(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024136527
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】蒸留装置
(51)【国際特許分類】
B01D 3/00 20060101AFI20240927BHJP
【FI】
B01D3/00 Z
【審査請求】有
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023047669
(22)【出願日】2023-03-24
(71)【出願人】
【識別番号】593167768
【氏名又は名称】大阪油化工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100186026
【弁理士】
【氏名又は名称】三原 研自
(74)【代理人】
【識別番号】100087343
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 智廣
(74)【代理人】
【識別番号】100108925
【弁理士】
【氏名又は名称】青谷 一雄
(72)【発明者】
【氏名】堀田 哲平
【テーマコード(参考)】
4D076
【Fターム(参考)】
4D076BB01
4D076BC02
4D076CA05
4D076CD22
4D076FA31
4D076FA34
4D076JA02
(57)【要約】 (修正有)
【課題】産業用(工業用)の蒸留装置であって、且つ車両等にて運搬可能で屋外や屋内の所望箇所に設置して直ちに稼働可能な蒸留装置を提供する。
【解決手段】蒸留対象物を蒸留する蒸留装置1において、運搬可能であり、搬送先で屋外又は屋内の所望箇所に設置される単一又は複数の蒸留装置筐体2と、単一又は複数の蒸留装置筐体の内部に分散して配置される蒸留装置を構成する複数の構成要素3であり、蒸留装置筐体の数に応じて所望の構成要素を任意に組み合わせて配置可能な蒸留装置構成要素と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
蒸留対象物を蒸留する蒸留装置において、
運搬可能であり、搬送先で屋外又は屋内の所望箇所に設置される単一又は複数の蒸留装置筐体と、
前記単一又は複数の蒸留装置筐体の内部に分散して配置される前記蒸留装置を構成する複数の構成要素であり、前記蒸留装置筐体の数に応じて所望の前記構成要素を任意に組み合わせて配置可能な蒸留装置構成要素と、
を備える蒸留装置。
【請求項2】
前記蒸留装置筐体は、車両又は船舶によって運搬可能なJIS規格又はISO規格を含む標準化された設計に基づく箱状の容器からなる請求項1に記載の蒸留装置。
【請求項3】
前記箱状の容器は、少なくとも1つの面の一部が開放可能である請求項2に記載の蒸留装置。
【請求項4】
前記蒸留装置構成要素は、
前記蒸留対象物が投入される蒸留釜と、
前記蒸留釜から気化した成分を凝集させる凝集器と、
前記凝集器により初期的に凝集された初期蒸留物を収容する第1の受器と、
前記凝集器により凝集された目的とする蒸留物を収容する第2の受器と、
を備える請求項1に記載の蒸留装置。
【請求項5】
前記蒸留釜、前記第1及び第2の受器のうち少なくとも一つは、鉛直方向に沿った外形寸法が水平方向に沿った外形寸法より小さく設定される請求項4に記載の蒸留装置。
【請求項6】
前記凝縮器は、前記蒸留装置筐体の内部に水平方向に沿って配置される請求項4に記載の蒸留装置。
【請求項7】
前記第2の受器は、前記蒸留釜と同一形状に形成されている請求項4に記載の蒸留装置。
【請求項8】
前記蒸留釜及び前記第2の受器は、前記蒸留装置筐体の内部において水平方向に沿って並列的に配置される請求項7に記載の蒸留装置。
【請求項9】
前記蒸溜装置は、前記蒸溜釜からの初期的な蒸留物を前記第1の受器で受ける第1の工程と、
前記蒸溜釜からの目的とする蒸留物を前記第2の受器で受ける第2の工程と、
前記蒸溜釜の残留物を当該蒸溜釜で回収する第3の工程と、
を備える請求項1に記載の蒸溜装置。
【請求項10】
前記蒸留装置筐体が複数存在する場合、前記複数の蒸留装置筐体は、水平方向又は鉛直方向に沿って隣接又は離間して配置される請求項1に記載の蒸留装置。
【請求項11】
前記蒸留装置構成要素のうち、目的とする蒸留物を収容する構成要素は、鉛直方向に沿った上部に位置する前記蒸留装置筐体に配置される請求項10に記載の蒸留装置。
【請求項12】
前記蒸留装置構成要素は、前記蒸留装置構成要素を稼働する稼働設備を備える請求項1に記載の蒸留装置。
【請求項13】
前記蒸留装置筐体が単一である場合、前記稼働設備は、前記蒸留装置筐体の内部において前記蒸留装置構成要素と隔壁により区画されている請求項12に記載の蒸留装置。
【請求項14】
前記稼働設備は、作業員が前記稼働設備を操作可能なスペースを有する請求項13に記載の蒸留装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、産業用(工業用)の蒸留装置であって、且つ運搬可能で屋外又は屋内の所望箇所に設置して稼働することが可能な蒸留装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、蒸留装置(プラント)は、当該蒸留装置で蒸留する蒸留対象物質の化学的性質や温度特性、あるいは蒸留装置に求められる蒸留精度、蒸留精製物の取得に要する時間、蒸留精製物の歩留まり、単位時間あたりに蒸留可能な蒸留対象物質の量などの様々な要因によって、蒸留釜の容量、気液接触部やコンデンサー部の長さなどが個別に設計され、所望の設置場所において施工されて完成する。
【0003】
しかしながら、近年、蒸留装置に対するユーザのニーズが多様化してきており、比較的小規模であっても設置や稼働を容易に行うことが可能な産業用の蒸留装置に対する要求が高まってきている。
【0004】
かかる蒸留装置は、1回の蒸留工程で蒸留可能な容量が比較的少量であっても、大規模な基礎工事や敷設工事などが不要であり、短期間のうちに設置して稼働可能な操作性に優れ利便性に富んだものとして位置付けられている。
【0005】
ところが、従来の蒸留装置は、大規模な基礎工事や敷設工事などが不要で運搬可能なものは、実験用の蒸留装置に限られ、産業用の蒸留装置に対する要求に答えることができないものであった。
【0006】
また、近年、SDGS(Sustainable Development Goals)として「持続可能な開発目標」に対する意識が高まってきており、小規模であっても産業廃棄物などを廃棄する際に環境に与える影響が問題視されてきている。そのため、外部環境に直接廃棄することが困難な物質であっても、蒸留装置によって蒸留処理することで有害な物質と分離して廃棄可能となる場合がある。
【0007】
また、多種多様なものを生産するにあたって、諸々の安全基準を満たしつつ、小規模であっても設置や稼働が容易な蒸留装置も必要とされてきている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、産業用(工業用)の蒸留装置であって、且つ車両等にて運搬可能で屋外や屋内の所望箇所に設置して直ちに稼働可能な蒸留装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1に記載された発明は、蒸留対象物を蒸留する蒸留装置において、
運搬可能であり、搬送先で屋外又は屋内の所望箇所に設置される単一又は複数の蒸留装置筐体と、
前記単一又は複数の蒸留装置筐体の内部に分散して配置される前記蒸留装置を構成する複数の構成要素であり、前記蒸留装置筐体の数に応じて所望の前記構成要素を任意に組み合わせて配置可能な蒸留装置構成要素と、
を備える蒸留装置である。
【0011】
請求項2に記載された発明は、前記蒸留装置筐体は、車両又は船舶によって運搬可能なJIS規格又はISO規格を含む標準化された設計に基づく箱状の容器からなる請求項1に記載の蒸留装置である。
【0012】
請求項3に記載された発明は、前記箱状の容器は、少なくとも1つの面の一部が開放可能である請求項2に記載の蒸留装置である。
【0013】
請求項4に記載された発明は、前記蒸留装置構成要素は、
前記蒸留対象物が投入される蒸留釜と、
前記蒸留釜から気化した成分を凝集させる凝集器と、
前記凝集器により初期的に凝集された初期蒸留物を収容する第1の受器と、
前記凝集器により凝集された目的とする蒸留物を収容する第2の受器と、
を備える請求項1に記載の蒸留装置である。
【0014】
請求項5に記載された発明は、前記蒸留釜、前記第1及び第2の受器のうち少なくとも一つは、鉛直方向に沿った外形寸法が水平方向に沿った外形寸法より小さく設定される請求項4に記載の蒸留装置である。
