(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024136541
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】乳幼児用シート
(51)【国際特許分類】
B60N 2/28 20060101AFI20240927BHJP
B60N 2/885 20180101ALI20240927BHJP
【FI】
B60N2/28
B60N2/885
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023047688
(22)【出願日】2023-03-24
(71)【出願人】
【識別番号】310019730
【氏名又は名称】グラコ・チルドレンズ・プロダクツ・インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001586
【氏名又は名称】弁理士法人アイミー国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】西川 直志
(72)【発明者】
【氏名】柴田 裕司
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 真輝
【テーマコード(参考)】
3B087
【Fターム(参考)】
3B087CE06
3B087CE07
3B087DC05
(57)【要約】
【課題】乳幼児の頭部に面する頭部サポート部を自立した状態で保持することが可能な乳幼児用シートを提供すること。
【解決手段】乳幼児用シート(2)は、乳幼児の後頭部を保護する立壁部(15)と、乳幼児の側頭部を保護する一対の側壁部(16)とを含むヘッドサポート(14)を備えた座席付き育児器具の座席本体の上に取り付けられる。乳幼児用シート(2)の頭部サポート部(20)は、ヘッドサポート(14)の立壁部(15)に面する中央部(21)と、ヘッドサポート(14)の側壁部(16)に面する側部(22)と、中央部(21)の上方に設けられ、曲げ力に対して曲げを小さくする復元力を発揮する直線性維持部(23)とを含む。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
乳幼児の後頭部を保護する立壁部と、乳幼児の側頭部を保護する一対の側壁部とを含むヘッドサポートを備えた座席付き育児器具の座席本体の上に取り付けられる乳幼児用シートであって、
乳幼児の頭に当接する頭部サポート部を備え、
前記頭部サポート部は、前記ヘッドサポートの立壁部に面する中央部と、前記中央部の上方に設けられ、曲げ力に対して曲げを小さくする復元力を発揮する直線性維持部とを含む、乳幼児用シート。
【請求項2】
前記頭サポート部の横幅寸法は、前記一対の側壁部の対向する内面の間隔よりも大きい、請求項1に記載の乳幼児用シート。
【請求項3】
前記頭サポート部は、前記中央部の側方に位置し、前記ヘッドサポートの側壁部に面する側部をさらに含む、請求項1または2に記載の乳幼児用シート。
【請求項4】
前記直線性維持部は、前記頭部サポート部の上縁に沿って設けられ、前記側部にまで延びている、請求項3に記載の乳幼児用シート。
【請求項5】
前記直線性維持部の横幅寸法は、前記ヘッドサポートの横幅寸法よりも大きい、請求項1または2に記載の乳幼児用シート。
【請求項6】
前記直線性維持部は、前記中央部よりも乳幼児側に向かって隆起する隆起部である、請求項1または2に記載の乳幼児用シート。
【請求項7】
前記頭部サポート部の側部は、乳幼児側に向かって膨出する側部クッションを有し、
前記隆起部の厚みは、前記側部クッションの厚みよりも小さい、請求項6に記載の乳幼児用シート。
【請求項8】
前記直線性維持部は、曲げ弾性を有する板ばねである、請求項1または2に記載の乳幼児用シート。
【請求項9】
前記頭サポート部に縦方向に連なって設けられる背部サポート部をさらに備える、請求項1または2に記載の乳幼児用シート。
【請求項10】
乳幼児の後頭部を保護する立壁部と、乳幼児の側頭部を保護する一対の側壁部とを含むヘッドサポートを備えた座席付き育児器具の座席本体の上に取り付けられる乳幼児用シートであって、
乳幼児の頭に当接する頭部サポート部を備え、
前記頭部サポート部は、前記ヘッドサポートの立壁部に面する中央部と、前記中央部に設けられ、曲げ力に対して曲げを小さくする復元力を発揮する直線性維持部とを含み、
前記頭サポート部の横幅寸法は、前記一対の側壁部の対向する内面の間隔よりも大きい、乳幼児用シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、乳幼児用シートであって、特に、乳幼児の後頭部を保護する立壁部と、乳幼児の側頭部を保護する一対の側壁部とを含むヘッドサポートを備えた座席付き育児器具の座席本体の上に取り付けられる乳幼児用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
乳幼児の体は小さいため、チャイルドシート、乳母車、ベビーシートなどの座席付き育児器具の座席本体の上に直接載せると、乳幼児の身体を適切に保護することはできない。また、座席付き育児器具の座席本体は取り外すことができないため、汚れてしまっても洗濯などをすることができない。
【0003】
そのため、従来から、座席付き育児器具の座席本体には、インナーシートが敷かれることが一般的である。このようなインナーシートを開示する技術として、特許文献1(特開2021-84473号公報)および特許文献2(実用新案登録第3055393)などが知られている。
【0004】
