(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024136548
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】回路装置、発振器
(51)【国際特許分類】
H03B 5/32 20060101AFI20240927BHJP
【FI】
H03B5/32 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023047697
(22)【出願日】2023-03-24
(71)【出願人】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104710
【弁理士】
【氏名又は名称】竹腰 昇
(74)【代理人】
【識別番号】100090479
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 一
(74)【代理人】
【識別番号】100124682
【弁理士】
【氏名又は名称】黒田 泰
(74)【代理人】
【識別番号】100166523
【弁理士】
【氏名又は名称】西河 宏晃
(72)【発明者】
【氏名】板坂 洋佑
(72)【発明者】
【氏名】野宮 崇
【テーマコード(参考)】
5J079
【Fターム(参考)】
5J079AA02
5J079AA04
5J079BA02
5J079BA04
5J079BA41
5J079CB02
5J079DA12
5J079DA22
5J079DB01
5J079FA02
5J079FA05
5J079FA09
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5J079FA21
5J079FB02
5J079FB48
5J079GA02
5J079GA04
5J079GA09
5J079JA06
(57)【要約】
【課題】低ノイズ化を実現しながら温度補償の精度低下等を防止できる回路装置等の提供。
【解決手段】回路装置20は、出力クロック信号CKQの位相ノイズが低い第1モードと、消費電力が小さい第2モードとを切り替え可能であり、発振信号OSCを生成する発振回路30と、出力クロック信号CKQを出力する出力回路80と、温度検出信号を出力する温度センサー71と、温度検出信号に基づいて発振周波数の温度補償を行う温度補償回路70と、制御回路60を含む。制御回路60は、第1モードにおいて発振回路30に供給される電源電圧VDDLが第2モードにおいて供給される電源電圧VDDLよりも高くなるように制御する。また制御回路60は、温度補償回路70に供給される基準電圧VH、VL及び温度センサー71に供給される基準電流IRFの少なくとも一方が、第1モードと第2モードとで変化しないように制御する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第2モードに比べて出力クロック信号の位相ノイズが低い第1モードと、前記第1モードに比べて消費電力が小さい前記第2モードと、を切り替え可能な回路装置であって、
発振信号を生成する発振回路と、
前記発振信号に基づく前記出力クロック信号を出力する出力回路と、
温度検出信号を出力する温度センサーと、
前記温度検出信号に基づいて前記発振回路の発振周波数の温度補償を行う温度補償回路と、
前記第1モードにおいて前記発振回路に供給される電源電圧が前記第2モードにおいて前記発振回路に供給される前記電源電圧よりも高くなるように制御すると共に、前記電源電圧に基づき前記温度補償回路に供給される基準電圧、及び前記電源電圧に基づき前記温度センサーに供給される基準電流の少なくとも一方が、前記第1モードと前記第2モードとで変化しないように制御する制御回路と、
を含むことを特徴とする回路装置。
【請求項2】
請求項1に記載の回路装置において、
前記電源電圧に基づき前記基準電圧を生成して、前記温度補償回路に供給する基準電圧生成回路を含み、
前記基準電圧生成回路は、
前記第1モードと前記第2モードとで電圧が変化しないように制御される前記基準電圧を前記温度補償回路に供給することを特徴とする回路装置。
【請求項3】
請求項2に記載の回路装置において、
前記基準電圧生成回路は、
前記電源電圧が供給される電源ノードとGNDノードとの間に直列に設けられる複数の抵抗と、
前記複数の抵抗のうちの1つの抵抗と並列に設けられるスイッチと、
を含み、
前記第1モードにおいて前記スイッチがオフになり、前記第2モードにおいて前記スイッチがオンになることを特徴とする回路装置。
【請求項4】
請求項3に記載の回路装置において、
前記複数の抵抗に流れる電流をIAとし、前記第1モードでの前記電源電圧をV1とし、前記第2モードでの前記電源電圧をV2とし、前記スイッチと並列に設けられる前記抵抗の抵抗値をR1としたときに、R1=(V1-V2)/IAであることを特徴とする回路装置。
【請求項5】
請求項1に記載の回路装置において、
前記電源電圧に基づき前記基準電流を生成して、前記温度センサーに供給する基準電流生成回路を含み、
前記基準電流生成回路は、
前記第1モードと前記第2モードとで電流が変化しないように制御される前記基準電流を前記温度センサーに供給することを特徴とする回路装置。
【請求項6】
請求項5に記載の回路装置において、
前記基準電流生成回路は、
前記電源電圧が供給される電源ノードとGNDノードとの間に直列に設けられる複数の抵抗及びコレクターとベースが接続されたバイポーラートランジスターと、
前記複数の抵抗のうちの1つの抵抗と並列に設けられるスイッチと、
を含み、
前記第1モードにおいて前記スイッチがオフになり、前記第1モードにおいて前記スイッチがオンになることを特徴とする回路装置。
【請求項7】
請求項6に記載の回路装置において、
前記基準電流をIRFとし、前記第1モードでの前記電源電圧をV1とし、前記第2モードでの前記電源電圧をV2とし、前記スイッチと並列に設けられる前記抵抗の抵抗値をR1としたときに、R1=(V1-V2)/IRFであることを特徴とする回路装置。
【請求項8】
請求項5乃至7のいずれか一項に記載の回路装置において、
前記温度センサーは、
前記基準電流をミラーした電流がコレクターに供給される第1バイポーラートランジスターと、
前記第1バイポーラートランジスターのベースとコレクターとの間に設けられる第1抵抗と、
前記第1バイポーラートランジスターのエミッターとGNDノードとの間に設けられ、抵抗値が可変の第2抵抗と、
を含むことを特徴とする回路装置。
【請求項9】
第2モードに比べて出力クロック信号の位相ノイズが低い第1モードと、前記第1モードに比べて消費電力が小さい前記第2モードと、を切り替え可能な発振器であって、
振動子と
回路装置と、
を含み、
前記回路装置は、
前記振動子を発振させて発振信号を生成する発振回路と、
前記発振信号に基づく前記出力クロック信号を出力する出力回路と、
温度検出信号を出力する温度センサーと、
前記温度検出信号に基づいて前記発振回路の発振周波数の温度補償を行う温度補償回路と、
前記第1モードにおいて前記発振回路に供給される電源電圧が前記第2モードにおいて前記発振回路に供給される前記電源電圧よりも高くなるように制御すると共に、前記電源電圧に基づき前記温度補償回路に供給される基準電圧、及び前記電源電圧に基づき前記温度センサーに供給される基準電流の少なくとも一方が、前記第1モードと前記第2モードとで変化しないように制御する制御回路と、
を含むことを特徴とする発振器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回路装置、発振器等に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、温度補償回路からの温度補償電圧や周波数調整回路からの周波数調整電圧などを電圧制御回路に選択的に供給することで、1つのICによりTCXOモード、VCXOモード、SPXOモードなどを実現可能な発振器が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1には、動作モードを切り替えることが記載されているが、電源電圧をモードに応じて切り替えることや、それによる影響については考慮されていなかった。また消費電力が異なる複数のモードを切り替えることは記載されていない。例えば特許文献1の従来技術において、これらのモードを追加した場合、電源電圧が変化することで温度補償の精度が低下するおそれがあった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一態様は、第2モードに比べて出力クロック信号の位相ノイズが低い第1モードと、前記第1モードに比べて消費電力が小さい前記第2モードと、を切り替え可能な回路装置であって、発振信号を生成する発振回路と、前記発振信号に基づく前記出力クロック信号を出力する出力回路と、温度検出信号を出力する温度センサーと、前記温度検出信号に基づいて前記発振回路の発振周波数の温度補償を行う温度補償回路と、前記第1モードにおいて前記発振回路に供給される電源電圧が前記第2モードにおいて前記発振回路に供給される前記電源電圧よりも高くなるように制御すると共に、前記電源電圧に基づき前記温度補償回路に供給される基準電圧、及び前記電源電圧に基づき前記温度センサーに供給される基準電流の少なくとも一方が、前記第1モードと前記第2モードとで変化しないように制御する制御回路と、を含む回路装置に関係する。
【0006】
本開示の他の態様は、第2モードに比べて出力クロック信号の位相ノイズが低い第1モードと、前記第1モードに比べて消費電力が小さい前記第2モードと、を切り替え可能な発振器であって、振動子と回路装置と、を含み、前記回路装置は、前記振動子を発振させて発振信号を生成する発振回路と、前記発振信号に基づく前記出力クロック信号を出力する出力回路と、温度検出信号を出力する温度センサーと、前記温度検出信号に基づいて前記発振回路の発振周波数の温度補償を行う温度補償回路と、前記第1モードにおいて前記発振回路に供給される電源電圧が前記第2モードにおいて前記発振回路に供給される前記電源電圧よりも高くなるように制御すると共に、前記電源電圧に基づき前記温度補償回路に供給される基準電圧、及び前記電源電圧に基づき前記温度センサーに供給される基準電流の少なくとも一方が、前記第1モードと前記第2モードとで変化しないように制御する制御回路と、を含む発振器に関係する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図2】本実施形態の回路装置及び発振器の詳細な構成例。
【
図3】本実施形態の回路装置及び発振器の詳細な他の構成例。
【
図10】波形整形回路の駆動能力と位相ノイズの関係の説明図。
【
図11】波形整形回路でのトランジスターのオン、オフ状態の説明図。
【
図12】発振振幅と波形整形回路の電源電圧を異ならせる手法の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本実施形態について説明する。なお、以下に説明する本実施形態は、特許請求の範囲の記載内容を不当に限定するものではない。また本実施形態で説明される構成の全てが必須構成要件であるとは限らない。
【0009】
1.回路装置、発振器
図1に本実施形態の回路装置20の構成例を示す。本実施形態の回路装置20は、発振回路30、出力回路80、温度補償回路70、温度センサー71、制御回路60を含む。また回路装置20は、基準電圧生成回路36、基準電流生成回路38、電源回路90を含むことができる。
【0010】
発振回路30は発振信号OSCを生成する。例えば発振回路30は振動子等を発振させることで発振信号OSCを生成する。或いは発振回路30はLC共振回路等により発振信号OSCを生成するものであってもよい。発振信号OSCは例えば正弦波の信号である。発振回路30は振動子等の駆動により発振信号OSCを生成するための駆動回路等を含む。
【0011】