【0015】
請求項6に記載された発明は、前記凝縮器は、前記蒸留装置筐体の内部に水平方向に沿って配置される請求項4に記載の蒸留装置である。
【0016】
請求項7に記載された発明は、前記第2の受器は、前記蒸留釜と同一形状に形成されている請求項4に記載の蒸留装置である。
【0017】
請求項8に記載された発明は、前記蒸留釜及び前記第2の受器は、前記蒸留装置筐体の内部において水平方向に沿って並列的に配置される請求項7に記載の蒸留装置である。
【0018】
請求項9に記載された発明は、前記蒸留装置は、前記蒸留釜からの初期的な蒸留物を前記第1の受器で受ける第1の工程と、
前記蒸留釜からの目的とする蒸留物を前記第2の受器で受ける第2の工程と、
前記蒸留釜の残留物を当該蒸留釜で回収する第3の工程と、
を備える請求項1に記載の蒸留装置である。
【0019】
請求項10に記載された発明は、前記蒸留装置筐体が複数存在する場合、前記複数の蒸留装置筐体は、水平方向又は鉛直方向に沿って隣接又は離間して配置される請求項1に記載の蒸留装置である。
【0020】
請求項11に記載された発明は、前記蒸留装置構成要素のうち、目的とする蒸留物を収容する構成要素は、鉛直方向に沿った上部に位置する前記蒸留装置筐体に配置される請求項10に記載の蒸留装置である。
【0021】
請求項12に記載された発明は、前記蒸留装置構成要素は、前記蒸留装置構成要素を稼働する稼働設備を備える請求項1に記載の蒸留装置である。
【0022】
請求項13に記載された発明は、前記蒸留装置筐体が単一である場合、前記稼働設備は、前記蒸留装置筐体の内部において前記蒸留装置構成要素と隔壁により区画されている請求項12に記載の蒸留装置である。
【0023】
請求項14に記載された発明は、前記稼働設備は、作業員が前記稼働設備を操作可能なスペースを有する請求項13に記載の蒸留装置である。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、産業用(工業用)の蒸留装置であって、且つ車両等にて運搬可能で屋外や屋内の所望箇所に設置して直ちに稼働可能な蒸留装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】
図1は本実施の形態1に係る蒸留装置を示す正面構成図である。
【
図2】
図2は本実施の形態1に係る蒸留装置を示す平面構成図である。
【
図3】
図3は本実施の形態1に係る蒸留装置を示す左側面構成図である。
【
図4】
図4は本実施の形態1に係る蒸留装置を示す右側面構成図である。
【
図8】
図8は本実施の形態1に係る蒸留装置の配管を示す構成図である。
【
図9】
図9は本実施の形態2に係る蒸留装置を示す平面構成図である。
【
図10】
図10は本実施の形態2に係る蒸留装置の第1の蒸留モジュールを示す正面構成図である。
【
図11】
図11は本実施の形態2に係る蒸留装置の第2の蒸留モジュールを示す構成図である。
【
図12】
図12は本実施の形態2に係る蒸留装置の第1の蒸留モジュールを示す背面構成図である。
【
図13】
図13は本実施の形態2に係る蒸留装置の第1の蒸留モジュールを示す左側面構成図である。
【
図14】
図14は本実施の形態2に係る蒸留装置の第1及び第2の蒸留モジュールの配置例を示す概略構成図である。
【
図15】
図15は本実施の形態3に係る蒸留装置を示す正面構成図である。
【
図16】
図16は本実施の形態3に係る蒸留装置を示す平面構成図である。
【
図17】
図17は本実施の形態3に係る蒸留装置を示す左側面構成図である。
【
図18】
図18は本実施の形態3に係る蒸留装置の第1乃至第3の蒸留モジュールの配置例を示す概略構成図である。
【
図19】
図19は本実施の形態4に係る蒸留装置を示す概略構成図である。
【
図20】
図20は本実施の形態4に係る他の蒸留装置を示す概略構成図である。
【
図21】
図21は本実施の形態4に係る他の蒸留装置を示す概略構成図である。
【
図22】
図22は本実施の形態4に係る他の蒸留装置を示す概略構成図である。
【
図23】
図23は本実施の形態4に係る他の蒸留装置を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下に、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0027】
[実施の形態1]
図1乃至
図5は本発明の実施の形態1に係る蒸留装置を示す構成図であり、
図1は蒸留装置を示す開閉扉を開放した状態における正面構成図、
図2は蒸留装置を示す平面構成図、
図3は蒸留装置を示す左側面図、
図4は蒸留装置を示す右側面図、
図5は
図2のV-V線矢視図である。
【0028】
本実施の形態1に係る蒸留装置は、主として、当該蒸留装置を製造する専用の製造工場にて製造された後、車両等の運搬手段によって目的とする設置場所である蒸留装置を稼働する工場等まで搬送され、工場等の建屋の外部である屋外或いは建屋の内部である屋内に設置されて稼働するものである。
【0029】
本実施の形態1に係る蒸留装置1は、
図1乃至
図4に示すように、大別して、運搬可能であり、搬送先で屋外又は屋内の所望箇所に設置される単一又は複数の蒸留装置筐体2と、蒸留装置筐体2の内部に分散して配置される蒸留装置1を構成する複数の構成要素であり、蒸留装置筐体2の数に応じて所望の構成要素を任意に組み合わせて配置可能な蒸留装置構成要素3とを備える。
【0030】
本実施の形態1に係る蒸留装置1は、単一の蒸留装置筐体2を備えている。蒸留装置筐体2としては、例えば、車両や船舶等の運搬手段によって運搬可能なJIS規格又はISO規格を含む標準化された設計に基づく箱状の容器の一例としてのコンテナが用いられる。なお、蒸留装置筐体2は、JIS規格やISO規格のコンテナなどに代表される標準化された設計に基づいた箱状の容器であれば良く、JIS規格やISO規格は例示であり、JIS規格やISO規格のみではなく、国内及び海外の各種団体や企業等で統一した標準設計の容器も広く含むものである。
【0031】
国際標準化機構(ISO:International Organization for Standardization)では、輸送インフラの共通化を図り、輸送作業の効率化を担保するため、コンテナを規格化しており、ISO規格のコンテナは、その外寸(外形寸法)がコンテナを製造したメーカーにかかわらず同一の寸法となっている。ISO規格のコンテナには、20フィート、40フィートなど、複数サイズのものが用意されている。
【0032】
また、日本産業規格(JIS:Japanese Industrial Standards)のコンテナとしては、10フィート、12フィート、20フィート、40フィートなど各種サイズのものがある。本実施の形態1に係る蒸留装置筐体2は、JIS規格の12フィートのコンテナを採用している。
【0033】
蒸留装置筐体2は、外寸が12フィートのJIS規格のコンテナである縦Lが3658mm、横Wが2438mm、高さHが2591mmに設定されている。蒸留装置筐体2は、JIS規格の12フィートに適合したものに限定されるものではなく、10フィートや20フィートなど他の規格に適合したサイズのものであっても勿論良い。また、蒸留装置筐体2は、JIS規格やISO規格に適合したものであることが望ましいが、トレーラー等の運搬手段によって運搬可能なものであれば、必ずしもJIS規格やISO規格に適合しないサイズのものでも良い。
【0034】
蒸留装置筐体2は、
図1乃至
図4に示すように、その外観形状が、正面壁4及び背面壁5、左側壁6、右側壁7、天井壁8及び底壁9を有する水平方向に沿って長い直方体形状に形成されている。蒸留装置筐体2の底壁9を除く各壁4~8は、外側面を構成する鉄製の板金や内側面を構成する木製の板材などによって構成される。なお、底壁9は、蒸留装置筐体2の床面を構成する板金等を含み、床面を支持するフレーム10等により強化されており、他の各壁4~8より厚く形成されている。
【0035】
蒸留装置筐体2の底壁9以外の5つの壁4~8は、少なくとも1つの壁が観音開き等の扉構造によって全面又は一部が開放可能となっている。図示例では、蒸留装置筐体2の内部に配置される蒸留装置1を構成する蒸留装置構成要素3の設置容易性などを考慮して、例えば、
図2に示すように、蒸留装置筐体2の正面壁4と背面壁5の2つの壁が中央から左右に開閉可能な所謂観音開き構造の開閉扉4a,4b,5a,5bから構成されている。なお、蒸留装置筐体2の壁は、左側壁6や右側壁7等の他の壁が開閉可能に構成されていても勿論良い。また、蒸留装置筐体2の壁の開閉可能な構造は、開閉扉に限定されるものではなく、シャッター等の手段により上下や左右に開閉可能なものであっても良い。