特許文献1には、チャイルドシートの座席上に使用される乳幼児用座席装置用インナーシートであり、頭部サポート部、胴サポート部、尻サポート部、および足サポート部を備え、一対の肩ベルトを挿通させるための肩ベルト通し孔と、上下方向に延びる股ベルト通し孔とを有することが開示されている。
【0005】
また、特許文献2には、ベビーカーの座面上に敷かれる乳幼児用マットであり、一対の肩ベルトを挿通させるための挿通孔と、股ベルトを貫通させるためのものであり、下端縁から上方に向かって切り欠かれる挿通孔とを有することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2021-84473号公報
【特許文献2】実用新案登録第3055393
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記特許文献1,2に開示されたシートは、いずれも一対の肩ベルトおよび股ベルトを貫通させることで、チャイルドシートまたはベビーカーに固定されている。しかし、椅子状態で使用される場合、一対の肩ベルト通し孔の上方に位置し、乳幼児の頭部に面する部分が、重力によって下方に折れ曲がってしまうおそれがある。
【0008】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであって、その目的は、乳幼児の頭部に面する頭部サポート部を自立した状態で保持することが可能な乳幼児用シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この目的のため、本発明の一態様に係る乳幼児用シートは、乳幼児の後頭部を保護する立壁部と、乳幼児の側頭部を保護する一対の側壁部とを含むヘッドサポートを備えた座席付き育児器具の座席本体の上に取り付けられる乳幼児用シートであって、乳幼児の頭に当接する頭部サポート部を備え、頭部サポート部は、ヘッドサポートの立壁部に面する中央部と、中央部の上方に設けられ、曲げ力に対して曲げを小さくする復元力を発揮する直線性維持部とを含む。
【0010】
好ましくは、頭サポート部の横幅寸法は、一対の側壁部の対向する内面の間隔よりも大きい。
【0011】
好ましくは、頭サポート部は、中央部の側方に位置し、ヘッドサポートの側壁部に面する側部をさらに含む。
【0012】
好ましくは、直線性維持部は、頭部サポート部の上縁に沿って設けられ、側部にまで延びている。
【0013】
好ましくは、直線性維持部の横幅寸法は、ヘッドサポートの横幅寸法よりも大きい。
【0014】
好ましくは、直線性維持部は、中央部よりも乳幼児側に向かって隆起する隆起部である。
【0015】
好ましくは、頭部サポート部の側部は、乳幼児側に向かって膨出する側部クッションを有し、隆起部の厚みは、側部クッションの厚みよりも小さい。
【0016】
好ましくは、直線性維持部は、曲げ弾性を有する板ばねである。
【0017】
好ましくは、頭サポート部に縦方向に連なって設けられる背部サポート部をさらに備える。
【0018】
本発明の他の態様に係る乳幼児用シートは、乳幼児の後頭部を保護する立壁部と、乳幼児の側頭部を保護する一対の側壁部とを含むヘッドサポートを備えた座席付き育児器具の座席本体の上に取り付けられる乳幼児用シートであって、乳幼児の頭に当接する頭部サポート部を備え、頭部サポート部は、ヘッドサポートの立壁部に面する中央部と、中央部に設けられ、曲げ力に対して曲げを小さくする復元力を発揮する直線性維持部とを含み、頭サポート部の横幅寸法は、一対の側壁部の対向する内面の間隔よりも大きい。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、乳幼児の頭部に面する頭部サポート部を自立した状態で保持することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本実施の形態に係る乳幼児用シートが取り付けられるチャイルドシートの斜視図であり、(A)は乳幼児用シートをチャイルドシートに取り付けた状態を示し、(B)は乳幼児用シートをチャイルドシートから取り外した状態を示す。
【
図2】本実施の形態に係る乳幼児用シートを示す正面図である。
【
図3】本実施の形態に係る乳幼児用シートを示す図であり、(A)は右側面図であり、(B)は平面図であり、(C)は底面図である。
【
図5】頭部サポート部を拡大して示す図であり、(A)は正面図であり、(B)は平面図であり、(C)は
図5(A)のV-V線の断面図である。
【
図7】本実施の形態における頭部サポート部の作用を示す模式図であり、(A)はヘッドサポートに取り付ける前の状態を示し、(B)はヘッドサポートに取り付けた状態を示す。
【
図8】頭部サポート部の変形例を示す模式図である。
【
図9】頭部サポート部の変形例の作用を示す模式図であり、(A)はヘッドサポートに取り付ける前の状態を示し、(B)はヘッドサポートに取り付けた状態を示す。
【
図10】頭部サポート部の他の変形例を示す模式図であり、(A)は正面図であり、(B)は
図10(A)のX-X線の断面図である。
【
図11】座部サポート部を拡大して示す図であり、(A)は正面図であり、(B)は
図11(A)のXI-XI線の端面図である。
【
図12】本実施の形態に係る溝部および山部を拡大して示す断面図である。
【
図13】溝部および山部の変形例を拡大して示す断面図である。
【
図14】本実施の形態の乳幼児用シートをチャイルドシートに取り付けた状態を示す模式図であり、(A)は乳幼児が小さい場合であり、(B)は乳幼児が成長した場合である。
【
図15】本実施の形態の乳幼児用シートが取り付けられるベッド状態のチャイルドシートを示す図であり、(A)はチャイルドシートの斜視図であり、(B)はチャイルドシートの縦断面図であり、(C)は乳幼児用シートをベッド状態のチャイルドシートに取り付けた状態を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。