出力回路80は、出力クロック信号CKQを出力する。例えば出力回路80は、発振信号OSCに基づく出力クロック信号CKQを出力する。例えば出力回路80は、発振信号OSCに基づくクロック信号をバッファリングすることで、出力クロック信号CKQを出力する。発振信号OSCに基づくクロック信号は例えば発振信号OSCを不図示の波形整形回路により波形整形した矩形波のクロック信号である。或いは出力回路80は、発振信号OSCに基づくクロック信号を分周又は周波数を逓倍した信号を出力クロック信号CKQとして出力してもよい。例えば発振回路30と出力回路80の間に後述する分周回路又はPLL回路等を設けて、クロック信号を分周回路により分周したり、或いはPLL回路により周波数を逓倍した出力クロック信号CKQを、出力回路80が出力してもよい。
【0012】
温度補償回路70は、発振回路30の発振周波数の温度補償を行う。温度補償は、温度変動による発振周波数の変動を抑制して補償する処理である。例えば温度補償は、発振信号OSCの周波数温度特性を補償する処理である。具体的には温度補償回路70は、温度センサー71からの温度検出信号に基づいて温度補償を行う。例えば温度補償回路70は、温度センサー71からの温度検出電圧に基づいて温度補償電圧を生成し、生成された温度補償電圧を、発振回路30が有する可変容量回路に対して出力することで、温度補償を行う。この場合には発振回路30の可変容量回路は、バラクター等の可変容量素子により実現される。例えば振動子10の周波数温度特性を補償する温度補償電圧が多項式により近似される場合に、温度補償回路70は、当該多項式の係数情報に基づいてアナログ方式の温度補償を行う。或いは温度補償回路70がデジタル方式の温度補償を行うようにしてもよい。この場合には、可変容量回路は、例えばキャパシターアレイと、キャパシターアレイに接続されるスイッチアレイとにより実現でき、温度補償回路70は、例えばロジック回路により実現できる。
【0013】
温度センサー71は温度を検出するセンサーである。具体的には温度センサー71は、環境の温度に応じて変化する温度依存電圧を、温度検出電圧として出力する。具体的には温度センサー71は、例えばPN接合の順方向電圧が有する温度依存性を用いることで、温度に依存して電圧が変化する温度検出電圧を出力する。なお温度センサー71としてデジタル方式の温度センサー回路を用いる変形実施も可能である。この場合には温度検出データをD/A変換して温度検出電圧を生成すればよい。また温度補償回路70や温度センサー71を設けない構成としてもよい。
【0014】
基準電圧生成回路36は基準電圧を生成する回路である。例えば基準電圧生成回路36は、電源電圧VDDLに基づき基準電圧VH、VLを生成して、温度補償回路70に供給する。基準電圧VHは、例えば高温側の温度範囲での温度補償のための基準電圧であり、例えば後述する
図6の基準電圧VH1、VH2に対応する。基準電圧VLは、例えば低温側の温度領域での温度補償のための基準電圧であり、例えば
図6の基準電圧VL1、L2に対応する。なお基準電圧生成回路36は、温度補償回路70に用いられる基準電圧VH、VL以外の基準電圧を生成してもよい。例えば基準電圧生成回路36は、発振回路30に用いられる基準電圧やバイアス設定用の基準電圧を生成してもよい。
【0015】
基準電流生成回路38は基準電流を生成する回路である。例えば基準電流生成回路38は、電源電圧VDDLに基づき基準電流IRFを生成して、温度センサー71に供給する。温度センサー71は、基準電流生成回路38からの基準電流IRFに基づいて、環境の温度に応じて変化する温度検出電圧等の温度検出信号を生成して出力する。なお基準電流生成回路38は、温度センサー71に用いられる基準電流IRF以外の基準電流を生成してもよい。例えば基準電流生成回路38は、温度センサー71以外のアナログ回路に用いられる基準電流を生成してもよい。
【0016】
制御回路60はロジック回路であり、種々の制御処理を行う。例えば制御回路60は、回路装置20の全体の制御を行ったり、回路装置20の動作シーケンスの制御を行う。また制御回路60は、発振回路30、基準電圧生成回路36、基準電流生成回路38、メモリー68、温度補償回路70、温度センサー71、出力回路80又は電源回路90等の制御を行ってもよい。制御回路60は、例えばゲートアレイ等の自動配置配線によるASIC(Application Specific Integrated Circuit)の回路により実現できる。
【0017】
電源回路90は、電源電圧VDDやグランド電圧GNDが供給されて、回路装置20の内部回路用の種々の電源電圧を内部回路に供給する。例えば電源回路90は、電源電圧VDDに基づいて電源電圧VDDLを生成して、発振回路30、基準電圧生成回路36、基準電流生成回路38などの電源電圧として供給する。電源電圧VDDLは、例えば外部からの電源電圧VDDをレギュレーターによりレギュレートした電圧であり、電源電圧VDDを降圧した電圧である。発振回路30は、電源電圧VDDLに基づいて振動子10を駆動して発振信号OSCを生成する発振動作を行う。基準電圧生成回路36は、電源電圧VDDLに基づいて基準電圧VH、VLを生成する。基準電流生成回路38は、電源電圧VDDLに基づいて基準電流IRFを生成する。
【0018】
ここで本実施形態の回路装置20は、位相ノイズが低い第1モードと、消費電力が小さい第2モードとの切替が可能になっている。即ち第1モードは、第2モードに比べて出力クロック信号CKQの位相ノイズが低いモードである。一方、第2モードは、第1モードに比べて回路装置20の消費電力が小さいモードである。例えば本実施形態の回路装置20では、不揮発性メモリーへの切り替え情報の記憶や、或いはヒューズ回路でのヒューズの設定などにより、第1モードと第2モードの切替が可能になっている。例えば不揮発性メモリーへの情報の記憶やヒューズの設定などにより、第1の製品では回路装置20が低ノイズモードである第1モードに設定され、第2の製品では回路装置20が低消費電力モードである第2モードに設定される。或いは、マイクロコンピューターなどの外部の処理装置による回路装置20のレジスターへの書き込みなどにより、第1モードと第2モードの切り替えが可能になるようにしてもよい。
【0019】
また本実施形態では制御回路60は、第1モードにおいて発振回路30に供給される電源電圧VDDLが第2モードにおいて発振回路30に供給される電源電圧VDDLよりも高くなるように制御する。例えば電源回路90が、制御回路60からの制御信号に基づいて、第1モードでは第2モードに比べて高い電源電圧VDDLを発振回路30に対して供給する。例えば電源回路90は、外部等からの電源電圧VDDのレギュレートを行って電源電圧VDDLを生成するレギュレーターを有している。そして制御回路60からの制御信号に基づいて、レギュレーターの抵抗分割回路での抵抗比を制御することで、電源電圧VDDLを制御できる。例えば第1モードでは第2モードに比べて電源電圧VDDLが高くなるように、制御回路60からの制御信号に基づいてレギュレーターの抵抗分割回路での抵抗比を制御する。このように第1モードでの発振回路30の電源電圧VDDLを高くすれば、発振信号OSCの振幅を大きくすることができ、低ノイズ化の実現が可能になる。例えば発振信号OSCの振幅が大きくなることで、発振信号OSCの波形整形を行う波形整形回路のP型のトランジスターとN型のトランジスターの両方がオンになる期間を短くでき、電源ノイズ等に起因する位相ノイズを低減できる。また発振信号OSCの振幅が大きくなることで、フロアノイズの影響を低減でき、低ノイズモードである第1モードを実現できるようになる。なお第1モードにおいて、発振回路30の駆動用のトランジスターに電流源が流す電流を、第2モードに比べて大きくする制御を行ってもよい。これにより第1モードでの更なる低ノイズ化を実現できるようになる。
【0020】
そして本実施形態では制御回路60は、温度補償回路70に供給される基準電圧VH、VL、及び温度センサー71に供給される基準電流IRFの少なくとも一方が、第1モードと第2モードとで変化しないように制御する。例えば基準電圧生成回路36が、制御回路60からの制御信号に基づいて、第1モードと第2モードとで変化しないように制御される基準電圧VH、VLを、温度補償回路70に供給する。また例えば基準電流生成回路38が、制御回路60からの制御信号に基づいて、第1モードと第2モードとで電流が変化しないように制御される基準電流IRFを温度センサー71に供給する。
【0021】
基準電圧VH、VLが、第1モードと第2モードとで変化しないようにする制御は、第1モードでの基準電圧VH、VLと第2モードでの基準電圧VH、VLとが同じ電圧に近づくようにする制御である。例えば制御回路60は、第1モードと第2モードとで基準電圧VH、VLが同じ電圧になるように制御する。同じ電圧は略同一の電圧を含む。基準電流IRFが、第1モードと第2モードとで変化しないようにする制御は、第1モードでの基準電流IRFと第2モードでの基準電流IRFとが同じ電流値に近づくようにする制御である。例えば制御回路60は、第1モードと第2モードとで基準電流IRFが同じ電流値になるように制御する。同じ電流値は略同一の電流値を含む。なお
図1では、基準電圧VH、VLと基準電流IRFの両方を、第1モードと第2モードとで変化しないように制御する場合の例を示しているが、基準電圧VH、VLと基準電流IRFの一方だけを、第1モードと第2モードとで変化しないように制御してもよい。
【0022】
このように本実施形態では、第1モードにおいて発振回路30に供給される電源電圧VDDLを、第2モードに比べて高くしている。このように第1モードで発振回路30に供給される電源電圧VDDLを高くすることで、低ノイズモードである第1モードを実現できる。しかしながら、基準電圧生成回路36は電源電圧VDDLに基づき基準電圧VH、VLを生成しているため、第1モードにおいて電源電圧VDDLが高くなると、基準電圧VH、VLも変化してしまうおそれがある。例えば第1モードにおいて基準電圧VH、VLが高い電圧に変化するなどの事態が生じる。このように基準電圧VH、VLが変化すると、温度補償回路70での温度補償に悪影響を与えて、温度補償がずれてしまい、温度補償の精度が低下する問題が発生する。また基準電流生成回路38は電源電圧VDDLに基づき基準電流IRFを生成しているため、第1モードにおいて電源電圧VDDLが高くなると、基準電流IRFも変化してしまうおそれがある。例えば第1モードにおいて基準電流IRFが大きな電流値に変化するなどの事態が生じる。このように基準電流IRFが変化すると、温度センサー71の温度検出に悪影響を与えて、温度センサー71の温度検出信号がずれてしまい、温度検出の精度が低下する問題が発生する。温度検出の精度が低下すると、温度補償の精度も低下してしまう。
【0023】
この点、本実施形態では、第1モードにおいて発振回路30に供給される電源電圧VDDLを第2モードに比べて高くすると共に、温度補償回路70に供給される基準電圧VH、VLや温度センサー71に供給される基準電流IRFを、第1モードと第2モードとで変化しないように制御している。このようにすれば第1モードにおいて電源電圧VDDLが高くなっても、基準電圧VH、VLや基準電流IRFが変化しないように制御されるため、基準電圧VH、VLや基準電流IRFの変化に起因する悪影響を低減できる。例えば温度補償の精度の低下や温度検出の精度の低下などを防止できるようになる。これにより回路装置20の出力クロック信号CKQの精度の低下等を防止することが可能になる。
【0024】
図2に本実施形態の回路装置20及び回路装置20を含む発振器4の詳細な構成例を示す。発振器4は振動子10と回路装置20を含む。振動子10は回路装置20に電気的に接続されている。例えば振動子10及び回路装置20を収納するパッケージの内部配線、ボンディングワイヤー又は金属バンプ等を用いて、振動子10と回路装置20は電気的に接続されている。なお回路装置20、発振器4は