【0036】
蒸留装置筐体2は、JIS規格の12フィートのコンテナからなる場合、外側面が鉄製の板金等からなり、内側面に必要に応じて木製の板材を張り付けることにより、屋外に設置された場合であっても雨風に対する対候性を有するのは勿論のこと、内部に作業者が入って所要の時間にわたり作業する場合においても、良好な居住性を備えている。
【0037】
なお、蒸留装置筐体2は、その左右の側壁6,7等に図示しない開閉窓や出入り可能なドア等、あるいは天井壁8の内面等に居住性を考慮した照明設備や換気設備などを有するものであっても良い。
【0038】
本実施の形態1に係る蒸留装置筐体2は、蒸留装置1が設置される設置場所である工場等の敷地内において、次のようにして設置される。
【0039】
まず、設置場所である工場等の敷地には、
図1に示すように、必要に応じて、蒸留装置1が設置される設置面GLに所定の面積及び所定の厚さにわたり図示しないコンクリートが打設される。また、設置場所である工場等の敷地には、砂利等が敷かれて平坦に整地され、蒸留装置筐体2の底壁9の四隅などに対応した位置に図示しない基台が設置される。
【0040】
そして、蒸留装置1は、設置場所である工場等の敷地へと搬送され、クレーン等により吊り上げられて所定の設置面GLに設置される。その後、蒸留装置1には、図示しない電源設備から電力が供給されるとともに、水道設備から給水されて稼働可能となる。
【0041】
本実施の形態1に係る蒸留装置1は、
図1に示すように、蒸留装置筐体2の内部に、蒸留装置1を構成する複数の構成要素であり、蒸留装置筐体2の数に応じて所望の構成要素を任意に組み合わせて配置可能な蒸留装置構成要素3が水平方向に沿って分散して配置される。ここで、「分散」とは、「ばらばらに散らばること、また、分けること。」を意味する(広辞苑第6版)。したがって、蒸留装置構成要素3は、そのすべてが水平方向に沿って分散して配置される必要はなく、蒸留装置構成要素3の一部が他の蒸留装置構成要素3に対して鉛直方向に沿った上下に配置されることを除外するものではない。
【0042】
従来、工業用の蒸留装置1は、蒸留釜や蒸留塔、あるいは受器などの蒸留装置構成要素を鉛直方向に沿って上下に集中して配置するのが通常であり、蒸留釜や蒸留塔、あるいは受器などを水平方向に沿って分散して配置することは行われていない。
【0043】
これに対して、本実施の形態1に係る蒸留装置1は、
図1乃至
図5に示すように、当該蒸留装置1を構成する複数の蒸留装置構成要素3として、蒸留対象物が投入される蒸留釜11と、蒸留釜11から気化した成分を取り出す短い蒸留塔12と、蒸留釜11から気化して蒸留塔12を通過した成分を凝集させる凝集器の一例としてのコンデンサー部13と、コンデンサー部13により初期的に凝集された初期蒸留物を収容する第1の受器14と、コンデンサー部13により凝集された目的とする蒸留物を収容する第2の受器15と、コンデンサー部13の先端部を真空ポンプによって負圧に吸引する際に当該コンデンサー部13で凝集しきれなかった気化物を回収する回収容器16を備えているが、これら複数の蒸留装置構成要素3は、従来の蒸留装置と異なり、鉛直方向に沿った上下に集中して配置されておらず、水平方向に沿って分散して配置されている。
【0044】
また、本実施の形態1に係る蒸留装置1では、蒸留釜11、第1及び第2の受器14,15のうち少なくとも一つは、水平方向に沿った外形寸法(幅又は長さ)が鉛直方向に沿った外形寸法(高さ)より大きく設定されている。
【0045】
また、コンデンサー部13は、蒸留装置筐体2の内部に水平方向に沿って配置されている。
【0046】
さらに、第2の受器15は蒸留釜11と、第1の受器14は回収容器16とそれぞれ同一形状に形成されており、蒸留装置構成要素3の共通化が図られている。
【0047】
本実施の形態1に係る蒸留装置1は、
図1に示すように、蒸留装置筐体2の内部が、水平方向に沿った中央を境として、図中左側に位置して複数の蒸留装置構成要素3が配置される第1の領域17と、蒸留装置1を稼働させる稼働設備が配置される第2の領域18とに隔壁19によって区画されている。隔壁19は、蒸留装置筐体2の第1の領域17の温度が上昇することを考慮すると、断熱性を有する材料からなるものが望ましい。
【0048】
蒸留装置筐体2は、上述したように、正面壁4と背面壁5の2つの壁が水平方向に沿った中央から左右に開閉可能な所謂観音開き構造の開閉扉4a,4b,5a,5bから構成されている。したがって、蒸留装置筐体2の第1の領域17及び第2の領域18は、開閉扉4a,5aと開閉扉4b,5bを個別に開閉することによって、それぞれ単独で開放又は閉塞した状態とすることができる。すなわち、蒸留装置筐体2は、開閉扉4b,5bを閉じた状態で開閉扉4a,5aを開閉することにより、第1の領域17のみを単独で開閉することが可能である。また、蒸留装置筐体2は、開閉扉4a,5aを閉じた状態で開閉扉4b,5bを開閉することにより、第2の領域18のみを単独で開閉することが可能である。
【0049】
蒸留釜11は、
図4乃至
図6に示すように、蒸留対象物を収容するチタンや、ニッケル、あるいはステンレスや銅等の熱伝導性かつ耐食性に優れた金属などからプレス加工や溶接加工等を施すことにより構成されている。蒸留釜11は、
図6に示すように、その長手方向に沿った中央部111aの断面形状が水平に配置した円筒を中心軸と平行に上下に切断した半円筒形状に形成されるとともに、長手方向に沿った両端部111bが球体を4分割した1/4球体状に形成された底部111と、底部111の上端縁から上方へ向けて全周にわたり断面長円形状に所定の高さに立ち上げた上端縁部112と、上端縁部112の上端に位置する長円形状の開口部を閉塞する蓋体状の上端部113とを有する略半円筒形状に形成されている。そのため、蒸留釜11は、水平方向に沿った外形寸法(長さ)L1が鉛直方向に沿った外形寸法(高さ)H1より大幅(約2倍)に大きく設定されている。蒸留釜11は、鉛直方向に沿った高さが制限されているJIS規格のコンテナからなる蒸留装置筐体2の内部に配置されるものである。そのため、蒸留釜11は、内部に所要量の蒸留対象物を収容可能とするにあたり、当該蒸留釜11の高さを高く設定して蒸留対象物の収容量を確保することが困難である。
【0050】
そこで、本実施の形態1における蒸留釜11は、水平方向に沿った外形寸法(長さ)L1を鉛直方向に沿った外形寸法(高さ)H1より大きく(L1>H1)設定することで、蒸留釜11の高さを制限しつつ蒸留対象物の収容量を確保することが可能となっている。本実施の形態1の蒸留釜11の容量は、例えば、200Lに設定されている。ただし、蒸留釜11の容量は、200Lに限定されるものではなく、200Lより多くても少なくても良いことは勿論である。
【0051】
蒸留釜11の上端部113には、
図2に示すように、蒸留対象物を投入する投入口114と、気化した蒸留対象物を取り出してコンデンサー部13へと送るため蒸留塔12と接続される取出口115と、蒸留対象物の液面を検知する図示しない液面センサを取り付ける取付口116と、蒸留釜11の内部に収容された蒸留対象物を加熱する加熱媒体の一例としての加熱蒸気等を導入する導入口117aと、加熱媒体を排出する排出口117bなどが設けられている。蒸留釜11の内部には、
図4及び
図5に示すように、導入口117aから導入される加熱蒸気等の熱媒体が流れる螺旋状の加熱用配管117cが収容されている。また、蒸留釜11の底部111には、
図4に示すように、蒸留対象物の温度を測定する温度計118と、蒸留釜11の内部に残留した残留物を排出する開閉可能な排出口119が設けられている。
【0052】
なお、蒸留釜11を加熱する加熱手段としては、加熱用配管117cから供給される加熱蒸気等に限らず、蒸留釜11を加熱することが可能な手段であれば任意であり、例えば、蒸留釜11が電磁誘導作用によって加熱可能な材料からなるものであれば、電磁誘導作用などによって蒸留釜11自体を直接加熱するものであっても良い。
【0053】
蒸留装置1の使用用途、つまり当該蒸留装置1で蒸留可能な蒸留対象物は、特に限定されるものではなく、様々な蒸留対象物に適用することができる。蒸留装置1の用途としては、例えば、溶剤回収、飲料水精製、蒸留酒製造、精油精製、廃油再生、廃プラスチックの油化など多種多用な用途が挙げられる。蒸留装置1は、使用用途に応じて蒸留釜11の加熱温度や加熱時間、コンデンサー部13の冷却温度や冷却時間などが個々に設定され管理されて、蒸留や精製などを行う蒸留対象物の蒸留工程が実施される。
【0054】
第2の受器15は、蒸留釜11と同一形状に形成されている。第2の受器15は、目的とする蒸留物を収容するチタンや、ニッケル、あるいはステンレス等の耐腐蝕性に優れた金属などからプレス加工や溶接加工等を施すことにより構成されている。第2の受器15は、
