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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024136536
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】スラブ構造
(51)【国際特許分類】
   E04B 5/40 20060101AFI20240927BHJP
   E04B 5/43 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
E04B5/40 E
E04B5/43 H
E04B5/43 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023047681
(22)【出願日】2023-03-24
(71)【出願人】
【識別番号】390037154
【氏名又は名称】大和ハウス工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100162031
【弁理士】
【氏名又は名称】長田 豊彦
(74)【代理人】
【識別番号】100175721
【弁理士】
【氏名又は名称】高木 秀文
(72)【発明者】
【氏名】由田 哲夫
(57)【要約】
【課題】コストを大きく増加させることなく、遮音性能を向上させることができるスラブ構造を提供する。
【解決手段】建物Aの小梁4を跨ぐように設けられ、コンクリート32を含む材料で形成された床スラブ構造1~1Cであって、小梁4に設けられた上側のフランジ4aに支持される第一スラブ30Aと、梁4に固定され、上側のフランジ4aに対して上下位置が異なる上部21を有する受け部材20と、上部21に支持される第二スラブ30Bと、上側のフランジ4a及び上部21のうちの少なくとも一方に支持されると共に、第一スラブ30A及び第二スラブ30Bのうちの少なくとも一方の厚さ寸法よりも大きい厚さ寸法を有し、第一スラブ30Aの端部と第二スラブ30Bの端部とを拘束する拘束部40と、を具備する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物の梁を跨ぐように設けられ、コンクリートを含む材料で形成された床スラブ構造であって、
前記梁に設けられた第一支持部に支持される第一スラブと、
前記梁に固定され、前記第一支持部に対して上下位置が異なる第二支持部を有する受け部材と、
前記第二支持部に支持される第二スラブと、
前記第一支持部及び前記第二支持部のうちの少なくとも一方に支持されると共に、前記第一スラブ及び前記第二スラブのうちの少なくとも一方の厚さ寸法よりも大きい厚さ寸法を有し、前記第一スラブの端部と前記第二スラブの端部とを拘束する拘束部と、
を具備するスラブ構造。
【請求項2】
前記拘束部は、
前記第一スラブ及び前記第二スラブの厚さ寸法よりも大きい厚さ寸法を有する、
請求項1に記載のスラブ構造。
【請求項3】
前記第二支持部は、
前記第一支持部よりも下方に位置するように設けられている、
請求項1に記載のスラブ構造。
【請求項4】
前記梁は、
上下のフランジを有する鉄骨部材により形成されており、
前記梁の上下の前記フランジの端部同士を接続するように、前記梁に固定されるプレートを具備し、
前記受け部材は、
前記プレートを介して、前記梁に固定される、
請求項3に記載のスラブ構造。
【請求項5】
前記第一スラブ及び前記第二スラブは、
互いの上面が同一平面状に形成されている、
請求項1に記載のスラブ構造。
【請求項6】
前記第一スラブ及び前記第二スラブは、
互いに水平方向に隣接するように、交互に複数配置されている、
請求項1から請求項5までのいずれか一項に記載のスラブ構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スラブ構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、コンクリートにより形成されたスラブ構造が知られている。例えば、特許文献1に記載の如くである。
【0003】
特許文献1には、鉄骨の梁に載置されたデッキプレートの上に、コンクリートを打設して形成される合成スラブが記載されている。上述のような合成スラブでは、遮音性能を向上させる観点から剛性を上げることが望ましい。
【0004】
