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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024136504
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】架空線上のロープ牽引装置
(51)【国際特許分類】
   H02G 1/02 20060101AFI20240927BHJP
   B61B 7/06 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
H02G1/02
B61B7/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023047640
(22)【出願日】2023-03-24
(71)【出願人】
【識別番号】505268677
【氏名又は名称】株式会社九建
(71)【出願人】
【識別番号】000001890
【氏名又は名称】三和テッキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078950
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 忠
(72)【発明者】
【氏名】田中 隆浩
(72)【発明者】
【氏名】藤本 眞二
(72)【発明者】
【氏名】竹田 良太
【テーマコード(参考)】
5G352
【Fターム(参考)】
5G352AA01
5G352AA02
5G352AA08
5G352AH05
(57)【要約】
【課題】架空線上を自走して鉄塔間にロープを張り渡し、途上で走行不能となっても回収が容易なロープ牽引装置を提供する。
【解決手段】ロープ牽引装置1は、クローラ3と下部ローラ5とで架空線Wを挟持し、ロープRを引いて自走する。下部ローラ5は、フレーム2に枢支されたローラ支持部材6の回動で昇降する。ローラ支持部材6の回動による下部ローラRの昇降は、前部及び後部のローラ昇降操作機構7,8で操作する。モータ4とクローラ3及び下部ローラ5の間にクラッチ機構9が介設され、そのクラッチレバー91に、牽引するロープRが接続される。ロープ牽引装置1が走行不能となったら、ロープRを引いて所定値以上の張力をかけると、クラッチが切れクローラ3、下部ローラ5の回転抵抗が低減する。ロープRを引き戻せば、ロープ牽引装置1を牽引して回収できる。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
両側において鉄塔に支持された架空線上を一方の前記鉄塔から他方の前記鉄塔までロープを牽引して前進し、前記鉄塔間に前記ロープを張り渡すためのロープ牽引装置であって、
フレーム上に支持され前記架空線上を走行するモータ駆動のクローラと、
前記クローラの下方に位置し、前記クローラとの間に前記架空線を挟持し、前記モータの駆動で転動する下部ローラと、
後部において前記下部ローラを支持し、前部において前記フレーム上に枢支され、回動により前記下部ローラを前記架空線に圧接させる上位置と当該架空線から離れる下位置との間で昇降させるローラ支持部材と、
前記ローラ支持部材を回動させて前記下部ローラを昇降させるように前記フレーム上に支持されるローラ昇降操作機構と、
前記モータと前記クローラ及び前記下部ローラとの間介設され、牽引する前記ロープに所定値以上の張力がかかったとき伝動を遮断して前記クローラ及び前記下部ローラの回転抵抗を低減するクラッチ機構と、
前記フレーム上に支持され前記モータに電力を供給するバッテリとを具備し、
前記ローラ昇降操作機構は、前記フレームの前部において前記ローラの昇降を操作するための前部操作機構と、前記フレームの後部において前記ローラの昇降を操作するための後部操作機構とを具備し、
前記前部操作機構は、上部が前記ローラ支持部材の前部に固着され下方へ延出するローラ昇降レバーと、前記下部ローラが下位置にある回転角度位置で前記ローラ支持部材を保持し又は解放する拘束部材とを具備し、
前記後部操作機構は、前記フレームに前後方向に進退自在に支持され後方のローラ昇降ハンドルにより進退位置が調整されるスライド部材と、当該スライド部材と前記ローラ支持部材との間に介設される引きばねとを具備し、前記スライド部材の前後位置により前記引きばねを介して前記ローラ支持部材の回動を調整可能に設けられることを特徴とする架空線上のロープ牽引装置。
【請求項2】
前記フレームの前部に設けられ、他方の前記鉄塔側から前記架空線上を自走して接近する回収装置に連結可能な接続部をさらに具備することを特徴とする請求項1に記載の架空線上のロープ牽引装置。