図6に括弧付きの符号で示すように、その中央部の断面形状が円筒を中心軸と平行に切断した半円筒形状に形成されるとともに、長手方向に沿った両端部が球体を4分割した1/4球体状に形成された底部151と、底部151の上端縁から上方へ向けて全周にわたり所定の高さに立ち上げた上端縁部152と、上端縁部152の上端に位置する長円形状の開口部を閉塞する蓋体状の上端部153とを有する略半円筒形状に形成されている。そのため、第2の受器15は、蒸留釜11と同様、水平方向に沿った外形寸法(長さ)L1が鉛直方向に沿った外形寸法(高さ)H1より大きく設定されている。第2の受器15は、鉛直方向に沿った高さが制限されているJIS規格のコンテナからなる蒸留装置筐体2の内部に配置されるものである。そのため、第2の受器15は、内部に所要量の蒸留対象物を収容可能とするにあたり、当該第2の受器15の高さを高く設定して蒸留精製物の収容量を確保することが困難である。
【0055】
そこで、本実施の形態1における第2の受器15は、水平方向に沿った外形寸法(長さ)L1を鉛直方向に沿った外形寸法(高さ)H1より大きく設定することで、高さを制限しつつ蒸留対象物の収容量を確保することが可能となっている。本実施の形態1の第2の受器15の容量は、例えば、200Lに設定されている。ただし、第2の受器15の容量は、200Lに限定されるものではなく、200Lより多くても少なくても良いことは勿論である。
【0056】
第2の受器15の上端部153には、
図3に示すように、コンデンサー部13から目的とする蒸留物が供給される供給口154と、第2の受器15の液面を検知する液面計155aが取り付けられる第1の取付口155と、第2の受器15内の圧力を検知する圧力計156aが取り付けられる第2の取付口156と、回収容器16を介して真空ポンプ34に接続される吸引口157とが設けられている。また、第2の受器15の底部151には、開閉バルブ158aを備えた取出口158が設けられている。
【0057】
蒸留釜11及び第2の受器15は、
図1乃至
図5に示すように、蒸留装置筐体2内の第1の領域17において、左側壁6と隔壁19との間であって背面壁5に近接した位置に同一の高さであって互いに平行となるよう並列的に配置されている。蒸留釜11及び第2の受器15は、その長手方向が第1の領域17の奥行方向と一致するよう配置されている。
【0058】
蒸留釜11及び第2の受器15は、
図3及び
図4に示すように、第1の領域17の床面に立脚された脚部21上に配置された平面矩形状の支持枠22に支持された状態で固定されている。蒸留釜11及び第2の受器15の底面の高さは、第1の領域17の鉛直方向に沿った高さの中央よりも上方に設定されており、当該蒸留釜11及び第2の受器15の下方には、図示しない200Lのドラム缶を立てた状態で収容可能な空間Gが設けられている。因みに、200Lのドラム缶の高さは、895mmである。
【0059】
このように、蒸留釜11及び第2の受器15の下部に200Lのドラム缶が収容可能な空間を設けることにより、蒸留釜11内の残留物や第2の受器15に収容された目的とする蒸留物をポンプ等を使用することなく重力の作用によって200Lのドラム缶等の収容容器に収容することが可能となる。
【0060】
一方、第1の受器14は、
図1及び
図3に示すように、ステンレス等の金属によって曲面形状の底部141を有し且つ上端部142が蓋体によって閉塞された略円筒形状に形成されている。第1の受器14の上端部142には、
図2に示すように、コンデンサー部13によって凝集された初期的な蒸留物を収容する開口部143や、液面センサ144を取り付ける取付部145などが設けられている。また、第1の受器14の底部141には、初期的な蒸留物を排出して回収する開閉可能な開閉バルブ146aを備えた排出口146が設けられている。
【0061】
第1の受器14は、
図1乃至
図5に示すように、蒸留装置筐体2内の第1の領域17において、第2の受器15の手前側の位置である左側壁6と正面壁4との間に位置する角部に配置されている。
【0062】
第1の受器14は、
図1に示すように、第1の領域17の床面に立脚された脚部23上に片持ち梁状に配置された支持腕24に支持され固定されている。第1の受器14の底面の高さは、蒸留釜11及び第2の受器15より低く設定されている。
【0063】
蒸留装置筐体2内の第1の領域17の上部には、蒸留釜11の取出口115に外径が相対的に大きく短い円筒形状の蒸留塔12が連結されている。蒸留塔12の上端部は、第1の領域17の天井部へ向けて垂直方向に配置されている。
【0064】
蒸留装置筐体2内の第1の領域17の上部には、蒸留塔12の上端部から第1の受器14にわたりコンデンサー部13が当該第1の領域17の対角線上に沿って水平に配置されている。このように、コンデンサー部13を第1の領域17の上部において対角線上に沿って水平に配置することにより、限られた第1の領域17のスペースにおいて可能な限り長尺なコンデンサー部13を設置することが可能となる。
【0065】
また、コンデンサー部13は、短い蒸留塔12を介して蒸留釜11と直接接続されることにより、蒸留釜11の内部の温度を所定の複数段階の温度に精度良く制御することにより、蒸留釜11から蒸発した気化直後の蒸留物を急激に冷却液化して、第1の受器14又は第2の受器15等で選択的に回収収容することにより、目的とする蒸留物を加熱エネルギーに対する目的とする蒸留物の量で決まる蒸留効率を可能な限り向上させることが可能となる。
【0066】
コンデンサー部13は、相対的に外径が大きな円筒形状の部材に形成されている。コンデンサー部13の長手方向に沿った両端部131,132は閉塞されており、閉塞された両端部131,132の間に位置する凝集部133には、加熱された蒸留釜11から気化した蒸留対象物である気体が流れる複数本の細い連通管134が、当該コンデンサー部13の長手方向に沿った両端部131,132を連通するよう配置されている。コンデンサー部13の凝集部133には、複数本の連通管134を通過する気体を冷却する冷却水などの冷却媒体が供給される。
【0067】
コンデンサー部13の一端部131は、蒸留釜11の取出口115に取り付けられた蒸留塔12の上端部が連結されている。また、コンデンサー部13の他端部132は、第1の受器14と第2の受器15とに分岐する配管25が連結されている。第1の受器14と第2の受器15との間には、コンデンサー部13の他端部からの蒸留物を分岐する全閉状態とすることが可能な電動の三方弁26が設けられている。コンデンサー部13の他端部から流出する蒸留物は、電動の三方弁26を切り替えることにより、配管27,28を介して第1の受器14と第2の受器15とに選択的に収容可能となっている。なお、コンデンサー部13の他端部132には、
図8に示すように、電動の三方弁26を閉塞することにより、コンデンサー部13からの蒸留物を試験的に取り出す開閉可能な補助排出口29が設けられている。
【0068】
蒸留装置筐体2内の第1の領域17において、第1の受器14と対向する正面壁4と隔壁19との角部には、回収容器16が配置されている。回収容器16は、第1の受器14と同一形状に形成され、部品の共通化が図られている。
【0069】
回収容器16は、
図1及び
図7に示すように、ステンレス等の金属によって曲面形状の底部161を有し且つ上端部162が蓋体によって閉塞された略円筒形状に形成されている。回収容器16の上端部162には、
図7に示すように、コンデンサー部13、第1の受器14及び第2の受器15にそれぞれ接続される吸気口163と、圧力計を取り付ける開口部164、冷却水が流入する流入口165、冷却水が流出する流出口166及び真空ポンプ34に接続される吸引口167などが設けられている。回収容器16の内部には、
図8に示すように、冷却水が流れる螺旋状の配管168が収容されている。また、回収容器16の底部161には、初期的な蒸留物を排出して回収する開閉バルブ169aにより開閉可能な排出口169が設けられている。
図4中、符号35は回収容器16で回収したドレインを収容するバケツを示している。
【0070】
回収容器16は、
図1乃至
図5に示すように、蒸留装置筐体2内の第1の領域17において、第2の受器15の手前側の位置である左側壁6と正面壁4との角部に配置されている。回収容器16は、第2の領域18に配置される真空ポンプ34に近接した位置に配置されており、吸引用の配管を可能な限り短くして吸引効率を高めている。
【0071】
回収容器16は、
図4に示すように、第1の領域17の床面に立脚された脚部29上に片持ち梁状に配置された支持腕30に支持され固定されている。回収容器16の底面の高さは、第1の受器14より低く設定されている。
