(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024136556
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】防火改装窓構造および建具
(51)【国際特許分類】
E06B 5/16 20060101AFI20240927BHJP
E06B 1/56 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
E06B5/16
E06B1/56 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023047706
(22)【出願日】2023-03-24
(71)【出願人】
【識別番号】390005267
【氏名又は名称】YKK AP株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000637
【氏名又は名称】弁理士法人樹之下知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】石原 史彬
(72)【発明者】
【氏名】板東 誠二
【テーマコード(参考)】
2E011
2E239
【Fターム(参考)】
2E011JA02
2E011JA03
2E011KA02
2E011KB03
2E011KC01
2E011KC07
2E011KD14
2E011KG00
2E011KH01
2E239CA02
2E239CA22
2E239CA29
2E239CA32
2E239CA53
2E239CA66
(57)【要約】
【課題】遮炎性能の低下を抑制することができる防火改装窓構造および建具を提供すること。
【解決手段】既設枠10の内周に新設枠20を配置する防火改装窓構造は、既設枠10と新設枠20とが連結部材30により連結され、既設枠10の全周に、変形不能な不燃性の第1塞ぎ部材50が固定され、新設枠20の全周と第1塞ぎ部材50との間に、形状追従性を有する不燃性の第2塞ぎ部材60が充填されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
既設枠の内周に新設枠を配置する防火改装窓構造であって、
前記既設枠と前記新設枠とが連結部材により連結され、
前記既設枠および前記新設枠のうち一方の枠の全周に、変形不能な不燃性の第1塞ぎ部材が固定され、
前記既設枠および前記新設枠のうち他方の枠の全周と前記第1塞ぎ部材との間に、形状追従性を有する不燃性の第2塞ぎ部材が充填されている防火改装窓構造。
【請求項2】
請求項1に記載の防火改装窓構造において、
前記既設枠は、既設上枠を備え、
前記第1塞ぎ部材は、上下に長い上長孔を有し、前記上長孔に挿通されて前記既設上枠に螺合される上ねじにより前記既設上枠に固定された第1上塞ぎ部材を備え、
前記新設枠は、前記第1上塞ぎ部材の下端に対向する新設上枠対向面部が設けられた新設上枠を備え、
前記第2塞ぎ部材は、前記新設上枠対向面部と前記第1上塞ぎ部材との間に充填された第2上塞ぎ部材を備える防火改装窓構造。
【請求項3】
請求項1に記載の防火改装窓構造において、
前記既設枠は、左右の既設縦枠を備え、
前記第1塞ぎ部材は、左右に長い縦長孔を有し、前記縦長孔に挿通されて前記左右の既設縦枠に螺合される縦ねじにより前記左右の既設縦枠にそれぞれ固定された第1上塞ぎ部材を備え、
前記新設枠は、前記左右の第1縦塞ぎ部材における前記既設枠の中央側の端部に対向する左右の新設縦枠対向面部が設けられた左右の新設縦枠を備え、
前記第2塞ぎ部材は、前記左右の新設縦枠対向面部と前記左右の第1縦塞ぎ部材との間にそれぞれ充填された左右の第2縦塞ぎ部材を備える防火改装窓構造。
【請求項4】
請求項1に記載の防火改装窓構造において、
前記既設枠は、既設上枠、既設下枠および左右の既設縦枠を備え、
前記第1塞ぎ部材は、前記既設上枠に固定された第1上塞ぎ部材、前記既設下枠に固定された第1下塞ぎ部材、および、前記左右の既設縦枠にそれぞれ固定された左右の第1縦塞ぎ部材を備え、
前記第1上塞ぎ部材の左右両端部と前記左右の第1縦塞ぎ部材の上端部との間、および、前記第1下塞ぎ部材の左右両端部と前記左右の第1縦塞ぎ部材の下端部との間が、不燃性のテープにより塞がれている防火改装窓構造。
【請求項5】
請求項1に記載の防火改装窓構造において、
前記既設枠は、既設上枠、既設下枠および左右の既設縦枠を備え、
前記第1塞ぎ部材は、前記既設上枠に固定された第1上塞ぎ部材、前記既設下枠に固定された第1下塞ぎ部材、および、前記左右の既設縦枠にそれぞれ固定された左右の第1縦塞ぎ部材を備え、
前記第1上塞ぎ部材の左右両端部および前記左右の第1縦塞ぎ部材の上端部のうち一方の端部は、他方の端部に形成された上嵌合部に嵌合され、
前記第1下塞ぎ部材の左右両端部および前記左右の第1縦塞ぎ部材の下端部のうち一方の端部には、他方の端部に形成された下嵌合部に嵌合されている防火改装窓構造。
【請求項6】
建物開口部の内周に固定された既設枠の内周に新設枠を配置する防火改装窓構造であって、
前記既設枠と前記新設枠とが連結部材により連結され、
前記新設枠の全周に、変形不能な不燃性の第1塞ぎ部材が固定され、
前記建物開口部の内周の全周と前記第1塞ぎ部材との間に、形状追従性を有する不燃性の第2塞ぎ部材が充填されている防火改装窓構造。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の防火改装窓構造を備える建具
【請求項8】
請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の防火改装窓構造と、
前記既設枠または前記新設枠の全周に固定され、前記連結部材、前記第1塞ぎ部材および前記第2塞ぎ部材を覆うカバー部材と、を備える建具。
【請求項9】
請求項8に記載の建具において、
前記カバー部材に固定された網戸または手すりを備える建具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防火改装窓構造および建具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、既設枠の内周に新設枠を配置する構成が知られている(例えば、特許文献1参照)。