【請求項3】
前記クラッチ機構は、一端側が前記フレームに所定の回転抵抗を持って枢支され、中間に前記ロープの係止部を有するクラッチレバーを具備し、前記ロープの張力による当該クラッチレバーの回転により前記伝動が切られるように構成されることを特徴とする請求項1又は2に記載の架空線上のロープ牽引装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、送電線等の架空線の延線作業において、既設架空線がある場合に、これに沿ってパイロットロープ等を牽引しながら走行する自走式のロープ牽引装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、送電線の延線作業において、既設電線がある場合、それに沿ってパイロットロープを牽引しながら走行する自走機を用いることが、特許文献1、2に記載されている。
特許文献1に記載の自走機は、本体と、本体両端に軸支され両鉄塔間の旧線に沿い転動可能な1対の駆動ホィールと、上端を本体に枢着された脚と、脚の下端で支持されたバッテリと、折曲基部が本体の一部に枢着され上端に旧線下面を押圧可能な押圧ホイールを軸支するレバーと、一端はレバー下端に係止され他端は定置ドラムに巻取られたパイロットロープと、本体に附設された駆動ホィール用制御器とからなる。
特許文献2には、延線すべき鉄塔の両側から、先端に自動連結機を有する2つの自走機を、ワイヤを牽引させつつ走行させ、鉄塔中間で2つの自走機を連結させ、これを一方の鉄塔に回収することにより、鉄塔間にワイヤを延線する延線方法と、当該自走機の構成が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開平2-85664号公報
【特許文献2】特開昭61-109407号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記従来のいずれの自走機とも異なる具体的構成であって、架空線を確実に挟持しながら架空線上を走行することができ、また万一、架空線上で走行不能となっても、牽引するロープの引き戻しにより、又は回収装置の牽引により確実に回収できる架空線上のロープ牽引装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
以下、添付図面の符号を参照して説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
上記課題を解決するための、本発明のロープ牽引装置1は、両側において鉄塔T1,T2に支持された架空線W上を一方の鉄塔T1から他方の鉄塔T2までロープRを牽引して前進し、両鉄塔T1,T2間にロープRを張り渡すためのロープ牽引装置であって、フレーム2上に支持され架空線W上を走行するモータ駆動のクローラ3と、当該クローラ3の下方に位置し、当該クローラ3との間に架空線Wを挟持し、モータ4の駆動で転動する下部ローラ5と、後部において下部ローラ5を支持し、前部においてフレーム2上に枢支され、回動により下部ローラ5を架空線Wに圧接させる上位置と架空線Wから離れる下位置との間で昇降させるローラ支持部材6と、当該ローラ支持部材6を回動させて下部ローラ5を昇降させるようにフレーム2上に支持されるローラ昇降操作機構7,8と、モータ4とクローラ3及び下部ローラ5との伝動部に介設され、牽引するロープRに所定値以上の張力がかかったとき伝動を遮断してクローラ3及び下部ローラ5の回転抵抗を低減するクラッチ機構9と、フレーム2上に支持されモータ4に電力を供給するバッテリとを具備する。ローラ昇降操作機構は、フレームの前部において下部ローラ5の昇降を操作するための前部操作機構7と、フレーム2の後部において下部ローラ5の昇降を操作するための後部操作機構8とを具備する。前部操作機構7は、上部がローラ支持部材6の前部に固着され、下方へ延出するローラ昇降レバー71と、下部ローラ5が下位置にある回転角度位置でローラ支持部材6を保持し又は解放する拘束部材72とを具備する。後部操作機構8は、フレーム2に前後方向に進退自在に支持され、後方のローラ昇降ハンドル81により進退位置が調整されるスライド部材82と、当該スライド部材82とローラ支持部材6との間に介設される引きばね83とを具備し、スライド部材82の前後位置により引きばね83を介してローラ支持部材6の後部の上下位置を調整可能に設けられる。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、クローラと下部ローラとで架空線を確実に挟持しながら架空線上を自走して鉄塔間にロープを張り渡すことができ、また万一、架空線上で走行不能となっても、牽引するロープの操作でモータとクローラ及び下部ローラとの接続を絶つことにより、牽引するロープの引き戻し又は回収装置による牽引時の走行抵抗を低減し、いずれかの鉄塔側において確実に回収できる架空線上のロープ牽引装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明に係るロープ牽引装置の正面図である。