【0022】
本実施の形態の乳幼児用シート2は、たとえば、チャイルドシート、乳母車、ベビーシート、ハイローチェアなどの座席付き育児器具の座席本体の上に着脱自在に取り付けられるものである。乳幼児用シート2の説明に先立ち、乳幼児用シート2が載置される座席付き育児器具の一例としてのチャイルドシート1について説明する。
【0023】
<チャイルドシートの概要について>
図1(A)は、本実施の形態に係る乳幼児用シートをチャイルドシートに取り付けた状態を示す斜視図であり、
図1(B)は、
図1(A)から乳幼児用シートを取り外した状態を示す斜視図である。まず、
図1(B)を参照して、本実施の形態に係るチャイルドシート1の概要について説明する。チャイルドシート1の説明において、前後方向は、チャイルドシート1に着座する乳幼児の前後方向に対応する。幅方向は、チャイルドシート1に着座する乳幼児の左右方向に対応する。
【0024】
本実施形態に係るチャイルドシート1の基本構造としては、一般的なチャイルドシートの構造と同様であってよく、自動車に用いられ、特に自動車の座席の上に配置され、乳児や幼児などの子供を安全に乗車させるための装置である。チャイルドシート1は、ベース部材10と、ベース部材10に対して回転可能に支持されるとともに、リクライニング可能に支持されている座席本体11とを備える。座席本体11には、子供が着座する子供用座席が設けられ、子供の臀部を支持する座部12と、座部12の後方から立ち上がり、子供の背部を支持する背部13と、背部13の上方に連なり、子供の頭部を支持するヘッドサポート14とを有する。
【0025】
座部12には、座席本体11を左右方向に横断するように延びて子供の腰を拘束する腰ベルト17aと、座席本体11に着座した子供の両太腿の間を延びる股ベルト17bとが設けられる。また、背部13には、子供の両肩を拘束する1対の肩ベルト17cが設けられる。これらのベルト17a,17b,17cの他端同士は、股ベルト17bの先端に設けられるバックル18により、乳幼児の腹部付近で着脱可能に連結される。
【0026】
ヘッドサポート14は、乳幼児の後頭部を保護する立壁部15と、子供の側頭部を保護する一対の側壁部16とを含む。立壁部15は、中央領域に位置する平坦面である。一対の側壁部16は、側部領域に位置し、立壁部15の両端から前方に突出するものである。
図1(B)において図示は省略するが、このヘッドサポート14は、背部13上に重ねあわされて、上下にスライドするスライド部材であってもよい。
【0027】
<乳幼児用シートについて>
図1(A)および
図2~
図4を参照して、本実施の形態に係る乳幼児用シート2について説明する。以下で説明する図において矢印Aで示す左右方向は、横方向であり、矢印Bで示す方向は縦方向である。また、矢印Cで示す前方向は乳幼児側であり外側ともいい、その反対の後方向は座席本体側であり内側ともいう。
【0028】
本実施の形態の乳幼児用シート2は、チャイルドシート1の座席本体11上に着脱自在に取り付けられ、典型的には、インナーシート、汗取りマットなどである。乳幼児用シート2は、使用時にはチャイルドシート1の座席本体11上に取り付けられるが、不使用時にはその座席本体11から取り外すことができ、たとえば汚れた場合には洗濯することができる。
【0029】
乳幼児用シート2は、縦方向に連なって設けられる頭部サポート部20と、背部サポート部40と、座部サポート部60とを備える。本実施の形態では、各サポート部20,40,60は、一体的に形成され、縦方向に連続して設けられる。乳幼児用シート2は、その端縁が全周に亘って縁取りされていることが好ましい。乳幼児用シート2は、その芯材が、柔らかくて弾力性のある材料、具体的にはウレタンフォームなどのクッション材により形成され、芯材の表面および裏面が布材で覆われている。
【0030】
特に
図1(A)および
図1(B)に示すように、頭部サポート部20は、乳幼児の頭部に当接する部分である。背部サポート部40は、乳幼児の背部に当接する部分である。座部サポート部60は、乳幼児の臀部および足部に当接する部分である。本実施の形態の乳幼児用シート2をチャイルドシート1に取り付けると、頭部サポート部20は、チャイルドシート1のヘッドサポート14に当接し、背部サポート部40は、チャイルドシート1の背部13に当接し、座部サポート部60は、チャイルドシート1の座部12に当接する。従来のインナーシートと同様、本実施の形態の乳幼児用シート2も、座席本体11のベルト17a,17b,17c、特に肩ベルト17cを貫通させることで、チャイルドシート1に取り付けることができる。以下、それぞれのサポート部20,40,60について詳細に説明する。
【0031】
(頭部サポート部の構成)
図5をさらに参照して、頭部サポート部20について説明する。頭部サポート部20は、ヘッドサポート14の立壁部15(
図1(B))に面する頭中央部21と、ヘッドサポート14の一対の側壁部16(
図1(B))に面する一対の頭側部22と、頭中央部21の上方に設けられる隆起部23とを含む。これらの頭中央部21、一対の頭側部22、および隆起部23は、一体的に形成されており、上述したウレタンフォームなどの芯材を熱加工して凹凸を形成することにより形成される。本実施の形態の頭部サポート部20は、頭中央部21、隆起部23、頭側部22の順で厚さが厚くなっている。
【0032】
頭中央部21は、平坦な面である。一対の頭側部22は、頭中央部21の両端にそれぞれ設けられる。一対の頭側部22は、その全体が乳幼児側(前方)に向かって膨出する側部クッションである。頭側部22の厚み(前後方向長さ)は、頭中央部21よりも厚い。具体的には、頭側部22は、頭中央部21の位置よりも10mm以上50mm以下突出していることが好ましい。頭側部22は、頭中央部21と比較するとクッション性が大きい。頭側部22を厚みが大きくクッション性を有するようにすることにより、乳幼児の頭を適切に保持することができる。また、