特許文献1の構成では、既設枠と改装枠(新設枠)は、連結部材を介して連結されている。また、改装枠には、既設側連結部分(既設枠と連結部材の連結部分)と改装側連結部分(改装枠と連結部材の連結部分)を室内空間から遮蔽する遮蔽部材が取り付けられている。遮蔽部材は、改装枠固定部が改装枠に固定されるとともに、室外遮蔽延出部が内装材に近接して対向することにより、室内空間からの火炎が既設側連結部分および改装側連結部分に晒されることを防止する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の構成では、改装枠の寸法誤差や既設枠に対する改装枠の配置位置のばらつきなどにより、室外遮蔽延出部と内装材との間に隙間が生じてしまい、遮炎性能が低下するおそれがある。
【0005】
本発明の目的は、遮炎性能の低下を抑制することができる防火改装窓構造および建具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の防火改装窓構造は、既設枠の内周に新設枠を配置する防火改装窓構造であって、前記既設枠と前記新設枠とが連結部材により連結され、前記既設枠および前記新設枠のうち一方の枠の全周に、変形不能な不燃性の第1塞ぎ部材が固定され、前記既設枠および前記新設枠のうち他方の枠の全周と前記第1塞ぎ部材との間に、形状追従性を有する不燃性の第2塞ぎ部材が充填されていることを特徴とする。
【0007】
本発明の防火改装窓構造は、建物開口部の内周に固定された既設枠の内周に新設枠を配置する防火改装窓構造であって、前記既設枠と前記新設枠とが連結部材により連結され、前記新設枠の全周に、変形不能な不燃性の第1塞ぎ部材が固定され、前記建物開口部の内周の全周と前記第1塞ぎ部材との間に、形状追従性を有する不燃性の第2塞ぎ部材が充填されていることを特徴とする。
【0008】
本発明の建具は、上述の防火改装窓構造を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、遮炎性能の低下を抑制することができる防火改装窓構造および建具を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施形態における改装サッシを示す縦断面図である。
【
図2】実施形態における改装サッシを示す横断面図である。
【
図3】実施形態における防火改装窓構造を示す縦断面図である。
【
図4】実施形態における防火改装窓構造を示す横断面図である。
【
図5】実施形態における第1上塞ぎ部材、第1下塞ぎ部材および左右の第1縦塞ぎ部材の取り合いを室内側から見たときの図である。
【
図6】実施形態における第1上塞ぎ部材、第1下塞ぎ部材および左右の第1縦塞ぎ部材の取り合いを室内側斜め下方から見たときの図である。
【
図7】変形例における防火改装窓構造を示す縦断面図である。
【
図8】他の変形例における第1上塞ぎ部材、第1下塞ぎ部材および左の第1縦塞ぎ部材の取り合いを室内側斜め下方から見たときの図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[実施形態]
〔改装サッシの構成〕
以下、本発明の実施形態の防火改装窓構造を有する建具としての改装サッシについて、図面を参照して説明する。
図1は、改装サッシを示す縦断面図である。
図2は、改装サッシを示す横断面図である。
図1および
図2に示すように、防火改装窓構造を有する改装サッシ1は、コンクリート製の躯体2の開口部に設置されている。躯体2を有する建物は、居住用のマンションや戸建て住宅、非居住用の学校などの教育施設、庁舎などの公共施設、病院などの医療福祉施設、店舗などの商業施設も含むものである。
改装サッシ1は、躯体2に取り付けられた既設枠10と、既設枠10の内周側に設置された新設サッシ4と、網戸5と、を備える。
ここで、改装サッシ1の左右方向をX軸方向、改装サッシ1の上下方向をY軸方向、改装サッシ1の見込み方向をZ軸方向とする。そして、X軸方向において、改装サッシ1を室内から見て左側の方向をX1方向、右側の方向をX2方向とし、Y軸方向において、上方向をY1方向、下方向をY2方向とし、Z軸方向において室外から室内に向かう方向をZ1方向、室内から室外に向かう方向をZ2方向とする。また、各断面図において、図面を見やすくするために、改装サッシ1の各構成におけるハッチングは省略する場合がある。
【0012】
既設枠10は、躯体2に取り付けられていた既設サッシから既設障子を取り外し、躯体2に残存したものである。
既設枠10は、既設上枠11、既設下枠12および左右の既設縦枠13,14を枠組みして構成されている。既設上枠11、既設下枠12および各既設縦枠13,14は、それぞれアルミまたはスチールにより形成されている。既設上枠11は、当該既設上枠11に取り付けられた固定具15が躯体2に固定された連結筋2Aに溶接されることにより、モルタル3を介して躯体2に固定されている。既設下枠12および各既設縦枠13,14は、躯体2の開口にモルタル3を介してそれぞれ固定されている。既設上枠11および既設下枠12の両端に、各既設縦枠13,14がそれぞれねじ止めされている。
躯体2の開口に設けられたモルタル3により、建物の建物開口部3Aが形成されている。
【0013】
新設サッシ4は、新設枠20内に網入りガラス6AおよびLow-Eガラス6Bを有する可動窓6が配置され、防火性能を有するすべり出し窓として構成されている。なお、新設サッシ4としては、すべり出し窓の他に、引き違い窓、FIX窓、開き窓、内倒し窓、外倒し窓、段窓、連窓など、防火性能の認定を受けた様々な窓種の新設サッシを利用できる。
【0014】
新設枠20は、新設上枠21、新設下枠22および左右の新設縦枠23,24を枠組みして構成されている。新設上枠21、新設下枠22および各新設縦枠23,24は、それぞれアルミにより形成されている。
新設枠20は、スチール材などの鋼材で構成された連結部材30により既設枠10に連結されている。
連結部材30は、既設上枠11と新設上枠21とを連結する上連結部材31、既設下枠12と新設下枠22とを連結する下連結部材32、左の既設縦枠13と左の新設縦枠23とを連結する左の縦連結部材33、および、右の既設縦枠14と右の新設縦枠24とを連結する右の縦連結部材34を備える。上連結部材31、下連結部材32および各縦連結部材33,34の詳細については後述する。