図2や後述の
図3の構成には限定されず、これらの一部の構成要素を省略したり、他の構成要素を追加したり、一部の構成要素を他の構成要素に置き換えるなどの種々の変形実施が可能である。
【0025】
振動子10は、電気的な信号により機械的な振動を発生する素子である。振動子10は、例えば水晶振動片などの振動片により実現できる。例えば振動子10は、カット角がATカットやSCカットなどの厚みすべり振動する水晶振動片、音叉型水晶振動片、又は双音叉型水晶振動片などにより実現できる。例えば振動子10は、SPXO(Simple Packaged Crystal Oscillator)の発振器に内蔵される振動子であってもよいし、恒温槽を備えない温度補償型水晶発振器(TCXO)に内蔵されている振動子や、恒温槽を備える恒温槽型水晶発振器(OCXO)に内蔵されている振動子であってもよい。なお本実施形態の振動子10は、例えば厚みすべり振動型、音叉型又は双音叉型以外の振動片や、水晶以外の材料で形成された圧電振動片などの種々の振動片により実現することも可能である。例えば振動子10として、SAW(Surface Acoustic Wave)共振子や、シリコン基板を用いて形成されたシリコン製振動子としてのMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)振動子等を採用することも可能である。
【0026】
回路装置20は、IC(Integrated Circuit)と呼ばれる集積回路装置である。例えば回路装置20は、半導体プロセスにより製造されるICであり、半導体基板上に回路素子が形成された半導体チップである。そして回路装置20は、パッドPVDD、PGND、PX1、PX2、PCKを含む。なおクロック信号の出力イネーブル制御用のパッドなどを設けてもよい。パッドは、半導体チップである回路装置20の端子である。例えばパッド領域では、絶縁層であるパシベーション膜から金属層が露出しており、この露出した金属層により回路装置20の端子であるパッドが構成される。パッドPVDD、PGNDは、各々、電源パッド、グランドパッドである。外部の電源供給デバイスからの電源電圧VDDがパッドPVDDに供給される。パッドPGNDは、グランド電圧であるGNDが供給されるパッドである。GNDはVSSと呼ぶこともでき、グランド電圧は例えば接地電位である。本実施形態ではグランドを、適宜、GNDと記載する。例えばVDDは高電位側電源に対応し、GNDは低電位側電源に対応する。パッドPX1、PX2は、振動子10の接続用のパッドである。パッドPCKは、出力クロック信号CKQの出力用のパッドである。パッドPVDD、PGND、PCKは、各々、発振器4の外部接続用の外部端子である端子TVDD、TGND、TCKに電気的に接続される。例えばこれらの各パッドと各端子は、パッケージの内部配線、ボンディングワイヤー又は金属バンプ等を用いて電気的に接続される。
【0027】
発振回路30は振動子10を発振させる回路である。例えば発振回路30は、振動子10を発振させることで発振信号OSCを生成する。発振回路30は、例えば振動子10の一端及び他端に電気的に接続される発振用の駆動回路と、キャパシターや抵抗などの受動素子により実現できる。駆動回路は、例えばバイポーラートランジスターやCMOSのインバーター回路により実現できる。駆動回路は、発振回路30のコア回路であり、駆動回路が、振動子10を電圧駆動又は電流駆動することで、振動子10を発振させる。発振回路30としては、例えばインバーター型、ピアース型、コルピッツ型、又はハートレー型などの種々のタイプの発振回路を用いることができる。そして発振回路30は、パッドPX1、PX2を介して振動子10に電気的に接続される。パッドPX1、PX2は、振動子接続用のパッドである。発振回路30の発振用の駆動回路34は、パッドPX1とパッドPX2の間に設けられる。また発振回路30は不図示の可変容量回路を含むことができる。可変容量回路は、例えば振動子10の一端及び他端の少なくとも一方での容量を変化させる回路であり、可変容量回路の容量の調整により、発振回路30の発振周波数を調整できるようになっている。即ち可変容量回路がパッドPX1、PX2の少なくとも一方に電気的に接続されることで、発振回路30の負荷容量を可変に調整できるようになる。可変容量回路は、例えばバラクター等の可変容量素子により実現できる。例えば可変容量回路は少なくとも1つの可変容量素子により構成される。なお本実施形態における接続は電気的な接続である。電気的な接続は、電気信号が伝達可能に接続されていることであり、電気信号による情報の伝達が可能となる接続である。電気的な接続は受動素子等を介した接続であってもよい。
【0028】
波形整形回路40は、発振回路30からの発振信号OSCが入力され、発振信号OSCの波形整形を行う。例えば波形整形回路40は、発振信号OSCを矩形波のクロック信号CKに波形整形する。例えば波形整形回路40は、正弦波の発振信号OSCを波形整形して、矩形波のクロック信号CKを出力する。正弦波の発振信号OSCとは、高調波成分を含む正弦波信号も含むものとする。波形整形回路40は発振信号OSCの波形整形を行うための1又は複数のバッファー回路を含むことができる。
【0029】
メモリー68は回路装置20で用いられる各種の情報を記憶する。メモリー68は、例えば不揮発メモリーなどである。不揮発性メモリーはFAMOS(Floating gate Avalanche injection MOS)メモリー又はMONOS(Metal-Oxide-Nitride-Oxide-Silicon)メモリー等のEEPROMであるが、これに限らず、OTP(One Time Programmable)メモリー又はヒューズ型ROM等であってもよい。或いはメモリー68はRAM等の揮発性のメモリーにより実現してもよい。
【0030】
分周回路78は、波形整形回路40からのクロック信号CKを、設定された分周比で分周したクロック信号CKDを出力する。分周比の設定情報は例えばメモリー68やレジスターに記憶される。これにより出力回路80は、分周回路78により分周されたクロック信号CKDに対応する出力クロック信号CKQを出力できるようになる。或いは波形整形回路40と出力回路80との間に、クロック信号CKの周波数を逓倍するPLL回路を設けてもよい。このようにすれば出力回路80は、発振周波数を逓倍した周波数の出力クロック信号CKQを出力できるようになる。また本実施形態の回路装置20は、このような分周回路78やPLL回路を設けない構成であってもよい。
【0031】
出力回路80は、発振信号OSCに基づき生成されたクロック信号CKをバッファリングして出力する。例えば出力回路80は、波形整形回路40のクロック信号CKに基づく出力クロック信号CKQを出力する。
図2では出力回路80は、分周回路78からのクロック信号CKDをバッファリングして、出力クロック信号CKQとしてパッドPCKに出力している。例えば出力回路80は、シングルエンドのCMOSの信号形式で出力クロック信号CKQを出力する。或いは出力回路80は、LVDS(Low Voltage Differential Signaling)、PECL(Positive Emitter Coupled Logic)、HCSL(High Speed Current Steering Logic)、又は差動のCMOS(Complementary MOS)等の信号形式で、差動のクロック信号を出力する。
【0032】
電源回路90は、パッドPVDDからの電源電圧VDDやパッドPGNDからグランド電圧GNDが供給されて、回路装置20の内部回路用の種々の電源電圧を内部回路に供給する。例えば
図2では電源回路90は、電源電圧VDDに基づいて電源電圧VDDLを生成して、発振回路30、波形整形回路40、分周回路78、基準電圧生成回路36、基準電流生成回路38の電源電圧として供給している。電源電圧VDDLは、例えば外部からの電源電圧VDDをレギュレーターによりレギュレートした電圧であり、電源電圧VDDを降圧した電圧である。発振回路30は、電源電圧VDDLに基づいて振動子10を駆動して発振信号OSCを生成する発振動作を行う。また波形整形回路40は、電源電圧VDDLに基づいて発振信号OSCを波形整形して、波形整形後のクロック信号CKを出力する。なお電源回路90は、制御回路60、メモリー68、温度補償回路70又は温度センサー71等に供給する電源電圧も生成することができる。また出力回路80は例えば電源電圧VDDに基づき動作して出力クロック信号CKQを出力する。
【0033】
図3に回路装置20、発振器4の他の構成例を示す。
図3が
図2と異なるのは、
図3では電源回路90が、発振回路30に対して第1電源電圧VDDL1を供給し、波形整形回路40に対して、第1電源電圧VDDL1とは異なる第2電源電圧VDDL2を供給している点である。また
図3では、基準電圧生成回路36、基準電流生成回路38には第1電源電圧VDDL1が供給され、分周回路78には第2電源電圧VDDL2が供給されている。具体的には電源回路90はレギュレーター91、92を含む。そしてレギュレーター91が電源電圧VDDのレギュレートを行って、第1電源電圧VDDL1を生成し、レギュレーター92が電源電圧VDDのレギュレートを行って、第2電源電圧VDDL2を生成する。
【0034】
このように
図3では、発振回路30は、第1電源電圧VDDL1が供給されて動作し、波形整形回路40は、第1電源電圧VDDL1とは異なる第2電源電圧VDDL2が供給されて動作する。このようにすれば、発振回路30に供給される第1電源電圧VDDL1と、波形整形回路40に供給される第2電源電圧VDDL2とを個別に調整することが可能になる。これにより低ノイズモードと低消費電力モードを細かく調整できるようになる。
【0035】
例えば波形整形回路40は、発振信号OSCの振幅よりも小さい第2電源電圧VDDL2が供給されて動作する。例えば発振信号OSCの振幅を検出する不図示の振幅検出回路を設け、電源回路90が、発振振幅の検出結果に基づいて、発振信号OSCの振幅よりも小さくなるように第2電源電圧VDDL2を制御する。具体的には発振振幅の検出結果に基づいて、レギュレーター92の抵抗分割回路での抵抗比を制御することで、第2電源電圧VDDL2を制御できる。発振信号OSCの振幅は例えば発振信号OSCのピーク・ツー・ピーク電圧である。発振信号OSCの振幅は、例えば発振信号OSCの包絡線を検波することなどにより検出できる。このように第2電源電圧VDDL2を発振信号OSCの振幅よりも小さくすることで、後述するようにクロック信号CKの位相ノイズを低減でき、出力クロック信号CKQの位相ノイズを低減することが可能になる。
【0036】
そして
図2、
図3においても本実施形態では、第1モードにおいて発振回路30に供給される電源電圧VDDL又は第1電源電圧VDDL1が、第2モードにおいて発振回路30に供給される電源電圧VDDL又は第1電源電圧VDDL1よりも高くなるように制御される。また電源電圧VDDL又は第1電源電圧VDDL1に基づき温度補償回路70に供給される基準電圧VH、VL、及び電源電圧VDDL又は第1電源電圧VDDL1に基づき温度センサー71に供給される基準電流IRFの少なくとも一方が、第1モードと第2モードとで変化しないように制御される。このように第1モードにおいて発振回路30に供給される電源電圧VDDL又は第1電源電圧VDDL1が第2モードに比べて高くなることで、低ノイズ化を実現できる。そして本実施形態では、電源電圧VDDL又は第1電源電圧VDDL1が第1モードにおいて高くなった場合にも、温度補償回路70に供給される基準電圧VH、VL又は温度センサー71に供給される基準電流IRFが変化しないように制御される。従って、電源電圧VDDL又は第1電源電圧VDDL1の変化に起因する温度補償の精度や温度検出の精度の低下を防止でき、出力クロック信号CKQの精度の低下等を防止することが可能になる。なお以下の説明では、
