(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024013656
(43)【公開日】2024-02-01
(54)【発明の名称】画像形成装置用部材、転写装置、及び、画像形成装置
(51)【国際特許分類】
G03G 15/16 20060101AFI20240125BHJP
G03G 15/00 20060101ALI20240125BHJP
【FI】
G03G15/16
G03G15/16 103
G03G15/00 551
G03G15/00 552
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022115913
(22)【出願日】2022-07-20
(71)【出願人】
【識別番号】000005496
【氏名又は名称】富士フイルムビジネスイノベーション株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】林 聖悟
(72)【発明者】
【氏名】田中 宏晃
(72)【発明者】
【氏名】杉浦 聡哉
【テーマコード(参考)】
2H171
2H200
【Fターム(参考)】
2H171FA10
2H171FA26
2H171GA01
2H171QA04
2H171QA08
2H171QA24
2H171QB02
2H171QB15
2H171QB32
2H171XA02
2H171XA03
2H200FA08
2H200GA12
2H200GA23
2H200GA34
2H200GA47
2H200GB22
2H200HA04
2H200HA11
2H200JA02
2H200JA29
2H200JB06
2H200JC03
2H200JC15
2H200JC16
2H200JC17
2H200MA04
2H200MB04
2H200MC03
2H200MC20
2H200PA03
2H200PB16
2H200PB17
2H200PB20
(57)【要約】
【課題】防汚性の維持性に優れる画像形成装置用部材を提供すること。
【解決手段】Si原子を含むポリマーを主成分として含む表面層を有し、前記表面層の表面自由エネルギーにおける、分散成分が25mN/m以下、双極子成分が5mN/m以下、水素結合成分が5mN/m以下である画像形成装置用部材。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
Si原子を含むポリマーを主成分として含む表面層を有し、
前記表面層の表面自由エネルギーにおける、分散成分が25mN/m以下、双極子成分が5mN/m以下、水素結合成分が5mN/m以下である
画像形成装置用部材。
【請求項2】
前記Si原子を含むポリマーの主鎖骨格が、ポリノルボルネン骨格である請求項1に記載の画像形成装置用部材。
【請求項3】
前記Si原子を含むポリマーが、トリアルキルシロキシ基を有する請求項1に記載の画像形成装置用部材。
【請求項4】
前記トリアルキルシロキシ基が、トリメチルシロキシ基である請求項3に記載の画像形成装置用部材。
【請求項5】
前記Si原子を含むポリマーが、トリス(トリアルキルシロキシ)シリル基を有する請求項1に記載の画像形成装置用部材。
【請求項6】
前記Si原子を含むポリマーが、下記構造(N1)で表される構成単位と下記構造(N2)で表される構成単位を有する、シリコーン変性ポリノルボルネン樹脂である請求項1に記載の画像形成装置用部材。
【化1】
(前記構造(N1)中、R
1、R
2及びR
3はそれぞれ独立に、アルキル基を表す。)
【請求項7】
前記構造(N1)で表される構成単位と前記構造(N2)で表される構成単位との共重合比(N1/N2)が、モル比で30/70以上95/5以下である請求項1に記載の画像形成装置用部材。
【請求項8】
前記共重合比(N1/N2)が、40/60以上85/15以下である請求項7に記載の画像形成装置用部材。
【請求項9】
X線光電子分光法により測定される、表面層の表面に存在するSi原子の割合が10atom%以上50atom%以下である請求項1に記載の画像形成装置用部材。
【請求項10】
前記Si原子の割合が20atom%以上45atom%以下である請求項9に記載の画像形成装置用部材。
【請求項11】
ベルト部材、又は、ロール部材である請求項1に記載の画像形成装置用部材。
【請求項12】
前記Si原子を含むポリマーの主鎖骨格が、ポリノルボルネン骨格であり、
前記Si原子を含むポリマーが、トリアルキルシロキシ基を有する請求項1に記載の画像形成装置用部材。
【請求項13】
前記トリアルキルシロキシ基が、トリメチルシロキシ基である請求項12に記載の画像形成装置用部材。
【請求項14】
X線光電子分光法により測定される、表面層の表面に存在するSi原子の割合が10atom%以上50atom%以下である請求項12に記載の画像形成装置用部材。
【請求項15】
表面にトナー像が転写される中間転写体と、
前記トナー像を前記中間転写体の表面に一次転写する一次転写装置と、
前記中間転写体の表面に転写された前記トナー像を記録媒体の表面に二次転写する二次転写装置であって、請求項1乃至請求項14のいずれか1項に記載の画像形成装置用部材からなる二次転写部材を有する二次転写装置と、
を備える転写装置。
【請求項16】
感光体を備え、前記感光体の表面にトナー像を形成するトナー像形成装置と、
前記トナー像を記録媒体の表面に転写する、請求項15に記載の転写装置と、
を備える画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置用部材、転写装置、及び、画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、静電吸着された記録媒体を複数の画像形成部の画像転写位置に搬送する転写搬送ベルトであって、該転写搬送ベルトが、少なくとも熱可塑性樹脂と導電性フィラーを含有し、前記転写搬送ベルトの比誘電率をεb、前記転写搬送ベルト表面の表面エネルギーの水素結合成分をγb[mN/m]としたとき、以下の関係を満足することを特徴とする転写搬送ベルトが、開示されている。
15≦εb≦50
0.02≦γb≦30
5≦(εb)1/2+(γb)1/2≦10
【0003】
特許文献2には、所定の周縁形状を有し、現像剤を表面に担持して搬送するための現像剤担持体に当接して配され、前記現像剤担持体表面に担持される現像剤の量を規制するために用いられる現像剤量規制ブレードにおいて、支持部材とブレード部材とが貼着された積層構造を有し、かつ、前記ブレード部材が極性基を有する樹脂を含む弾性体で形成されており、前記ブレード部材の、前記現像剤担持体に当接する表面の表面自由エネルギー(γs)を、分散成分(γsd)、双極子成分(γsp)、及び水素結合成分(γsh)の合計で表したとき、前記表面自由エネルギー(γs)が65mN/m以下、かつ前記双極子成分(γsp)が35mN/m以下、かつ水素結合成分(γsh)が5mN/m以下であることを特徴とする現像剤量規制ブレードが、開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006-53319号公報
【特許文献2】特開2006-3882号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、Si原子を含むポリマーを主成分として含む表面層を有する画像形成装置用部材において、表面層の表面自由エネルギーにおける、分散成分が25mN/m超え、双極子成分が5mN/m超え、又は、水素結合成分が5mN/m超えである場合に比べ、防汚性の維持性に優れる画像形成装置用部材を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するための具体的手段には、下記の態様が含まれる。
<1> Si原子を含むポリマーを主成分として含む表面層を有し、前記表面層の表面自由エネルギーにおける、分散成分が25mN/m以下、双極子成分が5mN/m以下、水素結合成分が5mN/m以下である画像形成装置用部材。
<2> 前記Si原子を含むポリマーの主鎖骨格が、ポリノルボルネン骨格である<1>に記載の画像形成装置用部材。
<3> 前記Si原子を含むポリマーが、トリアルキルシロキシ基を有する<1>又は<2>に記載の画像形成装置用部材。
<4> 前記トリアルキルシロキシ基が、トリメチルシロキシ基である<3>に記載の画像形成装置用部材。
<5> 前記Si原子を含むポリマーが、トリス(トリアルキルシロキシ)シリル基を有する<1>乃至<4>のいずれかに1つに記載の画像形成装置用部材。
