアルミナ系粒子(5)を用いたこと以外は、実施例3と同様の方法で成型体を得た。この成型体の性状を、前述の[1]~[5]に記載された測定方法および評価方法を用いて分析した。その結果を表1に示す。
【0055】
[比較例2]
成型工程において、ゼオライトとして、SiO/Alモル比が5.1、Naの含有量が、ゼオライト100質量%に対してNaO換算で4.1質量%、比表面積が640m/gのフォージャサイト型ゼオライト(3)を準備したこと、フォージャサイト型ゼオライト(1)の代わりにフォージャサイト型ゼオライト(3)を用いたこと以外は、比較例1と同様の方法で成型体を得た。この成型体の性状を、前述の[1]~[5]に記載された測定方法および評価方法を用いて分析した。その結果を表1に示す。
【0056】
[比較例3]
ナトリウム担持工程において、炭酸ナトリウム粉末の代わりに、Kの含有量がアルミナ系粒子100質量%に対してKO換算で5.0質量%となるように炭酸カリウム粉末を添加したこと以外は、実施例1と同様の方法でアルミナ系粒子(6)を得た。
【0057】
成型工程において、アルミナ系粒子(2)の代わりにアルミナ系粒子(6)を用いたこと以外は、実施例3と同様の方法で成型体を得た。この成型体の性状を、前述の[1]~[5]に記載された測定方法および評価方法を用いて分析した。その結果を表1に示す。アルカリ金属含有アルミナ水和物微粒子(5)の性状を表1に示す。
【0058】
[参考例]
ゼオライト成型体として、モレキュラシーブス5A(富士フィルム和光純薬製)を用いた。この成型体の性状を、前述の[1]~[5]に記載された測定方法および評価方法を用いて分析した。その結果を表1に示す。
【0059】
【表1】
【0060】
ナトリウム担持工程を経て得られたアルミナ系粒子(Na含有量5.0質量%)を含む実施例3の成型体と、ナトリウム担持工程を行わなかったアルミナ系粒子(Na含有量0.01質量%)を含む比較例1とを比較すると、その二酸化炭素量吸着量および30℃における二酸化炭素保持率は、いずれも実施例3>比較例1となった。また、実施例および比較例全体でみても、ナトリウム担持工程を経て得られたアルミナ系粒子を含む実施例1~5の成型体は、その二酸化炭素吸着量が0.6mmol/g以上かつ30℃における二酸化炭素保持率が40%以上であるのに対し、ナトリウム担持工程を行わなかったアルミナ系粒子を含む比較例1~4の成型体は、その両方を満たさない結果となった。したがって、表面にナトリウムが担持されたアルミナ系粒子を用いることで、二酸化炭素吸着量が多く、かつ低い温度での二酸化炭素保持率が高い二酸化炭素吸着剤が得られることが確認できた。また、カリウムを表面に担持したアルミナ系粒子(K含有量5.0質量%)を含む比較例3と比較しても、実施例3>比較例1となり、アルカリ金属の中でもナトリウムの効果が顕著であることが確認できた。さらに、市販のモレキュラーシーブ吸着剤(参考例)と比較しても、30℃における二酸化炭素保持率という点で実施例1~5の成型体が優れていることが確認できた。