図3における第1電源電圧VDDL1、第2電源電圧VDDL2を、適宜、総称して電源電圧VDDLと記載する。
【0037】
2.基準電圧生成回路、基準電流生成回路、温度補償回路
図4に基準電圧生成回路36の構成例を示す。なお基準電圧生成回路36は
図4の構成には限定されず、これらの一部の構成要素を省略したり、他の構成要素を追加したり、一部の構成要素を他の構成要素に置き換えるなどの種々の変形実施が可能である。
【0038】
本実施形態では、回路装置20は、電源電圧VDDLに基づき基準電圧VH、VLを生成して、温度補償回路70に供給する基準電圧生成回路36を含む。そして基準電圧生成回路36は、第1モードと第2モードとで変化しないように制御される基準電圧VH、VLを温度補償回路70に供給する。このようにすれば第1モードにおいて発振回路30に供給される電源電圧VDDLが高くなった場合にも、第1モードと第2モードとで変化しないように制御される基準電圧VH、VLが、基準電圧生成回路36から温度補償回路70に供給されるようになる。従って、発振回路30に供給される電源電圧VDDLが高くなることで低ノイズモードである第1モードを実現できると共に、電源電圧VDDLの変化に起因する温度補償の精度の低下を防止でき、出力クロック信号CKQの精度の低下等を防止できるようになる。
【0039】
具体的には
図4に示すように基準電圧生成回路36は、電源電圧VDDLが供給される電源ノードとGNDノードとの間に直列に設けられる複数の抵抗RH1~RH8を含む。また基準電圧生成回路36は抵抗RH9、RH10を含むことができる。抵抗RH1~RH8によりラダー抵抗回路37が構成される。また基準電圧生成回路36は、複数の抵抗RH1~RH8のうちの1つの抵抗と並列に設けられるスイッチSWCを含む。
図4では、一端がVDDLの電源ノードに接続され、他端がノードN1に接続される抵抗RH1と並列に、スイッチSWCが設けられている。スイッチSWCは制御回路60からの制御信号SCCによりオン、オフが制御される。スイッチSWCは例えばMOSのトランジスターなどにより実現できる。なお
図4では複数の抵抗として8個の抵抗RH1~RH8を設ける例を示したが、抵抗の個数はこれに限定されない。またスイッチSWCと並列に設けられる抵抗は、抵抗RH1以外の抵抗であってもよい。
【0040】
そして抵抗RH2と抵抗RH3の間のノードN2に生成された電圧が、抵抗RH9を介して基準電圧VRFとして出力される。この基準電圧VRFは、後述するように例えば発振回路30の可変容量素子の一端に供給される電圧である。可変容量素子の他端には温度補償電圧が供給される。なお発振回路30が複数の可変容量素子を有する場合に、異なる電圧レベルの複数の基準電圧VRFが生成されて、複数の可変容量素子の一端に供給される。また抵抗RH5と抵抗RH6の間のノードN5に生成された電圧が、抵抗RH10を介してバイアス電圧VBSとして出力される。このバイアス電圧VBSは、後述するように例えば発振回路30の発振信号OSCの中心振幅電圧として設定される電圧である。
【0041】
また抵抗RH3と抵抗RH4の間のノードN3、抵抗RH4と抵抗RH5の間のノードN4、抵抗RH6と抵抗RH7の間のノードN6、抵抗RH7と抵抗RH8の間のノードN7には、温度補償回路70で用いられる基準電圧VH2、VH1、VL2、VL1が生成される。基準電圧VH2、VH1は前述した基準電圧VHに対応し、基準電圧VL2、VL1は基準電圧VLに対応する。温度補償回路70は、これらの基準電圧VH2、VH1、VL2、VL1と温度検出電圧とに基づき生成された関数電流を用いて、温度補償電圧を生成する。
【0042】
そして本実施形態では、低ノイズモードである第1モードにおいてスイッチSWCがオフになり、低消費電力モードである第2モードにおいてスイッチSWCがオンになる。例えば制御回路60からの制御信号SCCに基づいて、第1モードにおいてスイッチSWCがオフになり、第2モードにおいてスイッチSWCがオンになる。このようにすれば、低消費電力化のために電源電圧VDDLが低い電圧に設定される第2モードでは、スイッチSWCがオンになることで、複数の抵抗RH1~RH8のうちの抵抗RH1の両端がスイッチSWCによりバイパスされるようになる。これにより抵抗RH1を除いた複数の抵抗RH2~RH8の抵抗分割比により設定された基準電圧VH2、VH1、VL2、VL1が、温度補償回路70に供給されるようになる。一方、低ノイズ化のために電源電圧VDDLが高い電圧に設定される第1モードでは、スイッチSWCがオフになることで、抵抗RH1の両端はバイパスされないようになる。これにより、抵抗RH2~RH8に対して抵抗RH1が加えられた複数の抵抗RH1~RH8の抵抗分割比により設定された基準電圧VH2、VH1、VL2、VL1が、温度補償回路70に供給されるようになる。従って、第1モードにおいて電源電圧VDDLが高くなっても、基準電圧VH2、VH1、VL2、VL1が第1モードと第2モードとで変化しないようにする制御が可能になる。これにより、電源電圧VDDLの変化に起因する温度補償の精度の低下を防止でき、出力クロック信号CKQの精度の低下等を防止できるようになる。
【0043】
例えば複数の抵抗に流れる電流をIAとし、第1モードでの電源電圧VDDLをV1とし、第2モードでの電源電圧VDDLをV2とする。ここで第1モードの方が第2モードよりも電源電圧VDDLが高いため、V1>V2の関係式が成り立つ。またスイッチSWCと並列に設けられる抵抗RH1と、抵抗RH2~RH8の抵抗値をR1~R8とする。この場合に、電源電圧VDDLがV1であり、スイッチSWCがオフである第1モードでは、V1=(R1+R2+R3+・・・・R8)×IAとなる。また電源電圧VDDLがV2であり、スイッチSWCがオンである第2モードでは、V2=(R2+R3+・・・・R8)×IAとなる。従って、スイッチSWCと並列に設けられる抵抗RH1の抵抗値R1について、R1=(V1-V2)/IAの関係が成り立つ。このようにスイッチSWCと並列に設けられる抵抗RH1の抵抗値をR1=(V1-V2)/IAに設定すれば、第1モードにおける電源電圧VDDL=V1が、第2モードにおける電源電圧VDDL=V2に比べて高い電圧に設定された場合にも、基準電圧VH2、VH1、VL2、VL1が変化しないように制御できるようになる。即ち第1モードにおいて電源電圧VDDLがV2からV1に上昇した電圧V1-V2の分だけ、スイッチSWCと並列に設けられる抵抗RH1において電圧を降下させることで、ノードN1の電圧が第1モードと第2モードとで変化しないようになる。従って、第1モードで電源電圧VDDLが高くなっても、基準電圧VH2、VH1、VL2、VL1は変化しないようになる。これにより、第1モードにおいて電源電圧VDDLを高くすることにより低ノイズ化を実現できると共に、電源電圧VDDLの変化に起因する温度補償の精度の低下を防止することが可能になる。
【0044】
図5に温度補償回路70の構成例を示す。
図5はアナログ方式で温度補償を行う回路であり、温度を変数とする多項式近似によって温度補償電圧VCPを出力する回路である。この温度補償回路70は電流生成回路72と電流電圧変換回路75を含む。電流生成回路72は、温度センサー71からの温度検出電圧VTSに基づいて、発振周波数の温度特性を温度補償するための関数電流を生成する。そして電流電圧変換回路75は、電流生成回路72からの関数電流を電圧に変換して温度補償電圧VCPを出力する。
【0045】
電流生成回路72は、1次補正回路73と高次補正回路74を含む。1次補正回路73は、温度検出電圧VTSに基づいて、1次関数を近似する1次電流を出力する。例えば1次補正回路73は、多項式近似における多項式の1次係数に対応する1次補正データに基づいて1次関数電流を出力する。高次補正回路74は、温度検出電圧VTSに基づいて、高次関数を近似する高次電流を、電流電圧変換回路75に出力する。例えば高次補正回路74は、多項式近似における多項式の高次係数に対応する高次補正データに基づいて高次電流を出力する。一例としては、高次補正回路74は、3次関数を近似する3次電流を出力する。また高次補正回路74は、4次以上の補正を行う補正回路を更に含むことができる。
【0046】
電流電圧変換回路75は、増幅回路AMと抵抗RCとキャパシターCCとを含む。そして電流電圧変換回路75は、1次電流と高次電流を加算すると共に、その加算電流を電流電圧変換することで温度補償電圧VCPを出力する。これにより、多項式関数を近似する温度補償電圧VCPが生成される。
【0047】
図6は温度補償回路70に含まれる関数電流生成回路86の構成例である。この関数電流生成回路86は、例えば
図5の高次補正回路74に設けられて、2次、3次等の高次の関数電流を生成する。
【0048】
図6に示すように関数電流生成回路86は、基準電流生成回路87と第1補償回路88と第2補償回路89を含む。基準電流生成回路87は基準電流IRを生成する。第1補償回路88は、低温側の温度範囲での温度補償を行い、第2補償回路89は、高温側の温度範囲での温度補償を行う。第1補償回路88、第2補償回路89は、複数の差動対回路を含む。第1補償回路88の各差動対回路には、基準電流IRをミラーした基準電流IRF1、IRF2が流れる。第2補償回路89の各差動対回路にも、基準電流IRをミラーした基準電流IRG1、IRG2が流れる。そして第1補償回路88により、低温側の温度範囲での温度補償用の電流IF=IF1+IF2が生成され、第2補償回路89により、高温側の温度範囲での温度補償用の電流IG=IG1+IG2が生成される。また基準電流IRが定電流であるため、第1補償回路88の各差動対回路に流れる基準電流IRF1=IF1+IL1、基準電流IRF2=IF2+IL2も電流値が一定の定電流になる。また第2補償回路89の各差動対回路に流れる基準電流IRG1=IG1+IH1、基準電流IRG2=IG2+IH2も電流値が一定の定電流になる。
【0049】
そして低温側の温度範囲では、電流IF=IF1+IF2が大きくなる一方で、電流IG=IG1+IG2が小さくなる。一方、高温側の温度範囲では、電流IG=IG1+IG2が大きくなる一方で、電流IF=IF1+IF2が小さくなる。このような関数電流生成回路86を用いることで、2次、3次、4次、5次などの高次の関数電流を生成できる。例えば
図7は2次、3次、4次、5次の関数電流の生成を模式的に示す図である。例えば2次の関数電流は、E1に示す低温側の電流と、E2に示す高温側の電流を、E3に示すように加算することで生成される。3次の関数電流は、E4に示す低温側の電流と、E5に示す高温側の電流を、E6に示すように加算することで生成される。4次の関数電流は、E7に示す低温側の電流と、E8に示す高温側の電流を、E9に示すように加算することで生成される。5次の関数電流は、E10に示す低温側の電流と、E11に示す高温側の電流を、E12に示すように加算することで生成される。
【0050】
ここで
図6に示すように関数電流生成回路86の各差動対回路を構成する一方のバイポーラートランジスターのベースに、温度センサー71からの温度検出電圧VTSが入力され、他方のバイポーラートランジスターのベースに、基準電圧生成回路36からの基準電圧VL1、VL2、VH1、VH2が入力される。そして基準電圧VL1、VL2、VH1、VH2により、低温側、高温側での電流発生温度が調整される。また差動対回路の低電位側に設けられる抵抗の抵抗値を減らすと電流は指数関数的になり、抵抗値を増やすと電流は線形関数的になる。
【0051】
このように
図6では、基準電圧生成回路36からの基準電圧VL1、VL2、VH1、VH2に基づいて、関数電流生成回路86が生成する関数電流の特性が変化する。そして発振器4においては、関数電流生成回路86が生成する関数電流が振動子10の特性に応じた特性になるように、基準電圧VL1、VL2、VH1、VH2が調整される。従って、回路装置20や発振器4が第1モードに設定される場合と第2モードに設定される場合とで、基準電圧VL1、VL2、VH1、VH2が変化しないようにすることが望ましい。この点、本実施形態では、例えば第1モードにおいて電源電圧VDDLが高い電圧に設定された場合にも、電源電圧VDDLに基づき生成される基準電圧VL1、VL2、VH1、VH2が変化しないように制御される。従って、第1モードに設定された場合も、第2モードに設定された場合も、温度補償回路70による温度補償の精度を維持できるようになる。