【0072】
蒸留装置筐体2の第2の領域18には、
図1及び
図2に示すように、蒸留釜11に供給される加熱蒸気等の熱媒体を循環させる熱媒循環装置31と、熱媒循環装置31に冷却水を循環させる第1の冷却水循環装置32と、コンデンサー部13などに冷却水を循環させる第2の冷却水循環装置33と、真空ポンプ34等が収容されている。また、蒸留装置筐体2の第2の領域18には、蒸留装置1を操作する作業員Sが作業する作業スペース35が確保されている。
【0073】
なお、蒸留装置筐体2の第1の領域17にも、
図2に示すように、蒸留装置1を操作する作業員Sが作業する作業スペース36が第1の受器14と回収容器16との間に確保されている。
【0074】
図8は本実施の形態1に係る蒸留装置の配管系を示す構成図である。
【0075】
本実施の形態1に係る蒸留装置1は、
図8に示すように、蒸留釜11を備えている。蒸留釜11の上端部には、当該蒸留釜11の内部に蒸留対象物を投入する投入口114(
図2参照)が開口されているとともに、熱媒循環装置31から加熱蒸気等の熱媒体が供給される供給口117a及び熱媒循環装置31へ向けて加熱蒸気等の熱媒体を排出する排出口117bがそれぞれ接続されている。
【0076】
また、コンデンサー部13の一端部131には、温度計41が取り付けられているとともに、その他端部132には、圧力計42が取り付けられている。コンデンサー部13の凝集部133には、第2の冷却水循環装置33から冷却水が供給される供給バルブ43と、第2の冷却水循環装置33へと冷却水を帰還させる帰還バルブ44が取り付けられている。
【0077】
第2の受器15の上端部153には、コンデンサー部13から電動の三方弁26を介して目的とする蒸留物が導入される導入バルブ45と、第2の受器15の内部を回収容器16を介して真空ポンプ34に接続する接続バルブ46と、第2の受器15の内部の圧力を計測する圧力計156aが取り付けられている。
【0078】
一方、第1の受器14の上端部142には、コンデンサー部13から電動の三方弁26を介して目的とする初期的な蒸留物が導入される導入バルブ48と、第1の受器14の内部を回収容器16を介して真空ポンプ34に接続する接続バルブ49と、第1の受器14の内部の圧力を計測する圧力計50と、第1の受器14の内部における液面の高さを検知する液面計51が設けられている。
【0079】
さらに、回収容器16の上端部162には、第2の冷却水循環装置33から冷却水が供給される供給バルブ52と、第2の冷却水循環装置33へと冷却水を帰還させる帰還バルブ53と、回収容器16の内部の圧力を計測する圧力計54と、コンデンサー部13、第1の受器14及び第2の受器15の内部を回収容器16を介して真空ポンプ34に接続する逆止バルブ55~57と、回収容器16の内部を真空ポンプ34に接続する開閉バルブ58とが設けられている。
【0080】
また、蒸留装置筐体2内の第2の領域18には、各種設備機器を制御するとともに、各種の計測値が表示される制御パネル59が配置されている。
【0081】
<蒸留装置の作用>
ところで、本実施の形態1に係る蒸留装置では、次のようにして、産業用(工業用)の蒸留装置であって、且つ車両にて運搬可能で屋外の所望箇所に設置して直ちに稼働することが可能となっている。
【0082】
すなわち、本実施の形態1に係る蒸留装置1は、図示しない工場等の敷地に設置される以前に、
図1乃至
図5に示すように、当該蒸留装置1を製造する専用の製造工場において、JIS規格の12フィートのコンテナからなる蒸留装置筐体2の内部を、隔壁19によって第1の領域17と第2の領域18に区画し、蒸留装置筐体2の第1の領域17内には、蒸留釜11及び第2の受器15を装着するための脚部21や支持枠22が取り付けられるとともに、第1の受器14や回収容器16を装着するための脚部23や支持腕24などが取り付けられる。
【0083】
そして、蒸留装置1は、蒸留装置筐体2の第1の領域17の内部において、脚部21や支持枠22に蒸留釜11及び第2の受器15が装着されるとともに、脚部23や支持腕24に第1の受器14や回収容器16が装着される。さらに、蒸留釜11の上部から第1の受器14の上部にわたりコンデンサー部13が取り付けられる。その後、蒸留釜11、コンデンサー部13、第1の受器14及び第2の受器15が配管により接続される。
【0084】
一方、蒸留装置1は、蒸留装置筐体2の第2の領域18の内部において、熱媒循環装置31と、第1の冷却水循環装置32と、第2の冷却水循環装置33と、真空ポンプ34等が所定の位置に取り付けられる。
【0085】
その後、蒸留装置1は、第2の領域18の内部に配置された熱媒循環装置31と、第1の冷却水循環装置32と、第2の冷却水循環装置33と、真空ポンプ34等の設備機器と、第1の領域17の内部に配置された蒸留釜11、第2の受器15、第1の受器14及び回収容器16が各種配管やケーブルにより接続されて、当該蒸留装置1が専用の製造工場において完成される。
【0086】
完成された蒸留装置1は、蒸留装置筐体2が図示しないトレーラー等の運搬手段に搭載されて、当該蒸留装置1が稼働する工場等の設置場所へと搬送される。
【0087】
所定の設置場所へと搬送された蒸留装置1は、そのまま図示しないクレーン等によりトレーラー等の運搬手段の荷台から降ろされて、工場等の敷地内の屋外や屋内の稼働場所へと設置される。
【0088】
蒸留装置1には、外部から電力や水等が供給されて直ちに稼働可能と状態となる。
【0089】
蒸留装置1は、
図8に示すように、蒸留釜11の内部に蒸留対象物が投入された後、当該蒸留釜11の内部に投入された蒸留対象物を加熱用配管117cの内部に熱媒循環装置31から加熱蒸気等の加熱媒体を供給することにより加熱する。
【0090】
そして、蒸留釜11から気化した気化物質は、蒸留塔12を介してコンデンサー部13へと供給され、当該コンデンサー部13により冷却されて凝集される。コンデンサー部13からは、前駆蒸留物が取出管から取り出され、その物性が作業員Sにより確認される。そして、コンデンサー部13により凝集されて取り出された前駆蒸留物が初期蒸留物である場合は、電動の三方弁26を操作して初期蒸留物を第1の受器14へ収容する。
【0091】
次に、蒸留装置1は、蒸留釜11の加熱温度を第2の加熱温度へと上昇させる。そして、蒸留釜11から気化した気化物質が初期蒸留物ではなく、目的とする蒸留物であることを作業員Sが確認した後に、電動の三方弁26を操作して目的とする蒸留物を第2の受器15へと収容する。
【0092】
そして、蒸留装置1は、蒸留釜11の加熱温度を第2の加熱温度に維持した状態で、目的とする蒸留物を第2の受器15へと収容する工程を継続し、目的とする蒸留物の蒸留工程を終了する。
【0093】
なお、蒸留釜11の内部に最終的に残った残留物は、別途回収される。
【0094】
このように、本実施の形態1に係る蒸留装置1は、単一の蒸留装置筐体2と、当該単一の蒸留装置筐体2の内部に配置される蒸留装置構成要素3とを備え、蒸留装置1を構成する複数の構成要素である蒸留釜11、蒸留塔12,コンデンサー部13、第1の受器14、第2の受器15及び回収容器16からなる蒸留装置構成要素3を鉛直方向に沿った上下に集中して配置するのではなく、水平方向に沿って分散して配置することにより、当該蒸留装置構成要素3を単一の蒸留装置筐体2である高さ、長さ及び奥行方向に沿った長さの制限があるJIS規格の12フィートのコンテナの内部に収容可能としている。
【0095】
そのため、本実施の形態1に係る蒸留装置1は、すべての蒸留装置構成要素3が収容された単一の蒸留装置筐体2を、トレーラー等の運搬手段によって運搬することが可能であり、目的とする所定の屋外や屋内の所望箇所に設置して直ちに稼働することが可能となる。
【0096】
また、本実施の形態1に係る蒸留装置1は、蒸留釜11や第2の受器15として、水平方向に沿った外形寸法(幅又は長さ)が鉛直方向に沿った外形寸法(高さ)より大きく設定されたものを採用することにより、JIS規格の12フィートのコンテナという高さ制限のある蒸留装置筐体2の内部に蒸留釜11や第2の受器15を設置した場合においても、当該蒸留釜11や第2の受器15の容量を可能な限り大きく採ることが可能となり、運搬可能性や設置性を確保しつつも、出来る限りの蒸留装置1としての生産性を担保している。
【0097】
さらに、本実施の形態1に係る蒸留装置1は、蒸留釜11や第2の受器15、あるいは第1の受器14や回収容器16を共通化して使用することにより、独立した部品の部品点数を減少させることができ、コストダウン並びに蒸留装置構成要素3の設置場所である蒸留装置筐体2の内部のスペースを有効に活用することが可能となる。
【0098】