<6> 前記Si原子を含むポリマーが、下記構造(N1)で表される構成単位と下記構造(N2)で表される構成単位を有する、シリコーン変性ポリノルボルネン樹脂である<1>乃至<5>のいずれかに1つに記載の画像形成装置用部材。
【0007】
【化1】
(前記構造(N1)中、R
1、R
2及びR
3はそれぞれ独立に、アルキル基を表す。)
【0008】
<7> 前記構造(N1)で表される構成単位と前記構造(N2)で表される構成単位との共重合比(N1/N2)が、モル比で30/70以上95/5以下である<1>乃至<6>のいずれかに1つに記載の画像形成装置用部材。
<8> 前記共重合比(N1/N2)が、40/60以上85/15以下である<7>に記載の画像形成装置用部材。
<9> X線光電子分光法により測定される、表面層の表面に存在するSi原子の割合が10atom%以上50atom%以下である<1>乃至<8>のいずれかに1つに記載の画像形成装置用部材。
<10> 前記Si原子の割合が20atom%以上45atom%以下である<9>に記載の画像形成装置用部材。
<11> ベルト部材、又は、ロール部材である<1>乃至<10>のいずれかに1つに記載の画像形成装置用部材。
<12> 前記Si原子を含むポリマーの主鎖骨格が、ポリノルボルネン骨格であり、前記Si原子を含むポリマーが、トリアルキルシロキシ基を有する<1>乃至<11>のいずれかに1つに記載の画像形成装置用部材。
<13> 前記トリアルキルシロキシ基が、トリメチルシロキシ基である<12>に記載の画像形成装置用部材。
<14> X線光電子分光法により測定される、表面層の表面に存在するSi原子の割合が10atom%以上50atom%以下である<12>又は<13>に記載の画像形成装置用部材。
<15> 表面にトナー像が転写される中間転写体と、前記トナー像を前記中間転写体の表面に一次転写する一次転写装置と、前記中間転写体の表面に転写された前記トナー像を記録媒体の表面に二次転写する二次転写装置であって、<1>乃至<14>のいずれか1つに記載の画像形成装置用部材からなる二次転写部材を有する二次転写装置と、を備える転写装置。
<16> 感光体を備え、前記感光体の表面にトナー像を形成するトナー像形成装置と、前記トナー像を記録媒体の表面に転写する、<15>に記載の転写装置と、を備える画像形成装置。
【発明の効果】
【0009】
<1>又は<11>に係る発明によれば、Si原子を含むポリマーを主成分として含む表面層を有する画像形成装置用部材において、表面層の表面自由エネルギーにおける、分散成分が25mN/m超え、双極子成分が5mN/m超え、又は、水素結合成分が5mN/m超えである場合に比べ、防汚性の維持性に優れる画像形成装置用部材が提供される。
<2>に係る発明によれば、Si原子を含むポリマーがシリコーン樹脂である場合に比べ、防汚性の維持性により優れる画像形成装置用部材が提供される。
<3>、<4>、<5>又は<6>に係る発明によれば、Si原子を含むポリマーがトリアルキルシリル基のみを有する場合に比べ、防汚性の維持性により優れる画像形成装置用部材が提供される。
<7>に係る発明によれば、前記構造(N1)で表される構成単位と前記構造(N2)で表される構成単位との共重合比(N1/N2)が、モル比で30/70未満又は95/5超である場合に比べ、防汚性の維持性により優れる画像形成装置用部材が提供される。
<8>に係る発明によれば、前記構造(N1)で表される構成単位と前記構造(N2)で表される構成単位との共重合比(N1/N2)が、モル比で40/60未満又は85/15超である場合に比べ、防汚性の維持性により優れる画像形成装置用部材が提供される。
<9>又は<14>に係る発明によれば、X線光電子分光法により測定される、表面層の表面に存在するSi原子の割合が10atom%未満又は50atom%超である場合に比べ、防汚性の維持性により優れる画像形成装置用部材が提供される。
<10>に係る発明によれば、X線光電子分光法により測定される、表面層の表面に存在するSi原子の割合が20atom%未満又は45atom%超である場合に比べ、防汚性の維持性により優れる画像形成装置用部材が提供される。
<12>又は<13>に係る発明によれば、Si原子を含むポリマーがトリアルキルシリル基のみを有するポリノルボルネン樹脂である場合に比べ、防汚性の維持性により優れる画像形成装置用部材が提供される。
<15>又は<16>に係る発明によれば、Si原子を含むポリマーを主成分として含む表面層を有する画像形成装置用部材において、表面層の表面自由エネルギーにおける、分散成分が25mN/m超え、双極子成分が5mN/m超え、又は、水素結合成分が5mN/m超えである二次転写部材を有する場合に比べ、防汚性の維持性に優れる転写装置、又は、画像形成装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本実施形態に係る画像形成装置用部材の一例を示す概略斜視図である。
【
図2】本実施形態に係る画像形成装置用部材の一例を示す概略断面図であり、
図1のA-A断面図である。
【
図3】本実施形態に係る画像形成装置の一例を示す概略構成図である。
【
図4】本実施形態に係る画像形成装置の他の一例における二次転写部周辺を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明の一例である実施形態について説明する。
なお、本明細書において、成分に該当する物質が複数種存在する場合、成分の量は、特に断らない限り、複数種の物質の合計量を意味する。
本明細書において、「導電性」とは、常温常湿環境(22℃55%RH環境)における体積抵抗率が1014Ω・cm以下であることを意味している。
【0012】
<画像形成装置用部材>
本実施形態に係る画像形成装置用部材は、Si原子を含むポリマーを主成分として含む表面層を有し、前記表面層の表面自由エネルギーにおける、分散成分が25mN/m以下、双極子成分が5mN/m以下、水素結合成分が5mN/m以下である。
本実施形態に係る画像形成装置用部材は、ベルト部材、又は、ロール部材として好適に用いられる。
また、本実施形態に係る画像形成装置用部材は、前記表面層のみの単層構成であってもよいし、導電性基材、弾性層等を更に有していてもよい。
【0013】
従来、表面層にはフッ素樹脂を分散したウレタン樹脂が用いられている。しかし、高防汚性を得るためにはフッ素樹脂を多量に添加する必要があり、その結果、屈曲耐久性が低下し、クラック(割れ)が発生しやすいことが分かった。屈曲性に対して、ベースポリマーに防汚性を付与する方法が挙げられる。
本実施形態に係る画像形成装置用部材は、Si原子を含むポリマーを主成分として含む表面層を有し、前記表面層の表面自由エネルギーにおける、分散成分が25mN/m以下、双極子成分が5mN/m以下、水素結合成分が5mN/m以下であるため、機械的強度が高い非含フッ素材料でありながら、表面層の表面自由エネルギーにおける分散成分だけでなく、特に付着性への影響が大きい分子間力への寄与が高い水素結合成分及び双極子成分を低くすることにより、分子構造の電荷極性の影響が小さく、残留物の付着力が低減され、単に汚れが付着しにくいだけでなく、その維持性にも優れ、また、Si原子を含むポリマーを主成分として含むことにより、汚れ付着の一因となる経時におけるクラックの発生も抑制され、防汚性の維持性に優れると考えられる。
【0014】
また、本実施形態に係る画像形成装置用部材は、摩擦係数の維持性が高く、それによりクリーニング維持性にも優れる。
【0015】
本実施形態に係る画像形成装置用部材を、図面を参照しながら説明する。
図1は、本実施形態に係る画像形成装置用部材の一例を示す概略斜視図である。
図2は、
図1のA-A断面図であり、
図1に図示する画像形成装置用部材を径方向に切断した断面図である。
【0016】
図1に示すように、画像形成装置用部材100は、円柱状の導電性基材110と、導電性基材110の外周面上に配置された、弾性層122、中間層124、及び表面層126を含む層状物120と、を含んで構成されるロール部材である。なお、本実施形態に係る画像形成装置用部材は、ベルト部材であってもよい。
【0017】
図2に示すように、画像形成装置用部材100の層構成は、円柱状の導電性基材110の外周面上に配置された弾性層122と、弾性層122の外周面上に配置された中間層124と、中間層124の外周面上に配置された表面層126と、を有する。
【0018】
本実施形態に係る画像形成装置用部材は、