【0052】
図8に基準電流生成回路38と温度センサー71の構成例を示す。なお基準電流生成回路38、温度センサー71は
図8の構成には限定されず、これらの一部の構成要素を省略したり、他の構成要素を追加したり、一部の構成要素を他の構成要素に置き換えるなどの種々の変形実施が可能である。
【0053】
本実施形態では回路装置20は、電源電圧VDDLに基づき基準電流IRFを生成して、温度センサー71に供給する基準電流生成回路38を含む。そして基準電流生成回路38は、制御回路60からの制御信号に基づいて、第1モードと第2モードとで電流が変化しないように制御される基準電流IRFを温度センサー71に供給する。このようにすれば第1モードにおいて発振回路30に供給される電源電圧VDDLが高くなった場合にも、第1モードと第2モードとで変化しないように制御される基準電流IRFが、基準電流生成回路38から温度センサー71に供給されるようになる。従って、発振回路30に供給される電源電圧VDDLが高くなることで低ノイズモードである第1モードを実現できると共に、電源電圧VDDLの変化に起因する温度検出の精度や温度補償の精度の低下を防止でき、出力クロック信号CKQの精度の低下等を防止できるようになる。
【0054】
図8に示すように基準電流生成回路38は、電源電圧VDDLが供給される電源ノードとGNDノードとの間に直列に設けられる複数の抵抗RT1、RT2、RT3及びバイポーラートランジスターBP1を含む。例えば電源ノードとノードN12の間に抵抗RT1、RT2が直列に設けられ、ノードN12とGNDノードの間に、バイポーラートランジスターBP1と抵抗RT3が直列に設けられる。そしてバイポーラートランジスターBP1はコレクターとベースが接続されており、ダイオード接続の構成となっている。また基準電流生成回路38は、複数の抵抗RT1、RT2、RT3のうちの1つの抵抗と並列に設けられるスイッチSWTを含む。
図8では、一端がVDDLの電源ノードに接続され、他端がノードN11に接続される抵抗RT1と並列に、スイッチSWTが設けられている。スイッチSWTは制御回路60からの制御信号SCTによりオン、オフが制御される。スイッチSWTは例えばMOSのトランジスターなどにより実現できる。なお
図8では複数の抵抗として3個の抵抗RT1~RT3を設ける例を示したが、抵抗の個数はこれに限定されない。またスイッチSWTと並列に設けられる抵抗は、抵抗RT1以外の抵抗であってもよい。
【0055】
そして本実施形態では、低ノイズモードである第1モードにおいてスイッチSWTがオフになり、低消費電力モードである第2モードにおいてスイッチSWTがオンになる。例えば制御回路60からの制御信号SCTに基づいて、第1モードにおいてスイッチSWTがオフになり、第2モードにおいてスイッチSWTがオンになる。このようにすれば、低消費電力化のために電源電圧VDDLが低い電圧に設定される第2モードでは、スイッチSWTがオンになることで、抵抗RT1の両端がスイッチSWTによりバイパスされるようになる。これにより基準電流IRFが、電源ノードから抵抗RT2、バイポーラートランジスターBP1、抵抗RT3を介してGNDノードに流れるようになる。一方、低ノイズ化のために電源電圧VDDLが高い電圧に設定される第1モードでは、スイッチSWTがオフになることで、抵抗RT1の両端はバイパスされないようになる。これにより基準電流IRFが、電源ノードから抵抗RT1、RT2、バイポーラートランジスターBP1、抵抗RT3を介してGNDノードに流れるようになる。即ち電源電圧VDDLが低い第2モードでは、基準電流IRFが、2つの抵抗RT2、RT3に流れるのに対して、電源電圧VDDLが高い第1モードでは、基準電流IRFが、第2モードに比べて多い3つの抵抗RT1、RT2、RT3に流れるようになる。これにより、第1モードにおいて電源電圧VDDLが高くなっても、基準電流IRFが第1モードと第2モードとで変化しないようにする制御が可能になる。従って、電源電圧VDDLの変化に起因する温度検出の精度や温度補償の精度の低下を防止でき、出力クロック信号CKQの精度の低下等を防止できるようになる。
【0056】
例えば第1モードでの電源電圧VDDLをV1とし、第2モードでの電源電圧VDDLをV2とする。またスイッチSWTと並列に設けられる抵抗RT1の抵抗値をR1とし、抵抗RT2、RT3の抵抗値をR2、R3とし、コレクターとベースが接続されるバイポーラートランジスターBP1のベース・エミッター間電圧をVBEとする。この場合に、電源電圧VDDLがV1であり、スイッチSWTがオフである第1モードでは、V1-VBE=(R1+R2+R3)×IRFとなる。また電源電圧VDDLがV2であり、スイッチSWTがオンである第2モードでは、V2-VBE=(R2+R3)×IRFとなる。従って、スイッチSWTと並列に設けられる抵抗RT1の抵抗値R1について、R1=(V1-V2)/IRFの関係式が成り立つ。このようにスイッチSWTと並列に設けられる抵抗RT1の抵抗値をR1=(V1-V2)/IRFに設定すれば、第1モードにおける電源電圧VDDL=V1が、第2モードにおける電源電圧VDDL=V2に比べて高い電圧に設定された場合にも、基準電流IRFが変化しないように制御できるようになる。即ち第1モードにおいて電源電圧VDDLがV2からV1に上昇した電圧V1-V2の分だけ、スイッチSWTと並列に設けられる抵抗RT1において電圧を降下させることで、ノードN11の電圧が第1モードと第2モードとで変化しないようになる。従って、第1モードで電源電圧VDDLが高くなっても、バイポーラートランジスターBP1のベース・エミッター間電圧VBEと抵抗RT2、RT3の抵抗値で電流値が規定される基準電流IRFは変化しないようになる。これにより、第1モードにおいて電源電圧VDDLを高くすることにより低ノイズ化を実現できると共に、電源電圧VDDLの変化に起因する温度検出の精度の低下や温度補償の精度の低下を防止することが可能になる。
【0057】
また
図8では、電源ノードとGNDノードの間にトランジスターTT1、バイポーラートランジスターBP2、抵抗RT4が直列に設けられる。バイポーラートランジスターBP2は、バイポーラートランジスターBP1のベース及びコレクターのノードN12に接続されており、バイポーラートランジスターBP1、BP2によりカレントミラー回路が構成されている。また温度センサー71の電流源となるトランジスターTT2、TT3のゲートは、トランジスターTT1のゲート及びドレインのノードN13に接続されており、トランジスターTT1とTT2、トランジスターTT1とTT3とによりカレントミラー回路が構成されている。これにより基準電流IRFをミラーした電流IEが、温度センサー71の電流源となるトランジスターTT2、TT3に流れるようになる。
【0058】
そして温度センサー71は、基準電流IRFをミラーした電流IEがコレクターに供給されるバイポーラートランジスターBP3と、抵抗RT5、抵抗RT6を含む。抵抗RT5は、バイポーラートランジスターBP3のベースのノードN14とコレクターのノードN15との間に設けられる。抵抗RT6は、バイポーラートランジスターBP3のエミッターとGNDノードとの間に設けられ、抵抗値が可変の抵抗となっている。例えば抵抗RT6の抵抗値は、制御回路60からの制御信号SCRに基づいて可変に制御される。
【0059】
更に
図8では、温度センサー71は、基準電流IRFをミラーした電流IEがコレクターに供給されるバイポーラートランジスターBP4と、抵抗RT7、RT8を含む。抵抗RT7は、バイポーラートランジスターBP4のベースのノードN16とコレクターのノードN17との間に設けられる。抵抗RT8は、バイポーラートランジスターBP4のエミッターと、バイポーラートランジスターBP3のコレクターのノードN15との間に設けられ、抵抗値が可変の抵抗となっている。例えば抵抗RT8の抵抗値は、制御回路60からの制御信号SCRに基づいて可変に制御される。
【0060】
そして
図8において、電流源であるトランジスターTT2、TT3に流れる電流をIEとし、抵抗RT5、RT6、RT7、RT8の抵抗値を、各々、R5、R6、R7、R8とする。またバイポーラートランジスターBP3、BP4のベース・エミッター間電圧をVBE1、VBE2とする。するとバイポーラートランジスターBP3のコレクターのノードN15の電圧は、VTSA=VBE1+IE×(2×R6-R5)になる。従って、バイポーラートランジスターBP4のコレクターのノードN17の電圧である温度検出電圧は、VTS=VBE2+IE×(R8-R7)+VTSA=VBE1+VBE2+IE×(2×R6+R8-R5-R7)になる。ベース・エミッター間電圧VBE1、VBE2は負の温度特性を有しているため、
図8の温度センサー71によれば環境の温度に応じて変化する温度検出電圧VTSを出力できるようになる。また抵抗RT6、RT8の抵抗値を変化させることで、温度検出電圧VTSのオフセットを調整できる。
【0061】
なお
図8では温度センサー71が、トランジスターTT3、バイポーラートランジスターBP4、抵抗RT7、RT8を含む構成となっているが、これらを含まない構成としてもよい。この場合には、バイポーラートランジスターBP3のコレクターのノードN15の電圧VTSAを温度検出電圧として出力すればよい。
【0062】
このように本実施形態の温度センサー71は、基準電流IRFをミラーした電流IEがコレクターに供給されるバイポーラートランジスターBP3と、バイポーラートランジスターBP3のベースとコレクターとの間に設けられる抵抗RT5と、バイポーラートランジスターBP3のエミッターとGNDノードとの間に設けられる抵抗値が可変の抵抗RT6を含む。バイポーラートランジスターBP3は第1バイポーラートランジスターであり、抵抗RT5は第1抵抗であり、抵抗RT6は第2抵抗である。このようにすればバイポーラートランジスターBP3のベース・エミッター間電圧VBE1などを利用して、環境の温度に応じて変化する温度検出電圧VTSを出力できるようになる。そして、前述したように温度検出電圧VTSは、基準電流IRFをミラーした電流IEに応じて変化する。従って、第1モードにおいて電源電圧VDDLが第2モードに比べて高くなったときに、基準電流IRFが変化すると、基準電流IRFをミラーした電流IEも変化し、温度検出電圧VTSも変化してしまう。この点、本実施形態では、第1モードになって電源電圧VDDLが高くなった場合にも、電源電圧VDDLに基づき温度センサー71に供給される基準電流IRFは変化しないように制御される。従って、第1モードによる低ノイズ化を実現できると共に、電源電圧VDDLの変化に起因する温度検出の精度の低下も防止できるようになる。
【0063】
3.発振回路、波形整形回路
図9に発振回路30、波形整形回路40の構成例を示す。なお発振回路30、波形整形回路40は
図9の構成には限定されず、これらの一部の構成要素を省略したり、他の構成要素を追加したり、一部の構成要素を他の構成要素に置き換えるなどの種々の変形実施が可能である。
【0064】
発振回路30は、電流源32と駆動回路34を含む。また発振回路30は可変容量回路CA1、CA2や、キャパシターCA3や、抵抗RA1を含むことができる。
【0065】
電流源32と駆動回路34は、高電位側電源ノードであるVDDLの電源ノードと、低電位側電源ノードであるGNDノードとの間に直列に設けられる。可変容量回路CA1は、振動子10の一端が接続されるノードNA1とGNDノードの間に設けられる。可変容量回路CA2は、振動子10の他端が接続されるノードNA2とGNDノードの間に設けられる。そして可変容量回路CA1、CA2の容量が調整されることで、発振周波数が調整され、発振周波数の温度補償処理などが実現される。