合成スラブの剛性を向上させる方法としては、梁を増やす方法が考えられる。しかしながら、上記方法を採用した場合には、コストが大きく増加することが考えられる。このため、コストを大きく増加させることなく、遮音性能を向上させることができるスラブ構造が望まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2021-161793号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、以上の如き状況を鑑みてなされたものであり、その解決しようとする課題は、コストを大きく増加させることなく、遮音性能を向上させることができるスラブ構造を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0008】
即ち、請求項1においては、建物の梁を跨ぐように設けられ、コンクリートを含む材料で形成された床スラブ構造であって、前記梁に設けられた第一支持部に支持される第一スラブと、前記梁に固定され、前記第一支持部に対して上下位置が異なる第二支持部を有する受け部材と、前記第二支持部に支持される第二スラブと、前記第一支持部及び前記第二支持部のうちの少なくとも一方に支持されると共に、前記第一スラブ及び前記第二スラブのうちの少なくとも一方の厚さ寸法よりも大きい厚さ寸法を有し、前記第一スラブの端部と前記第二スラブの端部とを拘束する拘束部と、を具備するものである。
【0009】
請求項2においては、前記拘束部は、前記第一スラブ及び前記第二スラブの厚さ寸法よりも大きい厚さ寸法を有するものである。
【0010】
請求項3においては、前記第二支持部は、前記第一支持部よりも下方に位置するように設けられているものである。
【0011】
請求項4においては、前記梁は、上下のフランジを有する鉄骨部材により形成されており、前記梁の上下の前記フランジの端部同士を接続するように、前記梁に固定されるプレートを具備し、前記受け部材は、前記プレートを介して、前記梁に固定されるものである。
【0012】
請求項5においては、前記第一スラブ及び前記第二スラブは、互いの上面が同一平面状に形成されているものである。
【0013】
請求項6においては、前記第一スラブ及び前記第二スラブは、互いに水平方向に隣接するように、交互に複数配置されているものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明は、コストを大きく増加させることなく、遮音性能を向上させることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の第一実施形態に係るスラブ構造を示した平面断面図。
図2図1におけるX-X断面図。
図3】(a)小梁、プレート及び受け部材を示した平面図。(b)第一スラブ、第二スラブ及び拘束部を示した模式図。
図4】第二実施形態に係るスラブ構造を示した側面断面図。
図5】第三実施形態に係るスラブ構造を示した側面断面図。
図6】第四実施形態に係るスラブ構造を示した側面断面図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下では、図1から図3までを用いて、本発明の第一実施形態に係るスラブ構造1について説明する。
【0017】
スラブ構造1は、鉄骨造の建物Aに設けられたスラブ(後述する床スラブ30)の構造である。建物Aは、複数階を有する。建物Aとしては、例えば住宅や宿泊施設、医療施設、介護施設、商業施設等の種々の建物を採用可能である。
【0018】
図1に示すように、建物Aは、柱2同士を接続する大梁3や、大梁3同士を接続する小梁4を有する。図2に示すように、小梁4は、上下のフランジ4a及びウェブ4bを有するH型の鉄骨部材により形成されている。なお図示は省略するが、大梁3も小梁4と同様にH型の鉄骨部材により形成されている。
【0019】
スラブ構造1は、建物Aのうち2階以上の室内空間の床を構成する。スラブ構造1は、大梁3及び小梁4に支持される。図1に示す例では、大梁3によって囲まれた範囲のスラブ構造1を示している。スラブ構造1は、プレート10、受け部材20及び床スラブ30を具備する。なお、図3(a)では、床スラブ30の図示を省略し、小梁4、プレート10及び受け部材20を示している。
【0020】
図2及び図3(a)に示すプレート10は、後述する受け部材20を、小梁4に取り付けるためのものである。プレート10は、金属製の板形状の部材により形成される。図2に示すように、プレート10は、厚さ方向を小梁4の短手方向(左右方向)に向けて配置される。プレート10は、小梁4の短手方向片側(図例では左側)において、上側のフランジ4aの端部と下側のフランジ4aの端部とを接続するように配置される。本実施形態では、上下のフランジ4aの間に、プレート10を取り付けるための取付プレート11を設けている。取付プレート11は、金属製の板形状の部材により形成され、厚さ方向を小梁4の長手方向に向けて配置される(図3(a)を参照)。取付プレート11は、上下のフランジ4a及びウェブ4bに対して溶接等により固定される。プレート10は、上側のフランジ4aの端部と、下側のフランジ4aの端部と、取付プレート11と、に溶接等により固定されることで、小梁4に対して取り付けられる。