図5(A)に示すように、頭中央部21の横幅は、頭側部22の横幅よりも大きいことが好ましい。
【0033】
図5(C)に示すように、隆起部23は、縦断面視半円形であり、頭中央部21よりも乳幼児側に向かって隆起する部分である。隆起部23は、頭中央部21の厚さ(前後方向の寸法)よりも1.5倍以上厚いことが好ましい。具体的には、隆起部23は、頭中央部21の位置よりも5mm以上20mm以下突出していることが好ましい。5mm以上突出していることで、隆起部23の直線性を維持する強度を保つことができる。20mm以下であれば、乳幼児の頭に当接することがないため、乳幼児の乗り心地を損ねない。隆起部23の厚みは、頭中央部21の厚みの1.5倍以上、好ましくは3倍以上であることが好ましい。また、隆起部23の厚み(前後方向の長さ)は、頭側部22の厚みよりも小さいことが好ましい。これにより、隆起部23は、後述する直線性維持部の機能を効率よく発揮することができる。
【0034】
隆起部23は、頭中央部21の上縁に沿って設けられる。隆起部23は、同一厚さで頭中央部21の横幅全体に亘って連続して設けられている。隆起部23は、頭側部22にまで延びている。つまり、本実施の形態の隆起部23の横幅は、頭中央部21の横幅と略同一である。隆起部23と一対の頭側部22により、頭中央部21の三方(上方および左右)が囲まれている。隆起部23の横幅寸法は、ヘッドサポート14の横幅寸法よりも大きいことが好ましいが、ヘッドサポート14の横幅寸法よりも小さくてもよい。この点については、後述する。
【0035】
隆起部23は、機能的にいえば、曲げ力に対して曲げを小さくする復元力を発揮する直線性維持部である。ここで、直線性維持部とは、必ずしも、完璧に真っ直ぐに伸びた状態に維持する機能のみを意味するものではなく、直線に近い状態に戻ろうと維持することを意味する。たとえば元の状態が緩やかな円弧状である場合は、より曲げられた場合に元の状態の緩やかな円弧の状態に戻ろうとすることを意味する。換言すると、直線性維持部は、元の状態に戻ろうとする復元力を有する復元力発揮部である。
【0036】
(直線性維持部の作用)
次に、
図6,
図7を参照して、直線性維持部(隆起部)23の作用について説明する。
図6,
図7では、ヘッドサポート14および頭部サポート部20を模式的に示している。上述のように、チャイルドシート1のヘッドサポート14は、立壁部15と、立壁部15の両端から前方に突出する一対の側壁部16とで構成されている。
図7(A)に示すように、一対の側壁部16の対向する内面の間隔(寸法)は、W1である。それに対し、頭部サポート部20は、頭中央部21と、頭中央部21と略同一寸法の隆起部23と、一対の頭側部22とで構成されている。直線性維持部23の横幅寸法は、W2である。本実施の形態の頭部サポート部20は、W2>W1となるように設定されている。
【0037】
図7(B)に示すように、チャイルドシート1に乳幼児用シート2を取り付けるには、ヘッドサポート14の一対の側壁部16の間に頭部サポート部20を挟み込む。具体的には、ヘッドサポート14の立壁部15に乳幼児用シート2の頭中央部21を当接させ、ヘッドサポート14の一対の側壁部16に乳幼児用シート2の頭側部22をそれぞれ当接させる。すると、直線性維持部23の横幅寸法W2がヘッドサポート14の一対の側壁部16の対向する内面の間隔W1よりも大きいため、直線性維持部23が内側への撓み力を受けたときに、元の状態の直線状態に戻ろうとする反発力を発揮する。これにより、頭部サポート部20の一対の頭側部22は、ヘッドサポート14の一対の側壁部16に対してそれぞれ押し付けられ、頭部サポート部20がヘッドサポート14に固定される。
【0038】
このように、本実施の形態の乳幼児用シート2は、たとえば面ファスナ、紐などの係合部材を設けることなく、ヘッドサポート14に取り付けることができ、頭部サポート部20を自立した状態で保持することができる。
【0039】
さらに、直線性維持部23が頭中央部21の上端縁に設けられているため、頭部サポート部20の上端部が重力によって下向きに垂れ下がることを防止できるとともに、乳幼児の頭部に直線性維持部23が直接当たらないため、乳幼児の快適性を維持することができる。
【0040】
(直線性維持部の変形例)
図8および
図9を参照して、本実施の形態の直線性維持部23の変形例について説明する。
図9では、ヘッドサポート14および頭部サポート部20Aを模式的に示している。上述した直線性維持部23は、頭中央部21の全横幅に亘って設けられていたが、
図8に示すように、全横幅に設けられていなくてもよい。具体的には、直線性維持部23の両端部は、一対の頭側部22に連結されておらず、頭中央部21の中央位置に独立して設けられていてもよい。
【0041】
本実施の形態の直線性維持部23は、前方に向かって突出する隆起部であったが、たとえば、曲げ弾性を有する板ばね23Aであってもよい。板ばね23Aは、曲げ力に対して曲げを小さくする復元力を発揮するものであり、板ばね23Aは、たとえば棒状であり、横幅方向に延びている。具体的には、板ばね23Aは、頭中央部21の上縁に沿って設けられ、布材で形成される表面および裏面内に位置し、露出しないように設けられている。
【0042】
図9を参照して、板ばね23Aの作用について説明する。
図9においても、