【0015】
新設上枠21のZ1方向側の面における下側の部位には、Z1方向に板状に延びる新設上枠対向面部211が設けられている。
新設下枠22のZ1方向側の面における下側の部位には、Z1方向に板状に延びる新設下枠対向面部221が設けられている。新設下枠22の下面には、水切り材25が設けられている。
各新設縦枠23,24のZ1方向側の面における新設枠20の中央側の部位には、Z1方向に板状にそれぞれ延びる新設縦枠対向面部231,241がそれぞれ設けられている。
新設上枠21、水切り材25および各新設縦枠23,24と、建物開口部3Aの内周面との間には、これらの隙間を塞ぐシール材3Bが設けられている。
【0016】
各新設縦枠23,24には、左右の開閉連結部材7がそれぞれ取り付けられている。各開閉連結部材7は、可動窓6が室外側にすべり出し式に開閉できるように、かつ、可動窓6の上下左右端と新設枠20の内周面との間に隙間が形成されるように、各新設縦枠23,24と可動窓6とを連結する。
新設枠20における可動窓6の上下左右端との隙間から室外に露出する面には、加熱発泡材40が固定されている。加熱発泡材40は、例えば火災時に膨張して火炎を遮蔽する。加熱発泡材40は、新設上枠21に固定された上加熱発泡材41、新設下枠22に固定された下加熱発泡材42および各新設縦枠23,24にそれぞれ固定された左右の縦加熱発泡材43,44を備える。
【0017】
既設枠10の全周には、変形不能な不燃性の第1塞ぎ部材50が設けられている。第1塞ぎ部材50は、アルミ材またはスチール材などで構成されている。第1塞ぎ部材50は、既設枠10と新設枠20との連結部分を塞ぐ機能を有する。第1塞ぎ部材50は、既設上枠11に設けられた第1上塞ぎ部材51、既設下枠12に設けられた第1下塞ぎ部材52、および、各既設縦枠13,14にそれぞれ設けられた左右の第1縦塞ぎ部材53,54を備える。第1上塞ぎ部材51、第1下塞ぎ部材52および各第1縦塞ぎ部材53,54の詳細については後述する。
【0018】
新設枠20の全周と第1塞ぎ部材50との間には、形状追従性を有する不燃性の第2塞ぎ部材60が充填されている。第2塞ぎ部材60は、AES(アルカリアースシリケートウール)、ロックウール、グラスウールなどにより構成されている。第2塞ぎ部材60は、新設上枠21と第1上塞ぎ部材51との間に充填された第2上塞ぎ部材61、新設下枠22と第1下塞ぎ部材52との間に充填された第2下塞ぎ部材62、および、各新設縦枠23,24と各第1縦塞ぎ部材53,54との間にそれぞれ間に充填された左右の第2縦塞ぎ部材63,64を備える。第2上塞ぎ部材61、第2下塞ぎ部材62および各第2縦塞ぎ部材63,64の詳細については後述する。
【0019】
新設枠20の室内側には、連結部材30、第1塞ぎ部材50および第2塞ぎ部材60を隠すために、カバー部材70が取り付けられている。カバー部材70は、上カバー部材71、下カバー部材72および左右の縦カバー部材73,74を備える。なお、カバー部材70は、既設枠10に取り付けられても良い。
既設枠10の室内側には、モルタル3の表面を覆う化粧材75が設けられている。化粧材75は、上化粧材76、下化粧材77および左右の縦化粧材78,79を備える。
【0020】
上カバー部材71は、新設上枠21の新設上枠対向面部211に複数のねじ71Aにより固定される見込み面部711と、見込み面部711から上方に延出された見付け面部712と、見付け面部712の先端から室外側に折り返された受け面部713とを備える。
下カバー部材72は、新設下枠22の新設下枠対向面部221に複数のねじ72Aにより固定される見込み面部721と、見込み面部721から下方に延出された見付け面部722と、見付け面部722の先端から室外側に折り返された受け面部723とを備える。
各縦カバー部材73,74は、各新設縦枠23,24の新設縦枠対向面部231,241に複数ずつのねじ73A,74Aにより固定される見込み面部731,741と、見込み面部731,741から新設枠20の左右方向外側に延出された見付け面部732,742と、見付け面部732,742の先端から室外側に折り返された受け面部733,743とをそれぞれ備える。
各見込み面部731,741におけるY軸方向に並ぶ複数箇所には、カバー雌ねじ部731A,741Aがそれぞれ形成されている。
各受け面部713,723,733,743は、それぞれ上化粧材76、下化粧材77および各縦化粧材78,79との隙間に充填されるバックアップ材70Aおよびシール材70Bを支持するために設けられている。
【0021】
網戸5は、既設枠10の室内側に設けられている。網戸5は、方形状のフレーム枠81と、フレーム枠81により保持されたネット82と、カバー部材70に固定された方形状の網戸枠83とを備える。
網戸枠83の左右の網戸縦枠831,832には、室外側に板状に延びる網戸取付片部833,834がそれぞれ設けられている。各網戸取付片部833,834における各縦カバー部材73,74のカバー雌ねじ部731A,741Aに対応する高さ位置には、ねじ挿通孔833A,834Aがそれぞれ形成されている。
網戸枠83は、各網戸取付片部833,834のねじ挿通孔833A,834Aに挿通されたねじ84A,ねじ84Bが各縦カバー部材73,74のカバー雌ねじ部731A,741Aに螺合されることにより、カバー部材70に固定される。
フレーム枠81は、網戸枠83の開口を塞ぐことができるように、例えば磁力により網戸枠83に対して着脱自在に、または、例えば左の網戸縦枠831に設けられた図示しないヒンジにより回動自在に構成されている。
【0022】
次に、防火改装窓構造の詳細について、図面を参照して説明する。
図3は、防火改装窓構造を示す縦断面図である。
図4は、防火改装窓構造を示す横断面図である。
【0023】
図3に示すように、既設上枠11は、上面が開口した四角筒状の既設上枠本体110を備える。
既設上枠本体110のY2方向側の部位を構成する下面部110AにおけるZ1方向側の部位には、下方に板状に延びる上塞ぎ部材取付面部111が設けられている。上塞ぎ部材取付面部111におけるX軸方向に並ぶ複数箇所には、上雌ねじ部111Aが形成されている。
【0024】
新設上枠21は、略四角筒状の新設上枠本体210を備える。
