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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024136599
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】細隙灯顕微鏡
(51)【国際特許分類】
   A61B 3/135 20060101AFI20240927BHJP
【FI】
A61B3/135
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023047754
(22)【出願日】2023-03-24
(71)【出願人】
【識別番号】000220343
【氏名又は名称】株式会社トプコン
(74)【代理人】
【識別番号】100107010
【弁理士】
【氏名又は名称】橋爪 健
(72)【発明者】
【氏名】阿部 光
(72)【発明者】
【氏名】須賀 隆之
(72)【発明者】
【氏名】本田 成
(72)【発明者】
【氏名】渥實 智海
【テーマコード(参考)】
4C316
【Fターム(参考)】
4C316AA25
4C316AB19
4C316FA06
4C316FA18
4C316FY02
(57)【要約】
【課題】 撮影画像からスリットの長さを自動で調整して鮮明な画像を取得すること。
【解決手段】 被検眼(前眼部、角膜等)を撮像部(カメラ、対物レンズ等を備える。)で撮影し、演算制御部(演算回路等を備える。)で画像処理を行う。そして、画像処理の結果をスリット長駆動部(スリット長開閉機構等を備える。)にフィードバックし、照明発光部(スリット光源部等を備える。)によるスリット光の範囲を変化させて設定する。設定されたスリット長のスリットでスリット光を被検眼に照射して、撮像部で撮影する。
【選択図】 図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
細隙灯顕微鏡において、
スリットを介して照明光を被検眼へ照射する照明発光部と、
前記照明発光部のスリットのスリット長を制御するスリット長駆動部と、
被検眼を撮影する撮像部と、
演算制御部と、
を備え、
前記演算制御部は、前記撮像部により被検眼の画像を取得し、
前記演算制御部は、前記撮像部により取得された画像から、スリット光の照明部分における、上瞼と強膜の境界と下瞼と強膜の境界の間の距離である強膜間距離を算出し、
前記演算制御部は、前記スリット長駆動部を駆動して、スリット長を算出された強膜間距離に調整し、
前記演算制御部は、調整されたスリット長で前記照明発光部から被検眼にスリット光を照射して、前記撮像部により被検眼を撮影する、
ことを特徴とする細隙灯顕微鏡。
【請求項2】
細隙灯顕微鏡において、
スリットを介して照明光を被検眼へ照射する照明発光部と、
前記照明発光部のスリットのスリット長を制御するスリット長駆動部と、
被検眼からの反射光を検出する2次元のセンサーと、
演算制御部と、
を備え、
前記演算制御部は、
前記演算制御部は、前記センサーにより被検眼の2次元反射光データを取得し、
前記演算制御部は、前記センサーにより検出された2次元反射光データから、スリット光の照明部分における、上瞼と強膜の境界と下瞼と強膜の境界の間の距離である強膜間距離を算出し、
前記演算制御部は、前記スリット長駆動部を駆動して、スリット長を算出された強膜間距離に調整し、
前記演算制御部は、調整されたスリット長で前記照明発光部から被検眼にスリット光を照射して、前記撮像部により被検眼を撮影する、
ことを特徴とする細隙灯顕微鏡。
【請求項3】
請求項1又は2に記載された細隙灯顕微鏡において、
前記演算制御部は、被検眼の横方向の位置を表すx座標に対する縦方向を表すy方向の実際の距離を算出して各x座標の強膜間距離を求め、アライメントから求められるスリット光のx座標からスリット光の照明部分における強膜間距離、または照明旋回角度から求められるx座標のスリット光の照明部分における強膜間距離、を求めることを特徴とする細隙灯顕微鏡。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、細隙灯顕微鏡に関する。
【背景技術】
【0002】