【0021】
図3(a)に示すように、プレート10(及び取付プレート11)は、小梁4の長手方向に沿って所定間隔(例えば1m程度の間隔)を開けて複数設けられる。また、プレート10は、後述する拘束部40の形成箇所(図1を参照)に応じて、複数の小梁4に設けられる。
【0022】
受け部材20は、後述する床スラブ30(第二スラブ30B)を支持するものである。受け部材20は、小梁4の長手方向に沿う方向に長尺な形状に形成される。図2に示すように、受け部材20は、断面視において略C字(コ字)形状に形成される。受け部材20は、金属製の材料により形成される。受け部材20は、例えばボルトやビス等の止具を用いて、プレート10に対して固定される。図3(a)に示すように、受け部材20は、複数のプレート10を跨ぐように設けられる。また、受け部材20は、後述する拘束部40の形成箇所(図1を参照)に応じて複数の小梁4に設けられる。
【0023】
プレート10に対する受け部材20の固定にボルトを用いる場合には、受け部材20及びプレート10には固定用の孔が形成される。この場合は、プレート10に上下に間隔を開けて複数の孔を形成するようにしてもよい。また、上記孔を上下に長尺な長孔としてもよい。これによれば、小梁4に対する受け部材20の上下位置の設定を容易に行うことができる。なお、プレート10に対する受け部材20の固定を、溶接等により行うことも可能である。
【0024】
図2に示すように、受け部材20は、第二スラブ30Bを支持する部分である上部21が、小梁4の上側のフランジ4aよりも下方に位置するように設けられる。本実施形態では一例として、受け部材20の上部21を、小梁4の上側のフランジ4aよりも100mm程度下方に位置させている。
【0025】
図1及び図2に示す床スラブ30は、建物Aの構造床である。床スラブ30は、大梁3や小梁4、受け部材20の何れかに設置された複数のデッキプレート31の上に、コンクリート32を打設することで形成された合成スラブである(図2を参照)。なお、床スラブ30を構成するコンクリート32に、補強用の鉄筋や金網等を設けるようにしてもよい。
【0026】
図1に示す例では、大梁3で四方を囲われた1室の範囲の床スラブ30を示している。床スラブ30は、小梁4を跨ぐように設けられている。床スラブ30は、大梁3及び小梁4で複数の領域に区切られる。図例では、床スラブ30を6つの領域に区切った例を示している。上記複数の領域の端部(デッキプレート31の端部)は、大梁3、小梁4及び受け部材20の何れかに支持(拘束)される(図2を参照)。床スラブ30は、第一スラブ30A、第二スラブ30B及び拘束部40を具備する。
【0027】
第一スラブ30Aは、大梁3及び小梁4で区切られた床スラブ30の領域のうち、大梁3及び小梁4に支持されるものである。図3(b)では、左側の端部が小梁4の上側のフランジ4aで支持されている第一スラブ30Aを、ハッチングを付して示している。なお図示は省略するが、第一スラブ30Aの他の端部(右側の端部や前後の端部)は、他の小梁4又は大梁3で支持される。
【0028】
第二スラブ30Bは、大梁3及び小梁4で区切られた床スラブ30の領域のうち、少なくとも一部が受け部材20に支持されるものである。図3(b)では、右側の端部が受け部材20の上部21で支持されている第二スラブ30Bを、塗りつぶして示している。なお図示は省略するが、第二スラブ30Bの他の端部(左側の端部や前後の端部)は、他の受け部材20又は大梁3で支持される。
【0029】
本実施形態では、第一スラブ30A及び第二スラブ30Bの厚さ寸法を互いに同寸法としている。各スラブの厚さ寸法としては、例えば100mm程度の寸法を採用可能である。本実施形態では、受け部材20の上部21を小梁4の上側のフランジ4aよりも下方に位置させたことで、小梁4と受け部材20との上下位置の差に対応するように、第一スラブ30Aと第二スラブ30Bとの上下位置を異ならせている。具体的には、第二スラブ30Bの上面を、第一スラブ30Aの上面に対して100mm程度下方に位置させている。これにより、第一スラブ30Aと第二スラブ30Bとの間には段差が形成される。
【0030】