新設上枠本体210のZ1方向側の部位を構成する室内側面部210Aには、上述した新設上枠対向面部211がX軸方向(新設上枠本体210の長手方向)に沿うように設けられている。新設上枠対向面部211の先端には、上方に突出する上外れ防止部211Aが設けられている。
新設上枠本体210のY2方向側の部位を構成する下面部210BにおけるZ1方向側の部位には、下方に板状に延びる上加熱発泡材取付面部212がX軸方向全体にわたって設けられている。上加熱発泡材取付面部212の下端側の部位には、AT材取付部212Aが設けられている。AT材取付部212Aには、AT材212Bが取り付けられている。AT材212Bは、X軸方向の長さがAT材取付部212Aと同じ長さに形成され、AT材取付部212Aに対してZ2方向側に位置するように取り付けられている。
【0025】
上連結部材31は、X軸方向の長さが既設上枠11よりも短い長尺部材である。上連結部材31は、既設上枠11の下面部110Aに複数のねじ31Aにより固定された見込み面部311と、見込み面部311のZ2方向側端部から下方に延長されて新設上枠21の室内側面部210Aに複数のねじ31Bにより固定された見付け面部312とを備える。見付け面部312は、当該見付け面部312の下端と新設上枠21の新設上枠対向面部211との間に隙間が形成される長さに形成されている。
【0026】
上加熱発泡材41は、新設上枠21の上加熱発泡材取付面部212のZ2方向側の面におけるAT材取付部212Aよりも上方の位置に、両面テープおよび上固定金具411により固定されている。上加熱発泡材41は、X軸方向の長さが上加熱発泡材取付面部212よりも短い形状に形成され、当該上加熱発泡材41および上加熱発泡材取付面部212のX軸方向中心がほぼ重なるように固定されている。
上固定金具411は、新設上枠21の下面部210Bにねじ41Aにより固定された板状の上金具固定部412と、上金具固定部412のZ1方向側端部から下方に延長されて上加熱発泡材41を上加熱発泡材取付面部212に押し付けて保持する保持部413とを備える。
【0027】
第1上塞ぎ部材51は、X軸方向の長さが既設上枠11よりも短い長尺部材である。第1上塞ぎ部材51は、既設上枠11の上塞ぎ部材取付面部111に複数の上ねじ51Aにより固定された板状の上塞ぎ固定面部511と、上塞ぎ固定面部511の下端からZ2方向に延長されて新設上枠21の新設上枠対向面部211に対向する上塞ぎ対向面部512とを備える。上塞ぎ対向面部512は、ねじ31Bに接触しない長さに形成されている。上塞ぎ固定面部511には、上下に長い上長孔511Aが形成されている。
第1上塞ぎ部材51は、上長孔511Aに挿通された上ねじ51Aが上塞ぎ部材取付面部111の上雌ねじ部111Aに螺合されることにより、既設上枠11に固定される。上長孔511Aが上下に長い形状を有しているため、上長孔511Aにおける上ねじ51Aの挿通位置を上下に調整することにより、上塞ぎ対向面部512と新設上枠対向面部211の間隔を調整することができる。
【0028】
第2上塞ぎ部材61は、新設上枠21の新設上枠対向面部211と第1上塞ぎ部材51の上塞ぎ対向面部512との間の隙間をX軸方向の全体にわたって埋めるように充填されている。第2上塞ぎ部材61は、上外れ防止部211AよりもZ2方向側に充填され、Z1方向側に外れてしまうことが防止されている。
【0029】
既設下枠12は、XZ平面(水平面)に対して平行な長方形板状の既設下枠本体120と、既設下枠本体120のZ2方向側の端部に設けられた室外側部121と、既設下枠本体120のZ1方向側の端部から上方に延長された連結部122と、連結部122の上端からZ1方向側に延長された下塞ぎ部材取付面部123と、下塞ぎ部材取付面部123のZ2方向側の端部から下方に延長された室内側面部124とを備える。
下塞ぎ部材取付面部123におけるX軸方向に並ぶ複数箇所には、下雌ねじ部123Aが形成されている。
【0030】
新設下枠22は、筒状の新設下枠本体220を備える。新設下枠本体220は、下面部222と、下面部222のZ2方向側の端部から上方に延長された室外側面部223と、室外側面部223の上端からZ1方向側に向けて斜め上方に延長された傾斜部224と、傾斜部224の上端からZ1方向およびZ2方向に延長された中間水平面部225と、中間水平面部225のZ1方向側の端部から上方に延長された下加熱発泡材取付面部226と、下加熱発泡材取付面部226の上端からZ1方向に延長された上面部227と、上面部227のZ1方向側の端部から下方に延長された室内側面部228と、室内側面部228の下端と下面部222のZ1方向側の端部とを接続する接続部229とを備える。
下加熱発泡材取付面部226の上端側の部位には、AT材取付部226Aが設けられている。AT材取付部226Aには、AT材226Bが取り付けられている。AT材226Bは、X軸方向の長さがAT材取付部226Aと同じ長さに形成され、AT材取付部226Aに対してZ2方向側に位置するように取り付けられている。
室内側面部228には、上述した新設下枠対向面部221がX軸方向に沿うように設けられている。新設下枠対向面部221の先端には、下方に突出する下外れ防止部221Aが設けられている。
【0031】
下連結部材32は、X軸方向の長さが既設下枠12よりも短い長尺部材である。下連結部材32は、既設下枠12の既設下枠本体120に複数のねじ32Aにより固定された見込み面部321と、見込み面部321のZ2方向側端部から上方に延長されて新設下枠22の室内側面部228に複数のねじ32Bにより固定された見付け面部322とを備える。見付け面部322は、新設下枠22の新設下枠対向面部221に接触する長さに形成されている。
【0032】
下加熱発泡材42は、新設下枠22の下加熱発泡材取付面部226のZ2方向側の面におけるAT材取付部226Aよりも下方の位置に、両面テープおよび下加熱発泡材42を貫通する複数のねじ42Aにより固定されている。下加熱発泡材42は、X軸方向の長さが下加熱発泡材取付面部226よりも短い形状に形成され、当該下加熱発泡材42および下加熱発泡材取付面部226のX軸方向中心がほぼ重なるように固定されている。
【0033】