従来技術として、細隙灯顕微鏡(スリットランプ顕微鏡)に関しては、例えば、次のような特許文献がある。
例えば、特許文献1には、「スリットランプ顕微鏡において、照明系の条件を検知する検知手段を有し、前記検知手段の検知結果に基づき照明光源の光度を制御することを特徴とする」(請求項1)ことが記載されている。
また、特許文献2には、「有効な光軸に配置される光調整部材を複数の光調整部材から選択可能である眼科装置」(要約)が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018-187064号公報
【特許文献2】特開2021-153775号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来技術では、眼球を撮影した際に、眼球結膜及び皮膚の反射率が高いために、飽和状態の輝度値又は予め定められた閾値以上状態の輝度値が存在する画像が撮影される場合がある。そのため、例えば、撮影したい箇所(角膜、瞳孔等)のオートゲインが掛かりづらい場合があり、画像が鮮明にならない場合があった。
【0005】
本発明は、以上の点に鑑み、撮影画像からスリットの長さをオート(自動)で調整して鮮明な画像を取得することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の解決手段によると、
細隙灯顕微鏡において、
スリットを介して照明光を被検眼へ照射する照明発光部と、
前記照明発光部のスリットのスリット長を制御するスリット長駆動部と、
被検眼を撮影する撮像部と、
演算制御部と、
を備え、
前記演算制御部は、前記撮像部により被検眼の画像を取得し、
前記演算制御部は、前記撮像部により取得された画像から、スリット光の照明部分における、上瞼と強膜の境界と下瞼と強膜の境界の間の距離である強膜間距離を算出し、
前記演算制御部は、前記スリット長駆動部を駆動して、スリット長を算出された強膜間距離に調整し、
前記演算制御部は、調整されたスリット長で前記照明発光部から被検眼にスリット光を照射して、前記撮像部により被検眼を撮影する、
ことを特徴とする細隙灯顕微鏡である。
【0007】
本発明の第2の解決手段によると、
細隙灯顕微鏡において、
スリットを介して照明光を被検眼へ照射する照明発光部と、
前記照明発光部のスリットのスリット長を制御するスリット長駆動部と、
被検眼からの反射光を検出する2次元のセンサーと、
演算制御部と、
を備え、
前記演算制御部は、
前記演算制御部は、前記センサーにより被検眼の2次元反射光データを取得し、
前記演算制御部は、前記センサーにより検出された2次元反射光データから、スリット光の照明部分における、上瞼と強膜の境界と下瞼と強膜の境界の間の距離である強膜間距離を算出し、
前記演算制御部は、前記スリット長駆動部を駆動して、スリット長を算出された強膜間距離に調整し、
前記演算制御部は、調整されたスリット長で前記照明発光部から被検眼にスリット光を照射して、前記撮像部により被検眼を撮影する、
ことを特徴とする細隙灯顕微鏡である。
【発明の効果】
【0008】
本発明は、撮影画像からスリットの長さを自動で調整して鮮明な画像を取得することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】細隙灯顕微鏡の一例の外観構成図。
図2】細隙灯顕微鏡の一例の概要構成図。
図3】第1の実施の形態の細隙灯顕微鏡の概略構成図。
図4】スリット長可変機構の説明図。
図5】第1の実施の形態の細隙灯顕微鏡の制御系のブロック構成図。
図6】第1の実施の形態の細隙灯顕微鏡の動作を表すフローチャート。
図7】座標系及び強膜間距離についての説明図。
図8】第2の実施の形態の細隙灯顕微鏡の概略構成図。
図9】センサーによる検出画像の説明図。
図10】第2の実施の形態の細隙灯顕微鏡の動作を表すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0010】
この発明に係る細隙灯顕微鏡の実施形態の一例について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、この明細書に記載された文献の記載内容を、以下の実施形態の内容として適宜援用することが可能である。