また、本実施の形態1に係る蒸留装置1は、蒸留装置筐体2の内部を第1の領域17と第2の領域18とに区画し、且つ第1の領域17に蒸留装置構成要素3を、第2の領域18に蒸留装置1を稼働させる稼働設備をそれぞれ配置しているので、蒸留装置1の小型化及び可搬性を確保しつつ、設置後に即時稼働することが可能な設置稼働性を確実なものとしている。
【0099】
実施の形態2
図9乃至
図13は本発明の実施の形態2に係る蒸留装置1を示す構成図である。なお、本実施の形態2では、前記実施の形態1に係る蒸留装置1と同一の部材には同一の符号を付している。
【0100】
本実施の形態2に係る蒸留装置1は、
図9乃至
図13に示すように、蒸留装置筐体2として単一の蒸留装置筐体2ではなく、第1及び第2からなる複数(図示例では、2つ)の蒸留装置筐体2
1,2
2を備えている。所要の蒸留装置構成要素3が収容された第1及び第2の蒸留装置筐体2
1,2
2を第1及び第2の蒸留モジュール61,62と称する。なお、第1及び第2の蒸留装置筐体2
1,2
2は、実施の形態1と同様、それぞれJIS規格の12フィートのコンテナから構成されている。第1及び第2の蒸留モジュール61,62は、水平方向に沿って隣接して配置される。
【0101】
ただし、第1及び第2の蒸留装置筐体2は、これに限らず、
図14に示すように、第1及び第2の蒸留モジュール61,62を鉛直方向に沿った上下に積み重ねた状態で配置しても良く、あるいは第1及び第2の蒸留モジュール61,62を水平方向に沿って距離を離して配置しても良い。第1及び第2の蒸留モジュール61,62を水平方向に沿って隣接して配置する場合においても、その長手方向に沿って配置する場合に限らず、その短手方向に沿って配置しても勿論良い。
【0102】
本実施の形態2に係る蒸留装置1では、第1の蒸留モジュール61の蒸留装置筐体21の内部に、蒸留装置構成要素3として、蒸留釜11と、蒸留塔12と、コンデンサー部13と、第1の受器14と、第2の受器15とを配置している。
【0103】
また、本実施の形態2に係る蒸留装置1では、第2の蒸留モジュール62の蒸留装置筐体22の内部に、蒸留装置構成要素3としての回収容器16と、蒸留設備として、熱媒循環装置31と、第1の冷却水循環装置32と、第2の冷却水循環装置33と、真空ポンプ34とが配置されている。
【0104】
さらに、本実施の形態2に係る蒸留装置1では、蒸留釜11と第2の受器15が同一形状に形成されておらず、蒸留釜11と第2の受器15は、異なる形状に形成されている。
【0105】
更に説明すると、本実施の形態2に係る蒸留装置1では、高さ制限のあるJIS規格の12フィートのコンテナからなる第1の蒸留装置筐体21の内部において、蒸留釜11は、蒸留対象物の液面の面積を大きくして蒸発効率を高めるため、実施の形態1と同一の形状に、ただし容量は、400Lで実施の形態1の2倍程度に設定している。
【0106】
一方、第2の受器15は、実施の形態1と異なり略円筒形状に形成して、且つ高さを高く設定して蒸留釜11と同様に400L程度の容量を確保している。
【0107】
また、本実施の形態2に係る蒸留装置1では、第1の受器14の形状が実施の形態1と異なり、蒸留釜11と相似形状であって且つ容量が大幅に小さく設定されている。コンデンサー部13は、第1の蒸留装置筐体21の内部において蒸留釜11から第2の受器15へ向けて対角線上に配置されている。
【0108】
本実施の形態2に係る蒸留装置1では、コンデンサー部13として実施の形態1より外径が大きく且つ長さが長く構成されており、コンデンサー部13としての凝集能力(単位時間当たりの蒸留物生成量)が高められている。
【0109】
本実施の形態2に係る蒸留装置1では、主たる蒸留装置構成要素3である蒸留釜11と、蒸留塔12と、コンデンサー部13と、第1の受器14と、第2の受器15とを、第1の蒸留モジュール61の蒸留装置筐体21の内部に分散させて配置することにより、蒸留釜11や第2の受器15等の本実施の形態1と比較した大容量化が可能となる。また、回収容器16は、蒸留設備である真空ポンプ34に近接して配置することにより、良好な吸引特性すなわちコンデンサー部13等の良好な減圧特性を得ることが可能となる。
【0110】
このように、本実施の形態2に係る蒸留装置1では、複数の蒸留装置筐体21,22を採用し、しかも蒸留装置構成要素3の一部である回収容器16を他の蒸留装置構成要素3とは別に第2の蒸留装置筐体22の内部に配置することにより、蒸留釜11や第2の受器15の大容量化を図って生産性を向上しつつ、蒸留装置1全体としての設置容易性並び稼働容易性を実現している。
【0111】
また、本実施の形態2に係る蒸留装置1では、回収容器16を第2の蒸留装置筐体22の内部であって、真空ポンプ34の近傍に配置しているため、回収容器16が、蒸留釜11や第2の受器15等から熱的影響を受けるのを回避している。
【0112】
その他構成及び作用は、前記実施の形態1と同様であるので、その説明を省略する。
【0113】
実施の形態3
図15乃至
図17は本発明の実施の形態3に係る蒸留装置1を示す構成図である。なお、本実施の形態3では、前記実施の形態1に係る蒸留装置1と同一の部材には同一の符号を付している。
【0114】
本実施の形態3に係る蒸留装置1は、
図15乃至
図17に示すように、蒸留装置筐体2として単一の蒸留装置筐体2ではなく、第1乃至第3からなる複数(図示例では、3つ)の蒸留装置筐体2
1,2
2,2
3を備えている。所要の蒸留装置構成要素3が収容された第1乃至第3の蒸留装置筐体2
1,2
2,2
3を第1乃至第3の蒸留モジュール71,72,73と称する。なお、第1乃至第3の蒸留装置筐体2
1,2
2,2
3は、実施の形態1と同様、それぞれJIS規格の12フィートのコンテナから構成されている。第1乃至第3の蒸留モジュール71,72,73は、水平方向に沿って隣接して配置される。
【0115】
ただし、第1乃至第3の蒸留モジュール71,72,73は、これに限らず、
図18に示すように、第1及び第2の蒸留モジュール71,72を鉛直方向に沿った上下に積み重ねた状態で第3の蒸留モジュール73を第2の蒸留モジュール72に水平方向に沿って隣接させて配置しても良く、あるいは第1及び第2の蒸留モジュール71,72を水平方向に沿って近接させて配置するとともに、第3の蒸留モジュール73を第2の蒸留モジュール72から水平方向に沿って距離を離して配置しても良く、さらには第1及び第2の蒸留モジュール71,72を鉛直方向に沿った上下に積み重ねた状態で第3の蒸留モジュール73を第2の蒸留モジュール72に水平方向に沿って距離を離して配置しても良い。第1乃至第3の蒸留モジュール71,72,73を水平方向に沿って隣接して配置する場合においても、その長手方向に沿って配置する場合に限らず、その短手方向に沿って配置しても勿論良い。
【0116】
本実施の形態3に係る蒸留装置1では、第1の蒸留モジュール71の蒸留装置筐体21の内部に、蒸留装置構成要素3として、蒸留釜11と、蒸留塔12と、コンデンサー部13とを配置している。
【0117】
また、本実施の形態3に係る蒸留装置1では、第2の蒸留モジュール72の蒸留装置筐体22の内部に、蒸留装置構成要素3としての第1の受器14と、第2の受器15とが配置されている。
【0118】
さらに、本実施の形態3に係る蒸留装置1では、第3の蒸留モジュール73の蒸留装置筐体23の内部に、蒸留装置構成要素3としての回収容器16と、蒸留設備として、熱媒循環装置31と、第1の冷却水循環装置32と、第2の冷却水循環装置33と、真空ポンプ34とが配置されている。
【0119】
さらに、本実施の形態3に係る蒸留装置1では、蒸留釜11と第2の受器15が同一形状に形成されている。
【0120】
更に説明すると、本実施の形態3に係る蒸留装置1では、高さ制限のあるJIS規格の12フィートのコンテナからなる第1の蒸留装置筐体21の内部において、蒸留能力を上げるため、蒸留釜11の容量を大きく設定している。その結果、第1の蒸留装置筐体21の内部には、主として蒸留釜11と、蒸留釜11を大容量化した場合においても、設置スペースが増大するのを抑制することが可能な蒸留塔12とコンデンサー部13を第1の蒸留装置筐体21の内部に配置している。
【0121】
同様に、第2の受器15は、蒸留釜11と同一形状に形成されて大容量化が図られている。そのため、第2の受器15は、蒸留釜11とは別の第2の蒸留装置筐体22の内部に配置されている。また、蒸留釜11を大容量化した場合においても、第2の受器15ほど設置面積を増大させる必要がない第1の受器14を、第2の受器15とともに第2の蒸留装置筐体22の内部に配置されている。
【0122】
第3の蒸留モジュール73の構成は、前記実施の形態2と同様である。
【0123】