第1下塞ぎ部材52は、X軸方向の長さが既設下枠12よりも短い長尺部材である。第1下塞ぎ部材52は、既設下枠12の下塞ぎ部材取付面部123に複数の下ねじ52Aにより固定された板状の下塞ぎ固定面部521と、下塞ぎ固定面部521のZ2方向側の端部から上方に延長された中間鉛直面部522と、中間鉛直面部522の上端からZ2方向に延長されて新設下枠22の新設下枠対向面部221に対向する下塞ぎ対向面部523とを備える。下塞ぎ対向面部523は、ねじ32Bに接触しない長さに形成されている。下塞ぎ固定面部521には、真円の丸孔521Aが形成されている。
第1下塞ぎ部材52は、丸孔521Aに挿通された下ねじ52Aが下塞ぎ部材取付面部123の下雌ねじ部123Aに螺合されることにより、既設下枠12に固定される。
【0034】
第2下塞ぎ部材62は、新設下枠22の新設下枠対向面部221と第1下塞ぎ部材52の下塞ぎ対向面部523との間の隙間をX軸方向の全体にわたって埋めるように充填されている。第2下塞ぎ部材62は、下外れ防止部221AよりもZ2方向側に充填され、Z1方向側に外れてしまうことが防止されている。
【0035】
図4に示すように、各既設縦枠13,14は、既設枠10の左右方向外側の面が開口した四角筒状の既設縦枠本体130,140をそれぞれ備える。
各既設縦枠本体130,140における既設枠10の左右方向中央側の部位を構成する見込み面部130A,140AにおけるZ1方向側の部位には、既設枠10の左右方向中央側に板状に延びる縦塞ぎ部材取付面部131,141がそれぞれ設けられている。各縦塞ぎ部材取付面部131,141におけるX軸方向に並ぶ複数箇所には、縦雌ねじ部131A,141Aがそれぞれ形成されている。
【0036】
各新設縦枠23,24は、YZ平面(鉛直面)に対して平行な新設縦枠本体230,240と、新設縦枠本体230,240のZ1方向側の端部から新設枠20の左右方向中央に延長された室内側見付け面部232,242と、新設縦枠本体230,240における室内側見付け面部232,242よりもZ2方向側の部位から新設枠20の左右方向中央に延長された縦加熱発泡材取付面部233,243と、室内側見付け面部232,242と縦加熱発泡材取付面部233,243の延出方向端部同志を接続する接続部234,244とをそれぞれ備える。
各室内側見付け面部232,242における新設枠20の左右方向中央側の部位には、Z1方向に延長された上述の新設縦枠対向面部231,241がX軸方向に沿うようにそれぞれ設けられている。各新設縦枠対向面部231,241の先端には、新設枠20の左右方向外側に突出する縦外れ防止部231A,241Aがそれぞれ設けられている。
各縦加熱発泡材取付面部233,243における新設枠20の左右方向中央側の部位には、AT材取付部233A,243Aがそれぞれ設けられている。各AT材取付部233A,243Aには、AT材233B,243Bがそれぞれ取り付けられている。各AT材233B,243Bは、X軸方向の長さが各AT材取付部233A,243Aと同じ長さに形成され、各AT材取付部233A,243Aに対してZ2方向側に位置するようにそれぞれ取り付けられている。
【0037】
各縦連結部材33,34は、X軸方向の長さが各既設縦枠13,14よりも短い長尺部材である。各縦連結部材33,34は、各既設縦枠13,14の見込み面部130A,140Aに複数ずつのねじ33A,34Aにより固定された見込み面部331,341と、見込み面部331,341のZ2方向側端部から新設枠20の左右方向中央側に延長されて各新設縦枠23,24の室内側見付け面部232,242に複数ずつのねじ33B,34Bにより固定された見付け面部332,342とそれぞれを備える。
【0038】
各縦加熱発泡材43,44は、各新設縦枠23,24の縦加熱発泡材取付面部233,243のZ2方向側の面におけるAT材取付部233A,243Aよりも新設枠20の左右方向外側の位置に、両面テープおよび縦固定金具431,441によりそれぞれ固定されている。各縦加熱発泡材43,44は、Y軸方向の長さが各縦加熱発泡材取付面部233,243よりも短い形状に形成され、当該縦加熱発泡材43,44および縦加熱発泡材取付面部233,243の下端がほぼ重なるようにそれぞれ固定されている。
各縦固定金具431,441は、各新設縦枠23,24の縦加熱発泡材取付面部233,243における上端側の部位にねじ43A,44Aにより固定された板状の縦金具固定部432,442と、縦金具固定部432,442の下端からZ2方向に向けて斜め下方に延長された接続部433,443と、接続部433,443の下端から下方に延長されて各縦加熱発泡材43,44の上端部を各縦加熱発泡材取付面部233,243に押し付けて保持する縦金具保持部434,444とそれぞれを備える。
【0039】
各第1縦塞ぎ部材53,54は、Y軸方向の長さが各既設縦枠13,14よりも短い長尺部材である。各第1縦塞ぎ部材53,54は、各既設縦枠13,14の縦塞ぎ部材取付面部131,141に複数ずつの縦ねじ53A,54Aにより固定された板状の縦塞ぎ固定面部531,541と、縦塞ぎ固定面部531,541における既設枠10の左右方向中央側の端部からZ2方向に延長されて各新設縦枠23,24の新設縦枠対向面部231,241に対向する縦塞ぎ対向面部532,542とを備える。各縦塞ぎ対向面部532,542は、ねじ33B,34Bに接触しない長さにそれぞれ形成されている。各縦塞ぎ対向面部532,542には、左右に長い縦長孔531A,541Aがそれぞれ形成されている。
各第1縦塞ぎ部材53,54は、各縦長孔531A,541Aに挿通された縦ねじ53A,54Aが各縦塞ぎ部材取付面部131,141の縦雌ねじ部131A,141Aに螺合されることにより、各既設縦枠13,14に固定される。縦長孔531A,541Aが左右に長い形状を有しているため、縦長孔531A,541Aにおける縦ねじ53A,54Aの挿通位置を左右に調整することにより、各縦塞ぎ対向面部532,542と各新設縦枠対向面部231,241の間隔を調整することができる。
【0040】
各第2上塞ぎ部材63,64は、各新設縦枠23,24の新設縦枠対向面部231,241と第1縦塞ぎ部材53,54の縦塞ぎ対向面部532,542との間の隙間をY軸方向の全体にわたって埋めるようにそれぞれ充填されている。各第2縦塞ぎ部材63,64は、各縦外れ防止部231A,241AよりもZ2方向側に充填され、Z1方向側に外れてしまうことが防止されている。