まず方向を定義しておく。装置光学系において最も被検者側に位置する光学素子から被検者に向かう方向を前方向(z方向)とし、その逆方向を後方向とする。また、前方向に直交する水平方向を左右方向(x方向)とする。更に、前後方向と左右方向の双方に直交する方向を上下方向(y方向)とする。
【0011】
A.細隙灯顕微鏡の一例

図1に、細隙灯顕微鏡の一例の外観構成図を示す。
図2に、細隙灯顕微鏡の一例の概要構成図を示す。
この実施形態に係る細隙灯顕微鏡の外観構成について、図1及び図2を参照しながら説明する。なお、本発明はこの他にも適宜の細隙灯顕微鏡又は眼科装置に適用することができる。
細隙灯顕微鏡1には、演算制御部(CPU、コンピュータ)H-8が接続されている。演算制御部H-8は、各種の制御処理や演算処理を行う。演算制御部H-8には、被検眼Eの前眼部Eaの画像を撮影し結果を出力するまでの一連の動作指令を予め記憶部H-7に記憶させておき、後述する顎受け台10に配置した圧力センサー等で被検者を検知した後自動的に動作を行わせることができる。一連の動作指令はバージョンアップされるごとに書き換えることができる。なお、顕微鏡1本体(光学系等を格納する筐体)とは別に演算制御部H-8を設ける代わりに、顕微鏡1本体に同様の演算処理部を搭載した構成を適用することも可能である。またモニター等の表示部(表示装置)H-10を接続し撮影カメラ5aで撮影した被検眼Eの前眼部Ea等の画像を表示することも可能である。
【0012】
細隙灯顕微鏡1は架台H-1上に載置される。なお、演算制御部H-8は他のテーブル上又はその他の場所に設置されていてもよい。支持部8は、架台駆動部(移動機構部)H-11を介して水平方向、左右方向及び上下方向に移動可能に構成されている。
支持部8は、撮像部(撮像系)H-9及び照明発光部(照明系)H-14を支持する。支持部8の一端には、撮像部H-9を支持する固定柱7が取り付けられている。固定柱7の上部には、中央に撮影カメラ5aが設置され、撮影カメラ5aを中心に左右に第1ステレオカメラ5b、第2ステレオカメラ5cがステレオカメラ支持部5dに固定配置され、照明発光部H-14を取り囲むように配置されている。なお、第1ステレオカメラ5b、第2ステレオカメラ5cをステレオカメラ支持部5dに配置せずに、撮像部H-9が第1ステレオカメラ5b及び第2ステレオカメラ5cを撮影カメラ5aと一体に備えるようにしても良い。
【0013】
撮影カメラ5aの上部には、平行投影光を発光する光源9a、9bが設置され、撮像カメラレンズを兼用し、被検眼Eの角膜Eaに平行投影光が投影され、被検眼Eと細隙灯顕微鏡1のアラメントが調整される。
支持部8の他端の上部には、照明発光部H-14を支持する回動筒部基部6e、照明駆動部(照明部回動部)H-12が設置され、照明部6bを旋回軸周りに旋回させ、スリット照明光を被検眼Eに対し左側から、あるいは右側から照射することができる。
回動筒部基部6eの上部には、回動筒部6dが旋回軸のまわりに回動可能に設置され、回動筒部6dにはスリット照明部回動アーム6cを介しスリット6aを支持する照明部6bが配置されている。図示されていないが、スリット照明部回動アーム6cを鉛直下方に傾斜させる回動部が回動筒部6dに配置されている。
なお、スリット照明部回動アーム6cは、取り外し可能に構成してもよく、被検眼Eを斜め下部方向から斜め照明させるカーブした回動アームを装着することもできる。
【0014】
固定柱7は架台駆動部H-11のXYZ駆動部3aのz方向駆動部3a1によりz方向駆動台3a2が移動し、被検眼Eに対しz方向(前後方向)に移動可能に取り付けられている。被検眼Eへのアライメント調整の際に移動される。
また、固定柱7は架台駆動部H-11のXYZ駆動部3aのx方向駆動部(図示せず)によりx方向駆動台3b2が移動され、被検眼Eに対しx方向(左右方向)に移動可能に取り付けられている。被検眼Eの左右眼を切り替える際に移動される。被検眼Eの右眼が撮影された後、左眼が撮影される。
さらに、固定柱7は架台駆動部H-11のXYZ駆動部3aのy方向駆動部3cにより上下方向に移動され、被検眼Eに対し、撮影カメラ5aが正面に対峙するように高さ調整することができる。
【0015】