【0066】
駆動回路34はバイポーラートランジスターBPを含む。バイポーラートランジスターBPのコレクターは、電流源32の電流Iの供給ノードであるノードNA2に接続され、エミッターはGNDノードに接続される。そしてコレクターとベースの間には抵抗RA1が設けられている。またバイポーラートランジスターBPのベースのノードNA3とノードNA1との間には、キャパシターCA3が設けられている。キャパシターCA3は例えばDCカット用のキャパシターである。
【0067】
電流源32は例えばカレントミラー回路により実現できる。カレントミラー回路は、基準電流生成回路38からの基準電流をカレントミラーした電流Iを駆動回路34に供給する。そして駆動回路34は、電流源32からの電流Iに基づいて振動子10を駆動する。ここで電流源32は例えば可変電流源であり、可変の電流Iを駆動回路34に供給する。駆動回路34のバイポーラートランジスターBPは、この可変の電流Iに基づいて振動子10を駆動する。そして電流源32は、低ノイズモードである第1モードでは第2モードに比べて大きな電流Iを駆動回路34に供給する。これにより後述するように発振回路30でのフロアノイズを低減でき、出力クロック信号CKQの位相ノイズを低減できるようになる。一方、電流源32は、低消費電力モードである第2モードでは第1モードに比べて小さな電流Iを駆動回路34に供給する。これにより発振回路30での消費電力が低減され、回路装置20の低消費電力化を実現できるようになる。
【0068】
波形整形回路40は、高電位側電源ノードであるVDDLの電源ノードとGNDノードとの間に直列に設けられるP型のトランジスターTB1とN型のトランジスターTB2を含む。例えばトランジスターTB1のソースは電源ノードに接続され、トランジスターTB2のソースはGNDノードに接続される。またトランジスターTB1、TB2のドレインが、クロック信号CKが出力される接続ノードNBに接続される。なお前述の
図3のように第2電源電圧VDDL2が波形整形回路40に供給される場合は、電源ノードはVDDL2のノードになる。以下の説明においても同様である。そしてトランジスターTB1、TB2のゲートに発振信号OSCが入力され、トランジスターTB1、TB2により構成される波形整形回路40のバッファー回路により、正弦波の発振信号OSCが矩形波のクロック信号CKに波形整形される。
【0069】
また
図9では基準電圧生成回路36が設けられる。この基準電圧生成回路36はラダー抵抗回路37を含み、ラダー抵抗回路37は、電源ノードとGNDノードの間に直列に設けられる複数の抵抗RA2、RA3を含む。この抵抗RA2、RA3による電圧分割により、ノードNCにバイアス電圧VBSが生成される。一例としては、バイアス電圧はVBS=VDDL/2に設定される。また基準電圧生成回路36は、電圧分割ノードであるノードNCに一端が接続される抵抗RA4を含む。この基準電圧生成回路36により、波形整形回路40に入力される発振信号OSCのバイアス電圧VBSを設定され、中心振幅電圧がバイアス電圧VBSに設定された発振信号OSCが波形整形回路40に入力されるようになる。
【0070】
なお波形整形回路40のトランジスターTB1、TB2のゲートのノードと、発振信号OSCの入力ノードの間にDCカット用のキャパシターを設けてもよい。このようにすれば発振信号OSCのAC成分が波形整形回路40に入力されるようになる。この場合には、例えば波形整形回路40の出力を入力に帰還する帰還抵抗などを設けて、波形整形回路40の自己バイアスによるバイアス電圧を、DCカット後の発振信号OSCの中心振幅電圧に設定すればよい。
【0071】
図9において発振回路30でのフロアノイズSWPMは下式(1)のように表される。
【0072】
SWPM=2FkT/PS (1)
【0073】
Fは雑音係数、kはボルツマン定数、Tは温度である。PSは発振回路30の駆動回路34(バイポーラートランジスターBP)の入力パワーであり、発振信号OSCの振幅に相関する。例えば発振回路30の駆動回路34に供給される電流Iを、第1モードでは第2モードに比べて大きくすれば、上式(1)に示すように、入力パワーPSが大きくなることで、発振回路30でのフロアノイズであるSWPMを低減できるようになる。これによりクロック信号CKの位相ノイズを低減でき、出力クロック信号CKQの位相ノイズを低減できるようになる。
【0074】
例えば波形整形回路40でのクロック信号CKの位相ノイズは、発振回路30でのフロアノイズ、電源電圧VDDLのノイズ、波形整形回路40のトランジスターTB1、TB2が発生するノイズなどを原因として発生する。例えば
図10は波形整形回路40での波形整形時における電圧ノイズから位相ノイズへの変換を説明する図である。
図10に示すように、波形整形回路40の駆動能力が小さい場合には、A1に示す電圧ノイズが、A2に示すように大きな位相ノイズに変換されてしまう。一方、波形整形回路40の駆動能力が大きい場合には、A3に示す電圧ノイズから変換されるA4に示す位相ノイズは、駆動能力が小さい場合のA2に示す位相ノイズよりも小さくなる。なおA1、A3の電圧ノイズは例えば電源ノイズやトランジスターTB1、TB2のノイズに起因するノイズであり、波形整形回路40でのフロアノイズは波形整形回路40に入力される前に位相ノイズに変換されている。
【0075】
このように、第1モードにおいて波形整形回路40の駆動能力を大きくすることで、電圧ノイズなどに起因する位相ノイズを低減でき、低ノイズモードである第1モードを実現できるようになる。
【0076】
例えば
図11は、発振信号OSCの電圧レベルと波形整形回路40のトランジスターTB1、TB2のオン、オフの関係を説明する図である。発振信号OSCの電圧レベルが
図11の(1)の電圧範囲である場合には、P型のトランジスターTB1がオンになり、N型のトランジスターTB2がオフになる。また発振信号OSCの電圧レベルが(2)の電圧範囲である場合には、P型のトランジスターTB1及びN型のトランジスターTB2の両方がオンになる。また発振信号OSCの電圧レベルが(3)の電圧範囲である場合には、P型のトランジスターTB1がオフになり、N型のトランジスターTB2がオンになる。そして
図11の(2)のようにトランジスターTB1、TB2の両方がオンになる期間では、電源ノードからGNDノードに貫通電流が流れ、電源からのノイズが位相ノイズとして伝搬されてしまう。例えば電源回路90の電流供給能力を超えるような貫通電流が流れると、電源回路90のレギュレーターによる電源ノイズの低減の効果が失われ、電源ノイズが低減されずに位相ノイズとして伝搬されてしまう。
【0077】
この点、本実施形態では第1モードにおいて波形整形回路40の駆動能力を大きくしている。このようにすれば、
図11の(2)のようにトランジスターTB1、TB2の両方がオンになる期間を時間的に短くすることが可能になる。このようにトランジスターTB1、TB2の両方がオンになる期間が短くなることで、電源ノイズに起因する位相ノイズを低減でき、出力クロック信号CKQの低ノイズ化を実現できるようになる。
【0078】
図12は、
図3に示すように発振回路30に供給される第1電源電圧VDDL1と波形整形回路40に供給される第2電源電圧VDDL2を異ならせる手法の説明図である。
図12のB2ではB1に比べて、発振信号OSCの振幅APを大きくしている。例えば振幅APを、波形整形回路40の第2電源電圧VDDL2よりも大きくする。即ち発振信号OSCのピーク・ツー・ピーク電圧を第2電源電圧VDDL2よりも大きくする。例えば発振回路30に供給される第1電源電圧VDDL1を大きくすることなどにより、発振信号OSCの振幅APを大きくできる。そしてこのように振幅APを大きくすることで、C1に示す振幅APが小さい場合に比べて、C2に示すように波形整形回路40のトランジスターTB1、TB2の両方がオンになる期間を短くできる。クロック信号CKがLレベルからHレベル又はHレベルからLレベルに遷移する遷移期間についても、振幅APが小さい場合のC3に比べて、振幅APを大きくすることでC4に示すように短くなる。C2、C4に示す期間が短くなることで、
図10の場合と同様に、電源ノイズに起因する位相ノイズを低減でき、出力クロック信号CKQの低ノイズ化を実現できるようになる。
【0079】
以上のように本実施形態では、第1モードにおける波形整形回路40の駆動能力は、第2モードにおける波形整形回路40の駆動能力よりも大きくなっている。例えば第1モードでは第2モードに比べて、波形整形回路40のトランジスターTB1、TB2のサイズを大きなサイズに設定したり、波形整形回路40に供給される電源電圧VDDL又は第2電源電圧VDDL2を大きくすることで、波形整形回路40の駆動能力が大きくなる。このように第1モードにおいて波形整形回路40の駆動能力を大きくすることで、
図10等で説明したように電源ノイズやトランジスターのノイズ等に起因するクロック信号CKの位相ノイズを低減でき、位相ノイズが低減された出力クロック信号CKQを出力できるようになる。
【0080】
また本実施形態では、第1モードにおいて波形整形回路40に供給される電源電圧VDDLが、第2モードにおいて波形整形回路40に供給される電源電圧VDDLよりも高くなっている。このように第1モードにおいて波形整形回路40に供給される電源電圧VDDLを高くすれば、第1モードにおける波形整形回路40の駆動能力を大きくできる。これにより
図11において波形整形回路40のトランジスターTB1、TB2の両方がオンになる期間を短くすることなどが可能になり、電源ノイズやトランジスターのノイズに起因するクロック信号CKの位相ノイズを低減でき、低ノイズモードである第1モードを実現できるようになる。なお
図3のように発振回路30と波形整形回路40とで電源電圧を異ならせる場合には、第1モードにおいて波形整形回路40に供給される第2電源電圧VDDL2を、第2モードに比べて高くすればよい。
【0081】
また本実施形態では、第1モードにおいて発振回路30に供給される電源電圧VDDLを、第2モードにおいて発振回路30に供給される電源電圧VDDLよりも高くする。このように第1モードでの発振回路30の電源電圧VDDLを高くすれば、発振信号OSCの振幅を大きくすることができ、低ノイズ化の実現が可能になる。例えば発振信号OSCの振幅が大きくなることで、
図12で説明したように波形整形回路40のトランジスターTB1、TB2の両方がオンになる期間を短くでき、電源ノイズ等に起因する位相ノイズを低減できる。また発振信号OSCの振幅が大きくなることで、フロアノイズの影響を低減でき、低ノイズモードである第1モードを実現できるようになる。
【0082】
また本実施形態では
図9に示すように、発振回路30は、電流源32と、電流源32からの電流Iが供給されて振動子10を駆動する駆動回路34を含む。そして第1モードにおいて電流源32から駆動回路34に供給される電流Iが、第2モードにおいて電流源32から駆動回路34に供給される電流Iよりも大きくなっている。例えば電流源32は、基準電流をカレントミラーした電流Iを供給するカレントミラー回路などにより構成できる。そして第1モードにおいては第2モードに比べて基準電流を大きくしたり、カレントミラー比を大きくすることなどで、電流源32から供給される電流Iを大きくする。このように第1モードにおいて電流源32から駆動回路34に供給される電流を大きくすることで、前述の式(1)で説明したように、駆動回路34への入力パワーPSを大きくでき、発振回路30でのフロアノイズを低減できる。そして発振回路30のフロアノイズが低減されることで、発振信号OSCのノイズが低減され、発振信号OSCに基づき生成されるクロック信号CKや出力クロック信号CKQの位相ノイズを低減でき、低ノイズモードである第1モードを実現できるようになる。