【0041】
次に、第1上塞ぎ部材、第1下塞ぎ部材および左右の第1縦塞ぎ部材の取り合いについて、図面を参照して説明する。
図5は、第1上塞ぎ部材、第1下塞ぎ部材および左右の第1縦塞ぎ部材の取り合いを室内側から見たときの図である。
図6は、第1上塞ぎ部材、第1下塞ぎ部材および左右の第1縦塞ぎ部材の取り合いを室内側斜め下方から見たときの図である。
【0042】
図5および
図6に示すように、各第1縦塞ぎ部材53,54は、それぞれの縦塞ぎ対向面部532,542における上端部が第1上塞ぎ部材51の左右両端部に面接触し、それぞれの縦塞ぎ対向面部532,542における下端部が第1下塞ぎ部材52の下塞ぎ対向面部523における左右両端部に面接触するように配置されている。
各第1縦塞ぎ部材53,54と第1上塞ぎ部材51には、各第1縦塞ぎ部材53,54と第1上塞ぎ部材51の間を火炎が通過することを防止するために、縦塞ぎ固定面部531,541および縦塞ぎ対向面部532,542と、上塞ぎ固定面部511および上塞ぎ対向面部512とを架け渡すように不燃性のアルミテープ55がそれぞれ貼り付けられている。各第1縦塞ぎ部材53,54と第1下塞ぎ部材52には、各第1縦塞ぎ部材53,54と第1下塞ぎ部材52の間を火炎が通過することを防止するために、縦塞ぎ固定面部531,541および縦塞ぎ対向面部532,542と、下塞ぎ固定面部521、中間鉛直面部522および下塞ぎ対向面部523とを架け渡すように不燃性のアルミテープ55がそれぞれ貼り付けられている。
なお、各第1縦塞ぎ部材53,54における上端部が、それぞれ第1上塞ぎ部材51の上塞ぎ対向面部512に面接触し、下端部が第1下塞ぎ部材52の下塞ぎ対向面部523に面接触するように配置されても良い。
【0043】
〔実施形態の効果〕
防火改装窓構造は、既設枠10と新設枠20とが連結部材30により連結され、既設枠10の全周に第1塞ぎ部材50が固定され、新設枠20の全周と第1塞ぎ部材50との間に第2塞ぎ部材60が充填されている。
このため、新設枠20の寸法誤差などが生じて、新設枠20に対する第1塞ぎ部材50の位置が所望の位置から前後または上下にずれても、新設枠20と第1塞ぎ部材50との間に形状追従性を有する第2塞ぎ部材60が充填されるため、遮炎性能の低下を抑制することができる。
また、既設枠10と新設枠20との連結機能を有する連結部材30と、遮炎性能を有する第1塞ぎ部材50および第2塞ぎ部材60とを別々の部材により構成しているため、防火認定基準を満たすことができる。
さらに、カバー部材70を構成する各縦カバー部材73,74にカバー雌ねじ部731A,741Aを形成しても、第1塞ぎ部材50および第2塞ぎ部材60により十分な遮炎性能が確保されているため、各縦カバー部材73,74に網戸取り付け用の下地を設けることなく、ねじ84A,84Bにより網戸5を各縦カバー部材73,74に直接固定することができる。
【0044】
第1上塞ぎ部材51に、上ねじ51Aが挿通される上下に長い上長孔511Aが形成されている。
このため、既設上枠11の寸法誤差が生じても、第1上塞ぎ部材51の既設上枠11に対する上下方向の固定位置を上長孔511Aの範囲内で調整することにより、新設上枠対向面部211と第1上塞ぎ部材51の上塞ぎ対向面部512との間隔を一定にすることができる。したがって、既設上枠11の寸法誤差などの発生に備えてサイズが異なる第2上塞ぎ部材61を準備しておく必要がなくなる。
【0045】
各第1縦塞ぎ部材53,54に、縦ねじ53A,54Aが挿通される左右に長い縦長孔531A,541Aが形成されている。
このため、各既設縦枠13,14の寸法誤差が生じても、各第1縦塞ぎ部材53,54の各既設縦枠13,14に対する左右方向の固定位置を縦長孔531A,541Aの範囲内で調整することにより、各新設縦枠対向面部231,241と各第1縦塞ぎ部材53,54の縦塞ぎ対向面部532,542との間隔を一定にすることができる。したがって、各既設縦枠13,14の寸法誤差などの発生に備えてサイズが異なる第2縦塞ぎ部材63,64を準備しておく必要がなくなる。
【0046】
第1上塞ぎ部材51の左右両端部と左右の第1縦塞ぎ部材53,54の上端部との間、および、第1下塞ぎ部材52の左右両端部と左右の第1縦塞ぎ部材53,54の下端部との間が、アルミテープ55により塞がれている。
このため、アルミテープ55を用いるだけの簡単な構成で、互いに隣り合う第1上塞ぎ部材51,第1下塞ぎ部材52および各第1縦塞ぎ部材53,54の間における遮炎性能を確保することができる。
【0047】
[変形例]
上記実施形態では、既設枠10の全周に第1塞ぎ部材50が固定され、新設枠20の全周と第1塞ぎ部材50との間に第2塞ぎ部材60が充填されている構成を例示したが、
図7に示すように、新設枠20の全周に第1塞ぎ部材50が固定され、建物開口部3Aの内周面の全周と第1塞ぎ部材50との間に第2塞ぎ部材60が充填されても良い。
第1塞ぎ部材50を構成する第1上塞ぎ部材56は、新設上枠本体210の上面部210Cに複数の上ねじ56Aにより固定された板状の上塞ぎ固定面部561と、上塞ぎ固定面部561のZ2方向側の端部から上方に延長された接続部562と、接続部562の上端からZ2方向に延長されて建物開口部3Aの内周面に対向する上塞ぎ対向面部563とを備える。第2塞ぎ部材60を構成する第2上塞ぎ部材65は、建物開口部3Aの内周面と第1上塞ぎ部材56の上塞ぎ対向面部563との間をX軸方向の全体にわたって埋めるように充填されている。
このような構成にすれば、新設枠20の寸法誤差や既設枠10に対する新設枠20の配置位置のばらつきなどが生じて、建物開口部3Aの内周面に対する第1上塞ぎ部材56の位置が所望の位置からずれても、建物開口部3Aの内周面と第1上塞ぎ部材56との間に形状追従性を有する第2上塞ぎ部材65が充填されるため、遮炎性能の低下を抑制することができる。
なお、建物開口部3Aの内周面と新設下枠22および各新設縦枠23,24との連結部位にも、同様の構成を適用しても良い。
【0048】
上記実施形態では、既設枠10(一方の枠)の全周に第1塞ぎ部材50が固定され、新設枠20(他方の枠)の全周と第1塞ぎ部材50との間に第2塞ぎ部材60が充填されている構成を例示したが、新設枠20(一方の枠)の全周に第1塞ぎ部材50が固定され、既設枠10(他方の枠)の全周と第1塞ぎ部材50との間に第2塞ぎ部材60が充填されている構成にしても良い。