撮像部H-9は、光源9a、9bから、被検眼Eの角膜Eaに平行投影光が発光され、撮像部H-9の対物レンズと撮像素子の間に配置されたハーフミラーを介して被検眼Eの前眼部に平行投影光が投影され、前眼部にプルキンエ輝点が投影され、前眼部画像が撮影される。撮影された前眼部画像に基づき被検眼Eの位置が検出され、自動的に支持台8及び固定柱7がxyz方向に移動し、被検眼Eと細隙灯顕微鏡1本体のアラメントが調整され、被検眼Eの観察撮影に最適な距離に細隙灯顕微鏡1本体が配置される。
【0016】
ここで、オートアライメント(ラフアライメント)について説明する。
被検者が顎受け10に顎を乗せ、被検眼Eの検査を開始し、ステレオカメラ5b、5cにより被検眼Eを撮影する。撮影した画像から被検眼Eの瞳孔を検出し、被検眼Eの3次元位置を特定する。瞳孔の代わりにプルキン輝点を検出してもよい。
すなわち、演算制御部H-8は顕微鏡1本体のXYZ駆動部3aを駆動し、被検眼Eと顕微鏡1本体が測定開始の基準位置である規定の位置まで移動させる。以上により、被検眼Eと顕微鏡1本体はアライメントが行われる。
【0017】
照明発光部H-14は、被検眼Eに照明光を照射する。照明発光部H-14は、前述のように、回動筒の旋回軸を中心に左右方向に駆動することができる。それにより被検眼Eに対する照明光の照射方向が変更される。
撮像部H-9に対峙する位置には顎受け台10が配置されている。顎受け台10には、被検者の顔を安定配置させるための顎受部10aと額当て10bが設けられている。
撮影カメラ5aには、対物レンズ、平行光を導光する光学レンズから構成されている。
なお、撮影倍率を変更するためのオートフォーカス機構を設置してもよく、自動的に撮影倍率が調整される。更に、撮影カメラ5aには、被検眼Eを撮影するための撮像装置が接続されている。撮像装置は撮像素子を含んで構成されている。撮像素子は、光を検出して画像信号(電気信号)を出力する光電変換素子である。画像信号は演算制御部H-8に入力される。撮像素子としては、たとえばCCD(Charge Coupled Device)イメージセンサや、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)イメージセンサが用いられる。
更に、演算制御部H-8の代わりに、モバイル等の携帯端末装置200の表示画面100aに前眼部Ea等の画像を表示し、携帯端末装置200の演算処理装置を介して遠隔操作し、被検眼Eの観察撮影を行うこともできる。
【0018】
B.第1の実施の形態の細隙灯顕微鏡

図3(A)に、第1の実施の形態の細隙灯顕微鏡の効果についての説明図、図3(B)に、第1の実施の形態の細隙灯顕微鏡の概略構成図をそれぞれ示す。
本実施の形態の細隙灯顕微鏡は、図3(A)に示すように、特に、輝度値が閾値以上の状態である箇所を画像処理で認識し、画像内にそのような箇所がないようにスリット長可変機構(モーター等)を駆動させ、スリット長を調整するものである。なお、輝度値が閾値以上の状態である箇所の認識により、例えば、図3(A)上図の場合又は下図の場合が考えられるが、それぞれ図示のようにスリット長を調整することで閾値以上の状態がないようにすることができる。閾値としては、飽和輝度値または飽和輝度の90%などが設定される。例えば、飽和輝度値が255と設定されている撮像素子を使用する場合、閾値は飽和輝度値の255、または飽和輝度値の90%である230などと設定される。
図3(B)に示すように、第1の実施の形態の細隙灯顕微鏡は、例えば、被検眼(前眼部、角膜等)を撮像部(カメラ、対物レンズ等を備える。)で撮影し、演算制御部(演算回路等を備える。)で画像処理を行う。そして、画像処理の結果をスリット長駆動部(スリット長開閉機構等を備える。)にフィードバックし、照明発光部(スリット光源部等を備える。)によるスリット光の範囲を変化させて設定する。設定されたスリット長のスリットでスリット光を被検眼に照射して、撮像部で撮影する。
【0019】
第1の実施の形態は、例えば、次のような効果を奏する。
・カメラの撮影画像からスリットの長さをオートで調節して、眼球結膜や皮膚にスリット光を当たらなくすることができる。
・撮影画像が鮮明になる。
・照射範囲が狭くなり、患者に対する負担が減る。
【0020】
図4に、スリット長可変機構の説明図を示す。