【0083】
また本実施形態では
図3に示すように、発振回路30は、第1電源電圧VDDL1が供給されて動作し、波形整形回路40は、第1電源電圧VDDL1とは異なる第2電源電圧VDDL2が供給されて動作する。例えば第1電源電圧VDDL1と第2電源電圧VDDL2とが別個にその電圧を調整できるようになっている。例えば
図3のレギュレーター91、92は、第1入力端子に基準電圧が入力され、駆動トランジスターのゲートを制御する演算増幅器と、駆動トランジスターのドレインのノードとGNDノードとの間に設けられる抵抗分割回路を含む。そして抵抗分割回路による駆動トランジスターの出力電圧の分割電圧が、演算増幅器の第2入力端子に帰還される。そしてこの抵抗分割電圧の抵抗比を調整することで、レギュレーター91が出力する第1電源電圧VDDL1や、レギュレーター92が出力する第2電源電圧VDDL2の電圧を調整できる。このように発振回路30に供給される第1電源電圧VDDL1と波形整形回路40に供給される第2電源電圧VDDL2を別個に調整できることで、低ノイズモードである第1モードと低消費電力モードである第2モードを細かく調整することが可能になる。例えば第1モードでは発振回路30の第1電源電圧VDDL1と波形整形回路40の第2電源電圧VDDL2を大きくするが、第1電源電圧VDDL1、第2電源電圧VDDL2の各電圧を、より低ノイズになるように別個に調整することが可能になる。また第2モードでは発振回路30の第1電源電圧VDDL1と波形整形回路40の第2電源電圧VDDL2を小さくするが、第1電源電圧VDDL1、第2電源電圧VDDL2の各電圧を、より低消費電力になるように別個に調整することが可能になる。
【0084】
また本実施形態では波形整形回路40は、発振信号OSCの振幅よりも小さい第2電源電圧VDDL2が供給されて動作する。即ち
図12で説明したように発振信号OSCの振幅APよりも第2電源電圧VDDL2が小さくなるように第2電源電圧VDDL2を調整する。この調整はレギュレーター92の抵抗分割回路の抵抗比等の調整により実現できる。このようにすれば波形整形回路40の第2電源電圧VDDL2よりも大きな振幅の発振信号OSCが波形整形回路40に入力されるようになり、波形整形回路40のトランジスターTB1、TB2の両方がオンになる期間を短くできるようになる。これにより電源ノイズ等に起因するクロック信号CKの位相ノイズを低減でき、低ノイズモードである第1モードを実現できるようになる。
【0085】
図13に波形整形回路40や発振回路30の詳細な構成例を示す。
図13に示すように発振回路30の電流源32は、トランジスターTA1、TA2により構成されるカレントミラー回路を含む。P型のトランジスターTA1、TA2のソースは電源ノードに接続され、ゲートはノードNA4に共通接続される。そしてこのカレントミラー回路により基準電流IRをカレントミラーした電流Iが、電流源32から駆動回路34に供給される。例えばノードNA4とGNDノードの間に、複数のスイッチSC1~SCmと、複数のトランジスターTC1~TCmが設けられており、これらのスイッチとトランジスターにより基準電流IRが生成される。ここでmは2以上の整数である。そしてスイッチSC1~SCmの各スイッチと、トランジスターTC1~TCmの各トランジスターとが、ノードNA4とGNDノードの間に直列に設けられている。スイッチSC1~SCmは、例えば制御回路60からの制御信号によりオン又はオフされるトランジスターにより実現できる。トランジスターTC1~TCmは例えばN型のディプレッション型のトランジスターにより実現され、そのゲートとソースが接続されている。そして第1モードにおいては、第2モードに比べて、オンになるスイッチSC1~SCmの数が多くなっている。このようにすることで、第1モードでは第2モードに比べて基準電流IRが大きくなり、電流源32が駆動回路34に供給する電流Iも大きくなる。これにより低ノイズモードである第1モードを実現できる。一方、第2モードにおいては、第2モードに比べて、オンになるスイッチSC1~SCmの数が少なくなっており、これにより低消費電力モードである第2モードを実現できる。
【0086】
可変容量回路CA1、CA2の各々は、可変容量素子CD1、キャパシターCD2、CD3、抵抗RDを含む。キャパシターCD2は、一端がノードNA1又はノードNA2に接続され、他端がノードND1に接続される。ノードND1には、抵抗RDを介して
図2、
図3の温度補償回路70からの温度補償電圧VCPが供給される。可変容量素子CD1は、一端がノードND1に接続され、他端がノードND2に接続される。ノードND2には、基準電圧生成回路36からの基準電圧VRFが供給される。キャパシターCD3はノードND2とGNDノードの間に設けられる。そして可変容量回路CA1、CA2の可変容量素子CD1の容量が、温度補償電圧VCPにより調整されることで、温度補償処理が実現される。
【0087】
波形整形回路40はバッファー回路44を含む。バッファー回路44は、入力された発振信号OSCの波形整形を行って、クロック信号CKを出力する。バッファー回路44は、複数のP型のトランジスターTP1~TPmと、複数のP側のスイッチSP1~SPmを含む。複数のP型のトランジスターTP1~TPmの各P型のトランジスターと、複数のP側のスイッチSP1~SPmの各P側のスイッチは、電源ノードと接続ノードNBとの間に直列接続されている。またバッファー回路44は、複数のN型のトランジスターTN1~TNmと、複数のN側のスイッチSN1~SNmを含む。複数のN型のトランジスターTN1~TNmの各N型のトランジスターと、複数のN側のスイッチSN1~SNmの各N側のスイッチは、接続ノードNBとGNDノードの間に直列接続されている。この複数のP型のトランジスターTP1~TPmは、
図4のP型のトランジスターTB1に対応し、複数のN型のトランジスターTN1~TNmは、N型のトランジスターTB2に対応する。即ち波形整形回路40のトランジスターTB1、TB2の各々は、複数のユニットトランジスターに分割されている。
【0088】
そして本実施形態では、第1モードにおいてオンになるP側のスイッチSP1~SPm及びN側のスイッチSN1~SNmの数が、第2モードにおいてオンになるP側のスイッチSP1~SPm及びN側のスイッチSN1~SNmの数よりも多くなっている。例えばスイッチSP1~SPm、SN1~SNmは、制御回路60からの制御信号によりオン、オフされ、第1モードでは第2モードに比べてオンになるスイッチの数が多くなるように制御される。このようにすれば、電源ノードと接続ノードNBの間に並列接続されるP型のトランジスターの数と、接続ノードNBとGNDノードとの間に並列接続されるN型のトランジスターの数とが、第1モードでは第2モードに比べて多くなるように制御される。即ち
図4のトランジスターTB1、TB2のオン抵抗を第1モードにおいて小さくできる。これにより第1モードでの波形整形回路40の駆動能力を第2モードに比べて大きくすることが可能になり、電源ノイズ等に起因する位相ノイズを低減できるようになる。
【0089】
図14に波形整形回路40の他の構成例を示す。
図14の波形整形回路40は、第1バッファー回路41と、第1バッファー回路41の後段に設けられた第2バッファー回路42を含む。例えば第1バッファー回路41に発振信号OSCが入力され、第1バッファー回路41による波形整形後の信号CKAが第2バッファー回路42に入力される。そして第2バッファー回路42による波形整形後の信号がクロック信号CKとして出力される。このように
図14では複数のバッファー回路により波形整形を行っている。なお波形整形回路40におけるバッファー回路の段数は3段以上であってもよい。
【0090】
そして
図14では、第1バッファー回路41及び第2バッファー回路42の各バッファー回路は、複数のP型のトランジスターTP1~TPmと、複数のP側のスイッチSP1~SPmを含む。複数のP型のトランジスターTP1~TPmの各P型のトランジスターと、複数のP側のスイッチSP1~SPmの各P側のスイッチは、電源ノードと接続ノードNB1又はNB2との間に直列接続されている。また各バッファー回路は、複数のN型のトランジスターTN1~TNmと、複数のN側のスイッチSN1~SNmを含む。複数のN型のトランジスターTN1~TNmの各N型のトランジスターと、複数のN側のスイッチSN1~SNmの各N側のスイッチは、接続ノードNB1又はNB2とGNDノードの間に直列接続されている。
【0091】
そして第1バッファー回路41及び第2バッファー回路42の各バッファー回路において、第1モードにおいてオンになるP側のスイッチSP1~SPm及びN側のスイッチSN1~SNmの数が、第2モードにおいてオンになるP側のスイッチSP1~SPm及びN側のスイッチSN1~SNmの数よりも多くなっている。このようにすれば、各バッファー回路において、電源ノードと接続ノードNB1又はNB2の間に並列接続されるP型のトランジスターの数と、接続ノードNB1又はNB2とGNDノードとの間に並列接続されるN型のトランジスターの数とが、第1モードでは第2モードに比べて多くなるように制御される。これにより第1モードでの波形整形回路40の各バッファー回路の駆動能力を第2モードに比べて大きくすることが可能になり、電源ノイズ等に起因する位相ノイズを低減できるようになる。また
図14に示すように、第1バッファー回路41、第2バッファー回路42というように複数のバッファー回路を設けて、複数のバッファー回路の各バッファー回路の駆動能力を調整できるようにすることで、低ノイズ化と低消費電力化のバランスを調整することが可能になる。この場合に複数のバッファー回路の駆動能力を、個別に切り替えるようにしてもよいし、連動して切り替えるようにしてもよい。即ち第1バッファー回路41、第2バッファー回路42のスイッチSP1~SPm、スイッチSN1~SNmのオン、オフの制御信号として、個別の制御信号を用いてもよいし、共通の制御信号を用いてもよい。
【0092】
4.出力回路の駆動能力の調整
以上のように本実施形態では電源電圧VDDLの調整や波形整形回路40の駆動能力の調整などにより第1モードと第2モードを実現している。この場合に、これらの調整に加えて、出力回路80の駆動能力を調整するようにしてもよい。
図15にこのような駆動能力の調整が可能な出力回路80の構成例を示す。
図15において、低ノイズモードである第1モードにおける出力回路80の駆動能力は、第2モードにおける出力回路80の駆動能力よりも大きくなっている。
【0093】
具体的には
図15の出力回路80は、トランジスターTE1と、トランジスターTPE1~TPEmと、トランジスターTNE1~TNEmと、トランジスターTE2を含む。TE1とTPE1~TPEmは、例えばP型のトランジスターであり、TNE1~TNEmとTE2は、例えばN型のトランジスターである。また出力回路80は、P側の抵抗RP1~RPmと、N側の抵抗RN1~RNmを含む。これらの抵抗RP1~RPm、RN1~RNmは、例えば出力回路80の静電気保護用の抵抗を兼ねることができる。
【0094】
トランジスターTE1は、電源ノードにソースが接続され、クロック信号CK又はクロック信号CKDに基づくP側の信号PINがゲートに入力される。トランジスターTPE1~TPEmと抵抗RP1~RPmは、トランジスターTE1のドレインのノードNE1と、出力回路80の出力のノードNE2の間に設けられる。そしてTPE1~TPEmの各トランジスターと、RP1~RPmの各抵抗は、ノードNE1とノードNE2の間に直列に設けられる。またトランジスターTPE1~TPEmのゲートに、制御回路60からの制御信号が入力されて、そのオン、オフが制御される。
【0095】