図1及び
図2に示す構成に限られず、例えば、導電性基材110と弾性層122との間、弾性層122と中間層124との間、中間層124と表面層126との間には、適宜、接着層を有していてもよい。
【0019】
以下、本実施形態に係る画像形成装置用部材100の詳細について説明する。なお、符号は省略して説明する。
【0020】
(表面層)
表面層は、例えば、導電性基材の外周面上であり且つ最表面に配置される。
表面層は、一層であってもよく、二層以上備えられていてもよい。
画像形成装置用部材に表面層が複数備えられる場合、導電性基材の外周面上であり最表面に配置される表面層が、Si原子を含むポリマーを主成分として含み、かつ、前記表面層の表面自由エネルギーにおける、分散成分が25mN/m以下、双極子成分が5mN/m以下、水素結合成分が5mN/m以下である。
【0021】
前記表面層の表面自由エネルギーにおける分散成分は、25mN/m以下であり、防汚性の維持性、及び、クリーニング性の観点から、0mN/m以上25mN/m以下であることが好ましく、5mN/m以上24mN/m以下であることが好ましく、10mN/m以上23mN/m以下であることがより好ましい。
前記表面層の表面自由エネルギーにおける双極子成分は、5mN/m以下であり、防汚性の維持性の観点から、0mN/m以上5mN/m以下であることが好ましく、0mN/m以上3mN/m以下であることが好ましく、0mN/m以上2mN/m以下であることがより好ましく、0mN/m以上1mN/m以下であることが特に好ましい。
前記表面層の表面自由エネルギーにおける水素結合成分は、5mN/m以下であり、防汚性の維持性の観点から、0mN/m以上5mN/m以下であることが好ましく、0mN/m以上3mN/m以下であることが好ましく、0mN/m以上2mN/m以下であることがより好ましく、0mN/m以上1mN/m以下であることが特に好ましい。
【0022】
本実施形態における表面層の表面自由エネルギーの分散成分(分散項)、双極子成分(双極子項)及び水素結合成分(水素結合項)の値は、接触角計CAM-200(KSV社製)を用い、Zisman法を用いた装置内蔵のプログラム計算にて算出する。
【0023】
表面層は、Si原子を含むポリマーを主成分として含む。
本実施形態における「主成分」として含むとは、50質量%以上含むことを意味する。
また、表面層におけるSi原子を含むポリマーの含有量は、防汚性の維持性、及び、クリーニング性の観点から、表面層の全質量に対し、50質量%以上100質量%以下であることが好ましく、80質量%以上100質量%以下であることがより好ましく、90質量%以上100質量%以下であることが更に好ましく、95質量%以上100質量%以下であることが特に好ましい。
【0024】
前記Si原子を含むポリマーの主鎖骨格は、特に制限はないが、防汚性の維持性の観点から、環構造を有する骨格であることが好ましく、環状炭化水素構造を有する骨格であることがより好ましく、ポリノルボルネン骨格であることが特に好ましい。
なお、ポリマーにおける「主鎖」とは、ポリマーにおける最も長いポリマー鎖をいう。
【0025】
前記Si原子を含むポリマーは、防汚性の維持性、及び、表面自由エネルギーの各成分の低減性の観点から、トリアルキルシロキシ基を有することが好ましく、トリス(トリアルキルシロキシ)シリル基を有することがより好ましい。
前記トリアルキルシロキシ基(トリス(トリアルキルシロキシ)シリル基におけるトリアルキルシロキシ基も含む。以下、同様。)におけるアルキル基は、例えば、直鎖状又は分岐状である炭素数(「炭素原子数」ともいう。)1以上6以下のアルキル基(例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基等)が挙げられる。
中でも、前記トリアルキルシロキシ基におけるアルキル基は、防汚性の維持性、及び、表面自由エネルギーの各成分の低減性の観点から、炭素数1以上6以下のアルキル基が好ましく、炭素数1以上4以下のアルキル基がより好ましく、炭素数1以上3以下のアルキル基が更に好ましく、メチル基、すなわち、前記トリアルキルシロキシ基は、トリメチルシロキシ基であることが特に好ましい。
【0026】
また、前記Si原子を含むポリマーは、防汚性の維持性、及び、表面自由エネルギーの各成分の低減性の観点から、トリアルキルシロキシ基を有する構成単位を有することが好ましく、トリス(トリアルキルシロキシ)シリル基を有する構成単位を有することがより好ましい。
更に、前記Si原子を含むポリマーは、防汚性の維持性、及び、表面自由エネルギーの各成分の低減性の観点から、環構造上にトリアルキルシロキシ基を有する構成単位を有することが好ましく、環構造上にトリス(トリアルキルシロキシ)シリル基を有する構成単位を有することがより好ましい。
【0027】
前記Si原子を含むポリマーは、防汚性の維持性、及び、表面自由エネルギーの各成分の低減性の観点から、下記構造(N1)で表される構成単位を有する、シリコーン変性ポリノルボルネン樹脂であることが好ましく、下記構造(N1)で表される構成単位と下記構造(N2)で表される構成単位を有する、シリコーン変性ポリノルボルネン樹脂であることがより好ましい。
【0028】
【化2】
(前記構造(N1)中、R
1、R
2及びR
3はそれぞれ独立に、アルキル基を表す。)
【0029】
前記Si原子を含むポリマーにおける前記構造(N1)におけるR1、R2及びR3はそれぞれ独立に、防汚性の維持性、及び、表面自由エネルギーの各成分の低減性の観点から、炭素数1以上6以下のアルキル基が好ましく、炭素数1以上4以下のアルキル基がより好ましく、炭素数1以上3以下のアルキル基が更に好ましく、メチル基が特に好ましい。
【0030】
前記構造(N1)で表される構成単位と前記構造(N2)で表される構成単位との共重合比(N1/N2)は、防汚性の維持性、及び、表面自由エネルギーの各成分の低減性の観点から、モル比で20/80以上98/2以下であることが好ましく、30/70以上95/5以下であることがより好ましく、40/60以上85/15以下であることが特に好ましい。
【0031】
X線光電子分光法により測定される、表面層の表面に存在するSi原子の割合は、防汚性の維持性の観点から、5atom%以上70atom%以下であることが好ましく、10atom%以上50atom%以下であることがより好ましく、20atom%以上45atom%以下であることが特に好ましい。
【0032】
本実施形態において表面層の表面に存在するSi原子の割合は、X線光電子分光法(XPS)により、以下の方法で求める。
表面層を試料にして、下記の条件でX線光電子分光法(X-ray Photoelectron Spectroscopy,XPS)で分析し、各元素のピーク強度から珪素元素濃度(atom%)を求める。
・XPS装置:アルバック・ファイ社製、VersaProbeII
・エッチング銃:アルゴン銃
・加速電圧:5kV
・エミッション電流:20mA
・スパッタ領域:2mm×2mm
・スパッタレート:3nm/min(SiO2換算)
【0033】
表面層の形成方法は、特に制限されないが、例えば、前記Si原子を含むポリマーを含む表面層形成用組成物を導電性基材の上にスプレー塗布等により塗布した後に、塗膜を加熱処理することにより形成することができる。
【0034】
表面層の平均厚みは、例えば、10nm以上200μm以下であることが好ましく、10nm以上100μm以下であることがより好ましく、50nm以上50μm以下であることが特に好ましい。
【0035】
表面層は、本実施形態の効果が阻害されない範囲で、必要に応じて、その他の添加剤を含んでいてもよい。添加剤としては例えば、後述する弾性層におけるその他の添加剤と同様の添加剤が挙げられる。
【0036】
(導電性基材)
本実施形態に係る画像形成装置用部材は、導電性基材を備えることが好ましい。
導電性基材としては、例えば、アルミニウム、銅合金、ステンレス鋼等の金属または合金;クロム、ニッケル等で鍍金処理を施した鉄;導電性の樹脂(例えば、導電性材料を含む樹脂製基材、導電性材料を含むゴム製基材等)などの導電性の材質で構成されたものが用いられる。
【0037】
導電性基材は、電極及び支持部材として機能するものであり、例えば、その材質としては鉄(快削鋼等),銅,真鍮,ステンレス,アルミニウム,ニッケル等の金属が挙げられる。導電性基材としては、外周面にメッキ処理を施した部材(樹脂部材、セラミック部材等)、導電剤が分散された部材(ゴム部材、樹脂部材、セラミック部材等)等も挙げられる。導電性基材は、中空状の部材(筒状部材)であってもよいし、非中空状の部材であってもよい。