例えば、
図7に二点鎖線で示すように、既設上枠11のZ2方向側の端部にZ2方向に延びる延出面部110Bが設けられている構成において、第2上塞ぎ部材65を延出面部110Bと第1上塞ぎ部材56の上塞ぎ対向面部563との間の隙間をX軸方向の全体にわたって埋めるように充填しても良い。
なお、既設下枠12および各既設縦枠13,14と新設下枠22および各新設縦枠23,24との連結部位にも、同様の構成を適用しても良い。
【0049】
上長孔511Aを真円の丸孔により構成しても良いし、縦長孔531A,541Aを真円の丸孔により構成しても良い。
第1下塞ぎ部材52に第1上塞ぎ部材51と同様の構成を適用して、第1下塞ぎ部材52の既設上枠11に対する上下方向の固定位置を長孔の範囲内で調整できるようにしても良い。
【0050】
第1塞ぎ部材50の代わりに、
図8に示す第1塞ぎ部材90を適用しても良い。
図8の左側の図に示すように、第1塞ぎ部材90は、既設上枠11に設けられる第1上塞ぎ部材91、既設下枠12に設けられる第1下塞ぎ部材92、左の既設縦枠13に設けられる左の第1縦塞ぎ部材93、および、右の既設縦枠14に設けられる図示しない右の第1縦塞ぎ部材を備える。なお、右の第1縦塞ぎ部材は、左の第1縦塞ぎ部材93の構成を左右反転させた形状を有し、左の第1縦塞ぎ部材93と同様の機能を有するため、説明を省略する。
【0051】
第1上塞ぎ部材91は、実施形態の上塞ぎ固定面部511および上塞ぎ対向面部512と同様の機能を有する上塞ぎ固定面部911および上塞ぎ対向面部912を備える。上塞ぎ固定面部911は、X軸方向の長さが上塞ぎ対向面部912よりも長くなるように形成され、X軸方向両端部が上塞ぎ対向面部912のX軸方向両端から突出している。
第1下塞ぎ部材92は、実施形態の下塞ぎ固定面部521、中間鉛直面部522および下塞ぎ対向面部523と同様の機能を有する下塞ぎ固定面部921、中間鉛直面部922および下塞ぎ対向面部923を備える。中間鉛直面部922は、X軸方向の長さが下塞ぎ固定面部921および下塞ぎ対向面部923よりも長くなるように形成され、X軸方向両端部が下塞ぎ固定面部921および下塞ぎ対向面部923のX軸方向両端から突出している。下塞ぎ対向面部923は、X軸方向の長さが下塞ぎ固定面部921よりも長くなるように形成され、X軸方向両端部が下塞ぎ固定面部921のX軸方向両端から突出している。
第1縦塞ぎ部材93は、実施形態の縦塞ぎ固定面部531および縦塞ぎ対向面部532と同様の機能を有する縦塞ぎ固定面部931および縦塞ぎ対向面部932を備える。縦塞ぎ固定面部931は、Y軸方向の長さが縦塞ぎ対向面部932よりも長くなるように形成され、Y軸方向両端部が縦塞ぎ対向面部932のY軸方向両端から突出している。縦塞ぎ固定面部931における縦塞ぎ対向面部932の上端よりも上側の部位と縦塞ぎ対向面部932の上端は、上塞ぎ固定面部911の左端部が嵌合する上嵌合部933を構成している。縦塞ぎ固定面部931における縦塞ぎ対向面部932の下端よりも下側の部位と縦塞ぎ対向面部932の下端は、下塞ぎ固定面部921の左端部が嵌合する下嵌合部934を構成している。
【0052】
図8の右側の図に示すように、第1上塞ぎ部材91、第1下塞ぎ部材92および左の第1縦塞ぎ部材93は、上嵌合部933および下嵌合部934に第1上塞ぎ部材91および第1下塞ぎ部材92の左端部がそれぞれ嵌合し、第1縦塞ぎ部材93と第1上塞ぎ部材91および第1下塞ぎ部材92との間に隙間が形成されないように配置される。また、第1上塞ぎ部材91、第1下塞ぎ部材92および右の第1縦塞ぎ部材は、右の第1縦塞ぎ部材の上嵌合部および下嵌合部に第1上塞ぎ部材91および第1下塞ぎ部材92の右端部がそれぞれ嵌合し、右の第1縦塞ぎ部材と第1上塞ぎ部材91および第1下塞ぎ部材92との間に隙間が形成されないように配置される。
このような構成により、アルミテープ55などの不燃性のテープを用いることなく、第1上塞ぎ部材91の左右両端部と左の第1縦塞ぎ部材93および右の第1縦塞ぎ部材の上端部との間、および、第1下塞ぎ部材92の左右両端部と左の第1縦塞ぎ部材93および右の第1縦塞ぎ部材の下端部との間における遮炎性能を確保することができる。
なお、上嵌合部および下嵌合部を左右の第1縦塞ぎ部材に設けずに、左右の第1縦塞ぎ部材の上端部が嵌合する上嵌合部を第1上塞ぎ部材91の左右両端部に設けるとともに、左右の第1縦塞ぎ部材の下端部が嵌合する下嵌合部を第1下塞ぎ部材92の左右両端部に設けても良い。
【0053】
網戸5を、各縦カバー部材73,74の代わりに、または、各縦カバー部材73,74に加えて、上カバー部材71および下カバー部材72にねじ止めしても良い。
また、各縦カバー部材73,74を架け渡すように、または、上カバー部材71、下カバー部材72および各縦カバー部材73,74のうち少なくとも1つに、手すりを設けても良い。
【0054】
[本発明のまとめ]
本発明の防火改装窓構造は、既設枠の内周に新設枠を配置する防火改装窓構造であって、前記既設枠と前記新設枠とが連結部材により連結され、前記既設枠および前記新設枠のうち一方の枠の全周に、変形不能な不燃性の第1塞ぎ部材が固定され、前記既設枠および前記新設枠のうち他方の枠の全周と前記第1塞ぎ部材との間に、形状追従性を有する不燃性の第2塞ぎ部材が充填されていることを特徴とする。
本発明によれば、新設枠の寸法誤差や既設枠に対する新設枠の配置位置のばらつきなどが生じて、既設枠および新設枠のうち他方の枠に対する第1塞ぎ部材の位置が所望の位置からずれても、当該他方の枠の全周と第1塞ぎ部材との間に形状追従性を有する第2塞ぎ部材が充填されるため、遮炎性能の低下を抑制することができる。
また、既設枠と新設枠との連結機能を有する連結部材と、遮炎性能を有する第1塞ぎ部材および第2塞ぎ部材とを別々の部材により構成しているため、防火認定基準を満たすことができる。
【0055】
本発明の防火改装窓構造において、前記既設枠は、既設上枠を備え、前記第1塞ぎ部材は、上下に長い上長孔を有し、前記上長孔に挿通されて前記既設上枠に螺合される上ねじにより前記既設上枠に固定された第1上塞ぎ部材を備え、前記新設枠は、前記第1上塞ぎ部材の下端に対向する新設上枠対向面部が設けられた新設上枠を備え、前記第2塞ぎ部材は、前記新設上枠対向面部と前記第1上塞ぎ部材との間に充填された第2上塞ぎ部材を備えることが好ましい。