スリット長可変機構は、図示のような円盤を備える。円盤は、勾玉形開口部、開口面積が異なる複数の円形開口部を有する。円盤が回転し、点線の円に重なる勾玉の箇所が変化する。これにより、スリット光源部からの照明光(照明光軸が紙面に対して垂直方向)が、被検眼に所望のスリット長で開口部(破線参照)のスリットを経て照射される。なお、スリット長さの調節機構については、例えば、特開2018-187064号公報(特許文献1)等参照。
【0021】
図5に、第1の実施の形態の細隙灯顕微鏡の制御系のブロック構成図を示す。
細隙灯顕微鏡の制御系は、操作部H-5、センサーH-6、記憶部H-7、演算制御部(CPU)H-8、撮像部H-9、表示部H-10、架台駆動部H-11、照明駆動部H-12、スリット長駆動部H-13、照明発光部H-14、を備える。架台駆動部H-11は架台H-1の位置を駆動する。照明駆動部H-12は、照明部発光部H-14の照明架台H-2の位置を駆動する。
【0022】
以下に、第1の実施の形態の細隙灯顕微鏡の動作について説明する。

図6に、第1の本実施の形態の細隙灯顕微鏡の動作を表すフローチャートを示す。図6(A)にメインルーチン、図6(B)にステップS102のサブルーチンを示す。
また、図7に、座標系及び強膜間距離についての説明図を示す。
【0023】
以下に各ステップについて説明する。
・S101
眼科装置(細隙灯顕微鏡1)において、図示しない顔受け部に被検者の顔が固定された状態で、検者が操作部H-5に対して所定の操作を行うことで、眼科装置は、アライメントを実行する。アライメントは、例えば公知又は周知の適宜方法により行うことができる。アライメントにより、例えば、眼の位置、撮像部H-9の位置、架台駆動部H-11の位置、照明駆動部H-12の位置が設定される。
・S102
演算制御部H-8が、照射される強膜間の距離を算出し、スリット光の長さが算出した長さになるようにスリット長駆動部H-13を駆動させる。これにより、演算制御部H-8はスリット長を設定する。ここで、強膜間距離とは、図7に示すように、上瞼と強膜の境界と下瞼と強膜の境界の間の距離をいう。また、図7には、被検眼を撮影した画像のxy座標系を示す。x軸は左右方向、y軸は上下方向となっている。S102の処理の詳細はサブルーチンの説明で後述する。
・S103
演算制御部H-8が照明発光部H-14にトリガーを送り、照明発光部H-14が点灯する。
・S104
演算制御部H-8が撮像部H-9にトリガーを送り、撮像部H-9が撮像する。
なお、演算制御部H-8は、撮像された画像を記憶部H-7に被験者の識別情報や日時、場所等の適宜の情報とともに記憶すること及び/又は表示部H-10に表示してもよい。
【0024】
つぎに、ステップS102のサブルーチンの各ステップについて以下に説明する。
・S111
演算制御部H-8が撮像部H-9にトリガーを送り、撮像部H-9が画像を取得する。
・S112
S111で取得した画像に対して、演算制御部H-8が強膜を検出して、マスク処理をする。これにより、例えば、眼だけ(眼の範囲)の画像又は眼の近傍を抽出したマスク画像とすることができる。
なお、強膜の検出については、例えば、S111で取得した画像に対して、二値化を行い、演算制御部H-8が強膜を検出することができる。一例としては、皮膚の輝度値を画像の端4点(他にも予め定められた所定点でよい。)取得し、その平均値の1.3倍(予め定められた所定倍としてよい。)の値を二値化の閾値とする。閾値は画像のヒストグラムから決定してもよい。瞼縁が欠ける場合は、隣接する瞼縁の情報を使用して、多次元近似で補完することができる。もしくは欠けている箇所を直線で結ぶようにしてもよい。
・S113
S112で処理されたマスク画像に対して、演算制御部H-8がx方向に対するy方向の距離を算出し、記憶部H-7に記録する。演算制御部H-8は、マスク処理され眼だけ(眼の範囲)になった画像に対して、各x位置に対するy方向の画素数から光学倍率を考慮し実際の距離を算出する。演算制御部H-8は、各x位置に対する算出されたy方向の距離(各x座標の強膜間距離に相当)を記憶部H-7に記憶する。
【0025】
・S114