【0038】
導電性基材の外径は、特に制限はなく、用途に応じ適宜選択すればよく、例えば3mm以上20mm以下の範囲が挙げられる。
導電性基材の軸方向における長さは、特に制限はなく、用途に応じ適宜選択すればよく、例えば220mm以上380mm以下の範囲が挙げられる。
【0039】
(弾性層)
本実施形態の画像形成装置用部材は、導電性基材と表面層との間に、弾性層を更に備えていてもよい。弾性層は、一層であってもよく、二層以上備えられていてもよい。
【0040】
弾性層は、弾性材料を含む。
弾性材料としては、ゴム材料及び樹脂材料が挙げられる。
ゴム材料としては、例えば、イソプレンゴム、クロロプレンゴム、エピクロルヒドリンゴム、ブチルゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴム、スチレン-ブタジエンゴム、ブタジエンゴム、ニトリルゴム、エチレンプロピレンゴム、エピクロルヒドリン-エチレンオキシド共重合ゴム、エピクロルヒドリン-エチレンオキシド-アリルグリシジルエーテル三元共重合ゴム、エチレン-プロピレン-ジエン3元共重合ゴム(EPDM)、アクリロニトリル-ブタジエン共重合ゴム(NBR)、ポリウレタンゴム、天然ゴム、及びこれらを混合したゴム等が挙げられる。
【0041】
樹脂材料としては、例えば、ポリウレタン樹脂、ポリイミド樹脂(PI樹脂)、ポリアミドイミド樹脂(PAI樹脂)、芳香族ポリエーテルケトン樹脂(例えば、芳香族ポリエーテルエーテルケトン樹脂等)、ポリフェニレンサルファイド樹脂(PPS樹脂)、ポリエーテルイミド樹脂(PEI樹脂)、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリカーボネート樹脂等が挙げられる。
【0042】
弾性層は、導電性制御の観点から、電子導電剤、イオン導電剤等の導電剤を含んでいてもよい。
【0043】
電子導電剤としては、例えば、ケッチェンブラック、アセチレンブラック等のカーボンブラック;熱分解カーボン、グラファイト;アルミニウム、銅、ニッケル、ステンレス鋼等の金属又は合金;酸化錫、酸化インジウム、酸化チタン、酸化錫-酸化アンチモン固溶体、酸化錫-酸化インジウム固溶体等の導電性金属酸化物;絶縁物質の表面を導電化処理した物質;などの粉末が挙げられる。
電子導電剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0044】
イオン導電剤としては、例えば、四級アンモニウム塩(例えば、アルキルトリメチルアンモニウムパークロレート、ラウリルトリメチルアンモニウム、ステアリルトリメチルアンモニウム、オクタドデシルトリメチルアンモニウム、ドデシルトリメチルアンモニウム、ヘキサデシルトリメチルアンモニウム又は変性脂肪酸・ジメチルエチルアンモニウニウムの過塩素酸塩、塩素酸塩、ホウフッ化水素酸塩、硫酸塩、エトサルフェート塩、臭化ベンジル塩又は塩化ベンジル塩)、脂肪族スルホン酸塩、高級アルコール硫酸エステル塩、高級アルコールエチレンオキサイド付加硫酸エステル塩、高級アルコール燐酸エステル塩、高級アルコールエチレンオキサイド付加燐酸エステル塩、ベタイン、高級アルコールエチレンオキサイド、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、多価アルコール脂肪酸エステル等が挙げられる。
イオン導電剤は、エピクロルヒドリンゴム、エピクロルヒドリン-エチレンオキシド共重合ゴム、エピクロルヒドリン-エチレンオキシド-アリルグリシジルエーテル三元共重合ゴム等のように、イオン導電能を有する高分子材料であってもよい。
イオン導電剤は、樹脂などの高分子材料の末端にイオン導電剤が結合した化合物であってもよい。
イオン導電剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0045】
その他の添加剤としては、例えば、軟化剤、可塑剤、硬化剤、加硫剤、加硫促進剤、酸化防止剤、界面活性剤、カップリング剤、充填剤(シリカ、炭酸カルシウム等)などの、弾性体に添加され得る公知の材料が挙げられる。
【0046】
弾性層は、弾性材料を含有する発泡体(以下、「弾性発泡体」とも称す。)であってもよい。弾性発泡体を得るために、必要に応じて、発泡剤、整泡剤、触媒などを使用してもよい。発泡剤としては、水;アゾジカルボンアミド、アゾビスイソブチロニトリル、ジアゾアミノベンゼン等のアゾ化合物;ベンゼンスルホニルヒドラジド、4,4’-オキシビスベンゼンスルホニルヒドラジド、トルエンスルホニルヒドラジド等のベンゼンスルホニルヒドラジド類;熱分解により炭酸ガスを発生する炭酸水素ナトリウム等の重炭酸塩;窒素ガスを発生するNaNO2とNH4Clの混合物;酸素を発生する過酸化物;などが挙げられる。
【0047】
-弾性層の形成-
弾性層の形成方法は、特に制限はなく、公知の方法が用いられる。
例えば、弾性発泡体の場合、弾性材料、発泡剤及びその他の成分(例えば加硫剤等)を含む組成物を調製し、この組成物を円筒形状の押出成形した後、成形物を加熱して加硫及び発泡をさせる方法、巨大な発泡体から、円筒形状に切り出す方法が挙げられる。また、円柱状の弾性発泡体を形成した後、支持部材を挿入するための中心孔を形成して円筒状の弾性発泡体を得てもよい。なお、円筒状の弾性発泡体が得られた後、必要に応じて、更に形状を整えてもよいし、表面を研磨するなどの後処理を行ってもよい。
【0048】
-弾性層の体積抵抗値-
弾性層は、10Vの電圧印加時の体積抵抗値が、109Ω以下であることが好ましく、101Ω以上109Ω以下であることがより好ましく、102Ω以上108Ω以下であることが更に好ましい。
【0049】
弾性層の体積抵抗値は、以下のようにして測定する。
画像形成装置用部材を、銅板などの金属板上に、画像形成装置用部材の両端部に各500gの荷重をかけて載せ、微小電流測定器(Advantest社製R8320)を用い、画像形成装置用部材の導電性支持部材と金属板との間に10V(弾性層の場合)の電圧(V)を印加して、5秒後の電流値I(A)を読み取り、以下の式により計算することにより求められる。なお、測定は、温度22℃、湿度55%RH環境下で行う。
式 : 体積抵抗値Rv(Ω)=V/I
【0050】
-弾性層の厚み-
弾性層の厚みは、特に制限はなく、用途に応じ適宜選択すればよい。例えば、転写部材に本実施形態に係る画像形成装置用部材を用いる場合、弾性層の厚みは、2mm以上20mm以下であることが好ましく、2mm以上15mm以下であることがより好ましい。
弾性層の外径は、特に制限はなく、用途に応じ適宜選択すればよく、例えば6mm以上30mm以下の範囲が挙げられる。
弾性層の軸方向における長さは、特に制限はなく、用途に応じ適宜選択すればよく、例えば220mm以上380mm以下の範囲が挙げられる。
【0051】
(導電性被覆層)
弾性層は、弾性層の露出面を被覆する導電性被覆層を含んで構成されていてもよい。
前記弾性層の露出面とは、導電性基材及び他の層と接触していなく、画像形成装置用部材全体から見たときに露出している弾性層の領域を意味する。
前記弾性層の露出面は、その全てが導電性被覆層にて、被覆されていてもよいし、一部が被覆されていてもよい。
【0052】
導電性被覆層の形成方法は、特に制限されないが、例えば、弾性発泡体に、導電剤、樹脂、水等を含む処理液を付与した後、前記処理液が付着した画像形成装置用部材を加熱乾燥することにより導電性被覆層を形成する手法が挙げられる。
上記処理液を付与する方法としては、例えば、弾性発泡体に対しスプレー塗布等にて処理液を塗布する方法、処理液に弾性発泡体を浸漬する方法等が挙げられる。これらの方法により、処理液が弾性層の表面及び気泡内部にまで浸透する。
【0053】
導電剤としては、例えば、電子導電剤、又はイオン導電剤が挙げられ、中でも、電子導電剤が好ましい。導電剤は、1種でもよく、2種以上であってもよい。
電子導電剤としては、先述の弾性層中に含まれる電子導電剤と同様のものが挙げられ、好ましい態様も同様である。
【0054】
樹脂としては、弾性層の露出面に対して被覆層を形成し得る樹脂であれば特に制限はなく、例えば、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、フッ素樹脂、シリコーン樹脂等が挙げられる。樹脂は、1種でもよく、2種以上であってもよい。
樹脂は、ラテックスとして用いられていてもよい。