図7と同様に、ヘッドサポート14および頭部サポート部20Aを模式的に示している。上述のように、ヘッドサポート14の一対の側壁部16の対向する内面の間隔(寸法)は、W1である。それに対し、頭部サポート部20A(頭中央部21および一対の頭側部22)の横幅寸法はW3であり、板ばね23Aの横幅寸法がW4である。本実施の形態の頭部サポート部20は、W3>W1>W4となるように設定されている。
【0043】
図9(B)に示すように、ヘッドサポート14の立壁部15に乳幼児用シート2の頭中央部21を当接させ、ヘッドサポート14の一対の側壁部16に乳幼児用シート2の頭側部22をそれぞれ当接させる。すると、頭中央部21の横幅寸法W3および板ばね23Aの横幅寸法W4はヘッドサポート14の一対の側壁部16の対向する内面の間隔W1よりも小さいものの、板ばね23Aが直線の状態を維持し、一対の側壁部16に対する突っ張り力を発揮する。これにより、頭部サポート部20の一対の頭側部22は、ヘッドサポート14の一対の側壁部16に対してそれぞれ押し付けられ、頭部サポート部20がヘッドサポート14に固定される。このように、W3>W1となるように設定されることで、W1>W4となるように設定した場合であっても、係合部材を設けることなく、乳幼児用シート2をヘッドサポート14に取り付けることができる。つまり、W3>W1となるように設定することが重要であり、板ばね23Aの横幅寸法の大きさはその作用に影響しない。
【0044】
図10を参照して、本実施の形態の直線性維持部23の他の変形例について説明する。
図10は、頭部サポート部の他の変形例を示す模式図であり、(A)は正面図であり、(B)はそのX-X線の断面図である。本変形例の頭保持部20Bは、上記した
図8,
図9の変形例と同様に、W3>W1(W3:頭部サポート部20Bの横幅寸法、W1:ヘッドサポート14の一対の側壁部16の対向する内面の間隔)である。本変形例の直線性維持部23Bは、頭中央部21全面に沿って設けられている。直線性維持部23Bは、材質および形状は限定されないが、たとえば矩形形状であり、曲げ弾性を有する板ばねであってもよい。板ばね23Bは、布材で形成される頭中央部21の表面および裏面内に位置し、露出しないように設けられている。なお、本変形例の板バネ23Bは、上述した変形例と同様に棒状に形成されて、頭中央部21の上端部以外の位置、たとえば縦方向中央位置などに設けられていてもよい。
【0045】
なお、本変形例の頭保持部20Bは、頭中央部21の両側方に一対の頭側部22が設けられているが、一対の頭側部22は設けられていなくてもよい。その場合であっても、W3>W1となるように設定されることが望ましい。そのように構成することで、係合部材を設けることなく、乳幼児用シート2の頭保持部20Bをヘッドサポート14に取り付けることができる。
【0046】
(背部サポート部)
次に、
図2~
図4を参照して、背部サポート部40について説明する。背部サポート部40は、チャイルドシート1の背部13(
図1(B))に面する背中央部41と、背部13の両側方から立ち上がる部分に面する一対の背側部42とを含む。これらの背中央部41および一対の背側部42は、一体的に形成されており、上述したウレタンフォームなどの芯材を熱加工して凹凸を形成することにより形成される。
【0047】
頭部サポート部20と背部サポート部40との境界部には、一対の肩ベルト17cをそれぞれ通過させる一対の肩ベルト通し開口31が設けられる。頭部サポート部20と背部サポート部40とは、その中央部において連続しており、一対の肩ベルト通し開口31は、その両端部が内方に向かって切り欠かれることで形成される。一対の肩ベルト通し開口31は、頭中央部21の下端縁と背中央部41の上端縁が接している。一対の肩ベルト通し開口31は、切欠き部ではなく、左右に延びる一対の貫通孔であってもよい。この一対の肩ベルト通し開口31に肩ベルト17cを通過させることで、乳幼児用シート2を座席本体11上に取り付けることができる。
【0048】
背中央部41は、平坦な面である。背中央部41の中央部は、上述した頭中央部21と縦方向に連なって設けられている。
図2および
図4に示すように、背中央部41の下方位置には、背部13側(後側)に向かって同一厚みで突出する背部クッション44が設けられる。背部クッション44は、背中央部41の横幅と略同幅である。背部クッション44は、チャイルドシート1に取り付けた場合に、チャイルドシート1の背部13の段差を埋めて、乗り心地を向上させる役割を果たす。背部クッション44の役割については後述する。なお、背部クッション44は、後方に向かって突出するだけでなく、前方に向かって突出していてもよい。
【0049】
背側部42は、背中央部41と同じく平坦な面である。背側部42の上方位置には、乳幼児側に向かって隆起する肩部クッション43が設けられる。
図3に示すように、肩部クッション43は、乳幼児用シート2の中で最も厚さが厚い部分である。肩部クッション43が設けられることで、乳幼児の肩をしっかりと保護することができ、体の小さい乳幼児の体をしっかりと包み込むことができる。
【0050】
図2に示すように、背部クッション44の両側縁と、一対の背側部42の内側縁との境界部には、一対の腰ベルト17a(
図1(A))をそれぞれ通過させる一対の腰ベルト通し開口51が設けられる。一対の腰ベルト通し開口51は、背部クッション44と背側部42との境界部において、上方に向かって切り欠かれることで形成される。一対の腰ベルト通し開口51は、切欠き部ではなく一対の貫通孔であってもよい。本実施の形態の背部サポート部40は、背中央部41および背側部42、背部クッション44、肩部クッション43の順で厚さが厚くなっている。なお、背中央部41、背側部42、および頭中央部21は、略同一厚みであり、肩部クッション43の厚みは、頭側部22の厚みよりも厚い。
【0051】
(座部サポート部)
次に、
図11~
図14を参照して、座部サポート部60について説明する。座部サポート部60は、チャイルドシート1の座部12(