図2に示すように、本実施形態では、第二スラブ30Bの上面に断熱材33を設置すると共に、断熱材33の上に更にコンクリート(押さえコンクリート34)を打設することで、第一スラブ30Aと第二スラブ30Bとの段差を埋めている。上述のように本実施形態では、例えば乾式二重床のように内部に空気の層が形成される床ではなく、中実な床を形成するように上記段差を埋めている。
【0031】
また図1に示すように、本実施形態では、第一スラブ30Aと第二スラブ30Bとが、互いに水平方向に隣り合うように複数配置されている。本実施形態では、左右方向及び前後方向に隣接するように、第一スラブ30A及び第二スラブ30Bを交互に(千鳥状に)配置している。
【0032】
図1図2及び図3(b)に示す拘束部40は、互いに隣接する第一スラブ30Aの端部と第二スラブ30Bの端部とを拘束するものである。拘束部40は、第一スラブ30Aと第二スラブ30Bとの間の段差部分において、小梁4に沿って配置されるコンクリート(鉄筋コンクリート)の梁状の構造体として形成される。なお、拘束部40を構成するコンクリート32に、適宜鉄筋等を設けて補強するようにしてもよい。図2に示すように、本実施形態では、小梁4の短手方向片側のみに拘束部40を形成している。
【0033】
図3(b)に示すように、本実施形態に係る拘束部40は、床スラブ30のうち、受け部材20に支持される部分であって、第一スラブ30A及び第二スラブ30Bの厚さ寸法よりも大きい厚さ寸法を有する部分である。本実施形態では、拘束部40の厚さ寸法を、第一スラブ30Aの厚さ寸法と第二スラブ30Bの厚さ寸法とを足し合わせた寸法に形成している。図例では、拘束部40を二点鎖線で示している。図例では、拘束部40は、第二スラブ30Bの右側の端部を含むように形成されている。
【0034】
ここで、床スラブ30の部分的な剛性は、梁等で拘束された周辺部(端部側)に近づく程増大する。また、上記床スラブ30の部分的な剛性の増大のレベル(度合い)は、床スラブ30の端部を拘束する部材の剛性が高い程大きくなる。一般的には小梁4よりも大梁3の方が長手方向における断面積が大きく剛性が高いため、端部が小梁4で拘束される床スラブ30よりも、端部が大梁3で拘束される床スラブ30の方が上記部分的な剛性が高い。また、鉄骨の大梁3よりも、鉄筋コンクリート造の梁の方が剛性が高い場合が多いため、端部が大梁3で拘束される床スラブ30よりも、端部が鉄筋コンクリート造の梁で拘束される床スラブ30の方が上記部分的な剛性が高い場合が多い。
【0035】
本実施形態では、コンクリート(鉄筋コンクリート)の梁状の構造体である拘束部40で、第一スラブ30A及び第二スラブ30Bの端部を拘束したことで、第一スラブ30A及び第二スラブ30Bの上記部分的な剛性を向上させることができる。また、本実施形態では、第一スラブ30Aに対して第二スラブ30Bを下げることで拘束部40を形成しているので、階高を上げずに拘束部40を形成することができる。
【0036】
また、図1に示すように、本実施形態では、第一スラブ30A及び第二スラブ30Bを千鳥状に配置したことで、第一スラブ30A及び第二スラブ30Bの四周を構成する全ての端部が、比較的剛性が高い大梁3又は拘束部40で拘束される。上記構成によれば、床スラブ30の全体の剛性を向上させることができる。また、本実施形態のように、小梁4の短手方向片側のみに拘束部40を形成した場合には、最低限の数の拘束部40で、第一スラブ30A及び第二スラブ30Bの全ての端部を拘束することができる(図1及び図2を参照)。
【0037】
なお、床スラブ30の剛性を向上させる方法としては、鉄骨による梁を増やすことや、床スラブ30の厚さを大きくする方法が考えられるが、上記方法では床スラブ30を構成する材料が増えることや、床スラブ30の重量が増加することで柱2等の構造体の強度を上げる必要が生じることによってコストが増大することが想定される。
【0038】
本実施形態によれば、床スラブ30自体の厚さを大きくしたり、鉄骨の梁を増やすことなく床スラブ30の剛性を上げることができる。これにより、コストを大きく増加させることなく遮音性能を向上させることができる。
【0039】
また、本実施形態によれば、大梁3と、小梁4に沿って形成された拘束部40と、の比較的剛性が高い構造体で、床スラブ30を比較的面積が小さい複数(図例では6つ)の領域に分割している。これにより、床スラブ30からの低周波音の発生を抑制することができる。また、建物の床の遮音性能(床衝撃音遮断性能)の測定を行う際には、室内の床において5箇所程度の測定点で測定が行われる。上述のように床スラブ30を分割した場合には、各測定点における遮音性能を向上させることができる。
【0040】