本発明によれば、例えば既設上枠の寸法誤差が生じても、第1上塞ぎ部材の既設上枠に対する上下方向の固定位置を上長孔の範囲内で調整することにより、新設上枠対向面部と第1上塞ぎ部材との間隔を一定にすることができる。したがって、既設上枠の寸法誤差などの発生に備えてサイズが異なる第2上塞ぎ部材を準備しておく必要がなくなる。
【0056】
本発明の防火改装窓構造において、前記既設枠は、左右の既設縦枠を備え、前記第1塞ぎ部材は、左右に長い縦長孔を有し、前記縦長孔に挿通されて前記左右の既設縦枠に螺合される縦ねじにより前記左右の既設縦枠にそれぞれ固定された第1上塞ぎ部材を備え、前記新設枠は、前記左右の第1縦塞ぎ部材における前記既設枠の中央側の端部に対向する左右の新設縦枠対向面部が設けられた左右の新設縦枠を備え、前記第2塞ぎ部材は、前記左右の新設縦枠対向面部と前記左右の第1縦塞ぎ部材との間にそれぞれ充填された左右の第2縦塞ぎ部材を備えることが好ましい。
本発明によれば、例えば既設縦枠の寸法誤差が生じても、第1縦塞ぎ部材の既設縦枠に対する左右方向の固定位置を縦長孔の範囲内で調整することにより、新設縦枠対向面部と第1縦塞ぎ部材との間隔を一定にすることができる。したがって、既設縦枠の寸法誤差などの発生に備えてサイズが異なる第2縦塞ぎ部材を準備しておく必要がなくなる。
【0057】
本発明の防火改装窓構造において、前記既設枠は、既設上枠、既設下枠および左右の既設縦枠を備え、前記第1塞ぎ部材は、前記既設上枠に固定された第1上塞ぎ部材、前記既設下枠に固定された第1下塞ぎ部材、および、前記左右の既設縦枠にそれぞれ固定された左右の第1縦塞ぎ部材を備え、前記第1上塞ぎ部材の左右両端部と前記左右の第1縦塞ぎ部材の上端部との間、および、前記第1下塞ぎ部材の左右両端部と前記左右の第1縦塞ぎ部材の下端部との間が、不燃性のテープにより塞がれていることが好ましい。
本発明によれば、不燃性のテープを用いるだけの簡単な構成で、第1上塞ぎ部材の左右両端部と左右の第1縦塞ぎ部材の上端部との間、および、第1下塞ぎ部材の左右両端部と左右の第1縦塞ぎ部材の下端部との間における遮炎性能を確保することができる。
【0058】
本発明の防火改装窓構造において、前記既設枠は、既設上枠、既設下枠および左右の既設縦枠を備え、前記第1塞ぎ部材は、前記既設上枠に固定された第1上塞ぎ部材、前記既設下枠に固定された第1下塞ぎ部材、および、前記左右の既設縦枠にそれぞれ固定された左右の第1縦塞ぎ部材を備え、前記第1上塞ぎ部材の左右両端部および前記左右の第1縦塞ぎ部材の上端部のうち一方の端部は、他方の端部に形成された上嵌合部に嵌合され、前記第1下塞ぎ部材の左右両端部および前記左右の第1縦塞ぎ部材の下端部のうち一方の端部には、他方の端部に形成された下嵌合部に嵌合されていることが好ましい。
本発明によれば、不燃性のテープを用いることなく、第1上塞ぎ部材の左右両端部および左右の第1縦塞ぎ部材の上端部のうち一方の端部を上嵌合部に嵌合するとともに、第1下塞ぎ部材の左右両端部および左右の第1縦塞ぎ部材の下端部のうち一方の端部を下嵌合部に嵌合することにより、第1上塞ぎ部材の左右両端部と左右の第1縦塞ぎ部材の上端部との間、および、第1下塞ぎ部材の左右両端部と左右の第1縦塞ぎ部材の下端部との間における遮炎性能を確保することができる。
【0059】
本発明の防火改装窓構造は、建物開口部の内周に固定された既設枠の内周に新設枠を配置する防火改装窓構造であって、前記既設枠と前記新設枠とが連結部材により連結され、前記新設枠の全周に、変形不能な不燃性の第1塞ぎ部材が固定され、前記建物開口部の内周の全周と前記第1塞ぎ部材との間に、形状追従性を有する不燃性の第2塞ぎ部材が充填されていることを特徴とする。
本発明によれば、新設枠の寸法誤差や既設枠に対する新設枠の配置位置のばらつきなどが生じて、建物開口部の内周に対する第1塞ぎ部材の位置が所望の位置からずれても、建物開口部の内周の全周と第1塞ぎ部材との間に形状追従性を有する第2塞ぎ部材が充填されるため、遮炎性能の低下を抑制することができる。
また、既設枠と新設枠との連結機能を有する連結部材と、遮炎性能を有する第1塞ぎ部材および第2塞ぎ部材とを別々の部材により構成しているため、防火認定基準を満たすことができる。
【0060】
本発明の建具は、上述の防火改装窓構造を備えることを特徴とする。
本発明によれば、遮炎性能の低下を抑制することができる建具を提供することができる。
【0061】
本発明の建具は、上述の防火改装窓構造と、前記既設枠または前記新設枠の全周に固定され、前記連結部材、前記第1塞ぎ部材および前記第2塞ぎ部材を覆うカバー部材と、を備えることを特徴とする。
本発明によれば、遮炎性能および意匠性の低下を抑制することができる建具を提供することができる。
【0062】
本発明の建具において、前記カバー部材に固定された網戸または手すりを備えることが好ましい。
本発明によれば、網戸または手すり固定用のねじが螺合される雌ねじ部をカバー部材に形成しても、第1塞ぎ部材および第2塞ぎ部材により十分な遮炎性能が確保されているため、カバー部材に網戸または手すり取り付け用の下地を設けることなく、ねじにより網戸または手すりをカバー部材に直接固定することができる。
【符号の説明】
【0063】
1…改装サッシ(建具)、3A…建物開口部、5…網戸、10…既設枠、11…既設上枠、12…既設下枠、13,14…既設縦枠、20…新設枠、21…新設上枠、22…新設下枠、23,24…新設縦枠、30…連結部材、31…上連結部材、32…下連結部材、33,34…縦連結部材、40…加熱発泡材、41…上加熱発泡材、42…下加熱発泡材、43,44…縦加熱発泡材、50,90…第1塞ぎ部材、51,56,91…第1上塞ぎ部材、51A,56A…上ねじ、52,92…第1下塞ぎ部材、53,54,93…第1縦塞ぎ部材、53A,54A…縦ねじ、55…アルミテープ、60…第2塞ぎ部材、61,65…第2上塞ぎ部材、62…第2下塞ぎ部材、63,64…第2縦塞ぎ部材、70…カバー部材、111A…上雌ねじ部、131A,141A…縦雌ねじ部、211…新設上枠対向面部、231,241…新設縦枠対向面部、511A…上長孔、531A,541A…縦長孔、933…上嵌合部、934…下嵌合部。