トランジスターTE2は、GNDノードにソースが接続され、クロック信号CK又はクロック信号CKDに基づくN側の信号NINがゲートに入力される。抵抗RN1~RNmとトランジスターTNE1~TNEmは、ノードNE2とトランジスターTE2のドレインのノードNE3との間に設けられる。そしてRN1~RNmの各抵抗と、TNE1~TNEmの各トランジスターとは、ノードNE2とノードNE3の間に直列に設けられる。またトランジスターTNE1~TNEmのゲートに、制御回路60からの制御信号が入力されて、そのオン、オフが制御される。
【0096】
そして本実施形態では、第1モードにおいてオンになるトランジスターTPE1~TPEm、トランジスターTNE1~TNEmの数が、第2モードにおいてオンになるトランジスターTPE1~TPEm、トランジスターTNE1~TNEmの数よりも多くなっている。このように、第1モードにおいて、オンになるトランジスターの数が多くなることで、抵抗RP1~RPm、RN1~RNmのうちのより多くの数の抵抗が並列接続されるようになり、ノードNE1とノードNE2の間の抵抗値や、ノードNE2とノードNE3の間の抵抗値を下げることが可能になる。これにより第1モードでは第2モードに比べて、出力回路80の駆動能力が大きくなり、外部の負荷を駆動するときの出力クロック信号CKQの波形の傾きが急になり、より垂直に近づくようになる。これにより、
図10の場合と同様の理由で、電源ノイズ等に起因する出力クロック信号CKQの位相ノイズを低減でき、低ノイズモードである第1モードを実現できるようになる。一方、第2モードでは、オンになるトランジスターの数が少なくなることで、出力回路80の駆動能力が小さくなり、出力クロック信号CKQの波形の傾きが小さくなり、緩やかになる。このように電源電圧VDDLや波形整形回路40の駆動能力に加えて、出力回路80の駆動能力も調整することで、低ノイズ化と低消費電力化の更なる調整が可能になる。
【0097】
なお
図15では出力回路80の出力段のトランジスターのサイズを変更することで駆動能力を調整しているが、出力回路80に供給される電源電圧を変化させることで、駆動能力を調整してもよい。また
図15では、信号PINが入力されるトランジスターTE1として、P型のトランジスターを用いているが、N型のトランジスターを用いるようにしてもよい。例えば出力クロック信号CKQを差動クロック信号として出力する場合には、トランジスターTE1としてN型のトランジスターを用いて、オープンドレインの出力を行えばよい。
【0098】
以上に説明したように、本実施形態の回路装置は、第2モードに比べて出力クロック信号の位相ノイズが低い第1モードと、第1モードに比べて消費電力が小さい第2モードと、を切り替え可能な回路装置である。回路装置は、発振信号を生成する発振回路と、発振信号に基づく出力クロック信号を出力する出力回路と、温度検出信号を出力する温度センサーと、温度検出信号に基づいて発振回路の発振周波数の温度補償を行う温度補償回路と、制御回路を含む。制御回路は、第1モードにおいて発振回路に供給される電源電圧が第2モードにおいて発振回路に供給される電源電圧よりも高くなるように制御する。また制御回路は、電源電圧に基づき温度補償回路に供給される基準電圧、及び電源電圧に基づき温度センサーに供給される基準電流の少なくとも一方が、第1モードと第2モードとで変化しないように制御する。
【0099】
本実施形態では、回路装置は、位相ノイズが低い第1モードと消費電力が低い第2モードの切替が可能になっている。また本実施形態では、発振信号が生成され、発振信号に基づく出力クロック信号が出力されると共に、温度検出信号に基づく発振周波数の温度補償が行われる。そして第1モードにおいて発振回路に供給される電源電圧が第2モードに比べて高くなるように制御されると共に、温度補償回路に供給される基準電圧及び温度センサーに供給される基準電流の少なくとも一方が、第1モードと第2モードとで変化しないように制御される。このようにすれば、第1モードで発振回路に供給される電源電圧を高くすることで、低ノイズモードである第1モードを実現できるようになる。そして第1モードにおいて電源電圧が高くなっても、基準電圧や基準電流が変化しないように制御されるため、基準電圧や基準電流の変化に起因する悪影響を低減できるようになる。これにより低ノイズ化を実現しながら温度補償の精度低下等を防止できるようになる。
【0100】
また本実施形態では、電源電圧に基づき基準電圧を生成して、温度補償回路に供給する基準電圧生成回路を含み、基準電圧生成回路は、第1モードと第2モードとで電圧が変化しないように制御される基準電圧を温度補償回路に供給してもよい。
【0101】
このようにすれば第1モードにおいて発振回路に供給される電源電圧が高くなった場合にも、第1モードと第2モードとで変化しないように制御される基準電圧が、基準電圧生成回路から温度補償回路に供給されるようになり、電源電圧の変化に起因する温度補償の精度の低下等を防止できる。
【0102】
また本実施形態では、基準電圧生成回路は、電源電圧が供給される電源ノードとGNDノードとの間に直列に設けられる複数の抵抗と、複数の抵抗のうちの1つの抵抗と並列に設けられるスイッチとを含んでもよい。そして第1モードにおいてスイッチがオフになり、第2モードにおいてスイッチがオンになってもよい。
【0103】
このようにすれば、第2モードでは、スイッチがオンになることで、スイッチと並列に設けられる抵抗の両端がスイッチによりバイパスされ、第1モードでは、スイッチがオフになることで、抵抗の両端はバイパスされないようになる。これにより、第1モードにおいて電源電圧が高くなっても、基準電圧が第1モードと第2モードとで変化しないようにする制御が可能になる。
【0104】
また本実施形態では、複数の抵抗に流れる電流をIAとし、第1モードでの電源電圧をV1とし、第2モードでの電源電圧をV2とし、スイッチと並列に設けられる抵抗の抵抗値をR1としたときに、R1=(V1-V2)/IAであってもよい。
【0105】
このようにスイッチと並列に設けられる抵抗の抵抗値をR1=(V1-V2)/IAに設定すれば、第1モードにおける電源電圧が第2モードに比べて高い電圧に設定された場合にも、基準電圧が変化しないように制御できるようになる。
【0106】
また本実施形態では、電源電圧に基づき基準電流を生成して、温度センサーに供給する基準電流生成回路を含み、基準電流生成回路は、第1モードと第2モードとで電流が変化しないように制御される基準電流を温度センサーに供給してもよい。
【0107】
このようにすれば第1モードにおいて発振回路に供給される電源電圧が高くなった場合にも、第1モードと第2モードとで変化しないように制御される基準電流が、基準電流生成回路から温度センサーに供給されるようになり、電源電圧の変化に起因する温度検出の精度の低下等を防止できる。
【0108】
また本実施形態では、基準電流生成回路は、電源電圧が供給される電源ノードとGNDノードとの間に直列に設けられる複数の抵抗及びコレクターとベースが接続されたバイポーラートランジスターと、複数の抵抗のうちの1つの抵抗と並列に設けられるスイッチとを含んでもよい。そして第1モードにおいてスイッチがオフになり、第1モードにおいてスイッチがオンになってもよい。
【0109】
このようにすれば、第2モードでは、スイッチがオンになることで、スイッチと並列に設けられる抵抗の両端がスイッチによりバイパスされ、第1モードでは、スイッチがオフになることで、抵抗の両端はバイパスされないようになる。これにより、第1モードにおいて電源電圧が高くなっても、基準電流が第1モードと第2モードとで変化しないようにする制御が可能になる。
【0110】
また本実施形態では、基準電流をIRFとし、第1モードでの電源電圧をV1とし、第2モードでの電源電圧をV2とし、スイッチと並列に設けられる抵抗の抵抗値をR1としたときに、R1=(V1-V2)/IRFであってもよい。
【0111】
このようにスイッチと並列に設けられる抵抗の抵抗値をR1=(V1-V2)/IRFに設定すれば、第1モードにおける電源電圧が第2モードに比べて高い電圧に設定された場合にも、基準電流が変化しないように制御できるようになる。
【0112】
また本実施形態では、温度センサーは、基準電流をミラーした電流がコレクターに供給される第1バイポーラートランジスターと、第1バイポーラートランジスターのベースとコレクターとの間に設けられる第1抵抗と、第1バイポーラートランジスターのエミッターとGNDノードとの間に設けられ、抵抗値が可変の第2抵抗を含んでもよい。
【0113】
このようにすれば第1バイポーラートランジスターのベース・エミッター間電圧などを利用して、環境の温度に応じて変化する温度検出電圧を出力できるようになる。
【0114】
また本実施形態の発振器は、第2モードに比べて出力クロック信号の位相ノイズが低い第1モードと、第1モードに比べて消費電力が小さい第2モードと、を切り替え可能な発振器である。発振器は、振動子と回路装置を含む。回路装置は、振動子を発振させて発振信号を生成する発振回路と、発振信号に基づく出力クロック信号を出力する出力回路と、温度検出信号を出力する温度センサーと、温度検出信号に基づいて発振回路の発振周波数の温度補償を行う温度補償回路と、制御回路を含む。制御回路は、第1モードにおいて発振回路に供給される電源電圧が第2モードにおいて発振回路に供給される電源電圧よりも高くなるように制御する。また制御回路は、電源電圧に基づき温度補償回路に供給される基準電圧、及び電源電圧に基づき温度センサーに供給される基準電流の少なくとも一方が、第1モードと第2モードとで変化しないように制御する。
【0115】
このようにすれば、第1モードで発振回路に供給される電源電圧を高くすることで、低ノイズモードである第1モードを実現できるようになる。そして第1モードにおいて電源電圧が高くなっても、基準電圧や基準電流が変化しないように制御されるため、基準電圧や基準電流の変化に起因する悪影響を低減できるようになる。これにより低ノイズ化を実現しながら温度補償の精度低下等を防止できるようになる。
【0116】
なお、上記のように本実施形態について詳細に説明したが、本開示の新規事項および効果から実体的に逸脱しない多くの変形が可能であることは当業者には容易に理解できるであろう。従って、このような変形例はすべて本開示の範囲に含まれるものとする。例えば、明細書又は図面において、少なくとも一度、より広義または同義な異なる用語と共に記載された用語は、明細書又は図面のいかなる箇所においても、その異なる用語に置き換えることができる。また本実施形態及び変形例の全ての組み合わせも、本開示の範囲に含まれる。また回路装置、発振器の構成・動作等も本実施形態で説明したものに限定されず、種々の変形実施が可能である。
【符号の説明】
【0117】
4…発振器、10…振動子、20…回路装置、30…発振回路、32…電流源、34…駆動回路、36…基準電圧生成回路、37…ラダー抵抗回路、38…基準電流生成回路、40…波形整形回路、41…第1バッファー回路、42…第2バッファー回路、44…バッファー回路、60…制御回路、68…メモリー、70…温度補償回路、71…温度センサー、72…電流生成回路、73…1次補正回路、74…高次補正回路、75…電流電圧変換回路、78…分周回路、80…出力回路、86…関数電流生成回路、87…基準電流生成回路、88…第1補償回路、89…第2補償回路、90…電源回路、91、92…レギュレーター、BP、BP1、BP2、BP3、BP3…バイポーラートランジスター、CA1、CA2…可変容量回路、CA3…キャパシター、CD1…可変容量素子、CD2、CD3…キャパシター、CK…クロック信号、CKQ…出力クロック信号、I…電流、IR…基準電流、OSC…発振信号、VBS…バイアス電圧、VDDL…電源電圧、VDDL1…第1電源電圧、VDDL2…第2電源電圧、VRF、VH、VH1、VH2、VL、VL1、VL2、VRF…基準電圧、IR、IRF、IRF1、IRF2、IRG1、IRG2…基準電流、RH1~RH10、RT1~RT8…抵抗、SWC、SWT…スイッチ、TT1~TT3…トランジスター、VCP…温度補償電圧、VTS…温度検出電圧