以上、本発明の第一実施形態を説明したが、本発明は上記構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内で種々の変更が可能である。
【0041】
以下では、図4から図6までを参照して、本発明の別実施形態(第二~第四実施形態)について説明する。なお、以下の別実施形態の説明では、各実施形態の相違点について説明し、共通する構成については、適宜説明を省略する。
【0042】
まず、図4を用いて、第二実施形態に係るスラブ構造1Aについて説明する。
【0043】
図4に示すように、スラブ構造1Aは、小梁4の短手方向両側(図例では左右両側)に、プレート10及び受け部材20が設けられ、各受け部材20のそれぞれで第二スラブ30Bを支持している点で、第一実施形態に係るスラブ構造1とは異なる。また、スラブ構造1Aは、小梁4の上側のフランジ4aを跨ぐようにして第一スラブ30Aが設けられている。
【0044】
本実施形態では、小梁4の左右両側に、第一スラブ30Aの両端部(左右方向両端部)と、左右両側の第二スラブ30Bの各端部と、を拘束する一対の拘束部40が形成されている。本実施形態に係る拘束部40は、第一スラブ30Aの端部と、第二スラブ30Bの端部と、を含むように形成されている。
【0045】
上述の如きスラブ構造1Aにおいても、第一実施形態で説明した効果と概ね同様な効果を奏する。また、本実施形態では、小梁4の短手方向片側のみに拘束部40を形成したものと比べて、拘束部40の数を多く形成することができる。これにより、床スラブ30の剛性を更に向上させ、遮音性能の向上を図ることができる。
【0046】
次に、図5を用いて、第三実施形態に係るスラブ構造1Bについて説明する。
【0047】
図5に示すように、スラブ構造1Bは、小梁4の上側のフランジ4aに受け部材20を設け、上側のフランジ4aよりも上方に位置させた受け部材20の上部21で第二スラブ30Bを支持している点で、第一実施形態に係るスラブ構造1とは異なる。なお、本実施形態では、プレート10を設けず、上側のフランジ4aの上面に対して直接受け部材20を固定している。上記受け部材20の固定方法としては、ボルト等の止具を用いた固定や、溶接等を採用可能である。
【0048】
本実施形態では、第一スラブ30Aよりも第二スラブ30Bが上方に位置することで、段差が形成される。また、本実施形態では、上記段差部分において形成される拘束部40が、上側のフランジ4aによって支持されている。また、拘束部40は、第一スラブ30A及び第二スラブ30Bの各端部と、受け部材20と、を含むように形成されている。本実施形態では、第一スラブ30Aの上面に断熱材33及び押さえコンクリート34を設けることで、第二スラブ30Bとの段差を埋めている。
【0049】
上述の如きスラブ構造1Bにおいても、第一実施形態で説明した効果と概ね同様な効果を奏する。また、本実施形態では、プレート10の設置を省いたことで、部材点数及び施工の手順の削減を図ることができる。
【0050】
次に、図6を用いて、第四実施形態に係るスラブ構造1Cについて説明する。
【0051】
図6に示すように、スラブ構造1Cは、第一スラブ30Aと第二スラブ30Bとの互いの上面が略同一平面状に形成されている点で、第一実施形態に係るスラブ構造1とは異なる。本実施形態では、第二スラブ30Bに断熱材33や押さえコンクリート34を設けるのではなく、第二スラブ30B自体の厚さ寸法を、第一スラブ30Aの厚さ寸法よりも大きくしたことで、小梁4の上側のフランジ4aと受け部材20の上部21との差に基づく段差を埋めている。本実施形態においては、第二スラブ30Bの端部のうち、受け部材20に支持されている部分(二点鎖線で示す部分)が、拘束部40を構成する。
【0052】
上述の如きスラブ構造1Cにおいても、第一実施形態で説明した効果と概ね同様な効果を奏する。また、本実施形態では、第二スラブ30Bに断熱材33や押さえコンクリート34を設けないため、コンクリート32を一度に打設して、床スラブ30を形成することができる。これにより、施工の省力化を図ることができる。また、第二スラブ30Bの厚さ寸法が大きくなり、第二スラブ30Bの質量が増加することで、更なる遮音性能の向上を図ることができる。
【0053】
以上のように、本発明の各実施形態に係るスラブ構造1~1Cは、
建物Aの梁(小梁4)を跨ぐように設けられ、コンクリート32を含む材料で形成された床スラブ構造1~1Cであって、
前記梁(小梁4)に設けられた第一支持部(上側のフランジ4a)に支持される第一スラブ30Aと、
前記小梁4に固定され、前記上側のフランジ4aに対して上下位置が異なる第二支持部(上部21)を有する受け部材20と、