本実施の形態3に係る蒸留装置1では、主たる蒸留装置構成要素3である蒸留釜11と、蒸留塔12と、コンデンサー部13とを、第1の蒸留モジュール71の蒸留装置筐体21の内部に分散させて配置し、且つ、主たる蒸留装置構成要素3である第1の受器14と、第2の受器15とを、第2の蒸留モジュール72の蒸留装置筐体22の内部に分散させて配置することにより、蒸留釜11や第2の受器15等の本実施の形態2と比較して更なる大容量化が可能となる。
【0124】
このように、本実施の形態3に係る蒸留装置1では、複数の蒸留装置筐体21,22,23を採用し、しかも主たる蒸留装置構成要素3を第1及び第2の蒸留装置筐体21,22に分散させて配置することにより、蒸留釜11や第2の受器15の更なる大容量化を図って生産性の向上が可能となる。
【0125】
その他構成及び作用は、前記実施の形態1と同様であるので、その説明を省略する。
【0126】
実施の形態4
図19乃至
図23は本発明の実施の形態4に係る蒸留装置1を示す構成図である。なお、本実施の形態4では、前記実施の形態1に係る蒸留装置1と同一の部材には同一の符号を付している。
【0127】
本実施の形態4に係る蒸留装置1は、
図19乃至
図23に示すように、蒸留装置筐体2として単一の蒸留装置筐体2ではなく、第1乃至第6からなる複数(図示例では、6つ)の蒸留装置筐体2
1~2
6を備えている。第1乃至第6の蒸留装置筐体2
1~2
6としては、実施の形態1と同様、それぞれJIS規格の12フィートのコンテナから構成されている。第1乃至第6の蒸留装置筐体2
1~2
6は、
図19に示す実施の形態4では、例えば、その長手方向に沿って所要の距離を隔てて配置される。
【0128】
ただし、第1乃至第6の蒸留装置筐体2
1~2
6は、これに限らず、
図20乃至
図23に示すように、第1乃至第6の蒸留装置筐体2
1~2
6のすべての蒸留装置筐体2
1~2
6を水平方向に沿って隣接しても良く、あるいは第1乃至第6の蒸留装置筐体2
1~2
6のすべての蒸留装置筐体2
1~2
6を鉛直方向に沿って積み重ねた状態で配置しても良く、第1乃至第6の蒸留装置筐体2
1~2
6のうち、任意の蒸留装置筐体2
1~2
6を鉛直方向に沿って積み重ねた状態で配置するとともに、残りの蒸留装置筐体2
1~2
6を水平方向に沿って離間して又は隣接して配置しても良い。なお、留装置筐体2
1~2
6を鉛直方向に沿って積み重ねた状態で配置する場合は、例えば、
図21に示すように、ユーティリティーモジュールの留装置筐体2
1を鉛直方向に沿った最下部に配置し、その上方に初留受器(第1の受器)のモジュールの留装置筐体2
6、製品受器(第2の受器)モジュールの留装置筐体2
5、蒸留釜モジュールの留装置筐体2
2、蒸留塔モジュールの留装置筐体2
3、コンデンサーモジュールの留装置筐体2
4の順で配置される。
【0129】
本実施の形態4に係る蒸留装置1は、
図19乃至
図23に示すように、所要の蒸留装置構成要素3が収容された第1乃至第6の蒸留装置筐体2
1~2
6を第1乃至第6の蒸留モジュール81~86と称する。なお、第1乃至第6の蒸留装置筐体2
1~2
6は、実施の形態1と同様、それぞれJIS規格の12フィートのコンテナから構成されている。
【0130】
本実施の形態4に係る蒸留装置1では、基本的に、1つの蒸留モジュール81~86の蒸留装置筐体21~26の内部には、1つの蒸留装置構成要素3又は蒸留設備が収容される。
【0131】
すなわち、本実施の形態4に係る蒸留装置1では、
図19に示すように、第1の蒸留モジュール(ユーティリティモジュール)81には、蒸留設備として、熱媒循環装置31と、第1の冷却水循環装置32と、第2の冷却水循環装置33と、真空ポンプ34とが配置されている。
【0132】
また、第2の蒸留モジュール(蒸留釜モジュール)82には、蒸留装置構成要素3としての蒸留釜11が、第3の蒸留モジュール(蒸留塔モジュール)83には、蒸留装置構成要素3としての蒸留塔12が、第4の蒸留モジュール(コンデンサーモジュール)84には、蒸留装置構成要素3としてのコンデンサー部13が、第5の蒸留モジュール(製品受器モジュール)85には、蒸留装置構成要素3としての第2の受器15が、第6の蒸留モジュール(初留受器モジュール)86には、蒸留装置構成要素3としての第1の受器14がそれぞれ収容されている。
【0133】
また、各蒸留モジュール81~86の間には、当該各蒸留モジュール81~86の間を接続する配管モジュール91~95がそれぞれ配置されている。
【0134】
本実施の形態4に係る蒸留装置1は、基本的に、1つの蒸留モジュール81~86に、蒸留設備や1つの蒸留装置構成要素3をそれぞれ分散して配置したものであるが、単に、1つの蒸留モジュール82~86に1つの蒸留装置構成要素3をそれぞれ分散して配置することに留まらず、例えば、第2の蒸留モジュールとしての蒸留釜モジュール82に蒸留装置構成要素3としての蒸留釜11を1つではなく、少容量の蒸留釜11と大容量の蒸留釜11というように複数の蒸留釜11を収容して配置し、蒸留装置1に求められる生産性に応じて複数の蒸留釜11のうち、少容量の蒸留釜11や大容量の蒸留釜11を選択的に接続として、ユーザーのニーズに応じることも可能である。
【0135】
同様に、他の蒸留モジュール83~86においても、蒸留装置構成要素3として、生産性や蒸留精度の異なる複数の蒸留塔12、コンデンサー部13、第2の受器15及び第1の受器14をそれぞれ収容し、ユーザーのニーズに応じて適宜接続して使用することも可能である。
【0136】
また、本実施の形態4に係る蒸留装置1は、1つの蒸留モジュール82~86に、同一の蒸留装置構成要素3としての蒸留釜11や蒸留塔12、あるいはコンデンサー部13、第2の受器15及び第1の受器14をそれぞれ収容して、すべての蒸留モジュール82~86の蒸留装置構成要素3をそれぞれ個別に接続して、種類の異なるあるいは同種の蒸留対象物を並列的に蒸留可能となるように構成しても良い。
【0137】
この場合には、多品種少量生産、あるいは同一品種大量生産等のニーズに応えることが可能となる。
【0138】
その他構成及び作用は、前記実施の形態1と同様であるので、その説明を省略する。
【0139】
なお、上記実施の形態では、蒸留装置として蒸留釜に一定量の蒸留対象物を予め投入して蒸留を行う所謂バッチ式の蒸留装置について説明したが、これに限定されるものではなく、連続式の蒸留装置においても同様に適用することができることは勿論である。
【符号の説明】
【0140】
1…蒸留装置
2…蒸留装置筐体
3…蒸留装置構成要素
11…蒸留釜
12…蒸留塔
13…コンデンサー部
14…第1の受器
15…第2の受器
16…回収容器
17…第1の領域
18…第2の領域
31…熱媒体循環装置
【手続補正書】
【提出日】2024-09-02
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
蒸留対象物を蒸留する蒸留装置において、
搬送先で屋外又は屋内の所望箇所に設置される車両又は船舶によって運搬可能なJIS規格又はISO規格を含む標準化された設計に基づく箱状の容器からなる単一又は複数の蒸留装置筐体と、
前記単一又は複数の蒸留装置筐体の内部に分散して配置される前記蒸留装置を構成する複数の構成要素であり、前記蒸留装置筐体の数に応じて所望の前記構成要素を任意に組み合わせて配置可能な蒸留装置構成要素と、
を備え、
前記蒸留装置構成要素は、
前記蒸留対象物が投入される蒸留釜と、
前記蒸留釜から気化した成分を凝集させる凝集器と、
前記凝集器により初期的に凝集された初期蒸留物を収容する第1の受器と、
前記凝集器により凝集された目的とする蒸留物を収容する第2の受器と、
を有するとともに、
前記蒸留釜と前記第2の受器は、水平方向に沿って外形寸法が鉛直方向に沿った外形寸法より大きく設定された蒸留装置。
【請求項2】
前記箱状の容器は、少なくとも1つの面の一部が開放可能である請求項1に記載の蒸留装置。
【請求項3】
前記凝縮器は、前記蒸留装置筐体の内部に水平方向に沿って配置される請求項1に記載の蒸留装置。
【請求項4】
前記第2の受器は、前記蒸留釜と同一形状に形成されている請求項1に記載の蒸留装置。
【請求項5】
前記蒸留釜及び前記第2の受器は、前記蒸留装置筐体の内部において水平方向に沿って並列的に配置される請求項4に記載の蒸留装置。
【請求項6】
前記蒸溜装置は、前記蒸溜釜からの初期的な蒸留物を前記第1の受器で受ける第1の工程と、
前記蒸溜釜からの目的とする蒸留物を前記第2の受器で受ける第2の工程と、
前記蒸溜釜の残留物を当該蒸溜釜で回収する第3の工程と、
を備える請求項1に記載の蒸溜装置。
【請求項7】