S101により、眼の位置、撮像部H-9の位置、架台駆動部H-11の位置、照明駆動部H-12の位置が決定しており、演算制御部H-8は、その位置関係から演算制御部H-8が照射されるスリット光のx座標を算出する。照明駆動部H-12が撮像部H-9と略同じ光軸上にある場合には、x座標はアライメント情報から得られる。照明駆動部H-12が撮像部H-9に対して旋回している場合には、旋回角度と被検眼までの距離から、被検眼に照射されるスリット光のx座標を算出する。
・S115
演算制御部H-8は記憶部H-7を参照し、S113で求めたx方向に対するy方向の距離(各x座標の強膜間距離に相当)とS114で求めたx座標から、演算制御部H-8が照射部分の強膜間距離を算出する。
・S116
スリット光の長さがS115で求めた強膜間距離になるように、演算制御部H-8がスリット長駆動部H-13に対してスリット長の駆動を制御する。

なお、各サブルーチン又はメインルーチンの各ステップ又は適宜のタイミングで、演算制御部H-8は、x座標、各x座標の強膜間距離、定められたスリット長などの適宜のデータを記憶部H-7に記憶及び/又は表示部H-10に表示してもよい。このとき、被験者の識別情報や、日時、場所等の適宜の情報とともに記憶及び/又は表示してもよい。
【0026】
C.第2の実施の形態の細隙灯顕微鏡

第2の実施の形態の細隙灯顕微鏡は、特に、第1の実施の形態における撮像部の代わりに、センサーを用いるようにしたものである。第2の実施の形態の細隙灯顕微鏡では、センサーを配置して、肌・被検眼からのスリット光の反射を検知し、スリット長を調節することができる。なお、第1の実施の形態で説明した図3(A)及び図4及びそれらの説明箇所については、第2の実施の形態でも同様である。
【0027】
図8に、第2の実施の形態の細隙灯顕微鏡の概略構成図を示す。
図示のように、図3(B)の概略構成に加え、センサーを備えるものである。
第2の実施の形態の細隙灯顕微鏡の制御系のブロック構成は、第1の実施の形態の細隙灯顕微鏡と同様であるが、センサーH-6は、2次元のデバイスを用いる。センサーとしては、たとえばPD(Photo detector)、PSD(Position sensitive detector)などが用いられる。PDは2次元のアレイ状にならべて使用してもよい。
【0028】
図9に、センサーによる検出画像の説明図を示す。
センサーH-6は2次元であるので、スリット光の反射光により、撮像部H-9で撮影した画像の閾値以上の状態の輝度値に相当する領域を検出することができる。

第2の実施の形態の細隙灯顕微鏡では、例えば、被検眼(前眼部、角膜等)を撮像部(カメラ、対物レンズ等を備える。)で撮影し、さらに、センサーが被検眼からの反射光を検出し、2次元反射光データとして演算制御部(演算回路等を備える。)に出力する。演算制御部では、2次元反射光データに基づき画像処理を行い、強膜間距離を求める。そして、画像処理の結果をスリット長駆動部(スリット長開閉機構等を備える。)にフィードバックし、照明発光部(スリット光源部等を備える。)によるスリット光の範囲を変化させる。
【0029】
図10に、第2の実施の形態の細隙灯顕微鏡の動作を表すフローチャートを示す。図10(A)にメインルーチン、図10(B)にステップS102’のサブルーチンを示す。
メインルーチンは第1の実施の形態と同様であるが、S102’では図10(B)のサブルーチン処理が実行される。サブルーチン処理で、第1の実施の形態では、「S111 画像の取得」において撮像部H-9に画像を取得したが、第2の実施の形態では、「S111’ センサー値を取得」において、2次元のセンサーH-6により検出された2次元反射光データを検出する。2次元反射光データを用いて、演算制御部H-8がS112以降の第1の実施の形態と同様の処理を実行することができる。
【符号の説明】
【0030】
1 細隙灯顕微鏡
H-1 架台
H-11、3a、3a1、3a2、3b、3b1、3b2、3c 架台駆動部(移動機構部)
H-9、5a、5b、5c、5d、5e、5d 撮像部(撮像系)
H-14、6a、6b、6c、6d、6e、6f 照明発光部(照明系)
7 固定柱
8 支持部
9、9a、9b 平行投影光光源
10 顎受け台
H-8 演算制御部(CPU、コンピュータ)
200、200a 携帯端末装置
E 被検眼

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10