前記上部21に支持される第二スラブ30Bと、
前記上側のフランジ4a及び前記上部21のうちの少なくとも一方に支持されると共に、前記第一スラブ30A及び前記第二スラブ30Bのうちの少なくとも一方の厚さ寸法よりも大きい厚さ寸法を有し、前記第一スラブ30Aの端部と前記第二スラブ30Bの端部とを拘束する拘束部40と、
を具備するものである。
【0054】
このような構成により、例えば小梁4を増やすようなことを行わずに、床スラブ30の剛性を上げることができる。これにより、コストを大きく増加させることなく遮音性能を向上させることができる。
【0055】
また、上記各実施形態に係るスラブ構造1~1Bにおいて、
前記拘束部40は、
前記第一スラブ30A及び前記第二スラブ30Bの厚さ寸法よりも大きい厚さ寸法を有するものである。
【0056】
このような構成により、床スラブ30自体の厚さを大きくして拘束部40を形成するものとは異なり、コストを大きく増加させることなく遮音性能を向上させることができる。
【0057】
また、上記各実施形態に係るスラブ構造1、1Aにおいて、
前記上部21は、
前記上側のフランジ4aよりも下方に位置するように設けられているものである。
【0058】
このような構成により、階高を上げることなく拘束部40を形成することができる。
【0059】
また、上記各実施形態に係るスラブ構造1、1A、1Cにおいて、
前記小梁4は、
上下のフランジ4aを有する鉄骨部材により形成されており、
前記小梁4の上下の前記フランジ4aの端部同士を接続するように、前記小梁4に固定されるプレート10を具備し、
前記受け部材20は、
前記プレート10を介して、前記小梁4に固定されるものである。
【0060】
このような構成により、プレート10を用いて受け部材20を好適に固定することができる。また、上下のフランジ4a同士を接続するプレート10の任意の位置に受け部材20を固定することができ、小梁4に対する受け部材20の上下位置が設定し易くなる。
【0061】
また、前記第一スラブ30A及び前記第二スラブ30Bは、
互いの上面が同一平面状に形成されているものである。
【0062】
このような構成により、第一スラブ30Aと第二スラブ30Bとの間に段差が形成されないため、上記段差を埋めるための作業(断熱材33や押さえコンクリート34の設置等)を行う必要がなく、施工の省力化を図ることができる。また、第二スラブ30Bの厚さ寸法が大きくなるため、第二スラブ30Bの質量が増加することで更なる遮音性能の向上を図ることができる。
【0063】
また、前記第一スラブ30A及び前記第二スラブ30Bは、
互いに水平方向に隣接するように、交互に複数配置されているものである。
【0064】
このような構成により、拘束部40をバランスよく配置することができ、床スラブ30(第一スラブ30A及び第二スラブ30B)の剛性を向上させることができる。また、本実施形態のように、大梁3によって囲まれた床スラブ30において、第一スラブ30A及び第二スラブ30Bを千鳥状に配置した場合、第一スラブ30A及び第二スラブ30Bの四周を構成する全ての端部が、比較的剛性が高い大梁3又は拘束部40で拘束されるので、床スラブ30の全体の剛性を向上させることができる。
【0065】
なお、本実施形態に係る小梁4は、本発明に係る梁の一形態である。
また、本実施形態に係る上側のフランジ4aは、本発明に係る第一支持部の一形態である。
また、本実施形態に係る上部21は、本発明に係る第二支持部の一形態である。
【0066】
以上、本発明の各実施形態を説明したが、本発明は上記構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内で種々の変更が可能である。例えば、スラブ構造1~1Cを構成する各部の形状や寸法、配置間隔等は、上述したものに限定されず、適宜変更可能である。また、上記説明で例示した具体的な数値は一例であり、任意に変更することが可能である。
【0067】
例えば、上記実施形態では、受け部材20を断面視において略C字(コ字)形状に形成した例を示したが、このような態様に限られない。受け部材20の形状としては、種々の形状を採用可能である。
【0068】
また、本実施形態では、第一スラブ30A及び第二スラブ30Bを千鳥状に配置した例を示すたが、このような態様に限られない。第一スラブ30A及び第二スラブ30Bの配置態様としては、種々の配置態様を採用可能である。
【符号の説明】
【0069】
1 スラブ構造
10 プレート
20 受け部材
30 床スラブ
図1
図2
図3
図4
図5
図6