図1(B))に面する座部中央部61と、座部12の両側方から立ち上がる部分に面する一対の座部側部69とを含む。これらの座部中央部61および一対の座部側部69は、一体的に形成されており、上述したウレタンフォームなどの芯材を熱加工して凹凸を形成することにより形成される。座部サポート部60は、背部サポート部40の背部クッション44の下方に連続している。
【0052】
座部中央部61には、その下方端から縦方向に延び、股ベルト17bを通過させる股ベルト通し開口71を含む。股ベルト通し開口71は、上述した背部サポート部20の下端に接する位置にまで延びている。座部中央部61は、股ベルト通し開口71によって第1座部サポート領域62と、第2座部サポート領域63とに分割されていることが好ましい。つまり、第1座部サポート領域62と第2座部サポート領域63とは、股ベルト通し開口71によって、左右に二股に分かれている。股ベルト通し開口71は、上下に延びる切欠きであり、第1座部サポート領域62の右端と第2座部サポート領域63の左端とは接している。
【0053】
図3に示すように、座部側部69は、平坦な面である。座部側部69が設けられることで、乳幼児の太腿部をしっかりと保護することができ、体の小さい乳幼児の体をしっかりと包み込むことができる。座部側部69は、座部中央部61の最大厚さ(山部65の厚さ)よりも薄い。
【0054】
第1座部サポート領域62と第2座部サポート領域63は、股ベルト通し開口71を中心に左右対称に設けられるため、第1座部サポート領域62についてのみ説明する。第1座部サポート領域62は、横方向に延び、縦方向に間隔をあけて設けられる複数の溝部64と、溝部64によって仕切られた複数の山部65とを含む。溝部64および山部65ともに縦方向に等間隔に設けられ、具体的にはそれぞれ7つ設けられている。溝部64および山部65は、第1座部サポート領域62の横方向に沿って連続して延びているが、断続的に延びていてもよい。
【0055】
溝部64は、乳幼児用シート2をチャイルドシート1の座席本体11に取り付けた場合に、座部12の下端と背部13の後端部とで形成される屈曲角度に合わせて屈曲する「屈曲部」の役割を果たす。チャイルドシート1が椅子状態で使用される場合、座部12と背部13とがなす角度は略直角となるが、第1座部サポート領域62も溝部64で屈曲し、山部65同士のなす角度が直角となる。溝部64および山部65の機能については、後述する。
【0056】
図12は、本実施の形態の溝部および山部の一部分を示す縦断面図である。
図12の矢印Cで示す方向は乳幼児側(前方)であり、その反対方向は座席本体側(後方)である。
図12に示すように、第1座部サポート領域62は、乳幼児の臀部側に面する表面67と、チャイルドシート1の座席本体11に面する裏面66とを含む。表面67および裏面66は、たとえば布材などで形成されるカバー材である。表面67および裏面66の間には、柔らかくて弾力性のある材料により形成されるクッション材68が設けられる。つまり、クッション材68は、表面67および裏面66により内包されている。
【0057】
溝部64は、山部65より厚さが薄い部分である。換言すると、溝部64は、山部67よりも凹んでいる部分であり、その一部または全部が凹部により構成されている部分である。同図に示すように、本実施の形態の溝部64の凹部形状は、山部65の端部から縦方向に連なる一対の斜面部と、一対の斜面部の間に設けられる底面部とにより形成されている。同図において、溝部64の斜面部と底面部とがなす角度は、鈍角であるが、たとえば直角や鋭角などであってもよいし、斜面部と底面部が滑らかに連なる円弧形状であってもよいし、底面部が形成されない断面視V字形状で形成されていてもよく、溝部64の凹部形状は限定されない。
【0058】
溝部64の幅S(縦方向の寸法)は、1mm以上20mm以下である。1mm未満であれば、座部サポート部60を効率よく屈曲させることができず、20mmを超えると、溝部64の面積が大きくなりクッション性を維持することができないからである。好ましくは、溝部64の幅Sは、3mm以上10mm以下である。
【0059】
山部65は、溝部64と溝部64の間に位置し、溝部64よりも厚みが厚い部分である。
図11に示すように、山部65は、平面視横長の矩形形状であり、上方から下方に向かうにつれ横幅が大きくなっている。
図12に示すように、山部65の厚みT2(前後方向の寸法)は、10mm以上であることが好ましい。10mm未満であると、薄すぎてクッション性を維持することができないからである。
図12では、山部65は、表面67および裏面66において平坦な面で形成されるが、円弧面で形成されていてもよい。
【0060】
山部65の厚みは、溝部64の厚みの1.3倍以上であることが好ましい。1.3倍未満であると、効率よく屈曲させることができない。
【0061】
山部65の間隔Mは、溝部64の幅Sの3倍以上大きいことが好ましい。具体的には、山部65の間隔(縦方向の寸法)Mは、5mm以上100mm以下である。5mm未満であればクッション性を維持することができない。100mmを超えると、山部65を複数形成することができない。好ましくは、山部65の間隔Mは、20mm以上70mm以下である。
【0062】
本実施の形態の溝部64および山部65は、表面67および裏面66のいずれの面に設けられている。さらに、表面67および裏面66のカバー材の間に設けられるクッション材68は、第1座部サポート領域62の縦方向において連続的に延びており、外方から熱プレスされることにより、溝部64に面する部分で厚さ方向に圧縮されている。これにより、本実施の形態の溝部64および山部65が形成される。
【0063】
(溝部および山部の変形例)