図2図1のロープ牽引装置の一部を切欠した背面図である。
図3図1のロープ牽引装置の左側面図である。
図4図1のロープ牽引装置の右側面図である。
図5図1のロープ牽引装置の進行方向前方から見た斜視図である。
図6図1のロープ牽引装置の後方から見た斜視図である。
図7図1のロープ牽引装置の一部を切欠した前方から見た斜視図である。
図8図1のロープ牽引装置の一部を切欠した後方から見た斜視図である。
図9図1のロープ牽引装置を回収装置を用いて回収する方法を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
ロープ牽引装置1は、両側において鉄塔T1,T2に支持された架空線W上を一方の鉄塔T1から他方の鉄塔T2まで、例えばパイロットロープのようなロープRを牽引して自走前進し、鉄塔間にロープを張り渡すための装置である。
【0009】
ロープ牽引装置1は、架空線W上を当該架空線Wの延線方向前方へ走行するクローラ3を上部に具備する。クローラ3は、フレーム2の垂直部に、水平回転軸31、32で支持される前後一対のスプロケット33,34間に掛け回されるクローラチェーン35を具備する。
【0010】
フレーム2の垂直部に固定されたモータ4の回転は、図2によく示すように、垂直部の裏側において、出力軸41から、水平回転軸32、スプロケット33,34を経てクローラチェーン35に伝えられる。
【0011】
クローラ3の中央の下方に位置して、クローラ3との間に架空線Wを挟持して転動するように、下部ローラ5が設けられる。下部ローラ5は、ローラ支持部材であるブラケット6の後端部において水平回転軸51に固着される。モータ4の回転は、出力軸41から、伝動軸42、水平回転軸61、水平回転軸51を経て、下部ローラ5へ伝えられる。
【0012】
ブラケット6は、前端側において水平回転軸61でフレーム2の垂直部に枢支され、回動により下部ローラ5を架空線Wに圧接させる上位置と、架空線Wから離れる下位置との間で昇降させる。
【0013】
ブラケット6を回動操作して下部ローラ5を昇降させるための操作機構がフレーム2の前部と後部に設けられる。
【0014】
前部操作機構7は、ローラ昇降レバー71と、ブラケット6の拘束部材であるインデックスプランジャ72とを具備する。ローラ昇降レバー71は、上部がブラケット6の前端部に固着され、下方へ延出する。ローラ昇降レバー71を揺動させると、これと一体にブラケット6が水平回転軸61を中心に揺動する。インデックスプランジャ72は、下部ローラ5が下位置にあるブラケット6の回転角度位置で、フレーム2を貫通してピン孔6aに挿入されることでブラケット6を保持し、ピン孔6aから引き上げられることでブラケット6を解放する。
【0015】
後部操作機構8は、ローラ昇降ハンドル81と、スライド部材82と、引きばね83とを具備する。スライド部材82は、フレーム2に前後方向に進退自在に支持され、後方のローラ昇降ハンドル81の回転操作により進退位置が調整される。引きばね83は、スライド部材82の前端部とブラケット6のばね受け部62との間に介設される。ばね受け部62は、ブラケット6の枢支点である水平回転軸51より前方へ延出するようにブラケット6に固着される。したがって、ブラケット6は、引きばね83により、水平回転軸51を中心に、下部ローラ5を押し上げる方向に回転付勢される。
【0016】
ローラ昇降ハンドル81は、図示の実施態様においてノブボルトからなる。フレーム2に固定された支持板84を貫通するボルト部81aが、スライド部材82の後端に形成された起立片82aのねじ孔に螺挿されており、ローラ昇降ハンドル81の正逆回転により、スライド部材82が前後方向に進退する。ローラ昇降ハンドル81を反時計方向へ回転させると、スライド部材82が前進し、ブラケット6が、図7において反時計方向へ回動し、下部ローラ5が下がり、時計方向へ回転させると下部ローラ5が上昇する。
【0017】
前部操作機構7は、装置を架空線Wに装着する前に、クローラ3と下部ローラ5との間を解放しておくために操作する。インデックスプランジャ72を引き上げた状態で、ローラ昇降レバー71をばね83に抗して引き上げて、ブラケット6を回動させ、所定位置でインデックスプランジャ72をピン孔6aに落とし込んで、ブラケット6を固定する。