ラテックスとしては、上記樹脂のラテックスの他、天然ゴムラテックス、ブタジエンゴムラテックス、アクリロニトリル-ブタジエンゴムラテックス、アクリルゴムラテックス、ポリウレタンゴムラテックス、フッ素ゴムラテックス、シリコーンゴムラテックス等が挙げられる。
【0055】
処理液における導電剤及び樹脂の濃度は、導電性被覆層の形成性、弾性層に求められる
抵抗値等に応じて、適宜設計できる。
【0056】
(中間層)
本実施形態の画像形成装置用部材は、導電性基材と表面層との間に、中間層を更に備えていてもよい。
【0057】
中間層は、画像形成装置用部材の抵抗を調整する等の観点から、導電剤を含むことが好ましい。
導電剤としては、電子導電剤及びイオン導電剤のいずれもが用いられるが、帯電維持性を高める観点から、イオン導電剤を用いることが好ましい。イオン導電剤は、弾性発泡体に含まれるイオン導電剤と同じものが挙げられ、好ましい態様も同様である。イオン導電剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0058】
中間層は、イオン導電剤の他、結着材料を含んでいてもよい。
結着材料としては、特に制限はなく、中間層を形成し得る樹脂、弾性材料等が挙げられる。中間層に用いられる樹脂としては、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂等が挙げられる。また、中間層に含まれる弾性材料は、弾性層に用いられる弾性材料と同様のものが挙げられる。
【0059】
中間層が結着材料を含む場合、イオン導電剤の含有量は、結着材料100質量部に対して、0.1質量部以上5.0質量部以下が好ましく、0.5質量部以上3.0質量部以下がより好ましい。
【0060】
中間層は、中間層に求められる物性等に応じて、その他の添加剤を含んでもよい。
【0061】
中間層の100Vの電圧印加時の体積抵抗値は、104Ω以上109Ω以下(より好ましくは106Ω以上109Ω以下)であることが好ましい。
【0062】
中間層の形成方法は特に制限されず、公知の手法が適用できる。中間層の形成方法は、例えば、弾性層上に、中間層形成用塗布液を塗布し、塗膜を乾燥させる方法が挙げられる。
【0063】
中間層の厚みは、画像形成装置用部材の用途に応じて決定されればよいが、例えば、弾性層よりも薄いことが好ましい。本実施形態に係る画像形成装置用部材が二次転写ロールである場合、中間層の厚みは、0.5mm以上5mm以下が一例として挙げられる。
【0064】
次に、本実施形態に係る画像形成装置用部材が、二次転写ロール又は二次転写ベルト(以下、「本実施形態に係る二次転写部材」とも称する。)である場合について説明する。以下、符号は省略して説明する。
【0065】
本実施形態に係る二次転写部材は、Si原子を含むポリマーを主成分として含む表面層を有し、前記表面層の表面自由エネルギーにおける、分散成分が25mN/m以下、双極子成分が5mN/m以下、水素結合成分が5mN/m以下である。
本実施形態に係る二次転写部材における表面層の好ましい態様は、後述する以外、前述した表面層の好ましい態様と同様である。
【0066】
表面層は、導電剤を含むことがよい。また、その他添加剤を含んでもよい。
【0067】
導電剤としては、例えば、カーボンブラック;アルミニウム、ニッケル等の金属;酸化イットリウム、酸化スズ等の金属酸化物;チタン酸カリウム、塩化カリウム等のイオン導電性物質;ポリアニリン、ポリピロール、ポリサルフォン、ポリアセチレン等の導電性高分子等が挙げられる。これらのうち、導電性、経済性の観点から、カーボンブラックがよい。
【0068】
カーボンブラックとしては、例えば、ケッチエンブラック、オイルファーネスブラック、チャンネルブラック、アセチレンブラック、表面が酸化されたカーボンブラック(以下、「表面処理カーボンブラック」と称する)等が挙げられる。このうち、経時での電気抵抗安定性の観点から、表面処理カーボンブラックがよい。
表面処理カーボンブラックは、その表面に、例えば、カルボキシル基、キノン基、ラクトン基、ヒドロキシル基等を付与して得られる。
【0069】
導電剤の配合量は、例えば、表面層に含まれる樹脂100質量部に対して、10質量部以上30質量部以下であることが好ましく、13質量部以上25質量部以下であることがより好ましい。
【0070】
その他添加剤としては、例えば、酸化防止剤、界面活性剤、耐熱老化防止剤、分散剤、機各種充填剤、触媒、着色剤、レベリング剤等の周知の添加剤が挙げられる。
【0071】
本実施形態に係る二次転写部材は、前記表面層の単層構成であってもよいし、前記表面層を最外層として有する2層以上複層構成であってもよい。
【0072】
本実施形態に係る二次転写部材において、2層以上複層構成としては、二次転写部材が二次転写ベルトの場合、基材層と基材層上に設けられた表面層とを有する積層構成が挙げられ、二次転写部材が二次転写ロールの場合、基材(シャフト等)と基材上に設けられた弾性層と弾性層上に設けられた表面層とを有する積層構成が挙げられる。二次転写ロールの基材としては、公知のものを用いることができ、前述した導電性基材も好適に用いられる。
【0073】
次に、本実施形態に係る二次転写部材における、表面層以外の層(基材層、弾性層)について説明する。
【0074】
本実施形態に係る二次転写部材が二次転写ベルトの場合、表面層の下層として設けられる基材としては、特に制限はなく、公知の二次転写ベルトで適用される基材層が採用される。
【0075】
例えば、基材層としては、導電剤を含む樹脂層(例えば、ポリウレタン樹脂、フッ化ポリウレタン樹脂、ポリイミド樹脂、フッ化ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリエーテルエーテルエステル樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリエーテルサルフォン樹脂、ポリフェニルサルホン、ポリサルホン樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリカーボネート樹脂等の樹脂層)、導電剤を含むゴム層(イソプレンゴム、クロロプレンゴム(CR)、エピクロロヒドリンゴム(ECO)、ブチルゴム、ポリウレタン、シリコーンゴム、フッ素ゴム、スチレン-ブタジエンゴム、ブタジエンゴム、ニトリルゴム、エチレンプロピレンゴム、エピクロロヒドリン-エチレンオキシド共重合ゴム、エピクロロヒドリン-エチレンオキシド-アリルグリシジルエーテル共重合ゴム、エチレン-プロピレン-ジエン3元共重合ゴム(EPDM)、アクリロニトリル-ブタジエン共重合ゴム(NBR)、天然ゴム等、又は、これら2種以上を混合したゴム等の層)が挙げられる。
【0076】
本実施形態に係る二次転写部材が二次転写ロールの場合、表面層の下層として設けられる弾性層としては、特に制限はなく、公知の二次転写ロールで適用される弾性層が採用される。
【0077】
例えば、弾性層としては、導電剤を含むゴム層(イソプレンゴム、クロロプレンゴム(CR)、エピクロロヒドリンゴム(ECO)、ブチルゴム、ポリウレタン、シリコーンゴム、フッ素ゴム、スチレン-ブタジエンゴム、ブタジエンゴム、ニトリルゴム、エチレンプロピレンゴム、エピクロロヒドリン-エチレンオキシド共重合ゴム、エピクロロヒドリン-エチレンオキシド-アリルグリシジルエーテル共重合ゴム、エチレン-プロピレン-ジエン3元共重合ゴム(EPDM)、アクリロニトリル-ブタジエン共重合ゴム(NBR)、天然ゴム等、又は、これら2種以上を混合したゴム等の層)が挙げられる。なお、弾性層は、発泡層であってもよいし、非発泡層であってもよい。
【0078】
(用途)
本実施形態に係る画像形成装置用部材は、電子写真方式の画像形成装置用の部材(被帯電体を帯電させる帯電部材、記録媒体又は中間転写体にトナー像を転写する転写部材、二次転写部材、記録媒体搬送部材、中間転写体等)に利用される。
【0079】
<画像形成装置/転写装置/プロセスカートリッジ>
本実施形態に係る画像形成装置は、本実施形態に係る画像形成装置用部材を備えるものであればよく、像保持体と、像保持体の表面を帯電する帯電装置と、帯電した像保持体の表面に静電潜像を形成する静電潜像形成装置と、トナーを含む現像剤により、像保持体の表面に形成された静電潜像を現像してトナー像を形成する現像装置と、トナー像を記録媒体の表面に転写する転写装置と、を備えることが好ましい。
【0080】