前記蒸留装置筐体が複数存在する場合、前記複数の蒸留装置筐体は、水平方向又は鉛直方向に沿って隣接又は離間して配置される請求項1に記載の蒸留装置。
【請求項8】
前記蒸留装置構成要素のうち、目的とする蒸留物を収容する構成要素は、鉛直方向に沿った上部に位置する前記蒸留装置筐体に配置される請求項7に記載の蒸留装置。
【請求項9】
前記蒸留装置構成要素は、前記蒸留装置構成要素を稼働する稼働設備を備える請求項1に記載の蒸留装置。
【請求項10】
前記蒸留装置筐体が単一である場合、前記稼働設備は、前記蒸留装置筐体の内部において前記蒸留装置構成要素と隔壁により区画されている請求項9に記載の蒸留装置。
【請求項11】
前記稼働設備は、作業員が前記稼働設備を操作可能なスペースを有する請求項10に記載の蒸留装置。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0009
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0009】
本発明の目的は、本発明を適用しない場合と比較して、産業用(工業用)の蒸留装置であって、且つ車両等にて運搬することが可能で屋外や屋内の所望箇所に設置して稼働することが容易な蒸留装置を提供することにある。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0010
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0010】
請求項1に記載された発明は、蒸留対象物を蒸留する蒸留装置において、
搬送先で屋外又は屋内の所望箇所に設置される車両又は船舶によって運搬可能なJIS規格又はISO規格を含む標準化された設計に基づく箱状の容器からなる単一又は複数の蒸留装置筐体と、
前記単一又は複数の蒸留装置筐体の内部に分散して配置される前記蒸留装置を構成する複数の構成要素であり、前記蒸留装置筐体の数に応じて所望の前記構成要素を任意に組み合わせて配置可能な蒸留装置構成要素と、
を備え、
前記蒸留装置構成要素は、
前記蒸留対象物が投入される蒸留釜と、
前記蒸留釜から気化した成分を凝集させる凝集器と、
前記凝集器により初期的に凝集された初期蒸留物を収容する第1の受器と、
前記凝集器により凝集された目的とする蒸留物を収容する第2の受器と、
を有するとともに、
前記蒸留釜と前記第2の受器は、水平方向に沿って外形寸法が鉛直方向に沿った外形寸法より大きく設定された蒸留装置である。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0011
【補正方法】削除
【補正の内容】
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0012
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0012】
請求項2に記載された発明は、前記箱状の容器は、少なくとも1つの面の一部が開放可能である請求項1に記載の蒸留装置である。
【手続補正6】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0013
【補正方法】削除
【補正の内容】
【手続補正7】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0014
【補正方法】削除
【補正の内容】
【手続補正8】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0015
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0015】
請求項3に記載された発明は、前記凝縮器は、前記蒸留装置筐体の内部に水平方向に沿って配置される請求項1に記載の蒸留装置である。
【手続補正9】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0016
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0016】
請求項4に記載された発明は、前記第2の受器は、前記蒸留釜と同一形状に形成されている請求項1に記載の蒸留装置である。
【手続補正10】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0017
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0017】
請求項5に記載された発明は、前記蒸留釜及び前記第2の受器は、前記蒸留装置筐体の内部において水平方向に沿って並列的に配置される請求項4に記載の蒸留装置である。
【手続補正11】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0018
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0018】
請求項6に記載された発明は、前記蒸溜装置は、前記蒸溜釜からの初期的な蒸留物を前記第1の受器で受ける第1の工程と、
前記蒸溜釜からの目的とする蒸留物を前記第2の受器で受ける第2の工程と、
前記蒸溜釜の残留物を当該蒸溜釜で回収する第3の工程と、
を備える請求項1に記載の蒸溜装置である。
【手続補正12】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0019
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0019】
請求項7に記載された発明は、前記蒸留装置筐体が複数存在する場合、前記複数の蒸留装置筐体は、水平方向又は鉛直方向に沿って隣接又は離間して配置される請求項1に記載の蒸留装置である。
【手続補正13】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0020
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0020】
請求項8に記載された発明は、前記蒸留装置構成要素のうち、目的とする蒸留物を収容する構成要素は、鉛直方向に沿った上部に位置する前記蒸留装置筐体に配置される請求項7に記載の蒸留装置である。
【手続補正14】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0021
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0021】
請求項9に記載された発明は、前記蒸留装置構成要素は、前記蒸留装置構成要素を稼働する稼働設備を備える請求項1に記載の蒸留装置である。
【手続補正15】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0022
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0022】
請求項10に記載された発明は、前記蒸留装置筐体が単一である場合、前記稼働設備は、前記蒸留装置筐体の内部において前記蒸留装置構成要素と隔壁により区画されている請求項9に記載の蒸留装置である。
【手続補正16】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0023
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0023】
請求項11に記載された発明は、前記稼働設備は、作業員が前記稼働設備を操作可能なスペースを有する請求項10に記載の蒸留装置である。
【手続補正17】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0024
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0024】
本発明によれば、本発明を適用しない場合と比較して、産業用(工業用)の蒸留装置であって、且つ車両等にて運搬することが可能で屋外や屋内の所望箇所に設置して稼働することが容易な蒸留装置を提供することができる。
【手続補正18】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0081
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0081】
<蒸溜装置の作用>
ところで、この実施の形態1に係る蒸溜装置では、次のようにして、本発明を適用しない場合と比較して、産業用(工業用)の蒸留装置であって、且つ車両等にて運搬することが可能で屋外や屋内の所望箇所に設置して稼働することが容易となっている。