図13を参照して、第1座部サポート領域に形成される溝部および山部の変形例について説明する。
図13(A)に示すように、第1座部サポート領域62Aは、上記実施の形態と同様に、表面67および裏面66のいずれの面にも溝部64および山部65が設けられているが、表面67および裏面66のカバー材の間に設けられるクッション材68Aにおいて異なっている。本変形例では、クッション材68Aが、縦方向において連続的に延びておらず、溝部64に面する部分で分断されている。つまり、クッション材68Aは、山部65毎に設けられている。
【0064】
図13(B)に示すように、第1座部サポート領域62Bは、上記変形例と同様に、クッション材68Bが縦方向において連続的に延びておらず、溝部64Bに面する部分で分断されているが、溝部64Bおよび山部65Bが形成される面において異なっている。本変形例では、表面67にだけ溝部64Bおよび山部65Bが設けられ、裏面66が平坦になっている。
【0065】
図13(C)に示すように、第1座部サポート領域62Cは、上記実施の形態(
図12)と同様に、クッション材68Cが縦方向において連続的に延びているが、溝部64Cおよび山部65Cが形成される面において異なっている。本変形例では、裏面66にだけ溝部64Cおよび山部65Cが設けられ、表面67が平坦になっている。
【0066】
図13(A)~(C)に示すように、座部サポート部60に形成される溝部64,64B,64Cおよび山部65,65B,65Cの様々な構成を示したが、上述した構成に限定されず、種々の態様を取り得る。つまり、溝部64および山部65は、少なくとも表面67および裏面66のいずれか一方に設けられていればよい。さらに、表面67および裏面66に内包されるクッション材68についても、連続して設けられてよいし、溝部64毎に分断されていてもよい。
【0067】
また、上記実施の形態(
図12)および変形例(
図13)では、クッション材68を熱圧縮することで溝部64,64B,64Cを形成していたが、表面67および裏面66を縫製により縫い付けることで形成してもよい。つまり、溝部64,64B,64Cは、縫い目と、縫い目により表面67および裏面66に形成される厚み方向の傾斜面とで形成されていてもよい。その場合、クッション材68が縦方向に連続的に延びていて、表面67、裏面66、およびクッション材68を縫い付けてもよいし、表面67と裏面66だけが縫い付けられて、クッション材68がその間に配置されていてもよい。
【0068】
なお、座部サポート部60を座席本体11に合わせて屈曲させる場合、表面67側に圧縮力がかかり、裏面66に引っ張り力がかかる。そのため、表面67を曲げやすくするためには、裏面66に係る引っ張り力を減ずるために、少なくとも裏面66に溝部64を設けることが好ましい。そのため、溝部64を裏面66だけに設ける場合は、溝部64の幅は1mm以下の切り込みであってもよい。ただし、溝部64を表面67だけに設ける場合は、表面67に生じる圧縮力を減ずるために、溝部64の幅を太く、たとえば2mm以上にしなければならないことに留意が必要である。
【0069】
(溝部および山部の作用)
次に、
図14を参照して、溝部および山部の作用について説明する。
図14は、乳幼児用シートをチャイルドシートに取り付けた状態を示す模式図であり、(A)は乳幼児が小さい場合であり、(B)は乳幼児が成長した場合を示している。チャイルドシート1の背部13には、スライド部材19が設けられる。スライド部材19は、ヘッドサポート14と、一対の肩ベルト通し穴19aとを含む。スライド部材19は、子供の成長に合わせて上下に移動可能であり、乳幼児の体が小さい場合は下方に位置し(
図14(A))、乳幼児の体が大きくなると上方に位置する(
図14(B))。上述した直線性維持部23および肩ベルト通し開口31に肩ベルト17cを通過させることによって、乳幼児用シート2がチャイルドシート1に取り付けられる。これにより、スライド部材19を上下に移動させることに伴って、乳幼児用シート2も上下に移動することになる。
【0070】
図14(A)に示すように、乳幼児が小さい場合は、座高が低いため、ヘッドサポート14を低い位置にする。乳幼児用シート2の座部サポート部60には、縦方向に複数の溝部64および山部65が設けられている。そのため、乳幼児用シート2は、チャイルドシート1の背部13と座部12の屈曲部と対応する溝部64で折れ曲がる。
図14(A)では、上から3段目の山部65と4段目の山部65の間に設けられる溝部64で屈曲している。
【0071】
図14(B)に示すように、乳幼児が成長した場合は、座高が高くなるため、ヘッドサポート14を高い位置にスライド移動させる。チャイルドシート1の背部13と座部12の屈曲部と対応する溝部64で折れ曲がる。
図14(B)では、上から4段目の山部65と5段目の山部65の間に設けられる溝部64で屈曲している。このように、チャイルドシート1への取り付け位置に応じて、選択的に溝部64で屈曲することが可能となる。
【0072】
本実施の形態の乳幼児用シート2は、縦方向に間隔をあけて複数の溝部64および山部65が設けられているため、子供の成長に合わせて座部サポート部60を溝部64で屈曲させることができ、乳幼児の成長に応じた位置調節を適切に行うことができる。さらに、乳幼児の体が直接載置される乳幼児用シート2をチャイルドシート1の座席本体11に適切に沿わせることができるため、乳幼児の姿勢を適切に保つことができる。さらに、乳幼児用シート2を座席本体11の屈曲部に沿わせた形状にすることができるため、屈曲部での折れ曲がりをスマートにすることができるため、乳幼児用シート2の見栄えを向上させることができる。
【0073】