また、本開示に係る転写装置は、本実施形態に係る画像形成装置用部材を備えるものであればよく、表面にトナー像が転写される中間転写体と、前記トナー像を前記中間転写体の表面に一次転写する一次転写装置と、前記中間転写体の表面に転写された前記トナー像を記録媒体の表面に二次転写する二次転写装置であって、本実施形態に係る画像形成装置用部材からなる二次転写部材を有する二次転写装置と、を備えることが好ましい。
また、本実施形態に係る画像形成装置は、像保持体を備え、前記像保持体の表面にトナー像を形成するトナー像形成装置と、前記トナー像を記録媒体の表面に転写する、本実施形態に係る転写装置と、を備える画像形成装置であることが好ましい。
【0081】
転写装置としては、本実施形態に係る画像形成装置用部材を、記録媒体(被転写体の一例)に接触させて記録媒体にトナー像(転写物の一例)を転写させる転写部材として備える転写装置(本実施形態に係る転写装置)が適用される。
【0082】
本実施形態に係るプロセスカートリッジは、例えば、前記構成の画像形成装置に着脱され、トナー像を記録媒体の表面に転写する転写装置を備えることが好ましい。そして、転写装置として、上記本実施形態に係る転写装置を適用する。
本実施形態に係るプロセスカートリッジは、必要に応じて、例えば、像保持体、帯電した像保持体の表面に静電潜像を形成する静電潜像形成装置、像保持体の表面に形成された潜像をトナーにより現像してトナー像を形成する現像装置、像保持体の表面に形成されたトナー像を記録媒体に転写する転写装置、及び像保持体表面をクリーニングするクリーニング装置からなる群より選択される少なくとも一種を備えていてもよい。
【0083】
次に、本実施形態に係る画像形成装置について図面を参照しつつ説明する。
図3は、本実施形態に係る画像形成装置の構成を示した概略構成図である。
【0084】
本実施形態に係る画像形成装置70は、
図3に示すように、例えば、一般にタンデム型と呼ばれる中間転写方式の画像形成装置であって、電子写真方式により各色成分のトナー像が形成される複数の画像形成ユニット1Y、1M、1C、1K(トナー像形成装置の一例)と、各画像形成ユニット1Y、1M、1C、1Kにより形成された各色成分トナー像を中間転写ベルト15に順次転写(一次転写)させる一次転写部10と、中間転写ベルト15上に転写された重畳トナー像を記録媒体である用紙Kに一括転写(二次転写)させる二次転写部20と、二次転写された画像を用紙K上に定着させる定着装置60と、を備えている。また、画像形成装置70は、各装置(各部)の動作を制御する制御部40を有している。
【0085】
画像形成装置70の各画像形成ユニット1Y,1M,1C,1Kは、表面に形成されるトナー像を保持する、矢印A方向に回転する感光体11を備えている。
【0086】
感光体11の周囲には、帯電手段の一例として、感光体11を帯電させる帯電器12が設けられ、潜像形成手段の一例として、感光体11上に静電潜像を書込むレーザ露光器13(図中露光ビームを符号Bmで示す)が設けられている。
【0087】
また、感光体11の周囲には、現像手段の一例として、各色成分トナーが収容されて感光体11上の静電潜像をトナーにより可視像化する現像器14が設けられ、感光体11上に形成された各色成分トナー像を一次転写部10にて中間転写ベルト15に転写する一次転写ロール16が設けられている。
【0088】
更に、感光体11の周囲には、感光体11上の残留トナーが除去される感光体クリーナ17が設けられ、帯電器12、レーザ露光器13、現像器14、一次転写ロール16及び感光体クリーナ17の電子写真用デバイスが感光体11の回転方向に沿って順次配設されている。これらの画像形成ユニット1Y,1M,1C,1Kは、中間転写ベルト15の上流側から、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の順に、略直線状に配置されている。
【0089】
中間転写体の一例である中間転写ベルト15は、体積抵抗率が例えば1×106Ωcm以上1×1014Ωcm以下となるように形成されており、その厚みは、例えば0.1mm程度に構成されている。
【0090】
中間転写ベルト15は、各種ロールによって
図3に示すB方向に目的に合わせた速度で循環駆動(回転)されている。この各種ロールとして、定速性に優れたモータ(不図示)により駆動されて中間転写ベルト15を回転させる駆動ロール31、各感光体11の配列方向に沿って略直線状に延びる中間転写ベルト15を支持する支持ロール32、中間転写ベルト15に対して張力を与えると共に中間転写ベルト15の蛇行を防止する補正ロールとして機能する張力付与ロール33、二次転写部20に設けられる背面ロール25、中間転写ベルト15上の残留トナーを掻き取るクリーニング部に設けられるクリーニング背面ロール34を有している。
【0091】
一次転写部10は、中間転写ベルト15を挟んで感光体11に対向して配置される一次転写ロール16で構成されている。そして、一次転写ロール16は中間転写ベルト15を挟んで感光体11に圧接配置され、更に一次転写ロール16にはトナーの帯電極性(マイナス極性とする。以下同様。)と逆極性の電圧(一次転写バイアス)が印加されるようになっている。これにより、各々の感光体11上のトナー像が中間転写ベルト15に順次、静電吸引され、中間転写ベルト15上において重畳されたトナー像が形成されるようになっている。
【0092】
二次転写部20は、背面ロール25と、中間転写ベルト15のトナー像保持面側に配置される二次転写ロール22と、を備えて構成されている。
【0093】
背面ロール25は、表面抵抗率が1×107Ω/□以上1×1010Ω/□以下となるように形成され、硬度は、例えば、70°(アスカーC:高分子計器社製、以下同様。)に設定される。この背面ロール25は、中間転写ベルト15の裏面側に配置されて二次転写ロール22の対向電極を構成し、二次転写バイアスが安定的に印加される金属製の給電ロール26が接触配置されている。
【0094】
一方、二次転写ロール22は、体積抵抗率が107.5Ωcm以上108.5Ωcm以下の円筒ロールである。そして、二次転写ロール22は中間転写ベルト15を挟んで背面ロール25に圧接配置され、更に二次転写ロール22は接地されて背面ロール25との間に二次転写バイアスが形成され、二次転写部20に搬送される用紙K上にトナー像を二次転写する。
【0095】
また、中間転写ベルト15の二次転写部20の下流側には、二次転写後の中間転写ベルト15上の残留トナーや紙粉を除去し、中間転写ベルト15の表面をクリーニングする中間転写ベルトクリーニング部材35が接離自在に設けられている。
また、二次転写ロール22の二次転写部20の下流側には、二次転写後の二次転写ロール22上の残留トナーや紙粉を除去し、中間転写ベルト15の表面をクリーニングする二次転写ロールクリーニング部材22Aが設けられている。二次転写ロールクリーニング部材22Aは、クリーニングブレードが例示される。ただし、クリーニングロールであってもよい。
【0096】
なお、中間転写ベルト15、一次転写ロール16、及び二次転写ロール22が、転写装置の一例に該当する。
ここで、画像形成装置70は、二次転写ロール22に代えて、二次転写ベルト(二次転写部材の一例)を備える構成であってもよい。具体的には、
図4に示すように、画像形成装置100は、二次転写ベルト23と、中間転写ベルト15及び二次転写ベルト23を介して背面ロール25に対向配置されている駆動ロール23Aと、駆動ロール23Aと共に二次転写ベルト23を張架するアイドラロール23Bと、を備えた二次転写装置を備えてもよい。
【0097】
一方、イエローの画像形成ユニット1Yの上流側には、各画像形成ユニット1Y,1M,1C,1Kにおける画像形成タイミングをとるための基準となる基準信号を発生する基準センサ(ホームポジションセンサ)42が配設されている。また、黒の画像形成ユニット1Kの下流側には、画質調整を行うための画像濃度センサ43が配設されている。この基準センサ42は、中間転写ベルト15の裏側に設けられたマークを認識して基準信号を発生しており、この基準信号の認識に基づく制御部40からの指示により、各画像形成ユニット1Y,1M,1C,1Kは画像形成を開始するように構成されている。
【0098】
更に、本実施形態に係る画像形成装置では、用紙Kを搬送する搬送手段として、用紙Kを収容する用紙収容部50、この用紙収容部50に集積された用紙Kを予め定められたタイミングで取り出して搬送する給紙ロール51、給紙ロール51により繰り出された用紙Kを搬送する搬送ロール52、搬送ロール52により搬送された用紙Kを二次転写部20へと送り込む搬送ガイド53、二次転写ロール22により二次転写された後に搬送される用紙Kを定着装置60へと搬送する搬送ベルト55、用紙Kを定着装置60に導く定着入口ガイド56を備えている。