【0018】
モータ4とクローラ3及び下部ローラ5との間には、回転の伝達を入り切りするクラッチ機構9が設けられる。クラッチ機構9は、フレーム2の垂直部に所定の回転抵抗を持って水平回転自在に枢支されるクラッチレバー91を具備する。クラッチレバー91は、中間部にロープ係止部91aを具備し、ここに、牽引するロープRの先端が係止される。したがって、牽引するロープRに所定値以上の張力がかかったとき、モータ4はクローラ3及び下部ローラ5から切り離される。図示しないバッテリは、フレーム2の下部に収納される。
【0019】
フレーム2には、装置が架空線Wから脱落することを防止するために、クローラ3と下部ローラ5との間の開放部を閉じる開閉扉10が設けられる。
【0020】
このロープ牽引装置1を用いて架空線W上にロープRを張り渡す場合には、以下の手順で行う。下部ローラ5が下位にあって、クローラ3との間が開いており、インデックスプランジャ72が引き上げられている状態で、鉄塔T1上へロープ牽引装置1を吊り上げる。開閉扉10を開き、クローラ3を架空線W(例えば地線)上へ掛け、ロープ牽引装置1を架空線Wに支持し、開閉扉10を閉じる。装置の装着時に作業者側にあるローラ昇降ハンドル81を時計方向に回し、スライド部材82、引きばね83を介してブラケット6を回動させ、下部ローラ5を押し上げる。下部ローラ5は、クローラ3との間で架空線Wを弾性的に挟持する。クラッチレバー91にロープR(例えば電線延線用のパイロットロープ)を接続し、リモートコントローラ等によりモータ4を始動させる。ロープ牽引装置1は、ロープRを引き出しながら鉄塔T2に向かって前進する。ロープ牽引装置1が鉄塔T2に到達したら、モータ4を停止し、鉄塔T2上の作業者側にあるローラ昇降レバー71をばね83に抗して引き上げ、ブラケット6を回動させて下部ローラ5を引き下げる。所定位置でインデックスプランジャ72をピン孔6aに落とし込んで、ブラケット6を固定し、ロープ牽引装置1を架空線W上から取り外し、ロープRの張り渡しが完了する。
【0021】
ロープ牽引装置1が走行途上で何らかの理由で自走不能になった場合、牽引するロープRを鉄塔T2側から引くと、クラッチレバー91にロープRの自重負荷による以上の張力がかかるため、クラッチレバー91が回動し、モータ4とクローラ3及び下部ローラ5との接続が絶たれる。そのままロープRを鉄塔T1側へ引き戻せば、ロープ牽引装置1はロープRに牽引されて鉄塔T1側へ戻り、回収可能となる。
【0022】
図示の実施形態のロープ牽引装置1は、図9に示すような回収装置101を利用した回収方法にも対応できるように、フレーム2の前部に、回収装置101を連結するための接続部11が設けられる。接続部11は、例えば磁気吸着部として構成される。回収装置101には、接続部11に磁気吸着可能な磁気吸着部材102が設けられる。回収装置101は、他方の鉄塔T2側から架空線W上を自走して本ロープ牽引装置1に接近し、磁気吸着部材102を接続部11に接続し、鉄塔2側へ牽引することができる。牽引開始前に、鉄塔T1側からロープRを引いて、クラッチ9を中立位置にしておく。回収装置101には、牽引ロープロープ103が接続されており、鉄塔T2側からこれを引き戻すことで、モータを逆転させ、また必要に応じて牽引ロープをウィンチ等で牽引しながら、ロープ牽引装置1を鉄塔T2まで牽引して回収することができる。この方法によれば、ロープ牽引装置1の回収と、ロープRの張り渡しが同時に達成できる。
【符号の説明】
【0023】
1 ロープ牽引装置1
2 フレーム
3 クローラ
31 水平回転軸
32 水平回転軸
33 スプロケット
34 スプロケット
35 クローラチェーン
4 モータ
41 出力軸
42 伝動軸
5 下部ローラ
51 水平回転軸
6 ローラ支持部材(ブラケット)
6a ピン孔
61 水平回転軸
62 ばね受け部
7 前部操作機構
71 ローラ昇降レバー
72 インデックスプランジャ
8 後部操作機構
81 ローラ昇降ハンドル
81a ボルト部
82 スライド部材
82a 起立片
83 引きばね
84 支持板
9 クラッチ機構
91 クラッチレバー
91a ロープ係止部
10 開閉扉
11 接続部
12 スプロケット
13 チェーン
14 ラグ
101 回収装置
102 磁気吸着部材
103 牽引ロープロープ
T1 鉄塔
T2 鉄塔
R ロープ
W 架空線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9