また、股ベルト通し開口71により第1座部サポート領域62および第2座部サポート領域63が完全に独立して設けられるため、それぞれの溝部64の横幅が小さくなる。これにより、より効率よくチャイルドシート1の座席本体11に沿わせて溝部64で屈曲させることが可能となる。
【0074】
(チャイルドシートをベッド状態で使用する場合)
次に、
図15を参照して、チャイルドシートをベッド状態で使用する場合について説明する。
図15は、本実施の形態の乳幼児用シート2が取り付けられるベッド状態のチャイルドシートを示す図であり、(A)はチャイルドシートの斜視図であり、(B)はチャイルドシートの縦断面図であり、(C)は乳幼児用シートをベッド状態のチャイルドシートに取り付けた状態を示す縦断面図である。
【0075】
図15(A),(B)を参照して、チャイルドシート1の背部13には、上下にスライド可能なスライド部材19が設けられている。上述のように、スライド部材19は、ヘッドサポート14と、一対の肩ベルト通し穴19aとを含む。スライド部材19の下端と背部13との間には、前後方向の段差部19cが設けられる。この段差部19cは、チャイルドシート1をベッド状態で使用する場合には、乳幼児の背中に当たる場合があり、乳幼児にとって不快に感じる場合がある。
【0076】
そのため、本実施の形態の乳幼児用シート2は、背部サポート部40に背部クッション44を設けている。
図15(C)に示すように、乳幼児用シート2をスライド部材19に固定し、スライド部材19と共に乳幼児用シート2を上下に移動するように取り付ける。背部クッション44が段差部19cに嵌まり込むため、背もたれ部を段差のない滑らかな平坦面にすることができる。これにより、チャイルドシート1をベッド状態にした場合でも乳幼児の寝心地を快適にすることができる。
【0077】
また、同図に示すように、チャイルドシート1をベッド状態にした場合は、座部12の先端部に上方に立ち上がるフットガード部12aが設けられる。そのため、座部12の先端とフットガード部12aの下端の屈曲部に沿うように、座部サポート部60の後端部に位置する溝部64で折り曲げて山部65を立ち上げるようにしてもよい。このように、溝部64は、チャイルドシート1が椅子状態の場合だけでなく、ベッド状態の場合にも、屈曲部に沿って屈曲することができるため、子供の成長に合わせて快適な空間にすることができる。
【0078】
(変形例)
なお、本実施の形態の乳幼児用シート2は、サポート部20,40,60が設けられていたが、乳幼児の頭に当接する頭部サポート部20だけであっても乳幼児用シートとして機能する。また、一例として、頭部サポート部20と背部サポート部40とが設けられてるだけのシートや、座部サポート部60と背部サポート部40とが設けられているだけのシートであってもよい。
【0079】
本実施の形態の頭サポート部20は、頭中央部21と一対の頭側部22と隆起部23とを含むとして説明したが、一対の頭側部22は必須の構成ではない。
【0080】
また、本実施の形態の乳幼児用シート2は、頭部サポート部20に直線性維持部23が設けられ、座部サポート部60に溝部64および山部65が設けられていたが、少なくとも一方が形成されていれば足りる。
【0081】
本実施の形態の乳幼児用シート2は、サポート部20,40,60が一体的に形成されていたが、各サポート部20,40,60が独立して設けられ、それらが縫い付けられていてもよいし、たとえば紐、面ファスナなどの連結部材を介して連結されていてもよい。
【0082】
本実施の形態の座部サポート部60は、溝部64および山部65が露出していたが、溝部64および山部65が薄いシートによって覆われていて、溝部64および山部65が外観から視認できなくてもよい。
【0083】
本実施の形態の乳幼児用シート2は、一対の肩ベルト通し開口31、一対の腰ベルト通し開口51、および股ベルト通し開口71が設けられていたが、必須の構成ではないし、切り欠きや貫通孔など、その形状も限定されない。また、股ベルト通し開口71は、下端部から上方に延び、股ベルト通し開口71によって、座部サポート部60が左右に二股に分かれていたが、そのような形状に限定されず、座部サポート部60の略中央部に設けられる上下に延びる貫通孔であってもよい。
【0084】
本実施の形態の乳幼児用シート2は、チャイルドシート1の座席本体11に対して取り外し可能に設けられ、乳幼児用シート2単体として別個に販売されるが、チャイルドシート1の座席本体11上にあらかじめ取り付けられていて、座席本体11と一体的に設けられて販売されていてもよい。
【0085】
一例として、乳幼児用シート2をチャイルドシート1のスライド部材19に取り付ける例を示したが、乳幼児用シート2は、座席付き育児器具の座席本体11の上に載置されていればよい。その場合、必ずしもベルト17a,17b,17cなどによって座席本体11に取り付けられていなくてもよいし、直線性維持部23だけで座席本体に取り付けられていてもよい。
【0086】
以上、図面を参照してこの発明の実施の形態を説明したが、この発明は、図示した実施の形態のものに限定されない。図示した実施の形態に対して、この発明と同一の範囲内において、あるいは均等の範囲内において、種々の修正や変形を加えることが可能である。
【符号の説明】
【0087】
1 チャイルドシート、2 乳幼児用シート、11 座席本体、12 座部、13 背部、14 ヘッドサポート、15 立壁部、16 側壁部、20,20A,20B 頭部サポート部、23 隆起部(直線性維持部)、23A,23B 板ばね(直線性維持部)、40 背部サポート部、60 座部サポート部、62,62A,62B,62C 第1座部サポート領域、63 第2座部サポート領域、64,64B,64C 溝部、65 山部、66 裏面、67 表面、68,68A,68B,68C クッション材、71 股ベルト通し開口。