【0099】
次に、本実施形態に係る画像形成装置の基本的な作像プロセスについて説明する。
本実施形態に係る画像形成装置では、図示しない画像読取装置や図示しないパーソナルコンピュータ(PC)等から出力される画像データは、図示しない画像処理装置により画像処理が施された後、画像形成ユニット1Y,1M,1C,1Kによって作像作業が実行される。
【0100】
画像処理装置では、入力された反射率データに対して、シェーディング補正、位置ズレ補正、明度/色空間変換、ガンマ補正、枠消しや色編集、移動編集等の各種画像編集等の画像処理が施される。画像処理が施された画像データは、Y、M、C、Kの4色の色材階調データに変換され、レーザ露光器13に出力される。
【0101】
レーザ露光器13では、入力された色材階調データに応じて、例えば半導体レーザから出射された露光ビームBmを画像形成ユニット1Y,1M,1C,1Kの各々の感光体11に照射している。画像形成ユニット1Y,1M,1C,1Kの各感光体11では、帯電器12によって表面が帯電された後、このレーザ露光器13によって表面が走査露光され、静電潜像が形成される。形成された静電潜像は、各々の画像形成ユニット1Y,1M,1C,1Kによって、Y、M、C、Kの各色のトナー像として現像される。
【0102】
画像形成ユニット1Y,1M,1C,1Kの感光体11上に形成されたトナー像は、各感光体11と中間転写ベルト15とが接触する一次転写部10において、中間転写ベルト15上に転写される。より具体的には、一次転写部10において、一次転写ロール16により中間転写ベルト15の基材に対しトナーの帯電極性(マイナス極性)と逆極性の電圧(一次転写バイアス)が付加され、トナー像を中間転写ベルト15の表面に順次重ね合わせて一次転写が行われる。
【0103】
トナー像が中間転写ベルト15の表面に順次一次転写された後、中間転写ベルト15は移動してトナー像が二次転写部20に搬送される。トナー像が二次転写部20に搬送されると、搬送手段では、トナー像が二次転写部20に搬送されるタイミングに合わせて給紙ロール51が回転し、用紙収容部50から目的とするサイズの用紙Kが供給される。給紙ロール51により供給された用紙Kは、搬送ロール52により搬送され、搬送ガイド53を経て二次転写部20に到達する。この二次転写部20に到達する前に、用紙Kは一旦停止され、トナー像が保持された中間転写ベルト15の移動タイミングに合わせて位置合わせロール(不図示)が回転することで、用紙Kの位置とトナー像の位置との位置合わせがなされる。
【0104】
二次転写部20では、中間転写ベルト15を介して、二次転写ロール22が背面ロール25に加圧される。このとき、タイミングを合わせて搬送された用紙Kは、中間転写ベルト15と二次転写ロール22との間に挟み込まれる。その際に、給電ロール26からトナーの帯電極性(マイナス極性)と同極性の電圧(二次転写バイアス)が印加されると、二次転写ロール22と背面ロール25との間に転写電界が形成される。そして、中間転写ベルト15上に保持された未定着トナー像は、二次転写ロール22と背面ロール25とによって加圧される二次転写部20において、用紙K上に一括して静電転写される。
【0105】
その後、トナー像が静電転写された用紙Kは、二次転写ロール22によって中間転写ベルト15から剥離された状態でそのまま搬送され、二次転写ロール22の用紙搬送方向下流側に設けられた搬送ベルト55へと搬送される。搬送ベルト55では、定着装置60における最適な搬送速度に合わせて、用紙Kを定着装置60まで搬送する。定着装置60に搬送された用紙K上の未定着トナー像は、定着装置60によって熱及び圧力で定着処理を受けることで用紙K上に定着される。そして定着画像が形成された用紙Kは、画像形成装置の排出部に設けられた排紙収容部(不図示)に搬送される。
【0106】
一方、用紙Kへの転写が終了した後、中間転写ベルト15上に残った残留トナーは、中間転写ベルト15の回転に伴ってクリーニング部まで搬送され、クリーニング背面ロール34及び中間転写ベルトクリーナ35によって中間転写ベルト15上から除去される。
【0107】
本実施形態に係る画像形成装置において使用するトナー及び現像剤は特に限定されず、公知の電子写真用トナー及び現像剤をいずれも使用することができる。
本実施形態に係る画像形成装置において使用する記録媒体は特に限定されず、例えば、電子写真方式の複写機やプリンターに使用される紙;OHPシート;等が挙げられる。
【実施例0108】
以下、本発明を、実施例を挙げてさらに具体的に説明する。ただし、これら各実施例は、本発明を制限するものではない。なお、文中、「部」、「%」は、特に断りがない限り、質量基準である。
【0109】
<実施例1>
〔弾性層の形成〕
(弾性発泡体の形成)
弾性発泡体として、EP70((株)イノアックコーポレーション製ウレタンフォーム)を用い、これを外径26mm且つ内径14mmの円筒形状に切り出し、円筒状の弾性発泡体を得た。
得られた弾性発泡体は、連続気泡構造を有しており、セル径が400μmであって、密度が70kg/m3であった。
【0110】
(導電性被覆層の形成)
カーボンブラックが36質量%含有され、且つ、分散された水分散体と、アクリル系エマルジョン(日本ゼオン(株)製、商品名「Nipol LX852」)と、を質量比1:1にて混合した処理液に、上記の方法で得られた弾性発泡体を、20℃で10分間浸漬した。
その後、処理液が付着した弾性発泡体を、100℃に設定されたキュア炉中で60分間加熱して乾燥し、水分を除去すると共にアクリル樹脂を架橋させた。架橋により硬化したアクリル樹脂によって、弾性発泡体の露出面に、カーボンブラックを含む導電性被覆層を形成した。
以上のようにして、弾性発泡体と、弾性発泡体の露出面を被覆する導電性被覆層と、から構成される弾性層を得た。
次いで、得られた弾性層に、表面に接着剤を付与した導電性支持部材(SUS製、直径14mm)を差し込み、ロール部材を形成した。
【0111】
〔中間層の形成〕
ウレタンオリゴマー(日本合成化学(株)製、ウレタンアクリレートUV3700B)70部、ウレタンモノマー(共栄社化学(株)製、イソミリスチルアクリレート)30部、重合開始剤(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製,1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンIrgacure 184)0.5部、及び、アルキルトリメチルアンモニウムパークロレート(商品名「LXN-30」ダイソー社製)3部を混合して、中間層形成用塗布液を得た。得られた中間層形成用塗布液を、弾性層上に、ダイコーターを用いて塗布し、回転させながらUV照射強度700mW/cm2で塗膜に対し5秒間紫外線(UV)照射した。この作業にて、厚さ1mmの中間層を形成した。
【0112】
〔表面層の形成〕
続いて、シリコーン変性ポリノルボルネン材料(NBN-30-ID、信越化学工業(株)製、(ノルボルネン/トリス(トリメチルシロキシ)シリルノルボルネン)コポリマー、N1/N2=60/40(mol/mol)、Mn=36万のイソドデカン溶液、有効分濃度:30質量%)塗布液を、スプレー塗布にて中間層上に塗布し、乾燥硬化し、厚さ30μmの表面層を形成した。
以上のようにして、体積抵抗値106.8Ω(1,000V印加時の測定値)の導電性ロール(画像形成装置用部材)を得た。
【0113】
<評価方法>
ロールより表層を含む1mm厚に切り出したシート片を用いて、ウレタンブロックに対する摩擦係数をHeidon摩擦係数測定機を用いて測定した。摩擦係数が0.15未満のものをA、0.15以上0.3未満のものをB、0.3以上のものをCとした。
富士フイルムビジネスイノベーション(株)製ApeosPort VII C6688を用い、A3普通紙で黒(K)100%ベタ画像片面を10,000枚通紙後、10,001枚目の出力紙の裏面汚れを目視確認し、裏面汚れが付着している場合、付着面積が10%以上をG3、10%未満5%以上をG2、5%未満0%より大きい場合をG1、全く付着していない場合をG0とした。
また、通紙後の表層をマイクロスコープ観察し、クラックの有無を確認した。1mm四方にクラックがある40本以上ある場合、G3、40未満10以上をG2、10未満1以上をG1、0本をG0とした。
【0114】
<実施例2>
実施例1において、シリコーン変性ポリノルボルネン材料(A)に、シクロオレフィンポリマー(COP、ZEONOR、日本ゼオン製)のイソドデカン溶液(有効濃度:30質量%)(B)をA:B=2:1で混合して塗布した以外は実施例1と同様にして、ロールを得た。また、実施例1と同様に、評価を行った。
【0115】
<実施例3>
ポリアミド樹脂(ナイロン12)、カーボンブラック(吸油量:190ml/100g)を配合比(重量比)90:10となるよう、ポリアミド樹脂と電子導電剤とを二軸混練機で混練、ペレット化し、基材層を形成する組成物を得た。
熱可塑性エステル系ポリウレタン、エチレンオキサイド-プロピレンオキサイド共重合体を、配合比(重量比)99:1となるよう、熱可塑性エラストマーとイオン導電剤とをニーダーで混練、ペレット化し、弾性層を形成する組成物を得た。
シリンダー径50mmの押出機2台の先端に2層の環状ダイを装着した装置を用い、基材層を形成する組成物と弾性層を形成する組成物とを共押出してチューブ状に成形後、長さ400mmにカットし、基材層を内層とする基材層の厚さ150μm、弾性層の厚さ150μm、周長125mm、幅400mmのベルトを得た。
得た転写ベルトに実施例1と同様に表面層を形成し、ベルトを形成した。
形成したベルトを富士フイルムビジネスイノベーション(株)製Iridesse Production Pressの二次転写ベルトに搭載し、画質評価した以外は、実施例1と同様に評価を行った。
【0116】
<比較例1>
実施例1において使用した表面層材料を水酸基を有するシリコーンレジン(X-40-2406M、信越化学工業(株)製)とした以外は、実施例1と同様にして、ロールを得た。また、実施例1と同様に、評価を行った。
【0117】
<比較例2>
実施例1において使用した表面層材料をT862A(Si原子を含まないフッ素原子含有ウレタン樹脂、ヘンケルジャパン(株)製)とした以外は、実施例1と同様にして、ロールを得た。また、実施例1と同様に、評価を行った。
【0118】
<比較例3>
実施例1において、表面層材料をシクロオレフィンポリマー(COP、ZEONOR、日本ゼオン(株)製)のイソドデカン溶液(有効濃度:30質量%)を用いて塗布した以外は実施例1と同様にして、ロールを得た。また、実施例1と同様に、評価を行った。
【0119】
【0120】
表1に示すように、実施例の画像形成装置用部材は、比較例の画像形成装置用部材に比べて、防汚性の維持性に優れることがわかった。
【0121】
(((1))) Si原子を含むポリマーを主成分として含む表面層を有し、前記表面層の表面自由エネルギーにおける、分散成分が25mN/m以下、双極子成分が5mN/m以下、水素結合成分が5mN/m以下である画像形成装置用部材。
(((2))) 前記Si原子を含むポリマーの主鎖骨格が、ポリノルボルネン骨格である(((1)))に記載の画像形成装置用部材。
(((3))) 前記Si原子を含むポリマーが、トリアルキルシロキシ基を有する(((1)))又は(((2)))に記載の画像形成装置用部材。
(((4))) 前記トリアルキルシロキシ基が、トリメチルシロキシ基である(((3)))に記載の画像形成装置用部材。
(((5))) 前記Si原子を含むポリマーが、トリス(トリアルキルシロキシ)シリル基を有する(((1)))乃至(((4)))のいずれかに1つに記載の画像形成装置用部材。
(((6))) 前記Si原子を含むポリマーが、下記構造(N1)で表される構成単位と下記構造(N2)で表される構成単位を有する、シリコーン変性ポリノルボルネン樹脂である(((1)))乃至(((5)))のいずれかに1つに記載の画像形成装置用部材。
【0122】
【化3】
(前記構造(N1)中、R
1、R
2及びR
3はそれぞれ独立に、アルキル基を表す。)
【0123】
(((7))) 前記構造(N1)で表される構成単位と前記構造(N2)で表される構成単位との共重合比(N1/N2)が、モル比で30/70以上95/5以下である(((1)))乃至(((6)))のいずれかに1つに記載の画像形成装置用部材。
(((8))) 前記共重合比(N1/N2)が、40/60以上85/15以下である(((7)))に記載の画像形成装置用部材。
(((9))) X線光電子分光法により測定される、表面層の表面に存在するSi原子の割合が10atom%以上50atom%以下である(((1)))乃至(((8)))のいずれかに1つに記載の画像形成装置用部材。
(((10))) 前記Si原子の割合が20atom%以上45atom%以下である(((9)))に記載の画像形成装置用部材。
(((11))) ベルト部材、又は、ロール部材である(((1)))乃至(((10)))のいずれかに1つに記載の画像形成装置用部材。
(((12))) 前記Si原子を含むポリマーの主鎖骨格が、ポリノルボルネン骨格であり、前記Si原子を含むポリマーが、トリアルキルシロキシ基を有する(((1)))乃至(((11)))のいずれかに1つに記載の画像形成装置用部材。
(((13))) 前記トリアルキルシロキシ基が、トリメチルシロキシ基である(((12)))に記載の画像形成装置用部材。
(((14))) X線光電子分光法により測定される、表面層の表面に存在するSi原子の割合が10atom%以上50atom%以下である(((12)))又は(((13)))に記載の画像形成装置用部材。
(((15))) 表面にトナー像が転写される中間転写体と、前記トナー像を前記中間転写体の表面に一次転写する一次転写装置と、前記中間転写体の表面に転写された前記トナー像を記録媒体の表面に二次転写する二次転写装置であって、(((1)))乃至(((14)))のいずれか1つに記載の画像形成装置用部材からなる二次転写部材を有する二次転写装置と、を備える転写装置。
(((16))) 感光体を備え、前記感光体の表面にトナー像を形成するトナー像形成装置と、前記トナー像を記録媒体の表面に転写する、(((15)))に記載の転写装置と、を備える画像形成装置。
【0124】
(((1)))又は(((11)))に係る発明によれば、Si原子を含むポリマーを主成分として含む表面層を有する画像形成装置用部材において、表面層の表面自由エネルギーにおける、分散成分が25mN/m超え、双極子成分が5mN/m超え、又は、水素結合成分が5mN/m超えである場合に比べ、防汚性の維持性に優れる画像形成装置用部材が提供される。
(((2)))に係る発明によれば、Si原子を含むポリマーがシリコーン樹脂である場合に比べ、防汚性の維持性により優れる画像形成装置用部材が提供される。
(((3)))、(((4)))、(((5)))又は(((6)))に係る発明によれば、Si原子を含むポリマーがトリアルキルシリル基のみを有する場合に比べ、防汚性の維持性により優れる画像形成装置用部材が提供される。
(((7)))に係る発明によれば、前記構造(N1)で表される構成単位と前記構造(N2)で表される構成単位との共重合比(N1/N2)が、モル比で30/70未満又は95/5超である場合に比べ、防汚性の維持性により優れる画像形成装置用部材が提供される。
(((8)))に係る発明によれば、前記構造(N1)で表される構成単位と前記構造(N2)で表される構成単位との共重合比(N1/N2)が、モル比で40/60未満又は85/5超である場合に比べ、防汚性の維持性により優れる画像形成装置用部材が提供される。
(((9)))又は(((14)))に係る発明によれば、X線光電子分光法により測定される、表面層の表面に存在するSi原子の割合が10atom%未満又は50atom%超である場合に比べ、防汚性の維持性により優れる画像形成装置用部材が提供される。
(((10)))に係る発明によれば、X線光電子分光法により測定される、表面層の表面に存在するSi原子の割合が20atom%未満又は45atom%超である場合に比べ、防汚性の維持性により優れる画像形成装置用部材が提供される。
(((12)))又は(((13)))に係る発明によれば、Si原子を含むポリマーがトリアルキルシリル基のみを有するポリノルボルネン樹脂である場合に比べ、防汚性の維持性により優れる画像形成装置用部材が提供される。
(((15)))又は(((16)))に係る発明によれば、Si原子を含むポリマーを主成分として含む表面層を有する画像形成装置用部材において、表面層の表面自由エネルギーにおける、分散成分が25mN/m超え、双極子成分が5mN/m超え、又は、水素結合成分が5mN/m超えである二次転写部材を有する場合に比べ、防汚性の維持性に優れる転写装置、又は、画像形成装置が提供される。